説明

ドレッシング装置、ドレッシング方法および研磨装置

【課題】研磨パッドの磨耗とドレッサの汚染を防ぎながらドレッシングを行なうこと。
【解決手段】研磨パッド1のドレッシング処理に用いるドレッシング液として、純水に微細気泡を混ぜたものを用いる。さらにドレッサ10を円環状とし、この円環状の中空部分にドレッシング液を供給しながらドレッシング処理を行なう。ドレッサの中空部分に供給された、微細気泡を含有するドレッシング液は、ドレッサの中空部分に一定時間滞留し、ドレッシング液中の微細気泡が、研磨パッド1やドレッサ10等についたゴミを吸着、除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、ドレッシング装置、ドレッシング方法および研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハ(以下単に「ウエーハ」ということもある。)等の研磨には、CMP(化学機械研磨)処理が多く採用されている。
【0003】
これは、たとえばアルカリ性溶液にシリカ等からなる砥粒を懸濁させた研磨液を研磨パッドに供給しながらウエーハを研磨パッドに押し当てて相対運動させ、ウエーハ表面を研磨する処理である。
【0004】
このCMPに用いられる研磨パッドは、表面が毛羽立った状態に維持される必要がある。その理由は、ウエーハを研磨するための砥粒をこの毛羽に保持させるためである。
【0005】
ところで、この研磨パッドは、使用回数を重ねるにつれ、表面の毛羽がなくなってくる。また、研磨パッドが多孔質材料から形成されていると、その表面に存在する開口に研磨屑や砥粒塊などが入り込んで目詰まりを起こす。
【0006】
そこで、研磨作業の合間に研磨パッドのドレッシング処理が行なわれる。このドレッシング処理の例としては、研磨パッドに液体(ドレッシング液)をかけながら、砥粒を有するドレッサを研磨パッドに押し当て、擦り付けるものがあり、この処理により、研磨パッドの表面を毛羽立った状態に回復させ、目詰まりも解消するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−244458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ドレッシング処理は、高圧な液体を研磨パッドにかけながら、あるいは研磨パッドに対してドレッサを強い力で押し当てながら行なうなどの理由から、ドレッシング処理を繰り返して行なうと、研磨パッドの磨耗も早く、短期間で交換しなければならなかった。
【0009】
一方、ドレッサ自体も砥粒塊や研磨屑が付着して汚染され、頻繁にドレッサの洗浄をする必要があった。
【0010】
本発明の実施態様の目的は、研磨パッドの磨耗を極力防止することである。
【0011】
また他の実施態様の目的は、ドレッサの汚染を極力防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を達成するため、本発明の一実施形態のドレッシング装置は、
研磨パッドの表面に押し当てることによって当該研磨パッドのドレッシングを行なうドレッサと、
前記研磨パッドにドレッシング液を供給するドレッシング液供給手段と、
前記ドレッシング液に微細気泡を含有させる微細気泡含有手段と、
を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一実施形態のドレッシング方法は、
研磨パッドにドレッシング液を供給し、前記研磨パッドにドレッサを押し当てることによって前記研磨パッドのドレッシングを行なうドレッシング方法において、
前記ドレッシング液に微細気泡を含有させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一実施形態の研磨装置は、上述のドレッシング装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施の形態によれば、研磨パッドの磨耗を極力防止することができる。
【0016】
