説明

ドライバ回路、及び、インバータ回路

【課題】 ノーマリーオン型のスイッチング素子を用いてハーフブリッジ回路を構成し、ドライバ回路もしくはインバータ回路として使用する場合のアーム短絡を防止し、安全な回路を提供する。
【解決手段】
入出力端子対の一端が高圧側の第1の電源電圧V1に接続する第1のスイッチング素子14と第2のスイッチング素子15とが直列に接続されたハーフブリッジ回路において、第2のスイッチング素子15と低圧側の第2の電源電圧V2の間にノーマリーオフ型の第3のスイッチング素子16を挿入したドライバ回路であり、第3のスイッチング素子16は、制御回路用電源13a,13bにより供給される動作電圧VH又はVLが制御回路11の動作に不十分な場合にオフされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバ回路に関し、特に、閾値電圧が負電圧であるノーマリーオン特性のスイッチング素子を用いてハーフブリッジ回路を構成した場合において、当該ハーフブリッジ回路のアーム短絡を保護する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN−FET(Gallium Nitride-Field Effect Transistor: 窒化ガリウム電界効果トランジスタ)やSiC−JFET(Silicon Carbide-Junction Field Effect Transistor: 炭化珪素接合型電界効果トランジスタ)等に代表される、バンドギャップが2eVを超えるワイドギャップ半導体を使用したデバイスは、シリコンを使用したMOSFETに比べ、高速スイッチング、低オン抵抗など優れた特性を有しているが、多くは閾値電圧が−3V程度であり、ゲート電圧が0Vでもドレイン電流が流れるノーマリーオン特性を有している。
【0003】
一方、GaNやSiCにおいてもノーマリーオフ特性を有するデバイスが開発されているが、閾値電圧が2V程度と低いため、シリコンによるMOSFETをそのまま置き換えることはできない。
【0004】
図5に従来構成のドライバ回路(インバータ回路)30の回路構成図を示す。図5はスイッチング素子14、15として従来のノーマリーオフ型のシリコンMOSFETを使用する場合の例である。ハイサイド側のMOSFET14は、入力制御端子3からの入力信号に基づき制御回路8によりオンオフ制御され、ローサイド側のMOSFET15は、入力制御端子4からの入力信号に基づき制御回路9によりオンオフ制御され、結果、電源12により供給される電圧V1と電圧V2(ここでは、接地電位)の間の電圧を、出力端子23に出力する。制御回路8及び9は、内部電源13により供給される電圧VH、及び、電圧VL(ここでは、接地電位)により動作電圧が供給されている。
【0005】
ところが、上記の構成をノーマリーオン型の素子に対して採用し、図5のノーマリーオフ型のMOSFET14,15をノーマリーオン型の素子で置き換えるとした場合、ノーマリーオン型のデバイスは、ドライバ回路の起動時または制御回路31の内部電源13が遮断された場合等、ゲート端子に制御信号が入力されない場合オン状態となってしまう。この結果、スイッチング素子14、15が同時にオン状態となり、大きな短絡電流が流れる、所謂アーム短絡を起こす危険がある。
【0006】
このような問題に対し、特許文献1には、ゲート駆動回路(ドライバ回路)が、主電源の接地側に接続され主電源と連動して確立する第2の電源を備え、当該第2の電源から供給される負電圧と制御電源から供給されるゲートオン用電圧とを制御信号で切り替えてスイッチング素子のゲートに出力するものが示されている。更に、特許文献1では、主電源が確立した状態で制御電源がシャットダウンした場合には、ローサイド側のスイッチング素子のゲートには第2の電源からのオフ電圧が印加されるように構成することで、アーム短絡は防げるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−242475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の通り、ノーマリーオン型のデバイスは、高圧電源に接続されるインバータ回路のような構成では、起動時や制御回路の電源が遮断された場合など避けられない状況によってアーム短絡を引き起こす可能性があるため、パワーデバイスとしては使用しにくいという問題がある。
【0009】
