説明

ナノチューブ・コンタクトを用いた半導体デバイスおよび方法

【課題】 1つ以上の半導体層に対して接触抵抗を低下するコンタクト層を備えたナノチューブを含む電子および光電半導体デバイスを提供する。
【解決手段】 半導体デバイスは、少なくとも1つの半導体層と、半導体層と電気的に接触する金属層と、金属層と半導体層との間に介在するカーボン・ナノチューブ・コンタクト層とを含む。コンタクト層は、金属層を半導体層に電気的に結合し、低い比接触抵抗を有する半導体コンタクトが得られる。コンタクト層は、可視光範囲の少なくとも一部において、実質的に光透過膜となることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の半導体層に対して接触抵抗を低下させるコンタクト層を備えたナノチューブを含む電子および光電半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
異なる材料間の接合部における電子輸送は、それぞれの材料間のバンド構造整列およびそれらの相対的化学ポテンシャルによって支配される。バンド間に不整合があると、電気的ポテンシャル・バリアが生ずるが、キャリア輸送を行うためにはこれを克服しなければならない。更に、材料を接触させるときに化学的ポテンシャルの平衡が生じ、その結果空間電荷層が形成される。この層には自由キャリアが枯渇しているため、輸送に対する障壁が増大し、全体的なデバイス性能を低下させる原因となる。
【0003】
適性なデバイス動作のためには、一般に、nおよびp型半導体双方に対する低抵抗オーミック・コンタクトが必要である。接触抵抗が高いと、コンタクトにおける電圧降下が著しくなり、スイッチング速度および電圧振幅というような、交流および直流それぞれの性能双方の低下に至る可能性がある。
【0004】
用途によっては、電気コンタクトが光透過性でなければならない場合もある。例えば、GaN発光ダイオードおよびレーザ・ダイオードには、一般に、低抵抗透過性p−オーム・コンタクトが必要である。GaNレーザ・ダイオードにおいて寿命が短い要因の1つが、p−オーミック・コンタクトである。達成可能な比接触抵抗(r)が比較的高いために、電流がp−n接合を横切って流れる際にメタライゼーションが加熱し、GaN層における金属マイグレーション・ダウン・スレッディング転位(metal migration down threading dislocation)、および結果的に接合部の短絡に至る。p−GaNへのコンタクトの高いr値には多数の要因が関与しており、下記を含む。
【0005】
(i)仕事関数が十分に高い金属がないこと。GaNのバンドギャップは3.4eVであり、電子親和性は4.1eVであるが、金属の仕事関数は通例≦5eVである。
(ii)Mg需要体の深イオン化レベルが約170meVであるために、p−GaNのホール濃度が相対的に低いこと。
【0006】
(iii)処理中にGaN表面から窒素が失われ易い傾向があり、そのためにn型導電性への変換が表面において生ずる可能性があること。
GaN発光ダイオード構造におけるコンタクト・メタルルジに望ましい別の特性に、LEDの上面から出力される光を最大にするための、可視光に対する高い透過性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気的接触を改善する研究において、多種多様のメタライゼーションが開示されている。GaN系LEDを再度参照すると、標準的はNi/Au、Ni、Au、Pd、Pd/Au、Pt/Au、Au/Mg/Au、Au/C/Ni、Ni/Cr/Au、およびPd/Pt/Auが開示されている。通例、コンタクトにおいては、Ni、PdまたはPt金属がG−GaNと直接接触し、400〜750℃でこの構造をアニールする。これによって、接触抵抗は10−1から10−3Ω−cmの範囲となる。温度を高めると、コンタクトの形態に著しい劣化が観察され、通常没食子金属が形成される結果となる。
【0008】
インディウム−錫−酸化物(ITO)がこれまでGaN交流薄膜エレクトロルミネッセ
ントデバイスにおいて透明下位電極として用いられており、更に接触抵抗を低下させるためにP−GaN上の透明Ni/Auコンタクト上において被覆層として用いられている。一般に、ITOコンタクトのみでは、アニーリングの後であっても、p型GaN上では整流挙動を呈し、n−GaN上のオーミック透明層として用いられる方が更に典型的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
