説明

ナノ粒子を用いた癌細胞の標的化

本発明は、概して、ポリマーおよび巨大分子に関し、具体的には、ナノ粒子等の粒子において有用なポリマーに関する。本発明の1つの態様は、所望の特性を有するナノ粒子を開発する方法を対象とする。一セットの実施形態において、該方法は、異なる比率で2つ以上の巨大分子を混合することによって形成され得る、高度に制御された特性を有するナノ粒子のライブラリを生成することを含む。1つもしくは複数の巨大分子は、生体適合性ポリマーに一部分が複合化したポリマー複合体であり得る。いくつかの場合において、該ナノ粒子は薬剤を含有し得る。本発明の他の態様は、ナノ粒子のライブラリを使用する方法を対象とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2007年9月28日出願の米国仮特許出願第60/976,197号、代理人整理番号BBZ‐014‐1、発明の名称「ナノ粒子を用いた癌細胞の標的化」(CANCER CELL TARGETING USING NANOPARTICLES)、および2007年3月30日に提出された国際出願番号第PCT/US2007/007927号、代理人整理番号BBZ‐005PC号、発明の名称「治療薬の標的化送達のためのシステム」(SYSTEM FOR TARGETED DELIVERY OF THERAPEUTIC AGENTS)の優先権を主張するものであり、それらはすべて、参照によりその全体が本明細書に援用される。また、本明細書に引用されるいずれの特許、特許出願、および参考文献の内容も、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、癌の治療において有用である標的特異的ステルス型ナノ粒子を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
有効成分の徐放を用いた患者への薬剤の送達は、この数十年というもの活発な研究分野であり、高分子科学における最近の多くの開発により活気を帯びて来ている。また、徐放性ポリマーシステムは、他の薬剤送達法よりも長期間にわたって最適な範囲の薬剤レベルを提供するように設計することができるため、薬剤の有効性を増加させ、患者のコンプライアンスに関する問題を最小限に留める。
【0004】
生分解性粒子は、小分子薬、タンパク質およびペプチド薬、ならびに核酸の投与に使用される、持続性放出ビヒクルとして開発されてきた。該薬剤は、典型的には、生分解性および生体適合性であるポリマーマトリックス中に封入されている。ポリマーが分解すると、および/または薬剤がポリマーから出て拡散すると、該薬剤は体内に放出される。
【0005】
標的化徐放性ポリマーシステム(例えば、特定の組織型もしくは細胞型を標的とする、または特定の患部組織を標的とするが、正常組織は標的としない)が、標的とされない体の組織中に存在する薬剤の量を減少させるので望ましい。これは、周囲の非癌組織を死滅させることなく、細胞毒性用量の薬剤が癌細胞に送達されることが望ましい、癌等の疾患を治療する場合に特に重要である。効果的な薬剤の標的化は、抗癌治療によく見られる、望ましくない、また時には生命を脅かす副作用を軽減するはずである。また、標的化は、標的化されたナノ粒子なしでは到達することができない特定の組織に、薬剤が到達することを可能にし得る。
【0006】
したがって、患者の副作用を軽減する一方で、癌等の疾患を治療するための、治療レベルの薬剤を送達できる送達システムを開発することが必要である。
【発明の概要】
【0007】
特に、前立腺癌、肺非小細胞癌、結腸直腸癌、および膠芽腫を含むがこれらに限定されない、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を発現する癌、ならびに腫瘍新生血管においてPSMAを発現する固形腫瘍の、癌の1つもしくは複数の症状の治療または予防または寛解に有用な組成物の必要性が依然として存在する。1つの態様において、本発明は、治療剤を含む複数の標的特異的ステルス型ナノ粒子を含み、該ナノ粒子が、該ナノ粒子に結合する標的化部分を含有し、該標的化部分が低分子量PSMAリガンドである、医薬組成物を提供する。
【0008】
本発明の医薬組成物の1つの実施形態において、該ナノ粒子は、前立腺癌の治療を必要とする対象の前立腺癌の治療に有効な量の標的化部分を有する。別の実施形態において、該ナノ粒子は、固形腫瘍の治療を必要とする対象の腫瘍新生血管にPSMAを発現する固形腫瘍の治療に有効な量の標的化部分を有する。さらに別の実施形態において、低分子量PSMAリガンドは、0.5nM〜10nMの間のKを有する。
【0009】
本発明の医薬組成物の1つの実施形態において、該ナノ粒子は、前立腺癌の治療を必要とする対象の前立腺癌の治療に有効な量の治療剤を有する。別の実施形態において、該ナノ粒子は、固形腫瘍の治療を必要とする対象の腫瘍新生血管にPSMAを発現する固形腫瘍の治療のために効果的な量の治療剤を有する。
【0010】
本発明の標的特異的ステルス型ナノ粒子の別の実施形態において、低分子量PSMAリガンドは、1000g/mol未満の分子量を有する。具体的な実施形態において、低分子量PSMAリガンドは、化合物I、II、IIIおよびIVから構成される群から選択される。
【0011】
他の実施形態において、低分子量PSMAリガンドは、

およびその鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体である。
【0012】
本発明の標的特異的ステルス型ナノ粒子の他の実施形態において、該ナノ粒子はポリマーマトリックスを含む。1つの実施形態において、該ポリマーマトリックスは、2つ以上のポリマーを含む。別の実施形態において、該ポリマーマトリックスは、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ酸無水物、ポリヒドロキシ酸、フマル酸ポリプロピル(polyプロピルfumerates)、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシアノアクリレート、ポリ尿素、ポリスチレン、もしくはポリアミン、またはそれらの組み合わせを含む。さらに別の実施形態において、該ポリマーマトリックスは、1つもしくは複数のポリエステル、ポリ酸無水物、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、またはポリシアノアクリレートを含む。別の実施形態において、少なくとも1つのポリマーはポリアルキレングリコールである。さらに別の実施形態において、該ポリアルキレングリコールはポリエチレングリコールである。さらに別の実施形態において、少なくとも1つのポリマーはポリエステルである。別の実施形態において、該ポリエステルは、PLGA、PLA、PGA、およびポリカプロラクトンから構成される群れから選択される。さらに別の実施形態において、該ポリエステルはPLGAまたはPLAである。さらに別の実施形態において、該ポリマーマトリックスは、2つ以上のポリマーのコポリマーである。別の実施形態において、該コポリマーは、ポリアルキレングリコールとポリエステルとのコポリマーである。さらに別の実施形態において、該コポリマーは、PLGAまたはPLAとPEGとのコポリマーである。さらに別の実施形態において、該ポリマーマトリックスは、PLGAまたはPLA、およびPLGAまたはPLAとPEGとのコポリマーを含む。
【0013】
別の実施形態において、該ポリマーマトリックスは、脂質末端(lipid−terminated)ポリアルキレングリコールおよびポリエステルを含む。本発明の医薬組成物の別の実施形態において、該ポリマーマトリックスは、脂質末端PEGおよびPLGAを含む。1つの実施形態において、該脂質は式Vのものである。具体的な実施形態において、該脂質は、1,2ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン(DSPE)、およびその塩、例えば、ナトリウム塩である。
【0014】
本発明の医薬組成物の別の実施形態において、該ポリマーマトリックスの一部分は、低分子量PSMAリガンドに共有結合的に結合される。別の実施形態において、該ポリマーマトリックスは、PEGの自由末端を介して、低分子量PSMAリガンドに共有結合的に結合される。さらに別の実施形態において、該ポリマーマトリックスは、PEGの自由末端のカルボキシル基を介して、低分子量PSMAリガンドに共有結合的に結合される。さらに別の実施形態において、該ポリマーマトリックスは、PEGの自由末端のマレイミド官能基を介して、低分子量PSMAリガンドに共有結合的に結合される。
【0015】
本発明の医薬組成物の別の実施形態において、該ナノ粒子は、前立腺癌の治療に有効なリガンド結合ポリマー対非官能化ポリマーの比率を有する。別の実施形態において、該ポリマーマトリックスのポリマーは、前立腺癌の治療に有効な分子量を有する。さらに別の実施形態において、該ナノ粒子は、前記前立腺癌の治療に有効な表面電荷を有する。
【0016】
本発明の医薬組成物の別の実施形態において、上記システムは、標的特異的な疾患または疾病の治療および治療剤の送達に好適である。別の実施形態において、該ナノ粒子は、治療剤をさらに含む。1つの実施形態において、該治療剤は、該ナノ粒子の表面に会合している、該ナノ粒子の中に封入されている、該ナノ粒子に囲まれている、または該ナノ粒子全体に分散されている。さらに別の実施形態において、該治療剤は、該ナノ粒子の疎水性コア内に封入されている。具体的な実施形態において、該治療剤は、ミトキサントロンおよびドセタキセルから構成される群から選択される。
【0017】
別の態様において、本発明は、本発明の医薬組成物の有効量を、前立腺癌の治療を必要とする対象に投与するステップを含む、対象の前立腺癌を治療する方法を提供する。1つの実施形態において、医薬組成物は、対象の前立腺に直接投与される。さらに別の実施形態において、医薬組成物は、前立腺癌細胞に直接投与される。別の実施形態において、医薬組成物は、前立腺癌細胞を含む組織への注入によって、前立腺癌細胞に直接投与される。さらに別の実施形態において、医薬組成物は、腫瘍の外科的除去の最中に、前立腺細胞またはその付近にナノ粒子を埋め込むことによって、対象に投与される。別の実施形態において、医薬組成物は、全身的に、または静脈内投与によって、投与される。
【0018】
別の態様において、本発明は、ステルス型ナノ粒子を調製する方法であって、該ナノ粒子が、前立腺癌の治療に有効なリガンド結合ポリマー対非官能化ポリマーの比率を有し、治療剤を提供するステップと、ポリマーを提供するステップと、低分子量PSMAリガンドを提供するステップと、該ポリマーを該治療剤と混合させて粒子を調製するステップと、該粒子を該低分子量PSMAリガンドと会合させるステップと、を含む、ステルス型ナノ粒子を調製する方法を提供する。上記方法のうちの1つの実施形態において、該ポリマーは、2つ以上のポリマーのコポリマーを含む。別の実施形態において、該コポリマーは、PLGAとPEG、またはPLAとPEGとのコポリマーである。
【0019】
別の態様において、本発明は、ステルス型ナノ粒子を調製する方法であって、該ナノ粒子は、前立腺癌の治療に有効なリガンド結合ポリマー対非官能化ポリマーの比率を有し、ステルス型ナノ粒子が形成されるように、治療剤を提供するステップと、第1のポリマーを提供するステップと、低分子量PSMAリガンドを提供するステップと、第1のポリマーを上記低分子量PSMAリガンドと反応させて、リガンド結合ポリマーを調製するステップと、該リガンド結合ポリマーを、第2の非官能化ポリマー、および該治療剤と混合するステップと、を含む、方法を提供する。この方法の1つの実施形態において、第1のポリマーは、2つ以上のポリマーのコポリマーを含む。別の実施形態において、第2の非官能化ポリマーは、2つ以上のポリマーのコポリマーを含む。
【0020】
上記方法のある実施形態において、該コポリマーは、PLGAとPEG、またはPLAとPEGとのコポリマーである。別の実施形態において、第1のポリマーは、PLGAとPEGとのコポリマーであって、該PEGは、自由末端にカルボキシル基を有する。別の実施形態において、第1のポリマーは、ポリマー/脂質複合体を形成するように最初に脂質と反応させられ、その後、低分子量PSMAリガンドと混合される。さらに別の実施形態において、該脂質は、1,2ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン(DSPE)、およびその塩、例えば、ナトリウム塩である。
【0021】
本発明の医薬組成物の別の実施形態において、該ナノ粒子は、癌の治療を必要とする対象の癌細胞の表面または腫瘍新生血管にPSMAを発現する癌の治療に有効な量の標的化部分を有する。1つの実施形態において、PSMA関連の兆候は、前立腺癌、肺非小細胞癌、結腸直腸癌、および膠芽腫から構成される群から選択される。
【0022】
別の態様において、本発明は、PLGAとPEGとのコポリマーと、ミトキサントロンまたはドセタキセルを含む治療剤と、を含むステルス型ナノ粒子を提供するが、該ナノ粒子は、該ナノ粒子に結合される標的化部分を含有し、該標的化部分は低分子量PSMAリガンドである。
【0023】
別の態様において、本発明は、ホスホリン脂質結合PEGとPLGAとの錯体を含むポリマーマトリックスと、治療剤と、を含むステルス型ナノ粒子を提供するが、該ナノ粒子は、該ナノ粒子に結合される標的化部分を含有し、該標的化部分は低分子量PSMAリガンドである。このステルス型ナノ粒子の1つの実施形態において、治療剤はミトキサントロンまたはドセタキセルである。
【0024】
上記ステルス型ナノ粒子の具体的な実施形態において、該低分子量PSMAリガンドは、

