説明

ドライアイ緩和用のヒアルロン酸ナトリウムを含有する安定な眼科用水中油型エマルジョン

ドライアイの治療用の粘滑剤、例えばヒアルロン酸ナトリウムを含有する安定な水中油型エマルジョンを開示する。水中油型エマルジョンは、安定であり、かつ、コンタクトレンズ消毒液として使用するのに充分な抗微生物活性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2004年3月17日に出願された米国特許出願第10/802153号の一部継続出願であり、米国特許出願第10/802153号は、2003年3月18日に出願された米国特許出願第10/392375号の一部継続出願である。両出願は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、ドライアイの治療および/または緩和用の、粘滑剤、特にヒアルロン酸を含有する自己乳化眼科用組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ドライアイ症候群は、適切な診断および処置によって症状を緩和し得るが、治療法が存在しない流行の疾患である。中年および高齢のアメリカ人女性だけでも320万人以上がこれに罹患している(Schaumberg DA, Sullivan DA, Buring JE, Dana MR. Prevalence of dry eye syndrome among US women. Am J Ophthalmol 2003 Aug;136(2):318-26)。コンタクトレンズ着用者、コンピューター使用者、乾燥環境において居住しかつ/または働く患者、および自己免疫疾患の患者は全て、ドライアイを特に発症しやすい。
【0004】
ヒアルロン酸は、人体において自然発生し、ドライアイの症状を効果的に治療することが示されている。長期の研究はまだ行われていないが、ヒアルロン酸ナトリウムでの治療は、損傷した角膜の回復を促進すると考えられる(Katsuyama I, Arakawa T. A convenient rabbit model of ocular eqithelium damage induced by osmotic dehydration. J Ocul Pharmacol Ther 2003 Jun;19(3):281-9)。ヒアルロン酸ナトリウム点眼剤は、前角膜涙液膜安定性および角膜水和性を増加し、涙液蒸発速度および角膜上皮の治癒時間を減少させる(Aragona P, Di Stefano G, Ferreri Fら、Sodium hyaluronate eye drops of different osmolarity for the treatment of dry eye in Sjogren's syndrome patients. Br J Ophthalmol 2002 Aug;86(8):879-84.)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、HAなどの水溶性ポリマーを、眼科用水中油型エマルジョンに組み込むことは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、自己乳化組成物に関する。本発明の態様による自己乳化組成物は、一般に、水性相に分散した1ミクロン未満の平均粒度を有する油滴を含有する。これらの油滴は、界面活性剤成分および極性油成分を含有し得る。好ましい態様において、界面活性剤成分および油成分は、機械的に均質化せずに混合した場合に、自己乳化するように選択される。好ましい態様において、自己乳化組成物は、水溶性ポリマーを包含し得る第一治療成分を含有する。好ましい態様において、自己乳化組成物の界面活性剤成分は、1つまたは2つの界面活性剤を含有する。
【0007】
好ましい態様において、自己乳化組成物の水溶性成分は、ヒアルロン酸、またはヒアルロン酸の塩、ポリビニルピロリドン(PVP)、セルロースポリマー、デキストラン70、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールまたはポビドンである。より好ましい態様において、セルロースポリマーは、カルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。他のより好ましい態様において、ポリエチレングリコールは、PEG 300またはPEG 400である。
【0008】
好ましい態様において、自己乳化組成物の油成分は、ヒマシ油または天然油を包含する。いくつかの態様において、自己乳化組成物は、亜塩素酸塩防腐剤成分も含有する。より好ましい態様において、亜塩素酸塩防腐剤成分は、安定化された二酸化塩素(SCD)、亜塩素酸金属塩、またはこれらの防腐剤の混合物である。
【0009】
好ましい態様において、自己乳化組成物は、カチオン性抗微生物剤も含有し、それは下記の物質である:ポリ[ジメチルイミノ-w-ブテン-1,4-ジイル]クロリド、α-[4-トリス(2-ヒドロキシエチルアンモニウム)−ジクロリド(Polyquaternium 1(登録商標))、ポリ(オキシエチル(ジメチルイミノ)エチレンジメチルイミノ)エチレンジクロリド(WSCP(登録商標))、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、ポリアミノプロピルビグアニド(PAPB)、ハロゲン化ベンザルコニウム、アレキシジンの塩、アレキシジン−遊離塩基、クロルヘキシジンの塩、ヘキセチジン、アルキルアミン、アルキルジ−およびトリ−アミン、トロメタミン(2-アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)、オクテニジン(N,N'−(1,10−デカンジイルジ−1−(4H)−ピリジニル−4−イリデンビス−[1−オクタナミン]ジヒドロクロリド、ヘキサメチレンビグアニドおよびそれらのポリマー、塩化セチルピリジニウム、セチルピリジニウム塩、抗微生物性ポリペプチド、またはこれらのカチオン性防腐剤の混合物。
【0010】
好ましい態様において、界面活性剤成分は、油滴の内側に向けられた界面活性剤成分の疎水性部分の第二部分より大きい、水性相に近位に向けられた第一部分を含有する疎水性部分を有する。より好ましくは、界面活性剤成分は、界面活性剤の疎水性部分の第二部分より多くの原子を含有する界面活性剤の疎水性部分の第一部分を有する1つの界面活性剤を含有する。いくつかの好ましい態様において、界面活性剤成分は2つの界面活性剤を含有し、第一の該界面活性剤は第一疎水性部分を含有し、第二の該界面活性剤は第二疎水性部分を含有し、該第一疎水性部分は、該第二疎水性部分より長い鎖長を有する。
【0011】
いくつかの態様において、自己乳化組成物は、自己乳化を妨げない付加的な界面活性剤も含有する。
【0012】
好ましい態様において、自己乳化組成物は界面活性剤成分を含有し、該界面活性剤成分は下記の物質である:(a)少なくとも約1〜100個のエチレンオキシド単位、および少なくとも約12〜22個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪アルコール鎖から形成された少なくとも1つのエーテルを有する化合物;および/または(b)少なくとも約1〜100個のエチレンオキシド単位、および少なくとも約12〜22個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪酸鎖から形成された少なくとも1つのエステルを有する化合物;および/または(c)少なくとも約1〜100個のエチレンオキシド単位、および少なくとも1つのビタミンまたはビタミン誘導体から形成された少なくとも1つのエーテル、エステルまたはアミドを有する化合物;および(d)2つ以下の界面活性剤を有するそれらの組合せ。最も好ましい態様において、界面活性剤成分はLumulse GRH-40またはTPGSである。
【0013】
自己乳化組成物の好ましい態様において、油滴は約0.25ミクロン未満の平均粒度を有する。より好ましい態様において、油滴は約0.15ミクロン未満の平均粒度を有する。
【0014】
好ましい態様において、自己乳化組成物は、極性油成分のHLB値よりかなり高いHLB値を有するカチオン性抗微生物性成分も含有し得る。
【0015】
本発明の態様は、任意の前記自己乳化組成物、および第二治療成分を含有する治療組成物に関する。好ましい態様において、第二治療成分は、シクロスポリン、プロスタグランジン、ブリモニジンまたはブリモニジン塩である。最も好ましい態様において、治療組成物は、Lumulse-GRH-40またはTPGSである界面活性剤成分を含有する。
【0016】
好ましい態様において、自己乳化組成物を、コンタクトレンズ用の多目的液として使用し得る。
【0017】
本発明の態様は、任意の前記乳化組成物を、それを必要とする個体に投与する段階を含む、眼の治療法に関する。好ましくは、治療はドライアイのためである。好ましくは、個体は哺乳動物である。
【0018】
本発明の態様は、自己乳化組成物の製造方法に関し、該方法は下記の工程を含む:極性油および界面活性剤成分を含有する油相を形成する工程であって、油相における極性油および界面活性剤成分が液状である工程;自己乳化を可能にする所定温度において水性相を形成する工程であって、水性相が水溶性ポリマーを含んで成る工程;および、機械的に均質化せずに油相および水性相を混合して、エマルジョンを形成する工程。該方法は、油相と一部の水性相とのペーストを形成し、ペーストを残りの水性相と混合してエマルジョンを形成することも含み得る。
【0019】
好ましい態様において、水溶性ポリマーは、ヒアルロン酸およびその塩、ポリビニルピロリドン(PVP)、セルロースポリマー、デキストラン70、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールおよびポビドンから選択し得る。いくつかの好ましい態様において、セルロースポリマーは、カルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースであってよい。いくつかの好ましい態様において、ポリエチレングリコールは、PEG 300またはPEG 400であってよい。好ましい態様において、界面活性剤成分は、1つまたはそれ以上の界面活性剤を含有する。
【0020】
本発明の他の態様、特徴および利点は、下記の好ましい態様の詳しい説明から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のこれらおよび他の特徴を、本発明を例示するものであるが限定するものではない好ましい実施態様を参照して、以下に説明する。
【0022】
本発明の実施態様は、ヒアルロン酸などの水溶性ポリマーを含有する眼科用水中油型エマルジョンに関する。そのようなエマルジョンは、油成分に対して界面活性剤の量が少ないことにより、付加的な快適性という利点を有する。これは、最終使用者に対してより高い快適性を与える。治療用粘滑剤を含有するエマルジョンを、コンタクトレンズケア組成物、例えば多目的の、再湿潤する他のコンタクトレンズケア組成物に組み込むことは、ドライアイを予防および/または治療する付加的な有用性または有益性を与え、かつ、エマルジョンだけが付与し得るメカニズムによってレンズおよび/または眼に潤滑性を与える。コンタクトレンズケア組成物に組み込まれたエマルジョンによって付与される付加的な有用性または有益性は、限定されないが、向上したコンタクトレンズの洗浄、コンタクトレンズ水分損失の予防、コンタクトレンズへのタンパク質の付着の抑制などを包含し得る。
【0023】
眼科用水中油型エマルジョンへのヒアルロン酸の組み込みに関して、2つの問題がある。第一の問題は、ヒアルロン酸および類似化合物が水中油型エマルジョンを不安定化することであり、第二の問題は、ヒアルロン酸および他の粘滑剤を含有する水中油型眼科用液の無菌性を維持することである。
【0024】
