説明

ドア部構造

【課題】車両用ドアの開放時の見栄えを向上させると共に、側面衝突時における車両用ドアの変位を抑制する。
【解決手段】リアサイドドア14から車両幅方向内側に突出したガイドピン44が、サイドドア14の閉止位置を規制するストッパ58内に隠されているので、リアサイドドア14を開放したときにガイドピン44が露出せず見栄えが良好である。一方、リアサイドドア14の車両上下方向下側部14Aに対して車両幅方向外側から内側に側面衝突荷重Fが作用した場合には、ガイドピン44が対向部66を突き破り、さらにガイド用カラー88の孔部90に確実に挿入され、このガイド用カラー88と確実に係合される。これにより、リアサイドドア14の車両上下方向下側部14Aが車体26に拘束された状態となるので、リアサイドドア14の車体26に対する車両上下方向上側への変位を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア部構造に係り、特に、車両用ドアに衝突荷重が作用した際に車両用ドアの車体に対する変位を抑制するための構造を備えたドア部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のドア部構造としては、次のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1には、側面衝突時にサイドドアが車室側へ大きく変位することを防止又は低減するために、サイドドアの内側に突起状の突出部を設けると共に、該突出部が係合する穴状の被係合部をサイドシルに設けた構成が開示されている。
【特許文献1】特開2003−25848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、車両用ドアの開放時に、突起状の突出部が露出してしまうため、見栄えの点で改善の余地があると考えられる。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮し、車両用ドアの開放時の見栄えを向上させることができると共に、車両用ドアに衝突荷重が作用した場合でも車両用ドアの車体に対する変位を抑制することができるドア部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1に記載のドア部構造は、車両用ドアからドア厚さ方向内側に向けて突出された突出部と、前記車両用ドアにおける前記突出部の周囲に設けられた環状部を有して構成され、前記車体に対する前記車両用ドアの閉止位置を規制するためのストッパと、前記車体に設けられ、前記車両用ドアの閉止時に前記ストッパとドア厚さ方向に対向される対向部と、車体における前記対向部のドア厚さ方向内側に設けられ、前記車両用ドアの閉止時に前記突出部に対し少なくとも一部がドア高さ方向上側に配置される被係合部と、を有することを特徴とする。
【0006】
なお、本発明において、ドア厚さ方向とは、例えば、ドア部構造が車両のサイドドアについて適用された場合には、車両幅方向に相当し、ドア部構造が車両のバックドアについて適用された場合には、車両前後方向に相当する。また、ドア高さ方向とは、車両上下方向に相当する。
【0007】
請求項1に記載のドア部構造では、車両用ドアからドア厚さ方向内側に向けて突出された突出部の周囲に、車体に対する車両用ドアの閉止位置を規制するためのストッパの環状部が設けられている。このため、ストッパの環状部内に突出部が隠されるので、車両用ドアを開放したときに突出部が露出することがなく、車両用ドアの開放時の見栄えが良好である。
【0008】
一方、例えば車両用ドアに対してドア厚さ方向内側に衝突荷重が作用した場合には、車両用ドアに設けられた突出部が車体に設けられた被係合部と係合されるので、車両用ドアの車体に対する変位、特に、ドア高さ方向上側への変位を抑制することができる。
【0009】
なお、車両用ドアの閉止時には、突出部と被係合部とのドア厚さ方向間に対向部が介在されるが、例えば車両用ドアに対してドア厚さ方向内側に衝突荷重が作用した場合に、突出部は、対向部を突き破って被係合部と係合されても良く、また、対向部を介して被係合部と係合されても良い。
【0010】
このように、請求項1に記載のドア部構造によれば、車両用ドアの開放時の見栄えを向上させることができると共に、車両用ドアに衝突荷重が作用した場合でも車両用ドアの車体に対する変位を抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載のドア部構造は、請求項1に記載のドア部構造において、前記対向部は、前記車両用ドアの閉止時に少なくとも前記突出部とドア厚さ方向に対向される部位にドア厚さ方向内側に凹設された凹部を備えて構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載のドア部構造によれば、例えば車両用ドアに対してドア厚さ方向内側に衝突荷重が作用した場合には、突出部が被係合部と係合される前に対向部に当接されるが、この対向部には、少なくとも突出部とドア厚さ方向に対向される部位に凹部が設けられている。従って、この凹部によって対向部に対する突出部の変位(例えば滑り)を抑制することができる。これにより、被係合部に対する突出部の位置ズレを抑制でき、突出部を被係合部に確実に係合することができる。
