説明

トラクター用変速装置

【課題】装置の前後方向の長さを増加させずに多段化し、低速段から高速段まで幅広いギア比を設定可能とすると共に、シフト時間を短縮し、シフトショックを軽減する。
【解決手段】第1軸10に第1クラッチ12〜第3クラッチ16及びギア11〜ギア17、第2軸20に第4クラッチ24、第5クラッチ26及びギア21〜ギア27、第3軸30にギア33〜ギア37、第4軸40に第6クラッチ44、第7クラッチ46及びギア45〜ギア49、第5軸50に第8クラッチ54、第9クラッチ56及びギア53〜ギア59、第6軸60に第10クラッチ62、第11クラッチ68及びギア63、ギア69を設け、前進1速〜前進24速、後進1速〜後進8速の変速を行うとき、同時に切り換えるクラッチを1個又は2個となるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用のトラクターに用いる変速装置に関し、特に、装置全長及び重量の増加を抑えて変速段数を多段化する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトラクター用変速装置には、シフト時間を短縮し、シフトショックを軽減するために、シフトの際に同時に切り換えるクラッチを少なく構成したものがあり、例えば、特開平5−223143号公報に示されたものが知られている。
【0003】
この従来のトラクター用変速装置は、5軸を平行に備え、9個のクラッチと19個のギアを用いて前進16速、後進4速としており、各変速段において締結されるクラッチは2個で、同時に切り換えるクラッチが1個又は2個となるように構成されている。
【0004】
農業用のトラクターは、通常、トラクター保管設備から農地までの移動では変速装置の高速段を主に使用し、農地での作業では変速装置の低速段から中速段を使用するが、農地での作業を重視したギア比(変速比)に設定すると、前進16速の仕様では高速段でのギア比を大きくできないため、移動時の車両速度が低くなってしまう。
【0005】
それに対し、移動時の車両速度を重視したギア比に設定すると、低速段の変速段数が少なくなり、農地での種々の作業における最適速度の選択が困難となる。また、農地での作業と移動時の車両速度の両方を考慮した設定にすると、低速段から高速段までの段間ギア比が大きくなってしまい、この場合も最適速度の選択が困難となる。
【0006】
このような、移動時の車両速度や作業時の最適速度の問題を解決するものとして、変速段数を増やした変速装置があり、例えば、米国特許第4858495号公報に示された、前進24速、後進6速としたパワーシフトトランスミッションが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−223143号公報
【特許文献2】米国特許第4858495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この従来のパワーシフトトランスミッションにあっては、油圧クラッチを用いており、各変速段において締結されるクラッチが4個で、変速の際に同時に切り換えるクラッチは最大で3個であるため、複雑な制御が必要で、且つ切り換えのために大量の油が必要となり、また、シフト時間がかかり、大きなシフトショックが発生するという問題があった。
【0009】
更に、このような従来のパワーシフトトランスミッションの軸配置及びギア配列にあっては、部品点数が多く、また、装置の前後方向の長さが大きく高重量となり、車載性が悪くなってしまうという問題もあった。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、装置の前後方向の長さを増加させずに多段化し、低速段から高速段まで幅広いギア比を設定可能とすると共に、シフト時間を短縮し、シフトショックを軽減することができるトラクター用変速装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため本発明は次のように構成する。本発明は、動力を車輪側に伝達する第1軸10から、第2軸20、第3軸30、第4軸40、第5軸50、第6軸60までの6軸を平行に備え、第1軸10には、ギア11を固着し、第1クラッチ12、又は第2クラッチ14、又は第3クラッチ16の切り換えによってそれぞれ独立に第1軸10の動力を伝達するギア13、ギア15、ギア17を回転自在に設け、第2軸20には、ギア11に噛合するギア21を固着し、第4クラッチ24の切り換えによって第2軸20の動力を伝達するギア23、同様に第4クラッチ24の切り換えによって第2軸20の動力を伝達すると共にギア15に噛合するギア25、第5クラッチ26の切り換えによって第2軸20の動力を伝達するとともにギア17に噛合するギア27を回転自在に設け、第3軸30には、ギア13及びギア23に噛合するギア33、ギア35、ギア27に噛合するギア37を固着し、第4軸40には、ギア49を固着し、第6クラッチ44の切り換えによって第4軸40の動力を伝達すると共にギア35に噛合するギア45、第7クラッチ46の切り換えによって第4軸40の動力を伝達すると共にギア37に噛合するギア47を回転自在に設け、第5軸50には、ギア53及びギア59を固着し、第8クラッチ54の切り換えによって第5軸50の動力を伝達すると共にギア35に噛合するギア55、第9クラッチ56の切り換えによって第5軸50の動力を伝達すると共にギア37に噛合するギア57を回転自在に設け、第6軸60には、第10クラッチ62の切り換えによって第6軸60に動力を伝達すると共にギア53に噛合するギア63、第11クラッチ68の切り換えによって第6軸60に動力を伝達すると共にギア49及びギア59に噛合するギア69を回転自在に設け、第1〜第11クラッチ12、14、16、24、26、44、46、54、56、62、68の切り換え操作を行うことによって、噛合関係にある各ギア11、13、15、17、21、23、25、27、33、35、37、45、47、49、53、55、57、59、63、69のギア比による変速を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、4個以下のギアを有した軸を6軸とすることで、装置の前後方向の長さを増加させずに多段化して、低速段から高速段まで幅広いギア比を設定可能とし、また、シフト時に同時に切り換えるクラッチを1個又は2個とすることで、複雑な制御を必要とせず、切り換えのための油の供給が少なくて済み、シフト時間を短縮し、シフトショックを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるトラクター用変速装置の一実施形態を示す説明図
【図2】図1の軸配置とギア噛合を示す説明図
【図3】図1のクラッチ締結の組合せの説明図
【図4】前進1速のクラッチ締結を示す説明図
【図5】前進2速のクラッチ締結を示す説明図
【図6】前進3速のクラッチ締結を示す説明図
【図7】前進4速のクラッチ締結を示す説明図
【図8】前進5速のクラッチ締結を示す説明図
【図9】前進6速のクラッチ締結を示す説明図
【図10】前進7速のクラッチ締結を示す説明図
【図11】前進8速のクラッチ締結を示す説明図
【図12】前進9速のクラッチ締結を示す説明図
【図13】前進10速のクラッチ締結を示す説明図
【図14】前進11速のクラッチ締結を示す説明図
【図15】前進12速のクラッチ締結を示す説明図
【図16】前進13速のクラッチ締結を示す説明図
【図17】前進14速のクラッチ締結を示す説明図
【図18】前進15速のクラッチ締結を示す説明図
【図19】前進16速のクラッチ締結を示す説明図
【図20】前進17速のクラッチ締結を示す説明図
【図21】前進18速のクラッチ締結を示す説明図
【図22】前進19速のクラッチ締結を示す説明図
【図23】前進20速のクラッチ締結を示す説明図
【図24】前進21速のクラッチ締結を示す説明図
【図25】前進22速のクラッチ締結を示す説明図
【図26】前進23速のクラッチ締結を示す説明図
【図27】前進24速のクラッチ締結を示す説明図
【図28】後退1速のクラッチ締結を示す説明図
【図29】後退2速のクラッチ締結を示す説明図
【図30】後退3速のクラッチ締結を示す説明図
【図31】後退4速のクラッチ締結を示す説明図
【図32】後退5速のクラッチ締結を示す説明図
【図33】後退6速のクラッチ締結を示す説明図
【図34】後退7速のクラッチ締結を示す説明図
【図35】後退8速のクラッチ締結を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明によるトラクター用変速装置の一実施形態を示した説明図である。図1において、トラクター用変速装置1は、第1軸10、第2軸20、第3軸30、第4軸40、第5軸50及び第6軸60が平行に設けられている。第1軸10には、エンジン2からの動力が入力し、第6軸60の両端に設けられたフロント出力部材3及びリア出力部材4から変速した動力を出力する。
【0015】
第1軸10にはギア11が固着され、また、ギア13、ギア15、ギア17が回転自在に設けられている。ギア13は、第1クラッチ12の締結により第1軸10の動力を伝達し、ギア15は、第2クラッチ14の締結により第1軸10の動力を伝達し、ギア17は、第3クラッチ16の締結により第1軸10の動力を伝達する。
【0016】
第2軸20にはギア11に噛合するギア21が固着され、また、ギア23、ギア15に噛合するギア25、ギア17に噛合するギア27が回転自在に設けられている。ギア23及びギア25は、第4クラッチ24の締結により第2軸20の動力を伝達し、ギア27は、第5クラッチ26の締結により第2軸20の動力を伝達する。
【0017】
第3軸30には、ギア13及びギア23に噛合するギア33、ギア35、ギア27に噛合するギア37が固着されている。また、第3軸30にはクラッチは存在しない。
【0018】
