ナノ構造体、ナノ構造体の製造方法及びナノ構造体の合成装置
【課題】炭酸塩からなる異方性構造を有するナノ構造体を効率良く提供し、所望の異方性構造に容易に制御できるナノ構造体の合成方法およびその合成装置を提供する。
【解決手段】本発明の合成装置は、溶液反応漕1および反応漕1の上部に配置したレーザー発生部2、原料固定部3,反応漕2の上部もしくは側面部に配置した光発生部4、溶液攪拌装置5、ガス導入管6、超音波発生部7および合成系全体を遮光する暗箱8を備える。本発明は、レーザー若しくは超音波を用いた極限エネルギー状態の形成に加え、連続的な光照射を併用する。これにより、低コストで簡素な合成装置を利用しながら、原料、雰囲気、プロセス因子等を制御するだけで炭酸塩からなる異方性ナノ構造体を合成することできる。
【解決手段】本発明の合成装置は、溶液反応漕1および反応漕1の上部に配置したレーザー発生部2、原料固定部3,反応漕2の上部もしくは側面部に配置した光発生部4、溶液攪拌装置5、ガス導入管6、超音波発生部7および合成系全体を遮光する暗箱8を備える。本発明は、レーザー若しくは超音波を用いた極限エネルギー状態の形成に加え、連続的な光照射を併用する。これにより、低コストで簡素な合成装置を利用しながら、原料、雰囲気、プロセス因子等を制御するだけで炭酸塩からなる異方性ナノ構造体を合成することできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸塩からなる異方性ナノ構造体(ナノ材料)に関し、特に、レーザーおよび超音波による極限エネルギー状態を発生する装置、および、この極限エネルギー状態に加えて連続的な光を照射する装置を併用することによって、原料と二酸化炭素を溶媒に混合した系から炭酸塩からなる異方性ナノ構造体を製造する方法に関する。
【0002】
近年のナノテクノロジーの進展に伴い、様々な一次元若しくは二次元からなる異方性構造を有するナノメートル程度の大きさからなる材料の製造技術が盛んに提唱されている。例えばカーボンにおいては、1次元からなるカーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤー、カーボンナノコイルが知られ、また、二次元からなるグラファイトナノシートなどの材料が知られている。ここで、「異方性構造」とは、従来の製造技術により製造される球形(塊状)のナノ構造とは異なり、製造されるナノ構造体が多角形(三角形、四角形、六角形等)や棒状(ワイヤー状)の外形構造を有することを意味する。
【0003】
このような異方性構造を有するナノメートル程度の大きさからなる材料の合成方法としては、パルスレーザーアブレーション(特許文献1参照)、プラズマ化学的気相堆積法(特許文献2参照)などの極限エネルギー状態を利用したものが提案されている。材料をナノレベルオーダーにするには、本質的に表面エネルギーを最小にする必要があるために通常の平衡プロセスにおいては材料が球形になってしまう。球形ではなく、表面エネルギーが相対的に大きな異方的な構造を与えるためには、非平衡なプロセスを利用する必要が有る。しかし、これらのプロセスにおいては、極めて大きなエネルギー密度状態を形成することしか出来ないため、プロセスの冷却速度は極めて高くする必要があり、冷却過程に於けるプロセス制御は極めて困難となっているのが現状である。
【0004】
これに対し、近年、レーザー、プラズマなどの制御しにくい極限エネルギー場を利用したプロセスではなく、光照射などのエネルギー密度はやや低いものの、比較的制御しやすいエネルギー場を利用した化学反応を用いた合成プロセスが開発されてきている。例えば、強い紫外線の照射により酸素がオゾンになることが知られているように、様々な雰囲気と光照射を併用することにより得られる化学反応を利用した材料合成が提案されている。(特許文献3参照)この手法においては、照射する光の波長、強度、照射方向などの因子により再現性良く合成プロセスを制御出来る。
【0005】
一方、材料自体に関しては、近年、カーボンナノチューブにおける多機能性の発見に端を発し、カーボン系以外においても数多くの金属や酸化物などにおいて、同様に、各種金属ウィスカーや酸化亜鉛のナノロッドといった異方構造を有するナノ材料の合成とその実用化例が数多く見受けられる(特許文献4参照)。これらの材料においては、ポリマー添加剤(フィラー)、発光体、触媒、熱伝導体、電気伝導体、二次電子放出材、エネルギー貯蔵材、電池電極材などとして広範な応用が試みられている。これらの多くはナノサイズ効果だけではなく、その異方的な構造により諸特性が著しく向上することが示されている。ところが、このような異方的な構造を形成するには、材料形成プロセスを厳密に制御せしめる必要があるため、従来の形成方法では極めて困難な点が存在する。このため、このようなナノメートル程度の大きさからなる異方性構造を有する材料に関する合成例の殆どは単体、酸化物、炭化物などの単純な化学式からなる物質に関するものに留まっている。
【0006】
これに対し、炭酸塩は酸性物質である、分解により二酸化炭素が発生する、化学的に比較的安定であるなど、金属、酸化物や炭化物などの単純な物質にはない特徴を有しているため、触媒坦体、ポリマーへの不燃性や強度付与のためのフィラー、電池電極材、フィルター材などへの利用が拡大している(特許文献5参照)。しかしながら、金属、酸化物や炭化物などに比べて複雑な構造を有していることなどから、構造制御の因子が多様であるため、ナノメートル程度の大きさからなる異方性構造を有する炭酸塩の合成は困難である。
【0007】
このように、炭酸塩のような比較的複雑な化学式からなる物質におけるナノメートル程度の大きさからなる異方性構造を有する材料の合成はプロセス制御上の問題が存在している。
【特許文献1】特開平11−180707号公報
【特許文献2】特開2003−328138号公報
【特許文献3】特開2002−105207号公報
【特許文献4】特開2006−199552号公報
【特許文献5】特開平05−115779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明はこれらの従来技術の問題点を解消して、レーザー若しくは超音波を用いた極限エネルギー状態の形成に加え、連続的な光照射を併用することにより、低コストで単純な合成装置を利用しながら、原料、雰囲気、プロセス因子を制御するだけで炭酸塩からなる異方性構造を有する材料を合成する方法およびその装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、原料を、二酸化炭素を含んだ溶液に混合した反応系に対し、レーザー若しくは超音波といった極限エネルギー状態の利用に加え、連続光を照射することによって前記目的を達成出来ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は次の1〜21の構成を採用するものである。
【0011】
1.炭酸塩からなり、かつ、外形が一次元若しくは二次元の異方形状をなすことを特徴とするナノ構造体。
【0012】
2.前記炭酸塩が炭酸銀であることを特徴とする1に記載のナノ構造体。
【0013】
3.前記外形が三角形状を含むことを特徴とする1または2に記載のナノ構造体。
【0014】
4.前記外形が六角形状を含むことを特徴とする1または2に記載のナノ構造体。
【0015】
5.前記外形がワイヤー形状を含むことを特徴とする1または2に記載のナノ構造体。
【0016】
6.1〜5のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法であって、
金属原料を溶液中に浸積する浸漬工程と、
前記溶液を攪拌する攪拌工程と、
前記溶液全体に光を照射させる照射工程と、
前記金属原料にエネルギーを照射して、分解する分解工程と、
前記溶液を乾燥させる乾燥工程と、
を有することを特徴とするナノ構造体の製造方法。
【0017】
7.前記分解工程がレーザーを利用することを特徴とする6に記載のナノ構造体の製造方法。
【0018】
8.前記分解工程が超音波を利用することを特徴とする6または7に記載のナノ構造体の製造方法。
【0019】
9.前記照射工程が連続的であることを特徴とする6〜8のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法。
