トランスミッション
【課題】スプライン溝にかかる応力集中をこれまで以上に緩和できてスプライン軸を備えたトランスミッションを提供する。
【解決手段】スプライン溝20に嵌合された歯車41を備えるメインシャフト12と、スプライン溝20に嵌合された歯車43を備えるカウンタシャフト13とを有しており、歯車同士の噛み合いを変更することにより、メインシャフト12からカウンタシャフト13への動力伝達の回転比率を変更可能に構成されたトランスミッション1である。そして、スプライン溝20における軸方向の少なくとも1つの溝端部20aは、スプライン溝20の溝底面20bの軸線方向中央部21が溝終端側へ向かうに連れ溝深さHが浅くなる湾曲面に構成され、さらに、溝端部20aは、溝底面20bの溝幅方向の両脇部20eの溝横断面方向における曲率が溝終端側へ向って徐々に大きくなるように構成されている。
【解決手段】スプライン溝20に嵌合された歯車41を備えるメインシャフト12と、スプライン溝20に嵌合された歯車43を備えるカウンタシャフト13とを有しており、歯車同士の噛み合いを変更することにより、メインシャフト12からカウンタシャフト13への動力伝達の回転比率を変更可能に構成されたトランスミッション1である。そして、スプライン溝20における軸方向の少なくとも1つの溝端部20aは、スプライン溝20の溝底面20bの軸線方向中央部21が溝終端側へ向かうに連れ溝深さHが浅くなる湾曲面に構成され、さらに、溝端部20aは、溝底面20bの溝幅方向の両脇部20eの溝横断面方向における曲率が溝終端側へ向って徐々に大きくなるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトランスミッションに関し、特に、ドグクラッチが設けられたトランスミッションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の変速歯車対を有する多段式のトランスミッションにおいて、メインシャフトおよびカウンタシャフト上を摺動可能に設けられた変速ギヤやスリーブを、両シャフト上を移動させることで変速を行う構造のものがある。この変速動作は、メインシャフトおよびカウンタシャフトと平行に摺動するシフトフォークを駆動させることで円滑に変速動作を行うようにした構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたものは、メインシャフトとカウンタシャフトとの間に複数の歯車対を有する変速機と、メインシャフト上に配設されるクラッチとを備えるトランスミッションである。そして、複数の歯車対のうち、回転駆動力を伝達する1つの歯車対を選択するために軸方向に摺動可能に取り付けられた摺動可能ギヤと、軸方向に摺動不能に取り付けられた摺動不能ギヤとの間にドグクラッチが設けられた構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−248914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲のメインシャフトと変速歯車との接続並びにカウンタシャフトと変速歯車との接続においては、両シャフトがスプライン軸として構成されてスプライン嵌合により行われている。この種のスプライン嵌合においては、シャフトにおける応力集中を緩和する目的で、例えば、特許文献1(特許文献1の図1)に示されているように、スプライン溝には、スプライン溝端部が軸縦断面方向から見てテーパ形状となる構造が採用されている。
【0006】
この構造は、例えば、図16に示すように、スプライン軸112に設けられたスプライン溝120が、その溝端部120aが溝終端側(図16において左側)に向って溝深さを浅くするようなテーパ面121bにて構成されている。
【0007】
この種の溝端部120aの構造によりある程度の効果を奏することはできるが、特に、ドグクラッチを用いたトランスミッションのスプライン軸においては、急激な動力伝達力の変化がありスプライン溝に大きな応力集中が生じ易く、これまで以上にスプライン溝にかかる応力を緩和できてスプライン軸への負荷をより軽減できるトランスミッションの構造が切望されていた。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スプライン溝にかかる応力をこれまで以上に効果的に緩和できるスプライン軸を備えたトランスミッションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、スプライン溝に嵌合された歯車を備えるメインシャフトと、スプライン溝に嵌合された歯車を備えるカウンタシャフトとを有しており、前記歯車同士の噛み合いを変更することにより、前記メインシャフトから前記カウンタシャフトへの動力伝達の回転比率を変更可能に構成されたトランスミッションにおいて、
前記スプライン溝における軸方向の少なくとも1つの溝端部は、前記スプライン溝の溝底面の軸線方向中央部が溝終端側へ向かうに連れ溝深さが浅くなるシャフト中心方向にへこむ湾曲面に構成され、さらに、前記溝端部は、溝底面の溝幅方向の両脇部の溝横断面方向における曲率が溝終端側へ向って徐々に大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記溝端部はその終端輪郭線が平面視で溝外側に膨らむ湾曲線に形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の構成に加えて、前記溝端部は湾曲した溝底面の軸方向の長さが最大溝深さの4倍以上に構成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1または2に記載の構成に加えて、前記溝端部は、溝最深部を横断する溝空間の横断面積に対して、前記溝端部の切れ上がり始端から溝終端側に向って前記溝端部の全長の60%までの領域において、溝空間の横断面積の断面積変化率は、切れ上がり始端から溝終端側へ前記溝端部の全長の1%の位置移動に対して0.3%以下に構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、このように、スプライン溝の溝底面の軸線方向中央部が溝終端側へ向かうに連れ溝深さが浅くなるシャフト中心方向にへこむ湾曲面に構成されたことに加えて、この湾曲底面がその両脇部の溝横断面方向における曲率を軸方向端部へ向かうに連れて徐々に大きくなるという構成が相乗することで、スプライン溝の溝端部における特定部位への応力集中が緩和され応力分散が効果的に行われ、更に、最大応力の低減をはかることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、スプライン溝の最終端部分の形状が湾曲線にて構成されることで、溝端部のなだらかな形状により、応力分散を効果的に図ることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、スプライン溝の溝端部の湾曲した溝底面の軸方向の長さが最大溝深さの4倍以上に構成されたことで、応力分散を効果的に図ることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、スプライン溝の溝端部にて形成される溝空間の横断面積の変化率が、溝端部の切れ上がり始端から溝終端側に向って前記溝端部の全長の60%までの領域において、切れ上がり始端から溝終端側へ前記溝端部の全長の1%の位置移動に対して0.3%以下に構成されたことにより、応力分散を効果的に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るトランスミッションの第1実施形態の要部断面図である。
