説明

ドーパミン−ベータ−ヒドロキシラーゼの末梢選択的阻害剤としてのイミダゾール誘導体、及びこれらの用途

【課題】なし
【解決手段】式Iの化合物、及びこれらの生産方法を記載する:
【化14】


(該式中、XはCH2、O、又はSであり、かつnは1、2、又は3である。但し、XがCH2の場合、nは1でないとする。)。該化合物は、高血圧症、及び慢性心不全のような、心臓血管疾患を処置するための、潜在的価値のある薬剤特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーパミン-β-ヒドロキシラーゼの末梢性-選択的阻害剤、及びそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ドーパミン-β-ヒドロキシラーゼ(DβH)阻害剤開発の関心は、高血圧症、又は慢性心不全のような心臓血管疾患に苦しむ患者において、この酵素阻害が、有意な臨床的改善を提供できるという前提をもとに集中している。DβH阻害剤を用いる理論的根拠は、ドーパミンの酵素的ヒドロキシル化を介して得られるノルアドレナリンの生合成を阻害するという、これらの能力に基づいている。神経液性システム、主に交感神経系の活性化は、鬱血性心不全の主要な臨床症状である(Parmley, W.W.の論文、Clinical Cardiology、18:440-445、1995)。鬱血性心不全患者は、血漿ノルアドレナリン濃度の上昇(Levine, T.B.らの論文、Am. J. Cardiol., 49:1659-1666、1982)、中枢交感神経流出の増加(Leimbach, W.N.らの論文、Circulation, 73:913-919、1986)、及び心臓ノルアドレナリン溢出の増大(Hasking, G.J.らの論文、Circulation, 73:615-621、1966)を起こす。心筋を、長期渡り、かつ過剰にノルアドレナリンに曝露することは、心臓β1-アドレナリン受容体の下方制御、該左心室の再構築、不整脈、及びネクローシスの原因となり、これらのすべては、該心臓機能の完全性を低下させ得る。また、ノルアドレナリンの高血漿濃度である鬱血性心不全患者は、好ましくない持続的予後となる(Cohn、J.N.らの論文、N. Engl. J. Med., 311:819-823, 1984)。顕在的心不全を有さない無症候性患者において、既に、血漿ノルアドレナリン濃度が上昇しているという観察は、非常に重大ことであり、かつ確実に死亡及び罹患となることが予期され得る(Benedict, C.R.らの論文、Circulation, 94:690-697、1996)。これは、該活性化した交感神経促進は、単に、鬱血性心不全の臨床的マーカーとなるだけでなく、該疾患の進行的悪化に寄与し得ることを暗示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
アドレナリン受容体拮抗薬を用いた交感神経機能阻害は、有望なアプローチとなると思われていた。しかし、かなりの割合の患者は、β-ブロッカー処置に伴う、迅速な血行力学的損傷に耐えられない(Pfeffer, M.A.らの論文、N. Engl. J. Med., 334:1396-7, 1996)。交感神経機能を直接的に調節する、代わりの戦略は、交感神経において、ドーパミンからノルアドレナリンへの転換に関与する酵素である、DβHの阻害を介した、ノルアドレナリンの生合成を減らすことである。このアプローチは、該交感神経システムの突然阻害とは対照的に、段階的調節を含み、かつ腎血管拡張、利尿、及びナトリウム利尿のように、腎機能を向上させることができ、ドーパミン放出の増加を引き起こすという、いくつもの利点を有する。従って、DβH阻害剤は、従来のβ-ブロッカーよりも、有意な利点を備え得る。
【0004】
従って、DβHの幾つかの阻害剤は、論文に多く報告されている。例えば、ジスルフィラム(Goldstein, M.らの論文、Life Sci., 3:763、1964)、及びジエチルジチオカルバメート(Lippmann, W.らの論文、Biochem. Pharmacol., 18:2507、1969)のような、初期の第一及び第二世代の例、又はフザリン酸(Hidaka, H.の論文、Nature, 231、1971)、及び芳香族又はアルキルチオ尿素(Johnson, G.A.らの論文、J. Pharmacol. Exp. Ther., 171:80, 1970)は、効果が弱いことが認められ、DβHに対する低い選択性を示し、かつ有毒な副作用を引き起こす。しかし、例えば、ネピカスタト(nepicastat)(RS-25560-197、IC50 9nM) (Stanley, W.C.らの論文、Br. J Pharmacol., 121:1803-1809、1997)のような、DβH阻害剤の第三世代は、非常に強い効果を有することが認められ、早期臨床試験の実用化に達した。第一及び第二世代のDβH阻害剤に関連した、幾つかの問題は全くないが、非常に重大な発見は、ネピカスタトが、血液脳関門(BBB)に渡り、それによって、該薬剤の好ましくなく、かつ潜在的に重大なCNS副作用を引き起し得る状態となる、中枢並びに末梢効果を生じ得ることが見つかったことである。従って、特定の心臓血管疾患の処置に用いることができる、DβHの強力な、無毒性な、かつ末梢選択的な阻害剤の果されていない臨床的な要求が、未だ残されている。CNS効果の全くない、ネピカスタトと類似の、又は同様の強い効果を有するDβH阻害剤は、今までに先行技術に記載された全DβH阻害化合物を超えた、有意な進歩を提供するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
我々は、意外にも、炭素環への特定のヘテロ原子の組込み、及び/又は該ネピカスタトのコア構造のアミノアルキル側鎖の伸長により、DβH阻害に対して、潜在的有用性の有意な、及び顕著な効果を有する、一連の化合物を生じることを発見した。これらの化合物の多くは、強力な効果、及び脳接近の有意な低下に寄与し、強力な、及び末梢選択的なDβH阻害剤となる。従って、本発明は、一般式Iの化合物、及び医薬として許容し得るそれらの塩に関連するものである;
【0006】
【化8】

