説明

ナビゲーション装置用走行軌跡表示装置

【課題】車両が走行した軌跡をナビゲーション装置の道路地図上に表示する際、同じ道路を多数回走行することによって走行軌跡が太く表示され、道路地図を見にくくしてしまう問題を解決する「ナビゲーション装置用走行軌跡表示装置」とする。
【解決手段】車両が所定距離走行する毎に走行軌跡地点を検出して走行軌跡地点データを走行順に蓄積し、そのデータで走行軌跡を表示するに際し、蓄積したデータから新しい順に走行軌跡地点を選択する。その選択した走行軌跡地点について、所定の距離の範囲内に既に表示した走行軌跡地点が存在するか否かを検出する。存在する時には今回選択した走行軌跡地点を非表示とする処理を行う。また、新規に検出した走行軌跡地点の表示に際しては、その新規の走行軌跡地点について、所定の距離の範囲内に既に表示した走行軌跡地点が存在することを検出した時には、既に表示していた走行軌跡地点を削除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナビゲーション装置において、車両が走行した後を記録し、車両走行中に画面に走行軌跡として表示するナビゲーション装置用走行軌跡表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載する一般のナビゲーション装置においては、地図を描画するための地図データ及び施設等を検索するための施設情報データを記録したDVD−ROM、ハードディスク等の地図・情報データ記憶媒体と、この地図・情報データ記憶媒体のデータを取り込むデータ取込装置と、取り込んだ地図を描画する地図描画装置と、地図等を表示するモニタ等によって地図を表示可能としている。
【0003】
一方、このナビゲーション装置においては、GPS受信機及び走行距離センサやジャイロ等を用いた自律航法装置を用い、車両の現在位置及び進行方向の方位を検出する車両位置検出装置を有し、検出した車両の現在位置に基づき、或いは利用者の指示した位置に基づき、その位置を含む地図データを地図・情報データ記憶媒体から取り込み、この地図データによって前記のような地図表示装置によりその位置の周囲の地図画像をモニタの画面に描画すると共に、車両位置マークや指示位置マークをモニタ画面の中央或いは特定の位置に表示し、車両位置の移動や指示位置の移動に応じて地図画像を移動させたり、地図画像を画面に固定し車両位置マークや指示位置マークを移動させることができるようにしている。
【0004】
DVD−ROM、或いはハードディスク等の地図・情報データ記憶媒体に記憶されている地図データは、各種の縮尺レベルに応じて適当な大きさの経度幅及び緯度幅に区切られており、その地図データは道路リスト及びノードテーブル等からなる道路レイヤ、地図画面上に道路、建築物、施設、公園及び河川等を表示するための主としてポリゴンデータからなる背景レイヤ、市町村名などの行政区画名、道路名、交差点名及び施設の名前等の、文字や地図記号等を表示するための文字レイヤなどから構成される。
【0005】
前記道路リスト及びノードテーブルは、ある単位領域(パーセルやメッシュ)毎にまとめられている。ノードテーブルに含まれるノードは地点の情報であり、地点の位置および高速ジャンクション・一般交差点などの地点の種別を示した情報で構成される。道路リストに含まれる道路リンクは道路の情報であり、道路の始点・終点の位置、道路の長さや幅等の属性で構成される。一般的に道路リンクの始点および終点はノードとして表現されており、属性には、高速道路、国道、一般道路などの道路の種別や幅員などが含まれる。
【0006】
上記のようなナビゲーション装置において、車両が今までどこを走行したかを表示することができるように、車両の走行軌跡を記憶する機能も備えている。この時の走行軌跡データは、車両が走行を開始した時、所定距離毎に位置を記録し、走行軌跡地点のデータとする。その後も所定距離走行する毎に現在位置を記録する作動を繰り返す。このとき、いつ走行した時のデータであるかを走行年日時と共に記録しておくことにより、後で過去の走行ルートを見てみたいと思った時、日時を指定することによりその走行ルートを表示することができるようにもなる。
【0007】
なお、現在走行しているルートが、過去に走行したことがあるルートと同一であれば、走行軌跡を表示しない技術は特許文献1に開示され、道路の通行回数に応じて、走行軌跡を示すマークの色や形状を変える技術は特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−249555号公報
