説明

ドア開口周縁部にチューブ状フレームを配置した車室側部構造及びその組立方法

【課題】ドア開口周縁部にドアシールやモールの取付部位としてのフランジを備えたチューブ状フレームを配置した車体側部構造を提供する。
【解決手段】前後のドア開口部を構成するチューブ状フレームで構成されたセンターピラー10は、フレームアウタ16と、断面ハット状のフレームインナ18とで作られ、フレームアウタ16をフレームインナ18に嵌入した状態でレーザ溶接により連続溶接することにより作られている。フレームインナ18は、前後に延びるフランジ184,185を有し、この前後のフランジ184,185に対してアウターパネル12のフランジ127,129がスポット溶接される。そして、このフランジ184,185;184,185には、ドアシールストリップ24が装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ状フレーム構造の自動車車体に関し、少なくともチューブ状フレームをドア開口周縁部に配置した車室側部構造及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空部材であるチューブ状フレームは、閉断面の面積を小さくしても車体剛性などの向上が期待できるため部分的な使用が既に検討されており、例えば特許文献1はフロントピラーに関する提案を行っている。特許文献1は、フロントピラーをアウターパネルとチューブ状フレームとで構成すると共に、アウターパネルにフランジを設けて、このフランジにドアシールストリップを嵌着することを開示している。特許文献1に開示のチューブ状フレームは、ハイドロフォーム成形法によって閉断面多角形に一体成形されたチューブで構成されており、このチューブは略六角形の断面形状を有し、その外側且つ前方の平坦な前面部にはアウターパネルのベース部が接合されて、このベース部にフロントウィンドウシールドが支持されている。
【0003】
また、特許文献2は、高張力鋼板からなるパイプを用いてハイドロフォーム成形法によって成形されたチューブを平面視コ字状に形作って、これを左右のフロントピラー、左右のルーフサイド、リアヘッダに配設して車両のルーフのフレーム構造を作ることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−182079号公報
【特許文献2】特開2002−145117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近時の車両の車体構造は「モノコック」と呼ばれる手法に基づいて設計されるのが殆どである。本願発明者らは、上述した中空部材を使って車両のチューブ状フレーム構造を作り、そして、このチューブ状フレームにアウターパネルを接合することで車体を作る研究を行っている。
【0006】
チューブ状フレーム構造の車体にあっても、車体側部のドア開口部は、例えば4ドア車両であれば、前部ドア開口部の前縁部をなすフロントピラーと、前部ドア開口部の後縁部と後部ドア開口部の前縁部をなすセンターピラーと、後部ドア開口部の後縁部をなすリアピラーと、前部及び後部のドア開口部の上縁部をなすルーフサイドと、前部及び後部のドア開口部の下縁部をなすサイドシルとによって構成される。このドア開口部にあっては、ドアシールストリップや、トリムの端部を処理するモールの取付部位としてフランジが必須である。これに対して、特許文献1は、上述したようにドアシールを取り付けるためにアウターパネルにフランジを形成する技術を開示しているが、この手法ではドアシールストリップなどの支持剛性を確保するのが難しいという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、アウターパネルに依存することなく、ドア開口周縁部にドアシールやモールの取付部位としてのフランジを備えたチューブ状フレームを配置した車体側部構造及びその組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的課題は、本発明の一つの観点によれば、
車室側部のドア開口部を形成するチューブ状フレームを有し、
該チューブ状フレームは、これを構成する部材が有する2つの面を連続溶接することにより閉断面構造が形成された中空部材であり、
該チューブ状フレームには、前記ドア開口部に向けて前記チューブ状フレームを構成する部材を延長することで構成されたフランジであって、且つドア開口周縁部に配設されるドアシールストリップ又はモールを取り付ける取付部位としてのフランジが、前記チューブ状フレームを構成する部材の端部を延長させることによって形成されていることを特徴とするドア開口周縁部にチューブ状フレームを配置した車室側部構造を提供することによって達成される。