上記問題の解決策として、特許文献1では、主電源と連動して確立する第2の電源を備えることで、制御電源がシャットダウンした場合でもローサイド側のスイッチング素子をオフ状態に維持できるとしているが、当該第2の電源自体の故障や誤動作が発生するとオフ状態を維持できず、アーム短絡という事態に対処できない。
【0010】
本発明は、上記の状況に鑑み、ノーマリーオン型のスイッチング素子をドライバ回路に採用することによるアーム短絡の危険性を取り除き、特に、ワイドギャップ半導体で構成されるデバイスを採用することによる高速スイッチング、低オン抵抗などの特徴を損なうことなく、安全なドライバ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係るドライバ回路は、入出力端子対の一端が第1の電源電圧に接続する第1のスイッチング素子の前記入出力端子対の他端に、第2のスイッチング素子を直列に接続し、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子の間の中間ノードの電圧を出力するドライバ回路であって、前記第1のスイッチング素子、及び、前記第2のスイッチング素子は、夫々ワイドギャップ半導体で構成され、ノーマリーオン特性を有し、
入出力端子対の一端が前記第2のスイッチング素子の入出力端子対のうち前記第1のスイッチング素子と接続しない一端側と接続し、他端が前記第1の電源電圧より低い第2の電源電圧に接続するノーマリーオフ特性の第3のスイッチング素子と、入力信号に基づき、前記第1のスイッチング素子のオンオフを制御するための第1制御信号を前記第1のスイッチング素子の制御端子に出力する第1の制御回路と、入力信号に基づき、前記第2のスイッチング素子のオンオフを制御するための第2制御信号を前記第2のスイッチング素子の制御端子に出力する第2の制御回路と、前記第3のスイッチング素子のオンオフを制御するための第3制御信号を前記第3のスイッチング素子の制御端子に出力する第3の制御回路と、前記第1の制御回路、及び、前記第2の制御回路の動作に必要な動作電圧を供給する制御回路用電源と、を備え、
前記第3の制御回路は、前記動作電圧を所定値と比較し、その比較結果に基づき、前記動作電圧が制御回路の動作に不十分な場合、前記第3のスイッチング素子をオフ制御することを第1の特徴とする。
【0012】
上記第1の特徴のドライバ回路に依れば、第2のスイッチング素子と第2の電源電圧の間にノーマリーオフ型の第3のスイッチング素子を挿入し、制御回路に供給される動作電圧が不十分の場合、第3のスイッチング素子がオフされる構成である。これにより、ドライバ回路の起動時または制御回路の内部電源13が遮断された場合には、第3のスイッチング素子がオフ状態となっていることにより、アーム短絡が防止される。
【0013】
また、第1のスイッチング素子、又は、第2のスイッチング素子として、ワイドギャップ半導体で構成される素子を用いることにより、低オン抵抗であり、高速スイッチング特性を有するスイッチング素子が実現され、ドライバ回路の高速化、低消費電力化を図ることができる。
【0014】
上記第1の特徴の本発明に係るドライバ回路は、更に、一端が前記第2のスイッチング素子の制御端子と、他端が前記第2の電源電圧と接続する第1の抵抗、及び、一端が前記第3のスイッチング素子の制御端子と、他端が前記第2の電源電圧と接続する第2の抵抗を備えることを第2の特徴とする。
【0015】
上記第2の特徴のドライバ回路に依れば、第1及び第2の抵抗を備えることで、第2及び第3のスイッチング素子の制御端子に制御信号が入力されない場合には、第2の電源電圧が、第1及び第2の抵抗を介して制御端子に供給される。このとき、第3のスイッチング素子がオフであることにより、第2のスイッチング素子と第3のスイッチング素子との接続ノードの電位が上昇してゆくが、第2のスイッチング素子の制御端子には第1の抵抗を介した第2の電源電圧の印加が維持されているため、第2のスイッチング素子の制御端子に印加される電圧は、当該接続ノードの電位に対して負電圧となる。従って、当該接続ノードの電位が、第2の電源電圧に対して第2のスイッチング素子の閾値電圧の絶対値以上上昇すると、第2のスイッチング素子が自動的にオフされる。
【0016】
これにより、第3のスイッチング素子として低耐圧のものが利用可能となり、オン抵抗やサイズの小さなものを使用でき、第3のスイッチング素子を追加したことによる影響を極小化することができる。
【0017】
