説明

ニキビ治療剤

【課題】新規なニキビ治療剤を提供する。
【解決手段】(A)イソフラボン類及び/又はエストロゲン、(B)アルギン酸塩、(C)リン酸二水素ナトリウム、及び(D)低分子ベタインとからなることを特徴とするニキビ治療剤。前記ニキビ治療剤は有用性及び使用感に極めて優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なニキビ治療剤に関する。さらに詳細には、(A)イソフラボン類及び/又はエストロゲン、(B)アルギン酸塩、(C)リン酸二水素ナトリウム、及び(D)低分子ベタインからなることを特徴とする、新規なニキビ治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ニキビ治療剤の有効成分として、イソフラボン類やエストロゲンが提案されている。例えば特許文献1には、皮膚用剤としてイソフラボン類および/またはアシルイソフラボン類および/またはイソフラボン類配糖体、および/または辛味物質、苦味物質または酸味物質、および/またはコール酸、胆汁末、胆汁エキス、胆汁酸、ゴオウまたは人工ゴオウ、および/また はシムノールおよび/またはシムノールエステルを含むことを特徴とするニキビ(尋常性ざ蒼)治療剤、ヘルペス(単純性疱疹)治療剤、帯状疱疹治療剤、脂漏性湿疹治療剤、水虫治療剤 白鮮菌治療剤、爪白鮮菌治療剤、イボ治療剤、魚の目治療剤、白斑治療剤、はげ治療剤、円形脱毛症治療剤、乾鮮治療剤、外陰部の湿疹治療剤、主婦湿疹(進行 性指掌角皮症)治療剤が開示されている。
【0003】
イソフラボン類は、大豆のほか葛の根やクローバーなどに含まれている、フラボノイドの一種で、近年、女性ホルモンのエストロゲン類似作用を有することで注目されている。そのことから、イソフラボン類は、医療面において骨粗鬆症、更年期障害、乳がん、生理不順等の女性疾患に対する有効素材として種々研究されている。また、イソフラボン類を含有する製剤がニキビ(尋常性ざ蒼)などの予防及び/又は治療に有用であることが知られている。それと同時に、美容面においても美白や保湿性の向上といった肌の美容効果や、バストアップ効果を有することも知られている。
【0004】
ニキビ治療を目的として、エストロゲンを利用する外用剤や薬物送達システムについても種々開示されている。例えば、特許文献2には、角質層の皮膚バリア回復を高めることができる、活性物質に対する水ベースの局所的送達システムであって、水、脂肪酸、コレステロール、及びセラミド/リン脂質部分を含むことを特徴とする送達システムが開示され、前記送達システムには、エストロゲンを含む少なくとも1種の皮膚脂質前駆体をさらに含む送達システムであることが開示されている。
【0005】
エストロゲンは、卵巣の顆粒膜細胞、胎盤、副腎皮質、精巣間質細胞等で作られ、思春期以降分泌が増大し、プロゲステロンとともに月経周期に応じてその濃度が変化することが知られている。更年期以降は分泌が減少し、更年期障害などを発症しやすいことも知られている。
【0006】
アルギン酸塩は天然に産する多糖類で、渇藻類から抽出される。アルギン酸塩は多様な用途に用いられており、中でも食品に最も汎用されている。アルギン酸塩を用いた、医療用あるいは美容用などの外用組成物も種々提案されている。その一つとして、例えば特許文献3により公開されている、酸性多糖と酸と水を組み合わせた、ユニークな特徴を有する酸性外用組成物を本発明者は既に提案している。
【0007】
上記特許文献3に記載の酸性外用組成物は、酸性多糖類、酸及び水からなることを特徴としており、(1)毛髪をなめらかでしなやかにし、肌のきめを整え、皮膚の緊張を高め、しわを伸ばし、肌を白くし、肌に透明感を与え、肌にうるおい感を与え、シミを薄くし、毛穴を目立たなくする美容効果、(2)脱毛を抑制し、毛髪の成長を促進する育毛効果、(3)医薬品や化粧料等の外用剤の皮膚等への浸透促進効果を有し、酸性多糖の中でも、アルギン酸塩が使用性等に優れているため特に好ましいことが記載されている。上記酸としては、種々の有機酸や無機酸が用いられ、その中でもリン酸二水素ナトリウムが好適に使用され、実施例にはアルギン酸ナトリウムとリン酸二水素ナトリウム(以下、これらの組合せを「P−P ComplexTM」ともいう。)と水とからなる酸性外用組成物が記載されている。
【0008】
