説明

データ記録再生装置および変調度検出装置

【課題】小さな回路規模で消費電力が少ないデータ記録再生装置を提供する。
【解決手段】OPC情報の検出に適した4ch加算信号11を生成する振幅調整部10と、データ再生に適したRF信号14を生成する加算器13と、ゲート信号17を生成するゲート信号生成部16と、ゲート信号17に基づいてRF信号14および4ch加算信号11のいずれかを選択して出力する信号選択部15と、信号選択部15からの出力信号をデジタルRF信号33に変換することでデータ復調を行う再生信号処理部82と、デジタルRF信号33から変調度情報27とアシンメトリ情報28とを生成するOPC情報検出部20と、変調度情報27とアシンメトリ情報28とに基づいて最適なレーザ記録パワーを調整する記録パワー調整部69とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体にデジタルデータを記録、および、光記録媒体からデジタルデータを再生するデータ記録再生装置およびその変調度検出装置に関する。
【0002】
より詳細には、記録時のレーザ記録パワーの調整である最適記録パワー制御(Optimum Power Contorl、以下、「OPC」と称す)に必要な、記録された信号の変調度やアシンメトリを検出する機能を伴うデータ記録再生の技術に関する。
【背景技術】
【0003】
情報記録媒体としての光ディスク媒体にデジタルデータを記録する方式として、コンパクトディスク(Compact Disc(登録商標);以下、「CD」と称す)やDigital Versatile Disk(以下、「DVD」と称す)に見られるように線速度を一定にして記録媒体上の記録密度を一様にする方式が多く用いられている。近年、読み取り専用の光ディスクのみならず、1回書き込みが可能なDVD−Recordable(以下、「DVD−R」と称す)、および、書き換え可能なDVD−ReWritable(以下、「DVD−RW」と称す)、さらには大容量データが記録可能な、Blu−ray Disc−Recordable(以下、「BD−R」と称す)、および、Blu−ray Disc−ReWritable(以下、「BD−RE」と称す)が、注目されている。
【0004】
光ディスク媒体にデジタルデータを記録するためには、ディスク膜の記録感度、温度、レーザ波長変動による記録状態の違いなどにより、レーザ記録パワーを調整するOPCが必要となる。OPCは、例えば、光ディスク媒体の内周部に存在するPCA(Power Calibration Area)にパワーを振って(当てて)試し書きを行い、記録された信号を読み出し、ピット部と非ピット部の反射率の違いを示す指標である変調度やピット部と非ピット部の非対称性を示す指標であるアシンメトリ等に従って最適パワーを決定する。
【0005】
ここで、変調度やアシンメトリを検出するためには、再生信号から、そのピーク値やボトム値やアベレージ値を求める必要があるが、アシンメトリを検出するために、直流成分(Direct Current成分、以下、「DC成分」と称す)を必要としないのに対して、変調度を検出するためには、DC成分が必要となる。そのため、記録されたデータを再生する際に、光信号を電気信号に変換する光ピックアップからデータ再生(データ復調)のために伝送されるRF(Radio Frecuency、以下、「RF」と称す)信号に対して、交流(Active Current、以下、「AC」と称す)結合や、オフセット制御(オフセットキャンセル)、および、自動ゲイン制御(Auto Gain Control、以下、「AGC」と称す)を行うデータ復調処理では、DC成分が失われたり、振幅情報が変化したりするために、変調度の検出にむかないため、別途、サーボ関係の信号に用いるDC成分が存在して振幅情報が静的に変化する4分割フォトディテクタの信号をそれぞれ受け取る4チャネル(以下、「4ch」と称す)信号の加算信号から、検波回路を用いて、再生信号のピーク値とボトム値を抽出し、それらの源信号から、CPU(中央演算装置)およびソフトウェア(プログラム)等で構成される光ディスクコントローラにより、変調度を抽出している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に開示された従来のデータ記録再生装置は、図10に示すような構成をしている。図10において、光記録媒体1は、相変化型記録材料の薄膜を有する等の光記録媒体であり、トラックが既定間隔でらせん状または同心円状に形成されている。光記録媒体回転制御部2は、光記録媒体1を所定の線速度で回転させる回路である。光ピックアップ3は、光記録媒体1からデジタルデータを読み出すに際して、光スポットの焦点を合わせてトラック上を走査するレーザ発生部4を搭載したアクチュエータと、光スポットからの反射光を電気信号に変換するトラッキングエラー信号およびプッシュプル信号検出用の4分割フォトディテクタ5や2分割フォトディテクタ6等を具備している。加算器7と加算器8は、4分割フォトディテクタ5から出力された検出電流を電圧に変換する電流―電圧変換とトラック方向に平行な領域の成分の加算を行う。加算器13は、2分割フォトディテクタ6から出力された検出電流を電圧に変換する電流―電圧変換と加算を行う。
【0007】
OPC情報検出部91は、OPC情報を検出するためのアナログ回路であり、振幅&オフセット調整部70および71と、加算信号検出部72と、コンパレータ73および74と、D/Aコンバータ75および76と、ピーク検出部77と、ボトム検出部78と、変調度検出部79とで構成される。加算器7と加算器8からの出力信号は、振幅&オフセット調整部70および71に入力されて、振幅とオフセットを調整された後、加算信号検出部72に入力されて、電圧加算される。加算信号検出部72からの出力信号は、コンパレータ73および74に入力された後、D/Aコンバータ75および76で生成された閾値を元に、2値化される。2値化されたコンパレータ73および74からの出力信号は、ピーク検出部77とボトム検出部78とに入力される。ピーク検出部77は、加算信号検出部72からの出力信号からピークエンベロープを検出するようにD/Aコンバータ75を制御しつつ、検出したピークエンベロープ情報を変調度検出部79に出力する。一方、ボトム検出部78は、加算信号検出部72からの出力信号からボトムエンベロープを検出するようにD/Aコンバータ76を制御しつつ、検出したボトムエンベロープ情報を変調度検出部79に出力する。変調度検出部79は、光記録媒体1にデジタルデータを最適に記録するためのOPCに必要な情報である変調度情報27を、前記ピークエンベロープ情報とボトムエンベロープ情報から演算して求め、検出された変調度情報27を光ディスクコントローラ18に伝送する。
【0008】
光ディスクコントローラ18は、CPUおよびソフトウェア(プログラム)等で構成される回路であり、得られた変調度情報27を元に、記録パワー調整部69を通じて光記録媒体1に記録する際の適切な記録パワーを決定する。記録パワー調整部69は、前記記録パワーを元にレーザ発生部4を通じて、光記録媒体1にデータを記録する。
【0009】
一方、デジタルデータを再生するために、加算器7と加算器8と加算器13とからの出力信号がRF信号生成部80で加算され、RF信号(再生信号)14として、再生信号処理部92に入力される。再生信号処理部92は、入力されたRF信号14に対して各種信号処理を施した後に、A/D変換し、データ復調を行う回路であり、第一のオフセットキャンセラ21と、再生信号振幅調整部22と、イコライザ23と、A/Dコンバータ12と、第二のオフセットキャンセラ24と、データ復調部25とで構成される。RF信号14は、第一のオフセットキャンセラ21に入力されて、A/Dコンバータ12のダイナミックレンジに対して適切なオフセットレベルに調整される。第一のオフセットキャンセラ21からの出力信号は、再生信号振幅調整部22に入力されて、A/Dコンバータ12のダイナミックレンジに対して適切な振幅に調整される。再生信号振幅調整部22からの出力信号は、イコライザ23に入力されて、周波数特性の補正と雑音の除去が行われる。イコライザ23からの出力信号は、A/Dコンバータ12に入力される。A/Dコンバータ12は、データ復調部25から生成される再生クロック32のタイミングにより、アナログ信号を多ビットのデジタル信号であるデジタルRF信号33に変換する。デジタルRF信号33は、第二のオフセットキャンセラ24に入力されることで、デジタルRF信号33に含まれるオフセット成分(DC成分)が低減される。第二のオフセットキャンセラ24からの出力信号は、データ復調部25に入力されて、デジタル2値化信号49が生成される。デジタル2値化信号49は、光ディスクコントローラ18に入力された後、エラー訂正処理等が施され、より誤りの無いデジタルデータに変換される。
【0010】
これら、RF信号14に対する、第一のオフセットキャンセラ21→再生信号振幅調整部22→イコライザ23→A/Dコンバータ12→第二のオフセットキャンセラ24→データ復調部25→光ディスクコントローラ18と処理する一連の再生信号処理系の動作により、光記録媒体1に記録されたデジタルデータの再生が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2008/035689号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記従来のデータ記録再生装置では、OPC情報検出部91はアナログ回路であるために、回路規模も消費電力も大きくなってしまうという問題がある。
