ナノ構造複合材料の電界放出カソードの製造方法および活性化処理
電子エミッタを形成する方法は、(i)ナノ構造含有材料を形成する工程と、(ii)ナノ構造含有材料とマトリクス材料の混合物を形成する工程と、(iii)電気泳動堆積によって混合物の層を基体の少なくとも1つの表面の少なくとも一部の上に堆積させる工程と、(iv)混合物の層を焼結しまたは溶融して複合体を形成する工程と、(v)複合体を電気化学的にエッチングして複合体の表面からマトリクス材料を取り除き、ナノ構造含有材料を露出させる工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界放出構造の性能を改善するための処理とともに、ナノ構造含有材料を組み込む電界放出構造とデバイスの形成に対する改善された技術に向けられる。さらに、本発明は、関連される構造と装置に向けられる。
【背景技術】
【0002】
この出願は、「カーボンナノチューブ/金属複合材料からなる電界放出カソードの製造と活性化処理」と題名され2002年7月3日に出願された、アメリカ合衆国法典第35巻119条の下、米国仮出願番号第60/393,097号に優先権を主張し、その内容はすべてこの引用によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
[発明の背景]
様々な構造と技術は、以下に記載されるだろう。しかしながら、ここで記載されたもののいずれもが従来技術の認可として解釈されるべきではない。それと反対に、出願人は、ここで記載されたもののいずれもが適切な法律の条文の下での従来技術とは認められないことを適切に明らかにする権利を留保する。
【0004】
用語「ナノ構造」材料(“nanostructure”material)は、C60フラ−レン、フラ−レンタイプの同心状の黒鉛粒子、金属、CdSe、InPなどの化合物半導体などのナノ微粒子、シリコン、ゲルマニウム、SiOx、GeOxなどのナノワイヤ/ナノロッド、カーボン、BxNy、CxByNz、MoS2、およびWS2などの単一または複数の元素のいずれかで構成されたナノチューブを含む材料を指定するために、この技術に精通した人によって使用されている。「ナノ構造」材料の共通の特徴の1つは、それらの基本の基礎単位(building block)である。単一のナノ微粒子またはカーボンナノチューブは、少なくとも一方向で500nm未満である寸法を持っている。これらのタイプの材料は、さまざまなアプリケ−ションとプロセスへのかなりの関心をもたらすある特性を現すことが示されてきた。
【0005】
カーボンナノチューブなどのナノ構造は、それらの独特な幾何学的配置、極めて高い機械的強度、および良好な化学的および熱的安定性により、優れた電子電界エミッタであることが知られている。実験は、それらが電子放出に対する低いしきい値電界(1−2V/μm)をもち、非常に高い電流密度で放出できることを示した。
【0006】
しかしながら、カーボンナノチューブと基体間における、膜の均一性の低さおよび不十分な付着性および電気伝導率など材料の問題のため、巨視的なカーボンナノチューブを含んでいる構造とデバイスから高い安定した放出電流は得られていない。この放出電流はその実用的な利用を制限している。
【0007】
カーボンナノチューブを合成するのに利用可能な全ての技術の中で、レーザアブレーションおよびアーク放電方法は、高いレベルの構造的な完全性および最良の電子電界放出の特性をもつカーボンナノチューブを生成する。しかしながら、そこから作られている材料は、カソードなどの電界放出デバイス中に容易に組み込めない多孔性の膜あるいは粉末の形態であり、更なる処理をしないでデバイス上に直接使用されることはできない。化学蒸着(CVD)方法は、カーボンナノチューブを直接基体上に成長させることができるが、この方法は、非常な高温(600-1000℃)と反応性の環境を必要とする。また、CVDで成長したカーボンナノチューブは、一般に、同じレベルの構造的な完全性をもっていないので、その結果、レーザアブレーションあるいはアーク放電方法によって作られたカーボンナノチューブと同じような放出特性をもっていない。カーボンナノチューブ、特に、レーザアブレーションおよびアーク放電方法によって作られた単一壁のカーボンナノチューブ優れた電子電界放出特性を完全に利用するために、いくつかの堆積技術が開発された。
【0008】
さらに、レーザアブレーションとアーク放電方法によって形成された粉末あるいはすす中に含まれるナノチューブは、ランダムに配向されている。しかしながら、電子放出源として利用される場合、例えば、共通の放出目標に向けるなどナノチューブの先を同じ方向に向けるのは有利である。従って、通常のナノチューブが配向していないことは電界放出デバイスにおけるその利用に対する新たな挑戦を与える。
【0009】
材料、デバイスおよび技術を含むナノ構造の代表てきな開示は以下のものを含んでいる。米国特許第 号公報(「カーボンナノチューブ電界エミッター構造を有するデバイスとそのデバイスの製造方法」と名付けられた米国特許出願第09/296,572号)は、カーボンナノチューブ基の電子エミッター構造を開示する、その全体がここで参照文献として組み込まれる(特許文献1)。
【0010】
米国特許第 号公報(「薄膜カーボンナノチューブ電界エミッター構造を有するデバイス」と名付けられた米国特許出願第09/351,537号)は、高放出電流密度を有するカーボンナノチューブ電界エミッター構造を開示する、その全体がここで参照文献として組み込まれる(特許文献2)。
【0011】
「電子電界放出カソードを用いるX線発生機構」と名付けられた米国特許第6553096号公報は、少なくとも一部がナノ構造含有材料で形成されたカソードを組み込んだX線発生デバイスを開示する、その全体がここで参照文献として組み込まれる(特許文献3)。
【0012】
「大きな領域を個々にアドレス可能な多ビームX線システムおよびその形成方法」と名付けられた米国特許出願第2002/0140336号は、複数の静止した個々に電気的にアドレス可能な電界放出電子源を含むX線を発生するための構造と技術を開示する、その全体が参照文献として組み込まれる(特許文献4)。
【0013】
米国特許第 号公報(「電子ビーム電流を制御する装置および方法」と名付けられた米国特許出願第10/358,160号)は、圧電、熱または光学的な手段で電子放出電流の個々の制御を許容するX線発生装置を開示する、その全体がここで参照文献として組み込まれる(特許文献5)。
【0014】
「高められた電界放出と着火(Ignition)の特徴を用いるコーティングされた電極」と名付けられた米国特許出願第2002/0140336号は、ナノチューブ含有材料を組み込んだ被覆された電極構成を開示する、その全体が参照文献として組み込まれる(特許文献6)。
【0015】
米国特許第 号公報(「真空およびガス状の電子工学のためのナノ材料基の電子電界放出カソード」と名付けられた米国特許出願第10/448,144号)は、少なくとも一部にナノ構造を含む材料に基づく電界放出カソードを組み込む電子工学を開示する、その全体がここで参照文献として組み込まれる(特許文献7)。
【0016】
「固体状態のCTシステムおよび方法」と名付けられた米国特許第6,385,292号は、複数のアドレス可能なエレメントから形成されたカソードを含むX線源を開示する、その全体が参照文献として組み込まれる(特許文献8)。
【0017】
米国特許第 号公報(「改善された電極および関連するデバイスおよび方法」と名付けられた米国特許第 号公報(米国特許出願第10/464,440号、2003年6月19日出願)は、マトリックス材料中に埋め込まれたナノ構造を含む材料を組み込んだカソードを含むデバイスを開示する、その全体がここで参照文献として組み込まれる(特許文献9)。
【特許文献1】米国特許出願第09/296,572号
【特許文献2】米国特許出願第09/351,537号
【特許文献3】米国特許 第6,553,096号
【特許文献4】米国特許出願第2002/94,064号
【特許文献5】米国特許出願第10/358,160号
【特許文献6】米国特許出願第2002/140,336号
【特許文献7】米国特許出願第10/448,144号
【特許文献8】米国特許 第6,385,292号
【特許文献9】米国特許出願第10/464,440号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、アーク放電、レーザアブレーション技術などによって形成されたカーボンナノチューブまたは他のナノ構造含有材料を粘着性のがっしりした電界放出デバイス中に容易に組み込むことができ、一方、良好な電気伝導性と、放出方向に突き出ている実質的な数のナノチューブとを提供するプロセスが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
[発明の概要]
本発明は、ナノ構造含有材料複合体を含むカソードなどの電界放出デバイスの製造方法と活性化方法を提供する。ナノ構造含有材料は、(1)金属または金属合金を含む導電材料または金属酸化物または(2)金属塩塩を含む非導電性材料のような他の材料の粒子と混合される。この混合物は(1)支持構造物の表面にコーティングされる、あるいは、(2)圧縮され、焼結され、または溶融されて、凝縮した(compact)自立基体(free-standing body)になる。この被覆物(coating)は均一で、または予め決定された構造でパターン化され得る。自立基体は所望の幾何学的形状(geometry)に処理される。
【0020】
被覆物(coating)または自立基体は、電子放出特性を改善するために更に処理される。電子電界放出特性を改善する1つの方法は、表面の電気化学のエッチングを使用することである。高周波パルスは、複合体表面から突き出ているカーボンナノチューブをさらに配列するのに使用することができる。
【0021】
薄いカーボンナノチューブ膜と比べて、上記記載のようにして形成された被覆物(coating)は、ナノ構造含有材料と基体との間の接着性と電気伝導性とをより良くする。
【0022】
