説明

トランス−9,10−デヒドロエポチロンCおよびD、それらのアナログ、ならびにそれらを作製する方法

【課題】本発明は、インビトロで細胞性過剰増殖を阻害および/または微小管を安定化する、およびインビボでの過剰増殖性疾患の処置することを目的とする。
【解決手段】本発明は、新規なトランス−9,10−デヒドロエポチロンCおよびトランス−9,10−デヒドロエポチロンDベースの誘導体化合物、組成物および方法を提供する。また、当該化合物を作製する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、トランス−9,10−デヒドロエポチロンCおよびD、ならびにそれらのアナログを作製するための方法に関し、そして当該方法により作製される化合物、当該化合物を含む組成物、および過剰増殖性疾患の処置のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
エポチロンとして知られるポリケチドのクラスは、パクリタキセルに類似の作用形態を有する、治療可能性のある化合物の供給源として現れた(Bollagら,Cancer Res.55:2325−2333(1995);Service,Science 274(5295):2009(1996);CowdenおよびPaterson,Nature 387(6630):238−9(1997))。エポチロンおよびエポチロンアナログにおける関心は、特定のエポチロンが、パクリタキセルに対して耐性を発現した腫瘍に対して活性であること、ならびに望ましくない副作用に関する可能性を減少したことの所見と共に増大している(MuhlradtおよびSasse Cancer Res.57(16):3344−6(1997))。治療効力について調べられているエポチロンおよびエポチロンアナログの中には、エポチロンB 1および半合成エポチロンBアナログ、BMS−247550 2(「アザエポチロンB」としても知られる)(Colevasら,Oncology(Huntingt).15(9):1168−9,1172−5(2001);Leeら,Clin Cancer Res.7(5):1429−37(2001);McDaidら,Clin Cancer Res.8(7):2035−43(2002);Yamaguchiら,Cancer Res.62(2):466−71(2002))およびBMS−310705 3がある。
【0003】
【化1】

【0004】
【化2】

デスオキシエポチロンB 4(「エポチロンD」としても知られる)は、治療効力について調べられている、有望な抗腫瘍特性を有する別のエポチロン誘導体(すなわち、パクリタキセル)である。この化合物はまた、12,13−エポキシドを有するエポチロン(例えば、エポチロンBまたはBMS−247550)よりも毒性を示さなかった。これは、おそらく、高い反応性のエポキシド部分の欠如に起因する。
【0005】
【化3】

化学的および生物工学的経路を用いる9−オキソ−エポチロンアナログ(9−オキソ−エポチロンDおよびそのアナログを含む)の生成が、近年、国際PCT出願公開番号WO 01/83800(2001年11月8日公開)において開示された。
【0006】
近年、トランス−9,10−デヒドロエポチロンD(5)および26−トリフルオロ−トランス−9,10−デヒドロエポチロン D(6)の合成および予備評価が報告された(Rivkinら,J.Am.Chem.Soc.2003,125:2899−2901)。5の調製に関する初期報告は、間違っていることが判明している(Whiteら,J.Am.Chem.Soc.2001,123:5407−13;Whiteら,J.Am.Chem.Soc.2003,125:3190)。これらの化合物は有望な活性を示すが、全てが化学合成によるそれらの調製は長たらしく、かつ費用がかかり、それらの調製についての改善法が必要とされている。
【0007】
【化4】

抗腫瘍活性を有する種々のエポチロンアナログが当該分野で開示されているが、パクリタキセルまたはエポチロンAおよびBよりも示す副作用が少ない、微小管安定化活性を有する新規なアナログにおいて、関心が持たれ続けられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
1つの局面では、本発明は、微小管安定化活性を有し、かつ癌および細胞過剰増殖によって特徴付けられる他の疾患の処置において有用な新規な化合物であって、以下の式(I)の化合物、およびそれらの薬学的に受容可能な塩もしくはプロドラッグを提供する:
【0009】
【化5】

ここでRは、H、置換されたもしくは置換されていない低級アルキルであり;
は、Hであるか、または置換されたもしくは置換されていない低級アルキル、低級アルケニル、もしくは低級アルキニルであり;
Arは、置換されたもしくは置換されていないヘテロアリールであり;
但し、Rがメチルまたはトリフルオロメチルであり、そしてArが
【0010】
【化6】

である場合、RはHではない。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態では、Arは、
【0012】
【化7】

であり、これは、以下の式(II)の化合物を形成する:
【0013】
【化8】

ここで、Xは、SまたはOであり、そしてRは、Hまたは置換されたもしくは置換されていない低級アルキルである。他の実施形態では、Arは、以下のような他の置換されたもしくは置換されていない部分(例えば、置換されたもしくは置換されていないチアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリル、キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、ベンゾチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾトリアゾリルなど)であり得る。本発明の現在特に好ましい、および新規な化合物は、式(I)の化合物であって、ここでRがメチルまたはトリフルオロメチルであり、そしてArが2−ピリジル、4−メトキシ−2−ピリジル、5−(ヒドロキシメチル)−2−ピリジル、または5−メチル−3−イソキサゾリルである、化合物である。
【0014】
別の局面では、本発明はさらに、本発明の化合物を、それらに投与される場合にヒトまたは動物被験体において細胞過剰増殖を阻害および/またはチューブリン活性を破壊するのに有効な量で、薬学的に受容可能なキャリアと共に含む、組成物、ならびにヒトまたは動物被験体において細胞過剰増殖を阻害および/またはチューブリン活性を破壊する方法であって、当該ヒトまたは動物被験体に、細胞過剰増殖を阻害するかまたはチューブリン活性を破壊する量の本発明の化合物または組成物を投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0015】
別の局面では、本発明は、9−オキソ−エポチロンCまたはDから本発明の化合物を合成する方法を提供する。また、本発明には、上述のような本発明の化合物または組成物でコーティングされたステント、およびこのようなコーティングされたステントを用いて心血管疾患を処置する方法もまた包含される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
特定のトランス−9,10−デヒドロエポチロンCおよびトランス−9,10−デヒドロエポチロンDベースの誘導体によって、チューブリン活性がインビトロまたはインビボで破壊され得ることが、いまや驚くべきことに発見された。従って、本発明は、インビトロで細胞過剰増殖を阻害および/または微小管を安定化する、およびインビボでの過剰増殖性疾患の処置の、新規な化合物、組成物および方法を提供する。1つの局面では、本発明は、以下の式(I)の新規化合物、およびそれらの薬学的に受容可能な塩もしくはプロドラッグを提供する:
【0017】
【化9】

ここで、Rは、Hであるか、または置換されたもしくは置換されていない低級アルキルであり;
は、Hであるか、または置換されたもしくは置換されていない低級アルキル、低級アルケニル、もしくは低級アルキニルであり;そして
Arは、置換されたもしくは置換されていないヘテロアリールであり;
但し、Rがメチルまたはトリフルオロメチルであり、そしてArが
【0018】
【化10】

である場合、RはHではない。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態では、Arは、
【0020】
【化11】

であり、これは、以下の式(II)の化合物を形成する:
【0021】
【化12】

ここで、Xは、SまたはOであり、そしてRは、Hであるか、または置換されたもしくは置換されていない低級アルキルであり、但し、Rがメチルまたはトリフルオロメチルであり、XがSであり、そしてRがメチルである場合、RはHではない。特定の実施形態では、Rは、置換されたメチルである。特定の実施形態では、Rは、ヒドロキシメチル、アミノメチル、アルキルアミノメチル、ジアルキエルアミノメチル、アジドメチル、またはフルオロメチルである。
【0022】
上記のチアゾリルおよびオキサゾリル部分に加えて、Arは、チアゾリルまたはオキサゾリル以外に、以下のような置換されたもしくは置換されていないヘテロアリール部分(例えば、置換されたもしくは置換されていないイミダゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリル、キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、ベンゾチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾトリアゾリルなど)であり得る。
【0023】
本発明の1つの実施形態では、式(I)の化合物であって、ここでArが、置換されたもしくは置換されていない2−ピリジルである、化合物が提供される。
【0024】
本発明の1つの実施形態では、式(I)の化合物であって、ここでArが、置換されたもしくは置換されていない3−イソキサゾリルである、化合物が提供される。
【0025】
本発明の1つの実施形態では、式(I)の化合物であって、ここでArが、置換されたもしくは置換されていない2−キノリルである、化合物が提供される。
【0026】
本発明の1つの実施形態では、式(I)の化合物であって、ここでArが、置換されたもしくは置換されていない2−ベンゾキサゾリルである、化合物が提供される。
【0027】
本発明の1つの実施形態では、式(I)または(II)の化合物であって、ここでRがHであり、そしてRがHまたはC−Cアルキルである、化合物が、提供される。
【0028】
本発明の別の実施形態では、式(I)または(II)の化合物であって、ここでRがCHであり、そしてRがHまたはC−Cアルキルである、化合物が、提供される。
【0029】
本発明の別の実施形態では、式(I)または(II)の化合物であって、ここでRがHであり、そしてRがHまたはC−Cアルケニルである、化合物が、提供される。
【0030】
本発明の別の実施形態では、式(I)または(II)の化合物であって、ここでRがCHであり、そしてRがHまたはC−Cアルケニルである、化合物が、提供される。
【0031】
本発明の別の実施形態では、式(I)または(II)の化合物であって、ここでRがHであり、そしてRがHまたはC−Cアルキニルである、化合物が、提供される。
【0032】
本発明の別の実施形態では、式(I)または(II)の化合物であって、ここでRがCHであり、そしてRがHまたはC−Cアルキニルである、化合物が、提供される。
【0033】
他の実施形態では、本発明は、以下の構造を有する、式(I)の化合物を提供する:
【0034】
【化13】

【0035】
【化14】

本発明の別の実施形態では、構造(III)に示されるようなトランス−9,10−デヒドロエポチロンC(構造(II)の化合物であって、ここでXがSであり、RがHであり、そしてRがHである、化合物)および構造(IV)に示されるようなトランス−9,10−デヒドロエポチロンD(構造(II)の化合物であって、ここでXがSであり、Rがメチルであり、そしてRがHである、化合物)が提供される:
【0036】
【化15】