半導体デバイスは、少なくとも1つの半導体層と、半導体層と電気的に接触する金属層と、金属層と半導体層との間に介在するカーボン・ナノチューブ・コンタクト層とを含む。ナノチューブ・コンタクト層は、金属層を半導体層に電気的に結合する。本発明の一実施形態では、ナノチューブ・コンタクト層は、本質的に単一壁ナノチューブ(SWNT)から成る。コンタクト層は、可視光範囲の少なくとも一部において、実質的に光透過膜となることができる。
【0010】
一実施形態では、少なくとも1つの半導体層は、半導体層から成る第2GaNと共にp−n接合部を形成する、p−GaNまたはn−GaNから成る第1GaN層を備えており、GaN LEDを形成する。この場合、ナノチューブ・コンタクト層は、金属層とp−GaN層との間に接点を設ける。この実施形態では、金属層のp−GaN層に対する25℃における比面抵抗(r)は、2.0×10−2cm未満とすることができる。
【0011】
ナノチューブ・コンタクト層は、少なくとも1つの電荷転送ドーピング種を含むことができ、電荷転送ドーピング種がナノチューブ・コンタクト層と半導体層との間のフェルミ・レベルの差を縮小する。ドーピング種は、ハロゲンまたはアルカリ金属とすることができる。ナノチューブ・コンタクト層の面抵抗は、100nmの厚さにおいて200オーム/sq未満とすることができる。
【0012】
半導体層に対して低抵抗のナノチューブに基づくコンタクトを形成する方法は、半導体層を用意するステップと、半導体層上にナノチューブ・コンタクト層を堆積または配置するステップと、ナノチューブ・コンタクト層上に金属層を堆積するステップとを備えている。金属層の堆積に続いて、200℃未満の温度において半導体層と金属層との間に、オーミック・コンタクトを形成することができ、これにより、オーミック・コンタクトを形成するためのアニール工程が不要となる。本方法は、少なくとも1つの電荷転送ドーピング種を用いて、ナノチューブ・コンタクト層に化学的にドーピングするステップを含むことができる。一実施形態では、ナノチューブを多孔質メンブレーンの表面上に押し付けて、多孔質メンブレーン上に配するナノチューブ・コンタクト層を形成することができる。コンタクト層を堆積するステップは、半導体層に接触するようにナノチューブ・コンタクト層を配置し、次いで多孔質メンブレーン支持部を除去することから成るとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明ならびにその特徴および利点については、以下の詳細な説明を添付図面と共に検討することにより、一層深い理解が得られる。
カーボン・ナノチューブは、近年、その独特な電子、熱機械特性のために、注目を浴びている。その(n,m)インデックスによって指定される、その具体的な結晶構造に応じて、個々のナノチューブは真性金属または半導体のいずれにもなることができる。現在市販されているバルクの単一壁ナノチューブ(SWNT)サンプルは、金属(通例1/3重量画分)および半導体(通例2/3重量画分)ナノチューブの分子的に密接な混合物から成る。ナノチューブに関する最近の研究は、種々の用途のために、半導体ナノチューブから金属を分離することに集中しているが、混合物の分子密接性により特別に困難な作業となっている。
【0014】
多重壁ナノチューブ(MWNT:multi-walled nanotubes)に関して、MWNTにおける各シェルは、金属または半導体のいずれかである。半導体シェルの直径が増大するに連れて、そのバンドギャップは減少する。直径1.4nmの半導体ナノチューブのバンドギャップは、約0.6eVである。10nmシェルのバンドギャップは、約0.08eVであり、常温における熱励起エネルギに近い。
【0015】
電子デバイスに関して、アクティブ半導体ナノチューブ層を用いたナノスケール・デバイスの作成に、多大な努力を集中してきた。例えば、ワタナベら(Watanabe et al.)の「カーボン・ナノチューブ・リングを用いたトランジスタ」と題する米国特許第6,590,231号は、MOSFETのチャネル領域にナノチューブを用いることを開示している。
【0016】
