説明

トリプターゼ阻害性マスタード抽出物

本発明は、マスタード抽出物(アブラナ科)、特にSinapis alba L.型及び/又はSinapis arvensis L.型の抽出物、並びに該抽出物を含有し、強力なトリプターゼ阻害活性を有する活性濃縮物に関する。これらは、局所皮膚及び頭皮ケア適用のために、表皮バリアの化粧処置のためのクリーム、ローション、ゲル、シャンプーなどの形状で使用することができる。バリアの異常及び破壊は、多くの場合にそれぞれ痒み及び炎症性皮膚疾患の出発点である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
皮膚の役割は、環境に向けた隔離機能及び仲介機能にある。様々な生化学的システム及び生物物理学的システムが、この露出した器官の完全性を維持することを助け、それによって、角質細胞の水分含量及び表皮バリアの脂質が決定的な役割を発揮する。皮膚の最外層である角質層は、皮膚を経表皮水分喪失(TEWL)から防ぐ。この透過性バリアは、脂質から構成され、多くの異なる影響、例えば脂質を抽出する界面活性剤を用いた洗浄により損傷されるおそれがあり、それによって角質層の水透過性が増加する。そのうえ、紫外線は、タンパク質、プロテオグリカン及び多糖の網状化(reticulation)又は分解を触媒し、弾性の喪失及び角質層の脆弱性増加を導く。外因性及び内因性酵素は、炎症過程及び免疫反応におけるタンパク質及び他の生体分子の質的低下を触媒する。トリプターゼ、エラスターゼ及びカテプシンは、皮膚タンパク質を攻撃し、特にバリア機能の障害を導く。バリア破壊の繰り返しは、表皮過形成を誘導し、乾燥肌を導くと考えられている。脆弱化したバリアは、TEWL強化を示し、乾燥性皮膚状態と同じように、アトピー性皮膚炎(Irvine et al., J. Invest. Dermatol. 126, 1200-2 (2006)参照)、乾癬、アトピー性湿疹、及び線維症のような炎症性皮膚疾患を招くおそれがある。これらの皮膚疾患は、掻痒を伴う乾燥肌を特徴とする(Rawlings et al., J. Invest. Dermatol. 124, 1099-110 (2005); Yosipovitch, Int. J. Cosm. Science 26, 1-7 (2004); Gruber et al., J. Immunol. 158, 2310-7 (1997)参照)。大部分の炎症性皮膚病変は、乾燥した鱗屑又は鱗屑−痂皮に覆われている。認識できる鱗屑性変化の不在下でさえも、臨床的に不可視の炎症を伴うアトピー性乾燥症などの乾燥性皮膚変化は、生物物理学的測定でのみ実証可能な角質層バリア機能の軽度の障害を示す。セリンプロテアーゼであるトリプターゼ(EC番号3.4.21.59)は、これらの過程に重要な役割を演じる。角質層におけるトリプターゼ活性とTEWLレベルの間に強い相関が見られよう。
【0002】
トリプターゼは、ヒトのマスト細胞の分泌顆粒中に最も豊富なセリンプロテアーゼであり、ヒスタミン、ヘパリン、サイトカイン及びプロテアーゼ、すなわちキマーゼ及びカルボキシペプチダーゼAと並行して活性化マスト細胞から分泌される。マスト細胞は、IgE(免疫グロブリンE)、サブスタンスP(神経ペプチド)、C3a(補体成分C3から放出されるタンパク質フラグメント)及びC5a(補体成分C5から放出されるタンパク質フラグメント)、アナフィラトキシン、TNF−α(腫瘍壊死因子−α)及びIL−1(インターロイキン−1)、フリーラジカル、及びUV線などの異なる物質及びメカニズムにより活性化される(Schwartz, Clin. Allergy Immunol. 6, 9-23 (1995)参照)。そのうえ、マスト細胞の脱顆粒は、乾燥した環境条件で起こると報告され(Ashida and Denda, Br. J. Dermatol. 149, 240-7 (2003)参照)、角質層におけるトリプターゼ様酵素の活性が最近示された(Voegeli et al., J. Invest. Dermatol. 126, 57 (2006)参照)。
【0003】