1つの態様によれば、本発明は、(i)ナノ構造含有材料を形成する工程と、(ii)前記ナノ構造含有材料とマトリクス材料の混合物を形成する工程と、(iii)電気泳動堆積によって前記混合物の層を基体の少なくとも1つの表面の少なくとも一部の上に堆積させる工程と、(iv)前記混合物の層を焼結しまたは溶融して複合体を形成する工程と、(v)前記複合体を電気化学的にエッチングして前記複合体の表面からマトリクス材料を取り除き、ナノ構造含有材料を露出させる工程と、を含む電子エミッタを形成する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[発明の詳細な説明]
以下図面を参照して本発明に基づく例示的な構成および手法を説明する。
【0024】
一般に、本発明の原理に従って実行される方法は、(1)アーク放電やレーザアブレーションなどの適切な技術によって未精製のナノ構造含有材料を形成する工程、(2)ナノ構造含有材料とマトリクス材料との混合物を形成する工程、(3)混合物を支持体表面または基体に適用する工程、または自立基体中に混合物を形成する工程、(4)混合物を圧縮して均一性および/または平滑性を改善する工程、(5)混合物を焼結する、または溶融する工程、(6)焼結した混合物を研磨して洗浄する工程、(7)焼結した混合物をエッチングしてマトリクス材料を除去し、ナノ構造材料を露出させる工程、(8)エッチングされた混合物を洗浄する工程、(9)エッチングされた混合物をアニーリング工程、(10)エッチング手順によって露出されたナノ構造材料を配列する工程、のうちのいくつかの工程の組み合わせまたは全ての工程の組み合わせを含むことができる。
【0025】
このプロセスは、予め形成された未精製のナノ構造含有材料(pre-formed raw nanostructure-containing material)であって、好ましくは、高いアスペクト比をもつもの、あるいは、カーボンナノチューブ含有材料のようなナノチューブ含有材料を用いて始める。この未精製の材料は、単一壁のカーボンナノチューブ、多壁のカーボンナノチューブ、シリコン、酸化珪素、ゲルマニウム、酸化ゲルマニウム、窒化炭素(carbon nitrides)、ホウ素、窒化ホウ素(boron nitride)、ジカルコゲナイド(dichalcogenide)、銀、金、鉄、酸化チタン、酸化ガラニウム(gallanium oxide)、リン化インジウム、またはナノ構造内に囲まれたFe,Co,Niのような磁気粒子、のうちの少なくとも1つを含むことができる。好ましい実施例によると、未精製カーボンナノチューブを含む材料は、単一壁のカーボンナノチューブを含む。カーボンナノチューブは、上記説明したアーク放電およびレーザアブレーション方法などの適切な技術によって形成することができる。
【0026】
BxCyNz(B=ホウ素、C=カーボン、N=窒素)の組成をもつナノチューブ構造、またはMS2(M=タングステン、モリブデン、または酸化バナジウム)の組成をもつ同心状のフラーレン構造の形態である未精製材料が利用され得ることが、本発明によってさらに意図されている。これらの未精製の材料は、上記説明したアーク放電技術などのような適切な技術によって形成され得る。
【0027】
未精製のナノ構造含有材料は精製され得る。この未精製の材料を精製するための多くの技術が予想される。例えば、未精製のナノ構造含有材料は、適切な溶媒、例えば、1〜40容積%濃度の過酸化水素(H2O2)と水中で、好ましくは20容積%濃度のH2O2で環流され、続いてCS2で洗浄され、続いてメタノール中で洗浄され、続いて濾過されることによって精製され得る。例示の技術に従うと、媒体中のナノチューブの1〜10mgに対して約10〜100mlの過酸化物が媒体中に導入され、環流の反応は、20〜100℃の温度で実行された(例えば、米国特許第6,553,096号公報参照)。
【0028】
別の代替手段によると、未精製のナノ構造含有材料は、酸性媒体、有機溶剤、またはアルコール好ましくはメタノールなどの適切な液体媒体中に置かれる。未精製の材料は高出力の超音波ホーンを使用して数時間液体媒体の中で懸濁液中に保持され、そして、この懸濁液は多孔性の膜を通される。別の実施例では、未精製のナノ構造含有材料は、200〜700℃で、空気中または酸素環境下における酸化によって精製され得る。この未精製の材料中の不純物はナノチューブよりも速い速度で酸化される。
【0029】
また別の実施例では、未精製の材料は、不純物からナノ構造/ナノチューブを分離するために液体クロマトグラフィーによって精製され得る。
【0030】
また、ナノ構造あるいはナノチューブは、その長さを短くする工程にもかけられ得る。例えば、カーボンナノチューブは強酸にさらすことによって短くされ得る。代わりに、ボールミル(ball milling)のような機械的な粉砕技術によって破壊されたり短くされたりできる。
【0031】
精製された未精製の材料は、上記説明した短くする工程にかけらるか否かにかかわらず、100℃〜1200℃の適切な温度でオープションにアニーリングされ得る。好ましい実施例によれば、アニーリング温度は100℃〜600℃である。この材料は約1〜60分などの適切な時間アニーリングされる。好ましい実施例によれば、この材料は約1時間アニーリングされる。この材料は約10-2torrの真空下で、またはさらに高い真空下でアニーリングされる。好ましい実施例によれば、真空は約5×10−7torrである。
【0032】
次に、ナノ構造かナノチューブ材料は、マトリクス材料と結合され、それらの混合物を形成する。マトリクス材料は、金属、金属合金、またはそれの混合物などのように電気化学的にエッチングされ得る導電性の粒子を含み得る。具体例は、Fe、Mg、Cu、Co、Ni、Zn、Cr、Al、Au、Ag、Sn、Pb、W、Ti、またはそれの混合物を含む。
【0033】
代わりに、マトリクス材料は、電気化学的にエッチングされ得る金属を与えるために高温度で分解する金属塩または金属酸化物を含むことができる。具体例は、Fe2O3、TiO2、MgO、CaOまたは、それの混合物を含む。
【0034】
ナノ構造またはナノチューブ材料とマトリクス材料とは、適切な技術に従って結合され得る。例えば、ナノ構造またはナノチューブ材料は、アルコールまたは水などの適切な溶剤中で粉砕され得るが、マトリクス材料はその溶剤に加えられ、一緒に粉砕され、スラリーあるいは懸濁液の形態でそれらの均一な混合物が得ることができる。スラリーあるいは懸濁液の均質性は、その中に超音波エネルギーを適用することによって改善することができる。
【0035】
懸濁液は図1Aに示したように、ランダムに配向しているナノ構造またはナノチューブ112とマトリクス114とを含む自立基体110を形成するために使用され得る。オープションに、スラリーあるいは懸濁液は、乾燥して粉末状の形態にし得るが、この粉末状の形態は、次に、適切な形状を形成するために圧縮され、あるいは別のやり方で処理される。
【0036】
代わりに、適切な技術に従ってスラリーは支持体表面または基体に適用され得る。基体は、金属、金属合金、グラファイト、ドープされたシリコンなどの適切な導電材料によって作られ得る。代わりに、基体はインジウム酸化スズガラスまたはガラス、またはドープされた金属層をもつシリコンウェハーのような導電層で被覆された非導電材料で形成され得る。
【0037】
スラリーあるいは懸濁液を適用ための適切な技術は、懸濁液または溶液の鋳込み、スプレー、スピンコーティング、スクリーン印刷、または電気泳動堆積(EPD)を含んでいる。図1Bに示したように、被覆された基体120が形成され、この基体はマトリクス124中に埋め込まれているランダムに配向されたナノ構造またはナノチューブ122を含み、それによって支持表面すなわち基体126に適用される被覆物(coating)を形成する。
【0038】
混合物中に存在するナノ構造またはナノチューブとマトリクス材料との比率は変えられ得る。1つの実施例によれば、混合物は10重量%のナノチューブと90重量%のマトリクス材料を含み得る。
【0039】
好ましい実施例によると、混合物は、支持体表面すなわち基体上に電気泳動堆積(EPD)によって堆積される。いかなる適切な電気泳動堆積(EPD)も利用することができる。例示技術の具体的な詳細は、米国特許出願連続番号第60/431,719号、現米国特許第 号を参照のこと、その内容はその全体が参照として本願に組み込まれる。
【0040】
一般に、そのような技術は、上記説明したように混合物からの懸濁液の形成を含む。懸濁液に含まれる混合物の濃度は変えられ得る。例えば、懸濁液は1mlの液体媒体あたりナノ構造あるいはナノチューブ材料の0.4gを含み得る。
【0041】
オープションに、チャージャーは、電気泳動堆積を容易にするために懸濁液中に加えられる。可能なチャージャーは、MgCl2、Mg(NO3)2、La(NO3)3、Y(NO3)3、AlCl3および水酸化ナトリウムを含む。いかなる適切な量も利用され得る。1重量%〜50重量%までの範囲の量は、懸濁液中に含まれるナノ構造またはナノチューブ/マトリックス混合物の量に比例して測定されるように、ふさわしい。好ましい実施例によると、懸濁液は10%未満のチャージャーのを含むことができる。
【0042】
複数の電極は次に懸濁液中に導入される。好ましい実施例によると、2つの電極が利用される。電極の1つは、混合物が堆積される対象物を含む。必要な程度の電気伝導性があれば、いかなる適切な対象物すなわち基体材料も予想される。好ましい実施例によると、対象物は金属あるいはドープされたシリコンである。
【0043】
交流または直流が電極に適用されると、電極間に電場が生成する。これは、懸濁液中の混合物の粒子が基体電極に向かって移動して付着することを引き起こす。
【0044】
電気泳動堆積は、高温、または、室温で実行され得る。好ましい実施例によると、上記説明された電気泳動堆積は高温で実行される。40〜60℃のオーダの高温は予想される。
【0045】