別の局面では、本発明は、式(I)、(II)、(III)、または(IV)の化合物を、ヒトまたは動物被験体に投与される場合にヒトまたは動物被験体において細胞過剰増殖を阻害および/またはチューブリン活性を破壊するのに有効な量で、薬学的に受容可能なキャリアと共に含む、組成物を提供する。
【0037】
なお他の実施形態では、本発明は、ヒトまたは動物被験体において細胞過剰増殖を阻害および/またはチューブリン活性を破壊する方法であって、当該ヒトまたは動物被験体に、チューブリン活性を破壊する量の式(I)、(II)、(III)、または(IV)の化合物を投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0038】
本発明はさらに、過剰増殖性疾患(例えば、癌)を罹患するヒトまたは動物被験体を処置する方法であって、当該ヒトまたは動物被験体に、治療有効量の上記式(I)、(II)、(III)、または(IV)の化合物を、単独または他の治療活性剤と組み合わせて投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0039】
本発明の他の実施形態は、本発明の化合物でコーティングされたステント、およびこのようなコーティングされたステントを用いて心血管疾患を処置するための方法を包含する。
【0040】
なお他の実施形態では、本発明は、製剤としての使用のための、上記のような式(I)、(II)、(III)、または(IV)の化合物、ならびに過剰増殖性疾患の処置のための医薬品の製造におけるこれら化合物の使用の方法を提供する。
【0041】
本発明の他の実施形態は、本発明の化合物または組成物でコーティングされたステント、およびこのようなコーティングされたステントを用いて心血管疾患を処置するための方法を包含する。
【0042】
なお他の実施形態では、本発明は、本明細書中以降に詳述するように、式(I)、(II)、(III)、または(IV)の化合物を作製するための新規方法を提供する。
【0043】
上記および本明細書中の他の箇所で使用されるように、以下の用語は、以下に定義するような意味を有する:
本明細書中で使用される「低級アルキル」とは、1〜10の炭素原子、好ましくは1〜6の炭素原子、およびよりずっと好ましくは1〜4の炭素原子(C−Cアルキル)を含む、分枝状または直鎖状のアルキル基をいう。
【0044】
「低級アルケニル」とは、本明細書中で、1つ以上の二重結合、および2〜10の炭素原子、好ましくは2〜6の炭素原子、およびよりずっと好ましくは2〜4の炭素原子(C−Cアルケニル)を有する、直鎖状、分枝状、または環状の基をいう。
【0045】
「低級アルキニル」とは、本明細書中で、1つ以上の三重結合、および2〜10の炭素原子、好ましくは2〜6の炭素原子、およびよりずっと好ましくは2〜4の炭素原子(C−Cアルキニル)を有する、直鎖状、分枝状、または環状の基をいう。
【0046】
本明細書中で定義される低級アルキル、低級アルケニル、または低級アルキニル部分は、置換されていても置換されていなくてもよい。従って、本明細書中で使用される用語「置換されたもしくは置換されていない低級アルキル、低級アルケニル、もしくは低級アルキニル」は、これらの部分のいずれかが、置換されていなくても、または例えば、1つ以上のハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、アジド、または他の基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、ネオペンチル、トリフルオロメチル、ヒドロキシメチル、アミノメチル、アジドメチル、ペンタフルオロエチルなどを含む)で置換されていてもよいことを意味する。
【0047】
本明細書中で使用される「ヘテロアリール」とは、窒素、酸素、または硫黄からなる群から選択される1〜3のヘテロ原子を含有する任意の5員環または6員環をいい;ここで、この5員環は、0〜2の二重結合を有し、そして6員環は、0〜3の二重結合を有し;ここでこの窒素および硫黄原子は、必要に応じて酸化され得;ここでこの窒素および硫黄ヘテロ原子は、必要に応じて四級化(quarternized)され得;そして任意の二環式基を含み、ここで上記複素環のいずれかが、ベンゼン環または別の5もしくは6員の飽和もしくは不飽和の複素環に融合されている。代表的なヘテロアリール基としては、例えば、以下が挙げられる:チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリル、キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、ベンゾチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾトリアゾリルなど。これらは、置換されていないことも、または、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、オキソ(C=O)、アルキルイミノ(RN=、ここでRは、低級アルキルまたは低級アルコキシ基である)、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノアルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、ポリアルコキシ、低級アルキル、シクロアルキル、またはハロアルキルから独立して選択される種々の置換基により、一置換されてももしくは二置換されていることもあり得る。
【0048】
本発明の実施において有用な「薬学的に受容可能な塩」は、無機酸または有機酸から誘導される塩の形態で使用され得る。これらの塩としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、,安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩(camphorate)、樟脳スルホン酸塩(camphorsulfonate)、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモエート、ペクチン酸塩、硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバレート、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、およびウンデカン酸塩。また、塩基性窒素含有基は、以下のような薬剤で四級化され得る:低級アルキルハロゲン化物(例えば、メチル、エチル、プロピル、およびブチルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物);硫酸ジアルキル(例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル、および硫酸ジアミル)、長鎖ハロゲン化物(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチル、およびステアリルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物)、アラルキルハロゲン化物(例えば、臭化ベンジルおよび臭化フェネチル)など。水溶性もしくは油溶性または水分散性もしくは油分散性の生成物が、それによって得られる。
【0049】
薬学的に受容可能な酸付加塩を形成するために使用され得る酸の例としては、以下のような無機酸(例えば、塩酸、硫酸、およびリン酸)および以下のような有機酸(例えば、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、およびクエン酸)が挙げられる。塩基付加塩は、式(I)の化合物の最終的な単離および精製の間にインサイチュで、または薬学的に受容可能な金属カチオンの適切な塩基(例えば、水酸化物、炭酸塩、または重炭酸塩)と、あるいはアンモニア、または有機第一級、第二級、もしくは第三級アミンと、カルボン酸部分を反応させることにより別個に、調製され得る。.薬学的に受容可能な塩としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アルカリおよびアルカリ土類金属に基づくカチオン(例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム塩など)、ならびに非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミンカチオン(以下を含むが、これらに限定されない:アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなど)。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンとしては、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが挙げられる。
【0050】
本明細書中で使用される用語「薬学的に受容可能なプロドラッグ」とは、本発明の化合物のプロドラッグならびに本発明の化合物の双性イオン形態(可能な場合)であって、これらは、正常な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずに、ヒトおよびより下等の動物の組織と接触して使用するのに適切であり、妥当な利益/危険度比と釣り合い、かつそれらの意図された用途に効果的であるものをいう。用語「プロドラッグ」とは、インビボで迅速に転換されて(例えば、血液中での加水分解によって)、上記式の親化合物を生じる化合物をいう。十分な考察が、以下において提供される:T.HiguchiおよびV.Stella,Pro−drugs as Novel Delivefy Systems,Vol.14,A.C.S.Symposium Series、およびEdward B.Roche編,Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987(これらの両方とも、本明細書中に参考として援用される)。
【0051】
1つの局面では、本発明は、構造(II)、(III)、または(IV)(ここでXがSである)の化合物を、9−オキソ−エポチロンCまたはDから合成する方法に関する。9−オキソ−エポチロンCおよびDは、国際PCT出願公開番号WO 01/83800(2001年11月8日公開)(この内容は、この参照によって本明細書中に援用される)に開示されるようにして容易に得られ得る。一般には、9−オキソ−エポチロンDは、ポリケチドシンターゼ(PKS)遺伝子をコードする組換え発現ベクターを含む亜目Cystobacterineaeの組換え宿主細胞によって産生される。WO01/83800において開示されるように、エポチロンPKSのエキステンダーモジュール6のKRドメインの不活性化は、9−オキソ−エポチロンを生成し得るPKSを生じる。エキステンダーモジュール6のKRドメインが非活性化された株はK39−164と称されており、これはアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)、Manassas,Virginia 20110−2209,USAに、2000年11月21日に、ブダペスト条約の条件下で寄託されており、そして受託番号PTA−2716で入手可能である。K39−164株は、主産物として9−オキソ−エポチロンDを、および副産物として9−オキソ−エポチロンCを産生する。別の局面では、本発明は、構造(II)(ここでXがOである)の化合物を、9−オキソ−エポチロンHまたはH(9−オキソ−エポチロンCまたはDのオキサゾール対応物)から合成する方法に関する。WO 01/83800にまた記載されるように、過度のセリンを宿主細胞に補うことにより、宿主細胞によって正常に産生されるチアゾールエポチロン化合物は、オキサゾール対応物の産生を好むように調整される。このようにして、9−オキソ−エポチロンCまたはDを優勢に産生する細胞が、9−オキソ−エポチロンHまたはH(対応するオキサゾール対応物)の産生を好むようになされ得る。
【0052】
以下の反応スキーム1を参照すると、本発明の化合物は、ケト還元および脱離によって得られ得る。これは、例えば、遊離ヒドロキシル基を適切な保護基(例えば、トリエチルシリル基、ブチルジメチルシリル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基など)で保護し;9−オキソ基を還元して、対応する9−ヒドロキシル中間体化合物を得;当該9−ヒドロキシル化合物を、テトラヒドロフラン(「THF」)または他の適切な溶媒中に適切な塩基(例えば、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドまたはアミン塩基(例えば、ピリジンまたは4−(ジメチルアミノピリジン))の存在下で、例えば、トリフルオロ酢酸無水物、塩化メタンスルホニル、またはトリフルオロメタンスルホン酸無水物で活性化して、対応するトリフルオロアセチル、メタンスルホネート、またはトリフルオロメタンスルホネート中間体化合物を得;この活性化基を脱離させて、対応する保護9,10−デヒドロエポチロンを適切な塩基(例えば、ナトリウムビス(トリメチルシリルアミド)、リチウムジイソプロピルアミド、または4−(ジメチルアミノピリジン))との反応によって得;そして次いで当該保護中間体を脱保護して、所望の9,10−デヒドロエポチロンを得ることによる。この合成経路を利用する代表例を、本明細書中以下、実施例1〜21において記載する。
【0053】
合成経路1:ケト還元および脱離(X=SまたはO)
【0054】
【化16】

以下の反応スキーム2を参照すると、本発明の化合物はまた、熱分解脱離によっても得られ得る。例えば、これは、ビス(保護)9−オキソ−エポチロンを塩基(例えば、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド)、二硫化炭素、およびヨウ化メチルで活性化してメチルキサンテートエステルを形成させるか、または塩化ジメチルチオカルバモイルで活性化してチオカルバメートを形成し、そして次いで当該活性化された中間体を十分な温度(例えば、約170℃)で十分な時間加熱して、活性化基を脱離させ、そして対応する保護9,10−デヒドロエポチロン化合物を得、そして次いで当該保護中間体を脱保護して、所望の9,10−デヒドロエポチロンを得ることによる。適切な温度および時間は、有機化学分野の当業者に知られる方法を用いて決定され得る。この合成経路を利用する代表例を、本明細書中以下、実施例1〜4および22〜25において記載する。
【0055】
合成経路2:熱分解排脱離(X=SまたはO)
【0056】
【化17】

以下の反応スキーム3を参照すると、本発明の化合物はまた、ビニルトリフレート還元によっても得られ得る。例えば、これは、保護9−オキソ−エポチロンをトリフレート試薬(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、N−(2−ピリジル)トリフリミド(triflimide)、またはN−(5−クロロ−2−ピリジル)トリフリミド)および塩基(例えば、2,4−ジ−tert−ブチル−4−メチルピリジン、またはナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドと反応させて、対応する9,10−デヒドロ−9−トリフルオロメタンスルホニルオキシ中間体化合物を得ることによる。次いで、9−トリフルオロ−メタンスルホニルオキシ基を、例えば、パラジウム触媒(例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0))の存在下で水素化物供給源(例えば、トリアルキルアンモニウムギ酸塩または水素化トリアルキルスズ)を用いて還元して、得られる保護9,10−デヒドロ−エポチロンを形成し、そしてこの化合物を脱保護して、所望の9,10−デヒドロエポチロン10を獲得し得る。あるいは、9,10−デヒドロ−9−トリフルオロメタン−スルホニルオキシ中間体化合物を、例えば、ビニルトリフレートカップリング技術(例えば、触媒(例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)および塩化リチウム)の存在下での、アルキルトリブチルスズとのトリフルオロメチルスルホニルオキシエノール(8)の反応)を用いることによる、アルキル基の付加によってさらに置換して、アルキル置換保護9,10−デヒドロエポチロン化合物9a(R=CHCHCH)を得;そして次いで当該保護9−置換中間体を脱保護して所望の9−置換9,10−デヒドロエポチロン10aを獲得し得る。同様にして、触媒(例えば、(テトラキス)トリフェニルホスフィンパラジウム(0))の存在下での低級アルキル亜鉛試薬との中間体(8)の反応は、式(9a)の化合物(ここでR1は低級アルキルである)を提供する。これらの合成経路を利用する代表例を、本明細書中以下、実施例1〜4および26〜30において記載する。
【0057】
合成経路3:ビニルトリフレート還元(X=SまたはO)
【0058】
【化18】

以下の反応スキーム4を参照すると、本発明の化合物はまた、開環中間体を用いて、9−オキソエポチロンから調製され得る。本発明の1つの実施形態では、エポチロンの3,7−保護形態(2)を、還元剤(例えば、ジ(イソブチル)水素化アルミニウム(DiBAl−H))と、ラクトンカルボニルが選択的に還元される条件下で反応させる。得られる開環中間体(11)のアルコール基が、例えば、塩基(例えば、イミダゾールまたは2,6−ルチジン)の存在下でクロロトリアルキルシランまたはトリアルキルシリルトリフレートを用いてシリル化することにより、保護されて、中間体(12)を提供する。本発明の別の実施形態では、エポチロンの3,7−保護形態を、還元剤(例えば、ジ(イソブチル)水素化アルミニウム(DiBAl−H))と、ラクトンカルボニルと9−オキソ基との両方が還元される条件下で反応させて、中間体を提供する。1−および15−OH基が、例えば、それらの塩化tert−ブチルジメチルシリルおよびイミダゾールとの反応により、それらのtert−ブチルジメチルシリルエーテルとして、選択的に保護されて、中間体(13)を提供する。9−OHが、例えば、Dess−Martinペルヨージナン(ジクロロメタン中)を用いてまたケトンに酸化されて、中間体(12)を提供し得る。
【0059】
中間体(12)のケトン基は、上記の方法のいずれかを用いて、トランス−9,10−アルケンに転換され得る。1つの実施形態では、中間体(12)を、トリフレート剤(triflating agent)(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸無水物またはN−(2−ピリジル)トリフリミド)および塩基(例えば、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドまたはリチウムジイソプロピルアミド)と反応させて、ビニルトリフレート(14)を形成させる。このビニルトリフレートが、触媒(例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0))の存在下で、水素化物供給源(例えば、トリアルキルアンモニウムギ酸塩または水素化トリアルキルスズ)を用いて還元されて、中間体(15)を提供する。
【0060】
本発明の別の実施形態では、中間体(13)を試薬と反応させて、脱離のために9−基を活性化させる。例えば、(13)を、適切な塩基(例えば、ピリジンまたは4−(ジメチルアミノピリジン))の存在下で、トリフルオロ酢酸無水物、メタンスルホン酸無水物、またはトリフルオロメタンスルホン酸無水物と反応させて、それぞれ、9−O−トリフルオロアセテート、9−O−メタンスルホネート、または9−O−トリフレートを生成させる。ヒンダード塩基(hindered base)(例えば、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドまたはリチウムジイソプロピルアミド)での続く処理により、トランス−9,10−アルケン中間体(15)が生成される。
【0061】
別の実施形態では、中間体(13)は、塩基(例えば、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド)、二硫化炭素、およびヨウ化メチルとの反応により、メチルキサンテートに変換される。この中間体キサンテートは、上記のように熱分解に供されて、中間体(15)を生成する。
【0062】
合成経路4(X=SまたはO):
【0063】
【化19】

中間体(15)が、トランス−9,10−デヒドロエポチロンに変換され得る。第一級シリル保護基が、例えば、樟脳スルホン酸を用いて除去されて、そして得られる1−アルコールが、例えば、二工程手順を用いて、カルボン酸に酸化される。この二工程手順では、まずアルコールが、酸化アミンおよび触媒テトラプロピルアンモニウムペルルテネート(tetrapropylammonium perruthenate)を用いて酸化され、次いでさらに、亜塩素酸ナトリウム(NaClO)との反応により酸に酸化される。15−OH基が、0℃でのTHF中フッ化テトラブチルアンモニウムでの処理により脱保護され、そして大環状高分子が、例えば、Yamaguchiの条件(0℃で塩化1,3,5−トリクロロベンゾイルおよびトリエチルアミン(THF中)、その後75℃で4−(ジメチルアミノ)ピリジンの溶液(トルエン中)に混合無水物を添加)を用いて、閉環されて、保護中間体(13)を提供する。脱保護により、トランス−9,10−デヒドロエポチロンが提供される。
【0064】
合成スキーム5を参照すると、本発明の化合物は、けん化によって調製された開環エポチロン中間体を用いて調製され得る。1つの実施形態では、保護エポチロン(2)が、例えば、水酸化物またはエステラーゼでの処理により、保護セコ酸に変換される。この酸は、例えば、tert−ブチルアルコール、カルボジイミド(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド)、および4−(ジメチルアミノ)ピリジンを触媒として用いて、tert−ブチルエステルに変換される。15−OHが、例えば、シリル化によって、保護され、そして9−ケトンが、上記のようにビニルトリフレートに変換される。このビニルトリフレートは、上記のように還元され、そしてこの中間体は、樟脳スルホン酸を用いて部分的に脱保護されて、3,7−保護−セコ−9,10−デヒドロエポチロンを提供する。Yamaguchiの手順に従うラクトン化、続く脱保護により、トランス−9,10−デヒドロエポチロンが提供される。
【0065】
合成経路5(X=SまたはO):
【0066】
【化20】

エポチロンの3,7−保護形態(2)が、トランス−9,10−デヒドロエポチロンに変換され得る。この合成経路は、エポチロン誘導体(2)の初期けん化を包含し、開環エポチロン中間体を提供し、この中間体は、9,10−トランスアルケン基を含むように修飾されて、そして次いで、最後にラクトン化されて、トランス−9,10−デヒドロエポチロンを提供する。代表合成スキームを、合成経路6中に図示する。
【0067】
合成経路6を参照すると、3,7−保護エポチロン(2)が、水性メタノール中の水酸化ナトリウムでけん化されて、対応するヒドロキシ酸(16)を提供する。ヒドロキシ酸(16)は、トリメチルシリルジアゾメタンとの反応によって、そのメチルエステル(17)に変換される。このメチルエステル(17)のヒドロキシ基は、塩化トリメチルシリル/トリメチルシリルイミダゾールでの処理により保護されて、トリメチルシリルエーテル(18)を提供する。トリメチルシリルエーテル(18)の9−ケトンが、N−(2−ピリジル)トリフリミドおよびナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドとの反応によりトランス−9,10−アルケンに転換されて、ビニルトリフレート(19)を生成する。酢酸パラジウム(II)、トリフェニルホスフィン、トリブチルアミン、およびギ酸でのビニルトリフレート(19)の還元により、トランス−9,10−アルケン(20)が提供される。中間体(20)のトリメチルシリル保護基およびメチルエステル基は、水酸化ナトリウムでの処理、次いで酢酸での処理によって除去されて、ヒドロキシ酸(21)を生じ、次いでこれがラクトン化されて、3,7−保護エポチロン(9)を提供する。脱保護により、トランス−9,10−デヒドロエポチロンが提供される。
【0068】
合成経路6(X=SまたはO):
【0069】
【化21】

