トラニオン式サスペンション用モジュール及び該モジュールを用いたトラニオン式サスペンションの組立方法
【課題】従来よりもトラニオン式サスペンションの組立作業を容易に行い得るようにして作業負担を大幅に軽減化し得るようにする。
【解決手段】左右のフレーム5間を連結するクロスメンバ部16と、該クロスメンバ部16の両端部下面に下方に向かうにつれ車幅方向外側へ開くように一体成形され且つトラニオンシャフト17を軸支するためのボス部を有する一対のトラニオンブラケット部19とを備えたクロスメンバ一体型トラニオンブラケットを採用し、前記クロスメンバ部16と前後の車軸1,2との間をVロッド22により夫々連結し且つ前記トラニオンブラケット部19の下端部の前後面と前記前後の車軸1,2の両端部下側との間を平行リンク式のロアロッド9により夫々連結して一つの構成単位にまとめ、トラニオン式サスペンション用モジュール28とする。
【解決手段】左右のフレーム5間を連結するクロスメンバ部16と、該クロスメンバ部16の両端部下面に下方に向かうにつれ車幅方向外側へ開くように一体成形され且つトラニオンシャフト17を軸支するためのボス部を有する一対のトラニオンブラケット部19とを備えたクロスメンバ一体型トラニオンブラケットを採用し、前記クロスメンバ部16と前後の車軸1,2との間をVロッド22により夫々連結し且つ前記トラニオンブラケット部19の下端部の前後面と前記前後の車軸1,2の両端部下側との間を平行リンク式のロアロッド9により夫々連結して一つの構成単位にまとめ、トラニオン式サスペンション用モジュール28とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後輪2軸の大型トラック等に採用することが可能なトラニオン式サスペンション用モジュール及び該モジュールを用いたトラニオン式サスペンションの組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9〜図11はトラニオン式サスペンションと称されるタンデムアクスル専用のサスペンションを示すもので、前後にタンデム配置された一対の車軸1,2の間でトラニオンシャフト3をトラニオンブラケット4によりフレーム5に固定し、このトラニオンシャフト3にリーフスプリング6の中央部を回動ベース7を介し回動自在に取り付け、このリーフスプリング6の両端部により前記前後の車軸1,2を支えると共に、これら各車軸1,2の前後方向位置を保持するためのアッパロッド8及びロアロッド9を備えた構造となっている。
【0003】
ここで、トラニオンブラケット4がフレーム5に固定されている位置には、クロスメンバ10が左右のフレーム5の相互間に渡されて補強されるようにしてあり、このクロスメンバ10の中央部の前後面と前記各車軸1,2の中央部上側との間がアッパロッド8により夫々連結され、前記トラニオンブラケット4の下端部の前後面と前記各車軸1,2の両端部下側との間がロアロッド9により連結されている。
【0004】
この結果、斯かるトラニオン式サスペンションでは、前後の車軸1,2の上下動がリーフスプリング6により吸収され、前後方向の力はアッパロッド8及びロアロッド9を介してフレーム5に伝えられ、しかも、リーフスプリング6がトラニオンシャフト3を中心に回動することで良好な段差乗り越しが実現されることになる。
【0005】
尚、図中における符号の11はリーフスプリング6の中央部を回動ベース7上に装着するためのUボルト、12はクロスメンバ10の中央部の前後面に設けられたアッパロッド8の取付部、13は各車軸1,2の中央部上側に設けられたアッパロッド8の取付部、14はトラニオンブラケット4の下端部の前後面に設けられたロアロッド9の取付部、15は各車軸1,2の両端部下側に設けられたロアロッド9の取付部を示している。
【0006】
また、この種のトラニオン式サスペンションに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1,2等がある。
【特許文献1】特開平7−266818号公報
【特許文献2】実開平5−37511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、斯かる従来構造においては、図12及び図13に夫々示している通り、クロスメンバ10とトラニオンブラケット4がフレーム5に対し個別に組み付けられるようになっていたため、これらクロスメンバ10とトラニオンブラケット4をフレーム5に組み付けて位置決めした後からでないと、アッパロッド8及びロアロッド9を介して前後の車軸1,2を組み付けることができないという事情があり、フレーム5を基点として各種部材を順番に組み上げていく一連の作業行程が長くかかって作業負担が大きくなっていた。
【0008】
しかも、フレーム5に対するクロスメンバ10とトラニオンブラケット4の組み付け時に生じたバラツキによりクロスメンバ10とトラニオンブラケット4との相対関係にずれが生じ易く、これらクロスメンバ10とトラニオンブラケット4の夫々に対しアッパロッド8とロアロッド9により連結される各車軸1,2が、前後方向に傾斜したり車幅方向に横ずれしたりして本来の適正位置に配置されなくなる虞れがあった。
【0009】
このため、トラニオン式サスペンションの組み付け後には、前後の車軸1,2が適正位置に配置されるようにアッパロッド8やロアロッド9等の取り付け位置を調整し直すアライメント調整が必要となり、このアライメント調整に多大な手間と時間がかかってしまうことでも作業負担が大きくなっていた。
【0010】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、従来よりもトラニオン式サスペンションの組立作業を容易に行い得るようにして作業負担を大幅に軽減化し得るようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、左右のフレーム間を連結するクロスメンバ部と、該クロスメンバ部の両端部下面に下方に向かうにつれ車幅方向外側へ開くように一体成形され且つトラニオンシャフトを軸支するためのボス部を有する一対のトラニオンブラケット部とを備えたクロスメンバ一体型トラニオンブラケットを採用し、前記クロスメンバ部と前後の車軸との間をVロッドにより夫々連結し且つ前記トラニオンブラケット部の下端部の前後面と前記前後の車軸の両端部下側との間を平行リンク式のロアロッドにより夫々連結して一つの構成単位にまとめたことを特徴とするトラニオン式サスペンション用モジュール、に係るものである。