【特許文献2】特開2004−286496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この走行軌跡データは地点のデータ、即ち点データであるが、これを表示する時には所定の大きさの例えば正方形として表示する。したがって走行軌跡が特定の道路に対して1本の時は、点で表されるものの、同じ道路を複数回走行するとその点が次第に繋がって線となってくる。それが更に左右にずれた複数の線になると、比較的縮尺の大きい、即ち比較的広域の地図では、道路の幅が狭く表示されるものの、走行軌跡の線は複数の走行軌跡が重なって太く表され、地図上では道路を覆い尽くし、道路地図が見にくくなってしまう。また、多くの場合道路上に書かれるように設定してある、○○道路、国道○○号、等の道路名称が、表示の上書き順により、その後この走行軌跡の表示によって隠れてしまい、見にくくなるという問題もある。
【0010】
この状態は図11に示しており、そもそも走行軌跡を表示しない時は同図(a)に示すような道路地図に自車位置マークを表示していると共に、必要な箇所に前記のような道路名称を表示している。それに対してこの表示された道路上を多数回走行していると、同図(b)に示すような表示となる。同図の例では現在自車が走行している道路には走行軌跡Aが表示され、その道路と交差する「道路名称」が表示されている道路に走行軌跡Bが表示され、これらは多くの走行回数によって道路よりも太い走行軌跡となってしまっている。同図にはそのほか走行軌跡C、D、Eも存在するが、走行回数が比較的少ないことにより、道路幅内に収まっている例を示している。
【0011】
図11(b)において特に走行軌跡が太く表示されている走行軌跡Aにおいて、自車位置マーク付近の部分を拡大して示したものが同図(c)であり、ここには走行軌跡が表示される基となる、走行軌跡地点を中心に正方形の走行軌跡地点マークを表示しており、複数回走行した時の走行軌跡地点マークが場所によって密集し重なり合っている。
【0012】
例えばこのような走行軌跡地点マークが灰色の表示である時、図11(d)に示すように、重なった部分の各走行軌跡地点マークは連続して帯状に表示されることとなる。同図に示す一部拡大図を元の同図(b)に示す縮尺の道路地図に表示すると、前記のように各走行軌跡が重なり合い、先に描画される道路地図上に、後で描画する灰色の走行軌跡が重なり、道路は実質的に見えなくなってしまう。同様に、「道路名称」の上にも走行軌跡が重なって表示されるので、この道路名称も見にくくなってしまう。
【0013】
したがって本発明は、車両が走行した軌跡をナビゲーション装置の道路地図上に表示するナビゲーション装置用走行軌跡表示装置において、同じ道路を多数回走行することによって走行軌跡が太く表示され、道路地図等を見にくくしてしまう問題を解決することができるナビゲーション装置用走行軌跡表示装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るナビゲーション装置用走行軌跡表示は、前記課題を解決するため、車両が所定距離走行する毎に、走行軌跡表示のための地点である走行軌跡地点を検出する新規走行軌跡地点検出部と、前記新規走行軌跡地点検出部で検出した走行軌跡地点を走行順に蓄積したデータから、新しい順に走行軌跡地点を選択する走行軌跡地点選択部と、前記走行軌跡地点選択部で選択した走行軌跡地点について、所定の距離の範囲内に既に表示した走行軌跡地点が存在するか否かを検出する走行軌跡地点近傍既表示検出部と、前記走行軌跡地点近傍既表示検出部で所定の距離の範囲内に既に表示した走行軌跡地点が存在することを検出した時、前記走行軌跡地点選択部で選択した走行軌跡地点を非表示判別とし、存在しないと判別した時には前記選択した走行軌跡地点を表示と判別する走行軌跡表示判別部と、前記走行軌跡表示判別部で表示と判別した走行軌跡地点を表示処理する走行軌跡地点表示処理部とを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る他のナビゲーション装置用走行軌跡表示は、前記ナビゲーション装置用走行軌跡表示装置において、前記走行軌跡地点近傍既表示検出部では、前記新規走行軌跡地点検出部で検出した新規の走行軌跡地点について、所定の距離の範囲内に既に表示した走行軌跡地点が存在するか否かを検出し、前記走行軌跡地点近傍既表示検出部で、所定の距離の範囲内に既に表示した走行軌跡地点が存在することを検出した時、当該既に表示した走行軌跡地点の表示を削除する既表示走行軌跡地点表示削除部を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る他のナビゲーション装置用走行軌跡表示は、前記ナビゲーション装置用走行軌跡表示装置において、前記走行軌跡地点表示処理部には、走行軌跡地点が新しいほど濃く表示する走行軌跡地点濃淡表示部を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る他のナビゲーション装置用走行軌跡表示は、前記ナビゲーション装置用走行軌跡表示装置において、 