【0007】
(式中、R1、R2、及びR3は、同一、又は異なり、かつ水素原子、ハロゲン、アルキル、アルキルアリール、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノ、又はジアルキルアミノ基を示し;R4は、水素原子、アルキル、又はアルキルアリール基を示し;Xは、CH2、酸素原子、又は硫黄原子を示し;nは1、2、又は3であり、但し、nが1の場合、XはCH2でなく;かつ各(R)-、及び(S)-エナンチオマー、又はエナンチオマーの混合物である。)。
【0008】
他に記述がない限り、本明細書中において、該用語アルキル(それ自身として使用される、又は他の部位と組合わせて使用される)は、アリール、アルコキシ、ハロゲン、アルコキシカルボニル、又はヒドロキシカルボニル基により任意に置換されている、炭素原子1〜6個を含む、直線状又は分岐状の炭化水素鎖のことを意味し;該用語アリール(それ自身として使用される、又は他の部位と組合わせて使用される)は、アルキルオキシ、ハロゲン、又はニトロ基で任意に置換されている、フェニル又はナフチル基のことを意味し;かつ該用語ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素のことを意味する。
他の態様において、本発明は、式Iの化合物の製造方法を提供する。下記式IIに準ずる幾つかの化合物(式中、Xが、メチレン(CH2)、酸素原子、又は硫黄原子を示す。)は、下記文献において、公知のものであり(Martinez, G.R.らの文献、米国特許第5,538,988号、1996年7月23日;Eriksson、M.、PCT国際公開番号WO 9959988A1、1999年11月25日;Napoletano, M.、PCT国際公開番号WO 9608489A1、1996年3月21日;Sarda, N.らの論文、tetrahedron Lett., 17:271-272, 1976;Neirabeyeh, M.Al らの論文、Eur. J. Med. Chem., 26:497-504、1991)、かつ他のものは、当業者により生産することができる。式IIに準ずる化合物は、キラルであり、かつ従って式IIは、光学的に純粋な各(R)-、及び(S)-、双方のエナンチオマー、又はエナンチオマーの混合物を表す。
【0009】
【化9】

【0010】
式Iの化合物を、不活性有機溶媒中、及び有機酸の存在下、式IIの化合物(式中、XはCH2、酸素原子、又は硫黄原子;R1、R2、及びR3は、同一、又は異なり、かつ水素原子、ハロゲン、アルキル、アルキルアリール、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノ、又はジアルキルアミノ基である。)と、下記式IIIの化合物と、水溶性のチオシアン酸塩とを反応させることにより製造する:
【0011】
【化10】

【0012】
(式中、nは1、2、又は3を示し;nが1、又は2の場合、R4は水素、アルキル、又はアルキルアリール基であり;R5は、ヒドロキシル基の保護基を示し、かつR6は、アミノ基の保護基を示し;nが3の場合、R5は上述のように規定されるが、R4、及びR6は互いに、フタルイミド基を表す。)。ここで、該水溶性チオシアン酸塩は、アルカリ金属チオシアン酸塩、又はチオシアン酸テトラアルキルアンモニウムである。
【0013】
適切なアルカリ金属チオシアン酸塩は、チオシアン酸ナトリウム、リチウム、及びセシウムであり、チオシアン酸カリウムが好ましい。
nが1である、式IIIの化合物は、公知のものであり(Wolf, E.らの論文、Can. J. Chem., 75:942-948, 1997)、かつnが2、又は3である、式IIIの化合物は、新規化合物であり、当業者が製造できるものである(実施例参照)。好ましい該ヒドロキシル基の保護基(R5)は、トリアルキルシリル、トリフェニルシリル、フェニルジアルキルシリル、又はアルキルジフェニルシリル基から選択される、有機シリル化合物を含む。tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基が、特に好ましい。好ましい該アミノ基の保護基(R6)は、アルキルカルバメート、特にt-ブチルカルバメート(Boc)基、及びアルキルアリールカルバメートのような、カルバメート類を含む。該反応を、式IIIの化合物の小過剰量、及びチオシアン酸カリウムを用いて行うことができる(好ましくは、1.1〜1.3当量)。
また、本発明は、R1、R2、及びR3の少なくとも1つが、フッ素原子である、式IIの化合物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
該反応を、実質的に不活性な溶媒(好ましくは、酢酸エチル)中、及び種々の温度(好ましくは、該溶媒の還流温度)で行うことができる。好ましい有機酸は、酢酸である。nが1である、式IIIの化合物を用いた場合、その結果生じる下記式IVの中間体を、適切な溶媒下、無機酸で処置し、該Bocアミノ保護基を除去し、かつ式Iの化合物を得る(スキーム1)。好ましい無機酸は、塩酸であり、かつ好ましい溶媒は、酢酸エチルである。
nが2である、式IIIの化合物を用い、かつR4が水素原子の場合、下記式V、及びVIの中間生成物の混合物を、酢酸エチル中、塩酸と反応させ、式Iに対応する単一化合物を得る(スキーム2);R4が、アルキル(アリールで置換されたアルキルを含む。)の場合、式Vの該単一中間生成物を、酢酸エチル中、塩酸と反応させ、式Iの化合物を得る。
nが3である、式IIIの化合物を用いた場合、文献(Osby らの論文、tetrahedron Lett., 1984, 25(20), 2093-2096)に記載されているように、その結果生じる下記式VIIの中間体を、適切な溶媒システム下、水素化ホウ素ナトリウム、次いで酢酸で処置し、該フタルイミドアミノ保護基を除去し、式Iの化合物を得る(スキーム3)。式Iの化合物は、良い純度で得られるが、好ましくは、適切な溶媒で、再結晶することができる。
【0015】
【化11】

