ナビゲーションシステムおよび代表旅行時間の設定方法並びにプログラム
【課題】道路の旅行時間の確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合でも、より適正に代表旅行時間を設定する。
【解決手段】対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合には、各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2と対象道路において信号機により車両が停止する信号停止確率Pstpとを反映させて得られた指標値Jpk1,Jpk2のうち大きい方のピーク値を選択し(S200〜S260)、選択したピーク値の旅行時間を代表旅行時間Ttrpとして設定する(S270,S280)。これにより、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布の平均値を代表旅行時間として設定する場合に比して、代表旅行時間Ttrpが実際の道路の旅行時間と乖離するという事態を回避することができ、より適正に代表旅行時間Ttrpを設定することができる。
【解決手段】対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合には、各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2と対象道路において信号機により車両が停止する信号停止確率Pstpとを反映させて得られた指標値Jpk1,Jpk2のうち大きい方のピーク値を選択し(S200〜S260)、選択したピーク値の旅行時間を代表旅行時間Ttrpとして設定する(S270,S280)。これにより、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布の平均値を代表旅行時間として設定する場合に比して、代表旅行時間Ttrpが実際の道路の旅行時間と乖離するという事態を回避することができ、より適正に代表旅行時間Ttrpを設定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーションシステムおよび代表旅行時間の設定方法並びにプログラムに関し、詳しくは、各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を設定するナビゲーションシステムおよびこうしたナビゲーションシステムにおける代表旅行時間の設定方法並びにコンピュータを各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を設定する装置として機能させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のナビゲーションシステムとしては、探索された推奨経路に関する各道路の過去の所要時間データを情報センタから取得し、取得した各道路の過去の所要時間データを統計処理すると共に統合することによって現在地から目的地までの推奨経路に沿った所要時間の確率密度分布を生成し、この確率密度分布のピーク値に対する所要時間を推奨経路を走行した場合に要する推定所要時間として推定し、確率密度分布においてピーク値を含んで確率が90%となる範囲の下限値及び上限値を推定所要時間に対する誤差の最小値および最大値として推定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、情報センタから取得した各道路の過去の所要時間データを統計処理することによって各道路の平均所要時間とその所要時間の変動幅を確率密度分布として計算し、計算した各道路の確率密度分布を統合することによって現在地から目的地までの推奨経路に沿った所要時間の確率分布密度を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−69609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のナビゲーションシステムでは、情報センタから推奨経路に関する各道路の過去の所要時間データを取得して各道路の所要時間の確率密度分布を計算すると共にこれらを統合して推奨経路に沿った所要時間の確率密度分布を計算し、この推奨経路に沿った所要時間の確率分布密度に基づいて推定所要時間と誤差とを推定するため、推定所要時間と誤差とを推定するための処理が煩雑となり、迅速な処理ができない場合が生じる。所要時間データを統計処理する場合には、ある程度の確からしさを得るためには多数のデータ数を必要とするため、所要時間データの取得のために必要な通信時間や各道路の所要時間の確率分布密度の計算するのに必要な計算時間を要する。また、推奨経路をより適正に設定するためには、地図上の道路における交差点等の全てをノードとして各ノード間を各道路として用いる必要があるため、推奨経路が都会や市街地を経由するときには推奨経路を構成する各道路の数が飛躍的に多くなり、上述の通信時間や計算時間が長くなってしまう。
【0005】
こうした課題に対して、推定所要時間を計算するために用いる各道路の代表所要時間と代表誤差(最小値および最大値)を予め定めておき、推奨経路が設定されたときに推奨経路を構成する各道路の代表所要時間と代表誤差とをそれぞれ積算することによって推奨経路の推定所要時間と誤差とを計算することも考えられる。この場合、各道路の所要時間の確率密度分布におけるピーク値の所要時間を各道路の代表所要時間として設定し、各確率密度分布においてピーク値を含んで確率が例えば90%となる範囲の下限値および上限値を代表誤差として設定することも好適なものと考えられるが、道路に信号機が存在し、信号機により車両が停止するか否かにより、道路の所要時間の確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合には、上述のピーク値の所要時間を代表所要時間として設定することはできない。この場合、平均値を旅行所要時間として設定することも考えられるが、信号機により車両が停止する場合でも停止しない場合でも、いずれも場合でも実際の道路の所要時間はその道路の代表所要時間とは異なるものとなってしまう。また、道路の所要時間の確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合に、確率が90%となる範囲の下限値および上限値を代表誤差とすると、確率が90%となる範囲が広くなるために誤差が大きくなりすぎ、計算される推定所要時間の推定誤差も大きくなりすぎてしまう。
【0006】
なお、本明細書では、推奨経路だけでなくその他に探索された経路(例えば、有料道路優先の経路や一般道優先の経路,距離優先の経路など)を含め、いずれに対しても走行経路と称する。また、走行経路を走行するのに要する時間については、以下、各道路の旅行時間と称する。
【0007】
本発明のナビゲーションシステムおよび代表旅行時間の設定方法並びにプログラムは、各道路の旅行時間の確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合に、より適正に代表旅行時間を設定することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のナビゲーションシステムおよび代表旅行時間の設定方法並びにプログラムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0009】
本発明のナビゲーションシステムは、
各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を設定するナビゲーションシステムであって、
前記各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得する確率分布密度取得手段と、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、該極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定するとともに、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布と前記対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて前記二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、該選択した極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定する代表旅行時間設定手段と、
を備えることを要旨とする。
【0010】
この本発明のナビゲーションシステムでは、まず、各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得する。そして、取得した確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、その極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定し、確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、確率密度分布と対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、選択した極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定する。ここで、「各道路」における「道路」は、例えば、地図上の道路において隣接する交差点をノードとしたときのノード間や、有料道路や高速道路においてはインターチェンジ間などとしたりすることもできる。「旅行時間」は、一方のノード(交差点)を出発してから他方のノード(交差点)を通過するまでに要する時間が相当する。「確率密度分布」の取得は、他の装置やシステムで得られる確率密度分布を入力することにより行なうものとしてもよいし、各道路に対して各々複数の旅行時間を取得すると共にこれから各道路の確率密度分布を計算することにより行なうものとしてもよいし、更に、各道路のうち対象の道路を走行するのに要した旅行時間を複数収集すると共に収集した旅行時間に基づいて各道路の確率密度分布を計算することにより行なうものとしてもよい。「確率密度分布に二つの極大値が存在するとき」としては、対象の道路に信号機が存在し、対象の道路を走行するときに信号機により車両が停止しないか停止するかの事象が生じるときが想定される。「信号停止確率」は、一方のノード(交差点)を出発して他方のノード(交差点)まで走行する際に、他方のノードに信号機が存在するときには、当該他方のノードの信号機にて停止する確率が相当する。このように、本発明のナビゲーションシステムでは、確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、確率密度分布と信号停止確率とに基づいて二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、選択した極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定するから、選択された極大値に対する事象については、代表旅行時間は実際の旅行時間に対して確率密度分布と信号停止確率とに基づく一致の程度となるから、平均値を代表旅行時間として設定した場合に生じる事態、即ち、信号機により車両が停止するか否かの事象のいずれに対しても代表旅行時間が実際の道路の旅行時間と乖離するという事態を回避することができる。したがって、平均値を代表旅行時間として設定した場合に比して、より適正に代表旅行時間を設定することができる。
【0011】
こうした本発明のナビゲーションシステムにおいて、前記代表旅行時間設定手段は、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布を前記二つの極大値のうち旅行時間の短い第1の極大値に属する範囲と旅行時間の長い第2の極大値に属する範囲とに所定の基準によって区分けし、前記第1の極大値に属する範囲の確率と100%から前記信号停止確率を減じて得られる確率とに基づいて前記第1の極大値に対する指標値を演算すると共に、前記第2の極大値に属する範囲の確率と前記信号停止確率とに基づいて前記第2の極大値に対する指標値を演算し、前記演算した二つの指標値のうち大きい方の指標値に対応する極大値を前記選択した極大値として選択する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、確率密度分布と信号停止確率とをより適正に反映させて代表旅行時間を設定することができる。
【0012】
ここで、「所定の基準」は、前記確率密度分布のうち前記第1の極大値の旅行時間より短い旅行時間に対する第1の分布は前記第1の極大値に属する範囲に含まれ、前記確率密度分布のうち前記第2の極大値の旅行時間より長い旅行時間に対する第2の分布は前記第2の極大値に属する範囲に含まれ、前記確率密度分布のうち前記第1の極大値の旅行時間と前記第2の極大値の旅行時間との間の旅行時間に対する中間分布は前記第1の分布と前記第2の分布とに応じて前記第1の極大値に属する範囲と前記第2の極大値に属する範囲とに按分される基準である、ものとすることもできる。こうすれば、容易に第1の極大値に属する範囲と第2の極大値に属する範囲とを区分けすることができ、容易に第1の極大値に属する範囲の確率と第2の極大値に属する範囲の確率とを計算することができる。
【0013】
また、本発明のナビゲーションシステムにおいて、前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、前記確率密度分布に対して前記代表旅行時間を含む所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定する誤差時間設定手段と、目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、前記走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより前記推定所要時間の誤差時間を演算する所要時間演算手段と、を備えるものとすることもできる。このように、確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、確率密度分布のうち代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を代表旅行時間に対する誤差時間として設定するから、誤差時間が大きくなりすぎるのを抑制することができる。
【0014】
さらに、本発明のナビゲーションシステムにおいて、前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、前記確率密度分布に対して前記代表旅行時間を含む所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である第1の小側誤差時間および第1の大側誤差時間を演算すると共に前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値とは異なる極大値に属する分布に対して該極大値に対する旅行時間を含む前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と該極大値に対する旅行時間との差である第2の小側誤差時間および第2の大側誤差時間を演算し、前記第1の小側誤差時間と前記第2の小側誤差時間とのうち大きい方と前記第1の大側誤差時間と前記第2の大側誤差時間とのうち大きい方とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定する誤差時間設定手段と、目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、前記走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより前記推定所要時間の誤差時間を演算する所要時間演算手段と、を備えるものとすることもできる。このように、二つの極大値に属する分布の各々に対して小側誤差時間(第1の小側誤差時間および第2の小側誤差時間)と大側誤差時間(第1の大側誤差時間および第2の大側誤差時間)とを演算し、二つの小側誤差時間のうちの大きい方と二つの大側誤差時間のうちの大きい方とを代表旅行時間に対する誤差時間として設定するから、誤差時間が大きくなりすぎるのを抑制することができる。
【0015】
本発明のナビゲーションシステムにおいて、前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、前記確率密度分布に対して前記代表旅行時間を含む所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、前記二つの極大値の旅行時間のうち短い方が前記代表旅行時間として設定されるときには、前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を演算すると共に前記演算された大側誤差時間に対して前記信号停止確率に相当する分だけ増大した増分大側誤差時間を演算し、前記小側誤差時間と前記増分大側誤差時間とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、前記二つの極大値の旅行時間のうち長い方が前記代表旅行時間として設定されるときには、前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を演算すると共に前記演算された小側誤差時間に対して100%から前記信号停止確率を減じて得られる確率に相当する分だけ増大した増分小側誤差時間を演算し、前記増分小側誤差時間と前記大側誤差時間とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定する誤差時間設定手段と、目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、前記走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより前記推定所要時間の誤差時間を演算する所要時間演算手段と、を備えるものとすることもできる。このように、確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、二つの極大値の旅行時間のうち短い方が代表旅行時間として設定されるときには、代表旅行時間に対応する極大値に属する分布を用いて小側誤差時間と大側誤差時間を演算すると共に大側誤差時間に対して信号停止確率に相当する分だけ増大した増分大側誤差時間を演算し、小側誤差時間と増分大側誤差時間とを代表旅行時間に対する誤差時間として設定することにより、確率密度分布に代表旅行時間として設定されなかった長い旅行時間となる極大値が存在する意義を誤差時間に反映することができる。また、確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、二つの極大値の旅行時間のうち長い方が代表旅行時間として設定されるときには、代表旅行時間に対応する極大値に属する分布を用いて小側誤差時間と大側誤差時間を演算すると共に小側誤差時間に対して100%から信号停止確率を減じて得られる確率に相当する分だけ増大した増分小側誤差時間を演算し、増分小側誤差時間と大側誤差時間とを代表旅行時間に対する誤差時間として設定することにより、確率密度分布に代表旅行時間として設定されなかった短い旅行時間となる極大値が存在する意義を誤差時間に反映することができる。
【0016】
確率密度分布に二つの極大値が存在するときに確率密度分布を二つの極大値のうち旅行時間の短い第1の極大値に属する範囲と旅行時間の長い第2の極大値に属する範囲とに所定の基準によって区分けする態様の本発明のナビゲーションシステムにおいて、前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、前記確率密度分布に対して前記代表旅行時間を含む所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、前記第1の極大値の旅行時間が代表旅行時間として設定されるときには、前記確率密度分布のうち前記第1の極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を演算すると共に前記演算された大側誤差時間に対して前記第2の極大値に属する範囲の確率に相当する分だけ増分した増分大側誤差時間を演算し、前記小側誤差時間と前記増分大側誤差時間とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、前記第2の極大値の旅行時間が代表旅行時間として設定されるときには、前記確率密度分布のうち前記第2の極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を演算すると共に前記演算された小側誤差時間に対して前記第1の極大値に属する範囲の確率に相当する分だけ増分した増分小側誤差時間を演算し、前記増分小側誤差時間と前記大側誤差時間とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定する誤差時間設定手段と、目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、前記走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより前記推定所要時間の誤差時間を演算する所要時間演算手段と、を備えるものとすることもできる。このように、第1の極大値の旅行時間が代表旅行時間として設定されるときには、第1の極大値に属する分布を用いて小側誤差時間と大側誤差時間を演算すると共に大側誤差時間に対して第2の極大値に属する範囲の確率に相当する分だけ増分した増分大側誤差時間を演算し、小側誤差時間と増分大側誤差時間とを代表旅行時間に対する誤差時間として設定することにより、確率密度分布に代表旅行時間として設定されなかった第2の極大値が存在する意義を誤差時間に反映することができる。第2の極大値の旅行時間が代表旅行時間として設定されるときには、第2の極大値に属する分布を用いて小側誤差時間と大側誤差時間を演算すると共に小側誤差時間に対して第1の極大値に属する範囲の確率に相当する分だけ増分した増分小側誤差時間を演算し、増分小側誤差時間と大側誤差時間とを代表旅行時間に対する誤差時間として設定することにより、確率密度分布に代表旅行時間として設定されなかった第1の極大値が存在する意義を誤差時間に反映することができる。
