説明

ナースコールシステム

【課題】患者の氏名を表示させないで、患者のプライバシーを完全に保護する一方、携帯通信端末の患者情報読取部を個別廊下灯に接近または接触させるだけで、目的の患者さんの氏名等を含む患者情報を容易に取得可能にすることを課題とする。
【解決手段】本発明は、ナースコール親機およびまたは個別廊下灯に設けられた患者別の個別表示部に、ナースコール子機の呼出状態を表示する個別表示灯と、患者情報を記号化して表示する患者情報担体とをそれぞれ設け、ハンデイ端末に設けた患者情報読取部を、特定の患者情報担体に近接または接触させることにより、当該患者の患者情報を取得し、これをハンディ端末のディスプレイ画面に表示させるようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナースコールシステムに係り、特に、患者の個人情報を関係者以外の人から保護する一方において、患者を看護する特定の医療スタッフや特別に許可された患者関係者に限り、必要な患者情報を容易に確認することのできるナースコールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
2003年に個人情報保護法が成立し、厚生労働省からは「診療情報の提供等に関する指針」が公表されたことからも察せられるように、近年、病院や福祉施設などにおいても、患者名乃至被介護者名などを含む個人情報の保護を求める声が高まっている。
【0003】
ナースコール親機として一般的なボード形のナースコール親機は、患者や見舞い客など人の出入りの多い管理センター(ナースセンター)の壁面に設置されることが多い。また、個別廊下灯は多数の人が行き交う病棟廊下に向いて病室の出入り口に設置されることが多い。
【0004】
すなわち、ナースコール親機にしろ個別廊下灯にしろ、一般公衆の目にさらされる場所に公開的に設置されるものであり、これに、患者の個人名や救護区分などの患者情報が表示されるのが従来一般的であった。
【0005】
自分の名前を関係者以外に秘密にしておきたい患者にとっては、特に、不特定多数の人が出入りする管理センターに置かれるナースコール親機や病室の廊下側に設置される個人別廊下灯に自分の名前が公開的に表示されることは必ずしも好ましいものではなかった。
【0006】
そこで、近年、このように個人の意思に反して名前が公開的に表示されるのを防止すべく、個人情報保護の観点からの取り組みが開始され、いくつかの発明がナースコールシステムに関しても提案されている。以下、その中から代表的な2例を選択して説明する。
【0007】
まず、特許文献1記載のプライバシー保護機能付き個別廊下灯は、患者別の横長方形の名前札を有する機械式の個別廊下灯であり、患者の名前が表示される名前札をプライバシー保護カバーで覆い、外部から見えないように隠せる構造になっている。患者の名前を知りたいときは、プライバシー保護カバーを開けるという1つの手順を踏む必要があり、その手順を踏まない限り、すなわち、みだりには、患者氏名を確認できないようになっている。
【0008】
特許文献2記載の病院用情報表示板は、液晶パネル式の個別廊下灯であり、ICカードを接近ないし接触させることにより、廊下灯の液晶画面に必要な患者情報が表示されるようにしたものである。なお、いったん表示された患者情報は、プライバシー保護のためにも、患者情報の確認が済んだら、液晶画面から消去する必要がある。なお、具体的な消去手段は、明細書には、明記されておらず不明である。
【0009】
【特許文献1】・・・・特開2004−94764号公報
【特許文献2】・・・・特開2003−88561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記した特許文献1に記載されたプライバシー保護機能付き個別廊下灯の場合、医療スタッフ以外の人であっても、すなわち、誰でもプライバシー保護カバーを容易に開けることが可能であり、その意味で、プライバシー保護機能に関しては必ずしも十分ではないという欠点がある。
【0011】
また、プライバシー保護カバーを引き上げた後、その自重で自動落下する構造であれば、
患者名などを確認している間、プライバシー保護カバーを手で押さえ続ける必要があるし、自動落下しない構造であれば、患者名などを確認した後、プライバシー保護カバーを引き下げるという面倒な手順を踏まなければならない。引き下げの手順を忘れてしまえば、プライバシー保護カバーは開けっ放しになってしまい、患者名を隠すという本来の役目を果たせなくなる。
【0012】
また、特許文献2に記載された病院用情報表示板の発明の場合、専用のIDカードが必要であり、また、液晶パネル式の個別廊下灯にしか適用できず、液晶パネルを使用しない従来型、すなわち特許文献1のような機械式個別廊下灯には適用することができない。
【0013】
また、いったん表示した患者情報は、用が済み次第消去しなければならないが、仮に、タイマに連動する消去方法を採用したとしても、そのタイマ時間で定まる一定時間は患者情報が不必要に表示され続けるという欠点がある。