およびその鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体である。
【0025】
別の態様において、本発明は、標的化部分および治療剤を含む標的粒子であって、該粒子はポリマーマトリックスを含み、該ポリマーマトリックスはポリエステルを含み、該標的化部分は低分子量PSMAリガンドである、標的粒子を提供する。この標的粒子の1つの実施形態において、該粒子はナノ粒子である。別の実施形態において、該ポリエステルは、PLGA、PLA、PGA、ポリカプロラクトン、およびポリ無水物から構成される群から選択される。この標的粒子のポリマーマトリックスの1つの実施形態において、少なくとも1つのポリマーは、ポリアルキレングリコールである。該標的粒子の特定の実施形態において、該低分子量PSMAリガンドは、葉酸、チオールおよびインドールチオール誘導体、ヒドロキサマート誘導体、ならびに尿素系阻害薬から構成される群から選択される。
【0026】
別の態様において、本発明は、寸法約1μm未満の平均的な特徴を有する粒子であって、生体適合性ポリマーを含む第1の部位、および標的化部分と治療的部分とから構成される群から選択される部分を含む第2の部位を含む巨大分子を含む粒子を含む組成物を提供し、上記標的化部分が低分子量PSMAリガンドであり、また該標的化部分が、該粒子の内部で実質的に非ゼロ濃度を有する、すなわち、粒子の内部には検出可能な量の化合物がほとんど存在しない。この粒子の1つの実施形態において、生体適合性ポリマーは、ポリ(ラクチド‐コ‐グリコリド)を含む。この粒子の別の実施形態において、該ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)を含む。
【0027】
1つの実施形態において、本発明は、低分子量PSMAリガンド、生分解性ポリマー、ステルスポリマー、および治療剤を含むナノ粒子を含む。1つの実施形態において、本発明は、低分子量PSMAリガンド、生分解性ポリマー、ステルスポリマー、および治療剤を含むナノ粒子を含み、該ナノ粒子は、前立腺または癌周囲の血管内皮組織に選択的に堆積することができる。1つの実施形態において、本発明は、低分子量PSMAリガンド、生分解性ポリマー、ステルスポリマー、および治療剤を含むナノ粒子を含み、該ナノ粒子は、前立腺または癌周囲の血管内皮組織に選択的に堆積することができ、また該ナノ粒子はPSMA発現細胞によりエンドサイトーシスされ得る。別の実施形態において、本発明は、低分子量PSMAリガンド、生分解性ポリマー、ポリエチレングリコール、および化学療法剤を含むナノ粒子を含む。別の実施形態において、本発明は、低分子量PSMAリガンド、生分解性ポリマー、ポリエチレングリコール、およびドセタキセルを含むナノ粒子を含む。別の実施形態において、本発明は、低分子量PSMAリガンド、PLGA、ポリエチレングリコール、およびドセタキセルを含むナノ粒子を含む。
【0028】
1つの態様において、本発明は、治療剤を含む標的特異的ステルス型ナノ粒子を提供し、該ナノ粒子は該ナノ粒子に結合される標的化部分を含有し、該標的化部分は低分子量PSMAリガンドであり、上記治療剤はsiRNAである。別の態様において、該siRNAの分子は、腫瘍関連標的、例えば、前立腺腫瘍に、相補的である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1Aおよび1Bは、本発明の標的特異的ステルス型ナノ粒子の合成スキームを表す図である。
【図2】本発明の標的特異的ステルス型ナノ粒子の合成スキームを表す図である。
【図3】本発明のナノ粒子の概略図を表す図である。
【図4】本発明のナノ粒子の細胞取り込みを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本発明は、概して、粒子、具体的にはナノ粒子に関し、該ナノ粒子は、治療剤の標的化送達のための徐放システムを含む。本発明の1つの態様は、所望の特性を有するポリマーナノ粒子を開発する方法を対象とし、該ナノ粒子は、低分子量PSMAリガンドである標的化部分を含有する。一セットの実施形態において、上記方法は、低分子量PSMAリガンドを含有するナノ粒子のライブラリを生成することを含み、該ライブラリは、高度に制御された特性を有し、また該ライブラリは、異なる比率の2つ以上のポリマー(例えば、リガンド官能化ポリマーおよび非官能化ポリマー)を混合することによって形成され得る。該ポリマーのうちの1つもしくは複数は、生体適合性ポリマー(例えば、ホモポリマー、コポリマーまたはブロックコポリマー)であり得、該生体適合性ポリマーは、低分子量PSMAリガンドと複合化され得る。いくつかの場合において、該ナノ粒子は、治療剤、例えば、薬剤を含有し得る。
【0031】
1つの実施形態において、徐放システムのナノ粒子は、前立腺癌の治療を必要とする対象の前立腺癌の治療に有効な量の標的化部分(すなわち、低分子量PSMAリガンド)を有する。特定の実施形態において、該低分子量PSMAリガンドはポリマーと複合化され、該ナノ粒子は、特定の比率のリガンド複合化ポリマー対非官能化ポリマーを含む。有効量のリガンドが癌の治療のためのナノ粒子に会合されるように、該ナノ粒子は、これらの2つのポリマーの最適な比率を有し得る。例えば、リガンド密度の増加(例えば、PLGA‐PEGコポリマー上で)は、標的結合(細胞の結合/標的の取り込み)を増加させ、該ナノ粒子を「標的特異的」にする。代替として、ナノ粒子中の特定濃度の非官能化ポリマー(例えば、非官能化PLGA‐PEGコポリマー)は、炎症および/または免疫原性(すなわち、免疫応答を引き起こす能力)を制御し、該ナノ粒子が、癌(例えば、前立腺癌)の治療のために十分な循環半減期を有することができるようにする。さらに、該非官能化ポリマーは、網内系(RES)による循環器系からのクリアランスの速度を低下させることができる。したがって、該非官能化ポリマーは、該ナノ粒子に「ステルス」の特徴を付与する。ある具体的な実施形態において、該ステルスポリマーはPEGである。また、該非官能化ポリマーは、ともすれば患者によるクリアランスを加速して、標的細胞への送達量を少なくする可能性のある、高濃度なリガンドのバランスを保つ。
【0032】
標的化部分を有することにより、「標的特異的」ナノ粒子は、生物学的部分、例えば、膜成分または細胞表面受容体に、効率的に結合するかまたはそうでなければ会合することができる。治療剤の標的化(例えば、特定の組織の種類または細胞の種類、特異的な患部組織等は標的化するが、正常な組織は標的化しない)は、癌(例えば、前立腺癌)等の組織特異的な疾患の治療に望ましい。例えば、細胞障害性抗癌剤の全身送達とは対照的に、標的化送達は、薬剤が健康な細胞を死滅させるのを防ぐことが可能である。さらに、標的化送達は、低用量の薬剤の投与を可能にし、従来の化学療法に一般的に付随する望ましくない副作用を減少することができる。上で考察したように、本発明のナノ粒子の標的特異性は、ナノ粒子上のリガンドの密度を最適化することにより最大化される。
【0033】
ポリマーを含む標的特異的ステルス型ナノ粒子
いくつかの実施形態において、本発明のナノ粒子は、ポリマーのマトリックスを含む。一般に、「ナノ粒子」とは、1000nm未満の直径を有する任意の粒子を指す。いくつかの実施形態において、治療剤および/または標的化部分(すなわち、低分子量PSMAリガンド)は、ポリマーマトリックスに会合され得る。いくかの実施形態において、該標的化部分は、ポリマーマトリックスの表面に共有結合的に会合され得る。いくつかの実施形態において、該共有結合的な会合は、リンカーによって媒介される。いくつかの実施形態において、該治療剤は、該ポリマーマトリックスの表面に会合され得る、該ポリマーマトリックス中に封入され得る、および/または該ポリマーマトリックス全体に分散され得る。
【0034】
薬剤送達の技術分野において、様々なポリマーから粒子を形成するための様々なポリマーおよび方法が既知である。本発明のいくつかの実施形態において、粒子のマトリックスは、1つもしくは複数のポリマーを含む。本発明によると、任意のポリマーが使用され得る。ポリマーは、天然または非天然(合成)のポリマーであり得る。ポリマーは、2つ以上のモノマーを含むホモポリマーまたはコポリマーであり得る。配列については、コポリマーは、ランダム型、ブロック型であり得るか、またはランダムおよびブロック配列の組み合わせを含み得る。典型的には、本発明によるポリマーは、有機ポリマーである。
【0035】
本明細書で使用される「ポリマー」は、当該技術分野において使用される通常の意味を付与される、すなわち、共有結合的な結合によって接続される、1つもしくは複数の反復ユニット(モノマー)を含む分子構造である。該反復ユニットは、すべて同一であり得るか、またはいくつかの場合において、ポリマーの中に2つ以上の種類の反復ユニットが存在し得る。いくつかの場合において、該ポリマーは、生物学的に由来する、すなわち、バイオポリマーである。ポリマーの非限定的な例には、後に考察するように、ペプチドもしくはタンパク質(すなわち、多様なアミノ酸のポリマー)、またはDNAもしくはRNA等の核酸が含まれる。いくつかの場合において、例えば、後に記載される生物学的部分のような、追加の部分も該ポリマー中に存在し得る。
【0036】
ポリマーの中に2種類以上の反復ユニットが存在する場合、該ポリマーは「コポリマー」であると言われる。ポリマーを用いるいずれの実施形態においても、用いられるポリマーは、場合によってはコポリマーである可能性があることを理解されたい。該コポリマーを形成する反復ユニットは、任意の様式で配置され得る。例えば、反復ユニットは、ランダムな順序で、交互の順序で、または「ブロック」コポリマーとして配置され得、すなわち、それぞれが第1の反復ユニット(例えば、第1のブロック)を含む1つもしくは複数の領域と、それぞれが第2の反復ユニット(例えば、第2のブロック)を含む1つもしくは複数の領域とを含む等の配置が可能である。ブロックコポリマーは、2つ(ジブロックコポリマー)、3つ(トリブロックコポリマー)、またはそれより多い数の別個のブロックを有し得る。
【0037】
ポリマー成分を含む様々な要素を説明するために、「第1の」、「第2の」等の用語が本明細書において使用され得るが、これらの用語は、限定的(例えば、特定の順序または要素の数について説明する)であると解釈されるべきではなく、むしろ、単に記述的である、すなわち、特許法の分野において一般的に用いられるように、1つの要素を別の要素と識別するラベルである、と解釈されるべきであると理解されたい。したがって、例えば、本発明の実施形態は、存在する「第1の」要素および存在する「第2の」要素を有すると説明され得るが、本発明の他の実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなく、「第1の」要素は存在するが「第2の」要素が存在しない可能性がある、「第2の」要素は存在するが「第1の」要素が存在しない可能性がある、2つ(またはそれより多くの)「第2の」要素が存在する可能性がある等、および/または「第1の」要素、「第2の」要素、および「第3の」要素等の追加の要素を有する可能性がある。
【0038】
本発明の様々な実施形態は、コポリマーを対象としており、具体的な実施形態において、通常2つ以上のポリマーの共有結合的な結合によって互いに会合された2つ以上のポリマー(本明細書に記載されるような)について記載する。したがって、コポリマーは、共に複合化されてブロックコポリマーを形成する第1のポリマーおよび第2のポリマーを含むことができ、第1のポリマーは該ブロックコポリマーの第1のブロックであり、第2のポリマーは該ブロックコポリマーの第2のブロックである。当然、当業者は、ブロックコポリマーは、いくつかの場合において、複数のポリマーのブロックを含有することができること、また「ブロックコポリマー」は、本明細書で使用される場合、単一の第1のブロックおよび単一のブロックのみを有するブロックコポリマーのみに限定されないことを理解する。例えば、ブロックコポリマーは、第1のポリマーを含む第1のブロック、第2のポリマーを含む第2のブロック、および第3のポリマーまたは第1のポリマーを含む第3のブロック等を含み得る。いくつかの場合において、ブロックコポリマーは、任意の数の第1のポリマーの第1のブロックおよび第2のポリマーの第2のブロック(そして特定の場合においては、第3のブロック、第4のブロック等)を含み得る。また、ブロックコポリマーは、いくつかの場合において、他のブロックコポリマーからも形成され得ることを理解されたい。
【0039】
例えば、第1のブロックコポリマーは、複数の種類のブロックを含有する新しいブロックコポリマーを形成するために別のポリマー(ホモポリマー、バイオポリマー、別のブロックコポリマー等である可能性がある)と複合化され得る、および/または他の部分(例えば、ポリマー以外の部分)と複合化され得る。
【0040】
いくつかの実施形態において、該ポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)は両親媒性である、すなわち、親水性の部位および疎水性の部位を有するか、または比較的親水性である部位および比較的疎水性である部分を有する。親水性ポリマーは、一般的に水を引き付けるポリマーであり、疎水性ポリマーは、一般的に水をはじくポリマーである。親水性または疎水性ポリマーは、例えば、ポリマーのサンプルを調製し、水との接触角を測定することによって、識別することができる(典型的には、ポリマーは60°未満の接触角を有し、一方、疎水性ポリマーは約60°を上回る接触角を有する)。いくつかの場合において、2つ以上のポリマーの親水性は、互いに比較して測定することができる、すなわち、第1のポリマーは、第2のポリマーよりも親水性である可能性がある。例えば、第1のポリマーは、第2のポリマーよりも小さい接触角を有する可能性がある。
【0041】
一セットの実施形態において、本発明のポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)は、生体適合性ポリマー、すなわち、生体内に挿入または注入された場合に、例えば、T細胞応答を介した免疫系による有意な炎症および/またはポリマーの急性拒絶を起こさず、典型的には有害反応を誘発しないポリマー、を含む。当然、「生体適合性」は相対的な用語であり、生体組織に高度な適合性を有するポリマーでさえ、ある程度の免疫応答が予想されることを理解されたい。しかしながら、本明細書で使用される場合、「生体適合性」は、免疫系の少なくとも一部分による物質の拒絶を指し、すなわち、対象に埋め込まれた非生体適合性の物質は、免疫系による物質の拒絶を適切に抑制することができないほど重度であり、しばしば対象から該物質を除去しなければならないような程度の免疫応答を対象に引き起こす。生体適合性を判定するための簡単な試験の1つは、ポリマーを生体外で細胞に曝露することである。生体適合性ポリマーは、典型的には中程度の濃度、例えば、50μg/10細胞の濃度では、有意な細胞死を引き起こさないポリマーである。例えば、生体適合性ポリマーは、線維芽細胞または上皮細胞等の細胞に暴露されると、たとえかかる細胞によって貪食されても、または取り込まれても、約20%未満の細胞死を引き起こす可能性がある。本発明の様々な実施形態において有用である可能性がある生体適合性ポリマーの非限定的な例には、ポリジオキサノン(PDO)、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(セバシン酸グリセロール)、ポリグリコリド、ポリ乳酸、PLGA、ポリカプロラクトン、あるいはこれらのおよび/または他のポリマーを含むコポリマーもしくは誘導体が含まれる。
【0042】
特定の実施形態において、該生体適合性ポリマーは生分解性である、すなわち、該ポリマーは、身体内等の生理的環境において化学的および/または生物学的に分解することができる。例えば、該ポリマーは、水に曝露されると(例えば、対象内で)、瞬時に加水分解するポリマーであり得、該ポリマーは、熱に曝露されると(例えば、約37℃の温度で)、分解し得る。ポリマーの分解は、使用されるポリマーまたはコポリマーに依存して、様々な速度で起こりうる。例えば、該ポリマーの半減期(ポリマーの50%が、モノマーおよび/または他のポリマー以外の部分に分解される時間)は、ポリマーに依存して、数日間、数週間、数ヶ月間、または数年間であり得る。該ポリマーは、いくつかの場合において、例えば、リゾチーム(例えば、比較的低いpHを有する)への曝露を介して、例えば、酵素活性または細胞機構によって、生物学的に分解され得る。いくつかの場合において、該ポリマーは、細胞に有意な毒性効果を及ぼすことなく、細胞が再利用できるか、または排出できるモノマーおよび/または他のポリマー以外の部分に分解され得る(例えば、ポリ乳酸は、加水分解されて乳酸を形成することができ、ポリグリコリドは、加水分解されてグリコール酸等を形成することができる)。
【0043】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、本明細書において集合的に「PLGA」と称される、ポリ(乳酸‐コ‐グリコール酸)およびポリ(ラクチド‐コ‐グリコリド)等の乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー、本明細書において「PGA」と称されるグリコール酸単位を含むホモポリマー、ならびに、本明細書において集合的に「PLA」と称される、ポリ‐L‐乳酸、ポリ‐D‐乳酸、ポリ‐D,L‐乳酸、ポリ‐L‐ラクチド、ポリ‐D‐ラクチド、およびポリ‐D,L‐ラクチド等の乳酸単位、を含むポリエステルであり得る。いくつかの実施形態において、例示的なポリエステルは、例えば、ポリヒドロキシ酸、ラクチドおよびグリコリドのペグ化ポリマーおよびコポリマー(例えば、ペグ化PLA、ペグ化PGA、ペグ化PLGA)、ならびにそれらの誘導体を含む。いくつかの実施形態において、ポリエステルは、例えば、ポリ酸無水物、ポリ(オルトエステル)、ペグ化ポリ(オルトエステル)、ポリ(カプロラクトン)、ペグ化ポリ(カプロラクトン)、ポリリジン、ペグ化ポリリジン、ポリ(エチレンイミン)、ペグ化ポリ(エチレンイミン)、ポリ(L‐ラクチド‐コ‐L‐リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4‐ヒドロキシ‐L‐プロリンエステル)、ポリ[a‐(4‐アミノブチル)‐L‐グリコール酸]、およびそれらの誘導体を含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、該ポリマーはPLGAであり得る。PLGAは、生体適合性および生分解性の乳酸とグリコール酸とのコポリマーであり、乳酸:グリコール酸の比率によって、様々な形態のPLGAが特徴付けられる。乳酸は、L‐乳酸、D‐乳酸、またはD,L‐乳酸であり得る。PLGAの分解率は、乳酸‐グリコール酸の比率を変更することによって調節することができる。いくつかの実施形態において、本発明にしたがって使用されるPLGAは、約85:15、約75:25、約60:40、約50:50、約40:60、約25:75、または約15:85の乳酸:グリコール酸の比率によって特徴付けられる。
【0045】
具体的な実施形態において、該ナノ粒子のポリマー(例えば、PLGAブロックコポリマーまたはPLGA‐PEGブロックコポリマー)内の乳酸対グリコール酸モノマーの比率を最適化することにより、水の取り込み、治療剤の放出(例えば、「徐放」)、およびポリマー分解動態等のナノ粒子のパラメータを最適化することができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、1つもしくは複数のアクリルポリマーであり得る。特定の実施形態において、アクリルポリマーは、例えば、アクリル酸とメタアクリル酸とのコポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタアクリル酸)、メタアクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタアクリル酸ポリアクリルアミド)、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、グリシジルメタクリレートコポリマー、ポリシアノアクリレート、および上記ポリマーのうちの1つもしくは複数を含む組み合わせ、を含む。該アクリルポリマーは、アクリル酸エステルおよびメタアクリル酸エステルと低含有量の四級アンモニウム基との完全に重合したコポリマーを含み得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、カチオン性ポリマーであり得る。一般的に、カチオン性ポリマーは、負電荷を持つ核酸の鎖(例えば、DNA、RNA、またはその誘導体)を縮合および/または保護することができる。ポリ(リジン)(Zauner et al, 1998, Adv. Drug Del. Rev., 30:97; and Kabanov et al, 1995, Bioconjugate Chem., 6:7)、ポリ(エチレンイミン)(PEI; Boussif et al, 1995, Proc. Natl. Acad. ScL, USA, 1995, 92:7297)、およびポリ(アミドアミン)デンドリマー(Kukowska‐Latallo et al, 1996, Proc. Natl. Acad. ScL, USA, 93:4897; Tang et al, 1996, Bioconjugate Chem., 7:703; およびHaensler et al, 1993, Bioconjugate Chem., 4:372)等のアミン含有ポリマーは、生理的pHで正負荷を持ち、核酸とイオン対を形成し、様々な細胞株においてトランスフェクションを媒介する。
【0048】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、カチオン性側鎖を有する分解可能なポリエステル(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658; Barrera et al., 1993, /. Am. Chem. Soc, 115:11010; Urn et al, 1999, J. Am. Chem. Soc, 121:5633;およびZhou et al, 1990, Macromolecules, 23:3399)であり得る。これらのポリエステルの例には、ポリ(L‐ラクチド‐コ‐L‐リジン)(Barrera et al, 1993, /. Am. Chem. Soc, 115:11010)、ポリ(セリンエステル)(Zhou et al, 1990, Macromolecules, 23:3399)、ポリ(4‐ヒドロキシ‐L‐プロリンエステル)(Putnam et al, 1999, Macromolecules, 32:3658;およびLim et al, 1999, /. Am. Chem. Soc, 121:5633)を含む。ポリ(4‐ヒドロキシ‐L‐プロリンエステル)は、静電相互作用を介してプラスミドDNAを縮合し、遺伝子導入を媒介することが実証されている(Putnam et al, 1999, Macromolecules, 32:3658;および Lim el al, 1999, /. Am. Chem. Soc, 121:5633)。これらのポリマーはポリ(リジン)およびPEIよりも毒性が低く、非毒性の代謝産物に分解する。
【0049】
ポリ(エチレングリコール)反復単位を含有するポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)も、「ペグ化」ポリマーと称することができる。かかるポリマーは、ポリ(エチレングリコール)基の存在によって、炎症および/または免疫原性(すなわち、免疫応答を引き起こす能力)を制御することができる、および/または、網内系(RES)による循環器系からのクリアランスの速度を低下させることができる。
【0050】
いくつかの場合において、ペグ化は、例えば、生物学的部分との相互作用からポリマーを保護することのできる親水性の層をポリマー表面上に作製することによって、ポリマーと生物学的部分の間の電荷相互作用を低下させるために使用することもできる。いくつかの場合において、ポリ(エチレングリコール)反復単位の添加は、例えば、食細胞系によるポリマーの取り込みを増加させる一方で、細胞によるトランスフェクション/取り込み効率を低下させることにより、ポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)のプラズマ半減期を増加させることが可能である。当業者は、例えば、開環重合技術(ROMP)等を用いて、EDC(l‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)およびNHS(N‐ヒドロキシスクシンイミド)を使用して、アミンで終端するPEG基とポリマーを反応させる、ポリマーのペグ化のための方法および技術を理解するであろう。
【0051】
また、本発明の特定の実施形態は、ポリ(エステル‐エーテル)、例えば、エステル結合(例えば、R‐C(O)‐O‐R’結合)およびエーテル結合(例えば、R‐O‐R’結合)によって連結された反復単位を有するポリマーを含有するコポリマーを対象とする。本発明のいくつかの実施形態において、カルボキシル酸基を含有する、加水分解性ポリマー等の生分解性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)反復単位と複合化させてポリ(エステル‐エーテル)を形成することができる。
【0052】
ある具体的な実施形態において、本発明のナノ粒子のポリマーの分子量は、癌(例えば、前立腺癌)の効果的な治療のために最適化される。例えば、該ポリマーの分子量は、ナノ粒子の分解率(特に、生分解性ポリマーの分子量が調節される場合)、溶解度、水の取り込み、および薬剤放出動態(例えば、「徐放」)に影響する。さらなる例として、該ポリマーの分子量は、治療される対象において、妥当な期間内(数時間から1〜2週間、3〜4週間、5〜6週間、7〜8週間等の範囲)に該ナノ粒子が生分解するように調節することができる。PEGとPLGAとのコポリマーを含むナノ粒子の具体的な実施形態において、PEGは、1,000〜20,000、例えば、5,000〜20,000、例えば、10,000〜20,000の分子量を有し、PLGAは、5,000〜100,000、例えば、20,000〜70,000、例えば、20,000〜50,000の分子量を有する。
【0053】
特定の実施形態において、該ナノ粒子のポリマーは、脂質と複合化され得る。該ポリマーは、例えば、脂質末端PEGであり得る。後に記載するように、該ポリマーの脂質部位は、別のポリマーとの自己組織化のために使用することができ、ナノ粒子の形成を促進する。例えば、親水性ポリマーは、疎水性ポリマーとともに自己組織化する脂質と複合化することができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、脂質は油である。一般的に、当該技術分野において既知である任意の油は、本明細書において使用されるポリマーと複合化することができる。いくつかの実施形態において、油は、1つもしくは複数の脂肪酸基またはその塩を含み得る。いくつかの実施形態において、脂肪酸基は、可消化、長鎖(例えば、C‐C50)の、置換または非置換の炭化水素を含み得る。いくつかの実施形態において、脂肪酸基は、C10‐C20脂肪酸またはその塩であり得る。いくつかの実施形態において、脂肪酸基は、C15‐C20脂肪酸またはその塩であり得る。いくつかの実施形態において、脂肪酸は不飽和であり得る。いくつかの実施形態において、脂肪酸基は、一価不飽和であり得る。いくつかの実施形態において、脂肪酸基は、多価不飽和であり得る。いくつかの実施形態において、不飽和脂肪酸基の二重結合は、シス構造であり得る。いくつかの実施形態において、不飽和脂肪酸基の二重結合は、トランス構造であり得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸のうちの1つもしくは複数であり得る。いくつかの実施形態において、脂肪酸基は、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、またはエルカ酸のうちの1つもしくは複数であり得る。
【0056】
ある具体的な実施形態において、該脂質は化学式V、

およびその塩であり、式中、各Rは独立してC1‐30アルキルである。式Vの1つの実施形態において、該脂質は1,2ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン(DSPE)、およびその塩、例えば、ナトリウム塩である。
【0057】
1つの実施形態において、小分子標的化部分は、該ナノ粒子の脂質成分に結合され、例えば、共有結合的に結合される。したがって、本発明は、治療剤、ポリマーマトリックス、脂質、および低分子量PSMA標的化リガンドを含む標的特異的ステルス型ナノ粒子も提供し、該標的化リガンドは、該ナノ粒子の脂質成分に結合され、例えば、共有結合的に結合される。1つの実施形態において、該低分子量の標的化部分に結合される脂質成分は、式Vの脂質成分である。別の実施形態において、本発明は、治療剤、ポリマーマトリックス、DSPE、および低分子量PSMA標的化リガンドを含む標的特異的ステルス型ナノ粒子を提供し、該リガンドはDSPEに結合され、例えば、共有結合的に結合される。例えば、本発明のナノ粒子は、PLGA‐DSPE‐PEG‐リガンドを含むポリマーマトリックスを含む。これらの粒子は、本明細書で考察される疾患および疾病の治療のために使用することができる。
【0058】
これらおよび他のポリマーの特性ならびにそれらを調製するための方法は、当該技術分野において周知である(例えば、米国特許第6,123,727号、第5,804,178号、第5,770,417号、第5,736,372号、第5,716,404号、第6,095,148号、第5,837,752号、第5,902,599号、第5,696,175号、第5,514,378号、第5,512,600号、第5,399,665号、第5,019,379号、第5,010,167号、第4,806,621号、第4,638,045号、および第4,946,929号、Wang et al, 2001, /. Am. Chem. Soc, 123:9480; Lim et al, 2001, /. Am. Chem. Soc, 123:2460; Langer, 2000, Ace. Chem. Res., 33:94; Langer, 1999, /. Control. Release, 62:7;および Uhrich et al, 1999, Chem. Rev., 99:3181を参照)。より一般的には、好適なポリマーを合成するための様々な方法が、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric アミンs and Ammonium Salts, Ed. by Goethals, Pergamon Press, 1980; Principles of Polymerization by Odian, John Wiley & Sons, Fourth Edition, 2004; Contemporary Polymer Chemistry by Allcock et al., Prentice‐Hall, 1981; Deming et al, 1997, Nature, 390:386;ならびに米国特許第6,506,577号;第6,632,922号;第6,686,446号;および第6,818,732号に記載されている。
【0059】
さらに別のセットの実施形態において、本発明の粒子(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマーを含む)は、治療的部分、すなわち、対象に与えられた場合に、治療および予防効果を有する部分を含む。本発明のナノ粒子とともに使用される治療的部分の例には、抗悪性腫瘍剤もしくは細胞分裂阻害剤、または抗癌特性を有する他の薬剤、あるいはそれらの組み合わせが含まれる。
【0060】
いくつかの場合において、粒子はナノ粒子である、すなわち、該粒子は約1μm未満の特徴的寸法を有し、該粒子の特徴的寸法は、該粒子と同じ体積を有する真球の直径である。例えば、該粒子は、約300nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約30nm未満、約10nm未満、約3nm未満、場合によっては約1nm未満であり得る粒子の特徴的寸法を有し得る。具体的な実施形態において、本発明のナノ粒子は、80nm〜200nmの直径を有する。
【0061】
一セットの実施形態において、該粒子は内部および表面を有し得るが、表面は内部とは異なる組成物を有する、すなわち、少なくとも1つの化合物が内部に存在するが、表面には存在しない(または逆も真なり)、および/または、少なくとも1つの化合物が内部に存在し、表面では異なる濃度で存在する可能性がある。例えば、1つの実施形態において、本発明のポリマー複合体の標的化部分(すなわち、低分子量PSMAリガンド)等の化合物は、該粒子の内部および表面の両方に存在し、該粒子の表面では内部よりも高い濃度であり得るが、いくつかの場合において、該粒子の内部の濃度は実質的に非ゼロである、すなわち、該粒子の内部には検出可能な量の化合物が存在する。
【0062】
いくつかの場合において、該粒子の内部は該粒子の表面よりも疎水性である。例えば、該粒子の内部は該粒子の表面に対して比較的疎水性であり得、薬剤または他のペイロードは疎水性であり得るため、比較的疎水性である該粒子の中心と容易に会合する。該薬剤または他のペイロードは、こうして該粒子の内部に包含され得、そのため該粒子を取り囲む外部環境から保護され得る(または逆もまた真なり)。例えば、対象に投与される粒子内に包含される薬剤または他のペイロードは、対象の体から保護され、該体は薬剤から隔離される。該粒子の表面上に存在する標的化部分は、特定の標的サイト、例えば、腫瘍、患部、組織、器官、細胞の型等に、粒子が局在化できるようにする。したがって、該粒子は「標的特異的」である。該薬剤または他のペイロードは、いくつかの場合において、その後該粒子から放出され得、特定の標的部位と局所的に相互作用することができる。
【0063】
本発明のさらに別の態様は、2つ以上のポリマーまたは巨大分子が存在するポリマー粒子、およびかかるポリマーまたは巨大分子に関するライブラリを対象とする。例えば、一セットの実施形態において、該粒子は、2つ以上の識別可能なポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)を含有することができ、2つ(またはそれ以上)のポリマーの比率は独立して制御することが可能であるため、該粒子の特性を制御することが可能となる。例えば、第1のポリマーは、標的化部分および生体適合性の部位を含むポリマー複合体であり得、第2のポリマーは、生体適合性の部位を含み得るが標的化部分は含まないか、または第2のポリマーは、第1のポリマーと識別可能な生体適合性の部位を含み得る。よって、ポリマー粒子内におけるこれらのポリマーの量の制限は、例えば、該粒子のサイズ(例えば、1つまたは両方のポリマーの分子量を変化させることによる)、表面電荷(例えば、該ポリマーが異なる電荷または末端基を有する場合に、該ポリマーの比率を制御することによる)、表面親水性(例えば、該ポリマーが異なる分子量および/または親水性を有する場合)、標的化部分の表面密度(例えば、2つ以上の該ポリマーの比率を制御することによる)等の粒子の様々な物理的、生物学的、または化学的特性を制御するために使用することができる。
【0064】
具体的な例として、粒子は、ポリ(エチレングリコール)およびポリ(エチレングリコール)に複合化された標的化部分を含む第1のポリマーと、ポリ(エチレングリコール)は含むが標的化部分は含まない、またはポリ(エチレングリコール)および標的化部分の両方を含む第2のポリマーと、を含むことができ、第2のポリマーのポリ(エチレングリコール)は、第1のポリマーのポリ(エチレングリコール)とは異なる長さ(または反復単位の数)を有する。別の例として、粒子は、第1の生体適合性の部位および標的化部分を含む第1のポリマーと、第1の生体適合性の部位とは異なる第2の生体適合性の部位(例えば、異なる組成を有する、実質的に異なる数の反復単位等)および標的化部分を含む第2のポリマーと、を含むことができる。さらに別の例として、第1のポリマーは、生体適合性の部位および第1の標的化部分を含むことができ、第2のポリマーは、生体適合性の部位および第1の標的化部分とは異なる第2の標的化部分を含むことができる。
【0065】
他の実施形態において、本発明のナノ粒子は、リポソーム、リポソームポリマーの組み合わせ、デンドリマー、および低分子量PSMAリガンドで官能化されたアルブミン粒子である。これらのナノ粒子は、ミトキサントロンまたはドセタキセルのような抗癌剤等の治療剤を、対象に送達するために用いられ得る。
【0066】
本明細書で使用される「リポソーム」という用語は、一般的に、両親媒性分子(例えば、疎水性(非極性)部位および親水性(極性)部位の両方を有する)を含む球状のベシクルまたはカプシドを指す。典型的には、該リポソームは、単一(単層)の閉じられた二重層または複数に分割された(多層状)閉じられた二重層として生成することができる。該リポソームは、天然の脂質、合成脂質、またはそれらの組み合わせによって形成することができる。ある好ましい実施形態において、該リポソームは、1つもしくは複数のホスホリン脂質を含む。リポソームを形成するために当該技術分野で既知である脂質には、レシチン(大豆または卵:ホスファチジルコリン)、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、リン酸ジセチル、ホスファチジルグリセロール、水素化ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、コレステロール、ホスファチジルイノシトール、糖脂質、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、マレイミジル由来ホスホリン脂質(例えば、N‐[4(p‐マレイミドフェニル)ブチリル]ホスファチジルエタノールアミン)、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジン酸、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。リポソームは、治療剤を細胞に送達するために使用されてきた。
【0067】
本発明のナノ粒子は、頭部基がPEGで修飾された脂質を含む「ステルスリポソーム」であり得る。これは、対象の循環半減期を延長することになる。
【0068】
樹枝状ポリマー(あるいは「デンドリマー」として知られる)は、中心コア、内部樹枝状(多分岐)構造、および末端基を有する外部表面を有する、多分岐デンドリマー、アルボロール、フラクタルポリマー、および星型デンドリマーと、文献において、様々に称される均一なポリマーである。これらのポリマーは、形態および機能において従来の直鎖ポリマーとは異なる。デンドリマー化学は、サイズ、形状、トポロジー、柔軟性、および表面基(例えば、低分子量PSMAリガンド)の厳密な制御により巨大分子を構築する。ダイバージェント法として知られる合成では、これらの巨大分子は、高収率の反復反応シーケンスにおいて開始コアを反応させて、明確な表面基を有するコアから放射状に広がる対称的な枝を構築することにより開始する。代替として、コンバージェント法として知られる合成では、樹枝状の楔が周縁から内側の中心部に向かって構築され、その後、いくつかの樹枝状の楔が、多官能性コアを有する中心部で連結される。樹枝状の合成は、世代として知られる同心円状の層を形成し、各世代ごとに枝の先端の分子質量および反応基の数が倍増するため、最後の世代のデンドリマーは、様々な条件下で容易に溶解する、高度に純粋で不均一な単分散巨大分子となる。後に考察する理由のために、デンドリマーの分子量は、300から700,000ダルトンまでに及び、表面基の数(例えば、連結するための反応性部位)には有意な幅がある。
【0069】
「アルブミン粒子」(「アルブミン微粒子」とも称される)は、薬理学的物質または診断用物質の担体として報告されている(例えば、米国特許第5,439,686号、第5,498,421号、第5,560,933号、第5,665,382号、第6,096,331号、第6,506,405号、第6,537,579号、第6,749,868号、および第6,753,006号、これらはすべて、参照により本明細書に援用される)。アルブミンの微粒子は、熱変性または化学的架橋によって調製されてきた。熱変性した微粒子は、100℃から150℃の間の温度で、乳化混合物(例えば、アルブミン、組み込まれる物質、および好適な油)から生成される。その後、該微粒子は、好適な溶媒で洗浄されて、保存される。Leucuta et al. (International Journal of Pharmaceutics 41 :213‐217 (1988))は、熱変性した微粒子の調製方法について記載している。
【0070】
小分子標的化部分
さらに別の一セットの実施形態において、本発明のポリマー複合体は、標的化部分、すなわち、膜成分、細胞表面受容体、前立腺特異的膜抗原等の生物学的部分に結合する、または会合する部分、を含む。本発明の場合は、標的化部分は低分子量PSMAリガンドである。本明細書で使用される「結合」または「結合する」という用語は、典型的には、生化学的、生理的、および/または化学的な相互作用を含む(ただし、これらに限定されない)特異的または非特異的な結合または相互作用による、相互親和性または結合能を示す対応する分子の対またはその一部分の間の相互作用を指す。「生物学的結合」は、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモン等を含む分子の対の間に生じる相互作用の種類を定義する。「結合パートナー」という用語は、特定の分子との結合を起こすことができる分子を指す。「特異的結合」は、1つの結合パートナー(または限定された数の結合パートナー)に結合することができる、または結合パートナーを他の類似する生物学的存在の程度よりも実質的に高い程度まで認識することができる、ポリヌクレオチド等の分子を指す。一セットの実施形態において、該標的化部分は、約1マイクロモル未満、少なくとも約10マイクロモル、または少なくとも約100マイクロモルの親和性(解離定数によって測定される)を有する。
【0071】
好ましい実施形態において、本発明の標的化部分は小分子である。特定の実施形態において、「小分子」という用語は、天然に生じるかまたは人工的に作製される(例えば、化学的合成によって)、比較的低い分子量を有する、タンパク質、ポリペプチド、または核酸以外の有機化合物を指す。小分子は、典型的には複数の炭素‐炭素結合を有する。特定の実施形態において、小分子は約2000g/mol未満のサイズである。いくつかの実施形態において、小分子は約1500g/mol未満または約1000g/mol未満である。いくつかの実施形態において、小分子は約800g/mol未満または約500g/mol未満である。
【0072】
特に好ましい実施形態において、該小分子標的化部分は前立腺癌の腫瘍を標的とし、具体的には、該小分子標的化部分はPSMAペプチターゼ阻害剤である。これらの部分は、本明細書において「低分子量PSMAリガンド」とも称される。正常組織における発現と比較した場合、前立腺特異的膜抗原(PSMA)の発現は、悪性の前立腺において正常組織の少なくとも10倍は過剰発現され、PSMAの発現レベルは、疾患が転移相へと進行するにつれて、さらに上方制御される(Silver et al. 1997, Clin. Cancer Res., 3:81)。
【0073】
いくつかの実施形態において、該低分子量PSMAリガンドは、式I、II、III、またはIV、

およびそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体であり、
式中、
mおよびnは、それぞれ独立して0、1、2、または3であり、
Pは0または1であり、
、R、R、およびRは、置換または非置換のアルキル(例えば、C1‐10‐アルキル、C1‐6‐アルキル、またはC1‐4‐アルキル)、置換または非置換のアリール(例えば、フェニルまたはピリジニル)、およびこれらの任意の組み合わせから構成される群から、それぞれ独立して選択され、
はHまたはC1‐6‐アルキル(例えば、CH)である。
【0074】
式I、II、III、およびIVの化合物では、R、R、R、およびRは、該ナノ粒子との結合点(例えば、該ナノ粒子(例えば、PEG)を含むポリマー)を含む。結合点は、共有結合、イオン結合、水素結合、化学吸着および物理吸着を含む吸着によって形成される結合、ファンデルワールス結合によって形成される結合、または分散力によって形成され得る。例えば、R、R、RまたはRがアニリンまたはC1−6‐アルキル‐NH基であると定義される場合、これらの官能基のうちの任意の水素(例えば、アミノ水素)が除去され得、該低分子量PSMAリガンドは該ナノ粒子のポリマーマトリックス(例えば、ポリマーマトリックスのPEGブロック)に共有結合的に結合される。本明細書で使用される「共有結合的な結合」という用語は、少なくとも一対の電子を共有することにより形成される2つの原子間の結合を指す。
【0075】
式I、II、III、またはIVの特定の実施形態において、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、C1‐6‐アルキルもしくはフェニル、またはC1‐6‐アルキルもしくはフェニルの任意の組み合わせであり、それらはOH、SH、NH、またはCOHで1回もしくは複数回独立して置換されており、該アルキル基はN(H)、SまたはOによって中断され得る。別の実施形態において、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、CH‐Ph、(CH‐SH、CH‐SH、(CHC(H)(NH)COH、CHC(H)(NH)COH、CH(NH)CHCOH、(CHC(H)(SH)COH、CH‐N(H)‐Ph、O‐CH‐Ph、またはO‐(CH‐Phであり、それぞれのPhは、OH、NH、COHまたはSHで1回もしくは複数回独立して置換され得る。これらの式では、NH、OHまたはSH基は、該ナノ粒子との結合点(例えば、‐N(H)‐PEG、‐0‐PEG、または‐S‐PEG)としての役割を果たす。
【0076】
さらに別の実施形態において、該低分子量PSMAリガンドは、

ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体から構成される群から選択され、式中、NH、OH、またはSH基は、該ナノ粒子との共有結合的な結合点(例えば、‐N(H)‐PEG、‐O‐PEG、または‐S‐PEG)としての役割を果たす。
【0077】
別の実施形態において、該低分子量PSMAリガンドは、

ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体から構成される群から選択され、式中、Rは、NH、SH、OH、COH、C1‐6‐アルキル(NH、SH、OH、COHで置換された)、およびフェニル(NH、SH、OH、またはCOHで置換された)から構成される群から独立して選択され、Rは、該ナノ粒子との共有結合的な結合点(例えば、‐N(H)‐PEG、‐S‐PEG、‐0‐PEG、またはCO‐PEG)としての役割を果たす。
【0078】
別の実施形態において、該低分子量PSMAリガンドは、

ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体から構成される群から選択され、式中、NHまたはCOH基は、該ナノ粒子との共有結合的な結合点(例えば、‐N(H)‐PEG、またはCO‐PEG)としての役割を果たす。これらの化合物は、NH、SH、OH、COH、C1‐6‐アルキル(NH、SH、OH、もしくはCOHで置換された)、またはフェニル(NH、SH、OH、もしくはCOHで置換された)でさらに置換され得、これらの置換基は、該ナノ粒子との共有結合的な結合点としての役割を果たすこともできる。
【0079】
別の実施形態において、該低分子量PSMAリガンドは、

およびその鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体であり、式中、nは、1、2、3、4、5、または6である。このリガンドでは、NH基は、該ナノ粒子との共有結合的な結合点(例えば、‐N(H)‐PEG)としての役割を果たす。
【0080】
さらに別の実施形態において、該低分子量PSMAリガンドは、

およびその鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体である。とりわけブチル‐アミン化合物は、特に、ベンゼン環を持たないことから、合成がしやすいという利点を有する。さらに、理論に束縛されるものではないが、ブチル‐アミン化合物は、天然に生じる分子(すなわち、リジンおよびグルタミン酸)に分解する傾向があり、したがって毒性の懸念を最小限に留める。
【0081】
これらのリガンドでは、NH基は、該ナノ粒子との共有結合的な結合点(例えば、‐N(H)‐PEG)としての役割を果たす。したがって、本発明は、上に示した低分子量PSMAリガンドを提供し、化合物のアミン置換基は、ポリ(エチレングリコール)、例えば、化合物

と共有結合的に結合され、式中、nは20〜1720である。
【0082】
本発明の化合物は、式I、II、III、またはIVの低分子量PSMAリガンドも含み、該低分子量PSMAリガンドはポリマーと結合する。かかる複合体は、

を含み、式中、R、R、R、RおよびRは、式I、II、III、またはIVについて記載された定義を有し、式中、RおよびRはアルキル基、Rはエステルまたはアミノ結合、X=0〜1モル分率であり、Y=0〜0.5モル分率であり、X+Y=20〜1720であり、およびZ=25〜455である。
【0083】
本発明の化合物は、