【0017】
上述の誤差時間設定手段と所要時間演算手段とを備える態様の本発明のナビゲーションシステムでは、目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより推定所要時間の誤差時間を演算するから、背景技術で説明したもの、即ち、情報センタから走行経路を構成する各道路の過去の旅行時間データを取得して各道路の旅行時間の確率密度分布を計算すると共にこれらを統合して走行経路に沿った所要時間の確率密度分布を計算し、この走行経路に沿った所要時間の確率分布密度に基づいて推定所要時間と誤差とを推定するもの、に比して、迅速に推定所要時間とその誤差時間とを演算することができる。ここで、「所定の確率」としては、70%や80%,90%などの種々の確率を用いることができる。第1の極大値の左側(即ち、第1の極大値よりも小さい旅行時間)については第1の極大値に属し、第2の極大値の右側(即ち、第2の極大値よりも大きい旅行時間)については第2の極大値に属するものとし、第1の極大値と第2の極大値との間については、第1の極大値の左側の分布をその右側に適用すると共に第2の極大値の右側の分布をその左側に適用し、適用した分布の和と確率密度分布との差を適用した分布におけるそれぞれの確率密度に応じて按分することにより、「第1の極大値に属する分布」と「第2の極大値に属する分布」とを求めるものとしてもよいし、第1の極大値の左側と第1の極大値の左側の分布をその右側に適用したものとを「第1の極大値に属する分布」とすると共に第2の極大値の右側と第2の極大値の右側の分布をその左側に適用したものとを「第2の極大値に属する分布」として求めるものとしてもよい。「確率密度分布のうち代表旅行時間に対応する極大値に属する分布」と「確率密度分布のうち代表旅行時間に対応する極大値とは異なる極大値に属する分布」については、上述の「第1の極大値に属する分布」と「第2の極大値に属する分布」についてと同様である。
【0018】
本発明の代表旅行時間設定方法は、
各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を用いるナビゲーションシステムにおける前記代表旅行時間の設定方法であって、
前記各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得し、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、該極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定するとともに、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布と前記対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて前記二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、該選択した極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定する、
ことを特徴とする。
【0019】
この本発明の代表旅行時間設定方法では、まず、各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得する。そして、取得した確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、その極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定し、確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、確率密度分布と対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、選択した極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定する。このように、本発明のナビゲーションシステムでは、確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、確率密度分布と信号停止確率とに基づいて二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、選択した極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定するから、選択された極大値に対する事象については、代表旅行時間は実際の旅行時間に対して確率密度分布と信号停止確率とに基づく一致の程度となるから、平均値を代表旅行時間として設定した場合に生じる事態、即ち、信号機により車両が停止するか否かの事象のいずれに対しても代表旅行時間が実際の道路の旅行時間と乖離するという事態を回避することができる。したがって、平均値を代表旅行時間として設定した場合に比して、より適正に代表旅行時間を設定することができる。ここで、「各道路」における「道路」や「旅行時間」,「確率密度分布」の取得,「確率密度分布に二つの極大値が存在するとき」,「信号停止確率」については上述した本発明のナビゲーションシステムと同様である。
【0020】
本発明のプログラムは、
コンピュータを各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を設定する装置として機能させるプログラムであって、
前記各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得するモジュールと、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、該極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定するとともに、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布と前記対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて前記二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、該選択した極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定するモジュールと、
がコンピュータに読み取り可能に記述されていることを特徴とする。
【0021】
本発明のプログラムは、コンピュータが読み取り実行することにより、コンピュータを、各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得し、この取得した確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、その極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定し、確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、確率密度分布と対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、選択した極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定する装置として、機能させることができる。そして、このように、確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、確率密度分布と信号停止確率とに基づいて二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、選択した極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定するから、選択された極大値に対する事象については、代表旅行時間は実際の旅行時間に対して確率密度分布と信号停止確率とに基づく一致の程度となるから、平均値を代表旅行時間として設定した場合に生じる事態、即ち、信号機により車両が停止するか否かの事象のいずれに対しても代表旅行時間が実際の道路の旅行時間と乖離するという事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例としてのナビゲーションシステム20の構成の概略を示す構成図。
【図2】ナビゲーション装置21により実行される推定所要時間演算処理の一例を示すフローチャート。
【図3】具体例としての走行経路の一例を示す説明図。
【図4】具体例としての走行経路の対象道路R(n)を示す説明図。
【図5】具体例としての走行経路に対する推定所要時間Testと推定誤差時間(最小値MIN,最大値MAX)とをディスプレイ22に表示した際の一例を示す説明図。
【図6】情報センター60の電子制御ユニット70により実行される旅行時間設定処理の一例を示すフローチャート。
【図7】対象道路の旅行時間に対する確率密度分布にピーク値が一つだけ存在する場合の確率密度分布と境界値T1,T2の一例を示す説明図。
【図8】対象道路の旅行時間に対する確率密度分布にピーク値が二つ存在する場合の各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2を計算する様子の一例を示す説明図。
【図9】実施例における対象道路の旅行時間に対する確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離する様子の一例を示す説明図。
【図10】各ピーク値に関する分布に対して小側旅行時間T11、T21と大側旅行時間T12,T22を設定している様子を示す説明図。
【図11】変形例のダブルピーク時代表誤差時間設定処理の一例を示すフローチャート。
【図12】変形例のダブルピーク時代表誤差時間設定処理の一例を示すフローチャート。
【図13】変形例のダブルピーク時代表誤差時間設定処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0024】
図1は、本発明の一実施例としてのナビゲーションシステム20の構成の概略を示す構成図である。実施例のナビゲーションシステム20は、図示するように、車載されたナビゲーション装置21と、このナビゲーション装置21と通信する情報センター60とにより構成されている。
【0025】
ナビゲーション装置21は、文字や画像を表示する画面を有する例えば液晶ディスプレイとして構成されたディスプレイ22と、ディスプレイ22の画面に取り付けられた抵抗膜方式や静電容量方式などによるタッチパネル24と、装置全体をコントロールする電子制御ユニット30と、各種アプリケーションソフトウェアや地図データなどを記憶する大容量メモリとしてのハードディスクドライブ(以下、HDDという)40と、情報センター60と通信するための通信装置58と、を備え、図示しない自動車に搭載された車載バッテリからの電力供給を受けて作動する。
【0026】
電子制御ユニット30は、CPU32を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU32の他に各種処理プログラムを記憶するROM34と、データを一時的に記憶するRAM36と、記憶したデータを保持する不揮発性のフラッシュメモリ38と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。電子制御ユニット30には、操作者のタッチ位置を検出するタッチパネル24からの信号やHDD40から読み出したデータ,GPS(Global Positioning System)衛星からの信号をGPSアンテナを介して受信するGPS受信機50からの信号,車両の進行方向やその変化を検出する例えばジャイロセンサにより構成された方位センサ52からの信号,通信アンテナを介して情報センター60から送信される情報を受信する通信装置58からの情報としての信号などが入力ポートを介して入力されている。電子制御ユニット30からは、ディスプレイ22への表示信号やアンプを内蔵したスピーカ26への音声信号,HDD40に書き込むデータ,通信装置58から送信する情報としての信号などが出力ポートを介して出力されている。また、電子制御ユニット30は、車両全体をコントロールする図示しない車両用電子制御ユニットと通信ポートを介して接続されており、例えば車速パルス信号などの車両の状態に関するデータを入力すると共に必要に応じてナビゲーション装置20の状態に関するデータを車両に出力している。
【0027】
実施例のナビゲーション装置20では、電子制御ユニット30は、HDD40から必要なアプリケーションソフトウェアや地図データを読み出して各種処理を実行する。例えば、GPS受信機50からの信号や方位センサ52からの信号に基づいて車両の現在位置を特定するロケーション処理や、ディスプレイ22に地図画像を表示する地図表示処理、目的地への走行経路を探索して地図表示したりスピーカ26からの音声出力によりルート案内を行なうナビゲーション処理、探索された走行経路の推定所要時間と推定誤差時間とを推定して表示する推定所要時間演算部54による推定所要時間演算処理などを実行する。
【0028】
実施例のHDD40は、地図データとして、予め定めた複数の縮尺で地図画像を表示可能とする地図画像データや、道路の幅員や車線数,歩道の幅などの道路データ、交差点や分岐,インターチェンジ毎に設けられた(隣接する)ノード間を区間としてその道路(区間)を走行するのに要する時間としての代表旅行時間やそれに対する誤差時間としての代表誤差時間(マイナス側の誤差時間としての最小値とプラス側の誤差時間としての最大値)などの道路時間データなどが更新日時やバージョンなどの更新履歴情報と共に記憶されている。そして、道路工事などにより地図画像データや道路データに変更が生じたり、交通量の変化や信号機の設置などにより道路時間データに変更が生じたりすると、変更された各データが情報センター60から通信により送信され、これを通信装置58により受信してHDD40に書き込むことにより、各データの更新を行ない、更新日時やバージョンの更新も行なわれる。
【0029】
情報センター60は、各種アプリケーションソフトウェアや最新の地図データなどを記憶する大容量メモリとしてのハードディスクドライブ(以下、HDDという)80と、車載されたナビゲーション装置21と通信するための通信装置88と、各種アプリケーションソフトウエアを実行すると共に通信装置88をコントロールする電子制御ユニット70と、を備える。
【0030】
情報センター60の電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に各種処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、記憶したデータを保持する不揮発性のフラッシュメモリ78と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。電子制御ユニット70には、通信アンテナを介してナビゲーション装置21から送信される情報を受信する通信装置88からの情報としての信号などが入力ポートを介して入力されており、電子制御ユニット30からは、通信装置88から通信アンテナを介してナビゲーション装置21へ送信される情報としての信号などが出力ポートを介して出力されている。また、電子制御ユニット70には、キーボードやマウス,外部大容量記憶装置(例えばUSBメモリ)などの周辺機器を接続するUSB(Universal Serial Bus)などの周辺機器接続装置90が取り付けられており、必要に応じて接続された周辺機器からデータの入力やデータの出力を行なうことができるようになっている。
【0031】
実施例の情報センター60では、電子制御ユニット80は、HDD80から必要なアプリケーションソフトウェアや地図データを読み出して各種処理を実行する。例えば、図1の機能ブロックに示すように、道路の代表旅行時間や誤差時間を更新したり作成するために予め作成されて外部大容量記憶装置に記憶された各道路の旅行時間に対する確率密度分布のデータを入力して取得する確率密度分布取得部82による確率密度分布取得処理や、取得した確率密度分布を用いて各道路の代表旅行時間を設定する代表旅行時間設定部83による代表旅行時間設定処理、代表旅行時間が設定された道路に対して確率密度分布を用いてマイナス側の誤差時間としての最小値とプラス側の誤差時間としての最大値とからなる代表誤差時間を設定する代表誤差時間設定部84による代表誤差時間設定処理、HDD80の地図データのバージョンとナビゲーション装置21のHDD40の地図データのバージョンが異なるときにナビゲーション装置21と通信してナビゲーション装置21のHDD40の地図データを更新するデータ更新部85によるデータ更新処理などを実行する。なお、確率密度分布取得部82や代表旅行時間設定部83,代表誤差時間設定部84,データ更新部85は、対応するアプリケーションソフトウェアとハードウエアとが一体となって実現される。
【0032】
次に、ナビゲーション装置21により目的地までの走行経路が探索されたときに走行経路を走行するのに要する推定所要時間と推定誤差時間とを演算してディスプレイ22に表示する際の処理について説明する。図2は、ナビゲーション装置21により実行される推定所要時間演算処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、目的地が設定されて走行経路が探索されたときに探索された走行経路毎に実行される。なお、説明の容易のために、適宜、図3に示すように、黒三角を丸で囲んだ自車位置マークで示す自車位置において「G」の旗の目的地マークの地点を目的地として設定し、太実線として走行経路が探索された場合を具体例として用いる。
【0033】
推定所要時間演算処理が実行されると、まず、探索された走行経路から走行経路を構成する対象道路R(n)を抽出する処理が行なわれる(ステップS100)。対象道路R(n)は、地図上の道路における交差点や分岐点,インターチェンジなどをノードとし、隣接するノード間の道路を意図する。具体例では、図4に例示するように、走行経路としての太実線上の各交差点や分岐点に相当するノードP1〜P5に対して、自車位置マークが存在するノードからノードP1までが対象道路R(1),ノードP1からノードP2までが対象道路R(2),ノードP2からノードP3までが対象道路R(3),ノードP3からノードP4までが対象道路R(4),ノードP4からノードP5までが対象道路R(5),ノードP5から目的地マークまでが対象道路R(6)となり、これらの対象道路R(1)〜R(6)が抽出される。なお、図4の具体例では、説明の簡略化として自車位置がノード上に存在する場合としている。
【0034】
次に、抽出した各々の対象道路R(n)の代表旅行間Ttrp(n)と代表誤差時間(最小値Mi(n),最大値Ma(n))をHDD40に記憶された地図データに含まれる道路時間データから読み出し(ステップS110)、読み出した代表旅行間Ttrp(n)を積算して推定所要時間Testを計算すると共に(ステップS120)、代表誤差時間としての最小値Mi(n),最大値Ma(n)を各々積算して推定誤差時間としての最小値MIN,最大値MAXを計算する(ステップS130)。そして、計算した推定所要時間Testと推定誤差時間(最小値MIN,最大値MAX)をディスプレイ22に表示して(ステップS140)、処理を終了する。具体例に対して推定所要時間Testと推定誤差時間(最小値MIN,最大値MAX)をディスプレイ22に表示している一例を図5に示す。図示するように、推定所要時間Testは「所要時間」として「0:25」、即ち25分として表示され、推定誤差時間の最小値MINは「所要時間 0:25」の右下に「−7」、即ち7分として表示され、推定誤差時間の最大値MAXは「所要時間 0:25」の右上に「+10」、即ち「10分」として表示されている。なお、実施例のナビゲーション装置21では、推定所要時間Testと推定誤差時間(最小値MIN,最大値MAX)をディスプレイ22にそのまま表示するものとしたが、現在時刻に推定所要時間Testを加えて「到着予定時刻」として表示し、「到着予定時刻」から推定誤差時間の最小値MINを減じた時刻を「最小誤差時刻」として表示すると共に「到着予定時刻」に推定誤差時間の最大値MAXを加えた時刻を「最大誤差時間」として表示するものとしてもよい。この場合、表示の仕方としては、文字表示によるものや、時計図柄を用いた図柄表示によるものとしてもよい。
【0035】
次に、こうした推定所要時間演算処理に用いられる対象道路の代表旅行時間Ttrpと代表誤差時間(最小値Miと最大値Ma)とを設定する処理について説明する。図6は、情報センター60の電子制御ユニット70により実行される旅行時間設定処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、情報センター60の電子制御ユニット70で旅行時間設定処理を行なうアプリケーションソフトウエアが読み込まれて実行されることにより実行される。
【0036】
