説明

ドライブレコーダ

【課題】路面の継ぎ目通過時など、重力方向の加速度を伴う衝撃を精度よく識別することにより、誤記録を防止し、記憶容量の無駄を低減することができるドライブレコーダを提供する。
【解決手段】衝撃検出手段20によって検出された加速度に関し、水平方向の加速度が所定の設定値より小さく、且つ、重力方向の加速度が所定の設定値より大きい場合、その加速度を検出した前後における前記映像情報のFOE点の変位量を算出し、前記変位量の大小に基づいて該映像情報が保存対象であるか否かを判定する。記憶制御手段30eは、保存対象であると判定した映像情報を記憶媒体50に記憶するとともに、該映像情報が記憶された記憶媒体50の記憶領域に対する上書きを禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブレコーダに関し、より詳細には、車両に生じる衝撃の前後に撮影した映像情報を記憶するドライブレコーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
前方の映像や速度履歴など、車両状況に係る情報を連続して記録するドライブレコーダは、自動車事故発生時の状況を分析する有効な手段として、近年、運送事業者を中心に広く採用されている。ドライブレコーダは、CCD(Charge Coupled Device)カメラ、加速度センサ、カード状記憶媒体などを内蔵し、運転者の視点から自車と周辺状況を撮影した映像などを常時記憶している。一般に、撮影して一時記憶された映像は、記憶媒体(メモリ)の記憶容量を節約するため、予め設定した異常レベルを超過した衝撃に係る映像のみ保存するように設定されている。
【0003】
限られたメモリ資源を有効に利用するためには、衝突などの事故に係る衝撃とそれ以外の衝撃とを正しく識別し、事故またはそれに類する映像情報のみを保存する必要がある。しかし、その一方、事故予防や解析のため、その他の衝撃発生時の映像情報も保存したいという要請があり、従来、衝撃の判定レベルを低く設定することができるドライブレコーダも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されたドライブレコーダでは、加速度センサが検知する加速度を重力方向と水平方向(進行方向)とで区別し、水平方向の加速度が所定の閾値を超過し、且つ、重力方向の加速度が所定の閾値を超過しない場合に、前方映像の車両の有無に係る判定と合わせてこれを保存すべき「衝撃」と判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−83964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際には路面の継ぎ目や段差はその大きさや形状も千差万別で、閾値の適切な設定そのものが困難であり、実用上は継ぎ目等の通過に伴う衝撃(ノイズ)と衝突などの保存すべき衝撃とを有効に識別できないという問題があった。
【0007】
また、上記に開示されたドライブレコーダでは、平坦な車線上での追突事故などの典型的な衝突は確実に保存されるが、重力方向に大きな加速度を生じる縁石への乗り上げや脱輪など、本来は衝突と同様の衝撃事例として保存されるべき映像情報がノイズと判定され、保存されないという問題があった。
【0008】
このように、これまでのドライブレコーダでは、重力方向の加速度をノイズ判定に適切に活用できず、誤った判定による誤記録や記録漏れを完全に排除できないという課題があった。
【0009】
ところで、運転中に頻繁に発生する路面の継ぎ目等の通過による上下方向の衝撃は、その際、前方映像のFOE(Focus of Expansion)点にも上下方向の変位を伴うことがわかっている。
【0010】
ここで、FOE点とは、無限遠点とも称され、例えば、自車両が走行すべき路面上の自車線の両側に位置する一対の白線をそれぞれ延長した延長線が交わる点で設定することができる。走行中の車両に搭載したカメラの前方映像は時々刻々変化するが、時間tと時間t+Δtにおける映像について、対応する同一点を直線で結ぶと速度ベクトル(オプティカルフロー)が得られる。すべてのオプティカルフローは、画像内の1点から放射状に現れる。この1点がFOE点である。
【0011】