【0012】
而して、このようにすれば、フレームを介在させることなくクロスメンバ一体型トラニオンブラケットに対し前後の車軸をVロッド及びロアロッドにより連結して一つの構成単位にまとめたモジュールとすることが可能となるので、このモジュールを先行して作業性の良い環境下で組み立てておけば、このモジュールをフレームに対し組み付けるだけでトラニオン式サスペンションの主要構造が一度に組み上がることになり、従来の如きフレームを基点として各種部材を順番に組み上げていく一連の作業行程と比較して作業効率が向上し、トラニオン式サスペンションの組立作業に要する作業負担が大幅に軽減されることになる。
【0013】
更に、クロスメンバ部にトラニオンブラケット部を一体成形したクロスメンバ一体型トラニオンブラケットを採用したことにより、クロスメンバ部とトラニオンブラケット部との相対関係が不変となり、両者の相対関係に従来の如きずれが全く生じなくなるため、クロスメンバ部と前後の車軸との間をVロッドにより夫々連結すると、各車軸の車幅方向の位置が正確に決まり、また、トラニオンブラケット部の下端部の前後面と前後の車軸の両端部下側との間を平行リンク式のロアロッドにより夫々連結すると、各車軸の前後方向の位置が正確に決まることになる。
【0014】
この結果、各車軸が前後方向に傾斜したり車幅方向に横ずれしたりして本来の適正位置に配置されなくなる虞れが殆どなくなり、モジュールとして組み上げた段階でアライメント調整を殆ど行わなくて済むため、従来の如きアライメント調整に要していた手間と時間を不要として作業負担の更なる軽減化を図ることが可能となる。
【0015】
また、従来三つの部品に分割されていたクロスメンバと左右のトラニオンブラケットとがクロスメンバ一体型トラニオンブラケットとして一部品となったことによる組立工数の削減も作業負担の軽減に寄与することになる。
【0016】
更に、前述の如きトラニオン式サスペンション用モジュールを用いてトラニオン式サスペンションを組み立てる場合には、前記モジュールを先行して組み立て、該モジュールのクロスメンバ一体型トラニオンブラケットにおけるクロスメンバ部を左右からフレームで挟み込んで締結し、然る後、前記モジュールのクロスメンバ一体型トラニオンブラケットにおけるトラニオンブラケット部にリーフスプリングの中央部をトラニオンシャフトを介し回動自在に取り付け、前記リーフスプリングの両端部を前後の車軸の両端部上側に固定してトラニオン式サスペンションを完成させるようにすれば良い。
【発明の効果】
【0017】
上記した本発明のトラニオン式サスペンション用モジュール及び該モジュールを用いたトラニオン式サスペンションの組立方法によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0018】
(I)フレームを介在させることなくクロスメンバ一体型トラニオンブラケットに対し前後の車軸をVロッド及びロアロッドにより連結して一つの構成単位にまとめたモジュールとすることができるので、このモジュールをフレームに対し組み付けるだけでトラニオン式サスペンションの主要構造を一度に組み上げることができ、従来の如きフレームを基点として各種部材を順番に組み上げていく一連の作業行程と比較して作業負担を大幅に軽減することができる。
【0019】
(II)クロスメンバ部にトラニオンブラケット部を一体成形したことで両者の相対関係のずれをなくし、しかも、Vロッド及び平行リンク式のロアロッドによる連結で各車軸の車幅方向及び前後方向の位置を正確に決めることができるので、モジュールとして組み上げた段階でアライメント調整を殆ど不要とすることができ、この種のアライメント調整に要していた手間と時間を大幅に省いて作業負担の更なる軽減化を図ることができる。
【0020】
(III)従来三つの部品に分割されていたクロスメンバと左右のトラニオンブラケットとをクロスメンバ一体型トラニオンブラケットとして一部品とし、これによって、部品点数及び組立工数を大幅に削減することができるので、作業負担の更なる軽減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1〜図6は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図9〜図13と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0023】
本形態例においては、図1及び図2に示す如く、左右のフレーム5(図3参照)間を連結するクロスメンバ部16と、該クロスメンバ部16の両端部下面に下方に向かうにつれ車幅方向外側へ開くように一体成形され且つトラニオンシャフト17(図6参照)を軸支するためのボス部18を有する一対のトラニオンブラケット部19とによりクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20を構成している。
【0024】
即ち、このクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20は、従来のトラニオン式サスペンションにおけるクロスメンバとトラニオンブラケットとに換えて適用できるように一体成形の鋳造品として製造されたものである。
【0025】
ここで、従来のクロスメンバに相当するクロスメンバ部16は、その両端部にフレーム5(図3参照)のウェブに対しボルト締結し得るよう取付部21を備えており、しかも、その両端部がフレーム5のウェブに向かうに従い上面視で末広がり状を成すように形成されていて、前記各取付部21がフレーム5の長手方向に十分なスパンをとって配置されるようにしてある。