【図2】図1に示すメインシャフトの要部(M部分)の部分斜視図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】図2に示すスプライン溝の溝端部を示す平面図である。
【図5】図2のX−X線に沿った部分の断面図
【図6】図4に示すスプライン溝におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に沿った部分の断面図である。
【図7】図6に示す各断面((A−A線)〜(D−D線))を重ね合わせるように図示した説明図である。
【図8】図2に示すスプライン軸の動力伝達時における応力分布図である。
【図9】図15に示す従来のスプライン軸におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線に沿った部分の各断面を重ね合わせるように図示した説明図である。
【図10】図15に示す従来のスプライン軸の動力伝達時における応力分布図である。
【図11】第2実施形態におけるスプライン溝の溝端部を示す平面図である。
【図12】図11におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に沿った部分の各断面図を重ね合わせるように図示した説明図である。
【図13】図11に示す第2実施形態のスプライン軸の動力伝達時における応力分布図である。
【図14】スプライン溝の溝端部における溝空間の断面積変化率を示すグラフである。
【図15】従来のスプライン軸の斜視図である。
【図16】図15におけるX−X線に沿った部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、図1〜図10を参照して第1実施形態を説明する。
なお、図1は、自動二輪車に適用された本実施形態の常時噛合式のトランスミッションの要部断面図である。また、図2はメインシャフト12の要部(図1におけるM部分)の斜視図である。また、図3は図2の部分拡大図であり、図4はスプライン溝の溝端部を示す平面図であり、図5は図2および図4のX−X線に沿った部分の断面図、図6は図4におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に沿った部分の断面図であり、図7は図6の各断面を重ね合わせるように示した図である。また、図8は図2に示すスプライン軸の動力伝達時における応力分布図、図9は図15に示す従来のスプライン軸におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線に沿った部分の各断面を重ね合わせるように図示した説明図、図10は図15に示す従来のスプライン軸の動力伝達時における応力分布図である。
【0019】
先ず図1において、この常時噛合式のトランスミッション1は、相互に平行な軸線を有してクランクケース11に回転自在に支承されるメインシャフト12およびカウンタシャフト13と、選択的な確立を可能としてメインシャフト12およびカウンタシャフト13間に設けられる複数変速段たとえば5段である第1〜第5速用歯車列G1,G2,G3,G4,G5とを備える。
【0020】
メインシャフト12の一端部には、動力源であるエンジンの不図示のクランクシャフトおよびメインシャフト12間の動力接・断を切換える発進クラッチ14が装着されており、この発進クラッチ14は、前記クランクシャフトから一次減速装置15およびトルクダンパ16を介して動力が伝達されるクラッチアウタ17と、該クラッチアウタ17内の中心部に配置されてメインシャフト12に相対回転不能に結合されるクラッチインナ18と、クラッチアウタ17の周壁に軸方向摺動可能にスプライン嵌合される複数枚の駆動摩擦板19…と、それらの駆動摩擦板19…と交互に重ねられるとともにクラッチインナ18の外周に軸方向摺動可能にスプライン嵌合される複数枚の被動摩擦板70…と、最も内側の駆動摩擦板19を受けるようにしてクラッチインナ18の内端に一体に設けられる受圧板71と、最も外側の駆動摩擦板19を押圧可能とした加圧板22と、該加圧板22を受圧板71側に向けて付勢するクラッチばね23とを備える。
【0021】
而してクラッチばね23の付勢力をもって駆動摩擦板19…および被動摩擦板70…が加圧板22および受圧板71間に挟持されると、発進クラッチ14はクラッチアウタ17およびクラッチインナ18間を相互に摩擦連結するクラッチオン状態となる。
【0022】
またクラッチインナ18の中心部には、加圧板22との間にレリーズベアリング24を介在させたレリーズ部材25が配置されており、このレリーズ部材25に、メインシャフト12内に軸方向移動可能に挿入されるプッシュロッド26が連接される。而して不図示のクラッチレバーを操作することでプッシュロッド26が押されることにより、加圧板22はクラッチばね23のばね力に抗して後退せしめられ、それにより各駆動摩擦板19…および各被動摩擦板70…が自由状態となり、発進クラッチ14は、クラッチアウタ17およびクラッチインナ18間を非連結としたクラッチオフ状態となる。
【0023】
発進クラッチ14とは反対側でカウンタシャフト13の一部はクランクケース11から突出されており、このクランクケース11からのカウンタシャフト13の突出端部に駆動スプロケット27が固定される。而して駆動スプロケット27には、不図示の後輪に回転動力を伝達するための不図示のチェーンが巻き掛けられる。
【0024】
ところで、第1速用歯車列G1は、メインシャフト12に一体に形成された第1速用駆動歯車31と、カウンタシャフト13に軸方向位置を一定として相対回転自在に支承されるとともに第1速用駆動歯車31に噛合する第1速用被動歯車32とから成り、第2速用歯車列G2は、メインシャフト12に軸方向位置を一定として相対回転不能に装着される第2速用駆動歯車33と、カウンタシャフト13に軸方向位置を一定としつつ相対回転自在に支承されるとともに第2速用駆動歯車33に噛合する第2速用被動歯車34とから成り、第3速用歯車列G3は、メインシャフト12との相対回転を不能とした第3速用駆動歯車35と、カウンタシャフト13に軸方向位置を一定として相対回転可能に支承されるとともに第3速用駆動歯車35に噛合する第3速用被動歯車36とから成り、第4速用歯車列G4は、メインシャフト12に軸方向位置を一定として相対回転可能に支承される第4速用駆動歯車37と、カウンタシャフト13に相対回転を不能として装着されて第4速用駆動歯車37に噛合する第4速用被動歯車38とから成り、第5速用歯車列G5は、メインシャフト12に軸方向位置を一定として相対回転可能に支承される第5速用駆動歯車39と、カウンタシャフト13に相対回転を不能として装着されて第5速用駆動歯車39に噛合する第5速用被動歯車40とから成る。
【0025】
メインシャフト12に対する軸方向位置が一定である第4速用駆動歯車37および第5速用駆動歯車39間でメインシャフト12には、第1シフタ41が軸方向の摺動を可能としてスプライン嵌合され、第3速用駆動歯車35は第1シフタ41の外周に一体に形成される。またカウンタシャフト13に対する軸方向位置が一定である第1速用被動歯車32および第3速用被動歯車36間でカウンタシャフト13には、第2シフタ42が軸方向の摺動を可能としてスプライン嵌合され、第2シフタ42の外周には第5速用被動歯車40が一体に形成される。さらにカウンタシャフト13に対する軸方向位置が一定である第2速用被動歯車34および第3速用被動歯車36間でカウンタシャフト13には、第3シフタ43が軸方向の摺動を可能としてスプライン嵌合され、第3シフタ43の外周に第4速用被動歯車38が一体に形成される。
【0026】
本実施形態における常時噛合式のトランスミッション1は、第1〜第5速用歯車列G1〜G5を選択的に確立するための第1〜第5ドッグクラッチC1〜C5を備える。