【0013】
これは、OPC情報の検出に用いられる4ch信号を加算した信号(4ch加算信号)は、RF信号に相当する信号と同等の信号に相当するはずであるが、OPC情報検出部91と再生信号処理部92とは、異なるアナログ信号処理を行うので、OPC情報検出部91と再生信号処理部92とを別個独立に設けておく必要があることに起因している。つまり、データ復調を行うための再生信号処理部92では、データ復調の精度を向上させる必要があるため、A/Dコンバータ12でのAD変換前におけるAGCやオフセット制御により、A/Dコンバータ12のダイナミックレンジを有効に活用している。そのために、RF信号は、再生信号処理部92において、DC成分が欠落する、もしくは、振幅情報が変化してしまう。一方、OPC等のレーザ記録パワーの調整には(つまり、OPC情報の検出では)、DC成分と正確な振幅情報から求まる変調度情報等の情報が必要となる。そのために、再生信号処理部92で信号処理された信号からは直接、変調度情報等が検出できない。このような理由により、従来のデータ記録再生装置では、再生信号処理部92とは別個に、独立して、ピーク値、ボトム値、アベレージ値の検出機能を持つアナログ回路(OPC情報検出部91)を設ける必要があるため、回路規模と消費電力の面で不利な構成になる。
【0014】
ここで、OPC情報検出部91でのアナログ信号処理を再生信号処理部92で処理することを想定した場合は、アシンメトリ情報に関しては、DC成分や振幅情報に依存しない特性があるため、検出可能であるが、変調度情報に関しては、DC成分や振幅情報に依存する特性があるため、AGC(再生信号振幅調整部22での処理)やオフセット制御(第一のオフセットキャンセラ21での処理)等が存在することにより、正確な推定が困難である。
【0015】
さらに、変調度情報が検出可能なDC成分を残してA/D変換をし、A/D変換後のデジタルデータを用いてOPC情報の検出を行うとともに、データ復調のためにA/D変換後のデジタルデータに対してデジタル処理によりオフセット処理や振幅調整を行うことも考えられるが、その場合は、変調度情報の精度を維持するためにも(つまり、DC成分をもったアナログ信号をA/D変換するので)、A/Dコンバータのダイナミックレンジの確保および大きい有効ビット数が必要になるため、A/Dコンバータの回路規模や電力が増加してしまうという課題を有している。
【0016】
そこで、本発明は、小さな回路規模で消費電力が少ないデータ記録再生装置および変調度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記従来の課題を解決するために、本発明のデータ記録再生装置および変調度検出装置は、RF信号および4ch加算信号のいずれかを選択できる機能を有し、データ復調とOPC情報の検出のための前処理という2つのアナログ信号処理を1系統(再生信号処理部)で共用して行う構成を備える。これにより、OPC情報の検出のための前処理を行う専用のアナログ回路が不要となり、小さな回路規模で消費電力が少ないデータ記録再生装置および変調度検出装置が実現される。
【0018】
つまり、本発明のデータ記録再生装置の一形態は、光記録媒体から、トラック方向軸と、前記トラック方向軸と垂直に交わる半径方向軸とにより4分割された光信号を検出する4分割フォトディテクタを含む光ピックアップと、前記4分割フォトディテクタで検出された、4分割された前記光信号の加算結果に対応する信号を生成する加算信号検出部と、前記加算信号検出部からの出力信号の振幅を調整する振幅調整部と、前記光ピックアップの出力から再生信号としてのRF信号を生成するRF信号生成部と、前記RF信号生成部からの出力信号および前記振幅調整部からの出力信号のいずれかを選択するためのゲート信号を生成するゲート信号生成部と、前記ゲート信号生成部から生成されたゲート信号に基づいて、前記RF信号生成部からの出力信号および前記振幅調整部からの出力信号のいずれかを選択して出力する信号選択部と、前記信号選択部からの出力信号を多ビットのデジタル信号に変換することでデータ復調を行う再生信号処理部と、前記再生信号処理部で得られたデジタル信号から、前記光記録媒体におけるピット部と非ピット部の反射率の違いを示す指標である変調度情報と前記光記録媒体におけるピット部と非ピット部の非対称性を示す指標であるアシンメトリ情報とを生成する最適記録パワー制御情報検出部と、前記再生信号処理部から出力されるデータ復調後のデジタル2値化信号、および、前記最適記録パワー制御情報検出部からの出力信号である変調度情報とアシンメトリ情報とに基づいて、最適なレーザ記録パワーを調整する記録パワー調整部とを備える。
【0019】
これにより、OPC情報の検出ための前処理(アナログ信号処理)とデータ再生とが共通の回路(再生信号処理回路)で行われるため、従来に必要とされたOPC情報の検出のための専用のアナログ回路が不要となり、回路規模の削減と電力削減が可能となる。なお、一般的に、同一の信号処理を行う回路であっても、アナログ回路は、コンデンサ等の大面積の電子部品を必要とすることから、集積化に適したデジタル回路よりも回路規模が大きくなり、消費電力も大きくなる。
【0020】
ここで、より具体的な回路構成として、前記再生信号処理部は、前記信号選択部からの出力信号に対してオフセット成分を除去する第一のオフセットキャンセラと、前記第一のオフセットキャンセラからの出力信号の振幅を調整する再生信号振幅調整部と、前記再生信号振幅調整部からの出力信号に対して波形整形を行うイコライザと、前記イコライザからのアナログ出力信号を多ビットのデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、前記A/Dコンバータからの出力信号から、前記第一のオフセットキャンセラを制御するためのオフセット制御情報を生成して前記第一のオフセットキャンセラに出力するオフセット制御部と、前記A/Dコンバータからの出力信号から、前記再生信号振幅調整部を制御するためのゲイン制御情報を生成して前記再生信号振幅調整部に出力する振幅制御部と、前記A/Dコンバータからの出力信号に対してオフセット成分を除去する第二のオフセットキャンセラと、前記第二のオフセットキャンセラからの出力信号から、デジタル2値化信号と前記再生信号に含まれていたクロック成分を示す再生クロックとを生成するデータ復調を行うデータ復調部とを有し、前記最適記録パワー制御情報検出部は、前記A/Dコンバータからの出力信号、および、前記オフセット制御部から出力される前記オフセット制御情報、および、前記振幅制御部から出力される前記ゲイン制御情報を用いて、前記A/Dコンバータからの出力信号に対して、前記ゲイン制御情報と前記オフセット制御情報による逆補正をした後にピーク値とボトム値とアベレージ値とを抽出し、抽出したピーク値とボトム値とアベレージ値とを用いて、前記変調度情報と前記アシンメトリ情報とを生成し、前記記録パワー調整部は、前記データ復調部から出力される前記再生クロックに同期して動作し、前記データ復調部から出力されるデジタル2値化信号、および、前記最適記録パワー制御情報検出部からの変調度情報とアシンメトリ情報とに基づいて、最適なレーザ記録パワーを調整してもよい。
【0021】
また、さらに、前記デジタル2値化信号に基づいて、前記ゲート信号生成部を制御するためのタイミング情報を生成する光ディスクコントローラを備え、前記ゲート信号生成部は、前記光ディスクコントローラが出力したタイミング情報から、任意の時間区間を指定できるゲート信号を生成し、前記ゲート信号により、前記信号選択部に対して、DC成分を含む、前記振幅調整部からの出力信号を選択させるとともに、前記第一のオフセットキャンセラ、前記再生信号振幅調整部、前記第二のオフセットキャンセラ、および、前記データ復調部の動作をホールドさせることで、前記最適記録パワー制御情報検出部に対して、DC補正情報およびゲイン差情報を検出させて前記変調度情報を生成させるのが好ましい。
【0022】
これにより、再生信号処理部がOPC情報の検出に適した信号(振幅調整部からの出力信号)を処理する場合には、第一のオフセットキャンセラおよび再生信号振幅調整部等の動作がホールドされるので、最適記録パワー制御情報検出部は、DC成分と振幅情報とを失っていないデジタル信号を用いて正確な変調度情報とアシンメトリ情報とを生成することができる。
【0023】
また、前記最適記録パワー制御情報検出部は、前記ゲート信号生成部から前記ゲート信号が出力されていない場合に、前記振幅制御部から出力されるゲイン制御情報を元に、前記A/Dコンバータからの出力信号に対して逆補正をすることにより振幅情報を復元する振幅逆補正部を備えるとしてもよいし、前記最適記録パワー制御情報検出部は、前記ゲート信号生成部から前記ゲート信号が出力されていない場合に、前記オフセット制御部から出力されるオフセット制御情報を元に、前記A/Dコンバータからの出力信号に対して逆補正をすることによりDC成分を復元するDC逆補正部を備えてもよい。
【0024】
これにより、データ再生をしているときであっても、A/Dコンバータからの出力信号に対して、RF信号に含まれていたDC成分と振幅情報とを復元した後に、その出力信号がOPC情報の検出に用いられるので、データ再生と同時に変調度情報の検出およびアシンメトリ情報の検出が可能となる。よって、2度(異なる2つの時間区間)に分けてデータ再生とOPC情報の検出のための前処理とを別々に行う必要がなくなり、OPC時の学習時間や、装置の起動時間を短縮することが可能となる。