【0016】
【化12】

【0017】
【化13】

【0018】
式Iの化合物の医薬組成物の調製のため、不活性の医薬として許容し得るキャリアを、該活性化合物と混合する。該医薬として許容し得るキャリアを、固体、又は液体とすることができる。固体形態の製剤には、粉末、錠剤、分散性顆粒剤、及びカプセルがある。固体キャリアを、希釈剤、調味剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、結合剤、又は錠剤崩壊剤としても働き得る、一以上の物質とすることができ;また、封入物質とすることができる。
好ましくは、該医薬製剤は、例えば、包装製剤のような、単位投与量形態であり、該包装は、バイアル又はアンプル中に包装された錠剤、カプセル、及び粉末のような製剤の分離量を含む。
該投与量を、該患者の要求、該疾患の重症度、及び使用する該特定の化合物により、変えることができる。利便性のため、一日当りの投与量を分割し、かつ一日を通して、一部分に投与することができる。1日につき、1度、又は2度の投与が、最も適切であると予想される。特定の状況に対する、該適切投与量の決定は、医療技術の範囲内である。
【0019】
(物質と方法)
(インビトロ研究)
DβH活性を、以前に記述されている(Kojima, K., Parvez, S.、及びNagatsu T., 1993., カテコールアミン生合成における、酵素の分析、神経伝達物質、及び神経ペプチドの研究における方法、pp. 349-380:エルゼビア科学出版社)ように、ノルアドレナリンにする、β-ヒドロキシル化ドーパミンに対する該能力により評価した。ヒト神経芽細胞腫派生的細胞株である、SK-N-SH細胞(ATCC HTB-11)を、ヒトDβHの供給源として使用した。24ウェルプレート中で培養したSK-N-SH細胞を、200 mM酢酸ナトリウム、30 mM N-エチルマレイミド、5μM硫酸銅、0.5 mg/ml カタラーゼ水溶液、1 mMパーギリン、10 mMフマル酸ナトリウム、及び20 mMアスコルビン酸を含む反応培地中で、20分間、前保温した。その後、濃度を増加させるために加えたドーパミン(0.5から100 mMに)を有する反応培地中で、細胞を、さらに45分間インキュベートした。前保温、及びインキュベーションの間、該細胞を、継続的に振盪し、かつ37℃に維持した。該反応を、0.2 Mの過塩素酸を加えることにより、終了させた。該酸性化試料を、ノルアドレナリン分析ために高圧液体クロマトグラフィー中に注入する前に、4℃で保存した。酵素活性時に、新規DβH阻害剤の効果を研究する目的で行った実験において、対象となる試験化合物(0.3から10,000 nM)を、前保温、及びインキュベーション溶液に加えた;該インキュベーションは、2.5倍濃度(50 mM)のドーパミンの存在下で行った。該対応するKm値を、飽和実験下で測定した。
【0020】
(インビボ研究)
雄のNMRIマウス、又はウィスターラットを、ハーラン-インターファウナ(Harlan-Interfauna)(スペイン)から入手し、かつそれぞれ、コントロール実験条件下(12時間の光/暗の周期、及び室温22±1℃)で、1籠につき10、及び5匹とした。食物、及び水道水を、自由に与え、かつ実験を、日中に行った。
経過時間 = 0時間で、動物に、所定の投与量で、試験化合物、又はビヒクル(水)を胃管栄養法を介して、経口で配送し、投与した。2、6、9、12、18、及び24時間後の投与で、該動物を、切頭により犠牲にし、かつ心臓(左心房、及び左心室)、及び脳(前頭葉、及び頭頂葉)を分離し、重み付けし、かつ0.2 Mの過塩素酸量中、12時間、4℃、暗室下で保存した。インキュベート後、該得られた上清を、インキュベート液の遠心分離濾過(0.2μM / 10 min /〜5000 rpm、4℃)により収集した。上清を、分析するまで、-80℃で冷凍保存した。上清中のドーパミン、及びノルアドレナリンの定量化を、電気化学的検出器を有する高圧液体クロマトグラフィーで行った。
【0021】
(結果)
(インビトロ研究)
増加濃度のドーパミン存在下でのSK-N-SH細胞のインキュベーションは、ノルアドレナリンの濃度依存形成を生じ、Km(μM)、及びVmax(nmol mg タンパク質-1 h-1)の値は、それぞれ、20.6 ± 1.6、及び153.8 ± 4.4であった。これらの速度パラメーターから、飽和に近いドーパミン濃度(50 mM)を、阻害研究に用いることを選択した。表1に挙げるように、化合物2、3、4、5、6、7、8、10、12、16、19、24、26、28、及び29が、DβH活性を顕著に阻害することが分かった。化合物2、3、4、及びネピカスタト1(参照化合物)は、ヒトDβH活性に対して、低nM範囲のIC50値を有し、ドーパミンのβ-ヒドロキシル化の濃度依存による低下を示した(表2参照)。本発明の一部として、該分子の構造的改質が、驚くほどに顕著に向上したことが観測された生物学的特性に関与しているという、決定的な証拠を得るため、ネピカスタト1に最も密接に関連している化合物である、化合物4を、さらにインビボ研究に選択した。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
(インビボ研究)
(マウス)
心臓100 mg/kgにおける、化合物4、及びネピカスタト(1)に対する経時的実験は、両化合物が、持続効果があることを示した。4、及び1、双方による、ノルアドレナリン組織低下の最大効果時間(Tmax)は、投与後9時間で現れた(図1)。その後、ノルアドレナリン組織水準は回復し、24時間で、最初の組織水準の50%まで回復した。
Tmax(投与後9時間)で、4、及び1、双方は、左心室の投与量依存方法において、ノルアドレナリン水準を低下させた。4、及び1、双方の該最大阻害効果は、100 mg/kgの投与量で得られた。該心臓での結果とは対照的に、4は、脳の頭頂葉において、ノルアドレナリン組織水準に影響を与えることはなく、一方、1は、該脳のその部分において、ノルアドレナリン水準の投与量依存低下を生じた(図2)。
【0025】
(ラット)
該マウスに示したように、ノルアドレナリンに対する、4、及び1、双方の効果は、該投与量に依存し、かつその最大効果は、9時間で現れた(データは示さず。)。しかし、図3に示したように、該左心房、及び左心室、双方のノルアドレナリン水準に対する、4(100 mg/kg)の阻害効果は、1(100 mg/kg)により生じた効果よりも、さらに顕著であった。該マウスで観測した時と同様に、該脳の頭頂葉、及び該脳の前頭葉において、ノルアドレナリン組織水準に影響を与えることはなく、一方、1は、これらの脳部分において、ノルアドレナリン水準の顕著な低下を生じた。
ネピカスタト1とは全く異なる4は、該脳への阻害効果がなく、該末梢に独占的に、DβHの阻害効果を発揮すると結論付けられる。
【0026】
(結論)
一般式Iの幾つかの化合物は、非常に強力なドーパミン-β-ヒドロキシラーゼ阻害剤であり、かつ幾つかの心臓血管疾患の処置において、潜在的価値のある医薬特性を有し、ノルアドレナリンに至る、ドーパミンの酵素的ヒドロキシル化の減少は、高血圧症、及び慢性心不全のような、治療的利点となり得る。化合物4のような、該脳(CNS)への接近制限を伴う、持続効果的DβH阻害剤を使用する可能性は、該末梢のDβH阻害の効果、及び選択性を改善することにより、高血圧症、及び慢性心不全の処置において、新たな展望を開くこととなる。
ここで記載した本発明を、次の調製例により例示するが、本開示の範囲を制限すると解釈されるものではない。代わりの経路、及び類似構造は、当業者にとって明らかとなり得る。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
((R)-5-アミノメチル-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物3、表1))
酢酸エチル(3 mL)中、(R)-6,8-ジフルオロクロマン-3-イル-アミン塩酸塩(0.22 g、1.0 mmol)、[3-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-2-オキソプロピル]カルバミン酸tert-ブチルエステル (0.33 g、1.1 mmol)、チオシアン酸カリウム(0.11 g、1.1 mmol)、及び酢酸(0.3 mL、5.0 mmol)の撹拌混合液を、2時間還流し、室温に冷やし、次いで重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、かつ真空下で留去した。溶出液として酢酸エチル-石油エーテル混合液を用いて、該残留物を、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製した。該得られたオイル(0.23 g)を、酢酸エチル(2 ml)で溶解し、その後、酢酸エチル中の2M HCl溶液(2 mL、4 mmol)を加え、かつ該混合液を、室温下で、2時間撹拌した。該沈殿物を、濾過により除去し、かつ酢酸エチルで洗浄し、m.p.192℃(分解点)の結晶を得た。