水中油型エマルジョンは、通例、界面活性乳化剤によって生成され安定化される。眼科的に許容される粘滑剤、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)またはヒアルロン酸ナトリウム(HA)を組み込む努力がなされている。しかし、そのようなポリマーは、水中油型エマルジョンを、架橋凝集作用(Bridging Flocculation effect)によって不安定化する。水溶性ポリマーは、エマルジョン液滴と相互作用して、エマルジョン−ポリマー複合体のクラスターを形成する。あまりに多くのエマルジョン液滴がポリマーによって捕捉される(picked up)場合、クラスターの全質量が非常に大きくなるため、浮力がブラウン運動に打ち勝ってクリーミングが生じる。
【0025】
第二の課題は、多量のアルキル鎖含有界面活性剤、例えば、POE(40)水素化ヒマシ油の存在下では、抗微生物活性が失われることである。実際に、Tween 80は、抗微生物活性試験において、第四級アンモニウム中和剤として慣例的に使用されている。界面活性剤はミセルを形成し、該ミセルは抗微生物剤を強く吸着し、それによって活性を減少させる。従って、エマルジョンの成分である界面活性剤の存在下に、抗微生物活性を維持することは困難であり得る。
【0026】
ヒアルロン酸は、明らかに、ドライアイの有効治療に有望な物質であり、ヒアルロン酸などの水溶性ポリマーを含有する安定な眼科用エマルジョン組成物が必要とされている。さらに、ドライアイを治療し得る自己乳化組成物が、微生物汚染されずに、かつコンタクトレンズの汚染除去のために、維持され得るように、抗微生物活性を有することが望ましい。
【0027】
本発明の態様は、ヒアルロン酸などの水溶性ポリマーである粘滑剤を含有する、容易に製造、滅菌できかつ貯蔵安定性の水中油型エマルジョン、およびそのような組成物の製造法を提供する。このよう眼科用組成物は、高快適性のために低い界面活性剤/油比も有し、より少ない界面活性剤を使用して乳化を達成する。本発明の眼科用組成物は、少なくとも2年間にわたって安定であり微生物が生育しない。このような組成物は、分子自己集合法を使用してナノメートル規模で高分子油滴構造を生じ、従って、ナノテクノロジーの一例を表す。
【0028】
定義
用語「エマルジョン」は、その一般的な意味で使用され、油および水などの通常は混合しない2つの液体の安定かつ均一な混合物を意味する。
【0029】
「乳化剤」は、界面活性剤などの、エマルジョンの形成を補助する物質である。用語「乳化剤」および「界面活性剤」は、本明細書において同義的に使用される。本発明において、界面活性剤成分は、自己乳化組成物中に存在し、かつ自己乳化に寄与する1つまたはそれ以上の界面活性剤を意味する。
【0030】
用語「安定な」は、その一般的な意味で使用され、クリーミング、凝集および相分離の不在を意味する。
【0031】
用語「粘滑剤」は、その一般的な意味で使用され、炎症を起こしているかまたは擦過された水晶体および/もしくは眼表面の刺激を緩和する薬剤を意味する。
【0032】
用語「極性油」は、油が、酸素、窒素および硫黄などのヘテロ原子を、分子の疎水性部分に含有することを意味する。
【0033】
本明細書において使用する場合、「多目的組成物」は、少なくとも2つの機能、例えば、コンタクトレンズが眼の外にあるときには、洗浄、濯ぎ、消毒、再湿潤、潤滑、状態調節、浸漬、保存およびその他のコンタクトレンズ処理を行うのに有用である。そのような多目的組成物は、コンタクトレンズが眼の中にあるときに、コンタクトレンズを再湿潤し洗浄するのにも有用であることが好ましい。コンタクトレンズが眼の中にあるときに、コンタクトレンズを再湿潤し洗浄するのに有用な製剤は、再湿潤剤(re-wetters)または「眼内」洗浄剤("in the eye" cleaners)と呼ばれることが多い。
【0034】
本明細書において使用する場合、用語「洗浄」は、指での処置(digital manipulation)を行うか行わずに、かつ、組成物を攪拌する補助装置を使用するか使用せずに、コンタクトレンズから付着物および他の汚染物を放し、かつ/または除去することを包含する。
【0035】
本明細書において使用する場合、用語「再湿潤」は、コンタクトレンズの少なくとも前面の、少なくとも一部、例えば少なくとも要部に、液体を添加することを意味する。
【0036】
ドライアイの治療および/または緩和のための治療用眼科用組成物が開示される。眼科用組成物は、水中油型エマルジョン、好ましくは自己乳化水中油型エマルジョンを、治療用粘滑剤、および微生物生育を抑制する殺生剤と共に含有する。そのような組成物の製造法、およびそのような組成物の使用法も開示する。本発明のエマルジョン含有組成物は、比較的容易にかつ直接的に製造され、貯蔵安定性であり、例えば、ほぼ室温において少なくとも約2年またはそれ以上の貯蔵寿命を有する。さらに、本発明の組成物は、好都合にも、例えば滅菌濾過法を用いて、容易に滅菌でき、かつ、少なくとも1つの抗微生物剤の含有によって、組成物が汚染されたときに微生物生育の可能性またはリスクを除くか、または少なくとも実質的に減少させる。
【0037】
好ましい態様は、ドライアイの治療用の、水中油型エマルジョンを含んで成る組成物に関する。この使用おいて、当業者によって必要と判断されるなら、組成物を投与する。例えば、眼科用粘滑剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、他のセルロースポリマー、デキストラン70、ゼラチン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 300およびPEG 400)、ポリビニルアルコール、ポビドンなど、およびそれらの混合物を、本発明の眼科用組成物、例えば、ドライアイの治療に有用な組成物中で使用し得る。
【0038】
より好ましい態様において、本発明の治療用粘滑剤は、水溶性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ならびにヒアルロン酸(HA)およびその塩を包含する。
【0039】
最も好ましい態様において、治療剤は、ヒアルロン酸(HA)である。HAは天然ポリマーである。本明細書において使用するとき、用語HAは、ヒアルロン酸、およびヒアルロン酸塩(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム(ナトリウム塩)、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸マグネシウム、およびヒアルロン酸カルシウム)を意味する。
【0040】
HAは、簡単な反復二糖単位(グルクロン酸およびN−アセチルグリコサミン)から成るポリマーである。それは、あらゆる動物の結合組織細胞によって生成され、眼の硝子体、関節の滑液、およびニワトリのトサカなどの組織に多量に存在する。HAを分離する一方法は、トサカなどの組織を処理することである。天然源から分離されたHAは、商業的供給者、例えば、Biomatrix、Anika Therapeutics, ICN、およびPharmaciaから得ることができる。
【0041】
HAを生成する他の方法は、連鎖球菌などの細菌の発酵による方法である。細菌が糖に富む液体培地で培養され、その液体培地にHAを排泄する。次に、HAを液体培地から分離し、不純物を除去する。発酵によって生成されるHAの分子量は、発酵液体培地に入れる糖によって変化し得る。発酵によって生成されたHAは、Bayer, GenzymeおよびFidiaなどの会社から得ることができる。
【0042】
HAは、天然形態において、5x104〜1x107ダルトンの分子量を有する。その分子量は、酸、熱(例えば、オートクレーブ、マイクロ波、乾熱)、または超音波への暴露などの多くの切断方法によって減少し得る。HAは水溶性であり、高粘度水溶液を形成し得る。
【0043】
本発明の組成物は、好ましくは、自己乳化エマルジョンを包含する。即ち、本発明の水中油型エマルジョンは、好ましくは、減少した量の剪断速度での分散混合によって、より好ましくは、剪断速度での分散混合を実質的に行わずに、形成できる。剪断速度での分散混合は、機械的な均質化としても既知である。エマルジョンを形成する機械的な均質化は、典型的には1000r.p.mより大きな剪断速度、より典型的には数千r.p.m.、さらには10,000r.p.m.またはそれ以上の剪断速度で行われる。言い換えれば、本発明の自己乳化エマルジョンは、好ましくは、減少した量の剪断力を使用して、より好ましくは剪断力を実質的に使用せずに、形成することができる。さらに、本発明のエマルジョンは、比較的低い、乳化成分または界面活性剤対油または油状成分の比を有し、従って、好都合にも、局所眼科用途において安全かつ快適である。低い界面活性剤/油比を有するそのような水中油型エマルジョンは、より高い界面活性剤/油比を有する水中油型エマルジョンよりも容易に、自己乳化によって製造することができる。
【0044】
本発明組成物の局所眼科用途形態は、限定されないが、ドライアイ治療用および他の治療用の点眼剤、眼への薬剤または治療成分の送達用形態、およびコンタクトレンズのケア用形態を包含する。本発明の組成物は、ドライアイおよび類似症状ならびに他の眼症状の治療に極めて有用である。さらに、本発明の組成物は、薬剤送達用の担体または賦形剤、例えば、眼の中へのまたは眼を通しての治療成分の送達用の担体または賦形剤において、またはそのような担体または賦形剤として有用である。
【0045】
本発明組成物のコンタクトレンズケア用途は、限定されないが、洗浄、濯ぎ、消毒、保存、浸漬、潤滑、再湿潤およびその他のコンタクトレンズ処理に有用な組成物を包含し、そのような組成物は、そのような機能の2つ以上を果たすのに有効な組成物、即ち、いわゆる多目的コンタクトレンズケア組成物、他のコンタクトレンズケア関連組成物などを包含する。本発明のエマルジョンを含有するコンタクトレンズケア組成物は、コンタクトレンズの着用前、着用中および/または着用後に、コンタクトレンズ着用者の眼に投与される組成物も包含する。
【0046】
本発明の態様は、水中油型エマルジョン、好ましくは、自己乳化水中油型エマルジョンを含有する治療用眼科用組成物を提供する。これらの水中油型エマルジョンは、油成分、例えばヒマシ油(これに限定されない);および2つまたはそれ以下の乳化剤または界面活性剤を含有する水性成分を含んで成る。唯1つまたは2つの乳化剤を使用することによって、乳化剤/油成分の低重量比が得られ、かつ化学毒性問題が軽減し、それによって、3つ以上の乳化剤を使用するエマルジョンと比較して快適性および安全性において有利である。
【0047】
油状成分および界面活性剤成分または界面活性剤は、エマルジョンの自己乳化を促進するのに化学構造的に適合性であることが好都合である。本発明に関して、界面活性剤成分は、自己乳化組成物中に存在し、かつ自己乳化に寄与する1つまたは2つの界面活性剤を意味する。1つまたは2つの界面活性剤は、界面活性剤および油の疎水性構造間の非共有結合相互作用に基づく、1つまたはそれ以上の選択された油への親和性を有する必要があり、それによって自己乳化が達成される。1つの態様において、親和性は、極性油を、同様の極性の界面活性剤と共に使用することに関係している。本明細書において使用される極性油という用語は、酸素、窒素および硫黄などのヘテロ原子を分子の疎水性部分に有する油を意味する。好ましい態様において、記載される自己乳化エマルジョンは、少なくとも1つの極性油を含有する。
【0048】
好ましい態様において、1つまたは2つの界面活性剤が、クサビ形またはパイ切片形(扇形)の化学構造を形成し得る必要があり、クサビ形構造のより大きい端が、界面活性剤構造の親水性部分により近接している。即ち、より大きい界面活性剤部分が水性相に向いており、油相に向いている界面活性剤部分より多くの原子を含有している。界面活性剤成分が2つの界面活性剤を含有する場合、第一界面活性剤の疎水性部分は、第二界面活性剤の疎水性部分より長い鎖長を有して、クサビ形の形成を促進することができる。
【0049】
本発明において界面活性剤成分を形成するのに有用な界面活性剤は、単独または混合物として使用される場合に、水溶性であることが有利である。このような界面活性剤は、好ましくは非イオン性である。存在する界面活性剤成分の量は、多くの要因、例えば、組成物中の他の成分などに依存して、広範囲に変化する。多くの場合、界面活性剤成分の総量は約0.01〜約10.0w/w%である。付加的な界面活性剤が(界面活性剤成分に加えて)、自己乳化組成物に存在してよく、付加的な界面活性剤が自己乳化を妨げない濃度で存在する場合に本発明の範囲内であることに留意すべきである。
