説明

ドライアイスブラスト装置

【課題】空気流に混入させるドライアイス粒の量の変動を抑制し、このドライアイス粒がより安定して高速空気流に混じって噴射されるようにしたドライアイスブラスト装置を提供する。
【解決手段】空気流発生源120と、この空気流発生源120で発生させられた空気流を搬送する空気搬送路200と、この空気搬送路200の先端に設けたノズル201と、上記空気搬路200を流れる空気流にドライアイス粒を混入するためのドライアイス粒供給手段300と、を備えたドライアイスブラスト装置100であって、上記ドライアイス粒供給手段300は、上記空気搬送路200に接続されたドライアイス粒落下管550を備え、上記空気搬送路200における上記ドライアイス落下管550が接続された部分を含む軸線方向所定長さ範囲の断面は、当該範囲よりも上流側および下流側の空気搬送路200の断面に対して拡大(251)させられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、研掃材としてドライアイス粒を用いるドライアイスブラスト装置に関する。
【0002】
研掃材としてドライアイス粒を用いるドライアイスブラストは、所望の研掃効果が期待できる一方で、研掃後に研掃材が昇華してしまうため、研掃材の回収手段が不要であるという特質をもっている。このため、ドライアイスブラストは、研掃材の回収困難な環境にある対象物に対してもブラスト加工を行うことができるといった利点を有しており、たとえば、食品製造工程装置や薬品製造工程装置におけるタンク内清掃や、開放環境での清掃等といった、アルミナ等を研掃材として用いる通常のブラストでは考えられなかった分野における活用が期待されている。
【0003】
本願の発明者はすでに、上記したようなドライアイスブラストの利点に着目し、低圧高速空気流にドライアイス粒を混入するようにしたドライアイスブラスト装置を提案している(特許文献1)。同文献に開示されたドライアイスブラスト装置は、低圧空気発生源で発生させた空気を空気搬送路によって搬送し、この空気搬送路の先端に設けたノズルから噴出させる構成において、ノズルよりも上流位置でドライアイス粒を空気流に混入させるようにしている。ドライアイス粒は、ホッパからロータリーバルブを介して空気流に重力落下により混入させている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−79465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成のドライアイスブラスト装置においては、ロータリーバルブにより、一定量ずつのドライアイス粒が空気流に混入されるとはいえ、単に重力落下させているだけであるため、空気流に混入するドライアイス粒の量に大きな変動が生じる欠点があった。
【0006】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、空気流に混入させるドライアイス粒の量の変動を抑制し、このドライアイス粒がより安定して高速空気流に混じって噴射されるようにしたドライアイスブラスト装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を採用した。
【0008】
すなわち、本願発明によって提供されるドライアイスブラスト装置は、空気流発生源と、この空気流発生源で発生させられた空気流を搬送する空気搬送路と、この空気搬送路の先端に設けたノズルと、上記空気搬送路を流れる空気流にドライアイス粒を混入するためのドライアイス粒供給手段と、を備えたドライアイスブラスト装置であって、上記ドライアイス粒供給手段は、上記空気搬送路に接続されたドライアイス粒落下管を備え、上記空気搬送路における上記ドライアイス粒落下管が接続された部分を含む軸線方向所定長さ範囲の断面は、当該範囲よりも上流側および下流側の上記空気搬送路の断面に対して拡大させられていることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、ドライアイス粒落下管から空気搬送路に落下させられたドライアイス粒は、空気搬送路の断面拡大部において攪拌させられた後に下流側に送り込まれるため、安定的にドライアイス粒混じりの高速空気をノズルから噴射させることができる。
【0010】
好ましい実施の形態では、上記空気搬送路における上記ドライアイス粒落下管が接続された部分を含む軸線方向所定長さ範囲は、所定長さの大径管の形態を有しているとともに、この大径管は、下流側に向かうにつれて次第に縮径する縮径部を介して下流側の上記空気搬送路に連続させられている一方、上流側の上記空気搬送路は管状となっていて、上記大径管の内部に上流側から所定長さ進入する進入管を形成している。
【0011】
好ましい実施の形態ではまた、上記進入管の先端は上記縮径部の途中で終わっており、上記縮径部の内周と上記進入管の先端部外周との間には、環状すきまが形成されている。