また、本発明の実施形態によれば、ドレッサの汚染を極力防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態であるドレッシング装置を有する研磨装置の全体構成図。
【図2】図1におけるドレッシング装置の概略構成図。
【図3】図1で用いる研磨パッドの概念平面図。
【図4】図3におけるX−X断面概念図であり、同図(a)はドレッシング処理前、同図(b)はドレッシング処理後の様子をそれぞれ示す断面概念図。
【図5】ドレッサのドレス面10aの拡大写真。
【図6】本発明の第2の実施形態であるドレッシング装置の概略構成図。
【図7】従来のドレッシングユニットの概略構成図。
【図8】本発明の第3の実施形態であるドレッシング装置の概略構成図。
【図9】図8におけるドレッサの変形例を示すドレッサのドレス面の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態であるドレッシング装置を有する研磨装置の全体構成図である。
【0020】
研磨装置100は、ドレッシングユニット(ドレッシング装置ともいう。)101と、研磨ユニット102を有して構成されている。
【0021】
ドレッシングユニット101は、後述する研磨処理によって失われた、研磨パッド1表面の毛羽を回復させたりする、ドレッシング処理を行なうユニットである。研磨パッド1の表面1aは毛羽Kを備えており(図4参照)、使用回数を重ねるにつれ、この毛羽Kの毛羽立った状態が維持されなくなってくる。
【0022】
また、この実施形態では、研磨パッド1は多孔質材料で形成され、その表面にも開孔Hが存在する。この開口Hには研磨屑や砥粒の塊が入り込みやすく、目詰まりが起こる。ドレッシングユニット101は、この研磨パッド1に発生する不具合を解消するためのものである。
【0023】
ドレッシングユニット101は、ドレッシング液を研磨パッド1および後述するドレッサ10へ供給するドレッシング液供給部4を有している。このドレッシング液供給部4は、図示省略の駆動部によってX、Y、Z軸方向に移動可能に保持される。なお、ここでX−Y平面とは、研磨パッド1の表面1aに沿う方向をいう。ドレッシング液供給部4はフレキシブル配管を介して貯留タンク6と接続され、移動するドレッシング液供給部4に対し貯留タンク6内の液体(ドレッシング液)が供給されるようになっている。
【0024】
貯留タンク6には、微細気泡生成部7が接続される。この微細気泡生成部7は、気体供給部8からの気体(例えばエア)と液体供給部9からの液体(例えば純水)を旋回方式により混合させて微細気泡を含有する微細気泡含有液、つまり微細気泡を含有するドレッシング液を生成する。そして、微細気泡生成部7にて生成された微細気泡含有液は、ドレッシング液として貯留タンク6に蓄積される。
【0025】
ここで、微細気泡とは、マイクロバブル、マイクロナノバブル、あるいはナノバブルなどの概念を含む微細気泡である。例えば、マイクロバブルは10μm〜数十μmの直径を有する気泡であり、マイクロナノバブルは数百nm〜10μmの直径を有する気泡であり、ナノバブルは数百nm以下の直径を有する気泡である。
【0026】
貯留タンク6内に貯留されるドレッシング液は、貯留タンク6と微細気泡生成部7間を循環するように構成されていて、微細気泡、例えばマイクロナノバブル(MNB)の濃度、粒径等がドレッシング処理に最適なものに保たれるようになっている。なお、微細気泡の径としては0.1〜50μmの範囲、濃度は、1E+5個/ml以上であると処理が効率的に行なえるので好ましい。
【0027】
図2は、図1におけるドレッシング装置の概略構成図である。
【0028】
研磨パッド1は、回転軸2によってその研磨表面1aが水平状態となるように支持される。回転軸2は、図示省略の制御部によって制御される駆動部3によって、図2中矢印A方向に回転させるように構成されている。
【0029】