上記のように、および合成経路6において示されるように調製された開環トリメチルシリルエーテル(18)は、トランス−9,10−デヒドロエポチロンへの別の経路のための出発点であり得る。合成経路は、中間体(18)の9−ケトン基の還元、続く脱離によるトランス−9,10−アルケン基の提供、および次いで最後にラクトン化によるトランス−9,10−デヒドロエポチロンの提供を包含する。代表合成経路を、合成経路7中に図示する。
【0070】
合成経路7を参照すると、水素化ホウ素ナトリウムでのトリメチルシリルエーテル(18)の還元により、9−ヒドロキシ誘導体(22)が提供される。次いで、ヒドロキシ誘導体(22)が、適切な塩基(例えば、ピリジンまたは4−(ジメチルアミノピリジン))の存在下での、活性化剤(例えば、トリフルオロ酢酸無水物、メタンスルホン酸無水物、またはトリフルオロメタンスルホン酸無水物)での処理により、脱離のために活性化されて、それぞれ、9−O−トリフルオロアセテート、9−O−メタンスルホネート、または9−O−トリフレートで活性化された中間体(23)を生成する。続いて、ヒンダード塩基(例えば、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドまたはリチウムジイソプロピルアミド)で活性化中間体(23)を処理することにより、トランス−9,10−アルケン中間体(24)が生成される。中間体(24)のトリメチルシリル保護基およびメチルエステル基は、水酸化ナトリウムでの処理、続く酢酸での処理によって除去されて、ヒドロキシ酸(21)を生じる。ヒドロキシ酸(21)のラクトン化により、3,7−保護エポチロン(9)が提供され、これは、脱保護の際に、トランス−9,10−デヒドロエポチロンを生成する。
【0071】
合成経路7:
【0072】
【化22】

本発明の他の実施形態では、化合物は、合成経路8に図示されるような全合成によって調製され得る。ケトン(25)(ここで、PおよびPは、ヒドロキシル保護基である)は、例えば、A.Rivkinら,J.Am.Chem.Soc.2003 125:2899−2901に記載されるようにして調製され得る。代表的なヒドロキシル保護基としては、シリルエーテル(例えば、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、およびtert−ブチルジメチルシリル(TBS));エステル(例えば、酢酸エステル、クロロ酢酸エステル、トリフルオロ酢酸エステル、または安息香酸エステル);カルボネート(例えば、メチルカルボネート、トリクロロエチルカルボネート(troc)、またはアリルカルボネート(alloc));およびアセタール(例えば、メトキシメチル(MOM)またはベンジルオキシメチル(BOM))が挙げられる。特定実施形態では、PおよびPは、シリルエーテルである。適切なWittigイリドとの(25)の反応により、保護化合物(26)が得られる。以下の実施例に記載されるような続く脱保護により、式(I)の化合物が提供される。Wittigイリドは、対応するホスホニウム塩の強塩基(例えば、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS)、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド(KHMDS)、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、ブチルリチウム、水素化ナトリウム、または同様のもの)との反応によって調製され得る。ホスホニウム塩は、ハロゲン化アルキルのトリアリールホスフィンまたはトリアルキルホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィンまたはトリブチルホスフィン)との反応によって調製され得る。本発明の特定実施形態では、ホスホニウム塩は、塩化アルキルのトリブチルホスフィンとの反応によって調製される。あるいは、Wittigイリドは、当該分野で公知の他の方法(例えば、強塩基でのアルキルジフェニルホスフィンオキシドの処理により)に従って調製され得る。式(I)の化合物の調製において使用するのに適した種々のホスホニウム塩の調製の例を、以下の実施例に提供する。
【0073】
脱保護(Pおよび/またはPの除去)は、当該分野で公知の方法(例えば、GreeneおよびWuts,Protective Groups in Organic
Synthesis,3rd Edition(Wiley,New York),1999に記載のように)を用いて実施され得る。特定実施形態では、PおよびPがシリルエーテル(例えば、TMS、TES、またはTBS)である場合、脱保護は、ジクロロメタン中の酸(例えば、HF・ピリジンまたはトリフルオロ酢酸))での処理によって実施される。
【0074】
合成経路8:
【0075】
【化23】