前記走行軌跡地点表示処理部には、走行軌跡表示の前に表示した道路名称を、走行軌跡表示後に再度表示する道路名称上書き表示部を備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る他のナビゲーション装置用走行軌跡表示は、前記ナビゲーション装置用走行軌跡表示装置において、 前記走行軌跡地点表示処理部には、同一道路に対して同一の箇所に走行軌跡地点を表示する同一道路同一箇所表示処理部を備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る他のナビゲーション装置用走行軌跡表示は、前記ナビゲーション装置用走行軌跡表示装置において、 前記同一道路同一箇所表示処理部では、各道路の一方のリンク端を始点とし、表示縮尺に対応した所定距離毎に、走行軌跡地点を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上記のように構成したので、車両が走行した軌跡をナビゲーション装置の道路地図上に表示する際、同じ道路を多数回走行することによって走行軌跡が太く表示され、道路地図を見にくくしてしまう問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例の機能ブロック図である。
【図2】本発明の作動フロー図である。
【図3】同作動フロー図における、新しい走行軌跡地点データ追加による走行軌跡地点表示処理の作動フロー図である。
【図4】本発明の表示処理例を示す図である。
【図5】本発明の他の表示処理例を示す図である。
【図6】本発明における道路名称上書き表示処理例を示す図である。
【図7】本発明の更に他の表示処理例を示す図である。
【図8】本発明の更に他の表示処理例を示す図である。
【図9】道路軌跡表示用データ例を示す図である。
【図10】道路地図描画時の描画順の例を示す図である。
【図11】従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0022】
本発明の実施例を図面に沿って説明する。図1は本発明の機能ブロック図であり、本発明を種々の態様で実施する例を示しており、本発明はこれらの機能の内任意のものを選択して実施することができる。図1に示す例においては現在位置検出部1で車両の現在位置を検出している。この現在位置検出部においては、従来から用いられているGPSを用いた航法、車両における車速パルスによる走行距離とジャイロによる走行方位の積算による自立航法等によって現在位置を測定する。但し、本発明は必ずしも現在位置を検出する必要はなく、例えば車両の停止時にこの車両が過去に走行した経路を知りたいと思った時、利用者が指示する地点を現在位置として検出することもでる。
【0023】
地図データ取込部2では、前記のような現在位置検出部で検出した位置を中心に所定範囲の地図を、DVD、HDD、メモリ等の地図データベースから取り込むものであり、その際は地図に表示する範囲より多めの地図データを取り込んでおき、画面表示する部分の道路地図を描画形成するほか、予め他の部分も描画処理の準備をしておき、現在位置の移動に合わせて滑らかに道路地図が移動できるようにしている。また、現在位置の移動により先に取り込んだデータでは不足しそうな時、新たな範囲の地図データを取り込み、同様の処理を行う。
【0024】
走行軌跡表示用データ取込整理部3では、地図データ取込部2で前記のように取り込んだ地図データについて、その中の特に走行軌跡表示用データをここに取り込み、そのデータが本発明を適用するためには使用しにくい形態で記録されている時には、その後本発明が利用しやすいように整理する。また、本発明の処理において、走行軌跡として表示させないと判別した時、走行軌跡表示用データとしては削除しておく等のデータ整理処理を、走行軌跡表示用データ書込部4によって行う。このとき、地図データベースのデータは削除せず、他の用途で使用可能としておくことが好ましい。
【0025】
なお、このときの走行軌跡表示用データは各種の態様で整理しておくことができるが、例えば図9に示すように、エンジンをかけてからエンジンを切るまでを1回の走行とし、これを走行順に番号を振り(a)、各走行について走行開始年月日と時刻を記録する(B)。また走行開始地点(CB0)を記録し、その後例えば10m等の所定距離を単位距離とし、その単位距離走行する毎に第1走行地点(CB1)、第2走行地点(CB2)、・・・・、第n走行地点(CBn)(nは最終地点で不定)としておく。
【0026】