【0013】
請求項3に記載のドア部構造は、請求項1又は請求項2に記載のドア部構造において、前記車両用ドアにおける前記突出部の取付け部は、前記車両用ドアにおける前記ストッパの取付け部に対しドア厚さ方向外側に離間して配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載のドア部構造によれば、突出部及びストッパから荷重を受ける各取付け部が離間して配置されている。従って、各取付け部に必要な強度や剛性をそれぞれ設定することができる。
【0015】
また、例えば車両用ドアに対してドア厚さ方向内側に衝突荷重が作用した場合には、突出部の取付け部がストッパの取付け部に対してドア厚さ方向内側に相対的に変位することができる。従って、突出部を被係合部に係合させるためのストロークを容易に確保することができる。
【0016】
請求項4に記載のドア部構造は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のドア部構造において、前記車両用ドアには、インパクトビームが設けられ、前記突出部は、前記インパクトビームに一体的に設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載のドア部構造によれば、突出部が、インパクトビームに一体的に設けられている。従って、例えば車両用ドアに対してドア厚さ方向内側に衝突荷重が作用した場合には、インパクトビームからのドア厚さ方向内側への衝突荷重を、突出部及び被係合部を介して車体側に効率良く伝達することができる。
【0018】
請求項5に記載のドア部構造は、請求項4に記載のドア部構造において、前記インパクトビームの少なくとも一部は、前記車両用ドアの閉止時に前記被係合部とドア厚さ方向に対向されることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載のドア部構造によれば、インパクトビームの少なくとも一部が、車両用ドアの閉止時に被係合部とドア厚さ方向に対向されている。従って、例えば車両用ドアに対してドア厚さ方向内側に衝突荷重が作用した場合には、インパクトビームからのドア厚さ方向内側への衝突荷重を、突出部及び被係合部を介して車体側により一層効率良く伝達することができる。
【0020】
請求項6に記載のドア部構造は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のドア部構造において、前記被係合部は、ドア厚さ方向に延在されて前記突出部が挿入可能な筒状に構成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載のドア部構造によれば、被係合部が、ドア厚さ方向に延在されて突出部が挿入可能な筒状に構成されている。従って、例えば車両用ドアに対してドア厚さ方向内側に衝突荷重が作用した場合には、突出部を筒状の被係合部に挿入させて、突出部と被係合部とを確実に係合させることができる。
【0022】
請求項7に記載のドア部構造は、請求項6に記載のドア部構造において、前記車体には、前記被係合部に対しドア高さ方向上側に配置されて前記被係合部の長手方向における少なくとも一部とオーバラップするラップ部が設けられていることを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載のドア部構造によれば、車体には、被係合部に対しドア高さ方向上側に配置されて被係合部の長手方向における少なくとも一部とオーバラップするラップ部が設けられている。従って、車両用ドアに対して衝突荷重が作用したことに伴って被係合部に対してドア高さ方向上側に荷重が作用した場合でも、ラップ部によって被係合部のドア高さ方向上側への変位を抑制することができる。これにより、突出部と被係合部とを確実に係合させた状態に維持することができ、また、被係合部に対してドア高さ方向上側に作用する荷重を、ラップ部を介して車体側に効率良く伝達することができる。
【0024】
請求項8に記載のドア部構造は、請求項6又は請求項7に記載のドア部構造において、前記車体には、前記被係合部に対しドア厚さ方向内側に配置されて前記被係合部とドア厚さ方向に対向する支持部が設けられていることを特徴とする。
【0025】