本発明の化合物は、細胞傷害性について、当業者に周知の従来のアッセイを用いてスクリーニングされ得る。例えば、化合物の細胞傷害性は、Skehanら,J.Natl.Cancer Inst.82:1107−1112(1990)(これは、参考として本明細書中に援用される)に開示されるように、SRBアッセイによって決定され得る。SRBアッセイでは、以下の培養細胞を、トリプシン処理し、計数し、そして増殖培地で100μl当たりで以下の濃度に希釈する:MCF−7,5000;NCI/ADR−Res,7500;NCI−H460,5000;A549,5000;Skov3,7500;およびSF−268,7500。細胞を、96ウェルマイクロタイタープレート中に100μl/ウェルで播種する。24時間後、本発明の試験エポチロン化合物100μl(増殖培地中1000nMから0.001nMの濃度の範囲に希釈)を、各ウェルに添加する。数日間のこれら化合物とのインキュベーション後、細胞を、4℃で1時間、100μlの10%トリクロロ酢酸(「TCA」)で固定し、そして0.2%スルホローダミンB(SRB)/1%酢酸で染色し、そして次いで、結合したSRBを、200μlの10mM Tris塩基で抽出する。結合した染料の量をOD 515nmによって決定し、これは、総細胞性タンパク質含有量と相関する。このデータを、標準的な統計学的方法論(例えば、Reading,PAのSynergy SoftwareによりKALEIDA GRAPH(登録商標)として販売されているソフトウェアとともに利用可能な方法論)を用いて解析し、そしてIC50を算定する。
【0076】
式(I)の種々の化合物についての細胞傷害性の結果を、以下の表1および2に示す。理解され得るように、本発明の化合物は、予期されないことに、トランス−9,10−デヒドロエポチロンDと同等またはより優れた細胞傷害性活性を示す。
【0077】
本発明の化合物はまた、チューブリン重合について、当業者に周知の従来のアッセイを用いてスクリーニングされ得る。例えば、化合物は、チューブリン重合について、Giannakakouら,J.Biol.Chem.271:17118−17125(1997)および/またはIntl.J.Cancer 75:57−63(1998)(これらは、参考として本明細書中に援用される)の手順を用いてアッセイされ得る。この手順では、MCF−7細胞を、35mm培養皿中でコンフルエンシーにまで増殖させ、そして35℃で0、1、または2時間の間1nMの本発明の化合物で処理する。細胞を2mlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(カルシウムまたはマグネシウムを含まない)で2回洗浄した後、これら細胞を、室温で5〜10分間、300μlの溶解緩衝液(20mM Tris、PH 6.8、1mM MgCl、2mM EDTA、1% Triton X−100、+プロテアーゼインヒビター)で溶解させる。細胞を掻き取り、そして溶解物を1.5mlエッペンドルフチューブに移す。次いで、溶解物を室温で12分間、18000gで遠心分離する。可溶または重合されていない(細胞質ゾル)チューブリンを含む上清を、不溶または重合された(細胞骨格)チューブリンを含有するペレットから分離し、そして新たなチューブに移す。次いで、ペレットを300μlの溶解緩衝液中に再懸濁する。細胞におけるチューブリン重合の変化を、各サンプルの同じ容量のアリコートをSDS−PAGEで分析し、続いて抗チューブリン抗体(Sigma)を用いて免疫ブロットすることにより決定する。
【0078】
他の局面では、本発明は、本発明の化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物に関する。本発明の化合物は、遊離形態であり得るか、または適切な場合、本発明の化合物の薬学的に受容可能な誘導体(例えば、プロドラッグ、および塩およびエステル)であり得る。
【0079】
本発明の組成物は、任意の適切な形態(例えば、固体、半固体、液体またはエアロゾル形態)であり得る。Pharmaceutical Dosage Forms and
Drug Delivery Systems,5th edition,Lippicott Williams & Wilkins(1991)(これは、参考として本明細書中に援用される)を参照のこと。一般に、製剤は、活性成分として本発明の化合物の1つ以上を、外用、腸内適用、または非経口適用に適した有機または無機のキャリアまたは賦形剤と共に含む。活性成分は、例えば、錠剤、ペレット剤、カプセル剤、座剤、膣座剤、液剤、乳剤、懸濁剤、および使用に適した他の形態のために、従来の非毒性の薬学的に受容可能なキャリアと調合され得る。組成物において使用するための薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、以下が挙げられる:水、グルコース、ラクトース、アラビアゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプンペースト、三ケイ酸マグネシウム、滑石、トウモロコシデンプン、ケラチン、コロイド状シリカ、ジャガイモデンプン、尿素、および固体、半固体、液体、またはエアロゾル形態での調製剤の製造における使用に適した他のキャリア。組成物は、補助の安定剤、増粘剤(thickening agent)、および/または着色剤および芳香剤をさらに含み得る。
【0080】
1つの実施形態では、本発明の化合物を含む組成物は、Cremophor(登録商標)非含有である。Cremophor(登録商標)(BASF Aktiengesellschaft)は、ポリエトキシ化ヒマシ油であり、これは、代表的に、低溶解性薬物を処方する際の界面活性剤として使用される。しかし、Cremophor(登録商標)は、被験体においてアレルギー反応を生じさせ得る(case)ので、Cremophor(登録商標)を最小限にするか、または排除する組成物が好ましい。Cremophor(登録商標)を排除するエポチロンAまたはBの処方物は、例えば、PCT公報WO 99/39694(これは、参考として本明細書中に援用される)によって記載され、そして本発明の化合物と共に使用するために適合され得る。例えば、組成物は、薬学的に受容可能なキャリア(例えば、アルコール(例えば、エタノール)、グリコール(例えば、プロピレングリコール)、ポリオキシエチレン化合物(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、Tween(登録商標)(ポリオキシエチレンソルビタンモノエステル;ICI America)、およびSolutol(登録商標)(ポリエリレングリコール660 12−ヒドロキシステアレート;BASF Aktiengesellschaft)、または中鎖トリグリセリド(Miglyol(登録商標)、Huls Aktiengesellschaft))と共に、本発明の化合物を含み得る。本発明の特定の実施形態では、エタノール、プロピレングリコール、およびTween−80(登録商標)と共に式(I)の化合物を含む組成物が提供される。本発明の特定の他の実施形態では、エタノール、プロピレングリコール、およびSolutol HS−15(登録商標)と共に式(I)の化合物を含む組成物が提供される。あるいは、本発明のCremophor(登録商標)非含有組成物は、少なくとも1つのシクロデキストリンを含み得、そしてより特定の実施形態では、このシクロデキストリンは、ヒドロキシアルキル−β−シクロデキストリンまたはスルホアルキル−β−シクロデキストリンであり得、そしてなおより特定の実施形態では、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンまたはスルホブチル−β−シクロデキストリンであり得る。キャリアがヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含む、なおより特定の実施形態は、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが、少なくとも約4.6%の置換度、およびより特定すると、少なくとも約6.5%の置換度を有するものを含む。本発明の組成物のなおより特定の実施形態は、キャリアが、約4.6%と約6.5%との間の置換度を有するヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含むものである。
【0081】
本発明の1つの実施形態では、組成物は、式(I)の化合物、アルコール、グリコール、およびシクロデキストリンを含む。特定の実施形態では、組成物は、式(I)の化合物、エタノール、プロピレングリコール、およびシクロデキストリンを含む。1つの実施形態では、組成物は、約5%〜約20%エタノール、約1%〜約10%プロピレングリコール、および約5%〜約20%のβ−シクロデキストリンと共に、式(I)の化合物を含む。特定の実施形態では、組成物は、約7%エタノール、約3%プロピレングリコール、および約12%のβ−シクロデキストリンと共に式(I)の化合物を含む。
【0082】
適用可能な場合、本発明の化合物は、マイクロカプセルおよび/またはナノ粒子として処方され得る。一般プロトコルは、例えば、Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy,Max Donbrow編,CRC Press(1992)および米国特許番号5,510,118;5,534,270;および5,662,883(これらは全て、参考として本明細書中に援用される)によって記載される。体積に対する表面積の比を増大させることにより、これらの処方物は、そうでない場合では経口送達に従わない化合物の経口送達を可能にする。
【0083】
本発明の組成物はまた、低溶解性薬物について以前に使用された他の方法を用いて処方され得る。例えば、本発明の化合物は、WO 98/30205およびWO 00/71163(これらは、参考として本明細書中に援用される)によって記載されるように、ビタミンEまたはそのPEG化誘導体と共にエマルジョン中に処方され得る。代表的には、化合物は、エタノール(好ましくは、1% w/v未満)を含有する水溶液中に溶解され、そして次いでビタミンEまたはPEG化ビタミンEが添加される。次いで、エタノールは除去されて、静脈内または経口投与経路のために処方され得るプレエマルジョンが形成される。あるいは、本発明の化合物は、リポソーム中にカプセル化され得る。薬物送達ビヒクルとしてリポソームを形成するための方法は、当該分野で周知である。適切なプロトコルは、米国特許番号5,683,715;5,415,869,および5,424,073(これらは、参考として本明細書中に援用される)(別の相対的に低い溶解度の癌薬物タキソールに関して)およびPCT公報WO 01/10412(これは、参考として本明細書中に援用される)(エポチロンBに関して)によって記載されるものを含む。使用され得る種々の脂質のうち、エポチロンカプセル化リポソームを作製するために現在特に好ましい脂質としては、例えば、ホスファチジルコリンおよびポリエチレングリコール誘導体化ジステアリルホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。
【0084】
なお他の実施形態では、本発明の組成物は、ポリマー(例えば、バイオポリマーまたは生体適合性(合成または天然に存在する)ポリマー)を含み得る。生体適合性ポリマーは、生分解性および非生分解性として類別され得る。生分解性ポリマーは、化学組成、製造方法、および/またはインプラント構造の機能としてインビボで分解する。合成ポリマー
の例証的な例としては、例えば、ポリ無水物、ポリヒドロキシ酸(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびそれらのコポリマー)、ポリエステル、ポリアミド、ポリオルトエステル、およびいくつかのポリホスファゼンが挙げられる。天然に存在するポリマーの例証的な例は、タンパク質および多糖(例えば、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルブミン、およびゼラチン)が挙げられる。
【0085】
なお他の実施形態では、本発明の化合物は、水溶解度を増強するポリマーに結合体化され得る。この目的のために適切なポリマーの代表例としては、ポリエチレングリコール、ポリ−(d−グルタミン酸)、ポリ−(l−グルタミン酸)、ポリ−(d−アスパラギン酸)、ポリ−(l−アスパラギン酸)、およびそれらのコポリマーが挙げられる。約5,000〜約100,000の間の分子量を有するポリグルタミン酸は好ましく、約20,000と80,000との間(between about 20,000 and 80,000)の分子量を有するものはより好ましく、そして約30,000と60,000との間)の分子量を有するものは最も好ましい。ポリマーは、米国特許番号5,977,163(これは、参考として本明細書中に援用される)により本質的に記載されるようなプロトコルを用いて、本発明のエポチロンの1つ以上のヒドロキシルに、エステル結合を介して結合体化される。好ましい結合体化部位としては、3−ヒドロキシル基および7−ヒドロキシル基が挙げられる。
【0086】
なお他の実施形態では、本発明の化合物は、モノクローナル抗体に結合体化され得る。この戦略は、この化合物を特異的な標的に対して向けることを可能にする。結合体化抗体の設計および使用に関する一般プロトコルは、Monoclonal Antibody−Based Therapy of Cancer,Michael L.Grossbard編(1998)(これは、参考として本明細書中に援用される)において記載される。
【0087】
単一投薬形態を生成するために本発明の組成物中に取り込まれる活性成分の量は、処置される被験体および特定投与形態に依存して変動する。本発明の化合物の治療用量の大きさは、処置される状態の性質および重篤度と共に変動し、そして特定化合物およびその投与経路と共に変動する。一般に、抗癌活性のための一日用量範囲は、単一または多用量で、0.001〜100mg/kg哺乳動物体重、好ましくは、0.01〜80mg/kg、および最も好ましくは0.1〜70mg/kgの範囲にある。変わった場合では、100mg/kgを上回る用量を投与することが必要であり得る。
【0088】
他の局面では、本発明は、代表的には(しかし必ずしもではない)哺乳動物において、過剰増殖性疾患(例えば、癌)を処置するための方法を包含する。1つの実施形態では、本発明の化合物は、頭頚部の癌を処置するために使用される。この癌は、頭部、頚部、鼻腔、副鼻腔、鼻咽頭、口腔、口腔咽頭部、咽頭、下咽頭、唾液腺、および傍神経節腫の腫瘍を包含する。別の実施形態では、本発明の化合物は、肝臓および胆道樹状部(biliary tree)の癌(特に肝細胞癌)を処置するために使用される。別の実施形態では、本発明の化合物は、腸癌(特に結腸直腸癌)を処置するために使用される。別の実施形態では、本発明の化合物は、卵巣癌を処置するために使用される。別の実施形態では、本発明の化合物は、小細胞および非小細胞の肺癌を処置するために使用される。別の実施形態では、本発明の化合物は、乳癌を処置するために使用される。別の実施形態では、本発明の化合物は、肉腫(例えば、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、胎児性横紋筋肉腫(embryonal rhabdomysocarcoma)、平滑筋肉腫(leiomysosarcoma)、神経線維肉腫、骨肉腫、滑膜肉腫、脂肪肉腫、および胞状軟部肉腫)を処置するために使用される。別の実施形態では、本発明の化合物は、中枢神経系の新生物(特に、脳癌)を処置するために使用される。別の実施形態では、本発明の化合物は、リンパ腫(これは、ホジキンリンパ腫、リンパ形質細胞性悪性リンパ腫(lymphoplasmacytoid lymphoma)、濾胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B系統大細胞型リンパ腫(B−lineage large cell lymphoma)、バーキットリンパ腫、およびT細胞未分化大細胞リンパ腫を含む)を処置するために使用される。
【0089】
いくつかの局面では、この方法は、このような処置を必要とする被験体に、少なくとも1つの本発明の化合物または組成物を、治療有効量で、投与する工程を包含する。被験体への投与は、癌を含む(すなわち、さらなる増殖を防止する)か、または癌を排除するかのいずれかのために、必要に応じて、繰り返され得る。臨床学的には、この方法の実施は、癌性増殖の大きさもしくは数の減少および/または関連した症状の減少(適用可能な場合)を生じる。病理学的には、この方法の実施は、以下の少なくとも1つを生じる:癌細胞増殖の阻害、癌または腫瘍の大きさの減少、さらなる転移の防止、および腫瘍新脈管形成の阻害。
【0090】
本発明の化合物および組成物は、組み合わせ治療において、1つ以上の他の所望の治療または医療手順と一緒に、その前に、またはそれに続いてのいずれかで、投与され得る。組み合わせ養生法における治療および手順の特定の組み合わせは、その治療および/または手順の適合性と、達成されるべき所望の治療効果とを考慮に入れる。適切な組み合わせの例は、本発明の化合物と、アザシチジン、クラドリビン、シタラビン、フロクスウリジン、リン酸フルダラビン、ゲムシタビン、ペントスタチン、ウラシルマスタード、またはヌクレオシドアナログ(例えば、5フルオロウラシル(「5FU」)またはそれらのプロドラッグ(例えば、5α−デオキシ−5フルオロ−N[(ペンチルオキシ)カルボニル]−シチジン(商用名XELODA(登録商標)(Roche,Basel Switzerland)で市販されている)(これは、5’−デオキシ−5−フルオロウリジン(5’−DFUR)の経口投与全身性プロドラッグであり、これは、インビボで5−フルオロウラシルに変換される))の1つ以上とを含む。
【0091】
1つの実施形態では、本発明の化合物および組成物は、別の抗癌剤または手順と組み合わせて使用される。他の抗癌剤の例証的な例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(i)アルキル化薬(例えば、メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イフォスファミド);(ii)代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート);(iii)微小管安定剤(例えば、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、およびジスコデルモライド(discodermolide));(iv)新脈管形成阻害剤;および(v)細胞傷害性抗生物質(例えば、ドキソルビシン(doxorubicon)(アドリアマイシン)、ブレオマイシン、およびマイトマイシン)。他の抗癌手順の例証的な例としては、以下が挙げられる:(i)外科手術;(ii)放射線療法;および(iii)光ダイナミック療法。
【0092】
他の実施形態では、本発明の化合物および/または組成物は、その化合物または組成物から可能性のある副作用(例えば、下痢、悪心、および嘔吐)を緩和する薬剤または手順と組み合わせて使用され得る。下痢は、下痢止め剤(例えば、オピオイド(例えば、コデイン、ジフェノキシレート、ジフェノキシン、およびロエラミド(loeramide))、次サリチル酸ビスマス、およびオクトレオチド)で処置され得る。悪心および嘔吐は、制吐剤(例えば、デキサメタゾン、メトクロプラミド、ジフェニルヒドラミン、ロラゼパム、オンダンセトロン、プロクロルペラジン、チエチルペラジン、およびドロナビノール)で処置され得る。ポリエトキシ化ヒマシ油(例えば、Cremophor(登録商標))を含む組成物のために、コルチコステロイド(例えば、デキサメタゾンおよびメチルプレドニゾロン)および/またはH拮抗剤(例えば、ジフェニルヒドラミンHCl)および/またはH拮抗剤での前処理が、アナフィラキシーを緩和するために使用され得る。
【0093】
本発明の別の局面では、本発明の化合物および/または組成物は、細胞過剰増殖により特徴付けられる非癌障害を処置するために使用される。1つの実施形態では、本発明の化合物は、乾癬(皮膚上に積み上げられて高い落屑性の病巣を形成する、ケラチノサイトの細胞過剰増殖によって特徴付けられる状態)を処置するために使用され得る。この方法は、本発明の化合物または組成物の治療有効量を、乾癬を罹患する被験体に投与する工程を包含する。投与は、病巣の数もしくは重篤度を減少させるか、または病巣を排除するかのいずれかのために、必要に応じて、繰り返され得る。臨床学的には、この方法の実施は、皮膚病巣の大きさもしくは数の減少、皮膚症状(罹患皮膚の疼痛、火傷、および出血)の縮小、および/または関連した症状(例えば、関節発赤(joint redness)、発熱、腫脹、下痢、腹痛)の減少を生じる。病理学的には、この方法の実施は、以下の少なくとも1つを生じる:ケラチノサイト増殖の阻害、皮膚炎症(例えば、以下に対する影響による:誘引因子および増殖因子、抗原提示、反応性酸素種およびマトリックスメタロプロテイナーゼの生成)の減少、および皮膚新脈管形成の阻害。
【0094】
他の実施形態では、本発明の化合物は、多発性硬化症(脳における進行性脱髄によって特徴付けられる状態)を処置するために使用され得る。ミエリンの喪失に関与する正確な機構は理解されていないが、星状細胞増殖の増大およびミエリン破壊面積の蓄積がある。これらの部位に、マクロファージ様活性および増大されたプロテアーゼ活性があり、このことは、少なくとも部分的に、ミエリン鞘の分解の原因となる。この方法は、本発明の化合物または組成物の治療有効量を、多発性硬化症を罹患する被験体に投与する工程を包含する。このような投与は、星状細胞増殖の阻害および/または運動機能の喪失の重篤度の緩和および/または疾患の慢性的な進行の防止もしくは減衰のために、必要に応じて、繰り返され得る。臨床学的には、この方法の実施は、視覚症状(視覚喪失、複視)、歩行障害(衰弱、体軸不安定性、知覚喪失、痙性、反射亢進、器用さの喪失)、上肢機能不全(衰弱、痙性、知覚喪失)、膀胱機能不全(尿意促迫、失禁、排尿躊躇、残尿感)、うつ病、情緒不安定、および認識欠陥における改善を生じる。病理学的には、この方法の実施は、以下の1つ以上の減少を生じる:例えば、ミエリン喪失、血液脳関門の崩壊、単核細胞の脈管周囲浸潤、免疫異常、神経膠瘢痕形成(gliotic scar formation)および星状細胞増殖、メタロプロテイナーゼ生成、および伝導速度減損。
【0095】
なお他の実施形態では、本発明の化合物および/または組成物は、慢性関節リウマチ、(時に罹患関節の破壊および強直(ankyiosis)に至る、多系の慢性的な再発性の炎症性疾患)を処置するために使用される。慢性関節リウマチは、関節隙に伸長する絨毛状突出を形成する滑膜の顕著な肥厚、滑膜細胞内壁の多層化(滑膜細胞増殖)、白血球による滑膜の浸潤(マクロファージ、リンパ球、形質細胞、およびリンパ濾胞;「炎症性滑膜炎」と呼ばれる)、および滑膜内の細胞壊死を伴うフィブリンの沈着によって特徴付けられる。この過程の結果として形成された組織は、パンヌスと呼ばれ、そして、最終的には、パンヌスは、成長して、関節隙を埋める。パンヌスは、滑膜炎の進展に必須とされる新脈管形成の過程を通して新規血管の広範な網を発達させる。パンヌス組織の細胞からの消化酵素(マトリックスメタロプロテイナーゼ(例えば、コラゲナーゼ、ストロメライシン))および炎症過程の他のメディエーター(例えば、過酸化水素、スーパーオキシド、リソソーム酵素、およびアラキドン酸代謝の産物)の放出により、軟骨組織の進行性の破壊に至る。パンヌスは、関節軟骨を浸潤し、軟骨組織の侵食および断裂に至る。最終的に、罹患関節の肋軟骨下骨の侵食が生じ、これは、線維性強直および最終的には骨強直を伴う。本発明のこの局面では、本発明の化合物および/または組成物の治療有効量が、慢性関節リウマチを罹患する患者に投与される。このような投与は、滑膜細胞増殖の阻害および/または罹患関節の運動の喪失の重篤度の緩和および/またはこの疾患の慢性的な進行の防止もしくは減衰を達成するために、必要に応じて、繰り返され得る。臨床学的には、本発明の実施は、以下の1つ以上を生じる:(i)症状の重篤度の減少(罹患関節の疼痛、腫脹、および圧痛;午前中の硬直(morning stiffness)、衰弱、疲労、食欲不振、体重低下);(ii)疾患の臨床徴候の重篤度の減少(関節包の肥厚、滑膜肥大、関節滲出、軟組織拘縮、運動範囲の減少、強直、および固定の関節変形);(iii)疾患の関節外徴候発現の減少(リウマチ小結節、脈管炎、肺小結節、間質性線維症、心膜炎、上強膜炎、虹彩炎、フェルティ症候群、骨粗しょう症);(iv)疾患寛解/無症状期の頻度および期間の増大;(v)固定の欠陥および不安定性の防止;および/または(vi)疾患の慢性的な進行の防止/減衰。病理学的には、本発明の実施は、以下の少なくとも1つを生じる:(i)炎症応答の減少;(ii)炎症性サイトカイン(例えば、IL−I、lNFα、FGF、VEGF)の活性の破壊;(iii)滑膜細胞増殖の阻害;(iv)マトリックスメタロプロテイナーゼ活性の阻害;および/または(v)新脈管形成の阻害。
【0096】
他の実施形態では、本発明の化合物および/または組成物は、アテローム硬化症および/または再狭窄を処置する(threat)(特に、その遮断(blockage)が血管内ステントで処置され得る患者において)ために使用される。アテローム硬化症は、慢性の血管損傷であって、ここでは、動脈壁における正常な血管平滑筋細胞(「VSMC」)(通常、血流を調節する血管緊張を制御する)のいくらかが、それらの性質を変化させ、そして「癌様」挙動を発現する。これらのVSMCは、異常に増殖性の分泌物質(増殖因子、組織分解酵素、および他のタンパク質)になり、それらを内部血管内壁に侵襲および拡散させて、血流を遮断し、そして異常にも、その血管が局所血液凝固によって完全に遮断されるようにする。再狭窄(矯正手順後の狭窄または動脈狭窄の再発)は、アテローム硬化症の加速形態である。本発明のこの局面では、本発明の化合物および/または組成物の治療有効量が、ステント上にコーティングされ得、そしてこのステントは、アテローム硬化症を罹患する被験体における疾患動脈に送達され得る。化合物でステントをコーティングするための方法は、例えば、米国特許番号6,156,373および6,120,847(これらは、参考として本明細書中に援用される)によって記載される。臨床的には、本発明の実施は、以下の1つ以上を生じる:(i)動脈血流の増大;(ii)疾患の臨床的徴候の重篤度の減少;(iii)再狭窄の割合の減少;または(iv)アテローム硬化症の慢性的な進行の防止/減衰。病理学的には、本発明の実施は、ステント移植の部位で、以下の少なくとも1つを生じる:(i)炎症応答の減少、(ii)マトリックスメタロプロテイナーゼのV5MC分泌の阻害;(iii)平滑筋細胞蓄積の阻害;および(iv)V5MC表現型脱分化の阻害。
【0097】
1つの実施形態では、癌、または細胞過剰増殖によって特徴付けられる非癌障害を罹患する被験体に投与される投薬量レベルは、必要に応じて、毎週、二週毎、または三週毎に、約1mg/m〜約200mg/mのオーダーであり、これは、ボーラス(任意の適切な投与経路で)または連続注入(例えば、1時間、3時間、6時間、24時間 48時間または72時間)として投与され得る。しかし、任意の特定の患者について特異の用量レベルは、種々の要因に依存することが理解される。これらの要因としては、以下が挙げられる:用いられる特異化合物の活性;被験体の年齢、体重、一般健康状態、性別、および食事状態;薬物の投与時間および経路ならびに分泌速度;薬物の組み合わせが処置において用いられるか否か;ならびに処置される状態の重篤度。
【0098】
別の実施形態では、投薬量レベルは、必要かつ寛容に応じて、三週毎に1回で、約10mg/m〜約150mg/m、好ましくは、約10〜約75mg/m、およびより好ましくは、約15mg/m〜約50mg/mである。別の実施形態では、投薬量レベルは、必要かつ寛容に応じて、二週毎に1回で、約1mg〜約150mg/m、好ましくは約10mg/m〜約75mg/m、およびより好ましくは約25mg/m〜約50mg/mである。別の実施形態では、投薬量レベルは、必要かつ寛容に応じて、週に1回で、約1mg/m〜約100mg/m、好ましくは約5mg/m〜約50mg/m、およびより好ましくは約10mg/m〜約25mg/mである。別の実施形態では、投薬量レベルは、必要かつ寛容に応じて、一日に一回、約0.1〜約25mg/m、好ましくは約0.5〜約15mg/m、およびより好ましくは約1mg/m〜約10mg/mである。
【0099】
本発明の詳細な説明を上記に提示してきたが、以下の実施例は、本発明を例証する目的で示されるのであって、本発明の範囲または添付の特許請求の範囲に制限を行うものとはみなされない。
【実施例】
【0100】
(実施例1)
(3,7−ジオールの保護)
【0101】
【化24】