また特許文献4に、本発明者は、真皮または表皮組織の細胞内に核酸系薬剤を送逹するための、核酸系薬剤および粘性多糖類からなる医薬組成物であって、当該粘性多糖類がアルギン酸ナトリウムであり、さらにリン酸塩としてリン酸二水素ナトリウムが含まれる医薬組成物を開示している。
【0009】
ベタインは、正電荷と負電荷を同一分子内の隣り合わない位置に持ち、正電荷をもつ原子には解離しうる水素原子が結合しておらず、分子全体としては電荷を持たない化合物の総称である。その中でも、低分子ベタインを用いた外用剤に関する提案が種々なされている。低分子ベタインは、さっぱりした感触ながら、保湿力も高く、特にスキンケア製品、頭髪製品に多く使われている。例えば、特許文献5には、低分子ベタインとトレハロースおよび/またはエリトリトールを含有してなる、皮膚外用剤が開示されている。さらに特許文献6には、少なくとも1種のカチオン性酸化多糖類またはそれらの誘導体を含むパーソナルケアまたは家庭用ケア組成物であって、前記カチオン性酸化多糖類またはそれらの誘導体は、下限50,000、および、上限1,000,000の重量平均分子量を有し、多糖類1グラムあたり少なくとも0.001ミリ当量のアルデヒド官能基の含量を有する、少なくとも1種のカチオン性酸化多糖類またはそれらの誘導体を含む、前記パーソナルケアまたは家庭用ケア組成物が開示されている。当該組成物中にはアルギン酸塩やベタインが含まれていてもよいことが開示されている。
【特許文献1】特開2007−63139号公開公報
【特許文献2】特表2005−522463公報
【特許文献3】国際公開WO2002/098372号公開公報
【特許文献4】特開2007−137891号公開公報
【特許文献5】特開平9−95411号公開公報
【特許文献6】特表2006−522829号公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、イソフラボン類及び/又はエストロゲンと、P−P ComplexTM(アルギン酸塩とリン酸二水素ナトリウムからなる組成物)と低分子ベタインを組み合わせたニキビ治療剤については、上記のいずれの特許文献に記載も示唆もされていない。
【0011】
本発明の目的は、新規なニキビ治療剤を提供することにある。より詳細には、ニキビ治療の有効成分であるイソフラボン類及び/又はエストロゲンと、P−P ComplexTMと低分子ベタインを組み合わせることにより、ニキビ患部に効率的に有効成分を送達して、ニキビ治療を効果的に行うとともに、P−P ComplexTMと低分子ベタインによって角層に潤いを与え、皮膚の機能を正常に近づけることでニキビの発症を抑制する、新規なニキビ治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、種々検討した結果、(A)イソフラボン類及び/又はエストロゲン、(B)アルギン酸塩、(C)リン酸二水素ナトリウム、及び(D)低分子ベタインからなることを特徴とするニキビ治療剤が、本発明の目的に適することを見出し、本発明を完成した。
【0013】
即ち本発明は、(A)イソフラボン類及び/又はエストロゲン、(B)アルギン酸塩、(C)リン酸二水素ナトリウム、及び(D)低分子ベタインとからなることを特徴とするニキビ治療剤である。
【0014】
本発明は、(A)イソフラボン類が、植物から抽出されたイソフラボン類含有エキスである上記ニキビ治療剤である。
【0015】
本発明は、植物から抽出されたイソフラボン類含有エキスがヒオウギエキスである上記ニキビ治療剤である。
【0016】
本発明は、エストロゲンが、エストロン、エストラジオール、エストリオール、及びエステトロールから選択される1種又は2種以上である上記ニキビ治療剤である。
【0017】
本発明は、さらに抗炎症剤、ビタミンC及びその誘導体、並びにビタミンE及びその誘導体から選ばれる1種又は2種以上を含有する上記ニキビ治療剤である。
【0018】
本発明は、上記抗炎症剤がグリチルリチン酸ジカリウムである上記ニキビ治療剤である。
【0019】
本発明は、アルギン酸塩がアルギン酸ナトリウムである上記ニキビ治療剤である。
【0020】
本発明は、低分子ベタインがトリメチルグリシンである上記ニキビ治療剤である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の、(A)イソフラボン類及び/又はエストロゲン、(B)アルギン酸塩、(C)リン酸二水素ナトリウム、及び(D)低分子ベタインからなることを特徴とするニキビ治療剤は、イソフラボン類及び/又はエストロゲンの作用をアルギン酸塩及びリン酸二水素ナトリウムがより高め、さらにアルギン酸塩、リン酸二水素ナトリウムおよび低分子ベタインが角層に十分な保湿効果を与えるために、ニキビ治療剤として有用である。特に本発明のニキビ治療剤は、通常のニキビ(丘疹)のみならず、一般的な治療では治癒が困難とされている膿疱や瘢痕にも有効である。