上記第1又は第2の特徴の本発明に係るドライバ回路は、更に、前記制御回路用電源は、前記第2の電源電圧より高い第3の電源電圧を、前記動作電圧として、前記第1の制御回路、及び、前記第2の制御回路に供給し、前記第3の制御回路は、前記制御回路用電源から供給される前記第3の電源電圧が所定値よりも低い場合、前記第3のスイッチング素子をオフ制御することを第3の特徴とする。
【0018】
上記第3の特徴のドライバ回路に依れば、制御回路用電源から供給される第3の電源電圧(正電圧)が所定値よりも低く、制御回路の動作電圧として不十分な場合に、第3のスイッチング素子をオフとすることで、当該正電圧の不良によるアーム短絡を防止することができる。
【0019】
上記第1乃至第3の何れかの特徴の本発明に係るドライバ回路は、更に、前記制御回路用電源は、前記第2の電源電圧より低い第4の電源電圧を、前記動作電圧として、前記第1の制御回路、及び、前記第2の制御回路に供給し、前記第3の制御回路は、前記制御回路用電源から供給される前記第4の電源電圧が所定値よりも高い場合、前記第3のスイッチング素子をオフ制御することを第4の特徴とする。
【0020】
上記第4の特徴のドライバ回路に依れば、制御回路用電源から供給される第4の電源電圧(負電圧)が所定値よりも高く、制御回路の動作電圧として不十分な場合に、第3のスイッチング素子をオフとすることで、当該負電圧の不良によるアーム短絡を防止することができる。
【0021】
上記第1乃至第4の何れかの特徴の本発明に係るドライバ回路は、更に、前記第1のスイッチング素子又は前記第2のスイッチング素子を構成する前記ワイドギャップ半導体の少なくとも何れか一方が、GaN或いはSiCで構成されることが好ましい。
【0022】
更に、上記の第1乃至第4の何れかの特徴のドライバ回路は、好適に、直流を交流に変換するインバータ回路として利用することができる。
【0023】
更に、より好ましくは、上記第1乃至第4の何れかの特徴のドライバ回路において、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子の直列回路を複数備え、前記第3のスイッチング素子を、前記複数の直列回路における前記第2のスイッチング素子の夫々の前記一端側と共通に接続することで、複数相を備えたインバータ回路を構成することができる。
【発明の効果】
【0024】
従って、本発明に依れば、ノーマリーオン型のスイッチング素子を採用することによるアーム短絡の危険性が取り除かれ、高速スイッチング、低オン抵抗であり、且つ安全なドライバ回路もしくはインバータ回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るドライバ回路(インバータ回路)の構成例を示す回路図。
【図2】本発明に係るドライバ回路における、第3のスイッチング素子を制御する第3の制御回路の他の構成例を示す回路図。
【図3】本発明に係るドライバ回路における、第3のスイッチング素子を制御する第3の制御回路の他の構成例を示す回路図。
【図4】本発明のドライバ回路で構成した3相交流を出力するインバータの例を示す回路構成図。
【図5】従来構成のドライバ回路(インバータ回路)を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〈第1実施形態〉
本発明の一実施形態に係るドライバ回路(インバータ回路)1(以降、適宜「本発明回路1」と称する)の構成例を図1に示す。尚、以降の実施形態の説明に用いる図面では、同一の構成要素には同一の符号を付すこととし、また、名称及び機能も同一であるので、同様の説明を繰り返すことはしない。
【0027】
図1の回路ブロック図に示すように、本発明回路1は、制御回路11、高圧電源12、電源13aと13bで構成される制御回路用電源、ハイサイド側の第1のスイッチング素子14、ローサイド側の第2のスイッチング素子15、第3のスイッチング素子16、コンデンサ17、抵抗18及び19を備える。
【0028】
第1のスイッチング素子14は、ドレイン(入出力端子対の一端)が高圧電源12から供給される正電圧V1(第1の電源電圧)と接続され、ソース(入出力端子対の他端)が第2のスイッチング素子15のドレインと接続され、これにより第1のスイッチング素子14と第2のスイッチング素子15が直列に接続されたハーフブリッジ回路が構成されている。一方、第2のスイッチング素子15のソースは、第3のスイッチング素子16のドレインと接続されている。第1のスイッチング素子14、及び、第2のスイッチング素子15は夫々、閾値電圧Vthが−3V程度のワイドギャップ半導体で構成されるノーマリーオン型のnチャネルFETであり、好ましくは、ワイドギャップ半導体としてGaN、又は、SiCを用いて構成したnチャネルFETである。例えばGaNの場合GaN−HEMT(High Electron Mobility Transistor: 高電子移動度トランジスタ)が、SiCの場合SiC−JFETが利用できる。正電圧V1は、例えば、600V程度である。