【0020】
10.前記溶液が二酸化炭素を含んでいることを特徴とする6〜9のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法。
【0021】
11.外部ガス供給源から二酸化炭素を含むガスを導入する導入工程をさらに含むことを特徴とする6〜10のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法。
【0022】
12.前記照射工程の照射条件を制御することで前記異方形状を制御することを特徴とする6〜11のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法。
【0023】
13.前記照射条件が波長であり、当該波長が可視光または紫外光の範囲内であることを特徴とする12に記載のナノ構造体の製造方法。
【0024】
14.前記金属原料の種類及び前記エネルギーの種類をさらに制御することで前記異方形状を制御することを特徴とする12または13に記載のナノ構造体の製造方法。
【0025】
15.1〜5のいずれかに記載のナノ構造体の合成装置であって、
大気に解放した開口部および原料固定部を有しかつ可視光および紫外光に対して透明な材質で形成された反応漕を備え、光照射部とエネルギー照射部とを該反応漕の外部に設けたことを特徴とするナノ構造体の合成装置。
【0026】
16.前記エネルギー照射部は、レーザー照射部もしくは超音波照射部の一方または双方とも有することを特徴とする15に記載のナノ構造体の合成装置。
【0027】
17.前記レーザー照射部を前記反応漕の上部または側面部に設け、かつ、溶液攪拌装置をさらに設けたことを特徴とする16に記載のナノ構造体の合成装置。
【0028】
18.前記超音波照射部を前記反応漕の下部または側面部に設けたことを特徴とする16または17に記載のナノ構造体の合成装置。
【0029】
19.前記光照射部の波長制御により前記異方形状を制御することを特徴とする15〜18のいずれか1つに記載のナノ構造体の合成装置。
【0030】
20.前記金属原料の種類及び前記エネルギーの種類をさらに制御することで前記異方形状を制御することを特徴とする15〜19のいずれか1つに記載のナノ構造体の合成装置。
【0031】
21.前記反応漕の溶液中に二酸化炭素を含むガスを導入するガス導入管をさらに備えることを特徴とする15〜20のいずれか1つに記載のナノ構造体の合成装置。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、次のような優れた効果を得ることが出来る。
【0033】
(1)本発明の装置では、二酸化炭素を含有する溶液内に金属原料を設置し、これにレーザー源もしくは超音波発信源から発生したエネルギーを集中させることで原料を分解するとともに、溶液内に極限エネルギー状態を形成することが出来る。このことで原料と二酸化炭素を溶解した溶液とが同時に原子レベルに乖離するとともにラジカル状態を形成できる。加えて、連続的に照射されている光エネルギー場でもって原子やラジカル状態からの冷却過程を制御することが、高い反応性と準安定状態の形成に寄与し、ひいては異方形状からなる炭酸塩を効率よく合成出来る。
【0034】
(2)本発明の製造方法においては、その反応は溶液中で完結するために材料は飛散することなく、また、直ちに溶液中に分散するためにハンドリングも容易であり、凝集しにくいという利点がある。さらに、装置の構成が簡単で低コスト化に寄与するほか、装置の自由度が高くなり、様々なレーザー発信源、超音波発信源などの転用が容易となる。
【0035】
(3)また、機器構成を変えることなく(すなわち同一の機器構成で)、原料条件(原料種など)、溶液条件(溶液種など)、極限エネルギー付与条件(レーザー波長・出力、超音波周波数・出力など)、光照射条件(連続光の波長など)等の比較的容易に制御可能な因子を変更するだけで、様々な形態からなる異方構造を有する炭酸塩を作り分けることが可能であるといった利点を有する。
【0036】
(4)また、溶液中に於けるプロセスであるために、その温度は比較的低く、例えば水中においては本質的に温度は100度以下となるため、極限エネルギー状態を利用するプロセスであるにもかかわらず、外部に危険を与えない。また、すべての反応物質は溶液中にとどまるため、外に危険な廃棄物や副次生産物は飛散しないために環境低負荷かつ安全な合成プロセスであるといえる。
【0037】
以上のように、本発明は同一の構成からなる装置を用いることで簡単かつ安全な工程により低コストでナノメートル程度の大きさを有する異方構造からなる炭酸塩の調整を可能とするものであり、環境分野、化学分野、電気電子分野から農業分野までの種々の産業界、医療分野あるいは各種の生活環境に幅広く応用することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
次に、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
【0039】
図1は本発明の異方性構造を有する炭酸塩の合成装置の一例を示す断面模式図である。この合成装置は、溶液反応漕1および該反応漕1の上部に配置したレーザー発生部2、試料固定部3,該反応漕2の上部もしくは側面部に配置した(図中では側面部に配置)光発生部4、溶液攪拌装置5、ガス導入管6、超音波発生部7および合成系全体を遮光する暗箱8を具備するものである。該反応漕1は大気に解放しており、溶液攪拌装置5による溶液の攪拌によって空気中の二酸化炭素が溶液中に導入されるとともに、外部ガス供給源(図示せず)からガス導入管6を通して導入されるガスからも二酸化炭素を供給可能となっている。なお、このガス導入管6および暗箱8は合成条件によっては省略することも出来る。また、レーザー発生部2および超音波発生部7は通常どちらか一方を省略することも出来る。
【0040】
溶液反応漕1を構成する部材の材質は、照射する光、導入する溶液およびガス種などに応じて、金属、ガラス、セラミックス等を選択することが出来る。例えば、側面から波長380nm(nm=10−9m)以下程度の紫外線を照射する場合においては、紫外線透過性の高い石英ガラスが好適に用いられる。また、溶液反応漕1を構成する寸法は、空気中の二酸化炭素を取り込むため、また、レーザーや可視光の導入に十分なスペースが必要なために、開口部が十分に開いていることが好ましい。例えば、100mL程度の溶液を用いる場合においては、その口径として3cm以上10cm以下、好ましくは5cm程度であることが好ましい。
【0041】
また、入力するレーザーとしては、原料を効率的に分解するために、最適な波長、強度がある。これらは反応漕1の大きさ、液面と原料までの液深、原料や溶液の材質などに応じて選択されるが、波長としては、200〜1000nm程度、好ましくは355nmのYAGレーザーの三倍波を用いる。出力としては1〜300W程度、好ましくは1〜50W程度である。ここで、通常のレーザーアブレーション法ではレーザーの出力が高い方が一般に材料合成の集率は向上するが、本発明においては、300Wを超える高出力なレーザーを用いると、溶液温度の上昇の効果により、副次的な物質が形成してしまい、炭酸塩の純度が低下するため好ましくない。また、波長においても同様に、レーザー波長が短い方が一般に物質の分解効率は向上するが、本発明においては、波長が200nmより低くなると、溶液によるレーザーの吸収が著しく増加してしまい材料の分解の効率はかえって低下するために好ましくない。
【0042】
また、入力する超音波としては、原料を効率的に分解するために、最適な発信周波数、強度がある。これらは反応漕1の大きさ、液面と原料までの液深、原料や溶液の材質などに応じて選択されるが、発信周波数としては、10〜500kHz程度、好ましくは20〜300kHzを用いる。出力としては10〜1000W程度、好ましくは200〜500W程度である。ここで、超音波照射による材料分解法(ソノケミストリー法、Sonochemistry)においては、一般に、発振周波数が高くかつ超音波出力が高い方が材料の分解効率が向上するが、本発明においては発信周波数が500kHzより高くなると、超音波における一つの波あたりのエネルギーが低下するために却って材料分解効率が低下するという問題点があるため好ましくない。また、超音波出力が1000Wより高くなると、溶媒が超音波により加熱される効果が顕著となる他、超音波による洗浄効果が著しく増大するために反応容器の内壁が分解し、これが生成される炭酸塩中に不純物として混入するなどの問題点があるため好ましくない。