第4軸40には、ギア35に噛合するギア45、ギア37に噛合するギア47が回転自在に設けられ、また、ギア49が固着されている。ギア45は、第6クラッチ44の締結により第4軸40に動力を伝達し、ギア47は第7クラッチ46の締結により第4軸40に動力を伝達する。
【0019】
第5軸50には、ギア53、ギア59が固着され、また、ギア35に噛合するギア55、ギア37に噛合するギアギア57が回転自在に設けられている。ギア55は、第8クラッチ54の締結により第5軸50に動力を伝達し、ギア57は、第9クラッチ56の締結により第5軸50に動力を伝達する。
【0020】
第6軸60には、ギア53に噛合するギア63、ギア49及びギア59に噛合するギア69が回転自在に設けられている。ギア63は、第10クラッチ62の締結により第6軸60に動力を伝達し、ギア69は、第11クラッチ68の締結により第6軸60に動力を伝達する。
【0021】
図2は、図1の軸配置とギア噛合を示す説明図である。図2において、トラクター用変速装置1は、第1軸10、第2軸20、第3軸30、第4軸40、第5軸50及び第6軸60が設けられ、第1軸10にはギア11、ギア13、ギア15、ギア17、第2軸20にはギア21、ギア23、ギア25、ギア27、第3軸30にはギア33、ギア35、ギア37、第4軸40にはギア45、ギア47、ギア49、第5軸50にはギア53、ギア55、ギア57、ギア59、第6軸60には、ギア63、ギア69が備わる。
【0022】
第1軸10のギア11、ギア15、ギア17は、各々、第2軸20のギア21、ギア25、ギア27に噛合し、ギア13は、第3軸30のギア33に噛合している。第2軸20のギア21、ギア25、ギア27は、各々、第1軸10のギア11、ギア15、ギア17に噛合し、ギア23は、第3軸30のギア33に噛合している。
【0023】
第3軸30のギア33は、第1軸10のギア13及び第2軸20のギア23に噛合し、ギア35は、第4軸40のギア45及び第5軸50のギア55に噛合し、ギア37は、第2軸20のギア27と第4軸40のギア47及び第5軸50のギア57に噛合している。
【0024】
第4軸40のギア45、ギア47は、各々、第3軸30のギア35、ギア37に噛合し、ギア49は、第6軸60のギア69に噛合している。第5軸50のギア53、ギア59は、各々、第6軸60のギア63、ギア69に噛合し、ギア55、ギア57は、各々、第3軸30のギア35、ギア37に噛合している。第6軸60のギア63、ギア69は、各々、第5軸50のギア53、ギア59に噛合し、ギア69は、更に第4軸40のギア49に噛合している。
【0025】
図3は、図1のクラッチ締結の組合せの説明図であり、各変速段において締結するクラッチを丸印で示し、また、隣接する変速段毎にシフト時に切り換えるクラッチの数を示している。本実施形態のトラクター用変速装置1においては、図3に示すように、第1クラッチ12〜第11クラッチ68を切り換えて変速を行う。
【0026】
図3から明らかなように、各変速段において締結されるクラッチは3個であるが、隣接する変速段へのシフト時には、同時に切り換えるクラッチは1個又は2個になる。なお、ニュートラル状態から前進1速又は後進1速に切り換える場合と各変速段からニュートラル状態に切り換える場合は、同時に切り換えるクラッチは3個になる。
【0027】
以下、図4〜図35を参照して、本実施形態のトラクター用変速装置1のシフト動作を変速段毎に詳細に説明する。図4〜図35においては、動力の伝達行程を太線で示している。
【0028】
(前進1速) 図4に示すように、ニュートラル状態から第4クラッチ24、第6クラッチ44、第10クラッチ62を締結することで、第1軸10に入力した動力は、ギア11、ギア21、第2軸20、第4クラッチ24、ギア23、ギア33、第3軸30、ギア35、ギア45、第6クラッチ44、第4軸40、ギア49、ギア69、ギア59、第5軸50、ギア53、ギア63、第10クラッチ62、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0029】
(前進2速) 図5に示すように、前進1速の状態から第4クラッチ24を開放して第2クラッチ14を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第2クラッチ14、ギア15、ギア25、ギア23、ギア33、第3軸30、ギア35、ギア45、第6クラッチ44、第4軸40、ギア49、ギア69、ギア59、第5軸50、ギア53、ギア63、第10クラッチ62、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0030】
(前進3速) 図6に示すように、前進2速の状態から第2クラッチ14を開放して第5クラッチ26を締結することで、第1軸10に入力した動力は、ギア11、ギア21、第2軸20、第5クラッチ26、ギア27、ギア37、第3軸30、ギア35、ギア45、第6クラッチ44、第4軸40、ギア49、ギア69、ギア59、第5軸50、ギア53、ギア63、第10クラッチ62、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0031】