【0025】
さらに、この構成によれば、RF信号に対してオフセット制御およびゲイン制御を適用した後にA/D変換をするので、A/Dコンバータのダイナミックレンジとビット幅とを有効に利用することが可能となる。つまり、データ再生とOPC情報の検出のための前処理とを再生信号処理部で兼用させたことに伴ってA/Dコンバータの回路規模および消費電力が犠牲になってしまうという問題が回避される。
【0026】
なお、本発明は、このようなデータ記録再生装置として実現できるだけでなく、光記録媒体から、トラック方向軸と、前記トラック方向軸と垂直に交わる半径方向軸とにより4分割された光信号を検出する4分割フォトディテクタを含む光ピックアップからの信号に基づいて、前記光記録媒体におけるピット部と非ピット部の反射率の違いを示す指標である変調度情報と前記光記録媒体におけるピット部と非ピット部の非対称性を示す指標であるアシンメトリ情報とを生成する変調度検出装置であって、前記4分割フォトディテクタで検出された、4分割された前記光信号の加算結果に対応する信号を生成する加算信号検出部と、前記加算信号検出部からの出力信号の振幅を調整する振幅調整部と、前記光ピックアップの出力から再生信号としてのRF信号を生成するRF信号生成部と、前記RF信号生成部からの出力信号および前記振幅調整部からの出力信号のいずれかを選択するためのゲート信号を生成するゲート信号生成部と、前記ゲート信号生成部から生成されたゲート信号に基づいて、前記RF信号生成部からの出力信号および前記振幅調整部からの出力信号のいずれかを選択して出力する信号選択部と、前記信号選択部からの出力信号を多ビットのデジタル信号に変換することでデータ復調を行う再生信号処理部と、前記再生信号処理部で得られたデジタル信号から、前記光記録媒体におけるピット部と非ピット部の反射率の違いを示す指標である変調度情報と前記光記録媒体におけるピット部と非ピット部の非対称性を示す指標であるアシンメトリ情報とを生成する最適記録パワー制御情報検出部とを備える変調度検出装置として実現してもよい。
【0027】
また、本発明は、そのれら装置を構成する処理部をステップとする方法として実現したり、それらステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの非一時的な記録媒体として実現したり、そのプログラムを示す情報、データまたは信号として実現したりすることもできる。そして、それらプログラム、情報、データ及び信号は、インターネット等の通信ネットワークを介して配信できることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明のデータ記録再生装置および変調度検出装置によれば、従来に必要とされたOPC情報の検出のための専用のアナログ回路が不要となり、回路規模の削減と電力削減が可能となる。
【0029】
特に、半導体集積回路を用いて実現する場合に、小さな回路規模で消費電力が少ないデータ記録再生装置および変調度検出装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態におけるデータ記録再生装置および変調度検出装置の構成を示すブロック図
【図2】同データ記録再生装置の光ピックアップの詳細な構成を示すブロック図
【図3】同データ記録再生装置におけるゲート信号に関わる動作タイミングを示した図
【図4】同データ記録再生装置のOPC情報検出部による変調度情報の検出原理を示した図
【図5】同データ記録再生装置のイコライザが有する高次リップルフィルタの周波数特性の説明図
【図6】同データ記録再生装置の第二のオフセットキャンセラの詳細な構成を示すブロック図
【図7】同データ記録再生装置のデータ復調部が有する位相同期制御部の詳細な構成を示すブロック図
【図8】同位相同期制御部の動作を説明する図
【図9】同データ記録再生装置のOPC情報検出部を構成する第一のLPFと第二のLPFとピーク値平均化部とボトム値平均化部とアベレージ値平均化部の一実現例としての二次デジタル低域通過型フィルタの構成を示すブロック図
【図10】従来のデータ記録再生装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明のデータ記録再生装置および変調度検出装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される回路構成、構成要素の配置位置および接続形態、動作、動作タイミング、信号論理、信号の波形などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、特許請求の範囲だけによって限定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0032】
図1は、本発明の実施の形態におけるデータ記録再生装置の構成を示すブロック図を示す。このデータ記録再生装置は、主要な構成要素として、光ピックアップ3と、加算信号検出部9と、振幅調整部10と、加算器13と、ゲート信号生成部16と、信号選択部15と、再生信号処理部82と、OPC情報検出部20と、記録パワー調整部69とを備える。
【0033】
光ピックアップ3は、光記録媒体1から、トラック方向軸と、そのトラック方向軸と垂直に交わる半径方向軸とにより4分割された光信号を検出する4分割フォトディテクタ5を有するアセンブリである。加算信号検出部9は、4分割フォトディテクタ5で検出された、4分割された光信号の加算結果に対応する信号を生成する回路である。振幅調整部10は、加算信号検出部9から出力される信号の振幅を調整して4ch加算信号11を生成する回路である。加算器13は、光ピックアップ3の出力(検出電流)から再生信号としてのRF信号14を生成するRF信号生成部としての回路(電流電圧変換器)である。ゲート信号生成部16は、加算器13から出力されるRF信号14および振幅調整部10からの4ch加算信号11のいずれかを選択するためのゲート信号17を生成する回路である。信号選択部15は、ゲート信号生成部16から生成されたゲート信号17に基づいて、加算器13から出力されるRF信号14および振幅調整部10から出力される4ch加算信号11のいずれかを選択して出力する回路である。再生信号処理部82は、信号選択部15からの出力信号を多ビットのデジタルRF信号33に変換することでデータ復調を行う回路である。OPC情報検出部20は、再生信号処理部82で得られたデジタルRF信号33から、光記録媒体1におけるピット部と非ピット部の反射率の違いを示す指標である変調度情報27と光記録媒体におけるピット部と非ピット部の非対称性を示す指標であるアシンメトリ情報28とを生成するデジタル回路である。記録パワー調整部69は、再生信号処理部82から出力されるデータ復調後のデジタル2値化信号、および、OPC情報検出部20から出力される変調度情報27とアシンメトリ情報28とに基づいて最適なレーザ記録パワーを調整する回路である。
【0034】
ここで、再生信号処理部82は、詳細な構成として、信号選択部15からの出力信号に対してオフセット成分(DC成分)を除去する第一のオフセットキャンセラ21と、第一のオフセットキャンセラ21からの出力信号の振幅を調整する再生信号振幅調整部22と、再生信号振幅調整部22からの出力信号に対して波形整形を行うイコライザ23と、イコライザ23からのアナログ出力信号を多ビットのデジタルRF信号33に変換するA/Dコンバータ12と、A/Dコンバータ12からの出力信号から、第一のオフセットキャンセラ21を制御するためのオフセット制御情報を生成して第一のオフセットキャンセラ21に出力するオフセット制御部30と、A/Dコンバータ12からの出力信号から、再生信号振幅調整部22を制御するためのゲイン制御情報を生成して再生信号振幅調整部22に出力する振幅制御部31と、A/Dコンバータ12からの出力信号に対してオフセット成分(DC成分)を除去する第二のオフセットキャンセラ24と、第二のオフセットキャンセラ24からの出力信号から、デジタル2値化信号49と、RF信号14に含まれていたクロック成分を示す再生クロック32とを生成するデータ復調を行うデータ復調部25とを有する。
【0035】
また、OPC情報検出部20は、より詳しくは、A/Dコンバータ12からのデジタルRF信号33、および、オフセット制御部30から出力されるオフセット制御情報、および、振幅制御部31から出力されるゲイン制御情報を用いて、A/Dコンバータ12からのデジタルRF信号33に対して、ゲイン制御情報とオフセット制御情報とによる逆補正をした後にピーク値とボトム値とアベレージ値とを抽出し、抽出したピーク値とボトム値とアベレージ値とを用いて、変調度情報27とアシンメトリ情報28とを生成する。そのために、OPC情報検出部20は、特徴的な構成要素として、ゲート信号生成部16からゲート信号17が出力されていない(ネゲートの)場合に、振幅制御部31から出力されるゲイン制御情報を元にA/DコンバータからのデジタルRF信号33に対して逆補正をすることにより振幅情報を復元する振幅逆補正部50と、ゲート信号生成部16からゲート信号17が出力されていない(ネゲートの)場合に、オフセット制御部30から出力されるオフセット制御情報を元にA/Dコンバータ12からのデジタルRF信号33に対して逆補正をすることによりDC成分を復元するDC逆補正部51とを有する。