トリプターゼは、皮膚真皮の細胞外マトリックス(ECM)を損傷することが示された(Banno, Res. Dev. Dep. 34, 46-52 (2006)参照)。そのうえ、トリプターゼは、炎症応答カスケードを誘導する。それは、炎症反応を増強するペプチダーゼ及びプロテアーゼとして無数の重要な効果を有することが示された。故に、例えばトリプターゼは、フィブロネクチンを分割し、コラゲナーゼIV、uPA(ウロキナーゼ)及びMMP−3(メタロプロテイナーゼ−3)を活性化することにより基底膜を分解することができる(Hallgren and Pejler, FEBS Journal 273, 1871-95 (2006); Steinhoff et al., Arch. Dermatol. 139, 1479-88 (2003); Naukkarinen et al., J. Pathol. 180, 200-5 (1996)参照)。トリプターゼは、感覚神経、角化細胞及びマスト細胞膜におけるPar−2レセプター(プロテイナーゼ活性化レセプター−2)を活性化する。感覚神経におけるPAR−2レセプターの活性化は、ニューロキニンA、VIP(血管作用性小腸ペプチド)、SP(サブスタンスP)、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)及びソマトスタチンのような神経伝達物質の放出を誘導する(Steinhoff et al., J. Invest. Dermatol. 126, 1705-18 (2006)参照)。これらの神経伝達物質は、痒みを引き起こすことが知られている(Yosipovitch, Cosm. Toil. 120, 55-8 (2005)参照)。それらは、また、炎症性皮膚疾患において公知の現象である、角化細胞の増殖を誘導する(Hsieh and Lin, J. Invest. Dermatol. 113, 579-86 (1999)参照)。これらの神経伝達物質は、また、マスト細胞の活性化によりシグナル増幅を可能にする。神経伝達物質及びトリプターゼにより同時に起こる角化細胞活性化は、IL−αなどのサイトカイン又は神経線維の成長を誘導するNGFニューロトロフィン(神経成長因子)の合成及び分泌を引き起こし、故にシグナルを増幅する(Yosipovitch, Int. J. Cosm. Science 26, 1-7 (2004)参照)。
【0004】
トリプターゼは、また、脂質合成阻害に介入し、故に角質層の機能をデレギュレーションする(Hachem et al., J. Invest. Dermatol. 126, 2074-86 (2006)参照)。トリプターゼは、また、マスト細胞の活性化によりシグナルを増幅させる。その結果、トリプターゼは、炎症反応の初期及び慢性炎症過程に中心的な役割を発揮する酵素である。従って、この酵素の阻害は、乾燥皮膚状態、及びじん麻疹、湿疹皮膚炎などの炎症性皮膚疾患、乾癬などの過剰増殖性皮膚疾患を導くバリア異常の処置のための潜在的ターゲットに相当する。
【0005】
驚くことに、マスタード(アブラナ科)の、特にSinapis alba L.及び/又はSinapis arvensis L.型の抽出物が、競合的トリプターゼ阻害活性を示し、皮膚及び逃避バリア以上の局所的処置に使用できることが見い出された。トリプターゼ阻害のためのSinapis L抽出物の化粧的使用は、現在までに公表されていない。薬学的分野における合成化合物を用いた、炎症性疾患を処置するためのトリプターゼ阻害は、公知である(Burgessら、米国特許第6,362,216号参照)。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1である。
【0007】
発明の説明
本発明は、マスタードの、特にSinapis alba L.(アブラナ科)型及び/又はSinapis arvensis L.型の抽出物、並びに該抽出物を含有し強力なトリプターゼ阻害活性を有する活性画分に関する。これらは、特に乾燥性皮膚状態、(掻痒)痒み、及び/又はフケ及び/又は炎症性皮膚障害などの、皮膚及び/又は頭皮バリア異常の処置のための、クリーム、ローション、ゲル剤、シャンプーなどの局所製剤に使用することができる。
【0008】
本発明に使用されるべきマスタード抽出物は、好ましくは、作物の種子及び/又は地上部から得られる。
【0009】