【0022】
さらに本発明のニキビ治療剤は使用感に優れ、皮膚及び粘膜に対して極めて安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に用いるイソフラボン類は、イソフラボン(3−フェニル−4H−1−ベンゾピラン−4−オン)を基本骨格とするフラボノイドであれば、アグリコンや配糖体又は誘導体などのいずれかに特に制限されるものではなく、それら全てを包含する。
【0024】
イソフラボン類のアグリコンとしては、例えばゲニステイン、ダイゼイン、ゲニン、イリゲニン、テクトリゲニン、イリステクトリゲニン、ベラムカンジン等が挙げられ、配糖体としては、例えばゲニスチン、ダイズイン、グリシチン、イリジン、テクトリジン等が挙げられる。またイソフラボンの誘導体としては、例えばアシルイソフラボンやマロニルイソフラボン、アルキルイソフラボン等が挙げられる。
本発明におけるイソフラボン類は、植物等から抽出されたイソフラボン類含有エキスが好適に用いられる。そのようなエキスとして、例えばヒオウギエキス、大豆エキス、カッコンエキスなどが挙げられる。中でもヒオウギエキスが好ましい。
【0025】
上記ヒオウギエキスとは、アヤメ科のヒオウギの根茎から抽出されるエキスで、ヒオウギの根茎等を抽出溶媒に浸漬または加熱還流した後濾過して得ることができる。
【0026】
しかし、ヒオウギエキスは、イソフラボン類抽出時に水と1,3−ブチレングリコールとエタノールの混合物を用いて抽出するため、少量ながらエタノールが残存する。そのため、本発明のニキビ治療剤にエタノール臭が残存する場合があり、そのマスキングのために香料を少量添加してもよい。上記香料としては、水溶性香料が好ましい。
上記水溶性香料としては、カミツレ、サルビア、バラ、ブドウ、ボダイジュ、ラベンダーなどから抽出した香料が好適に用いられ、その中でもバラから抽出した香料(ローズウォーター)が特に好ましい。
【0027】
本発明に用いるエストロゲンとしては、エストロゲン類の一種であれば特に制限されるものではなく、それらの誘導体を包含する。それらの中でも、エストロン、エストラジオール、エストリオール、及びエステトロールから選択される1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0028】
本発明に用いるアルギン酸塩としては、アルギン酸の塩であれば特に限定されるものではなく、例えばアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムが挙げられる。その中でも、アルギン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0029】
本発明に用いるリン酸二水素ナトリウムとしては、特に限定されるものではなく、その水和物を包含する。その中でも、リン酸二水素ナトリウム・2水和物が好適に用いられる。
【0030】
本発明に用いる低分子ベタインとしては、分子量100〜200程度のものが挙げられ、第四アンモニウム塩基、スルホニウム塩基、ホスホニウム塩基等の分子内塩で両性イオンを形成するものを包含する。分子量100未満では親水性が強くなりすぎて皮膚への浸透性が弱くなり、分子量が200を超えると両性界面活性剤としての性質を帯びて肌を荒らす傾向を有するため好ましくない。低分子ベタインの中でもトリメチルグリシンが好適に用いられる。
【0031】
本発明のニキビ治療剤には前記必須成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で通常外用剤に用いられる原料、例えばアルコール類、増粘剤、防腐剤、油分、色素、紫外線吸収・散乱剤等を配合することができる。また本発明の効果を損なわず、効果を高める目的で、その他の生理活性物質等も配合できる。上記生理活性物質としては、抗炎症剤、ビタミンC及びその誘導体、並びにビタミンE及びその誘導体から選択される1種又は2種以上を挙げることができる。上記ビタミンC誘導体としては例えば、リン酸L−アスコルビルマグネシウムを挙げることができ、上記ビタミンC誘導体及びビタミンE誘導体としては例えば、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸カリウムを挙げることができる。上記抗炎症剤としては、例えば、グリチルリチン酸ジカリウムを挙げることができる。