電気泳動堆積(EPD)は直流あるいは交流の印可で起こり得る。例えば、直流が印加されると、ナノ構造材料が移動する特定の電極(すなわち、アノードかカソード)は、チャージャー材料の選択で制御され得る。例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)などの負のチャージャーの使用は、ナノ構造の材料に負の電荷を与え、それにより、ナノ構造材料が正電極(カソード)に向かって移動する傾向を生み出す。逆に、MgCl2のような正のチャージャーが使用されると、正の電荷はナノ構造材料に与えられ、それにより、ナノ構造材料が負電極(アノード)に向かって移動する傾向を生成する。
【0046】
交流場が使用されると、ナノ構造材料が移動する特定の電極は、交流電流の周波数の選択、ナノ構造材料に比べた液体の誘電定数、電場の大きさ(field concentration)、および電極の幾何学てき形状を通して制御され得る。
【0047】
図2Aは、電気泳動堆積(EPD)プロセスのような配置を概略的に例示しており、その配置は、後で記載されるように、混合物の電気化学なエッチングに対してもまた利用される。一般に、図2Aで示されるように、配置200は正および負の端子持つ電源210を含んでいる。これら端子は、電極212と電極214の1組に付いている。これらの電極は液体溶媒216中に沈められている。電気泳動堆積(EPD)プロセスのために、第1の電極は、混合物220の被覆物(coating)が堆積されている基体218を含んでいる。液体媒体216は、混合物の粒子、およびオープションにチャージャーおよび/または他の成分を含んでいる。粒子は電極間に生成された電場よって、基板電極212に向かって粒子を動かして基板電極の表面に粒子が接着する傾向となる方法で分極される。混合物が堆積される基体電極212の領域は、適切なマスキング技術によって制御され、それにより、均一なまたはパターン化された可能な被覆物の堆積を作ることができる。
【0048】
被覆物が電気泳動堆積(EPD)技術によって形成されるとき、本発明のプロセスはオープションに、堆積された被覆物が例えば、ガラスや金属板のような平板表面に対して圧縮され、それによって表面の平滑性と均質性を改善する工程を含む。
【0049】
被覆物または自立基体は、次にナノ構造あるいはナノチューブ/マトリックス複合体を統合するために焼結される。焼結工程は、例えば、300〜1200℃で、5×10-7torrの真空下で、3時間まで実行することができる。
【0050】
自立基体の形態において、焼結体はオープションに、切断されあるいは研磨され、そして洗浄されて、その上にあるいは平滑な表面をもつ基体を提供する。
【0051】
次に、上記説明されたように形成された自立基体または被覆された基体は、好ましくは、少なくとも基体または被覆物の表面の一部からマトリックス材料の層を除去するためにエッチングされる。
【0052】
エッチングは、いかなる適切な技術に従っても実行され得る。しかしながら、エッチングは電気化学的な技術によって達成されるのが好ましい。電気化学的なエッチングは酸によるエッチングなどの他の技術よりも好ましい。なぜなら、(i)エッチング速度は電源で発生された電流、エッチング時間を制御することによって容易に制御される、(ii)電気化学的エッチングはエッチングされる材料およびエッチングされるべきでない材料に関してよりよい選択性を許容する、容易に(iii)電気化学エッチング工程は、基本的な設備のセットアップが両方の工程で同じなので電気泳動堆積(EPD)も含むプロセス中に容易に統合することができる。事実上、本発明に従って、電気泳動堆積(EPD)と電気化学的エッチングの両方を組み込むプロセスは、既存の技術と比べたとき、優れた制御、便利さおよび効率における利得を可能にしてプロセスに相乗効果与える。
【0053】
本発明で使用される電気化学エッチングの基本的な考え方は、電気化学的メッキで使用されるものと同様である。図2で示されるように、コーティングされた基体は、電源210のカソード212を形成する。別の導電板プレート214、好ましくは、ステンレス鋼またはカーボンの電極が電源210の負電極に接続される。2つの電極212、214は電気化学用浴槽216中に浸される。
【0054】
液体媒体または浴槽216は、エッチングされる材料すなわちマトリクス材料の元素を含む酸、塩基または塩の水溶液あるいは非水溶液であり得る。原則として、電気化学的メッキ板で使用されるいかなる金属あるいは金属合金の浴槽も、電気化学的に金属あるいは合金をエッチングするのに使用することができる。
例えば、コーティング220が鉄/カーボンナノチューブ複合体を含むならば、鉄をメッキするのに使用される電気化学の浴槽216は、鉄/カーボンナノチューブ複合体コーティング220から鉄層をエッチングして除去するために使用され得る。電気化学エッチングの間、鉄/カーボンナノチューブ複合体中の鉄原子は、正電極212で酸化されメッキ浴槽216中に溶解し、同数の鉄原子が電気的に中性となるるように負電極214に堆積するだろう。カーボン材料は、電気化学反応の間非常に安定しており、エッチング工程で通常生き残る。
【0055】
エッチング工程は、室温または高温度で実行することができる。好ましい実施例によると、電気化学的なエッチング工程は、30〜90℃程度に昇温された温度で実行される。
【0056】
例として、マトリクス材料が鉄(Fe)ならば、エッチング浴槽は240g/L濃度の硫酸鉄(FeSO4)の水溶液であり得る。好ましくは、浴槽のpH値が2.8〜3.5の間であり、浴槽の温度が32〜66℃である。電流密度は、好ましくは、20-40A/ft2であり、電圧は、1〜20Vの間である。
【0057】
図2Bと2Cにエッチング前のコーティングされた基体220'とエッチングした後のコーティングされた基体220”をそれぞれ概略的に示す。図2Cで示されるように、エッチング工程は、コーティングされた基体の所望の放出表面で、多くのナノ構造あるいはナノチューブ221を露出する。
【0058】
電気化学的エッチングの後に、これらの構造は、次にオープションに、脱イオン化水とアルコールを使用して徹底的に洗浄される。次に、処理中に構造中に導入された湿気と溶媒を取り除くためにオープションに動的な真空下でアニーリングされる。適切な例示のアニーリング条件には、5×10−7、850℃で1.5時間を含む。
【0059】
コーティングされた基体あるいは自立基体は、電子放出の方向にナノ構造あるいはナノチューブを整列するのを促進するようにさらに処理することができる。多数の技術が実行可能である。実施例によると、コーティングされた基体あるいは自立基体は、高周波電圧パルスをかけることができる。パルス電圧は、数ボルト〜数千ボルトであり、カソードとアノード間の距離に依存する。周波数は数KHzからMHzまでである。好ましくは数KHzである。処理時間は数時間まで可能であるが、好ましくはわずか数分である。配列工程は、処理中のいかなる適切な時間にも実行することができるが、好ましくは、エッチングによるナノ構造あるいはナノチューブの露出過程の後で、コーティングされた基体あるいは自立基体を電子放出のために動力を増加する(powering up)前である。
【0060】
多くの変更と付加は、上記説明されたように実行される方法の基本的な骨組みの中において可能である。制限なしに上記概説された本発明の原理に従って実行される別の方法の例が、これより記載される。
【0061】
放出画素の微細な画素サイズあるいはマトリクスをもつ電界放出カソードもまた上記方法によって作ることができる。図3A〜3Dで示されるように、ドクターブレード、同様のデバイス、スピンコーティング、スクリーン印刷または電気泳動によって、表面に格子状の模様がある(waffled)基体310上に、金属/カーボンナノチューブペースト320を堆積することができる。コーティングされたペーストは、適切な条件下で焼結あるいは溶融され、その結果、ナノチューブ-金属複合体330の小さな堆積物を与える。コーティングされた基体の最上表面340は、研磨されアルコールを使用して徹底的に洗浄される。図3Cに示されるように、金属/カーボンナノチューブ複合体は空洞312に限定される。この構造は、次に、上記記載された電気化学的技術によってエッチングされ洗浄されて、これらの領域はカーボンナノチューブエミッタ350(図3D)を露出した。露出されたナノチューブは上記説明したように配列処理にかけてもよい。
【0062】
図4A〜4Eに示されるように、写真製版(photolithography)技術によってもまた同様の構造を作ることができる。フォトレジスト層420は、金属/カーボンナノチューブ複合体のペレットあるいはフィルム410上に堆積される。露光後にパターン化された構造430は、開口領域440を持ちながら形成される。ペレットあるいはフィルム41は、浴槽に露出された領域で電気化学的にエッチングされ、開口440を形成する。その結果、カーボンナノチューブエミッタ450は露出されるように残される。露出したナノチューブ450は、前に議論したように整列処理にかけてもよい。フォトレジスト層430ははがされて除去され、パターン化されたカソード460が形成される。写真製版技術が非常に小さい形状をパターンすることができるので、図4Eに示されるような微細なスポットをもつカソードが上記記述されたプロセスによって容易に作ることができる。
【0063】
微細な焦点スポットあるいは微細な焦点スポット配列をもつ電界放出カソードは、図5A〜5Cに示されるようなプロセスで作ることができる。基板は、穴512をもつディスク(disk)510と、穴516をもつコーン(corn)514とを含む。金属/カーボンナノチューブペースト520は、図5Bに示されるように、上記説明した技術によって穴516中に満たされる。好ましくは、満たされた穴は高温度で真空アニーリングされ、その結果、ナノチューブ−金属複合体530の堆積を形成する。次に、ナノチューブ−金属複合体530の表面は電気化学的にエッチングされ、図5Cに示されるようにかなりの数のカーボンナノチューブ540が金属マトリクスから露出されるのを確実にする。オープションに、露出したナノチューブは前に説明された配列工程にかけられる。必要な場合、前の表面550は研磨され洗浄されて、放出材料だけが穴中に存在する。金属/カーボンナノチューブペーストは、図5Aの大きい矢によって示されるように、後ろから構造を満たすことができる。パラフィルムあるいは他のフィルムを使用して充填する前に、前表面550と横表面560を被覆され得る。充填工程後にはぎ取られ、前の(放出)表面は穴516中の領域だけに放出材料を持つ。