特に、Sinapis alba L.(アブラナ科)及び/又はSinapis arvensis L.型の微粉状の乾燥植物材料は、エタノール、メタノール若しくはブタノールなどの異なるアルコール、又はpHが3〜8、好ましくは4〜6の水で抽出することができる。引用された溶媒のそれぞれは、単独で、又は混合して使用することができる。使用される溶媒体積は、抽出すべき種子などの植物物質の重量の1〜40倍、好ましくは10〜30倍に達しうる。効率的な抽出のために、10〜30倍超の溶媒を使用すべきである。抽出は10〜60℃、好ましくは25〜50℃で、1〜48時間、好ましくは1〜30時間行うことができる。濾過の後に、溶媒の蒸留により抽出液の体積を大部分減少させる。残渣は、60%(v/v)水性エタノールなどのアルコール溶液で希釈される。その混合物を4℃で12〜24時間沈降させ、その後それを濾過し、濃縮し、乾燥させて乾燥抽出物を得る。トリプターゼ阻害活性について試験されたこの抽出物は、0.64mg/ml(dry extract)のIC50値を有する。++
【0010】
本発明の局所有効抽出物は、所望の任意の適用形状で入手することができる。故に、これらの製剤は、例えば、水性又は無水調製物、油中水(w/o)型又は水中油(o/w)型のエマルション又はマイクロエマルション、例えば水中油中水(w/o/w)型の多重エマルション、ゲル、シャンプー、固形剤、又はエアロゾルでありうる。本発明の製剤は、例えば散剤、湿式パッチ、ローション、クリーム若しくは軟膏、シャンプー及び洗浄製剤、又は任意の他の化粧品として承認されている形状として入手することができる。乾燥マスタード抽出物の有効濃度は、化粧品組成物の合計重量に対して約0.02〜6%、好ましくは0.05〜3%である。乾燥マスタード抽出物含量が活性濃縮物の合計重量に対して1〜15%、好ましくは約4〜10%の安定な活性濃縮物を製造することができる。これらの活性濃縮物は、グリシン若しくはプロピレングリコールなどの別の適合性溶媒、又はそれらの混合物を用いて製剤してもよい。場合により保存料を添加することができる。
【0011】
任意の所望の適用形状で入手することができる、本発明の化粧学的及び/又は皮膚科学的に有効な抽出物は、通常適用され局所適用可能な任意のさらなるスキンケア剤と一緒に使用することができる。追加的なスキンケア剤の例は、保湿剤及びバリア剤、皮膚改善剤(skin-revitalizing agent)、抗痒み又は抗フケ成分、落屑剤、抗酸化剤、UV光吸収化合物及びUVクエンチャー、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC及び/又はビタミンEなどのビタミン、レチノイド、ジ−、トリ−、テトラ−及びペンタペプチドなどのペプチド及びそれらの誘導体、ヒドロキシ酸、抗炎症剤、フラボノイド、抗菌剤、抗真菌剤、及びそれらの混合物などの、植物材料、動物材料又は合成及び半合成物質である。
【0012】
許容され得る担体は、一般に、本発明の化粧学的及び/又は皮膚科学的活性組成物又は製剤の製造に使用することができる。該担体の例は、アルコール、ポリオール、脂肪酸、脂質、油、ロウ、粘稠化剤、界面活性剤、乳化剤、充填剤、保存料、香料(aromas)及び芳香剤(fragrances)、並びに着色料、泡安定化剤及び/又はシリコーンである。
【0013】
本発明に使用されるべき担体は、特に、グリセリン、ポリグリセリン化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、寒天ガム、トラガカントガム、アラビアゴム、植物性または動物性ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール酢酸エステル、セチルアルコールなどのC6−22脂肪アルコール、C6−22脂肪アルコールエステル、特に、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸及び対応するメチル、エチル及びプロピルエステル、ラノリン、流動パラフィン又はワセリン若しくは蜜ロウなどの天然若しくは合成ロウ、オリーブ油、ヤシ油、ダイズ油、ヒマシ油などの植物油及び対応する硬化油、ポリアルキレンオキシド修飾されたヒドロキシル含有化合物、並びに皮膚科学的、化粧品及び/又は治療用製剤に組み入れられることが公知のさらなる原料である。
【0014】
