説明

ドットの形成順序に基づくインク吐出量の制御

【課題】ハーフトーン処理における濃度ムラを抑制する技術を提供する。
【解決手段】本発明の印刷装置は、元画像を構成する各画素の階調値を表す画像データに対してハーフトーン処理を行うことによって、印刷媒体上に形成されるべき印刷画像の各印刷画素へのドットの形成状態を決定するとともに、決定されたドットの形成状態を表すドットデータを生成するドットデータ生成部と、ドットデータに応じて、ドットの形成において物理的な相違が想定された複数の画素グループの各々に形成されるドット群を、共通の印刷領域で相互に組み合わせることによって印刷画像を生成する印刷画像生成部と、を備える。ハーフトーン処理は、共通の印刷領域における複数のドット群の各々のドット形成順序に応じて、複数のドット群の各々のドット数の配分が決定されるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷媒体上にドットを形成して画像を印刷する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータで作成した画像や、デジタルカメラで撮影した画像などの出力装置として、印刷媒体上を走査することによってインクドットを形成し、これにより画像を印刷する印刷装置が広く使用されている。かかる印刷装置における画質の劣化要因の1つとして、インクの凝集(インクの寄り集まりによって斑となる減少)やブリード(インクの滲み)が発生している。このような画質劣化要因に対して、従来から、インクの浸透性その他のインクの物理的性質の改善や物理的性質の相違するインクの使い分け、インクデューティーの制限、あるいはハーフトーン処理後におけるドットデータの各記録走査への振り分けによって画質劣化を抑制することが行われてきた(特許文献1〜6)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−143795号
【特許文献2】特開平7−314656号
【特許文献3】特開2002−166538号
【特許文献4】特開平6−328678号
【特許文献5】特開2002−307671号
【特許文献6】特開2002−166536号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来は、ハーフトーン処理の工夫によってインクの凝集やブリードを抑制することは検討されていなかった。
【0005】
この発明は、従来の技術における上述した課題を解決するためになされたものであり、インクの凝集やブリードに起因する画質劣化を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は、印刷媒体上に印刷を行う印刷装置を提供する。この印刷装置は、
元画像を構成する各画素の階調値を表す画像データに対してハーフトーン処理を行うことによって、前記印刷媒体上に形成されるべき印刷画像の各印刷画素へのドットの形成状態を決定するとともに、前記決定されたドットの形成状態を表すドットデータを生成するドットデータ生成部と、
前記ドットデータに応じて、前記ドットの形成に関する物理的な条件の相違が想定された複数の画素グループの各々に形成されるドット群を、共通の印刷領域で相互に組み合わせることによって印刷画像を生成する印刷画像生成部と、
を備え、
前記ハーフトーン処理は、前記共通の印刷領域における前記複数のドット群の各々のドット形成順序に応じて、前記複数のドット群の各々のドット数の配分が決定されるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の印刷装置によれば、共通の印刷領域における複数のドット群の各々のドット形成順序に応じて、複数のドット群の各々のドット数の配分が決定されるように構成されたハーフトーン処理でドットの形成状態が決定されるので、印刷媒体やインクの特性並びにその組合せといった種々の印刷環境に応じて、複数のドット群の各々のドット数の配分を決定してインクの流動を抑制することができる。これにより、インクの凝集や滲みを抑制することができるので、印刷画質を維持しつつインク濃度を高くして色再現範囲を拡大することができる。なお、このようなハーフトーン処理は、誤差拡散法でも実現可能である。たとえば誤差拡散法の閾値や入力階調値の少なくとも一方を調整することによって、上述のドット数の配分に近づくように誤差拡散法を構成すればよい。
【0008】
上記印刷装置において、
前記ハーフトーン処理は、所定のディザマトリックスに格納された各閾値を用いてドットの形成状態を決定し、
前記ドットの形成状態の決定は、前記共通の印刷領域における前記複数のドット群の各々のドット形成順序に応じて、前記閾値と前記入力階調値の少なくとも一方を調整することによって前記ドット数の配分に近づくように構成されていても良い。
【0009】
上記印刷装置において、
前記ハーフトーン処理は、前記ドット形成順序が早いほど前記複数のドット群の各々のドット数の配分が多くなるように構成されていても良い。
【0010】
こうすれば、先に着弾したインクが後に着弾したインクの吸収を妨げるといった印刷環境で顕著な効果を奏することができる。なお、このような構成は、印刷媒体が光沢紙であり、ドットが色材として顔料を使用するインクで形成される場合に顕著な効果を奏する。
【0011】
上記印刷装置において、
前記ハーフトーン処理は、予め設定された第1の階調値以上であって、かつ、予め設定された第2の階調値以下の階調値の領域においては、前記複数のドット群の各々のドット数の配分が近づくように構成されていても良い。
【0012】
このような階調値では、インクの流動が発生しやすい一方、ドットの粒状性が目立つので、こうすれば、ドットの粒状性の抑制を維持しつつ効果的に滲みを抑制することができる。
【0013】
上記印刷装置において、
前記所定のディザマトリックスは、前記複数のドット群の各々が予め設定された共通の特性を有するように各閾値が各要素に格納されているようにしても良い。
【0014】
こうすれば、複数のドット群の各々において、低周波領域で発生するインクの流動に起因する滲みや凝集を抑制して、さらに顕著な効果を生じさせることができる。さらに、本発明では、たとえば先行ヘッドドットパターンDp1と後続ヘッドドットパターンDp2との間ではインク濃度が相違するので、一方のドットパターンが目立つ結果として、一方のドットパターンに起因する低周波領域での粒状性が画質を劣化させることになる。
【0015】
上記印刷装置において、
前記共通の特性は、フーリエ変換処理を含む計算処理によって算出される粒状性指数で表される値であり、
前記粒状性指数は、視覚の空間周波数特性に基づいて決定されたVTF関数と、前記フーリエ変換処理によって予め算出された定数との積に基づいて算出されるようにしても良いし、
あるいは、
前記共通の特性は、ローパスフィルタ処理を含む計算処理によって算出されるRMS粒状度で表される値であるようにしても良い。
【0016】
なお、本発明は、ディザマトリックス、ディザマトリックス生成装置、ディザマトリックスを用いた印刷装置や印刷方法、印刷物の生成方法といった種々の形態、あるいは、これらの方法または装置の機能をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の種々の形態で実現することができる。
【0017】