【0027】
第1ドッグクラッチC1は、軸方向位置を一定とした第1回転体である第5速用駆動歯車39と、第5速用駆動歯車39に近接、離反することを可能として第5速用駆動歯車39に同軸に対向配置される第2回転体としての第1シフタ41との間に設けられる。
【0028】
第2ドッグクラッチC2は、軸方向位置を一定とした第1回転体としての第4速用駆動歯車37と、第4速用駆動歯車37に近接、離反することを可能として第4速用駆動歯車37に同軸に対向配置される第2回転体としての第1シフタ41との間に設けられる。
【0029】
第3ドッグクラッチC3は、軸方向位置を一定とした第1回転体である第1速用被動歯車32と、第1速用被動歯車32に近接、離反することを可能として第1速用被動歯車32に同軸に対向配置される第2回転体としての第2シフタ42との間に設けられる。
【0030】
第4ドッグクラッチC4は、軸方向位置を一定とした第1回転体としての第4速用被動歯車38と、第3速用被動歯車36に近接、離反することを可能として第3速用被動歯車36に同軸に対向配置される第2回転体としての第2シフタ42との間に設けられる。
【0031】
第5ドッグクラッチC5は、軸方向位置を一定とした第1回転体としての第2速用被動歯車34と、第2速用被動歯車34に近接、離反することを可能として第2速用被動歯車34に同軸に対向配置される第2回転体としての第3シフタ43との間に設けられる。
【0032】
なお、第4速用被動歯車38には環状凹部38aが、第5速用被動歯車40には環状凹部59が、第1シフタ41には環状凹部46が形成されており、図示しないシフトフォークが係合して、このシフトフォークによってスプライン溝上を軸方向に歯車が移動して、ドグクラッチの係合が適宜行われてシフトチェンジをするように構成されている。
【0033】
前掲したように、メインシャフト12およびカウンタシャフト13に取付けられた各歯車は、両シャフトの外周に形成されたスプライン溝20に嵌合されており、この嵌合によって歯車同士の噛み合いが適宜変更されてメインシャフト12からカウンタシャフト13への動力伝達の回転比率が変更される。そして、特にシフトチェンジのときのメインシャフト12およびカウンタシャフト13にかかる応力は大きくなる。したがって、スプライン溝20に対して応力集中が発生する。
【0034】
以下、このスプライン溝20に対する応力集中を回避する構造について、図2〜図11を参照して詳細に説明する。
【0035】
本実施形態のトランスミッション1におけるスプライン溝20は、図2および図3に示すように、スプライン溝20の軸方向一端の溝端部20aが軸線方向ならびに軸円周方向(矢印Sにて示す方向)に湾曲した湾曲構造となっている。
この湾曲構造における第1の構造である軸線方向の湾曲は、図3および図5に示すように、溝底面20bの軸線方向中央部21が溝終端側へ向かうに連れて溝深さを浅くするような大きな曲率半径r2を有して構成されている。すなわち、この構造はスプライン溝20を構成する溝底面20bが溝終端側へ向ってその溝深さHを徐々に浅く(H1,H2…)して行くように、その曲率半径r2の曲率中心が適宜設定された構成である。
【0036】
また、湾曲構造における第2の構造である軸円周方向に湾曲は、溝端部20aが溝底面20bの溝幅方向(図3,図4および図5において矢印S方向)の両脇部20e,20eの曲率が溝終端側(図中矢印G方向)へ向って徐々に大きくなるように構成されている。したがって、両脇部20e,20eは、図4に示すように、溝深さが浅くなり始めの位置である切れ上がり始端SPから(溝端部20aの始まり位置)から溝終端側(左方向)に向ってその途中まで幅(図中の矢印S方向の幅)が徐々に大きくなり、側壁面20c,20cの平坦部が無くなる位置MPから溝終端側に向って幅が狭くなるように構成されている。
【0037】
なお、溝幅方向の両脇部20e,20eは、図中においては、溝端部20a以外の箇所では、湾曲底面の横断面において軸半径方向に沿った側壁面20c,20cと溝底面20bとの交差する角部分として示されるが、本実施形態における溝端部20aにおいては、その殆どの部位が湾曲面で幅(W1,W2,W3,W4…)が変化する面として構成され、終端輪郭線20fの部分においては連続する湾曲線として構成されている。
なお、図4においては、両脇部20e,20eはその略中央谷部分を示す線として、仮想線K,Kにして示してある。また、図4においては、両脇部20e,20eは溝端部20aの溝終端側(終端輪郭線20fの部分)において離れて図示してあるが、実際には、重なるように構成されている。
【0038】
本実施形態で云う、両脇部20e,20eの曲率が溝終端側(図中矢印G方向)へ向って徐々に大きくなるような構成とは、図6に示すように、溝端部20a以外のA−A線断面に比べて、溝終端側(図中矢印G方向)に順次近づく順に、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に沿った部分の断面の形状において、その曲率半径が曲率半径R1からR4に向かって徐々に大きくなるように構成されている。
すなわち、図7に図6の各A−A線からE−E線までの断面を重ね合わせるように示してあるが、図7に示すように、溝端部20aは、溝終端側も向うに連れて側壁面20c,20cが小さくなって行くと共に両脇部20e,20eの曲率が大きくなって行き、合わせて溝が浅くなって行くように構成されている。
【0039】
このように、スプライン溝20の溝底面20bの軸線方向中央部21が湾曲した構成に加えて、両脇部20e,20eの溝横断面方向における曲率を溝終端側へ向かうに連れて徐々に大きくなるという構成が相乗することで、スプライン溝20の溝端部20aにおける特定部位への応力集中が緩和され応力分散が効果的に行われ、更に、最大応力の低減をはかることができる。
このことは、本実施形態において、例えば、第1シフタ41に駆動力が作用する場合の溝端部20aの応力分布について解析した応力分布の模式図を図8に示す。
この図8に示す応力分布図と、比較例として従来の応力分布図の模式図である図10とを比較することでその相違をより明らかにすることができる。
【0040】
比較する前に、まず、図9および図10に示す比較例について説明する。
図9は、図7と同様に、図15に示した溝端部120aのA−A断面、B−B線、C−C線、D−D線に沿った部分の断面の形状を、重ね合わせるように示してある。図9に示されているように、従来の溝端部120aでは、側壁面120c,120cと溝底面120bとの交差する部分である両脇部120e,120eの角度はどの断面においても変わることなく一定である。また、溝底面120bの幅も一定である。
【0041】
そして、図9および図15に示すスプライン軸112の溝端部120aの応力分布は、図10に示すように、その最大値を示す領域P1が軸の回転方向(Y方向)で歯車が図中上側の側壁面120cに形成される。そして、この領域P1を中心にして、溝端部120aの溝屈曲ライン125,126に沿って他の部分よりも高応力の領域である、領域P2、領域P3,領域P4,領域P5が狭い範囲に密集した状態で延びている。
【0042】
なお、応力分布領域の大きさは、領域P1>領域P2>領域P3>領域P4>領域P5>領域P6>領域P7>領域P8>領域9P>領域P10となっている。また、溝端部20aの平面視の形状は輪郭が直線的であり、各角部が交わる交点130,131が応力領域の境界ポイントを形成しており、特に、溝屈曲ライン125,126側の交点130,130を境界ポイントとして分布境界線が集まっている。
【0043】