(3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9−オキソエポチロンD
(化合物(2);R=Me;P=EtSi)
クロロトリエチルシランを、9−オキソエポチロンDおよび2,6−ルチジンの溶液(ジクロロメタン中)に周囲温度で添加し、そして有機合成分野において公知の方法(例えば、薄層クロマトグラフィー(「TLC」)または液体クロマトグラフィー(「LC」)によるモニタリング)を用いて決定されるように、その反応が実質的に完了するまで(代表的には、一晩)、攪拌する。次いで、この生成物溶液をジクロロメタンで希釈し、そして水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(「sat.aq.NaHCO」)、およびブラインで順次洗浄し、そして次いで硫酸マグネシウム(「MgSO」)で乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。所望の生成物を、適切な溶媒系(例えば、ヘキサン中の酢酸エチルの勾配のような)を用いたシリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。
【0102】
(実施例2)
(3,7−ビス−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−9−オキソエポチロンD)
(化合物(2);R=Me;P=BuMeSi)
上記実施例1に提供した詳細と同様に、tert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートを、9−オキソエポチロンDおよび2,6−ルチジンの溶液(ジクロロメタン中)に周囲温度で添加し、そして一晩攪拌する。この混合物を、ジクロロメタンで希釈し、そして水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。生成物を、ヘキサン中の酢酸エチルの勾配を用いたシリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。
【0103】
(実施例3)
(3,7−ビス−O−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−9−オキソエポチロンD)
(化合物(2);R=Me;P=COCHCCl
【0104】
【化25】

9−オキソエポチロンD(80mg)の溶液(1.5mLのピリジン中)を、2,2,2−トリクロロエチルクロロフォーメート(134mg)で、周囲温度で16時間処理した。この混合物を、酢酸エチルで希釈し、sat.NHClおよびブラインで続いて洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートした。シリカゲルクロマトグラフィー(40%酢酸エチル/ヘキサン)は、162mgの生成物を生じた。
【0105】
(実施例4)
(3,7−ビス−O−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−8−エピ−9−オキソエポチロンD)
【0106】
【化26】

9−オキソ−8−エピ−エポチロンD(0.100g、0.198mmol)の溶液(ピリジン(2.0ml)中)に、2,2,2−トリクロロエチルクロロフォーメート(0.27ml、0.420g、1.980mmol)、次いでジメチルアミノピリジン(0.002g、0.020mmol)を添加した。得られる溶液を、周囲温度で14時間攪拌し、その後、酢酸エチル(20ml)とsat.aq.NaHCO(20ml)との間で分配した。有機物を、sat.aq.NHCl(2×20ml)およびブライン(20ml)でさらに洗浄し、その後、乾燥し(NaSO)、濾過し、そして減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、40%酢酸エチル−ヘキサン)により、生成物を無色のオイルとして得た(0.125g、74%)。
【0107】
(実施例5)
(II.経路1:ケト還元および脱離)
【0108】
【化27】

(工程1.ケト還元)
(3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9−ヒドロキシエポチロンD)
(化合物(3);R=Me;P=EtSi;X=S)
0℃で3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9−オキソエポチロンDの溶液(メタノール中)に、1当量の水素化ホウ素ナトリウムを添加する。この溶液を0℃で40分間攪拌し、その後、sat.aq.NHClを添加する。この有機物を酢酸エチルで抽出して合わせ、その後乾燥し(NaSO)、濾過し、そして減圧下で濃縮する。カラムクロマトグラフィー(シリカ、EtOAc−ヘキサン)により、生成物を得る。
【0109】
(実施例6)
(3,7−ビス−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−9−ヒドロキシエポチロンD)
(化合物(3);R=Me;P=BuMeSi;X=S)
0℃で3,7−ビス−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−9−オキソエポチロンDの溶液(メタノール中)に、1当量の水素化ホウ素ナトリウムを添加する。この溶液を0℃で40分間攪拌し、その後、sat.aq.NHClを添加する。この有機物を酢酸エチルで抽出して合わせ、その後乾燥し(NaSO)、濾過し、そして減圧下で濃縮する。カラムクロマトグラフィー(シリカ、EtOAc−ヘキサン)により、生成物を得る。
【0110】
(実施例7)
(3,7−ビス−O−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−9−ヒドロキシエポチロンD)
(化合物(3);R=Me;P=COCHCCl;X=S)
【0111】
【化28】

0℃で3,7−ビス−O−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−9−オキソエポチロンDの溶液(メタノール中)に、1当量の水素化ホウ素ナトリウムを添加する。この溶液を0℃で40分間攪拌し、その後、sat.aq.NHClを添加する。この有機物を酢酸エチルで抽出して合わせ、その後乾燥し(NaSO)、濾過し、そして減圧下で濃縮する。カラムクロマトグラフィー(シリカ、EtOAc−ヘキサン)により、3,7−ビス−O−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−9−ヒドロキシエポチロンDを得る。
【0112】
(実施例8)
(3,7−ビス−O−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル−8−エピ−9−ヒドロキシエポチロンD)
【0113】
【化29】

0℃で3,7−ビス−O−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−8−エピ−9−オキソエポチロンD(0.125g、0.131mmol)の溶液(メタノール(2.0ml)中)に、水素化ホウ素ナトリウム(0.005g、0.131mmol)を添加した。この溶液を0℃で40分間攪拌し、その後、sat.aq.NHCl(15ml)を添加した。この有機物を酢酸エチル(3×15ml)で抽出して合わせ、その後乾燥し(NaSO)、濾過し、そして減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカ、20%EtOAc−ヘキサン)により、3,7−ビス−O−(2,2,2−トリクロロエトキシ−カルボニル)−8−エピ−9−ヒドロキシエポチロンDを無色のオイルとして得た。
【0114】
(実施例9)
(工程2.活性化)
(3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9−(メタンスルホニルオキシ)エポチロンD)
(化合物(4):R=Me;P=EtSi;X=S;Y=MeSOO)
塩化メタンスルホニルを、3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9−ヒドロキシ−エポチロンDおよび4−(ジメチルアミノ)ピリジンの溶液(ジクロロメタン中)に添加する。12時間攪拌した後、混合物をジクロロメタンで希釈し、そして水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。生成物を、ヘキサン中の酢酸エチルの勾配を用いたシリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。
【0115】
(実施例10)
(3,7−ビス−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−9−(メタンスルホニルオキシ)エポチロンD)
(化合物(4);R=Me;P=BuMeSi;X=S;Y=MeSOO)
塩化メタンスルホニルを、3,7−ビス−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−9−ヒドロキシエポチロンDおよび4−(ジメチルアミノ)ピリジンの溶液(ジクロロメタン中)に添加する。12時間攪拌した後、混合物をジクロロメタンで希釈し、そして水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。生成物を、ヘキサン中の酢酸エチルの勾配を用いたシリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。
【0116】
(実施例11)
(3,7−ビス−O−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−9−(メタンスルホニルオキシ)エポチロンD)
(化合物(4);R=Me;P=COCHCCl;X=S;Y=MeSOO)
塩化メタンスルホニルを、3,7−ビス−O−(2,2,2−トリクロロエトキシ−カルボニル)−9−ヒドロキシエポチロンDおよび4−(ジメチルアミノ)ピリジンの溶液(ジクロロメタン中)に添加する。12時間攪拌した後、混合物をジクロロメタンで希釈し、そして水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSO上で乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。生成物を、ヘキサン中の酢酸エチルの勾配を用いたシリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。
【0117】
(実施例12)
(3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)エポチロンD)
(化合物(4);R=Me;P=EtSi;X=S;Y=CFSOO)
ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの1.0M溶液(THF中)を、3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9−ヒドロキシエポチロンDの溶液(THF中)に−78℃で滴下により添加する。30分後、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を滴下により添加し、そしてこの混合物を周囲温度にまで暖める。この混合物をエーテルに希釈し、そして水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。生成物を、さらに精製することなく使用する。
【0118】
(実施例13)
(3,7−ビス−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−9−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)エポチロンD)
(化合物(4);R=Me;P=BuMeSi;X=S;Y=CFSOO)
ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの1.0M溶液(THF中)を、3,7−ビス−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−9−ヒドロキシエポチロンDの溶液(THF中)に−78℃で滴下により添加する。30分後、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を滴下により添加し、そしてこの混合物を周囲温度にまで暖める。この混合物をエーテルに希釈し、そして水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。生成物を、さらに精製することなく使用する。
【0119】
(実施例14)
(3,7−ビス−O−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−9−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)エポチロンD)
(化合物(4);R=Me;P=COCHCCl;X=S;Y=CFSOO)
ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの1.0M溶液(THF中)を、3,7−ビス−O−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−9−ヒドロキシエポチロンDの溶液(THF中)に−78℃で滴下により添加する。30分後、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を滴下により添加し、そしてこの混合物を周囲温度にまで暖める。この混合物をエーテルに希釈し、そして水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。生成物を、さらに精製することなく使用する。
【0120】
(実施例15)
(工程3.脱離)
(メシレート脱離を介した3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9,10−デヒドロエポチロンD)
(化合物(5);R=Me;P=EtSi;X=S)
3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9−(メタンスルホニルオキシ)エポチロンDの溶液(THF中)を−78℃に冷却し、そしてナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの1.0M溶液(THF中)1当量で処理する。この混合物を周囲温度にまで暖め、そして次いでsat.aq.NHClに注ぎ、そして酢酸エチルで抽出する。この抽出物を水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。生成物を、ヘキサン中の酢酸エチルの勾配を用いたシリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。
【0121】
(実施例16)
(3,7−ビス−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−9,10−デヒドロエポチロンD)
(化合物(5);R=Me;P=BuMeSi;X=S)
3,7−ビス−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−9−(メタンスルホニルオキシ)エポチロンDの溶液(THF中)を−78℃に冷却し、そしてナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの1.0M溶液(THF中)1当量で処理する。この混合物を周囲温度にまで暖め、そして次いでsat.aq.NHClに注ぎ、そして酢酸エチルで抽出する。この抽出物を水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。生成物を、ヘキサン中の酢酸エチルの勾配を用いたシリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。
【0122】
(実施例17)
(3,7−ビス−O−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−9,10−デヒドロエポチロンD)
(化合物(5);R=Me;P=COCHCCl;X=S)
3,7−ビス−O−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−9−(メタンスルホニルオキシ)エポチロンDの溶液(THF中)を−78℃に冷却し、そしてナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの1.0M溶液(THF中)1当量で処理する。この混合物を周囲温度にまで暖め、そして次いでsat.aq.NHClに注ぎ、そして酢酸エチルで抽出する。この抽出物を水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。生成物を、ヘキサン中の酢酸エチルの勾配を用いたシリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。
【0123】
(実施例18)
(トリフレート脱離を介した3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9,10−デヒドロエポチロンD)
(化合物(5);R=Me;P=EtSi;X=S)
3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)エポチロンDの溶液(THF中)を0℃で2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルピリジンで処理する。この混合物を周囲温度にまで暖め、そして次いでsat.aq.NHClに注ぎ、そして酢酸エチルで抽出する。この抽出物を水、冷1N HCl、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。生成物を、ヘキサン中の酢酸エチルの勾配を用いたシリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。
【0124】
(実施例19)
(工程4.脱保護)
(9,10−デヒドロエポチロンD(P=EtSiを介する))
(化合物(6);R=Me;X=S)
3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9,10−デヒドロエポチロンDの溶液(アセトニトリルおよび水中)を氷上で冷却し、そして48%フッ化水素酸で処理する。この反応を、薄層クロマトグラフィーによってモニタリングする。完了の際に、sat.aq.NaHCOの添加により反応を中和し、そして濃縮して水性スラリーにする。このスラリーを酢酸エチルで抽出し、そしてこの抽出物を水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)に供し、生成物を単離する。
【0125】
(実施例20)
(9,10−デヒドロエポチロンD(P=BuMeSiを介する))
(化合物(6);R=Me;X=S)
3,7−ビス−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−9,10−デヒドロエポチロンDの溶液(アセトニトリルおよび水中)を氷上で冷却し、そして48%フッ化水素酸で処理する。この反応を、薄層クロマトグラフィーによってモニタリングする。完了の際に、sat.aq.NaHCOの添加により反応を中和し、そして濃縮して水性スラリーにする。このスラリーを酢酸エチルで抽出し、そしてこの抽出物を水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)に供し、生成物を単離する。
【0126】
(実施例21)
(9,10−デヒドロエポチロンD(P=COCHCClを介する))
(化合物(6);R=Me;X=S)
亜鉛粉末を室温で3,7−ビス−O−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−9,10−デヒドロエポチロンDの溶液(酢酸およびテトラヒドロフランの混合物中)に添加する。溶液を室温で1時間攪拌し、その後、さらなる亜鉛を添加し、一晩室温で攪拌する。この溶液を酢酸エチルと水との間で分配し、そして水相を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機物をブラインで洗浄し、そして乾燥し(NaSO)、その後減圧下で濃縮する。ヘキサン中酢酸エチル勾配を用いるシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより、9,10−デヒドロエポチロンDを得る。
【0127】
(実施例22)
(III.経路2:熱分解脱離)
【0128】
【化30】