【0064】
三極真空管電界放出構造もまた、図6A〜6Eに示されるように写真製版技術によって作ることができる。絶縁層(dielectric layer)620はカーボンナノチューブ/金属複合体フィルムあるいは基体610上に堆積される。導電層630は絶縁層620上に堆積される。フォトレジスト層640は導電層630上に堆積されて、露出されて、露光される。図6B〜6Eに示されるように、開口650をもつパターン化された構造は、通常の写真製版技術によって作ることができる。ナノチューブ/金属複合体610の層は電気化学的エッチングによってエッチング除去され、その結果、その表面(図6D)にナノチューブエミッタ660を露出する。露出されたナノチューブ660は、オープションに配列工程にかけられる。残っているフォトレジスト層ははぎ取られて除去される。結果物である三極真空管電界放出カソード670は図6Eに示される。
【0065】
上記記載された技術は、フラットパネルディスプレイ、電子レンジの真空管、携帯用エックス線デバイス、ガス放出管などの異なった多くのデバイスでの使用のために電子エミッタを形成するのに使用されることができる。
【0066】
本発明は上記言及した実施例を参照して記載されたが、当業者は、修正もしくは改変が可能であることは明らかである。したがって、本発明は添付の請求項の範囲の主旨によってのみ定義される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1A】、
【図1B】本発明のマトリクスーナノチューブ複合体の概略を示す図である。
【図2A】、
【図2B】、
【図2C】本発明のエッチング手順の概略を示す図である。
【図3A】、
【図3B】、
【図3C】、
【図3D】本発明のマトリクスーナノチューブ複合体の配列を持つ基体(すなわち、カソード)を形成するための技術の概略を示す図である。
【図4A】、
【図4B】、
【図4C】、
【図4D】、
【図4E】本発明の電界放出用の微細な焦点の配列を持つ基体(たとえば、カソード)を形成する別の技術の概略を示す図である。
【図5A】、
【図5B】、
【図5C】本発明の電界放出用の微細な焦点の配列を持つ基体(たとえば、カソード)を供給する別の技術の概略を示す図である。
【図6A】、
【図6B】、
【図6C】、
【図6D】、
【図6E】本発明の三極電界放出構造を形成する技術の概略を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界放出構造の性能を改善するための処理とともに、ナノ構造含有材料を組み込む電界放出構造とデバイスの形成に対する改善された技術に向けられる。さらに、本発明は、関連される構造と装置に向けられる。
【背景技術】
【0002】
この出願は、「カーボンナノチューブ/金属複合材料からなる電界放出カソードの製造と活性化処理」と題名され2002年7月3日に出願された、アメリカ合衆国法典第35巻119条の下、米国仮出願番号第60/393,097号に優先権を主張し、その内容はすべてこの引用によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
[発明の背景]
様々な構造と技術は、以下に記載されるだろう。しかしながら、ここで記載されたもののいずれもが従来技術の認可として解釈されるべきではない。それと反対に、出願人は、ここで記載されたもののいずれもが適切な法律の条文の下での従来技術とは認められないことを適切に明らかにする権利を留保する。
【0004】
用語「ナノ構造」材料(“nanostructure”material)は、C60フラ−レン、フラ−レンタイプの同心状の黒鉛粒子、金属、CdSe、InPなどの化合物半導体などのナノ微粒子、シリコン、ゲルマニウム、SiOx、GeOxなどのナノワイヤ/ナノロッド、カーボン、BxNy、CxByNz、MoS2、およびWS2などの単一または複数の元素のいずれかで構成されたナノチューブを含む材料を指定するために、この技術に精通した人によって使用されている。「ナノ構造」材料の共通の特徴の1つは、それらの基本の基礎単位(building block)である。単一のナノ微粒子またはカーボンナノチューブは、少なくとも一方向で500nm未満である寸法を持っている。これらのタイプの材料は、さまざまなアプリケ−ションとプロセスへのかなりの関心をもたらすある特性を現すことが示されてきた。
【0005】
カーボンナノチューブなどのナノ構造は、それらの独特な幾何学的配置、極めて高い機械的強度、および良好な化学的および熱的安定性により、優れた電子電界エミッタであることが知られている。実験は、それらが電子放出に対する低いしきい値電界(1−2V/μm)をもち、非常に高い電流密度で放出できることを示した。
【0006】
しかしながら、カーボンナノチューブと基体間における、膜の均一性の低さおよび不十分な付着性および電気伝導率など材料の問題のため、巨視的なカーボンナノチューブを含んでいる構造とデバイスから高い安定した放出電流は得られていない。この放出電流はその実用的な利用を制限している。
【0007】
カーボンナノチューブを合成するのに利用可能な全ての技術の中で、レーザアブレーションおよびアーク放電方法は、高いレベルの構造的な完全性および最良の電子電界放出の特性をもつカーボンナノチューブを生成する。しかしながら、そこから作られている材料は、カソードなどの電界放出デバイス中に容易に組み込めない多孔性の膜あるいは粉末の形態であり、更なる処理をしないでデバイス上に直接使用されることはできない。化学蒸着(CVD)方法は、カーボンナノチューブを直接基体上に成長させることができるが、この方法は、非常な高温(600-1000℃)と反応性の環境を必要とする。また、CVDで成長したカーボンナノチューブは、一般に、同じレベルの構造的な完全性をもっていないので、その結果、レーザアブレーションあるいはアーク放電方法によって作られたカーボンナノチューブと同じような放出特性をもっていない。カーボンナノチューブ、特に、レーザアブレーションおよびアーク放電方法によって作られた単一壁のカーボンナノチューブ優れた電子電界放出特性を完全に利用するために、いくつかの堆積技術が開発された。
【0008】
さらに、レーザアブレーションとアーク放電方法によって形成された粉末あるいはすす中に含まれるナノチューブは、ランダムに配向されている。しかしながら、電子放出源として利用される場合、例えば、共通の放出目標に向けるなどナノチューブの先を同じ方向に向けるのは有利である。従って、通常のナノチューブが配向していないことは電界放出デバイスにおけるその利用に対する新たな挑戦を与える。
【0009】
材料、デバイスおよび技術を含むナノ構造の代表てきな開示は以下のものを含んでいる。米国特許第 号公報(「カーボンナノチューブ電界エミッター構造を有するデバイスとそのデバイスの製造方法」と名付けられた米国特許出願第09/296,572号)は、カーボンナノチューブ基の電子エミッター構造を開示する、その全体がここで参照文献として組み込まれる(特許文献1)。
【0010】
米国特許第 号公報(「薄膜カーボンナノチューブ電界エミッター構造を有するデバイス」と名付けられた米国特許出願第09/351,537号)は、高放出電流密度を有するカーボンナノチューブ電界エミッター構造を開示する、その全体がここで参照文献として組み込まれる(特許文献2)。
【0011】
「電子電界放出カソードを用いるX線発生機構」と名付けられた米国特許第6553096号公報は、少なくとも一部がナノ構造含有材料で形成されたカソードを組み込んだX線発生デバイスを開示する、その全体がここで参照文献として組み込まれる(特許文献3)。
【0012】
「大きな領域を個々にアドレス可能な多ビームX線システムおよびその形成方法」と名付けられた米国特許出願第2002/0140336号は、複数の静止した個々に電気的にアドレス可能な電界放出電子源を含むX線を発生するための構造と技術を開示する、その全体が参照文献として組み込まれる(特許文献4)。
【0013】
米国特許第 号公報(「電子ビーム電流を制御する装置および方法」と名付けられた米国特許出願第10/358,160号)は、圧電、熱または光学的な手段で電子放出電流の個々の制御を許容するX線発生装置を開示する、その全体がここで参照文献として組み込まれる(特許文献5)。
【0014】
「高められた電界放出と着火(Ignition)の特徴を用いるコーティングされた電極」と名付けられた米国特許出願第2002/0140336号は、ナノチューブ含有材料を組み込んだ被覆された電極構成を開示する、その全体が参照文献として組み込まれる(特許文献6)。
【0015】
米国特許第 号公報(「真空およびガス状の電子工学のためのナノ材料基の電子電界放出カソード」と名付けられた米国特許出願第10/448,144号)は、少なくとも一部にナノ構造を含む材料に基づく電界放出カソードを組み込む電子工学を開示する、その全体がここで参照文献として組み込まれる(特許文献7)。
【0016】
「固体状態のCTシステムおよび方法」と名付けられた米国特許第6,385,292号は、複数のアドレス可能なエレメントから形成されたカソードを含むX線源を開示する、その全体が参照文献として組み込まれる(特許文献8)。
【0017】
米国特許第 号公報(「改善された電極および関連するデバイスおよび方法」と名付けられた米国特許第 号公報(米国特許出願第10/464,440号、2003年6月19日出願)は、マトリックス材料中に埋め込まれたナノ構造を含む材料を組み込んだカソードを含むデバイスを開示する、その全体がここで参照文献として組み込まれる(特許文献9)。
【特許文献1】米国特許出願第09/296,572号
【特許文献2】米国特許出願第09/351,537号
【特許文献3】米国特許 第6,553,096号