【0026】
更に、クロスメンバ部16の両端部の前後面には、後述するVロッド22(図3及び図5参照)の開き側端部を連結するための取付部23が車幅方向に対し傾斜面を成すように形成されており、また、各トラニオンブラケット部19の下端には、平行リンク式のロアロッド9(図3及び図4参照)の端部を連結するための取付部24が形成されている。
【0027】
しかも、前記クロスメンバ部16の中央部分には、各トラニオンブラケット部19上側の車幅方向内側部分19aの傾斜姿勢と連続するように山形にリブ25が形成されており、該各リブ25と前記各トラニオンブラケット部19上側の車幅方向内側部分19aと前記クロスメンバ部16の上部構造とが全体としてアーチ構造を成すように形成されている。
【0028】
尚、図1及び図2中における符号の26は、配管類や配線類を固定するための雌ネジ部であり、前述した如きクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20の一体成形時に一緒にボス部分を鋳造しておいてネジ切り加工を施したものである。
【0029】
図3〜図5は、このようなクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20を用いて実際にトラニオン式サスペンションを構成した場合を例示しており、前記クロスメンバ部16の両端部前後面の取付部23と前記各車軸1,2の中央部上側の取付部13との間がVロッド22により夫々連結され、前記トラニオンブラケット部19の下端部前後面の取付部24と前記各車軸1,2の両端部下側の取付部15との間が従来通りの平行リンク式のロアロッド9により夫々連結されている。
【0030】
また、前記クロスメンバ部16は、左右のフレーム5のウェブ間に渡されて該ウェブに対し取付部21を介してボルト締結されるようになっており、前記各トラニオンブラケット部19のボス部18には、車幅方向外側へ所要長さ張り出すトラニオンシャフト17が夫々嵌合設置され、該各トラニオンシャフト17の突出端には、リーフスプリング6の中央部が従来通りに回動ベース7を介し回動自在に取り付けられており、このリーフスプリング6の両端部が前後の車軸1,2の両端部上側に固定されるようにしてある。
【0031】
ここで、本形態例においては、トラニオンシャフト17が左右のトラニオンブラケット部19毎に個別に装備されていて、従来の如き車幅方向に亘る一本のトラニオンシャフトを共用する形式になっていないため、各トラニオンシャフト17を左右のトラニオンブラケット部19の間を連結するビームとして機能させることができない構造となっているが、その替わりに前記トラニオンブラケット部19のボス部18の周辺部位とその上側のフレーム5との間を補強プレート27により連結する形式を採用している。
【0032】
即ち、ここに図示している例では、トラニオンブラケット部19のボス部18を挟んだ前後二箇所と、該前後二箇所の直上に相当する夫々の位置から前後方向の互いに離反する向きにオフセットしたフレーム5上の適宜位置との間が二枚の補強プレート27(一枚に繋がったものでも可)により連結されており、しかも、前記フレーム5のウェブに対する補強プレート27の連結箇所の少なくとも一部がクロスメンバ部16の取付部21との共締めで締結されるようになっていて、図6に示す如く、各補強プレート27とフレーム5とクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20とにより強固なボックス構造が形成されるようにしてある。
【0033】
そして、本形態例においては、クロスメンバ一体型トラニオンブラケット20を採用してトラニオン式サスペンションを構成するにあたり、前記クロスメンバ部16の両端部前後面の取付部23と前記各車軸1,2の中央部上側の取付部13との間をVロッド22により夫々連結し且つ前記トラニオンブラケット部19の下端部前後面の取付部24と前記各車軸1,2の両端部下側の取付部15との間を従来通りの平行リンク式のロアロッド9により夫々連結して一つの構成単位にまとめ、これをトラニオン式サスペンションの主要構造を成すモジュールとして、フレーム5への組み付け作業に先行して組み立て得るようにしている。
【0034】
より具体的には、図7の(a)に示す如く、図示しない加工台上にセットされた前後の車軸1,2の両端部下側にロアロッド9の一端部を連結する一方、その上方位置からクロスメンバ部16の両端部前後面にVロッド22の開き側端部を連結したクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20を車両の定積状態に相当する位置まで降ろし、次いで、図7の(b)に示す如く、その定積状態のままVロッド22の閉じ側端部を各車軸1,2の両端部下側にロアロッド9の一端部を連結して各車軸1,2の車幅方向の位置決めを行い、更に、図7の(c)に示す如く、前記Vロッド22の連結後に前記ロアロッド9の他端部をトラニオンブラケット部19の下端部前後面に連結して各車軸1,2の前後方向の位置決めを行い、フレーム5を介在させずに各車軸1,2を適正位置に配置し得るようにしたモジュール28として完成させるようにしている。
【0035】
そして、このように先行して組み立てたモジュール28を用いてトラニオン式サスペンションを組み立てるにあたっては、図8の(a)に示す如く、前記モジュール28のクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20におけるクロスメンバ部16を左右からフレーム5で挟み込み、該フレーム5のウェブに対し取付部21(図1及び図2参照)を介しボルト締結し、然る後、図8の(b)に示す如く、フレーム5を上げた状態(又は車軸1,2側を下げた状態)として、リーフスプリング6を車幅方向外側から横移動させてトラニオンシャフト17を介し回動自在に取り付け、更に、図8の(c)に示す如く、フレーム5を下げた状態(又は車軸1,2側を上げた状態)に戻して前記リーフスプリング6の両端部を前後の車軸1,2の両端部上側に固定するようにすれば良い。