【0050】
本発明の水中油型エマルジョンにおける界面活性剤成分/油状成分の比、例えば重量比は、許容されるエマルジョン安定性および性能を与えるように、好ましくは自己乳化水中油型エマルジョンを与えるように選択される。当然であるが、界面活性剤成分/油状成分の比は、使用される特定の界面活性剤および1つまたはそれ以上の油、最終水中油型エマルジョンに所望される特定の安定性および性能、最終水中油型エマルジョンの特定の用途または使用などの要因に依存して変化する。例えば、界面活性剤成分/油状成分の重量比は、約0.01〜40、好ましくは0.1〜20、より好ましくは0.2〜2.0であってよい。
【0051】
そのような界面活性剤は本明細書に記載されるように機能し、有効かつ有用な眼科用組成物を与え、かつ、本発明の組成物で処理されたコンタクトレンズ、そのようなコンタクトレンズの着用者、またはそのような組成物が投与されたヒトまたは動物へのいずれの実質的なまたは重大な有害作用も有さない。
【0052】
1つまたはそれ以上の油または油状物質を使用して、本発明の組成物を形成する。任意の好適な油または油状物質、または油または油状物質の組合せを使用してよく、但し、そのような油および/または油状物質が、本発明の組成物において有効であり、かつ、組成物が投与されたヒトまたは動物、または処理されたコンタクトレンズ、または処理されたコンタクトレンズの着用、または処理されたコンタクトレンズの着用者に、いずれの実質的なまたは重大な有害作用も生じないものとする。油状成分は、限定されないが、例えば、本来極性であってよく、天然または合成由来であってよい。天然油は、植物または植物部分、例えば種子から得てもよく、または動物源、例えば、マッコウクジラ油、タラ肝油などから得てもよい。油は、脂肪酸のモノ、ジまたはトリグリセリド、またはグリセリドの混合物、例えば、ヒマシ油、ヤシ油、タラ肝油、トウモロコシ油、オリーブ油、ラッカセイ油、ベニバナ油、ダイズ油およびヒマワリ油であってよい。油は、エステル形態の直鎖モノエチレン酸およびアルコール、例えば、ホホバ油およびマッコウクジラ油から成ってもよい。油は、合成油、例えばシリコーン油であってよい。油は、水不溶性の不揮発性液体有機化合物、例えば、ビタミンEアセテート異性体のラセミ混合物から成ってもよい。前記の油種の混合物も使用し得る。
【0053】
天然で安全であり、前記の眼科的または他の医薬的用途を有し、色がほとんどなく、老化の際に容易に変色せず、展延薄膜(spread films)を容易に形成し、粘着せずに表面を潤滑する油が好ましい。ヒマシ油などが好ましい油である。
【0054】
一態様において、本発明は、治療用粘滑剤を含有する自己乳化性水中油型エマルジョンである治療用眼科用組成物、ならびにそのような治療用眼科用組成物の製造法および使用法に関する。このような組成物は、ドライアイの治療および/または緩和、ならびにコンタクトレンズケアに有用である。これらのエマルジョンは、分子自己凝集法を使用してナノメートルおよびサブミクロン規模で高分子油滴構造を生じ、従って、ナノテクノロジーの一例を表す。エマルジョンは、ミリ秒ないし分での分子自己集合によって容易に製造される。エマルジョンは濾過滅菌することができ、貯蔵安定性である。エマルジョンは、低い界面活性剤/油比を得るために、1つまたは2つだけの界面活性乳化剤を使用する。組成物は、眼に快適かつ非毒性である。
【0055】
本発明のエマルジョンの局所的眼科用途は、ドライアイ治療用の点眼剤、眼へのまたは眼を通しての薬剤送達用の組成物、およびコンタクトレンズケア液を包含する。コンタクトレンズケア液の用途は、多目的の洗浄、濯ぎ、消毒および保存液、ならびに眼用の再湿潤液、眼内洗浄液およびその他の液を包含する。好ましい態様において、HAは少なくとも0.001%(w/w)の濃度で存在する。典型的には、HAは0.01%(w/w)〜0.3%(w/w)の濃度で存在する。エマルジョン濃度が高い場合、より高いHA濃度が好ましい場合がある。好ましくは、HAは0.1〜0.2%w/wで存在する。
【0056】
水溶性ポリマー粘滑剤を含有する水中油型エマルジョンを、ドライアイ治療用の点眼剤、コンタクトレンズ再湿潤液および多目的液に組み込むことは、空気−涙界面において、またはコンタクトレンズが存在する場合は、更にはコンタクトレンズ−涙界面において、油層を与えることによって、ドライアイおよびコンタクトレンズ水分損失を予防するという付加的な有用性を与える。この油層は、水の蒸発、即ち損失を遅らせることによって、ドライアイまたはコンタクトレンズ水分損失を予防する作用をする。コンタクトレンズ表面の油層は、特に硬質酸素透過性コンタクトレンズの場合に、持続性の潤滑層を与えることもできる。コンタクトレンズ表面の油層は、コンタクトレンズのタンパク質付着を抑制することもできる。
【0057】
本発明の治療組成物用の自己乳化性水中油型エマルジョンは、2つの一般型がある。第一の型は、一界面活性剤系である。第二の型は二界面活性剤系である。いずれの場合も、下記の条件を満たす必要がある:(1)条件(2)が同時に満たされる場合に自己乳化が達成され得るように、界面活性剤が、界面活性剤および油の疎水性構造間の非共有結合相互作用に基づく、1つまたはそれ以上の選択された油への親和性を有すべきであり、(2)界面活性剤は、クサビ形またはパイ切片形の化学構造を有すべきであり、クサビ形構造のより大きい端が、界面活性剤構造の親水性部分により近接している。このクサビ形は、水−油界面における近接する界面活性クサビ形の分子自己集合によって、水−油界面における球状油滴湾曲を誘発すると考えられる。即ち、クサビ形界面活性分子の形状が、油滴湾曲に密接に関係している。近接する界面活性分子の親水性部分間の水性相における立体反発がこれを促進する。好ましくは、これらの親水性部分は、適切な長さのポリエチレンオキシド鎖から成る。好ましくは、ポリエチレンオキシド鎖は、7〜20個のエチレンオキシド単位の長さである。前記の2つの構造条件が界面活性剤および油の組に関して満たされている場合に、界面活性剤および油成分の濃度を変化させて自己乳化の実験的試験を行う。自己乳化の実験的試験は、本明細書に開示されている自己乳化エマルジョン製造法を使用して行う。エマルジョンは、眼で観察した際に、水性相と油相との間にいずれの凝集、クリームまたは相分離もなく均質に見え、かつ、エマルジョンの油滴粒度分布がエマルジョン安定性についての特定の製品基準を満たす場合に、許容されると考えられる。
【0058】
実際に、界面活性剤が0.05〜1ミクロン、好ましくは0.05〜0.25ミクロンの粒度範囲の液滴を形成し得る場合に、その界面活性剤は、本明細書に開示する自己乳化水中油型エマルジョンの優れた候補である。
【0059】
一成分界面活性剤系の例は、ポリエトキシル化油、例えばPEGヒマシ油である。ポリエトキシル化ヒマシ油誘導体は、エチレンオキシドでのヒマシ油または水素化ヒマシ油のエトキシル化によって生成される。ヒマシ油は、一般に、約87%のリシノール酸、7%のオレイン酸、3%のリノール酸、2%のパルミチン酸および1%のステアリン酸から成る。種々のモル比のエチレンオキシドとヒマシ油との反応は、PEGヒマシ油の種々の化学生成物を生じる。PEGヒマシ油の例は、Lambent Technologies Corporation(Skokie, IL)によって製造されているLumulse GRH-40である。1つの界面活性剤および油の組の好ましい例は、界面活性剤Lumulse GRH-40およびヒマシ油である。
【0060】
Lumulse GRH-40は、水素化ヒマシ油の40モルエトキシレートである。Lumulse GRH-40は、3個のリシノール酸グリセロールエステル鎖の9−炭素位置でのヒマシ油の接触水素添加、次に、12−ヒドロキシステアリン酸グリセロールエステルの3個の12-ヒドロキシ基の、それぞれ約13個のエトキシ基を用いたエトキシル化によって生成される。ヒマシ油のLumulse GRH-40での自己乳化は、下記によって生じると考えられる:分子のクサビ形疎水性部分を形成するための、ステアリン酸エステル基の残りの10−炭素アルキルセグメントに対して内向きの、エトキシル化12−ヒドロキシ基に遠位の6−炭素アルキル鎖の折りたたみ;水相に向かって外向きのエトキシ基の配向;ヒマシ油相に向いた分子のクサビ型疎水性部分の配向(水性相から離れて内側に向いたクサビ形の細い部分);および、分子のクサビ形疎水性部分のヒマシ油への親和性。
【0061】
ヒマシ油と共に使用されるLumulse GRH-40の最適量は、ヒマシ油1.0w/w%につき、Lumulse GRH-40 約0.8w/w%である。しかし、最終エマルジョンの所望の特性に依存して、より多いまたはより少ない量をヒマシ油と共に使用し得る。一般に、Lumulse GRH-40/ヒマシ油の重量比は0.6〜0.8、好ましくは約0.8である。
【0062】
Lumulse GRH-40を他の界面活性剤、例えばPolysorbate-80(Tween-80、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)と組み合わせて、2つの界面活性剤を含有する自己乳化エマルジョンを形成することができる。そのような組成物において、自己乳化は、主にLumulse GRH-40によって誘導されると考えられる。第二界面活性剤(例えば、Polysorbate-80)は、Polysorbate-80の疎水鎖(オレイン酸エステル鎖)ならびにヒマシ油の疎水鎖(12−ヒドロキシオレイン酸エステル鎖)およびLumulse GRH-40の疎水鎖(ステアリン酸エステル鎖)の類似の化学構造によるGRH-40の乳化作用を妨げない。無妨害第二界面活性剤は、低い濃度で存在する。即ち、無干渉界面活性剤の濃度は、自己乳化を妨げないのに充分に低い濃度である。
【0063】
2つの界面活性剤は、本発明のドライアイ治療用自己乳化水中油型エマルジョンを形成する界面活性剤の能力に関して、1つまたは複数の油に適合するようにも選択し得る。両方の界面活性剤はそれぞれ、自己乳化を達成するために2つの化学構造条件を満たすべきである:(1)条件(2)が同時に満たされる場合に自己乳化が達成され得るように、各界面活性剤が、界面活性剤および油の疎水性構造間の非共有結合相互作用に基づく、1つまたはそれ以上の選択された油への親和性を有するべきであり;(2)界面活性剤の組は、クサビ形またはパイ切片形の化学構造を形成し得るべきであり、クサビ形構造のより大きい端が、界面活性剤構造の親水性部分により近接している。油に適合性である界面活性剤の組の好ましい例は、2つの界面活性剤を含有する界面活性剤原剤Cremophor RH-40、およびヒマシ油である。BASF Corporation(Parsippany N.J.在)からのCremophor RH-40は、75〜78%の2つの界面活性剤:ポリエトキシル化グリセロールのトリヒドロキシステアレートエステル、および混合ポリエチレングリコールのヒドロキシステアレート(ビス)エステル、および22〜25%の遊離ポリエチレングリコールから成る。このように、Cremophor RH-40原剤は2つの界面活性剤を含有し、該界面活性剤は、相互におよびヒマシ油に構造的に関連している。3つのエステル鎖を有する界面活性剤と2つのエステル鎖を有する界面活性剤との組合せ(それらの鎖は全て、相互に親和性を有する)は、ヒマシ油の存在下、クサビ形構造(2つの界面活性剤が油滴界面で行き来している)の形成を可能にすると考えられる。同じくBASFからのCremophor RH-60は、2つの界面活性剤を含有する他の界面活性剤原剤の例である。Cremophor RH-60はCremophor RH-40と同じであるが、但し、RH-40よりRH-60においてポリエチレングリコールでのより高い誘導体化が存在する。
【0064】
エマルジョン形成に関与してもしなくてもよい付加的な界面活性剤を添加してよい。
【0065】