【0012】
このような構成によれば、ドライアイス粒落下管から空気搬送路に落下させられたドライアイス粒は、大径管の内壁と進入管の外面との間の空間において滞留、攪拌された後、進入管の先端から噴射する高速空気に吸い出されるようにして混入させられるので、より攪拌の程度が高まり、ドライアイス粒混入量の変動がより少なくなる。
【0013】
好ましい実施の形態ではさらに、上記ドライアイス粒落下管は、それより上位に配置されてドライアイス粒を貯留するホッパにロータリーバルブを介して接続されている。
【0014】
好ましい実施の形態ではまた、上記ロータリーバルブは、水平の軸線を有する円筒状内面を有するケーシングと、このケーシング内で上記軸線を中心として回転し、上記空気搬送路から導入された空気圧を受けて上記ケーシングの上記円筒状内面に摺接する複数のブレードを有するロータとを備え、上記ケーシングの上部壁にはドライアイス粒受け入れ口が開口しているとともに、上記ケーシングの下部壁にはドライアイス粒投下口が開口している。
【0015】
好ましい実施の形態ではさらに、上記ロータは、上記複数のブレードを上記ロータの半径方向に移動可能に支持している一方、管路を介して空気圧が導入されており、この空気圧が各ブレードを半径方向外方に向けて押圧している。
【0016】
好ましくは、上記空気圧は、上記空気搬送路から上記管路を介して導入されている。
【0017】
このような構成によれば、ドライアイス粒受け入れ口からケーシング内に投入されたドライアイス粒は、ロータの回転に伴い、各ブレード間の空間に閉じ込められて搬送され、ドライアイス投下口から投下させられる。したがって、ドライアイス粒受け入れ口の圧力と、ドライアイス投下口の圧力に差があっても、確実に一定量ずつのドライアイス粒をドライアイス落下管に向けて投下することができる。また、複数のブレードは、空気圧によってケーシングの内壁に摺接させられているので、ブレードとケーシング内壁との間にドライアイス粒が噛み込むようなことがあっても、ブレードは半径方向内方に退避することができる。したがって、ブレードとケーシングとの間にドライアイス粒が噛み込むことに起因してロータの回転がロックしてしまうといった事態は生じることがなく、ドライアイス粒落下管への安定したドライアイス粒の供給を継続することができる。
【0018】
好ましい実施の形態ではまた、上記各ブレードの半径方向外端部には、上記各ブレードの長手方向に延びる凹溝が形成されており、この凹溝の底部には、上記管路と連通する空気噴射孔が形成されている。
【0019】
このような構成によれば、各ブレードは、上記のように空気圧によってケーシングの内壁に押し付けられつつも、凹溝の底部の空気噴射孔から噴出する空気により、ケーシングの内壁に対して常時空気膜を介して摺動することになる。したがって、ブレードの先端とケーシング内壁との間の摩擦抵抗が低減されるとともに、空気膜を形成する空気流の動圧によって、ドライアイス粒がブレードとケーシング内壁との間に入り込み、さらには噛み込みが生じることを回避することができ、このことが、ロータの円滑な回転を担保する。
【0020】
好ましい実施の形態ではさらに、上記ホッパの内部には、下端が上記ケーシングのドライアイス粒受け入れ口まで延びて開口し、上端が上記ホッパの内部空間に連通する通気管が設けられている。
【0021】
このような構成によれば、ブレードがケーシングのドライアイス粒受け入れ口に対応する位置まで移動するごとに、ブレードの凹溝に形成した空気噴射孔から噴出する空気が通気管の下端から入り込み、その影響でこの通気管の上端から空気が噴射される。こうして噴射される空気がホッパ内に貯留されたドライアイス粒を攪拌し、ドライアイス粒が氷結する、いわゆるブリッジが生じてホッパ内のドライアイス粒の流動性が損なわれるといった事態を回避することができる。このことは、ホッパ内のドライアイス粒をロータリーバルブを介して円滑にドライアイス粒落下管ないしこのドライアイス粒を混合するべき空気搬送路内の空気流に供給することができることを意味する。
【0022】
好ましい実施の形態ではまた、上記通気管は、上記ホッパの内壁に一端が連結されかつ弾性変形可能なブラケットを介して上記ホッパ内で上下動可能に保持されているとともに、下端に上記各ブレードと接触しうる伝動部材が設けられており、この伝動部材が各ブレードと接触することにより、上下振動する。
【0023】
このような構成によれば、ホッパ内のドライアイス粒に埋まった状態にある通気管が間欠的に上下振動することにより、ドライアイス粒にブリッジが生じることを防止することができる。また、このような通気管の振動は、ブラケットを介してホッパの内壁に伝えられてホッパ内壁も振動するので、ホッパ内壁にドライアイス粒が氷結固着する、すなわち、ホッパ内壁との間にブリッジが生じることをも効果的に防止することができる。このこともまた、ホッパ内のドライアイス粒の流動性を確保することに寄与する。