【0028】
(実施例2−3)
当業者にとって公知である、上述の方法、及び関連した手順を応用し、かつ適切なクロマン-3-イル-アミン塩酸塩を用いることにより、下記化合物を調製した。
(R)-5-アミノメチル-1-クロマン-3-イル-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物24、表1)
(R)-5-アミノメチル-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物22、表1)
(実施例4)
((R,S)-5-アミノメチル-1-(6-ヒドロキシチオクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩)
酢酸エチル(3 mL)中、6-ヒドロキシチオクロマン-3-イル-アミン塩酸塩(0.22 g、1.0 mmol)、[3-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-2-オキソプロピル]カルバミン酸 tert-ブチルエステル(0.33 g、1.1 mmol)、チオシアン酸カリウム(0.11 g、1.1 mmol)、及び酢酸(0.3 mL、5.0 mmol)の混合溶液を、2時間還流し、次いで室温に冷やし、かつ重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、かつ真空下で留去した。溶出液として酢酸エチル-石油エーテル混合液を用いて、該残留物を、シリカのカラムクロマトグラフィーにより精製した。該得られたオイル(0.25 g)を、酢酸エチル(2 ml)で溶解し、その後、酢酸エチル中の2M HCl溶液(2 mL、4 mmol)を加え、かつ該混合液を、室温下で、2時間撹拌した。該沈殿物を、濾過により除去し、かつ酢酸エチルで洗浄し、融解せずに分解する結晶を得た。
【0029】
(実施例5)
((3,4-ジヒドロキシブチル)カルバミン酸 tert-ブチルエステル)
エタノール(50 mL)中に、室温下で4-アミノ-1,2-プロパンジオール(2.10 g、20 mmol)を撹拌した溶液に、ジ-tert-ブチルジカルボネート(4.80 g、22 mmol)を、一部分に加えた。該得られた混合液を、室温で2時間撹拌し、次いで真空下で留去し、かつ溶出液として酢酸エチル-石油エーテル混合液を用いて、シリカのカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色のオイルを得た。
(実施例6−7)
当業者にとって公知である、上述の方法、及び関連する手順を応用し、かつ適切なN-置換4-アミノ-1,2-プロパンジオールを用いることにより、下記化合物を調製した。
(3,4-ジヒドロキシブチル)メチルカルバミン酸 tert-ブチルエステル
(3,4-ジヒドロキシブチル)ベンジルカルバミン酸 tert-ブチルエステル
(実施例8)
([4-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-3-ヒドロキシブチル]カルバミン酸 tert-ブチルエステル)
室温下で、無水ジクロロメタン(40 mL)中に(3,4-ジヒドロキシブチル)カルバミン酸 tert-ブチルエステル(2.60 g、12.7 mmol)、トリエチルアミン(2.03 mL、14.50 mmol)、及び4-(ジメチルアミノ)ピリジン(0.05 g、0.4 mmol)を撹拌した混合液に、tert-ブチルジメチルクロロシラン(2.0 g、13.17 mmol)を、一配分加えた。該得られた混合液を室温下で18時間撹拌し、食塩水で洗浄し、かつ無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過、及び真空下での濃縮により、オイルを得、溶出液として酢酸エチル-石油エーテル混合液を用いて、シリカのカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色のオイルを得た。
【0030】
(実施例9−10)
当業者にとって公知である、上述の方法、及び関連する手順を応用し、かつ実施例6、及び7の化合物を用いることにより、下記化合物を調製した。
[4-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-3-ヒドロキシブチル]メチルカルバミン酸 tert-ブチルエステル
[4-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-3-ヒドロキシブチル]ベンジルカルバミン酸 tert-ブチルエステル
(実施例11)
([4-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-3-オキソブチル]カルバミン酸 tert-ブチルエステル)
室温下で、無水ジクロロメタン(40 mL)中のデス-マーチン ペルヨージナン(Dess-Martin periodinane)(5.0 g、11.8 mmol)溶液に、無水ジクロロメタン中の[4-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-3-ヒドロキシブチル]カルバミン酸 tert-ブチルエステル(3.77 g、11.8 mmol)を加えた。該得られた混合液を、室温下で1時間撹拌し、真空下で留去し、最初の容量の三分の一にし、かつシリカ充填カラムに流した。酢酸エチル-石油エーテル溶媒混合液を用いた溶出により、無色のオイルを得た。
【0031】
(実施例12−13)
当業者にとって公知である、上述の方法、及び関連する手順を応用し、かつ実施例9、及び10の化合物を用いることにより、下記化合物を調製した。
[4-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-3-オキソブチル]メチルカルバミン酸 tert-ブチルエステル
[4-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-3-オキソブチル]ベンジルカルバミン酸 tert-ブチルエステル
(実施例14)
((S)-5-(2-アミノエチル)-1-(5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物2、表1))
酢酸エチル(2 mL)中、(S)-5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル-アミン塩酸塩(0.17 g、0.79 mmol)、[4-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-3-オキソブチル]カルバミン酸 tert-ブチルエステル(0.28 g、0.87 mmol)、チオシアン酸カリウム(0.085 g、0.85 mmol)、water(0.014 mL、0.80 mmol)、及び酢酸(0.2 mL、3.3 mmol)の撹拌混合液を、7時間還流し、室温に冷やし、重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、かつ無水硫酸マグネシウムで乾燥し、かつ真空下で留去した。溶出液として酢酸エチル-石油エーテル混合液を用いて、該残留物を、シリカのカラムクロマトグラフィーにより精製した。該得られたオイル(0.24 g)を、酢酸エチル(2 ml)で溶解し、酢酸エチル中の2M HCl溶液(2 mL、4 mmol)を加え、かつ該混合液を、室温下で、2時間撹拌した。該沈殿物を、濾過により除去し、かつ酢酸エチルで洗浄し、融解せずに分解する結晶を得た。
【0032】
(実施例15)
当業者にとって公知である、上述の方法、及び関連する手順を応用し、かつ適切な1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル-アミン塩酸塩を用いることにより、下記化合物を調製した。
(S)-5-(2-アミノエチル)-1-(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物20、表1)
(実施例16)
((R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物4、表1))