請求項8に記載のドア部構造によれば、車体には、被係合部に対しドア厚さ方向内側に配置されて被係合部とドア厚さ方向に対向する支持部が設けられている。従って、車両用ドアに対して衝突荷重が作用したことに伴って被係合部に対してドア厚さ方向内側に荷重が作用した場合には、この被係合部に対して作用する荷重を、支持部を介して車体側に効率良く伝達することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、請求項1に記載のドア部構造によれば、車両用ドアの開放時の見栄えを向上させることができると共に、車両用ドアに衝突荷重が作用した場合でも車両用ドアの車体に対する変位を抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【0027】
請求項2に記載のドア部構造によれば、被係合部に対する突出部の位置ズレを抑制でき、突出部を被係合部に確実に係合することができる、という優れた効果が得られる。
【0028】
請求項3に記載のドア部構造によれば、各取付け部に必要な強度や剛性をそれぞれ設定することができ、しかも、突出部を被係合部に係合させるためのストロークを容易に確保することができる、という優れた効果が得られる。
【0029】
請求項4に記載のドア部構造によれば、インパクトビームからの衝突荷重を、突出部及び被係合部を介して車体側に効率良く伝達することができる、という優れた効果が得られる。
【0030】
請求項5に記載のドア部構造によれば、インパクトビームからの衝突荷重を、突出部及び被係合部を介して車体側により一層効率良く伝達することができる、という優れた効果が得られる。
【0031】
請求項6に記載のドア部構造によれば、突出部を筒状の被係合部に挿入させて、突出部と被係合部とを確実に係合させることができる、という優れた効果が得られる。
【0032】
請求項7に記載のドア部構造によれば、突出部と被係合部とを確実に係合させた状態に維持することができ、また、被係合部に対してドア高さ方向上側に作用する荷重を、ラップ部を介して車体側に効率良く伝達することができる、という優れた効果が得られる。
【0033】
請求項8に記載のドア部構造によれば、被係合部に対してドア厚さ方向内側に作用する荷重を、支持部を介して車体側に効率良く伝達することができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
はじめに、本発明の一実施形態に係るドア部構造10の構成について説明する。
【0035】
図1乃至図4には、本発明の一実施形態に係るドア部構造10が適用された車両12の構成が示されている。なお、これらの図において示される矢印FR、矢印UP、矢印INは、それぞれ車両12の車両前後方向前側、車両上下方向上側、車両幅方向内側をそれぞれ示している。
【0036】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係るドア部構造10は、車両12のリアサイドドア14について適用されている。リアサイドドア14には、ドアアウタパネル16及びドアインナパネル18が設けられており、ドアアウタパネル16とドアインナパネル18との車両幅方向間には、インパクトビーム20が配置されている。
【0037】
インパクトビーム20は、車両前後方向に延在するパイプ状に構成されており、その車両前後方向両側部20A,20Bがエクステンション22,24によってドアインナパネル18と結合されている。また、インパクトビーム20は、その車両前後方向後側部20Bの方が車両前後方向前側部20Aよりも車両上下方向下側に位置されるように水平方向に対して傾斜して配置されている。そして、このインパクトビーム20の車両前後方向後側部20Bは、後述するドア開口28の車両上下方向下側の縁部であるロッカ部30と車両幅方向外側視にて重なるように位置されている。
【0038】
一方、車両12の車体26には、リアサイドドア14によって開閉されるドア開口28が設けられている。このドア開口28の車両上下方向下側の縁部は、ロッカ部30とされている。ロッカ部30には、図1の2−2線断面図である図2に示されるように、サイドアウタパネル32、ロッカアウタリアパネル34、ガゼット36、ロッカインナリアパネル38、リアフロアサイドメンバパネル40がそれぞれ設けられている。
【0039】
サイドアウタパネル32は、ロッカアウタリアパネル34の車両幅方向外側に設けられており、このロッカアウタリアパネル34とロッカインナリアパネル38とは、車両前後方向に延在する閉じ断面42を構成している。ガゼット36は、ロッカインナリアパネル38の車両上下方向上側に設けられており、リアフロアサイドメンバパネル40は、ロッカインナリアパネル38の車両幅方向内側に設けられている。
【0040】