旅行時間設定処理が実行されると、まず、代表旅行時間Ttrpと代表誤差時間(最小値Miと最大値Ma)を設定する対象となる対象道路の旅行時間に対する確率密度分布を取得する処理を実行する(ステップS200)。この対象道路の旅行時間に対する確率密度分布を取得する処理は、実施例では、予め対象道路を走行するのに要する旅行時間を多数収集すると共にこれを統計処理により旅行時間に対する確率密度分布として表わすデータを作成して外部大容量記憶装置に記憶しておき、周辺機器接続装置90を介して外部大容量記憶装置を接続し、外部大容量記憶装置から対象道路の旅行時間に対する確率密度分布として表わすデータを入力することにより行なうものとした。なお、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布を取得する処理としては、予め対象道路を走行するのに要する旅行時間を多数収集して対象道路の多数の旅行時間データとして外部大容量記憶装置に記憶しておき、周辺機器接続装置90を介して外部大容量記憶装置を接続し、外部大容量記憶装置から対象道路の多数の旅行時間データを入力し、これを統計処理により旅行時間に対する確率密度分布として表わすデータを作成することにより行なうものとしてもよいし、通信装置88を介して対象道路を走行するのに要する旅行時間を多数収集し、これを統計処理により旅行時間に対する確率密度分布として表わすデータを作成することにより行なうものとしてもよい。
【0037】
対象道路の旅行時間に対する確率密度分布を取得すると、確率密度分布にピーク値(極大値)が一つだけ存在するか二つ存在するかを判定する(ステップS210)。確率密度分布にピーク値が一つだけ存在するときには、ピーク値(極大値)の旅行時間Tpkを代表旅行時間Ttrpに設定し(ステップS220)、確率密度分布に対してピーク値を含んで予め定められた所定確率(例えば、70%や80%,90%など)以上となる旅行時間の範囲の境界値(下限値としての最小旅行時間T1,上限値としての最大旅行時間T2)を導出し(ステップS300)、次式(1),(2)により代表旅行時間Ttrpと境界値(最小旅行時間T1,最大旅行時間T2)との差分を代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)として計算して(ステップS310)、本処理を終了する。対象道路の旅行時間に対する確率密度分布にピーク値が一つだけ存在する場合の確率密度分布と境界値T1,T2の一例を図7に示す。
【0038】
Mi=Ttrp-T1 (1)
Ma=T2-Ttrp (2)
【0039】
ステップS210で確率密度分布に二つのピーク値(極大値)が存在すると判定されたときには、各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2を計算する(ステップS230)。各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2は、実施例では、二つのピーク値のうち旅行時間が短い方を第1ピーク値とすると共に旅行時間が長い方を第2ピーク値とすると、旅行時間軸上で第1ピーク値より左側の部分については第1ピーク値に属し、第2ピーク値より右側の部分については第2ピーク値に属し、第1ピーク値と第2ピーク値との間の部分については、第1ピーク値の左側の部分と第2ピーク値の右側の部分とに応じて按分して第1ピーク値や第2ピーク値に属するとして計算するものとした。図8に対象道路の旅行時間に対する確率密度分布にピーク値が二つ存在する場合の各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2を計算する様子の一例を示す。図示するように、旅行時間軸上で第1ピーク値の左側の部分(S1)については第1ピーク値に属し、第2ピーク値の右側の部分(S2)については第2ピーク値に属し、第1ピーク値と第2ピーク値との間の部分(S31およびS32)については、第1ピーク値の左側の部分(S1)と第2ピーク値の右側の部分(S2)との面積比率に応じて按分した部分(S31とS32の部分)がそれぞれ第1ピーク値と第2ピーク値に属するものとなる。したがって、第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk1はS1の面積とS31の面積の和として計算され、第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2はS2の面積とS32の面積の和として計算される。なお、S31とS32の境界線としてのTdは、第1ピーク値と第2ピーク値との間の部分をS1とS2の面積比率に応じて按分するから、確率密度分布において極小値の旅行時間に一致するとは限らない。
【0040】
続いて、対象道路において信号機により車両が停止する確率(信号停止確率)Pstpを入力し(ステップS240)、各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2と信号停止確率Pstpとを用いて次式(3),(4)により指標値Jpk1,Jpk2を計算する(ステップS250)。ここで、信号停止確率Pstpは、対象道路の始点を出発して終点を通過するまでに対象道路に存在する信号機により車両が停止する確率として実測データに基づいて得られるものであり、地図上の道路に対して各交差点や分岐点をノードとし、ノード間を対象道路として考える場合、終点としてのノードに信号機が存在するときには、その信号機により車両が停止する確率が相当する。なお、信号停止確率Pstpは、実測データにより得られるものであるから、青信号と黄信号と赤信号との時間的な割合により定められるものではなく、この点灯色の時間的な割合とは顕著に異なる場合も生じる。例えば、ある特定の交差点の信号機に連動してその道路の次の交差点の信号機が制御されている場合には、次の交差点の信号機により車両が停止する確率は信号機による点灯色の割合から顕著にずれたものとなる。指標値Jpk1は、式(3)に示すように、第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk1に100%から信号停止確率Pstpを減じた確率(100−Pstp)を加えて得られたものを更に値2で除したものとして計算されるから、第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk1と対象道路に存在する信号機により車両が停止しない確率とを反映したものとなる。一方、指標値Jpk2は、式(4)に示すように、第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2に信号停止確率Pstpを加えて得られたものを更に値2で除したものとして計算されるから、第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2と信号停止確率Pstpとを反映したものとなる。
【0041】
Jpk1=[Ppk1+(100-Pstp)]/2 (3)
Jpk2=[Ppk1+Pstp)]/2 (4)
【0042】
そして、計算した指標値Jpk1,Jpk2を比較し(ステップS260)、指標値Jpk1が指標値Jpk2以上のときには、第1ピーク値の旅行時間Tpk1を代表旅行時間Ttrpに設定し(ステップS270)、指標値Jpk1が指標値Jpk2未満のときには、第2ピーク値の旅行時間Tpk2を代表旅行時間Ttrpに設定する(ステップS280)。これにより、対象道路に対して、各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2と信号停止確率Pstpとを反映させて、第1ピーク値の旅行時間Tpk1か第2ピーク値の旅行時間Tpk2かのいずれかを代表旅行時間Ttrpとして設定することができる。
【0043】
次に、確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離する(ステップS320)。確率密度分布の各ピークへの分離は、実施例では、以下のように行なうものとした。実施例における対象道路の旅行時間に対する確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離する様子の一例を図9に示す。まず、旅行時間軸上で第1ピーク値より左側の部分は第1ピーク値に関する分布PT1を形成し、第2ピーク値より右側の部分は第2ピーク値に関する分布PT2を形成するものとする。第1ピーク値と第2ピーク値との間の部分については、第1ピーク値より左側の部分が第1ピーク値における旅行時間が一定の直線(確率密度軸に平行な直線)に対して対称に現われる分布を第1の分布P1(x)とすると共に第2ピーク値より右側の部分が第2ピーク値における旅行時間が一定の直線(確率密度軸に平行な直線)に対して対称に現われる分布を第2の分布P2(x)とし、第1の分布P1(x)と第2の分布P2(x)との和と確率密度分布P(x)との差(P(x)−(P1(x)+P2(x)))を第1の分布P1(x)と第2の分布p2(x)とにより按分して第1の分布P1(x)と第2の分布P2(x)とに加えたものを第1ピーク値に関する分布PT1と第2ピーク値に関する分布PT2とする(次式(5),(6)を参照)。
【0044】
PT1=P1(x)+P1(x)×[P(x)-(P1(x)+P2(x))]/(P1(x)+P2(x)) (5)
PT2=P2(x)+P2(x)×[P(x)-(P1(x)+P2(x))]/(P1(x)+P2(x)) (6)
【0045】
確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離すると、各ピーク値に関する分布に対して各ピーク値を含んで予め定められた所定確率(例えば、70%や80%,90%など)以上となる旅行時間の範囲の境界値(下限値としての最小旅行時間T11,T21,上限値としての最大旅行時間T12,T22)を導出し(ステップS330)、次式(7),(8)に示すように、最小旅行時間T11,T21の各ピーク値の旅行時間Tpk1,Tpk2との差分としての小側誤差時間Tpk1−T11,Tpk2−T21のうち大きい方を代表誤差時間における最小値Miとして設定すると共に最大旅行時間T12,T22の各ピーク値の旅行時間Tpk1,Tpk2との差分としての大側誤差時間T12−Tpk1,T22−Tpk2のうち大きい方を代表誤差時間における最大値Maとして設定して(ステップS340)、本処理を終了する。
【0046】
Mi=max(Tpk1-T11,Tpk2-T21) (7)
Ma=max(T12-Tpk1,T22-Tpk2) (8)
【0047】
こうして設定された対象道路の代表旅行時間Ttrpと代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)は、ナビゲーション装置21のHDD40に記憶された地図データのバージョンと情報センター60のHDD80に記憶された地図データのバージョンが異なるものとなったときに、情報センター60のデータ更新部85が機能し、通信装置88を介して通信によりナビゲーション装置21に送信され、これを通信装置58を介して受信したナビゲーション装置21の電子制御ユニット30がHDD40の地図データに書き込むことにより更新される。こうしたデータの更新が行なわれると、それ以降に図2の推定所要時間演算処理が実行されるときに更新されたデータ(対象道路の代表旅行時間Ttrpと代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)が用いられる。
【0048】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。図1のナビゲーションシステム20が「ナビゲーションシステム」に相当し、図6のステップS200の確率密度分布を取得する処理を実行する際に図1における確率分布密度取得部82として機能する電子制御ユニット70が「確率分布密度取得手段」に相当し、図6のステップS210〜S280の代表旅行時間Ttrpを設定する処理を実行する際に図1における代表旅行時間設定部83として機能する電子制御ユニット70が「代表旅行時間設定手段」に相当する。また、図6のステップS300〜S340の代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)を設定する処理を実行する際に図1における代表誤差時間設定部84として機能する電子制御ユニット70が「誤差時間設定手段」に相当し、図2の推定所要時間演算処理を実行する際に図1における推定所要時間演算部54として機能するナビゲーション装置21の電子制御ユニット30が「所要時間演算手段」に相当する。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0049】
以上説明した実施例のナビゲーションシステム20によれば、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合には、各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2と対象道路において信号機により車両が停止する信号停止確率Pstpとを反映させて得られた指標値が大きい方のピーク値を選択し、選択したピーク値の旅行時間を代表旅行時間Ttrpとして設定することにより、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布の平均値を代表旅行時間として設定する場合に比して、代表旅行時間Ttrpが実際の道路の旅行時間と乖離するという事態を回避することができる。即ち、より適正に代表旅行時間Ttrpを設定することができる。もとより、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布にピーク値が一つだけ存在する場合には、ピーク値の旅行時間を代表旅行時間Ttrpとして設定するから、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布にピーク値が一つだけ存在する場合にも、代表旅行時間Ttrpが実際の道路の旅行時間と乖離することなく、より適正に代表旅行時間Ttrpを設定することができる。
【0050】
また、実施例のナビゲーションシステム20によれば、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合には、確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離し、分離した各分布に対して各ピーク値を含んで所定確率以上となる旅行時間の範囲の境界値(最小旅行時間T11,T21,最大旅行時間T12,T22)を導出し、導出した最小旅行時間T11,T21の各ピーク値の旅行時間Tpk1,Tpk2との差分としての小側誤差時間Tpk1−T11,Tpk2−T21のうち大きい方を代表誤差時間における最小値Miとして設定すると共に最大旅行時間T12,T22の各ピーク値の旅行時間Tpk1,Tpk2との差分としての大側誤差時間T12−Tpk1,T22−Tpk2のうち大きい方を代表誤差時間における最大値Maとして設定するから、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合でも代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)が大きくなりすぎるのを抑制することができる。即ち、より適正に代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)を設定することができる。もとより、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布にピーク値が一つだけ存在する場合には、確率密度分布に対してピーク値を含んで所定確率以上となる旅行時間の範囲の境界値(最初旅行時間T1,最大旅行時間T2)を代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)として設定するから、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布にピーク値が一つだけ存在する場合にも、より適正に代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)を設定することができる。
【0051】
さらに、実施例のナビゲーションシステム20によれば、目的地が設定されて走行経路が探索されたときに目的地までの推定所要時間を演算するときには、走行経路を構成する対象道路R(n)を抽出すると共に抽出した対象道路R(n)の代表旅行間Ttrp(n)と代表誤差時間(最小値Mi(n),最大値Ma(n))をHDD40に記憶された地図データに含まれる道路時間データから読み出し、読み出した代表旅行間Ttrp(n)を積算して推定所要時間Testを計算すると共に、代表誤差時間としての最小値Mi(n),最大値Ma(n)を各々積算して推定誤差時間としての最小値MIN,最大値MAXを計算するから、走行経路を構成する対象道路の過去の旅行時間を取得して旅行時間に対する確率密度分布を計算すると共にこれらを統合して走行経路の所要時間の確率密度分布を計算し、この確率分布密度に基づいて推定所要時間と誤差とを推定するものに比して、迅速に目的地までの走行経路における推定所要時間Testと推定誤差時間(最小値MIN,最大値MAX)とを計算することができる。
【0052】
実施例のナビゲーションシステム20では、情報センター60の電子制御ユニット70により図6の旅行時間設定処理を実行して対象道路の代表旅行時間Ttrpと代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)とを設定するものとしたが、ナビゲーション装置21の電子制御ユニット30により図6の旅行時間設定処理を実行して対象道路の代表旅行時間Ttrpと代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)とを設定するものとしてもよい。この場合、この対象道路の旅行時間に対する確率密度分布を取得する処理は、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布のデータを情報センター60から通信により取得するものとしてもよいし、対象道路を走行するのに要する旅行時間を多数収集して得られる対象道路の多数の旅行時間データを情報センター60から通信により入力すると共に入力した対象道路の多数の旅行時間データを統計処理により旅行時間に対する確率密度分布として表わすデータを作成することにより取得するものとしてもよい。また、設定した対象道路の代表旅行時間Ttrpと代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)についてはHDD40の地図データに直接書き込むものとすればよい。
【0053】
実施例のナビゲーションシステム20では、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合には、旅行時間軸上で第1ピーク値より左側の部分については第1ピーク値に属し、第2ピーク値より右側の部分については第2ピーク値に属し、第1ピーク値と第2ピーク値との間の部分については、第1ピーク値の左側の部分と第2ピーク値の右側の部分とに応じて按分して第1ピーク値や第2ピーク値に属するものとして各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2を計算するものとしたが、対象道路において第1ピーク値に関する分布と第2ピーク値に関する分布とが予め解っているときには、第1ピーク値に関する分布と第2ピーク値に関する分布との面積比などにより各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2を計算するものとしてもよい。
【0054】
実施例のナビゲーションシステム20では、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合には、第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk1に100%から信号停止確率Pstpを減じた確率(100−Pstp)を加えて得られたものを更に値2で除したものとして指標値Jpk1を計算すると共に第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2に信号停止確率Pstpを加えて得られたものを更に値2で除したものとして指標値Jpk2を計算し、指標値Jpk1,Jpk2のうち大きい方のピーク値の旅行時間を代表旅行時間Ttrpとして設定するものとしたが、各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2と信号停止確率Pstpとを反映させた指標値であれば如何なる計算式により計算したものとしても構わない。例えば、第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk1と100%から信号停止確率Pstpを減じた確率(100−Pstp)に係数を乗じて得られるものとの和として指標値Jpk1を計算すると共に第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2と信号停止確率Pstpに係数を乗じて得られるものとの和として指標値Jpk2を計算するものなどとしてもよいし、、第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk1に係数を乗じたものと100%から信号停止確率Pstpを減じた確率(100−Pstp)との和として指標値Jpk1を計算すると共に第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2に係数を乗じたものと信号停止確率Pstpとの和として指標値Jpk2を計算するものなどとしてもよい。
【0055】