一成分系の他の例は、トコフェロールポリエチレングリコール-スクシネート(TPGS、Eastman Chemical Company, Kingsport, TNから入手可能)などの界面活性剤を使用する。TPGSは、細い部分にトコフェロールがあり、外側部分にPEGがあり、それらの共有結合を形成するスクシネートを有するクサビ形を形成することができる。
【0066】
本発明に使用できる界面活性剤のより包括的な種類は、下記から選択される界面活性剤を包含する:(a)1〜100個のエチレンオキシド単位、および12〜22個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪アルコール鎖から形成された少なくとも1つのエーテル;(b)1〜100個のエチレンオキシド単位、および12〜22個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪酸鎖から形成された少なくとも1つのエステル;(c)1〜100個のエチレンオキシド単位、および少なくとも1つのビタミンまたはビタミン誘導体から形成された少なくとも1つのエーテル、エステルまたはアミド;および(d)2つ以下の界面活性剤を有する前記物質の組合せ。
【0067】
本発明のドライアイ治療組成物用の水中油型エマルジョンの製造は、一般に下記のように行われる。水溶性ポリマー粘滑剤を包含する水溶性成分である非乳化剤を、水性(水)相に溶解させ、油溶性成分(乳化剤を包含する)を油相に溶解させる。2つの相(油および水)を、別々に、適切な温度に加熱する。この温度は、両方の場合で同じであり、一般に、油相における固体または半固体油または乳化剤の場合、最も高い融点成分の融点より数度から5〜10度高い。油相が室温で液体である場合、好適な温度は、水性相における最も高い融点成分の融点を用いて、ルーチン試験によって決定される。油相または水相の全ての成分が室温で各相において可溶性である場合、加熱しなくてよい。その温度は、全ての成分を液状にするのに充分に高い温度でなければならないが、成分の安定性を損なうほど高い温度にすべきでない。使用温度範囲は、一般に、約20℃〜約70℃である。水中油型エマルジョンを形成するために、最終油相を、中間体、好ましくは脱イオン水相、または最終水性相に緩やかに混合して、好適な分散液を形成し、生成物を攪拌下または非攪拌下で冷却させる。最終油相を、先ず、中間の水相に緩やかに混合する場合、次に、このエマルジョン濃縮物を、適切な比率で最終水性相と混合する。最終水性相は、水溶性ポリマーならびに他の水溶性成分を含有する。そのような場合、エマルジョンがこの時点で既に形成されているので、エマルジョン濃縮物および最終水性相は、同じ温度である必要がないか、または室温より高く加熱する必要がない。
【0068】
1つの乳化剤におけるエチレンオキシド単位の量が多すぎる場合、半固体が自己乳化の過程で形成し得る。一般に、1つまたはそれ以上の界面活性剤が、それらの構造中に10個より多いエチレンオキシ単位を有する場合、界面活性剤および油相を、全組成物水のうちの少量、例えば約0.1〜10%の水と混合して、ペースト状の半固体物質を形成し、次に、それを残りの水と合わせる。次に、水和された乳化剤が充分に溶解してエマルジョンを形成するまで、緩やかな混合が必要とされ得る。
【0069】
一態様において、初めに、界面活性剤および油を合わせ、加熱する。次に、少量の水性相を油相に添加して、ペースト状の半固体物質を形成する。ここで、ペーストは、半固体調製物として定義される。添加される水性相の量は、0.1〜10%、好ましくは0.5〜5%、最も好ましくは1〜2%であってよい。ペーストが形成された後に、追加の水を先と同じ温度でペーストに添加する。いくつかの態様において、添加される水の量は5〜20%である。次に、エマルジョンを緩やかに混合する。いくつかの態様において、混合は、30分〜3時間行われる。
【0070】
好ましい実施態様において、次に、粒子を分粒する。この目的のために、Horiba LA-920粒度分析器を製造者使用説明書に従って使用し得る。好ましい実施態様において、粒子は、次の工程に送る前において、0.08〜0.18ミクロンの粒度である。
【0071】
次の工程において、粒子を、水などの他の水性成分、1つまたはそれ以上の粘滑剤および緩衝剤(好ましくは硼酸系)と混合する。任意に、電解質、例えば、塩化カルシウム二水化物、塩化マグネシウム六水化物、塩化カリウムおよび塩化ナトリウム、およびKollidon 17 NFを添加してよい。電解質はエマルジョンを形成するのに必要ではないが、それらは眼における電解質バランスを維持することによって眼組織の完全性を保護するのに極めて有用である。同様に、緩衝剤も不可欠ではないが、燐酸基剤緩衝剤系が好ましい電解質と共に沈殿するので、硼酸/硼酸ナトリウム系は本発明の一態様において好ましい。
【0072】
pHは6.8〜8.0、好ましくは約7.3〜7.7に調節される。このpH範囲は、組織維持、および眼の刺激を避けるのに至適である。次に、防腐剤を添加することができる。好ましい態様において、安定化二酸化塩素(SCD)(Purogene(登録商標))物質を、防腐剤として添加する(PUROGENEはBioCide International Inc. Norman, Oklahoma, U.S.A.の商標であり、Allergan, Inc.の商標であるPurite(登録商標)としても入手可能である)。
【0073】
本発明の水中油型エマルジョンは、製造後に、オートクレーブ蒸気滅菌によって滅菌し得、または当分野で既知の任意の方法によって滅菌濾過し得る。滅菌フィルターを使用する滅菌は、エマルジョン液滴(小球または粒子)の粒度および特性が許す場合に使用できる。エマルジョンの液滴粒度分布は、滅菌濾過可能であるためには、完全に、滅菌濾過膜の粒度カットオフ(particle size cutoff)未満である必要はない。エマルジョンの液滴の粒度分布が、滅菌濾過膜の粒度カットオフより大きい場合、エマルジョンは、濾過膜を通過する際に変形し得るかまたは許容できる程度に変化し、次に、通過後に再形成し得る必要がある。この特性は、エマルジョン液滴粒度分布、ならびに濾過前および濾過後の組成物における全油のパーセントについての日常試験によって、容易に決定される。または、少量のより大きい粒度の液滴物質の損失を許容し得る。
【0074】
本発明のエマルジョンは、一般に、滅菌濾過の前に浄化フィルターによって非無菌的に濾過されるか、またはオートクレーブ蒸気滅菌の後に無菌的に浄化濾過される。好ましい態様において、0.22ミクロンのフィルターを使用して、エマルジョンを濾過滅菌する。好ましくは、98〜99%のエマルジョンが0.22ミクロンのフィルターを通過すべきである。0.22ミクロンより大きい粒子が、それらの形を一時的に変えることによって通過し得ることに留意すべきである。好ましい態様において、次に、その物質を滅菌工程の有効性を確認するために試験する。保存は、安定性を維持するために25℃未満で行うのが好ましい。次に、エマルジョンを適切な容器に無菌的に入れる。
【0075】
本発明は、眼科用組成物、例えば、本明細書の他の部分に記載されている本発明の眼科用組成物の使用法を提供する。一態様において、本発明の方法は、眼に少なくとも1つの利益を与えるのに有効な量および条件で、本発明組成物を、患者、例えばヒトまたは動物の眼に投与することを含んで成る。この態様において、本発明組成物は、症状、例えば、ドライアイおよび/または1つまたはそれ以上の他の眼の症状を治療するのに有用な組成物の少なくとも一部、例えば治療成分などとして使用することができる。
【0076】
極めて有用な態様において、本発明の方法は、コンタクトレンズおよび/またはコンタクトレンズ着用者に、少なくとも1つの利益を与えるのに有効な量および条件で、本発明組成物に、コンタクトレンズを接触させることを含んで成る。この態様において、本発明組成物は、コンタクトレンズケア組成物の少なくとも一部として使用される。
【0077】
本発明組成物は、患者、即ちヒトまたは動物の眼に、組成物を、患者に所望の治療効果を与えるのに有効な量で投与することを含んで成る方法に使用し得る。そのような治療効果は、眼科的治療効果、および/または患者の体の1つまたはそれ以上の他の部分または全身的な患者の体への治療効果であってよい。好ましい態様において、治療効果は、ドライアイの症状の治療および/または緩和である。
【0078】
本発明に使用される水性相または水性成分ならびに油相および油成分は、本発明組成物中で有効であるように選択され、かつ、例えば、組成物、組成物の使用、処理されたコンタクトレンズ、処理されたコンタクトトレンズの着用者、または眼に本発明組成物が入れられたヒトまたは動物において、実質的なまたは重大な有害作用を有さないように選択される。
【0079】
本発明組成物の液体水性媒体または成分は、媒体または水性成分のpHを所望の範囲に維持するのに有効な量で存在する緩衝剤成分を含有するのが好ましい。本発明組成物は、所望の張度を有する組成物を提供するために、有効量の張度調節成分を含有するのが好ましい。
【0080】
本発明組成物中の水性相または水性成分は、意図する使用に適合し、かつ約4〜約10の範囲である場合が多いpHを有し得る。種々の一般的緩衝剤、例えば、燐酸塩、硼酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、ヒスチジン、トリス、ビス-トリスなど、およびそれらの混合物を使用し得る。硼酸緩衝液は、硼酸およびその塩、例えば、硼酸ナトリウムまたはカリウムを包含する。溶液中に硼酸または硼酸塩を生成するテトラ硼酸カリウムまたはメタ硼酸カリウムも使用し得る。水和塩、例えば硼酸ナトリウム十水和物も使用し得る。燐酸緩衝液は、燐酸およびその塩、例えばM2HPO4およびMH2PO4(ここでMはアルカリ金属、例えばナトリウムおよびカリウムである。)を包含する。水和塩も使用し得る。本発明の一態様において、Na2HPO4.7H2OおよびNaH2PO4.H2Oを緩衝剤として使用する。用語燐酸塩は、溶液中に燐酸または燐酸塩を生成する化合物も包含する。さらに、前記緩衝液の有機対イオンも使用し得る。緩衝剤の濃度は、一般に約0.01〜2.5w/v%、より好ましくは約0.05〜約0.5w/v%で変動する。
【0081】
配合物が、組成物の機能的性能基準、例えば、界面活性剤および貯蔵寿命安定性、抗微生物有効性、緩衝能力などの要素を満たすように、緩衝剤の種類および量を選択する。さらに、組成物が使用を意図する眼および任意のコンタクトレンズに適合するpHを与えるように、緩衝剤を選択する。一般に、ヒトの涙に近いpH、例えば約7.45のpHが極めて有用であるが、約6〜約9、より好ましくは約6.5〜約8.5、さらに好ましくは約6.8〜約8.0のより広いpH範囲も許容される。一態様において、本発明組成物は約7.0のpHを有する。
【0082】
本発明組成物の浸透圧は、等張化剤を使用して、組成物の意図する使用に適合する数値に調節し得る。例えば、組成物の浸透圧を、正常な涙液の浸透圧(水中の約0.9w/v%の塩化ナトリウムに相当する)に近くなるように調節し得る。好適な等張化剤の例は、限定されないが、塩化ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウム;デキストロース;グリセリン;プロピレングリコール;マンニトール;ソルビトールなど、およびそれらの混合物である。一態様において、塩化ナトリウムと塩化カリウムとの組合せを使用して、組成物の張度を調節する。
【0083】
等張化剤は、典型的には、約0.001〜2.5w/v%の量で使用される。これらの量は、眼組織の完全性を維持するのに充分な張度を与えるのに有効であることが見出された。等張化剤は、好ましくは、最終浸透価150〜450mOsm/kg、より好ましくは約250〜約330mOsm/kg、最も好ましくは約270〜約310mOsm/kgを与える量で使用される。本発明組成物の水性成分は、より好ましくは、実質的に等張性または低張性(例えば、わずかに低張性、例えば、約240mOsm/kg)であり、かつ/または眼科的に許容される。一態様において、組成物は、約0.14w/v%の塩化カリウム、およびそれぞれ0.006w/v%の塩化カルシウムおよび/または塩化マグネシウムを含有する。
【0084】