(工程1.活性化)
(3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9−((メチルチオ)チオカルボニルオキシ)エポチロンD)
(化合物(7);R=Me;P=EtSi;X=S;Y=S−Me)
3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9−ヒドロキシエポチロンDの溶液(THF中)を−78℃に冷却し、そしてナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの1.0M溶液(THF中)1当量で処理する。30分後、二硫化炭素を添加し、そしてこの混合物を周囲温度にまで暖める。1時間後、ヨウ化メチルを添加し、そしてこの反応を12時間進行させ、sat.aq.NHClに注ぎ、そして酢酸エチルで抽出する。この抽出物を水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。生成物を、ヘキサン中の酢酸エチルの勾配を用いたシリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。
【0129】
(実施例23)
3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9−((ジメチルアミノ)チオカルボニルオキシ)エポチロンD)
(化合物(7);R=Me;P=EtSi:X=S;Y=NMe
3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9−ヒドロキシエポチロンD、塩化ジメチルチオカルバモイル、およびピリジンの混合物を12時間反応させる。この混合物を水に注ぎ、そして酢酸エチルで抽出する。この抽出物を水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。生成物を、ヘキサン中の酢酸エチルの勾配を用いたシリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。
【0130】
(実施例24)
(工程2.熱分解)
(キサンテートを介する3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9,10−デヒドロエポチロンD)
(化合物(5):R=Me;P=EtSi;X=S)
3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9−((メチルチオ)チオカルボニルオキシ)エポチロンDを高真空(約0.1トール)下に置き、そして170℃に加熱し、その間に出発物質が薄層クロマトグラフィー分析によって決定されるように消失する。この反応を周囲温度に冷却し、そして残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)に供し、生成物を単離する。
【0131】
(実施例25)
(チオカルバメートを介する3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9,10−デヒドロエポチロンD)
(化合物(5):R=Me;P=EtSi;X=S)
3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9−((ジメチルアミノ)チオカルボニルオキシ)エポチロンDを高真空(約0.1トール)下に置き、そして170℃に加熱し、その間に出発物質が薄層クロマトグラフィー分析によって決定されるように消失する。この反応を周囲温度に冷却し、そして残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)に供し、生成物を単離する。
【0132】
(実施例26)
(IV.ビニルトリフレート還元)
【0133】
【化31】

(3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9,10−デヒドロ−9−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)エポチロンD)
(化合物(8);R=Me;P=EtSi;X=S)
トリフルオロメタンスルホン酸無水物を0℃で3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9−オキソエポチロンDおよび2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルピリジンの溶液(ジクロロメタン中)に滴下により添加する。添加の完了後、この混合物を周囲温度にまでゆっくりと暖め、そして一晩攪拌する。この反応を薄層クロマトグラフィーによってモニタリングし、そしてさらなるトリフルオロメタンスルホン酸無水物を、出発物質が消耗されるまで添加する。この混合物をエバポレートし、そして残渣を酢酸エチルと合わせる。沈殿した塩を濾過により除去し、そしてエーテル溶液を水、氷冷1N HCl、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。
【0134】
(実施例27)
(3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9,10−デヒドロ−9−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)エポチロンD)
(化合物(8);R=Me;P=EtSi;X=S)
3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9−オキソエポチロンDの溶液(THF中)を−78℃でナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの1.0M溶液(THF中)に滴下により添加する。添加の完了後、この混合物を−78℃で30分間維持し、そしてN−(5−クロロ−2−ピリジル)トリフリミド(Organic Syntheses
74:77−83(1996))の溶液を滴下により添加する。この混合物を2時間維持し、次いで周囲温度にまでゆっくりと暖める。混合物をエバポレートし、そして残渣を酢酸エチルと合わせる。エーテル溶液を水、氷冷5%NaOH、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。
【0135】
(実施例28)
(3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9,10−デヒドロエポチロンD)
(化合物(5);R=Me;P=EtSi;X=S)
3,7−ビス−O(トリエチルシリル)−9,10−デヒドロ−9−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−エポチロンD、トリブチルアミン、酢酸パラジウム、およびトリフェニルホスフィンの混合物(ジメチルホルムアミド中)を、不活性ガス雰囲気下に置き、そしてスパージャーによって脱気する(degassed by sparging)。ギ酸を、シリンジを介して添加し、そしてその混合物を1時間60℃に加熱する。この混合物を周囲温度に冷却し、エーテルに希釈し、そして水、氷冷1N HCl、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)に供し、生成物を単離する。
【0136】
(実施例29)
(V.ビニルトリフレートへのカップリング)
【0137】
【化32】

(3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9,10−デヒドロ−9−アリルエポチロンD)
(化合物(9);R=Me;R=CHCH=CH;P=EtSi;X=S)
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)および塩化リチウムの混合物(無水THF中)を15分間、不活性ガス雰囲気下で攪拌し、次いで、3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9,10−デヒドロ−9−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−エポチロンDおよびアリル−トリブチルスズの溶液(THF中)を添加する。この混合物を穏やかな還流で48時間加熱する。この混合物を周囲温度に冷却し、エーテルに希釈し、そして水、氷冷1N HCl、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)に供し、生成物を単離する。
【0138】
(実施例30)
(9,10−デヒドロ−9−アリルエポチロンD)
(化合物(10);R=Me;R=CHCH=CH;X=S)
3,7−ビス−O−(トリエチルシリル)−9,10−デヒドロ−9−アリルエポチロンDの溶液(アセトニトリルおよび水中)を氷上で冷却し、そして48%フッ化水素酸で処理する。この反応を薄層クロマトグラフィーによってモニタリングする。完了の際に、この反応をsat.aq.NaHCOの添加により中和し、そして濃縮して水性スラリーにする。このスラリーを酢酸エチルで抽出し、そしてこの抽出物を水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)に供し、生成物を単離する。
【0139】
(実施例31)
(開環中間体を介する9,10−デヒドロエポチロンD)
(化合物(10);R=Me;R=H;X=S)
(工程1.開環)水素化ジイソブチルアルミニウムの溶液を、−78℃に冷却した3,7−ビス−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−9−オキソエポチロンDの溶液(テトラヒドロフラン中)に添加する。この反応をTLCまたはLCによってモニタリングし、そして出発物質を消耗した際に、リン酸緩衝液の添加によりクエンチングし、そして周囲温度にまで暖める。この混合物を酢酸エチルで抽出し、そしてこの抽出物を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0140】
(工程2.保護)工程1の生成物、塩化tert−ブチルジメチルシリル、およびイミダゾールの混合物(ジメチルホルムアミド中)を、TLC分析により判断されるように反応が完了するまで攪拌する。この混合物を水に注ぎ、そしてエーテルで抽出する。この抽出物を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートし、そして生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0141】
(工程3.ビニルトリフレート形成)工程2の生成物の溶液(THF中)を、−78℃に冷却したナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの溶液に滴下により添加する。エノラート形成に十分な時間の後、N−(2−ピリジル)トリフリミドの溶液(THF中)を添加し、そしてこの混合物を周囲温度にまでゆっくりと暖める。この混合物を水に注ぎ、そしてエーテルで抽出する。この抽出物を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートし、そして生成物をさらに精製することなく使用する。
【0142】
(工程4.トリフレート還元)工程3の生成物、トリブチルアミン、酢酸パラジウム、およびトリフェニルホスフィンの混合物(ジメチルホルムアミド中)を不活性ガス雰囲気下に置き、そしてスパージャーによって脱気する。ギ酸を、シリンジを介して添加し、そしてその混合物を1時間60℃で加熱する。この混合物を周囲温度に冷却し、エーテルに希釈し、そして水、氷冷1N HCl、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、そして乾燥までエバポレートする。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)に供し、生成物を単離する。
【0143】
(工程5.1−O−TBS基の除去)工程4の生成物および樟脳スルホン酸の溶液(メタノールおよびジクロロメタン中)を0℃で攪拌し、そしてTLCによりモニタリングする。出発物質が消失した際に、この反応物をsat.aq.NaHCOに注ぎ、そして酢酸エチルで抽出する。この抽出物を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)に供し、生成物を単離する。
【0144】
(工程6.酸化)テトラプロピルアンモニウムペルルテネートを、工程5の生成物およびN−メチルモルホリンオキシドの混合物(ジクロロメタン中)に注意深く添加し、そしてこの混合物を攪拌し、そしてTLCによりモニタリングする。出発物質が消失した際に、この反応物をsat.aq.NaHCOに注ぎ、そして酢酸エチルで抽出する。この抽出物を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。残渣をtert−ブタノールおよびリン酸緩衝液の混合物中に溶解し、そして2−メチル−2−ブテンおよび亜塩素酸ナトリウムで処理する。この反応後にTLCを行う。出発物質が消失した際に、この反応物を酢酸エチルに注ぎ、そして1N HClの添加によりpH4にし、そして水およびブラインで順次洗浄する。有機相を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)に供し、生成物を単離する。
【0145】
(工程7.15−O−TBS基の除去)フッ化テトラブチルアンモニウムの溶液を、0℃で工程6の生成物の溶液(THF中)に添加する。反応の完了後、混合物を周囲温度にし、酢酸エチルで希釈し、そして水で洗浄する。有機相を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)に供し、生成物を単離する。
【0146】
(工程8.マクロラクトン化(Macrolactonization))トリエチルアミンおよび塩化2,4,6−トリクロロベンゾイルを、周囲温度で工程7の生成物の溶液(THF中)に添加する。20分後、この混合物をトルエンに希釈し、そして数時間にわたって4−(ジメチルアミノ)−ピリジンの溶液(温トルエン中)に滴下により添加する。完了後、混合物を濃縮し、そして生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。
【0147】
(工程9.脱保護)工程8の生成物を、0℃で1:1のトリフルオロ酢酸およびジクロロメタン中に溶解する。この反応をTLCによりモニタリングし、そして完了時に真空下で濃縮する。残渣を酢酸エチル中に溶解し、そしてsat.aq.NaHCOで洗浄し、次いで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。
【0148】
(実施例32)
(開環中間体、代替経路を介した9,10−デヒドロエポチロンD)
(化合物(10);R=Me;R=H;X=S)
(工程1.開環)3,7−ビス−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−9−オキソ−エポチロンDの溶液(メタノール中)を周囲温度で1N NaOHで処理する。この反応をTLCまたはLCによってモニタリングし、そして出発物質を消耗した際に、リン酸緩衝液(pH4)の添加によりクエンチングする。メタノールを真空下でロータリーエバポレーションによって除去し、そして水性残渣を酢酸エチルで抽出する。この抽出物を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0149】
(工程2.エステル化)(トリメチルシリル)ジアゾメタンを工程1の生成物の溶液(エーテル中)に、黄色が消えずに残るまで添加する。この溶液を濃縮し、そして生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0150】
(工程3.15−OHの保護)クロロトリメチルシランを周囲温度で工程2の生成物およびトリメチルシリルイミダゾールの溶液(ジクロロメタン中)に添加する。1時間後、この混合物を飽和水性NaHCOに注ぎ、そしてジクロロメタンで抽出する。この抽出物を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0151】
(工程4.ビニルトリフレート形成)工程3の生成物の溶液(無水THF中)を、−78℃に冷却したナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの溶液(THF中)に滴下により添加する。エノラート形成に十分な時間の後、N−(2−ピリジル)トリフリミドの溶液(THF中)を添加し、そしてこの混合物を周囲温度にまでゆっくりと暖める。この
混合物を水に注ぎ、そしてエーテルで抽出する。この抽出物を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0152】
(工程5.トリフレート還元)工程4の生成物、トリブチルアミン、酢酸パラジウム、およびトリフェニルホスフィンの混合物(ジメチルホルムアミド中)を不活性ガス雰囲気下に置き、そしてスパージャーによって脱気する。ギ酸を、シリンジを介して添加し、そしてその混合物を1時間60℃で加熱する。この混合物を周囲温度に冷却し、エーテルに希釈し、そして水、氷冷1N HCl、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄する。エーテル相を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0153】
(工程6.15−OTMS基の除去)工程5の生成物をアセトニトリル、水、および酢酸の混合物中に溶解する。この反応をTLCまたはLCによってモニタリングし、そして出発物質を消耗した際に、この混合物を、真空下で、乾燥までエバポレートする。
【0154】
(工程7.メチルエステルの除去)工程6の生成物をメタノール中に溶解し、そして周囲温度で1N NaOHで処理する。この反応をTLCまたはLCによってモニタリングし、そして出発物質を消耗した際に、リン酸緩衝液(pH4)の添加によりクエンチングする。メタノールを真空下でロータリーエバポレーションによって除去し、そして水性残渣を酢酸エチルで抽出する。この抽出物を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0155】
(工程8.マクロラクトン化)トリエチルアミンおよび塩化2,4,6−トリクロロベンゾイルを、周囲温度で工程7の生成物の溶液(THF中)に添加する。20分後、この混合物をトルエンに希釈し、そして数時間にわたって4−(ジメチルアミノ)−ピリジンの溶液(温トルエン中)に滴下により添加する。添加の完了後、混合物を濃縮する。生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0156】
(工程9.脱保護)工程8の生成物を、0℃で1:1のトリフルオロ酢酸およびジクロロメタン中に溶解する。この反応をTLCまたはLCによりモニタリングし、そして出発物質を消耗した際に、真空下で乾燥までエバポレートする。残渣を酢酸エチル中に溶解し、そしてsat.aq.NaHCO3、次いでブラインで洗浄する。次いで、酢酸エチル相を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0157】
(実施例33)
(開環中間体を介する9,10−デヒドロエポチロンH
(化合物(10);R=Me:R=H:X=O)
(工程1.保護)9−オキソエポチロンHおよび2,6−ルチジンの溶液(ジクロロメタン中)を、周囲温度でtert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートで処理する。一晩攪拌した後、この混合物をジクロロメタンで希釈し、そして水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄する。この溶液を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートし、そして生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。
【0158】
(工程2.開環)3,7−ビス−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−9−オキソ−エポチロンHの溶液(メタノール中)を周囲温度で1N NaOHで処理する。この反応をTLCまたはLCによってモニタリングし、そして出発物質を消耗した際に、リン酸緩衝液(pH4)の添加によりクエンチングする。メタノールを真空下でロータリーエバポレーションによって除去し、そして水性残渣を酢酸エチルで抽出する。この抽出物を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0159】
(工程3.エステル化)(トリメチルシリル)ジアゾメタンを工程2の生成物の溶液(エーテル中)に、黄色が消えずに残るまで添加する。この溶液を濃縮し、そして生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0160】
(工程4.15−OHの保護)クロロトリメチルシランを周囲温度で工程3の生成物およびトリメチルシリルイミダゾールの溶液(ジクロロメタン中)に添加する。1時間後、この混合物を飽和水性NaHCOに注ぎ、そしてジクロロメタンで抽出する。この抽出物を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0161】
(工程5.ビニルトリフレート形成)工程4の生成物の溶液(無水THF中)を、−78℃に冷却したナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの溶液(THF中)に滴下により添加する。エノラート形成に十分な時間の後、N−(2−ピリジル)トリフリミドの溶液(THF中)を添加し、そしてこの混合物を周囲温度にまでゆっくりと暖める。この混合物を水に注ぎ、そしてエーテルで抽出する。この抽出物を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0162】
(工程6.トリフレート還元)工程5の生成物、トリブチルアミン、酢酸パラジウム、およびトリフェニルホスフィンの混合物(ジメチルホルムアミド中)を不活性ガス雰囲気下に置き、そしてスパージャーによって脱気する。ギ酸を、シリンジを介して添加し、そしてその混合物を1時間60℃で加熱する。この混合物を周囲温度に冷却し、エーテルに希釈し、そして水、氷冷1N HCl、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄する。エーテル相を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0163】
(工程7.15−OTMS基の除去)工程6の生成物をアセトニトリル、水、および酢酸の混合物中に溶解する。この反応をTLCまたはLCによってモニタリングし、そして出発物質を消耗した際に、この混合物を、真空下で、乾燥までエバポレートする。
【0164】
(工程8.メチルエステルの除去)工程7の生成物をメタノール中に溶解し、そして周囲温度で1N NaOHで処理する。この反応をTLCまたはLCによってモニタリングし、そして出発物質を消耗した際に、リン酸緩衝液(pH4)の添加によりクエンチングする。メタノールを真空下でロータリーエバポレーションによって除去し、そして水性残渣を酢酸エチルで抽出する。この抽出物を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0165】
(工程9.マクロラクトン化)トリエチルアミンおよび塩化2,4,6−トリクロロベンゾイルを、周囲温度で工程8の生成物の溶液(THF中)に添加する。20分後、この混合物をトルエンに希釈し、そして数時間にわたって4−(ジメチルアミノ)−ピリジンの溶液(温トルエン中)に滴下により添加する。添加の完了後、混合物を濃縮する。生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0166】
(工程10.脱保護)工程9の生成物を、0℃で1:1のトリフルオロ酢酸およびジクロロメタン中に溶解する。この反応をTLCまたはLCによりモニタリングし、そして出発物質を消耗した際に、真空下で乾燥までエバポレートする。残渣を酢酸エチル中に溶解し、そしてsat.aq.NaHCO3、次いでブラインで洗浄する。次いで、酢酸エチル相を乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0167】
(実施例34)
(化合物(24);R=Me;X=S)
(工程1.ケトン還元)実施例32の工程3の生成物の溶液(メタノール中)を0℃に冷却し、そして1当量の水素化ホウ素ナトリウムで処理する。この溶液を0℃で40分間攪拌し、その後sat.aq.NHClを添加する。有機物を酢酸エチルで抽出し、そしてこの抽出物を乾燥し、濾過し、そして乾燥まで濃縮する。生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。
【0168】
(工程2.キサンテート形成)工程1の生成物の溶液(THF中)を−78℃に冷却し、そしてナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの1.0M溶液(THF中)1当量で処理する。30分後、二硫化炭素を添加し、そして混合物を周囲温度にまで暖める。1時間後、ヨウ化メチルを添加し、そしてこの反応を12時間進行させ、sat.aq.NHClに注ぎ、そして酢酸エチルで抽出する。この抽出物を水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。
【0169】
(工程3.熱分解脱離)工程2からの生成物を高真空(約0.1トール)下に置き、そして出発物質がTLC分析によって決定されるように消耗するまで、150〜200℃で加熱する。この反応を周囲温度に冷却し、そして残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに供し、生成物を単離する。
【0170】
(実施例35)
(化合物(24);R=Me;X=O)
(工程1.ケトン還元)実施例33の工程4の生成物の溶液(メタノール中)を0℃に冷却し、そして1当量の水素化ホウ素ナトリウムで処理する。この溶液を0℃で40分間攪拌し、その後sat.aq.NHClを添加する。有機物を酢酸エチルで抽出し、そしてこの抽出物を乾燥し、濾過し、そして乾燥まで濃縮する。生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。
【0171】
(工程2.キサンテート形成)工程1の生成物の溶液(THF中)を−78℃に冷却し、そしてナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの1.0M溶液(THF中)1当量で処理する。30分後、二硫化炭素を添加し、そして混合物を周囲温度にまで暖める。1時間後、ヨウ化メチルを添加し、そしてこの反応を12時間進行させ、sat.aq.NHClに注ぎ、そして酢酸エチルで抽出する。この抽出物を水、sat.aq.NaHCO、およびブラインで順次洗浄し、次いで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートする。生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。
【0172】
(工程3.熱分解脱離)工程2からの生成物を高真空(約0.1トール)下に置き、そして出発物質がTLC分析によって決定されるように消耗するまで、150〜200℃で加熱する。この反応を周囲温度に冷却し、そして残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに供し、生成物を単離する。
【0173】
(実施例36)
(2−(ピバロリイル(pivalolyl)オキシメチル)−4−(クロロメチル)チアゾール)
【0174】
【化33】