また、印刷装置や印刷方法、印刷物の生成方法におけるディザマトリックスの使用は、ディザマトリックスに設定されている閾値と画像データの階調値とを画素毎に比較することによって、画素毎にドット形成の有無を判断しているが、たとえば閾値と階調値の和を固定値と比較してドット形成の有無を判断するようにしても良い。さらに、閾値を直接使用することなく閾値に基づいて予め生成されたデータと、階調値とに応じてドット形成の有無を判断するようにしても良い。本発明のディザ法は、一般に、各画素の階調値と、ディザマトリックスの対応する画素位置に設定された閾値とに応じてドットの形成の有無を判断するものであれば良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下では、本発明の作用・効果をより明確に説明するために、本発明の実施の形態を、次のような順序に従って説明する。
A.印刷システムの構成の一例:
B.本発明の第1実施例におけるハーフトーン処理:
C.本発明の第2実施例におけるハーフトーン処理:
D.本発明の第3実施例におけるハーフトーン処理:
E.変形例:
【0019】
A.印刷システムの構成の一例:
図1は、印刷システムの構成の一例を示すブロック図である。この印刷システムは、印刷制御装置としてのコンピュータ90と、印刷部としてのカラープリンタ20と、を備えている。なお、カラープリンタ20とコンピュータ90の組み合わせを、広義の「印刷装置」と呼ぶことができる。
【0020】
コンピュータ90では、所定のオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム95が動作している。オペレーティングシステムには、ビデオドライバ91やプリンタドライバ96が組み込まれており、アプリケーションプログラム95からは、これらのドライバを介して、カラープリンタ20に転送するための印刷データPDが出力されることになる。アプリケーションプログラム95は、処理対象の画像に対して所望の処理を行い、また、ビデオドライバ91を介してCRT21に画像を表示する。
【0021】
プリンタドライバ96の内部には、入力画像の解像度を印刷解像度に変換する解像度変換モジュール97と、RGBをCMYKに色変換する色変換モジュール98と、後述の実施例で生成されるディザマトリックスMや誤差拡散法を使用して入力階調値をドットの形成で表現可能な出力階調数へ減色するハーフトーンモジュール99と、ハーフトーンデータを用いてカラープリンタ20に送信するための印刷データを生成する印刷データ生成モジュール100と、色変換モジュール98が色変換の基準とする色変換テーブルLUTと、ハーフトーン処理のために各サイズのドットの記録率を決定するための記録率テーブルDTと、が備えられている。プリンタドライバ96は、印刷データPDを生成する機能を実現するためのプログラムに相当する。プリンタドライバ96の機能を実現するためのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で供給される。このような記録媒体としては、たとえばCD−ROM126やフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等の、コンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。
【0022】
図2は、カラープリンタ20の概略構成図である。カラープリンタ20は、紙送りモータ22によって印刷媒体Pを副走査方向に搬送する副走査駆動部と、印刷ヘッド10A、10Bを駆動してインクの吐出およびドット形成を制御するヘッド駆動機構と、これらの紙送りモータ22,キャリッジモータ24,印刷ヘッド10A、10Bを備える印刷ヘッドユニット60および操作パネル32との信号のやり取りを司る制御回路40とを備えている。制御回路40は、コネクタ56を介してコンピュータ90に接続されている。なお、カラープリンタ20では、印刷ヘッド10A、10Bの主走査は行われない。
【0023】
図3は、図2における矢視AAに相当し、印刷ヘッド10A、10Bの下面におけるノズル配列を示す説明図である。印刷ヘッド10A、10Bの各々の下面には、ブラックインクを吐出するためのブラックインクノズル列Kと、シアンインクを吐出するためのシアンインクノズル列Cと、マゼンタインクを吐出するためのマゼンタインクノズル列Mzと、イエローインクを吐出するためのイエローインクノズルYとが形成されている。
【0024】
各ノズル列の複数のノズルNzは、副走査方向に沿って一定のノズルピッチk・Dでそれぞれ整列している。ここで、kは整数であり、Dは副走査方向における印刷解像度に相当するピッチ(「ドットピッチ」と呼ぶ)である。本明細書では、「ノズルピッチはkドットである」とも言う。このときの単位[ドット]は、印刷解像度のドットピッチを意味している。副走査送り量に関しても同様に、[ドット]の単位を用いる。
【0025】
2個の印刷ヘッド10A、10Bの各々が備える各ノズル列C、Mz、Y、Kでは、ノズルピッチkは、2となっている。一方、2個の印刷ヘッド10A、10Bは、紙送り方向に垂直な方向にノズルピッチkだけシフトした位置に配置されているので、2個の印刷ヘッド10A、10Bによって各画素に抜けを生じさせることなく、各色のインクを吐出することができる。
【0026】
図4は、図2における矢視BBに相当し、印刷ヘッド10A、10Bの横面を示す説明図である。図4では、説明を分かりやすくするためにイエローインクYを吐出するノズル列のみが示されている。図4では、印刷媒体Pが矢印の紙送り方向に送られているので、共通の印刷領域に対して、印刷ヘッド10Aで最初にインク滴が吐出され、引き続き、印刷ヘッド10Bでインク的が吐出されることになる。図3から分かるように、印刷ヘッド10Aと印刷ヘッド10Bとでは、相互に相違する画素ではあるが、共通の印刷領域において相互に隣接する画素にインク滴を吐出することになる。このように、共通の印刷領域に対して、先にインク滴を吐出する印刷ヘッドは先行ヘッドと呼ばれ、後にインク滴を吐出する印刷ヘッドは後続ヘッドと呼ばれる。なお、印刷ヘッド10Aで形成される複数のドットの集合(ドット群)や印刷ヘッド10Bで形成される複数のドットの集合(ドット群)は、特許請求の範囲における「複数のドット群の各々」に相当する。
【0027】
図5は、インクの凝集やブリードと呼ばれる現象のメカニズムを示す説明図である。インクの凝集やブリードは、大きく分けて3つの段階を経て発生する。第1の段階は、近接する複数の画素にインク滴が吐出される段階である。この段階では、複数のインク滴が玉状となって印刷媒体P上に存在している。第2の段階は、複数のインク滴が連結する段階である。この段階では、インクが紙送り方向に2本の線となって、この線上を自由に移動できる。第3の段階は、インク溜まりが発生する段階である。インクの表面張力によって、インクが2本の線の中央部に集まって、インク溜まりRiが発生している。このようなインクの流れ込みによって、インクの凝集(インクの寄り集まりによって斑となる減少)やブリード(インクの滲み)が発生している。
【0028】