【0029】
第3のスイッチング素子16は、ノーマリーオフ特性のFETであり、ドレイン(入出力端子対の一端)が第2のスイッチング素子15のソースと接続され、ソース(入出力端子対の他端)が第2の電源電圧V2(ここでは、接地電位)と接続されている。これにより、本発明回路1は、第1の電源電圧V1−第1のスイッチング素子14−第2のスイッチング素子15−第2の電源電圧V2、で構成される従来構成のインバータ回路のアームの第2のスイッチング素子15と第2の電源電圧V2との間に、第3のスイッチング素子16を挿入した構成となっている。第3のスイッチング素子16は、例えば、耐圧が30V程度の一般的な低耐圧MOSFETでよい。
【0030】
電源13aは、−側が第2の電源電圧に接続されるとともに、+側が制御回路11の一端子に接続され、+側の端子電圧である第3の電圧VHを、制御電圧端子5を介して制御回路11に供給する。
【0031】
電源13bは、+側が第2の電源電圧に接続されるとともに、−側が制御回路11の一端子に接続され、−側の端子電圧である第4の電圧VLを、電源端子6を介して制御回路11に供給する。
【0032】
更に、電源13aと電源13bの接続ノードにおける電圧が、第2の電源電圧V2と接続されているため、第3の電源電圧VHは第2の電源電圧V2に対して正電圧、第4の電源電圧VLは第2の電源電圧V2に対して負電圧となっている。尚、当該負電圧VLは、ノーマリーオン特性の第1のスイッチング素子15および第2のスイッチング素子16の負の閾値電圧Vthよりも低く、例えば、−10V程度である。当該第2の電源電圧V2も、電源端子7を介して制御回路11に供給されている。
【0033】
制御回路11は、ハイサイド側ドライバ(第1の制御回路)8、ローサイド側ドライバ(第2の制御回路)9、及び、第3の制御回路10(10a)を含み、第2の電源電圧V2、電源13aからの第3の電圧VH、及び、電源13bからの第4の電圧VLを動作電圧として動作する。ハイサイド側ドライバ8は、ハイサイド側ドライブ信号端子3からの入力信号に基づき、第1のスイッチング素子14のオンオフを制御するための第1制御信号20を生成し、第1のスイッチング素子14のゲートに出力する。ローサイド側ドライバ9は、ローサイド側ドライブ信号端子4からの入力信号に基づき、第2のスイッチング素子15のオンオフを制御するための第2制御信号21を生成し、第2のスイッチング素子15のゲートに出力する。
【0034】
第3の制御回路10aは、コンパレータ26、基準電圧源27、及び、直列に接続される二つの抵抗28a,28bからなる。抵抗28aと28bの接続ノードの電圧がコンパレータ26の非反転入力端子に、基準電圧源27のプラス側の電圧がコンパレータ26の反転入力端子に、夫々、入力されている。抵抗28aと28bは、電源13aから供給されるドライバ回路11の動作電圧VHを分圧し、コンパレータ26は、当該分圧された電圧を基準電圧源27の基準電圧と比較する。当該分圧された電圧が当該基準電圧よりも低い場合、言い換えると、動作電圧VHがドライバ回路11の動作に不十分なほど低い場合には、コンパレータ26は、第3のスイッチング素子16をオフ制御するための低レベルの信号(第3制御信号)22を第3のスイッチング素子16のゲートに出力する。一方、当該分圧された電圧が当該基準電圧以上であり、動作電圧VHがドライバ回路11の動作に十分な電圧である場合には、コンパレータ26は、第3のスイッチング素子16をオン制御するための高レベルの信号(第3制御信号)22を第3のスイッチング素子16のゲートに出力する。
【0035】
抵抗18は、一端が第2のスイッチング素子15のゲートと、他端が第2の電源電圧V2と接続し、抵抗19は、一端が第3のスイッチング素子16のゲートと、他端が第2の電源電圧V2と接続している。
【0036】
コンデンサ17は、第1のスイッチング素子14を介して出力端子23に流れる電流の急激な変化により生じる高圧電源12の電圧変動を緩和し、安定な第1の電源電圧V1を第1のスイッチング素子のドレインに供給する役割を有している。
【0037】
次に、本発明回路1の動作について、図1を参照して説明する。
【0038】