酢酸エチル(30 mL)中、(R)-6,8-ジフルオロクロマン-3-イル-アミン塩酸塩(1.68 g、7.58 mmol)、[4-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-3-オキソブチル]カルバミン酸 tert-ブチルエステル(3.13 g、9.85 mmol)、チオシアン酸カリウム(0.96 g、9.85 mmol)、water(0.18 mL、10 mmol)、及び酢酸(3.0 mL、50 mmol)の撹拌混合液を、7時間還流し、室温に冷やし、重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、かつ真空下で留去した。溶出液として酢酸エチル-石油エーテル混合液を用いて、該残留物を、シリカのカラムクロマトグラフィーにより精製した。該得られたオイル(2.15 g)を、酢酸エチル(20 ml)で溶解し、酢酸エチル中の2M HCl溶液(20 mL、40 mmol)を加え、かつ該混合液を、室温下で、2時間撹拌した。該沈殿物を、濾過により除去し、酢酸エチルで洗浄し、融解せずに分解する結晶を得た。
【0033】
(実施例17−37)
当業者にとって公知である、上述の方法、及び関連する手順を応用し、かつ適切なクロマン-3-イル-アミン塩酸塩、及び[4-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-3-オキソブチル]カルバミン酸 tert-ブチルエステルを用いることにより、下記化合物を調製した。
(R)-5-(2-アミノエチル)-1-クロマン-3-イル-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物12、表1)
(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物16、表1)
(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物21、表1)
(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物23、表1)
(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物19、表1)
(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-フルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物7、表1)
(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-フルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物6、表1)
(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,7-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物8、表1)
(S)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物9、表1)
(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,7,8-トリフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物10、表1)
(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-クロロ-8-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物11、表1)
(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-メトキシ-8-クロロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物13、表1)
(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ニトロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物18、表1)
(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-ニトロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物17、表1)
(R)-5-(2-アミノエチル)-1-[6-(アセチルアミノ)クロマン-3-イル]-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物14、表1)
(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ヒドロキシ-7-ベンジルクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物15、表1)
(R)-5-(2-ベンジルアミノエチル)-1-(6-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物25、表1)
(R)-5-(2-ベンジルアミノエチル)-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物26、表1)
(R)-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-5-(2-メチルアミノエチル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物27、表1)
(R)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-5-(2-メチルアミノエチル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物28、表1)
(R)-1-クロマン-3-イル-5-(2-メチルアミノエチル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物29、表1)
【0034】
(実施例38)
((R,S)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-メトキシチオクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物30、表1))
酢酸エチル(2 mL)中、6-メトキシチオクロマン-3-イル-アミン塩酸塩(0.12 g、0.50 mmol)、[3-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-2-オキソプロピル]カルバミン酸 tert-ブチルエステル(0.17 g、0.55 mmol)、チオシアン酸カリウム(0.055 g、0.55 mmol)、水(0.009 g、0.50 mmol)、及び酢酸(0.2 mL、3.3 mmol)の撹拌混合液を、7時間還流し、室温に冷やし、重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、かつ真空下で留去した。溶出液として酢酸エチル-石油エーテル混合液を用いて、該残留物を、シリカのカラムクロマトグラフィーにより精製した。該得られたオイル(0.12 g)を、酢酸エチル(1 ml)で溶解し、酢酸エチル中の2M HCl溶液(1 mL、2 mmol)を加え、かつ該混合液を、室温下で、2時間撹拌した。該沈殿物を、濾過により除去し、酢酸エチルで洗浄し、融解せずに分解する結晶を得た。
(実施例39)
当業者にとって公知である、上述の方法、及び関連する手順を応用し、かつ適切なクロマン-3-イル-アミン塩酸塩を用いることにより、下記化合物を調製した。
(R,S)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ヒドロキシチオクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物31、表1)
(実施例40)
(2-[3-(2,2-ジメチル[1,3]ジオキソラン-4-イル)プロピル]イソインドール-1,3-ジオン)