も含み、式中、RおよびRはアルキル基、Rはエステルまたはアミド結合であり、X=0〜1モル分率であり、Y=0〜0.5モル分率であり、X+Y=20〜1720であり、およびZ=25〜455である。
【0084】
このように、本発明は、治療剤および上記ポリマー/低分子量PSMAリガンド複合体のうちのいずれかを含む標的特異的ステルス型ナノ粒子を提供する。
【0085】
いくつかの実施形態において、該低分子量PSMAリガンドは、Zhou et al, Nat. Rev. Drug Discov. 4:1015‐26 (2005); Humblett et al, MoI. Imaging 4:448‐62 (2005); Jayaprakash et al, Chem. Med. Chem. 1:299‐302 (2006); Yoo et al, Controlled Release 96: 273‐83 (2004); Aggarwal et al, Cancer Res. 66:9171‐9177 (2006);および Foss et al, Clin. Cancer Res. 11(11): 4022‐4028 (2005)に記載されるリガンドから選択され、それらはすべて、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0086】
いくつかの実施形態において、前立腺癌の腫瘍に関連する細胞を標的とするために用いられ得る小分子標的化部分は、2‐PMPA、GPI5232、VA‐033、フェニルアルキルホスホンアミダート等のPSMAペプチダーゼ阻害剤(Jackson et al, 2001, Curr. Med. Chem., 8:949; Bennett et al, 1998, /. Am. Chem. Soc, 120:12139; Jackson et al, 2001, /. Med. Chem., 44:4170; Tsulcarnoto et al, 2002, Bioorg. Med. Chem. Lett., 12:2189; Tang et al, 2003, Biochem. Biophys. Res. Commun., 307:8; Oliver et al, 2003, Bioorg. Med. Chem., 11:4455;および Maung et al, 2004, Bioorg. Med. Chem., 12:4969)、ならびに/またはそれらの類似体および誘導体を含む。いくつかの実施形態において、前立腺癌の腫瘍に関連する細胞を標的とするために用いられ得る小分子標的化部分は、2‐MPPAおよび3‐(2‐メルカプトエチル)‐1H‐インドール‐2‐カルボン酸誘導体等のチオールおよびインドールチオール誘導体を含む(Majer et al, 2003, /. Med. Chem.,46: 1989;および米国特許出願第2005/0080128号)。いくつかの実施形態において、前立腺癌の腫瘍に関連する細胞を標的とするために用いられ得る小分子標的化部分は、ヒドロキサマート誘導体を含む(Stoermer et al, 2003, Bioorg. Med. Chem. Lett., 13:2097)。いくつかの実施形態において、前立腺癌の腫瘍に関連する細胞を標的とするために用いられ得る小分子標的化部分は、ZJ43、ZJ11、ZJ17、ZJ38等のPBDAおよび尿素系の阻害剤(Nan et al. 2000, /. Med. Chem., 43:772;および Kozikowski et al, 2004, /. Med. Chem., 47:1729)、ならびに/またはそれらの類似体および誘導体を含む。いくつかの実施形態において、前立腺癌の腫瘍に関連する細胞を標的とするために用いられ得る小分子標的化部分は、米国特許第7,026,500号、第7,022,870号、第6,998,500号、第6,995,284号、第6,838,484号、第6,569,896号、第6,492,554号、および米国特許公報第2006/0287547号、第2006/0276540号、第2006/0258628号、第2006/0241180号、第2006/0183931号、第2006/0035966号、第2006/0009529号、第2006/0004042号、第2005/0033074号、第2004/0260108号、第2004/0260092号、第2004/0167103号、第2004/0147550号、第2004/0147489号、第2004/0087810号、第2004/0067979号、第2004/0052727号、第2004/0029913号、第2004/0014975号、第2003/0232792号、第2003/0232013号、第2003/0225040号、第2003/0162761号、第2004/0087810号、第2003/0022868号、第2002/0173495号、第2002/0099096号、第2002/0099036号に記載されるような、アンドロゲン受容体標的物質(ARTA)を含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、前立腺癌の腫瘍に関連する細胞を標的とするために用いられ得る小分子標的化部分は、プトレシン、スペルミン、およびスペルミジン等のポリアミンを含む(米国特許出願第2005/0233948号および第2003/0035804号)。
【0088】
いくつかの実施形態において、該低分子量PSMAリガンドは、NAAGペプチダーゼまたはNAALADアーゼとしても知られる酵素グルタミン酸カルボキシラーゼII(GCPII)の阻害剤である。したがって、PSMAに結合する低分子量小分子を設計/識別するための基盤として、GCPIIまたはNAALADアーゼの阻害活性を測定することができる。このように、本発明は、GCPII活性に関連する癌の治療のために用いることができる、低分子量PSMAリガンドを有するステルス型ナノ粒子に関する。
【0089】
細胞表面タンパク質PSMAまたはGCPIIに特異的に結合する能力を持つ低分子量分子をスクリーニングする方法は、当該技術分野において周知である。非限定的な例において、候補の低分子量分子は、放射活性的(Foss et al, Clin Cancer Res, 2005, 11, 4022‐4028を参照)または蛍光的(Humblet et ah, Molecular Imaging, 2005, 4, 448‐462)に標識化することができる。標準的な実験用細胞株、例えば、通常はPMSAを発現しないHeLa細胞(対照細胞)を、PMSAタンパク質をコードする導入遺伝子でトランスフェクトし、それらのトランスフェクトされた細胞の細胞表面上にPMSAが発現されるようにすることができる。低分子量の標識された分子が対照細胞には結合せずに、PMSAを異所的に発現する細胞に結合する能力は、シンチレーションカウントまたは蛍光活性化細胞選別(FACS)分析等の当該技術分野で認識された標準的な手段を用いて、生体外で判定することができる。対照細胞には結合せずにPMSAを発現する細胞に結合する低分子量分子は、PMSAに特異的であると見なされる。ナノ粒子の結合および取り込みは、PSMAを発現するLNCap細胞を用いて評価することができる(例えば、本明細書の実施例4を参照)。
【0090】
本明細書に引用される特許、特許出願、および特許以外の参考文献に開示される分子は、標的化部分に複合化されたポリマーを生成するために、本発明のポリマー(例えば、PEG)と反応させることが可能な官能基でさらに置換され得る。該官能基は、アミノ基、ヒドロキシ基、およびチオ基等、ポリマー(例えば、PEG)と共有結合を作製するために使用することができる任意の部分を含む。ある具体的な実施形態において、該小分子は、該小分子と直接結合しているか、または例えば、アルキル基もしくはフェニル基等の追加の基を介して該小分子と結合しているかのいずれか一方である、NH、SH、またはOHで置換することができる。非限定的な例において、本明細書に引用される特許、特許出願、および特許以外の参考文献に開示される小分子は、アニリン、アルキル‐NH(例えば、(CH1‐6NH)、またはアルキル‐SH(例えば、(CH1‐6NH)と結合させることができ、NHおよびSH基は、ポリマー(例えば、PEG)と反応させて、該ポリマーとの共有結合的な結合を形成すること、すなわちポリマー複合体を形成することができる。
【0091】
本発明のポリマー複合体は、任意の好適な複合化技術を用いて形成することができる。例えば、標的化部分と生体適合性ポリマー、および生体適合性ポリマーとポリ(エチレングリコール)等の2つの化合物は、EDC‐NHS化学(塩化l‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドおよびN‐ヒドロキシスクシンイミド)またはマレイミドもしくはカルボキシル酸が関与する反応等の技術を用いて複合化することができ、チオール、アミン、または同様に官能化されたポリエーテルの一方の末端に複合化することができる。かかるポリマーの複合化、例えば、ポリ(エステル‐エーテル)を形成すためのポリ(エステル)とポリ(エーテル)の複合化は、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン等のこれらに限定されない有機溶媒中で実施され得る。特異的な反応条件は、ほんのルーチンの実験を用いて当業者により決定され得る。
【0092】
別のセットの実施形態において、複合化反応は、カルボン酸官能基(例えば、ポリ(エステル‐エーテル)化合物)を含むポリマーを、アミンを有するポリマーまたは他の部分(標的化部分等)と反応させることによって実施することができる。例えば、低分子量PSMAリガンド等の標的化部分は、アミンと反応させてアミン含有部分を形成することができ、その後に該ポリマーのカルボン酸と複合化させることができる。かかる反応は1段階反応として起こり得る、すなわち、複合化はN‐ヒドロキシスクシンイミドまたはマレイミド等の中間体を用いることなく実施される。アミン含有部分とカルボキシル酸末端ポリマー(ポリ(エステル‐エーテル)化合物等)との間の複合化反応は、一セットの実施形態において、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ジオキサン、またはジメチルスルホキシド等(これらに限定されないが)の有機溶媒に溶解させたアミン含有部分を、カルボキシル酸末端ポリマーを含有する溶液に添加することによって、達成され得る。該カルボキシル酸末端ポリマーは、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、またはアセトン等のこれらに限定されない有機溶媒に含有され得る。該アミン含有部分と該カルボキシル酸末端ポリマーとの間の反応は、場合によっては瞬時に起こり得る。複合化されなかった反応物は、かかる反応後に洗い流すことができ、該ポリマーは、例えば、エチルエーテル、ヘキサン、メタノール、またはエタノール等の溶媒中に沈殿させることができる。
【0093】
具体的な例として、低分子量PSMAリガンドは、以下のように粒子の標的化部分として調製することができる。カルボン酸修飾ポリ(ラクチド‐コ‐グリコリド)(PLGA‐COOH)は、アミン修飾したヘテロ二官能性ポリエチレングリコール)(NH‐PEG‐COOH)と複合化させて、PLGA‐PEG‐COOHのコポリマーを形成することができる。アミン修飾した低分子量PSMAリガンド(NH‐Lig)を用いて、PEGのカルボン酸末端をリガンド上のアミン官能基と複合化することにより、PLGA‐PEG‐Ligのトリブロックポリマーを形成することができる。後に、該マルチブロックポリマーは、例えば、後に考察されるように、例えば、治療用途に用いることができる。
【0094】
本発明の別の態様は、上記のようなポリマー複合体を含む粒子を対象とする。該粒子は、実質的に球状であるか(すなわち、該粒子は概して球状に見える)、または非球状の構造を有し得る。例えば、該粒子は、膨張または縮小すると、非球状の構造を採り得る。いくつかの場合において、該粒子はポリマーブレンドを含み得る。例えば、標的化部分(すなわち、低分子量PSMAリガンド)および生体適合性ポリマーを含む第1のポリマーと、生体適合性ポリマーを含むが標的化部分を含まない第2のポリマーと、を含むポリマーブレンドが形成され得る。最終的なポリマーにおける第1のポリマーと第2のポリマーの比率を制御することにより、最終的なポリマーにおける標的化部分の濃度および位置を、任意の好適な程度まで容易に制御することができる。
【0095】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は飽和脂肪族基を含み、それらには直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等)、分岐鎖アルキル基(イソプロピル、第三級ブチル、イソブチル等)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロフェニル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む。さらに、式中、xは1〜5であり、yは2〜10である「C‐C‐アルキル」という表現は、特定の範囲の炭素の特定のアルキル基(直鎖または分岐鎖)を示す。例えば、C‐C‐アルキルと言う表現は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、三級ブチル、およびイソブチルを含むが、これらに限定されない。
【0096】
アルキルという用語は、炭化水素骨格のうちの1つもしくは複数の炭素を置換する酸素、窒素、硫黄、またはリン原子をさらに含み得るアルキル基をさらに含む。ある実施形態において、直鎖または分岐鎖のアルキルは、その骨格内に10個以下の炭素原子を有し(例えば、直鎖ではC‐C10、分岐鎖ではC‐C10)、より好ましくは6固以下の炭素を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、その環構造に4〜7個の炭素原子を有し、より好ましくは5個または6個の炭素を環構造に有する。
【0097】
また、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)は、「非置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含み、そのうちの後者は、該分子がその意図する機能を果たすことができるようにする、炭化水素骨格の1つもしくは複数の炭素上の水素を置換する置換基を有するアルキル部分を指す。「置換」という用語は、1つもしくは複数の原子(例えば、分子のC、O、またはN)上の水素を置換する置換基を有する部分を説明することを意図する。かかる置換基は、例えば、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸塩、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル,ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル、スルホン酸塩、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロ環、アルキルアリール、モルホリノ、フェノール、ベンジル、フェニル、ピペリジン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ピリジン、5H‐テトラゾール、トリアゾール、ピペリジン、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を含み得る。
【0098】
本発明の置換基のさらなる例は、限定的なものではなく、以下から選択される部分を含む:直鎖または分岐鎖アルキル(好ましくはC‐C)、シクロアルキル(好ましくはC‐C)、アルコキシ(好ましくはC‐C)、チオアルキル(好ましくはC‐C)、アルケニル(好ましくはC‐C)、アルキニル(好ましくはC‐C)、ヘテロ環、炭素環、アリール(例えば、フェニル)、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、アラルキル(例えば、ベンジル)、アリールオキシアルキル(例えば、フェニルオキシアルキル)、アリールアセトアミドイル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル、アルキルカルボニルおよびアリールカルボニルまたは他のかかるアシル基、ヘテロアリールカルボニル、またはヘテロアリール基(CR’R”)0‐3NR’R”(例えば、‐NH)、(CR’R”)0‐3CN(例えば、‐CN)、‐NO、ハロゲン(例えば、‐F、‐Cl、‐Br、または‐I)、(CR’R”)0‐3C(ハロゲン)(例えば、‐CF)、(CR’R”)0‐3CH(ハロゲン)、(CR’R”)0‐3CH(ハロゲン)、(CR’R”)0‐3CONR’R”、(CR’R”)0‐3(CNH)NR’R”、(CR’R”)S(O)1‐2NR’R”、(CR’R”)0‐3CHO、(CR’R”)0‐3O(CR’R”)0‐3H、(CR’R”)0‐3S(0)0‐3R’(例えば、‐SOH、‐OSOH)、(CR’R”)0‐3O(CR’R”)0‐3H(例えば、‐CHOCHおよび‐OCH)、(CR’R”)0−3S(CR’R”)0‐3H(例えば、‐SHおよび‐SCH)、(CR’R”)0‐3OH(例えば、‐OH)、(CR’R”)0‐3COR’、(CR’R”)0‐3(置換または非置換フェニル)、(CR’R”)0‐3(C‐Cシクロアルキル)、(CR’R”)0‐3COR’(例えば、‐COH)もしくは(CR’R”)0‐3OR’基、または天然に存在するアミノ酸の側鎖(式中、R’およびR”は、それぞれ独立して水素、C‐Cアルキル、C‐Cアルケニル、C‐Cアルキニル、またはアリール基である)。かかる置換基は、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸塩、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル,ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ,およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、オキシム、チオール、アルキルチオ、アリールチオ,チオカルボン酸塩、硫酸塩、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を含み得る。特定の実施形態において、カルボニル部分(C=O)は、酸素部分でさらに誘導体化され得、例えば、アルデヒド部分は、そのオキシム(‐C=N‐OH)類似体に誘導体化することができる。当業者には、炭化水素鎖上で置換された部分は、適当である場合、それ自体で置換可能であることが理解される。シクロアルキルは、例えば、上記置換基でさらに置換され得る。「アラルキル」部分は、アリール(例えば、フェニルメチル(すなわちベンジル))で置換されたアルキルである。
【0099】
「アリール」という用語は、0〜4個のヘテロ原子を含み得る5員または6員の単環芳香族基、例えば、フェニル、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジン等を含む基を含む。さらに、「アリール」という用語は、例えば、ナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、アントリル、フェナントリル、ナフチリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、またはインドリジン等の、例えば、三環式、二環式の、多環アリール基を含む。環構造にヘテロ原子を有するこれらのアリール基は、「アリールへテロ環」、「ヘテロ環」、「ヘテロアリール」、または「ヘテロ芳香族」とも称され得る。該芳香族環は、1つもしくは複数の環の位置で、例えば、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸塩、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル,アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル,ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ,チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル、スルホン酸塩、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分等の上記置換基で置換され得る。アリール基は、多環(例えば、テトラリン)を形成するために、芳香族ではない脂環式環またはヘテロ環と、融合または架橋されることもできる。
【0100】
また、「その任意の組み合わせ」という語句は、任意の数の列挙された官能基および分子を組み合わせて、より大きな分子構造を作製することを意味する。例えば、「アルキル」および「アリール」という用語を組み合わせて、‐CHPh、または‐PhCH(touyl)基を作製することができる。同様に、「C1‐6‐アルキルまたはフェニルの任意の組み合わせであって、OH、SH、NH、またはCOHで、独立して1回もしくは複数回置換される」という語句は、‐(CH‐アニリン構造、または‐Ph‐(CH‐NH置換基を表す。官能基と分子を組み合わせてより大きな分子構造を作製する場合、各原子の原子価を満たす必要に応じて、水素が除去されるか、または追加され得ることを理解されたい。
【0101】
標的特異的ステルス型ナノ粒子の調製
本発明の別の態様は、かかる標的特異的ステルス型ナノ粒子を生成するシステムおよび方法を対象とする。いくつかの実施形態において、ポリマーを含有する溶液を、非混和性の液体等の液体と接触させて、ポリマー複合体を含有するナノ粒子を形成する。
【0102】
前述のように、本発明の1つの態様は、所望の化学的、生物学的、または物理的特性等の、所望の特性を有するナノ粒子を開発する方法を対象とする。一セットの実施形態において、該方法は、2つ以上のポリマーを異なる比率で混合することによって形成され得る、高度に制御された特性を有するナノ粒子のライブラリを生成するステップを含む。2つ以上の異なるポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)を異なる比率で混合し、該ポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)から粒子を生成することにより、高度に制御された特性を有する粒子が形成され得る。例えば、1つのポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)は低分子量PSMAリガンドを含み得る一方で、別のポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)は、その生体適合性および/または結果として生じる粒子の免疫原性を制御するその能力のために選択され得る。
【0103】
一セットの実施形態において、該粒子は、1つもしくは複数のポリマーを含む溶液を提供し、該溶液をポリマー非溶媒(polymer nonsolvent)と接触させて粒子を生成することにより形成される。該溶液は、ポリマー非溶媒を含み、混和性または非混和性であり得る。例えば、アセトニトリル等の水混和性の液体は、該ポリマーを含有することができ、例えば、アセトニトリルを制御された速度で水に注ぎ入れることにより、アセトニトリルがポリマー非溶媒である水に接触させられると、粒子が形成される。該溶液中に含有される該ポリマーは、該ポリマー非溶媒と接触させられると、その後、沈殿してナノ粒子等の粒子を形成することができる。2つの液体は、周囲温度および圧力下で少なくとも10重量%のレベルまで一方が他方に溶解しない場合、互いに「非混和性」である、または混和性ではないと言われる。典型的には、有機溶液(例えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド等)と水性液体(例えば、水、または、溶解させた塩もしくは他の種、細胞もしくは生物学的媒体、エタノール等を含有する水)は、互いに非混和性である。例えば、第1の溶液を、第2の溶液に(好適な速度またはスピードで)流し込むことができる。いくつかの場合において、ナノ粒子等の粒子は、第1の溶液が非混和性の第2の液体に接触すると形成され得、例えば、第1の溶液が第2の液体中に流れ込む間に、接触時のポリマーの沈殿が該ポリマーにナノ粒子を形成させ、またいくつかの場合において、例えば、導入の速度が注意深く制御され、比較的緩やかな速度で維持された場合に、ナノ粒子が形成し得る。かかる粒子形成の制御は、当業者により、ルーチンの実験のみを用いて容易に最適化され得る。
【0104】
かかる粒子のライブラリを作成することにより、任意の望ましい特性を有する粒子が認識され得る。例えば、表面機能性、表面電荷、サイズ、ゼータ(ζ)電位、疎水性、免疫原性を制御する能力等の特性が高度に制御され得る。例えば、粒子のライブラリは、粒子が該粒子表面上に存在する特定の密度の部分(例えば、低分子量PSMAリガンド)を有することができるようにする、ポリマーの特定の比率を有する粒子を識別するために、合成およびスクリーニングされ得る。これにより、例えば、特定のサイズおよび特定の表面密度の部分のような1つもしくは複数の特定の特性を有する粒子が、必要以上の努力をすることなく調製され得る。したがって、本発明の特定の実施形態は、かかるライブラリ、およびかかるライブラリを用いて識別される任意の粒子を用いるスクリーニング技術を対象とする。また、識別は、任意の好適な方法を用いて行うことができ、例えば、識別は、直接的または間接的であり得、定量的または定性的に進めることができる。
【0105】
いくつかの実施形態において、すでに形成されたナノ粒子は、リガンド官能化ポリマー複合体の生成について説明したものと類似する手順を用いて、標的化部分で官能化される。具体的な非限定的な例として、図1Aにこの実施形態を概略的に例示する。この図では、第1のコポリマー(PLGA‐PEG、ポリ(ラクチド‐コ‐グリコリド)とポリ(エチレングリコール))は、治療剤と混合されて粒子を形成する。その後、該粒子は低分子量PSMAリガンドと会合され、癌の治療のために使用され得るナノ粒子を形成する。該粒子は、該ナノ粒子のPSMAリガンドの表面密度を制御することにより、該ナノ粒子の治療的特徴を変化させるために、様々な量の低分子量PSMAリガンドと会合され得る。さらに、例えば、PLGA分子量、PEGの分子量、およびナノ粒子の表面電荷等のパラメータを制御することにより、この調製の方法を用いて、非常に精密に制御された粒子を得ることができる。
【0106】
具体的な非限定的な例として、図1Bに別の実施形態を概略的に示す。この図では、第1のコポリマー(PLGA‐PEG)が低分子量PSMAリガンド(PSMALig)に複合化され、PLGA‐PEG‐PSMALigポリマーを形成する。このリガンド結合ポリマーは、第2の非官能化ポリマー(この例ではPLGA‐PEG)と様々な比率で混合され、例えば、この例に示すような異なる表面密度のPSMAリガンドのように、異なる特性を有する一連の粒子を形成する。例えば、PLGA分子量、PEGの分子量、PSMAリガンドの表面密度、およびナノ粒子の表面電荷等のパラメータを制御することにより、この調製の方法を用いて、非常に精密に制御された粒子を得ることができる。図1Bに示すように、結果として生じる粒子は、治療剤も含み得る。
【0107】
別の実施形態において、本発明は、ステルス型ナノ粒子を調製する方法を提供し、該ステルス型ナノ粒子は、前立腺癌の治療に効果的なリガンド結合ポリマー対非官能化ポリマーの比率を有し、親水性のリガンド結合ポリマーは、該ナノ粒子を構成する疎水性および親水性のポリマーが共有結合的に結合しないように、疎水性ポリマーとともに自己組織化する脂質と複合化される。「自己組織化」は、高次構造の構成要素(例えば、分子)が自然に互いを誘引することによる、該高次構造の瞬間的な集合のプロセスを指す。それは、典型的には、分子のランダム運動と、サイズ、形状、組成、または化学的特性に基づく結合の形成とによって起こる。例えば、かかる方法は、ポリマー/脂質複合体を形成するように脂質と反応させられる第1のポリマーを提供するステップを含む。その後、リガンド結合ポリマー/脂質複合体を調製するように、ポリマー/脂質複合体を低分子量PSMAリガンドと反応させて、該リガンド結合ポリマー/脂質複合体を第2の非官能化ポリマーおよび治療剤と混合させると、ステルス型ナノ粒子が形成される。特定の実施形態において、該第1のポリマーはPEGであるため、脂質末端PEGが形成される。1つの実施形態において、該脂質は、式Vの脂質であり、例えば、2ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン(DSPE)、およびその塩(例えば、ナトリウム塩)である。該脂質末端PEGは、その後、例えば、PLGAと混合してナノ粒子を形成することができる。
【0108】
かかる粒子のライブラリも形成され得る。例えば、該粒子内の2つ(またはそれ以上)のポリマーの比率を変化させることにより、これらのライブラリは、ハイスループットアッセイ等のスクリーニングテストに有用であり得る。該ライブラリ内の粒子は、上記のような特性によって多様である可能性があり、いくつかの場合において、粒子の2つ以上の特性がライブラリ内で多様であり得る。このように、本発明の1つの実施形態は、異なる特性を持つ異なる比率のポリマーを有するナノ粒子のライブラリを対象とする。該ライブラリは、任意の好適な比率のポリマーを含み得る。
【0109】
いくつかの場合において、粒子の集団が存在し得る。例えば、粒子の集団は、少なくとも20個の粒子、少なくとも50個の粒子、少なくとも100個の粒子、少なくとも300個の粒子、少なくとも1,000個の粒子、少なくとも3,000個の粒子、または少なくとも10,000個の粒子を含み得る。本発明の様々な実施形態は、かかる粒子の集団を対象としている。例えば、いくつかの実施形態において、該粒子は、それぞれが、実質的に同じ形状および/またはサイズ(「単分散」)であり得る。例えば、該粒子は、該粒子の約5%または約10%以下が、該粒子の平均的な特徴的寸法を約10%上回る特徴的寸法を有するように、またいくつかの場合において、約8%、約5%、約3%、約1%、約0.3%、約0.1%、約0.03%、もしくは約0.01%以下が、粒子の平均的な特徴的寸法を約10%上回る特徴的寸法を有するように、特徴的寸法の分布を有し得る。いくつかの場合において、該粒子の約5%以下は、該粒子の平均的な特徴的寸法を約5%、約3%、約1%、約0.3%、約0.1%、約0.03%、または約0.01%上回る特徴的寸法を有する。
【0110】
より一般的には、粒子のライブラリを作成するために使用されるべく選択されるポリマーは、本明細書に記載される様々なポリマーのうちのいずれでもあり得る。一般的に、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のポリマーが、様々な比率(例えば、それぞれが0%〜100%に及ぶ)で混合されて、それぞれのポリマーが異なる比率を有するナノ粒子等の粒子を形成する。2つ以上のポリマーは、例えば、異なるポリマー基を有する、同じポリマー基を有するが分子量は異なる、いくつかの共通するポリマー基を有するが他のポリマー基は異なる(例えば、一方は、他方が持たないポリマー基を有する可能性がある)、同じポリマー基を有するが、異なる順序である等、なんらかの形式で識別可能である。粒子のライブラリは、任意の数のメンバーを有することができ、例えば、ライブラリは、2、3、5、10、30、100、300、1000、3000、10,000、30,000、100,000等のメンバーを有し得、それらはなんらかの形式で識別され得る。いくつかの場合において、該ライブラリは同時に存在してもよく、例えば、該ライブラリは、1つもしくは複数のマイクロタイタープレート、バイアル等に含まれ得、またはいくつかの実施形態において、該ライブラリは、異なる時期に作成されたメンバーを含み得る。
【0111】
次いで、粒子のライブラリは、例えば、表面機能性、表面電荷、サイズ、ゼータ(ζ)電位、疎水性、免疫原性を制御する能力等の1つもしくは複数の所望の特性を有するこれらの粒子を識別するために、なんらかの形式でスクリーニングされ得る。該粒子内の1つもしくは複数の巨大分子が、生体適合性または生分解性であるように選択された1つもしくは複数のポリマー、免疫原性を低下させるように選択された1つもしくは複数のポリマー、および/または1つもしくは複数の低分子量PSMAリガンドを含み得る。該ライブラリ内の該巨大分子は、好適な組み合わせ(第1のポリマーは低分子量PSMAリガンドを含み、第2のポリマーはこれらの種のいずれも含まない組み合わせを含むが、これらに限定されない)で、これらのポリマーのいくつかまたはすべてを含み得る。
【0112】
具体的な例として、1つの実施形態において、該粒子は、生体適合性ポリマーおよび低分子量PSMAリガンドを含む第1の巨大分子と、第1の巨大分子のものと同じであってもまたは同じでなくてもよい生体適合性ポリマーを含む第2の巨大分子と、を含み得る。別の例として、第1の巨大分子は、生体適合性の疎水性ポリマー、生体適合性の親水性ポリマー、および低分子量PSMAリガンドを含むブロックコポリマーであり得、第2の巨大分子は、なんらかの形式で第1の巨大分子と識別可能である。例えば、該第2の巨大分子は、同じ(または異なる)生体適合性の疎水性ポリマーおよび同じ(または異なる)生体適合性の親水性ポリマーを含み、しかし、該第1の巨大分子とは異なる低分子量PSMAリガンドを含み得る(または、リガンドがまったく存在しない)。
【0113】
本発明のナノ粒子は、別の例として、生体適合性の疎水性ポリマー、生体適合性の親水性ポリマー、および低分子量PSMAリガンドを含む第1の巨大分子と、該第1の巨大分子と識別可能である第2の巨大分子と、を含むこともできる。例えば、該第2の巨大分子は、該第1の巨大分子のポリマーを1つも含まない可能性があり、該第2の巨大分子は、該第1の巨大分子の1つもしくは複数のポリマーおよび該第1の巨大分子には存在しない1つもしくは複数のポリマーを含むことが可能であり、該第2の巨大分子は、該第1の巨大分子のポリマーのうちの1つもしくは複数が欠けている可能性があり、該第2の巨大分子は、該第1の巨大分子のポリマーのすべてを含むが、それらは異なる順番であり、および/または該ポリマーのうちの1つもしくは複数が異なる分子量を有する等である。
【0114】
さらに別の例として、該第1の巨大分子は、生体適合性の疎水性ポリマー、生体適合性の親水性ポリマー、および低分子量PSMAリガンドを含み得、該第2の巨大分子は、生体適合性の疎水性ポリマーおよび生体適合性の親水性ポリマーを含み得、なんらかの形式で該第1の巨大分子とは識別可能であり得る。さらに別の例として、該第1の巨大分子は、生体適合性の疎水性ポリマーおよび生体適合性の親水性ポリマーを含み得、該第2の巨大分子は、生体適合性の疎水性ポリマーおよび低分子量PSMAリガンドを含み得、該第2の巨大分子は、なんらかの形式で該第1の巨大分子と識別可能である。
【0115】
上記ナノ粒子は、治療剤も含み得る。治療剤の例には、化学療法剤、放射性物質、核酸系物質、脂質系物質、炭水化物系物質、天然の小分子、または合成小分子が含まれるが、これらに限定されない。
【0116】
その後、該ポリマーまたは巨大分子は、以下に詳細に考察される技術を用いて、粒子に形成され得る。該ポリマーまたは巨大分子由来の粒子によって形成される幾何学的形状は、その粒子を形成するポリマー等の要因に依存し得る。
【0117】
図2は、上述のようなポリマーを用いてライブラリが生成され得ることを示す。例えば、図2では、生体適合性の疎水性ポリマー、生体適合性の親水性ポリマー、および低分子量PSMAリガンドを含む第1の巨大分子と、生体適合性の疎水性ポリマーおよび生体適合性の親水性ポリマーを含む第2の巨大分子と、を含むポリマー粒子は、異なる比率の該第1および第2の巨大粒子を有する粒子のライブラリを作成するために使用され得る。
【0118】
かかるライブラリは、任意の数の望ましい特性、例えば、表面機能性、表面電荷、サイズ、ゼータ(ζ)電気、疎水性、免疫原性等を制御する能力等の特性を有する粒子を実現するのに有用であり得る。図2では、異なる比率の第1の巨大分子と第2の巨大分子(巨大分子のうちの1つが欠けている比率を含む)が組み合わされて、ライブラリの基盤を成す粒子が生成される。
【0119】
例えば、図2に示すように、該第2の巨大分子に対して該第1の巨大分子の量が増加されると、該粒子の表面上に存在する部分(例えば、低分子量PSMAリガンド)の量が増加され得る。つまり、単純に該粒子中の該第1の巨大分子と該第2の巨大分子の比率を制御することにより、該表面上の部分の任意の好適な濃度が実現され得る。したがって、かかる粒子のライブラリは、特定の機能性を有する粒子を選択または識別するのに有用であり得る。
【0120】
特定の例として、本発明のいくつかの実施形態において、該ライブラリは、本明細書で考察されるように、生体適合性ポリマーと低分子量PSMAリガンドのポリマー複合体を含む粒子を含む。次に図3を参照すると、かかる粒子の1つが非限定的な例として示されている。この図では、本発明のポリマー複合体は、粒子10を形成するために使用される。粒子10を形成するポリマーは、該粒子の表面上に存在する低分子量PSMAリガンド15、および生体適合性の部位17を含む。いくつかの場合において、ここに示すように、標的化部分15は生体適合性の部位17と複合化され得る。しかしながら、生体適合性の部位17のすべてが標的化部分15と複合化されるように示されているわけではない。例えば、いくつかの場合において、粒子10等の粒子は、生体適合性の部位17および低分子量PSMAリガンド15を含む第1のポリマーと、生体適合性の部位17を含むが、標的化部分15は含まない第2のポリマーと、を用いて形成され得る。該第1のポリマーと該第2のポリマーの比率を制御することにより、異なる特性を有する粒子が形成され得、またいくつかの場合において、かかる粒子のライブラリが形成され得る。また、粒子10の中心に含まれるのは薬剤12である。いくつかの場合において、薬剤12は、疎水性効果のために、該粒子の中に含まれ得る。例えば、該粒子の内部は該粒子の表面に対して比較的疎水性であり得、該薬剤は、比較的疎水性である該粒子の中心と会合する疎水性薬剤であり得る。1つの実施形態において、該治療剤は、該ナノ粒子の表面に会合している、該ナノ粒子の中に封入されている、該ナノ粒子に囲まれている、または該ナノ粒子全体に分散している。別の実施形態において、該治療剤は、該ナノ粒子の疎水性コア内に封入されている。
【0121】
具体的な例として、粒子10は、比較的疎水性である生体適合性ポリマー、および比較的親水性である標的化部分15を含むポリマーを含み得るため、粒子が形成される間、濃度のより高い親水性標的化部分が表面上で曝露され、濃度のより高い疎水性の生体適合性ポリマーが該粒子の内部に存在する。
【0122】
いくつかの実施形態において、該生体適合性ポリマーは疎水性ポリマーである。生体適合性ポリマーの非限定的な例には、ポリ乳酸、ポリグリコリド、および/またはポリ(ラクチド‐コ‐グリコリド)が含まれる。
【0123】
1つの実施形態において、本発明は、1)ポリマーマトリックス、2)粒子の連続的または不連続的なシェルを形成するポリマーマトリックスを囲む、または該マトリックスの中に分散される、両親媒性の化合物または層、3)ステルスポリマー、および4)共有結合的に結合される低分子量PSMAリガンド、を含むナノ粒子を含む。両親媒性層は、該ナノ粒子内への水の浸透を減少させることが可能であり、そのため薬剤の封入効率を高め、薬剤の放出を遅延する。さらに、これらの両親媒性層により保護されたナノ粒子は、封入された薬剤およびポリマーを適切な時間に放出することにより、治療的な利点を提供する。
【0124】
本明細書で使用される「両親媒性」という用語は、分子が極性部位および非極性部位の両方を有する特性を指す。両親媒性化合物は、長い疎水性の尾に結合した極性の頭を有することが多い。いくつかの実施形態において、極性部位は水中で可溶性である一方、非極性部位は水中では不溶性である。また、極性部位は、形式上の正電荷または形式上の負電荷のいずれか一方を有することができる。代替として、極性部位は、形式上の正電荷および形式上の負電荷の両方を有することができ、両性イオンつまり内塩であり得る。本発明の目的のために、両親媒性化合物は、1つまたは複数の、以下のものであり得るが、これらに限定されない:天然由来の脂質、界面活性剤、または親水性および疎水性部分の両方を有する合成化合物。
【0125】
両親媒性化合物の具体例には、0.01〜60(脂質の重量/ポリマーの重量)の間、最も好ましくは0.1〜30(脂質の重量/ポリマーの重量)の間の比率で取り込まれる、1,2‐ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジテトラコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、およびジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC)等のリン脂質が含まれるが、これらに限定されない。使用され得るホスホリン脂質には、ホスファチジン酸、飽和および不飽和脂質の両方を有するホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジル誘導体、カルジオリピン、およびβ‐アシル‐イ‐アルキルホスホリン脂質が含まれるが、これらに限定されない。ホスホリン脂質の例には、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、ジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC)等のホスファチジルコリン、およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、または1‐ヘキサデシル‐2‐パルミトイルグリセロホスホエタノールアミン等のホスファチジルエタノールアミンが含まれるが、これらに限定されない。不斉アシル鎖を有する合成ホスホリン脂質(例えば、6個の炭素から成る1個のアシル鎖、および12個の炭素から成るもう1本のアシル鎖を有する)も使用され得る。
【0126】
ある具体的な実施形態において、両親媒性層を形成するために使用され得る両親媒性成分はレシチンであり、具体的には、ホスファチジルコリンである。レシチンは両親媒性の脂質であり、そのため、水性であることが多いホスホリン脂質の二重層の周囲に面する親水性(極性)の頭と、向かい合う疎水性の尾と、を有するホスホリン脂質の二重層を形成する。レシチンは、例えば、大豆から入手可能な天然の脂質であり、他の送達デバイスにおける使用のためのFDA承認を既に得ているという利点がある。さらに、レシチン等の脂質の混合物は、単一の純粋な脂質よりも有利である。
【0127】
本発明の特定の実施形態において、該ナノ粒子の両親媒性層、例えば、レシチンの層は単層であり、つまり該層は、ホスホリン脂質の二重層ではなく、該ナノ粒子の周りまたはナノ粒子の中の、単一の連続的もしくは不連続的な層として存在するということを意味する。該両親媒性層は、本発明のナノ粒子と「会合される」、つまり、例えば、ポリマーのシェルの外側を囲んで、または該ナノ粒子を構成するポリマーの中に分散されて、ポリマーマトリックスにある程度近接して配置されることを意味する。
【0128】
したがって、1つの実施形態において、本発明は、1)PLGA、2)PEG、3)粒子の連続的または不連続的なシェルを形成するPLGA/PEGマトリックスを囲む、または該マトリックスの中に分散される、両親媒性の化合物または層(例えば、レシチン)、および4)共有結合的に結合される低分子量PSMAリガンド、を含む標的特異的ナノ粒子を提供する。1つの実施形態において、PLGAおよびPEGはコポリマーであり、該低分子量PSMAリガンドはPEGに共有結合的に結合される。別の実施形態において、該PEGは、PLGAと自己組織化するDSPEに結合されて、該低分子量PSMAリガンドはPEGに共有結合的に結合される。別の実施形態において、両親媒性化合物対ポリマーの重量の比率は、14:1〜34:1の間である。