本発明回路1が起動され、制御回路11に電源13aから正電圧(第3の電圧)VHが、電源13bから負電圧(第4の電圧)VLが、及び、電源端子7を介して第2の電圧V2が供給されると、第3の制御回路10aは、基準電圧源27と、抵抗28aと28bで分圧された制御電圧端子5の電圧VHとを比較し、当該電圧VHが所定値以上の場合、第3のスイッチング素子16をオン制御するための出力信号22を生成し、第3のスイッチング素子16をオン状態にする。
【0039】
尚、第3のスイッチング素子16を耐圧30Vの一般的な低耐圧のMOSFETとした場合、当該MOSFETのオン抵抗は1.5mΩ程度であり、ドレイン電流を10Aとして0.15W程度の損失となるが、インバータ回路1が600V、10A動作とすると当該損失は全体の0.0025%となるため、第3のスイッチング素子16による損失は無視できる。
【0040】
ハイサイド側ドライブ信号端子3、及び、ローサイド側ドライブ信号端子4には、アーム短絡を起こさないように相補の関係にある信号が入力される。
【0041】
ハイサイド側ドライバ8は、ハイサイド側ドライブ信号端子3からの入力信号を、例えば出力端子23の電圧を基準としてレベルシフトし、第1のスイッチング素子14のゲートを駆動する信号に変換して、第1の制御信号20を第1のスイッチング素子14のゲートに出力する。
【0042】
ローサイド側ドライバ9は、ローサイド側ドライブ信号端子4からの入力信号をレベルシフトし、第2のスイッチング素子15のゲートを駆動する信号に変換して、第2の制御信号21を第2のスイッチング素子15のゲートに出力する。この結果、出力端子23には高圧電源23の電圧がスイッチングされた電圧が出力される。
【0043】
ここで、電源13aから制御回路11に供給される第3の電圧VHが低下した場合を考える。当該電圧VHが所定値よりも低下すると、第3の制御回路10aのコンパレータ26の出力である第3制御信号22が低レベルとなるため、第3のスイッチング素子16はオフされる。これにより、アーム短絡が未然に防がれる。
【0044】
次に、電源13aから制御回路11に供給される第3の電圧VHが低下、もしくは起動時など低レベルにあり、制御回路11自体が動作していない場合を考える。このとき、第2のスイッチング素子15のゲートには抵抗18の一端が接続され、抵抗18の他端は第2の電源電圧V2と接続しているため、第2のスイッチング素子15のゲートには第2の電源電圧V2が印加される。同様に、第3のスイッチング素子16のゲートには抵抗19の一端が接続され、抵抗19の他端は第2の電源電圧V2と接続しているため、第3のスイッチング素子16のゲートには第2の電源電圧V2が印加される。第1及び第2のスイッチング素子15,16はノーマリーオン特性を有し、第3のスイッチング素子16はノーマリーオフ特性を有するため、第1及び第2のスイッチング素子15,16はオン状態、第3のスイッチング素子16はオフ状態となる。これにより、第3のスイッチング素子16のドレイン電圧(第2のスイッチング素子15のソース電圧)は上昇する。
【0045】
しかしながら、第2のスイッチング素子15のゲートには抵抗18を介して第2の電源電圧V2の印加が維持されているため、第3のスイッチング素子16のドレイン電圧の上昇に伴い、第2のスイッチング素子15のゲート電圧がソース電圧に対して負電圧となる。そして、第3のスイッチング素子16のドレイン電圧が第2の電源電圧V2に対して第2のスイッチング素子15の閾値電圧Vthの絶対値以上に上昇すると、第2のスイッチング素子15はオフされる。
【0046】
この結果、第1の電源電圧V1と第2の電源電圧V2との間の接続が、第2のスイッチング素子15により切断され、制御回路11自体が動作していない場合であってもアーム短絡を防ぐことができる。
【0047】
ここで、抵抗18,19を設けていない場合、制御回路11が動作していない状況では第1及び第2のスイッチング素子はオン状態、第3のスイッチング素子はオフ状態となり、第3のスイッチング素子のソース‐ドレイン間には高圧電源12からの高電圧V1が印加される。このため、第3のスイッチング素子16として高耐圧のものが要求される。
【0048】
しかしながら、本発明回路1では、上述の通り、抵抗18,19を備えることにより、第2のスイッチング素子は一旦オンされるが、その後、第3のスイッチング素子16のソース‐ドレイン間電圧が第2のスイッチング素子15の閾値電圧Vthの絶対値以上に上昇すると、第2のスイッチング素子15はオフされる。そして、ワイドギャップ半導体で構成される第2のスイッチング素子15の高速スイッチング特性により、第3のスイッチング素子16への高圧電源12からの電圧印加が遮断される。