【0024】
好ましい実施の形態ではさらに、上記ホッパは、その外面を所定のすきまを介して取り囲むカバー体で覆われており、このカバー体と上記ホッパの外面との間の空間で冷却された空気が、上記空気流発生源の冷却用に用いられる。
【0025】
このような構成によれば、空気流発生源で発生させられる空気流の温度を下げることができるので、この空気流に混入されるドライアイス粒の空気搬送路を流れる間での昇華を抑制することができる。
【0026】
好ましい実施の形態では、上記ノズルの先端には、このノズル先端を取り囲むように形成された環状ノズルが設けられており、この環状ノズルから高速空気流を噴射させるように構成されている。
【0027】
このような構成によれば、ノズルから噴射させられるドライアイス粒混じりの空気流の流速をより高め、総合的な流量増加をも達成し、より効率的なドライアイスブラスト処理を実現することができる。
【0028】
好ましい実施の形態ではさらに、上記環状ノズルは、上記ノズルの先端部に外嵌された環状の補助部材の内周面と、上記ノズルの先端部の外周面との間に形成される。
【0029】
このような構成によれば、環状ノズルを設ける場合と、設けない場合とを容易に選択することができ、利便性が高まる。
【0030】
本願発明のその他の特徴および利点は、図面を参照して以下に行なう詳細な説明から、明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本願発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0032】
図1は、本願発明に係るドライアイスブラスト装置100の一実施形態の全体構成を示す。このドライアイスブラスト装置100は、ボックス状の可搬フレーム110と、空気流発生装置120と、この空気流発生装置120から発生させられた空気流を搬送する空気搬送管200と、この空気搬送管200の先端に設けたノズル201と、この空気搬送管200の途中においてこの空気搬送管200内を流れる空気流にドライアイス粒を混入するためのドライアイス粒供給手段300とを備えて基本的に構成されている。
【0033】
可搬フレーム110は、全体が所定の大きさの矩形ボックス状をしており、下部に複数の車輪111を有していて、地面上を容易に移動可能である。この可搬フレーム110の適部にはまた、1または複数の把手112が設けられている。
【0034】
空気流発生装置120は、たとえば、ルーツブロア120aが用いられ、その吐出圧力は、1.2〜2.5気圧(atm)、好ましくは、1.4〜1.9気圧である。このルーツブロア120aは、ベルト121を介してモータ122の回転出力により駆動され、低圧高速大流量の空気流を発生することができる。このルーツブロア120aの出口には、空気搬送管200が接続され、この空気搬送管200は、水平方向に延びるドライアイス粒混入部250を介して延び、先端が可搬フレーム110の側壁113に貫通させられている。この空気搬送管200の先端部には、可撓性のホース210が接続され、さらにその先端には、ノズル201が取り付けられている。
【0035】
空気搬送管200の上記ドライアイス粒混入部250には、ロータリーバルブ400を介してドライアイス粒貯留用ホッパ500が接続されており、このホッパ500に貯留されたドライアイス粒は、ロータリーバルブ400によって一定量ずつ割り出されながら、上記ドライアイス粒混入部250において空気搬送管200を流れる空気流に混入されるようになっている。かかる構成は、本願発明におけるドライアイス粒供給手段300を形成するものであり、以下、具体的に説明する。
【0036】
図3に示すように、ドライアイス粒混入部250は、それより上流および下流につづく空気搬送管200よりも大径であって軸方向に所定長さ水平に延びる大径管251と、この大径管251に対して上流側から空気搬送管200と連続して同軸上に進入する進入管252とを備えている。大径管251の先端部は、下流側に向かうにつれて次第に縮径する縮径部251aを介して空気搬送管200の先端部に連続させられている。進入管252の先端部と上記縮径部251aの内面との間には、環状すきま253が形成されている。本実施形態においては、図4に良く表れているように、進入管252の外面と大径管251の内面との間をつなぎ、このドライアイス粒混入部250に供給されたドライアイス粒が大径管251の下部膨出部251bに滞留することを防止する隔壁254が設けられている。
【0037】