これに対して本実施形態においては、図8に示す応力分布図においては、最大応力領域である領域P1を中心にして広がる領域は、図10の各分布領域の形状に比べて、その広がり方が溝幅全体に広く且つその輪郭線においてもなだらか曲線で構成された境界線となっている。また、本実施形態においては、従来のような溝屈曲ライン125,126が無いだけでなく溝底面20b全体がなだらかな曲面で構成されていることから、応力が効果的に分散されていることが分かる。
また、最大領域P1に生じた最大応力の数値においては、比較例と同じ条件下において、本実施形態の構造の場合、比較例に比べて26%も低減させることができた。
【0044】
また、本実施形態においては、溝端部20aはその終端輪郭線20fが平面視で溝外側に膨らむ湾曲線に形成されている。スプライン溝20の最終端部分の形状が湾曲線にて構成されることで、溝端部20aのなだらかな形状(屈曲部分が少ない形状)により、応力分散を効果的に図ることができる。
【0045】
また、本実施形態においては、溝端部20aは湾曲した溝底面20bの軸方向の長さL(図5参照)が最大溝深さHに比べて十分長く構成されている。この長さLは最大深さHに対して4倍以上に構成されていることで、応力分散効果において良い効果を得られることがわかった。
【0046】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について、図11〜図13を参照して説明する。
なお、本実施形態においては、第1実施形態と同じ構成要素には、同じ符号を付してその説明を省略する。
図11はスプライン溝20の溝端部20aを示す平面図であり、図12は図11におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に沿った部分の断面図を重ね合わせるように示した説明図である。また、図13は第1実施形態と同様の条件におけるスプライン溝20の溝端部20a付近の応力分布を示す。
【0047】
本実施形態においても、溝底面20bの軸線方向中央部21は第1実施形態と同じ構成であり、また、湾曲構造における軸円周方向に湾曲は、第1実施形態と同様に、溝端部20aが溝底面20bの溝幅方向(図11において矢印S方向)の両脇部20e,20eの曲率が溝終端側(図中矢印G方向)へ向って徐々に大きくなるように構成されている。
【0048】
本実施形態における第1実施形態と異なる構成は、溝端部20aにおいて、溝底面20bと溝幅方向の両脇部20e,20eとが明確に分れた構成となっている点である。これは、図12に示すように、本実施形態では、溝端部20aにおいても溝底面20bの平坦部21b,21c,21d,21eが設けられ、溝底面20bは溝終端側に向ってその幅(W6>W7>W8>W9)が徐々に小さくなるように構成されている。
【0049】
この構成は、図12に示すように、両脇部20e,20eの曲率が溝終端側(図11における矢印G方向)へ向って徐々に大きくなる構成は第1実施形態と同様であるが、終端輪郭線20fまで溝底面20bの平坦部が残った構成である。すなわち、溝端部20aはその終端輪郭線20fが平面視で溝外側に膨らむ湾曲線に形成されているが、軸線方向中央部21の部分に若干の直線部21fを有している。しかし、スプライン溝20の終端輪郭線20fの全体としては湾曲線にて構成されることで、溝端部20aのなだらかな形状(屈曲部分が少ない形状)により、応力分散を効果的に図ることができる。
【0050】
図13に示す応力分布図においても、図10に示す従来の応力分布図と比較すると、従来のような溝屈曲ライン125,126は形成されず、溝底面20bはその全体がなだらかな曲面で構成されていることから、最大応力領域である領域P1を中心にして、図10の各分布領域の形状に比べて広がりが広く、その全体的な輪郭線は鋭角部の少ないなだらかの曲線で構成された分布となっている。したがって、応力が効果的に分散されていることが分かる。
また、領域P1に生じた最大応力の数値においても、従来の場合と同じ条件下において、本実施形態の構造の場合、従来に比べて21%も低減させることができた。
【0051】
以下、本発明の前掲の実施形態に基づいてテストした実施例1,2について図14を参照して説明する。なお、比較例としては、図16に示す従来の溝端部120aについて実施したデータである。
なお、図14に示すグラフには、本実施形態の溝端部20aと従来の溝端部120aの溝の横断面積(溝の空間をメインシャフトの横断方向に沿って切断した面積)の変化の例を示してある。
【0052】
そして、この実施結果を見ると、図14に示されているように、比較例の断面積の変化は、図中のQにて示す範囲で急激な面積変化が生じている。
これに対して、本実施例1,2においては、溝端部20aは、溝最深部を横断する溝空間(A−A断面に相当する溝空間)の横断面積に対して、溝端部20aの浅くなり始まり側(グラフ左側)から溝終端側(グラフ右側)に向って全長の60%までの領域において断面変化が安定していることで、好ましい結果が得られる知見を得た。このような急激な面積変化によって応力集中がし易いことに比較して、本実施形態の断面積の変化はなだらかな曲線であり、応力集中が起こり難い。
そして、更に、溝端部20aは、溝最深部を横断する溝空間の横断面積に対して、溝端部20aの切れ上がり始端から溝終端側に向って溝端部20aの全長の60%までの領域において、溝空間の横断面積の断面積変化率は、切れ上がり始端から溝終端側へ前記溝端部20aの全長の1%の位置移動に対して0.3%以下であると、前掲の図8に示すように、応力分散が効果的にできる知見を得ることができた。
【0053】
以上、本発明についてドグクラッチを有する常時噛合式のトランスミッションにおけるメインシャフトに適用した第1および第2実施形態について説明したが、カウンタシャフト13にも適用可能であることは勿論、例えば、ツインクラッチ式のトランスミッション、他の鞍乗型車両、四輪自動車でもよく、さらには、本発明が対象とするスプライン軸を有する動力伝達機構に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 トランスミッション
12 メインシャフト
13 カウンタシャフト
20 スプライン溝
20a 溝端部
20b 溝底面
20c 側壁面
21 軸線方向中央部
H 溝深さ
L 溝端部の長さ
【技術分野】
【0001】
本発明はトランスミッションに関し、特に、ドグクラッチが設けられたトランスミッションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の変速歯車対を有する多段式のトランスミッションにおいて、メインシャフトおよびカウンタシャフト上を摺動可能に設けられた変速ギヤやスリーブを、両シャフト上を移動させることで変速を行う構造のものがある。この変速動作は、メインシャフトおよびカウンタシャフトと平行に摺動するシフトフォークを駆動させることで円滑に変速動作を行うようにした構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたものは、メインシャフトとカウンタシャフトとの間に複数の歯車対を有する変速機と、メインシャフト上に配設されるクラッチとを備えるトランスミッションである。そして、複数の歯車対のうち、回転駆動力を伝達する1つの歯車対を選択するために軸方向に摺動可能に取り付けられた摺動可能ギヤと、軸方向に摺動不能に取り付けられた摺動不能ギヤとの間にドグクラッチが設けられた構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−248914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲のメインシャフトと変速歯車との接続並びにカウンタシャフトと変速歯車との接続においては、両シャフトがスプライン軸として構成されてスプライン嵌合により行われている。この種のスプライン嵌合においては、シャフトにおける応力集中を緩和する目的で、例えば、特許文献1(特許文献1の図1)に示されているように、スプライン溝には、スプライン溝端部が軸縦断面方向から見てテーパ形状となる構造が採用されている。