【0009】
すなわち、この一つの観点による発明によれば、チューブ状フレームが、これを構成する部材の面同士を連続溶接することにより形成されると共に、該部材の端部を延長することによって形成されたフランジをドアシールストリップ又はモールの取付部位として利用することでドアシールストリップなどの支持剛性を確保するのが容易になる。
【0010】
上記の技術的課題は、本発明の他の観点によれば、
車室側部のドア開口部を形成するチューブ状フレームと、該チューブ状フレームに隣接して且つ車幅方向外方に位置するアウターパネルとを有する車室側部構造を組み立てる方法であって、
中間壁と該中間壁を挟んで位置する2つの側壁とを有する断面略コ字状の形状部分を有する前記アウターパネルを用意し、
前記アウターパネルの前記断面略コ字状の形状部分と相似形の且つ該アウターパネルの前記断面略コ字状の形状部分に嵌着可能な相似形状部分を有する前記チューブ状フレームであって、該チューブ状フレームを構成する部材が有する2つの面を連続溶接することにより閉断面構造が形成されると共に該チューブ状フレームを構成する部材の端部を延長することで前記ドア開口部に臨んで位置するフランジが形成された前記チューブ状フレームを用意し、
前記アウターパネルと前記断面略コ字状の形状部分に、前記チューブ状フレームの前記相似形状部分を嵌合させることにより前記車室側部構造の組み立てが行われることを特徴とする車室側部構造の組立方法を提供することにより達成される。
【0011】
この他の観点による発明によれば、チューブ状フレームを構成する部材の端部を延長することによって形成されたフランジをドアシールストリップ又はモールの取付部位として利用することができるだけに止まらず、アウターパネルとチューブ状フレームとを互いに嵌合させるだけでその位置決めが可能となり、これにより車室側部構造の組み立てが容易になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用したセンターピラーの断面図である。
【図2】第1変形例のチューブ状フレームの断面図である。
【図3】第2変形例のチューブ状フレームの断面図である。
【図4】第3変形例のチューブ状フレームの断面図である。
【図5】図4のチューブ状フレームの作り方を説明するための図である。
【図6】第3変形例のチューブ状フレームの更なる変形例の断面図である。
【図7】第3変形例のチューブ状フレームの更なる別の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0014】
図1は車両のセンターピラーの横断面図である。ここに、この車両は、閉断面の中空部材であるチューブ状フレーム構造が採用され、ルーフは、チューブ状フレームからなる左右のルーフサイドフレーム及びその後端同士を連結するリアヘッダフレームとルーフパネルとで構成されている。このルーフ構造は上述した引用文献2に詳しく記載されていることから、ルーフ構造に関する記述に関して、この引用文献2をここに援用する。
【0015】
センターピラー10は、既知のように、前席用のサイドドアFDと後席用のサイドドアRDとの間に位置しており、センターピラー10の上端はルーフサイドフレームに連結され、他方、センターピラー10の下端はサイドシル(図示せず)に連結されている。
【0016】
図1を参照して、センターピラー10は、アウターパネル12と、該アウターパネル12の車幅方向内側に位置するチューブ状フレーム14とで構成されている。チューブ状フレーム14は、共に鉄系金属からなるフレームアウタ16とフレームインナ18とで構成された閉断面20の構造の中空部材である。
【0017】
アウターパネル12は断面略コ字状の形状を有し、車幅方向に互いに平行に延びる平坦な前方及び後方の側壁121、122と、この前後の側壁121、122の外方端の間を車体前後方向に延びる中間壁123とを有する。
【0018】
中間壁123には、車幅方向外方に向けて膨出する突出部124が形成され、この突出部124の一方の側壁125は上述した前方側壁121と同一の平面に位置しており、そして、平らな前方側壁121を延長した形態で上記突出部124の側壁125が延びている。他方、突出部124の他方の側壁126は傾斜壁で構成されている。
【0019】