室温下で、アセトニトリル(10 mL)中に3-(2,2-ジメチル-[1,3]ジオキソラン-4-イル)プロピルアミン(1.05 g、6.60 mmol)、及びカルボエトキシフタルイミド(1.45 g、6.60 mmol)を撹拌した混合液に、トリエチルアミン(0.92 mL、6.60 mmol)を、一配分加え、かつ該得られた混合液を室温下で18時間撹拌し、真空下で留去し、かつ該残留物を酢酸エチル(50 mL)で溶解した。該溶液を10%クエン酸溶液の食塩水で洗浄し、ついで、硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過、及び真空下での濃縮により、オイルを得、溶出液として酢酸エチル-石油エーテル混合液を用いて、シリカのカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色のオイルを得た。
【0035】
(実施例41)
(2-(4,5-ジヒドロキシペンチル)イソインドール-1,3-ジオン)
室温下で、THF(20 mL)中に2-[3-(2,2-ジメチル[1,3]ジオキソラン-4-イル)プロピル]イソインドール-1,3-ジオン(1.65 g、5.70 mmol)の撹拌混合液に、2N HCl溶液(15 mL、30 mmol)を、一配分加え、かつ該得られた混合液を室温下で2時間撹拌し、かつ次いで真空下で留去し、最初の容量の半分にした。該残留液を、NaClで飽和させ、かつ酢酸エチルで抽出した。該有機相を、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過、及び真空下での濃縮により、無色のオイルを得た。
(実施例42)
2-(4,5-ジヒドロキシペンチル)イソインドール-1,3-ジオンに対して、実施例8に記載した手順を応用することにより、下記化合物を調製した。
2-[5-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-4-ヒドロキシペンチル]イソインドール-1,3-ジオン
(実施例43)
2-[5-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-4-ヒドロキシペンチル]イソインドール-1,3-ジオンに対して、実施例11に記載した手順を応用することにより、下記化合物を調製した。
2-[5-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-4-オキソペンチル]イソインドール-1,3-ジオン
【0036】
(実施例44)
((S)-5-(3-アミノプロピル)-1-(5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩 (化合物5、表1))
酢酸エチル(3 mL)中、(S)-5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル-アミン塩酸塩(0.22 g、1.0 mmol)、2-[5-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-4-オキソペンチル]イソインドール-1,3-ジオン(0.38 g、1.05 mmol)、チオシアン酸カリウム(0.11 g、1.10 mmol)、水(0.18 g、1.0 mmol)、及び酢酸(0.3 mL、5.0 mmol)の撹拌混合液を、7時間還流し、室温に冷やし、重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、かつ真空下で留去した。溶出液として酢酸エチル-石油エーテル混合液を用いて、該残留物を、シリカのカラムクロマトグラフィーにより精製した。該得られたオイル(0.18 g)を、イソプロパノール(5 ml)とTHF(2 mL)との混合液で溶解した。室温下で、水(0.8 mL)、及び水素化ホウ素ナトリウム(0.066 g、1.74 mmol)を加え、かつ該混合液を、1.5時間撹拌した。酢酸(0.6 ml、10 mmol)を加え、かつ該溶液を2時間還流し、次いで、真空下で留去し、乾燥した。該残留物をアセトンで溶解し、該固体を濾過し、かつ該濾液を、酢酸エチル中の2N HCl溶液を用いて、酸性化した。該沈殿物を収集し、かつアセトンで洗浄し、融解せずに分解する結晶を得た。
【0037】
(実施例45)
((R)-5-(3-アミノプロピル)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩)
酢酸エチル(1.5 mL)中、(R)-6,8-ジフルオロクロマン-3-イル-アミン塩酸塩(0.11 g、0.50 mmol)、2-[5-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-4-オキソペンチル]イソインドール-1,3-ジオン(0.19 g、0.55 mmol)、チオシアン酸カリウム(0.055 g、0.55mmol)、水(0.009 g、0.50 mmol)、及び酢酸(0.15 mL、2.5 mmol)の撹拌混合液を、7時間還流し、室温に冷やし、重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、かつ真空下で留去した。溶出液として酢酸エチル-石油エーテル混合液を用いて、該残留物を、シリカのカラムクロマトグラフィーにより精製した。該得られたオイル(0.10 g)を、イソプロパノール(2.5 ml)とTHF(1 mL)との混合液で溶解した。室温下で、水(0.4 mL)、及び水素化ホウ素ナトリウム(0.038 g、1.0 mmol)を加え、かつ該混合液を1.5時間撹拌した。酢酸(0.3 ml、5 mmol)を加え、かつ該溶液を、2時間還流し、かつ真空下で留去し、乾燥させた。該残留物をアセトンで溶解し、該固体を濾過し、かつ該濾液を、酢酸エチル中の2N HCl溶液(2 mL、4 mmol)で酸性化した。該沈殿物を収集し、かつアセトンで洗浄し、融解せずに分解する結晶を得た。
【0038】
(実施例46)
((R,S)-5-(3-アミノプロピル)-1-(6-ヒドロキシチオクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩)
酢酸エチル(3 mL)中、6-ヒドロキシチオクロマン-3-イル-アミン塩酸塩(0.22 g、1.0 mmol)、2-[5-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-4-オキソペンチル]イソインドール-1,3-ジオン(0.38 g、1.05 mmol)、チオシアン酸カリウム(0.11 g、1.10 mmol)、水(0.18 g、1.0 mmol)、及び酢酸(0.3 mL、5.0 mmol)の撹拌混合液を、7時間還流し、室温に冷やし、次いで重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、かつ真空下で留去した。溶出液として酢酸エチル-石油エーテル混合液を用いて、該残留物を、シリカのカラムクロマトグラフィーにより精製した。該得られたオイル(0.17 g)を、イソプロパノール(5 ml)とTHF(2 mL)との混合液で溶解した。室温下で、水(0.8 mL)、及び水素化ホウ素ナトリウム(0.066 g、1.74 mmol)を加え、かつ該混合液を1.5時間撹拌した。酢酸(0.6 ml、10 mmol)を加え、かつ該溶液を、2時間還流し、かつ真空下で留去し、乾燥させた。該残留物をアセトンで溶解し、該固体を濾過し、かつ該濾液を、酢酸エチル中の2N HCl溶液(2 mL、4 mmol)で酸性化した。該沈殿物を収集し、かつアセトンで洗浄し、融解せずに分解する結晶を得た。
次に、付随の図面を、参考として作成する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、4、又はネピカスタト1を100 mg/kgで用い、経口から処置したマウスの左心室のノルアドレナリン水準の経過時間依存低下を示すグラフである。シンボルは、1グループにつき、5回測定した平均であり;縦線は、S.E.Mを示す。
【図2】図2は、該マウスの左心室、及び脳の頭頂葉における、4、又はネピカスタト1の経口投与後9時間のノルアドレナリン水準を示す、2つのグラフである。シンボルは、1グループにつき、5回測定した平均であり;縦線は、S.E.Mを示す。
【図3】図3は、該ラットの心臓(左心房、及び左心室)、及び脳(前頭葉、及び頭頂葉)における、4、又はネピカスタト1の経口投与後9時間のノルアドレナリン水準を示す、4つのグラフである。棒グラフは、1グループにつき5回測定した平均であり;縦線は、S.E.Mを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iの化合物、及び医薬として許容し得るそれらの塩:
【化1】