また、本発明の一実施形態に係るドア部構造10には、その特徴的な構成として以下の構成が備えられている。つまり、図2の要部拡大図である図3に示されるように、リアサイドドア14には、突出部としてのガイドピン44が設けられている。このガイドピン44は、例えば金属製の丸棒状に構成されている。また、ガイドピン44は、インパクトビーム20の車両前後方向後側部20B及びエクステンション24のそれぞれに車両幅方向に貫通形成された孔部48,50,52に挿入されている。そして、ガイドピン44は、各孔部48,50,52に挿入された状態で例えば溶接等によってインパクトビーム20の車両前後方向後側部20B(取付け部)に一体的に固定されている。
【0041】
また、ガイドピン44は、上述のようにインパクトビーム20に一体的に固定された状態では、インパクトビーム20から車両幅方向内側へ延出されている。そして、このガイドピン44の延出端側は、ドアインナパネル18に車両幅方向に貫通形成された孔部54を通過してドアインナパネル18から車両幅方向内側へ向けて突出されている。また、このガイドピン44の延出端部には、先細り状を成すテーパ部46が設けられている。
【0042】
また、ガイドピン44には、その車両幅方向外側部と一体的にフランジ部56が設けられている。このフランジ部56は、ガイドピン44全体がインパクトビーム20に対し車両幅方向内側に相対移動されることを防止(抜け防止)するためのものであり、インパクトビーム20の孔部48よりも大径に構成されている。
【0043】
さらに、リアサイドドア14には、ストッパ58が設けられている。このストッパ58は、例えばゴム等の弾性体により構成されており、リアサイドドア14の閉止時に後述するサイドアウタパネル32に設けられた対向部66(車両上下方向に延在された壁部)と当接されてリアサイドドア14の閉止位置を規制する役割を果たすものである。このストッパ58には、周方向に沿って延びる溝部60が設けられている。そして、ストッパ58は、ドアインナパネル18の孔部54に挿入された状態で溝部60に孔部54の周縁部が嵌合されることによってドアインナパネル18の車両上下方向下側部18A(取付け部)に一体的に固定されている。
【0044】
また、ストッパ58には、車両幅方向に貫通する孔部62が設けられている。この孔部62は、ドアインナパネル18の孔部54と同軸的に形成されている。また、この孔部62には、ガイドピン44の延出端側の部分が挿入されている。そして、このストッパ58におけるドアインナパネル18よりも車両幅方向内側の部分は、ガイドピン44の延出端側の部分の周囲を囲う環状部64として構成されている。
【0045】
一方、サイドアウタパネル32には、車両上下方向に延在された対向部66が設けられている。この対向部66は、リアサイドドア14の閉止時にストッパ58と車両幅方向に対向されるように配置されている。また、この対向部66には、ガイドピン44及びストッパ58の環状部64と車両幅方向に対向される部位に一般面68に対して車両幅方向内側に凹む凹部70が設けられている。この凹部70は、車両幅方向外側視にて例えば円形状に構成されている。
【0046】
さらに、図4には、ドア開口28の車両上下方向下側の縁部であるロッカ部30の斜視図が示されている。なお、この図4では、ロッカ部30の内部構成の理解の容易のために、サイドアウタパネル32(図2参照)の図示が省略されている。図4に示されるように、ロッカアウタリアパネル34とロッカインナリアパネル38との車両幅方向間には、一対のバルクヘッド72,74が挟み込まれている。
【0047】
この一対のバルクヘッド72,74のうち車両幅方向外側に配置されたバルクヘッド72には、周縁部76に対して車両幅方向外側に膨出する膨出部78が設けられている。そして、この一対のバルクヘッド72,74は、図2に示されるように、ロッカアウタリアパネル34とロッカインナリアパネル38とで構成される閉じ断面42の内側で閉じ断面80を構成している。また、ロッカアウタリアパネル34及び一対のバルクヘッド72,74には、図3に示されるように、ガイドピン44と同軸的に車両幅方向に貫通する孔部82,84,86がそれぞれ設けられている。そして、このうちの孔部84,86には、被係合部としてのガイド用カラー88が挿入されている。
【0048】
ガイド用カラー88は、例えば金属製の筒状体により構成されている。このガイド用カラー88に設けられた孔部90の内径は、ガイドピン44の外径よりも大径に設定されている。そして、ガイド用カラー88は、一対のバルクヘッド72,74の孔部84,86に挿入された状態で、車両幅方向外側に位置されるバルクヘッド72の孔部84の周縁部と例えば溶接等によって一体的に固定されている。なお、ガイド用カラー88は、車両幅方向内側に位置されるバルクヘッド74と固定されずに車両幅方向に相対移動可能な状態とされている。
【0049】