重力方向の加速度と合わせてFOE点の変位量を判断すれば、より精度の高いノイズ判定を行うことができると期待される。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、路面の継ぎ目通過時など、重力方向の加速度を伴う衝撃を精度よく識別することにより、誤記録を防止し、記憶容量の無駄を低減することができるドライブレコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係るドライブレコーダは、下記(1)〜(2)を特徴としている。
(1) 車両に搭載され、車両周辺を撮像した映像情報を生成する撮像手段と、
前記撮像手段から取得した映像情報を処理し、自車両が走行すべき路面上の自車線の両側に位置する一対の白線を検出する白線検出手段と、
前記白線検出手段が検出した前記一対の白線の延長線がなす交点をFOE(無限遠点)として設定するFOE設定手段と、
車両に生じた加速度を検出する衝撃検出手段と、
前記衝撃検出手段によって検出された加速度に関し、水平方向の加速度が所定の設定値より小さく、且つ、重力方向の加速度が所定の設定値より大きい場合、その加速度を検出した前後における前記映像情報のFOE点の変位量を算出し、前記変位量の大小に基づいて該映像情報が保存対象であるか否かを判定する衝突判定手段と、
前記衝突判定手段が保存対象であると判定した前記映像情報を記憶媒体に記憶するとともに、該映像情報が記憶された前記記憶媒体の記憶領域に対する上書きを禁止する制御手段と、
を備えること。
(2) 上記(1)の構成のドライブレコーダであって、
前記衝突判定手段は、前記FOE点の変位量が所定の設定値より小さいか否かを判断し、所定の設定値より小さい場合、前記映像情報が保存対象ではないと判定すること。
【0014】
上記(1)の構成のドライブレコーダによれば、衝撃検出手段が検出した衝撃について、水平方向の加速度が所定の設定値より小さく、且つ、重力方向の加速度が所定の設定値より大きい場合に、衝突判定手段が、検出した衝撃の前後における映像のFOE点の変位量を算出し、変位量の大小に基づいて当該衝撃に係る映像情報が保存対象であるか否かを判定する。保存対象であると判定された場合、制御手段は検出された衝撃の前後の映像情報を記憶媒体に保存するとともに、該映像情報が記憶された記憶領域に対する上書きを禁止する。保存対象として記憶媒体に記録された映像情報は上書きされないので、重要な情報が消去されることがない。
上記(2)の構成のドライブレコーダによれば、衝突判定手段が、衝撃の前後における映像のFOE点の変位量が所定の設定値より小さいか否かを判断し、変位量が所定の設定値より小さい場合、検出した衝撃は路面の継ぎ目を通過した際などに生じる衝撃であり、衝突ではないと判定する。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明のドライブレコーダによれば、重力方向の加速度とFOE点の変位量の両方を用いて衝突(保存対象の衝撃)か否かを判断するようにしたことから、路面の継ぎ目通過時などのノイズの誤記録を防止することができる。従って、メモリ容量を有効に活用することができる。
また、FOE点の変位量が所定の設定値より小さい場合に、検出した衝撃はノイズであると判定するようにしたことから、路面の継ぎ目通過時などのノイズの誤記録を高い精度で防止することができる。従って、メモリ容量を有効に活用することができる。
また、車両に発生した衝撃が保存対象の衝撃である場合、記憶媒体に記憶された当該映像情報への上書きを禁止するようにしたことから、重要な映像情報が上書きによって消去されることを防止できる。従って、記憶媒体を大容量とする必要がなくなり、コストダウンを図ることができる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るドライブレコーダの基本構成を示す図である。
【図2】ドライブレコーダの概略構成の一例を示す構成図である。
【図3】図2のCPUが実行する本発明に係る処理概要の一例を示すフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートにおけるFOE設定処理の処理概要の一例を示すフローチャートである。
【図5】図3のフローチャートにおける衝突検出処理の処理概要の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るドライブレコーダの一実施の形態を、図2〜図5の図面を参照して説明する。