【特許文献4】米国特許出願第2002/94,064号
【特許文献5】米国特許出願第10/358,160号
【特許文献6】米国特許出願第2002/140,336号
【特許文献7】米国特許出願第10/448,144号
【特許文献8】米国特許 第6,385,292号
【特許文献9】米国特許出願第10/464,440号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、アーク放電、レーザアブレーション技術などによって形成されたカーボンナノチューブまたは他のナノ構造含有材料を粘着性のがっしりした電界放出デバイス中に容易に組み込むことができ、一方、良好な電気伝導性と、放出方向に突き出ている実質的な数のナノチューブとを提供するプロセスが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
[発明の概要]
本発明は、ナノ構造含有材料複合体を含むカソードなどの電界放出デバイスの製造方法と活性化方法を提供する。ナノ構造含有材料は、(1)金属または金属合金を含む導電材料または金属酸化物または(2)金属塩塩を含む非導電性材料のような他の材料の粒子と混合される。この混合物は(1)支持構造物の表面にコーティングされる、あるいは、(2)圧縮され、焼結され、または溶融されて、凝縮した(compact)自立基体(free-standing body)になる。この被覆物(coating)は均一で、または予め決定された構造でパターン化され得る。自立基体は所望の幾何学的形状(geometry)に処理される。
【0020】
被覆物(coating)または自立基体は、電子放出特性を改善するために更に処理される。電子電界放出特性を改善する1つの方法は、表面の電気化学のエッチングを使用することである。高周波パルスは、複合体表面から突き出ているカーボンナノチューブをさらに配列するのに使用することができる。
【0021】
薄いカーボンナノチューブ膜と比べて、上記記載のようにして形成された被覆物(coating)は、ナノ構造含有材料と基体との間の接着性と電気伝導性とをより良くする。
【0022】
1つの態様によれば、本発明は、(i)ナノ構造含有材料を形成する工程と、(ii)前記ナノ構造含有材料とマトリクス材料の混合物を形成する工程と、(iii)電気泳動堆積によって前記混合物の層を基体の少なくとも1つの表面の少なくとも一部の上に堆積させる工程と、(iv)前記混合物の層を焼結しまたは溶融して複合体を形成する工程と、(v)前記複合体を電気化学的にエッチングして前記複合体の表面からマトリクス材料を取り除き、ナノ構造含有材料を露出させる工程と、を含む電子エミッタを形成する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[発明の詳細な説明]
以下図面を参照して本発明に基づく例示的な構成および手法を説明する。
【0024】
一般に、本発明の原理に従って実行される方法は、(1)アーク放電やレーザアブレーションなどの適切な技術によって未精製のナノ構造含有材料を形成する工程、(2)ナノ構造含有材料とマトリクス材料との混合物を形成する工程、(3)混合物を支持体表面または基体に適用する工程、または自立基体中に混合物を形成する工程、(4)混合物を圧縮して均一性および/または平滑性を改善する工程、(5)混合物を焼結する、または溶融する工程、(6)焼結した混合物を研磨して洗浄する工程、(7)焼結した混合物をエッチングしてマトリクス材料を除去し、ナノ構造材料を露出させる工程、(8)エッチングされた混合物を洗浄する工程、(9)エッチングされた混合物をアニーリング工程、(10)エッチング手順によって露出されたナノ構造材料を配列する工程、のうちのいくつかの工程の組み合わせまたは全ての工程の組み合わせを含むことができる。
【0025】
このプロセスは、予め形成された未精製のナノ構造含有材料(pre-formed raw nanostructure-containing material)であって、好ましくは、高いアスペクト比をもつもの、あるいは、カーボンナノチューブ含有材料のようなナノチューブ含有材料を用いて始める。この未精製の材料は、単一壁のカーボンナノチューブ、多壁のカーボンナノチューブ、シリコン、酸化珪素、ゲルマニウム、酸化ゲルマニウム、窒化炭素(carbon nitrides)、ホウ素、窒化ホウ素(boron nitride)、ジカルコゲナイド(dichalcogenide)、銀、金、鉄、酸化チタン、酸化ガラニウム(gallanium oxide)、リン化インジウム、またはナノ構造内に囲まれたFe,Co,Niのような磁気粒子、のうちの少なくとも1つを含むことができる。好ましい実施例によると、未精製カーボンナノチューブを含む材料は、単一壁のカーボンナノチューブを含む。カーボンナノチューブは、上記説明したアーク放電およびレーザアブレーション方法などの適切な技術によって形成することができる。
【0026】
BxCyNz(B=ホウ素、C=カーボン、N=窒素)の組成をもつナノチューブ構造、またはMS2(M=タングステン、モリブデン、または酸化バナジウム)の組成をもつ同心状のフラーレン構造の形態である未精製材料が利用され得ることが、本発明によってさらに意図されている。これらの未精製の材料は、上記説明したアーク放電技術などのような適切な技術によって形成され得る。
【0027】
未精製のナノ構造含有材料は精製され得る。この未精製の材料を精製するための多くの技術が予想される。例えば、未精製のナノ構造含有材料は、適切な溶媒、例えば、1〜40容積%濃度の過酸化水素(H2O2)と水中で、好ましくは20容積%濃度のH2O2で環流され、続いてCS2で洗浄され、続いてメタノール中で洗浄され、続いて濾過されることによって精製され得る。例示の技術に従うと、媒体中のナノチューブの1〜10mgに対して約10〜100mlの過酸化物が媒体中に導入され、環流の反応は、20〜100℃の温度で実行された(例えば、米国特許第6,553,096号公報参照)。
【0028】
別の代替手段によると、未精製のナノ構造含有材料は、酸性媒体、有機溶剤、またはアルコール好ましくはメタノールなどの適切な液体媒体中に置かれる。未精製の材料は高出力の超音波ホーンを使用して数時間液体媒体の中で懸濁液中に保持され、そして、この懸濁液は多孔性の膜を通される。別の実施例では、未精製のナノ構造含有材料は、200〜700℃で、空気中または酸素環境下における酸化によって精製され得る。この未精製の材料中の不純物はナノチューブよりも速い速度で酸化される。
【0029】
また別の実施例では、未精製の材料は、不純物からナノ構造/ナノチューブを分離するために液体クロマトグラフィーによって精製され得る。
【0030】
また、ナノ構造あるいはナノチューブは、その長さを短くする工程にもかけられ得る。例えば、カーボンナノチューブは強酸にさらすことによって短くされ得る。代わりに、ボールミル(ball milling)のような機械的な粉砕技術によって破壊されたり短くされたりできる。
【0031】
精製された未精製の材料は、上記説明した短くする工程にかけらるか否かにかかわらず、100℃〜1200℃の適切な温度でオープションにアニーリングされ得る。好ましい実施例によれば、アニーリング温度は100℃〜600℃である。この材料は約1〜60分などの適切な時間アニーリングされる。好ましい実施例によれば、この材料は約1時間アニーリングされる。この材料は約10-2torrの真空下で、またはさらに高い真空下でアニーリングされる。好ましい実施例によれば、真空は約5×10−7torrである。
【0032】
次に、ナノ構造かナノチューブ材料は、マトリクス材料と結合され、それらの混合物を形成する。マトリクス材料は、金属、金属合金、またはそれの混合物などのように電気化学的にエッチングされ得る導電性の粒子を含み得る。具体例は、Fe、Mg、Cu、Co、Ni、Zn、Cr、Al、Au、Ag、Sn、Pb、W、Ti、またはそれの混合物を含む。
【0033】
代わりに、マトリクス材料は、電気化学的にエッチングされ得る金属を与えるために高温度で分解する金属塩または金属酸化物を含むことができる。具体例は、Fe2O3、TiO2、MgO、CaOまたは、それの混合物を含む。
【0034】
ナノ構造またはナノチューブ材料とマトリクス材料とは、適切な技術に従って結合され得る。例えば、ナノ構造またはナノチューブ材料は、アルコールまたは水などの適切な溶剤中で粉砕され得るが、マトリクス材料はその溶剤に加えられ、一緒に粉砕され、スラリーあるいは懸濁液の形態でそれらの均一な混合物が得ることができる。スラリーあるいは懸濁液の均質性は、その中に超音波エネルギーを適用することによって改善することができる。
【0035】
懸濁液は図1Aに示したように、ランダムに配向しているナノ構造またはナノチューブ112とマトリクス114とを含む自立基体110を形成するために使用され得る。オープションに、スラリーあるいは懸濁液は、乾燥して粉末状の形態にし得るが、この粉末状の形態は、次に、適切な形状を形成するために圧縮され、あるいは別のやり方で処理される。
【0036】
代わりに、適切な技術に従ってスラリーは支持体表面または基体に適用され得る。基体は、金属、金属合金、グラファイト、ドープされたシリコンなどの適切な導電材料によって作られ得る。代わりに、基体はインジウム酸化スズガラスまたはガラス、またはドープされた金属層をもつシリコンウェハーのような導電層で被覆された非導電材料で形成され得る。
【0037】
スラリーあるいは懸濁液を適用ための適切な技術は、懸濁液または溶液の鋳込み、スプレー、スピンコーティング、スクリーン印刷、または電気泳動堆積(EPD)を含んでいる。図1Bに示したように、被覆された基体120が形成され、この基体はマトリクス124中に埋め込まれているランダムに配向されたナノ構造またはナノチューブ122を含み、それによって支持表面すなわち基体126に適用される被覆物(coating)を形成する。
【0038】
混合物中に存在するナノ構造またはナノチューブとマトリクス材料との比率は変えられ得る。1つの実施例によれば、混合物は10重量%のナノチューブと90重量%のマトリクス材料を含み得る。