【0036】
なお、記録パワー調整部69は、データ復調部25から出力される再生クロック32に同期して動作し、データ復調部25から出力されるデジタル2値化信号49、および、OPC情報検出部20から出力される変調度情報27とアシンメトリ情報28とに基づいて、最適なレーザ記録パワーを調整する。
【0037】
このデータ記録再生装置は、さらに、デジタル2値化信号49に基づいて、ゲート信号生成部16を制御するためのタイミング情報である測定タイミング信号19を生成する光ディスクコントローラ18を備える。そして、ゲート信号生成部16は、光ディスクコントローラ18が出力した測定タイミング信号19から、任意の時間区間を指定できるゲート信号17を生成し、ゲート信号17により、信号選択部15に対して、DC成分を含む、振幅調整部10からの4ch加算信号11を選択させるとともに、第一のオフセットキャンセラ21、再生信号振幅調整部22、第二のオフセットキャンセラ24、および、データ復調部25の動作をホールドさせることで、OPC情報検出部20に対して、DC補正情報およびゲイン差情報を検出させて変調度情報27を生成させる。その際、イコライザ23については、機能をオフ(バイパス)すると、なおよい。
【0038】
なお、本発明に係る変調度検出装置は、このデータ記録再生装置の一部の構成要素から構成される装置である。つまり、本発明に係る変調度検出装置は、光記録媒体1から、トラック方向軸と、そのトラック方向軸と垂直に交わる半径方向軸とにより4分割された光信号を検出する4分割フォトディテクタ5を含む光ピックアップ3からの信号に基づいて、変調度情報27とアシンメトリ情報28とを生成する装置であって、データ記録再生装置が備える構成要素のうち、加算信号検出部9と、振幅調整部10と、加算器13と、ゲート信号生成部16と、信号選択部15と、再生信号処理部82と、OPC情報検出部20とを備える。
【0039】
このようなデータ記録再生装置および変調度検出装置は、光記録媒体1にデジタルデータを最適に記録するためのOPCに必要な変調度情報27およびアシンメトリ情報28を、RF信号14および4ch加算信号11から精度良く、かつ、最小規模の機能で生成することで、回路面積や消費電力の削減を実現している。以下、このデータ記録再生装置および変調度検出装置の構成について、詳細に説明する。
【0040】
光記録媒体1にデジタルデータを記録する際には、光記録媒体1のディスク膜の記録感度、温度、レーザ波長変動に対して精度良いデータを記録するために、光記録媒体1への記録時のレーザ記録パワーの最適調整が必要となる。この調整がOPCであり、例えば、光記録媒体1の内周部に存在するPCA(Power Calibration Area)にパワーを振って(当てて)試し書きを行い、記録された信号を読み出し、ピット部と非ピット部の反射率の違いを示す指標である変調度情報27およびピット部と非ピット部の非対称性を示す指標であるアシンメトリ情報28等に従って最適パワーを決定するため、記録されたデータの変調度情報27とアシンメトリ情報28等を正確に把握することが記録データの品質向上に必要である。
【0041】
以下、データ記録再生装置および変調度検出装置が備える各構成要素について、詳細に説明する。
【0042】
図1において、光記録媒体(光ディスク媒体)1は、デジタルデータを記録するための例えば、相変化型記録材料の薄膜を有する情報記録媒体であり、トラックが既定間隔でらせん状または同心円状に形成されている。光記録媒体1の一つである書き換えが可能なDVD−RWディスクやBD−REディスクや、1回のみ書き込みが可能なDVD−RディスクやBD−Rディスクは、PCA領域が存在し、OPC時にレーザ記録パワーの最適化に使用される。
【0043】
光記録媒体回転制御部2は、光記録媒体1を所定の線速度で回転させるための回路または機構である。一例として、この光記録媒体回転制御部2は、スピンドルモータ、および、ステッピングモータ等により構成されても良い。
【0044】
光ピックアップ3は、光記録媒体1からデジタルデータを読み出すに際して、光スポットの焦点を合わせてトラック上を走査するレーザ発生部4を搭載したアクチュエータと、光スポットからの反射光を電気信号に変換するトラッキングエラー信号およびプッシュプル信号検出用の4分割フォトディテクタ5と、フォーカスエラー信号検出用の2分割フォトディテクタ6を具備している。光ピックアップ3の詳細な構成を、図2に示す。図2に示すように、4分割フォトディテクタ5は、トラック方向軸と、このトラック方向軸と垂直に交わる半径方向軸によって、4つの領域5a〜5dに分割されている。
【0045】
図1に示すように、加算器7は、4分割フォトディテクタの4つの領域5a〜5dのうちの2つの領域5aおよび5dから出力された検出電流を電圧に変換する電流―電圧変換とそれらトラック方向に平行な領域5aおよび5dの成分の加算を行う。加算器8は、4分割フォトディテクタの4つの領域5a〜5dのうちの2つの領域5b〜5cから出力された検出電流を電圧に変換する電流―電圧変換とそれらトラック方向に平行な領域5bと5cの成分の加算を行う。
【0046】
加算器7からの出力信号と加算器8からの出力信号は、加算信号検出部9に入力されて、電圧加算される。加算信号検出部9からの出力信号は、任意にゲインを可変させることができるVGA(Voltage Gain Amplitude;以下、「VGA」と称する)等により構成される振幅調整部10に入力されて、A/Dコンバータ12の入力信号のダイナミックレンジに適した振幅に調整された4ch加算信号11として生成出力される。
【0047】
一方、加算器13は、RF信号を生成するRF信号生成部に相当し、ここでは、図2に示す2分割フォトディテクタ6の2つの領域6aおよび6bから出力された検出電流を電圧に変換する電流―電圧変換を行い、その変換後の電圧と、加算信号検出部9からの出力信号とを電圧加算してRF信号14を生成する。なお、これのようなRF信号14の生成方法は、一例であり、加算信号検出部9からの出力信号のみで生成してもよい。
【0048】
RF信号14と4ch加算信号11とは、信号選択部15に入力された後、ゲート信号生成部16により生成されるゲート信号17により、信号選択部15でいずれかが選択され、出力される。ここで、ゲート信号17と信号選択部15からの出力信号との関係等を、一例として、図3に示す。なお、図3には、ゲート信号に関わる本データ記録再生装置および変調度検出装置の動作タイミングが示されている。CPUおよびソフトウェア(プログラム)等で構成される光ディスクコントローラ18からの出力信号である測定タイミング信号19のアサート時に、図3に示すように、信号選択部15は、ゲート信号17をアサート(ここでは、Highに)して、任意の区間、例えば、DVDメディア等の光記録媒体1のデータフォーマットで定義された数フレーム区間をカウントした後、ネゲートを行う。ゲート信号17がHigh(アサート)となる区間で、4ch加算信号11が、信号選択部15からの出力信号として選択される。一方、ゲート信号17がLow(ネゲート)となる区間は、RF信号14が、信号選択部15からの出力信号として選択される。
【0049】
その際、ゲート信号17がHighとなる区間で、第一のオフセットキャンセラ21、再生信号振幅調整部22、第二のオフセットキャンセラ24、および、データ復調部25での各種制御(動作)がホールドされる。また、イコライザ23が機能オフもしくはバイパスされる。これにより、OPC情報検出部20の構成要素の1つである4ch加算ゲイン差&DC情報換算部26により、DC補正情報やゲイン差情報が検出され、変調度検出部67において正確な変調度情報27に換算することが可能となる。このようなDC補正情報およびゲイン差情報については、測定タイミング信号19のネゲート時に、変調度情報27およびアシンメトリ情報28を補正する補正値として用いたた後、4ch加算ゲイン差&DC情報換算部26の内部情報をリフレッシュして、次回の補正までは同じ補正値を用いて変調度情報27およびアシンメトリ情報28を算出しても良い。
【0050】
なお、ゲート信号生成部16は、生成するゲート信号17として、データ復調部25から出力されたデジタル2値化信号49を元に、データ再生が行われない場合にHighに固定するもよい。これにより、データ再生が行われない期間において、変調度情報27およびアシンメトリ情報28が検出される。
【0051】
なお、光ディスクコントローラ18は、生成する測定タイミング信号19として、データ復調部25から出力されたデジタル2値化信号49を元に、訂正限界を超えている、すなわち、再生不能の状態になると判断した場合に、アサートするタイミングを延長、もしくは、停止しても良い。これにより、そのような判断を光ディスクコントローラ18に備えられているCPUおよびソフトウェア(プログラム)で判断することにより、もともと光記録媒体1に汚れまたは指紋等が付着していて再生が困難な場合にも、データ再生と変調度情報の生成とを同時に行うことが可能となる。
【0052】
以上の構成により、本実施の形態におけるデータ記録再生装置および変調度検出装置によれば、従来のようにOPC情報の検出ための専用のアナログ回路を備えないので、回路規模の削減と電力削減が可能となる。
【0053】