図6は、先行ヘッドと後続ヘッドとによってインク滴が吐出されるときのインクの流れ込みのメカニズムの様子を示す説明図である。先行ヘッドでインクが吐出され、印刷媒体P上にインク滴の膜が形成された上に、重ねて後続ヘッドでインク滴が吐出されると、先行ヘッドで形成されたインク滴の膜によって、後続ヘッドで吐出されたインク滴の印刷媒体Pへの浸透が阻害されるという現象が本願発明者によって突き止められた。本願発明者は、さらに、このようなメカニズムの解明に基づいて、このような現象を考慮した最適なインク滴吐出方法を考案した。この発明は、先行ヘッドと後続ヘッドのインク吐出量の配分を制御するというものである。すなわち、先行ヘッドによるインク滴の吐出配分を多くし、その多くした分だけ後続ヘッドのインク吐出配分を小さくして、後続ヘッドに吐出されるインク滴の流動を抑制するというものである。このような物理的な現象は、色材として顔料を使用し、印刷媒体として光沢紙を使用した場合に顕著に発生することが確認された。
【0029】
この発明は、このディザ法や誤差拡散法といった種々のハーフトーン処理法に適用可能である。以下では、ディザ法を例にとって説明する。
【0030】
図7は、ディザマトリックスMの一部を概念的に例示した説明図である。図示したマトリックスには、横方向(主走査方向)に256要素、縦方向(副走査方向)に64要素、合計16384個の要素に、階調値1〜255の範囲から万遍なく選択された閾値が格納されている。なお、ディザマトリックスMの大きさは、図7に例示したような大きさに限られるものではなく、縦と横の要素数が同じマトリックスも含めて種々の大きさとすることができる。
【0031】
図8は、ディザマトリックスを使用したドット形成の有無の考え方を示す説明図である。図示の都合上、一部の要素についてのみ示されている。ドット形成の有無の決定では、図8に示す通り、画像データの階調値と、ディザマトリックス中で対応する位置に記憶されている閾値とが比較される。画像データの階調値の方がディザテーブルに格納された閾値よりも大きい場合にはドットが形成され、画像データの階調値の方が小さい場合にはドットが形成されない。図8中でハッチングを付した画素がドットの形成対象となる画素を意味している。このように、ディザマトリックスを用いれば、画像データの階調値とディザマトリックスに設定されている閾値とを比較するという単純な処理で、画素毎のドットの形成有無を判断することができるので、階調数変換処理を迅速に実施することが可能となる。さらに、画像データの階調値が決まると、各画素にドットが形成されるか否かは、もっぱらディザマトリックスに設定される閾値によって決まることからも明らかなように、組織的ディザ法では、ディザマトリックスに設定する閾値の格納位置によって、ドットの発生状況を積極的に制御することが可能である。
【0032】
このように、組織的ディザ法は、ディザマトリックスMに設定する閾値の格納位置によって、ドットの発生状況を積極的に制御することが可能なので、閾値の格納位置の設定を調整することによってドットの分散性その他の画質を制御することができるという特徴を有している。
【0033】
図9は、ディザマトリクスの調整の簡単な例として、ブルーノイズ特性を有するブルーノイズディザマトリクスの各画素に設定されている閾値の空間周波数特性を概念的に例示した説明図である。ブルーノイズマトリックスの空間周波数特性は、1周期の長さが1周期の長さが2画素付近の高い周波数領域に最も大きな周波数成分を有する特性となっている。このような空間周波数特性は、人間の視覚特性を考慮して設定されたものである。すなわち、ブルーノイズディザマトリクス、高周波領域において感度が低いという人間の視覚特性を考慮して、高周波領域に最も大きな周波数成分が発生するように閾値の格納位置が調整されたディザマトリックスMである。
【0034】
図9には、さらに、グリーンノイズマトリックスの空間周波数特性を破線の曲線として例示している。図示されているように、グリーンノイズマトリックスの空間周波数特性は、1周期の長さが2画素から十数画素の中間周波数領域に最も大きな周波数成分を有する特性となっている。グリーンノイズマトリックスの閾値は、このような空間周波数特性を有するように設定されていることから、グリーンノイズ特性を有するディザマトリックスMを参照しながら各画素のドット形成の有無を判断すると、数ドット単位で隣接してドットが形成されながら、全体としてはドットの固まりが分散した状態で形成されることになる。いわゆるレーザープリンタなどのように、1画素程度の微細なドットを安定して形成することが困難なプリンタでは、こうしたグリーンノイズマトリックスを参照してドット形成の有無を判断することで、孤立したドットの発生を抑制することができる。その結果、安定した画質の画像を迅速に出力することが可能となる。逆に言えば、レーザープリンタなどでドットの形成有無を判断する際に参照されるディザマトリックスには、グリーンノイズ特性を有するように調整された閾値が設定されている。
【0035】
図10は、人間が有する視覚の空間周波数に対する感度特性である視覚の空間周波数特性VTF(Visual Transfer Function)を概念的に示した説明図である。視覚の空間周波数特性VTFを利用すれば、人間の視覚感度を視覚の空間周波数特性VTFという伝達関数としてモデル化することによって、ハーフトーン処理後のドットの人間の視覚に訴える粒状感を定量化することが可能となる。このようにして定量化された値は、粒状性指数と呼ばれる。式F1は、視覚の空間周波数特性VTFを表す代表的な実験式を示している。式F1中の変数Lは観察距離を表しており、変数uは空間周波数を表している。式F2は、粒状性指数を定義する式である。式F2中の係数Kは、得られた値を人間の感覚と合わせるための係数である。
【0036】
このような人間の視覚に訴える粒状感の定量化は、人間の視覚系に対するディザマトリクスのきめ細かな最適化を可能とするものである。具体的には、ディザマトリックスに各入力階調値を入力した際に想定されるドットパターンに対してフーリエ変換を行ってパワースペクトルFSを求めるとともに、視覚の空間周波数特性VTFと乗算した後に全入力階調値で積分(式F2)することによって得ることができる粒状性指数をディザマトリクスの評価関数として利用することができる。この例では、ディザマトリクスの評価関数が小さくなるように閾値の格納位置を調整すれば最適化が図れることになる。
【0037】
このような人間の視覚特性を考慮して設定されたブルーノイズディザマトリクスやグリーンノイズマトリックスといったディザマトリックスに共通するのは、いずれも印刷媒体上において人間の視覚感度が最も高い空間周波数の領域である1サイクル毎ミリメートルを中心周波数とした0.5サイクル毎ミリメートルから2サイクル毎ミリメートルまでの所定の低周波の範囲内の成分の平均値が小さくなるように設定されている点である。たとえば所定の低周波の範囲内の成分の平均値が少なくとも人間の視覚感度がほぼゼロとなる10サイクル毎ミリメートルの周波数を中心周波数とした5サイクル毎ミリメートルから20サイクル毎ミリメートルまでの範囲の成分の平均値よりも小さくなるような周波数特性を有するようにすれば、人間の視覚感度の高い領域において粒状性を抑制することができるので、人間の視覚感度に着目した効果的な画質の改善を行うことができることが発明者によって確認されている。
【0038】
B.本発明の第1実施例におけるハーフトーン処理:
図11は、本発明の第1実施例における印刷データ生成処理のルーチンを示すフローチャートである。印刷データ生成処理とは、カラープリンタ20に供給するための印刷データPDを生成するためにコンピュータ90で行われる処理である。
【0039】
ステップS100では、プリンタドライバ96(図1)は、アプリケーションプログラム95から画像データを入力する。この入力処理は、アプリケーションプログラム95による印刷命令に応じて行われる。ここで、画像データは、RGBデータであるものとしている。
【0040】
ステップS200では、解像度変換モジュール97は、入力されたRGB画像データの解像度(すなわち、単位長さ当りの画素数)を所定の解像度に変換する。
【0041】
ステップS300では、色変換モジュール98は、色変換テーブルLUT(図1)を参照しつつ、各画素ごとに、RGB画像データを、カラープリンタ20が利用可能なインク色の多階調データに変換する。
【0042】
ステップS400では、ハーフトーンモジュール99は、ハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理とは、多階調データの階調数である256階調を、カラープリンタ20が各画素で表現可能な階調数である2階調に減少させる処理(減色処理)である。この2階調は、本実施例では、「ドットの形成なし」と「ドットの形成」とで表現される。
【0043】
図12は、本発明の第1実施例におけるハーフトーン処理の流れを示すフローチャートである。ステップS410では、ハーフトーンモジュール99(図1)は、入力階調値に応じて記録率テーブルDT(図1)からドット記録率LVLを読み取る。
【0044】
図13は、ハーフトーンに使用されるレベルデータの決定に利用される記録率テーブルDT(図1)を示す説明図である。横軸と縦軸は、それぞれ入力階調値とドット記録率とを示している。直線LVLは、入力階調値とドット記録率との間の関係を示している。たとえば入力階調値が階調値64である場合には、レベルデータLv1が読み出される。
【0045】
ステップS410では、さらに、ディザ法のハーフトーンで使用される閾値thもディザマトリックスM(図1、図7)から読み出される。
【0046】
ステップS420では、閾値調整処理が行われる。閾値調整処理とは、先行ヘッドと後続ヘッドのインク吐出量の配分を制御するために閾値を増減する処理である。本実施例では、先行ヘッド(印刷ヘッド10A)のインク量の吐出が後続ヘッド(印刷ヘッド10B)のインク量の吐出よりも多くなるように閾値の増減が行われる。閾値の増減は、各画素へのインク滴の吐出の担当が、先行ヘッドと後続ヘッドのいずれであるかに応じて画素毎に実行される。
【0047】
図14は、本発明の第1実施例におけるディザマトリックスMを示す説明図である。 ディザマトリックスMの各要素に格納された数値は、先行ヘッドと後続ヘッドのいずれがドットの形成を担当するかを表している。数値「1」が格納された要素は、印刷ヘッド10A(先行ヘッド)がドット形成を担当する画素に対応し、数値「2」が格納された要素は、印刷ヘッド10B(後続ヘッド)がドット形成を担当する画素に対応する。
【0048】
図15は、本発明の第1実施例におけるドット数配分テーブルDnを示す説明図である。横軸と縦軸は、それぞれ入力階調値とドットオン目標数である。曲線Td1は、印刷ヘッド10A(先行ヘッド)の入力階調値とドットオン目標数の関係を示している。曲線Td2は、印刷ヘッド10B(後続ヘッド)の入力階調値とドットオン目標数の関係を示している。たとえば入力階調値が64のときには、先行ヘッドのドットオン目標数は、5460個であり、後続ヘッドのドットオン目標数は、2730個である。なお、直線Refは、先行ヘッドと後続ヘッドへの配分が同一であると仮定したときの基準値を示している。また、ドット数の配分を表す情報は、各入力階調値毎のデータとしても良いし、近似計算式であっても良い。
【0049】
閾値調整処理は、これらのドットオン目標数に確率論的に近づくように閾値を増減する処理である。具体的には、たとえば、入力階調値が64のときには、先行ヘッドで形成対象となるドットのドットオン目標数は5460個なので、閾値を小さくして4096個の基準値から5460個に近づくように調整される。たとえばディザマトリックスMから読み出された閾値Thが40の場合には、この閾値に対して係数0.75(=4096/5460)を乗ずることによって、調整閾値Thaである30(=40×0.75)が算出されることになる。
【0050】
ステップS430では、ステップS410で読み出されたレベルデータLDとステップS420で調整された閾値Thaとの大小が比較される。この比較の結果、レベルデータLv1が閾値Thaよりも大きいときには、「ドットの形成」が決定される(ステップS440)。一方、レベルデータLD(Lv1)が閾値Thaよりも小さいときには、「ドットの非形成」が決定される(ステップS450)。
【0051】
このようにして、全画素についてハーフトーン処理が完了すると、処理がステップS500(図11)に進められる。ステップS500では、各画素について決定された大中小のドットの形成状態に基づいて印刷データPDが生成される。
【0052】
このように、第1実施例では、先行ヘッドで形成されるドット数と後続ヘッドで形成されるドット数との配分を格納するドット数配分テーブルDnに基づいて、ドット形成の有無を決定する基準となる閾値が調整されるので、先行ヘッドと後続ヘッドへのドット数を適切に配分することができる。これにより、先行ヘッドと後続ヘッドへのドット数の配分を直接的に制御して印刷媒体P上におけるインクの流動を抑制した印刷を実現して画質を向上させることができる。
【0053】
なお、本実施例では、閾値を調整して先行ヘッドと後続ヘッドへのドット数を適切に配分しているが、入力階調値を調整して先行ヘッドと後続ヘッドへのドット数を適切に配分するように構成しても良い。
【0054】
C.本発明の第2実施例におけるハーフトーン処理:
図16は、本発明の第2実施例におけるハーフトーン処理のルーチンを示すフローチャートである。第2実施例のフローチャートは、レベルデータ選択処理(ステップS405)が追加されるとともに、閾値調整処理(ステップS420)が削除されている。第2実施例のハーフトーン処理は、入力階調値を調整して先行ヘッドと後続ヘッドへのドット数を適切に配分するように構成と実質的に等価である。
【0055】
図17は、本発明の第2実施例のハーフトーンに使用されるレベルデータの決定に利用される記録率テーブルDT’を示す説明図である。2本の直線LVL1、LVL2は、それぞれ先行ヘッドと後続ヘッドとで記録される画素のドットの形成の有無の決定に利用されるレベルデータを表している。具体的には、先行ヘッドで記録されるドットのレベルデータの読み出しは、直線LVL1に基づいて入力階調値に応じて読み出され、後続ヘッドで記録されるドットのレベルデータの読み出しは、直線LVL2に基づいて入力階調値に応じて読み出される。
【0056】
このように、第2実施例では、記録率テーブルDT’からの読み出しを選択的に行うことによって、実質的に入力階調値にバイアスを与えることができるので、ハーフトーン処理の処理負担を過大とすることなく、本願発明を適用することができる。
【0057】
D.本発明の第3実施例におけるハーフトーン処理:
本発明の第3実施例は、本願発明者の以下の解析に基づいて考案されたものである。上述の各実施例は、先行ヘッドドットパターンDp1と後続ヘッドドットパターンDp2のいずれであるか応じてインクの吐出量に差を付けているので、両者のインク濃度を相違させることにつながる。このようなインク濃度の相違は、一方のドットパターンを目立たせる結果として、一方のドットパターンに起因する低周波領域での粒状性が画質を劣化させることになる。