30mmolの1,3−ジクロロアセトンおよび30mmolの2−(ピバロイルオキシ)−チオアセトアミドの混合物を21mlの無水アルコール中に溶解し、そして窒素下で一晩還流させた。得られた混合物を真空下で濃縮し、そして残渣を100mlの水中に溶解した。得られた水溶液をpH=8に中和し、その後それをエーテル(200ml×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO、水、およびブラインで順次洗浄した。有機相をMgSOで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして、褐色シロップを得た。シリカゲル(2%〜10%アセトン(ヘキサン中)勾配)上のクロマトグラフィーにより、200mgの2−(ピバロリイル(pivalolyl)オキシメチル)−4−クロロメチルチアゾール、および800mgの2−(ヒドロキシメチル)−4−(クロロメチル)チアゾールを得た。
【0175】
(実施例37)
(2−(tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)−4−(クロロメチル)チアゾール)
【0176】
【化34】

800mgの(2−ヒドロキシメチル)−(4−クロロメチル)チアゾール(4.89mmol)および1.33gのイミダゾール(18.56mmol)の混合物を10mlのDMF中に溶解した。得られた溶液を0℃に冷却し、その後、1.47gの塩化t−ブチルジメチルシリル(9.78mmol)を一部ずつ添加した。得られる溶液を周囲温度にまで暖め、そして反応をもう4時間継続し、その後、30mlのsat.aq.NaHCO溶液を添加することによりクエンチングした。得られる混合物を50ml×2の酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物を水20ml×3、およびブラインで順次洗浄した。有機相をMgSOで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして、褐色シロップを得た。シリカゲル(1%〜10%アセトン(ヘキサン中)勾配)上のクロマトグラフィーにより、800mgの2−(tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)−4−(クロロメチル)−チアゾールを得た。
【0177】
(実施例38)
([(2−(tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)−4−チアゾリル)メチル]トリブチルホスホニウムクロライド)
【0178】
【化35】

557.0mgの2−(tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)−4−(クロロメチル)チアゾール(2.0mmol)の溶液(3mlのベンゼン中)に、窒素ガス雰囲気下で滴下によりトリ−n−ブチルホスフィンを添加した。得られた溶液を一晩窒素下で還流させた。次いで、この溶液を真空下で濃縮し、そして残渣を、1:1(v/v)のエーテルおよびヘキサンの混合物を添加することにより結晶させた。次いで、固形物を濾過し、少量のヘキサンで洗浄し、その後、真空中で乾燥させて、800mgのホスホニウム塩を白色固形物として得た。
【0179】
(実施例39)
(21−ヒドロキシ−9,10−デヒドロ−エポチロンDの調製)
【0180】
【化36】

カリウムビス(トリメチルシリル)アミドの0.5M溶液(トルエン(2.4mL)中)を、−20℃で(2−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチルチアゾル−4−イル)メチルトリ−n−ブチル−ホスホニウムクロライド(0.58g)の溶液(1mLのテトラヒドロフラン(THF)中)に添加した。この溶液を30分にわたって0℃にまで暖め、次いで−78℃に冷却し、そしてケトン1(128mg)(A.Rivkinら,J.Am.Chem.Soc.2003 125:2899−2901)の溶液を添加した。混合物を1時間にわたって−40℃にまで暖め、その時点で、反応を、薄層クロマトグラフィー分析によって完了したことを判定した。この反応を、sat.aq.塩化アンモニウムの添加によってクエンチングし、そして酢酸エチルで抽出した。この抽出物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートした。残渣をシリカゲル(20:1ヘキサン/エーテル)上でクロマトグラフィーに供し、150mgの純粋な保護生成物を得た。
【0181】
この保護生成物(150mg)を3mLのTHF中に溶解し、そして0℃でフッ化水素−ピリジン(2mL)で処理した。反応を1時間にわたって周囲温度に暖め、そして次いで4時間、維持した。メトキシトリメチルシラン(15mL)をゆっくりと添加し、そしてこの混合物を一晩攪拌した。混合物を乾燥までエバポレートし、そして残渣をシリカゲル(3:1〜1:1のヘキサン/アセトン)上でクロマトグラフィーに供し、64mgの純粋21−ヒドロキシ−9,10−デヒドロエポチロンDを得た。
【0182】
(実施例40)
(21−アジド−9,10−デヒドロ−エポチロンDの調製)
【0183】
【化37】

21−ヒドロキシ−9,10−デヒドロエポチロンD(30mg)の溶液(1.5mLの無水THF中)を0℃に冷却し、そして1分にわたってジフェニルホスホリルアジド(15.3μL)で処理した。5分後、1,8−ジアザ[5.4.0]ビシクロウンデ−7−セン(DBU)(8.8μL)を添加し、そしてこの反応物を0℃で2時間攪拌し、次いで周囲温度に暖めた。18時間後、薄層クロマトグラフィー分析により、21−ヒドロキシ−9,10−デヒドロエポチロンDが残っていることが示され、そのためこの混合物を0℃に冷却し、そしてさらにジフェニルホスホリルアジド(2μL)で処理した。この混合物を0℃でさらに30分攪拌し、そして次いで周囲温度で1.5時間攪拌した。この溶液を30mLの酢酸エチルに注ぎ、そして2×10mLの水で洗浄した。合わせた水性洗浄物を酢酸エチル(2×15mL)で抽出し、そしてこの抽出物を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートした。粗製の物質をシリカゲル上でクロマトグラフィーに供し、9mgの生成物を得た。
【0184】
(実施例41)
(21−アミノ−9,10−デヒドロ−エポチロンDの調製)
【0185】
【化38】

21−アジド−9,10−デヒドロエポチロンD(14mg)およびトリメチルホスフィン(33μLの1M溶液(THF中))の溶液(0.3mLのTHF中)を5分間攪拌し、次いで80μLの水で処理し、そしてさらに3時間攪拌した。この混合物を乾燥までエバポレートし、そして残渣をシリカゲル(10%メタノール(クロロホルム中))上でクロマトグラフィーに供し、8mgの21−アミノ−9,10−デヒドロエポチロンDを得た。正確分子量:C2741S(M+H)についての算定=505.2731,実測=505.2719。
【0186】
【数1】

(実施例42)
(21−ヒドロキシ−9,10−デヒドロ−26−トリフルオロエポチロンDの調製)
【0187】
【化39】

カリウムビス(トリメチルシリル)アミドの0.5M溶液(トルエン(1.5mL)中)を、10分にわたって滴下により、−30℃で、(2−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−メチルチアゾル−4−イル)メチルトリ−n−ブチル−ホスホニウムクロライド(0.641g)の溶液(3mLのテトラヒドロフラン(THF)中)に添加した。この溶液を40分にわたって0℃にまで暖め、次いで−70℃に冷却し、そしてケトン3(85mg)(A.Rivkinら,J.Am.Chem.Soc.2003 125:2899−2901)の溶液(1mLのTHF中)を10分にわたって滴下により添加した。20分後、この混合物を1時間にわたって−30℃にまで暖めた。反応をsat.aq.塩化アンモニウムの添加によってクエンチングし、そして酢酸エチルで抽出した。この抽出物をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートした。残渣をシリカゲル上でクロマトグラフィーに供し、0、2、4、6、および8%エーテル(ヘプタン中)で順次溶出し、67mgの純粋保護生成物を得た。
【0188】
この保護生成物(67mg)を1.5mLのTHF中に溶解し、そして0℃でフッ化水素−ピリジン(0.6mL)で処理した。20分後、この反応物を周囲温度にまで暖め、3.5時間維持し、次いで0℃に冷却した。メトキシトリメチルシラン(6mL)をゆっくりと添加し、そしてこの混合物を周囲温度にし、そしてエバポレートしてオイルにした。このオイルをシリカゲル(0、10、20、30、40、50、60、70、80、および90%酢酸エチル(ヘキサン中))上でクロマトグラフィーに供し、純粋な21−ヒドロキシ−9,10−デヒドロ−26−トリフルオロエポチロンDを得た。LC/MS:m/z 560 [M+H]。
【0189】
(実施例43)
(21−アジド−9,10−デヒドロ−26−トリフルオロエポチロンDの調製)
【0190】
【化40】

21−ヒドロキシ−9,10−デヒドロ−26−トリフルオロエポチロンD(20mg)の溶液(0.5mLの無水THF中)を0℃に冷却し、そしてジフェニルホスホリルアジド(10μL)で処理した。5分後、1,8−ジアザ[5.4.0]ビシクロウンデ−7−セン(DBU)(5μL)を添加し、そしてこの反応物を周囲温度に暖め、そして一晩攪拌した。この反応混合物を直接シリカゲルのカラムに適用した。次いで、これを0、10、20、30、40、50、60、70、および80%酢酸エチル(ヘキサン中)で溶出し、生成物を得た。MS:C2738S[M+H]について算定=530.2563;実測585.2797。
【0191】
(実施例44)
(21−アミノ−9,10−デヒドロ−26−トリフルオロエポチロンDの調製)
【0192】
【化41】

21−アジド−9,10−デヒドロ−26−トリフルオロエポチロンD(13mg)の溶液を0℃に冷却し、そして0.5mLのTHF中のトリメチルホスフィン(28μLの1M溶液(THF中))で処理し、5分間攪拌し、次いで100μLの水で処理し、1.5時間にわたって周囲温度にまで暖めた。この反応混合物を直接シリカゲルのカラムに適用した。次いで、これを、1%トリエチルアミンを含有するジクロロメタン中0、2、4、6、8、および10%メタノールで溶出し、不純な生成物を得た。シリカゲル上の第二のクロマトグラフィー(これは、ヘキサン中0、25、50、75、および100%酢酸エチル、次いで1%トリエチルアミンを含有するジクロロメタン中0、2、および5%メタノールで溶出する)により、純粋な生成物を得た。LC/MS:m/z 559 [M+H]。
【0193】
(実施例45)
(17−デス(2−メチル−4−チアゾリル)−17−(2−ピリジル)−9,10−デヒドロエポチロン(peothilone)D)(KOSN 1632)
【0194】
【化42】

(2−ピリジル)メチルトリ−n−ブチルホスホニウムクロライドを以下のように調製した。10mmolの2−(クロロメチル)ピリジンの溶液(15mlのベンゼン中)に、10mmolのトリ−n−ブチルホスフィンを窒素下で滴下により添加した。得られた溶液を18時間還流させ、その後、周囲温度にまで冷却した。次いで、この溶液を真空下で濃縮した;必要な測定は全て、空気との接触を減少させるように行った。残渣にジエチルエーテルを添加することにより、白色固形物が形成された。母液を濾過して除去し、そしてこの白色固形物を、窒素下、ジエチルエーテルで数回洗浄し、次いでこの固形物を真空下で乾燥して、白色粉末を最終生成物として得た。
【0195】
17−デス(2−メチル−4−チアゾリル)−17−(2−ピリジル)−9,10−デヒドロエポチロン(peothilone)Dを、実施例42の方法に従って調製したが、(2−(tert−ブチルジメチル−シリルオキシ)−メチルチアゾル−4−イル)メチルトリ−n−ブチル−ホスホニウムクロライドを(2−ピリジル)メチルトリ−n−ブチルホスホニウムクロライドと置き換え、そしてクエンチング前に反応物を−10℃にまで暖めた。
【0196】
【数2】