ワタナベらとは対照的に、ここに記載する本発明は、金属電極と半導体材料を構成するアクティブ層との間における電荷の転移を改善するために、コンタクト領域にナノチューブを用いる。本発明の一実施形態による半導体デバイスは、少なくとも1つの半導体層と、半導体層と電気的に接触している層を備えている金属と、金属層と半導体層との間に介在するコンタクト層を備えているカーボン・ナノチューブとを含む。コンタクト層は、金属層を半導体層に電気的に結合し、低い比接触抵抗を有する半導体コンタクトを設ける。デバイスを構成する半導体は、ディスクリート・デバイス(例えば、ダイオードまたはトランジスタ)、あるいはマイクロプロセッサまたはメモリ・デバイスのような集積デバイスの一部とすることができる。デバイスは、電子デバイスまたは光電デバイスとすることができ、1つ以上のMEMSデバイスを用いて具体化されているように、チップ上に機械的構成要素を含むことができる。
【0017】
前述の電子回路へのナノチューブの応用のために半導体を金属ナノチューブから分離しようとするのではなく、本発明者は、密接に混合されたナノチューブ材料の特性は、金属を半導体に電気的に結合するための大きな利点を保有する中間層として用いるのに非常に適していることを発見した。金属層は、一般に、ナノチューブ混合物内に金属ナノチューブに対する障壁がなく、強く結合することが発見されている。
【0018】
特許請求する発明を実施するためには必要でないが、出願人は、理論に拘束されることを嫌い、本発明による層を備えたナノチューブによって得られる低抵抗コンタクトを説明する機構を紹介する。密接に混成した金属および半導体ナノチューブ間にある大きな接触面積は、これらの間に障壁ができたとしても、かなりの電流を伝達するのに役立つ。混合物における金属ナノチューブも、種々の半導体と電気的に強く結合する。金属ナノチューブは、金属層へのコンタクトをナノチューブ層の小領域に局在化することができ、しかも低抵抗コンタクトを設けるように、ナノチューブ層全体に電気コンタクトを分散すると考えられる。
【0019】
半導体ナノチューブは、一般に、p型導体であることがわかっており、p型半導体材料へのコンタクトに直接応用できることを示す。しかしながら、ナノチューブが優れた電気結合を設けることができる半導体の範囲は、化学的電荷移動ドーピングによって、相当に広げることができる。ナノチューブの化学的ドーピング、および化学的ドーピングのナノチューブのフェルミ・レベルに対する影響は、2003年7月18日に出願し「単一壁カーボン・ナノチューブによる透過性電極」と題する、同時係属中で本願と同じ譲受人に譲渡された米国特許出願第10/622,818号('818)に記載されている。この出
願は、2004年10月7日に公開出願第20040197546号として公開されている。'818は、ここで引用したことにより、その全体が本願にも含まれるものとする。
【0020】
ナノチューブと電荷移動錯体を形成する元素および化合物の膨大な一群の内、1つ以上を用いると、ハロゲンまたはアルカリ金属のような、ナノチューブを化学的荷電転移ドープするために用いることができる。このような材料を用いると、ナノチューブのナノチューブ・フェルミ・レベルを容易にそして制御可能に調整することができ、n型またはp型のいずれにすることもできる。結晶格子を含む原子の希釈置換を伴う典型的な半導体ドーピングとは異なり、ナノチューブ格子の原子を除去する必要はない。代わりに、ドーパント種とナノチューブとの間に、本質的に自発的に、しかるべき化学物質(複数の化学物質)に露出したときに、単純な電荷転移が発生する。このため、電荷転送ドーピングを用いると、ナノチューブ層と、接触させる半導体層との間のバンド整合を改善することができる。望ましければ、ナノチューブ層のフェルミ・レベルを、接触させる半導体層のフェルミ・レベルに対して約0.1ボルト(以内)に近づけることができると考えられる。化学的ドーピングによって吸収バンドが抑制されることは、ナノチューブのフェルミ・レベルを少なくとも±1eVずらせることを示す。
【0021】
ナノチューブは、MWNTまたはSWNT、あるいはその混合物で構成することができる。しかしながら、化学的ドーピングが望ましい場合には、純粋なSWNT層の方が一般には好まれる。何故なら、MWNTの化学的ドーピングは一般に外側層に限られているので、可能なフェルミ・レベルのずれは、SWNTと比較すると遥かに少ないからである。最近、純粋な単壁ナノチューブ(結合材がない)の超薄型均質膜を生産する方法が利用できるようになった。用途によっては、デバイスが放出する光線の波長範囲において、ナノチューブ・コンタクト層が光透過性であることが要求される場合もある。光透過性は、発光デバイスのような、半導体用途の一部では重要である。
