説明

ドループ補正ピークホールド回路

【課題】ピークホールド回路において、ドループを抑制してピーク電圧を長時間保持できるドループ補正ピークホールド回路を提供すること。
【解決手段】ピークホールド回路のホールドコンデンサC1は、一端をダイオードD1のカソードに接続し、他端をドループ補正回路20に接続してある。ドループ補正回路20は、ホールドコンデンサC2の保持電圧を、増幅回路A3において極性を反転してホールドコンデンサC1に印加する。即ちドループ補正回路20は、ホールドコンデンサC1にその保持電圧と逆極性のドループ補正電圧を印加する。ドループ補正電圧の印加によりホールドコンデンサC1のドループを長時間抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、入力信号のピーク電圧を所定時間保持するピークホールド回路に関し、特にホールドコンデンサに保持されている保持電圧のドループを補正するドループ補正ピークホールド回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来多数のピークホールドが提案され、ピークホールド回路の使用目的に応じて種々の付加回路を備えたピークホールドも提案されているが(特許文献1,2,3参照)、いずれの回路も、基本的構成は、図4のピークホールド回路と同じである。
図4(a)において、OA1は、入力側の増幅回路(演算増幅回路)、D1は整流用のダイオード、C1は、ホールドコンデンサ、OA2は、出力側のインピーダンス変換用の増幅回路(演算増幅回路)である。増幅回路OA1と増幅回路OA2の間にダイオードD1を接続し、ダイオードD1のカソードにホールドコンデンサC1の一端を接続し、他端を接地してある。
入力端子inの入力信号は、ダイオードD1により整流されてホールドコンデンサC1に供給され、ホールドコンデンサC1を充電する。ホールドコンデンサC1の充電電圧は、図4(b)のように、漸次上昇してピーク電圧VC1pに達し、そのピーク電圧は、ホールドコンデンサC1に保持される。ホールドコンデンサC1の保持電圧は、増幅回路OA2を介して出力端子outから渦電流探傷装置等の信号処理回路、信号比較回路等(図示せず)へ供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−288990号公報
【特許文献2】特開2000−171495号公報
【特許文献3】特開平11−194142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のピークホールド回路は、ホールドコンデンサC1や増幅回路OA2等のリークを避けられず、また出力側増幅回路OA2のインピーダンスの無限大化は困難であるため、ホールドコンデンサC1の充電電圧は、ピーク電圧VC1pに達した時点から放電が始まり、ホールドコンデンサC1の保持電圧は、図1(b)の放電波形VC1のように時間とともに減少する。即ちいわゆるドループが生じる。したがってホールドコンデンサC1の保持電圧を、長時間ピーク電圧VC1pに保持することは困難である。そしてドループを抑制するには、ホールドコンデンサC1を大きくしなければならない。
本願発明は、ホールドコンデンサを大きくすることなくドループを抑制して、長時間(例えば2〜3分間)ピーク電圧を保持できるピークホールド回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、その目的を達成するため、請求項1に記載のドループ補正ピークホールド回路は、入力信号のピーク電圧を保持するホールドコンデンサ(C1)を備えたピークホールド回路、ピークホールド回路のホールドコンデンサ(C1)の保持電圧と逆極性の電圧を発生するドループ補正回路(20)を備え、ドループ補正回路(20)をピークホールド回路のホールドコンデンサ(C1)の一端に接続してあることを特徴とする。
請求項2に記載のドループ補正ピークホールド回路は、請求項1に記載のドループ補正ピークホールド回路において、前記ドループ補正回路(20)は、入力信号の電圧を保持するホールドコンデンサ(C2)を備えたドループ補正ホールド回路を備えていることを特徴とする。
請求項3に記載のドループ補正ピークホールド回路は、請求項2に記載のドループ補正ピークホールド回路において、前記ドループ補正回路(20)は、前記ドループ補正ホールド回路のホールドコンデンサ(C2)の保持電圧の極性を反転する増幅回路(A3)を備えていることを特徴とする。