実施例のナビゲーションシステム20では、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合に代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)を設定する際には、旅行時間軸上で第1ピーク値より左側の部分は第1ピーク値に関する分布PT1を形成し、第2ピーク値より右側の部分は第2ピーク値に関する分布PT2を形成するものとし、第1ピーク値と第2ピーク値との間の部分については、第1ピーク値より左側の部分が第1ピーク値における旅行時間が一定の直線に対して対称に現われる分布を第1の分布P1(x)とすると共に第2ピーク値より右側の部分が第2ピーク値における旅行時間が一定の直線に対して対称に現われる分布を第2の分布P2(x)とし、第1の分布P1(x)と第2の分布P2(x)との和と確率密度分布P(x)との差(P(x)−(P1(x)+P2(x)))を第1の分布P1(x)と第2の分布p2(x)とにより按分して第1の分布P1(x)と第2の分布P2(x)とに加えたものを第1ピーク値に関する分布PT1と第2ピーク値に関する分布PT2とするものとしたが、第1ピーク値と第2ピーク値との間の部分については、第1ピーク値より左側の部分が第1ピーク値における旅行時間が一定の直線に対して対称に現われる分布を第1ピーク値に関する分布PT1とすると共に第2ピーク値より右側の部分が第2ピーク値における旅行時間が一定の直線に対して対称に現われる分布を第2ピーク値に関する分布PT2とするものとしてもよい。また、対象道路において第1ピーク値に関する分布と第2ピーク値に関する分布とが予め解っているときには、その第1ピーク値に関する分布と第2ピーク値に関する分布とを用いるものとしてもよい。
【0056】
実施例のナビゲーションシステム20では、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合には、確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離し、分離した各分布に対して各ピーク値を含んで所定確率以上となる旅行時間の範囲の境界値(最小旅行時間T11,T21,最大旅行時間T12,T22)を導出し、導出した最小旅行時間T11,T21の各ピーク値の旅行時間Tpk1,Tpk2との差分としての小側誤差時間Tpk1−T11,Tpk2−T21のうち大きい方を代表誤差時間における最小値Miとして設定すると共に最大旅行時間T12,T22の各ピーク値の旅行時間Tpk1,Tpk2との差分としての大側誤差時間T12−Tpk1,T22−Tpk2のうち大きい方を代表誤差時間における最大値Maとして設定するものとしたが、図6の旅行時間設定処理のステップS320〜S340の処理(以下、「ダブルピーク時代表誤差時間設定処理」という。)に代えて、図11のダブルピーク時代表誤差時間設定処理に例示するように、確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離し(ステップS320)、代表旅行時間Ttrpに対応するピーク値に関する分布に対してピーク値を含んで所定確率以上となる旅行時間の範囲の境界値(最小旅行時間T1,最大旅行時間T2)を導出し(ステップS430)、導出した境界値(最小旅行時間T1,最大旅行時間T2)を代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)として設定する(ステップS440)、ものとしてもよい。この場合でも、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在するときにも、代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)が大きくなりすぎるのを抑制することができる。
【0057】
また、図12のダブルピーク時代表誤差時間設定処理に例示するように、確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離し(ステップS320)、指標値Jpk1と指標値Jpk2とを比較し(ステップS530)、指標値Jpk1が指標値Jpk2以上のときには、第1ピーク値の旅行時間Tpk1が代表旅行時間Ttrpに設定されているときであるから、第1ピーク値に関する分布に対して第1ピーク値を含んで所定確率以上となる旅行時間の範囲の境界値(最小旅行時間T1,最大旅行時間T2)を導出し(ステップS540)、導出した最小旅行時間T1と第1ピーク値の旅行時間Tpk1との差分としての小側誤差時間Tpk1−T1を代表誤差時間における最小値Miとして設定すると共に導出した最大旅行時間T2と第1ピーク値の旅行時間Tpk1との差分としての大側誤差時間T2−Tpk1と100%に第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2を加えたものとを乗じたもの、即ち、大側誤差時間T2−Tpk1を第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2だけ増分したもの(増分大側誤差時間)を代表誤差時間における最大値Maとして設定し(ステップS550)、指標値Jpk1が指標値Jpk2未満のときには、第2ピーク値の旅行時間Tpk2が代表旅行時間Ttrpに設定されているときであるから、第2ピーク値に関する分布に対して第2ピーク値を含んで所定確率以上となる旅行時間の範囲の境界値(最小旅行時間T1,最大旅行時間T2)を導出し(ステップS560)、導出した最小旅行時間T1と第2ピーク値の旅行時間Tpk2との差分としての小側誤差時間Tpk2−T1と100%に第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk1を加えたものとを乗じたもの、即ち、小側誤差時間Tpk2−T1を第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk1だけ増分したもの(増分小側誤差時間)を代表誤差時間における最小値Miとして設定すると共に導出した最大旅行時間T2と第2ピーク値の旅行時間Tpk2との差分としての大側誤差時間Tpk2−T2を代表誤差時間における最大値Maとして設定する(ステップS570)、ものとしてもよい。こうすれば、代表旅行時間Ttrpに用いたピーク値とは異なるピーク値の属する範囲の確率を代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)に反映させることができる。即ち、第1ピーク値の旅行時間Tpk1が代表旅行時間Ttrpとして設定されているときには、第1ピーク値に関する分布に対して得られる誤差時間に対して大きい方(大側誤差時間T2−Tpk1)に第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2を反映させて代表誤差時間における最大値Maを設定することができ、第2ピーク値の旅行時間Tpk2が代表旅行時間Ttrpとして設定されているときには、第2ピーク値に関する分布に対して得られる誤差時間に対して小さい方(小側誤差時間Tpk2−T1)に第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk2を反映させて代表誤差時間における最小値Miを設定することができる。もとより、この場合において対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在するときにも、代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)が大きくなりすぎるのを抑制することができる。
【0058】
更に、図13のダブルピーク時代表誤差時間設定処理に例示するように、確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離し(ステップS320)、指標値Jpk1と指標値Jpk2とを比較し(ステップS630)、指標値Jpk1が指標値Jpk2以上のときには、第1ピーク値の旅行時間Tpk1が代表旅行時間Ttrpに設定されているときであるから、第1ピーク値に関する分布に対して第1ピーク値を含んで所定確率以上となる旅行時間の範囲の境界値(最小旅行時間T1,最大旅行時間T2)を導出し(ステップS640)、導出した最小旅行時間T1と第1ピーク値の旅行時間Tpk1との差分としての小側誤差時間Tpk1−T1を代表誤差時間における最小値Miとして設定すると共に導出した最大旅行時間T2と第1ピーク値の旅行時間Tpk1との差分として得られる大側誤差時間T2−Tpk1と100%に信号停止確率Tstpを加えたものとを乗じたもの、即ち、大側誤差時間T2−Tpk1を信号停止確率Pstpだけ増分したもの(増分大側誤差時間)を代表誤差時間における最大値Maとして設定し(ステップS650)、指標値Jpk1が指標値Jpk2未満のときには、第2ピーク値の旅行時間Tpk2が代表旅行時間Ttrpに設定されているときであるから、第2ピーク値に関する分布に対して第2ピーク値を含んで所定確率以上となる旅行時間の範囲の境界値(最小旅行時間T1,最大旅行時間T2)を導出し(ステップS660)、導出した最小旅行時間T1と第2ピーク値の旅行時間Tpk2との差分として得られる小側誤差時間Tpk2−T1と100%に100%から信号停止確率Pstpを加えたものとを乗じたもの、即ち、小側誤差時間Tpk2−T1を信号機により車両が停止しない確率(100−Pstp)だけ増分したもの(増分小側誤差時間)を代表誤差時間における最小値Miとして設定すると共に導出した最大旅行時間T2と第2ピーク値の旅行時間Tpk2との差分としての大側誤差時間Tpk2−T2を代表誤差時間における最大値Maとして設定する(ステップS670)、ものとしてもよい。こうすれば、信号停止確率Pstpを代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)に反映させることができる。即ち、第1ピーク値の旅行時間Tpk1が代表旅行時間Ttrpとして設定されているときには、第1ピーク値に関する分布に対して得られる誤差時間に対して大きい方(大側誤差時間T2−Tpk1)に信号停止確率Pstpを反映させて代表誤差時間における最大値Maを設定することができ、第2ピーク値の旅行時間Tpk2が代表旅行時間Ttrpとして設定されているときには、第2ピーク値に関する分布に対して得られる誤差時間に対して小さい方(小側誤差時間Tpk2−T1)に信号機により車両が停止しない確率(100−Pstp)を反映させて代表誤差時間における最小値Miを設定することができる。もとより、この場合において対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在するときにも、代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)が大きくなりすぎるのを抑制することができる。
【0059】
実施例やその変形例では、本発明をナビゲーションシステム20に適用して説明したが、各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を設定する代表旅行時間の設定方法の形態としてもよい。この場合、上述した図6の旅行時間設定処理のステップS200〜S280の処理による方法やその変形例による方法が相当する。また、コンピュータを各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を設定する装置として機能させるプログラムの形態としてもよい。この場合、上述した図6の旅行時間設定処理のステップS200〜S280の処理や変形例の処理をコンピュータにより読み取り可能な言語(コンピュータ言語)や記号を用いて記述すればよい。
【0060】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ナビゲーションシステムの製造産業やナビゲーション用のプログラム開発産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
20 ナビゲーションシステム、21 ナビゲーション装置、22 ディスプレイ、24 タッチパネル、26 スピーカ、30 電子制御ユニット、32 CPU、34 ROM、36 RAM、38 フラッシュメモリ、40 ハードディスクドライブ(HDD)、50 GPS受信機、52 方位センサ、54 推定所要時間演算部、58 通信装置、60 情報センター、70 電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、78 フラッシュメモリ、80 ハードディスクドライブ(HDD)、82 確率密度分布取得部、83 代表旅行時間設定部、84 代表誤差時間設定部、85 データ更新部、88 通信装置、90 周辺機器接続装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーションシステムおよび代表旅行時間の設定方法並びにプログラムに関し、詳しくは、各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を設定するナビゲーションシステムおよびこうしたナビゲーションシステムにおける代表旅行時間の設定方法並びにコンピュータを各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を設定する装置として機能させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のナビゲーションシステムとしては、探索された推奨経路に関する各道路の過去の所要時間データを情報センタから取得し、取得した各道路の過去の所要時間データを統計処理すると共に統合することによって現在地から目的地までの推奨経路に沿った所要時間の確率密度分布を生成し、この確率密度分布のピーク値に対する所要時間を推奨経路を走行した場合に要する推定所要時間として推定し、確率密度分布においてピーク値を含んで確率が90%となる範囲の下限値及び上限値を推定所要時間に対する誤差の最小値および最大値として推定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、情報センタから取得した各道路の過去の所要時間データを統計処理することによって各道路の平均所要時間とその所要時間の変動幅を確率密度分布として計算し、計算した各道路の確率密度分布を統合することによって現在地から目的地までの推奨経路に沿った所要時間の確率分布密度を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−69609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のナビゲーションシステムでは、情報センタから推奨経路に関する各道路の過去の所要時間データを取得して各道路の所要時間の確率密度分布を計算すると共にこれらを統合して推奨経路に沿った所要時間の確率密度分布を計算し、この推奨経路に沿った所要時間の確率分布密度に基づいて推定所要時間と誤差とを推定するため、推定所要時間と誤差とを推定するための処理が煩雑となり、迅速な処理ができない場合が生じる。所要時間データを統計処理する場合には、ある程度の確からしさを得るためには多数のデータ数を必要とするため、所要時間データの取得のために必要な通信時間や各道路の所要時間の確率分布密度の計算するのに必要な計算時間を要する。また、推奨経路をより適正に設定するためには、地図上の道路における交差点等の全てをノードとして各ノード間を各道路として用いる必要があるため、推奨経路が都会や市街地を経由するときには推奨経路を構成する各道路の数が飛躍的に多くなり、上述の通信時間や計算時間が長くなってしまう。
【0005】
こうした課題に対して、推定所要時間を計算するために用いる各道路の代表所要時間と代表誤差(最小値および最大値)を予め定めておき、推奨経路が設定されたときに推奨経路を構成する各道路の代表所要時間と代表誤差とをそれぞれ積算することによって推奨経路の推定所要時間と誤差とを計算することも考えられる。この場合、各道路の所要時間の確率密度分布におけるピーク値の所要時間を各道路の代表所要時間として設定し、各確率密度分布においてピーク値を含んで確率が例えば90%となる範囲の下限値および上限値を代表誤差として設定することも好適なものと考えられるが、道路に信号機が存在し、信号機により車両が停止するか否かにより、道路の所要時間の確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合には、上述のピーク値の所要時間を代表所要時間として設定することはできない。この場合、平均値を旅行所要時間として設定することも考えられるが、信号機により車両が停止する場合でも停止しない場合でも、いずれも場合でも実際の道路の所要時間はその道路の代表所要時間とは異なるものとなってしまう。また、道路の所要時間の確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合に、確率が90%となる範囲の下限値および上限値を代表誤差とすると、確率が90%となる範囲が広くなるために誤差が大きくなりすぎ、計算される推定所要時間の推定誤差も大きくなりすぎてしまう。
【0006】
なお、本明細書では、推奨経路だけでなくその他に探索された経路(例えば、有料道路優先の経路や一般道優先の経路,距離優先の経路など)を含め、いずれに対しても走行経路と称する。また、走行経路を走行するのに要する時間については、以下、各道路の旅行時間と称する。
【0007】
本発明のナビゲーションシステムおよび代表旅行時間の設定方法並びにプログラムは、各道路の旅行時間の確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合に、より適正に代表旅行時間を設定することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のナビゲーションシステムおよび代表旅行時間の設定方法並びにプログラムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0009】
本発明のナビゲーションシステムは、
各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を設定するナビゲーションシステムであって、
前記各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得する確率分布密度取得手段と、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、該極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定するとともに、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布と前記対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて前記二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、該選択した極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定する代表旅行時間設定手段と、
を備えることを要旨とする。
【0010】
この本発明のナビゲーションシステムでは、まず、各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得する。そして、取得した確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、その極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定し、確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、確率密度分布と対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、選択した極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定する。ここで、「各道路」における「道路」は、例えば、地図上の道路において隣接する交差点をノードとしたときのノード間や、有料道路や高速道路においてはインターチェンジ間などとしたりすることもできる。「旅行時間」は、一方のノード(交差点)を出発してから他方のノード(交差点)を通過するまでに要する時間が相当する。「確率密度分布」の取得は、他の装置やシステムで得られる確率密度分布を入力することにより行なうものとしてもよいし、各道路に対して各々複数の旅行時間を取得すると共にこれから各道路の確率密度分布を計算することにより行なうものとしてもよいし、更に、各道路のうち対象の道路を走行するのに要した旅行時間を複数収集すると共に収集した旅行時間に基づいて各道路の確率密度分布を計算することにより行なうものとしてもよい。「確率密度分布に二つの極大値が存在するとき」としては、対象の道路に信号機が存在し、対象の道路を走行するときに信号機により車両が停止しないか停止するかの事象が生じるときが想定される。「信号停止確率」は、一方のノード(交差点)を出発して他方のノード(交差点)まで走行する際に、他方のノードに信号機が存在するときには、当該他方のノードの信号機にて停止する確率が相当する。このように、本発明のナビゲーションシステムでは、確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、確率密度分布と信号停止確率とに基づいて二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、選択した極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定するから、選択された極大値に対する事象については、代表旅行時間は実際の旅行時間に対して確率密度分布と信号停止確率とに基づく一致の程度となるから、平均値を代表旅行時間として設定した場合に生じる事態、即ち、信号機により車両が停止するか否かの事象のいずれに対しても代表旅行時間が実際の道路の旅行時間と乖離するという事態を回避することができる。したがって、平均値を代表旅行時間として設定した場合に比して、より適正に代表旅行時間を設定することができる。
【0011】
こうした本発明のナビゲーションシステムにおいて、前記代表旅行時間設定手段は、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布を前記二つの極大値のうち旅行時間の短い第1の極大値に属する範囲と旅行時間の長い第2の極大値に属する範囲とに所定の基準によって区分けし、前記第1の極大値に属する範囲の確率と100%から前記信号停止確率を減じて得られる確率とに基づいて前記第1の極大値に対する指標値を演算すると共に、前記第2の極大値に属する範囲の確率と前記信号停止確率とに基づいて前記第2の極大値に対する指標値を演算し、前記演算した二つの指標値のうち大きい方の指標値に対応する極大値を前記選択した極大値として選択する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、確率密度分布と信号停止確率とをより適正に反映させて代表旅行時間を設定することができる。