【0039】
好ましい実施例によると、混合物は、支持体表面すなわち基体上に電気泳動堆積(EPD)によって堆積される。いかなる適切な電気泳動堆積(EPD)も利用することができる。例示技術の具体的な詳細は、米国特許出願連続番号第60/431,719号、現米国特許第 号を参照のこと、その内容はその全体が参照として本願に組み込まれる。
【0040】
一般に、そのような技術は、上記説明したように混合物からの懸濁液の形成を含む。懸濁液に含まれる混合物の濃度は変えられ得る。例えば、懸濁液は1mlの液体媒体あたりナノ構造あるいはナノチューブ材料の0.4gを含み得る。
【0041】
オープションに、チャージャーは、電気泳動堆積を容易にするために懸濁液中に加えられる。可能なチャージャーは、MgCl2、Mg(NO3)2、La(NO3)3、Y(NO3)3、AlCl3および水酸化ナトリウムを含む。いかなる適切な量も利用され得る。1重量%〜50重量%までの範囲の量は、懸濁液中に含まれるナノ構造またはナノチューブ/マトリックス混合物の量に比例して測定されるように、ふさわしい。好ましい実施例によると、懸濁液は10%未満のチャージャーのを含むことができる。
【0042】
複数の電極は次に懸濁液中に導入される。好ましい実施例によると、2つの電極が利用される。電極の1つは、混合物が堆積される対象物を含む。必要な程度の電気伝導性があれば、いかなる適切な対象物すなわち基体材料も予想される。好ましい実施例によると、対象物は金属あるいはドープされたシリコンである。
【0043】
交流または直流が電極に適用されると、電極間に電場が生成する。これは、懸濁液中の混合物の粒子が基体電極に向かって移動して付着することを引き起こす。
【0044】
電気泳動堆積は、高温、または、室温で実行され得る。好ましい実施例によると、上記説明された電気泳動堆積は高温で実行される。40〜60℃のオーダの高温は予想される。
【0045】
電気泳動堆積(EPD)は直流あるいは交流の印可で起こり得る。例えば、直流が印加されると、ナノ構造材料が移動する特定の電極(すなわち、アノードかカソード)は、チャージャー材料の選択で制御され得る。例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)などの負のチャージャーの使用は、ナノ構造の材料に負の電荷を与え、それにより、ナノ構造材料が正電極(カソード)に向かって移動する傾向を生み出す。逆に、MgCl2のような正のチャージャーが使用されると、正の電荷はナノ構造材料に与えられ、それにより、ナノ構造材料が負電極(アノード)に向かって移動する傾向を生成する。
【0046】
交流場が使用されると、ナノ構造材料が移動する特定の電極は、交流電流の周波数の選択、ナノ構造材料に比べた液体の誘電定数、電場の大きさ(field concentration)、および電極の幾何学てき形状を通して制御され得る。
【0047】
図2Aは、電気泳動堆積(EPD)プロセスのような配置を概略的に例示しており、その配置は、後で記載されるように、混合物の電気化学なエッチングに対してもまた利用される。一般に、図2Aで示されるように、配置200は正および負の端子持つ電源210を含んでいる。これら端子は、電極212と電極214の1組に付いている。これらの電極は液体溶媒216中に沈められている。電気泳動堆積(EPD)プロセスのために、第1の電極は、混合物220の被覆物(coating)が堆積されている基体218を含んでいる。液体媒体216は、混合物の粒子、およびオープションにチャージャーおよび/または他の成分を含んでいる。粒子は電極間に生成された電場よって、基板電極212に向かって粒子を動かして基板電極の表面に粒子が接着する傾向となる方法で分極される。混合物が堆積される基体電極212の領域は、適切なマスキング技術によって制御され、それにより、均一なまたはパターン化された可能な被覆物の堆積を作ることができる。
【0048】
被覆物が電気泳動堆積(EPD)技術によって形成されるとき、本発明のプロセスはオープションに、堆積された被覆物が例えば、ガラスや金属板のような平板表面に対して圧縮され、それによって表面の平滑性と均質性を改善する工程を含む。
【0049】
被覆物または自立基体は、次にナノ構造あるいはナノチューブ/マトリックス複合体を統合するために焼結される。焼結工程は、例えば、300〜1200℃で、5×10-7torrの真空下で、3時間まで実行することができる。
【0050】
自立基体の形態において、焼結体はオープションに、切断されあるいは研磨され、そして洗浄されて、その上にあるいは平滑な表面をもつ基体を提供する。
【0051】
次に、上記説明されたように形成された自立基体または被覆された基体は、好ましくは、少なくとも基体または被覆物の表面の一部からマトリックス材料の層を除去するためにエッチングされる。
【0052】
エッチングは、いかなる適切な技術に従っても実行され得る。しかしながら、エッチングは電気化学的な技術によって達成されるのが好ましい。電気化学的なエッチングは酸によるエッチングなどの他の技術よりも好ましい。なぜなら、(i)エッチング速度は電源で発生された電流、エッチング時間を制御することによって容易に制御される、(ii)電気化学的エッチングはエッチングされる材料およびエッチングされるべきでない材料に関してよりよい選択性を許容する、容易に(iii)電気化学エッチング工程は、基本的な設備のセットアップが両方の工程で同じなので電気泳動堆積(EPD)も含むプロセス中に容易に統合することができる。事実上、本発明に従って、電気泳動堆積(EPD)と電気化学的エッチングの両方を組み込むプロセスは、既存の技術と比べたとき、優れた制御、便利さおよび効率における利得を可能にしてプロセスに相乗効果与える。
【0053】
本発明で使用される電気化学エッチングの基本的な考え方は、電気化学的メッキで使用されるものと同様である。図2で示されるように、コーティングされた基体は、電源210のカソード212を形成する。別の導電板プレート214、好ましくは、ステンレス鋼またはカーボンの電極が電源210の負電極に接続される。2つの電極212、214は電気化学用浴槽216中に浸される。
【0054】
液体媒体または浴槽216は、エッチングされる材料すなわちマトリクス材料の元素を含む酸、塩基または塩の水溶液あるいは非水溶液であり得る。原則として、電気化学的メッキ板で使用されるいかなる金属あるいは金属合金の浴槽も、電気化学的に金属あるいは合金をエッチングするのに使用することができる。
例えば、コーティング220が鉄/カーボンナノチューブ複合体を含むならば、鉄をメッキするのに使用される電気化学の浴槽216は、鉄/カーボンナノチューブ複合体コーティング220から鉄層をエッチングして除去するために使用され得る。電気化学エッチングの間、鉄/カーボンナノチューブ複合体中の鉄原子は、正電極212で酸化されメッキ浴槽216中に溶解し、同数の鉄原子が電気的に中性となるるように負電極214に堆積するだろう。カーボン材料は、電気化学反応の間非常に安定しており、エッチング工程で通常生き残る。
【0055】
エッチング工程は、室温または高温度で実行することができる。好ましい実施例によると、電気化学的なエッチング工程は、30〜90℃程度に昇温された温度で実行される。
【0056】
例として、マトリクス材料が鉄(Fe)ならば、エッチング浴槽は240g/L濃度の硫酸鉄(FeSO4)の水溶液であり得る。好ましくは、浴槽のpH値が2.8〜3.5の間であり、浴槽の温度が32〜66℃である。電流密度は、好ましくは、20-40A/ft2であり、電圧は、1〜20Vの間である。
【0057】
図2Bと2Cにエッチング前のコーティングされた基体220'とエッチングした後のコーティングされた基体220”をそれぞれ概略的に示す。図2Cで示されるように、エッチング工程は、コーティングされた基体の所望の放出表面で、多くのナノ構造あるいはナノチューブ221を露出する。
【0058】
電気化学的エッチングの後に、これらの構造は、次にオープションに、脱イオン化水とアルコールを使用して徹底的に洗浄される。次に、処理中に構造中に導入された湿気と溶媒を取り除くためにオープションに動的な真空下でアニーリングされる。適切な例示のアニーリング条件には、5×10−7、850℃で1.5時間を含む。
【0059】
コーティングされた基体あるいは自立基体は、電子放出の方向にナノ構造あるいはナノチューブを整列するのを促進するようにさらに処理することができる。多数の技術が実行可能である。実施例によると、コーティングされた基体あるいは自立基体は、高周波電圧パルスをかけることができる。パルス電圧は、数ボルト〜数千ボルトであり、カソードとアノード間の距離に依存する。周波数は数KHzからMHzまでである。好ましくは数KHzである。処理時間は数時間まで可能であるが、好ましくはわずか数分である。配列工程は、処理中のいかなる適切な時間にも実行することができるが、好ましくは、エッチングによるナノ構造あるいはナノチューブの露出過程の後で、コーティングされた基体あるいは自立基体を電子放出のために動力を増加する(powering up)前である。
【0060】
多くの変更と付加は、上記説明されたように実行される方法の基本的な骨組みの中において可能である。制限なしに上記概説された本発明の原理に従って実行される別の方法の例が、これより記載される。
【0061】
放出画素の微細な画素サイズあるいはマトリクスをもつ電界放出カソードもまた上記方法によって作ることができる。図3A〜3Dで示されるように、ドクターブレード、同様のデバイス、スピンコーティング、スクリーン印刷または電気泳動によって、表面に格子状の模様がある(waffled)基体310上に、金属/カーボンナノチューブペースト320を堆積することができる。コーティングされたペーストは、適切な条件下で焼結あるいは溶融され、その結果、ナノチューブ-金属複合体330の小さな堆積物を与える。コーティングされた基体の最上表面340は、研磨されアルコールを使用して徹底的に洗浄される。図3Cに示されるように、金属/カーボンナノチューブ複合体は空洞312に限定される。この構造は、次に、上記記載された電気化学的技術によってエッチングされ洗浄されて、これらの領域はカーボンナノチューブエミッタ350(図3D)を露出した。露出されたナノチューブは上記説明したように配列処理にかけてもよい。