【0014】
さらに、特許文献1、特許文献2に記載された発明は、個別廊下灯に限定した発明であり、いずれも、ナースコール親機に関しては言及されておらず、関心外であることが明白である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ナースコール親機およびまたは個別廊下灯に設けられた患者別の個別表示部に、ナースコール子機の呼出状態を表示する個別表示灯と、患者情報を記号化して表示する患者情報担体とをそれぞれ設け、ハンディ端末に設けた患者情報読取部を、特定の患者情報担体に近接または接触させることにより、当該患者の患者情報を取得し、これを携帯端末のディスプレイ画面に表示させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ナースコール親機およびまたは個別廊下灯には、待機状態および呼出、通話状態のいずれにおいても、患者の氏名を一切表示させないため、患者のプライバシーを完全に保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施例を説明する。
【0018】
図1は本発明のナースコールシステムの構成図である。
1は、ナースステーションなどに設置されるナースコール親機、2は各病室の出入り口に設置される個別廊下灯、3は、患者のベッドサイドに設置されるナースコール子機、4は、ナースコール親機1に接続された主装置、5は、主装置4に接続され、携帯通信端末6と無線で交信できる無線基地局である。
【0019】
ナースコール親機1において、7は送受器、8はハンディ端末、9は、患者毎の個別表示部10からなる選局部であり、ハンディ端末8は、ナースコール親機1にコネクタ付きコードで接続され、マトリックス型2次元コードであるQRコード(Quick Responce Code)のリーダ機能を備えている。
【0020】
ナースコール親機1は、また、必要に応じて、院内システムネットワーク11を介して、ナースコールサーバ12、オーダリングシステム等に代表される院内情報システム13、看護支援パソコン14a、一般にPDA
(Personal Digital Assistance)と称され、看護情報の入力、閲覧に使用されるPDA端末14bを含む看護支援システム14に接続されている。
【0021】
次に、ナースコール動作を説明する。
まず、ナースコール子機3の握りボタンを押すと、個別廊下灯2を介してナースコール親機1にナースコール信号が送られる。ナースコール信号は、さらに、ナースコール親機1から主装置4および無線基地局5を介して携帯通信端末6に送信される。
【0022】
ナースコール親機1および携帯通信端末6では、ナースコール信号を受信すると、それぞれから、呼出音(着信音)がなり、ナースコール親機1または携帯通信端末6で応答すれば、呼出音が停止し、いずれか先に応答したほうがナースコール子機3と通話できる。
【0023】
図2は、ナースコール親機1の選局部9を構成する個別表示部10の詳細図である。
図において、15は表示枠、16は部屋(またはベッド)番号、17は選局ボタン兼用個別表示灯、18は救護区分体、19は患者情報担体である。
【0024】
個別表示灯17は、自照式操作スイッチであり、操作ボタンであると同時に、ナースコール子機からの呼出時には呼出表示灯として、また、親機側での選局操作時には、選局確認灯として機能する。
【0025】
患者情報担体19は図示の例では、マイクロQRコードを表示枠15内に印刷したものであるが、必要とする情報量如何で、バーコードを使用することもできる。なお、印刷用インキとして、肉眼では見えないが、リーダでは読取可能な不可視インキを使用すれば、セキュリティの信頼性をより高度化できる。
【0026】
また、患者情報担体19を、その情報表示領域が収まる寸法で作成し、これを表示枠15の表面に両面テープなどで貼付けたり、あるいは、表示枠15に凹所を形成しこれに着脱自在に嵌め込めるようにすれば、必要に応じて、患者情報担体19を単独で交換することができる
【0027】
図3は、ハンディ端末8の詳細図であり、その液晶画面20には、読取中の画面が表示されている。図において、20は読取開始ボタン、22はUSB仕様のコネクタ付コードである。
【0028】
図示の例では、ハンディ端末8は、コードリーダ専用機器の形態となっているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、ハンディ端末として、コードリーダ機能付きの、携帯通信端末6およびまたはPDA端末14を使用することができ、そうすれば、コードリーダ専用機器としてのハンディ端末は不要となる。
【0029】
図4は、本発明の1実施例における個別廊下灯の外観図である。
【0030】