【0019】
はじめに、図2は、図1のドライブレコーダの概略構成の一例を示す構成図である。ドライブレコーダ1は、周知であるように、車両のフロントガラスの内面に対し、運転者の視界を妨げないように、例えば、バックミラーとほぼ同一の位置等に取り付けられる。
【0020】
ドライブレコーダ1は、図2に示すように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)30、CPU30のためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM31、各種のデータを格納するとともにCPU30の処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM32、などで構成される。
【0021】
CPU30には、装置本体がオフ状態の間も記憶内容の保持が可能な電気的消去/書き換え可能な読み出し専用のメモリ33も接続しており、このメモリ33は、後述するカメラ10a〜10nによって撮影した画像などの映像情報が予め定められた所望の範囲にわたって時系列的に記憶される一時格納エリアなどを有している。
【0022】
上述したCPU30は、自車両が走行すべき自車線の両側に位置する一対の白線を検出する白線検出手段30a、FOEを設定するFOE設定手段30b、検出した衝撃が保存対象であるか否かを判定する衝突判定手段30c、保存対象の映像情報に上書き禁止を設定する上書き禁止手段30d、保存対象であるか否かに応じて記憶媒体への記憶を行うか否かなどを制御する記憶制御手段30eとして働く。
【0023】
ドライブレコーダ1はさらに、カメラ10a〜10n、加速度センサ20a〜20n、カード挿入部40、などを有する。カメラ10a〜10nは、それぞれインタフェース回路(I/F)11a〜11nを介してCPU30に接続する。
【0024】
カメラ10a〜10nは、請求項中の撮像手段に相当し、CCD(Charge Coupled Device)カメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、赤外線カメラ等の各種カメラを用いることができる。カメラ10a〜10nは、車両の周辺映像を常時撮影しており、撮影した映像信号はインタフェース回路11a〜11nによって変換、圧縮処理等が行われ、映像情報としてCPU30に入力される。
【0025】
CPU30は、入力された映像情報をメモリ33に時系列で記憶する。なお、映像情報は、動画、静止画などドライブレコーダの構成、仕様等に応じて任意に定められるものである。
【0026】
また、カメラ10b〜10nは、例えば、車両の後方、周辺、車両の運転者、営業用の車両の運転者、乗客、車内、乗降用のドア等を撮影するように、車両の任意の箇所に設けられている。このように複数のカメラ10b〜10nを車両の所望の箇所に配置することで、衝撃の原因解析等に貢献する映像情報を収集することができる。なお、本実施の形態では、複数のカメラ10a〜10nを用いる場合について説明するが、1台のカメラ10aを用いるなど種々異なる形態とすることができる。
【0027】
加速度センサ20a〜20nは、請求項中の衝撃検出手段に相当し、3軸(X、Y、Z)方向の加速度・傾き・衝撃等を検出する3軸加速度センサで形成される。なお、3軸加速度センサは、周知であるように、薄いシリコンの梁(ビーム)によって錘を支え、加速度によって錘が動くことで梁が歪み、この歪みを梁上に形成したピエゾ抵抗素子等の抵抗変化で加速度を検出するようにしたものである。加速度センサ20a〜20nは、それぞれ検出した加速度を示す3軸方向の各加速度信号をCPU30に出力する。
【0028】
本実施の形態では、加速度センサ20a〜20nを、上述したカメラ10a〜10nに対応して設置しており、加速度センサ20aを筐体の内部に設け、加速度センサ20b〜20nを、それぞれカメラ10b〜10nを設置した箇所の近傍に設置している。このように加速度センサ20a〜20nを設置することにより、カメラ10a〜10nを設置した箇所に生じた衝撃に応じた映像情報を収集することができ、車両に生じる衝撃の原因解析等により一層貢献することができる。
【0029】