【0129】
別の実施形態において、本発明は、1)生分解性ポリマーを含むポリマーマトリックス、2)粒子の連続的または不連続的なシェルを形成するポリマーマトリックスを囲む、または該マトリックスの中に分散される、両親媒性の化合物または層、3)ステルスポリマー、および4)共有結合的に結合される低分子量PSMAリガンド、を含むナノ粒子を含み、該ナノ粒子の直径は40〜80nmの間であり、両親媒性化合物対ポリマーの重量の比率は14:1〜34:1の間である。別の実施形態において、本発明は、1)生分解性ポリマーを含むポリマーマトリックス、2)レシチン、3)ステルスポリマー、および4)共有結合的に結合される低分子量PSMAリガンド、を含むナノ粒子を含む。別の実施形態において、本発明は、1)生分解性ポリマーを含むポリマーマトリックス、2)レシチン、3)ステルスポリマー、および4)共有結合的に結合される低分子量PSMAリガンド、を含むナノ粒子を含み、該ナノ粒子の直径は40〜80nmの間であり、レシチン対ポリマーの重量の比率は14:1〜34:1の間である。別の実施形態において、本発明は、1)生分解性ポリマーを含むポリマーマトリックス、2)ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、およびホスファチジン酸から選択される2つ以上の両親媒性化合物の混合物、3)ステルスポリマー、および4)共有結合的に結合される低分子量PSMAリガンド、を含むナノ分子を含む。さらなる実施形態において、本発明は、1)生分解性ポリマーを含むポリマーマトリックス、2)ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、およびホスファチジン酸から選択される2つ以上の両親媒性化合物の混合物、3)ステルスポリマー、および4)共有結合的に結合される低分子量PSMAリガンド、を含むナノ粒子を含む。さらなる実施形態において、本発明は、1)生分解性ポリマーを含むポリマーマトリックス、2)粒子の連続的または不連続的なシェルを形成するポリマーマトリックスを囲む、または該マトリックスの中に分散される、両親媒性の化合物または層、3)ポリエチレングリコール、および4)共有結合的に結合される低分子量PSMAリガンド、を含むナノ粒子を含む。別の実施形態において、本発明は、1)生分解性ポリマーを含むポリマーマトリックス、2)レシチン、3)ポリエチレングリコール、および4)共有結合的に結合される低分子量PSMAリガンド、を含むナノ粒子を含む。別の実施形態において、本発明は、1)生分解性ポリマーを含むポリマーマトリックス、2)ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、およびホスファチジン酸から選択される2つ以上の両親媒性化合物の混合物、3)ポリエチレングリコール、および4)共有結合的に結合される低分子量PSMAリガンド、を含むナノ粒子を含む。1つの実施形態において、本発明は、1)生分解性ポリマーを含むポリマーマトリックス、2)レシチン、3)ポリエチレングリコール、および4)共有結合的に結合される低分子量PSMAリガンド、を含むナノ粒子を含み、該ナノ粒子の直径は40〜80nmの間であり、レシチン対ポリマーの重量の比率は14:1〜34:1の間である。特定の実施形態において、該生分解性ポリマーはPLGAである。他の実施形態において、該ステルスポリマーはPEGである。
【0130】
治療剤
本発明によると、例えば、治療剤(例えば、抗癌剤)、診断薬(例えば、造影剤、放射性核種、ならびに蛍光、発光、および磁性部分)、予防薬(例えば、ワクチン)、および/または栄養補助剤(例えば、ビタミン、ミネラル等)を含む、任意の薬剤(「ペイロード」)が、本発明のナノ粒子によって送達され得る。本発明によって送達される例示的な薬剤には、小分子(例えば、細胞毒性薬)、核酸(例えば、siRNA、RNAi、およびマイクロRNA薬)、タンパク質(例えば、抗体)、ペプチド、脂質、炭水化物、ホルモン、金属、放射性元素および化合物、薬剤、ワクチン、免疫学的薬剤等、および/またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、該送達される薬剤は、癌(例えば、前立腺癌)の治療に有用な薬剤である。
【0131】
例えば、標的化部分は、対象の特定の部位を標的化すること、または該粒子を該部位に局在化させることができ、該ペイロードがそれらの部位に送達され得る。ある具体的な実施形態において、該薬剤または他のペイロードは、該粒子から徐放様式で放出され得、特定の標的部位(例えば、腫瘍)と局所的に相互作用することができる。本明細書で使用される(例えば、「徐放システム」という文脈において)「徐放」という用語(および該用語の変形)は、一般的に、選択された部位での、または制御可能な速度、間隔、および/もしくは量での物質(例えば、薬剤)の放出を包含することを意味する。徐放は、実質的に持続的な送達、パターン化された送達(例えば、定期的または不定期的な時間の間隔で中断される、一定期間にわたる断続的な送達)、および選択された物質のボーラスの送達(例えば、比較的短時間(例えば、数秒間または数分間)の場合は、所定の個別の量として)を包含するが、必ずしもこれらに限定されない。
【0132】
例えば、標的化部位は、用いられる標的化部分に依存して、対象の身体の腫瘍、患部、組織、器官、細胞型等に該粒子を局在化させることができる。例えば、低分子量PSMAリガンドは、前立腺癌細胞に局在化され得る。対象はヒトまたは非ヒト動物であり得る。対象の例には、イヌ、ネコ、ウマ、ロバ、ウサギ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、モルモット、ハムスター、霊長類、ヒト等の動物が含まれるが、これらに限定されない。
【0133】
一セットの実施形態において、該ペイロードは、薬剤または2つ以上の薬剤の組み合わせである。かかる粒子は、例えば、標的化部分が、薬剤を含有する粒子を患者の特定の局在的な位置に誘導するため、例えば、薬剤の局所的送達を可能にするために用いられ得る実施形態において、有用である可能性がある。例示的な治療剤には、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ゲムシタビン(ジェムザール)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5‐フルオロウラシル(5‐FU)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT‐11、10‐ヒドロキシ‐7‐エチルカンプトテシン(SN38)、ダカルバジン、S‐Iカペシタビン、フトラフール、5’‐デオキシフルオロウリジン、UFT、エニルウラシル、デオキシシチジン、5‐アザシトシン、5‐アザデオキシシトシン、アロプリノール、2‐クロロアデノシン、トリメトレキサート、アミノプテリン、メチレン‐10‐デアザアミノプテリン(MDAM)、オキサリプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、サトラプラチン、白金‐DACH、オルマプラチン、CI‐973、JM‐216、およびその類似体、エピルビシン、エトポシドホスフェート、9‐アミノカンプトテシン、10,11‐メチレンジオキシカンプトテシン、カレニテシン、9‐ニトロカンプトテシン、TAS103、ビンデシン、L‐フェニルアラニンマスタード、イホスファミドメホスファミド(ifosphamidemefosphamide)、ペルホスファミド、トロホスファミドカルムスチン、セムスチン、エポチロンA‐E、トムデックス、6‐メルカプトプリン、6‐チオグアニン、アムサクリン、エトポシドホスフェート、カレニテシン、アシクロビル、バルアシクロビル、ガンシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、ラミブジン、ジドブジン、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、5‐フルオロウラシル、およびそれらの組み合わせ等の化学療法剤が含まれる。
【0134】
潜在的に好適である薬剤の非限定的な例には、例えば、ドセタキセル、ミトキサントロン、および塩酸ミトキサントロンを含む抗癌剤を含む。別の実施形態において、該ペイロードは、20‐エピ‐1、25‐ジヒドロキシビタミンD3、4‐イポメアノール、5‐エチニルウラシル、9‐ジヒドロタキソール、アビラテロン、アシビシン、アクラルビシン、塩酸アコダゾール、アクロニン、アシルフルベン、アデシペノール、アドゼレシン、アルデスロイキン、全tk拮抗薬、アルトレタミン、アンバムスチン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミドックス、アミフォスチン、アミノグルテチミド、アミノレブリン酸、アンルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンドログラホリド、血管新生阻害剤、拮抗薬D、拮抗薬G、アントラレリックス、アントラマイシン、抗背側化形態形成タンパク質‐1、抗エストロゲン、抗新生物薬、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アフィディコリングリシン酸塩、アポトーシス遺伝子調節因子、アポトーシス調節因子、アプリン酸、ARA‐CDP‐DL‐PTBA、アルギニンデアミナーゼ、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アスラクリン、アタメスタン、アトリムスチン、アキシナスタチン1、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザシチジン、アザステロン、アザトキシン、アザチロシン、アゼテパ、アゾトマイシン、バッカチンIII誘導体、バラノール、バチマスタット、ベンゾクロリン、ベンゾデパ、ベンゾイルスタウロスポリン、βラクタム誘導体、βアレチン、βアクラマイB、ベツリン酸、BFGF阻害剤、ビカルタミド、ビスアントレン、塩酸ビスアントレン、ビスアジリジニルスペルミン、ビスナフィド、ビスナフィドジメシラート、ビストラテンA、ビゼルシン、ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、BRC/ABL拮抗薬、ブレフラート、ブレキナールナトリウム、ブロピリミン、ブドチタン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、カクチノマイシン、カルシポトリオール、カルホスチンC、カルステロン、カンプトテシン誘導体、カナリポックスIL‐2、カペシタビン、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルボキサミド‐アミノ‐トリアゾール、カルボキシアミドトリアゾール、CaRest M3、カルムスチン、CARN 700、軟骨由来阻害剤、塩酸カルビシン、カルゼルシン、カゼインキナーゼ阻害剤、カスタノスペルミン、セクロピンB、セデフィンゴール、セトロレリックス、クロラムブシル、クロリン、クロロキノキサリンスルホアミド、シカプロスト、シロレマイシン、シスプラチン、シス‐ポルフィリン、クラドリビン、クロミフェン類似体、クロトリマゾール、コリスマイシンA、コリスマイシンB、コンブレタスタチンA4、コンブレタスタチン類似体、コナゲニン、クランベシジン816、クリスナトール、クリスナトールメシラート、クリプトフィシン8、クリプトフィシンA誘導体、キュラシンA、シクロペントアントラキノン、シクロホスファミド、シクロプラタム、シペマイシン、シタラビン、シタラビンオクホスファート、細胞溶解因子、サイトスタチン、ダカルバジン、ダクリキシマブ、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン、デヒドロジデムニンB、デスロレリン、デキシホスファミド、デキソルマプラチン、デキスラゾキサン、デキスベラパミル、デザグアニン、デザグアニンメシラート、ジアジコン,ジデムニンB、ジドックス、ジエチルノルスペルミン、ジヒドロ‐5‐アザシチジン、ジオキサマイシン、ジフェニルスピロムスチン、ドセタキセル、ドコサノール、ドラステロン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロキシフェン、ドロキシフェンクエン酸、ドロモスタノロンプロピオン酸塩、ドロナビノール、デュアゾマイシン、ズオカルマイシンSA、エブセレン、エコムスチン、エダトレキセート、エデルホシン、エドレコロマブ、エフロミチン(eflomithine)、塩酸エフロミチン、エレメン、エルサミトルシン、エミテフル、エンロプラチン、エンプロメート、エピプロピジン、エピルビシン、塩酸エピルビシン、エプリステリド、エルブロゾール、赤血球遺伝子遺伝子治療ベクター系、塩酸エソルビシン、エストラムスチン、エストラムスチン類似体、エストラムスチンホスフェートナトリウム、エストロゲン作用薬、エストロゲン拮抗薬、エタニダゾール、エトポシド、エトポシドホスフェート、エトプリン、エキセメスタン、ファドロゾール、塩酸ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチン、フィナステリド、フラボピリドール、フレゼラスチン、フロキシウリジン、フルアステロン、フルダラビン、フルダラビンホスフェート、塩酸フルオロダウノルニシン、フルオロウラシル、フルロシタビン、ホルフェニメキス、ホルメスタン、フォスキドン、ホストリエシン、フォストリエシンナトリウム、ホテムスチン、ガドリニウムテキサフィリン、硝酸ガリウム、ガロシタビン、ガニレリックス、ゼラチナーゼ阻害剤、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、グルタチオン阻害剤、ヘプスルファム、ヘルグリン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ヒドロキシウレア、ヒペリシン、イバンドロン酸、イダルビシン、塩酸イダルビシン、イドキシフェン、イドラマントン、イホスファミド、イルモフォシン、イロマスタット、イミダゾアクリドン、イミキモド、免疫賦活ペプチド、インスリン様増殖因子‐1受容体阻害剤、インターフェロン作用薬、インターフェロンα‐2A、インターフェロンα‐2B、インターフェロンα‐Nl、インターフェロンα‐N3、インターフェロンβ‐IA、インターフェロンγ‐IB、インターフェロン、インターロイキン、イオベングアン、ヨードドキソルビシン、イプロプラチン、イリノテカン、塩イリノテカン塩酸塩、イロプラクト、イルソグラジン、イソベンガゾール、イソホモハリコンドリンB、イタセトロン、ジャスプラキノリド、カハラリドF、ラメラリン−N−トリアセテート、ランレオチド、酢酸ランレオチド、レイナマイシン、レノグラスチン、硫酸レンチナン、レプトルスタチン、レトロゾール、白血病阻害因子、白血球αインターフェロン、酢酸ロイプロリド,ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン、ロイプロレリン、レバミソール、リアロゾール、塩酸リアロゾール、直鎖ポリアミン類似体、親油性二糖類ペプチド、親油性白金化合物、リソクリナミド、ロバプラチン、ロンブリシン、ロメトレキソール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、ロニダミン、ロソキサントロン、塩酸ロソキサントロン、ロバスタチン、ロキソリビン、ルルトテカン、ルテチウムテキサフィリン、リソフィリン、溶解性ペプチド、マイタンシン、マンノスタチンA、マリマスタット、マソプロコール、マスピン、マトリリシン阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、マイタンシン、塩酸メクロレタミン、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルバロン、メルカプトプリン、メテレリン、メチオニナーゼ、メトトレキセート、メトトレキセートナトリウム、メトクロプラミド、メトプリン、メツレデパ、微細藻類プロテインキナーゼc阻害剤、MIF阻害剤、ミフェプリストン、ミルテホシン、ミリモスチム、ミスマッチ二本鎖RNA、ミチンドミド、ミトカルシン、ミトクロミン、ミトギリン、ミトグアゾン、ミトラクトール、マイトマルシン、マイトマイシン、マイトマイシン類似体、ミトナフィド、ミトスペル、ミトタン、ミトトキシン繊維芽細胞増殖因子−サポリン、ミトキサントロン、塩酸ミトキサントロン、モファロテン、モルグラモスチン、モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、モノホスホリルリピドA/マイコバクテリア細胞壁SK、モピダモル、多剤耐性遺伝子阻害剤、多発性腫瘍抑制因子1に基づく療法、マスタード抗癌剤、マイカペルオキシドB、マイコバクテリア細胞壁抽出物、ミコフェノール酸、ミリアポロン、n‐アセチルジナリン、ナファレリン、ナグレスチプ、ナロキソン/ペンタゾシン、ナパビン、ナフテルピン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネモルビシン、ネリドロン酸、中性エンドペプチダーゼ、ニルタミド、ニサマイシン、酸化窒素調節物質、窒素酸化物酸化防止剤、ニトルリン、ノコダゾール、ノガラマイシン、n‐置換ベンズアミド、O6‐ベンジルグアニン、オクトレチド、オキセノン、オリゴヌクレオチド、オナプリストン、オンダンセトロン、オラシン、経口サイトカイン誘導物質、オルマプラチン、オサテロン、オキサリプラチン、オキサウノマイシン、オキシスラン、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、パクリタキセル誘導体、パラウアミン、パルミトイルリゾキシン、パミドロン酸、パナキシトリオール、パノミフェン、パラバクチン、パゼリプチン、ペガスパルガーゼ、ペルデシン、ペリオマイシン、ペンタムスチン、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、ペントスタチン、ペントロゾール、硫酸ペプロマイシン、ペルフルブロン、ペルホスファミド、ぺリリルアルコール、フェナジノマイシン、酢酸フェニル、ホスファターゼ阻害剤、ピシバニル、塩酸ピロカルピン、ピポブロマン、ピポスルファン、ピラルビシン、ピリトレキシム、塩酸ピロキサントロン、プラセチンA、プラセチンB、プラスミノーゲン活性化剤阻害剤、白金錯体、白金化合物、白金‐トリアミン錯体、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、プロピルビス−アクリドン、プロスタグランジンJ2、前立腺癌抗アンドロゲン、プロテアソーム阻害剤、タンパク質Aに基づく免疫調節物質、タンパク質キナーゼC阻害剤、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤、ピューロマイシン、塩酸ピューロマイシン、プルプリン、ピラゾフリン、ピラゾロアクリジン、ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン複合体、raf拮抗薬、raf拮抗薬、ラモセトロン、rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、ras阻害剤、RAS‐GAP阻害剤、レテルリプチン脱メチル化、レニウムRe186エチドロネート、リゾキシン、リボプリン、リボザイム、RHレチンアミド、RNAi、ロゲルイミド、ロヒツキン、ロムルチド、ロキニメックス、ルビギノンBl、ルボキシル、サフィンゴール、塩酸サフィンゴール、サイントピン、SarCNU、サルコフィトールA、サルグラモスチン、Sdi1模倣物、セムスチン、セネセンス由来阻害剤1、センスオリゴヌクレオチド、シグナル伝達阻害剤、シグナル伝達調節物質、シムトラゼン、単鎖抗原結合タンパク質、シゾフィラン、ソブゾキサン、ナトリウムボロカプテート、フェニル酢酸ナトリウム、ソルベロール、ソマトメジン結合タンパク質、ソネルミン、スパルフォセートナトリウム、スパルフォシン酸、スパルソマイシン、スピカマイシンD、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン、スピロプラチン、スプレノペンチン、スポンジスタン1、スクアラミン、幹細胞阻害剤、幹細胞分裂阻害剤、スチピアミド、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ストロメライシン阻害剤、スルフィノシン、スロフェヌル、超活性血管作用腸管ペプチド拮抗薬、スラディスタ、スラミン、スエインソニン、合成グリコサミノグリカン、タリソマイシン、タリムスチン、タモキシフェンメチオジド、タウロムスチン、
タザロテン、テコガランナトリウム、テガフール、テルラピリリウム、テロメラーゼ阻害剤、塩酸テロキサントロン、テモポルフィン、テモゾロマイド、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、テトラクロロデカオキシド、テトラゾミン、タリブラスチン、サリドマイド、チアミプリン、チオコラリン、チオグアニン、チオテパ、トロンボポエチン、トロンボポエチン模倣体、サイマルファシン、サイモポエチン受容体作用薬、チモトリナン、甲状腺刺激ホルモン、チアゾフリン、スズエチルエチオプルプリン、チラパザミン、チタノセンジクロリド、塩酸トポテカン、トプセンチン、トレミフェン、クエン酸トレミフェン、全能性幹細胞因子、翻訳阻害剤、酢酸トレストロン、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン、トリシリビンホスフェート、トリメトレキサート、グルクロン酸トリメトレキサート、トリプトレリン、トロピセトロン、塩酸ツブロゾール、ツロステリド、チロシンキナーゼ阻害剤、チルホスチン、UBC阻害剤、ウベニメックス、ウラシルマスタード、ウレデパ,尿生殖洞由来成長阻害剤因子、ウロキナーゼ受容体拮抗薬、バプレオチド、バリオリンB、ベラレソール、ベラミン、ベルジン、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネピジン、硫酸ビングリシネート、硫酸ビンロイロシン、ビノレルビン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、ビンキサルチン、硫酸ビンゾリジン、ビタキシン、ボロゾール、ザノテロン、ゼニプラチン、ジラスコルブ、ジノスタチン、ジノスタチンスチマラマー、または塩酸ゾルビシン等の抗癌剤であり得る。
【0135】
本発明の複合体がいったん調製されると、本発明の別の態様にしたがって、それらを薬学的に許容される担体と組み合わせて医薬組成物を形成することができる。当業者に理解されるように、該担体は、下記に記載する投与経路、標的組織の場所、送達される薬剤、薬剤の送達の時間的経過等に基づいて選択され得る。
【0136】
1つの実施形態において、本発明のナノ粒子は、siRNA等の核酸を含有する。
【0137】
好ましくは、siRNA分子は、約10〜50またはそれ以上のヌクレオチドの長さを有する。より好ましくは、siRNA分子は、約15〜45ヌクレオチドの長さを有する。さらにより好ましくは、siRNA分子は、約19〜40ヌクレオチドの長さを有する。さらにより好ましくは、siRNA分子は、約21〜23ヌクレオチドの長さを有する。
【0138】
本発明のsiRNAは、好ましくは標的mRNAに対してRNAiを媒介する。該siRNA分子は、それぞれの残基が標的分子中の残基に相補的となるように設計することができる。代替として、安定性を増加させるため、および/または上記分子の処理活性を高めるために、該分子内で1つもしくは複数の置換を行うことができる。置換は、鎖内で行われ得るか、または鎖の末端の残基で行われ得る。
【0139】
siRNAに誘導される標的mRNAの切断反応は、配列特異的である。概して、標的分子の一部分と同一であるヌクレオチド配列を含有するsiRNAが、阻害のために好ましい。しかしながら、本発明を実践するために、siRNAと標的遺伝子の間に100%の配列同一性は必要とされない。遺伝子の突然変異、種の多型、または進化的分岐のために予想される可能性があるものを含めて、配列の変形が容認され得る。例えば、標的配列に対する挿入、欠失、および単一点突然変異を有するsiRNA配列も、阻害に効果的であることが明らかになっている。代替として、ヌクレオチド類似体の置換または挿入を有するsiRNAが、阻害に効果的であり得る。
【0140】
さらに、siRNAの全ての位置が、標的の認識に等しく貢献するわけではない。siRNA中心におけるミスマッチは、最も重要な意味を持ち、標的RNAの切断を本質的に無効にする。対照的に、siRNAの3’ヌクレオチドは、標的認識の特異性には有意に寄与しない。一般的に、標的RNAに相補的なsiRNA配列の3’末端の残基(例えば、ガイド配列)は、標的RNA切断に対して重要な意味は持たない。
【0141】
配列同一性は、当該技術分野で周知である配列比較およびアラインメントアルゴリズムを用いて、容易に決定することができる。2つの核酸配列(または2つのアミノ酸配列)のパーセント同一性を決定するために、配列を最適な比較目的のために整列させる(例えば、最適な配列のために、ギャップが第1の配列または第2の配列に導入され得る)。次いで、対応するヌクレオチド(またはアミノ酸)の位置にあるヌクレオチド(またはアミノ酸配列)を比較する。第1の配列の位置が、第2の配列の対応する位置と同じ残基によって占められる場合、該分子はその位置において同一である。2つの配列の間のパーセント同一性は、配列によって共有される同一の位置の数の関数(すなわち、%同一性=同一の位置の数/全体の位置の数×100)であり、導入されたギャップの数および/または導入されたギャップの長さに対するスコアを、随意に不利にする。
【0142】
2つの配列の間での配列の比較およびパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。1つの実施形態において、配列の特定の部分にわたって作成さたアラインメントは、十分な同一性を有する配列によく整列するが、低度の同一性を有する部位(すなわち、局所的アラインメント)にはよく整列しない。配列の比較のために利用される局所的なアラインメントアルゴリズムの、好ましい非限定的な例は、Karlin and Altschul (1993) Proc. NatL Acad. Sci. USA 90:5873のように修飾されるKarlin and Altschul (1990) Proc. NatL Acad Sci. USA 87:2264‐68のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、Altschul, et αl. (1990) J MoI Biol. 215:403‐10のBLASTプログラム(バージョン2.0)に援用される。
【0143】
別の実施形態において、適切なギャップを導入することにより該アラインメントを最適化し、整列させた配列(すなわち、ギャップのあるアラインメント)の全長にわたってパーセント同一性を決定する。比較目的のためのギャップ付きアラインメントを得るために、Altschul et αl., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389に記載されるようにGapped BLASTを利用することができる。別の実施形態において、適切なギャップを導入することにより該アラインメントを最適化し、整列させた配列(すなわち、全体的なアラインメント)の全長にわたってパーセント同一性を決定する。配列の全体的な比較のために利用される数学的アルゴリズムの、好ましい、非限定的な例は、Myers and Miller, CABIOS (1989)のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、GCC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部である、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。アミノ酸配列の比較のためにALIGNプログラムを利用するとき、PAM120重量残基テーブル、12のギャップ長ペナルティー、および4のギャップペナルティーを用いることができる。
【0144】
該siRNAと標的mRNAの部分との間の、90%を上回る配列同一性、例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはさらには100%の配列同一性が好ましい。代替として、該siRNAは、mRNA転写物のある部位とハイブリダイズ(例えば、400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50℃または70℃で12〜16時間ハイブリダイゼーション、その後に洗浄)することができるヌクレオチド配列(またはオリゴヌクレオチド配列)として、機能的に定義され得る。さらなるハイブリダイゼーション条件には、1×SSC中70℃もしくは1×SSC中50℃で、50%ホルムアミド、次いで0.3×SSC中70℃で洗浄するハイブリダイゼーション、または4×SSC中70℃もしくは4×SSC中50℃で、50%ホルムアミド、次いで1×SSC中67℃で洗浄するハイブリダイゼーションを含む。50塩基対未満の長さとなることが予想されるハイブリッドのためのハイブリダイゼーション温度は、該ハイブリッドの融点(Tm)よりも5〜10℃低くあるべきで、Tmは以下の等式にしたがって決定される。長さ18塩基対未満のハイブリッドは、Tm(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)。18〜49塩基対の長さのハイブリッドは、Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−(600/N)であって、式中、Nは該ハイブリッドの塩基の数であり、[Na+]はハイブリダイゼーション緩衝液のナトリウムイオンの濃度(1×SSC=0.615Mに対する[Na+])である。ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションのためのストリンジェンシー条件のさらなる例は、Sambrook, J., E.F. Fritsch, and T. Maniatis, 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, chapters 9 and 11, and Current Protocols in Molecular Biology, 1995, F.M. Ausubel et ciL, eds., John Wiley & Sons, Inc., sections 2.10 and 6.3‐6.4に提供され、参照により本明細書に援用される。同一ヌクレオチド配列の長さは、少なくとも約10、12、15、17、20、22、25、27、30、32、35、37、40、42、45、47もしくは50塩基であり得るか、またはそれとほぼ等しくあり得る。
【0145】
1つの実施形態において、本発明のsiRNA分子は、細胞培養のための血清または増殖培地中での安定性を向上するために修飾される。該安定性を高めるために、3’残基を分解に対して安定化することができ、例えば、それらをプリンヌクレオチド、特にアデノシンまたはグアノシンヌクレオチドを含むように、選択することができる。代替として、修飾類似体によるピリジンヌクレオチドの置換、例えば、2’デオキシチミジンによるウリジンの置換は容認され、RNA干渉の効率に影響しない。例えば、2’ヒドロキシルの不在は、組織培養培地におけるsiRNAのヌクレアーゼ耐性を有意に高める可能性がある。
【0146】
本発明の別の実施形態において、該siRNA分子は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド類似体を含有し得る。該ヌクレオチド類似体は、標的特異的な活性、例えば該RNAi介在性活性が実質的に生じない位置、例えば、RNA分子の5’末端および/または3’末端の領域に配置され得る。特に、末端は修飾ヌクレオチド類似体を組み込むことにより安定化することができる。
【0147】
ヌクレオチド類似体は、糖および/または骨格修飾リボヌクレオチドを含む(すなわち、リン酸塩‐糖骨格の修飾を含む)。例えば、少なくとも1つの窒素または硫黄のヘテロ原子を含むように、天然RNAのホスホジエステル結合が修飾され得る。好ましい骨格修飾リボヌクレオチドにおいて、隣接するリボヌクレオチドに接続するリン酸エステル基は、例えば、ホスホチオアート基の修飾基で置換され得る。好ましい糖修飾リボヌクレオチドにおいて、2’OH基は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH、NHR、NR、またはNOから選択される基で置換され、式中、RはC1‐C6アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、ハロはF、Cl、BrまたはIである。
【0148】
ヌクレオチド類似体は、核酸塩基修飾リボヌクレオチド、すなわち、天然に生じる核酸塩基の代わりに少なくとも1つの非天然に生じる核酸塩基を含有するリボヌクレオチドも含む。塩基は、アデノシンデアミナーゼの活性をブロックするように、修飾することができる。例示的な修飾核酸塩基は、以下のものに限定されないが、5位で修飾したウリジンおよび/またはシチジン(例えば、5‐(2‐アミノ)プロピルウリジン、5‐ブロモウリジン)、8位で修飾したアデノシンおよび/またはグアノシン(例えば、8‐ブロモグアノシン)、デアザヌクレオチド(例えば、7−デアザ−アデノシン)、O−およびN−アルキル化ヌクレオチド(例えば、N6−メチルアデノシン)を含み、好適である。上記修飾は、組み合わされてもよいことに留意されたい。
【0149】
RNAは、酵素的に、または部分的/全体的な有機合成によって生成することができ、任意の修飾リボヌクレオチドを、生体外の酵素的または有機的な合成によって導入することができる。1つの実施形態において、siRNAは化学的に調製される。RNA分子を合成する方法、具体的には、Verina and Eckstein (1998), Annul Rev. Biochem. 67:99に記載される。化学的な合成方法は、当該技術分野で既知である。別の実施形態において、siRNAは酵素的に調製される。例えば、siRNAは、所望の標的mRNAに対する十分な相補性を有する、長い、二本鎖RNAの酵素的処理によって調製することができる。長いRNAの処理は、例えば、適切な細胞ライセートを用いて、生体外で達成することができ、次いで、siRNAをゲル電気泳動またはゲル濾過によって精製することができる。その後、当該技術分野で認識される方法にしたがって、siRNAを変性させることができる。例示的な実施形態において、siRNAは、溶媒または樹脂を用いた抽出、沈殿、電気泳動、クロマトグラフィー、またはそれらの組み合わせによって、混合物から精製することができる。代替として、サンプル処理による損失を避けるために、該siRNAを精製せずに、または最小限の精製によって使用することもできる。
【0150】
代替として、該siRNAは、合成DNAテンプレートから、または組換え細菌から単離したDNAプラスミドから、酵素による転写によって調製することもできる。典型的には、例えばT7、T3またはSP6 RNAポリメラーゼ等の、ファージRNAポリメラーゼが用いられる(Milligan and Uhlenbeck (1989) Methods EnzynioL 180:51‐62)。該RNAは、乾燥して保存することも、または水溶液に溶解することもできる。該溶液は、アニーリングを阻害するため、および/または二本鎖の安定性を促進するために、緩衝剤もしくは塩を含有し得る。
【0151】
Ambion, Inc.(Austin, TX)およびWhitehead Institute of Biomedical Research at MIT (Cambridge, MA)から市販されるような設計ツールおよびキットにより、siRNAの設計および生成が可能になる。例として、所望のmRNA配列は、センスおよびアンチセンスの標的鎖の配列を生成する配列プログラムに入力することができる。次いで、これらの配列を、センスおよびアンチセンスのsiRNAオリゴヌクレオチドテンプレートを決定するプログラムに入力することができる。該プログラムは、例えば、ヘアピンの挿入またはTlプロモータープライマーの配列を追加するために使用することもできる。キットは、その後でsiRNA発現カセットを構築するために使用することもできる。
【0152】
様々な実施形態において、siRNAは、生体内、その場、および生体外で合成される。細胞の内因性RNAポリメラーゼが生体内もしくはその場で転写を媒介することができるか、またはクローン化RNAポリメラーゼが、生体内もしくは生体外での転写のために使用され得る。生体内の導入遺伝子または発現コンストラクトからの転写には、調節領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、スプライスドナーおよびアクセプター、ポリアデニル化)が、該siRNAを転写するために使用され得る。阻害は、器官、組織、または細胞型における特異的転写、環境的条件の刺激(例えば、感染、ストレス、温度、化学的誘導因子)、および/または発達段階つまり発達年齢で転写を操作することによって標的化され得る。組換えコンストラクトからsiRNAを発現するトランスジェニック生物は、接合子、胚幹細胞、または適切な生物に由来する別の多能性細胞に該コンストラクトを導入することによって、生成することができる。
【0153】
1つの実施形態において、本発明の標的mRNAは、細胞性タンパク質(例えば、核酸、細胞質、膜貫通、または膜結合タンパク質)等の、少なくとも1つのタンパク質のアミノ酸配列を特定する。別の実施形態において、本発明の標的mRNAは、細胞外タンパク質(例えば、細胞外基質タンパク質または分泌タンパク質)のアミノ酸配列を特定する。本明細書で使用されるタンパク質の「アミノ酸配列を特定する」という語句は、mRNA配列が、遺伝暗号の規則にしたがってアミノ酸配列に翻訳されることを意味する。以下のクラスのタンパク質を、例示目的で列挙する:成長タンパク質(例えば、接着分子、サイクリンキナーゼ阻害剤、Wntファミリーメンバー、Paxファミリーメンバー、Wingedらせんファミリーメンバー、Hoxファミリーメンバー、サイトカイン/リンホカインおよびそれらの受容体、増殖因子/分化因子およびそれらの受容体、神経伝達物質およびその受容体)、癌遺伝子をコードするタンパク質(例えば、ABLI、BCLI、BCL2、BCL6、CBFA2.CBL、CSFIR、ERBA、ERBB、EBRB2、ERBB2、ERBB3、ETSI、ETSI、ETV6、FGR、FOS、FYN、HCR、HRAS、JUN、KRAS、LCK、LYN、MDM2、MLL、MYB、MYC、MYCLI、MYCN、NRAS、PIM 1、PML、RET、SRC、TALI、TCL3、およびYES)、腫瘍抑制タンパク質(例えば、APC、BRCA1、BRCA2、MADH4、MCC、NF1、NF2、RB1、TP53、およびWTI)、および酵素(例えば、ACCシンターゼおよびオキシダーゼ、ACPデサチュラーゼおよびヒドロキシラーゼ、ADPグルコースピロホスホリラーゼ(glucose pyrophorylases)、アセチラーゼおよびデアセチラーゼ、ATPアーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、カルコンシンターゼ、キチナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、デカルボキシラーゼ、デキストリナーゼ、DNAおよびRNAポリメラーゼ、ガラクトシダーゼ、グルカナーゼ、グルコースオキシダーゼ、顆粒結合デンプンシンターゼ、GTPアーゼ、ヘリカーゼ、ヘミセルラーゼ(hernicellulases)、インテグラーゼ、イヌリナーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、リポオキシゲナーゼ、リゾチーム、ノパリンシンターゼ、オクトピン・シンターゼ、ペクチンエステラーゼ、ペルオキシダーゼ、ホスファターゼ、ホスホリパーゼ、ホスホリラーゼ、フィターゼ、植物成長調節因子シンターゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテイナーゼおよびペプチダーゼ、プラナーゼ、レコンビナーゼ、逆転写酵素、RUBISCO、トポイソメラーゼ、およびキシラナーゼ)、細胞増殖(血管新生を含む)または細胞表面受容体およびリガンドを含む転移活性もしくは潜在性に関与するタンパク質、ならびに分泌タンパク質、細胞周期調節、遺伝子調節、およびアポトーシス調節タンパク質、免疫応答、炎症、補体、もしくは凝固調節タンパク質。
【0154】
本明細書で使用される「癌遺伝子」という用語は、細胞増殖を刺激する遺伝子を指し、細胞におけるその発現レベルが減少すると、細胞増殖の速度が減少するか、または該細胞が静止状態になる。本発明の文脈において、癌遺伝子は、細胞内タンパク質、ならびに自己分泌またはパラ分泌機能によって細胞増殖を刺激することができる、細胞外増殖因子を含む。siRNAおよびモルホリノのコンストラクトを設計することができるヒト癌遺伝子の例には、c‐myc、c‐myb、mdm2、PKA‐I(I型タンパク質キナーゼA)、AbI‐I、Bcl2、Ras、c‐Rafキナーゼ、CDC25ホスファターゼ、サイクリン、サイクリン依存性キナーゼ(cdks)、テロメラーゼ、PDGF/sis、erb‐B、fos、jun、mos、およびsrcであるが、これはほんの数例である。本発明の文脈において、癌遺伝子は、染色体転座によって生じる融合遺伝子、例えば、Bcr/Abl融合癌遺伝子も含む。
【0155】
さらなるタンパク質には、サイクリン依存性キナーゼ、c‐myb、c‐myc、増殖性細胞核抗原(PCNA)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF‐beta)、転写因子である核内因子κB(NF‐κB)、E2F、HER‐2/neu、PKA、TGF‐α、EGFR、TGF‐β、IGFIR、P12、MDM2、BRCA、Bcl‐2、VEGF、MDR、フェリチン、トランスフェリン受容体、IRE、C‐fos、HSP27、C‐raf、およびメタロチオネイン遺伝子を含む。
【0156】
本明細書において用いられるsiRNAは、1つもしくは複数のタンパク質の合成を対象とすることができる。追加または代替として、例えば、複製siRNAまたは同じ標的タンパク質に対する重複もしくは非重複標的配列に対応するsiRNAのような、1つのタンパク質に対して2つ以上のsiRNAが存在し得る。したがって、1つの実施形態において、同じ標的mRNAに対して2つ、3つ、4つ、または任意の複数のsiRNAを本発明のナノ粒子に含めることができる。また、数個のタンパク質に対して数個のsiRNAを用いることができる。代替として、該siRNAは、タンパク質をコードしない構造RNA分子または調節RNA分子を対象とすることができる。
【0157】
本発明の好ましい態様において、本発明の標的mRNA分子は、病的症状と関連するタンパク質のアミノ酸配列を特定する。例えば、該タンパク質は、病原体関連タンパク質(例えば、宿主の免疫応答もしくは免疫回避(immunoavoidance)、病原体の伝播、または感染維持に関与するウイルスタンパク質)、あるいは病原体の宿主への進入、病原体もしくは宿主による薬剤代謝、病原体ゲノムの複製もしくは組み込み、宿主における感染の確立もしくは伝播、または次世代の病原体の組み立てを促進する宿主タンパク質であり得る。代替として、該タンパク質は、腫瘍関連タンパク質または自己免疫疾患関連タンパク質であり得る。
【0158】