【0022】
厚さ100から400nmというような、約1μm以下の薄いSWNT膜を用いることにより、ナノチューブ層は、可視光および/または赤外線範囲において、実質的に光透過性となることができる。ここで用いる場合、「実質的に光透過性」という句は、厚さが少なくとも100nmの膜のような、約0.4μmから10μmの波長範囲全域において少なくとも10%の光透過性を与える膜を構成するナノチューブのことを言う。また、100nmSWNT膜は、約3μmから5μmの範囲全域において少なくとも50%の光透過性も与えることができる。しかしながら、これらは、特定的なナノチューブのサンプルに基づいた名目値であることを注記しておく。本発明による層を構成するナノチューブによって得られるスペクトル透過性は、金属ナノチューブに対する半導体ナノチューブの個々の比率、存在するナノチューブの直径の分布、ナノチューブの電荷転移ドーピング状態(存在する場合)によって異なる。
【0023】
導電性透過電極に用いるために光透過性とした本質的に純粋なSWNTの均質膜と概略的に記載したが、本発明によるナノチューブ・コンタクト層は、更に総合的にMWNTを含むことができる。更に、先に注記したように、ナノチューブ・コンタクト層は、光透過性を必要としない用途(例えば、トランジスタ)には、全体的に非光透過性とすることができる。
【0024】
また、ナノチューブは、回路エレメントに対する電気的結合においても、更に別の重要な利点を備えている。デバイス密度を高める推進において微小電子業界が直面している課題の中に、導体−半導体または導体−絶縁体接合部における化学種のエレクトロマイグレーションがある。この影響は、個々のデバイスの寸法が縮小するに連れて、電界の増大により悪化する。種のマイグレーションが発生する容易性は、材料の原子結合力に関係する。原子マイグレーションが発生するためには、接合を破壊し再形成しなければならない。ナノチューブの側壁を構成する炭素原子は、例外的に緊密に結合されており、元素金属材料の1〜3eVと比較して、除去するには原子当たり約7eVが必要となる。このため、ナノチューブからの炭素のエレクトロマイグレーションは事実上存在しない。更に、ナノ
チューブ自体も、全体としてマイグレーションが生ずるには大き過ぎることには、疑いの余地がない。その逆も真である。隣接する材料からナノチューブ結晶構造への化学種のマイグレーションも、測定可能な程には生じない。
【0025】
ナノチューブは、半導体層に対する低抵抗コンタクトを形成するために、種々の方法で適用することができる。半導体に対して低抵抗の電気コンタクトを作成するという一般的な目的では、例えば、エア・ブラシ、ペイント、またはドロップ・キャスト(drop cast) することができる。これらの方法で生成する層は一般に厚さには高い均一性がないが、全体的に低抵抗のオーミック・コンタクトが得られる。
【0026】
代替実施形態では、光透過性ナノチューブ層を形成する。光透過性ナノチューブを形成するプロセスの1つが、' 818に記載されている。' 818に記載されているように、光透過性で導電性のSWNT膜を形成する方法は、多孔質メンブレーンを用意し、複数のSWNTを溶液内に散乱させるステップを含み、溶液は、SWNTが懸濁から凝縮するのを防止するために少なくとも1つの表面安定剤を含む。次いで、この溶液を多孔質メンブレーンに塗布する。次に、溶液を除去し、SWNTを多孔質メンブレーンの表面上に押し付け、メンブレーン上にSWNT膜を形成する。この方法は、メンブレーンを溶融することによる等で、SWNT膜を多孔質メンブレーンから分離するステップを含むことができる。
【0027】
本発明に応用すると、ナノチューブ/支持層物品のナノチューブ側を、シリコン・ウェハの上面全体にわたってというように、半導体表面(複数の表面)上に配することができる。次いで、メンブレーンを溶解することによる等で、支持層を選択的に除去することができる。次いで、望ましければ、続く層を追加するために、プロセスを継続することができる。
【0028】