【0006】
この構造は、例えば、図16に示すように、スプライン軸112に設けられたスプライン溝120が、その溝端部120aが溝終端側(図16において左側)に向って溝深さを浅くするようなテーパ面121bにて構成されている。
【0007】
この種の溝端部120aの構造によりある程度の効果を奏することはできるが、特に、ドグクラッチを用いたトランスミッションのスプライン軸においては、急激な動力伝達力の変化がありスプライン溝に大きな応力集中が生じ易く、これまで以上にスプライン溝にかかる応力を緩和できてスプライン軸への負荷をより軽減できるトランスミッションの構造が切望されていた。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スプライン溝にかかる応力をこれまで以上に効果的に緩和できるスプライン軸を備えたトランスミッションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、スプライン溝に嵌合された歯車を備えるメインシャフトと、スプライン溝に嵌合された歯車を備えるカウンタシャフトとを有しており、前記歯車同士の噛み合いを変更することにより、前記メインシャフトから前記カウンタシャフトへの動力伝達の回転比率を変更可能に構成されたトランスミッションにおいて、
前記スプライン溝における軸方向の少なくとも1つの溝端部は、前記スプライン溝の溝底面の軸線方向中央部が溝終端側へ向かうに連れ溝深さが浅くなるシャフト中心方向にへこむ湾曲面に構成され、さらに、前記溝端部は、溝底面の溝幅方向の両脇部の溝横断面方向における曲率が溝終端側へ向って徐々に大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記溝端部はその終端輪郭線が平面視で溝外側に膨らむ湾曲線に形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の構成に加えて、前記溝端部は湾曲した溝底面の軸方向の長さが最大溝深さの4倍以上に構成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1または2に記載の構成に加えて、前記溝端部は、溝最深部を横断する溝空間の横断面積に対して、前記溝端部の切れ上がり始端から溝終端側に向って前記溝端部の全長の60%までの領域において、溝空間の横断面積の断面積変化率は、切れ上がり始端から溝終端側へ前記溝端部の全長の1%の位置移動に対して0.3%以下に構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、このように、スプライン溝の溝底面の軸線方向中央部が溝終端側へ向かうに連れ溝深さが浅くなるシャフト中心方向にへこむ湾曲面に構成されたことに加えて、この湾曲底面がその両脇部の溝横断面方向における曲率を軸方向端部へ向かうに連れて徐々に大きくなるという構成が相乗することで、スプライン溝の溝端部における特定部位への応力集中が緩和され応力分散が効果的に行われ、更に、最大応力の低減をはかることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、スプライン溝の最終端部分の形状が湾曲線にて構成されることで、溝端部のなだらかな形状により、応力分散を効果的に図ることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、スプライン溝の溝端部の湾曲した溝底面の軸方向の長さが最大溝深さの4倍以上に構成されたことで、応力分散を効果的に図ることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、スプライン溝の溝端部にて形成される溝空間の横断面積の変化率が、溝端部の切れ上がり始端から溝終端側に向って前記溝端部の全長の60%までの領域において、切れ上がり始端から溝終端側へ前記溝端部の全長の1%の位置移動に対して0.3%以下に構成されたことにより、応力分散を効果的に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るトランスミッションの第1実施形態の要部断面図である。
【図2】図1に示すメインシャフトの要部(M部分)の部分斜視図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】図2に示すスプライン溝の溝端部を示す平面図である。
【図5】図2のX−X線に沿った部分の断面図
【図6】図4に示すスプライン溝におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に沿った部分の断面図である。
【図7】図6に示す各断面((A−A線)〜(D−D線))を重ね合わせるように図示した説明図である。
【図8】図2に示すスプライン軸の動力伝達時における応力分布図である。
【図9】図15に示す従来のスプライン軸におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線に沿った部分の各断面を重ね合わせるように図示した説明図である。
【図10】図15に示す従来のスプライン軸の動力伝達時における応力分布図である。
【図11】第2実施形態におけるスプライン溝の溝端部を示す平面図である。
【図12】図11におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に沿った部分の各断面図を重ね合わせるように図示した説明図である。
【図13】図11に示す第2実施形態のスプライン軸の動力伝達時における応力分布図である。
【図14】スプライン溝の溝端部における溝空間の断面積変化率を示すグラフである。
【図15】従来のスプライン軸の斜視図である。
【図16】図15におけるX−X線に沿った部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、図1〜図10を参照して第1実施形態を説明する。
なお、図1は、自動二輪車に適用された本実施形態の常時噛合式のトランスミッションの要部断面図である。また、図2はメインシャフト12の要部(図1におけるM部分)の斜視図である。また、図3は図2の部分拡大図であり、図4はスプライン溝の溝端部を示す平面図であり、図5は図2および図4のX−X線に沿った部分の断面図、図6は図4におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に沿った部分の断面図であり、図7は図6の各断面を重ね合わせるように示した図である。また、図8は図2に示すスプライン軸の動力伝達時における応力分布図、図9は図15に示す従来のスプライン軸におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線に沿った部分の各断面を重ね合わせるように図示した説明図、図10は図15に示す従来のスプライン軸の動力伝達時における応力分布図である。
【0019】
先ず図1において、この常時噛合式のトランスミッション1は、相互に平行な軸線を有してクランクケース11に回転自在に支承されるメインシャフト12およびカウンタシャフト13と、選択的な確立を可能としてメインシャフト12およびカウンタシャフト13間に設けられる複数変速段たとえば5段である第1〜第5速用歯車列G1,G2,G3,G4,G5とを備える。
【0020】