本発明のニキビ治療剤は、保湿効果を増強することを目的として、多価アルコール、ムコ多糖、加水分解コラーゲン、水溶性コラーゲン、ロイヤルゼリーエキス、ホエイ、ラクトフェリン、トレハロース、カルボキシメチルキチン、ヒドロキシエチルキトサン、及びヒドロキシプロピルキトサンから選択される1種又は2種以上を添加することができる。
【0032】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ペンチレングリコール、1,2−ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコールなどを挙げることができ、それらの中でもプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ペンチレングリコールが好ましく、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ペンチレングリコールがより好ましい。
【0033】
上記ムコ多糖類としてはヒアルロン酸及びその塩を挙げることができる。上記ヒアルロン酸の重量平均分子量は特に制限されるものではないが、ヒアルロン酸換算で1〜100万程度のものが好ましい。ヒアルロン酸の塩としては、例えばナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウムやカルシウム等の第二族元素塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等を挙げることができ、ナトリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましい。
【0034】
アルギン酸塩の配合量は、本発明のニキビ治療剤全量に対して0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましい。
【0035】
リン酸二水素ナトリウムの配合量は、本発明のニキビ治療剤全量に対して0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましい。
【0036】
低分子ベタインの配合量は、本発明のニキビ治療剤全量に対して0.1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
イソフラボン類の配合量は、本発明のニキビ治療剤全量に対して、配糖体及びアグリコン型イソフラボン類の総量として0.001%〜1質量%が好ましく、0.01〜0.2質量%がより好ましい。
【0037】
多価アルコールの配合量は、例えば、1,3−ブチレングリコールの場合、本発明のニキビ治療剤全量に対して、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
【0038】
ムコ多糖の配合量は、例えば、ヒアルロン酸の場合、本発明のニキビ治療剤全量に対して、0.01〜0.2質量%が好ましく、0.03〜0.1質量%がより好ましい。
【0039】
本発明のニキビ治療剤の酸性度は、pH2.0〜7.0が好ましく、pH3.0〜6.0が更に好ましい。
本発明のニキビ治療剤をそのまま皮膚又は粘膜に塗布して使用することもできるが、他の添加剤を加えて、液剤、クリーム、軟膏、ゲル、エアゾール、パック、シート等の任意の外用剤にして使用することもできる。
本発明のニキビ治療剤の調製方法は、特に制限されず、通常の皮膚外用製剤を調製するのに必要な各種成分などを適宜選択し、それらを配合して、常法により調製することができる。
上記製剤のうち、本発明のジェル状のニキビ治療剤を調製する場合には、本発明の必須成分である、(A)イソフラボン類及び/又はエストロゲン、(B)アルギン酸塩、(C)リン酸二水素ナトリウム、及び(D)低分子ベタインに、カルボキシビニルポリマー等の増粘剤を配合して調製することができる。
【0040】
本発明のニキビ治療剤は、外用投与により用いられる。塗布量は、年齢、体重、性別、症状やその程度などに応じて適宜調整することができるが、例えば、1回0.01〜0.5g程度を症状に合わせて1日1回〜数回、又は1週間に数回を患部又は必要箇所に塗布すればよい。