ドレッシングユニット101には、図示省略の保持機構によって、X−Y平面内での回転およびX、Y、Z方向に移動可能に保持されるドレッサ10を有する。このドレッサ10のドレス面10a(図2において、研磨パッド1の表面1aに対向する側の面)には、ダイヤモンド砥粒が形成されている。また本実施形態でのドレッサ10は、研磨パッド1の直径の1/4程度の直径を有し、Z方向に延びる外周壁10bを有する円環状(閉環状)をなす。この外周壁10bの上端部は、円盤状の支持板10cで蓋をされる状態とされて内部に中空部分が形成され、支持板10cの中央付近にドレッサ液供給部4が接続される。そして、少なくともドレッシング処理中においては、ドレッサ10のX−Y平面内での移動に追従して、ドレッシング液供給部4も(図1参照)ドレッサ10ととともに移動し、研磨パッド1上でのドレッサ10の位置に拘らず、ドレッサ10の中空(中央)部分、つまり外周壁10bで囲まれる部分(円環状内部)に対し、その上方より、ドレッシング液供給部4内の流路40を介してドレッシング液が供給されるようになっている。ドレッサ10の中空部分に供給されるドレッシング液は、ドレッサ10と研磨パッド1との隙間よりドレッサ10の中空部分外に流出するものの、ドレッサ10と研磨パッド1の間に設けられた隙間に応じた一定時間、ドレッサ10の中空部分に保持された状態とされるようになっている。この場合、流路40の途中に流量調整弁を設け、この流量調整弁を図示省略の制御部によりコントロールすることで、ドレッシング液供給部4からの単位時間当たりのドレッシング液供給量を一定としても良いし、供給量を増加させたり減少させたりする制御を反復させるようにしても良い。
【0030】
図1に戻って、研磨ユニット102は研磨ヘッド12を有し、この研磨ヘッド12にて、ウエーハWがその被研磨面を研磨パッド1の表面1aに対向するようにして保持される。研磨ヘッド12は、研磨ヘッド回転軸13によって回転可能に保持される。研磨ヘッド回転軸13は、図示省略の制御部によって制御される研磨ヘッド駆動部14によって、図1中の矢印B方向に回転させられるようになっていて、研磨ヘッド回転軸13の回転により、研磨ヘッド12、ウエーハWも同方向に回転する。なお、研磨ヘッド駆動部14は、研磨ヘッド回転軸13をX、Y、Z方向に移動させることもできるようになっている。これにより、研磨ヘッド12に保持したウエーハWを、研磨パッド1の上方に位置付けたり、研磨パッド1に押し当てたり、研磨パッド1の径方向外方に設置された退避位置に位置付けたりすることを可能とする。
【0031】
研磨パッド1と研磨ヘッド12に向けては、研磨スラリー供給部11より研磨スラリーが供給される。研磨スラリーとしては、たとえばアルカリ性溶液にシリカ等からなる砥粒が懸濁した研磨液を用いる。
【0032】
なお、上記した駆動部3、ドレッシング液供給部4の図示省略の駆動部、ドレッサ10の図示省略の保持機構、微細気泡生成部7、研磨スラリー供給部11、研磨ヘッド駆動部14等は、図示省略の制御部により次に説明する動作を行なうように制御される。
【0033】
次に、研磨装置100の動作について説明する。
【0034】
本実施の形態で研磨装置100は、1枚のウエーハWの研磨処理が終了するとドレッシング処理を行ない、その後に別のウエーハWの研磨処理を行なうといった、研磨処理とドレッシング処理とを交互に行なう例である。もっとも、複数枚のウエーハに対して研磨処理を連続的に行い、ドレッシング処理が必要なタイミングで、ドレッシングユニット101によるドレッシング処理に切り換えるようにしても良い。
【0035】
研磨ユニット102による研磨処理は、次のように行なわれる。
【0036】
まず研磨処理に先立ち、ドレッシング液供給部4の図示省略の駆動部、ドレッサ10の図示省略の保持機構の作動により、ドレッサ10並びにドレッシング液供給部4は、研磨パッド1の上方よりも径方向外方の退避位置に位置付けられる。
【0037】
この状態で研磨ヘッド駆動部14は、ウエーハWを保持した研磨ヘッド12を研磨パッド1上方に位置付ける。つまり、ウエーハWの被研磨面が研磨パッド1の表面1aと対向した位置に位置付けられる。
【0038】