それにより、例えば最初は走行番号(A)についてAAA1とし、走行開始年月日時刻(B)についてBAA1とする。走行開始地点(CB0)についてはCAA10とし、単位距離第1走行地点(CB1)についてはCAA11とし、同様に単位距離第2走行地点についてはCAA12とし、単位距離走行第n走行地点(CBn)についてはCAA1nとしたデータを整理しておく。以降同様な整理を行い、その後新規の走行軌跡地点の検出、更にはその後の新規の走行について、データを蓄積していく。このようなデータの記録が従来より走行軌跡データとして整理されている時には、既に存在するデータをそのまま使用することができ、走行軌跡表示用データとしては別途上記のデータにより、その後表示不要な地点の削除、或いは新規データの追加等を行うようにする。
【0027】
走行軌跡表示用データ書込部4においては、後述するように本発明において表示しないこととなった走行軌跡地点データを、走行軌跡表示用データ取込整理部3で前記のように整理しているデータについて、対応する走行軌跡地点のデータを削除する。また、新規に発生した走行軌跡データとしての走行軌跡地点のデータを追加記録する。
【0028】
走行距離検出部5においては、現在位置検出部1のデータの累積によって走行距離を検出し、これを新規走行軌跡地点検出部6に出力する。新規走行軌跡地点検出部6では、この走行距離のデータによって例えば10m等の所定の距離を検出した時、その地点の位置データを現在位置検出部1から取り込み、これを新規走行軌跡地点として走行軌跡表示用データ書込部4に出力し、走行軌跡表示用データ取り込み整理部3に前記のように記録する。また、その新規走行軌跡地点のデータは走行軌跡地点近傍既表示検出処理部8に出力し、後述する処理を行う。
【0029】
表示用走行軌跡地点選択部7においては、走行軌跡表示用データ取込整理部3に整理してある前記のようなデータの中から、最新のデータから古いデータに向けて順に走行軌跡地点を選択して取り込む。その選択した走行軌跡地点のデータは、走行軌跡地点近傍既表示検出処理部8に出力する。
【0030】
走行軌跡地点近傍既表示検出処理部8には、前記のように表示用走行軌跡地点選択部7で順に選択した走行軌跡地点のデータについて、既に表示している走行軌跡地点近傍の走行軌跡地点の存在を検出する選択地点処理部10の検出処理部と、新規走行軌跡地点検出部6で検出した新たな走行軌跡地点のデータについて同様の処理を行う新規地点処理部11とを備えている。
【0031】
このときの走行軌跡地点近傍の「近傍」とは、その走行軌跡地点から例えば6m等の所定距離の範囲内を言い、表示距離設定部9で設定した距離とする。但し、この所定距離は表示する地図の縮尺に応じて任意に設定することができ、走行軌跡地点の表示間隔が、例えば地図画面中に示す一定長さについて10mを示す時は10m毎に、500mを示す時は500m毎に、10kmを示す時は10km毎に設定している時、それぞれ半分程度の距離に対する値に設定することもできる。
【0032】
この時の所定距離はそのほか任意に選択することができるが、新規走行軌跡地点検出部6で前記のように最も縮尺の小さな地図を表示する時でも所定の走行軌跡地点データが得られるように、走行距離が10m毎に走行軌跡地点を検出している時には、その半分の5m以上で、10m未満程度の任意の距離に設定しても良い。それにより、表示する走行軌跡地点は、多くの場合1本の道路にほぼ一本の軌跡地点の列が表示されることとなる。
【0033】
走行軌跡表示判別部12では、第1に前記のように選択地点処理部10で選択した走行軌跡地点についての走行軌跡表示判別を行うものであり、所定距離以内に既表示の走行軌跡地点が存在する時には、選択した地点を非表示13とする。それに対して、選択地点処理部10についての走行軌跡地点の所定距離近傍に既に表示した走行軌跡地点が存在しないと判別した時にはこれを表示14とする。特にここで非表示とされた走行軌跡地点については、その判別結果を走行軌跡表示用データ書込部4に出力し、走行軌跡表示用データ取込整理部3でそのデータを削除、或いは別途非表示のフラクを立てる等の処理を行う。また、ここで表示14と判別したデータについては、後述する走行軌跡地点表示処理部16で各種の表示処理を行う。
【0034】
一方走行軌跡地点近傍既表示検出部8における新規地点処理部11の処理においては、新規走行軌跡地点検出部6で検出した新規の走行軌跡地点について、その所定距離の範囲内に既に表示している走行軌跡地点を検出する。その結果既に表示している走行軌跡地点が所定距離内に存在することを検出した時には、既表示走行軌跡地点表示削除部15において、既に表示しているその走行軌跡地点の表示を削除する処理を行う。このとき、新規の走行軌跡地点については常に表示することとなる。
【0035】