(前進4速) 図7に示すように、前進3速の状態から第5クラッチ26を開放して第3クラッチ16を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第3クラッチ16、ギア17、ギア27、ギア37、第3軸30、ギア35、ギア45、第6クラッチ44、第4軸40、ギア49、ギア69、ギア59、第5軸50、ギア53、ギア63、第10クラッチ62、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0032】
(前進5速) 図8に示すように、前進4速の状態から第3クラッチ16及び第10クラッチ62を開放し、第4クラッチ24及び第11クラッチ68を締結することで、第1軸10に入力した動力は、ギア11、ギア21、第2軸20、第4クラッチ24、ギア23、ギア33、第3軸30、ギア35、ギア45、第6クラッチ44、第4軸40、ギア49、ギア69、第11クラッチ68、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0033】
(前進6速) 図9に示すように、前進5速の状態から第6クラッチ44及び第11クラッチ68を開放し、第8クラッチ54及び第10クラッチ62を締結することで、第1軸10に入力した動力は、ギア11、ギア21、第2軸20、第4クラッチ24、ギア23、ギア33、第3軸30、ギア35、ギア55、第8クラッチ54、第5軸50、ギア53、ギア63、第10クラッチ62、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0034】
(前進7速) 図10に示すように、前進6速の状態から第8クラッチ54を開放して第7クラッチ46を締結することで、第1軸10に入力した動力は、ギア11、ギア21、第2軸20、第4クラッチ24、ギア23、ギア33、第3軸30、ギア37、ギア47、第7クラッチ46、第4軸40、ギア49、ギア69、ギア59、第5軸50、ギア53、ギア63、第10クラッチ62、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0035】
(前進8速) 図11に示すように、前進7速の状態から第4クラッチ24及び第7クラッチ46を開放し、第2クラッチ14及び第8クラッチ54を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第2クラッチ14、ギア15、ギア25、ギア23、ギア33、第3軸30、ギア35、ギア55、第8クラッチ54、第5軸50、ギア53、ギア63、第10クラッチ62、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0036】
(前進9速) 図12に示すように、前進8速の状態から第8クラッチ54を開放して第7クラッチ46を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第2クラッチ14、ギア15、ギア25、ギア23、ギア33、第3軸30、ギア37、ギア47、第7クラッチ46、第4軸40、ギア49、ギア69、ギア59、第5軸50、ギア53、ギア63、第10クラッチ62、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0037】
(前進10速) 図13に示すように、前進9速の状態から第2クラッチ14及び第7クラッチ46を開放し、第5クラッチ26及び第8クラッチ54を締結することで、第1軸10に入力した動力は、ギア11、ギア21、第2軸20、第5クラッチ26、ギア27、ギア37、第3軸30、ギア35、ギア55、第8クラッチ54、第5軸50、ギア53、ギア63、第10クラッチ62、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0038】
(前進11速) 図14に示すように、前進10速の状態から第8クラッチ54を開放して第7クラッチ46を締結することで、第1軸10に入力した動力は、ギア11、ギア21、第2軸20、第5クラッチ26、ギア27、ギア37、ギア47、第7クラッチ46、第4軸40、ギア49、ギア69、ギア59、第5軸50、ギア53、ギア63、第10クラッチ62、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0039】
(前進12速) 図15に示すように、前進11速の状態から第5クラッチ26及び第7クラッチ46を開放して第3クラッチ16及び第8クラッチ54を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第3クラッチ16、ギア17、ギア27、ギア37、第3軸30、ギア35、ギア55、第8クラッチ54、第5軸50、ギア53、ギア63、第10クラッチ62、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0040】