次に、研磨スラリー供給部11より研磨スラリーの供給が開始される。これとほぼ同時に、駆動部3によって回転軸2が回転し、研磨パッド1が回転する。さらに、研磨ヘッド駆動部14により、研磨ヘッド12を保持する研磨ヘッド回転軸13も回転を開始する。研磨パッド1と研磨ヘッド12は、たとえば、反対方向に回転する。両者の回転速度が定速に達すると、研磨ヘッド駆動部14によって研磨ヘッド12が下降し、保持しているウエーハWの被研磨面を予め設定した押圧力にて研磨パッド1の表面1aに所定時間押し当てる。このとき必要に応じて研磨ヘッド12は自転に加えて公転し、これにより、ウエーハWの被研磨面が研磨される。
【0039】
押し当て時間が所定時間経過してウエーハWの研磨処理が終了すると、研磨ヘッド駆動部14の駆動により、研磨ヘッド12は上昇し、そして研磨パッド1の上方よりも径方向外方に設けられたウエーハ受け渡し位置(退避位置でもある。)に移動する。これと並行して、研磨ヘッド回転軸13の回転停止、研磨スラリー供給部11からの研磨スラリー供給停止などの制御が行なわれる。ウエーハ受け渡し位置に位置付けられたウエーハWは、図示省略の回収手段にて回収され、次工程へと搬送される。
【0040】
本実施形態では、1枚のウエーハWに対して研磨処理が終了すると、研磨装置100はドレッシング処理を実行する。
【0041】
以下、ドレッシングユニット101によるドレッシング処理について説明する。
【0042】
研磨ヘッド12がウエーハ受け渡し位置(退避位置)に移動すると、退避位置に今まで位置付けられていたドレッサ10とドレッシング液供給部4が、研磨パッド1の上方に位置付けられる。そして、ドレッサ10は、回転を開始するとともに、下動し、予め設定された接触圧にて研磨パッド1の表面1aに押し当てられる。図2はこの状態を示している。
【0043】
ドレッサ10はこの状態で、図1に示すX−Y平面内にてランダムに移動する。ドレッサ10の移動中は、その動きに追従して、ドレッシング液供給部4も移動し、ドレッサ10の上方より、その中空(中央)部分、つまり外周壁10bで囲まれる部分(円環状内部)に向けてドレッシング液が供給される。
【0044】
ここで供給されるドレッシング液中には、微細気泡生成部7で生成されたマイクロナノバブル(MNB)等の微細気泡を含んでいる。マイクロナノバブルは、マイナス電位を有しており、研磨パッド1上の研磨屑等のプラスに帯電しているゴミを吸着する性質がある。
【0045】
ここで、従来のドレッシングユニットについて、考察してみる。
【0046】
従来のドレッシングユニットは、図7中の矢印A方向に回転する研磨パッド1に、円柱状または円筒状ドレッサ10Xの下面全平面を押し当てながら研磨パッド1に対して相対移動させるとともに、純水などのドレッシング液を、ドレッシング液供給部4Xによりドレッサ10Xの外方において研磨パッド1に向けて供給していた。
【0047】
このため、ドレッシング液を研磨パッド1に供給しても、研磨パッド1は回転しているため、研磨パッド1に供給されたドレッシング液は遠心力によって研磨パッド1の外方へ吹き飛んでしまい、ドレッシング処理が効率的に行なえないこともあった。
【0048】
これに対し、本実施形態によるドレッサ10は、前述のとおり円環状であり、ドレッシング液はドレッサ10の中空部分に供給される。ドレッサ10の中空部分に供給されたドレッシング液は、一定時間、ドレッサ10の中空部分に保持され(滞留し)、そしてドレッサ10のドレス面10aと研磨パッド1の表面1aとの隙間から流出する。
【0049】
一方、ドレッサ10の中空部分に対応(対向)する研磨パッド1の表面1aには、ドレッシング処理によって生じた研磨屑や砥粒など、除去が必要なものが存在している。
【0050】
ドレッシング液供給部4よりドレッサ10の中空部分に供給されるドレッシング液中にはマイクロナノバブル(MNB)などの微細気泡が多量に含まれる。これら微細気泡は、研磨パッド1の表面1aの毛羽の隙間にも容易に入り込み、毛羽に付着した研磨屑や砥粒等を十分に吸着する様にパッドとドレッサ間を通過する際に、最適なサイズになるように調整する。ここで用いる微細気泡のサイズとしては、先に述べたように、0.1〜50μmの範囲、濃度は、1E+5個/ml以上であることが好ましい。