したがって、走行軌跡地点近傍既表示検出処理部8で行う、表示用走行軌跡地点選択部7で選択した選択地点処理部10についての走行軌跡地点近傍既表示検出処理では、既に表示している走行軌跡地点が存在することを検出した時には、選択した地点を表示しない処理がなされるのに対して、新規走行軌跡地点検出部6で検出した新規地点処理部11については、ここで既表示の走行軌跡地点を検出した時には、その検出した走行軌跡地点を削除する処理を行う点で大きく異なる。
【0036】
走行軌跡地点表示処理部16では、前記のように走行軌跡地点近傍既表示検出処理部8の選択地点処理部10における処理で、走行軌跡表示判別部12により表示14と判別した走行軌跡地点と、新規走行軌跡地点検出部6で検出した新規走行軌跡地点とにより、表示画面全体の走行軌跡地点の表示処理を行う。
【0037】
図示の走行軌跡地点表示処理16においては、各種の態様で表示処理を行う例を示しており、必要に応じて任意のものを選択して処理を行うことができる。図1に示す例においては、走行軌跡地点濃淡表示部17を備え、例えば図6に示すように、例えば新しい走行軌跡地点についてK1から順に過去側に向かってK2・・・K6が存在する時、最新側の走行軌跡地点マークK1から過去側の走行軌跡地点マークK6に向けて次第に濃度を下げる。それにより走行軌跡を灰色で表示する時、最新側の走行軌跡地点マークは濃い灰色である、過去側に向けて次第に淡く表示されることとなる。
【0038】
但し、所定以上淡く表示するとほとんど見ることができないので、下限を設けても良い。それにより、道路地図画面上に表示される走行軌跡が前記のような走行軌跡地点近傍既表示検出処理による非表示処理、及び既表示走行軌跡地点表示削除処理部15での表示削除処理がなされても、未だ道路画面全体に多数の走行軌跡が存在することにより道路地図が見にくくなる時、この処理によって見やすい道路地図画面とすることができる。
【0039】
走行軌跡地点表示処理部16における道路名称上書き表示部18においては、道路地図を描画する時、予め定められた描画順により、道路地図や道路名称が描画された後に走行軌跡を表示することにより、前記図11(b)のように、特に走行軌跡が多数存在することによって道路名称が見にくくなる点について、本発明の前記処理によって従来のものと比較して表示される走行軌跡地点が少なくなるため見やすくなるものの、未だ道路名称が走行軌跡地点マークと重なって不明瞭な時に、この処理を行うことによって更に道路名称を見やすくすることができる。
【0040】
従来より、道路地図の表示を行う時、その道路地図に表示する各種のデータについて、例えば図10に示すように描画順が定められており、それにより道路名称を表示する「TXT」は走行軌跡を表示する「Locus」よりも先に表示される。そのため、例えば図7(a)に示すように、道路名称が走行軌跡地点マークと重なって本発明においても見にくくなる場合も考えられるが、道路名称上書き表示部18で、一旦このように表示された状態から、最終的に道路名称表示処理を再度行うことによって、同図(b)に示すように走行軌跡地点マークの上に道路名称が表示され、見やすい道路名称表示となる。
【0041】
同一道路同一箇所表示処理部19においては、例えば図8に示す処理を行う。即ち、走行軌跡地点マークを新規に表示するに際して、特定の道路リンクを走行する時、図示するように道路リンク始点Sから一定の距離a毎に走行軌跡地点マーク表示位置を決めておき、それによりこの道路を走行する時はいつもこの位置に走行軌跡地点マークを表示する。それによりこの道路を何回走行しても、画面に表示する道路軌跡地点は1つの点列しか存在しないこととなる。
【0042】
但し、この所定間隔はモニタに表示する地図の縮尺に応じて調整し、例えば図8(b)に示すように、地図画面中に示す一定長さについて10mを示す時は10m毎に、100mを示す時は100m毎に、500mを示す時は500m毎に、10kmを示す時は10km毎に設定する。それにより、地図の縮尺が変化しても、本来表示する地点に最も近接する前記地点に表示することができ、走行軌跡地点マークは常に所定位置のみに表示することができるため、前記走行軌跡地点近傍既表示検出処理部8の処理で見やすくなった走行軌跡が、更に見やすくすることができる。
【0043】
同一道路同一箇所表示処理部19では、前記のような処理を行うためリンク始点検出部20を備え、図8に示すような各道路についてのリンクの始点Sを検出する。また、表示縮尺検出部21では現在モニタに表示している道路地図の縮尺を取り込むことにより検出する。走行軌跡表示地点演算部22では、図8(a)に示すような、各道路について走行軌跡を表示する地点を演算する。走行軌跡地点表示位置変更部23では、本来は新規走行軌跡地点検出部6で検出した新規の走行軌跡表示地点に走行軌跡地点マークを表示するところ、走行軌跡表示地点演算部22で演算した地点の内、最も近接する地点に表示位置を移動する。なお、この同一道路同一箇所表示処理部19の処理は、多くの演算を必要とするので、処理負担が大きくなることが考えられ、前記の処理でもなお見にくくなると推測される時、或いは見にくくなると推測される道路に対してのみ適用することもできる。