【0043】
また、入力する連続光としては、異方性を形成するために最適な波長、強度がある。これらは反応漕1の大きさ、液面と原料までの液深、原料や溶液の材質などに応じて選択されるが、波長としては、190〜1000nm程度、好ましくは200〜600nmを用いる。出力としては1〜300W程度、好ましくは1〜50W程度である。前記した入射する光の波長は本発明における微細構造制御において重要な因子となる。前記最適波長範囲を外れると、つまり、波長が190nmより低い光は主に溶液によって吸収されてしまうために好ましくなく、また、波長が1000nmより高い光は赤外線領域となりエネルギーが極度に低下するために好ましくない。
【0044】
つぎに、本発明の異方性構造を有する炭酸塩の合成装置の使用方法について説明する。
【0045】
炭酸塩の原料となる好ましい物質としては、各種の金属単体、酸化物、炭酸塩、金属ハロゲン化物、有機金属錯体からなる板状物質若しくは圧粉体を使用することが出来る。
この場合、これら物質は一種又は二種以上を組み合わせて用いることが出来る。使用に当たっては反射率が高すぎるとプロセス上問題となるため、表面平滑度は低い方が良く、通常100番のエメリー紙で研磨することで凹凸を付けたものを利用する。金属単体、酸化物、炭酸塩、金属ハロゲン化物、有機金属錯体としては限定的ではないが、特にイオン化傾向の低い金属、貴金属の単体、酸化物、炭酸塩が好ましい。とりわけ、銀、酸化銀、炭酸銀などが挙げられる。
【0046】
使用する原料の純度は特に限定されないが、97%以上の純度をもつものが好ましく利用される。これらの原料の溶液中の濃度は適宜選択することが出来るが通常は0.01〜50重量%程度、好ましくは0.1〜30重量%程度である。
【0047】
反応漕に導入される溶液となる好ましい物質としては、特に限定されないが、二酸化炭素の溶解度が高く、レーザーや光の吸収率が低いものが好ましい。例えば、蒸留水、炭酸水、メタノール、エタノールなどが例示される。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。これら溶液の純度は、不純物が多いとこれら不純物にレーザーや光が吸収されてしまい、合成効率が低下するため、純度は高い方が好ましく、通常は97〜99.99重量%程度、好ましくは99.0〜99.9重量%程度である。
【0048】
また、反応漕に導入されるガスとなる好ましい物質としては、二酸化炭素あるいは一酸化炭素を含むガスであれば特に限定されない。製造過程の安全性の問題から、これらガスと窒素、アルゴン、クリプトンなどとの混合ガスを用いることも出来る。これらの二酸化炭素、一酸化炭素、および混合ガスの純度は特に限定されないが、99%以上の純度を有するものが好ましく利用される。
【0049】
これらの原料および溶液から異方性構造を有する炭酸塩を合成するには、はじめに、図1の状態で、試料を試料固定部3に固定し、反応溶液を溶液反応漕1に注ぎ、溶液攪拌装置5により溶液を攪拌すると共に、外部ガス供給源(図示せず)からガス導入管6を通してガスを導入すると、空気中の二酸化炭素とガス導入管から導入されたガスが溶解した溶液を形成する。このように、溶液中に十分にガス雰囲気を溶解させるために、100mL程度の溶液に対して、通常、溶液攪拌装置5は毎分10〜500回転程度、好ましくは20〜200回転程度で回転させる、また、通常ガス導入管6からガスは10mL〜10L毎分程度、好ましくは100mL〜2L毎分程度の流量でバブリングさせながら導入する。溶液中の雰囲気を均一かつ安定させるためにこの状態で1〜60分程度、好ましくは20〜60分程度保持する。
【0050】
次いで、溶液反応漕1の上部もしくは側面から連続光を照射し、光照射場を形成しておき、さらにレーザーもしくは超音波を原料部に照射する。
【0051】
レーザーによる手法の場合、レーザーは原料の直上に集光するように設置することで原料が分解されるとともに、プルームと呼ばれる局所的極限エネルギー場が形成し、これが直ちに光照射場において溶液中の二酸化炭素と反応し、炭酸塩からなる沈殿物を形成することが出来る。
【0052】
また、超音波による手法の場合、超音波は原料の真下に設置することで原料が分解されるとともに、ホットスポットと呼ばれる局所的極限エネルギー場が形成し、これが直ちに光照射場において溶液中の二酸化炭素と反応し、炭酸塩からなる沈殿物を形成することが出来る。
【0053】
本発明によれば、反応液は常時溶液中に供給される二酸化炭素と常に照射される光によって二酸化炭素雰囲気と光エネルギー場が形成されている。この場に対して、レーザー若しくは超音波によって原料が原子もしくは数個の原子からなるクラスターまで分解されるとともにこれら原料、溶液、溶液中に存在する二酸化炭素をはじめとしたガスなどのラジカルからなるプラズマが形成される。プラズマは直ちに周囲の溶液によって冷却されるが、同時に、光エネルギー場の存在によって分解された物質は単純に基底状態にまで冷却されるのではなく、光エネルギー場によって冷却段階に準安定な状態で冷却が終了する。このため、光の有無、および光の波長や強度によって異なる形態をなす炭酸塩が合成される。また、同じ金属を含有する金属、酸化物、炭酸塩、ハロゲン化物、有機金属錯体から合成を行っても、それぞれの原料が形成するラジカル種が異なるために、光エネルギーによって形成される準安定な状態は異なるため、最終的に得られる炭酸塩の形態は異なったものとなる。
【0054】
本発明では、反応容器やレーザーもしくは超音波発生部、光発生部の構成の自由度が高く、反応装置は同一のままで、原料、溶媒、導入するガス種、連続光の波長および出力、レーザーの波長及び出力もしくは超音波の発信周波数及び出力などの容易に可変しうる因子のみを制御することにより、最終的に得られる炭酸塩の形態を制御出来る。
【0055】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0056】
図1に示される異方性構造を有する炭酸塩合成装置を使用し、レーザー発信源としてYAGレーザーの3倍波(波長355nm、nm=10−9m)を用いた。溶液は蒸留した直後の蒸留水を20mL用い、50回転毎分の回転子で攪拌し、30分経過後に利用した。外部からのガスは導入しなかった。原料は厚み0.1mmの銀板(純度99.9%)の表面を100番のエメリー紙で研磨したものを用い、1cm角に切り設置した。外部から照射する光の条件として、暗室下(Dark)、可視光として蛍光灯下(FL)、紫外光として紫外線ランプ下(UV、254nm)を実験の開始から終了まで連続して照射した。なお、本実施例で用いた蛍光灯および紫外線ランプからの発光スペクトルをそれぞれ図2および図3に示す。
【0057】
レーザーは1W/cm2の強度となるように調整され、10Hzにて3時間照射した。
【0058】
得られた溶液をコロジオン膜に滴下し、乾燥後に走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡により観察した。暗室下において得られた材料の観察結果を図4に、可視光照射下において得られた材料の観察結果を図5に、紫外光照射下において得られた材料の観察結果を図6に示す。図4に示すとおり、暗室下において得られた材料は粒子状若しくは不定形をしていたのに対し、図5,図6に示すとおり、前記光照射条件下において各々得られた材料はシート状となった。また、図5においては内角が60度程度の三角形が幾つか集まったような形態をしており、図6においては内角が120度の六角形が幾つか集まったような形態を有していた。このように、光の有無、波長によって、合成される材料の異方性が異なっている事が明らかとなった。
【実施例2】
【0059】
図1に示される異方性構造を有する炭酸塩合成装置を使用し、超音波発信源として200kHz、超音波出力500Wの発信源を用いた。溶液は蒸留した直後の蒸留水を100mL用いた。外部からのガスは導入しなかったが、超音波の攪拌効果により十分に空気中から二酸化炭素は導入される。原料は平均粒径1マイクロメートルの酸化銀および炭酸銀の粉末を0.1g用いた。外部から照射する光の条件として、暗室下(Dark)、可視光として蛍光灯下(FL)、紫外光として紫外線ランプ下(UV、254nm)を実験の開始から終了まで連続して照射した。