【0036】
而して、このようにすれば、フレーム5を介在させることなくクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20に対し前後の車軸1,2をVロッド22及びロアロッド9により連結して一つの構成単位にまとめたモジュール28とすることが可能となるので、このモジュール28を先行して作業性の良い環境下で組み立てておけば、このモジュール28をフレーム5に対し組み付けるだけでトラニオン式サスペンションの主要構造が一度に組み上がることになり、従来の如きフレーム5を基点として各種部材を順番に組み上げていく一連の作業行程と比較して作業効率が向上し、トラニオン式サスペンションの組立作業に要する作業負担が大幅に軽減されることになる。
【0037】
また、クロスメンバ部16にトラニオンブラケット部19を一体成形したクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20を採用したことにより、クロスメンバ部16とトラニオンブラケット部19との相対関係が不変となり、両者の相対関係に従来の如きずれが全く生じなくなるため、クロスメンバ部16の両端部の前後面と前後の車軸1,2の中央部上側との間をVロッド22により夫々連結すると、各車軸1,2の車幅方向の位置が正確に決まり、また、トラニオンブラケット部19の下端部の前後面と前後の車軸1,2の両端部下側との間を平行リンク式のロアロッド9により夫々連結すると、各車軸1,2の前後方向の位置が正確に決まることになる。
【0038】
この結果、各車軸1,2が前後方向に傾斜したり車幅方向に横ずれしたりして本来の適正位置に配置されなくなる虞れが殆どなくなり、モジュール28として組み上げた段階でアライメント調整を殆ど行わなくて済むため、従来の如きアライメント調整に要していた手間と時間を不要として作業負担の更なる軽減化を図ることが可能となる。
【0039】
また、従来三つの部品に分割されていたクロスメンバと左右のトラニオンブラケットとがクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20として一部品となったことによる組立工数の削減も作業負担の軽減に寄与することになる。
【0040】
従って、上記形態例によれば、フレーム5を介在させることなくクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20に対し前後の車軸1,2をVロッド22及びロアロッド9により連結して一つの構成単位にまとめたモジュール28とすることができるので、このモジュール28をフレーム5に対し組み付けるだけでトラニオン式サスペンションの主要構造を一度に組み上げることができ、従来の如きフレーム5を基点として各種部材を順番に組み上げていく一連の作業行程と比較して作業負担を大幅に軽減することができる。
【0041】
また、クロスメンバ部16にトラニオンブラケット部19を一体成形したことで両者の相対関係のずれをなくし、しかも、Vロッド22及び平行リンク式のロアロッド9による連結で各車軸1,2の車幅方向及び前後方向の位置を正確に決めることができるので、モジュール28として組み上げた段階でアライメント調整を殆ど不要とすることができ、この種のアライメント調整に要していた手間と時間を大幅に省いて作業負担の更なる軽減化を図ることができる。
【0042】
更に、従来三つの部品に分割されていたクロスメンバと左右のトラニオンブラケットとをクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20として一部品とし、これによって、部品点数及び組立工数を大幅に削減することができるので、作業負担の更なる軽減化を図ることができる。
【0043】
尚、本発明のトラニオン式サスペンション用モジュール及び該モジュールを用いたトラニオン式サスペンションの組立方法は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】本形態例のトラニオン式サスペンションへの適用例を示す斜視図である。
【図4】図3のトラニオン式サスペンションの側面図である。
【図5】図4のV−V方向の矢視図である。
【図6】補強プレートの取り付け状態を説明する拡大図である。
【図7】本形態例のモジュールの組立手順を説明する概略図である。
【図8】本形態例のトラニオン式サスペンションの組立手順を説明する概略図である。
【図9】一般的なトラニオン式サスペンションの構造を示す側面図である。
【図10】図9の斜視図である。
【図11】図10の要部の分解図である。
【図12】従来のクロスメンバの詳細を示す斜視図である。
【図13】従来のトラニオンブラケットの詳細を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 車軸
2 車軸
5 フレーム
6 リーフスプリング
9 ロアロッド
16 クロスメンバ部
17 トラニオンシャフト
19 トラニオンブラケット部
20 クロスメンバ一体型トラニオンブラケット
22 Vロッド
28 モジュール
【技術分野】
【0001】
本発明は、後輪2軸の大型トラック等に採用することが可能なトラニオン式サスペンション用モジュール及び該モジュールを用いたトラニオン式サスペンションの組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9〜図11はトラニオン式サスペンションと称されるタンデムアクスル専用のサスペンションを示すもので、前後にタンデム配置された一対の車軸1,2の間でトラニオンシャフト3をトラニオンブラケット4によりフレーム5に固定し、このトラニオンシャフト3にリーフスプリング6の中央部を回動ベース7を介し回動自在に取り付け、このリーフスプリング6の両端部により前記前後の車軸1,2を支えると共に、これら各車軸1,2の前後方向位置を保持するためのアッパロッド8及びロアロッド9を備えた構造となっている。