【0044】
走行軌跡地点表示処理部16における表示出力部24は、前記のような種々の表示処理を行った走行軌跡を出力し、モニタの道路地図には処理された走行軌跡を表示する。この走行軌跡地点表示処理部16の処理は、本来走行軌跡地点近傍既表示検出処理部8で処理を行わない場合でも、従来技術よりは走行軌跡を見やすく表示することができるものであるが、両者を組み合わせることにより、より見やすい表示を行うことができる。なお、図1(b)(c)には、後述するような図4に示す例によって処理を行う代表例を示している。
【0045】
図2には本発明の実施例の作動フローを示し、図3には図2におけるステップS8の処理の作動フローを示している。以下に図1及び図4、図5を参照しつつこれらの作動を説明する。図2に示す走行軌跡表示処理は、特に図1における走行軌跡地点近傍既表示検出処理部8での作動を示している。図2に示す走行軌跡表示処理においては、最初指定地近傍の所定範囲内の地図データを取得する(ステップS1)。
【0046】
次いで取り込んだ地図データ内の走行軌跡データを走行順に整理する。これらの処理は図1の現在位置検出部1で検出した現在位置に基づいて、地図データ取込部2が所定範囲の地図を取り込み、走行軌跡表示用データ取込整理部3で例えば図9に示すようなデータの整理を行うことにより実施する。但し、このデータ整理は、走行軌跡データそのものが既にこの状態で存在する時には、そのデータを直接用いることができる。
【0047】
その後、新しい走行軌跡地点順に選択を行う(ステップS3)。次いで選択した走行軌跡地点の所定距離の範囲内に既に表示している走行軌跡地点が存在するか否かを判別する(ステップS4)。これは図1における走行軌跡地点近傍既表示検出処理部8において、表示用走行軌跡地点選択部7が走行軌跡表示用データ取込部3の整理されたデータから、新しいデータ順に選択した走行軌跡地点データについて、その走行軌跡地点の所定距離の範囲内に、既に表示している走行軌跡地点が存在するか否かを検出することにより行う。
【0048】
このステップS4において、選択した走行軌跡地点の所定距離の範囲内に、既に表示している走行軌跡地点が存在しないと判別した時には、ステップS5に進み、選択した走行軌跡地点を走行軌跡として表示する。それに対してステップS4で選択した走行軌跡地点の所定距離の範囲内に、既に表示している走行軌跡地点が存在すると判別した時には、選択した走行軌跡地点は表示しない。
【0049】
これらの処理は、例えば図4に示すようにして行われる。図4に示す例においては、最初同図(a)に示すような走行軌跡地点のデータが存在する時、本発明の前記処理により同図(d)に示すような表示がなされる例を示している。即ち、同図(a)においては、最初走行経路K11からT字路で右折し、走行経路K12、K13、K14を順に通った後、T字路で左折し、走行経路K15により図示する範囲から出て行った状態から、その後走行経路K2のように直進して図示する範囲から出て行った状態の走行軌跡地点マークを示している。その結果、同図において最初の走行軌跡地点がa1であり、その後a2、a3・・・・a26と走行を行い、その後同図において最初の走行軌跡地点がb1であり、その後b2、b3・・・b14と直進走行した例を示している。
【0050】
このような走行によって一部で走行軌跡が重なり合い、従来例で示したような、走行軌跡によって道路等の表示が見にくくなるため、本発明においては基本的に、新しい走行軌跡を中心にして、その走行軌跡地点の所定距離の範囲内における過去の走行軌跡地点マークを表示しないようにするものである。その処理の状態は図4(b)、(c)にT字路部分の拡大図を示すように、新しい走行軌跡地点を中心に、同図において円で示すように、所定距離の範囲内に存在する過去の走行軌跡地点について、その走行軌跡地点マークを表示しないようにする。そのため、最終的に図4(d)に示すような走行軌跡表示がなされ、走行軌跡によって道路の表示が見えなくなる等の問題点を解消することができる。
【0051】
この処理を行うには、例えば従来と同様に全ての走行軌跡地点を表示し、その後上記のような、新しい走行軌跡地点を中心に所定距離以内の古い走行軌跡地点を削除する表示手法も考えられる。それに対して、図2に示す処理手法では、走行軌跡の表示に際して、新しい走行軌跡地点から順に選択して、その走行軌跡地点について表示するか否かを検討し、その走行軌跡地点の所定範囲内に既に表示することになっている走行軌跡地点が存在する時には、その地点を表示しない、という手法を採用することにより、極めて処理効率の良い表示手法とすることができる。