【0012】
ここで、「所定の基準」は、前記確率密度分布のうち前記第1の極大値の旅行時間より短い旅行時間に対する第1の分布は前記第1の極大値に属する範囲に含まれ、前記確率密度分布のうち前記第2の極大値の旅行時間より長い旅行時間に対する第2の分布は前記第2の極大値に属する範囲に含まれ、前記確率密度分布のうち前記第1の極大値の旅行時間と前記第2の極大値の旅行時間との間の旅行時間に対する中間分布は前記第1の分布と前記第2の分布とに応じて前記第1の極大値に属する範囲と前記第2の極大値に属する範囲とに按分される基準である、ものとすることもできる。こうすれば、容易に第1の極大値に属する範囲と第2の極大値に属する範囲とを区分けすることができ、容易に第1の極大値に属する範囲の確率と第2の極大値に属する範囲の確率とを計算することができる。
【0013】
また、本発明のナビゲーションシステムにおいて、前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、前記確率密度分布に対して前記代表旅行時間を含む所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定する誤差時間設定手段と、目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、前記走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより前記推定所要時間の誤差時間を演算する所要時間演算手段と、を備えるものとすることもできる。このように、確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、確率密度分布のうち代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を代表旅行時間に対する誤差時間として設定するから、誤差時間が大きくなりすぎるのを抑制することができる。
【0014】
さらに、本発明のナビゲーションシステムにおいて、前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、前記確率密度分布に対して前記代表旅行時間を含む所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である第1の小側誤差時間および第1の大側誤差時間を演算すると共に前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値とは異なる極大値に属する分布に対して該極大値に対する旅行時間を含む前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と該極大値に対する旅行時間との差である第2の小側誤差時間および第2の大側誤差時間を演算し、前記第1の小側誤差時間と前記第2の小側誤差時間とのうち大きい方と前記第1の大側誤差時間と前記第2の大側誤差時間とのうち大きい方とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定する誤差時間設定手段と、目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、前記走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより前記推定所要時間の誤差時間を演算する所要時間演算手段と、を備えるものとすることもできる。このように、二つの極大値に属する分布の各々に対して小側誤差時間(第1の小側誤差時間および第2の小側誤差時間)と大側誤差時間(第1の大側誤差時間および第2の大側誤差時間)とを演算し、二つの小側誤差時間のうちの大きい方と二つの大側誤差時間のうちの大きい方とを代表旅行時間に対する誤差時間として設定するから、誤差時間が大きくなりすぎるのを抑制することができる。
【0015】
本発明のナビゲーションシステムにおいて、前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、前記確率密度分布に対して前記代表旅行時間を含む所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、前記二つの極大値の旅行時間のうち短い方が前記代表旅行時間として設定されるときには、前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を演算すると共に前記演算された大側誤差時間に対して前記信号停止確率に相当する分だけ増大した増分大側誤差時間を演算し、前記小側誤差時間と前記増分大側誤差時間とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、前記二つの極大値の旅行時間のうち長い方が前記代表旅行時間として設定されるときには、前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を演算すると共に前記演算された小側誤差時間に対して100%から前記信号停止確率を減じて得られる確率に相当する分だけ増大した増分小側誤差時間を演算し、前記増分小側誤差時間と前記大側誤差時間とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定する誤差時間設定手段と、目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、前記走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより前記推定所要時間の誤差時間を演算する所要時間演算手段と、を備えるものとすることもできる。このように、確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、二つの極大値の旅行時間のうち短い方が代表旅行時間として設定されるときには、代表旅行時間に対応する極大値に属する分布を用いて小側誤差時間と大側誤差時間を演算すると共に大側誤差時間に対して信号停止確率に相当する分だけ増大した増分大側誤差時間を演算し、小側誤差時間と増分大側誤差時間とを代表旅行時間に対する誤差時間として設定することにより、確率密度分布に代表旅行時間として設定されなかった長い旅行時間となる極大値が存在する意義を誤差時間に反映することができる。また、確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、二つの極大値の旅行時間のうち長い方が代表旅行時間として設定されるときには、代表旅行時間に対応する極大値に属する分布を用いて小側誤差時間と大側誤差時間を演算すると共に小側誤差時間に対して100%から信号停止確率を減じて得られる確率に相当する分だけ増大した増分小側誤差時間を演算し、増分小側誤差時間と大側誤差時間とを代表旅行時間に対する誤差時間として設定することにより、確率密度分布に代表旅行時間として設定されなかった短い旅行時間となる極大値が存在する意義を誤差時間に反映することができる。
【0016】
確率密度分布に二つの極大値が存在するときに確率密度分布を二つの極大値のうち旅行時間の短い第1の極大値に属する範囲と旅行時間の長い第2の極大値に属する範囲とに所定の基準によって区分けする態様の本発明のナビゲーションシステムにおいて、前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、前記確率密度分布に対して前記代表旅行時間を含む所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、前記第1の極大値の旅行時間が代表旅行時間として設定されるときには、前記確率密度分布のうち前記第1の極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を演算すると共に前記演算された大側誤差時間に対して前記第2の極大値に属する範囲の確率に相当する分だけ増分した増分大側誤差時間を演算し、前記小側誤差時間と前記増分大側誤差時間とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、前記第2の極大値の旅行時間が代表旅行時間として設定されるときには、前記確率密度分布のうち前記第2の極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を演算すると共に前記演算された小側誤差時間に対して前記第1の極大値に属する範囲の確率に相当する分だけ増分した増分小側誤差時間を演算し、前記増分小側誤差時間と前記大側誤差時間とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定する誤差時間設定手段と、目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、前記走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより前記推定所要時間の誤差時間を演算する所要時間演算手段と、を備えるものとすることもできる。このように、第1の極大値の旅行時間が代表旅行時間として設定されるときには、第1の極大値に属する分布を用いて小側誤差時間と大側誤差時間を演算すると共に大側誤差時間に対して第2の極大値に属する範囲の確率に相当する分だけ増分した増分大側誤差時間を演算し、小側誤差時間と増分大側誤差時間とを代表旅行時間に対する誤差時間として設定することにより、確率密度分布に代表旅行時間として設定されなかった第2の極大値が存在する意義を誤差時間に反映することができる。第2の極大値の旅行時間が代表旅行時間として設定されるときには、第2の極大値に属する分布を用いて小側誤差時間と大側誤差時間を演算すると共に小側誤差時間に対して第1の極大値に属する範囲の確率に相当する分だけ増分した増分小側誤差時間を演算し、増分小側誤差時間と大側誤差時間とを代表旅行時間に対する誤差時間として設定することにより、確率密度分布に代表旅行時間として設定されなかった第1の極大値が存在する意義を誤差時間に反映することができる。
【0017】
上述の誤差時間設定手段と所要時間演算手段とを備える態様の本発明のナビゲーションシステムでは、目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより推定所要時間の誤差時間を演算するから、背景技術で説明したもの、即ち、情報センタから走行経路を構成する各道路の過去の旅行時間データを取得して各道路の旅行時間の確率密度分布を計算すると共にこれらを統合して走行経路に沿った所要時間の確率密度分布を計算し、この走行経路に沿った所要時間の確率分布密度に基づいて推定所要時間と誤差とを推定するもの、に比して、迅速に推定所要時間とその誤差時間とを演算することができる。ここで、「所定の確率」としては、70%や80%,90%などの種々の確率を用いることができる。第1の極大値の左側(即ち、第1の極大値よりも小さい旅行時間)については第1の極大値に属し、第2の極大値の右側(即ち、第2の極大値よりも大きい旅行時間)については第2の極大値に属するものとし、第1の極大値と第2の極大値との間については、第1の極大値の左側の分布をその右側に適用すると共に第2の極大値の右側の分布をその左側に適用し、適用した分布の和と確率密度分布との差を適用した分布におけるそれぞれの確率密度に応じて按分することにより、「第1の極大値に属する分布」と「第2の極大値に属する分布」とを求めるものとしてもよいし、第1の極大値の左側と第1の極大値の左側の分布をその右側に適用したものとを「第1の極大値に属する分布」とすると共に第2の極大値の右側と第2の極大値の右側の分布をその左側に適用したものとを「第2の極大値に属する分布」として求めるものとしてもよい。「確率密度分布のうち代表旅行時間に対応する極大値に属する分布」と「確率密度分布のうち代表旅行時間に対応する極大値とは異なる極大値に属する分布」については、上述の「第1の極大値に属する分布」と「第2の極大値に属する分布」についてと同様である。
【0018】
本発明の代表旅行時間設定方法は、
各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を用いるナビゲーションシステムにおける前記代表旅行時間の設定方法であって、
前記各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得し、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、該極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定するとともに、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布と前記対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて前記二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、該選択した極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定する、
ことを特徴とする。
【0019】
この本発明の代表旅行時間設定方法では、まず、各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得する。そして、取得した確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、その極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定し、確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、確率密度分布と対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、選択した極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定する。このように、本発明のナビゲーションシステムでは、確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、確率密度分布と信号停止確率とに基づいて二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、選択した極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定するから、選択された極大値に対する事象については、代表旅行時間は実際の旅行時間に対して確率密度分布と信号停止確率とに基づく一致の程度となるから、平均値を代表旅行時間として設定した場合に生じる事態、即ち、信号機により車両が停止するか否かの事象のいずれに対しても代表旅行時間が実際の道路の旅行時間と乖離するという事態を回避することができる。したがって、平均値を代表旅行時間として設定した場合に比して、より適正に代表旅行時間を設定することができる。ここで、「各道路」における「道路」や「旅行時間」,「確率密度分布」の取得,「確率密度分布に二つの極大値が存在するとき」,「信号停止確率」については上述した本発明のナビゲーションシステムと同様である。
【0020】
本発明のプログラムは、
コンピュータを各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を設定する装置として機能させるプログラムであって、
前記各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得するモジュールと、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、該極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定するとともに、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布と前記対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて前記二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、該選択した極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定するモジュールと、
がコンピュータに読み取り可能に記述されていることを特徴とする。
【0021】
本発明のプログラムは、コンピュータが読み取り実行することにより、コンピュータを、各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得し、この取得した確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、その極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定し、確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、確率密度分布と対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、選択した極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定する装置として、機能させることができる。そして、このように、確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、確率密度分布と信号停止確率とに基づいて二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、選択した極大値の旅行時間を対象の道路の代表旅行時間として設定するから、選択された極大値に対する事象については、代表旅行時間は実際の旅行時間に対して確率密度分布と信号停止確率とに基づく一致の程度となるから、平均値を代表旅行時間として設定した場合に生じる事態、即ち、信号機により車両が停止するか否かの事象のいずれに対しても代表旅行時間が実際の道路の旅行時間と乖離するという事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例としてのナビゲーションシステム20の構成の概略を示す構成図。
【図2】ナビゲーション装置21により実行される推定所要時間演算処理の一例を示すフローチャート。
【図3】具体例としての走行経路の一例を示す説明図。
【図4】具体例としての走行経路の対象道路R(n)を示す説明図。
【図5】具体例としての走行経路に対する推定所要時間Testと推定誤差時間(最小値MIN,最大値MAX)とをディスプレイ22に表示した際の一例を示す説明図。
【図6】情報センター60の電子制御ユニット70により実行される旅行時間設定処理の一例を示すフローチャート。
【図7】対象道路の旅行時間に対する確率密度分布にピーク値が一つだけ存在する場合の確率密度分布と境界値T1,T2の一例を示す説明図。
【図8】対象道路の旅行時間に対する確率密度分布にピーク値が二つ存在する場合の各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2を計算する様子の一例を示す説明図。
【図9】実施例における対象道路の旅行時間に対する確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離する様子の一例を示す説明図。
【図10】各ピーク値に関する分布に対して小側旅行時間T11、T21と大側旅行時間T12,T22を設定している様子を示す説明図。
【図11】変形例のダブルピーク時代表誤差時間設定処理の一例を示すフローチャート。
【図12】変形例のダブルピーク時代表誤差時間設定処理の一例を示すフローチャート。
【図13】変形例のダブルピーク時代表誤差時間設定処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0024】
図1は、本発明の一実施例としてのナビゲーションシステム20の構成の概略を示す構成図である。実施例のナビゲーションシステム20は、図示するように、車載されたナビゲーション装置21と、このナビゲーション装置21と通信する情報センター60とにより構成されている。
【0025】
ナビゲーション装置21は、文字や画像を表示する画面を有する例えば液晶ディスプレイとして構成されたディスプレイ22と、ディスプレイ22の画面に取り付けられた抵抗膜方式や静電容量方式などによるタッチパネル24と、装置全体をコントロールする電子制御ユニット30と、各種アプリケーションソフトウェアや地図データなどを記憶する大容量メモリとしてのハードディスクドライブ(以下、HDDという)40と、情報センター60と通信するための通信装置58と、を備え、図示しない自動車に搭載された車載バッテリからの電力供給を受けて作動する。
【0026】
電子制御ユニット30は、CPU32を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU32の他に各種処理プログラムを記憶するROM34と、データを一時的に記憶するRAM36と、記憶したデータを保持する不揮発性のフラッシュメモリ38と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。電子制御ユニット30には、操作者のタッチ位置を検出するタッチパネル24からの信号やHDD40から読み出したデータ,GPS(Global Positioning System)衛星からの信号をGPSアンテナを介して受信するGPS受信機50からの信号,車両の進行方向やその変化を検出する例えばジャイロセンサにより構成された方位センサ52からの信号,通信アンテナを介して情報センター60から送信される情報を受信する通信装置58からの情報としての信号などが入力ポートを介して入力されている。電子制御ユニット30からは、ディスプレイ22への表示信号やアンプを内蔵したスピーカ26への音声信号,HDD40に書き込むデータ,通信装置58から送信する情報としての信号などが出力ポートを介して出力されている。また、電子制御ユニット30は、車両全体をコントロールする図示しない車両用電子制御ユニットと通信ポートを介して接続されており、例えば車速パルス信号などの車両の状態に関するデータを入力すると共に必要に応じてナビゲーション装置20の状態に関するデータを車両に出力している。