【0003】
ここで、トラニオンブラケット4がフレーム5に固定されている位置には、クロスメンバ10が左右のフレーム5の相互間に渡されて補強されるようにしてあり、このクロスメンバ10の中央部の前後面と前記各車軸1,2の中央部上側との間がアッパロッド8により夫々連結され、前記トラニオンブラケット4の下端部の前後面と前記各車軸1,2の両端部下側との間がロアロッド9により連結されている。
【0004】
この結果、斯かるトラニオン式サスペンションでは、前後の車軸1,2の上下動がリーフスプリング6により吸収され、前後方向の力はアッパロッド8及びロアロッド9を介してフレーム5に伝えられ、しかも、リーフスプリング6がトラニオンシャフト3を中心に回動することで良好な段差乗り越しが実現されることになる。
【0005】
尚、図中における符号の11はリーフスプリング6の中央部を回動ベース7上に装着するためのUボルト、12はクロスメンバ10の中央部の前後面に設けられたアッパロッド8の取付部、13は各車軸1,2の中央部上側に設けられたアッパロッド8の取付部、14はトラニオンブラケット4の下端部の前後面に設けられたロアロッド9の取付部、15は各車軸1,2の両端部下側に設けられたロアロッド9の取付部を示している。
【0006】
また、この種のトラニオン式サスペンションに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1,2等がある。
【特許文献1】特開平7−266818号公報
【特許文献2】実開平5−37511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、斯かる従来構造においては、図12及び図13に夫々示している通り、クロスメンバ10とトラニオンブラケット4がフレーム5に対し個別に組み付けられるようになっていたため、これらクロスメンバ10とトラニオンブラケット4をフレーム5に組み付けて位置決めした後からでないと、アッパロッド8及びロアロッド9を介して前後の車軸1,2を組み付けることができないという事情があり、フレーム5を基点として各種部材を順番に組み上げていく一連の作業行程が長くかかって作業負担が大きくなっていた。
【0008】
しかも、フレーム5に対するクロスメンバ10とトラニオンブラケット4の組み付け時に生じたバラツキによりクロスメンバ10とトラニオンブラケット4との相対関係にずれが生じ易く、これらクロスメンバ10とトラニオンブラケット4の夫々に対しアッパロッド8とロアロッド9により連結される各車軸1,2が、前後方向に傾斜したり車幅方向に横ずれしたりして本来の適正位置に配置されなくなる虞れがあった。
【0009】
このため、トラニオン式サスペンションの組み付け後には、前後の車軸1,2が適正位置に配置されるようにアッパロッド8やロアロッド9等の取り付け位置を調整し直すアライメント調整が必要となり、このアライメント調整に多大な手間と時間がかかってしまうことでも作業負担が大きくなっていた。
【0010】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、従来よりもトラニオン式サスペンションの組立作業を容易に行い得るようにして作業負担を大幅に軽減化し得るようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、左右のフレーム間を連結するクロスメンバ部と、該クロスメンバ部の両端部下面に下方に向かうにつれ車幅方向外側へ開くように一体成形され且つトラニオンシャフトを軸支するためのボス部を有する一対のトラニオンブラケット部とを備えたクロスメンバ一体型トラニオンブラケットを採用し、前記クロスメンバ部と前後の車軸との間をVロッドにより夫々連結し且つ前記トラニオンブラケット部の下端部の前後面と前記前後の車軸の両端部下側との間を平行リンク式のロアロッドにより夫々連結して一つの構成単位にまとめたことを特徴とするトラニオン式サスペンション用モジュール、に係るものである。
【0012】
而して、このようにすれば、フレームを介在させることなくクロスメンバ一体型トラニオンブラケットに対し前後の車軸をVロッド及びロアロッドにより連結して一つの構成単位にまとめたモジュールとすることが可能となるので、このモジュールを先行して作業性の良い環境下で組み立てておけば、このモジュールをフレームに対し組み付けるだけでトラニオン式サスペンションの主要構造が一度に組み上がることになり、従来の如きフレームを基点として各種部材を順番に組み上げていく一連の作業行程と比較して作業効率が向上し、トラニオン式サスペンションの組立作業に要する作業負担が大幅に軽減されることになる。
【0013】
更に、クロスメンバ部にトラニオンブラケット部を一体成形したクロスメンバ一体型トラニオンブラケットを採用したことにより、クロスメンバ部とトラニオンブラケット部との相対関係が不変となり、両者の相対関係に従来の如きずれが全く生じなくなるため、クロスメンバ部と前後の車軸との間をVロッドにより夫々連結すると、各車軸の車幅方向の位置が正確に決まり、また、トラニオンブラケット部の下端部の前後面と前後の車軸の両端部下側との間を平行リンク式のロアロッドにより夫々連結すると、各車軸の前後方向の位置が正確に決まることになる。
【0014】
この結果、各車軸が前後方向に傾斜したり車幅方向に横ずれしたりして本来の適正位置に配置されなくなる虞れが殆どなくなり、モジュールとして組み上げた段階でアライメント調整を殆ど行わなくて済むため、従来の如きアライメント調整に要していた手間と時間を不要として作業負担の更なる軽減化を図ることが可能となる。
【0015】
また、従来三つの部品に分割されていたクロスメンバと左右のトラニオンブラケットとがクロスメンバ一体型トラニオンブラケットとして一部品となったことによる組立工数の削減も作業負担の軽減に寄与することになる。