1つの実施形態において、本発明の標的mRNA分子は、内因性タンパク質(すなわち、細胞または生物のゲノム中に存在するタンパク質)のアミノ酸配列を特定する。別の実施形態において、本発明の標的mRNA分子は、組換え細胞または遺伝子改変生物中に発現する異種タンパク質のアミノ酸配列を特定する。別の実施形態において、本発明の標的mRNA分子は、導入遺伝子(すなわち、細胞のゲノム中の異所性部位で挿入された遺伝子コンストラクト)にコードされるタンパク質のアミノ酸配列を特定する。さらに別の実施形態において、本発明の標的mRNA分子は、細胞が病原体ゲノムに由来する細胞または生物を感染させる能力を持つ病原体ゲノムにコードされるタンパク質のアミノ酸配列を特定する。
【0159】
かかるタンパク質の発現を阻害することにより、上記タンパク質の機能に関する貴重な情報、および上記阻害から得ることができる治療効果を得ることが可能となる。
【0160】
1つの実施形態において、本発明のナノ粒子は、PDGF‐β遺伝子、Erb‐B遺伝子、Src遺伝子、CRK遺伝子、GRB2遺伝子、RAS遺伝子、MEKK遺伝子、INK遺伝子、RAF遺伝子、Erkl/2遺伝子、PCNA(p21)遺伝子、MYB遺伝子、JIJN遺伝子、FOS遺伝子、BCL‐2遺伝子、サイクリンD遺伝子、VEGF遺伝子、EGFR遺伝子、サイクリンA遺伝子、サイクリンE遺伝子、WNT‐I遺伝子、β‐カテニン遺伝子、c‐MET遺伝子、PKC遺伝子、Skp2遺伝子、キネシンスピンドルタンパク質遺伝子、Bcr‐Abl遺伝子、Stat3遺伝子、cSrc遺伝子、PKC遺伝子、Bax遺伝子、Bcl‐2遺伝子、EGFR遺伝子、VEGF遺伝子、myc遺伝子、NFKB遺伝子、STAT3遺伝子、スルビビン遺伝子、Her2/Neu遺伝子、トポイソメラーゼI遺伝子、PLK1遺伝子、タンパク質キナーゼ3遺伝子、CD31遺伝子、IGF‐1遺伝子、トポイソメラーゼIIα遺伝子、p73遺伝子の変異、p21(WAF1/CIP1)遺伝子の変異、p27(KIP1)遺伝子の変異、PPM1D遺伝子の変異、RAS遺伝子の変異、カベオリンI遺伝子の変異、MIB‐I遺伝子の変異、MTAI遺伝子の変異、M68遺伝子の変異、腫瘍抑制遺伝子の変異、p53腫瘍抑制遺伝子の変異、p53ファミリーメンバーDN‐p63の変異、pRb腫瘍抑制遺伝子の変異、APC1腫瘍抑制遺伝子の変異、BRCA1腫瘍抑制遺伝子の変異、PTEN腫瘍抑制遺伝子の変異、mLL融合遺伝子、BCRIABL融合遺伝子、TEL/AML1融合遺伝子、EWS/FLI1融合遺伝子、TLS/FUS1融合遺伝子、PAX3/FKHR融合遺伝子、AML1/ETO融合遺伝子、αv‐インテグリン遺伝子、Fit‐i受容体遺伝子、チューブリン遺伝子、ヒトパピローマウイルス遺伝子、ヒトパピローマウイルスの複製に必要とされる遺伝子、ヒト免疫不全ウイルス遺伝子、ヒト免疫不全ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、A型肝炎ウイルス遺伝子、A型肝炎ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、B型肝炎ウイルス遺伝子、B型肝炎ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、C型肝炎ウイルス遺伝子、C型肝炎ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、D型肝炎ウイルス遺伝子、D型肝炎ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、E型肝炎ウイルス遺伝子、E型肝炎ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、F型肝炎ウイルス遺伝子、F型肝炎ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、G型肝炎ウイルス遺伝子、G型肝炎ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、H型肝炎ウイルス遺伝子、H型肝炎ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、呼吸器合胞体ウイルス遺伝子、呼吸器合胞体ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、単純ヘルペスウイルス遺伝子、単純ヘルペスウイルスの複製に必要とされる遺伝子、ヘルペスサイトメガロウイルス遺伝子、ヘルペスサイトメガロウイルスの複製に必要とされる遺伝子、エプスタインバー(ヘルペス)ウイルス遺伝子、エプスタインバー(ヘルペス)ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス遺伝子、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスの複製に必要とされる遺伝子、JCウイルス遺伝子、JCウイルスの複製に必要とされるヒト遺伝子、ミクソウイルス遺伝子、ミクソウイルス遺伝子の複製に必要とされる遺伝子、ライノウイルス遺伝子、ライノウイルス遺伝子の複製に必要とされる遺伝子、コロナウイルス遺伝子、コロナウイルスの複製に必要とされる遺伝子、西ナイルウイルス遺伝子、西ナイルウイルスの複製に必要とされる遺伝子、セントルイス脳炎遺伝子、セントルイス脳炎の複製に必要とされる遺伝子、ダニ媒介性脳炎ウイルス遺伝子、ダニ媒介性脳炎ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、マリーバレー脳炎ウイルス遺伝子、マリーバレー脳炎ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、デング熱ウイルス遺伝子、デング熱ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、シミアンウイルス40遺伝子、シミアンウイルス40の複製に必要とされる遺伝子、ヒトT細胞白血病ウイルス遺伝子、ヒトT細胞白血病ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、モロニーマウス白血病ウイルス遺伝子、モロニーマウス白血病ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、脳心筋炎ウイルス遺伝子、脳心筋炎ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、麻疹ウイルス遺伝子、麻疹ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、水痘帯状疱疹ウイルス遺伝子、水痘帯状疱疹ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、アデノウイルス遺伝子、アデノウイルスの複製に必要とされる遺伝子、黄熱病ウイルス遺伝子、黄熱病ウイルスの複製に必要とされる遺伝子、ポリオウイルス遺伝子、ポリオウイルスの複製に必要とされる遺伝子、ポックスウイルス遺伝子、ポックスウイルスの複製に必要とされる遺伝子、マラリア原虫遺伝子、マラリア原虫遺伝子の複製に必要とされる遺伝子、マイコバクテリウムアルセランス遺伝子、マイコバクテリウム・アルセランスの複製に必要とされる遺伝子、結核菌遺伝子、結核菌の複製に必要とされる遺伝子、ライ菌遺伝子、ライ菌の複製に必要とされる‐185‐遺伝子、黄色ブドウ球菌遺伝子、黄色ブドウ球菌の複製に必要とされる遺伝子、肺炎連鎖球菌遺伝子、肺炎連鎖球菌の複製に必要とされる遺伝子、化膿連鎖球菌遺伝子、化膿連鎖球菌の複製に必要とされる遺伝子、クラミジア肺炎病原体遺伝子、クラミジア肺炎病原体の複製に必要とされる遺伝子、肺炎マイコプラズマ遺伝子、肺炎マイコプラズマの複製に必要とされる遺伝子、インテグリン遺伝子、セレクチン遺伝子、補体系遺伝子、ケモカイン遺伝子、ケモカイン受容体遺伝子、GCSF遺伝子、Grol遺伝子、Gro2遺伝子、Gro3遺伝子、PF4遺伝子、MIG遺伝子、プロ?血小板塩基性タンパク質遺伝子、MIP‐11遺伝子、MIP‐1J遺伝子、RANTES遺伝子、MCP‐1遺伝子、MCP‐2遺伝子、MCP‐3遺伝子、CMBKR1遺伝子、CMBKR2遺伝子、CMBKR3遺伝子、CMBKR5v、AIF‐1遺伝子、1‐309遺伝子、イオンチャネルの構成要素に対する遺伝子、神経伝達物質受容体に対する遺伝子、神経伝達物質リガンドに対する遺伝子、アミロイドファミリー遺伝子、プレセニリン遺伝子、HD遺伝子、DRPLA遺伝子、SCA1遺伝子、SCA2遺伝子、MJD1遺伝子、CACNL1A4遺伝子、SCA7遺伝子、SCA8遺伝子、LOH細胞内に見い出される対立遺伝子、または多型遺伝子の1つの対立遺伝子をサイレンシングするための1つもしくは複数のsiRNA分子を含む。遺伝子をサイレンシングする関連siRNA分子およびsiRNA分子を作成する方法の例は、Dharmacon等の商業的供給源または以下の特許出願から見出すことができる:米国特許第2005017667号、国際公開第WO2006066158号、国際公開第WO2006078278号、米国特許第7,056,704号、米国特許第7,078,196号、米国特許第5,898,031号、米国特許第6,107,094号、欧州特許第1144623号、欧州特許第1144623号。いくつかの特異的遺伝子サイレンシングの標的が列挙されているが、このリストはあくまでも例示であって、他のsiRNA分子も本発明のナノ粒子とともに用いることができる。
【0161】
1つの実施形態において、本発明のナノ粒子は、RNAに対するRNAi活性を有するsiRNA分子を含み、該siRNA分子は、PCT/US03/05028(国際特許出願第WO03/4654号)の表Vに記載されるGenBank受入番号で照会される配列、または当該技術分野で既知である配列等の、コードまたは非コード配列を有する任意のRNAに相補的な配列を含む。
【0162】
1つの実施形態において、本発明のナノ粒子は、血管内皮増殖因子遺伝子をサイレンシングするsiRNA分子を含む。別の実施形態において、本発明のナノ粒子は、血管内皮増殖因子受容体遺伝子をサイレンシングするsiRNA分子を含む。
【0163】
別の実施形態において、本発明のナノ粒子はsiRNA分子を含み、該siRNA分子の配列は、以下のもの(ただし、これらに限定されない)を含む腫瘍関連標的に相補的である:ヒト転移性前立腺癌細胞PC3‐Mに見出される低酸素誘導因子1(HIF‐1)(MoI Carcinog. 2008 Jan 31 [Epub ahead of print])、HIF‐1下流標的遺伝子(MoI Carcinog. 2008 Jan 31 [Epub ahead of print])、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)、肝細胞増殖因子(HGF)、インターロイキン12p70(IL12)、グルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子受容体(GITR)、細胞接着分子−1(ICAM‐1)、ニューロトロフィン‐3(NT‐3)、インターロイキン17(IL17)、インターロイキン18結合タンパク質(IL18Bpa)および上皮好中球活性化ペプチド(ENA78)(例えば、“Cytokine profiling of prostatic fluid from cancerous prostate glands identifies cytokines associated with extent of tumor and inflammation”, The Prostate Early view Published Online: 24 Mar 2008を参照)、PSMA(例えば、“Cell‐Surface labeling and internalization by a fluorescent inhibitor of prostate‐ specific membrane antigen” The Prostate Early view Published Online: 24 Mar 2008を参照)、アンドロゲン受容体(AR)、ケラチン、上皮膜抗原、EGF受容体、およびE−カドヘリン(例えば、“Characterization of PacMetUTl, a recently isolated human prostate cancer cell line”を参照)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γ(PPARγ、例えば、The Prostate Volume 68, Issue 6, Date: 1 May 2008, Pages: 588‐598を参照)、終末糖化産物受容体(RAGE)および終末糖化産物(AGE)、(例えば、“V domain of RAGE interacts with AGEs on prostate carcinoma cells” The Prostate Early view Published Online: 26 Feb 2008を参照)、受容体型チロシンキナーゼerb‐B2(Her2/neu)、肝細胞増殖因子受容体(Met)、トランスフォーミング増殖因子‐β1受容体(TGFβR1)、核内因子κB(NFKB)、Jagged‐1、ソニックヘッジホッグ(Shh)、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP、特にMMP‐7)、A型エンドセリン受容体(ET)、エンドセリン‐1(ET‐1)、核内受容体サブファミリー3、グループC、メンバー1(NR3C1)、核内受容体活性化補助因子1(NCOA1)、NCOA2、NCOA3、E1A結合タンパク質p300(EP300)、CREB結合タンパク質(CREBBP)、サイクリンG関連キナーゼ(GAK)、ゲルゾリン(GSN)、アルド・ケト還元酵素ファミリー1、メンバーC1(AKR1C1)、AKR1C2、AKR1C3、ニューロテンシン(NTS)、エノラーゼ2(ENO2)、クロモグラニンB(CHGB、セクレトグラニン1)、セクレトグラニン(SCGN、またはEFハンドカルシウム結合タンパク質)、ドーパ脱炭酸酵素(DDC、または芳香族L−アミノ酸脱炭酸酵素)、ステロイド受容体活性化補助因子‐1(SRC‐1)、SRC‐2(TIF2としても知られる)、SRC‐3(AIB‐1としても知られる)(例えば、“Longitudinal analysis of androgen deprivation of prostate cancer cells identifies pathways to androgen independence” The Prostate Early view Published Online: 26 Feb 2008を参照)、エストロゲン受容体(Erα、ERβ、またはGPR30)(例えば、The Prostate Volume 68, Issue 5 , Pages 508 ‐ 516を参照)、メラノーマ細胞接着分子(MCAM)(例えば、The Prostate Volume 68, Issue 4 , Pages 418 ‐ 426を参照)、血管新生因子(血管内皮増殖因子(VEGF)およびエリスロポエチン等)、グルコース輸送体(GLUTl等)、BCL2/アデノウイルスElB 19kDa相互作用タンパク質3(BNIP3)(例えば、The Prostate Volume 68, Issue 3 , Pages 336 ‐ 343を参照)、1型および2型5αリダクターゼ(例えば、The Journal of Urology Volume 179, Issue 4, Pages 1235‐1242を参照)、ERGおよびETV1、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、α‐メチルアシル補酵素Aラセマーゼ(AMACR)、PCA3DD3、グルタチオンS−転移酵素、pi1(GSTP1)、pl6、ADPリボシル化因子(ARF)、O‐6‐メチルグアニン‐DNAメチル転移酵素(MGMT)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、早期前立腺癌抗原(EPCA)、ヒトカリクレイン2(HK2)およびヘプシン(例えば、The Journal of Urology Volume 178, Issue 6, Pages 2252‐2259を参照)、ブロモドメイン含有2(BRD2)、真核生物翻訳開始因子4γ1(eIF4G1)、リボソームタンパク質L13a(RPL13a)、およびリボソームタンパク質L22(RPL22)(例えば、N Engl J Med 353 (2005), p. 1224)を参照)、HER2/neu、Derlin‐1、ERBB2、AKT、シクロオキシゲナーゼ‐2(COX‐2)、PSMD3、CRKRS、PERLD1、およびC17ORF37、PPP4C、PARN、ATP6V0C、C16orf14、GBL、HAGH、ITFG3、MGC13114、MRPS34、NDUFB10、NMRAL1、NTHL1、NUBP2、POLR3K、RNPS1、STUB1、TBL3、およびUSP7。本明細書に記載するすべての参考文献は、参照によりそのすべてが本明細書に援用される。
【0164】
このように、1つの実施形態において、本発明は、低分子量PSMAリガンド、生分解性ポリマー、ステルスポリマー、およびsiRNA分子を含むナノ粒子を含む。1つの実施形態において、本発明は、低分子量PSMAリガンド、生分解性ポリマー、ステルス成分、および血管内皮増殖因子遺伝子をサイレンシングするsiRNA分子を含むナノ粒子を含む。1つの実施形態において、本発明は、低分子量PSMAリガンド、生分解性ポリマー、ステルス成分、および血管内皮増殖因子受容体遺伝子をサイレンシングするsiRNA分子を含むナノ粒子を含む。別の実施形態において、本発明は、低分子量PSMAリガンド、PLGA、ポリエチレングリコール、およびsiRNA分子を含むナノ粒子を含む。1つの実施形態において、本発明は、低分子量PSMAリガンド、生分解性ポリマー、ステルス成分、およびsiRNA分子を含むナノ粒子を含み、該ナノ粒子は、前立腺または癌を取り囲む血管内皮組織に選択的に堆積することができる。1つの実施形態において、低分子量PSMAリガンド、生分解性ポリマー、ステルス成分、およびsiRNA分子を含むナノ粒子を含み、該ナノ粒子は、前立腺または癌周囲の血管内皮組織に選択的に堆積することができ、また該ナノ粒子は、PSMA発現細胞によってエンドサイトーシスされ得る。
【0165】
別の実施形態において、本発明のナノ粒子に組み込まれるsiRNAは、米国出願第11/021,159号(配列番号8に相補的なsiRNA配列:gaaggccagu uguauggac)、および米国出願第11/349,473号(配列番号1のヌクレオチド3023〜3727の領域に結合するsiRNAを開示する)に開示されるような、前立腺癌を治療するものである。これらの参考文献は共に、参照により、そのすべてが本明細書に援用される。
【0166】
別の実施形態において、本発明のナノ粒子の治療剤は、アンチセンスmRNAおよびマイクロRNA等の、癌を治療するために使用され得るRNAを含む。癌の治療のための治療剤として使用され得るマイクロRNAの例には、Nature 435 (7043): 828‐833; Nature 435 (7043): 839‐843;およびNature 435 (7043): 834‐838に開示されるものが含まれ、これらはすべて、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0167】
治療の方法
いくつかの実施形態において、本発明による標的分子は、疾患、疾病、および/または病状の1つもしくは複数の症状もしくは特徴の治療、緩和、寛解、軽減、発症の遅延、進行の阻害、重症度の軽減、および/または発生率を低下させるために使用することができる。いくつかの実施形態において、本発明の標的分子は、癌および/または癌細胞を治療するために使用することができる。特定の実施形態において、本発明の標的分子は、癌の治療を必要とする対象の癌細胞表面または腫瘍新生血管にPSMAを発現する前立腺または前立腺以外の固形腫瘍の血管新生を含む、任意の癌の治療のために使用することができる。PSMA関連表示の例には、前立腺癌、肺非小細胞癌、結腸直腸癌、および膠芽腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0168】
「癌」という用語は、前癌性および悪性の癌を含む。癌には、前立腺、胃癌、結腸大腸癌、皮膚癌(例えば、メラノーマまたは基底細胞癌)、肺癌、頭頸部癌、気管支癌、膵臓癌、膀胱癌、脳または中枢神経系癌、末梢神経系癌、食道癌、口腔または咽頭癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、血液組織(hematological tissues)の癌等が含まれるが、これらに限定されない。「癌細胞」は、腫瘍の形態であるか、対象に単独で存在するか(例えば、白血病細胞)、または癌由来の細胞株であり得る。
【0169】
癌は、様々な身体的症状を伴う可能性がある。癌の症状は、通常、腫瘍の種類および位置に依存する。例えば、肺癌は、咳、息切れ、および胸痛を引き起こし、一方大腸癌は、下痢、便秘、および血便を引き起こすことが多い。しかしながら、わずかではあるが例を挙げると、通常、以下の症状が一般に多くの癌に関連している:熱、悪寒、寝汗、咳、呼吸困難、体重減少、食欲減退、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、貧血、黄疸、肝腫大、喀血、疲労、倦怠感、認知障害、うつ状態、ホルモン障害、好中球減少症、疼痛、難治性皮膚潰瘍(non‐healing sores)、リンパ節肥大、末梢神経障害、および性機能障害。
【0170】
本発明の1つの態様において、癌(例えば、前立腺癌)の治療のための方法が提供される。いくつかの実施形態において、癌の治療は、本発明の標的分子を必要とする対象に、所望の結果を達成するために必要な量および時間で、治療上有効な量の本発明の標的分子を投与するステップを含む。本発明の特定の実施形態において、本発明の標的分子の「治療上有効な量」は、癌の1つもしくは複数の症状もしくは特徴の治療、緩和、寛解、軽減、発症の遅延、進行の阻害、重症度の軽減、および/または発生率を低下させるために効果的な量である。
【0171】
本発明の1つの態様において、癌(例えば、前立腺癌)に罹患する対象に本発明の組成物を投与するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、粒子は、所望の結果(すなわち、癌の治療)を達成するために必要な量および時間で対象に投与される。本発明の特定の実施形態において、本発明の標的分子の「治療上有効な量」は、癌の1つもしくは複数の症状もしくは特徴の治療、緩和、寛解、軽減、発症の遅延、進行の阻害、重症度の軽減、および/または発生率を低下させるために効果的な量である。
【0172】
本発明の治療プロトコルは、治療上有効な量の本発明の標的分子を、健常な個体(すなわち、いずれの癌の症状も示さない、および/または癌であると診断されていない対象)に投与するステップを含む。例えば、健常な個体は、癌を発症するおよび/または癌の症状を発症する前に、本発明の標的分子で免疫を受けることができ、リスクのある個体(例えば、癌の家族歴を有する患者、癌の発症に関連する1つもしくは複数の遺伝子の突然変異を保持する患者、癌の発症に関連する遺伝子多型を有する患者、癌の発症に関連するウイルスに感染している患者、癌の発症に関連する習慣および/または生活様式を有する患者等)は、癌の発症と実質的に同時(例えば、48時間以内、24位内、または12時間以内)に治療を受けることができる。当然、癌を有することが分かっている個体は、いつでも本発明の治療を受けることができる。
【0173】
他の実施形態において、本発明のナノ粒子は、癌細胞(例えば、前立腺癌細胞)の増殖を阻害するために使用することができる。本明細書で使用される「癌細胞の増殖を阻害する」という用語は、治療を行っていない対照癌細胞の観察されるまたは予想される増殖の速度と比較して癌細胞の増殖の速度が減少されるような、癌細胞の増殖および/または遊走速度の任意の遅延、癌細胞の増殖および/または遊走の停止、または癌細胞の死滅を指す。「増殖を阻害する」という用語は、癌細胞もしくは腫瘍のサイズの縮小または消滅、およびその転移可能性の減少も指し得る。好ましくは、細胞レベルでのかかる阻害は、対象における癌のサイズを縮小させる、増殖を遅延させる、癌の侵襲を減少させる、または転移を予防もしくは阻害することができる。当業者は、様々な好適な指標のいずれかを用いて、癌細胞の増殖が阻害されているかどうかを容易に判定することができる。
【0174】
癌細胞増殖の阻害は、例えば、細胞周期G2/Mでの停止のように、例えば、細胞周期の特定の段階での癌細胞の停止によって証明される。癌細胞増殖の阻害は、癌細胞または腫瘍のサイズの直接的または間接的な測定によっても証明することができる。ヒト癌患者において、かかる測定は、通常、磁気共鳴画像、コンピュータ断層撮影、およびX線等の周知の造影方法を用いて行われる。癌細胞増殖は、循環する癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、または他の癌細胞増殖に相関する癌特異的抗原のレベルを判定することにより、間接的にも判定することができる。癌増殖の阻害は、通常、対象の生存期間の延長および/または健康と福祉の増加にも相関している。
【0175】
医薬組成物
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、非毒性の、不活性な固体、半固体もしくは液体の充填剤、希釈剤、被包材、または任意の種類の処方補助剤を意味する。Remington’s Pharmaceutical Sciences. Ed. by Gennaro, Mack Publishing, Easton, Pa., 1995は、医薬組成物の処方に使用される様々な担体、およびその調製のための既知の技術を開示している。薬学的に許容される担体としての役割を果たすことができる物質のいくつかの例には、糖類(ラクトース、グルコース、およびスクロース等)、デンプン類(トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプン等)、セルロースおよびその誘導体(ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、および酢酸セルロース等)、粉末化トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、賦形剤(ココアバターおよび座薬用ワックス等)、油類(ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油等)、グリコール(プロピレングリコール等)、エステル(オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル等)、寒天、洗浄剤(TWEEN(登録商標)80等)、緩衝剤(水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム等)、アルギン酸、発熱物質を含まない水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム等他の非毒性の適合滑沢剤を含み、処方者の判断によって、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、香味および芳香剤が含まれるが(ただし、これらに限定されない)、ならびに防腐剤および抗酸化剤も、配合者の判断によると、組成物中に存在し得る。濾過または他の最終滅菌の方法が実行可能ではない場合は、製剤は無菌条件下で製造することができる。
【0176】
本発明の医薬組成物は、経口および非経口経路を含む当該技術分野で既知である任意の手段を用いて患者に投与することができる。本明細書で使用される「患者」という用語は、ヒトおよび、例えば、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、および魚類を含むヒト以外の動物を指す。例えば、ヒト以外の動物は哺乳類(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、霊長類、またはブタ)であり得る。特定の実施形態において、非経口経路が、消化管中に見出される消化酵素との接触を避けられるので望ましい。かかる実施形態によると、本発明の組成物は、注入によって(例えば、静脈内、皮下または筋肉内、腹腔内への注入)、経直腸的に、経膣的に、局所的に(粉末剤、クリーム剤、軟膏、またはドロップ剤を用いて)、または吸入によって(スプレーを用いて)、投与することができる。
【0177】
ある具体的な実施形態において、本発明のナノ粒子は、それを必要とする対象に、例えば、静脈内点滴または注入によって、全身的に投与される。
【0178】
注射用製剤、例えば、滅菌注射用の水性または油性の懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、既知の技術にしたがって処方することができる。滅菌された注射用製剤は、例えば、1,3‐ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射液、懸濁液、またはエマルションであり得る。使用することができる許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液、U.S.P.、および等張塩化ナトリウム溶液がある。また、滅菌済みの固定油が、溶媒または懸濁媒体として従来使用されている。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性の固定油を使用することができる。また、オレイン酸等の脂肪酸が、注射液の調製に使用される。1つの実施形態において、本発明の複合体は、1%(w/v)カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび0.1%(v/v)TWEEN(登録商標)80を含む担体液に懸濁される。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、または使用前に、滅菌水または他の滅菌注射用媒体に溶解または分散させることができる滅菌固形組成物の形態である滅菌薬剤を組み込むことによって、滅菌することができる。
【0179】
経直腸または経膣投与用の組成物は、本発明の複合体を好適な非刺激性の賦形剤または担体、例えば、周囲温度では固形であるが、体温では液状であり、したがって直腸または膣腔内で溶けて本発明の複合体を放出する、ココアバター、ポリエチレングリコール、または坐薬用ワックスと混合することにより調製され得る坐薬である。
【0180】
本発明の医薬組成物の局所的または経皮投与のための剤形には、軟膏、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、粉末剤、液剤、スプレー剤、吸入剤、または貼付剤を含む。本発明の複合体は、滅菌条件下で、薬学的に許容される担体および必要に応じて任意の必要な保存剤または緩衝剤と混合される。眼科用製剤、点耳剤および点眼剤も、本発明の範囲内であることが企図される。軟膏、ペースト剤、クリーム剤、およびゲル剤は、本発明の複合体に加え、動物および植物性脂肪、油類、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、ならびに酸化亜鉛などの賦形剤、またはそれらの混合物を含有し得る。経皮用貼付剤は、化合物の制御された送達を身体に提供するという、付加的な利点を有する。かかる剤形は、本発明の複合体を、適切な媒体に溶解または分散させることにより作製することができる。また、皮膚を透過する化合物の流量を増加させるために、吸収促進剤を使用することができる。その速度は、速度制御膜を提供するか、または本発明の複合体をポリマーマトリックスもしくはゲル内に分散させることにより制御することができる。
【0181】
粉末剤およびスプレー剤は、本発明の複合体に加え、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末などの賦形剤、またはこれらの混合物を含有し得る。スプレー剤は、クロロフルオロ炭化水素等の通常の噴射剤を、さらに含有し得る。
【0182】
経口投与される場合は、本発明のナノ粒子は、封入され得るが、必ずしもそうであるわけではない。様々な好適な封入システムが、当該技術分野において既知である(“Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy,” Edited by Doubrow, M., CRC Press, Boca Raton, 1992; Mathiowitz and Langer J. Control. Release 5:13, 1987; Mathiowitz et al. Reactive Polymers 6:275, 1987; Mathiowitz et al. J. Appl. Polymer Sci. 35:755, 1988; Langer Ace. Chem. Res. 33:94,2000; Langer J. Control. Release 62:7,1999; Uhrich et al. Chem. Rev. 99:3181,1999; Zhou et al. J. Control. Release 75:27, 2001; およびHanes et al. Pharm. Biotechnol. 6:389,1995)。本発明の複合体は、生分解性ポリマーミクロスフェアまたはリポソームの中に封入することができる。生分解性微粒子の調製に有用である天然および合成ポリマーの例には、アルギン酸塩、セルロース、ポリヒドロキシアルカン酸塩、ポリアミド、ポリホスファゼン、フマル酸ポリプロピル、ポリエーテル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、生分解性ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ無水物、ポリヒドロキシ酸、ポリ(オルトエステル)、および他の生分解性ポリエステル等の炭水化物が含まれる。リポソームの生成において有用である脂質の例には、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシド等のホスファチジル化合物が含まれる。
【0183】
経口投与のための医薬組成物は、液体または固体であり得る。本発明の組成物の経口投与に好適である液状剤形には、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、液剤、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれる。封入されたまたは封入されていない複合体に加え、液状剤形は、当該技術分野で一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤、および、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類(特に、綿実、ラッカセイ、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、ヒマシおよびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物等の乳化剤を含有し得る。経口組成物は、不活性な希釈剤以外にも、補助剤、湿潤剤、乳化剤、および懸濁化剤、甘味料、香味および芳香剤も含み得る。本明細書で使用される「補助剤」という用語は、免疫応答の非特異的な調節因子である任意の化合物を指す。特定の実施形態において、補助剤は、免疫応答を刺激する。任意の補助剤が、本発明にしたがって使用され得る。多数の補助化合物が、当該技術分野において既知である(Allison Dev. Biol. Stand. 92:3‐11, 1998; Unkeless et al. Annu. Rev. Immunol. 6:251‐281,1998; and Phillips et al. Vaccine 10:151‐158,1992)。
【0184】
経口投与のための固形剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤、および顆粒剤を含む。かかる固形剤形において、封入されたまたは封入されていない複合体は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸カルシウム等の、少なくとも1つの不活性な薬学的に許容される賦形剤または担体、および/または(a)ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸等の充填剤もしくは増量剤、(b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシア等の結合剤、(c)グリセロール等の保湿剤、(d)寒天‐寒天、炭酸カルシウム、イモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム等の崩壊剤、(e)パラフィン等の溶液遅延剤、(f)第四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤、(g)例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアリン酸塩等の湿潤剤、(h)カオリンおよびベントナイトクレイ等の吸収剤、ならびに(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑沢剤、またそれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合は、該剤形は、緩衝剤も含み得る。
【0185】
類似する種類の固形組成物は、ラクトースまたは乳糖、および高分子量ポリエチレングリコール等の賦形剤を用いて、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル剤の充填剤として使用され得る。腸溶性コーティングおよび医薬製剤分野で周知である他のコーティング等の、コーティングおよびシェルを有する錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の剤形が調製され得る。
【0186】
PSMA‐標的分子の正確な用量は、個々の医師によって選択され、一般に、用量および投与は、治療される患者を考慮して、治療される患者に有効量のPSMA‐標的分子を提供するように調節されることを理解されたい。本明細書で使用されるPSMA‐標的分子の「有効量」とは、所望の生物学的応答を起するのに必要な量を指す。当業者には理解されるように、PSMA‐標的分子の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される薬剤、標的組織、投与の経路等の要因に依存して、様々であり得る。例えば、抗癌剤を含有するPSMA‐標的分子の有効量は、所望の期間にわたり所望の量だけ腫瘍サイズの縮小をもたらす量である可能性がある。考慮され得る付加的な要因には、病態の重症度、治療される患者の体重および性別、食生活、投与の時間および頻度、薬剤の組み合わせ、反応感度、ならびに治療に対する耐性/応答が含まれる。
【0187】
本発明のナノ粒子は、投与の簡便性および投与量の均一性のために、投与単位形態で処方することができる。本明細書で使用される「投与単位形態」という表現は、治療される患者に適切であるナノ粒子の物理的な個別単位を指す。しかしながら、本発明の組成物の1日当たりの合計使用量は、適切な医学的判断の範囲において担当医師によって決定されることを理解されたい。いずれのナノ粒子についても、細胞培養アッセイまたは動物モデル(通常、マウス、ウサギ、イヌ、またはブタ)において、治療上有効な用量を始めに予測することが可能である。動物モデルは、望ましい濃度範囲および投与経路を達成するためにも使用することができる。かかる情報は、その後、ヒトにおいて有用な用量および投与経路を決定するために使用することができる。ナノ粒子の治療効果および毒性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順、例えば、ED50(集団の50%において治療上有効である用量)およびLD50(集団の50%において致死的である用量)を用いて決定することができる。毒性効果と治療効果との用量比は治療係数であり、LD50/ED50として表すことができる。いくつかの実施形態において、高い治療係数を示す医薬組成物が有用である可能性がある。細胞培養アッセイまたは動物試験から得られたデータは、ヒトに使用するための用量の範囲を処方する際に使用することができる。
【0188】
本発明は、キットにおいても任意の上述した組成物を提供し、該キットは、任意選択的に、例えば、経口、静脈内、ポンプ、もしくは埋め込み可能な送達デバイス、または薬剤送達の別の既知である経路を介して、前述したような任意の好適な技術を用いて本明細書に記載される任意の組成物を投与するための指示を含む。「指示」は、推進用の構成要素を定義するものであり得、典型的には、本発明の組成物の包装上に記載されるか、または該包装に付随する書面の指示を含む。指示は、任意の様式で提供される、任意の口頭によるまたは電子的な指示も含み得る。「キット」は、典型的には、本発明の組成物および指示書のうちの1つまたはその組み合わせを含むパッケージを定義するが、本発明の組成物、および臨床の専門家が、その指示は特定の組成物に関連することを明確に認識するような様式で、その組成物に関して提供される任意の形態の指示もまた含み得る。
【0189】
本明細書に記載されるキットは、本発明の組成物および前述した他の成分を収容することができる1つもしくは複数の容器も含み得る。該キットは、いくつかの場合において、本発明の組成物を混合、希釈、および/または投与するための指示も含み得る。該キットは、1つもしくは複数の溶媒、界面活性剤、保存剤、および/または希釈剤(例えば、生理食塩水(0.9%NaCl)、または5%デキストロース)を含む他の容器、ならびにサンプル中の上記組成物を混合、希釈、またはかかる治療を必要とする対象に投与するための容器も含み得る。
【0190】
該キットの組成物は、任意の好適な形態、例えば、液状の溶液または乾燥させた粉末として、提供され得る。提供される組成物が乾燥粉末である場合、該組成物は、好適な溶媒を添加することによって再構成され得、また該溶媒も提供され得る。上記組成物の液体形態が使用される実施形態において、該液体形態は、濃縮されているか、またはすぐに使用できる状態であり得る。該溶媒は、該ナノ粒子、および使用または投与の様式に依存する。薬剤の組成物に好適な溶媒は、例えば、前述したように周知であり、また文献で入手可能である。該溶媒は、該ナノ粒子、および使用または投与の様式に依存する。
【0191】
また本発明は、別の態様において、本明細書に記載される任意のナノ粒子の投与の推進も含む。いくつかの実施形態において、本発明の1つもしくは複数の組成物は、本発明の組成物のうちのいずれか1つの投与によって、本明細書に記載されるような様々な疾患の予防または治療のために推進される。本明細書で使用される「推進される」には、教育、病院、および他の臨床機関、医薬品の販売を含む製薬業界の活動、ならびに本発明の組成物に関連する任意の形態の書面、口頭、および電子的な通信を含む任意の広告または他の推進活動の方法を含む、すべての営業行為の方法を含む。
【0192】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示するものであるが、本発明の完全な範囲を例示することを意図するものではない。
【実施例】
【0193】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示される。実施例は、さらに限定的であると見なされるべきではない。
【実施例1】
【0194】
低分子量PSMAリガンドの合成(GL2)