また、本実施の形態におけるデータ記録再生装置および変調度検出装置によれば、オフセット制御部30およびそれを活用したDC逆補正部51、振幅制御部31およびそれを活用した振幅逆補正部50により、第一のオフセットキャンセラ21および再生信号振幅調整部22を動作させたままOPC情報を検出ことができるため、データ再生と同時に変調度情報の検出およびアシンメトリ情報の検出が可能となり、データ再生時の信号品質と、変調度情報やアシンメトリ情報を、2度(異なる2つの時間区間)に分けて個別に情報を取得する必要がなくなるため、OPC時のレーザ記録パワーの調整に必要な学習時間や、装置の起動時間を短縮することが可能となる。
【0054】
次に、OPC情報検出部20による、変調度情報27およびアシンメトリ情報28の検出原理を、図4に示す。ゲート信号17に基づいて信号選択部15で4ch加算信号11が選択された場合に、以下のようにして、OPC情報検出部20において、変調度情報27とアシンメトリ情報28とが検出される。つまり、変調度情報27は、A/Dコンバータ12からの出力信号であるデジタルRF信号33を入力として、レーザオフ時のデジタルRF信号33のDCレベル(図4中の「レーザオフ時の基準レベル」)を基準にした、4ch加算信号11のピーク値とボトム値とから、図4に示す式1で求められる。また、アシンメトリ情報28は、図4のピーク値とボトム値とアベレージ値から、図4に示す式2で求められる。
【0055】
さらに、OPC情報検出部20は、ここで得られた情報を元に、ゲート信号17がLow時に選択されるRF信号14を用いて、上記ピーク値とボトム値とアベレージ値とを補正することで、さらに精度の良い変調度情報27とアシンメトリ情報28を検出することが可能となる。なお、OPC情報検出部20の詳細な構成要素については、後述する。
【0056】
一方、ゲート信号17に基づいて信号選択部15でRF信号14が選択された場合は、再生信号処理部82は、以下の流れに沿って、データ再生を行う。まず、信号選択部15からの出力信号は、第一のオフセットキャンセラ21に入力されて、A/Dコンバータ12のダイナミックレンジに対して適切なオフセットレベルに調整される。
【0057】
なお、第一のオフセットキャンセラ21は、D/Aコンバータ等を有し、以下のような原理で動作しても良い。まず、オフセット制御部30は、A/Dコンバータ12からの出力信号であるデジタルRF信号33から、オフセットレベルを検出して、本来制御したい目標となるレベルとの差をゼロにするようなデジタル値であるオフセット制御情報を検出し、そのオフセット制御情報を第一のオフセットキャンセラ21に出力する。第一のオフセットキャンセラ21は、内蔵のD/Aコンバータ等でオフセット制御情報をアナログ量に変換し、A/Dコンバータ12のダイナミックレンジに対して適切なオフセットになるように、信号選択部15から入力された信号のオフセットを調整する。なお、ゲート信号17がHighであるために4ch加算信号11が信号選択部15で選択されている場合は、第一のオフセットキャンセラ21は、動作をホールドしておくことが望ましい。この場合には、第一のオフセットキャンセラ21は、ゲート信号17のアサート(Highになる)前に入力されていたオフセット制御情報を保持しておき、ゲート信号17のネゲート後(Low時)に、前記保持していたオフセット制御情報を用いて制御を再開してもよい。これにより、4ch加算信号11が選択されていた時間区間の違いによる影響を受けない安定したデータ再生が可能となる。
【0058】
第一のオフセットキャンセラ21からの出力信号は、再生信号振幅調整部22に入力されて、A/Dコンバータ12のダイナミックレンジに対して適切な振幅に調整される。
【0059】
なお、再生信号振幅調整部22は、ゲインを可変させることができるVGA等により構成される回路であり、D/Aコンバータ等を有し、以下のような原理で動作しても良い。まず、振幅制御部31は、A/Dコンバータ12からの出力信号であるデジタルRF信号33から、振幅情報を検出して、本来制御したい振幅目標との差をゼロにするようなデジタル値であるゲイン制御情報を検出し、そのゲイン制御情報を再生信号振幅調整部22に出力する。再生信号振幅調整部22は、内蔵のD/Aコンバータ等によりゲイン制御情報をアナログ量に変換し、VGA等により、A/Dコンバータ12のダイナミックレンジに対して適切な振幅になるように、第一のオフセットキャンセラ21から入力された信号の振幅を調整するAGC(Auto Gain Control)機能を発揮する。なお、ゲート信号17がHighあるために4ch加算信号11が信号選択部15で選択されている場合は、再生信号振幅調整部22は、動作をホールドしておくことが望ましい。この場合には、再生信号振幅調整部22は、ゲート信号17のアサート(Highになる)前に入力されていたゲイン制御情報を保持しておき、ゲート信号17のネゲート後(Low時)に、前記保持していたゲイン制御情報を用いて制御を再開してもよい。これにより、4ch加算信号11が選択されていた時間区間の違いによる影響を受けない安定したデータ再生が可能となる。
【0060】
再生信号振幅調整部22からの出力信号は、イコライザ23に入力されて、周波数特性の補正と雑音の除去が行われる。
【0061】
なお、イコライザ23は、以下のような原理で動作しても良い。ここで、RF信号14は、隣接する記録符号のパターンに応じて線方向の記録密度が高いほど、高周波成分において、再生波形の振幅減衰が顕著になり、RF信号14が有するジッタ成分の劣化につながる。そこで、イコライザ23は、高域(高周波成分)を強調するような補正を施すとともに、復調信号以外の帯域に存在する雑音成分を除去することにより、ジッタの改善を図る。ここで、イコライザ23は、ブースト量とカットオフ周波数とを任意に設定できるフィルタで構成される。このフィルタは、例えば、図5の実線で示すような周波数特性を有する高次等リップルフィルタ等であってもよい。この図において、点線で示した特性は、高域のブーストを行わない場合の特性である。なお、ゲート信号17がHighであるために4ch加算信号11が信号選択部15で選択されている場合は、イコライザ23は、入力信号をバイパスしてそのまま出力することが望ましい。
【0062】
イコライザ23からの出力信号はA/Dコンバータ12に入力される。A/Dコンバータ12は、データ復調部25から生成される再生クロック32のタイミングに同期して動作し、入力されたアナログ信号を多ビットのデジタル信号であるデジタルRF信号33に変換する回路である。
【0063】
デジタルRF信号33は、第二のオフセットキャンセラ24に入力されることで、デジタルRF信号33に含まれるオフセット成分が低減される。
【0064】
この第二のオフセットキャンセラ24は、例えば、図6に示すような回路構成(オフセットレベル検出部34、オフセットレベル平滑化部35および減算部36)を備えてもよい。以下、図6に示される回路構成を備える第二のオフセットキャンセラ24の動作を説明するが、この回路や原理は一例であり、この回路や原理に限られない。
【0065】
図6において、入力されたデジタルRF信号33から、オフセットレベル検出部34は、オフセットレベル情報を検出する。オフセットレベル平滑化部35は、オフセットレベル検出部34で検出されたオフセットレベル情報を平滑化する。次に、減算部36は、デジタルRF信号33から平滑化されたオフセットレベル情報を減算することにより、デジタルRF信号33に含まれるオフセット成分を低減する。オフセットレベル検出部34は、デジタルRF信号33におけるゼロクロス位置と判断した場合の位相情報を、センターレベルの変動情報として出力する。一方で、ゼロレベルを基準にしてデジタルRF信号33の極性が正の場合は“+A”を、負の場合は、“−A”をそれぞれ加算して(Aは任意の正数)、これらの情報を累積する。このとき、累積信号は、第二のオフセットキャンセラ24からの出力信号の符号的な極性のバランスを表す情報となるため、その情報をもとに符号的なセンターレベルとのオフセット情報も抽出できる。次に、これらセンターレベル変動情報と符号的な極性のバランスを表す情報とを任意の比率で加算して、オフセットレベル情報を生成する。これにより、デジタルRF信号33に存在するオフセット成分を低減することが可能となるため、後述する、位相同期制御(PLL(Phase Locked Loop;以下、「PLL」と称す)制御)や、データ復調処理の精度および性能が向上する。なお、ゲート信号17がHighであるために4ch加算信号11が信号選択部15で選択されている場合は、第二のオフセットキャンセラ24は、動作をホールドしておくことが望ましい。この場合には、第二のオフセットキャンセラ24は、ゲート信号17のアサート(Highになる)前におけるオフセットレベル平滑化部35の情報を保持しておき、ゲート信号17のネゲート後(Low時)に、前記保持されたオフセットレベル平滑化部35の情報を用いて制御を再開してもよい。これにより、4ch加算信号11が選択されていた区間の信号の違いによる影響を受けない安定したデータ再生が可能となる。
【0066】