大径管251の上部側面には、ドライアイス粒落下管550が接続しており、このドライアイス粒落下管550の上端部は、ホッパ500に接続されているとともに、このドライアイス粒落下管550の途中部分には、ロータリーバルブ400が介装されている。なお、ホッパ500から上記大径管251までのドライアイス落下経路がドライアイス粒落下管550なのであり、その間におけるロータリーバルブ400の上下位置は問わない。本実施形態では、上下のドライアイス粒落下管550に挟まれる格好でロータリーバルブ400が介装されている。
【0038】
ロータリーバルブ400は、ケーシング410と、このケーシング410内で回転するロータ420とを備える。ケーシング410は、図5および図6によく表れているように、横方向の軸線をもつ円筒形をしており、円筒形をした側壁部材411の両端開口を蓋部材412で封鎖した構成を備えている。側壁部材411の上部側面と下部側面には、上部のドライアイス粒落下管550に接続されるドライアイス粒受け入れ口413と、下部のドライアイス落下管550に接続されるドライアイス粒投下口414がそれぞれ開口させられている。蓋部材412には、後記するロータ420の回転軸430を回転可能に通挿支持するための中心孔415が設けられている。
【0039】
ロータ420は、回転軸430と、蓋部材412の内面に接するようにして回転軸430と一体となって回転する一対のブレードガイド板440と、このブレードガイド板440に両端を保持されながら、回転軸430の半径方向に移動可能な複数のブレード450とを備える。
【0040】
回転軸430は、その両端部がたとえばオイレスメタル軸受460を介してケーシング410の蓋部材412の中心孔415に回転可能に支持されているとともに、中間部は両端部に対して大径となっている。また、この回転軸430には、空気圧導入路470が形成されており、この空気圧導入路470は、一方の軸端部から大径中間部431に至るまで軸方向に延びる第1部分471と、大径中間部431の軸方向中心位置においてこの第1部分471から放射状に延びて大径中間部431の外部に連通する複数の第2部分472とを備えている。大径中間部431の外周面にはまた、軸方向に延びる一定幅の凹溝432が、周方向に等間隔で複数形成されており、各凹溝432の底部に上記空気圧導入路470の第2部分472が開口させられている。
【0041】
ブレードガイド板440は、各蓋部材412の内面と回転軸430の大径中間部431との間に挟まれるようにして回転軸430の両端部に回転不能に套嵌されており、それらの内面には、回転軸430の大径中間部431に設けた各凹溝432と対応する周方向位置において、半径方向に延びる複数の所定幅のガイド溝441が形成されている。各凹溝432および各ガイド溝441の幅は、後記するブレード450の厚みと対応させられている。なお、この実施形態では、オイレスメタル軸受460には、蓋部材412の内面に沿うフランジ部分461が形成されており、このフランジ部分461の内面にこのブレードガイド板440が接するようになされているので、回転軸430および各ブレードガイド板440は、ケーシング410の内部において円滑な回転が担保される。
【0042】
ブレード450は、回転軸430の大径中間部431の各凹溝432の幅、および、ブレードガイド板440の各ガイド溝441の幅と対応した厚みを有する板状の部材であり、その長手方向両端部が上記各ガイド溝441にスライド可能に嵌合し、かつその幅方向一方側縁(底部側側縁)が常時上記各凹溝432に係合するようにして組付けられている。このブレード450の幅(底面から頂部までの寸法)は、上記各凹溝432の底部からケーシング410の内面までの寸法より小寸に設定してあり、したがって、各ブレード450は、その一方側縁(底面)が各凹溝432の底部に接触する状態から、他方縁(頂部)がケーシング410の内壁に接触する範囲で、回転軸430の半径方向にスライド移動可能となる。
【0043】
ブレード450はまた、その底面が平坦状となっているとともにこの底面に凹陥部451が形成されている一方、頂部はラウンド状となっていて、長手方向に延びる凹溝452が形成されており、かつ、この凹溝452の底部には、上記凹陥部451と連通する空気噴射孔453が開口させられている。
【0044】
回転軸430の一端には、ギア433が取付けられているとともに、このギア433には、駆動モータ491の出力軸に取付けたピニオン492が噛み合わせられている(図2参照)。このようにして、駆動モータ491の動力を受け、ロータ420は回転軸430を中心として回転させられる。
【0045】
回転軸430の一方端部には、スイベルジョイント480を介して空気搬送管200から枝分かれさせられた管路490が接続されており、これにより、この管路490と上記空気圧導入路470とが連通させられる。したがって、このロータリーバルブ400においては、ロータ420の回転中においても、空気搬送管200からの空気圧が、回転軸430に形成した空気圧導入路470に導入させられることになる。
【0046】