【0027】
実施例のナビゲーション装置20では、電子制御ユニット30は、HDD40から必要なアプリケーションソフトウェアや地図データを読み出して各種処理を実行する。例えば、GPS受信機50からの信号や方位センサ52からの信号に基づいて車両の現在位置を特定するロケーション処理や、ディスプレイ22に地図画像を表示する地図表示処理、目的地への走行経路を探索して地図表示したりスピーカ26からの音声出力によりルート案内を行なうナビゲーション処理、探索された走行経路の推定所要時間と推定誤差時間とを推定して表示する推定所要時間演算部54による推定所要時間演算処理などを実行する。
【0028】
実施例のHDD40は、地図データとして、予め定めた複数の縮尺で地図画像を表示可能とする地図画像データや、道路の幅員や車線数,歩道の幅などの道路データ、交差点や分岐,インターチェンジ毎に設けられた(隣接する)ノード間を区間としてその道路(区間)を走行するのに要する時間としての代表旅行時間やそれに対する誤差時間としての代表誤差時間(マイナス側の誤差時間としての最小値とプラス側の誤差時間としての最大値)などの道路時間データなどが更新日時やバージョンなどの更新履歴情報と共に記憶されている。そして、道路工事などにより地図画像データや道路データに変更が生じたり、交通量の変化や信号機の設置などにより道路時間データに変更が生じたりすると、変更された各データが情報センター60から通信により送信され、これを通信装置58により受信してHDD40に書き込むことにより、各データの更新を行ない、更新日時やバージョンの更新も行なわれる。
【0029】
情報センター60は、各種アプリケーションソフトウェアや最新の地図データなどを記憶する大容量メモリとしてのハードディスクドライブ(以下、HDDという)80と、車載されたナビゲーション装置21と通信するための通信装置88と、各種アプリケーションソフトウエアを実行すると共に通信装置88をコントロールする電子制御ユニット70と、を備える。
【0030】
情報センター60の電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に各種処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、記憶したデータを保持する不揮発性のフラッシュメモリ78と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。電子制御ユニット70には、通信アンテナを介してナビゲーション装置21から送信される情報を受信する通信装置88からの情報としての信号などが入力ポートを介して入力されており、電子制御ユニット30からは、通信装置88から通信アンテナを介してナビゲーション装置21へ送信される情報としての信号などが出力ポートを介して出力されている。また、電子制御ユニット70には、キーボードやマウス,外部大容量記憶装置(例えばUSBメモリ)などの周辺機器を接続するUSB(Universal Serial Bus)などの周辺機器接続装置90が取り付けられており、必要に応じて接続された周辺機器からデータの入力やデータの出力を行なうことができるようになっている。
【0031】
実施例の情報センター60では、電子制御ユニット80は、HDD80から必要なアプリケーションソフトウェアや地図データを読み出して各種処理を実行する。例えば、図1の機能ブロックに示すように、道路の代表旅行時間や誤差時間を更新したり作成するために予め作成されて外部大容量記憶装置に記憶された各道路の旅行時間に対する確率密度分布のデータを入力して取得する確率密度分布取得部82による確率密度分布取得処理や、取得した確率密度分布を用いて各道路の代表旅行時間を設定する代表旅行時間設定部83による代表旅行時間設定処理、代表旅行時間が設定された道路に対して確率密度分布を用いてマイナス側の誤差時間としての最小値とプラス側の誤差時間としての最大値とからなる代表誤差時間を設定する代表誤差時間設定部84による代表誤差時間設定処理、HDD80の地図データのバージョンとナビゲーション装置21のHDD40の地図データのバージョンが異なるときにナビゲーション装置21と通信してナビゲーション装置21のHDD40の地図データを更新するデータ更新部85によるデータ更新処理などを実行する。なお、確率密度分布取得部82や代表旅行時間設定部83,代表誤差時間設定部84,データ更新部85は、対応するアプリケーションソフトウェアとハードウエアとが一体となって実現される。
【0032】
次に、ナビゲーション装置21により目的地までの走行経路が探索されたときに走行経路を走行するのに要する推定所要時間と推定誤差時間とを演算してディスプレイ22に表示する際の処理について説明する。図2は、ナビゲーション装置21により実行される推定所要時間演算処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、目的地が設定されて走行経路が探索されたときに探索された走行経路毎に実行される。なお、説明の容易のために、適宜、図3に示すように、黒三角を丸で囲んだ自車位置マークで示す自車位置において「G」の旗の目的地マークの地点を目的地として設定し、太実線として走行経路が探索された場合を具体例として用いる。
【0033】
推定所要時間演算処理が実行されると、まず、探索された走行経路から走行経路を構成する対象道路R(n)を抽出する処理が行なわれる(ステップS100)。対象道路R(n)は、地図上の道路における交差点や分岐点,インターチェンジなどをノードとし、隣接するノード間の道路を意図する。具体例では、図4に例示するように、走行経路としての太実線上の各交差点や分岐点に相当するノードP1〜P5に対して、自車位置マークが存在するノードからノードP1までが対象道路R(1),ノードP1からノードP2までが対象道路R(2),ノードP2からノードP3までが対象道路R(3),ノードP3からノードP4までが対象道路R(4),ノードP4からノードP5までが対象道路R(5),ノードP5から目的地マークまでが対象道路R(6)となり、これらの対象道路R(1)〜R(6)が抽出される。なお、図4の具体例では、説明の簡略化として自車位置がノード上に存在する場合としている。
【0034】
次に、抽出した各々の対象道路R(n)の代表旅行間Ttrp(n)と代表誤差時間(最小値Mi(n),最大値Ma(n))をHDD40に記憶された地図データに含まれる道路時間データから読み出し(ステップS110)、読み出した代表旅行間Ttrp(n)を積算して推定所要時間Testを計算すると共に(ステップS120)、代表誤差時間としての最小値Mi(n),最大値Ma(n)を各々積算して推定誤差時間としての最小値MIN,最大値MAXを計算する(ステップS130)。そして、計算した推定所要時間Testと推定誤差時間(最小値MIN,最大値MAX)をディスプレイ22に表示して(ステップS140)、処理を終了する。具体例に対して推定所要時間Testと推定誤差時間(最小値MIN,最大値MAX)をディスプレイ22に表示している一例を図5に示す。図示するように、推定所要時間Testは「所要時間」として「0:25」、即ち25分として表示され、推定誤差時間の最小値MINは「所要時間 0:25」の右下に「−7」、即ち7分として表示され、推定誤差時間の最大値MAXは「所要時間 0:25」の右上に「+10」、即ち「10分」として表示されている。なお、実施例のナビゲーション装置21では、推定所要時間Testと推定誤差時間(最小値MIN,最大値MAX)をディスプレイ22にそのまま表示するものとしたが、現在時刻に推定所要時間Testを加えて「到着予定時刻」として表示し、「到着予定時刻」から推定誤差時間の最小値MINを減じた時刻を「最小誤差時刻」として表示すると共に「到着予定時刻」に推定誤差時間の最大値MAXを加えた時刻を「最大誤差時間」として表示するものとしてもよい。この場合、表示の仕方としては、文字表示によるものや、時計図柄を用いた図柄表示によるものとしてもよい。
【0035】
次に、こうした推定所要時間演算処理に用いられる対象道路の代表旅行時間Ttrpと代表誤差時間(最小値Miと最大値Ma)とを設定する処理について説明する。図6は、情報センター60の電子制御ユニット70により実行される旅行時間設定処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、情報センター60の電子制御ユニット70で旅行時間設定処理を行なうアプリケーションソフトウエアが読み込まれて実行されることにより実行される。
【0036】
旅行時間設定処理が実行されると、まず、代表旅行時間Ttrpと代表誤差時間(最小値Miと最大値Ma)を設定する対象となる対象道路の旅行時間に対する確率密度分布を取得する処理を実行する(ステップS200)。この対象道路の旅行時間に対する確率密度分布を取得する処理は、実施例では、予め対象道路を走行するのに要する旅行時間を多数収集すると共にこれを統計処理により旅行時間に対する確率密度分布として表わすデータを作成して外部大容量記憶装置に記憶しておき、周辺機器接続装置90を介して外部大容量記憶装置を接続し、外部大容量記憶装置から対象道路の旅行時間に対する確率密度分布として表わすデータを入力することにより行なうものとした。なお、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布を取得する処理としては、予め対象道路を走行するのに要する旅行時間を多数収集して対象道路の多数の旅行時間データとして外部大容量記憶装置に記憶しておき、周辺機器接続装置90を介して外部大容量記憶装置を接続し、外部大容量記憶装置から対象道路の多数の旅行時間データを入力し、これを統計処理により旅行時間に対する確率密度分布として表わすデータを作成することにより行なうものとしてもよいし、通信装置88を介して対象道路を走行するのに要する旅行時間を多数収集し、これを統計処理により旅行時間に対する確率密度分布として表わすデータを作成することにより行なうものとしてもよい。
【0037】
対象道路の旅行時間に対する確率密度分布を取得すると、確率密度分布にピーク値(極大値)が一つだけ存在するか二つ存在するかを判定する(ステップS210)。確率密度分布にピーク値が一つだけ存在するときには、ピーク値(極大値)の旅行時間Tpkを代表旅行時間Ttrpに設定し(ステップS220)、確率密度分布に対してピーク値を含んで予め定められた所定確率(例えば、70%や80%,90%など)以上となる旅行時間の範囲の境界値(下限値としての最小旅行時間T1,上限値としての最大旅行時間T2)を導出し(ステップS300)、次式(1),(2)により代表旅行時間Ttrpと境界値(最小旅行時間T1,最大旅行時間T2)との差分を代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)として計算して(ステップS310)、本処理を終了する。対象道路の旅行時間に対する確率密度分布にピーク値が一つだけ存在する場合の確率密度分布と境界値T1,T2の一例を図7に示す。
【0038】
Mi=Ttrp-T1 (1)
Ma=T2-Ttrp (2)
【0039】
ステップS210で確率密度分布に二つのピーク値(極大値)が存在すると判定されたときには、各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2を計算する(ステップS230)。各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2は、実施例では、二つのピーク値のうち旅行時間が短い方を第1ピーク値とすると共に旅行時間が長い方を第2ピーク値とすると、旅行時間軸上で第1ピーク値より左側の部分については第1ピーク値に属し、第2ピーク値より右側の部分については第2ピーク値に属し、第1ピーク値と第2ピーク値との間の部分については、第1ピーク値の左側の部分と第2ピーク値の右側の部分とに応じて按分して第1ピーク値や第2ピーク値に属するとして計算するものとした。図8に対象道路の旅行時間に対する確率密度分布にピーク値が二つ存在する場合の各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2を計算する様子の一例を示す。図示するように、旅行時間軸上で第1ピーク値の左側の部分(S1)については第1ピーク値に属し、第2ピーク値の右側の部分(S2)については第2ピーク値に属し、第1ピーク値と第2ピーク値との間の部分(S31およびS32)については、第1ピーク値の左側の部分(S1)と第2ピーク値の右側の部分(S2)との面積比率に応じて按分した部分(S31とS32の部分)がそれぞれ第1ピーク値と第2ピーク値に属するものとなる。したがって、第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk1はS1の面積とS31の面積の和として計算され、第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2はS2の面積とS32の面積の和として計算される。なお、S31とS32の境界線としてのTdは、第1ピーク値と第2ピーク値との間の部分をS1とS2の面積比率に応じて按分するから、確率密度分布において極小値の旅行時間に一致するとは限らない。
【0040】
続いて、対象道路において信号機により車両が停止する確率(信号停止確率)Pstpを入力し(ステップS240)、各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2と信号停止確率Pstpとを用いて次式(3),(4)により指標値Jpk1,Jpk2を計算する(ステップS250)。ここで、信号停止確率Pstpは、対象道路の始点を出発して終点を通過するまでに対象道路に存在する信号機により車両が停止する確率として実測データに基づいて得られるものであり、地図上の道路に対して各交差点や分岐点をノードとし、ノード間を対象道路として考える場合、終点としてのノードに信号機が存在するときには、その信号機により車両が停止する確率が相当する。なお、信号停止確率Pstpは、実測データにより得られるものであるから、青信号と黄信号と赤信号との時間的な割合により定められるものではなく、この点灯色の時間的な割合とは顕著に異なる場合も生じる。例えば、ある特定の交差点の信号機に連動してその道路の次の交差点の信号機が制御されている場合には、次の交差点の信号機により車両が停止する確率は信号機による点灯色の割合から顕著にずれたものとなる。指標値Jpk1は、式(3)に示すように、第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk1に100%から信号停止確率Pstpを減じた確率(100−Pstp)を加えて得られたものを更に値2で除したものとして計算されるから、第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk1と対象道路に存在する信号機により車両が停止しない確率とを反映したものとなる。一方、指標値Jpk2は、式(4)に示すように、第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2に信号停止確率Pstpを加えて得られたものを更に値2で除したものとして計算されるから、第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2と信号停止確率Pstpとを反映したものとなる。
【0041】
Jpk1=[Ppk1+(100-Pstp)]/2 (3)
Jpk2=[Ppk1+Pstp)]/2 (4)
【0042】
そして、計算した指標値Jpk1,Jpk2を比較し(ステップS260)、指標値Jpk1が指標値Jpk2以上のときには、第1ピーク値の旅行時間Tpk1を代表旅行時間Ttrpに設定し(ステップS270)、指標値Jpk1が指標値Jpk2未満のときには、第2ピーク値の旅行時間Tpk2を代表旅行時間Ttrpに設定する(ステップS280)。これにより、対象道路に対して、各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2と信号停止確率Pstpとを反映させて、第1ピーク値の旅行時間Tpk1か第2ピーク値の旅行時間Tpk2かのいずれかを代表旅行時間Ttrpとして設定することができる。
【0043】
次に、確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離する(ステップS320)。確率密度分布の各ピークへの分離は、実施例では、以下のように行なうものとした。実施例における対象道路の旅行時間に対する確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離する様子の一例を図9に示す。まず、旅行時間軸上で第1ピーク値より左側の部分は第1ピーク値に関する分布PT1を形成し、第2ピーク値より右側の部分は第2ピーク値に関する分布PT2を形成するものとする。第1ピーク値と第2ピーク値との間の部分については、第1ピーク値より左側の部分が第1ピーク値における旅行時間が一定の直線(確率密度軸に平行な直線)に対して対称に現われる分布を第1の分布P1(x)とすると共に第2ピーク値より右側の部分が第2ピーク値における旅行時間が一定の直線(確率密度軸に平行な直線)に対して対称に現われる分布を第2の分布P2(x)とし、第1の分布P1(x)と第2の分布P2(x)との和と確率密度分布P(x)との差(P(x)−(P1(x)+P2(x)))を第1の分布P1(x)と第2の分布p2(x)とにより按分して第1の分布P1(x)と第2の分布P2(x)とに加えたものを第1ピーク値に関する分布PT1と第2ピーク値に関する分布PT2とする(次式(5),(6)を参照)。
【0044】
PT1=P1(x)+P1(x)×[P(x)-(P1(x)+P2(x))]/(P1(x)+P2(x)) (5)
PT2=P2(x)+P2(x)×[P(x)-(P1(x)+P2(x))]/(P1(x)+P2(x)) (6)
【0045】
確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離すると、各ピーク値に関する分布に対して各ピーク値を含んで予め定められた所定確率(例えば、70%や80%,90%など)以上となる旅行時間の範囲の境界値(下限値としての最小旅行時間T11,T21,上限値としての最大旅行時間T12,T22)を導出し(ステップS330)、次式(7),(8)に示すように、最小旅行時間T11,T21の各ピーク値の旅行時間Tpk1,Tpk2との差分としての小側誤差時間Tpk1−T11,Tpk2−T21のうち大きい方を代表誤差時間における最小値Miとして設定すると共に最大旅行時間T12,T22の各ピーク値の旅行時間Tpk1,Tpk2との差分としての大側誤差時間T12−Tpk1,T22−Tpk2のうち大きい方を代表誤差時間における最大値Maとして設定して(ステップS340)、本処理を終了する。
【0046】
Mi=max(Tpk1-T11,Tpk2-T21) (7)
Ma=max(T12-Tpk1,T22-Tpk2) (8)
【0047】
こうして設定された対象道路の代表旅行時間Ttrpと代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)は、ナビゲーション装置21のHDD40に記憶された地図データのバージョンと情報センター60のHDD80に記憶された地図データのバージョンが異なるものとなったときに、情報センター60のデータ更新部85が機能し、通信装置88を介して通信によりナビゲーション装置21に送信され、これを通信装置58を介して受信したナビゲーション装置21の電子制御ユニット30がHDD40の地図データに書き込むことにより更新される。こうしたデータの更新が行なわれると、それ以降に図2の推定所要時間演算処理が実行されるときに更新されたデータ(対象道路の代表旅行時間Ttrpと代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)が用いられる。
【0048】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。図1のナビゲーションシステム20が「ナビゲーションシステム」に相当し、図6のステップS200の確率密度分布を取得する処理を実行する際に図1における確率分布密度取得部82として機能する電子制御ユニット70が「確率分布密度取得手段」に相当し、図6のステップS210〜S280の代表旅行時間Ttrpを設定する処理を実行する際に図1における代表旅行時間設定部83として機能する電子制御ユニット70が「代表旅行時間設定手段」に相当する。また、図6のステップS300〜S340の代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)を設定する処理を実行する際に図1における代表誤差時間設定部84として機能する電子制御ユニット70が「誤差時間設定手段」に相当し、図2の推定所要時間演算処理を実行する際に図1における推定所要時間演算部54として機能するナビゲーション装置21の電子制御ユニット30が「所要時間演算手段」に相当する。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0049】