(式中、R1、R2、及びR3は、同一、又は異なり、かつ水素原子、ハロゲン、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノ、又はジアルキルアミノ基を示し;R4は、水素原子、アルキル、又はアルキルアリール基を示し;Xは、CH2、酸素原子、又は硫黄原子を示し;nは1、2、又は3であり、但し、nが1の場合、XはCH2でなく;かつ各(R)-、及び(S)-エナンチオマー、又はエナンチオマーの混合物であり;ここで、該用語アルキルは、アリール、アルコキシ、ハロゲン、アルコキシカルボニル、又はヒドロキシカルボニル基により任意に置換されている、炭素原子1〜6個を含む、直線状又は分岐状の炭化水素鎖を意味し;該用語アリールは、アルキルオキシ、ハロゲン、又はニトロ基で任意に置換されている、フェニル又はナフチル基を意味し;かつ該用語ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。)。
【請求項2】
下記請求項1記載の化合物:(S)-5-(2-アミノエチル)-1-(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(S)-5-(2-アミノエチル)-1-(5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-クロマン-3-イル-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-フルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-フルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,7-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(S)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,7,8-トリフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-クロロ-8-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-メトキシ-8-クロロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ニトロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-ニトロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-[6-(アセチルアミノ)クロマン-3-イル]-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-アミノメチル-1-クロマン-3-イル-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-アミノメチル-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ヒドロキシ-7-ベンジルクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-アミノメチル-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(3-アミノプロピル)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(S)-5-(3-アミノプロピル)-1-(5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R,S)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ヒドロキシチオクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R,S)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-メトキシチオクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-ベンジルアミノエチル)-1-(6-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-5-(2-ベンジルアミノエチル)-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-5-(2-メチルアミノエチル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩;(R)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-5-(2-メチルアミノエチル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩、又は(R)-1-クロマン-3-イル-5-(2-メチルアミノエチル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩。
【請求項3】
請求項1記載の式Iの化合物の該各(R)-、及び(S)-エナンチオマー、又はエナンチオマーの混合物、及び医薬として許容し得る塩の製造方法であって、実質的に不活性な溶媒中において、有機酸の存在下に、下記式IIの化合物の該各(R)-、又は(S)-エナンチオマー、又はエナンチオマーの混合物と、下記式IIIの化合物と、水溶性チオシアネートとを反応させ、続いて、その結果生じた下記中間生成物IV〜VIIを脱保護することを含む、前記製造方法:
【化2】