(実施例46)
(17−デス(2−メチル−4−チアゾリル)−17−(2−キノリル)−9,10デヒドロエポチロン(peothilone)D)
【0197】
【化43】

実施例42の方法に従って調製したが、(2−(tert−ブチルジメチル−シリルオキシ)−メチルチアゾル−4−イル)メチルトリ−n−ブチル−ホスホニウムクロライドを(2−キノリル)メチルトリ−n−ブチルホスホニウムクロライドと置き換え、そしてクエンチング前に、この反応物を周囲温度にまで暖め、そして3時間維持した。
【0198】
【数3】

(実施例47)
(17−デス(2−メチル−4−チアゾリル)−17−(2−ベンゾチアゾリル)−9,10−デヒドロエポチロン(peothilone)D(KOSN 1635)
【0199】
【化44】

実施例42の方法に従って調製したが、(2−(tert−ブチルジメチル−シリルオキシ)−メチルチアゾル−4−イル)メチルトリ−n−ブチル−ホスホニウムクロライドを(2−ベンゾチアゾリル)メチルトリ−n−ブチルホスホニウムクロライドと置き換え、そしてクエンチング前に、この反応物を周囲温度にまで暖め、そして2日間維持した。
【0200】
【数4】

(実施例48)
(細胞傷害性データ)
(細胞株および培養条件)
ヒト乳癌細胞株MCF−7、多薬耐性乳癌細胞株NCI/ADRをNational Cancer Instituteから入手した。ヒト非小細胞肺癌細胞株A549およびヒト卵巣癌細胞株SKOV−3をAmerican Type Culture Collection(Manassas,VA)から入手した。全ての細胞株をRPMI−1640培地(Gibco/BRL,Rockville,MD)(2mM L−グルタミン、25mM HEPES、および10% FBS(Hyclone,Logan,UT)を補足した)中で維持した。細胞を5%CO中37℃で加湿インキュベーター中で維持した。
【0201】
(細胞傷害性アッセイ)
腫瘍細胞を、96ウェルプレート中でウェル当たり5000(MCF−7)、7500(NCI/ADR),5000(A549)、および7500(SKOV3)細胞で、100μl中に播種した。細胞を24時間接着させた。0.001〜1000nM(100μl中)の範囲の各化合物を二連ウェル中で細胞に添加した。3日後、細胞を4℃で1時間10%トリクロロ酢酸で固定し、そして次いで、室温で20分間、0.2%スルホローダミンB(SRB)/1%酢酸で染色した。結合していない染料を1%酢酸ですすいで流し、そして次いで未結合のSRBを200μlの10mM Tris塩基で抽出した。吸光度を、96ウェルマイクロタイタープレート読取器(Spectra Max 250,Molecular Devices)を用いて515nmで測定した。IC50値をKaleidaGraphプログラムを用いて算定した。この実験を2回実施した。この結果を以下の表1中に示す。
【0202】
【表1】

(実施例49)
(さらなる9,10−デヒドロエポチロンDアナログ)
実施例39(R=メチルの場合)および42(R=CFの場合)の手順に従って、表2中に示すさらなる化合物を、(2−(tert−ブチルジメチル−シリルオキシ)−メチルチアゾル−4−イル)メチルトリ−n−ブチル−ホスホニウムクロライドを対応するホスホニウムクロライドと置き換えることにより、作製した。細胞傷害性データ(表2)を、実施例48に記載のようにして得た。シトクロームP450阻害データ(表3)を、BFC基質に対する初期速度方法を用いて得た。
【0203】
(4−メトキシピリジン−2−イル)メチルトリブチルホスホニウムクロライドを以下のようにして調製した。770mg(4.9mmol)の2−(クロロメチル)−4−メトキシピリジンの溶液(7mlのベンゼン中)に、1.22mlのトリ−n−ブチルホスフィン(4.9mmol)を、窒素下で滴下により添加した。得られた溶液を18時間還流させ、その後、周囲温度にまで冷却した。次いで、この溶液を真空下で濃縮した;必要な測定は全て、空気との接触を減少させるように行った。残渣にジエチルエーテルを添加することにより、わずかに黄色の固形物が形成された。母液を濾過して除去し、そしてこの黄色固形物を、窒素下、ジエチルエーテルで数回洗浄し、次いでこの固形物を真空下で乾燥して、1.2gの黄色粉末としてホスホニウム塩を得た。(5−メチル−イソキサゾル−3−イル)メチルトリブチルホスホニウムクロライドを以下のようにして調製した:3−(クロロメチル)−5−メチルイソキサゾール(0.30g、2.28mmol、1eq.)を100mLオーブン乾燥RBFにおいて6mLベンゼン中に溶解した。トリブチルホスフィン(0.57mL、2.28mmol、1eq.)をシリンジを介して添加し、そしてその溶液を窒素ガス雰囲気下で15時間還流させた。この溶液を室温に冷却し、そしてこの体積を真空中で減少させた。EtOを添加し、所望のホスホニウム塩を沈殿させた。エーテル上清をデカントにて除去し、そして白色固形物を一晩真空下で乾燥した(0.760g、99%収率)。
【0204】
表2中に示した選択された化合物についての13C−NMRデータは、以下の通りである:
【0205】
【数5−1】

【0206】
【数5−2】

【0207】
【化45】

【0208】
【表2−1】

【0209】
【表2−2】

(実施例50)
(薬理学パラメーター)
シトクロームP450阻害測定を、CYP3A4に対する基質としてBFCを用いて、市販のキット(BD GenTest,Woburn,MA)を用いて実施した。そのようにして得られたμMでのIC50値を表3中に列挙する。
【0210】
【表3】

化合物溶解度を以下のようにして決定した:5μLのストック溶液(20mg/mL(DMSO中))を95μLのリン酸緩衝化生理食塩水に添加した。約10秒間ボルテックスにかけた後、溶液/懸濁液を0.45ミクロンフィルターで濾過し、そして分析物の量をHPLCによって定量した。決定した溶解度(mg/mL)は、以下の通りであった:エポチロンD、<0.06;トランス−9,10−デヒドロエポチロンD、<0.06;21−OH−26−F−トランス−9,10−デヒドロエポチロンD、0.1;21−アミノ−トランス−9,10−デヒドロエポチロンD、>0.6;21−アミノ−26−F−トランス−9,10−デヒドロエポチロンD、>0.6;26−F−トランス−9,10−デヒドロエポチロンD、<0.06;21−OH−トランス−9,10−デヒドロエポチロンD、0.1;KOSN 1635、<0.02;KOSN 1632、0.12。
【0211】
新鮮なマウスおよびヒト血漿における化合物の半減期を、DMSO中に化合物を溶解し、そしてアリコートをマウスまたはヒト血漿のサンプルに添加することにより、決定した。ゼロ時点で、各サンプルから75μlをアリコートに分け、そして150μlのアセトニトリルを添加した。13500rpmで3分間、白色沈殿物を遠心分離した。全ての透明な上清を別の微小遠心分離チューブに移し、そして遠心分離工程(13500rpm/3分)を繰り返した。150μlの透明な上清を標識したHPLCサンプルチューブに注意深くピペットで移し、そしていかなるタンパク質ペレットもピペットに混入することを避けるように試みた。サンプルをHPLCにより分析し、真正標準との比較により、各時点で残存する化合物を測定した。マウスおよびヒト血漿のそれぞれにおける半減期(分)は、以下の通りであると決定された:エポチロンD:49,>1440;21−OH−26−F−トランス−9,10−デヒドロエポチロンD:379,>1440;21−アミノ−トランス−9,10−デヒドロエポチロンD:59,>1440;26−F−トランス−9,10−デヒドロエポチロンD:163,>1440;21−OH−トランス−9,10−デヒドロエポチロンD:1059,>1440;KOSN 1635:58,>1440;KOSN 1632:28,>1440。凍結マウス血漿を用いて、トランス−9,10−デヒドロエポチロンDは、47分の半減期を有した。新鮮ヒト血漿では、トランス−9,10−デヒドロエポチロンDは、>1440分の半減期を有した。
【0212】
血漿タンパク質結合研究を、以下のようにして実施した。化合物をDMSO中に溶解し、次いで、マウスまたはヒト血漿の新鮮または解凍したサンプルのいずれかに希釈し、そして37℃でインキュベートした。50μLの時点で、100μlのアセトニトリルと混合し、そして約14000rpmで3分間遠心分離した。100μLアリコートを上清から取り出し、そして総画分(total fraction)における化合物を示す分析のためにわきに置いた。残存する上清を、YM10膜を備えたMicrocon限外濾過デバイス上に移し、そして遠心分離して、タンパク質結合物質を分離した。タンパク質非含有濾液の50μLアリコートを100μLのアセトニトリルと混合し、約14000rpmで3分間遠心分離し、次いで100μLの上清を採集し、そして分析して、タンパク質を結合していない化合物の量を決定した。総サンプル中の化合物の量およびタンパク質非含有画分中の化合物の量を、真正標準に対するHPLC分析によって決定した。
【0213】
これらの血漿タンパク質結合研究により、タンパク質が結合した化合物が以下の割合であることが示された:エポチロンD:98.5%;トランス−9,10−デヒドロエポチロンD、96.6%;26−トリフルオロ−トランス−9,10−デヒドロエポチロンD、96.5%;21−アミノ−トランス−9,10−デヒドロエポチロンD、89.5%;21−OH−26−F−トランス−9,10−デヒドロエポチロンD、92.8%;21−OH−トランス−9,10−デヒドロエポチロンD、94.2%;KOSN 1635、99.7%;KOSN 1632、89.4%。
【0214】
本発明の好ましい実施形態を例証し、そして記載してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、それにおいて種々の変更がなされ得ることが理解される。
【0215】
独占的な所有または権利が請求される本発明の実施形態は、前述のように定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)の化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくはプロドラッグ:
【化1】

ここで、
Rは、Hであるか、または置換されたもしくは置換されていない低級アルキルであり;
は、Hであるか、または置換されたもしくは置換されていない低級アルキル、低級アルケニル、もしくは低級アルキニルであり;そして
Arは、置換されたもしくは置換されていないヘテロアリールであり;
但し、Rがメチルまたはトリフルオロメチルであり、そしてArが
【化2】

である場合、RはHではない、化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、ここでArが、置換されたもしくは置換されていないチアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリル、キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、ベンゾチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、またはベンゾトリアゾリルである、化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物であって、ここでArが、
【化3】

であり、ここでXは、SまたはOであり、そしてRは、Hまたは置換されたもしくは置換されていない低級アルキルである、化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物であって、ここでRが、ハロ、ヒドロキシル、アミノ、およびアジドから独立して選択される1つ以上の基と置換された低級アルキルである、化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物であって、ここでRが、メチルまたはトリフルオロメチルである、化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物であって、ここでRが、ハロ、ヒドロキシル、アミノ、およびアジドから独立して選択される1つ以上の基と置換された低級アルキルである、化合物。
【請求項7】
以下からなる群から選択される化合物:
【化4】

【請求項8】
請求項1に記載の化合物を、ヒトまたは動物被験体に投与される場合にヒトまたは動物被験体において細胞過剰増殖を減少させるのに有効な量で、薬学的に受容可能なキャリアと共に含む、組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物に加えて、1つ以上の活性剤を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
ヒトまたは動物被験体において過剰増殖性疾患を処置する方法であって、該ヒトまたは動物被験体に、該被験体において細胞過剰増殖を減少させるのに有効な量の請求項8に記載の組成物を投与することを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記過剰増殖性疾患が、癌、乾癬、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、アテローム硬化症、および再狭窄から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記過剰増殖性疾患が、乳癌、結腸直腸癌、および非小細胞肺癌からなる群から選択される癌である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
トランス−9,10−デヒドロエポチロンを合成する方法であって、9−オキソ−エポチロンを該トランス−9,10−デヒドロエポチロンに変換する工程を包含する、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記9−オキソ−エポチロンが前記トランス−9,10−デヒドロエポチロンに変換されるのが、該9−オキソ−エポチロンの遊離ヒドロキシル基を保護し、該9−オキソ−エポチロンの9−オキソ基を還元して9−ヒドロキシル保護化合物を得、該9−ヒドロキシル保護化合物を活性化基で活性化し、該活性化基を脱離させて保護9,10−デヒドロエポチロンを得、そして次いで該保護9,10−デヒドロエポチロンを脱保護して該9,10−デヒドロエポチロンを得ることによってである、方法。
【請求項15】
前記活性化基がキサンテートまたはチオカルバメートであり、そして前記活性化基を脱離させる工程が熱分解によって実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法であって、前記9−オキソ−エポチロンが前記トランス−9,10−デヒドロエポチロンに変換されるのが、該9−オキソ−エポチロンの遊離ヒドロキシル基を保護し、該保護9−オキソ−エポチロンをトリフレート剤(triflating agent)および塩基と反応させて9,10−デヒドロ−9−トリフルオロメタンスルホニルオキシ中間体化合物を得、そして次いで該9,10−デヒドロ−9−トリフルオロメタンスルホニルオキシ中間体の9−トリフルオロメタンスルホニルオキシ基を還元し、そして次いで該保護9,10−デヒドロエポチロン化合物を脱保護して該9,10−デヒドロエポチロンを得ることによってである、方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法であって、前記9−オキソエポチロンが前記トランス−9,10−デヒドロエポチロンに変換されるのが、該9−オキソエポチロンの遊離ヒドロキシル基を保護し、該保護9−オキソエポチロンをトリフレート試薬および塩基と反応させて、9,10−デヒドロ−9−トリフルオロメタンスルホニルオキシエポチロンを得、該9,10−デヒドロ−9−トリフルオロメタンスルホニルオキシエポチロンとアルキル有機金属化合物またはアルケニル有機金属化合物とを、該トリフレート基がアルキルまたはアルケニル基によって置換される条件下で反応させ、そして脱保護して9−アルキルまたは9−アルケニル9,10−デヒドロエポチロンを提供することによってである、方法。
【請求項18】
製剤として使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
過剰増殖性疾患の処置のための医薬品の製造における、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項20】
前記過剰増殖性疾患が、癌、乾癬、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、アテローム硬化症、および再狭窄から選択される、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記過剰増殖性疾患が、乳癌、結腸直腸癌、および非小細胞肺癌からなる群から選択される癌である、請求項19に記載の使用。

【公開番号】特開2011−6480(P2011−6480A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−228356(P2010−228356)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【分割の表示】特願2005−507102(P2005−507102)の分割
【原出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【出願人】(500017830)コーサン バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】