ナノチューブによって得られる高い温度安定性により、本発明によるナノチューブ・コンタクト層は、従来の集積回路処理との適合性が高い。例えば、周囲空気において、酸化を活性化させる触媒がなければ(例えば、遷移金属)、SWNTは400℃よりも高い温度に耐えられることが示されている。不活性化気体雰囲気(例えば、NまたはAr)におけるように、または適したコーティングを施すというようにして、酸化雰囲気から保護されている場合、ナノチューブは1000℃を超えても安定である。このため、レベル間誘電体堆積では、PECVD窒化物堆積プロセスの方が、PECVD酸化物堆積プロセスと比較して、一般に好まれる。何故なら、窒化物堆積プロセスは本質的に還元性であるのに対して、酸化物プロセスは本質的に酸化性であるからである。
【0029】
本発明による層を構成するナノチューブをパターニングするには、標準的な集積回路処理を用いることができる。例えば、フォトレジスト・パターンをナノチューブ層上に形成し、除去すべき領域を露出させることができる。酸素を含む環境におけるプラズマ・エッチングも、層を構成するナノチューブを除去するために用いることができる。達成可能なナノチューブ・コンタクトの寸法は、少なくとも約100nmに近づくことが予期されている。
(実施例)
以下の具体例によって、本発明を更に例示する。これらの例は、如何様にしても本発明の範囲または内容を限定するように解釈すべきではない。
【0030】
図1に示したGaN量子井戸LED100を、c面電気的絶縁サファイア(Al)基板105上に、金属有機化学蒸着(MOCVD)によって成長させた。p−GaN層115におけるホール濃度は、約1×1017cm−3であって、n−GaN層110の電子濃度は、5×1018から1019cm−3であった。接合領域を参照番号118で
示す。P+ナノチューブ層120を形成するために、純化、パルス状レーザ気化成長SWNTを、約1.5×10−3mg/mlの希釈濃度で、水性界面活性懸濁液(1%v/vTRITON X−100TM)において超音波破砕によって散乱させた。懸濁液を0.1μm孔サイズ、混合セルロース・エステル・メンブレーン(Millipore、Billerica、Ma)上で真空濾過し、続いて大量の脱イオン化水で洗浄して界面活性剤を除去した。メンブレーン上に、透明電極として用いるための1500Åナノチューブ膜が形成された。
【0031】
ナノチューブ膜を転移するために、未だ濡れているメンブレーンをナノチューブ膜側のp−GaN層115上に配置した。続いて、この構造体を多孔質濾紙で覆い、4kgの質量で負荷をかけて一晩乾燥平坦化し(dry flat)、p−GaN層115に接着したナノチューブ膜(未だメンブレーンがくっついたままである)を残した。通例、接着は、ナノチューブを傷つけずに連続アセトン槽において、次いで最後のメタノール槽においてメンブレーンの溶解を続けて行うことを可能にするには適当である(連続槽は、ナノチューブ膜内に取り込んだ溶解セルロース・エステルを最少に抑えるために用いる)。一旦乾燥したなら、ナノチューブ120/p−GaN115/n−GaN110/基板105の構造体を600℃で6時間空気中においてアニールして、セルロース・エステル・メンブレーンの最後の痕跡を除去した。Eビーム堆積Ti/Al/Pt/Au、Pd/Au、またはPdをリフトオフによってパターニングし、Cl2/Ar誘導性結合プラズマ・エッチングによってメサを形成し、接合部のn−GaN側を露出した。n−GaN110への金属コンタクト112は、Nの下で1分間700℃にてアニールしたTi/Al/Pt/Auであった。同様に、金属コンタクト122をナノチューブ層120上に形成した。
【0032】
加えて、CNT膜もサファイア上の単一層p−GaN上に堆積し、CNT膜をパターニングしてまたはパターニングせずに金属層とp−GaN層との間に介在させた構造において、伝送線路法(TLM)を用いて、比接触抵抗(r)を測定した。各場合における比接触抵抗(r)は、関係r=(Rc/Rs)Wによって、構造R=2R+Rs(L/W)の全測定抵抗から得た。ここで、Rcは測定した接触抵抗、Rs/Wは抵抗対パッド間隔のグラフの傾きであり、Wはパッドの幅、Lはパッドの間隔である。
【0033】