【0051】
そして、ドレッサ10が移動しながら回転し、研磨パッド1もドレッサ10の回転方向とは逆に回転しているため、ドレッシング液は、ドレッサ10の移動に伴って、徐々にドレッサ10のドレス面10aと研磨パッド1の表面1aとの隙間から流出する。この流出に伴って、研磨パッド1の表面1aから取り除かれた研磨屑や砥粒等が排出される。そしてドレッサ10より流出したドレッシング液は、研磨パッド1の回転による遠心力により、研磨パッド1の外周に吹き飛ばされて排出される。
【0052】
図3は、図1で用いる研磨パッド1の平面図、図4は、図3におけるX−X断面概念図であり、同図(a)はドレッシング処理前、同図(b)はドレッシング処理後の様子をそれぞれ示す断面概念図である。なお、説明上、開口Hをはじめとして、強調し拡大して描いてある。
【0053】
図4(a)に示すように、ドレッシング処理前の研磨パッド1には、研磨屑や砥粒などが堆積したゴミOMが、研磨パッド表面1aの毛羽K、あるいは開孔Hに付着している。
【0054】
これに対し、マイクロナノバブル(MNB)等の微細気泡を含むドレッシング液を用いてドレッシング処理を行なうと、ゴミOMを微細気泡が吸着して、取り除き、微細気泡だけが残留する。加えて、ドレッサ10により研磨パッド1の表面1aが削りとられ、毛羽Kの毛羽立ちが良好となる。
【0055】
このようにドレッシング液中に微細気泡が存在し、この微細気泡が研磨パッド1の表面1aに存在する研磨屑や砥粒等を効率よく取り除く。また、ドレッサ10の中空部分から流出したドレッシング液は、ドレッサ10と対向していない研磨パッド1の表面部分を伝わって流れるから、この流出したドレッシング液に接した研磨パッド1の表面1aにおいても研磨屑や砥粒等の除去が達成される。これらにより、ドレッシング処理時間が従来に比べて短時間で済み、その分ドレッサ10が研磨パッドと接している時間が少なくなることから、研磨パッド1の磨耗を従来に比べて極力防止することができる。
【0056】
ところで、ドレス面10aにはダイヤモンド砥粒が形成されており、これを研磨パッド1の表面1aに押し当て、擦り付けることによって、研磨パッド1の表面1aの毛羽Kの毛羽立ちを回復させたり、研磨屑や砥粒を除去することとなるが、このドレス面10aの砥粒と砥粒の間にも研磨屑等が入り込み、ドレッシング処理を繰り返すにつれ、ドレス面10aの汚染が進行する。
【0057】
ところが本実施形態のように、マイクロナノバブル(MNB)等の微細気泡を含有させたドレッシング液を用いてドレッシング処理を行なうと、微細気泡を含むドレッシング液が研磨パッド1の表面1aだけでなく、ドレッサ10のドレス面10aにも入り込むため、ドレッサ10のドレス面10aに付着している研磨屑や、砥粒についても、マイクロナノバブル(MNB)等の微細気泡によって除去されることとなり、ドレッシング処理を繰り返しても、ドレッサ10の汚染を極力防止することができる。
【0058】
図5(a)は、図7に示した従来装置にて、純水を用いてドレッシング処理を行なったときのドレッシング処理後のドレス面10aの様子、図5(b)は、純水にマイクロナノバブル(MNB)を含有させたものを用いてドレッシング処理を行なったときのドレッシング処理後のドレス面10aの様子である。どちらも使用したドレッサは同じで、純水の流量は、ともに0.1l/秒に設定し、それぞれ10分間ドレッシング処理を行なった。
【0059】
ドレッシング液にマイクロナノバブル(MNB)を含ませることによって、ドレス面10aの汚染防止にも有効であることが分かる。
【0060】
次に、本発明の第二の実施形態について、説明する。
【0061】
図6は、本発明の第2の実施形態であるドレッシング装置の概略構成図である。なお、前述の第1の実施形態と同一の部品については同一の符号を付し、その詳説は省略する。
【0062】
図6に示すドレッシングユニット(ドレッシング装置)201が第1の実施形態と相違する点は、ドレッシング液を供給する手段が、ドレッシング液供給部4に加えて、別のドレッシング液供給部41を備えている点である。つまり、ドレッシング液供給部が複数備えられている点である。