以下に、試験例を挙げて本発明の効果を説明する。なお、イソフラボン類は、水と1,3−ブチレングリコールとエタノールの混合物を用いて抽出したヒオウギエキスを用いた。低分子ベタインとしてはトリメチルグリシンを用いた。単位の%は全て質量%を表す。
試験例1(ニキビに対する治療効果)
〔試料及び試験方法〕
15年間ニキビに悩む33才女性被験者が、実施例1のニキビ治療剤を1日2回、5日間塗布した。
〔試験結果〕
閉鎖面皰(白ニキビ)は1日で瘢痕を残さずに治癒した。大きな膿疱状のニキビは、1日後には炎症及び痛みが治まり、3日後平らになって5日後には瘢痕は薄くなった。
試験例2(ニキビに対する治療効果)
〔試料及び試験方法〕
25才の男性被験者が、鼻と口の間にできた直径約0.3cm、高さ約0.2cmのニキビに、実施例1のニキビ治療剤を適量2回塗布した。
〔試験結果〕
ニキビの赤みが少し残る程度で、ニキビが平らになり、その日のうちにニキビが大幅に改善した。
試験例3(使用感及び浸透力比較試験)
〔試料〕
実施例2、比較例1
〔試験方法〕
被験者は8人。被験者にどちらの試料を試験しているのか全く解らないようにした。各被験者は各試料を100μlずつ左右の顔半面に塗布し、その使用感と浸透力を、比較評価した。
〔試験結果〕
(使用感)
実施例2の方が良い:7人
実施例2と比較例1は同等である:1人
比較例1の方が良い:0人
(浸透力)
実施例2の方が良い:8人
実施例2と比較例1は同等である:0人
比較例1の方が良い:0人
上記試験結果から明らかなように、本発明のニキビ治療剤である実施例2の使用感及び浸透力は、比較例1に比べて極めて優れていることが判明した。
試験例4(ニキビに対する治療効果)
〔試料及び試験方法〕
月経前に悪化する大きな膿疱状ニキビに8年間悩んでいた44歳女性被験者が、鼻にできた丘疹状ニキビに、実施例7のニキビ治療剤を1日2回塗布した。
〔試験結果〕
2日後には炎症及び痛みが治まり、瘢痕は薄くなった。
試験例5(ニキビに対する治療効果)
〔試料及び試験方法〕
表1に示す、12人のニキビ患者が、実施例1のニキビ治療剤を表1に示した期間(2週間から6カ月間)、ほぼ毎日適量塗布した。
〔試験結果〕
結果〔ニキビ治療剤(実施例1)使用前後のニキビの程度〕を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
全ての患者において、ニキビの改善が認められた。また多くの患者でニキビの新生はなく、予防効果も認められた。
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明は限定されるものではない。なお、%は質量%を意味する。
【実施例】
【0044】
実施例1
〔処方〕
イソフラボン類混合物 0.06%
アルギン酸ナトリウム 0.8%
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.8%
トリメチルグリシン 4.0%
ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液 7.0%
グリセリン 4.0%
1,3−ブチレングリコール 1.0%
エタノール 1.0%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1%
フェノキシエタノール 適量
メチルパラベン 適量
ローズエキス 適量
精製水 残量
計 100%
〔製造方法〕
100mlビーカーに、固形物であるアルギン酸ナトリウム0.8g、リン酸二水素ナトリウム・2水和物0.8g及び適量のメチルパラベンを入れ、続けて液状物であるグリセリン4.0g及び適量のフェノキシエタノールを加えて混合し、固形物を液状物中に分散させた。次にヒオウギエキス(イソフラボン類混合物1.2%、1,3−ブチレングリコール20.0%、エタノール20.0%、水58.8%含有)5.0g、トリメチルグリシン4.0g、ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液7.0g、グリチルリチン酸ジカリウム0.1g、適量のローズエキスを添加した。さらにこれに精製水を加えて全量を100.0gにし、固形物が完全に溶解するまで攪拌して本発明のニキビ治療剤である実施例1の試料を得た。なお、実施例1の試料のpHは5.1であった。