【0062】
図4A〜4Eに示されるように、写真製版(photolithography)技術によってもまた同様の構造を作ることができる。フォトレジスト層420は、金属/カーボンナノチューブ複合体のペレットあるいはフィルム410上に堆積される。露光後にパターン化された構造430は、開口領域440を持ちながら形成される。ペレットあるいはフィルム41は、浴槽に露出された領域で電気化学的にエッチングされ、開口440を形成する。その結果、カーボンナノチューブエミッタ450は露出されるように残される。露出したナノチューブ450は、前に議論したように整列処理にかけてもよい。フォトレジスト層430ははがされて除去され、パターン化されたカソード460が形成される。写真製版技術が非常に小さい形状をパターンすることができるので、図4Eに示されるような微細なスポットをもつカソードが上記記述されたプロセスによって容易に作ることができる。
【0063】
微細な焦点スポットあるいは微細な焦点スポット配列をもつ電界放出カソードは、図5A〜5Cに示されるようなプロセスで作ることができる。基板は、穴512をもつディスク(disk)510と、穴516をもつコーン(corn)514とを含む。金属/カーボンナノチューブペースト520は、図5Bに示されるように、上記説明した技術によって穴516中に満たされる。好ましくは、満たされた穴は高温度で真空アニーリングされ、その結果、ナノチューブ−金属複合体530の堆積を形成する。次に、ナノチューブ−金属複合体530の表面は電気化学的にエッチングされ、図5Cに示されるようにかなりの数のカーボンナノチューブ540が金属マトリクスから露出されるのを確実にする。オープションに、露出したナノチューブは前に説明された配列工程にかけられる。必要な場合、前の表面550は研磨され洗浄されて、放出材料だけが穴中に存在する。金属/カーボンナノチューブペーストは、図5Aの大きい矢によって示されるように、後ろから構造を満たすことができる。パラフィルムあるいは他のフィルムを使用して充填する前に、前表面550と横表面560を被覆され得る。充填工程後にはぎ取られ、前の(放出)表面は穴516中の領域だけに放出材料を持つ。
【0064】
三極真空管電界放出構造もまた、図6A〜6Eに示されるように写真製版技術によって作ることができる。絶縁層(dielectric layer)620はカーボンナノチューブ/金属複合体フィルムあるいは基体610上に堆積される。導電層630は絶縁層620上に堆積される。フォトレジスト層640は導電層630上に堆積されて、露出されて、露光される。図6B〜6Eに示されるように、開口650をもつパターン化された構造は、通常の写真製版技術によって作ることができる。ナノチューブ/金属複合体610の層は電気化学的エッチングによってエッチング除去され、その結果、その表面(図6D)にナノチューブエミッタ660を露出する。露出されたナノチューブ660は、オープションに配列工程にかけられる。残っているフォトレジスト層ははぎ取られて除去される。結果物である三極真空管電界放出カソード670は図6Eに示される。
【0065】
上記記載された技術は、フラットパネルディスプレイ、電子レンジの真空管、携帯用エックス線デバイス、ガス放出管などの異なった多くのデバイスでの使用のために電子エミッタを形成するのに使用されることができる。
【0066】
本発明は上記言及した実施例を参照して記載されたが、当業者は、修正もしくは改変が可能であることは明らかである。したがって、本発明は添付の請求項の範囲の主旨によってのみ定義される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1A】、
【図1B】本発明のマトリクスーナノチューブ複合体の概略を示す図である。
【図2A】、
【図2B】、
【図2C】本発明のエッチング手順の概略を示す図である。
【図3A】、
【図3B】、
【図3C】、
【図3D】本発明のマトリクスーナノチューブ複合体の配列を持つ基体(すなわち、カソード)を形成するための技術の概略を示す図である。
【図4A】、
【図4B】、
【図4C】、
【図4D】、
【図4E】本発明の電界放出用の微細な焦点の配列を持つ基体(たとえば、カソード)を形成する別の技術の概略を示す図である。
【図5A】、
【図5B】、
【図5C】本発明の電界放出用の微細な焦点の配列を持つ基体(たとえば、カソード)を供給する別の技術の概略を示す図である。
【図6A】、
【図6B】、
【図6C】、
【図6D】、
【図6E】本発明の三極電界放出構造を形成する技術の概略を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子エミッタを形成する方法であって、
(i)ナノ構造含有材料を形成する工程と、
(ii)前記ナノ構造含有材料とマトリクス材料の混合物を形成する工程と、
(iii)電気泳動堆積によって前記混合物の層を基体の少なくとも1つの表面の少なくとも一部の上に堆積させる工程と、
(iv)前記混合物の層を焼結しまたは溶融して複合体を形成する工程と、
(v)前記複合体を電気化学的にエッチングして前記複合体の表面からマトリクス材料を取り除き、ナノ構造含有材料を露出させる工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
工程(iii)の後で前記混合物の層を圧縮して、前記混合物の層の表面の滑さを改善する工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(iv)に続いて前記複合体の表面を研磨して洗浄する工程を更に有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(v)に続いて前記複合体を洗浄する工程を更に有することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(v)に続いて前記複合体をアニーリングする工程を更に有することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記露出されたナノ構造材料の少なくとも一部を配列する工程を更に有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(i)は、レーザアブレーションまたはアーク放電技術によってナノ構造を形成する工程を含み、
前記ナノ構造含有材料が単一壁カーボンナノチューブを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(ii)の前に前記ナノ構造含有材料を精製する工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノ構造含有材料がナノチューブを含み、工程(ii)の前に前記ナノチューブの長さを短くする工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノチューブは酸に晒して、または、粉砕によって短くされることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記マトリックス材料が、Fe、Mg、Cu、Co、Ni、Zn、Cr、Al、Au、Ag、Sn、Pb、W、Ti、またはそれの混合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程(ii)で追加された前記マトリクス材料は、Fe2O3、TiO2、MgO、CaOまたは、それの混合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(ii)は前記ナノ構造含有材料とマトリクス材料とを粉砕して、均質な混合物を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程(ii)が前記ナノ構造含有材料とマトリクス材料との懸濁液を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記基体は、金属、金属合金、ドープされたシリコン、グラファイト、または、インジウムスズ酸化物ガラスあるいは金属の層でコーティングされた非導電性の材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
工程(iii)が、
前記混合物の懸濁液を形成する工程と、
前記混合物にチャージャーを添加する工程と、
前記懸濁液中に前記基体と対極を導入する工程と、
前記基体と対極を電源に接続する工程と、
前記基体と対極に電流を印加し、前記混合物を前記基体の露出した表面に向かって移動させて付着させるように前記混合物の分極を引き起こす工程と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
工程(iii)は前記基体の少なくとも一部をマスキングして、前記懸濁液から前記一部を保護する工程を更に有することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記工程(iii)が20〜50℃の温度で処理されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記工程(iv)が300〜1200℃の温度で処理されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記基体の少なくとも1つの表面が複数の空洞を持つ格子縞の表面(waffled surface)を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記基体の少なくとも1つの表面にフォトレジスト層を付ける工程と、