カード挿入部40は、装着されたカード50に対してCPU30から指定された各種データの書き込み、読み込みを行う。カード50の挿入部40に対する挿入は手動で行い、カード50の排出は、排出キーの操作に応じてカード挿入部40内の排出機構(図示せず)が自動で行う。
【0030】
なお、本実施の形態では、カード挿入部40に挿入されるカード50を請求項中の記憶媒体とする場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の記憶媒体をメモリ33としたり、新たにハードディスク装置を内蔵させて実現するなど種々異なる形態とすることができる。
【0031】
上述したROM31は、請求項中に記載の白線検出手段、FOE設定手段、衝突判定手段、上書き検出手段、及び記憶制御手段としてCPU30(コンピュータ)を機能させるための各種プログラムを記憶している。また、ROM31は、保存対象の衝撃であるか否かを判定するための判定条件なども記憶している。この判定条件は、加速度センサ20a〜20nのそれぞれに対する、X軸、Y軸、Z軸に関する加速度の判定閾値データとして保持されている。
【0032】
メモリ33は、上述したように映像情報を時系列的に記憶する映像情報記憶エリアと、カード50への上書きが禁止されているときに映像情報を記憶する映像情報保存エリアとを有している。映像情報記憶エリアは、映像情報が検出される毎に先頭アドレスから順次記憶され、当該エリアが終端アドレスまで記憶されると、再度先頭アドレスから映像情報が上書きされて記憶される。このように上書き機能を用いることで、限られた記憶エリアを効率的に利用している。
【0033】
カード50は、例えばCFカードなどのメモリカードを用いており、周知であるように、通電しなくても記憶内容が消えないメモリと、外部との入出力を受け持つコントローラ回路とを有している。なお、カード50については、システム構成に応じて種々異なるタイプのメモリカード等を用いることができる。
【0034】
カード50は、メモリ33に一時記憶された映像情報を記録するための映像情報記憶エリアを有している。映像情報記憶エリアの大きさは、車両における衝撃を検出した前後の所定時間範囲に準じて設定される。この映像情報記憶エリアも、メモリ33の映像情報記憶エリアと同様、映像情報が上書きされて記憶される。
【0035】
本実施の形態では、上書き条件として、衝撃を検出する度に先頭アドレスから上書きすることを条件とした場合について説明するが、上書き条件としては、記憶するデータ量が前記映像情報記憶エリアの空き容量よりも大きい場合など種々異なる形態とすることができる。なお、このカード50に対して上書きするか否かを示す保存モード情報は、メモリ33に記憶されており、初期設定は上書き保存を示している。
【0036】
次に、ドライブレコーダ1のCPU30が実行する本発明の処理概要の一例を説明する。図3は、図2のCPUが実行する本発明に係る処理概要の一例を示すフローチャートである。ここでは、説明を簡単化するために、カメラ10aと加速度センサ20aが対応する場合について説明するが、基本的な処理は、他のカメラ10b〜10nおよび加速度センサ20b〜20nについても同様である。
【0037】
電源ケーブルを介して電力が供給されてCPU30が起動され、初期処理が実行されると、RAM32の各種エリアに予め決定された初期値が設定されるとともに、メモリ33の保存モード情報に初期値である上書き保存が設定される。
【0038】
はじめに、カメラ10aから、時刻0における車両前方の映像情報(フレームF0)が取り込まれ、当該映像情報は撮影したカメラ10a〜10nが識別可能なようにメモリ33に記憶される(ステップS01)。なお、カメラ10a〜10nを識別させる方法としては、例えば、メモリ33にカメラ10a〜10nに対応した記憶領域を予め設定しておき、該当する領域に記憶する方法や、映像情報にカメラ10a〜10nの識別データを関連付ける方法など、種々異なる形態とすることができる。
【0039】
次に、CPU30は、メモリ33に記憶されたフレームF0の映像情報について、フレームF0におけるFOE点(初期値)の設定を行う(ステップS02)。FOE点の設定は、後述するように、フレームF0の映像に含まれる一対の白線を検知し、当該白線それぞれの延長線がなす交点を求めることで設定できる。
【0040】
以降、カメラ10aは、任意の時刻tにおける車両前方の映像情報(フレームF)を取り込み、メモリ33に記憶し(ステップS03)、FにおけるFOE点の設定処理を行う(ステップS04)。