【0058】
さらに、本願発明者は、先行ヘッドドットパターンDp1や後続ヘッドドットパターンDp2での低周波成分の発生は、インクの流動に起因する滲みや凝集を人間の視覚感度の高い低周波領域で顕著に顕在化させる役割を果たすことも突き止めた。これらの観点から、本願発明者は、各ドットパターンに着目したディザマトリックスの利用に相当した。このようなディザマトリックスは、本願発明者による以下の解析に基づいてそうさくされたものである。
【0059】
図18は、従来のディザマトリックスを用いて形成されたドットパターンを示す説明図である。図18において、3つのドットパターンDpa、Dp1、Dp2は、それぞれ印刷画像のドットパターンDpaと、印刷ヘッド10A(先行ヘッド)で形成されるドットパターンDp1と、と印刷ヘッド10B(後続ヘッド)で形成されるドットパターンDp2と、を示している。印刷画像のドットパターンDpaは、第1の画素グループのドットパターンDp1(以下、先行ヘッドドットパターンDp1と呼ぶ。)と、第2の画素グループのドットパターンDp2(以下、後続ヘッドドットパターンDp2と呼ぶ。)と、が共通の印刷領域で組み合わせられることによって形成される。なお、図18〜図20では、説明を分かりやすくするために同一の配分としているが、前述のように階調値に応じて両者Dp1、Dp2のドット密度が相互に相違することになる。
【0060】
図18から分かるように、印刷画像のドットパターンDpaが比較的に均一なドットの分散性を示しているのに対して、先行ヘッドドットパターンDp1や後続ヘッドドットパターンDp2は、ドットの疎密が生じている。このようなドットの疎密は、低周波成分を発生させて顕著な画質劣化として人間の目に認識されるものである。このような画質劣化は、従来のディザマトリックスが印刷画像のドットパターンDpaの画質を向上させるように構成されていることに起因して生じるものであるが、先行ヘッドドットパターンDp1と後続ヘッドドットパターンDp2とが、予め想定されるようにドット形成位置の誤差を生じさせることなく、さらには、インクの流動も生じさせることなく、組み合わせられるものであれば本来は顕在化しないものでもある(図19)。
【0061】
しかし、前述のように、先行ヘッドドットパターンDp1や後続ヘッドドットパターンDp2での低周波成分の発生は、インクの流動に起因する滲みや凝集を人間の視覚感度の高い低周波領域で顕著に顕在化させる役割を果たすことになる。さらに、先行ヘッドドットパターンDp1と後続ヘッドドットパターンDp2のインク濃度が前述のように相違すると、一方のドットパターンが目立つ結果として、一方のドットパターンに起因する低周波領域での粒状性が画質を劣化させることになる。
【0062】
本願発明者は、このような観点から、インクの流動に起因する滲みや凝集が人間の視覚感度の高い低周波領域での顕在化を抑制するために、各画素グループ毎の粒状性指数Gg1、Gg2を抑制することに想到したのである。
【0063】
図20は、第2実施例のディザマトリックスの生成方法で生成されたディザマトリックスを用いた各ドットパターンを示す説明図である。第2実施例のディザマトリックスの生成方法で生成されたディザマトリックスによれば、先行ヘッドドットパターンDp1や後続ヘッドドットパターンDp2での低周波成分の発生が抑制されているので、インクの流動に起因する滲みや凝集が発生しても低周領域で顕著に顕在化することを回避することができる。さらに、印刷ヘッド10Aと印刷ヘッド10Bのドット形成位置の相対的なズレが生じても、それぞれの疎と疎あるいは密と密の一致によって画質が過度に劣化することを抑制するという効果をも奏する。
【0064】
このように、第3実施例は、先行ヘッドと後続ヘッドの各々で形成されるドットパターンに起因する低周波の疎密とインクの流動に起因する滲みや凝集の有機的な関係による画質劣化を抑制して画質をさらに向上させることができるという利点がある。
【0065】
図21は、本発明の第3実施例におけるディザマトリックスの生成方法の処理ルーチンを示すフローチャートである。この例では、説明を分かりやすくするために8行8列の小さなディザマトリックスを生成するものとしている。ディザマトリックスの最適性をあらわす評価としては、粒状性指数(式F2、図10)が使用されるものとしている。
【0066】
ステップS100では、グループ化処理が行われる。グループ化処理とは、印刷ヘッド10A(先行ヘッド)でドットが形成される画素のグループ(第1の画素グループ)と、印刷ヘッド10B(後続ヘッド)でドットが形成される画素のグループ(第2の画素グループ)と、の各々に対応する要素にディザマトリックスMを分割する処理である。
【0067】
図22は、本発明の第3実施例における分割マトリックスM1、M2を示す説明図である。分割マトリックスM1は、印刷ヘッド10A(先行ヘッド)がドット形成を担当する要素を抜き出したマトリックスである。分割マトリックスM2は、印刷ヘッド10B(後続ヘッド)がドット形成を担当する要素を抜き出したマトリックスである。
【0068】
ステップS200では、着目閾値決定処理が行われる。着目閾値決定処理とは、格納要素の決定対象となる閾値を決定する処理である。本実施例では、比較的に小さな値の閾値、すなわちドットの形成されやすい値の閾値から順に選択することによって閾値が決定される。このように、ドットが形成されやすい閾値から順に選択すれば、ドットの粒状性が目立つハイライト領域におけるドット配置をコントロールする閾値から順に格納される要素を固定していくことになるので、ドットの粒状性が目立つハイライト領域に対して大きな設計自由度を与えることができるからである。
【0069】
ステップS300では、格納要素決定処理が行われる。格納要素決定処理とは、着目閾値を格納する要素を決定するための処理である。このような着目閾値決定処理(ステップS200)と格納要素決定処理(ステップS300)とを交互に繰り返すことによってディザマトリックスが生成される。なお、対象となる閾値は、全ての閾値であっても良いし、あるいは一部の閾値であっても良い。
【0070】
図23は、本発明の第3実施例における格納要素決定処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。ステップS310では、決定済み閾値の対応ドットがオンとされる。決定済み閾値とは、格納要素が決定された閾値を意味する。本実施例では、前述のようにドットの形成されやすい値の閾値から順に選択されるので、着目閾値にドットが形成される際には、決定済み閾値が格納された要素に対応する画素には必ずドットが形成されることになる。逆に、着目閾値にドットが形成される最も小さな入力階調値においては、決定済み閾値が格納された要素以外の要素に対応する画素にはドットは形成されないことになる。
【0071】
図24は、マトリックスに1〜8番目にドットが形成されやすい閾値(0〜7)が格納されたマトリックスの各要素に対応する8個の画素の各々にドットが形成された様子を黒丸印で示す説明図である。このようにして構成されるドットパターンDpaは、9番目のドットをどの画素に形成すべきかを決定するために使用される。なお、*印については後述する。
【0072】