(前進13速) 図16に示すように、前進12速の状態から第3クラッチ16及び第8クラッチ54を開放して第4クラッチ24及び第9クラッチ56を締結することで、第1軸10に入力した動力は、ギア11、ギア21、第2軸20、第4クラッチ24、ギア23、ギア33、第3軸30、ギア37、ギア57、第9クラッチ56、第5軸50、ギア53、ギア63、第10クラッチ62、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0041】
(前進14速) 図17に示すように、前進13速の状態から第9クラッチ56及び第10クラッチ62を開放して第8クラッチ54及び第11クラッチ68を締結することで、第1軸10に入力した動力は、ギア11、ギア21、第2軸20、第4クラッチ24、ギア23、ギア33、第3軸30、ギア35、ギア55、第8クラッチ54、第5軸50、ギア59、ギア69、第11クラッチ68、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0042】
(前進15速) 図18に示すように、前進14速の状態から第8クラッチ54を開放して第7クラッチ46を締結することで、第1軸10に入力した動力は、ギア11、ギア21、第2軸20、第4クラッチ24、ギア23、ギア33、第3軸30、ギア37、ギア47、第7クラッチ46、第4軸40、ギア49、ギア69、第11クラッチ68、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0043】
(前進16速) 図19に示すように、前進15速の状態から第4クラッチ24及び第7クラッチ46を開放して第2クラッチ14及び第8クラッチ54を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第2クラッチ14、ギア15、ギア25、ギア23、ギア33、第3軸30、ギア35、ギア55、第8クラッチ54、第5軸50、ギア59、ギア69、第11クラッチ68、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0044】
(前進17速) 図20に示すように、前進16速の状態から第8クラッチ54を開放して第7クラッチ46を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第2クラッチ14、ギア15、ギア25、ギア23、ギア33、第3軸30、ギア37、ギア47、第7クラッチ46、第4軸40、ギア49、ギア69、第11クラッチ68、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0045】
(前進18速) 図21に示すように、前進17速の状態から第2クラッチ14及び第7クラッチ46を開放して第5クラッチ26及び第8クラッチ54を締結することで、第1軸10に入力した動力は、ギア11、ギア21、第2軸20、第5クラッチ26、ギア27、ギア37、第3軸30、ギア35、ギア55、第8クラッチ54、第5軸50、ギア59、ギア69、第11クラッチ68、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0046】
(前進19速) 図22に示すように、前進18速の状態から第8クラッチ54を開放して第7クラッチ46を締結することで、第1軸10に入力した動力は、ギア11、ギア21、第2軸20、第5クラッチ26、ギア27、ギア37、ギア47、第7クラッチ46、第4軸40、ギア49、ギア69、第11クラッチ68、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0047】
(前進20速) 図23に示すように、前進19速の状態から第5クラッチ26及び第7クラッチ46を開放して第3クラッチ16及び第8クラッチ54を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第3クラッチ16、ギア17、ギア27、ギア37、第3軸30、ギア35、ギア55、第8クラッチ54、第5軸50、ギア59、ギア69、第11クラッチ68、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0048】
(前進21速) 図24に示すように、前進20速の状態から第8クラッチ54を開放して第7クラッチ46を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第3クラッチ16、ギア17、ギア27、ギア37、ギア47、第7クラッチ46、第4軸40、ギア49、ギア69、第11クラッチ68、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0049】