等張化剤および緩衝剤成分に加えて、本発明組成物は、例えば本明細書の他の部分に記載されているような、1つまたはそれ以上の他の物質を、所望の目的、例えば、コンタクトレンズおよび/または眼組織の処置、例えば、そのような組成物と接触したコンタクトレンズおよび/または眼組織に1つまたは複数の有利な特性を付与するのに有効な量で含有し得る。
【0085】
一態様において、組成物は、ドライアイの治療用の水溶性ポリマーに加えて第二治療剤を含有する。本発明の組成物は、例えば、少なくとも1つの付加的な治療剤を、眼にまたは眼を通して送達するための担体または賦形剤として有用である。任意の好適な治療成分を本発明の組成物に含有してよく、但し、そのような治療成分が、組成物の他の物質に適合性であり、組成物の他の物質の機能および特性を過度に妨げず、かつ、例えば、本発明組成物中において送達されるときに所望の治療効果を与えるのに有効であり、かつ、眼にまたは眼を通して投与されるときに有効であるものとする。例えば、極めて有用な態様において、疎水性の治療成分または薬剤を、眼にまたは眼を通して送達することができる。本発明はいかなる特定の理論および作用機構にも限定されないが、油状成分、および界面活性剤の疎水性成分が、疎水性治療成分を本発明組成物中で溶解性、安定性かつ有効性に維持するのを促進すると考えられる。
【0086】
本発明のこの態様によれば、好ましくは、有効量の所望の第二治療剤または成分を本発明組成物の他の成分と物理的に合わすかまたは混合して、本発明の範囲内の治療成分含有組成物を形成することが好ましい。
【0087】
眼へのまたは眼を通しての治療剤の送達用の組成物が好ましい態様である場合、本明細書に開示する自己乳化組成物を、下記を包含するがそれらに限定されない他の方法による治療剤の送達に使用することができる:経口、直腸、膣、非経口、筋肉内、腹腔内、動脈内、脊髄内、気管支内、皮下、皮内、静脈内、鼻腔、口腔および舌下。
【0088】
使用される1つまたは複数の治療剤の種類は、所望される治療効果、例えば、治療される疾患または障害または症状に主として依存する。これらの治療剤または成分は、局所的にまたはそれ以外の方法で、眼にまたは眼を通して、現在または将来的に送達される種々の薬剤または物質を包含する。ドライアイの治療に関連して使用し得る有用な付加的な治療成分の例は、下記の物質を包含するが、それらに限定されない:
(1) 下記の物質を包含する抗感染性物質および抗微生物性物質:キノロン、例えば、オフロキサシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、ガチフロキサシンなど;β-ラクタム抗生物質、例えば、セフォキシチン、n−ホルムアミドイル−チエナマイシン、他のチエナマイシン誘導体、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、カルベニシリン、コリスチン、ペニシリンG、ポリミキシンB、バンコマイシン、セファゾリン、セファロリジン、チブロリファマイシン、グラミシジン、バシトラシンスルホンアミドなど;アミノグリコシド抗生物質、例えば、ゲンタマイシン、カナマイシン、アミカシン、シソマイシン、トブラマイシンなど;ナリジクス酸およびその類似体など;抗微生物剤の組合せ、例えばフルエアラニン/ペンチジドンなど;ニトロフラゾン;など、およびそれらの混合物;
(2) 抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、抗高血圧薬およびうっ血除去薬、例えば、ピリラミン、クロルフェニラミン、塩酸フェニレフリン、塩酸テトラヒドラゾリン、塩酸ナファゾリン、オキシメタゾリン、アンタゾリンなど、およびそれらの混合物;
(3) 抗炎症薬、例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、燐酸ナトリウムデキサメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、メドリゾン、フルオロメトロン、フルオコルトロン、プレドニゾロン、燐酸ナトリウムプレドニゾロン、トリアムシノロン、スリンダク、それらの塩および対応するスルフィドなど、およびそれらの混合物;
(4) 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)成分、例えば、カルボキシル(-COOH)基または成分、またはカルボキシル誘導基または成分を含有するかまたは含有しない該抗炎症剤成分;COX-1およびCOX-2と称される2つのアイソフォームを有するシクロ-オキシゲナーゼ酵素を、選択的にまたは非選択的に阻害するNSAID成分;フェニルアルカン酸、例えば、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ケトロラク、ピロキシカム、スプロフェンなど;インドール、例えば、インドメタシンなど;ジアリールピラゾール、例えば、セレコキシブなど;ピロロピロール;および、プロスタグランジン合成を阻害する他の薬剤など、およびそれらの混合物;
(5) 縮瞳薬および抗コリン薬、例えば、エコチオフェート、ピロカルピン、サリチル酸フィゾスチグミン、ジイソプロピルフルオロホスフェート、エピネフリン、ジピボリルエピネフリン、ネオスチグミン、沃化エコチオフェート、臭化デメカリウム、カルバコール、メタコリン、ベタネコールなど、およびそれらの混合物;
(6) 散瞳薬、例えば、アトロピン、ホマトロピン、スコポラミン、ヒドロキシアンフェタミン、エフェドリン、コカイン、トロピカミド、フェニレフリン、シクロペントレート、オキシフェノニウム、オイカトロピンなど、およびそれらの混合物;
(7) 抗緑内障薬、例えば、プロスタグランジン、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第6395787号および第6294563号に開示されているプロスタグランジン、アドレナリン作用薬、例えば、キノキサリンおよびキノキサリン誘導体、例えば、(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリン、5−ハライド−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリン、例えば、5−ブロモ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリンおよびブリモニジンおよびその誘導体、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第6294563号に開示されている物質など、チモロール、特に、そのマレイン酸塩およびR−チモロールおよびチモロール誘導体、およびチモロールまたはR−チモロールとピロカルピンとの組合せなど;エピネフリンおよびエピネフリン複合体またはプロドラッグ、例えば、酒石酸水素塩、ボレート、ヒドロクロリドおよびジピベフリン誘導体など;高浸透圧性およびジピベフリン誘導体など;ベタキソロール、高浸透圧剤、例えば、グリセロール、マンニトールおよび尿素など、およびそれらの混合物;
(8) 抗寄生虫性化合物および/または抗原虫性化合物、例えば、イベルメクチン;ピリメタミン、トリスルファピリミジン、クリンダマイシンおよびコルチコステロイド調製物など、およびそれらの混合物;
(9) 抗ウイルス性化合物、例えば、アシクロビル、5−ヨード−2'−デオキシウリジン(IDU)、アデノシンアラビノシド(Ara-A)、トリフルオロチミジン、インターフェロンおよびインターフェロン誘導剤、例えばPoly I:Cなど、およびそれらの混合物;
(10) カルボニックアンヒドラーゼ阻害薬、例えば、アセタゾラミド、ジクロルフェナミド、2−(p−ヒドロキシフェニル)チオ−5−チオフェンスルホンアミド、6−ヒドロキシ-2-ベンゾチアゾール-スルホンアミド、6−ピバロイルオキシ−2−ベンゾチアゾールスルホンアミドなど、およびそれらの混合物;
(11) 抗真菌剤、例えば、アンホテリシンB、ナイスタチン、フルシトシン、ナタマイシン、ミコナゾールなど、およびそれらの混合物;
(12) 鎮痛薬および麻酔薬、例えば、エチドカイン、コカイン、ベノキシネート、塩酸ジブカイン、塩酸ジクロニン、ナエパイン(naepaine)、塩酸フェナカイン、ピペロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸テトラカイン、ヘキシルカイン、ブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカインなど、およびそれらの混合物;
(13) 眼科用診断薬、例えば
(a) 網膜の検査に使用される診断薬、例えば、コリド−ソジウム(choride-sodium)フルオレセインなど、およびそれらの混合物;
(b) 結膜、角膜および涙器(lacrimal structures)の検査に使用される診断薬、例えば、フルオレセインおよびローズベンガルなど、およびそれらの混合物;ならびに
(c) 異常瞳孔反応の検査に使用される診断薬、例えば、メタコリン、コカイン、アドレナリン、アトロピン、ヒドロキシアンフェタミン、ピロカルピンなど、およびそれらの混合物;
(14) 手術における補助剤として使用される眼科用薬剤、例えば、α−キモトリプシンおよびヒアルロニダーゼなど;粘弾性剤、例えばヒアルロネートなど、およびそれらの混合物;
(15) キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、デフェロキサミンなど、およびそれらの混合物;
(16) 免疫抑制薬および代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサート、シクロホスファミド、6−メルカプトプリン、シクロスポリンA〜I、アザチオプリンなど、およびそれらの混合物;
(17) アンジオスタティック(angiostatic)薬;
(18) 粘液分泌促進薬;
(19) タンパク質および成長因子、例えば上皮成長因子;
(20) ビタミンおよびビタミン誘導体、例えば、ビタミンA、B12、C、D、E、葉酸およびそれらの誘導体;
(21) 前記物質の組合せ、例えば、硫酸ネオマイシン−燐酸ナトリウムデキサメタゾン、キノロン−NSAIDなどにおけるような抗生物質/抗炎症薬の組合せ;および、併用抗緑内障療法、例えば、マレイン酸チモロール−アセクリジンなど。
【0089】
第二治療成分が本発明組成物に存在する場合、組成物中のそのような治療成分の量は、好ましくは、組成物を投与されるヒトまたは動物に所望の治療効果を与えるのに有効な量である。
【0090】
第二治療成分が存在する場合、本発明の水中油型エマルジョンを含んで成る組成物は、重量対重量に基づき、少なくとも約0.001%、例えば約0.01%〜約5%(w/v)の治療成分、例えば薬剤または医薬を、典型的に含有し得る。即ち、例えば、約25mgの組成物を含有する1滴の液体組成物から、約0.0025mg〜約1.25mgの治療成分が得られる。
【0091】
本発明の医薬組成物に使用される特定の治療成分、例えば薬剤または医薬は、患者が有しているかまたは患者をそれから保護すべきである症状または患者が苦しんでいる症状の治療、例えば薬理学的治療に関して、患者が必要とするかまたは利益を得る種類の治療成分である。例えば、患者が緑内障に罹患している場合、選択される薬剤は、チモロールおよび/または1つもしくはそれ以上の他の抗緑内障成分であってよい。
【0092】
所望の治療成分の有効送達を確実にするために、本発明組成物に添加される治療成分、例えば薬剤の正確な量を決めることは当業者の知識の範囲である。
【0093】
他の態様において、本発明組成物は、コンタクトレンズのケア用のための、多目的ケア組成物、硬質気体透過性浸漬液および状態調節溶液、例えば眼内洗浄剤における、再湿潤組成物および洗浄組成物として有用である。
【0094】
本発明組成物を使用して、あらゆる種類のコンタクトレンズをケアし得る。例えば、コンタクトレンズは、軟質、硬質および軟質または可撓性酸素透過性の、シリコーンヒドロゲル、シリコン非ヒドロゲル、および一般的なハードコンタクトレンズであってよい。
【0095】