【0016】
更に、前述の如きトラニオン式サスペンション用モジュールを用いてトラニオン式サスペンションを組み立てる場合には、前記モジュールを先行して組み立て、該モジュールのクロスメンバ一体型トラニオンブラケットにおけるクロスメンバ部を左右からフレームで挟み込んで締結し、然る後、前記モジュールのクロスメンバ一体型トラニオンブラケットにおけるトラニオンブラケット部にリーフスプリングの中央部をトラニオンシャフトを介し回動自在に取り付け、前記リーフスプリングの両端部を前後の車軸の両端部上側に固定してトラニオン式サスペンションを完成させるようにすれば良い。
【発明の効果】
【0017】
上記した本発明のトラニオン式サスペンション用モジュール及び該モジュールを用いたトラニオン式サスペンションの組立方法によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0018】
(I)フレームを介在させることなくクロスメンバ一体型トラニオンブラケットに対し前後の車軸をVロッド及びロアロッドにより連結して一つの構成単位にまとめたモジュールとすることができるので、このモジュールをフレームに対し組み付けるだけでトラニオン式サスペンションの主要構造を一度に組み上げることができ、従来の如きフレームを基点として各種部材を順番に組み上げていく一連の作業行程と比較して作業負担を大幅に軽減することができる。
【0019】
(II)クロスメンバ部にトラニオンブラケット部を一体成形したことで両者の相対関係のずれをなくし、しかも、Vロッド及び平行リンク式のロアロッドによる連結で各車軸の車幅方向及び前後方向の位置を正確に決めることができるので、モジュールとして組み上げた段階でアライメント調整を殆ど不要とすることができ、この種のアライメント調整に要していた手間と時間を大幅に省いて作業負担の更なる軽減化を図ることができる。
【0020】
(III)従来三つの部品に分割されていたクロスメンバと左右のトラニオンブラケットとをクロスメンバ一体型トラニオンブラケットとして一部品とし、これによって、部品点数及び組立工数を大幅に削減することができるので、作業負担の更なる軽減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1〜図6は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図9〜図13と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0023】
本形態例においては、図1及び図2に示す如く、左右のフレーム5(図3参照)間を連結するクロスメンバ部16と、該クロスメンバ部16の両端部下面に下方に向かうにつれ車幅方向外側へ開くように一体成形され且つトラニオンシャフト17(図6参照)を軸支するためのボス部18を有する一対のトラニオンブラケット部19とによりクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20を構成している。
【0024】
即ち、このクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20は、従来のトラニオン式サスペンションにおけるクロスメンバとトラニオンブラケットとに換えて適用できるように一体成形の鋳造品として製造されたものである。
【0025】
ここで、従来のクロスメンバに相当するクロスメンバ部16は、その両端部にフレーム5(図3参照)のウェブに対しボルト締結し得るよう取付部21を備えており、しかも、その両端部がフレーム5のウェブに向かうに従い上面視で末広がり状を成すように形成されていて、前記各取付部21がフレーム5の長手方向に十分なスパンをとって配置されるようにしてある。
【0026】
更に、クロスメンバ部16の両端部の前後面には、後述するVロッド22(図3及び図5参照)の開き側端部を連結するための取付部23が車幅方向に対し傾斜面を成すように形成されており、また、各トラニオンブラケット部19の下端には、平行リンク式のロアロッド9(図3及び図4参照)の端部を連結するための取付部24が形成されている。
【0027】
しかも、前記クロスメンバ部16の中央部分には、各トラニオンブラケット部19上側の車幅方向内側部分19aの傾斜姿勢と連続するように山形にリブ25が形成されており、該各リブ25と前記各トラニオンブラケット部19上側の車幅方向内側部分19aと前記クロスメンバ部16の上部構造とが全体としてアーチ構造を成すように形成されている。
【0028】
尚、図1及び図2中における符号の26は、配管類や配線類を固定するための雌ネジ部であり、前述した如きクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20の一体成形時に一緒にボス部分を鋳造しておいてネジ切り加工を施したものである。
【0029】
図3〜図5は、このようなクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20を用いて実際にトラニオン式サスペンションを構成した場合を例示しており、前記クロスメンバ部16の両端部前後面の取付部23と前記各車軸1,2の中央部上側の取付部13との間がVロッド22により夫々連結され、前記トラニオンブラケット部19の下端部前後面の取付部24と前記各車軸1,2の両端部下側の取付部15との間が従来通りの平行リンク式のロアロッド9により夫々連結されている。
【0030】
また、前記クロスメンバ部16は、左右のフレーム5のウェブ間に渡されて該ウェブに対し取付部21を介してボルト締結されるようになっており、前記各トラニオンブラケット部19のボス部18には、車幅方向外側へ所要長さ張り出すトラニオンシャフト17が夫々嵌合設置され、該各トラニオンシャフト17の突出端には、リーフスプリング6の中央部が従来通りに回動ベース7を介し回動自在に取り付けられており、このリーフスプリング6の両端部が前後の車軸1,2の両端部上側に固定されるようにしてある。