【0049】
第2のスイッチング素子15の閾値電圧Vthの絶対値は、上述したように高々3V程度であるので、これにより第3のスイッチング素子16として低耐圧のデバイスが使用可能となり、高耐圧デバイスに比べ低オン抵抗で、サイズの小さなものを利用できる。
【0050】
本発明回路1において、第3のスイッチング素子16を制御する第3の制御回路10の他の構成例を図2に示す。図2に示す制御回路10bは、上述した制御回路10aと同様、コンパレータ26、基準電圧源27、及び、直列に接続される二つの抵抗28a,28bからなるが、抵抗28aと28bの接続ノードの電圧がコンパレータ26の反転入力端子に、基準電圧源27のマイナス側の電圧がコンパレータ26の非反転入力端子に、夫々、入力されている。そして、抵抗28aと28bは、電源13bから供給される制御回路11の動作電圧VL(負電圧)を分圧し、コンパレータ26は、当該分圧された電圧を基準電圧源27の負の基準電圧と比較する。当該分圧された電圧が当該基準電圧よりも高い場合、言い換えると、動作電圧VLがドライバ回路11の動作に不十分なほど高い場合には、コンパレータ26は、第3のスイッチング素子16をオフ制御するための低レベルの信号(第3制御信号)22を第3のスイッチング素子16のゲートに出力する。一方、当該分圧された電圧が当該基準電圧以下であり、動作電圧VLがドライバ回路11の動作に十分な電圧である場合には、コンパレータ26は、第3のスイッチング素子16をオン制御するための高レベルの信号(第3制御信号)22を第3のスイッチング素子16のゲートに出力する。
【0051】
この構成により、負電圧VLが所定値より高い場合に第3のスイッチング素子16をオフとし、負電圧の不良によるアーム短絡を防止することができる。
【0052】
更に、本発明回路1において、第3のスイッチング素子16を制御する第3の制御回路10の他の構成例を図3に示す。図3に示すように、制御回路10cは、図1の制御回路10a、及び、図2に示す制御回路10bを備え、夫々のコンパレータ26の出力をOR回路29にて論理和を取り、当該論理和の信号を第3のスイッチング素子16の制御のための信号(第3制御信号)22とする。
【0053】
このようにすることで、正電圧VHが所定値よりも低い場合または負電圧VLが所定値より高い場合には第3のスイッチング素子16がオフされ、正電圧あるいは負電圧の不良によるアーム短絡を防止することができる。
【0054】
〈第2実施形態〉
本発明の一実施形態に係るインバータ回路2(以降、適宜「本発明回路2」と称する)の構成例を図4に示す。図4に示すように、本発明回路2は、上述の第1実施形態で説明した本発明回路1を用いて、3相ACモータ等を駆動するための3相交流電圧を供給するインバータ回路を構成する場合の例である。本発明回路1と同様、本発明回路2は、制御回路11、高圧電源12、電源13aと13bで構成される制御回路用電源、ハイサイド側の第1のスイッチング素子14U,14V,14W、ローサイド側の第2のスイッチング素子15U,15V,15W、第3のスイッチング素子16、コンデンサ17、抵抗18U,18V,18W及び19を備える。
【0055】
制御回路11は、ハイサイド側ドライバ(第1の制御回路)8、ローサイド側ドライバ(第2の制御回路)9、及び、第3の制御回路10(10a)を含み、第2の電源電圧V2、電源13aからの第3の電圧VH、及び、電源13bからの第4の電圧VLを動作電圧として動作する。
【0056】
ハイサイド側ドライバ8には、ハイサイド側ドライブ信号端子3U,3V,3Wから、夫々、位相が120度ずれた入力信号が入力される。当該入力信号に基づき、ハイサイド側ドライバ8は、第1のスイッチング素子14U,14V,14Wの夫々のオンオフを制御するための第1制御信号20U,20V,20Wを生成し、夫々の第1のスイッチング素子のゲートに出力する。
【0057】
ローサイド側ドライバ9には、ローサイド側ドライブ信号端子4U,4V,4Wから、夫々、位相が120度ずれた、ハイサイド側ドライブ信号端子3U,3V,3Wに入力される信号と相補の関係にある入力信号が入力される。当該入力信号に基づき、ローサイド側ドライバ9は、第2のスイッチング素子15U,15V,15Wの夫々のオンオフを制御するための第2制御信号21U,21V,21Wを生成し、夫々の第2のスイッチング素子のゲートに出力する。
【0058】
第3の制御回路10としては、上述した制御回路10a,10b,又は10cの何れかの回路構成を用いることができる。