図2は、本発明によるp−GaN層上のCNT膜の上に種々の金属を配したLEDの接合電流−電圧(V−I)特性を示す。各場合において、接合部は、優れた整流特性を呈している。このように、SWNTコンタクト層は、p−GaN層のホール濃度が比較的低い(約1×1017cm−3)にも拘わらず、優れたオーミック・コンタクトを備えている。TLM測定から得た接触抵抗データを図3に示す。CNT膜自体は、非常に導電性が高く、電流が主にCNT膜を通過する場合のこれらの膜の上に堆積した際の接触抵抗、5.4×10−3Ωcmが、700℃、1分間のNアニールの後に1.3×10−4Ωcmとなる。CNTをパターニングして、電流がp−GaNを通過するようにさせる場合、この構造の接触抵抗は、700℃アニール後には1.1×10−2Ωcmとなることがわかったが、CNTは堆積した状態においても、オーミック挙動を生ずる。これは、堆積すると非オーミックであった、同一層上の標準的なNi/Auコンタクトの場合(中間ナノチューブ層がない)とは全く対照的である。
【0034】
また、SWNTコンタクト構造の接触抵抗は、p−GaN上の直接Ni/Auメタライゼーションによって得られた最低値の1/3の低さであったことも注記しておく。そのメタライゼーションでは最低値は500℃において生じ、700℃によって、Ni/Auのコンタクト形態は、恐らくはコンタクト金属のGaNとの反応によるが、非常に劣化した。このように、CNT膜の利点の1つは、接合部のn側において最低の接触抵抗を生ずるのに必要なアニール温度では安定していることであり、処理シーケンスが簡略化する。
【0035】
図4は、本発明の一実施形態にしたがって完成したGaN LEDのルミネッセント応答を示す。GaN LEDは、カーボン・ナノチューブ・コンタクト層を含み、434nm(青色光)において最高となる強いエレクトロルミネッセンスを示した。これは、接合部の高いオーミック性質、およびナノチューブ層の実質的な光透過性を実証する。
【0036】
ここに提示した例は、低抵抗を呈し、本発明による光透過性CNT膜は、GaNに対して優れたp−オーミック・コンタクトを生成し、その熱安定性により、p−コンタクトもその位置に配したまま、n−コンタクトのアニールを行うことが可能となる。他の潜在的に可能な同様の用途には、p型ZnO上における低抵抗コンタクトが含まれ、これにもp−GaNと同様の問題がある。更に、先に注記したように、本発明は、n型層の接触にも広く適用することができ、MEMSデバイスを有するものを含む、種々の集積回路の製作において用いることができる。
【0037】
尚、本発明の好適な具体的実施形態に関連付けて本発明について説明したが、前述の説明およびそれに続く実施例は、本発明の範囲を限定するのではなく、例示することを意図していることは言うまでもない。本発明の範囲内に該当するその他の態様、利点、および変更は、本発明に関連する秘術における当業者には明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態による、金属とp−GaN層との間に配置したカーボン・ナノチューブ・コンタクト層を含むGaN LED構造の模式図。
【図2】p−GaN層への接触のために、ナノチューブ・コンタクト層の上面上に種々の金属を有するカーボン・ナノチューブ・コンタクト層を含む、本発明によるLEDの一例の接合電流−電圧(I−V)特性を示すグラフ。
【図3】N2における高温(700℃)でのアニール後、およびアニールしない場合の双方において、カーボン・ナノチューブ、本発明によるカーボン・ナノチューブ(CNT)/P−GaN、および従来のNi/Au/P−GaNコンタクトについての伝送線路法(TLM)測定を用いて得られた比接触抵抗(r)データを示す。
【図4】434nm(青色光)において最大となる強いエレクトロルミネセンスを呈するカーボン・ナノチューブ・コンタクト層を含む、本発明の一実施形態によるGaN LEDの完成品のルミネッセント応答を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスであって、
少なくとも1つの半導体層と、
前記半導体層と電気的に接触する層を備えている金属と、
前記金属層と前記半導体層との間に介在するコンタクト層を備えているカーボン・ナノチューブであって、前記ナノチューブ・コンタクト層が前記金属層を前記半導体層に電気的に結合する、カーボン・ナノチューブと、
を備えている、半導体デバイス。
【請求項2】
請求項1記載のデバイスにおいて、前記ナノチューブ・コンタクト層は、本質的に単一壁ナノチューブ(SWNT)から成る、デバイス。
【請求項3】
請求項1記載のデバイスにおいて、前記コンタクト層は、可視光範囲の少なくとも一部において、実質的に光透過膜となる、デバイス。
【請求項4】