そうして、上記空気圧導入路470に導入された空気圧は、その第2部分472を介して、回転軸430の各凹溝432の底部に導かれ、各ブレード450をその底面から半径方向外方に向けて弾性押圧する。これにより、ロータ420の回転に伴い、各ブレード450は、空気圧によってケーシング410の内壁に弾性押圧させられながら、回転させられることになる。そして、このとき、各ブレード450の底面側凹陥部451に充満した空気は、空気噴射孔453を介して各ブレード450の頂部側の凹溝452内に充満させられる。この空気の圧力は、周囲の圧力より大であるので、各ブレード450の頂部とケーシング410の内壁との間に隙間が形成されると、この隙間から空気がケーシング内空間に噴出する。このような作用により、各ブレード450とケーシング410の内壁との間にドライアイス粒が噛み込もうとした場合においても、この現象を阻止することができる。また、各ブレード450の頂部とケーシング410の内壁との間に空気膜が形成され、ロータ420の円滑な回転を担保することができる。
【0047】
ホッパ500は、ドライアイス粒(図示略)を貯留するために設けられるものであって、下部逆円錐部512と、上部筒部513とを有する金属製の容器からなっており、その上部は可搬フレーム110の上面板114に支持されているとともに、下部はドライアイス粒落下管550に連通接続されている。なお、このホッパ500の内面は、好ましくは、微細な凹凸を形成し、さらには樹脂被膜を形成することにより、ドライアイス粒が付着しにくくしておくのがよい。また、このホッパ500の上部開口は、可搬フレーム110の上面板114に取付けられた開閉蓋115により、気密封鎖させるようになっている。
【0048】
このホッパ500の内部には、ほぼその中心において垂直方向にのびる通気管520が、ホッパ500の半径方向に延びてホッパ500の内壁に先端が連結される複数のステー状のブラケット521によって支持されている。この通気管520の下部は、ロータリーバルブ400のケーシング410のドライアイス粒受け入れ口413付近まで延びて開口している。一方、この通気管520の上部は、T字状に枝分かれし、その先端が開口している。上記ブラケット521は、たとえば、棒状をしており、弾性変形可能である。そのため、通気管520は、上下方向の外力を受けて、その軸方向に上下移動可能である。通気管520の下端部には、図5および図6によく表れているように、ブラケット522を介して伝動部材としてのローラ523が支持されている。このローラ523の回転軸は、ロータ420の回転軸430と平行である。また、このローラ523は、上記通気管520が自然状態にあるとき、各ブレード450の頂部の移動経路と一定量干渉するように位置づけられる。
【0049】
ホッパ500の外側は、一定の隙間を介してカバー体530で覆われている。このカバー体530は、金属により形成されていてよいが、その場合には、断熱部材(図示略)で覆うのが望ましい。このカバー体530には、連絡管531の一端が接続されており、この連絡管531の他端は、ルーツブロア120aの吸気部123に接続されている。なお、このようにホッパ500の外面とカバー体530とで囲まれる空間は、カバー体530の下端とホッパ500の外面との間を環状に開口させることにより、カバー体530の下端において、可搬フレーム110の内部空間に連通させられている。このような構成により、ルーツブロア120aが作動すると、上記カバー体530とホッパ500との間の空間に導入された空気が、ホッパ内のドライアイス粒の冷熱によって冷却された上、ルーツブロア120aの吸気部123に供給される。
【0050】
この実施形態においては、ノズル201の先端部に、このノズル201から噴射させられるドライアイス粒混じりの空気流の流速を助成するべく高速で空気を噴射する環状ノズル600が設けられている。
【0051】
図7に、ノズル201の先端部の構成を示す。同図に示すように、ノズル201の先端部201aは、一定内径のパイプ状をしているとともに、噴射方向がノズル201の噴射方向と同方向の環状ノズル600が形成されている。具体的には、ノズル201の先端部には、環状の補助部材610が外嵌状に取付けられている。この補助部材610の内周には、ノズル201の外周面との間に環状空間612を形成するための環状凹部611が形成されている。この補助部材610の先端部の位置は、ノズル201の先端部の位置と一致させられており、かつ、上記の環状空間612に連通するようにして、補助部材610の先端部内周と、ノズル201の先端部外周との間に、環状ノズル600が開口させられている。補助部材610には、高圧の圧力源(図示略)に連結された圧力ホース650が口金660を介して接続されており、これにより、上記環状空間612には、高圧空気が導入されるようになっている。このような高圧の圧力源は、工場内に装備される高圧ポンプ(図示略)が好適に利用されうる。環状空間612に高圧空気が導入されると、ノズル201の先端から噴射される空気流の外側に、上記の環状ノズル600から、同方向を向いて高圧空気が環状に噴射させられる。環状ノズル600から噴射させられる空気流の流速は、ノズル201から噴射させられる空気流の流速より高速となるように、圧力源の圧力が調整される。