アウターパネル12は、更に、後方側壁122の内方端から略直角に屈曲して後方に延びる後方フランジ127を有している。また、アウターパネル12は、前方側壁121の内方端から略直角に屈曲して前方に延びる平らな外壁面128を有し、この外壁面128の前方端が更に前方に延びて、アウターパネル12の最も前方に位置する前方フランジ129が形成されている。
【0020】
引き続き図1を参照して、チューブ状フレーム14を構成するフレームアウタ16は、上述したアウターパネル12よりも若干小さな略相似形の形状であってアウターパネル12の中に抜き差し可能に挿入でき且つアウターパネル12の中に挿入することでフレームアウタ16がアウターパネル12に位置決め可能な形状に形作られている。
【0021】
具体的にフレームアウタ16の形状を説明すると、アウターパネル12と同様に、互いに平行に且つ車幅方向に延びる前後の平らな側壁161、162と、前後の側壁161、162の外方端の間に亘って車体前後方向に延びる中間壁163とを有し、中間壁163には上述したアウターパネル12の突出部124に対応する部位に且つこのアウターパネル12の突出部124と相似形の突出部164が形成されている。すなわち、フレームアウタ16の突出部164は、その一方の側壁165が上記前方側壁161と同一の平面に位置しており、そして、平らな前方側壁161を延長した形態で上記突出部164の側壁165が延びている。他方、フレームアウタ16の突出部164の他方の側壁166は、上述したアウターパネル12の突出部124の傾斜壁126と同じ傾斜角度に設定された傾斜壁で構成されている。
【0022】
フレームアウタ16は、更に、前方側壁161の内方端から前方に屈曲し且つ上述したアウターパネル12の外壁面128と当接して、この外壁面128に沿って前方に延びる平らな前後壁167を有し、この平らな前後壁167の前方端は車幅方向内方に屈曲して車幅方向に延びる前方嵌合壁168を有する。他方、フレームアウタ16の後方側壁162は、その内方端を後方に向けて屈曲させた段部169を有し、この段部169から車幅方向内方に屈曲して車幅方向に延びる後方嵌合壁170を有している。
【0023】
次にフレームインナ18について説明すると、フレームインナ18は、上述したフレームアウタ17の前後の嵌合壁168、170の間に亘って車体前後方向に延びる中間壁181と、この中間壁181の前方端から車幅方向外方に向けて屈曲して、上述したフレームアウタ16の前方嵌合壁168と当接する前方縦壁182と、中間壁181の後方端から車幅方向外方に向けて屈曲して、上述したフレームアウタ16の後方嵌合壁170と当接する後方縦壁183とを有する。
【0024】
また、フレームインナ18は、後方縦壁183の外端から屈曲して車体後方向に延びる後方フランジ184を有し、同様に、前方縦壁182の外端から屈曲して車体前方向に延びる前方フランジ185を有し、これらフレームインナ18の前後のフランジ184、185は、前述したアウターパネル12の前後のフランジ127、129と対面している。
【0025】
フレームアウタ16とフレームインナ18とは、フレームインナ18における前後の縦壁182、183及び中間壁181で規定される凹所の中にフレームアウタ16の前後の嵌合壁168、170を挿入して、この嵌合壁168、170を前後の縦壁182、183の内面に嵌入した後に、これらをレーザ溶接などの片側連続溶接法によって接合することで閉断面20を備えたチューブ状フレーム14になる。レーザ溶接部を参照符号22で示してある。また、チューブ状フレーム14に対して、アウターパネル12は、このアウターパネル12の前後のフランジ127、129をフレームインナ18の前後のフランジ184、185にスポット溶接することにより固定される。
【0026】
上記チューブ状フレーム14は、第一に閉断面フレームを作るために溶接するフランジを備えていない点、第二に連続溶接法を使っている点に特徴を有しており、上述したアウターパネル12とチューブ状フレーム14とからなるセンターピラー10に設置されるドアシールストリップ24は、図1に仮想線で示すように、アウターパネル12とフレームインナ18の互いに重ね合わせた前後のフランジ127、129、184、185に嵌着される。
【0027】
上述した実施例の説明から理解できるように、チューブ状フレーム14の構成要素であるフレームインナ18の一部を使って形成した前後のフランジ184、185に対して、アウターパネル12の前後のフランジ127、129を重ね合わせて、これらを互いに接合することで形成されたドアシール取付部位にドアシールストリップ24を嵌着することから、このドアシールストリップ24の支持剛性を確かなものにすることができる。なお、図1において、参照符号PTはピラートリムを示す。勿論、アウターパネル12に依存することなく、チューブ状フレーム14のフランジ184、185を単独でドアシール取付部位を構成するようにしてもよい。