【0060】
超音波は最大出力に設定し、15分照射後に15分休むことを4回繰り返し、合計1時間照射した。
【0061】
照射後、得られた溶液をコロジオン膜に滴下し、乾燥後に走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡により観察した。酸化銀粉末を原料とし、暗室下において得られた材料の観察結果を図7に、酸化銀粉末を原料とし、可視光照射下において得られた材料の観察結果を図8に、酸化銀粉末を原料とし、紫外光照射下において得られた材料の観察結果を図9に、また、炭酸銀粉末を原料とし、可視光照射下において得られた材料の観察結果を図10に示す。図7に示すとおり、暗室下において得られた材料は粒子状若しくは不定形をしていたのに対し、図8,図9に示すとおり、光照射下において得られた材料はシート状となった。また、図8においては内角が60度程度の三角形が幾つか集まったような形態をしており、図9においては内角が120度の六角形が幾つか集まったような形態を有していた。また、図10においては直径20〜30nm、長さ数マイクロメートルからなるワイヤー状の物質となっていることが確認された。
【0062】
以上の実施例1および2の試験条件、観察結果等をまとめると以下の表のようになる。
【0063】
【表1】
【0064】
また、酸化銀粉末を原料とし、可視光照射下において得られた溶液をフリーズドライ法により乾燥し、得られた粉末状物質のX線回折により構成相を同定した図を図11に示す。この図より、一部に還元されたものの溶液中の二酸化炭素とは未反応であった銀からの回折ピークも見受けられたが、主に得られた材料は主に炭酸銀からなることを同定した。この結果は実施例1および実施例2のいずれのサンプルにおいても同様であり、いずれの手法においても炭酸銀が形成していることを確認している。
【0065】
このように、光の有無、波長によって、合成される材料の異方性が異なっている事が明らかとなった。特に、シート状だけでなく、ワイヤー状などの構造も同じ機器構成において合成できることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の異方性構造を有する炭酸塩の合成装置の一例を示す断面模式図である。
【図2】本実施例において用いた蛍光灯からの発光スペクトルを示す図である。
【図3】本実施例において用いた紫外線ランプからの発光スペクトルを示す図である。
【図4】実施例1において酸化銀粉末を原料とし、暗室下においてレーザーと光の照射を同時に行うことで得られた沈殿物の透過型電子顕微鏡による組織観察結果を示す図である。
【図5】実施例1において酸化銀粉末を原料とし、可視光下においてレーザーと光の照射を同時に行うことで得られた沈殿物の走査型電子顕微鏡による組織観察結果を示す図である。
【図6】実施例1において酸化銀粉末を原料とし、紫外光下においてレーザーと光の照射を同時に行うことで得られた沈殿物の透過型電子顕微鏡による組織観察結果を示す図である。
【図7】実施例2において酸化銀粉末を原料とし、暗室下において超音波と光の照射を同時に行うことで得られた沈殿物の透過型電子顕微鏡による組織観察結果を示す図である。
【図8】実施例2において酸化銀粉末を原料とし、可視光下において超音波と光の照射を同時に行うことで得られた沈殿物の透過型電子顕微鏡による組織観察結果を示す図である。
【図9】実施例2において酸化銀粉末を原料とし、紫外光下において超音波と光の照射を同時に行うことで得られた沈殿物の透過型電子顕微鏡による組織観察結果を示す図である。
【図10】実施例2において炭酸銀粉末を原料とし、可視光下において超音波と光の照射を同時に行うことで得られた沈殿物の透過型電子顕微鏡による組織観察結果を示す図である。
【図11】実施例2において酸化銀粉末を原料とし、超音波と可視光の照射を同時に行うことで得られた溶液をフリーズドライ法により乾燥し、得られた粉末状物質のX線回折法による回折図形を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 溶液反応漕
2 レーザー発生部
3 試料固定部
4 光発生部
5 溶液攪拌装置
6 ガス導入管
7 超音波発生部
8 暗箱
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸塩からなる異方性ナノ構造体(ナノ材料)に関し、特に、レーザーおよび超音波による極限エネルギー状態を発生する装置、および、この極限エネルギー状態に加えて連続的な光を照射する装置を併用することによって、原料と二酸化炭素を溶媒に混合した系から炭酸塩からなる異方性ナノ構造体を製造する方法に関する。
【0002】
近年のナノテクノロジーの進展に伴い、様々な一次元若しくは二次元からなる異方性構造を有するナノメートル程度の大きさからなる材料の製造技術が盛んに提唱されている。例えばカーボンにおいては、1次元からなるカーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤー、カーボンナノコイルが知られ、また、二次元からなるグラファイトナノシートなどの材料が知られている。ここで、「異方性構造」とは、従来の製造技術により製造される球形(塊状)のナノ構造とは異なり、製造されるナノ構造体が多角形(三角形、四角形、六角形等)や棒状(ワイヤー状)の外形構造を有することを意味する。
【0003】
このような異方性構造を有するナノメートル程度の大きさからなる材料の合成方法としては、パルスレーザーアブレーション(特許文献1参照)、プラズマ化学的気相堆積法(特許文献2参照)などの極限エネルギー状態を利用したものが提案されている。材料をナノレベルオーダーにするには、本質的に表面エネルギーを最小にする必要があるために通常の平衡プロセスにおいては材料が球形になってしまう。球形ではなく、表面エネルギーが相対的に大きな異方的な構造を与えるためには、非平衡なプロセスを利用する必要が有る。しかし、これらのプロセスにおいては、極めて大きなエネルギー密度状態を形成することしか出来ないため、プロセスの冷却速度は極めて高くする必要があり、冷却過程に於けるプロセス制御は極めて困難となっているのが現状である。
【0004】
これに対し、近年、レーザー、プラズマなどの制御しにくい極限エネルギー場を利用したプロセスではなく、光照射などのエネルギー密度はやや低いものの、比較的制御しやすいエネルギー場を利用した化学反応を用いた合成プロセスが開発されてきている。例えば、強い紫外線の照射により酸素がオゾンになることが知られているように、様々な雰囲気と光照射を併用することにより得られる化学反応を利用した材料合成が提案されている。(特許文献3参照)この手法においては、照射する光の波長、強度、照射方向などの因子により再現性良く合成プロセスを制御出来る。
【0005】
一方、材料自体に関しては、近年、カーボンナノチューブにおける多機能性の発見に端を発し、カーボン系以外においても数多くの金属や酸化物などにおいて、同様に、各種金属ウィスカーや酸化亜鉛のナノロッドといった異方構造を有するナノ材料の合成とその実用化例が数多く見受けられる(特許文献4参照)。これらの材料においては、ポリマー添加剤(フィラー)、発光体、触媒、熱伝導体、電気伝導体、二次電子放出材、エネルギー貯蔵材、電池電極材などとして広範な応用が試みられている。これらの多くはナノサイズ効果だけではなく、その異方的な構造により諸特性が著しく向上することが示されている。ところが、このような異方的な構造を形成するには、材料形成プロセスを厳密に制御せしめる必要があるため、従来の形成方法では極めて困難な点が存在する。このため、このようなナノメートル程度の大きさからなる異方性構造を有する材料に関する合成例の殆どは単体、酸化物、炭化物などの単純な化学式からなる物質に関するものに留まっている。
【0006】