【0052】
上記処理を行う結果、本発明では図5に示すような表示効果も生じる。即ち図5に示すような十字路部分において走行軌跡が交差している表示では、従来は同図(a)に示すように全てが例えば灰色の走行軌跡地点マークで表示されることにより、特に走行軌跡交差部Cにおいて、本来は互いに直交している走行軌跡J1とJ2であるのに対して、この走行軌跡交差部で右左折しているのか、それぞれ直進しているのかの区別がつかなかった。
【0053】
それに対して前記のような本発明における処理の結果、同図(b)に示すように、新しい走行軌跡J1が最初に表示され、その後古い走行軌跡J2を表示する時、少なくとも新しい走行軌跡J1の走行軌跡交差部分Cのほぼ中心に位置する走行軌跡地点J1Cが所定距離範囲となる走行軌跡地点は表示されないこととなる。その結果、同図(c)に示すような表示が行われ、この走行軌跡交差部分の走行軌跡を見ることにより、直進する古い走行軌跡J2に対して、直進する新しい走行軌跡J1がクロスしていること、また、走行軌跡J1の方が新しい走行軌跡であることが一目でわかるようになる。
【0054】
なお、図4に示す例においては、各走行軌跡地点から所定距離以内の走行軌跡地点の存在を検出するに際して、その所定距離が車両の走行により生じる新規の走行軌跡地点の距離よりも大きく設定した時の例を示しており、このような設定を行う時は、既に表示している走行軌跡地点の内、所定距離の範囲内に表示している走行軌跡地点が存在するか否かの判別に際して、現在選択している走行軌跡地点の属する走行軌跡地点についてはその判別を行わずに表示する処理を行うことによって本発明を実施することができる。
【0055】
図2のステップS5とステップS6での、既に存在する走行軌跡地点データに基づく処理により、前記図4及び図5に示すような処理を行うことができるものであるが、車両が現在走行している時において、新しい走行軌跡地点が発生した時の処理はステップS7及びS8のように行う。即ち、ステップS7で新しい走行軌跡地点が発生したか否かを判別し、ここで新しい走行軌跡地点が発生したと判別した時には、ステップS8で図3に示すような、新しい走行軌跡地点データ追加による走行軌跡地点表示処理を行う。
【0056】
図3に示す新しい走行軌跡地点データ追加による走行軌跡地点表示処理の例においては、図2のステップS8の処理として、現在表示している走行軌跡中に、追加された走行軌跡地点に所定距離以内の、過去の走行軌跡地点が存在するか否かの判別を行う(ステップS21)。
【0057】
その判別の結果、そのような過去の走行軌跡地点が存在すると判別した時には、過去の走行軌跡地点の表示を削除する(ステップS22)。同様に、過去の走行軌跡地点を走行軌跡表示用データから削除し(ステップS23)、更に追加された走行軌跡地点を表示し(ステップS24)、追加された走行軌跡地点を走行軌跡データに記録して(ステップS25)、ステップS26において図2のステップS9に進む。
【0058】
この作動は図1の走行軌跡地点近傍既表示検出処理部8の新規地点処理部11において、新規走行軌跡地点検出部6において新規の走行軌跡地点を検出した時、その走行軌跡地点近傍に既に表示されている走行軌跡地点が存在するか否かを検出し、存在することを検出した時には既表示走行軌跡地点表示削除部15で、検出された既に表示されている走行軌跡地点の表示を削除すると共に、走行軌跡表示用データ書込部4により、走行軌跡表示用取込整理部3に対して削除する処理を行う。また、新規の走行軌跡地点については走行軌跡地点表示処理部16で前記のような各種の所定の走行軌跡地点の表示処理を行ってモニタに表示される道路地図に表示する。また走行軌跡表示用データ書込部4によって走行軌跡表示用データ取込整理部3のデータに書き込むことにより前記作動を実施する。
【0059】
図2のステップS9においては、ステップS8の処理の後と、前記ステップS7において新しい走行軌跡地点が発生していないと判別した時と共に、全ての走行軌跡地点データを選択したか否かを判別し、未だ全ての走行軌跡地点データを選択していないと判別した時には、再びステップS3に戻り、新しい走行軌跡地点順に選択を行う作動を継続し、以降前記と同様の処理を行なって、その過程で再び新規の走行軌跡地点が発生した時には図に示す処理を行いつつ、全ての走行軌跡地点データの選択を継続する。
【0060】
この作動は図1における表示用走行軌跡地点選択部7で、走行軌跡表示用データ取込整理部3のデータの中から、新しい出データから順に選択して以降の処理を行い、その過程で新規走行軌跡地点検出部6で新規の走行軌跡地点を検出した時、それ以降の前記処理を行って、表示用走行軌跡地点選択部7で、取り込む走行軌跡表示用データが全て選択するまでその処理を継続することにより実行している。