上述したとおり、デジタルRF信号33は、RF信号14に含まれるチャネルビット周波数のクロック成分の位相に同期した再生クロック32を基準として、A/Dコンバータ12によりサンプリングして得た信号である。その際に、再生クロック32を生成する回路であるデータ復調部25は、図7に示す回路構成を備える位相同期制御部37を具備しても良い。この位相同期制御部37は、ゼロクロス情報検出部38、線形補間部41、極性反転部42、切り替え部43、マスク処理部44、位相誤差情報45、位相同期ループフィルタ46、デジタル・アナログコンバータ47およびVCO48を備える。ここで、再生クロック32は、A/Dコンバータ12以降のデジタル信号を処理する回路においてDフリップフロップ等に入力される信号である。再生クロック32が、A/Dコンバータ12以降のデジタル回路の動作クロックになることにより、再生速度が異なる場合でも、RF信号14に含まれるチャネル周波数成分に追従した適切な信号処理を実現できるため、再生速度に依存しない再生性能の実現と同時に、安定化とデジタル回路の規模や電力を削減することが可能となる。なお、本データ記録再生装置および変調度検出装置が備えるデジタル回路の動作帯域によっては、再生クロック32をN分周(Nは2以上の任意の整数)して動作させることで、より電力や回路を合理化することも可能である。
【0067】
以下、図7と図8により、位相同期制御部37を有するデータ復調部25の動作と原理を説明する。図8は、位相同期制御部37の動作を説明する図である。ただし、図7に示される位相同期制御部37の詳細な回路構成は一例であり、この回路構成に限られない。
【0068】
図7に示すように、ゼロクロス情報検出部38は、例えば、図8の白丸で示されるような第二のオフセットキャンセラ24からの出力信号、もしくはデジタルRF信号33から、ゼロクロス位置検出信号39と、その位置が立ち上がりエッジであるか立ち下がりエッジであるかを示す極性選択信号40とを生成する。一方、第二のオフセットキャンセラ24からの出力信号は、線形補間部41に入力された、隣接する白丸に相当する信号を直線的に補間することにより図8の黒四角で示すような中間信号に変換される。この信号が、位相誤差信号の基準信号になる。極性反転部42は、線形補間部41からの出力信号の極性を反転させる機能を有する。切り替え部43は、極性選択信号40が“負”を示す場合には、図8の白四角に示すような、極性反転部42から出力される信号を選択し、一方、極性選択信号40が“正”を示す場合には、図8の黒四角に示すような、線形補間部41からの出力信号を選択する。次に、マスク処理部44は、ゼロクロス位置検出信号39に基づいて、ゼロクロス位置、即ち極性が反転したと判断した場合のみ、切り替え部43からの出力信号を位相誤差情報45として出力する。その際、マスク処理部44は、極性切り替わりの瞬間だけでなく、次のゼロクロス位置まで、位相誤差情報45を保持しても良い。こうして得られた位相誤差情報45は、図8中の“P1”,“P2”,“P3”,“P4”で示される。ここで、白四角で示す立ち下がりエッジに該当する位相誤差情報“P2”および“P4”については、切り替え部43は、極性反転部42からの出力信号を選択している。このようにして検出された位相誤差情報45を用いて、位相同期ループフィルタ46によりフィルタ処理を施した後、位相同期ループフィルタ46から出力されるデジタル位相制御信号は、アナログ制御信号に変換するためのデジタル・アナログコンバータ47に入力される。次に、VCO48は、デジタル・アナログコンバータ47の出力電圧を基準にして、クロックを発振する。VCO48の出力クロックは、分周等を行った後、再生クロック32に変換される。ここで、位相同期ループフィルタ46は、比例成分と積分成分のゲインを調整し、それぞれをミックスして積分処理を行っても良い。つまり、A/Dコンバータ12→第二のオフセットキャンセラ24→位相同期制御部37→VCO48→A/Dコンバータ12をメインの制御ループとし、位相誤差情報45を零にするように、フィードバック制御を行うことにより、RF信号14のチャネルビット周波数のクロック成分の位相に同期したデジタルRF信号33が生成可能となる。また、光記録媒体1にデジタルデータが記録されていない場合には、再生クロック32の発振周波数を固定化しても良い。
【0069】
なお、ゲート信号17がHighであるために4ch加算信号11が信号選択部15で選択されている場合は、位相同期制御部37は、動作をホールドしておくことが望ましい。この場合には、位相同期制御部37は、ゲート信号17のアサート(Highになる)前における位相同期ループフィルタ46の制御情報を保持しておき、ゲート信号17のネゲート後(Low時)に、前記保持された位相同期ループフィルタ46の制御情報を用いて制御を再開してもよい。これにより、4ch加算信号11が選択されていた区間の信号の違いによる影響を受けない安定したデータ再生が可能となる。
【0070】
光記録媒体1に記録されたデジタルデータを復調するためには、データ復調部25は、第二のオフセットキャンセラ24からの出力信号に対して、図8に示すようなセンターレベルを基準に上側か下側で、“1”が“0”を判別する。データ復調部25により復調されたデジタル2値化信号49は、光ディスクコントローラ18に入力された後、光ディスクコントローラ18において、エラー訂正処理等が実施され、より誤りの無いデジタルデータに変換される。
【0071】
なお、デジタル2値化信号49の生成方法としては、上述したレベルに対して上側か下側で、“1”と“0”を判別する方法だけではなく、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)のような確率演算を用いた、より誤りにくい判別方法であっても良い。なお、ゲート信号17がHighであるために4ch加算信号11が信号選択部15で選択されている場合は、データ復調部25は、動作をホールドしておくことが望ましい。この場合には、データ復調部25は、ゲート信号17のアサート(Highになる)前における各制御情報を保持しておき、ゲート信号17のネゲート後(Low時)に、前記保持された各制御情報を用いて制御を再開してもよい。これにより、4ch加算信号11が選択されていた区間の信号の違いによる影響を受けない安定したデータ再生が可能となる。
【0072】
なお、上述したが、光ディスクコントローラ18で生成される測定タイミング信号19については、データ復調部25から出力されたデジタル2値化信号49を元に、訂正限界を超えている、すなわち再生不能の状態になると判断された場合は、アサートするタイミングを延長、もしくは、停止しても良い。前記の判断を光ディスクコントローラ18に備えられているCPUおよびソフトウェア(プログラム)で判断することにより、もともと光記録媒体1に汚れまたは指紋等が付着していて再生が困難な場合にも、データ再生と変調度情報の生成とを同時に行うことが可能となる。
【0073】
次に、OPC情報検出部20の機能と変調度情報27とアシンメトリ情報28の検出原理に関して説明する。OPC情報検出部20は、デジタル信号処理回路であり、図1に示されるように、振幅逆補正部50、DC逆補正部51、第一のLPF52、区間ピーク検出部53、区間ボトム検出部54、第二のLPF55、ピーク値平均化部56、ボトム値平均化部57、アベレージ値平均化部58、4ch加算ゲイン差&DC情報換算部26、変調度検出部67およびアシンメトリ検出部68を有する。
【0074】
A/Dコンバータ12の出力であるデジタルRF信号33が、OPC情報検出部20に入力される。OPC情報検出部20により変調度情報27とアシンメトリ情報28を検出する際の対象は、ゲート信号17に基づいて信号選択部15でDC成分が存在する4ch加算信号11が選択されている区間となるため、例えば、ゲート信号17がLowとなるRF信号14が選択されている区間では、ホールド処理を行うことにより、変調度情報27とアシンメトリ情報28の検出精度を安定化させることが可能となる。
【0075】
入力されたデジタルRF信号33は、最初に、振幅逆補正部50に入力される。振幅逆補正部50は、ゲート信号17により再生信号振幅調整部22がホールドされている場合は、入力信号をそのまま出力する。一方、ゲート信号17により再生信号振幅調整部22がホールドされていない場合は、振幅逆補正部50は、振幅制御部31の出力であるゲイン制御情報を元に、デジタルRF信号33の振幅レベルを第一のオフセットキャンセラ21からの出力信号に相当する振幅レベルに変換する。このような振幅逆補正部50の機能により、再生信号振幅調整部22による振幅調整を行いつつデジタルRF信号33の振幅情報が再現されるので、A/Dコンバータ12のダイナミックレンジを有効に活用することも可能となるため、変調度情報27とアシンメトリ情報28の検出精度を向上させることが可能となる。
【0076】
振幅逆補正部50からの出力信号は、DC逆補正部51に入力される。DC逆補正部51は、ゲート信号17により第一のオフセットキャンセラ21がホールドされている場合は、入力信号をそのまま出力する。一方、ゲート信号17により第一のオフセットキャンセラ21がホールドされていない場合は、DC逆補正部51は、オフセット制御部30の出力であるオフセット制御情報を元に、振幅逆補正部50からの出力信号のオフセットレベルを第一のオフセットキャンセラ21の入力信号に相当するオフセットレベルに変換する。このようなDC逆補正部51の機能により、第一のオフセットキャンセラ21によるオフセットキャンセルを行いつつデジタルRF信号33のオフセット成分が再現されるので、振幅調整部10の自由度が高くなり、A/Dコンバータ12のダイナミックレンジを有効に活用することも可能となるため、変調度情報27とアシンメトリ情報28の検出精度を向上させることが可能となる。
【0077】