請求項1記載のデバイスにおいて、前記少なくとも1つの半導体層は、半導体層を構成する第2GaNとp−n接合部を形成するp−またはn−半導体層を備えており、前記デバイスはGaN LEDであり、前記ナノチューブ・コンタクト層は、前記金属と前記p−GaN層との間にコンタクトを設ける、デバイス。
【請求項5】
請求項4記載のデバイスにおいて、前記金属の前記p−GaNに対する25℃における比接触抵抗が2.0×10−2Ωcm未満である、デバイス。
【請求項6】
請求項1記載のデバイスにおいて、前記ナノチューブ・コンタクト層は、少なくとも1つの電荷転送ドーピング種を含み、該電荷転送ドーピング種が前記ナノチューブ・コンタクト層と前記半導体層との間のフェルミ・レベルの差を縮小する、デバイス。
【請求項7】
請求項6記載のデバイスにおいて、前記ドーピング種は、ハロゲンまたはアルカリ金属である、デバイス。
【請求項8】
請求項1記載のデバイスにおいて、ナノチューブ・コンタクト層の面抵抗が、100nmの厚さにおいて200オーム/sq未満である、デバイス。
【請求項9】
半導体層に対して低抵抗のナノチューブに基づくコンタクトを形成する方法であって、
半導体層を用意するステップと、
前記半導体層上にナノチューブ・コンタクト層を堆積または配置するステップと、
前記ナノチューブ・コンタクト層上に金属層を堆積するステップと、
を備えている、方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法において、前記金属層の堆積に続いて、200℃未満の温度において前記半導体層と前記金属層との間に、オーミック・コンタクトを形成することにより、前記オーミック・コンタクトを形成するためのアニール工程を不要とした、方法。
【請求項11】
請求項9記載の方法であって、更に、少なくとも1つの電荷転送ドーピング種を用いて、前記ナノチューブ・コンタクト層に化学的にドーピングするステップを含み、前記電荷転送ドーピング種が、前記ナノチューブ・コンタクト層と前記半導体層との間のフェルミ・レベルの差を縮小する、方法。
【請求項12】
請求項9記載の方法において、前記ナノチューブ・コンタクト層は、本質的に単一壁カ
ーボン・ナノチューブ(SWNT)から成る、方法。
【請求項13】
請求項9記載の方法において、前記コンタクト層を堆積する前記ステップの前に、前記ナノチューブ・コンタクト層を支持層上に堆積し、前記コンタクト層を堆積する前記ステップは、
前記ナノチューブ・コンタクト層を前記半導体層と接触するように配置するステップと、
前記支持層を除去するステップと、
を備えている、方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法において、前記支持層は多孔質メンブレーンから成る、方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、前記支持層上に配する前記ナノチューブ・コンタクト層を形成する際に、
複数のナノチューブを溶液内に散乱させるステップであって、前記溶液が、前記ナノチューブが懸濁から凝縮するのを防止するために少なくとも1つの表面安定剤を含む、ステップと、
前記溶液を前記多孔質メンブレーンに塗布するステップと、
前記溶液を除去するステップであって、前記ナノチューブを前記多孔質メンブレーンの表面上に押し付けて、前記多孔質メンブレーン上に配する前記ナノチューブ・コンタクト層を形成する、ステップと、
を用いる、方法。
【請求項16】
請求項9記載の方法において、前記ナノチューブ・コンタクト層の面抵抗は、100nmの厚さにおいて、200オーム/sq未満である、方法。
【請求項17】
請求項10記載の方法において、前記半導体層は、P−GaNから成る、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−523495(P2007−523495A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554289(P2006−554289)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/005575
【国際公開番号】WO2005/083751
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(500228159)ユニバーシティ・オブ・フロリダ・リサーチ・ファンデーション・インコーポレーテッド (13)
【Fターム(参考)】