メインシャフト12の一端部には、動力源であるエンジンの不図示のクランクシャフトおよびメインシャフト12間の動力接・断を切換える発進クラッチ14が装着されており、この発進クラッチ14は、前記クランクシャフトから一次減速装置15およびトルクダンパ16を介して動力が伝達されるクラッチアウタ17と、該クラッチアウタ17内の中心部に配置されてメインシャフト12に相対回転不能に結合されるクラッチインナ18と、クラッチアウタ17の周壁に軸方向摺動可能にスプライン嵌合される複数枚の駆動摩擦板19…と、それらの駆動摩擦板19…と交互に重ねられるとともにクラッチインナ18の外周に軸方向摺動可能にスプライン嵌合される複数枚の被動摩擦板70…と、最も内側の駆動摩擦板19を受けるようにしてクラッチインナ18の内端に一体に設けられる受圧板71と、最も外側の駆動摩擦板19を押圧可能とした加圧板22と、該加圧板22を受圧板71側に向けて付勢するクラッチばね23とを備える。
【0021】
而してクラッチばね23の付勢力をもって駆動摩擦板19…および被動摩擦板70…が加圧板22および受圧板71間に挟持されると、発進クラッチ14はクラッチアウタ17およびクラッチインナ18間を相互に摩擦連結するクラッチオン状態となる。
【0022】
またクラッチインナ18の中心部には、加圧板22との間にレリーズベアリング24を介在させたレリーズ部材25が配置されており、このレリーズ部材25に、メインシャフト12内に軸方向移動可能に挿入されるプッシュロッド26が連接される。而して不図示のクラッチレバーを操作することでプッシュロッド26が押されることにより、加圧板22はクラッチばね23のばね力に抗して後退せしめられ、それにより各駆動摩擦板19…および各被動摩擦板70…が自由状態となり、発進クラッチ14は、クラッチアウタ17およびクラッチインナ18間を非連結としたクラッチオフ状態となる。
【0023】
発進クラッチ14とは反対側でカウンタシャフト13の一部はクランクケース11から突出されており、このクランクケース11からのカウンタシャフト13の突出端部に駆動スプロケット27が固定される。而して駆動スプロケット27には、不図示の後輪に回転動力を伝達するための不図示のチェーンが巻き掛けられる。
【0024】
ところで、第1速用歯車列G1は、メインシャフト12に一体に形成された第1速用駆動歯車31と、カウンタシャフト13に軸方向位置を一定として相対回転自在に支承されるとともに第1速用駆動歯車31に噛合する第1速用被動歯車32とから成り、第2速用歯車列G2は、メインシャフト12に軸方向位置を一定として相対回転不能に装着される第2速用駆動歯車33と、カウンタシャフト13に軸方向位置を一定としつつ相対回転自在に支承されるとともに第2速用駆動歯車33に噛合する第2速用被動歯車34とから成り、第3速用歯車列G3は、メインシャフト12との相対回転を不能とした第3速用駆動歯車35と、カウンタシャフト13に軸方向位置を一定として相対回転可能に支承されるとともに第3速用駆動歯車35に噛合する第3速用被動歯車36とから成り、第4速用歯車列G4は、メインシャフト12に軸方向位置を一定として相対回転可能に支承される第4速用駆動歯車37と、カウンタシャフト13に相対回転を不能として装着されて第4速用駆動歯車37に噛合する第4速用被動歯車38とから成り、第5速用歯車列G5は、メインシャフト12に軸方向位置を一定として相対回転可能に支承される第5速用駆動歯車39と、カウンタシャフト13に相対回転を不能として装着されて第5速用駆動歯車39に噛合する第5速用被動歯車40とから成る。
【0025】
メインシャフト12に対する軸方向位置が一定である第4速用駆動歯車37および第5速用駆動歯車39間でメインシャフト12には、第1シフタ41が軸方向の摺動を可能としてスプライン嵌合され、第3速用駆動歯車35は第1シフタ41の外周に一体に形成される。またカウンタシャフト13に対する軸方向位置が一定である第1速用被動歯車32および第3速用被動歯車36間でカウンタシャフト13には、第2シフタ42が軸方向の摺動を可能としてスプライン嵌合され、第2シフタ42の外周には第5速用被動歯車40が一体に形成される。さらにカウンタシャフト13に対する軸方向位置が一定である第2速用被動歯車34および第3速用被動歯車36間でカウンタシャフト13には、第3シフタ43が軸方向の摺動を可能としてスプライン嵌合され、第3シフタ43の外周に第4速用被動歯車38が一体に形成される。
【0026】
本実施形態における常時噛合式のトランスミッション1は、第1〜第5速用歯車列G1〜G5を選択的に確立するための第1〜第5ドッグクラッチC1〜C5を備える。
【0027】
第1ドッグクラッチC1は、軸方向位置を一定とした第1回転体である第5速用駆動歯車39と、第5速用駆動歯車39に近接、離反することを可能として第5速用駆動歯車39に同軸に対向配置される第2回転体としての第1シフタ41との間に設けられる。
【0028】
第2ドッグクラッチC2は、軸方向位置を一定とした第1回転体としての第4速用駆動歯車37と、第4速用駆動歯車37に近接、離反することを可能として第4速用駆動歯車37に同軸に対向配置される第2回転体としての第1シフタ41との間に設けられる。
【0029】
第3ドッグクラッチC3は、軸方向位置を一定とした第1回転体である第1速用被動歯車32と、第1速用被動歯車32に近接、離反することを可能として第1速用被動歯車32に同軸に対向配置される第2回転体としての第2シフタ42との間に設けられる。
【0030】
第4ドッグクラッチC4は、軸方向位置を一定とした第1回転体としての第4速用被動歯車38と、第3速用被動歯車36に近接、離反することを可能として第3速用被動歯車36に同軸に対向配置される第2回転体としての第2シフタ42との間に設けられる。
【0031】
第5ドッグクラッチC5は、軸方向位置を一定とした第1回転体としての第2速用被動歯車34と、第2速用被動歯車34に近接、離反することを可能として第2速用被動歯車34に同軸に対向配置される第2回転体としての第3シフタ43との間に設けられる。
【0032】
なお、第4速用被動歯車38には環状凹部38aが、第5速用被動歯車40には環状凹部59が、第1シフタ41には環状凹部46が形成されており、図示しないシフトフォークが係合して、このシフトフォークによってスプライン溝上を軸方向に歯車が移動して、ドグクラッチの係合が適宜行われてシフトチェンジをするように構成されている。
【0033】
前掲したように、メインシャフト12およびカウンタシャフト13に取付けられた各歯車は、両シャフトの外周に形成されたスプライン溝20に嵌合されており、この嵌合によって歯車同士の噛み合いが適宜変更されてメインシャフト12からカウンタシャフト13への動力伝達の回転比率が変更される。そして、特にシフトチェンジのときのメインシャフト12およびカウンタシャフト13にかかる応力は大きくなる。したがって、スプライン溝20に対して応力集中が発生する。
【0034】
以下、このスプライン溝20に対する応力集中を回避する構造について、図2〜図11を参照して詳細に説明する。
【0035】
本実施形態のトランスミッション1におけるスプライン溝20は、図2および図3に示すように、スプライン溝20の軸方向一端の溝端部20aが軸線方向ならびに軸円周方向(矢印Sにて示す方向)に湾曲した湾曲構造となっている。
この湾曲構造における第1の構造である軸線方向の湾曲は、図3および図5に示すように、溝底面20bの軸線方向中央部21が溝終端側へ向かうに連れて溝深さを浅くするような大きな曲率半径r2を有して構成されている。すなわち、この構造はスプライン溝20を構成する溝底面20bが溝終端側へ向ってその溝深さHを徐々に浅く(H1,H2…)して行くように、その曲率半径r2の曲率中心が適宜設定された構成である。