工程(iii)の前に複数の開口部のパターンを形成した前記フォトレジスト層を露光する工程であって、前記複数の開口部が前記基体の少なくとも1つの表面の選択された複数の部分を工程(iii)の前記混合物にさらす工程と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
工程(iii)の次に、前記基体の少なくとも1つの表面から前記フォトレジストの材料を取り除く工程を更に有することを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記基体は、前記混合物を受け入れるために形成されている穴をもつディスク(disk)およびコーン(corn)を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
工程(iii)の前に、
前記基体の少なくとも1つの表面に誘電層を堆積する工程と、
前記誘電層の上に導電層を堆積する工程と、
前記導電層の上にフォトレジスト層を堆積する工程と、
前記フォトレジスト層中に開口部のパターンを形成するように前記フォトレジスト層を露光する工程と、
前記開口部のパターンで露光された前記誘電層と導電層との部分を取り除く工程と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
工程(iii)の次に前記フォトレジスト材料を取り除く工程を更に有することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項1】
電子エミッタを形成する方法であって、
(i)ナノ構造含有材料を形成する工程と、
(ii)前記ナノ構造含有材料とマトリクス材料の混合物を形成する工程と、
(iii)電気泳動堆積によって前記混合物の層を基体の少なくとも1つの表面の少なくとも一部の上に堆積させる工程と、
(iv)前記混合物の層を焼結しまたは溶融して複合体を形成する工程と、
(v)前記複合体を電気化学的にエッチングして前記複合体の表面からマトリクス材料を取り除き、ナノ構造含有材料を露出させる工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
工程(iii)の後で前記混合物の層を圧縮して、前記混合物の層の表面の滑さを改善する工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(iv)に続いて前記複合体の表面を研磨して洗浄する工程を更に有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(v)に続いて前記複合体を洗浄する工程を更に有することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(v)に続いて前記複合体をアニーリングする工程を更に有することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記露出されたナノ構造材料の少なくとも一部を配列する工程を更に有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(i)は、レーザアブレーションまたはアーク放電技術によってナノ構造を形成する工程を含み、
前記ナノ構造含有材料が単一壁カーボンナノチューブを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(ii)の前に前記ナノ構造含有材料を精製する工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノ構造含有材料がナノチューブを含み、工程(ii)の前に前記ナノチューブの長さを短くする工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノチューブは酸に晒して、または、粉砕によって短くされることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記マトリックス材料が、Fe、Mg、Cu、Co、Ni、Zn、Cr、Al、Au、Ag、Sn、Pb、W、Ti、またはそれの混合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程(ii)で追加された前記マトリクス材料は、Fe2O3、TiO2、MgO、CaOまたは、それの混合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(ii)は前記ナノ構造含有材料とマトリクス材料とを粉砕して、均質な混合物を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程(ii)が前記ナノ構造含有材料とマトリクス材料との懸濁液を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記基体は、金属、金属合金、ドープされたシリコン、グラファイト、または、インジウムスズ酸化物ガラスあるいは金属の層でコーティングされた非導電性の材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
工程(iii)が、
前記混合物の懸濁液を形成する工程と、
前記混合物にチャージャーを添加する工程と、
前記懸濁液中に前記基体と対極を導入する工程と、
前記基体と対極を電源に接続する工程と、
前記基体と対極に電流を印加し、前記混合物を前記基体の露出した表面に向かって移動させて付着させるように前記混合物の分極を引き起こす工程と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
工程(iii)は前記基体の少なくとも一部をマスキングして、前記懸濁液から前記一部を保護する工程を更に有することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記工程(iii)が20〜50℃の温度で処理されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記工程(iv)が300〜1200℃の温度で処理されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記基体の少なくとも1つの表面が複数の空洞を持つ格子縞の表面(waffled surface)を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記基体の少なくとも1つの表面にフォトレジスト層を付ける工程と、
工程(iii)の前に複数の開口部のパターンを形成した前記フォトレジスト層を露光する工程であって、前記複数の開口部が前記基体の少なくとも1つの表面の選択された複数の部分を工程(iii)の前記混合物にさらす工程と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
工程(iii)の次に、前記基体の少なくとも1つの表面から前記フォトレジストの材料を取り除く工程を更に有することを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記基体は、前記混合物を受け入れるために形成されている穴をもつディスク(disk)およびコーン(corn)を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
工程(iii)の前に、
前記基体の少なくとも1つの表面に誘電層を堆積する工程と、
前記誘電層の上に導電層を堆積する工程と、
前記導電層の上にフォトレジスト層を堆積する工程と、
前記フォトレジスト層中に開口部のパターンを形成するように前記フォトレジスト層を露光する工程と、
前記開口部のパターンで露光された前記誘電層と導電層との部分を取り除く工程と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
工程(iii)の次に前記フォトレジスト材料を取り除く工程を更に有することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【公表番号】特表2006−515706(P2006−515706A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−519764(P2004−519764)
【出願日】平成15年7月2日(2003.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/020818
【国際公開番号】WO2004/005193
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(504209172)シンテック,インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Xintek,Inc.
【住所又は居所原語表記】7020 Kit Creek Road,Suite 280,P.O.Box 13788,Research Traiangle Park,North Carolina 27709,U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年7月2日(2003.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/020818
【国際公開番号】WO2004/005193
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(504209172)シンテック,インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Xintek,Inc.
【住所又は居所原語表記】7020 Kit Creek Road,Suite 280,P.O.Box 13788,Research Traiangle Park,North Carolina 27709,U.S.A.
【Fターム(参考)】
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