ステップS320では、格納候補要素選択処理が行われる。格納候補要素選択処理とは、格納される閾値が決定済みの要素(図24の例では、1〜8番目にドットが形成されやすい閾値(0〜7)が格納された要素)を除く各要素を、着目閾値の格納候補として順に選択する処理である。図24の例では、1行1列の*印が格納された要素が着目閾値の最初の格納候補として選択されている。
【0073】
ステップS330では、格納候補要素の対応ドットがオンとされる。この処理は、ステップS310において、決定済み閾値の対応ドットとしてオンとされたドット群に追加される形で行われる。
【0074】
図25は、格納候補要素の対応ドットと決定済み閾値の対応ドットとがオンされたドット形成状態を数値化したマトリックス、すなわちドット密度を定量的に表したドット密度マトリックスDdaを示す説明図である。数字0は、ドットが形成されていないことを意味し、数字1は、ドットが形成されていること(前述のようにドットが格納候補要素に形成されていると仮定されている場合を含む)を意味する。
【0075】
図26は、第1の画素グループと第2の画素グループとにおいて、候補要素の対応ドットと決定済み閾値の対応ドットとがオンされたドット形成状態を数値化したドット密度マトリックスDd1、Dd2を示す説明図である。図26から分かるように、第1の画素グループには、5個のドットが形成されており、第2の画素グループには、4個のドットが形成されている。
【0076】
ステップS340では、評価値決定処理が行われる。評価値決定処理は、本実施例では、図27に示された評価値算出式に基づいて評価値を算出する処理である。評価値算出式は、全画素を評定とした粒状性指数Gaを算出する第1項と、各画素グループを評定とした粒状性指数Gg1、Gg2aを算出する第2項と、の和として構成されている。
【0077】
第1項は、全画素を評定とした粒状性指数Gaを算出する。粒状性指数Gaは、本実施例では、画質の粒状感を表す指数として、図10に示された式F1と式F2とを利用して算出される。これにより、人間の視覚感度に基づいて粒状感の少ない画質を実現することができる。
【0078】
第1項は、各画素グループを評定とした粒状性指数Gg1、Gg2aを算出する。粒状性指数Gg1、Gg2aは、本実施例では、各画素グループの画質の粒状感を表す指数として、図10に示された式F1と式F2とを利用して算出される。これにより、先行ヘッドと後続ヘッドの各々で形成されるドットパターンについても、人間の視覚感度に基づいて粒状感の少ない画質を実現することができる。
【0079】
なお、重み付け係数Wa、Wgは、それぞれ第1項と第2項とに対する重み付けを表す値である。具体的には、全画素の粒状性を重視する場合には、重み付け係数Waの値を大きくすれば良く、各画素グループの粒状感を重視する場合には、重み付け係数Wgの値を大きくすれば良い。
【0080】
ステップS350では、今回算出された評価値が、前回に算出された評価値(図示しないバッファに格納)と比較される。比較の結果、今回算出された評価値が小さい(好ましい)ときには、このバッファに算出された評価値と格納候補要素と関連づけられて格納(更新)されるとともに、今回の格納候補要素が格納要素と仮に決定される(ステップS360)。
【0081】
このような処理は、全ての候補要素について行われ、最後に図示しないバッファに格納された格納候補要素に決定されることになる(ステップS370)。さらに、このような処理が全ての閾値、あるいは予め設定された範囲の全ての閾値について行われ、ディザマトリックスの生成が完了する(ステップS400、図11)。
【0082】
このように、第3実施例では、先行ヘッドで形成されるドット数と後続ヘッドで形成されるドットパターンの特性をも考慮して、先行ヘッドと後続ヘッドとによるドット形成を適切に制御して、印刷媒体P上におけるインクの流動や粒状性を抑制した印刷を実現して画質を向上させることができる。
【0083】
E.変形例:
以上、本発明のいくつかの実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、本発明は、以下のような変形例についてのディザマトリックスの最適化が可能である。
【0084】
E−1.上述の実施例では、2個の印刷ヘッドを使用した印刷装置への適用例が開示されているが、たとえば第1変形例(図28)に示されるような4個の印刷ヘッドを使用した印刷へも適用することができる。第1変形例では、ノズルピッチkが4の4個の印刷ヘッドを千鳥に配置して、各印刷画素にインク滴が吐出できるように構成されている。このような構成では、たとえば、図29に示されるように4個の画素グループM21、M22、M23、M24に分割するとともに、図30に示されるドット数配分テーブルDn’に基づいてドット数の配分を設定することによって実現することができる。さらに、この変形例や上述の実施例(図15)では、各階調値におけるドット数自体を表す情報に基づいて、各階調値におけるドット数が配分されているが、各階調値におけるドット発生比率(たとえば各々の最大値100%)を表す情報に基づいてドット数を配分するようにしても良い。
【0085】
さらに、上述の実施例や変形例での各階調値におけるドット数の配分では、階調値の上昇に応じて、常に双方のドット数が増加しているが、たとえば1つの画素グループのドット数を減少させるとともに、他の画素グループの少なくとも1つの画素グループで、その減少を補償するように構成することも可能である。このような自由度は、特開2002−307671号や特開2002−166536号に開示されるようなハーフトーン処理後におけるドットデータの各記録走査への振り分けでは得ることが極めて困難である。
【0086】
E−2.上述の実施例では、紙送りのみで印刷が行われるラインプリンタに対して、本発明は、適用されているが、印刷ヘッドの主走査と印刷媒体の副走査と行いつつドットを形成する印刷にも本発明は適用可能である。
【0087】
図31は、印刷ヘッドの主走査と印刷媒体の副走査と行いつつドットを形成するカラープリンタ20aの概略構成図である。カラープリンタ20aは、前述の副走査駆動部(図2)に加えて、キャリッジモータ24によってキャリッジ30を紙送りローラ26の軸方向(主走査方向)に往復動させる主走査駆動部と、キャリッジ30に搭載された印刷ヘッドユニット60(「印刷ヘッド集合体」とも呼ぶ)を駆動してインクの吐出およびドット形成を制御するヘッド駆動機構を備えている。
【0088】
図32は、カラープリンタ20aによるドット形成の様子を示す説明図である。図32から分かるように、ラスター番号が奇数の画素位置にドットが形成された後に、ラスター番号が偶数の画素位置にドットが形成されることによって印刷画像が形成される。このように、共通の印刷領域において、常に先行する奇数番目の主走査と後続の偶数番目の主走査とで印刷画像が形成される点に着目すれば、奇数番目の主走査が図4に示される先行ヘッドに相当するとともに、偶数番目の主走査が図4に示される後続ヘッドに相当することになる。このような対応関係を利用すれば、第1実施例と同様に、各主走査のドットの配分を考慮したディザマトリックスの生成を実現することができる。
【0089】
図33は、カラープリンタ20aによるドット形成の様子の他の例を示す説明図である。この例では、ラスタ毎にドットの形成順序が相違する点で図32の変形例と相違する。たとえばラスタ番号15〜20の印刷領域では、第1画素グループ、第2画素グループ、第3画素グループ、第4画素グループの順にドット群が形成されるが、ラスタ番号21〜24の印刷領域では、第2画素グループ、第3画素グループ、第4画素グループ、第1画素グループの順にドット群が形成される。このように印刷領域に応じて、ドットの形成順序が変遷する場合もあるが、このような場合にも変遷に応じて閾値や入力階調値、ドット記録率テーブルの選択を切り替えることによって適用することができる。