【0036】
また、湾曲構造における第2の構造である軸円周方向に湾曲は、溝端部20aが溝底面20bの溝幅方向(図3,図4および図5において矢印S方向)の両脇部20e,20eの曲率が溝終端側(図中矢印G方向)へ向って徐々に大きくなるように構成されている。したがって、両脇部20e,20eは、図4に示すように、溝深さが浅くなり始めの位置である切れ上がり始端SPから(溝端部20aの始まり位置)から溝終端側(左方向)に向ってその途中まで幅(図中の矢印S方向の幅)が徐々に大きくなり、側壁面20c,20cの平坦部が無くなる位置MPから溝終端側に向って幅が狭くなるように構成されている。
【0037】
なお、溝幅方向の両脇部20e,20eは、図中においては、溝端部20a以外の箇所では、湾曲底面の横断面において軸半径方向に沿った側壁面20c,20cと溝底面20bとの交差する角部分として示されるが、本実施形態における溝端部20aにおいては、その殆どの部位が湾曲面で幅(W1,W2,W3,W4…)が変化する面として構成され、終端輪郭線20fの部分においては連続する湾曲線として構成されている。
なお、図4においては、両脇部20e,20eはその略中央谷部分を示す線として、仮想線K,Kにして示してある。また、図4においては、両脇部20e,20eは溝端部20aの溝終端側(終端輪郭線20fの部分)において離れて図示してあるが、実際には、重なるように構成されている。
【0038】
本実施形態で云う、両脇部20e,20eの曲率が溝終端側(図中矢印G方向)へ向って徐々に大きくなるような構成とは、図6に示すように、溝端部20a以外のA−A線断面に比べて、溝終端側(図中矢印G方向)に順次近づく順に、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に沿った部分の断面の形状において、その曲率半径が曲率半径R1からR4に向かって徐々に大きくなるように構成されている。
すなわち、図7に図6の各A−A線からE−E線までの断面を重ね合わせるように示してあるが、図7に示すように、溝端部20aは、溝終端側も向うに連れて側壁面20c,20cが小さくなって行くと共に両脇部20e,20eの曲率が大きくなって行き、合わせて溝が浅くなって行くように構成されている。
【0039】
このように、スプライン溝20の溝底面20bの軸線方向中央部21が湾曲した構成に加えて、両脇部20e,20eの溝横断面方向における曲率を溝終端側へ向かうに連れて徐々に大きくなるという構成が相乗することで、スプライン溝20の溝端部20aにおける特定部位への応力集中が緩和され応力分散が効果的に行われ、更に、最大応力の低減をはかることができる。
このことは、本実施形態において、例えば、第1シフタ41に駆動力が作用する場合の溝端部20aの応力分布について解析した応力分布の模式図を図8に示す。
この図8に示す応力分布図と、比較例として従来の応力分布図の模式図である図10とを比較することでその相違をより明らかにすることができる。
【0040】
比較する前に、まず、図9および図10に示す比較例について説明する。
図9は、図7と同様に、図15に示した溝端部120aのA−A断面、B−B線、C−C線、D−D線に沿った部分の断面の形状を、重ね合わせるように示してある。図9に示されているように、従来の溝端部120aでは、側壁面120c,120cと溝底面120bとの交差する部分である両脇部120e,120eの角度はどの断面においても変わることなく一定である。また、溝底面120bの幅も一定である。
【0041】
そして、図9および図15に示すスプライン軸112の溝端部120aの応力分布は、図10に示すように、その最大値を示す領域P1が軸の回転方向(Y方向)で歯車が図中上側の側壁面120cに形成される。そして、この領域P1を中心にして、溝端部120aの溝屈曲ライン125,126に沿って他の部分よりも高応力の領域である、領域P2、領域P3,領域P4,領域P5が狭い範囲に密集した状態で延びている。
【0042】
なお、応力分布領域の大きさは、領域P1>領域P2>領域P3>領域P4>領域P5>領域P6>領域P7>領域P8>領域9P>領域P10となっている。また、溝端部20aの平面視の形状は輪郭が直線的であり、各角部が交わる交点130,131が応力領域の境界ポイントを形成しており、特に、溝屈曲ライン125,126側の交点130,130を境界ポイントとして分布境界線が集まっている。
【0043】
これに対して本実施形態においては、図8に示す応力分布図においては、最大応力領域である領域P1を中心にして広がる領域は、図10の各分布領域の形状に比べて、その広がり方が溝幅全体に広く且つその輪郭線においてもなだらか曲線で構成された境界線となっている。また、本実施形態においては、従来のような溝屈曲ライン125,126が無いだけでなく溝底面20b全体がなだらかな曲面で構成されていることから、応力が効果的に分散されていることが分かる。
また、最大領域P1に生じた最大応力の数値においては、比較例と同じ条件下において、本実施形態の構造の場合、比較例に比べて26%も低減させることができた。
【0044】
また、本実施形態においては、溝端部20aはその終端輪郭線20fが平面視で溝外側に膨らむ湾曲線に形成されている。スプライン溝20の最終端部分の形状が湾曲線にて構成されることで、溝端部20aのなだらかな形状(屈曲部分が少ない形状)により、応力分散を効果的に図ることができる。
【0045】
また、本実施形態においては、溝端部20aは湾曲した溝底面20bの軸方向の長さL(図5参照)が最大溝深さHに比べて十分長く構成されている。この長さLは最大深さHに対して4倍以上に構成されていることで、応力分散効果において良い効果を得られることがわかった。
【0046】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について、図11〜図13を参照して説明する。
なお、本実施形態においては、第1実施形態と同じ構成要素には、同じ符号を付してその説明を省略する。
図11はスプライン溝20の溝端部20aを示す平面図であり、図12は図11におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に沿った部分の断面図を重ね合わせるように示した説明図である。また、図13は第1実施形態と同様の条件におけるスプライン溝20の溝端部20a付近の応力分布を示す。
【0047】
本実施形態においても、溝底面20bの軸線方向中央部21は第1実施形態と同じ構成であり、また、湾曲構造における軸円周方向に湾曲は、第1実施形態と同様に、溝端部20aが溝底面20bの溝幅方向(図11において矢印S方向)の両脇部20e,20eの曲率が溝終端側(図中矢印G方向)へ向って徐々に大きくなるように構成されている。
【0048】
本実施形態における第1実施形態と異なる構成は、溝端部20aにおいて、溝底面20bと溝幅方向の両脇部20e,20eとが明確に分れた構成となっている点である。これは、図12に示すように、本実施形態では、溝端部20aにおいても溝底面20bの平坦部21b,21c,21d,21eが設けられ、溝底面20bは溝終端側に向ってその幅(W6>W7>W8>W9)が徐々に小さくなるように構成されている。
【0049】
この構成は、図12に示すように、両脇部20e,20eの曲率が溝終端側(図11における矢印G方向)へ向って徐々に大きくなる構成は第1実施形態と同様であるが、終端輪郭線20fまで溝底面20bの平坦部が残った構成である。すなわち、溝端部20aはその終端輪郭線20fが平面視で溝外側に膨らむ湾曲線に形成されているが、軸線方向中央部21の部分に若干の直線部21fを有している。しかし、スプライン溝20の終端輪郭線20fの全体としては湾曲線にて構成されることで、溝端部20aのなだらかな形状(屈曲部分が少ない形状)により、応力分散を効果的に図ることができる。