DC逆補正部51からの出力信号は、第一のLPF(Low Pass Filter)52に入力される。第一のLPF52は、入力信号に対して、変調度情報27とアシンメトリ情報28の検出精度を妨げる高周波領域の雑音を除去する。
【0078】
第一のLPF52からの出力信号は、区間ピーク検出部53と、区間ボトム検出部54と、第二のLPF55に入力される。
【0079】
ここで、区間ピーク検出部53は、一例として、任意の時間内で、入力信号の最大値を保持することで、ピークエンベロープを検出する。同様に、区間ボトム検出部54は、一例として、任意の時間内で、入力信号の最小値を保持することで、ボトムエンベロープを検出する。第二のLPF55は、入力信号の全データの平均レベルを検出しても良く、第一のLPF52よりも低い遮断周波数のLPFとして機能することでアベレージレベルを抽出しても良い。
【0080】
区間ピーク検出部53からの出力信号は、LPF等で構成されるピーク値平均化部56に入力された後、図4に示すようなピーク値が検出される。
【0081】
区間ボトム検出部54からの出力信号は、LPF等で構成されるボトム値平均化部57に入力された後、図4に示すようなボトム値が検出されても良い。
【0082】
第二のLPF55からの出力信号は、LPF等で構成されるアベレージ値平均化部58に入力された後、図4に示すようなアベレージ値が検出される。
【0083】
なお、第一のLPF52と、第二のLPF55と、ピーク値平均化部56と、ボトム値平均化部57と、アベレージ値平均化部58とは、図9に示すような巡回型フィルタで構成される一次デジタル低域通過型フィルタの組み合わせ(2つの一次デジタル低域通過型フィルタ59aおよび59b)で構成されても良い。図9に、2つの一次デジタル低域通過型フィルタの組み合わせの一例として、巡回型フィルタの応用回路である二次デジタル低域通過型フィルタの構成を示す。以下、二次デジタル低域通過型フィルタの動作を説明するが、この回路は一例であり、この回路に限られない。
【0084】
この二次デジタル低域通過型フィルタは、加算部60、減算部61、クリップ処理部62、初期化部63、レジスタ64および遮断周波数設定部65から構成される、2つの一次デジタル低域通過型フィルタ59aおよび59bと、出力選択部66とから構成される。図9に示すように、フィルタ入力信号は、まず、前段の一次デジタル低域通過型フィルタ59aの加算部60に入力される。加算部60は、前記フィルタ入力信号と減算部61からの出力信号とを加算する機能を有する。加算部60からの出力信号は、クリップ処理部62に入力されて、上限値が、最大ビット幅を超えた場合に、それに一番近い上限値または下限値にクリップされる。クリップ処理部62からの出力信号は、初期化部63に入力される。初期化部63は、一次デジタル低域通過型フィルタ59aの起動時、および、駆動クロックの切り替え時における初期化を行う。初期化部63からの出力信号は、入力されたデジタルデータを駆動クロックのタイミングで保持する機能を具備するレジスタ64に入力される。レジスタ64の出力信号は、一次デジタル低域通過型フィルタ59aの遮断周波数を設定するための遮断周波数設定部65と、減算部61とに入力される。ここで、遮断周波数設定部65は、例えば、ビットシフト回路のように、簡単にゲインを調整するような回路である。減算部61は、レジスタ64の出力信号から遮断周波数設定部65の出力信号である一次デジタル低域通過型フィルタ59aの出力信号を減算する。
【0085】
続いて、一次デジタル低域通過型フィルタ59aからの出力信号が、後段のもう一つの一次デジタル低域通過型フィルタ59bに入力される。後段の一次デジタル低域通過型フィルタ59bは、上述した前段の一次デジタル低域通過型フィルタ59aの構成と基本的には同じ構成を有する。前段の一次デジタル低域通過型フィルタ59aからの出力信号と、後段の一次デジタル低域通過型フィルタ59bからの出力信号は、出力選択部66に入力されて、どちらかの入力信号が選択されて出力される。これにより、図9に示す二次デジタル低域通過型フィルタは、一次フィルタか二次フィルタかのいずれかの性能が選択され得る。
【0086】
上述した一連の巡回型のデジタルフィルタの直列接続により実現される二次デジタル低域通過型フィルタにより、フィルタ入力信号の高域雑音成分を除去することが可能となる。また、平均化処理を行うことも可能となる。このような単純な巡回型のデジタル低域通過型フィルタを適用することにより、デジタル回路の小規模化を図れるため、コストを抑えることが可能となる。
【0087】
ピーク値平均化部56からの出力信号であるピーク値と、ボトム値平均化部57からの出力信号であるボトム値とは、4ch加算ゲイン差&DC情報換算部26に入力された後、振幅調整部10で適用したゲイン情報と、レーザオフ時の基準レベルとを元に、変調度換算情報が算出され、算出された変調度換算情報が変調度検出部67に伝送される。ここで、レーザオフ時の情報は、レーザ発生部4によるレーザをオフして、検出されたピーク値とボトム値の平均値の情報を保持しておいた値である。それらのピーク値およびボトム値と、4ch加算ゲイン差&DC情報換算部26からの出力情報とは、変調度検出部67に入力された後、図4に示す式1で変調度情報27が求められる。一方、それらのピーク値およびボトム値と、アベレージ値平均化部58からの出力信号であるアベレージ値とは、アシンメトリ検出部68に入力された後、図4に示す式2でアシンメトリ情報28が求められる。
【0088】
光ディスクコントローラ18は、CPUおよびソフトウェア(プログラム)等で構成される回路であり、変調度情報27およびアシンメトリ情報28を元に、記録パワー調整部69を通じて光記録媒体1に記録する際の適切な記録パワーを決定する。記録パワー調整部69は、光ディスクコントローラ18で決定された記録パワーを元に、レーザ発生部4を通じて、光記録媒体1にデータを記録する。
【0089】
上述した一連の機能により、本実施の形態におけるデータ記録再生装置および変調度検出装置によれば、従来のようにOPC情報の検出ための専用のアナログ信号処理回路を備えなくても、デジタル2値化信号の生成に必要なデータ復調関係の機能とOPCに必要な変調度情報とアシンメトリ情報とを精度良く推定できるため、回路規模の削減と電力削減が可能となる。
【0090】
また、本実施の形態におけるデータ記録再生装置および変調度検出装置によれば、オフセット制御部30およびそれを活用したDC逆補正部51、振幅制御部31およびそれを活用した振幅逆補正部50により、第一のオフセットキャンセラ21および再生信号振幅調整部22を動作させたままOPC情報を検出ことができるため、つまり、データ再生と同時に変調度情報の検出およびアシンメトリ情報の検出が可能となり、2度(異なる2つの時間区間)に分けて情報を取得する必要がなくなるため、OPC時の学習時間や、装置の起動時間を短縮することが可能となる。
【0091】
さらに、本実施の形態におけるデータ記録再生装置および変調度検出装置によれば、オフセット制御とゲイン制御を適用してA/Dコンバータのダイナミックレンジとビット幅を有効に利用することが可能となるため、データ復調に必要な最小限必要なダイナミックレンジとビット幅で構築できる利点があるため、A/Dコンバータの回路規模や電力の抑制も可能となる。つまり、データ再生とOPC情報の検出のための前処理とを再生信号処理部で兼用させたことに伴ってA/Dコンバータの回路規模および電力が犠牲になってしまうという問題が回避される。
【0092】
特に、本実施の形態におけるデータ記録再生装置および変調度検出装置によれば、半導体集積回路を用いて実現する場合には、小さな回路規模で消費電力が少ないデータ記録再生装置および変調度検出装置を提供することが可能となる。
【0093】
以上、本発明に係るデータ記録再生装置および変調度検出装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、このような実施の形態に限定されない。本発明の主旨を逸脱しない範囲で、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、実施の形態の構成要素を任意に組み合わせて得られる形態も、本発明に含まれる。
【0094】
たとえば、本実施の形態では、ゲート信号17は、正論理(アサート時にHigh)で出力されたが、負論理(アサート時にLow)で出力されてもよい。
【0095】
また、本実施の形態では、ゲート信号17がアサートされた時に、再生信号処理部82の一部構成要素の動作がホールドされたが、本発明に係るデータ記録再生装置および変調度検出装置では、必ずしも、このようなホールド機能は必要ではない。本実施の形態におけるOPC情報検出部20は、振幅逆補正部50およびDC逆補正部51を有するので、たとえ第一のオフセットキャンセラ21および再生信号振幅調整部22が動作したためにA/Dコンバータ12から出力されたデジタルRF信号33にDC成分と振幅情報とが含まれていない場合であっても、振幅逆補正部50およびDC逆補正部51において振幅情報とDC成分とが復元されるからである。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、データ記録再生装置およびその変調度検出装置として、特に、データを記録するために必要な変調度情報およびアシンメトリ情報であるOPC情報の検出のための前処理とデータ再生とを共通の再生信号処理部で行うことにより、OPC情報の検出のための専用のアナログ回路が不要となって省電力化が可能なため、ノートPCに搭載される記録再生用DVDスーパーマルチドライブや、Blu−rayレコーダ等として有用である。