【0090】
E−3.上述の実施例では、ディザ法でハーフトーン処理が行われているが、このようなハーフトーン処理は、誤差拡散法でも実現可能である。たとえば誤差拡散法の閾値や入力階調値の少なくとも一方を調整することによって、所定のドット数の配分に近づくように誤差拡散法を構成すればよい。
【0091】
E−4.上述の実施例では、先行ヘッドのインクの吐出量を後続ヘッドのインクの吐出量よりも多くするように設定されているが、たとえば印刷環境(印刷媒体の種類やインクの特性)によっては、逆とする方がインクの流動を抑制できる場合も想定される。本発明のハーフトーン処理は、一般に、共通の印刷領域における複数のドット群の各々のドット形成順序に応じて、複数のドット群の各々のドット数の配分が決定された所定のディザマトリックスを用いてドットの形成状態を決定するように構成されていればよい。
【0092】
なお、先行ヘッドのインクの吐出量を後続ヘッドのインクの吐出量よりも多くするように設定することが最適な印刷環境として、色材として顔料を使用し、印刷媒体として光沢紙を使用した場合に顕著に発生することが確認されているが、これに限られず種々の印刷環境を上述の観点から実験で確認することによって本発明を適用することができる。
【0093】
E−5.上述の実施例や変形例では、粒状性指数やRMS粒状度に基づいてディザマトリックスの最適性を評価しているが、たとえば簡略化した方法として、ドットの形成が疎となっている画素に対応する要素に着目閾値が格納されるように格納要素を決定するようにしても良い。さらに、たとえばドットパターンに対してフーリエ変換を行うとともにVTF関数を用いてディザマトリックスの最適性を評価するように構成しても良い。具体的には、ゼロックスのDooleyらが用いた評価尺度(Grainess scale:GS値)をドットパターンに適用して、GS値によってディザマトリックスの最適性を評価するように構成しても良い。ここで、GS値とは、ドットパターンに対して2次元フーリエ変換を含む所定の処理を行って数値化するとともに、視覚の空間周波数特性VTFを乗じるフィルタ処理を行った後に積分することによって得ることができる粒状性評価値である(参考文献:ファインイメージングとハードコピー、コロナ社、日本写真学会、日本画像学会 合同出版委員会編 P534)。ただし、前者は、フーリエ変換などの複雑な計算が不必要となるという利点を有する。
【0094】
E−6.上述の実施例では、1個の閾値の格納要素毎に評価処理が行われているが、たとえば複数個の閾値の格納要素を同時に決定するような場合にも本発明は、適用することができる。具体的には、たとえば上述の実施例において6番目までの閾値の格納要素が決定されていて、7番目と8番目の閾値の格納要素を決定するような場合にも7番目の閾値の格納要素にドットが追加された場合の評価値と、7番目と8番目の閾値の格納要素にそれぞれドットが追加された場合の評価値とに基づいて格納要素を決定するようにしても良いし、あるいは7番目の閾値の格納要素のみを決定するようにしても良い。
【0095】
E−7.上述の実施例では、比較的に小さな値の閾値、すなわちドットの形成されやすい値の閾値から順に選択することによって着目閾値を決定し、このようにして決定された着目閾値が各要素に格納されたと仮定したときのドットの形成状態を想定して、それぞれ算出された所定の目標状態との相関を表すマトリックス評価値に基づいて、前記複数の格納候補要素の中から前記着目閾値の格納要素を決定してディザマトリックスを作成している。しかし、このような方法に限られず、比較的に大きな値から順に選択するようにしても良い。ただし、実施例の方法は、前述のようにドットの粒状性が目立つハイライト領域に対して大きな設計自由度を与えることができるという利点がある。
【0096】
さらに、閾値を順に決定する方法に限られず、初期状態としてのディザマトリックスを準備するとともに、各要素に格納された複数の閾値の一部を、他の要素に格納された閾値と入れ替えつつ各閾値が格納される要素を決定してディザマトリックスを生成するように構成しても良い。この場合には、評価関数は、所定の要素群素の各々に形成されるドット密度の差を評価関数(罰関数)に含めることによって設定することができる。なお、評価の基準となるドット密度マトリックスは、着目閾値にドットが形成される最も小さな入力階調値に基づいて生成しても良いし、それ以上の入力階調値に基づいて生成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】印刷システムの構成の一例を示すブロック図。
【図2】カラープリンタ20の概略構成図。
【図3】印刷ヘッド10A、10Bの下面におけるノズル配列を示す説明図。
【図4】印刷ヘッド10A、10Bの横面を示す説明図。
【図5】インクの凝集やブリードと呼ばれる現象のメカニズムを示す説明図。
【図6】先行ヘッドと後続ヘッドとによってインク滴が吐出されるときのインクの流れ込みのメカニズムの様子を示す説明図。
【図7】ディザマトリックスMの一部を概念的に例示した説明図。
【図8】ディザマトリックスを使用したドット形成の有無の考え方を示す説明図。
【図9】ブルーノイズ特性を有するブルーノイズディザマトリクスの各画素に設定されている閾値の空間周波数特性を概念的に例示した説明図。
【図10】人間が有する視覚の空間周波数に対する感度特性である視覚の空間周波数特性VTF(Visual Transfer Function)を概念的に示した説明図。
【図11】本発明の第1実施例における印刷データ生成処理のルーチンを示すフローチャート。
【図12】本発明の第1実施例におけるハーフトーン処理の流れを示すフローチャート。
【図13】ハーフトーンに使用されるレベルデータの決定に利用される記録率テーブルDTを示す説明図。
【図14】本発明の第1実施例におけるディザマトリックスMを示す説明図。
【図15】本発明の第1実施例におけるドット数配分テーブルDnを示す説明図。
【図16】本発明の第2実施例におけるハーフトーン処理のルーチンを示すフローチャート。
【図17】第2実施例のハーフトーンに使用されるレベルデータの決定に利用される記録率テーブルDT’を示す説明図。
【図18】従来のディザマトリックスを用いて形成されたドットパターンを示す説明図。
【図19】ドット形成位置の誤差やインクの流動が生じない場合のドットパターンを示す説明図。
【図20】本発明の第2実施例のディザマトリックスの生成方法で生成されたディザマトリックスを用いた各ドットパターンを示す説明図。
【図21】本発明の第3実施例におけるディザマトリックスの生成方法の処理ルーチンを示すフローチャート。
【図22】本発明の第3実施例における分割マトリックスM1、M2を示す説明図。
【図23】本発明の第3実施例における格納要素決定処理の処理ルーチンを示すフローチャート。
【図24】マトリックスに1〜8番目にドットが形成されやすい閾値(0〜7)が格納されたマトリックスの各要素に対応する8個の画素の各々にドットが形成された様子を黒丸印で示す説明図。
【図25】ドット密度マトリックスDdaを示す説明図。