これに対し、炭酸塩は酸性物質である、分解により二酸化炭素が発生する、化学的に比較的安定であるなど、金属、酸化物や炭化物などの単純な物質にはない特徴を有しているため、触媒坦体、ポリマーへの不燃性や強度付与のためのフィラー、電池電極材、フィルター材などへの利用が拡大している(特許文献5参照)。しかしながら、金属、酸化物や炭化物などに比べて複雑な構造を有していることなどから、構造制御の因子が多様であるため、ナノメートル程度の大きさからなる異方性構造を有する炭酸塩の合成は困難である。
【0007】
このように、炭酸塩のような比較的複雑な化学式からなる物質におけるナノメートル程度の大きさからなる異方性構造を有する材料の合成はプロセス制御上の問題が存在している。
【特許文献1】特開平11−180707号公報
【特許文献2】特開2003−328138号公報
【特許文献3】特開2002−105207号公報
【特許文献4】特開2006−199552号公報
【特許文献5】特開平05−115779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明はこれらの従来技術の問題点を解消して、レーザー若しくは超音波を用いた極限エネルギー状態の形成に加え、連続的な光照射を併用することにより、低コストで単純な合成装置を利用しながら、原料、雰囲気、プロセス因子を制御するだけで炭酸塩からなる異方性構造を有する材料を合成する方法およびその装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、原料を、二酸化炭素を含んだ溶液に混合した反応系に対し、レーザー若しくは超音波といった極限エネルギー状態の利用に加え、連続光を照射することによって前記目的を達成出来ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は次の1〜21の構成を採用するものである。
【0011】
1.炭酸塩からなり、かつ、外形が一次元若しくは二次元の異方形状をなすことを特徴とするナノ構造体。
【0012】
2.前記炭酸塩が炭酸銀であることを特徴とする1に記載のナノ構造体。
【0013】
3.前記外形が三角形状を含むことを特徴とする1または2に記載のナノ構造体。
【0014】
4.前記外形が六角形状を含むことを特徴とする1または2に記載のナノ構造体。
【0015】
5.前記外形がワイヤー形状を含むことを特徴とする1または2に記載のナノ構造体。
【0016】
6.1〜5のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法であって、
金属原料を溶液中に浸積する浸漬工程と、
前記溶液を攪拌する攪拌工程と、
前記溶液全体に光を照射させる照射工程と、
前記金属原料にエネルギーを照射して、分解する分解工程と、
前記溶液を乾燥させる乾燥工程と、
を有することを特徴とするナノ構造体の製造方法。
【0017】
7.前記分解工程がレーザーを利用することを特徴とする6に記載のナノ構造体の製造方法。
【0018】
8.前記分解工程が超音波を利用することを特徴とする6または7に記載のナノ構造体の製造方法。
【0019】
9.前記照射工程が連続的であることを特徴とする6〜8のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法。
【0020】
10.前記溶液が二酸化炭素を含んでいることを特徴とする6〜9のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法。
【0021】
11.外部ガス供給源から二酸化炭素を含むガスを導入する導入工程をさらに含むことを特徴とする6〜10のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法。
【0022】
12.前記照射工程の照射条件を制御することで前記異方形状を制御することを特徴とする6〜11のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法。
【0023】
13.前記照射条件が波長であり、当該波長が可視光または紫外光の範囲内であることを特徴とする12に記載のナノ構造体の製造方法。
【0024】
14.前記金属原料の種類及び前記エネルギーの種類をさらに制御することで前記異方形状を制御することを特徴とする12または13に記載のナノ構造体の製造方法。
【0025】
15.1〜5のいずれかに記載のナノ構造体の合成装置であって、
大気に解放した開口部および原料固定部を有しかつ可視光および紫外光に対して透明な材質で形成された反応漕を備え、光照射部とエネルギー照射部とを該反応漕の外部に設けたことを特徴とするナノ構造体の合成装置。
【0026】
16.前記エネルギー照射部は、レーザー照射部もしくは超音波照射部の一方または双方とも有することを特徴とする15に記載のナノ構造体の合成装置。
【0027】
17.前記レーザー照射部を前記反応漕の上部または側面部に設け、かつ、溶液攪拌装置をさらに設けたことを特徴とする16に記載のナノ構造体の合成装置。
【0028】
18.前記超音波照射部を前記反応漕の下部または側面部に設けたことを特徴とする16または17に記載のナノ構造体の合成装置。
【0029】
19.前記光照射部の波長制御により前記異方形状を制御することを特徴とする15〜18のいずれか1つに記載のナノ構造体の合成装置。
【0030】
20.前記金属原料の種類及び前記エネルギーの種類をさらに制御することで前記異方形状を制御することを特徴とする15〜19のいずれか1つに記載のナノ構造体の合成装置。
【0031】
21.前記反応漕の溶液中に二酸化炭素を含むガスを導入するガス導入管をさらに備えることを特徴とする15〜20のいずれか1つに記載のナノ構造体の合成装置。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、次のような優れた効果を得ることが出来る。
【0033】
(1)本発明の装置では、二酸化炭素を含有する溶液内に金属原料を設置し、これにレーザー源もしくは超音波発信源から発生したエネルギーを集中させることで原料を分解するとともに、溶液内に極限エネルギー状態を形成することが出来る。このことで原料と二酸化炭素を溶解した溶液とが同時に原子レベルに乖離するとともにラジカル状態を形成できる。加えて、連続的に照射されている光エネルギー場でもって原子やラジカル状態からの冷却過程を制御することが、高い反応性と準安定状態の形成に寄与し、ひいては異方形状からなる炭酸塩を効率よく合成出来る。
【0034】
(2)本発明の製造方法においては、その反応は溶液中で完結するために材料は飛散することなく、また、直ちに溶液中に分散するためにハンドリングも容易であり、凝集しにくいという利点がある。さらに、装置の構成が簡単で低コスト化に寄与するほか、装置の自由度が高くなり、様々なレーザー発信源、超音波発信源などの転用が容易となる。
【0035】
(3)また、機器構成を変えることなく(すなわち同一の機器構成で)、原料条件(原料種など)、溶液条件(溶液種など)、極限エネルギー付与条件(レーザー波長・出力、超音波周波数・出力など)、光照射条件(連続光の波長など)等の比較的容易に制御可能な因子を変更するだけで、様々な形態からなる異方構造を有する炭酸塩を作り分けることが可能であるといった利点を有する。
【0036】
(4)また、溶液中に於けるプロセスであるために、その温度は比較的低く、例えば水中においては本質的に温度は100度以下となるため、極限エネルギー状態を利用するプロセスであるにもかかわらず、外部に危険を与えない。また、すべての反応物質は溶液中にとどまるため、外に危険な廃棄物や副次生産物は飛散しないために環境低負荷かつ安全な合成プロセスであるといえる。
【0037】
以上のように、本発明は同一の構成からなる装置を用いることで簡単かつ安全な工程により低コストでナノメートル程度の大きさを有する異方構造からなる炭酸塩の調整を可能とするものであり、環境分野、化学分野、電気電子分野から農業分野までの種々の産業界、医療分野あるいは各種の生活環境に幅広く応用することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
次に、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
【0039】