出発化合物5g(10.67mmol)を無水DMF150mLに溶解した。この溶液に、臭化アリル(6.3mL、72mmol)およびKCO(1.47g、10.67mmol)を添加した。反応物を2時間撹拌して、溶媒を除去し、粗生成物をAcOEtに溶解してpHが中性になるまでHOで洗浄した。有機相をMgSO(無水)で乾燥させ、蒸発させて5.15g(95%)の物質を得た(CHCl:MeOH=20:1のTLC、Rf=0.9、出発化合物Rf=0.1、ニンヒドリンおよび紫外線で検出)。
【0195】

CHCN(50mL)中の化合物(5.15g、10.13mmol)の溶液に、EtNH(20mL、0.19mol)を添加した。反応物を室温で40分間撹拌した。溶媒を除去して化合物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=3:2)で精製し、2.6g(90%)を得た(CHCl:MeOH=10:1のTLC、Rf=0.4、ニンヒドリンで検出(化合物は紫色を有する))。

【0196】

−78℃で撹拌したCHCl(143mL)中のジアリルグルタメート(diallyl glutamate)(3.96g、15mmol)およびトリホスゲン(1.47g、4.95mmol)の溶液に、CHCl(28mL)中のEtN(6.4mL、46mmol)を添加した。反応物を室温まで温めてから、1.5時間撹拌した。次いでCHCl(36mL)溶液中のリジン誘導体(2.6g、9.09mmol)を−78℃で添加し、反応物を室温で12時間撹拌した。該溶液をCHClで希釈し、HOで2回洗浄し、MgSO(無水)上で乾燥させ、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt3:1→2:1→AcOEt)で精製して、4g(82%)を得た(CHCl:MeOH=20:1のTLC、Rf=0.3、ニンヒドリンで検出)。

【0197】

乾燥CHCl(40mL)中の化合物(4g、7.42mmol)の溶液に、TFA(9mL)を0℃で添加した。反応物を室温で1時間撹拌した。真空下で完全に乾燥するまで溶媒を除去し、4.1g(定量)を得た(CHCl:MeOH=20:1のTLC、Rf=0.1、ニンヒドリンで検出)。

【0198】

DMF(無水)(62mL)中の化合物(2g、3.6mmol)の溶液に、Pd(PPh(0.7g、0.6mmol)およびモルホリン(5.4mL、60.7mmol)を、アルゴン下にて0℃で添加した。反応物を室温で1時間撹拌した。溶媒を除去した。粗生成物をCHClで2回洗浄し、次いでHOに溶解した。この溶液に、NaOH(0.01N)の希釈溶液をpHが強塩基性になるまで添加した。減圧下で溶媒を除去した。固体をCHCl、AcOEt、および1:1のMeOH‐CHCl混合物で再び洗浄し、HOに溶解してアンバーライトIR‐120H樹脂で中和した。溶媒を蒸発させ、化合物をMeOHで沈殿させて、1g(87%)のGL2を得た。

【実施例2】
【0199】
低分子量PSMAリガンド(GLl)の合成

出発化合物130mg(0.258mmol)をDMF(無水)3mLに溶解した。この溶液に、臭化アリル(150μL、1.72mmol)およびKCO(41mg、0.3mmol)を添加した。反応物を1時間撹拌して、溶媒を除去し、粗生成物をAcOEtに溶解して、pHが中性になるまでHOで洗浄した。有機相をMgSO(無水)で乾燥させ、蒸発させて130mg(93%)を得た(CHCl:MeOH=20:1のTLC、Rf=0.9、出発化合物Rf=0.1、ニンヒドリンおよび紫外線で検出)。

【0200】

乾燥CHCl(2mL)中の化合物(120mg、0.221mmol)の溶液に、0℃でTFA(1mL)を添加した。反応物を室温で1時間撹拌した。真空下で溶媒を除去し、水を添加して再び除去し、CHClを添加して再び除去して、完全に乾燥させ、120mg(定量)を得た(CHCl:MeOH=20:1のTLC、Rf=0.1、ニンヒドリンおよび紫外線で検出)。

【0201】

−78℃で撹拌したCHCl(4mL)中のジアリルグルタメート(110mg、0.42mmol)およびトリホスゲン(43mg、0.14mmol)の溶液に、CHCl(0.8mL)中のEtN(180μL、1.3mmol)を添加した。反応混合物を室温まで温めてから、1.5時間撹拌した。次いで、CHCl(1mL)およびEtN(70μL、0.5mmol)の溶液中のフェニルアラニン誘導体(140mg、0.251mmol)を−78℃で添加して、反応物を室温で12時間撹拌した。溶液をCHClで希釈して、HOで2回洗浄し、MgSO(無水)上で乾燥させて、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=3:1)で精製して100mg(57%)を得た(CHCl:MeOH=20:1のTLC、Rf=0.3、ニンヒドリンおよび紫外線で検出)。

【0202】

CHCN(1mL)中の出発物質(60mg、0.086mmol)の溶液に、EtNH(1mL、10mmol)を添加した。反応物を室温で40分撹拌した。溶媒を除去して、化合物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=2:1)で精製して35mg(85%)を得た(CHCl:MeOH=10:1のTLC、Rf=0.5、出発化合物Rf=0.75、ニンヒドリン(化合物は紫色を有する)および紫外線で検出)。

【0203】

DMF(無水、1.5mL)中の化合物(50mg、0.105mmol)の溶液に、Pd(PPh(21mg、0.018mmol)およびモルホリン(154μL、1.77mmol)をアルゴン下にて0℃で添加した。反応物を室温で1時間撹拌した。溶媒を除去した。粗生成物をCHClで2回洗浄してから、HOに溶解した。この溶液に、NaOH(0.01N)の希釈溶液をpHが強塩基性になるまで添加した。減圧下で溶媒を除去した。固体をCHCl、AcOEt、および1:1のMeOH‐CHCl混合物で再び洗浄し、HOに溶解してアンバーライトIR‐120H樹脂で中和した。溶媒を蒸発させ、化合物をMeOHで沈殿させて、25mg(67%)のGL1を得た。