【0028】
また、本発明を適用したセンターピラー10は、その組み立てを次の工程で行うことができる。
(1)フレームアウタ16とフレームインナ18とを予め組み立てて、フレームインナ18の前後の縦壁182、184と前後のフランジ183、185との境界部分に対してレーザ溶接などの片側連続溶接法によってフレームアウタ16とフレームインナ18とを結合したチューブ状フレーム14を用意する。
【0029】
(2)アウターパネル12を、その中間壁123を下にし、前後の側壁121、122と中間壁123とで規定される凹所が上方に向けて開放した状態に位置決めする。
【0030】
(3)チューブ状フレーム14を上から下に移動させてチューブ状フレーム14をアウターパネル12の中に挿入する。フレームアウタ16の前後の側壁161、162、中間壁163、突出部164の部位の形状が、アウターパネル12の前後の側壁121、122、中間壁123、突出部124の部位の形状に対して相似形であり、且つ、フレームアウタ16の前後の側壁161、162の外面がアウターパネル12の前後の側壁121、122の内面と当接するように設定されているため、チューブ状フレーム14をアウターパネル12の中に挿入によってチューブ状フレーム14はアウターパネル12に対して精度良く位置決めされることになる。
【0031】
(4)チューブ状フレームチューブ状フレーム14とアウターパネル12とが自動的に位置決めされるため、フレームインナ18とアウターパネル12の互いに重なり合っている前後のフランジ184、185、127、129をスポット溶接する。
【0032】
以上、センターピラー10を例にして本発明の実施例を説明したが、本発明はこれに限定されない。車両の側部車体構造においてドア開口部を形成するフロントピラー、リアピラー、サイドシル、ルーフサイドフレームにチューブ状フレームを適用したときには、これらのフレーム要素にも適用可能である。
【0033】
図2以降の図面はチューブ状フレームを概念的に説明するための図である。図2は、上述した図1に図示のチューブ状フレーム14と実質的に同じチューブ状フレームを模式的に図示してある。
【0034】
図2に図示のチューブ状フレーム30は、フレームアウタ32とフレームインナ34とで構成され、フレームインナ34の対をなす側壁341、342で規定される凹所の中にフレームアウタ32が嵌装され、このフレームアウタ32の対をなす側壁321、322と、フレームインナ34の側壁341、342とが対面して互いに重なり合った部分にレーザ溶接などの片側連続溶接法による接合が行われることにより閉断面20を備えたチューブ状フレーム30が形成される。図2の参照符号36はアウターパネルである。
【0035】
チューブ状フレーム30には、フレームインナ34の対をなす側壁341、342の外端を屈曲させることにより形成されたフランジ343、344を備え、このフランジ343、344にアウターパネル36のフランジ361、362を重ね合わせてスポット溶接などにより接合することによりドアシールストリップやモールなどの取付部位が形成される。
【0036】
勿論、例えばサイドシルを図2のチューブ状フレーム30で構成するときには、モールMを装着するために上方に向けて突出する一つのフランジで足りることから、図2のチューブ状フレーム30から例えば一方のフランジ343を省き、他方のフランジ344がドア開口部に臨むように上方に向けて延出する態様でチューブ状フランジ30を車体に組み込めばよい。
【0037】
図3に例示のチューブ状フレーム30では、フレームインナ34にフランジ343、344を形成した例が図示されているが、フレームインナ34からフランジ343、344を省き、その一方でフレームアウタ32に、ドアシールストリップやモールなどの取付部位としてのフランジを形成するようにしてもよい。また、一方のフランジをフレームインナ34に形成し、他方のフランジをフレームアウタ32に形成するようにしてもよい。
【0038】
ルーフサイドフレームに図2のチューブ状フレーム30を適用するときには、下方のドア開口部に向けて突出する一つのフランジで足りることから、図2のチューブ状フレーム30から例えば一方のフランジ343を省き、他方のフランジ344がドア開口部を臨むように下方に向けて延出する態様でチューブ状フランジ30を車体に組み込めばよい。