また、ガイド用カラー88は、上述のようにバルクヘッド72に一体的に固定された状態では、対向部66の車両幅方向内側に対向部66と近接して位置されると共に、リアサイドドア14の閉止時にガイドピン44と同軸状で且つこのガイドピン44と対向部66を介して車両幅方向に対向されるように位置されている。また、このガイド用カラー88は、その少なくとも一部がガイドピン44よりも車両上下方向上側に配置されている。さらに、このガイド用カラー88は、リアサイドドア14の閉止時にインパクトビーム20の車両前後方向後側部20Bと車両幅方向に対向されるように位置されている。
【0050】
また、図2に示されるように、ロッカインナリアパネル38には、ガイド用カラー88に対し車両上下方向上側に位置する部位に概ね車両幅方向に延在するラップ部92が設けられている。このラップ部92は、ガイド用カラー88に近接して配置されると共に、ガイド用カラー88の長手方向における一部(長手方向中央部から車両幅方向内側の端部までの部分)とオーバラップするように設けられている(オーバラップ長さL1)。
【0051】
次に、本発明の一実施形態に係るドア部構造10の作用について説明する。
【0052】
以上のように構成された本発明の一実施形態に係るドア部構造10によれば、図3に示されるように、リアサイドドア14から車両幅方向内側に向けてガイドピン44が突出されているが、このガイドピン44の周囲には、ストッパ58の環状部64が設けられている。このため、ストッパ58の環状部64内にガイドピン44が隠されるので、リアサイドドア14を開放したときにガイドピン44が露出することがなく、リアサイドドア14の開放時の見栄えが良好である。
【0053】
一方、図2に示されるように、例えばリアサイドドア14の車両上下方向下側部14Aに対して車両幅方向外側から内側に側面衝突荷重Fが作用した場合には、リアサイドドア14の車両上下方向下側部14Aの車両幅方向内側への移動に伴ってインパクトビーム20及びガイドピン44が車両幅方向内側へ移動される。そして、ガイドピン44の車両幅方向内側への移動に伴ってガイドピン44が対向部66に形成された凹部70の底部と瞬間的に当接される。
【0054】
従って、この凹部70によって対向部66に対するガイドピン44の車両前後方向又は車両上下方向への変位(例えば滑り)が抑制され、これにより、ガイド用カラー88に対するガイドピン44の位置ズレが抑制される。
【0055】
そして、ガイドピン44が車両幅方向内側へさらに移動すると、図5に示されるように、ガイドピン44が対向部66を突き破る。このとき、ガイドピン44は、その延出端部に先細り状を成すテーパ部46を備えているので、対向部66を容易に突き破ることができる。そして、この対向部66には、ガイド用カラー88が近接して配置されているので(図3参照)、ガイドピン44は、ガイド用カラー88の孔部90に確実に挿入され、このガイド用カラー88と確実に係合される。
【0056】
しかも、ガイド用カラー88は、車両幅方向に延在されてガイドピン44が挿入可能な筒状に構成されている。従って、ガイドピン44を筒状のガイド用カラー88に挿入させて、ガイドピン44とガイド用カラー88とを確実に係合させることができる。そして、これにより、リアサイドドア14の車両上下方向下側部14Aが車体26に拘束された状態となるので、リアサイドドア14の車体26に対する変位、特に、リアサイドドア14の車両上下方向下側部14Aの車両上下方向上側への変位を抑制することができる。
【0057】
また、図3に示されるように、ガイドピン44の取付け部であるインパクトビーム20の車両前後方向後側部20Bは、ストッパ58の取付け部であるドアインナパネル18の車両上下方向下側部18Aに対し車両幅方向外側に離間して配置されている。このため、上述の如くリアサイドドア14に対して側面衝突荷重Fが作用した場合には、インパクトビーム20の車両前後方向後側部20Bがドアインナパネル18の車両上下方向下側部18Aに対して車両幅方向内側に相対的に変位することができる。
【0058】
従って、ストッパ58を含むドアインナパネル18の車両上下方向下側部18Aがサイドアウタパネル32に近接又は当接した(車両幅方向内側への移動が拘束された)後でも、インパクトビーム20の車両前後方向後側部20Bと共にガイドピン44をさらに車両幅方向内側へ移動させることができる。これにより、ガイドピン44が対向部66を突き破る、若しくは、ガイドピン44をガイド用カラー88に係合させるためのストロークを容易に確保することができる。しかも、ガイドピン44を長くすることができるので、ガイドピン44をガイド用カラー88の孔部90により深く挿入することができる。これにより、ガイドピン44とガイド用カラー88とをより強固に係合することができるので、リアサイドドア14の車両上下方向下側部14Aを車体26に対してより強固に拘束することができる。この結果、リアサイドドア14の車両上下方向下側部14Aの車両上下方向上側への変位をより一層抑制することができる。