23は患者毎に区分された個別表示部であり、各個別表示部は、ナースコール子機3から呼出されたとき点灯または点滅する個別表示灯24と、患者の救護区分(担送、護送、独歩)を色別表示する救護区分体25と、QRコードを表示した患者情報担体26とでそれぞれ構成されている。
【0031】
救護区分体25と患者情報担体26は、いずれも、マグネットプレート等を用いることにより、着脱自在とし、患者の入れ替わりに対応できるようになっている。
【0032】
個別廊下灯2の両側は透明の傾斜面を有し、内部には、前述した患者別の個別表示灯24とは別に、これらを代表して点灯する代表灯27が設けられている。なお、28は、病室番号が印刷された室番プレート、29はナースコール子機からの呼出を復旧させるための復旧ボタンである。
【0033】
図5は、本発明のナースコールシステムのブロック図である。
30は、ナースコール親機1の全体動作を制御する制御部であり、選局制御部31を介して、患者別の個別表示部10を整列配置して構成される選局部9に接続されている。
【0034】
また、制御部30は、個別廊下灯2に接続される子機インターフェース32、送受器7を含む通話制御部33、ナースコール子機3からの呼出種別などを判別して呼出音を発生させる呼出制御部34、ハンディ端末8に接続される接続インターフェース35、院内システムネットワーク11に接続されるLANインターフェース36、主装置4に接続されるハンディインターフェース37、制御プログラムの他に患者情報その他の各種情報を記憶できるメモリ38がそれぞれ接続されている。
【0035】
ハンディ端末8は、コネクタ付コード22を介して、ナースコール親機1の接続インターアェース35に接続されており、このコネクタ付コード22を介して、ナースコール親機1から電源の供給を受けると共に、デジタル信号を送受信できるようになっている。
【0036】
ハンディ端末39は、患者情報読取部39を具備し、この患者情報読取部39を、ナースコール親機1の患者情報担体19や、個別廊下灯2の患者情報担体26に近接または接触させることにより、患者情報担体19、26の患者情報を読取ることができる。
【0037】
40は、ハンディ端末8の全体動作を制御する制御部であり、患者情報読取部39や前記した読取開始ボタン21を含む操作部41、前記した液晶画面20に相当するディスプレイ(LCDモニタ)42、制御プログラムの他に患者情報その他の各種情報を記憶できるメモリ43、接続手段44がそれぞれ接続されている。接続手段44は、コネクタ付コード22でナースコール親機1の接続インターフェース35に接続されている。
【0038】
次に、ハンディ端末8の動作について説明する。
【0039】
今、ナースコール子機3ら呼出があると、ナースコール親機1においては、呼出を受けた特定回線の個別表示部10の個別表示灯17が点灯または点滅する。この点灯または点滅する個別表示灯17に対応するベッド番号16を視認することにより、呼出した患者のベッド番号16を確認することができる。
【0040】
しかし、本発明のナースコールシステムでは、従来品とは異なり、表示枠15内には患者名は表示されないため、たまたま、ベッド番号16に対応する患者名が不確かな場合には不便を感じることになるが、この不便をハンディ端末8は解消する。
【0041】
すなわち、ハンディ端末8の患者情報読取部39を当該呼出患者の個別表示部10上に位置する患者情報担体19の表面に接近、または接触させ、操作部41の読取開始ボタン21を操作することにより、患者情報担体19に表示された患者情報を読取ることができる。読取データは制御部40を介して、コード変換、データ変換処理が施され、呼出した患者の氏名やベッド番号がディスプレイ42に表示される(表示例は図3参照)。
【0042】
次に、ハンディ端末8を使って、病室の出入口に設置される個別廊下灯2の患者情報を読取る場合について説明する。
【0043】
これを可能にするため、本発明のハンディ端末8は、ナースコール親機1に接続されたコネクタ付コード22に対して着脱自在に接続されている。従って、看護師等は、ナースコール親機1の設置場所から離れるときは、ハンディ端末8をコネクタ付コード22からはずして携帯するする必要がある。携帯時には、ハンディ端末8は内臓の充電電池で駆動される。
【0044】
ハンディ端末8で個別廊下灯2の患者情報担体26の読取手順は、前述したナースコール親機1での説明と同様であり、説明は省略する。
【0045】
なお、ハンディ端末としては、ナースコール親機1にコネクタ付コードで接続されるハンディ端末8に限定されるものではない。すなわち、前述したように、患者情報担体19、26の読取機能を備えた携帯通信端末6やPDA端末14bを使用することができる。
また、読取機能を備えるべき対象は、ハンディ端末8、携帯通信端末6、PDA端末14bの内のいずれか1つに限定しても良いし、全部であっても良い。
【0046】
なお、以上の実施例では、患者情報担体19、26として、QRコードの印刷体を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