【0052】
図に示す実施形態では、ノズル201の先端の薄肉化が図られているとともに、補助部材610が前後の2分割構成となっている。補助部材610の先端側部材610aは、ノズル201に固定される基端側部材610bに対してねじ手段によって着脱できるようになっている。この先端側部材610aは、その内径の異なる複数種類のものが用意され、このような先端側部材610aを取り替えることにより、環状ノズル600のすきまの大きさを種々変更し、ノズル201からの流れと、環状ノズル600からの流れを総合した流れの態様をブラスト対象に応じて種々変更することができる。
【0053】
上記したドライアイスブラスト装置100は、次のように作動する。
【0054】
ホッパ500には、所定量のドライアイス粒が充填される。ルーツブロア120aが動作を開始すると、低圧大流量の空気流が発生させられ、この空気流は、空気搬送管200を介してノズル201まで運ばれ、このノズル201から高速で噴射される。ノズル201から噴射させられる空気の速度は、100〜200m/sにも及ぶ。
【0055】
ロータリーバルブ400が作動を開始すると、ホッパ500内のドライアイス粒が一定量ずつドライアイス粒落下管550に送り出され、その内部のドライアイス粒は、重力によって空気搬送管200におけるドライアイス粒混入部250から高速空気流に混入される。
【0056】
すなわち、ケーシング410のドライアイス粒受け入れ口413から隣接するブレード450間の空間に落下させられたドライアイス粒は、隣接するブレード450とケーシング410の内壁によって形成される空間に閉じ込められたままロータ420の回転に伴って移動させられ、やがてこの空間がケーシング410の下方まで到達した時点で、ドライアイス粒投下口414から重力によってドライアイス粒落下管550に投下される。このような作動が連続して行われ、一定量ずつのドライアイス粒がドライアイス粒落下管550に投下される。
【0057】
上記したように、ロータ420の各ブレード450は、空気圧によってケーシング410の内壁に弾性的に押し付けられた状態で回転する。また、ブレード450の頂部の凹溝452には、一定圧の空気が充満した状態となる。したがって、ドライアイス粒がブレード450の頂部とケーシング410の内壁に噛み込もうとしたとき、ブレード450は、このブレード450をケーシング410の内壁に向けて押圧する空気圧に抗して半径方向内方に退避することができるが、このときブレード450の頂部とケーシング410の内壁との間に隙間が生じ、ブレード450の頂部の凹溝452に充満している空気が上記の隙間を介して噴出する。この噴出空気により、噛み込もうとしていたドライアイス粒が吹き飛ばされる。これにより、ドライアイス粒がブレード450とケーシング410の内壁の間に噛み込んでロータ420がロックするといった事態は回避される。また、ブレード450の頂部の凹溝452内に充満させられている空気がその圧力によってブレード450の頂部とケーシング410の内壁間に空気膜を形成し、ブレード450とケーシング410の内壁間の摩擦抵抗を低下させることも期待できる。これにより、ロータ420の円滑な回転が達成される。
【0058】
ドライアイス粒落下管550内を落下するドライアイス粒は、ドライアイス粒混入部250おける大径部251に投入される。ドライアイス粒は、大径部251と進入管252とで形成される環状空間に投入されるが、この環状空間には、高速空気が直接作用しないので、ドライアイス粒は一時滞留させられ、かつ、進入管252の先端から噴出する高速空気流の影響による乱れを受けて、攪拌させられる。そうして、進入管252から噴出する高速空気に吸い出されるようにして、進入管252と縮径部251aとの環状すきま253から、高速空気流に混入させられる。また、実施形態では、隔壁254によって、ドライアイス粒が大径部251の下部膨出部251bに滞留することも防止される。このようなことから、ドライアイス粒は、その混入濃度があまり変化することなく、安定的に高速空気流に混入させられる。
【0059】