【0063】
ドレッシング液供給部41は、ドレッサ10によってドレッシング処理が行われている際に、図示省略の純水供給タンクより供給される純水を研磨パッド1に供給する。
【0064】
この実施形態によると、ドレッシング処理において、ドレッサ10の上方に位置するドレッシング液供給部4からはマイクロナノバブル(MNB)等の微細気泡を含有するドレッシング液がドレッサ10の中空部分に供給される。そして、ドレッサ10の中空部分に供給されたドレッシング液は、ドレッサ10と研磨パッド1の間に設けられた隙間に応じた一定時間、ドレッサ10の中空部分に保持された状態の後、ドレッサ10と研磨パッド1との隙間よりドレッサ10の中空部分外に流出する。この流出に伴って、研磨パッド1の表面1a、そしてドレッサ10のドレス面10aから研磨屑や砥粒等が取り除かれる。これは第1の実施形態の作用と同じである。この第2の実施形態では、ドレッサ10の中空部分よりこの中空部分の外部に流出したドレッシング液が、ドレッシング液供給部41から供給されるドレッシング液によって研磨パッド1の外側へと押し流されることになる。ドレッサ10の中空部分外に流出したドレッシング液には、マイクロナノバブル(MNB)等の微細気泡によって吸着された研磨屑や砥粒が含まれることになるが、ドレッシング液供給部41から供給されるドレッシング液によって、これらが研磨パッド1の外側へと円滑に押し流されて除去される。つまり、第2の実施形態によれば、ドレッシング液供給部4のみを用いてドレッシング処理を行なうよりも、研磨パッド1の表面1aに存在する研磨屑や砥粒を、より短時間で、しかも効率よく取り除くことができる。
【0065】
なお、ドレッシング液供給部41より供給されるドレッシング液を純水としたが、ドレッシング液供給部4より供給されるドレッシング液と同じように、微細気泡を含有しているドレッシング液としても良い。
【0066】
次に、本発明の第3の実施形態について、説明する。
【0067】
図8は、本発明の第3の実施形態であるドレッシング装置の概略構成図である。なお、前述の第1、第2の実施形態と同一の部品については同一の符号を付し、その詳説は省略する。
【0068】
図8に示すドレッシングユニット(ドレッシング装置)301が第1の実施形態と相違する点は、ドレッサ10Xが中実の円盤形状である点である。つまり、この実施形態におけるドッレサ10Xには、第1、第2の実施形態のドレッサのような中空部分を有していない。
【0069】
ところが、ドレッシング液供給部4からは、第1、第2の実施形態と同様のマイクロナノバブルMNBを含むドレッシング液が供給される。このマイクロナノバブルMNBを含むドレッシング液によって研磨パッド1の表面1aに存在する研磨屑や、砥粒等が効率よく取り除かれる。また、ドレッシングを繰り返すことによってドレッサ10Xのドレス面に付着した研磨屑や砥粒についても同様に取り除かれる。
【0070】
第1、第2の実施形態においては、微細気泡を含有した液体をドレッシング液として用いていることに加えて、ドレッサが閉環状であることによって、ドレッシング液が、ドレッサ10の中空部分に一定時間保持(滞留)されることにより、研磨パッド1の表面1aの研磨屑や砥粒などを効率的に取り除くことができる。これは、ドレッシング液に微細気泡が含有されていることと、ドレッサが閉環状であることの相乗効果によって、より、効率的な処理が行えることを示した例である。
【0071】
これに対し、本発明の第3の実施形態においては、ドレッサが閉環状ではないため、ドレッシング液が、ドレッサ10の中空部分に一定時間保持(滞留)されるといった作用はない。しかしながら、ドレッシング液に微細気泡を含有させたことによって、特にこの微細気泡の作用により、研磨パッドの表面に存在する研磨屑や砥粒等を従来(例えば図7)に比べ効率よく取り除き、研磨パッドの磨耗を防止することができる。あわせて、ドレッサの汚染を極力防止することもできる。
【0072】
特に第3の実施形態において、ドレッサのドレス面(研磨パッドの表面に対向する側の面)に溝を形成しても良い。