(式中、XはCH2、酸素原子、又は硫黄原子であり;R1、R2、及びR3は、同一、又は異なり、かつ水素原子、ハロゲン、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノ、又はジアルキルアミノ基である。);
【化3】

(式中、nは1、2、又は3を示し;nが1、又は2の場合、R4は水素、アルキル基であり;R5は、ヒドロキシル基の保護基を示し、かつR6は、アミノ基の保護基を示し;nが3の場合、R5は上述のように規定されるが、R4、及びR6は互いに、フタルイミド基を表す。);
【化4】

(ここで、該水溶性チオシアン酸塩は、アルカリ金属チオシアン酸塩、又はチオシアン酸テトラアルキルアンモニウムであり、かつ該用語アルキルは、アリール、アルコキシ、ハロゲン、アルコキシカルボニル、又はヒドロキシカルボニル基により任意に置換されている、炭素原子1〜6個を含む、直線状又は分岐状の炭化水素鎖のことを意味し;該用語アリールは、アルキルオキシ、ハロゲン、又はニトロフェニル基で任意に置換されている、フェニル又はナフチル基のことを意味し;かつ該用語ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素のことを意味する。)。
【請求項4】
治療的有効量の請求項1、又は2記載の化合物を含み、医薬として有効なキャリアと組合せた、薬剤組成物。
【請求項5】
薬剤として使用される、請求項1、又は2記載の化合物。
【請求項6】
ノルアドレナリンに至る、ドーパミンのヒドロキシル化を低下させることが、治療的利点となるような疾患を治療する薬剤の製造における、請求項1、又は2記載の化合物の使用。
【請求項7】
心臓血管疾患に苦しむ対象を治療する薬剤の製造における、請求項1、又は2記載の化合物の使用。
【請求項8】
高血圧症、又は慢性心不全を治療する薬剤の製造における、請求項1、又は2記載の化合物の使用。
【請求項9】
ドーパミン-β-ヒドロキシラーゼ阻害に使用する薬剤の製造における、請求項1、又は2記載の化合物の使用。
【請求項10】
下記式IIIの化合物:
【化5】

(式中、nは2を示し、R4は水素、又はアルキル基であり;R5は、ヒドロキシル基の保護基を示し、かつR6は、アミノ基の保護基を示し、ここで、該ヒドロキシル基の保護基が、トリアルキルシリル、トリフェニルシリル、フェニルジアルキルシリル、又はアルキルジフェニルシリル基であり;かつ該アミノ基の保護基が、アルキルカルバメート、又はアルキルアリールカルバメート基であり、かつここで、該用語アルキルは、アリール、アルコキシ、ハロゲン、アルコキシカルボニル、又はヒドロキシカルボニル基により任意に置換されている、炭素原子1〜6個を含む、直線状又は分岐状の炭化水素鎖を意味し;該用語アリールは、アルキルオキシ、ハロゲン、又はニトロ基で任意に置換されている、フェニル又はナフチル基を意味し;かつ該用語ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。)。
【請求項11】
下記式IIIの化合物:
【化6】

(式中、nは3を示し、R5は、ヒドロキシル基の保護基を示し;かつR4、及びR6は互いに、フタルイミド基を表し、ここで、該ヒドロキシル基の保護基が、トリアルキルシリル、トリフェニルシリル、フェニルジアルキルシリル、又はアルキルジフェニルシリル基である。)。
【請求項12】
下記式IIの化合物:
【化7】

(式中、R1、R2、及びR3は、同一、又は異なっていてもよく、かつフッ素、又は水素原子を示し、但し、Xが、請求項1に規定するものと同じである場合、R1、R2、及びR3は、フッ素原子を示す。)。
【請求項13】
(R)-6,8-ジフルオロ-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-3-アミン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−507261(P2006−507261A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542666(P2004−542666)
【出願日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004430
【国際公開番号】WO2004/033447
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(503003843)ポルテラ・アンド・シーエー・エスエー (6)
【Fターム(参考)】