ロータリーバルブ400の作動中、ブレード450の頂部が繰り返し通気管520の下部に設けたローラ523を叩き上げるため、通気管520は、その軸方向に振動する。そして、この振動は、ブラケット521を介してホッパ500の内壁に伝達され、ホッパ500の内壁もまた振動する。さらには、ブレード450が通気管520の真下に到達する度毎に、ブレード450の頂部に形成された凹溝452の空気噴射孔453から空気が噴射させられ、この空気は、通気管520に吹き込まれる。これに伴い、通気管520の上端において水平方向の開口から空気が間欠的に噴射する。このような空気噴射により、ホッパ500内のドライアイス粒が振動させられる。このように、ドライアイス粒に埋まった状態の通気管520の上下方向の振動、この影響を受けたホッパ500の振動、および、上記の空気噴射によってドライアイス粒に与えられる振動により、ホッパ500内のドライアイス粒が氷結する、いわゆるブリッジの発生を効果的に防止することができる。
【0060】
また、ルーツブロア120aは、継続運転により、温度上昇を招き、これに伴い、発生させられる空気流も昇温する。空気流の昇温は、これに混入されるドライアイス粒の昇華を促し、好ましくない。実施形態では、ルーツブロア120aの吸気部123に、ホッパ500の外面とカバー体530との間の空間において、ホッパ500内のドライアイス粒の冷熱によって冷却させられた空気が連絡管531を介して導入されるようにしているので、ルーツブロア120aの昇温を抑制し、発生する空気流の昇温を抑制することができる。
【0061】
さらに、ノズル201の先端に設けた環状ノズル600を作動させる場合には、上記したように、ノズル201から噴射させられる空気流の流速がこの環状ノズル600から噴射させられる空気流によって助勢される。これらの空気流は、高速であり、乱流としての性質をもっているので、ノズル201から噴射させられた後、適度に混じり合い、その結果として、より高速大流量のドライアイス粒混じりの空気流を形成することができる。これにより、より効率的なドライアイスブラスト処理を達成することができる。
【0062】
この発明の範囲は、上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲内でのあらゆる変更は、すべて本願発明の範囲に含まれる。
【0063】
たとえば、実施形態では、ロータリーバルブ400において、各ブレード450は、空気圧によってケーシング410の内壁に押圧されるようにしているが、これに加えて、圧縮コイルバネ等の弾性体を各ブレード450の底部と回転軸430の外周との間に介装し、空気圧による各ブレード450の押圧を助成するようにすることもできる。
【0064】
さらに、実施形態では、ロータリーバルブ400のロータに導入する空気圧は、空気搬送路200から得ているが、ノズル201の先端において補助部材610に高圧空気を供給するための圧力源からの圧力を導入するようにしても、もちろんよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本願発明の1実施形態に係るドライアイスブラスト装置の全体構成図である。
【図2】図1のII-II線に沿う断面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】図3のIV-IV線に沿う断面図である。
【図5】ロータリーバルブの縦断面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】ノズルの先端部の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0066】
100 ドライアイスブラスト装置
110 可搬フレーム
120 空気流発生装置
200 空気搬送路
210 ノズル
250 ドライアイス粒混入部
251 大径管
252 進入管
251a 縮径部(進入管の)
254 隔壁
300 ドライアイス粒供給手段
400 ロータリーバルブ
410 ケーシング
413 ドライアイス粒受け入れ口
414 ドライアイス粒投下口
420 ロータ
430 回転軸
431 大径中間部(回転軸の)
432 凹溝
440 ブレードガイド板
441 ガイド溝
450 ブレード
451 凹陥部
452 凹溝
453 空気噴射孔
470 空気導入路
480 スイベルジョイント
490 管路
500 ホッパ
520 通気管
521 ブラケット
523 ローラ(伝動部材)
530 カバー体
550 ドライアイス粒落下管
600 環状ノズル
610 補助部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流発生源と、この空気流発生源で発生させられた空気流を搬送する空気搬送路と、この空気搬送路の先端に設けたノズルと、上記空気搬送路を流れる空気流にドライアイス粒を混入するためのドライアイス粒供給手段と、を備えたドライアイスブラスト装置であって、
上記ドライアイス粒供給手段は、上記空気搬送路に接続されたドライアイス粒落下管を備え、上記空気搬送路における上記ドライアイス粒落下管が接続された部分を含む軸線方向所定長さ範囲の断面は、当該範囲よりも上流側および下流側の上記空気搬送路の断面に対して拡大させられていることを特徴とする、ドライアイスブラスト装置。