【0061】
ステップS9において全ての走行軌跡地点データを選択したと判別した時には、先に取り込んだ地図データで表示用の地図データは足りるか否かを判別する(ステップS10)。ここにおいて、その後の走行により現在位置が大きく移動し、先に取り込んだ地図データでは表示用の地図データが足りなくなると判別した時には、ステップS1に戻り、自車位置の移動により先とは異なった指定地について、その指定地近傍の所定範囲内の地図データを取得し、以降の同様の作動を繰り返す。
【0062】
ステップS10において、未だ先に取り込んだ地図データで表示用の地図データは足りると判別した時には、この例ではエンジンは停止したか否かを判別し(ステップS11)、未だエンジンは停止していないと判別した時には再びステップS7に戻って、新しい走行軌跡地点が発生したか否かを判別して前記作動を繰り返す。また、エンジンは停止したと判別した時には、先にエンジンをかけてからの一連の車両走行に伴う走行軌跡表示処理を終了する(ステップS12)。
【符号の説明】
【0063】
1 現在位置検出部
2 地図データ取込部
3 走行軌跡表示用データ取込部
4 走行軌跡表示用データ書込部
5 走行距離検出部
6 新規走行軌跡地点検出部
7 表示用走行軌跡地点選択部
8 走行軌跡地点近傍既表示検出処理部
9 表示距離設定部
10 選択地点処理部
11 新規地点処理部
12 走行軌跡表示判別部
13 非表示
14 表示
15 既表示走行軌跡地点表示削除部
16 走行軌跡地点表示処理部
17 走行軌跡地点濃淡表示部
18 道路名称上書き表示部
19 同一道路同一箇所表示処理部
20 リンク始点検出部
21 表示縮尺検出部
22 走行軌跡表示地点演算部
23 走行軌跡表示地点表示移動部
24 表示出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が所定距離走行する毎に、走行軌跡表示のための地点である走行軌跡地点を検出する新規走行軌跡地点検出部と、
前記新規走行軌跡地点検出部で検出した走行軌跡地点を走行順に蓄積したデータから、新しい順に走行軌跡地点を選択する走行軌跡地点選択部と、
前記走行軌跡地点選択部で選択した走行軌跡地点について、所定の距離の範囲内に既に表示した走行軌跡地点が存在するか否かを検出する走行軌跡地点近傍既表示検出部と、
前記走行軌跡地点近傍既表示検出部で所定の距離の範囲内に既に表示した走行軌跡地点が存在することを検出した時、前記走行軌跡地点選択部で選択した走行軌跡地点を非表示と判別し、存在しないと判別した時には前記選択した走行軌跡地点を表示と判別する走行軌跡表示判別部と、
前記走行軌跡表示判別部で表示と判別した走行軌跡地点を表示処理する走行軌跡地点表示処理部とを備えたことを特徴とするナビゲーション装置用走行軌跡表示装置。
【請求項2】
前記走行軌跡地点近傍既表示検出部では、前記新規走行軌跡地点検出部で検出した新規の走行軌跡地点について、所定の距離の範囲内に既に表示した走行軌跡地点が存在するか否かを検出し、
前記走行軌跡地点近傍既表示検出部で、所定の距離の範囲内に既に表示した走行軌跡地点が存在することを検出した時、当該既に表示した走行軌跡地点の表示を削除する既表示走行軌跡地点表示削除部を備えたことを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置用走行軌跡表示装置。
【請求項3】
前記走行軌跡地点表示処理部には、走行軌跡地点が新しいほど濃く表示する走行軌跡地点濃淡表示部を備えたことを特徴とする請求1記載のナビゲーション装置用走行軌跡表示装置。
【請求項4】
前記走行軌跡地点表示処理部には、走行軌跡表示の前に表示した道路名称を、走行軌跡表示後に再度表示する道路名称上書き表示部を備えたことを特徴とする請求1記載のナビゲーション装置用走行軌跡表示装置。
【請求項5】
前記走行軌跡地点表示処理部には、同一道路に対して同一の箇所に走行軌跡地点を表示する同一道路同一箇所表示処理部を備えたことを特徴とする請求1記載のナビゲーション装置用走行軌跡表示装置。
【請求項6】
前記同一道路同一箇所表示処理部では、各道路の一方のリンク端を始点とし、表示縮尺に対応した所定距離毎に、走行軌跡地点を表示することを特徴とする請求項5記載のナビゲーション装置用得走行軌跡表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−145114(P2011−145114A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4474(P2010−4474)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】