【0059】
さらに、図2に示されるように、ロッカインナリアパネル38には、ガイド用カラー88に近接して配置されると共に、ガイド用カラー88の長手方向における一部(長手方向中央部から車両幅方向内側の端部までの部分)とオーバラップするラップ部92が設けられている。従って、リアサイドドア14に対して側面衝突荷重Fが作用したことに伴ってガイド用カラー88に対して車両上下方向上側に荷重が作用した場合でも、ラップ部92によって拘束することでガイド用カラー88の車両上下方向上側への変位を抑制することができる。これにより、ガイドピン44とガイド用カラー88とを確実に係合させた状態に維持することができ、また、ガイド用カラー88に対して車両上下方向上側に作用する荷重を、ラップ部92を介して車体26の車両上下方向上側に効率良く伝達することができる。この結果、リアサイドドア14の車両上下方向下側部14Aの車両幅方向上側への変位をさらにより一層抑制することができる。
【0060】
また、本発明の一実施形態に係るドア部構造10によれば、ガイドピン44は、リアサイドドア14の車両前後方向後側部14B(図1参照)に設けられており、ガイド用カラー88は、ガイドピン44が係合されたときにはガイドピン44の車両前後方向前側への変位を抑制可能な筒状とされている。従って、例えばリアサイドドア14の車両前後方向中央部若しくはそれよりも車両前後方向前側の部位に側面衝突荷重Fが作用した場合には、ガイドピン44が筒状のガイド用カラー88に係合されることによって、リアサイドドア14の車両前後方向後側部14B(図1参照)の車両前後方向前側への変位も抑制することができる。
【0061】
さらに、本発明の一実施形態に係るドア部構造10によれば、図2に示されるように、ガイドピン44が、インパクトビーム20に一体的に設けられている。従って、例えばリアサイドドア14に対して側面衝突荷重Fが作用した場合には、インパクトビーム20からの車両幅方向内側への側面衝突荷重Fを、ガイドピン44及びガイド用カラー88を介して車体26の車両幅方向内側に効率良く伝達することができる。これにより、リアサイドドア14の車両上下方向下側部14Aの車両幅方向内側への変位も抑制することができる。
【0062】
しかも、インパクトビーム20の車両前後方向後側部20Bは、リアサイドドア14の閉止時にガイド用カラー88と車両幅方向に対向されている。従って、インパクトビーム20からの車両幅方向内側への側面衝突荷重Fを、ガイドピン44及びガイド用カラー88を介して車体26の車両幅方向内側により一層効率良く伝達することができる。この結果、リアサイドドア14の車両上下方向下側部14Aの車両幅方向内側への変位をより一層抑制することができる。
【0063】
また、上述のように、ガイドピン44の取付け部であるインパクトビーム20の車両前後方向後側部20Bは、ストッパ58の取付け部であるドアインナパネル18の車両上下方向下側部18Aに対し車両幅方向外側に離間して配置されている。従って、インパクトビーム20やドアインナパネル18に必要な強度や剛性をそれぞれ設定することができる。
【0064】
このように、本発明の一実施形態に係るドア部構造10によれば、リアサイドドア14の開放時の見栄えを向上させることができると共に、リアサイドドア14に側面衝突荷重Fが作用した場合でもリアサイドドア14の車体26に対する変位を抑制することができる。
【0065】
次に、本発明の一実施形態に係るドア部構造10の変形例について説明する。
【0066】
上記実施形態では、本発明の一実施形態に係るドア部構造10が車両12のリアサイドドア14について適用されていたが、本発明の一実施形態に係るドア部構造10は、車両12のフロントドアやバックドアについて適用されていても良い。
【0067】
また、上記実施形態では、ストッパ58の孔部62が車両幅方向に貫通する貫通孔とされていたが、ストッパ58の孔部62は、図6に示されるように、車両幅方向内側で閉じる袋状に構成されていても良い。
【0068】
また、上記実施形態では、図2に示されるように、ガイド用カラー88の車両幅方向内側の端部がリアフロアサイドメンバパネル40の車両上下方向壁部94と車両幅方向に離間されていたが、図7に示されるように構成されていても良い。すなわち、ガイド用カラー88の車両幅方向内側の端部が車両幅方向内側に延長されると共に、リアフロアサイドメンバパネル40の車両上下方向壁部がガイド用カラー88と車両幅方向に対向し且つガイド用カラー88と近接された支持部96として構成されていても良い。
【0069】