【請求項2】
上記空気搬送路における上記ドライアイス粒落下管が接続された部分を含む軸線方向所定長さ範囲は、所定長さの大径管の形態を有しているとともに、この大径管は、下流側に向かうにつれて次第に縮径する縮径部を介して下流側の上記空気搬送路に連続させられている一方、上流側の上記空気搬送路は管状となっていて、上記大径管の内部に上流側から所定長さ進入する進入管を形成している、請求項1に記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項3】
上記進入管の先端は上記縮径部の途中で終わっており、上記縮径部の内周と上記進入管の先端部外周との間には、環状すきまが形成されている、請求項2に記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項4】
上記ドライアイス粒落下管は、それより上位に配置されてドライアイス粒が貯留されるホッパにロータリーバルブを介して接続されている、請求項1ないし3のいずれかに記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項5】
上記ロータリーバルブは、水平の軸線を有する円筒状内面を有するケーシングと、このケーシング内で上記軸線を中心として回転し、上記空気搬送路から導入された空気圧を受けて上記ケーシングの上記円筒状内面に摺接する複数のブレードを有するロータとを備え、上記ケーシングの上部壁にはドライアイス粒受け入れ口が開口しているとともに、上記ケーシングの下部壁にはドライアイス粒投下口が開口している、請求項4に記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項6】
上記ロータは、上記複数のブレードを上記ロータの半径方向に移動可能に支持している一方、管路を介して空気圧が導入されており、この空気圧が各ブレードを半径方向外方に向けて押圧している、請求項5に記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項7】
上記ロータには、上記管路を介して上記空気搬送路の空気圧が導入されている、請求項6に記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項8】
上記各ブレードの半径方向外端部には、上記各ブレードの長手方向に延びる凹溝が形成されており、この凹溝の底部には、上記管路と連通する空気噴射孔が形成されている、請求項6または7に記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項9】
上記ホッパの内部には、下端が上記ケーシングのドライアイス粒受け入れ口付近まで延びて開口し、上端が上記ホッパの内部空間に連通する通気管が設けられている、請求項8に記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項10】
上記通気管は、上記ホッパの内壁に一端が連結されかつ弾性変形可能なブラケットを介して上記ホッパ内で上下動可能に保持されているとともに、下端に上記各ブレードと接触しうる伝動部材が設けられており、この伝動部材が上記各ブレードと接触することにより、上下振動する、請求項9に記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項11】
上記ホッパは、その外面を所定のすきまを介して取り囲むカバー体で覆われており、このカバー体と上記ホッパの外面との間の空間で冷却された空気が、上記空気流発生源の冷却用に用いられる、請求項4ないし10のいずれかに記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項12】
上記ノズルの先端には、このノズル先端を取り囲むように環状に形成された環状ノズルが形成されており、この環状ノズルから高速空気流を噴射させるように構成されている、請求項1ないし11のいずれかに記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項13】
上記環状ノズルは、上記ノズルの先端部に外嵌された補助部材の内周面と、上記ノズルの先端部の外周面との間に形成される、請求項12に記載のドライアイスブラスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−248236(P2009−248236A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98260(P2008−98260)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(591026034)
【Fターム(参考)】