以上説明した実施例のナビゲーションシステム20によれば、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合には、各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2と対象道路において信号機により車両が停止する信号停止確率Pstpとを反映させて得られた指標値が大きい方のピーク値を選択し、選択したピーク値の旅行時間を代表旅行時間Ttrpとして設定することにより、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布の平均値を代表旅行時間として設定する場合に比して、代表旅行時間Ttrpが実際の道路の旅行時間と乖離するという事態を回避することができる。即ち、より適正に代表旅行時間Ttrpを設定することができる。もとより、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布にピーク値が一つだけ存在する場合には、ピーク値の旅行時間を代表旅行時間Ttrpとして設定するから、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布にピーク値が一つだけ存在する場合にも、代表旅行時間Ttrpが実際の道路の旅行時間と乖離することなく、より適正に代表旅行時間Ttrpを設定することができる。
【0050】
また、実施例のナビゲーションシステム20によれば、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合には、確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離し、分離した各分布に対して各ピーク値を含んで所定確率以上となる旅行時間の範囲の境界値(最小旅行時間T11,T21,最大旅行時間T12,T22)を導出し、導出した最小旅行時間T11,T21の各ピーク値の旅行時間Tpk1,Tpk2との差分としての小側誤差時間Tpk1−T11,Tpk2−T21のうち大きい方を代表誤差時間における最小値Miとして設定すると共に最大旅行時間T12,T22の各ピーク値の旅行時間Tpk1,Tpk2との差分としての大側誤差時間T12−Tpk1,T22−Tpk2のうち大きい方を代表誤差時間における最大値Maとして設定するから、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合でも代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)が大きくなりすぎるのを抑制することができる。即ち、より適正に代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)を設定することができる。もとより、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布にピーク値が一つだけ存在する場合には、確率密度分布に対してピーク値を含んで所定確率以上となる旅行時間の範囲の境界値(最初旅行時間T1,最大旅行時間T2)を代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)として設定するから、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布にピーク値が一つだけ存在する場合にも、より適正に代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)を設定することができる。
【0051】
さらに、実施例のナビゲーションシステム20によれば、目的地が設定されて走行経路が探索されたときに目的地までの推定所要時間を演算するときには、走行経路を構成する対象道路R(n)を抽出すると共に抽出した対象道路R(n)の代表旅行間Ttrp(n)と代表誤差時間(最小値Mi(n),最大値Ma(n))をHDD40に記憶された地図データに含まれる道路時間データから読み出し、読み出した代表旅行間Ttrp(n)を積算して推定所要時間Testを計算すると共に、代表誤差時間としての最小値Mi(n),最大値Ma(n)を各々積算して推定誤差時間としての最小値MIN,最大値MAXを計算するから、走行経路を構成する対象道路の過去の旅行時間を取得して旅行時間に対する確率密度分布を計算すると共にこれらを統合して走行経路の所要時間の確率密度分布を計算し、この確率分布密度に基づいて推定所要時間と誤差とを推定するものに比して、迅速に目的地までの走行経路における推定所要時間Testと推定誤差時間(最小値MIN,最大値MAX)とを計算することができる。
【0052】
実施例のナビゲーションシステム20では、情報センター60の電子制御ユニット70により図6の旅行時間設定処理を実行して対象道路の代表旅行時間Ttrpと代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)とを設定するものとしたが、ナビゲーション装置21の電子制御ユニット30により図6の旅行時間設定処理を実行して対象道路の代表旅行時間Ttrpと代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)とを設定するものとしてもよい。この場合、この対象道路の旅行時間に対する確率密度分布を取得する処理は、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布のデータを情報センター60から通信により取得するものとしてもよいし、対象道路を走行するのに要する旅行時間を多数収集して得られる対象道路の多数の旅行時間データを情報センター60から通信により入力すると共に入力した対象道路の多数の旅行時間データを統計処理により旅行時間に対する確率密度分布として表わすデータを作成することにより取得するものとしてもよい。また、設定した対象道路の代表旅行時間Ttrpと代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)についてはHDD40の地図データに直接書き込むものとすればよい。
【0053】
実施例のナビゲーションシステム20では、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合には、旅行時間軸上で第1ピーク値より左側の部分については第1ピーク値に属し、第2ピーク値より右側の部分については第2ピーク値に属し、第1ピーク値と第2ピーク値との間の部分については、第1ピーク値の左側の部分と第2ピーク値の右側の部分とに応じて按分して第1ピーク値や第2ピーク値に属するものとして各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2を計算するものとしたが、対象道路において第1ピーク値に関する分布と第2ピーク値に関する分布とが予め解っているときには、第1ピーク値に関する分布と第2ピーク値に関する分布との面積比などにより各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2を計算するものとしてもよい。
【0054】
実施例のナビゲーションシステム20では、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合には、第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk1に100%から信号停止確率Pstpを減じた確率(100−Pstp)を加えて得られたものを更に値2で除したものとして指標値Jpk1を計算すると共に第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2に信号停止確率Pstpを加えて得られたものを更に値2で除したものとして指標値Jpk2を計算し、指標値Jpk1,Jpk2のうち大きい方のピーク値の旅行時間を代表旅行時間Ttrpとして設定するものとしたが、各ピーク値に属する範囲の確率Ppk1,Ppk2と信号停止確率Pstpとを反映させた指標値であれば如何なる計算式により計算したものとしても構わない。例えば、第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk1と100%から信号停止確率Pstpを減じた確率(100−Pstp)に係数を乗じて得られるものとの和として指標値Jpk1を計算すると共に第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2と信号停止確率Pstpに係数を乗じて得られるものとの和として指標値Jpk2を計算するものなどとしてもよいし、、第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk1に係数を乗じたものと100%から信号停止確率Pstpを減じた確率(100−Pstp)との和として指標値Jpk1を計算すると共に第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2に係数を乗じたものと信号停止確率Pstpとの和として指標値Jpk2を計算するものなどとしてもよい。
【0055】
実施例のナビゲーションシステム20では、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合に代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)を設定する際には、旅行時間軸上で第1ピーク値より左側の部分は第1ピーク値に関する分布PT1を形成し、第2ピーク値より右側の部分は第2ピーク値に関する分布PT2を形成するものとし、第1ピーク値と第2ピーク値との間の部分については、第1ピーク値より左側の部分が第1ピーク値における旅行時間が一定の直線に対して対称に現われる分布を第1の分布P1(x)とすると共に第2ピーク値より右側の部分が第2ピーク値における旅行時間が一定の直線に対して対称に現われる分布を第2の分布P2(x)とし、第1の分布P1(x)と第2の分布P2(x)との和と確率密度分布P(x)との差(P(x)−(P1(x)+P2(x)))を第1の分布P1(x)と第2の分布p2(x)とにより按分して第1の分布P1(x)と第2の分布P2(x)とに加えたものを第1ピーク値に関する分布PT1と第2ピーク値に関する分布PT2とするものとしたが、第1ピーク値と第2ピーク値との間の部分については、第1ピーク値より左側の部分が第1ピーク値における旅行時間が一定の直線に対して対称に現われる分布を第1ピーク値に関する分布PT1とすると共に第2ピーク値より右側の部分が第2ピーク値における旅行時間が一定の直線に対して対称に現われる分布を第2ピーク値に関する分布PT2とするものとしてもよい。また、対象道路において第1ピーク値に関する分布と第2ピーク値に関する分布とが予め解っているときには、その第1ピーク値に関する分布と第2ピーク値に関する分布とを用いるものとしてもよい。
【0056】
実施例のナビゲーションシステム20では、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在する場合には、確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離し、分離した各分布に対して各ピーク値を含んで所定確率以上となる旅行時間の範囲の境界値(最小旅行時間T11,T21,最大旅行時間T12,T22)を導出し、導出した最小旅行時間T11,T21の各ピーク値の旅行時間Tpk1,Tpk2との差分としての小側誤差時間Tpk1−T11,Tpk2−T21のうち大きい方を代表誤差時間における最小値Miとして設定すると共に最大旅行時間T12,T22の各ピーク値の旅行時間Tpk1,Tpk2との差分としての大側誤差時間T12−Tpk1,T22−Tpk2のうち大きい方を代表誤差時間における最大値Maとして設定するものとしたが、図6の旅行時間設定処理のステップS320〜S340の処理(以下、「ダブルピーク時代表誤差時間設定処理」という。)に代えて、図11のダブルピーク時代表誤差時間設定処理に例示するように、確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離し(ステップS320)、代表旅行時間Ttrpに対応するピーク値に関する分布に対してピーク値を含んで所定確率以上となる旅行時間の範囲の境界値(最小旅行時間T1,最大旅行時間T2)を導出し(ステップS430)、導出した境界値(最小旅行時間T1,最大旅行時間T2)を代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)として設定する(ステップS440)、ものとしてもよい。この場合でも、対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在するときにも、代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)が大きくなりすぎるのを抑制することができる。
【0057】
また、図12のダブルピーク時代表誤差時間設定処理に例示するように、確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離し(ステップS320)、指標値Jpk1と指標値Jpk2とを比較し(ステップS530)、指標値Jpk1が指標値Jpk2以上のときには、第1ピーク値の旅行時間Tpk1が代表旅行時間Ttrpに設定されているときであるから、第1ピーク値に関する分布に対して第1ピーク値を含んで所定確率以上となる旅行時間の範囲の境界値(最小旅行時間T1,最大旅行時間T2)を導出し(ステップS540)、導出した最小旅行時間T1と第1ピーク値の旅行時間Tpk1との差分としての小側誤差時間Tpk1−T1を代表誤差時間における最小値Miとして設定すると共に導出した最大旅行時間T2と第1ピーク値の旅行時間Tpk1との差分としての大側誤差時間T2−Tpk1と100%に第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2を加えたものとを乗じたもの、即ち、大側誤差時間T2−Tpk1を第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2だけ増分したもの(増分大側誤差時間)を代表誤差時間における最大値Maとして設定し(ステップS550)、指標値Jpk1が指標値Jpk2未満のときには、第2ピーク値の旅行時間Tpk2が代表旅行時間Ttrpに設定されているときであるから、第2ピーク値に関する分布に対して第2ピーク値を含んで所定確率以上となる旅行時間の範囲の境界値(最小旅行時間T1,最大旅行時間T2)を導出し(ステップS560)、導出した最小旅行時間T1と第2ピーク値の旅行時間Tpk2との差分としての小側誤差時間Tpk2−T1と100%に第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk1を加えたものとを乗じたもの、即ち、小側誤差時間Tpk2−T1を第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk1だけ増分したもの(増分小側誤差時間)を代表誤差時間における最小値Miとして設定すると共に導出した最大旅行時間T2と第2ピーク値の旅行時間Tpk2との差分としての大側誤差時間Tpk2−T2を代表誤差時間における最大値Maとして設定する(ステップS570)、ものとしてもよい。こうすれば、代表旅行時間Ttrpに用いたピーク値とは異なるピーク値の属する範囲の確率を代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)に反映させることができる。即ち、第1ピーク値の旅行時間Tpk1が代表旅行時間Ttrpとして設定されているときには、第1ピーク値に関する分布に対して得られる誤差時間に対して大きい方(大側誤差時間T2−Tpk1)に第2ピーク値に属する範囲の確率Ppk2を反映させて代表誤差時間における最大値Maを設定することができ、第2ピーク値の旅行時間Tpk2が代表旅行時間Ttrpとして設定されているときには、第2ピーク値に関する分布に対して得られる誤差時間に対して小さい方(小側誤差時間Tpk2−T1)に第1ピーク値に属する範囲の確率Ppk2を反映させて代表誤差時間における最小値Miを設定することができる。もとより、この場合において対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在するときにも、代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)が大きくなりすぎるのを抑制することができる。
【0058】
更に、図13のダブルピーク時代表誤差時間設定処理に例示するように、確率密度分布を各ピーク値に関する分布に分離し(ステップS320)、指標値Jpk1と指標値Jpk2とを比較し(ステップS630)、指標値Jpk1が指標値Jpk2以上のときには、第1ピーク値の旅行時間Tpk1が代表旅行時間Ttrpに設定されているときであるから、第1ピーク値に関する分布に対して第1ピーク値を含んで所定確率以上となる旅行時間の範囲の境界値(最小旅行時間T1,最大旅行時間T2)を導出し(ステップS640)、導出した最小旅行時間T1と第1ピーク値の旅行時間Tpk1との差分としての小側誤差時間Tpk1−T1を代表誤差時間における最小値Miとして設定すると共に導出した最大旅行時間T2と第1ピーク値の旅行時間Tpk1との差分として得られる大側誤差時間T2−Tpk1と100%に信号停止確率Tstpを加えたものとを乗じたもの、即ち、大側誤差時間T2−Tpk1を信号停止確率Pstpだけ増分したもの(増分大側誤差時間)を代表誤差時間における最大値Maとして設定し(ステップS650)、指標値Jpk1が指標値Jpk2未満のときには、第2ピーク値の旅行時間Tpk2が代表旅行時間Ttrpに設定されているときであるから、第2ピーク値に関する分布に対して第2ピーク値を含んで所定確率以上となる旅行時間の範囲の境界値(最小旅行時間T1,最大旅行時間T2)を導出し(ステップS660)、導出した最小旅行時間T1と第2ピーク値の旅行時間Tpk2との差分として得られる小側誤差時間Tpk2−T1と100%に100%から信号停止確率Pstpを加えたものとを乗じたもの、即ち、小側誤差時間Tpk2−T1を信号機により車両が停止しない確率(100−Pstp)だけ増分したもの(増分小側誤差時間)を代表誤差時間における最小値Miとして設定すると共に導出した最大旅行時間T2と第2ピーク値の旅行時間Tpk2との差分としての大側誤差時間Tpk2−T2を代表誤差時間における最大値Maとして設定する(ステップS670)、ものとしてもよい。こうすれば、信号停止確率Pstpを代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)に反映させることができる。即ち、第1ピーク値の旅行時間Tpk1が代表旅行時間Ttrpとして設定されているときには、第1ピーク値に関する分布に対して得られる誤差時間に対して大きい方(大側誤差時間T2−Tpk1)に信号停止確率Pstpを反映させて代表誤差時間における最大値Maを設定することができ、第2ピーク値の旅行時間Tpk2が代表旅行時間Ttrpとして設定されているときには、第2ピーク値に関する分布に対して得られる誤差時間に対して小さい方(小側誤差時間Tpk2−T1)に信号機により車両が停止しない確率(100−Pstp)を反映させて代表誤差時間における最小値Miを設定することができる。もとより、この場合において対象道路の旅行時間に対する確率密度分布に二つのピーク値が存在するときにも、代表誤差時間(最小値Mi,最大値Ma)が大きくなりすぎるのを抑制することができる。
【0059】
実施例やその変形例では、本発明をナビゲーションシステム20に適用して説明したが、各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を設定する代表旅行時間の設定方法の形態としてもよい。この場合、上述した図6の旅行時間設定処理のステップS200〜S280の処理による方法やその変形例による方法が相当する。また、コンピュータを各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を設定する装置として機能させるプログラムの形態としてもよい。この場合、上述した図6の旅行時間設定処理のステップS200〜S280の処理や変形例の処理をコンピュータにより読み取り可能な言語(コンピュータ言語)や記号を用いて記述すればよい。
【0060】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ナビゲーションシステムの製造産業やナビゲーション用のプログラム開発産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
20 ナビゲーションシステム、21 ナビゲーション装置、22 ディスプレイ、24 タッチパネル、26 スピーカ、30 電子制御ユニット、32 CPU、34 ROM、36 RAM、38 フラッシュメモリ、40 ハードディスクドライブ(HDD)、50 GPS受信機、52 方位センサ、54 推定所要時間演算部、58 通信装置、60 情報センター、70 電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、78 フラッシュメモリ、80 ハードディスクドライブ(HDD)、82 確率密度分布取得部、83 代表旅行時間設定部、84 代表誤差時間設定部、85 データ更新部、88 通信装置、90 周辺機器接続装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を設定するナビゲーションシステムであって、
前記各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得する確率分布密度取得手段と、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、該極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定するとともに、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布と前記対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて前記二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、該選択した極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定する代表旅行時間設定手段と、