【0059】
本発明回路2では、第1のスイッチング素子14Uが第2のスイッチング素子15Uと直列に接続され、第1のスイッチング素子14Vが第2のスイッチング素子15Vと直列に接続され、第1のスイッチング素子14Wが第2のスイッチング素子15Wと直列に接続され、夫々3組の第1および第2のスイッチング素子による直列回路が構成されている。当該直列回路において、夫々、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子との接続ノードの電圧が、出力端子23U,23V,23Wに出力される。更に、夫々の直列回路の第1のスイッチング素子側は、第1の電源電圧V1と共通に接続され、夫々の直列回路の第2のスイッチング素子側は、第3のスイッチング素子と共通に接続されている。また、第2のスイッチング素子15U、15V,15W、及び、第3のスイッチング素子は、夫々、抵抗18U,18V,18W、及び、19を介して第2の電源電圧V2と接続されている。第1のスイッチング素子14U,14V,14W、及び、第2のスイッチング素子15U,15V,15Wは夫々、閾値電圧Vthが−3V程度のワイドギャップ半導体で構成されるノーマリーオン型のnチャネルFETであり、好ましくは、ワイドギャップ半導体としてGaN、又は、SiCを用いて構成したnチャネルFETである。第1のスイッチング素子16は、例えば、耐圧が30V程度の一般的な低耐圧MOSFETである。
【0060】
本発明回路2の動作については、第1のスイッチング素子14Uと第2のスイッチング素子15U、第1のスイッチング素子14Vと第2のスイッチング素子15V、第1のスイッチング素子14Wと第2のスイッチング素子15Wがそれぞれ対となってオンオフが制御されることを除き、上述した本発明回路1の動作と略同様であり、制御回路11に供給される電圧VH又はVLが制御回路11の動作に不十分な場合、或いは、制御回路11が動作していない場合には、第3のスイッチング素子がオフとなることによりアーム短絡が防止される。
【0061】
更に、3相インバータであっても1個の第3のスイッチング素子16を用いて全相を遮断することができ、個々の相で遮断するよりも小型化が可能であり、且つ、安全である。
【0062】
尚、上記第1及び第2実施形態では、第3の制御回路10(10a〜10c)内の分圧抵抗28bの一端、及び、基準電圧源27の一端が第2の電源電圧(接地電位)に接続されているが、夫々の一端が所定の固定電位に接続されている限り、その接続先は特に限定されない。更に、例えば図1の構成において、電源13bにより供給される第4の電源電圧VLの変動を無視できる場合には、コンパレータ26の−側入力端子を接地電位に接続し、抵抗28bの一端を電圧VLと接続することで、基準電圧源27は不要となる。
【0063】
上述の実施形態は本発明の好適な実施形態の一例である。本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形実施が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、スイッチング素子の制御端子に制御のための電圧を供給するドライバ回路に利用可能であり、好適には、ノーマリーオン特性を有するスイッチング素子を直列に接続したハーフブリッジ回路を備えるインバータ回路に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1: 本発明に係るドライバ回路(インバータ回路)
2: 本発明に係るインバータ回路
3,3U,3V,3W: ハイサイド側ドライブ信号端子
4,4U,4V,4W: ローサイド側ドライブ信号端子
5: 制御電圧端子
6,7: 電源端子
11: 本発明に係る制御回路
8: 第1の制御回路(ハイサイド側ドライバ)
9: 第2の制御回路(ローサイド側ドライバ)
10,10a〜10c: 第3の制御回路
12: 高圧電源
13,13a,13b:制御回路用電源
14,14U,14V,14W: 第1のスイッチング素子(ハイサイド側)
15、15U,15V,15W: 第2のスイッチング素子(ローサイド側)
16: 第3のスイッチング素子
17: コンデンサ
18U,18V,18W,19: 抵抗
20,20U,20V,20W: 第1制御信号
21,21U,21V,21W: 第2制御信号
22: 第3制御信号
23,23U,23V,23W: 出力端子
26: コンパレータ
27: 基準電圧源
28a,28b: 分圧抵抗