請求項4に記載のドループ補正ピークホールド回路は、請求項1、請求項2又は請求項3に記載のドループ補正ピークホールド回路において、前記ピークホールド回路及び前記ドループ補正ホールド回路は、入力側の増幅回路(OA11,OA21)と出力側増幅器(OA12,OA22)の間にダイオード(D1,D2)を接続し、そのダイオードのカソードにホールドコンデンサ(C1、C2)の他端を接続してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本願発明は、ピークホールド回路のホールドコンデンサのドループを抑制できるから、小さなホールドコンデンサを用いて長時間ピーク電圧を保持できる。また本願発明は、ピークホールド回路のホールドコンデンサに、そのホールドコンデンサの保持電圧と逆極性の電圧を印加するだけでドループを抑制できるから、ドループを簡単に補正することができる。
本願発明のドループ補正回路は、ドループ補正ホールド回路に、ピークホールド回路と同じ構成の回路を用いることができるから回路構成が簡単になる。またドループ補正ホールド回路の保持電圧は、極性反転用の増幅回路を設けるだけで極性を反転できるから、ドループ補正回路は、ドループ補正電圧を簡単に発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本願発明の実施例に係るドループ補正ピークホールド回路の基本的構成を示す。
【図2】図2は、本願発明の実施例に係るドループ補正ピークホールド回路の具体的構成を示す。
【図3】図3は、図2のドループ補正ピークホールド回路の動作を説明する図である。
【図4】図4は、従来のピークホールド回路の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1〜図3により本願発明の実施例に係るドループ補正ピークホールド回路を説明する。
【実施例】
【0009】
まず図1について説明する。
図1(a)は、ドループ補正ピークホールド回路の基本的構成を示し、図1(b)は、ホールドコンデンサの保持電圧とドループ補正電圧の放電波形を示す。
図1(a)において、ドループ補正ピークホールド回路は、入力側の増幅回路(演算増幅回路)OA11、整流用のダイオードD1、ホールドコンデンサC1、出力側の増幅回路(演算増幅回路)OA2、及びドループ補正回路20を備え、増幅回路OA11、ダイオードD1、ホールドコンデンサC1、増幅回路OA2は、ピークホールド回路を構成する。
【0010】
増幅回路OA11は、ダイオードD1の減衰を補償してダイオードD1の電位を0にする増幅回路であり、増幅回路OA12は、増幅度1の高インピーダンス変換用の増幅回路である。ドループ補正回路20は、ホールドコンデンサC1の保持電圧のドループを補正する回路で、ホールドコンデンサC1の保持電圧と逆極性の電圧をホールドコンデンサC1に印加する回路である。
ダイオードD1は、増幅回路OA11と増幅回路OA12の間に接続し、ホールドコンデンサC1は、一端をダイオードD1のカソードに接続し、他端をドループ補正回路20に接続してある。即ち従来のピークホールド回路は、ホールドコンデンサの他端を接地してあるが、本実施例は、その他端をドループ補正回路20に接続してある。
【0011】
ホールドコンデンサC1は、入力端子inの入力信号(パルス信号)によって充電し、充電電圧は、図1(b)のようにピーク電圧VC1pに達する。ホールドコンデンサC1は、従来のように一端を接地した場合、ホールドコンデンサC1の保持電圧(充電電圧)は、ピーク電圧VC1pに達した時点で放電を開始して放電波形VC1のように時間とともに減衰するが、ホールドコンデンサC1の他端にドループ補正回路20を接続して、ピーク電圧VC1pと逆極性のドループ補正電圧(ピーク電圧VC2p)を印加すると、ホールドコンデンサC1の保持電圧の放電開始を遅らすことができ、ピーク電圧VC1pの減衰を補正することができる。ドループ補正回路20のドループ補正電圧は、ピーク電圧VC2pから時間とともに図1(b)の放電波形VC2のように減衰するが、ホールドコンデンサC1は、ドループ補正電圧が0になるまでピーク電圧VC1pを保持することができる。
【0012】
図2は、図1のドループ補正ピークホールド回路の具体例を示す。