【0073】
図9は、ドレッサの変形例を示すドレッサのドレス面の概念図である。ここで示すドレッサ10Xにおいては、ドレス面10aの中央部に円形溝R1、そして円形溝R1からドレス面外周に延びる直線溝R2が形成されている。このような溝を形成することによって、ドレッサ面10aと研磨パッドの表面とが接触した状態でも、微細気泡を含有するドレッシング液がこの溝R1、R2を介してドレッサ面や研磨パッドの表面に行き渡りやすくなり、より効率的に処理を行うことが可能になる。
【0074】
このような溝は、第1実施例に示したような、ドレッサが閉環状のものに対して形成しても良い。
【0075】
なお、上記実施形態においては、研磨ユニット102による研磨処理時に、ドレッシングユニット101を構成する、ドレッサ10、ドレッシング液供給部4等を研磨パッド1の外側へ退避させ、ドレッシングユニット101によるドレッシング処理時には、研磨ユニット102を構成する、研磨ヘッド12等を研磨パッド1の外側へ退避させた。しかしながら、いずれも退避させずに研磨処理、ドレッシング処理を順次行なうようにしても、また、両方を同時並行して処理させるようにしてもよい。同時並行処理により、効率的に処理が行なえる。なお、同時並行処理の場合は、研磨スラリーとドレッシング液とが互いに悪影響を及ぼし合わない場合に限られる。
【0076】
また1枚のウエーハの研磨処理を中断させ、ドレッシング処理に切り換えるようにしても良い。
【0077】
また、上記実施形態においては、研磨パッド1の回転方向と、研磨ヘッド12、ドレッサ10の回転方向とが逆方向である形態を説明したが、これに限らず、同方向であっても、研磨処理、ドレッシング処理が行なうことが可能であればよい。
【0078】
また、上記実施形態においては、ドレッシング処理において、ドレッシング液に微細気泡を含有させる例を説明したが、研磨処理に用いる研磨スラリー中に微細気泡を含有させるようにしてもよい。微細気泡の存在により、研磨屑等を効率よく除去しながら研磨を行なうことができるので、ウエーハW等における被研磨面が、研磨屑により損傷を受けたりすることを防止できる。また、気泡が含有していることにより、処理液の消費量が少なくて済む。
【0079】
また、ドレッシング液に研磨液を含有させて用いるようにしても良い。研磨液は通常、凝集防止のためにpH調整されていることにより、これをドレッシング液に含有させた場合、ドレッシング液にも凝集防止効果が付与され、ドレッシングが効率的に行なわれることがが期待できる。
【0080】
また、研磨処理にて用いる研磨スラリー、ドレッシング処理にて用いるドレッシング液は、それぞれの処理を行うにあたり、処理に適しているものであればよく、アルカリ性溶液や純水に限られるものではない。
【0081】
また、微細気泡を発生させる際に用いる気体についても、上記実施形態においては空気を例に説明したが、これに限らず、窒素等、研磨処理、ドレッシング処理が行なえればよい。
【0082】
また、上記実施形態において、ドレッサ10はX−Y平面内においてランダムに移動する例を説明したが、これに限らず、例えば回転軸2の軸心を中心にその周りを公転するように移動制御しても良い。こうすることによって、ドレッサ10のドレス面10aをより均一にドレッシング処理することが可能になる。さらには、ドレッサ10が、例えば旋回アームの先端に保持されていて、揺動するように移動制御しても良い。
【0083】
また、上記実施形態において、微細気泡生成部7においては、旋回方式により微細気泡を生成するようにしたが、ベンチュリ方式、多孔質フィルタ方式等、種々の方式に置き換えることが可能である。
【0084】
さらに、これらによって生成される微細気泡の径についても、上記実施形態においては、マイクロナノバブル(MNB)を代表例に挙げたが、これに限らず、研磨パッドの目の粗さ等を考慮して、最適な径の気泡を選択することができる。
【0085】
また、上記実施形態においては、微細気泡発生部7で生成した微細気泡を含むドレッシング液を貯留タンク6に貯留してから研磨パッド1に供給する例を説明したが、これに限らず、貯留タンク6を介することなく供給するようにしても良い。