【0050】
図13に示す応力分布図においても、図10に示す従来の応力分布図と比較すると、従来のような溝屈曲ライン125,126は形成されず、溝底面20bはその全体がなだらかな曲面で構成されていることから、最大応力領域である領域P1を中心にして、図10の各分布領域の形状に比べて広がりが広く、その全体的な輪郭線は鋭角部の少ないなだらかの曲線で構成された分布となっている。したがって、応力が効果的に分散されていることが分かる。
また、領域P1に生じた最大応力の数値においても、従来の場合と同じ条件下において、本実施形態の構造の場合、従来に比べて21%も低減させることができた。
【0051】
以下、本発明の前掲の実施形態に基づいてテストした実施例1,2について図14を参照して説明する。なお、比較例としては、図16に示す従来の溝端部120aについて実施したデータである。
なお、図14に示すグラフには、本実施形態の溝端部20aと従来の溝端部120aの溝の横断面積(溝の空間をメインシャフトの横断方向に沿って切断した面積)の変化の例を示してある。
【0052】
そして、この実施結果を見ると、図14に示されているように、比較例の断面積の変化は、図中のQにて示す範囲で急激な面積変化が生じている。
これに対して、本実施例1,2においては、溝端部20aは、溝最深部を横断する溝空間(A−A断面に相当する溝空間)の横断面積に対して、溝端部20aの浅くなり始まり側(グラフ左側)から溝終端側(グラフ右側)に向って全長の60%までの領域において断面変化が安定していることで、好ましい結果が得られる知見を得た。このような急激な面積変化によって応力集中がし易いことに比較して、本実施形態の断面積の変化はなだらかな曲線であり、応力集中が起こり難い。
そして、更に、溝端部20aは、溝最深部を横断する溝空間の横断面積に対して、溝端部20aの切れ上がり始端から溝終端側に向って溝端部20aの全長の60%までの領域において、溝空間の横断面積の断面積変化率は、切れ上がり始端から溝終端側へ前記溝端部20aの全長の1%の位置移動に対して0.3%以下であると、前掲の図8に示すように、応力分散が効果的にできる知見を得ることができた。
【0053】
以上、本発明についてドグクラッチを有する常時噛合式のトランスミッションにおけるメインシャフトに適用した第1および第2実施形態について説明したが、カウンタシャフト13にも適用可能であることは勿論、例えば、ツインクラッチ式のトランスミッション、他の鞍乗型車両、四輪自動車でもよく、さらには、本発明が対象とするスプライン軸を有する動力伝達機構に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 トランスミッション
12 メインシャフト
13 カウンタシャフト
20 スプライン溝
20a 溝端部
20b 溝底面
20c 側壁面
21 軸線方向中央部
H 溝深さ
L 溝端部の長さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプライン溝(20)に嵌合された歯車を備えるメインシャフト(12)と、スプライン溝(20)に嵌合された歯車を備えるカウンタシャフト(13)とを有しており、前記歯車同士の噛み合いを変更することにより、前記メインシャフト(12)から前記カウンタシャフト(13)への動力伝達の回転比率を変更可能に構成されたトランスミッション(1)において、
前記スプライン溝(20)における軸方向の少なくとも1つの溝端部(20a)は、前記スプライン溝(20)の溝底面(20b)の軸線方向中央部(21)が溝終端側へ向かうに連れ溝深さ(H)が浅くなるシャフト中心方向にへこむ湾曲面に構成され、さらに、前記溝端部(20a)は、前記溝底面(20b)の溝幅方向の両脇部(20e,20e)の溝横断面方向における曲率が溝終端側へ向って徐々に大きくなるように構成されていることを特徴とするトランスミッション(1)。
【請求項2】
前記溝端部(20a)はその終端輪郭線(20f)が平面視で溝外側に膨らむ湾曲線に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のトランスミッション(1)。
【請求項3】
前記溝端部(20a)は湾曲した前記溝底面(20b)の軸方向の長さ(L)が最大溝深さ(H)の4倍以上に構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のトランスミッション(1)。
【請求項4】
前記溝端部(20a)は、溝最深部を横断する溝空間の横断面積に対して、前記溝端部(20a)の切れ上がり始端(SP)から溝終端側に向って前記溝端部(20a)の全長の60%までの領域において、溝空間の横断面積の断面積変化率は、切れ上がり始端(SP)から溝終端側へ前記溝端部(20a)の全長の1%の位置移動に対して0.3%以下に構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のトランスミッション(1)。
【請求項1】
スプライン溝(20)に嵌合された歯車を備えるメインシャフト(12)と、スプライン溝(20)に嵌合された歯車を備えるカウンタシャフト(13)とを有しており、前記歯車同士の噛み合いを変更することにより、前記メインシャフト(12)から前記カウンタシャフト(13)への動力伝達の回転比率を変更可能に構成されたトランスミッション(1)において、
前記スプライン溝(20)における軸方向の少なくとも1つの溝端部(20a)は、前記スプライン溝(20)の溝底面(20b)の軸線方向中央部(21)が溝終端側へ向かうに連れ溝深さ(H)が浅くなるシャフト中心方向にへこむ湾曲面に構成され、さらに、前記溝端部(20a)は、前記溝底面(20b)の溝幅方向の両脇部(20e,20e)の溝横断面方向における曲率が溝終端側へ向って徐々に大きくなるように構成されていることを特徴とするトランスミッション(1)。
【請求項2】
前記溝端部(20a)はその終端輪郭線(20f)が平面視で溝外側に膨らむ湾曲線に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のトランスミッション(1)。
【請求項3】
前記溝端部(20a)は湾曲した前記溝底面(20b)の軸方向の長さ(L)が最大溝深さ(H)の4倍以上に構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のトランスミッション(1)。
【請求項4】
前記溝端部(20a)は、溝最深部を横断する溝空間の横断面積に対して、前記溝端部(20a)の切れ上がり始端(SP)から溝終端側に向って前記溝端部(20a)の全長の60%までの領域において、溝空間の横断面積の断面積変化率は、切れ上がり始端(SP)から溝終端側へ前記溝端部(20a)の全長の1%の位置移動に対して0.3%以下に構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のトランスミッション(1)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−207715(P2012−207715A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73381(P2011−73381)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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