本明細書において使用される多目的組成物は、コンタクトレンズが眼の外にあるとき、少なくとも2つの機能、例えば、洗浄、濯ぎ、消毒、再湿潤、潤滑、状態調節、浸漬、保存およびその他のコンタクトレンズ処理の機能を果たすのに有用である。そのような多目的組成物は、コンタクトレンズが眼の中にあるとき、コンタクトレンズを再湿潤し、洗浄するのにも有用であることが好ましい。コンタクトレンズが眼の中にあるとき、コンタクトレンズを再湿潤し、洗浄するのに有用な製剤は、再湿潤剤または「眼内」洗浄剤と呼ばれることが多い。本明細書において使用する場合、用語「洗浄」は、指での処置(digital manipulation)を行うか行わずに、かつ、組成物を攪拌する補助装置を使用するか使用せずに、コンタクトレンズから付着物および他の汚染物を放しかつ/または除去することを包含する。本明細書において使用するとき、用語「再湿潤」は、コンタクトレンズの少なくとも前面の、少なくとも一部、例えば少なくとも要部に水を添加することを意味する。
【0096】
本発明組成物は、多目的コンタクトレンズケア組成物として極めて有効であるが、好適な化学組成を有する本発明組成物を配合して、単一コンタクトレンズ処理を与えることができる。そのような単一処理コンタクトレンズケア組成物は、多目的コンタクトレンズケア組成物と同様に、本発明の範囲に含まれる。
【0097】
本明細書に開示されている組成物を使用してコンタクトレンズを処理する方法は、本発明の範囲に含まれる。一般に、そのような方法は、コンタクトレンズに所望の処理を行うのに有効な条件において、コンタクトレンズをそのような組成物に接触させることを含んで成る。
【0098】
コンタクトレンズは、液体水性媒体の形態であることが多い組成物にコンタクトレンズを浸すことによって、組成物と接触させることができる。接触の少なくとも一部において、例えば、組成物およびコンタクトレンズを含有する容器を振ることによって、コンタクトレンズ含有組成物を攪拌して、コンタクトレンズ処理、例えばコンタクトレンズからの付着物の除去を、少なくとも促進することができる。コンタクトレンズ洗浄におけるそのような接触工程の前または後に、コンタクトレンズを手でこすって、コンタクトレンズから付着物をさらに除去し得る。洗浄法は、接触工程の前または後にレンズを濯ぎ、かつ/または、レンズを着用者の眼に戻す前に、レンズから組成物を実質的に濯ぎ落とすことも任意に含んで成ってよい。
【0099】
さらに、人工涙を適用するかまたは投与し、眼を洗浄し、かつ、例えば、外科的処置の前、その間および/またはその後に、眼組織を潅注する方法も、本発明の範囲に含まれる。本明細書の他の部分に開示されている本発明組成物は、人工涙、洗眼剤および潅注組成物として有用であり、該組成物は、例えば、天然涙液膜を補充/補足し、異質存在物、例えば、化学的物質または異物または異質存在物への暴露後に、眼を洗浄し、浸し、水洗するかまたは濯ぎ、または外科的処置に付される眼組織を潅注するのに使用することができる。これに関する異質存在物は、限定されないが、花粉、ほこり、ブタクサ、およびアレルギー反応、赤み、かゆみ、焼灼感、刺激などの有害反応を眼に引き起こす他の外来抗原の1つまたはそれ以上を包含する。
【0100】
好適な化学組成を有する本発明組成物は、これらの各用途において、および他の眼内用途において有用である。これらの組成物は、一般的かつ周知の方法で、眼内用途に使用することができる。言い換えれば、組成物は、一般的な組成物が同様の用途において使用されるのと実質的に同様の方法で、眼内用途に使用することができる。本明細書の他の部分に記載されている本発明組成物の1つまたはそれ以上の有益性は、そのような眼内使用の結果として得られる。
【0101】
コンタクトレンズを洗浄するのに有用な洗浄成分を本発明組成物に含有させてよい。洗浄成分が存在する場合、該成分は、コンタクトレンズからの堆積物または付着物の除去を少なくとも促進するのに有効な量、好ましくは除去するのに有効な量で存在すべきである。
【0102】
一態様において、洗浄界面活性剤が使用される。洗浄成分は、コンタクトレンズからの付着物の除去を少なくとも促進するのに有効な量で使用し得る。レンズに付着し得る付着物または堆積物の種類は、タンパク質、脂質、および炭水化物に基づくかまたはムチンに基づく堆積物を包含する。1つまたはそれ以上の種類の堆積物が所与のレンズに存在し得る。
【0103】
使用される洗浄界面活剤性成分は、コンタクトレンズの界面活性剤洗浄に一般に使用される界面活性剤から選択し得る。好ましい界面活性剤は、ノニオン界面活性剤、例えば、PluronicおよびTetronic系列界面活性剤(両方とも、BASF Corp. Performance Chemicals, Mount Olive, NJから入手可能なプロピレンオキシドとエチレンオキシドとのブロックコポリマーである)など、例えば1つまたはそれ以上のビタミン誘導体成分、例えばビタミンE TPGS(D−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)を包含する。
【0104】
一態様において、そのような洗浄界面活性成分を含有する本発明組成物は、約0.01〜1.00w/v%の界面活性剤濃度を有する。しかし、より多いかまたはより少ない量を使用してよい。
【0105】
本発明組成物は、組成物を微生物汚染から保護し、かつ/またはコンタクトレンズを消毒するために、1つまたはそれ以上の抗微生物剤(即ち、防腐剤または消毒剤)をさらに含んでよい。水性液体媒体に存在する消毒剤成分の量は、組成物に接触させたコンタクトレンズを消毒するのに有効である。
【0106】
一態様において、例えば、多目的コンタクトレンズ組成物が所望される場合、消毒剤成分は、下記の物質を包含するが、それらに限定されない:眼科用途に使用される第四級アンモニウム塩、例えば、ポリ[ジメチルイミノ−w−ブテン−1,4−ジイル]クロリド、α−[4−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]−ジクロリド(化学登録番号75345-27-6、Onyx Corporationから商標Polyquaternium 1(登録商標)で入手可能)、ポリ(オキシエチル(ジメチルイミノ)エチレンジメチルイミノ)エチレンジクロリド(商標WSCPで、Memphis, TNのBuckman Laboratories, Inc.によって市販されている)、ハロゲン化ベンザルコニウム、アレキシジンの塩、アレキシジン−遊離塩基、クロルヘキシジンの塩、ヘキセチジン、アルキルアミン、アルキルジ-およびトリ-アミン、トロメタミン(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)、ヘキサメチレンビグアニドおよびそれらのポリマー、塩化セチルピリジニウム、セチルピリジニウム塩、抗微生物性ポリペプチドなど、およびそれらの混合物。特に有用な消毒剤成分は、1つまたはそれ以上(混合物)のポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、Polyquaternium-1、眼科的に許容されるそれらの塩など、およびそれらの混合物から選択される。
【0107】
本発明の態様の水中油型エマルジョンについての消毒剤成分の選択は、HLB(親水-親油平衡)系を使用することによって容易にし得る。油成分のHLB値は、供給者からかまたは文献における編集リストから得ることができる。簡単なアルコールエトキシレート界面活性剤のHLB値は、容易に算出し得る。他のエトキシレートのHLB値は、実験的に求められる。全体的化学構造(例えば、分岐、直鎖、芳香族)も変化し得る。HLB値は加算的であり、従って、2種類の界面活性剤または油が存在する場合、HLBは各成分のHLB値の加重平均である。本発明の好ましい態様において、カチオン性抗微生物成分のHLBは、油成分のHLBより有意に高い。より好ましくは、カチオン性抗微生物剤は、油成分のHLB値より少なくとも2HLB単位高いHLB値を有する。さらに好ましくは、カチオン性抗微生物剤は、油成分のHLB値より少なくとも5HLB単位高いHLB値を有する。
【0108】
アレキシジンおよびクロルヘキシジンの塩は、有機または無機であってよく、一般に、消毒性のグルコン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、燐酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物などである。一般に、ヘキサメチレンビグアニドポリマーは、ポリアミノプロピルビグアニド(PAPB)とも称され、約100,000までの分子量を有する。そのような化合物は、既知であり、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第4758595号に開示されている。
【0109】
本発明に有用な消毒剤成分は、好ましくは約0.00001%〜約2%(w/v)の濃度で、本発明組成物に存在する。
【0110】
より好ましくは、消毒剤成分は、眼科的に許容されるかまたは安全な濃度で本発明組成物に存在し、それによって、使用者は消毒されたレンズを組成物から取り出し、その後、直接レンズを眼に入れて、安全かつ快適に着用することができる。
【0111】
消毒剤成分によってコンタクトレンズを消毒することが所望される場合、レンズを消毒するのに有効な量の消毒剤が使用される。好ましくは、そのような消毒剤の有効量は、コンタクトレンズにおける微生物負荷量を3時間で、1対数オーダーで減少させる。より好ましくは、有効量の消毒剤は、1時間で、1対数オーダーで微生物負荷量を減少させる。
【0112】
消毒剤成分は、本発明組成物に存在することが好ましく、本発明組成物の水性成分に可溶性であることがより好ましい。
【0113】
本発明組成物は、有効量の防腐剤成分を含有し得る。任意の好適な防腐剤、または防腐剤の組合せを使用し得る。好適な防腐剤の例は、限定されないが、下記の物質である:Purogene(登録商標)、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、Polyquaternium-1、眼科的に許容されるそれらの塩など、およびそれら混合物、塩化ベンザルコニウム、メチルおよびエチルパラベン、ヘキセチジンなど、およびそれらの混合物。本発明組成物に含有される防腐剤成分の量は、組成物を保存するのに有効な量であり、使用される特定の防腐剤成分、関係する特定の組成物、関係する特定の用途などの要因に基づいて変化し得る。防腐剤の濃度は、組成物の約0.00001%〜約0.05%または約0.1%(w/v)の範囲である場合が多いが、特定の防腐剤の他の濃度も使用し得る。
【0114】
本発明における防腐剤成分の極めて有用な例は、亜塩素酸塩成分であるが、それに限定されない。本発明における防腐剤として有用な亜塩素酸塩成分の特定の例は、安定化二酸化塩素(SCD)、亜塩素酸金属塩など、およびそれらの混合物である。工業グレード(またはUSPグレード)亜塩素酸ナトリウムが極めて有用な防腐剤成分である。多くの亜塩素酸塩成分、例えばSCDの、正確な化学組成は完全には理解されていない。特定の亜塩素酸塩成分の製造または生成が、McNicholasの米国特許第3278447号に開示されており、該特許は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。有用なSCD製剤の特定の例は、下記の製剤である:商標Dura Klorで販売されている、Rio Linda Chemical Company, Inc.による製剤;商標Anthium Dioxide(登録商標)で販売されている、International Dioxide, Inc. North Kingstown, RIによる製剤;商標Carnebon 200(登録商標)で販売されているInternational Dioxide, Inc.による製剤;OcuPure(登録商標)のAdvanced Medical Optics, Inc., Santa Ana, CAによる製剤;およびPurogene(登録商標)のBioCide International, Norman, OKによる製剤(Allergan, Inc.から入手可能なPurite(登録商標)としても既知)。