(前進22速) 図25に示すように、前進21速の状態から第3クラッチ16及び第7クラッチ46を開放して第2クラッチ14及び第9クラッチ56を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第2クラッチ14、ギア15、ギア25、ギア23、ギア33、第3軸30、ギア37、ギア57、第9クラッチ56、第5軸50、ギア59、ギア69、第11クラッチ68、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0050】
(前進23速) 図26に示すように、前進22速の状態から第2クラッチ14を開放して第5クラッチ26を締結することで、第1軸10に入力した動力は、ギア11、ギア21、第2軸20、第5クラッチ26、ギア27、ギア37、ギア57、第9クラッチ56、第5軸50、ギア59、ギア69、第11クラッチ68、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0051】
(前進24速) 図27に示すように、前進23速の状態から第5クラッチ26を開放して第3クラッチ16を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第3クラッチ16、ギア17、ギア27、ギア37、ギア57、第9クラッチ56、第5軸50、ギア59、ギア69、第11クラッチ68、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0052】
(後進1速) 図28に示すように、ニュートラル状態から第1クラッチ12、第6クラッチ44、第10クラッチ62を締結することで、あるいは、前進1速の状態から第4クラッチ24を開放して第1クラッチ12を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第1クラッチ12、ギア13、ギア33、第3軸30、ギア35、ギア45、第6クラッチ44、第4軸40、ギア49、ギア69、ギア59、第5軸50、ギア53、ギア63、第10クラッチ62、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0053】
(後進2速) 図29に示すように、後進1速の状態から第10クラッチ62を開放して第11クラッチ68を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第1クラッチ12、ギア13、ギア33、第3軸30、ギア35、ギア45、第6クラッチ44、第4軸40、ギア49、ギア69、第11クラッチ68、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0054】
(後進3速) 図30に示すように、後進2速の状態から第6クラッチ44及び第11クラッチ68を開放して第8クラッチ54及び第10クラッチ62を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第1クラッチ12、ギア13、ギア33、第3軸30、ギア35、ギア55、第8クラッチ54、第5軸50、ギア53、ギア63、第10クラッチ62、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0055】
(後進4速) 図31に示すように、後進3速の状態から第8クラッチ54を開放して第7クラッチ46を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第1クラッチ12、ギア13、ギア33、第3軸30、ギア37、ギア47、第7クラッチ46、第4軸40、ギア49、ギア69、ギア59、第5軸50、ギア53、ギア63、第10クラッチ62、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0056】
(後進5速) 図32に示すように、後進4速の状態から第7クラッチ46を開放して第9クラッチ56を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第1クラッチ12、ギア13、ギア33、第3軸30、ギア37、ギア57、第9クラッチ56、第5軸50、ギア53、ギア63、第10クラッチ62、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0057】
(後進6速) 図33に示すように、後進5速の状態から第9クラッチ56及び第10クラッチ62を開放して第8クラッチ54及び第11クラッチ68を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第1クラッチ12、ギア13、ギア33、第3軸30、ギア35、ギア55、第8クラッチ54、第5軸50、ギア59、ギア69、第11クラッチ68、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0058】