【0086】
例えば、ドレッシング液供給部4を通過するドレッシング液には大気圧下では過飽和状態となる量の気体を溶解させておき、このドレッシング液が、ドレッシング液供給部4から吐出した段階でオリフィスなどを用いた圧力解放によってドレッシング液内に微細気泡が発生するように構成したもの、あるいは、気体を溶解した液体が研磨パッド1の表面1a上に供給されたときに、研磨パッド1の表面1aの凹凸が気泡核となって、微細気泡が発生するように構成したものなどが考えられる。
【0087】
このような構成によれば、貯留タンク6に一旦貯留する例と比較して、微細気泡が生成されてから供給されるまでの間の時間がより短くなるために、気泡同士が結合して大きくなったり、消滅したりすることが少なくなるため、より微細な気泡が多量に生成させることが可能となり、研磨パッドの磨耗防止、あるいはドレッサの汚染防止を寄り効果的に行なえる。
【0088】
また、上記第1、2の実施形態において、ドレッサ10は、平面視で円環状のものを例としてあげたが、閉環状でなくても良く、また、閉環状であっても、平面視で四角形状などの多角形状等を有し、実施形態と同様に外周壁によって中空部分を形成するようにしても良い。つまりドレッシングを行える形状であれば適宜採用することができる。
【0089】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1 研磨パッド
1a 研磨パッドの表面
2 回転軸
3 駆動部
4 ドレッシング液供給部
5 ロータリージョイント
6 貯留タンク
7 微細気泡生成部
8 気体供給部
9 液体供給部
10 ドレッサ
10a ドレス面
10b 外周壁
10p 保持機構
10q 保持機構
11 研磨スラリー供給部
12 研磨ヘッド
13 研磨ヘッド回転軸
14 研磨ヘッド駆動部
40 流路
41 ドレッシング液供給部
100 研磨装置
101 ドレッシングユニット(ドレッシング装置)
102 研磨ユニット
201 ドレッシングユニット(ドレッシング装置)
W 半導体ウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドの表面に押し当てることによって当該研磨パッドのドレッシングを行なうドレッサと、
前記研磨パッドにドレッシング液を供給するドレッシング液供給手段と、
前記ドレッシング液に微細気泡を含有させる微細気泡含有手段と、
を有することを特徴とするドレッシング装置。
【請求項2】
前記ドレッサは閉環状であって、
前記ドレッシング液供給手段は、前記微細気泡が含有するドレッシング液を、閉環状の前記ドレッサの外周壁によって形成される中空部分に供給することを特徴とする請求項1記載のドレッシング装置。
【請求項3】
前記ドレッシング液供給手段を複数備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のドレッシング装置。
【請求項4】
研磨パッドにドレッシング液を供給し、前記研磨パッドにドレッサを押し当てることにより前記研磨パッドのドレッシング処理を行うドレッシング方法において、
前記ドレッシング液に微細気泡を含有させることを特徴とするドレッシング方法。
【請求項5】
前記ドレッサは閉環状であって、前記微細気泡を含有させた前記ドレッシング液を、閉環状の前記ドレッサの外周壁によって形成される中空部分に供給することを特徴とする請求項4記載のドレッシング方法。
【請求項6】
少なくとも、請求項1乃至3のいずれかに記載のドレッシング装置を有することを特徴とする研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−59854(P2013−59854A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166066(P2012−166066)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】