【0115】
他の有用な防腐剤は、抗微生物性ペプチドを包含する。使用し得る抗微生物性ペプチドは、限定されないが、下記の物質を包含する:デフェンシン、デフェンシンに関連したペプチド、セクロピン、セクロピンに関連したペプチド、マガイニン、マガイニンに関連したペプチド、ならびに抗微生物活性、抗真菌活性および/または抗ウイルス活性を有する他のアミノ酸ポリマーを包含する。抗微生物性ペプチドの混合物、または抗微生物性ペプチドと他の防腐剤との混合物も本発明に含まれる。
【0116】
本発明組成物は、下記のような粘度調整剤または成分を含有し得る:セルロースポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース;カルボマー(例えば、carbopol. RTM);ポリビニルアルコール;ポリボニルピロリドン;アルギネート;カラゲナン;および、グアール、カラヤ、アガロース、ローカストビーン、トラガカントおよびキサンタンガム。そのような粘度調整成分が使用される場合、本発明組成物に所望の粘度を与えるのに有効な量で使用される。そのような粘度調整剤の濃度は、典型的に、全組成物の約0.01〜約5%w/vで一般に変動するが、特定の粘度調整成分の他の濃度も使用し得る。
【0117】
ある場合において、金属イオンを封鎖するために、かつそうするのに有効な量で、金属イオン封鎖剤または成分を本発明組成物に含有させることが望ましく、該金属イオンは、例えば、そうしなければ微生物の細胞膜を安定化させ、それによって最適消毒活性を妨げ得る。または、ある場合において、金属イオンを封鎖して、それらと組成物中の他の種との相互作用を防止することが望ましい。金属イオン封鎖剤を含有させる場合、それは、存在する金属イオンの少なくとも一部、例えば、少なくとも大部分を封鎖するのに有効な量で含有される。そのような金属イオン封鎖成分は、約0.01〜約0.2w/v%の量で通常存在する。有用な金属イオン封鎖成分の例は、限定されないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびそのカリウムまたはナトリウム塩、および低分子量有機酸、例えばクエン酸および酒石酸およびそれらの塩、例えばナトリウム塩である。
【0118】
本発明組成物は、有効量の1つまたはそれ以上の付加的成分を含んで成ってよい。例えば、1つまたはそれ以上の状態調節成分、または1つまたはそれ以上のコンタクトレンズ湿潤剤など、およびそれらの混合物を含有し得る。本発明組成物における、これらおよび他の付加的成分の許容可能濃度または有効濃度は、当業者に明らかである。
【0119】
各成分は、固体または液体状の本発明組成物に存在し得る。1つまたは複数の付加的成分が固体として存在する場合、それらは、粉末または圧縮タブレットにおけるように均質混合することができるか、またはそれらは、カプセル封入ペレットまたはタブレットのように、同じ粒子中であるが、実質的に分離させることができる。1つまたは複数の付加的成分は、使用が所望されるまで、固体状であることができ、後に、例えば、コンタクトレンズの表面に効果的に接触させるために、本発明組成物の水性成分に溶解または分散させることができる。
【0120】
任意成分を含有させる場合、該成分は、典型的な使用および保存条件において、組成物の他の成分と相溶性であることが好ましい。
【0121】
特定の態様において、本明細書に開示されている眼科用組成物の抗微生物活性が、製造後に増加する。製造後処理は、1週間〜数ヶ月間、好ましくは2〜6週間、最も好ましくは製造後少なくとも約1ヶ月間にわたる組成物の保存を包含し得る。微生物活性の増加は、熱、圧力または酸化条件での処理によっても強化し得る。処理の組合せを使用してよい。例えば、組成物を30〜50℃、より好ましくは約40℃の温度で、少なくとも約2週間、最も好ましくは1ヶ月間保存し得る。
【0122】
本発明の眼科用組成物は下記の意外な特性を有する:
1) 粘滑剤(HA、PVPなど)の濃度が特定レベルに減少すると、水中油型エマルジョンが少なくとも2年間安定化する。相分離は、粘滑剤濃度に依存して起こる。不安定性およびクリーミングは、数日以内で生じ得る。
2) ヒアルロン酸濃度が高く、エマルジョン濃度が低い場合、HA/エマルジョン溶液は不安定である。HA濃度が減少し、エマルジョン濃度が増加すると共に、HA/エマルジョン溶液は安定化する。言い換えれば、特定のHA/エマルジョン比において、溶液は、不安定から安定に変化する。
3) 特定の高分子第四級アミン、例えばPHMBおよびWSCPが、HA含有エマルジョン配合物との組合せにおいて、抗微生物的に不活性化されないことが意外にも見出された。
4) そのようなHA/エマルジョン組合せが、潤滑を与えることによって、かつ涙の蒸発を遅らせることによって、コンタクトレンズ着用乾燥をよりよく緩和し得ることも見出された。
【0123】
本発明の趣旨を逸脱せずに、多くの種々の変更を加えることが当業者に理解される。従って、以下の実施例は、例示するものにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しないことを明確に理解すべきである。
【0124】
実施例
実施例1
眼科用液の製造法
自己乳化組成物の詳しい製造法は、2004年3月17日出願の米国特許出願第10/802153号に見出され、該出願は参照により本明細書に組み入れられる。以下の実施例は、一成分界面活性剤系を記載する。この実施例において、PEG-40水素化ヒマシ油、水素化ヒマシ油の40モルエトキシル化誘導体を例示する。図1および表1を参照する。図1は、該方法のフローチャートを示す。表1は、この実施例に関する種々の成分の量を示す。
【0125】
PEG-40水素化ヒマシ油(Lumulse GRH-40、Lambent Technologies Corp., Skokie, IL)およびヒマシ油を加熱した。温度は、全ての成分が液状であるのに充分に高くすべきだが、成分の安定性を損なうほど高くすべきでない。本実施例において、60±2℃の温度を使用した。
【0126】
合計水量のうちの少量(1%)を60±2℃で添加して、透明白色ペーストを形成した。混合物が均質になるまでペーストを混合した。ペーストが形成された後、50〜62℃でペーストに水をさらに添加した。本実施例において、合計水量の7%を添加し、混合物が均質になるまで200〜1000rpmで混合を1時間続けた。この段階で、エマルジョン濃縮物が形成された。
【0127】
次に、Horiba LA-920粒度分析器を製造者使用説明書に従って使用して、粒子(液滴)を分粒した。粒度が0.08〜0.18ミクロンの粒子を、次に工程に進めた。
【0128】
エマルジョン濃縮物を、残りの水、緩衝剤、電解質(塩化カルシウム二水和物、塩化マグネシウム六水和物、塩化カリウムおよび塩化ナトリウム)およびKollidon 17NK(ポリビニルピロリドンまたはポビドン)(BASF Corporation, Parsippany New Jersey)の別々に調製した溶液(表1参照)と約30分間混合した。電解質はエマルジョンの形成に必要ではないが、それらは、眼における電解質平衡を維持することによって眼組織の完全性を保護するのに極めて有用である。同様に、緩衝剤もエマルジョンの形成に不可欠ではないが、適合性の眼のpHを適切に維持するのに必要である。燐酸塩に基づく緩衝剤系は電解質と共に沈殿するので、硼酸/硼酸ナトリウム緩衝剤系が好ましい。ドライアイ治療用の粘滑剤などの水溶性ポリマーをこの段階で添加して、本発明の他の態様を形成し得る。
【0129】
10N NaOHを用いてpHを7.35〜7.55に調節した。このpH範囲は、組織維持、および眼の刺激を避けるのに至適であり、かつ、防腐剤として添加されたPurogene(登録商標)の安定化のための至適pH範囲である。亜塩素酸ナトリウムを表1に示す計算に従って添加した。次に、pHを検査し、10N NaOHを用いてpH7.5±0.2に調節した。酸pH調節の間に形成される酸の高局所溶液濃度は、Purogene(登録商標)の分解を生じるので、pHは、Purogene(登録商標)の添加後に10N NaOHなどの塩基を用いてのみ調節し得ることに留意されたい。
【0130】
次の工程において、滅菌濾過されるまで、エマルジョンを25℃未満において暗所でカバーをして保存した。最長保存時間は72時間である。
【0131】
次に、0.22ミクロンのフィルターを用いて組成物を濾過滅菌した。98〜99%のエマルジョンが0.22ミクロンのフィルターを通過した。0.22ミクロンより大きい粒子は、それらの形を一時的に変えることによって通過し得ることに留意されたい。次に、滅菌工程の有効性を確認するために、その物質を試験した。次に、その物質をビンに入れて保存した。この実施例のプレフィル公表仕様(pre-fill release specifications)は、pH7.3〜7.7、平均粒度0.09〜0.17ミクロン、および乳白色溶液の外見であった。ポストフィル公表仕様(post-fill release specifications)は、pH7.3〜7.7、潜在二酸化塩素60〜70ppm、ヒマシ油1.1〜1.4%(w/w)、Kollidon 17 NF 0.2〜0.4%(w/w)、容量オスモル濃度250〜280mOsm/kg、および滅菌USPであった。
【表1】

【0132】
実施例2
HA含有エマルジョンの特性決定
実験データは、特定濃度のヒアルロン酸がエマルジョンを不安定化し、それによってクリーミングを引き起こし得ることを示している。実施例2および3は、エマルジョン配合物およびヒアルロン酸ナトリウムを含有する安定なおよび不安定な組合せを例示している(「不安定」という表示は、クリーミングが観察されたことを示す)。以下の実施例における配合物は、基本的に実施例1に記載のように調製した。
【表2】

【0133】
前記の表2は、HA濃度が0.2w/w%またはそれ以下である場合に、安定な水中油型エマルジョンが得られたことを示す。
【0134】
実施例3
HA濃度が低い場合の、安定エマルジョン系形成のためのHAの組み込み
【表3】

【0135】
表3は、HA濃度が0.2w/w%またはそれ以下である場合、さらにエマルジョン濃度を実施例2(表2)の濃度の1/4に減少させた場合に、安定な水中油型エマルジョンが得られたことを示す。
【0136】
実施例4
実施例4は、HA濃度を0.2%w/wで一定に維持したが、エマルジョン濃度を1/8倍の濃度にさらに減少させた場合に、エマルジョン/HA組成物が不安定になったことを示す。
【表4】

【0137】
前記の実施例は、HA濃度が高すぎるか、またはエマルジョン濃度が充分でない場合、HA/エマルジョン組合せが不安定であることを示している。しかし、少なくとも0.2%w/wのHA濃度、および1/4倍かまたはそれより高いエマルジョン濃度において、安定なHA/エマルジョン組成物が得られる。これらの実施例はHAについて示されているが、他の水溶性ポリマー粘滑剤についての安定配合も同様に決定し得る。
【0138】
実施例5
第四級に基づく(quaternary-based)抗微生物活性における界面活性剤の作用
FDA/ISO指定試験微生物を以下に示す:
Serratia marcescens, ATCC 13880
Staphylococcus aureus, ATCC 6538
Pseudomonas aeruginosa, ATCC 9027
Candida albicans, ATCC 10231
Fusarium solani, ATCC 36031
(FDA Premarket Notification(510k) Guidance Document for Contact Lens Care Products, Appendix B, 1997年4月1日およびISO/FDIS 14729:Ophthalmic optics-Contact lens care products- Microbiological requirements and test methods for products and regimens for hygienic management of contact lenses, January 2001)。コンタクトレンズ消毒剤は、コンタクトレンズの濯ぎ、洗浄、消毒、保存および再湿潤に使用される場合、コンタクトレンズ多目的液としても既知である。