実施例2
〔処方〕
イソフラボン類混合物 0.06%
アルギン酸ナトリウム 0.8%
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.8%
トリメチルグリシン 4.0%
グリセリン 4.0%
1,3−ブチレングリコール 1.0%
エタノール 1.0%
メチルパラベン 適量
精製水 残量
計 100%
〔製造方法〕
50mlビーカーに、固形物であるアルギン酸ナトリウム0.4g、リン酸二水素ナトリウム・2水和物0.4g及び適量のメチルパラベンを入れ、続いて液状物であるグリセリン2.0gを加えて混合し、固形物を液状物中に分散させた。さらにヒオウギエキス(イソフラボン類混合物1.2%、1,3−ブチレングリコール20.0%、エタノール20.0%、水58.8%含有)2.5g、トリメチルグリシン2.0gを添加した。さらにこれに精製水を加えて全量を50.0gにし、固形物が完全に溶解するまで攪拌して本発明のニキビ治療剤である実施例2の試料を得た。なお、実施例2の試料のpHは5.2であった。
実施例3
〔処方〕
イソフラボン類混合物 0.04%
アルギン酸ナトリウム 0.8%
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.8%
トリメチルグリシン 4.0%
ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液 7.0%
グリセリン 3.0%
1,3−ブチレングリコール 3.0%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1%
フェノキシエタノール 適量
メチルパラベン 適量
精製水 残量
計 100%
〔製造方法〕
100mlビーカーに、固形物であるアルギン酸ナトリウム0.8g、リン酸二水素ナトリウム・2水和物0.8g及び適量のメチルパラベンを入れ、続けて液状物であるグリセリン3.0g及び適量のフェノキシエタノールを加えて混合し、固形物を液状物中に分散させた。次にダイズエキス(イソフラボン類混合物0.4%、1,3−ブチレングリコール30.0%、水69.6%含有)10.0g、トリメチルグリシン4.0g、ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液7.0g、グリチルリチン酸ジカリウム0.1gを添加した。さらにこれに精製水を加えて全量を100.0gにし、固形物が完全に溶解するまで攪拌して本発明のニキビ治療剤である実施例3の試料を得た。なお、実施例3の試料のpHは5.1であった。
実施例4
〔処方〕
イソフラボン類混合物 0.12%
アルギン酸ナトリウム 0.8%
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.8%
トリメチルグリシン 4.0%
ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液 7.0%
グリセリン 3.0%
1,3−ブチレングリコール 2.0%
エタノール 2.0%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1%
フェノキシエタノール 適量
メチルパラベン 適量
ローズエキス 適量
精製水 残量
計 100%
〔製造方法〕
100mlビーカーに、固形物であるアルギン酸ナトリウム0.8g、リン酸二水素ナトリウム・2水和物0.8g及び適量のメチルパラベンを入れ、続けて液状物であるグリセリン3.0g及び適量のフェノキシエタノールを加えて混合し、固形物を液状物中に分散させた。次にヒオウギエキス(イソフラボン類混合物1.2%、1,3−ブチレングリコール20.0%、エタノール20.0%、水58.8%含有)10.0g、トリメチルグリシン4.0g、ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液7.0g、グリチルリチン酸ジカリウム0.1g及び適量のローズエキスを添加した。さらにこれに精製水を加えて全量を100.0gにし、固形物が完全に溶解するまで攪拌して本発明のニキビ治療剤である実施例4の試料を得た。なお、実施例4の試料のpHは5.1であった。
実施例5
〔処方〕
イソフラボン類混合物 0.12%
アルギン酸ナトリウム 0.8%