【0039】
図3は、上記図2のチューブ状フレーム30の変形例であり、この図3に図示のチューブ状フレーム40は、フレームインナ34の対をなす側壁341、342に段部401を設け、この段部401にフレームアウタ32の対をなす側壁321、322を受け入れることによりチューブ状フレーム40が形成される。
【0040】
図4は、他の変形例のチューブ状フレーム50を示す。この図4のチューブ状フレーム50は、図面に向かって左右の2つの側壁52、54と一端壁56と他端壁58とを有し、他端壁58にフランジ60が形成されている。この図4のチューブ状フレーム50は、図5から分かるように、一枚の鉄系金属の板材62を曲げ加工することにより作られている。具体的に説明すると、一枚の板材62は、一端壁56を構成する中間部分621が湾曲した形状に作られており、その一側の部位622と他側の部位623が、夫々、チューブ状フレーム50の2つの側壁52、54に相当し、また、各部位622、623の端部に、互いに接近する方向に屈曲した屈曲部624、625が設けられている。この2つの第1の屈曲部624、625はチューブ状フレーム50の他端壁58を構成し、そして、各第1の屈曲部624、625の端に外方に向けて屈曲した第2の屈曲部626、627が設けられて、この2つの屈曲部626、627が互いに重なり合うことでチューブ状フレーム50のフランジ60が構成されている。
【0041】
図6及び図7は、上記の図4のチューブ状フレーム50の変形例50A、50Bであり、図5に図示した板材62の一方のフランジ構成部分つまり屈曲部627を省いて他端壁58の部位で重ね合わせた部分をレーザ溶接などによって連続溶接するようにしてもよい。図7のチューブ状フレーム50Bにあっては、他端壁58に段部64を設け、この段部64で重ね合わせる構造が採用されている。この変形例の50A、50Bをルーフサイドフレームに態様したときには、フランジ60が下方に向けて延びるようにチューブ状フレーム50A、50Bが配設され、このフランジ60にモールMが装着される。図6、図7中、参照符号70はルーフパネルを示し、72はルーフトリムを示す。また、モルMのシール部74には、ドアサッシュ76が当接する。
【0042】
上記の形状に成形した板材62を予備成型品として予め用意し、この板材62に対して、所定の加工治具で上記の膨出した中間部分621を下方に押圧して偏平化することで、この中間部分621を挟む2つの部位622、623が矢印で示す方向に揺動変位して起立し、そして、第2の屈曲部626、627が互いに対面した状態になる。そして、この第2の屈曲部分626、627の互いに対向する面を互いに突き合わせた状態で、この第2の屈曲部分626、627つまりフランジ60の基端部をワイヤーレーザ溶接などの片側連続溶接法によって接合することによりチューブ状フレーム50(図4)が形成される。
【0043】
従来のモノコックボディでの閉断面構造ではフランジ部分をスポット溶接することにより作られているが、実施例に含まれるチューブ状フレーム14(図1)、30(図2)、40(図3)、50(図4)、50A(図6)、50B(図7)は、共に、前述したように、第一に閉断面フレームを作るために溶接するフランジを備えていない点、第二に連続溶接法を使っている点に特徴を有しており、また、連続溶接によって作られている点で、従来のモノコックボディでの閉断面構造とは異なっている。
【0044】
また、図1の実施例及び図2以降の変形例からも分かるように、チューブ状フレーム13、30、40、50、50A、50Bは、これらフレームの一部を使ったフランジ185、344、60を有しているため、このフランジ185、344、60をドアシールストリップやモールの取付部位として利用することで、これらドアシールストリップなどの支持剛性を確保するのが容易となる。
【符号の説明】
【0045】
10 センターピラー
12 アウターパネル
121 アウターパネルの前方側壁
122 アウターパネルの後方側壁
123 アウターパネルの中間壁
124 アウターパネルの突出部
125 アウターパネルの突出部の一方の側壁
126 アウターパネルの突出部の他方の側壁(傾斜壁)
127 アウターパネルの後方フランジ
128 アウターパネルの外壁面
129 アウターパネルの前方フランジ
14 チューブ状フレーム
16 フレームアウタ
161 フレームアウタの前方側壁
162 フレームアウタの後方側壁