【実施例3】
【0204】
ナノ粒子の調製
本発明のナノ粒子を調製する非限定的な例は、図1Bに示す合成手順を用いて調製することができ、その場合リガンドは、例えば、GL1またはGL2である。尿素系PSMA阻害剤GL2は、PSMA結合にとって重要な意味を持たない領域に位置する自由アミノ基を有し、スキーム1に示す手順に従って、市販の出発物質Boc‐Phe(4NHFmoc)‐OHおよびグルタミン酸ジアリルから合成される。類似体は、PEGの自由末端にカルボキシル基を有するPLGA‐PEGジブロックコポリマーに、例えば、水溶性カルボジイミドEDCおよびN‐ヒドロキシスクシンイミドの使用等の標準的な複合化化学を用いて結合される。ナノ粒子はナノ沈殿によって形成される:ポリマーリガンド複合体を、薬剤と、粒子の取り込みを追跡するための他の物質と、を含む水混和性有機溶媒に溶解する。リガンドの表面密度を調節するために、追加として非官能化ポリマーを含ませることができる。ポリマー溶液を水性相に分散させ、その結果生じる粒子を濾過によって回収する。該粒子は、乾燥させてもよく、または生体外での細胞取り込みもしくは生体内での前立腺腫瘍に対する抗腫瘍効果を調べることもできる。
スキーム1

【0205】
上記手順を用いて、PEG、PLAまたはPLGA、本明細書に記載する化学療法剤、およびGL1またはGL2を含むナノ粒子の様々な標的特異的ステルス型ナノ粒子を調製することができる。調製することができるナノ粒子の具体的な例を下の表に示す。


【実施例4】
【0206】
LNCap細胞における、小分子標的化部分の媒介によるナノ粒子の結合/取り込み
大量のPSMAを発現するLNCap細胞による表面にリガンドGL1(グルタミン酸/4‐アミノ‐フェニルアラニン系)およびGL2(グルタミン酸/リジン系)が結合したナノ粒子(NP‐GL1、NP‐GL2)の結合/取り込みを、陰性対照として裸のPLGA‐PEGナノ粒子(NP)、および陽性対照としてアミン末端A10前立腺特異的膜抗原(PSMA)アプタマー(Apt)を保持するNP’s(NP‐Apt)と比較することにより調べた。LNCap細胞によるNP‐GL1、NP‐GL2、NP、およびNP‐Aptの取り込みを、少量のPSMAを発現するPC3細胞と比較して、NP‐GL1およびNP‐GL2の特異的PSMAの媒介による結合/取り込みを評価した。
【0207】
材料
ジブロックコポリマーPLGA0.67‐PEG5000‐COH(ACN中の原液50mg/ml)、アプタマー(1mg/mL)、グルタミン酸/フェニルアラニン系リガンド(GL1)、グルタミン酸/リジン系リガンド(GL2)、EDC.HC1(Pierce Biotech)、スルホNHS(Pierce Biotech)、ホスフェート緩衝食塩水、PBS(Sigma)、固定緩衝液(PBS中の新たに調製した4%ホルムアルデヒド)、ブロッキング溶液(PBS中の新たに調製した1% BSA)、ブロッキングおよび透過処理用の溶液(ブロッキング溶液中の新たに調製した0.1Triton×100)、Alexa‐568ファロイジン(5U/mL)、NBDコレステロール(Invitrogen)、DAPI(Sigma)0.1mg/mL、Vectashield(Vector Labs)、マニキュア液
【0208】
ナノ粒子の調製
PLGA‐PEG‐COHジブロックコポリマーに基づくナノ粒子を、ナノ沈殿法を用いて調製した。GL1、GL2、およびAptを、水性PBS懸濁液中でナノ粒子のPEGコロナのカルボン酸末端に共有結合的に結合させた。GL1、GL2、およびAptのNP’sに対する共有結合的な複合化は、以下の手順を用いたカルボン酸PEG末端のEDC/NHS活性化、およびアミンを有する活性こはく酸イミドエステル末端基のGL1、GL2、およびAptに対する後続反応に基づくものであった:
【0209】
PLGA‐PEG‐COH原液(1.2mL、アセトニトリル中の50mg/mLの溶液)をアセトニトリルで希釈し、10mg/mLジブロック溶液6mlを得た。NBDコレステロール(600uL、DMF中の1mg/mLの溶液)を上記ジブロック溶液に添加し、その混合液を脱イオン化水12mL(18MΩ)に滴下して添加した。結果として生じたNP懸濁液を、ヒュームフードを開けた状態で2時間撹拌させて(400rpm)、続いて再生セルロース系Amiconフィルタ(MWCO5000 Da)を用いて限外濾過し、残留するアセトニトリル、DMF、および非封入NBDを以下の通り除去した。NP懸濁液(16mL)を、Amicon遠心濾過チューブ(15mL)4本に4等分して移し、それぞれ250〜400uLに濃縮した(5000g×10分)。濃縮した懸濁液を脱イオン水(3mL)で希釈して、滅菌PBS(それぞれ1.5mL)中に再構成する前に、同様に濃縮した(それぞれ200〜300uL)。
【0210】
結果として生じた4つのNP懸濁液(10mg/mL)を、続いて以下のように処理した。
【0211】
表面に標的化結合リガンドを有さないNP製剤(NP、10mg/mLのNP懸濁液)は、上記からそれ以上の処理は行わずに使用した。1ウェル当たり100uLのNPを細胞取り込み試験に使用した。
【0212】
NP‐GL1およびNP‐GL2の製剤は、EDC/NHS(1.9mg/mL、2.2mg/mL、COHに対して20当量)の滅菌PBS溶液(1mL)を用いて15分間室温でPEGコロナのカルボン酸末端を活性化し、続いて2‐メルカプトエタノール(2.8uL、EDCに対して4当量)を用いて未反応のEDCをクエンチング(3分間)した後に、GL1およびGL1に共役させること(滅菌PBS溶液1mL、それぞれ3.5mg/mLおよび3.1mg/mL)によって調製した。NP‐GL1およびNP‐GL2を限外濾過で14倍濃縮して、続いて滅菌PBS中にそれぞれ再構成した(9mg/mLのNP懸濁液)。1ウェル当たり100uLのNP‐GL1およびNP‐GL2を細胞取り込み試験に使用した。
【0213】
NP‐Apt製剤は、ワンポットでのEDC/NHS活性化(75mg/45mg、COHに対して200当量)およびApt共役(Apt150ug)、その後、Amicon遠心フィルター(MWCO 5000 Da)の限外濾過を用いて、15倍濃縮して精製し、脱イオン水中への再分散(3回)することにより、調製した。最終濃縮物を滅菌PBS1.6mL(9mg/mLのNP懸濁液)中に再構成し、1ウェル当たり100uLのNP‐Aptを細胞取り込み試験に使用した。
【0214】
NPの取り込みおよび染色
0日目
およそ30,000細胞/ウェルを8つのウェルチャンバースライドに播種した。8〜16時間後に細胞が健康に見えた場合に、NP結合および取り込みプロトコルを実施した。そうでない場合は、さらに長く細胞をインキュベートして(全部でおよそ24時間)、細胞が接着して広がるようにした(単層は、およそ50%コンフルエント)。
1日目
スライド設計:4つの条件

【0215】
すべてのウェルの培地を、1ウェル当たり10%FBSを補充した新しい培地300μlと交換した。PBS中のNP溶液(1ウェル当たりNP500μg)を1ウェル当たり100μL添加した。スライドを30分間37℃でインキュベートし、PBSで3回穏やかに洗浄した。新たに作製した固定化緩衝液を用いて、室温で30分間細胞を固定し、次いでPBSで1分間×2回穏やかに洗浄した。ブロッキング/透過処理用緩衝液を用いて細胞を室温で1時間インキュベートした。その後、ブロッキング/透過処理用緩衝液中で、Alexa‐Fluor568ファロイジンを用いて、室温で1時間細胞を染色し、穏やかに振とうさせながらPBSで5分間×3回洗浄した。1ウェル当たり100μLのDAPI(0.1mg/mL)を添加して室温で15分間インキュベートし、PBSで3回洗浄した。1ウェル当たり1滴のVectashieldを添加し、スライドにガラスのカバースリップを載せた。該カバースリップを透明のマニキュア液で密封した。
【0216】
サンプルは冷蔵庫の中に入れて、光から保護した。
【0217】
顕微鏡観察:
60倍油浸レンズを備えるLeicaの倒立顕微鏡を用いて、スライドを画像化した。NBDおよびAlexaは10%、DAPIは1%の明るさに設定した。曝露時間は、DAPIは0.05秒、NBDは1秒、およびAlexaは0.5秒であった。Z軸に沿って0.5umずつ拡大して、70セクションの画像を撮影した。その後、すべての画像を合併し、Softworxを用いてデコンボリューションした。
【0218】
画像分析:
処理後、図4に示す画像を取得した。これらの画像は、実験条件の違いを示している。緑色はナノ粒子の位置、赤色の染色は細胞骨格のアクチン、青色の染色は核を示す。NP‐GL1‐LNCaPウェルにおける緑色の染色の発生は、GLがPSMAに結合するのに効果的であり、NP‐GL1ナノ粒子が細胞によって容易に取り込まれることを示唆している。NPウェルに有意な緑色の染色が見られなかったことは、該粒子が細胞によって非特異的にエンドサイトーシスされていないことを示す。
【実施例5】
【0219】
両親媒性層に封入された標的特異的ナノ粒子
両親媒性層に封入された標的特異的ナノ粒子は、以下の手順を用いて調製することができる。上述したように、両親媒性層はナノ粒子内への水の浸透を減少させることが可能であり、そのため薬剤の封入効率を高め、薬剤の放出を遅延する。
1)両親媒性層:グローブボックス内で、大豆レシチン(MP Biomedicals、LLC:1‐800‐854‐0530、www.mpbio.com)10mgを20mLシンチレーションバイアルに測り入れ、10mLのHO+4%EtOHに溶解して1mg/ml溶液を得る。
2)非蛍光性ポリマー:グローブボックス内で、PLGAエステル末端ポリマー[DURECT Corporation(205)‐620‐0025、LACTEL(商標登録)吸収性ポリマー、50:50ポリ(DL‐ラクチド‐コ‐グリコリド)、エステル末端、固有粘度範囲:HFIP中0.76〜0.94dL/g、−10℃以下で結晶として保存。湿度感受性。瓶が温かくなってから開封。]6mgを、7mLシンチレーションバイアルに測り入れる。ACN0.6mLを添加して最終濃度を10mg/mLにする。ボルテックスして混合する。
3)DSPE‐PEG‐OME:グローブボックス内で、PEG[Avanti(登録商標)Polar Lipids, Inc.:www.avantilipids.com、1,2‐ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン‐N‐[メトキシ(ポリエチレングリコール)2000](アンモニウム塩)880120P、分子量:2805.54]10mgを10mLシンチレーションバイアルに測り入れる。4%EtOHの脱イオン水10mLを添加して最終濃度を1mg/mLにする。ボルテックスして混合する。
【0220】
NPバッチ当たりのプロトコル(5mg/mlPLGAで5mgのバッチを作製)
1)脂質混合物:7mLシンチレーションバイアルにそれぞれ調製する。
a)脂質溶液

2)撹拌棒を追加して撹拌する。
3)PLGA溶液:7mLのシンチレーションバイアル中にアリコートを分注する。
b)PLGA溶液

a.ボルテックス
4)脂質混合物を68℃でおよそ3〜4分加熱する。
5)脂質を加熱している間に、PLGAを滴下して添加する。
6)3分間ボルテックスする。
7)撹拌しながら、脱イオン水を1mL滴下して添加する(全容積:4mL)。
8)キャップを開けたまま、室温で2時間撹拌する。
9)1000倍HO中で、3時間かけて透析カセット(PIERCE Slide‐A‐Lyzer 10K MWCO透析カセット)に移す。
10)1時間、2時間、および3時間の時点で、透析緩衝液を交換する。
11)透析中に、ナノ粒子を0.5容積パーセントのTween80を用いて冷凍するために、5容積パーセントのTween80緩衝液(100mL)を調製する。
12)Amiconチューブを準備/ラベルを貼る。
13)透析後、サイズおよびζ電位の測定のためにアリコート(1.0mg)を取り出す。
14)Amiconフィルター(Amicon(登録商標)Ultra‐15 Ultracel 10K Cat #: UFC8 010 96)を使用して、10分間×およそ3回4000rpmで回転させ、1mlまで濃縮してPBSを継ぎ足して容器を満たす。
15)それぞれのバッチから1.0mgのアリコートを取り出して、サイズおよびζ電位を測定する。
16)それぞれのバッチから3.0mgのアリコートをエッペンドルフチューブに分注する。
17)それぞれのバッチにつき、エッペンドルフチューブにTweenを0.5容積パーセントになるまで添加する。
18)液体窒素中でチューブを瞬間冷凍して、冷凍庫に収納する。
【0221】
均等物
当業者は、本明細書に記載される、本発明の特定の実施形態の多くの均等物を、通常のルーチン実験を用いて理解するか、または確認することができる。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0222】
参照による援用
本明細書に引用されるすべての特許、公開特許出願、ウェブサイト、および他の参考文献の内容全体は、参照によりそれらの全体がここに明示的に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療剤を含む複数の標的特異的ステルス型ナノ粒子を含み、
前記ナノ粒子が、前記ナノ粒子に結合される標的化部分を含有し、前記標的化部分が低分子量PSMAリガンドである、
医薬組成物。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、前立腺癌の治療を必要とする対象の前立腺癌の治療に有効な量の標的化部分を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ナノ粒子が、固形腫瘍の治療を必要とする対象の腫瘍新生血管にPSMAを発現する固形腫瘍の治療に有効な量の標的化部分を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記低分子量PSMAリガンドが、0.5nM〜10nMの間のKを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記低分子量PSMAリガンドが、1000g/mol未満の分子量を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記低分子量PSMAリガンドが、化合物I、II、III、およびIV:

ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体から構成される群から選択され、式中、mおよびnが、それぞれ独立して、0、1、2、または3であり、
pが0または1であり、
、R、R、およびRが、それぞれ独立して、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアリール、およびそれらの任意の組み合わせから構成される群から選択され、
がHまたはCHであり、
、R、R、またはRが、前記ナノ粒子との共有結合的な結合点を含む、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
、R、R、およびRが、それぞれ独立して、OH、SH、NH、またはCOHで1回もしくは複数回独立して置換されたC1‐6‐アルキルもしくはフェニル、またはC1‐6‐アルキルもしくはフェニルの任意の組み合わせであり、前記アルキル基が、N(H)、S、またはOによって中断され得る、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
、R、R、およびRが、それぞれ独立して、CH‐Ph、(CH‐SH、CH‐SH、(CHC(H)(NH)COH、CHC(H)(NH)COH、CH(NH)CHCOH、(CHC(H)(SH)COH、CH‐N(H)‐Ph、O‐CH‐Ph、またはO‐(CH‐Phであり、それぞれのPhが、OH、NH、COH、またはSHで1回もしくは複数回独立して置換され得る、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記低分子量PSMAリガンドが、

ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体から構成される群から選択され、式中、NH、OH、またはSH基が、前記ナノ粒子との共有結合的な結合点としての役割を果たす、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記低分子量PSMAリガンドが、

ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体から構成される群から選択され、式中、Rが、NH;SH;OH;COH;NH、SH、OH、またはCOHで置換されたC1‐6‐アルキル;およびNH、SH、OH、またはCOHで置換されたフェニルから構成される群から独立して選択され、
Rが、前記ナノ粒子との共有結合的な結合点としての役割を果たす、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記低分子量PSMAリガンドが、

ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体から構成される群から選択され、これらのうちのいずれもが、NH;SH;OH;COH;NH、SH、OH、もしくはCOHで置換されたC1‐6‐アルキル;またはNH、SH、OH、もしくはCOHで置換されたフェニルでさらに置換され得、これらの官能基が、前記ナノ粒子との共有結合的な結合点としての役割を果たす、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記低分子量PSMAリガンドが、

およびその鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体であり、式中、NH基が、前記ナノ粒子との共有結合的な結合点としての役割を果たす、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記ナノ粒子が、ポリマーマトリックスを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記ポリマーマトリックスが、2つ以上のポリマーを含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記ポリマーマトリックスが、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ酸無水物、ポリヒドロキシ酸、フマル酸ポリプロピル(polypropylfumerates)、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシアノアクリレート、ポリ尿素、ポリスチレン、もしくはポリアミン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記ポリマーマトリックスが、1つもしくは複数のポリエステル、ポリ酸無水物、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、またはポリシアノアクリレートを含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
少なくとも1つのポリマーが、ポリアルキレングリコールである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコールである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
少なくとも1つのポリマーが、ポリエステルである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記ポリエステルが、PLGA、PLA、PGA、およびポリカプロラクトンから構成される群から選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記ポリエステルが、PLGAまたはPLAである、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記ポリマーマトリックスが、2つ以上のポリマーのコポリマーを含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記コポリマーが、ポリアルキレングリコールとポリエステルとのコポリマーである、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記コポリマーが、PLGAまたはPLAとPEGとのコポリマーである、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記ポリマーマトリックスが、PLGAまたはPLA、およびPLGAまたはPLAとPEGとのコポリマーを含む、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記ポリマーマトリックスが、脂質末端(lipid−terminated)ポリアルキレングリコールおよびポリエステルを含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記ポリマーマトリックスが、脂質末端PEGおよびPLGAを含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記脂質が、式V

のものおよびその塩であり、式中、それぞれのRが、独立して、C1‐30アルキルである、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記脂質が、1,2ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン(DSPE)、およびその塩である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記ポリマーマトリックスの一部分が、前記低分子量PSMAリガンドに共有結合的に結合される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記ポリマーマトリックスが、PEGの自由末端を介して、前記低分子量PSMAリガンドに共有結合的に結合される、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記ポリマーマトリックスが、前記PEGの自由末端のカルボキシル基を介して、前記低分子量PSMAリガンドに共有結合的に結合される、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記ポリマーマトリックスが、前記PEGの自由末端のマレイミド官能基を介して、前記低分子量PSMAリガンドに共有結合的に結合される、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記ナノ粒子が、前記前立腺癌の治療に有効なリガンド結合ポリマー対非官能化ポリマーの比率を有する、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記ポリマーマトリックスの前記ポリマーが、前記前立腺癌の治療に有効な分子量を有する、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記ナノ粒子が、前記前立腺癌の治療に有効な表面電荷を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記システムが、疾患または疾病の標的特異的な治療、および治療剤の送達に好適である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記治療剤が、前記ナノ粒子の表面に会合している、前記ナノ粒子の中に封入されている、前記ナノ粒子に囲まれている、または前記ナノ粒子全体に分散されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記治療剤が、前記ナノ粒子の疎水性コア内に封入されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記治療剤が、ミトキサントロンおよびドセタキセルから構成される群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記治療剤が、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ゲムシタビン(ジェムザール)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5‐フルオロウラシル(5‐FU)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT‐11、10‐ヒドロキシ‐7‐エチルカンプトテシン(SN38)、ダカルバジン、S‐Iカペシタビン、フトラフール、5’‐デオキシフルオロウリジン、UFT、エニルウラシル、デオキシシチジン、5‐アザシトシン、5‐アザデオキシシトシン、アロプリノール、2‐クロロアデノシン、トリメトレキサート、アミノプテリン、メチレン‐10‐デアザアミノプテリン(MDAM)、オキサリプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、サトラプラチン、白金‐DACH、オルマプラチン、CI‐973、JM‐216、およびその類似体、エピルビシン、エトポシドホスフェート、9‐アミノカンプトテシン、10,11‐メチレンジオキシカンプトテシン、カレニテシン、9‐ニトロカンプトテシン、TAS103、ビンデシン、L‐フェニルアラニンマスタード、イホスファミドメホスファミド(ifosphamidemefosphamide)、ペルホスファミド、トロホスファミドカルムスチン、セムスチン、エポチロンA〜E、トムデックス、6‐メルカプトプリン、6‐チオグアニン、アムサクリン、エトポシドホスフェート、カレニテシン、アシクロビル、バルアシクロビル、ガンシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、ラミブジン、ジドブジン、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、および5‐フルオロウラシル、およびそれらの組み合わせ等の化学療法剤から構成される群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記治療剤がsiRNAである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記siRNAの分子が、腫瘍に関連する標的に相補的である、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
請求項1に記載の前記医薬組成物の有効量を、前立腺癌の治療を必要とする対象に投与するステップを含む、前記対象の前立腺癌を治療する方法。
【請求項45】
前記医薬組成物が、対象の前立腺に直接投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記医薬組成物が、前立腺癌細胞に直接投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記医薬組成物が、前立腺癌細胞を含む組織への注入によって、前記前立腺癌細胞に直接投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記医薬組成物が、腫瘍の外科的除去の最中に、前立腺癌細胞またはその付近にナノ粒子を埋め込むことによって、前記対象に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記医薬組成物が、全身的に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記医薬組成物が、静脈内に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記癌の治療のための薬物の製造における、請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項52】
前記癌が前立腺癌である、請求項51に記載の使用。
【請求項53】
前記医薬組成物が、静脈内に投与される、請求項51に記載の使用。
【請求項54】
ステルス型ナノ粒子を調製する方法であって、前記ナノ粒子が、前記前立腺癌の治療に有効なリガンド結合ポリマー対非官能化ポリマーの比率を有し、
前記ステルス型ナノ粒子が形成されるように、
治療剤を提供するステップと、
第1のポリマーを提供するステップと、
低分子量PSMAリガンドを提供するステップと、
前記第1のポリマーを前記低分子量PSMAリガンドと反応させて、リガンド結合ポリマーを調製するステップと、
前記リガンド結合ポリマーを、第2の非官能化ポリマー、および前記治療剤と混合するステップと
を含む、方法。
【請求項55】
前記第1のポリマーが、2つ以上のポリマーのコポリマーを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記第2の非官能化ポリマーが、2つ以上のポリマーのコポリマーを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記コポリマーが、PLGAとPEG、またはPLAとPEGのコポリマーである、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
前記第1のポリマーが、PLGAとPEGのコポリマーであり、前記PEGが、前記自由末端にカルボキシル基を有する、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記第1のポリマーは、ポリマー/脂質複合体を形成するように最初に脂質と反応させ、その後、前記低分子量PSMAリガンドと混合される、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
前記脂質が、1,2ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン(DSPE)、およびその塩である、請求項59記載の方法。
【請求項61】
前記ナノ粒子が、癌の治療を必要とする対象の癌細胞の表面上または腫瘍新生血管にPSMAを発現する癌の治療に有効な量の標的化部分を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項62】
前記PSMAに関連する表示が、前立腺癌、肺非小細胞癌、結腸直腸癌、および膠芽腫から構成される群から選択される、請求項61に記載の医薬組成物。
【請求項63】
PLGAとPEGとのコポリマーと、
ミトキサントロンまたはドセタキセルを含む治療剤と
を含む、ステルス型ナノ粒子であって、
前記ナノ粒子が、前記ナノ粒子に結合される標的化部分を含有し、前記標的化部分が低分子量PSMAリガンドである、
ステルス型ナノ粒子。
【請求項64】
リン脂質結合PEGとPLGAとの錯体を含むポリマーマトリックスと、
治療剤と
を含む、ステルス型ナノ粒子であって、
前記ナノ粒子が、前記ナノ粒子に結合される標的化部分を含有し、前記標的化部分が低分子量PSMAリガンドである、
ステルス型ナノ粒子。
【請求項65】
前記治療剤が、ミトキサントロンまたはドセタキセルである、請求項64に記載のステルスポリマー。
【請求項66】
前記低分子量PSMAリガンドが、

およびその鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体である、請求項63または64に記載のステルスポリマー。
【請求項67】
化合物

およびその鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体。
【請求項68】
前記化合物のアミン置換基が、ポリ(エチレングリコール)に共有結合的に結合される、請求項67に記載の化合物。
【請求項69】
化合物

であって、
式中、nが1〜100,000である、化合物。
【請求項70】
化合物

であって、
式中、R、R、R、R、およびRが、請求項6に記載の式I、II、III、またはIVについて記載された定義を有し、RおよびRがアルキル基であり、Rがエステルまたはアミド結合であり、X=0〜1モル分率であり、Y=0〜0.5モル分率であり、X+Y=20〜1720であり、かつZ=25〜455である、化合物。
【請求項71】
化合物

であって、
式中、RおよびRがアルキル基であり、Rがエステルまたはアミド結合であり、X=0〜1モル分率であり、Y=0〜0.5モル分率であり、X+Y=20〜1720であり、かつZ=25〜455である、化合物。
【請求項72】
請求項69〜71のうちのいずれか1項に記載の治療剤および化合物を含む、標的特異的ステルス型ナノ粒子。
【請求項73】
治療剤を含む複数の標的特異的ステルス型ナノ粒子を含み、
前記ナノ粒子が、前記ナノ粒子に結合される標的化部分を含有し、前記標的化部分が低分子量PSMAリガンドであり、前記治療剤がsiRNAである、
医薬組成物。
【請求項74】
前記siRNAが、VEGFの発現を抑制する、請求項73に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−540535(P2010−540535A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526977(P2010−526977)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/058873
【国際公開番号】WO2008/121949
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(510083773)バインド バイオサイエンシズ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】