【0041】
図4は、図3のフローチャートにおけるFOE設定処理の処理概要の一例を示すフローチャートである。はじめに、CPU30(白線検出手段30a)は、フレームFの映像について、公知の画像処理の手法を利用して自車両が走行すべき自車線の両側に位置する一対の白線を検出する(ステップS21)。次に、CPU30(FOE設定手段30b)は、検出した白線の延長線を作図し、延長線が交差する点をフレームFにおけるFOE点Pとして設定する(ステップS22)。なお、設定したPに係る位置情報も、メモリ33に一時的に記憶される。以上の手順によりFOE点の設定処理が行われる。なお、白線の検知やFOE点の設定に係る方法は公知であり、従って、詳細な説明は省略する。
【0042】
図3のフローチャートに戻り、次に、CPU30(衝突判定手段30c)は、取得したフレームFに対応して検知した衝撃が衝突などの保存対象となる衝撃であるか否かを判定する衝突判定処理を行う(ステップS05)。
【0043】
図5は、図3のフローチャートにおける衝突判定処理の処理概要の一例を示すフローチャートである。はじめに、加速度センサ20aから入力された加速度信号は、3軸(X、Y、Z)方向の加速度・傾き・衝撃等を示す加速度情報として取得される(ステップS31)。次に、CPU30は、メモリ33に記憶されている時刻tにおける加速度情報のX軸方向及びY軸方向の加速度(車両の水平方向の加速度)Ghが予め設定した所定値を超過しているか否かを判断する(ステップS32)。
【0044】
Ghが所定値を超過していない場合(ステップS32のN)、次に、CPU30は、メモリ33に記憶されている時刻tの加速度情報のZ軸方向の加速度(重力方向の加速度)Gvが予め設定した所定値を超過しているか否かを判断する(ステップS33)。
【0045】
Gvが所定値を超過している場合(ステップS33のY)、次に、CPU30は、メモリ33に記憶されている時刻tにおけるFOE点の位置情報Pについて、直前のフレームFt−1に係る位置情報Pt−1からの変位量|P−Pt−1|が予め設定した所定値を超過していないか否かを判断する(ステップS34)。
【0046】
変位量が所定値を超過していない場合(ステップS34のY)、CPU30は、当該フレームFに対応する衝撃、即ち、加速度センサ20aが検出した加速度は路上の継ぎ目や段差の通過等による衝撃(ノイズ)であると判定する(ステップS35)。
【0047】
一方、変位量が所定値を超過している場合(ステップS34のN)、CPU30は、当該フレームFに対応する衝撃は衝突などの保存対象の衝撃であると判定する(ステップS36)。また、ステップS33においてGvが所定値を超過していない場合(ステップS33のN)、CPU30は、当該フレームFに対応する衝撃は微小で衝突などに該当しないと判定する(ステップS37)。また、ステップS32においてGhが所定値を超過している場合も(ステップS32のY)、CPU30は、当該フレームFに対応する衝撃は衝突などの保存対象の大きな衝撃であると判定する(ステップS36)。
【0048】
最後に、CPU30は、衝突(保存対象の衝撃)の有無を出力する(ステップS38)。
【0049】
図3のフローチャートに戻り、次に、CPU30(記憶制御手段30e)は、衝突(保存対象の衝撃)の有無を判断する(ステップS06)。保存対象の衝撃である場合(ステップS06のY)、CPU30(上書き禁止手段30d)は、RAM32に一時的に記憶されているフレームFt−mからフレームFまでの映像情報について、上書き禁止フラグを立てる(ステップS07)。一方、保存対象の衝撃でない場合(ステップS06のN)、CPU30(上書き禁止手段30d)は上書き禁止フラグを立てない。なお、映像情報を記憶する範囲(または上書き禁止フラグを立てる範囲)については、ドライブレコーダの仕様等に応じて、衝撃検出後の映像情報まで記憶するように構成することもできる。
【0050】
次に、CPU30(記憶制御手段30e)は、RAM32に記憶された所定範囲の映像情報をカード挿入部40を介してカード50の衝突発生時映像記憶エリアへ記憶(書き込み)するが、その際、既に保存されているフレームとフレームFに係る映像情報の合計のデータサイズがカード50のメモリ容量を超過するか否かを判定する(ステップS08)。