このようにすれば、リアサイドドア14に対して側面衝突荷重Fが作用したことに伴ってガイド用カラー88に対して車両幅方向内側に荷重が作用した場合には、このガイド用カラー88に対して作用する荷重を、支持部96を介して車体26の車両幅方向内側に効率良く伝達することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、ガイド用カラー88が円筒状に構成されていたが、ガイド用カラー88は、ガイドピン44に対し車両上下方向上側に配置される円弧状に構成されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態に係るドア部構造が適用された車両の側面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るドア部構造が適用された車両のロッカ部の斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るドア部構造が適用された車両に側面衝突が生じたときの状態を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るドア部構造の第一変形例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るドア部構造の第二変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
10 ドア部構造
14 リアサイドドア(車両用ドア)
18 ドアインナパネル
18A 車両上下方向下側部(ストッパの取付け部)
20 インパクトビーム
20B 車両前後方向後側部(突出部の取付け部)
26 車体
44 ガイドピン(突出部)
58 ストッパ
64 環状部
66 対向部
70 凹部
88 ガイド用カラー(被係合部)
92 ラップ部
96 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアからドア厚さ方向内側に向けて突出された突出部と、
前記車両用ドアにおける前記突出部の周囲に設けられた環状部を有して構成され、車体に対する前記車両用ドアの閉止位置を規制するためのストッパと、
前記車体に設けられ、前記車両用ドアの閉止時に前記ストッパとドア厚さ方向に対向される対向部と、
前記車体における前記対向部のドア厚さ方向内側に設けられ、前記車両用ドアの閉止時に前記突出部に対し少なくとも一部がドア高さ方向上側に配置される被係合部と、
を有することを特徴とするドア部構造。
【請求項2】
前記対向部は、前記車両用ドアの閉止時に少なくとも前記突出部とドア厚さ方向に対向される部位にドア厚さ方向内側に凹設された凹部を備えて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のドア部構造。
【請求項3】
前記車両用ドアにおける前記突出部の取付け部は、前記車両用ドアにおける前記ストッパの取付け部に対しドア厚さ方向外側に離間して配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のドア部構造。
【請求項4】
前記車両用ドアには、インパクトビームが設けられ、
前記突出部は、前記インパクトビームに一体的に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のドア部構造。
【請求項5】
前記インパクトビームの少なくとも一部は、前記車両用ドアの閉止時に前記被係合部とドア厚さ方向に対向されることを特徴とする請求項4に記載のドア部構造。
【請求項6】
前記被係合部は、ドア厚さ方向に延在されて前記突出部が挿入可能な筒状に構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のドア部構造。
【請求項7】
前記車体には、前記被係合部に対しドア高さ方向上側に配置されて前記被係合部の長手方向における少なくとも一部とオーバラップするラップ部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のドア部構造。
【請求項8】
前記車体には、前記被係合部に対しドア厚さ方向内側に配置されて前記被係合部とドア厚さ方向に対向する支持部が設けられていることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のドア部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−254709(P2008−254709A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102055(P2007−102055)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】