29: OR回路
30: 従来構成のドライバ回路(インバータ回路)
31: 従来構成の制御回路
V1: 第1の電源電圧
V2: 第2の電源電圧
VH: 第3の電源電圧
VL: 第4の電源電圧



【特許請求の範囲】
【請求項1】
入出力端子対の一端が第1の電源電圧に接続する第1のスイッチング素子の前記入出力端子対の他端に、第2のスイッチング素子を直列に接続し、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子の間の中間ノードの電圧を出力するドライバ回路であって、
前記第1のスイッチング素子、及び、前記第2のスイッチング素子は、夫々ワイドギャップ半導体で構成され、ノーマリーオン特性を有し、
入出力端子対の一端が前記第2のスイッチング素子の入出力端子対のうち前記第1のスイッチング素子と接続しない一端側と接続し、他端が前記第1の電源電圧より低い第2の電源電圧に接続するノーマリーオフ特性の第3のスイッチング素子と、
入力信号に基づき、前記第1のスイッチング素子のオンオフを制御するための第1制御信号を前記第1のスイッチング素子の制御端子に出力する第1の制御回路と、
入力信号に基づき、前記第2のスイッチング素子のオンオフを制御するための第2制御信号を前記第2のスイッチング素子の制御端子に出力する第2の制御回路と、
前記第3のスイッチング素子のオンオフを制御するための第3制御信号を前記第3のスイッチング素子の制御端子に出力する第3の制御回路と、
前記第1の制御回路、及び、前記第2の制御回路の動作に必要な動作電圧を供給する制御回路用電源と、を備え、
前記第3の制御回路は、前記動作電圧を所定値と比較し、その比較結果に基づき、前記動作電圧が制御回路の動作に不十分な場合、前記第3のスイッチング素子をオフ制御することを特徴とするドライバ回路。
【請求項2】
一端が前記第2のスイッチング素子の制御端子と、他端が前記第2の電源電圧と接続する第1の抵抗、及び、一端が前記第3のスイッチング素子の制御端子と、他端が前記第2の電源電圧と接続する第2の抵抗を備えることを特徴とする請求項1に記載のドライバ回路。
【請求項3】
前記制御回路用電源は、前記第2の電源電圧より高い第3の電源電圧を、前記動作電圧として、前記第1の制御回路、及び、前記第2の制御回路に供給し、
前記第3の制御回路は、前記制御回路用電源から供給される前記第3の電源電圧が所定値よりも低い場合、前記第3のスイッチング素子をオフ制御することを特徴とする請求項1または2に記載のドライバ回路。
【請求項4】
前記制御回路用電源は、前記第2の電源電圧より低い第4の電源電圧を、前記動作電圧として、前記第1の制御回路、及び、前記第2の制御回路に供給し、
前記第3の制御回路は、前記制御回路用電源から供給される前記第4の電源電圧が所定値よりも高い場合、前記第3のスイッチング素子をオフ制御することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のドライバ回路。
【請求項5】
前記第1のスイッチング素子又は前記第2のスイッチング素子を構成する前記ワイドギャップ半導体の少なくとも何れか一方が、GaNであることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のドライバ回路。
【請求項6】
前記第1のスイッチング素子又は前記第2のスイッチング素子を構成する前記ワイドギャップ半導体の少なくとも何れか一方が、SiCであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のドライバ回路。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載のドライバ回路において、
前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子の直列回路を複数備え、
前記第3のスイッチング素子が、前記複数の直列回路における前記第2のスイッチング素子の夫々の前記一端側と共通に接続していることを特徴とする、複数相を備えたインバータ回路。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−105450(P2012−105450A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251729(P2010−251729)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】