【0031】
ここで、本形態例においては、トラニオンシャフト17が左右のトラニオンブラケット部19毎に個別に装備されていて、従来の如き車幅方向に亘る一本のトラニオンシャフトを共用する形式になっていないため、各トラニオンシャフト17を左右のトラニオンブラケット部19の間を連結するビームとして機能させることができない構造となっているが、その替わりに前記トラニオンブラケット部19のボス部18の周辺部位とその上側のフレーム5との間を補強プレート27により連結する形式を採用している。
【0032】
即ち、ここに図示している例では、トラニオンブラケット部19のボス部18を挟んだ前後二箇所と、該前後二箇所の直上に相当する夫々の位置から前後方向の互いに離反する向きにオフセットしたフレーム5上の適宜位置との間が二枚の補強プレート27(一枚に繋がったものでも可)により連結されており、しかも、前記フレーム5のウェブに対する補強プレート27の連結箇所の少なくとも一部がクロスメンバ部16の取付部21との共締めで締結されるようになっていて、図6に示す如く、各補強プレート27とフレーム5とクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20とにより強固なボックス構造が形成されるようにしてある。
【0033】
そして、本形態例においては、クロスメンバ一体型トラニオンブラケット20を採用してトラニオン式サスペンションを構成するにあたり、前記クロスメンバ部16の両端部前後面の取付部23と前記各車軸1,2の中央部上側の取付部13との間をVロッド22により夫々連結し且つ前記トラニオンブラケット部19の下端部前後面の取付部24と前記各車軸1,2の両端部下側の取付部15との間を従来通りの平行リンク式のロアロッド9により夫々連結して一つの構成単位にまとめ、これをトラニオン式サスペンションの主要構造を成すモジュールとして、フレーム5への組み付け作業に先行して組み立て得るようにしている。
【0034】
より具体的には、図7の(a)に示す如く、図示しない加工台上にセットされた前後の車軸1,2の両端部下側にロアロッド9の一端部を連結する一方、その上方位置からクロスメンバ部16の両端部前後面にVロッド22の開き側端部を連結したクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20を車両の定積状態に相当する位置まで降ろし、次いで、図7の(b)に示す如く、その定積状態のままVロッド22の閉じ側端部を各車軸1,2の両端部下側にロアロッド9の一端部を連結して各車軸1,2の車幅方向の位置決めを行い、更に、図7の(c)に示す如く、前記Vロッド22の連結後に前記ロアロッド9の他端部をトラニオンブラケット部19の下端部前後面に連結して各車軸1,2の前後方向の位置決めを行い、フレーム5を介在させずに各車軸1,2を適正位置に配置し得るようにしたモジュール28として完成させるようにしている。
【0035】
そして、このように先行して組み立てたモジュール28を用いてトラニオン式サスペンションを組み立てるにあたっては、図8の(a)に示す如く、前記モジュール28のクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20におけるクロスメンバ部16を左右からフレーム5で挟み込み、該フレーム5のウェブに対し取付部21(図1及び図2参照)を介しボルト締結し、然る後、図8の(b)に示す如く、フレーム5を上げた状態(又は車軸1,2側を下げた状態)として、リーフスプリング6を車幅方向外側から横移動させてトラニオンシャフト17を介し回動自在に取り付け、更に、図8の(c)に示す如く、フレーム5を下げた状態(又は車軸1,2側を上げた状態)に戻して前記リーフスプリング6の両端部を前後の車軸1,2の両端部上側に固定するようにすれば良い。
【0036】
而して、このようにすれば、フレーム5を介在させることなくクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20に対し前後の車軸1,2をVロッド22及びロアロッド9により連結して一つの構成単位にまとめたモジュール28とすることが可能となるので、このモジュール28を先行して作業性の良い環境下で組み立てておけば、このモジュール28をフレーム5に対し組み付けるだけでトラニオン式サスペンションの主要構造が一度に組み上がることになり、従来の如きフレーム5を基点として各種部材を順番に組み上げていく一連の作業行程と比較して作業効率が向上し、トラニオン式サスペンションの組立作業に要する作業負担が大幅に軽減されることになる。
【0037】
また、クロスメンバ部16にトラニオンブラケット部19を一体成形したクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20を採用したことにより、クロスメンバ部16とトラニオンブラケット部19との相対関係が不変となり、両者の相対関係に従来の如きずれが全く生じなくなるため、クロスメンバ部16の両端部の前後面と前後の車軸1,2の中央部上側との間をVロッド22により夫々連結すると、各車軸1,2の車幅方向の位置が正確に決まり、また、トラニオンブラケット部19の下端部の前後面と前後の車軸1,2の両端部下側との間を平行リンク式のロアロッド9により夫々連結すると、各車軸1,2の前後方向の位置が正確に決まることになる。
【0038】
この結果、各車軸1,2が前後方向に傾斜したり車幅方向に横ずれしたりして本来の適正位置に配置されなくなる虞れが殆どなくなり、モジュール28として組み上げた段階でアライメント調整を殆ど行わなくて済むため、従来の如きアライメント調整に要していた手間と時間を不要として作業負担の更なる軽減化を図ることが可能となる。
【0039】
また、従来三つの部品に分割されていたクロスメンバと左右のトラニオンブラケットとがクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20として一部品となったことによる組立工数の削減も作業負担の軽減に寄与することになる。