図1は本発明の異方性構造を有する炭酸塩の合成装置の一例を示す断面模式図である。この合成装置は、溶液反応漕1および該反応漕1の上部に配置したレーザー発生部2、試料固定部3,該反応漕2の上部もしくは側面部に配置した(図中では側面部に配置)光発生部4、溶液攪拌装置5、ガス導入管6、超音波発生部7および合成系全体を遮光する暗箱8を具備するものである。該反応漕1は大気に解放しており、溶液攪拌装置5による溶液の攪拌によって空気中の二酸化炭素が溶液中に導入されるとともに、外部ガス供給源(図示せず)からガス導入管6を通して導入されるガスからも二酸化炭素を供給可能となっている。なお、このガス導入管6および暗箱8は合成条件によっては省略することも出来る。また、レーザー発生部2および超音波発生部7は通常どちらか一方を省略することも出来る。
【0040】
溶液反応漕1を構成する部材の材質は、照射する光、導入する溶液およびガス種などに応じて、金属、ガラス、セラミックス等を選択することが出来る。例えば、側面から波長380nm(nm=10−9m)以下程度の紫外線を照射する場合においては、紫外線透過性の高い石英ガラスが好適に用いられる。また、溶液反応漕1を構成する寸法は、空気中の二酸化炭素を取り込むため、また、レーザーや可視光の導入に十分なスペースが必要なために、開口部が十分に開いていることが好ましい。例えば、100mL程度の溶液を用いる場合においては、その口径として3cm以上10cm以下、好ましくは5cm程度であることが好ましい。
【0041】
また、入力するレーザーとしては、原料を効率的に分解するために、最適な波長、強度がある。これらは反応漕1の大きさ、液面と原料までの液深、原料や溶液の材質などに応じて選択されるが、波長としては、200〜1000nm程度、好ましくは355nmのYAGレーザーの三倍波を用いる。出力としては1〜300W程度、好ましくは1〜50W程度である。ここで、通常のレーザーアブレーション法ではレーザーの出力が高い方が一般に材料合成の集率は向上するが、本発明においては、300Wを超える高出力なレーザーを用いると、溶液温度の上昇の効果により、副次的な物質が形成してしまい、炭酸塩の純度が低下するため好ましくない。また、波長においても同様に、レーザー波長が短い方が一般に物質の分解効率は向上するが、本発明においては、波長が200nmより低くなると、溶液によるレーザーの吸収が著しく増加してしまい材料の分解の効率はかえって低下するために好ましくない。
【0042】
また、入力する超音波としては、原料を効率的に分解するために、最適な発信周波数、強度がある。これらは反応漕1の大きさ、液面と原料までの液深、原料や溶液の材質などに応じて選択されるが、発信周波数としては、10〜500kHz程度、好ましくは20〜300kHzを用いる。出力としては10〜1000W程度、好ましくは200〜500W程度である。ここで、超音波照射による材料分解法(ソノケミストリー法、Sonochemistry)においては、一般に、発振周波数が高くかつ超音波出力が高い方が材料の分解効率が向上するが、本発明においては発信周波数が500kHzより高くなると、超音波における一つの波あたりのエネルギーが低下するために却って材料分解効率が低下するという問題点があるため好ましくない。また、超音波出力が1000Wより高くなると、溶媒が超音波により加熱される効果が顕著となる他、超音波による洗浄効果が著しく増大するために反応容器の内壁が分解し、これが生成される炭酸塩中に不純物として混入するなどの問題点があるため好ましくない。
【0043】
また、入力する連続光としては、異方性を形成するために最適な波長、強度がある。これらは反応漕1の大きさ、液面と原料までの液深、原料や溶液の材質などに応じて選択されるが、波長としては、190〜1000nm程度、好ましくは200〜600nmを用いる。出力としては1〜300W程度、好ましくは1〜50W程度である。前記した入射する光の波長は本発明における微細構造制御において重要な因子となる。前記最適波長範囲を外れると、つまり、波長が190nmより低い光は主に溶液によって吸収されてしまうために好ましくなく、また、波長が1000nmより高い光は赤外線領域となりエネルギーが極度に低下するために好ましくない。
【0044】
つぎに、本発明の異方性構造を有する炭酸塩の合成装置の使用方法について説明する。
【0045】
炭酸塩の原料となる好ましい物質としては、各種の金属単体、酸化物、炭酸塩、金属ハロゲン化物、有機金属錯体からなる板状物質若しくは圧粉体を使用することが出来る。
この場合、これら物質は一種又は二種以上を組み合わせて用いることが出来る。使用に当たっては反射率が高すぎるとプロセス上問題となるため、表面平滑度は低い方が良く、通常100番のエメリー紙で研磨することで凹凸を付けたものを利用する。金属単体、酸化物、炭酸塩、金属ハロゲン化物、有機金属錯体としては限定的ではないが、特にイオン化傾向の低い金属、貴金属の単体、酸化物、炭酸塩が好ましい。とりわけ、銀、酸化銀、炭酸銀などが挙げられる。
【0046】
使用する原料の純度は特に限定されないが、97%以上の純度をもつものが好ましく利用される。これらの原料の溶液中の濃度は適宜選択することが出来るが通常は0.01〜50重量%程度、好ましくは0.1〜30重量%程度である。
【0047】
反応漕に導入される溶液となる好ましい物質としては、特に限定されないが、二酸化炭素の溶解度が高く、レーザーや光の吸収率が低いものが好ましい。例えば、蒸留水、炭酸水、メタノール、エタノールなどが例示される。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。これら溶液の純度は、不純物が多いとこれら不純物にレーザーや光が吸収されてしまい、合成効率が低下するため、純度は高い方が好ましく、通常は97〜99.99重量%程度、好ましくは99.0〜99.9重量%程度である。
【0048】
また、反応漕に導入されるガスとなる好ましい物質としては、二酸化炭素あるいは一酸化炭素を含むガスであれば特に限定されない。製造過程の安全性の問題から、これらガスと窒素、アルゴン、クリプトンなどとの混合ガスを用いることも出来る。これらの二酸化炭素、一酸化炭素、および混合ガスの純度は特に限定されないが、99%以上の純度を有するものが好ましく利用される。
【0049】
これらの原料および溶液から異方性構造を有する炭酸塩を合成するには、はじめに、図1の状態で、試料を試料固定部3に固定し、反応溶液を溶液反応漕1に注ぎ、溶液攪拌装置5により溶液を攪拌すると共に、外部ガス供給源(図示せず)からガス導入管6を通してガスを導入すると、空気中の二酸化炭素とガス導入管から導入されたガスが溶解した溶液を形成する。このように、溶液中に十分にガス雰囲気を溶解させるために、100mL程度の溶液に対して、通常、溶液攪拌装置5は毎分10〜500回転程度、好ましくは20〜200回転程度で回転させる、また、通常ガス導入管6からガスは10mL〜10L毎分程度、好ましくは100mL〜2L毎分程度の流量でバブリングさせながら導入する。溶液中の雰囲気を均一かつ安定させるためにこの状態で1〜60分程度、好ましくは20〜60分程度保持する。
【0050】
次いで、溶液反応漕1の上部もしくは側面から連続光を照射し、光照射場を形成しておき、さらにレーザーもしくは超音波を原料部に照射する。
【0051】
レーザーによる手法の場合、レーザーは原料の直上に集光するように設置することで原料が分解されるとともに、プルームと呼ばれる局所的極限エネルギー場が形成し、これが直ちに光照射場において溶液中の二酸化炭素と反応し、炭酸塩からなる沈殿物を形成することが出来る。
【0052】
また、超音波による手法の場合、超音波は原料の真下に設置することで原料が分解されるとともに、ホットスポットと呼ばれる局所的極限エネルギー場が形成し、これが直ちに光照射場において溶液中の二酸化炭素と反応し、炭酸塩からなる沈殿物を形成することが出来る。
【0053】
本発明によれば、反応液は常時溶液中に供給される二酸化炭素と常に照射される光によって二酸化炭素雰囲気と光エネルギー場が形成されている。この場に対して、レーザー若しくは超音波によって原料が原子もしくは数個の原子からなるクラスターまで分解されるとともにこれら原料、溶液、溶液中に存在する二酸化炭素をはじめとしたガスなどのラジカルからなるプラズマが形成される。プラズマは直ちに周囲の溶液によって冷却されるが、同時に、光エネルギー場の存在によって分解された物質は単純に基底状態にまで冷却されるのではなく、光エネルギー場によって冷却段階に準安定な状態で冷却が終了する。このため、光の有無、および光の波長や強度によって異なる形態をなす炭酸塩が合成される。また、同じ金属を含有する金属、酸化物、炭酸塩、ハロゲン化物、有機金属錯体から合成を行っても、それぞれの原料が形成するラジカル種が異なるために、光エネルギーによって形成される準安定な状態は異なるため、最終的に得られる炭酸塩の形態は異なったものとなる。