油中水(w/o)、水中油(o/w)又は水中油中水(w/o/w)エマルション又はマイクロエマルションの調製のために、本質的に公知であり、このために適用される化合物が好ましくは使用される。脂質相の調製のために、鉱物油又は天然油又は天然ロウが好ましくは使用される。脂肪酸とエタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール若しくはグリセリンとのエステル、又は脂肪アルコールと有機C3−20酸とのエステルなどの、脂肪酸とアルコールとの合成製造されたエステルもまた使用してもよい。例えば、ミリスチン酸プロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸2−ヘキシルデシルなどの、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸のエステル、若しくはホホバ油などの天然油、又はそれらの混合物が好ましい。好ましいシリコーンは、特に、(好ましくは環状又は直鎖形状の)ポリシロキサンジメチルである。
【0015】
さらに、本発明の製剤は、pH調整のための酸又は塩基、例えば水酸化ナトリウム、リン酸、クエン酸、又は好ましくは緩衝系として乳酸トリエタノールアミンを含んでもよい。
【0016】
以下の実施例は、本発明の範囲をいかなる方法にも限定することなく、本発明をさらに具体的に説明することを意図する。
【0017】
実施例
実施例1
Sinapis arvensis L.抽出物の調製
Dixa AG.(St. Gallen, Switzerland)から得た、微粉化Sinapis alba L.種子(100g)を40℃で3時間900gの水で抽出する。濾紙(Whatman)で濾過後に、得られた濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮物50gを得る。400gの96%エタノール(v/v)の添加後に、その混合物を40℃で12時間放置させ、その後それを濾過し、濃縮し、凍結乾燥させて乾燥抽出物10.2gを得る。
【0018】
実施例2
Sinapis alba L.活性調製物の製剤化
3gの乾燥抽出物を12gの水、35gのグリセリン、0.15%のソルビン酸カリウム及び0.3%の安息香酸ナトリウムを用いて製剤化し、その後クエン酸でpHを4.3に調整する。濾過後に、得られた濃縮物は、以下の性質を示す:透明、褐色、特徴的な臭いを有するやや粘性の液体、比重(D20/20)1.186及び屈折率1.428。
【0019】
実施例3
Sinapis alba L.抽出物のトリプターゼ阻害効果
96ウェルマイクロタイタープレートを用いて室温で酵素アッセイを行う。緩衝液1(50mMトリスHCl、pH7.6)及び緩衝液2(50mMトリスHCl、1.65M NaCl及び550μg/mlヘパリン、pH7.6)を1:1の比で含むトリス緩衝液でrh皮膚βトリプターゼ(Promega, Madison, USA)を活性化する。標準的なインキュベーションで、合計体積125μlの緩衝液1を入れたウェルに50μlのトリプターゼ(c=1.43μg/ml)を添加する。25μlの阻害剤を添加し、その混合物を30分間インキュベーションする。その後、25μlの発色性ペプチド基質Tos−Gly−Pro−Lys−pNA(Pentapharm Ltd., Basel, Switzerland)の1mM水溶液を添加する。このマスタード抽出物を5濃度で6回試験する;試験された最高濃度は2.8mg/mlであり、Pefabloc(登録商標)Tryp(1,4−ビス−[(Nα−2−ナフチルスルホニル)−3−アミジノ−(D,L)−フェニルアラニン]−ピペラジドジヒドロクロリド)(Pentapharm, Switzerland)を濃度37.8nMで陽性対照として使用する。
【0020】
p−ニトロアニリンの放出は、光度計を使用して405nmで30分間記録する。その記録から1分間あたりの吸光度の差(DA/min)を決定し、エラスターゼの阻害は、最終的に以下の式を使用して%単位で計算する:
%阻害=[(DA(対照)/min−DA(試料)/min)/(DA(対照)/min)]×100
【0021】
マスタード抽出物についてのIC50値である0.64mg/ml(乾燥抽出物に関して)は、用量反応曲線により決定することができよう。