【0139】
FDAおよびISOガイドラインは、下記の表5に示されている2つの消毒有効性基準を指定している。消毒剤は、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、Serratia marcescens、Candida albicansおよびFusarium solaniで直接的に攻撃される。合格の一次基準は、最低限99.9%(3.0 log)の減少が、最短推奨浸漬期間内での3つの各細菌種について必要とされることを規定している。カビおよび酵母は、最短推奨浸漬期間の4倍以上において増加せずに(静止状態(stasis))、最短推奨浸漬時間内での最低限90.0%(1.0 log)の減少を、実験誤差±0.5 log以内で満たすべきである。一次基準が満たされた場合、組成物は消毒剤として分類し得る。
【0140】
一次基準が満たされない場合、二次基準は、推奨浸漬時間内で3種の細菌について、平均値の合計が最低限5.0 log単位減少であるべきであり、任意の単一細菌について最低平均値1.0 log単位減少を有すべきことを規定している。イーストおよびカビの静止状態は、推奨浸漬期間にわたって、実験誤差±0.5 log以内で観測される。組成物は、二次基準に合格する場合に、消毒剤レジメント(disinfectant regiment)の一部として分類し得る。
【表5】

【0141】
第四級に基づく抗微生物剤によって付与される抗微生物活性は、多量のアルキル鎖含有界面活性剤、例えばPOE(40)水素化ヒマシ油の存在下で、失われることが多い。実際に、Tween 80は、抗微生物活性試験において、第四級アンモニウム中和剤として慣例的に使用されている。界面活性剤はミセルを形成し、該ミセルは抗微生物剤を強く吸着し、それによって活性を減少させる。下記の表6は、エマルジョン中のアルキル基も第四級アンモニウム分子を吸着することができ、それによって、抗微生物活性を不活性化することを示している。
【表6】

【0142】
表6から分かるように、界面活性剤Lumulse GRH-40の存在下の対数低下(log drop)は、界面活性剤の不在下よりかなり低い。抗微生物活性の損失は、眼科用組成物にとって課題である。この課題は、消毒剤のHLB値が注意深く選択される本発明の眼科用組成物によって解決される。これらの眼科用組成物は、以下に示す界面活性剤の存在下でさえ抗微生物活性を維持する。
【0143】
実施例6
エマルジョン配合物への第四級アンモニウム抗微生物剤の組み込み
表7の配合物を、実施例1に記載のように調製した。抗微生物試験を、表8に示す。
【表7】

【0144】
【表8】

【0145】
驚くべきことに、抗微生物活性が、HA含有エマルジョンの熟成と共に、7日目まで増加し、一次消毒剤の基準を満たす。さらに、以下(表9)に規定される防腐剤有効性試験の基準も満たす。
【表9】

【0146】
実施例7
HA/エマルジョン系におけるPHMB
この実施例は、PHMBを消毒剤として使用したHA/エマルジョン系を示す。基本的に実施例1に記載のように、組成物を表10の配合で調製した。表11の結果から分かるように、少なくとも二次レジメン依存性基準(secondary regimen-dependent criteria)が、この配合によって満たされる。
【表10】

【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性相に分散した平均粒度1ミクロン未満の油滴を含んで成る自己乳化組成物であって、該油滴が、
(a) 界面活性剤成分;
(b) 極性油成分;および
(c) 水溶性ポリマーを含んで成る第一治療成分;
を含んで成り、該界面活性剤成分および該油成分が、機械的に均質化せずに混合した場合に自己乳化するように選択される自己乳化組成物。
【請求項2】
界面活性剤成分が、1つまたは2つの界面活性剤から本質的に成る、請求項1に記載の自己乳化組成物。
【請求項3】
水溶性ポリマーが、ヒアルロン酸およびその塩、ポリビニルピロリドン(PVP)、セルロースポリマー、デキストラン70、ゼラチン、ポリエチレングリコールおよびポリビニルアルコールから成る群から選択される、請求項1に記載の自己乳化組成物。
【請求項4】
セルロースポリマーが、カルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項3に記載の自己乳化組成物。
【請求項5】
ポリエチレングリコールが、PEG 300またはPEG 400である、請求項3に記載の自己乳化組成物。
【請求項6】
油成分が、ヒマシ油または天然油を含んで成る、請求項1に記載の自己乳化組成物。
【請求項7】
亜塩素酸塩防腐剤成分をさらに含んで成る、請求項1に記載の自己乳化組成物。
【請求項8】
亜塩素酸塩防腐剤成分が、安定化二酸化塩素(SCD)、亜塩素酸金属塩およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項7に記載の自己乳化組成物。
【請求項9】
ポリ[ジメチルイミノ−w−ブテン−1,4−ジイル]クロリド、α−[4−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]−ジクロリド(Polyquaternium 1(登録商標))、ポリ(オキシエチル(ジメチルイミノ)エチレンジメチルイミノ)エチレンジクロリド(WSCP(登録商標))、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、ポリアミノプロピルビグアニド(PAPB)、ハロゲン化ベンザルコニウム、アレキシジンの塩、アレキシジン-遊離塩基、クロルヘキシジンの塩、ヘキセチジン、アルキルアミン、アルキルジ−およびトリ−アミン、トロメタミン(2-アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)、オクテニジン(N,N'−(1,10−デカンジイルジ−1−(4H)−ピリジニル−4−イリデンビス−[1−オクタナミン]ジヒドロクロリド、ヘキサメチレンビグアニドおよびそれらのポリマー、塩化セチルピリジニウム、セチルピリジニウム塩、抗微生物性ポリペプチドおよびそれらの混合物から成る群から選択されるカチオン性抗微生物剤をさらに含んで成る、請求項1に記載の自己乳化組成物。
【請求項10】
界面活性剤成分が、油滴の内側に向けられた界面活性剤成分の疎水性部分の第二部分より大きい、水性相に近位に向けられた第一部分を有する疎水性部分を有する、請求項1に記載の自己乳化組成物。
【請求項11】
界面活性剤成分が、界面活性剤の疎水性部分の第二部分より多くの原子を含有する界面活性剤の疎水性部分の第一部分を有する1つの界面活性剤から本質的に成る、請求項10に記載の自己乳化組成物。
【請求項12】
界面活性剤成分が、2つの界面活性剤から本質的に成り、該界面活性剤のうちの第一界面活性剤が第一疎水性部分を有し、該界面活性剤のうちの第二界面活性剤が第二疎水性部分を有し、該第一疎水性部分が該第二疎水性部分より長い鎖長を有する、請求項10に記載の自己乳化組成物。
【請求項13】
自己乳化を妨げない付加的な界面活性剤をさらに含んで成る、請求項1に記載の自己乳化組成物。
【請求項14】
界面活性剤成分が、(a)少なくとも約1〜100個のエチレンオキシド単位、および少なくとも約12〜22個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪アルコール鎖から形成された少なくとも1つのエーテルを有する化合物;(b)少なくとも約1〜100個のエチレンオキシド単位、および少なくとも約12〜22個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪酸鎖から形成された少なくとも1つのエステルを有する化合物;(c)少なくとも約1〜100個のエチレンオキシド単位、および少なくとも1つのビタミンまたはビタミン誘導体から形成された少なくとも1つのエーテル、エステルまたはアミドを有する化合物;および(d)2つ以下の界面活性剤から成るそれらの組合せから成る群から選択される、請求項1に記載の自己乳化組成物。
【請求項15】
界面活性剤成分が、Lumulse GRH-40およびTPGSから成る群から選択される、請求項1に記載の自己乳化組成物。
【請求項16】
油滴が、約0.25ミクロン未満の平均粒度を有する、請求項1に記載の自己乳化組成物。
【請求項17】
油滴が、約0.15ミクロン未満の平均粒度を有する、請求項1に記載の自己乳化組成物。
【請求項18】
極性油成分のHLB値より有意に高いHLB値を有するカチオン性抗微生物成分をさらに含んで成る、請求項1に記載の自己乳化組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の自己乳化組成物、および第二治療成分を含んで成る治療組成物。
【請求項20】
第二治療成分が、シクロスポリン、プロスタグランジン、ブリモニジンおよびブリモニジン塩から成る群から選択される、請求項19に記載の治療組成物。
【請求項21】
請求項14に記載の自己乳化組成物を含んで成り、第二治療成分をさらに含んで成る治療組成物。
【請求項22】
第二治療成分が、シクロスポリン、プロスタグランジン、ブリモニジンおよびブリモニジン塩から成る群から選択される、請求項21に記載の治療組成物。
【請求項23】
コンタクトレンズ用の多目的液である、請求項1に記載の自己乳化組成物。
【請求項24】
請求項1に記載の自己乳化組成物を、それを必要とする個体に投与することを含んで成る眼の治療法。
【請求項25】
治療がドライアイのためである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
個体が哺乳動物である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
自己乳化組成物の製造法であって、
極性油および界面活性剤成分を含んで成る油相を形成する工程であって、油相における極性油および界面活性剤成分が液状である工程;
自己乳化を可能にする温度で水性相を形成する工程であって、該水性相が水溶性ポリマーを含んで成る工程;および
機械的に均質化せずに、油相および水性相を混合してエマルジョンを形成する工程
を含んで成る方法。
【請求項28】
油相と水性相の一部とのペーストを形成し、ペーストおよび水性相の残りを混合してエマルジョンを形成することをさらに含んで成る、請求項27に記載の自己乳化組成物の製造法。
【請求項29】
水溶性ポリマーが、ヒアルロン酸およびその塩、ポリビニルピロリドン(PVP)、セルロースポリマー、デキストラン 70、ゼラチン、ポリエチレングリコールおよびポリビニルアルコールから成る群から選択される、請求項27に記載の自己乳化組成物の製造法。
【請求項30】
セルロースポリマーが、カルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ポリメチレングリコールが、PEG 300またはPEG 400である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
界面活性剤成分が、1つまたは2つの界面活性剤から本質的に成る、請求項27に記載の自己乳化組成物の製造法。

【公表番号】特表2008−534680(P2008−534680A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505282(P2008−505282)
【出願日】平成17年9月23日(2005.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/034055
【国際公開番号】WO2006/107330
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(502049837)アドバンスト メディカル オプティクス, インコーポレーテッド (50)
【Fターム(参考)】