【0051】
メモリ容量を超過しない場合(ステップS08のN)、空いているメモリ領域にフレームFに係る映像情報を書き込む(ステップS09)。一方、メモリ容量を超過する場合(ステップS08のY)、上書き禁止フラグが立っていないフレームデータが書き込まれたメモリ領域にフレームFに係る映像情報を上書きする(ステップS10)。
【0052】
このように、保存対象でない衝撃に係る映像情報は、記録はされるがその後上書きされて消去されうる。必要な映像情報のみが、最終的にカード50に保存されるので、不要な映像情報がカード50に記憶されることがない。また、保存対象の映像情報は、上書きにより消去されることが防止される。なお、本実施の形態では保存対象の映像情報をカード50に保存する形態について説明したが、これに限定されるものではなく、メモリ33に保存するものとしてもかまわない。また、当初はカード50に保存するものとし、カード50の記憶容量が不足した場合にメモリ33の記憶領域を借用するなど、種々異なる形態とすることができる。
【0053】
次に、CPU30は時刻tを繰り上げ(ステップS11)、繰り上げた時刻について上記のステップS03からステップS10までの手順を繰り返す。従って、ドライブレコーダ1の起動中、車両周辺の映像の撮影と衝突判定が連続して実行される。
【0054】
以上説明したドライブレコーダ1によれば、加速度センサ20aが検出した衝撃について、水平方向の加速度が所定の設定値より小さく、且つ、重力方向の加速度が所定の設定値より大きい場合に、衝突判定手段30cが、検出した衝撃の前後における映像のFOE点の変位量を算出し、変位量の大小に基づいて当該衝撃に係る映像情報が保存対象であるか否かを判定し、保存対象の映像情報のみをカード50に保存するようにしたことから、不要な映像情報が記憶媒体に保存されることを防止することができる。従って、カード50の記憶容量を増やすことなく、利用者が要望する衝撃レベルに応じた映像情報をカード50に記憶することができる。
【0055】
なお、上述した実施の形態は、本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 ドライブレコーダ
10a〜10n 撮像手段(カメラ)
20a〜20n 衝撃検出手段(加速度センサ)
30 CPU
30a 白線検出手段(CPU)
30b FOE設定手段(CPU)
30c 衝突判定手段(CPU)
30d 上書き禁止手段(CPU)
30e 記憶制御手段(CPU)
31 ROM
32 RAM
33 メモリ
40 カード挿入部
50 記憶媒体(カード)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、車両周辺を撮像した映像情報を生成する撮像手段と、
前記撮像手段から取得した映像情報を処理し、自車両が走行すべき路面上の自車線の両側に位置する一対の白線を検出する白線検出手段と、
前記白線検出手段が検出した前記一対の白線の延長線がなす交点をFOE(無限遠点)として設定するFOE設定手段と、
車両に生じた加速度を検出する衝撃検出手段と、
前記衝撃検出手段によって検出された加速度に関し、水平方向の加速度が所定の設定値より小さく、且つ、重力方向の加速度が所定の設定値より大きい場合、その加速度を検出した前後における前記映像情報のFOE点の変位量を算出し、前記変位量の大小に基づいて該映像情報が保存対象であるか否かを判定する衝突判定手段と、
前記衝突判定手段が保存対象であると判定した前記映像情報を記憶媒体に記憶するとともに、該映像情報が記憶された前記記憶媒体の記憶領域に対する上書きを禁止する制御手段と、
を備えることを特徴とするドライブレコーダ。
【請求項2】
前記衝突判定手段は、前記FOE点の変位量が所定の設定値より小さいか否かを判断し、所定の設定値より小さい場合、前記映像情報が保存対象ではないと判定することを特徴とする請求項1に記載のドライブレコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−53774(P2011−53774A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199935(P2009−199935)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】