【符号の説明】
【0097】
1 光記録媒体(光ディスク媒体)
2 光記録媒体回転制御部
3 光ピックアップ
4 レーザ発生部
5 4分割フォトディテクタ
5a〜5d 4分割フォトディテクタの分割領域
6 2分割フォトディテクタ
6a、6b 2分割フォトディテクタの分割領域
7、8 加算器
9 加算信号検出部
10 振幅調整部
11 4ch加算信号
12 A/Dコンバータ
13 加算器(RF信号生成部)
14 RF信号
15 信号選択部
16 ゲート信号生成部
17 ゲート信号
18 光ディスクコントローラ
19 測定タイミング信号
20、91 OPC情報検出部
21 第一のオフセットキャンセラ
22 再生信号振幅調整部
23 イコライザ
24 第二のオフセットキャンセラ
25 データ復調部
26 4ch加算ゲイン差&DC情報換算部
27 変調度情報
28 アシンメトリ情報
30 オフセット制御部
31 振幅制御部
32 再生クロック
33 デジタルRF信号
34 オフセットレベル検出部
35 オフセットレベル平滑化部
36 減算部
37 位相同期制御部
38 ゼロクロス情報検出部
39 ゼロクロス位置検出信号
40 極性選択信号
41 線形補間部
42 極性反転部
43 切り替え部
44 マスク処理部
45 位相誤差情報
46 位相同期ループフィルタ
47 デジタル・アナログコンバータ
48 VCO
49 デジタル2値化信号
50 振幅逆補正部
51 DC逆補正部
52 第一のLPF
53 区間ピーク検出部
54 区間ボトム検出部
55 第二のLPF
56 ピーク値平均化部
57 ボトム値平均化部
58 アベレージ値平均化部
59a、59b 一次デジタル低域通過型フィルタ
60 加算部
61 減算部
62 クリップ処理部
63 初期化部
64 レジスタ
65 遮断周波数設定部(ゲイン設定)
66 出力選択部
67 変調度検出部
68 アシンメトリ検出部
69 記録パワー調整部
70、71 振幅&オフセット調整部
72 加算信号検出部
73、74 コンパレータ
75、76 D/Aコンバータ
77 ピーク検出部
78 ボトム検出部
79 変調度検出部
80 RF信号生成部
82、92 再生信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光記録媒体から、トラック方向軸と、前記トラック方向軸と垂直に交わる半径方向軸とにより4分割された光信号を検出する4分割フォトディテクタを含む光ピックアップと、
前記4分割フォトディテクタで検出された、4分割された前記光信号の加算結果に対応する信号を生成する加算信号検出部と、
前記加算信号検出部からの出力信号の振幅を調整する振幅調整部と、
前記光ピックアップの出力から再生信号としてのRF信号を生成するRF信号生成部と、
前記RF信号生成部からの出力信号および前記振幅調整部からの出力信号のいずれかを選択するためのゲート信号を生成するゲート信号生成部と、
前記ゲート信号生成部から生成されたゲート信号に基づいて、前記RF信号生成部からの出力信号および前記振幅調整部からの出力信号のいずれかを選択して出力する信号選択部と、
前記信号選択部からの出力信号を多ビットのデジタル信号に変換することでデータ復調を行う再生信号処理部と、
前記再生信号処理部で得られたデジタル信号から、前記光記録媒体におけるピット部と非ピット部の反射率の違いを示す指標である変調度情報と前記光記録媒体におけるピット部と非ピット部の非対称性を示す指標であるアシンメトリ情報とを生成する最適記録パワー制御情報検出部と、
前記再生信号処理部から出力されるデータ復調後のデジタル2値化信号、および、前記最適記録パワー制御情報検出部からの出力信号である変調度情報とアシンメトリ情報とに基づいて、最適なレーザ記録パワーを調整する記録パワー調整部とを備える、
データ記録再生装置。
【請求項2】
前記再生信号処理部は、
前記信号選択部からの出力信号に対してオフセット成分を除去する第一のオフセットキャンセラと、
前記第一のオフセットキャンセラからの出力信号の振幅を調整する再生信号振幅調整部と、
前記再生信号振幅調整部からの出力信号に対して波形整形を行うイコライザと、
前記イコライザからのアナログ出力信号を多ビットのデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、
前記A/Dコンバータからの出力信号から、前記第一のオフセットキャンセラを制御するためのオフセット制御情報を生成して前記第一のオフセットキャンセラに出力するオフセット制御部と、
前記A/Dコンバータからの出力信号から、前記再生信号振幅調整部を制御するためのゲイン制御情報を生成して前記再生信号振幅調整部に出力する振幅制御部と、
前記A/Dコンバータからの出力信号に対してオフセット成分を除去する第二のオフセットキャンセラと、
前記第二のオフセットキャンセラからの出力信号から、デジタル2値化信号と前記再生信号に含まれていたクロック成分を示す再生クロックとを生成するデータ復調を行うデータ復調部とを有し、
前記最適記録パワー制御情報検出部は、前記A/Dコンバータからの出力信号、および、前記オフセット制御部から出力される前記オフセット制御情報、および、前記振幅制御部から出力される前記ゲイン制御情報を用いて、前記A/Dコンバータからの出力信号に対して、前記ゲイン制御情報と前記オフセット制御情報による逆補正をした後にピーク値とボトム値とアベレージ値とを抽出し、抽出したピーク値とボトム値とアベレージ値とを用いて、前記変調度情報と前記アシンメトリ情報とを生成し、
前記記録パワー調整部は、前記データ復調部から出力される前記再生クロックに同期して動作し、前記データ復調部から出力されるデジタル2値化信号、および、前記最適記録パワー制御情報検出部からの変調度情報とアシンメトリ情報とに基づいて、最適なレーザ記録パワーを調整する、
請求項1記載のデータ記録再生装置。
【請求項3】
さらに、前記デジタル2値化信号に基づいて、前記ゲート信号生成部を制御するためのタイミング情報を生成する光ディスクコントローラを備え、
前記ゲート信号生成部は、前記光ディスクコントローラが出力したタイミング情報から、任意の時間区間を指定できるゲート信号を生成し、前記ゲート信号により、前記信号選択部に対して、DC成分を含む、前記振幅調整部からの出力信号を選択させるとともに、前記第一のオフセットキャンセラ、前記再生信号振幅調整部、前記第二のオフセットキャンセラ、および、前記データ復調部の動作をホールドさせることで、前記最適記録パワー制御情報検出部に対して、DC補正情報およびゲイン差情報を検出させて前記変調度情報を生成させる、
請求項2記載のデータ記録再生装置。
【請求項4】
前記最適記録パワー制御情報検出部は、前記ゲート信号生成部から前記ゲート信号が出力されていない場合に、前記振幅制御部から出力されるゲイン制御情報を元に、前記A/Dコンバータからの出力信号に対して逆補正をすることにより振幅情報を復元する振幅逆補正部を備える、
請求項2記載のデータ記録再生装置。
【請求項5】
前記最適記録パワー制御情報検出部は、前記ゲート信号生成部から前記ゲート信号が出力されていない場合に、前記オフセット制御部から出力されるオフセット制御情報を元に、前記A/Dコンバータからの出力信号に対して逆補正をすることによりDC成分を復元するDC逆補正部を備える、
請求項2記載のデータ記録再生装置。
【請求項6】
光記録媒体から、トラック方向軸と、前記トラック方向軸と垂直に交わる半径方向軸とにより4分割された光信号を検出する4分割フォトディテクタを含む光ピックアップからの信号に基づいて、前記光記録媒体におけるピット部と非ピット部の反射率の違いを示す指標である変調度情報と前記光記録媒体におけるピット部と非ピット部の非対称性を示す指標であるアシンメトリ情報とを生成する変調度検出装置であって、
前記4分割フォトディテクタで検出された、4分割された前記光信号の加算結果に対応する信号を生成する加算信号検出部と、
前記加算信号検出部からの出力信号の振幅を調整する振幅調整部と、
前記光ピックアップの出力から再生信号としてのRF信号を生成するRF信号生成部と、
前記RF信号生成部からの出力信号および前記振幅調整部からの出力信号のいずれかを選択するためのゲート信号を生成するゲート信号生成部と、
前記ゲート信号生成部から生成されたゲート信号に基づいて、前記RF信号生成部からの出力信号および前記振幅調整部からの出力信号のいずれかを選択して出力する信号選択部と、
前記信号選択部からの出力信号を多ビットのデジタル信号に変換することでデータ復調を行う再生信号処理部と、
前記再生信号処理部で得られたデジタル信号から、前記光記録媒体におけるピット部と非ピット部の反射率の違いを示す指標である変調度情報と前記光記録媒体におけるピット部と非ピット部の非対称性を示す指標であるアシンメトリ情報とを生成する最適記録パワー制御情報検出部とを備える、
変調度検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−41635(P2013−41635A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176427(P2011−176427)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】