【0054】
本発明では、反応容器やレーザーもしくは超音波発生部、光発生部の構成の自由度が高く、反応装置は同一のままで、原料、溶媒、導入するガス種、連続光の波長および出力、レーザーの波長及び出力もしくは超音波の発信周波数及び出力などの容易に可変しうる因子のみを制御することにより、最終的に得られる炭酸塩の形態を制御出来る。
【0055】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0056】
図1に示される異方性構造を有する炭酸塩合成装置を使用し、レーザー発信源としてYAGレーザーの3倍波(波長355nm、nm=10−9m)を用いた。溶液は蒸留した直後の蒸留水を20mL用い、50回転毎分の回転子で攪拌し、30分経過後に利用した。外部からのガスは導入しなかった。原料は厚み0.1mmの銀板(純度99.9%)の表面を100番のエメリー紙で研磨したものを用い、1cm角に切り設置した。外部から照射する光の条件として、暗室下(Dark)、可視光として蛍光灯下(FL)、紫外光として紫外線ランプ下(UV、254nm)を実験の開始から終了まで連続して照射した。なお、本実施例で用いた蛍光灯および紫外線ランプからの発光スペクトルをそれぞれ図2および図3に示す。
【0057】
レーザーは1W/cm2の強度となるように調整され、10Hzにて3時間照射した。
【0058】
得られた溶液をコロジオン膜に滴下し、乾燥後に走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡により観察した。暗室下において得られた材料の観察結果を図4に、可視光照射下において得られた材料の観察結果を図5に、紫外光照射下において得られた材料の観察結果を図6に示す。図4に示すとおり、暗室下において得られた材料は粒子状若しくは不定形をしていたのに対し、図5,図6に示すとおり、前記光照射条件下において各々得られた材料はシート状となった。また、図5においては内角が60度程度の三角形が幾つか集まったような形態をしており、図6においては内角が120度の六角形が幾つか集まったような形態を有していた。このように、光の有無、波長によって、合成される材料の異方性が異なっている事が明らかとなった。
【実施例2】
【0059】
図1に示される異方性構造を有する炭酸塩合成装置を使用し、超音波発信源として200kHz、超音波出力500Wの発信源を用いた。溶液は蒸留した直後の蒸留水を100mL用いた。外部からのガスは導入しなかったが、超音波の攪拌効果により十分に空気中から二酸化炭素は導入される。原料は平均粒径1マイクロメートルの酸化銀および炭酸銀の粉末を0.1g用いた。外部から照射する光の条件として、暗室下(Dark)、可視光として蛍光灯下(FL)、紫外光として紫外線ランプ下(UV、254nm)を実験の開始から終了まで連続して照射した。
【0060】
超音波は最大出力に設定し、15分照射後に15分休むことを4回繰り返し、合計1時間照射した。
【0061】
照射後、得られた溶液をコロジオン膜に滴下し、乾燥後に走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡により観察した。酸化銀粉末を原料とし、暗室下において得られた材料の観察結果を図7に、酸化銀粉末を原料とし、可視光照射下において得られた材料の観察結果を図8に、酸化銀粉末を原料とし、紫外光照射下において得られた材料の観察結果を図9に、また、炭酸銀粉末を原料とし、可視光照射下において得られた材料の観察結果を図10に示す。図7に示すとおり、暗室下において得られた材料は粒子状若しくは不定形をしていたのに対し、図8,図9に示すとおり、光照射下において得られた材料はシート状となった。また、図8においては内角が60度程度の三角形が幾つか集まったような形態をしており、図9においては内角が120度の六角形が幾つか集まったような形態を有していた。また、図10においては直径20〜30nm、長さ数マイクロメートルからなるワイヤー状の物質となっていることが確認された。
【0062】
以上の実施例1および2の試験条件、観察結果等をまとめると以下の表のようになる。
【0063】
【表1】
【0064】
また、酸化銀粉末を原料とし、可視光照射下において得られた溶液をフリーズドライ法により乾燥し、得られた粉末状物質のX線回折により構成相を同定した図を図11に示す。この図より、一部に還元されたものの溶液中の二酸化炭素とは未反応であった銀からの回折ピークも見受けられたが、主に得られた材料は主に炭酸銀からなることを同定した。この結果は実施例1および実施例2のいずれのサンプルにおいても同様であり、いずれの手法においても炭酸銀が形成していることを確認している。
【0065】
このように、光の有無、波長によって、合成される材料の異方性が異なっている事が明らかとなった。特に、シート状だけでなく、ワイヤー状などの構造も同じ機器構成において合成できることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の異方性構造を有する炭酸塩の合成装置の一例を示す断面模式図である。
【図2】本実施例において用いた蛍光灯からの発光スペクトルを示す図である。
【図3】本実施例において用いた紫外線ランプからの発光スペクトルを示す図である。
【図4】実施例1において酸化銀粉末を原料とし、暗室下においてレーザーと光の照射を同時に行うことで得られた沈殿物の透過型電子顕微鏡による組織観察結果を示す図である。
【図5】実施例1において酸化銀粉末を原料とし、可視光下においてレーザーと光の照射を同時に行うことで得られた沈殿物の走査型電子顕微鏡による組織観察結果を示す図である。
【図6】実施例1において酸化銀粉末を原料とし、紫外光下においてレーザーと光の照射を同時に行うことで得られた沈殿物の透過型電子顕微鏡による組織観察結果を示す図である。
【図7】実施例2において酸化銀粉末を原料とし、暗室下において超音波と光の照射を同時に行うことで得られた沈殿物の透過型電子顕微鏡による組織観察結果を示す図である。
【図8】実施例2において酸化銀粉末を原料とし、可視光下において超音波と光の照射を同時に行うことで得られた沈殿物の透過型電子顕微鏡による組織観察結果を示す図である。
【図9】実施例2において酸化銀粉末を原料とし、紫外光下において超音波と光の照射を同時に行うことで得られた沈殿物の透過型電子顕微鏡による組織観察結果を示す図である。
【図10】実施例2において炭酸銀粉末を原料とし、可視光下において超音波と光の照射を同時に行うことで得られた沈殿物の透過型電子顕微鏡による組織観察結果を示す図である。
【図11】実施例2において酸化銀粉末を原料とし、超音波と可視光の照射を同時に行うことで得られた溶液をフリーズドライ法により乾燥し、得られた粉末状物質のX線回折法による回折図形を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 溶液反応漕
2 レーザー発生部
3 試料固定部
4 光発生部
5 溶液攪拌装置
6 ガス導入管
7 超音波発生部
8 暗箱
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸塩からなり、かつ、外形が一次元若しくは二次元の異方形状をなすことを特徴とするナノ構造体。
【請求項2】
前記炭酸塩が炭酸銀であることを特徴とする請求項1に記載のナノ構造体。
【請求項3】
前記外形が三角形状を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のナノ構造体。
【請求項4】
前記外形が六角形状を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のナノ構造体。
【請求項5】