【0040】
従って、上記形態例によれば、フレーム5を介在させることなくクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20に対し前後の車軸1,2をVロッド22及びロアロッド9により連結して一つの構成単位にまとめたモジュール28とすることができるので、このモジュール28をフレーム5に対し組み付けるだけでトラニオン式サスペンションの主要構造を一度に組み上げることができ、従来の如きフレーム5を基点として各種部材を順番に組み上げていく一連の作業行程と比較して作業負担を大幅に軽減することができる。
【0041】
また、クロスメンバ部16にトラニオンブラケット部19を一体成形したことで両者の相対関係のずれをなくし、しかも、Vロッド22及び平行リンク式のロアロッド9による連結で各車軸1,2の車幅方向及び前後方向の位置を正確に決めることができるので、モジュール28として組み上げた段階でアライメント調整を殆ど不要とすることができ、この種のアライメント調整に要していた手間と時間を大幅に省いて作業負担の更なる軽減化を図ることができる。
【0042】
更に、従来三つの部品に分割されていたクロスメンバと左右のトラニオンブラケットとをクロスメンバ一体型トラニオンブラケット20として一部品とし、これによって、部品点数及び組立工数を大幅に削減することができるので、作業負担の更なる軽減化を図ることができる。
【0043】
尚、本発明のトラニオン式サスペンション用モジュール及び該モジュールを用いたトラニオン式サスペンションの組立方法は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】本形態例のトラニオン式サスペンションへの適用例を示す斜視図である。
【図4】図3のトラニオン式サスペンションの側面図である。
【図5】図4のV−V方向の矢視図である。
【図6】補強プレートの取り付け状態を説明する拡大図である。
【図7】本形態例のモジュールの組立手順を説明する概略図である。
【図8】本形態例のトラニオン式サスペンションの組立手順を説明する概略図である。
【図9】一般的なトラニオン式サスペンションの構造を示す側面図である。
【図10】図9の斜視図である。
【図11】図10の要部の分解図である。
【図12】従来のクロスメンバの詳細を示す斜視図である。
【図13】従来のトラニオンブラケットの詳細を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 車軸
2 車軸
5 フレーム
6 リーフスプリング
9 ロアロッド
16 クロスメンバ部
17 トラニオンシャフト
19 トラニオンブラケット部
20 クロスメンバ一体型トラニオンブラケット
22 Vロッド
28 モジュール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のフレーム間を連結するクロスメンバ部と、該クロスメンバ部の両端部下面に下方に向かうにつれ車幅方向外側へ開くように一体成形され且つトラニオンシャフトを軸支するためのボス部を有する一対のトラニオンブラケット部とを備えたクロスメンバ一体型トラニオンブラケットを採用し、前記クロスメンバ部と前後の車軸との間をVロッドにより夫々連結し且つ前記トラニオンブラケット部の下端部の前後面と前記前後の車軸の両端部下側との間を平行リンク式のロアロッドにより夫々連結して一つの構成単位にまとめたことを特徴とするトラニオン式サスペンション用モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のトラニオン式サスペンション用モジュールを先行して組み立て、該モジュールのクロスメンバ一体型トラニオンブラケットにおけるクロスメンバ部を左右からフレームで挟み込んで締結し、然る後、前記モジュールのクロスメンバ一体型トラニオンブラケットにおけるトラニオンブラケット部にリーフスプリングの中央部をトラニオンシャフトを介し回動自在に取り付け、前記リーフスプリングの両端部を前後の車軸の両端部上側に固定することを特徴とするトラニオン式サスペンションの組立方法。
【請求項1】
左右のフレーム間を連結するクロスメンバ部と、該クロスメンバ部の両端部下面に下方に向かうにつれ車幅方向外側へ開くように一体成形され且つトラニオンシャフトを軸支するためのボス部を有する一対のトラニオンブラケット部とを備えたクロスメンバ一体型トラニオンブラケットを採用し、前記クロスメンバ部と前後の車軸との間をVロッドにより夫々連結し且つ前記トラニオンブラケット部の下端部の前後面と前記前後の車軸の両端部下側との間を平行リンク式のロアロッドにより夫々連結して一つの構成単位にまとめたことを特徴とするトラニオン式サスペンション用モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のトラニオン式サスペンション用モジュールを先行して組み立て、該モジュールのクロスメンバ一体型トラニオンブラケットにおけるクロスメンバ部を左右からフレームで挟み込んで締結し、然る後、前記モジュールのクロスメンバ一体型トラニオンブラケットにおけるトラニオンブラケット部にリーフスプリングの中央部をトラニオンシャフトを介し回動自在に取り付け、前記リーフスプリングの両端部を前後の車軸の両端部上側に固定することを特徴とするトラニオン式サスペンションの組立方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−52539(P2010−52539A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218467(P2008−218467)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】
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