を備えるナビゲーションシステム。
【請求項2】
請求項1記載のナビゲーションシステムであって、
前記代表旅行時間設定手段は、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布を前記二つの極大値のうち旅行時間の短い第1の極大値に属する範囲と旅行時間の長い第2の極大値に属する範囲とに所定の基準によって区分けし、前記第1の極大値に属する範囲の確率と100%から前記信号停止確率を減じて得られる確率とに基づいて前記第1の極大値に対する指標値を演算すると共に、前記第2の極大値に属する範囲の確率と前記信号停止確率とに基づいて前記第2の極大値に対する指標値を演算し、前記演算した二つの指標値のうち大きい方の指標値に対応する極大値を前記選択した極大値として選択する手段である、
ナビゲーションシステム。
【請求項3】
請求項2記載のナビゲーションシステムであって、
前記所定の基準は、前記確率密度分布のうち前記第1の極大値の旅行時間より短い旅行時間に対する第1の分布は前記第1の極大値に属する範囲に含まれ、前記確率密度分布のうち前記第2の極大値の旅行時間より長い旅行時間に対する第2の分布は前記第2の極大値に属する範囲に含まれ、前記確率密度分布のうち前記第1の極大値の旅行時間と前記第2の極大値の旅行時間との間の旅行時間に対する中間分布は前記第1の分布と前記第2の分布とに応じて前記第1の極大値に属する範囲と前記第2の極大値に属する範囲とに按分される基準である、
ナビゲーションシステム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一つの請求項に記載のナビゲーションシステムであって、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、前記確率密度分布に対して前記代表旅行時間を含む所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定する誤差時間設定手段と、
目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、前記走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより前記推定所要時間の誤差時間を演算する所要時間演算手段と、
を備えるナビゲーションシステム。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか一つの請求項に記載のナビゲーションシステムであって、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、前記確率密度分布に対して前記代表旅行時間を含む所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である第1の小側誤差時間および第1の大側誤差時間を演算すると共に前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値とは異なる極大値に属する分布に対して該極大値に対する旅行時間を含む前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と該極大値に対する旅行時間との差である第2の小側誤差時間および第2の大側誤差時間を演算し、前記第1の小側誤差時間と前記第2の小側誤差時間とのうち大きい方と前記第1の大側誤差時間と前記第2の大側誤差時間とのうち大きい方とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定する誤差時間設定手段と、
目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、前記走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより前記推定所要時間の誤差時間を演算する所要時間演算手段と、
を備えるナビゲーションシステム。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか一つの請求項に記載のナビゲーションシステムであって、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、前記確率密度分布に対して前記代表旅行時間を含む所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、前記二つの極大値の旅行時間のうち短い方が前記代表旅行時間として設定されるときには、前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を演算すると共に前記演算された大側誤差時間に対して前記信号停止確率に相当する分だけ増大した増分大側誤差時間を演算し、前記小側誤差時間と前記増分大側誤差時間とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、前記二つの極大値の旅行時間のうち長い方が前記代表旅行時間として設定されるときには、前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を演算すると共に前記演算された小側誤差時間に対して100%から前記信号停止確率を減じて得られる確率に相当する分だけ増大した増分小側誤差時間を演算し、前記増分小側誤差時間と前記大側誤差時間とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定する誤差時間設定手段と、
目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、前記走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより前記推定所要時間の誤差時間を演算する所要時間演算手段と、
を備えるナビゲーションシステム。
【請求項7】
請求項2または3記載のナビゲーションシステムであって、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、前記確率密度分布に対して前記代表旅行時間を含む所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、前記第1の極大値の旅行時間が代表旅行時間として設定されるときには、前記確率密度分布のうち前記第1の極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を演算すると共に前記演算された大側誤差時間に対して前記第2の極大値に属する範囲の確率に相当する分だけ増分した増分大側誤差時間を演算し、前記小側誤差時間と前記増分大側誤差時間とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、前記第2の極大値の旅行時間が代表旅行時間として設定されるときには、前記確率密度分布のうち前記第2の極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を演算すると共に前記演算された小側誤差時間に対して前記第1の極大値に属する範囲の確率に相当する分だけ増分した増分小側誤差時間を演算し、前記増分小側誤差時間と前記大側誤差時間とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定する誤差時間設定手段と、
目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、前記走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより前記推定所要時間の誤差時間を演算する所要時間演算手段と、
を備えるナビゲーションシステム。
【請求項8】
各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を用いるナビゲーションシステムにおける前記代表旅行時間の設定方法であって、
前記各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得し、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、該極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定するとともに、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布と前記対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて前記二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、該選択した極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定する、
代表旅行時間の設定方法。
【請求項9】
コンピュータを各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を設定する装置として機能させるプログラムであって、
前記各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得するモジュールと、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、該極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定するとともに、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布と前記対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて前記二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、該選択した極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定するモジュールと、
がコンピュータに読み取り可能に記述されているプログラム。
【請求項1】
各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を設定するナビゲーションシステムであって、
前記各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得する確率分布密度取得手段と、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、該極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定するとともに、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布と前記対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて前記二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、該選択した極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定する代表旅行時間設定手段と、
を備えるナビゲーションシステム。
【請求項2】
請求項1記載のナビゲーションシステムであって、
前記代表旅行時間設定手段は、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布を前記二つの極大値のうち旅行時間の短い第1の極大値に属する範囲と旅行時間の長い第2の極大値に属する範囲とに所定の基準によって区分けし、前記第1の極大値に属する範囲の確率と100%から前記信号停止確率を減じて得られる確率とに基づいて前記第1の極大値に対する指標値を演算すると共に、前記第2の極大値に属する範囲の確率と前記信号停止確率とに基づいて前記第2の極大値に対する指標値を演算し、前記演算した二つの指標値のうち大きい方の指標値に対応する極大値を前記選択した極大値として選択する手段である、
ナビゲーションシステム。
【請求項3】
請求項2記載のナビゲーションシステムであって、
前記所定の基準は、前記確率密度分布のうち前記第1の極大値の旅行時間より短い旅行時間に対する第1の分布は前記第1の極大値に属する範囲に含まれ、前記確率密度分布のうち前記第2の極大値の旅行時間より長い旅行時間に対する第2の分布は前記第2の極大値に属する範囲に含まれ、前記確率密度分布のうち前記第1の極大値の旅行時間と前記第2の極大値の旅行時間との間の旅行時間に対する中間分布は前記第1の分布と前記第2の分布とに応じて前記第1の極大値に属する範囲と前記第2の極大値に属する範囲とに按分される基準である、
ナビゲーションシステム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一つの請求項に記載のナビゲーションシステムであって、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、前記確率密度分布に対して前記代表旅行時間を含む所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定する誤差時間設定手段と、
目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、前記走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより前記推定所要時間の誤差時間を演算する所要時間演算手段と、
を備えるナビゲーションシステム。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか一つの請求項に記載のナビゲーションシステムであって、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、前記確率密度分布に対して前記代表旅行時間を含む所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である第1の小側誤差時間および第1の大側誤差時間を演算すると共に前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値とは異なる極大値に属する分布に対して該極大値に対する旅行時間を含む前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と該極大値に対する旅行時間との差である第2の小側誤差時間および第2の大側誤差時間を演算し、前記第1の小側誤差時間と前記第2の小側誤差時間とのうち大きい方と前記第1の大側誤差時間と前記第2の大側誤差時間とのうち大きい方とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定する誤差時間設定手段と、
目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、前記走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより前記推定所要時間の誤差時間を演算する所要時間演算手段と、
を備えるナビゲーションシステム。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか一つの請求項に記載のナビゲーションシステムであって、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、前記確率密度分布に対して前記代表旅行時間を含む所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、前記二つの極大値の旅行時間のうち短い方が前記代表旅行時間として設定されるときには、前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を演算すると共に前記演算された大側誤差時間に対して前記信号停止確率に相当する分だけ増大した増分大側誤差時間を演算し、前記小側誤差時間と前記増分大側誤差時間とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、前記二つの極大値の旅行時間のうち長い方が前記代表旅行時間として設定されるときには、前記確率密度分布のうち前記代表旅行時間に対応する極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を演算すると共に前記演算された小側誤差時間に対して100%から前記信号停止確率を減じて得られる確率に相当する分だけ増大した増分小側誤差時間を演算し、前記増分小側誤差時間と前記大側誤差時間とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定する誤差時間設定手段と、
目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、前記走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより前記推定所要時間の誤差時間を演算する所要時間演算手段と、
を備えるナビゲーションシステム。
【請求項7】
請求項2または3記載のナビゲーションシステムであって、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、前記確率密度分布に対して前記代表旅行時間を含む所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、前記第1の極大値の旅行時間が代表旅行時間として設定されるときには、前記確率密度分布のうち前記第1の極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を演算すると共に前記演算された大側誤差時間に対して前記第2の極大値に属する範囲の確率に相当する分だけ増分した増分大側誤差時間を演算し、前記小側誤差時間と前記増分大側誤差時間とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定し、前記確率密度分布に二つの極大値が存在し、且つ、前記第2の極大値の旅行時間が代表旅行時間として設定されるときには、前記確率密度分布のうち前記第2の極大値に属する分布に対して前記所定の確率以上となる旅行時間の範囲の境界値としての最小旅行時間および最大旅行時間と前記代表旅行時間との差である小側誤差時間および大側誤差時間を演算すると共に前記演算された小側誤差時間に対して前記第1の極大値に属する範囲の確率に相当する分だけ増分した増分小側誤差時間を演算し、前記増分小側誤差時間と前記大側誤差時間とを前記代表旅行時間に対する誤差時間として設定する誤差時間設定手段と、
目的地までの走行経路を構成する各道路に対して設定された代表旅行時間を積算して目的地までの推定所要時間を演算するとともに、前記走行経路を構成する各道路に対して設定された誤差時間を積算することにより前記推定所要時間の誤差時間を演算する所要時間演算手段と、
を備えるナビゲーションシステム。
【請求項8】
各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を用いるナビゲーションシステムにおける前記代表旅行時間の設定方法であって、
前記各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得し、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、該極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定するとともに、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布と前記対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて前記二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、該選択した極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定する、
代表旅行時間の設定方法。
【請求項9】
コンピュータを各道路を走行するのに要する時間として代表される代表旅行時間を設定する装置として機能させるプログラムであって、
前記各道路のうち対象の道路を走行するのに要した複数の旅行時間に対する確率密度分布を取得するモジュールと、
前記確率密度分布に一つの極大値だけが存在するときには、該極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定するとともに、前記確率密度分布に二つの極大値が存在するときには、前記確率密度分布と前記対象の道路において信号機により車両が停止する信号停止確率とに基づいて前記二つの極大値のうちいずれかの極大値を選択し、該選択した極大値の旅行時間を前記対象の道路の代表旅行時間として設定するモジュールと、
がコンピュータに読み取り可能に記述されているプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−29421(P2013−29421A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165687(P2011−165687)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
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