【0022】
実施例4
角質層におけるTEWLとトリプターゼ活性の相関
健康な白人被験者12人(皮膚タイプII−III)が試験に参加した。全ての志願者は、インフォームドコンセントの書式にサインした。頬に連続的なテープストリッピング(9回)(D-Squame(登録商標), CuDerm Corporation, Dallas, USA)を行う前に、Aquaflux AF103(Biox Systems, London, UK)を使用してTEWLを測定した。角質層を採取する前の少なくとも12時間は、局所薬も化粧品も全く適用しないよう被験者に要請した。最初に、テープストリッピングの15分前に、外界温度の蒸留水を染みこませた綿パッドで皮膚を慎重に清浄化し、乾燥させた。被験者を標準的な条件の環境室に順応させた。外科用マーカーで皮膚部位に印を付け、測定プローブ及びテープが同じ領域に一貫して確実に適用されるようにした。
【0023】
加圧装置(CuDerm Corporation, Dallas, USA)で225g/cm2の圧を5秒間かけて直径2.2cm、面積3.8cm2の標準D-Squame(登録商標)ディスクを押しつけた。各ストリッピングの間隔は20±5秒であった。
【0024】
赤外デンシトメータSquameScan(商標)850A(Heiland electronic, Wetzlar, Germany)を用いた850nmでの吸光度測定により、テープストリッピング中のタンパク質含量を定量した。SquameScan(商標)850Aは、標準D-Squame(登録商標)ディスクの適用のために特に設計されたものである。タンパク質の定量のために、以下の式を使用した:
C(タンパク質)[μg/cm2]=1−366×吸光度[%]−1.557
【0025】
吸光度の測定直後に、各テープストリッピングを1.5mlエッペンドルフチューブに移し、0.1Mトリス/HCl及び0.5% Triton X−100(pH8.0)から構成される750μlの緩衝液中で25℃及び1000rpmで15分間抽出した。テープストリッピングの抽出液をプールした。その溶液250μlに蛍光発生トリプターゼ基質Tos−Gly−Pro−Lys−AMC(Bachem, Switzerland)の5mMDMSO溶液1.25μlを添加した(最終基質濃度=25μM)。それらの溶液を37℃及び1000rpmで混合した。2時間後に、反応混合物100μlに100μlの1%酢酸を添加することにより反応を停止させた。放出されたAMCをC18 HPLC勾配溶出により定量した(80%水/20%アセトニトリル/0.07%TFAから50%水50%アセトニトリル/0.07%TFA)。使用したカラムは、Symmetry C18、3.5μm、4.6mm×75mm(Waters, Milford, USA)であった。流速は、1ml/min、インジェクション体積は5μl、AMCの保持時間は3.5分であった。発光波長は442nm、励起波長は354nmであった。
【0026】
表1及び図1にデータをまとめる。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例5
【0029】
【表2】

【0030】
手順
相Bに相Cを分散させる。相A及び相BCを別々に加熱する。撹拌しながら相BCに相Aを添加し、次いで均質にする。相Dを用いてpHを約4.5に調整する。撹拌しながら相Eを添加する。pHをコントロールし、必要であれば4.5に調整する。
【0031】
実施例6
【0032】
【表3】

【0033】
手順
Natrosol250 HHRを水に分散させる。相Bを混合し、次いでそれを相Aに添加する。相CでpHを約8.5に調整し、透明なゲルを得る。次いで、相DでpHを約4.5に調整する(ゲルは乳白色になる)。撹拌しながら相Eを添加する。pHをコントロールし、必要であれば4.5に調整する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブラナ科植物から得られるマスタード抽出物。
【請求項2】
sinapis alba L.型及び/又はsinapis arvensis L.型植物から得られる、請求項1記載のマスタード抽出物。
【請求項3】
作物の種子及び/又は地上部から得られることを特徴とする、請求項1又は2記載のマスタード抽出物。