増幅回路OA11、ダイオードD1、ホールドコンデンサC1、増幅回路OA12は、図1(a)と同じようにピークホールド回路を構成する。増幅回路OA21、ダイオードD2、ホールドコンデンサC2、増幅回路OA22は、ドループ補正ホールド回路を構成する。ホールドコンデンサC2の一端はダイオードD2のカソードに接続し、他端は接地してある。なおドループ補正ホールド回路の構成は、ピークホールド回路と同じである。増幅回路A3は、増幅回路OA22の出力電圧の極性を反転する増幅回路であり、増幅回路(演算増幅回路)OA3は、増幅回路OA22と同じインピーダンス変換用の増幅回路である。そして増幅回路OA21、ダイオードD2、ホールドコンデンサC2、増幅回路OA22、増幅回路A3、増幅回路OA3からなる回路は、図1(a)のドループ補正回路20に相当する。V1は、電圧源で入力信号の信号源であり、V2,V3は、増幅回路OA11,OA12,OA21,OA22,OA3の電源である。30は、絶対値回路で、プラス・マイナスに振れる入力信号をプラスにのみ振れる信号に変換する回路である。
【0013】
電圧源V1の入力信号は、絶対値回路30を介して増幅回路OA11,OA21へ供給され、ホールドコンデンサC1,C2を充電する。ホールドコンデンサC1の保持電圧は、増幅回路OA12を介して出力端子outへ供給する。ホールドコンデンサC2の保持電圧は、増幅回路OA22を介して増幅回路A3へ供給される。増幅回路A3は、その保持電圧の極性を反転して増幅回路OA3へ供給し、増幅回路OA3は、ホールドコンデンサC1へ印加する。即ちホールドコンデンサC1には、ドループ補正回路20からホールドコンデンサC1の保持電圧と逆極性のドループ補正電圧が印加される。
【0014】
図3は、図2のドループ補正ピークホールド回路の動作を説明する図である。
図3(a)は、図2のドループ補正ピークホールド回路の一部を取り出した回路図であり、図3(b)は、図2のドループ補正ピークホールド回路の保持電圧の放電波形を示す。
図3(b)において、VC1pは、ホールドコンデンサC1に保持されているピーク電圧、VC1は、その放電波形、VC2pは、ホールドコンデンサC2に保持されているピーク電圧、VC2は、その放電波形である。
ホールドコンデンサC2の充電電圧は、ピーク電圧VC2pに達した時点から放電を開始し、放電波形VC2のように減衰して時間tc2で0になる。一方ホールドコンデンサC1の充電電圧は、ピーク電圧VC1pに達した時点では、逆極性のホールドコンデンサC2の保持電圧VC2pが印加されているから、放電を開始しないが、ホールドコンデンサC2の保持電圧が0になる時間tc2から放電を開始し、放電波形VC1のように減衰して時間tc1で0になる。したがってホールドコンデンサC1は、時間0〜tc2の間ピーク電圧VC1pを保持することができる。即ち時間0〜tc2の間、ホールドコンデンサC1のドループを抑制することができる。
【符号の説明】
【0015】
20 ドループ補正回路
30 絶対値回路
A3 増幅回路
OA3,OA11〜OA22 増幅回路(演算増幅回路)
V1 電圧源(信号源)
V2,V3 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号のピーク電圧を保持するホールドコンデンサ(C1)を備えたピークホールド回路、ピークホールド回路のホールドコンデンサ(C1)の保持電圧と逆極性の電圧を発生するドループ補正回路(20)を備え、ドループ補正回路(20)をピークホールド回路のホールドコンデンサ(C1)の一端に接続してあることを特徴とするドループ補正ピークホールド回路。
【請求項2】
請求項1に記載のドループ補正ピークホールド回路において、前記ドループ補正回路(20)は、入力信号の電圧を保持するホールドコンデンサ(C2)を備えたドループ補正ホールド回路を備えていることを特徴とするドループ補正ピークホールド回路。
【請求項3】
請求項2に記載のドループ補正ピークホールド回路において、前記ドループ補正回路(20)は、前記ドループ補正ホールド回路のホールドコンデンサ(C2)の保持電圧の極性を反転する増幅回路(A3)を備えていることを特徴とするドループ補正ピークホールド回路。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に記載のドループ補正ピークホールド回路において、前記ピークホールド回路及び前記ドループ補正ホールド回路は、入力側の増幅回路(OA11,OA21)と出力側増幅器(OA12,OA22)の間にダイオード(D1,D2)を接続し、そのダイオードのカソードにホールドコンデンサ(C1、C2)の他端を接続してあることを特徴とするドループ補正ピークホールド回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−244610(P2010−244610A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91619(P2009−91619)
【出願日】平成21年4月4日(2009.4.4)
【出願人】(390002808)マークテック株式会社 (42)
【Fターム(参考)】