163 フレームアウタの中間壁
164 フレームアウタの突出部
165 フレームアウタの突出部の一方の側壁
166 フレームアウタの突出部の他方の側壁(傾斜壁)
167 フレームアウタの平らな前後壁
168 フレームアウタの前方嵌合壁
169 フレームアウタの段部
170 フレームアウタの後方嵌合壁
18 フレームインナ
181 フレームインナの中間壁
182 フレームインナの前方縦壁
183 フレームインナの後方縦壁
184 フレームインナの後方フランジ
185 フレームインナの前方フランジ
22 レーザ溶接部
24 ドアシールストリップ
30 変形例のチューブ状フレーム(図2)
32 フレームアウタ
34 フレームインナ
343,344 フレームインナのフランジ
40 第2変形例のチューブ状フレーム(図3)
50 第3変形例のチューブ状フレーム(図4)
60 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室側部のドア開口部を形成するチューブ状フレームを有し、
該チューブ状フレームは、これを構成する部材が有する2つの面を連続溶接することにより閉断面構造が形成された中空部材であり、
該チューブ状フレームには、前記ドア開口部に向けて前記チューブ状フレームを構成する部材を延長することで構成されたフランジであって、且つドア開口周縁部に配設されるドアシールストリップ又はモールを取り付ける取付部位としてのフランジが、前記チューブ状フレームを構成する部材の端部を延長させることによって形成されていることを特徴とするドア開口周縁部にチューブ状フレームを配置した車室側部構造。
【請求項2】
前記チューブ状フレームがフレームアウタとフレームインナとから構成され、
これらフレームアウタとフレームインナが共に2つの側壁を有し、フレームアウタとフレームインナとを嵌合することにより側壁同士を重ね合わせて、該重ね合わせた部分を連続溶接することにより前記閉断面のチューブ状フレームが作られている、請求項1に記載のドア開口周縁部にチューブ状フレームを配置した車室側部構造。
【請求項3】
前記チューブ状フレームが一枚の板材から構成され、
該板材を折り曲げることで、前記閉断面のチューブ状フレームが作られると共に、該板材の端部によって前記フランジが形成されている、請求項1に記載のドア開口周縁部にチューブ状フレームを配置した車室側部構造。
【請求項4】
前記チューブ状フレームが、前後のドア開口部の間に位置するセンターピラーを構成し、
前記チューブ状フレームは2つの前記フランジを有し、該2つのフランジが前後のドア開口部の夫々に臨んで位置している、請求項2に記載のドア開口周縁部にチューブ状フレームを配置した車室側部構造。
【請求項5】
前記チューブ状フレームが、ルーフサイドフレーム及び/又はサイドシルであり、
該チューブ状フレームには、前記ドア開口部に臨んで位置する一つの前記フランジが形成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のドア開口周縁部にチューブ状フレームを配置した車室側部構造。
【請求項6】
車室側部のドア開口部を形成するチューブ状フレームと、該チューブ状フレームに隣接して且つ車幅方向外方に位置するアウターパネルとを有する車室側部構造を組み立てる方法であって、
中間壁と該中間壁を挟んで位置する2つの側壁とを有する断面略コ字状の形状部分を有する前記アウターパネルを用意し、
前記アウターパネルの前記断面略コ字状の形状部分と相似形の且つ該アウターパネルの前記断面略コ字状の形状部分に嵌着可能な相似形状部分を有する前記チューブ状フレームであって、該チューブ状フレームを構成する部材が有する2つの面を連続溶接することにより閉断面構造が形成されると共に該チューブ状フレームを構成する部材の端部を延長することで前記ドア開口部に臨んで位置するフランジが形成された前記チューブ状フレームを用意し、
前記アウターパネルと前記断面略コ字状の形状部分に、前記チューブ状フレームの前記相似形状部分を嵌合させることにより前記車室側部構造の組み立てが行われることを特徴とする車室側部構造の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−235013(P2010−235013A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86648(P2009−86648)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】