【請求項4】
非治療的化粧品局所適用のための、特に乾燥性皮膚状態、痒み、及び/又はフケ及び/又は炎症性皮膚障害などの皮膚及び/又は頭皮バリア異常の処置のための、請求項1〜3の一項記載のマスタード抽出物の使用。
【請求項5】
特に皮膚及び/又は頭皮ケア製品としての、治療的及び/又は化粧学的活性組成物の調製のための、請求項1〜3の一項記載のマスタード抽出物の使用。
【請求項6】
組成物が、リポソーム、ナノソーム、シクロデキストリンなどのナノ粒子に封入されていることを特徴とする、請求項5記載のマスタード抽出物の使用。
【請求項7】
請求項1〜3の一項記載のマスタード抽出物を含有する、皮膚及び/又は頭皮ケア組成物。
【請求項8】
sinapis alba L.及び/又はsinapis arvensis L.からの乾燥マスタード抽出物を含有する、皮膚及び/又は頭皮ケア組成物。
【請求項9】
請求項8と同義の乾燥マスタード抽出物を、0.02〜6%(m/m)、好ましくは0.05〜3%(m/m)の範囲の量で含有する、皮膚及び/又は頭皮ケア組成物。
【請求項10】
sinapis alba L.及び/又はsinapis arvensis L.からの乾燥マスタード抽出物を用いて製造された活性濃縮物を含有する、皮膚及び/又は頭皮ケア組成物。
【請求項11】
請求項10と同義の乾燥マスタード抽出物を用いて製造された活性濃縮物を、1〜15%(m/m)、好ましくは4〜10%(m/m)の範囲の量で含有する、皮膚及び/又は頭皮ケア組成物。
【請求項12】
a)請求項1〜3の一項記載のマスタード抽出物と、
b)保湿剤及びバリア剤、皮膚改善剤、抗痒み成分、落屑剤、抗酸化剤、UV光吸収化合物及びUVクエンチャー、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC及び/又はビタミンEなどのビタミン、レチノイド、ジ−、トリ−、テトラ−及びペンタペプチドなどのペプチド及びそれらの誘導体、ヒドロキシ酸、抗炎症剤、フラボノイド、抗菌剤、抗真菌剤、及びそれらの混合物などの、植物材料、動物材料又は合成及び半合成物質を含む群より選択される、安全で有効な量の、少なくとも一つの追加的な皮膚及び/又は頭皮ケア剤と
を含有することを特徴とする、皮膚及び/又は頭皮ケア組成物。
【請求項13】
一つ又は複数の局所的に許容され得る担体を含むことを特徴とする、請求項7〜12の一項記載の皮膚及び/又は頭皮ケア組成物。
【請求項14】
無水調製物、油中水(w/o)又は水中油(o/w)型のエマルション又はマイクロエマルション、例えば水中油中水(w/o/w)型の多重エマルション、ゲル、固形剤、軟膏、シャンプー、洗浄製剤、エアロゾルの形状又は任意の他の化粧品として又は治療的に承認された形状でありうることを特徴とする、請求項7〜13の一項記載の組成物。
【請求項15】
特に乾燥性皮膚状態、痒み及び/又はフケ及び/又は炎症性皮膚障害などの皮膚及び/又は頭皮バリア異常の処置のための非治療的化粧学的活性製品としての、請求項7〜14の一項記載の組成物の使用。
【請求項16】
請求項7〜14の一項記載のマスタード抽出物を含有する組成物が、皮膚及び/又は頭皮に適用されることを特徴とする、乾燥性皮膚状態、痒み及び/又はフケ及び/又は炎症性皮膚障害などの皮膚及び/又は頭皮バリア異常の非治療的化粧処置のための方法。
【請求項17】
請求項7〜14の一項記載のマスタード抽出物を含有する組成物が、皮膚及び/又は頭皮に適用されることを特徴とする、乾燥性皮膚状態、痒み及び/又はフケ及び/又は炎症性皮膚障害などの皮膚及び/又は頭皮バリア異常の治療的化粧処置のための方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−536891(P2010−536891A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522189(P2010−522189)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007487
【国際公開番号】WO2009/026944
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】