たとえば、患者情報量が少ない場合は、バーコード形式のものであっても良い。
あるいは、患者情報担体19、26として、ICタグを使用することもできる。
【0048】
さらには、患者情報を載せた赤外線信号を発光する発光素子で患者情報担体19、26を構成することもできる。発光素子自体の占有面積は、QRコードやバーコードの印刷面積に比較し大幅に小さくできるので、個別表示部10およびその集積体である選局部9の占有面積を最小化でき、機器の小型化、デザインの自由化に効果がある。
しかも、発光素子は、肉眼で確認できるQRコードやバーコードと異なり、情報キャリアとして外部から察知されるおそれがないため、情報保護上の信頼性は高い。
【0049】
なお、ICタグや発光素子を患者情報担体として構成した場合には、信号の形成手段、伝送手段、読取手段をそれぞれの信号方式に対応させて考える必要があるが、このような技術手段そのものは、一般的に公知であり、当業者であれば容易に対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の1実施例におけるシステム構成図。
【図2】本発明の1実施例における個別表示部の詳細図。
【図3】本発明の1実施例におけるハンディ端末の外観図。
【図4】本発明の1実施例における個別廊下灯の外観図。
【図5】本発明の1実施例におけるナースコールシステムのブロック図。
【符号の説明】
【0051】
1・・・ナースコール親機、2・・・個別廊下灯、3・・・ナースコール子機、4・・・主装置、5・・・無線基地局、6・・・携帯通信端末、7・・・送受器、8・・・ハンディ端末、9・・・選局部、10・・・個別表示部、11・・・院内システムネットワーク、12・・・ナースコールサーバ、13・・・院内情報システム、14看護支援装置、14a・・・看護支援パソコン、14b・・・PDA端末、15・・・表示枠、16・・・部屋(ベッド)番号、17・・・個別表示灯、18・・・救護区分体、19・・・患者情報担体、20・・・液晶画面、21・・・読取開始ボタン、22・・・コネクタ付コード、23・・・個別表示部、24・・・個別表示灯、25・・・救護区分体、26・・・患者情報担体、27・・・代表灯、28・・・室番プレート、29・・・復旧ボタン、30・・・制御部、31・・・選局制御部、32・・・子機インターフェース、33・・・通話制御部、34・・・呼出制御部、35・・・接続インターフェース、36・・・LANインターフェース、37・・・ハンディインターフェース、38・・・メモリ、39・・・患者情報読取部、40・・・制御部、41・・・操作部、42・・・ディスプレイ(LCDモニタ)、43・・・メモリ、44・・・接続手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナースステーションなどに設置され、患者毎に区分された個別表示部を有するナースコール親機と、病室の出入り口に設置され、代表灯および患者毎に区分された個別表示部を有する個別廊下灯と、病室などに設置され、前記ナースコール親機と相互に呼出、通話ができるナースコール子機と、コードリーダ付ハンディ端末と有するナースコールシステムにおいて、
前記ナースコール親機およびまたは個別廊下灯の個別表示部には、前記ナースコール子機の呼出状態を表示する個別表示灯と、患者情報を記号化して情報コードとして表示する患者情報担体とを設け、前記ハンディ端末には、前記患者情報担体に近接または接触させることにより、前記患者情報担体の情報コードを読取るための患者情報読取部を設け、前記患者情報読取部で読取った情報コードに対応する患者情報を前記コードリーダ付ハンディ端末のディスプレイ画面に表示できるようにしたことを特徴とするナースコールシステム。
【請求項2】
前記患者情報担体を、バーコードまたはQRコードを含む一次元または二次元コードで形成し、これを、前記患者情報読取部で読み取れるようにしたことを特徴とする請求項1記載のナースコールシステム。
【請求項3】
前記患者情報担体を発光素子で形成し、前記発光素子から光信号として送信される患者情報を前記患者情報読取部で読み取れるようにしたことを特徴とする請求項1記載のナースコーシステム。
【請求項4】
前記患者情報担体をICタグで形成し、前記ICタグに蓄積された患者情報を前記患者情報読取部で読み取れるようにしたことを特徴とする請求項1記載のナースコールシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−124311(P2007−124311A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314359(P2005−314359)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(591253593)株式会社ケアコム (493)
【Fターム(参考)】