前記外形がワイヤー形状を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のナノ構造体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法であって、
金属原料を溶液中に浸積する浸漬工程と、
前記溶液を攪拌する攪拌工程と、
前記溶液全体に光を照射させる照射工程と、
前記金属原料にエネルギーを照射して、分解する分解工程と、
前記溶液を乾燥させる乾燥工程と、
を有することを特徴とするナノ構造体の製造方法。
【請求項7】
前記分解工程がレーザーを利用することを特徴とする請求項6に記載のナノ構造体の製造方法。
【請求項8】
前記分解工程が超音波を利用することを特徴とする請求項6または7に記載のナノ構造体の製造方法。
【請求項9】
前記照射工程が連続的であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法。
【請求項10】
前記溶液が二酸化炭素を含んでいることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法。
【請求項11】
外部ガス供給源から二酸化炭素を含むガスを導入する導入工程をさらに含むことを特徴とする請求項6〜10のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法。
【請求項12】
前記照射工程の照射条件を制御することで前記異方形状を制御することを特徴とする請求項6〜11のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法。
【請求項13】
前記照射条件が波長であり、当該波長が可視光または紫外光の範囲内であることを特徴とする請求項12に記載のナノ構造体の製造方法。
【請求項14】
前記金属原料の種類及び前記エネルギーの種類をさらに制御することで前記異方形状を制御することを特徴とする請求項12または13に記載のナノ構造体の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれかに記載のナノ構造体の合成装置であって、
大気に解放した開口部および原料固定部を有しかつ可視光および紫外光に対して透明な材質で形成された反応漕を備え、光照射部とエネルギー照射部とを該反応漕の外部に設けたことを特徴とするナノ構造体の合成装置。
【請求項16】
前記エネルギー照射部は、レーザー照射部もしくは超音波照射部の一方または双方とも有することを特徴とする請求項15に記載のナノ構造体の合成装置。
【請求項17】
前記レーザー照射部を前記反応漕の上部または側面部に設け、かつ、溶液攪拌装置をさらに設けたことを特徴とする請求項16に記載のナノ構造体の合成装置。
【請求項18】
前記超音波照射部を前記反応漕の下部または側面部に設けたことを特徴とする請求項16または17に記載のナノ構造体の合成装置。
【請求項19】
前記光照射部の波長制御により前記異方形状を制御することを特徴とする請求項15〜18のいずれか1つに記載のナノ構造体の合成装置。
【請求項20】
前記金属原料の種類及び前記エネルギーの種類をさらに制御することで前記異方形状を制御することを特徴とする請求項15〜19のいずれか1つに記載のナノ構造体の合成装置。
【請求項21】
前記反応漕の溶液中に二酸化炭素を含むガスを導入するガス導入管をさらに備えることを特徴とする請求項15〜20のいずれか1つに記載のナノ構造体の合成装置。
【請求項1】
炭酸塩からなり、かつ、外形が一次元若しくは二次元の異方形状をなすことを特徴とするナノ構造体。
【請求項2】
前記炭酸塩が炭酸銀であることを特徴とする請求項1に記載のナノ構造体。
【請求項3】
前記外形が三角形状を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のナノ構造体。
【請求項4】
前記外形が六角形状を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のナノ構造体。
【請求項5】
前記外形がワイヤー形状を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のナノ構造体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法であって、
金属原料を溶液中に浸積する浸漬工程と、
前記溶液を攪拌する攪拌工程と、
前記溶液全体に光を照射させる照射工程と、
前記金属原料にエネルギーを照射して、分解する分解工程と、
前記溶液を乾燥させる乾燥工程と、
を有することを特徴とするナノ構造体の製造方法。
【請求項7】
前記分解工程がレーザーを利用することを特徴とする請求項6に記載のナノ構造体の製造方法。
【請求項8】
前記分解工程が超音波を利用することを特徴とする請求項6または7に記載のナノ構造体の製造方法。
【請求項9】
前記照射工程が連続的であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法。
【請求項10】
前記溶液が二酸化炭素を含んでいることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法。
【請求項11】
外部ガス供給源から二酸化炭素を含むガスを導入する導入工程をさらに含むことを特徴とする請求項6〜10のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法。
【請求項12】
前記照射工程の照射条件を制御することで前記異方形状を制御することを特徴とする請求項6〜11のいずれか1つに記載のナノ構造体の製造方法。
【請求項13】
前記照射条件が波長であり、当該波長が可視光または紫外光の範囲内であることを特徴とする請求項12に記載のナノ構造体の製造方法。
【請求項14】
前記金属原料の種類及び前記エネルギーの種類をさらに制御することで前記異方形状を制御することを特徴とする請求項12または13に記載のナノ構造体の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれかに記載のナノ構造体の合成装置であって、
大気に解放した開口部および原料固定部を有しかつ可視光および紫外光に対して透明な材質で形成された反応漕を備え、光照射部とエネルギー照射部とを該反応漕の外部に設けたことを特徴とするナノ構造体の合成装置。
【請求項16】
前記エネルギー照射部は、レーザー照射部もしくは超音波照射部の一方または双方とも有することを特徴とする請求項15に記載のナノ構造体の合成装置。
【請求項17】
前記レーザー照射部を前記反応漕の上部または側面部に設け、かつ、溶液攪拌装置をさらに設けたことを特徴とする請求項16に記載のナノ構造体の合成装置。
【請求項18】
前記超音波照射部を前記反応漕の下部または側面部に設けたことを特徴とする請求項16または17に記載のナノ構造体の合成装置。
【請求項19】
前記光照射部の波長制御により前記異方形状を制御することを特徴とする請求項15〜18のいずれか1つに記載のナノ構造体の合成装置。
【請求項20】
前記金属原料の種類及び前記エネルギーの種類をさらに制御することで前記異方形状を制御することを特徴とする請求項15〜19のいずれか1つに記載のナノ構造体の合成装置。
【請求項21】
前記反応漕の溶液中に二酸化炭素を含むガスを導入するガス導入管をさらに備えることを特徴とする請求項15〜20のいずれか1つに記載のナノ構造体の合成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図11】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図11】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−57229(P2009−57229A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224462(P2007−224462)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】
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