【図26】第1の画素グループと第2の画素グループとにおいて候補要素の対応ドットと決定済み閾値の対応ドットとがオンされたドット形成状態を数値化したドット密度マトリックスDd1、Dd2を示す説明図。
【図27】本発明の第3実施例のディザマトリックス評価値算出式を示す説明図。
【図28】第1変形例における4個の印刷ヘッドを使用したラインプリンタへの適用の様子を示す説明図。
【図29】第1変形例における4個の分割マトリックスM21、M22、M23、M24を示す説明図。
【図30】第1変形例におけるドット数配分テーブルDn’を示す説明図。
【図31】第2変形例における印刷ヘッドの主走査と印刷媒体の副走査と行いつつドットを形成するカラープリンタ20aの概略構成図。
【図32】カラープリンタ20aによるドット形成の様子を示す説明図。
【図33】カラープリンタ20aによるドット形成の様子の他の例を示す説明図。
【符号の説明】
【0098】
10…印刷ヘッド
10A…印刷ヘッド
10B…印刷ヘッド
20、20a…カラープリンタ
22…モータ
24…キャリッジモータ
26…ローラ
30…キャリッジ
32…操作パネル
40…制御回路
56…コネクタ
60…印刷ヘッドユニット
90…コンピュータ
91…ビデオドライバ
95…アプリケーションプログラム
96…プリンタドライバ
97…解像度変換モジュール
98…色変換モジュール
99…ハーフトーンモジュール
100…印刷データ生成モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体上に印刷を行う印刷装置であって、
元画像を構成する各画素の階調値を表す画像データに対してハーフトーン処理を行うことによって、前記印刷媒体上に形成されるべき印刷画像の各印刷画素へのドットの形成状態を決定するとともに、前記決定されたドットの形成状態を表すドットデータを生成するドットデータ生成部と、
前記ドットデータに応じて、前記ドットの形成に関する物理的な条件の相違が想定された複数の画素グループの各々に形成されるドット群を、共通の印刷領域で相互に組み合わせることによって印刷画像を生成する印刷画像生成部と、
を備え、
前記ハーフトーン処理は、前記共通の印刷領域における前記複数のドット群の各々のドット形成順序に応じて、前記複数のドット群の各々のドット数の配分が決定されるように構成されている印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置であって、
前記ハーフトーン処理は、所定のディザマトリックスに格納された各閾値を用いてドットの形成状態を決定し、
前記ドットの形成状態の決定は、前記共通の印刷領域における前記複数のドット群の各々のドット形成順序に応じて、前記閾値と前記入力階調値の少なくとも一方を調整することによって前記ドット数の配分に近づくように構成されている印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置であって、
前記ハーフトーン処理は、前記ドット形成順序が早いほど前記複数のドット群の各々のドット数の配分が多くなるように構成されている印刷装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記ハーフトーン処理は、予め設定された第1の階調値以上であって、かつ、予め設定された第2の階調値以下の階調値の領域においては、前記複数のドット群の各々のドット数の配分が近づくように構成されている印刷装置。
【請求項5】
請求項2記載の印刷装置であって、
前記ハーフトーン処理は、前記複数のドット群の各々が予め設定された共通の特性を有するように各閾値が各要素に格納されたディザマトリックスを用いてドットの形成状態を決定する印刷装置。
【請求項6】
請求項5記載の印刷装置であって、
前記共通の特性は、フーリエ変換処理を含む計算処理によって算出される粒状性指数で表される値であり、
前記粒状性指数は、視覚の空間周波数特性に基づいて決定されたVTF関数と、前記フーリエ変換処理によって予め算出された定数との積に基づいて算出される、印刷装置。
【請求項7】
請求項5記載の印刷装置であって、
前記共通の特性は、ローパスフィルタ処理を含む計算処理によって算出されるRMS粒状度で表される値である、印刷装置。
【請求項8】
印刷媒体上に印刷を行う印刷方法であって、
元画像を構成する各画素の階調値を表す画像データに対してハーフトーン処理を行うことによって、前記印刷媒体上に形成されるべき印刷画像の各印刷画素へのドットの形成状態を決定するとともに、前記決定されたドットの形成状態を表すドットデータを生成するドットデータ生成工程と、
前記ドットデータに応じて、前記ドットの形成に関する物理的な条件の相違が想定された複数の画素グループの各々に形成されるドット群を、共通の印刷領域で相互に組み合わせることによって印刷画像を生成する印刷画像生成工程と、
を備え、
前記ハーフトーン処理は、前記共通の印刷領域における前記複数のドット群の各々のドット形成順序に応じて、前記複数のドット群の各々のドット数の配分が決定されている印刷方法。
【請求項9】
印刷媒体上に印刷画像を形成する印刷物の生成方法であって、
元画像を構成する各画素の階調値を表す画像データに対してハーフトーン処理を行うことによって、前記印刷媒体上に形成されるべき印刷画像の各印刷画素へのドットの形成状態を決定するとともに、前記決定されたドットの形成状態を表すドットデータを生成するドットデータ生成工程と、
前記ドットデータに応じて、前記ドットの形成に関する物理的な条件の相違が想定された複数の画素グループの各々に形成されるドット群を、共通の印刷領域で相互に組み合わせることによって印刷画像を生成する印刷画像生成工程と、
を備え、
前記ハーフトーン処理は、前記共通の印刷領域における前記複数のドット群の各々のドット形成順序に応じて、前記複数のドット群の各々のドット数の配分が決定されている印刷物の生成方法。
【請求項10】
印刷画素にドットを形成して印刷画像を生成する印刷部に供給するための印刷データをコンピュータに生成させるためのコンピュータプログラムであって、
元画像を構成する各画素の階調値を表す画像データに対してハーフトーン処理を行うことによって、前記印刷媒体上に形成されるべき印刷画像の各印刷画素へのドットの形成状態を決定するとともに、前記決定されたドットの形成状態を表すドットデータを生成するドットデータ生成機能を前記コンピュータに実現させるプログラムを備え、
前記印刷画像は、前記ドットの形成に関する物理的な条件の相違が想定された複数の画素グループの各々に属する印刷画素に形成されたドットが、共通の印刷領域で相互に組み合わせられることによって形成され、
前記複数の画素グループは、前記ドットの形成において物理的な共通性を有する少なくとも1つの画素グループ群を含み、
前記ハーフトーン処理は、前記共通の印刷領域における前記複数のドット群の各々のドット形成順序に応じて、前記複数のドット群の各々のドット数を配分する機能を含むコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2008−126616(P2008−126616A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316989(P2006−316989)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】