(後進7速) 図34に示すように、後進6速の状態から第8クラッチ54を開放して第7クラッチ46を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第1クラッチ12、ギア13、ギア33、第3軸30、ギア37、ギア47、第7クラッチ46、第4軸40、ギア49、ギア69、第11クラッチ68、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0059】
(後進8速) 図35に示すように、後進7速の状態から第7クラッチ46を開放して第9クラッチ56を締結することで、第1軸10に入力した動力は、第1クラッチ12、ギア13、ギア33、第3軸30、ギア37、ギア57、第9クラッチ56、第5軸50、ギア59、ギア69、第11クラッチ68、第6軸60の順に伝達され、フロント出力部材3及びリア出力部材4に出力される。
【0060】
以上、図4〜図35を参照して、本実施形態のトラクター用変速装置1のシフトアップ時の動作を説明したが、シフトダウン時の動作は上記の説明の逆の動作になり、前進1速又は後進1速からニュートラル状態への切り換え以外は、同時に切り換えるクラッチは1個又は2個になる。
【0061】
また、本発明は、その目的と利点を損なわない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0062】
1:変速装置
2:動力
3:フロント出力部材
4:リア出力部材
10:第1軸
11、13、15、17:ギア
12:第1クラッチ
14:第2クラッチ
16:第3クラッチ
20:第2軸
21、23、25、27:ギア
24:第4クラッチ
26:第5クラッチ
30:第3軸
33、35、37:ギア
40:第4軸
45、47、49:ギア
44:第6クラッチ
46:第7クラッチ
50:第5軸
53、55、57、59:ギア
54:第8クラッチ
56:第9クラッチ
60:第6軸
63、69:ギア
62:第10クラッチ
68:第11クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力を車輪側に伝達する第1軸(10)から、第2軸(20)、第3軸(30)、第4軸(40)、第5軸(50)、第6軸(60)までの6軸を平行に備え、
第1軸(10)には、ギア(11)を固着し、第1クラッチ(12)、又は第2クラッチ(14)、又は第3クラッチ(16)の切り換えによってそれぞれ独立に第1軸(10)の動力を伝達するギア(13)、ギア(15)、ギア(17)を回転自在に設け、
第2軸(20)には、ギア(11)に噛合するギア(21)を固着し、第4クラッチ(24)の切り換えによって第2軸(20)の動力を伝達するギア(23)、同様に第4クラッチ(24)の切り換えによって第2軸(20)の動力を伝達すると共にギア(15)に噛合するギア(25)、第5クラッチ(26)の切り換えによって第2軸(20)の動力を伝達するとともにギア(17)に噛合するギア(27)を回転自在に設け、
第3軸(30)には、ギア(13)及びギア(23)に噛合するギア(33)、ギア(35)、ギア(27)に噛合するギア(37)を固着し、
第4軸(40)には、ギア(49)を固着し、第6クラッチ(44)の切り換えによって第4軸(40)の動力を伝達すると共にギア(35)に噛合するギア(45)、第7クラッチ(46)の切り換えによって第4軸(40)の動力を伝達すると共にギア(37)に噛合するギア(47)を回転自在に設け、
第5軸(50)には、ギア(53)及びギア(59)を固着し、第8クラッチ(54)の切り換えによって第5軸(50)の動力を伝達すると共にギア(35)に噛合するギア(55)、第9クラッチ(56)の切り換えによって第5軸(50)の動力を伝達すると共にギア(37)に噛合するギア(57)を回転自在に設け、
第6軸(60)には、第10クラッチ(62)の切り換えによって第6軸(60)に動力を伝達すると共にギア(53)に噛合するギア(63)、第11クラッチ(68)の切り換えによって第6軸(60)に動力を伝達すると共にギア(49)及びギア(59)に噛合するギア(69)を回転自在に設け、
前記第1〜第11クラッチ(12、14、16、24、26、44、46、54、56、62、68)の切り換え操作を行うことによって、前記噛合関係にある各ギア(11、13、15、17、21、23、25、27、33、35、37、45、47、49、53、55、57、59、63、69)のギア比による変速を行うことを特徴とするトラクター用変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2011−252558(P2011−252558A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127783(P2010−127783)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000154347)株式会社ユニバンス (132)
【Fターム(参考)】