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.8%
トリメチルグリシン 3.0%
ビタミンC誘導体 2.0%
ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液 7.0%
グリセリン 3.0%
1,3−ブチレングリコール 2.0%
エタノール 2.0%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1%
水酸化ナトリウム10%水溶液 適量
フェノキシエタノール 適量
メチルパラベン 適量
ローズエキス 適量
精製水 残量
計 100%
〔製造方法〕
50mlビーカーに、液状物であるグリセリン3.0g及び適量のフェノキシエタノールを入れ、そこに固形物であるアルギン酸ナトリウム0.8g及び適量のメチルパラベンを加えて分散させ、分散液Aを調製した。次に100mlビーカーに、リン酸二水素ナトリウム・2水和物2.0gとビタミンC誘導体2.0gを入れ、50gの精製水で溶解し、適量の水酸化ナトリウム10%水溶液を加えてpHを調整した。そこにヒオウギエキス(イソフラボン類混合物1.2%、1,3−ブチレングリコール20.0%、エタノール20.0%、水58.8%含有)10.0g、トリメチルグリシン3.0g、ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液7.0g、グリチルリチン酸ジカリウム0.1g及び適量のローズエキスを添加し、分散液Aを逐次添加した。さらに精製水を加えて全量を100.0gにし、固形物が完全に溶解するまで攪拌して本発明のニキビ治療剤である実施例5の試料を得た。なお、実施例5の試料のpHは5.6であった。
実施例6
〔処方〕
イソフラボン類混合物 0.12%
アルギン酸ナトリウム 0.8%
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.8%
トリメチルグリシン 4.0%
(アスコルビル/トコフェリル)リン酸カリウム 0.05%
ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液 7.0%
グリセリン 3.0%
1,3−ブチレングリコール 2.0%
エタノール 2.0%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1%
フェノキシエタノール 適量
メチルパラベン 適量
ローズエキス 適量
精製水 残量
計 100%
〔製造方法〕
100mlビーカーに、固形物であるアルギン酸ナトリウム0.8g、リン酸二水素ナトリウム・2水和物0.8g及び適量のメチルパラベンを入れ、続けて液状物であるグリセリン3.0g及び適量のフェノキシエタノールを加えて混合し、固形物を液状物中に分散させた。次にヒオウギエキス(イソフラボン類混合物1.2%、1,3−ブチレングリコール20.0%、エタノール20.0%、水58.8%含有)10.0g、トリメチルグリシン4.0g、ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液7.0g、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸カリウム0.05g、グリチルリチン酸ジカリウム0.1g及び適量のローズエキスを添加した。さらに精製水を加えて全量を100.0gにし、固形物が完全に溶解するまで攪拌して本発明のニキビ治療剤である実施例6の試料を得た。なお、実施例6の試料のpHは5.1であった。
実施例7
〔処方〕
イソフラボン類混合物 0.12%
アルギン酸ナトリウム 0.8%
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.8%
トリメチルグリシン 4.0%
ビタミンC誘導体 2.0%
(アスコルビル/トコフェリル)リン酸カリウム 0.05%
ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液 5.0%
グリセリン 4.0%
1,3−ブチレングリコール 2.0%
エタノール 2.0%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1%
水酸化ナトリウム10%水溶液 適量
フェノキシエタノール 適量
メチルパラベン 適量
EDTA−2Na 適量
ローズエキス 適量
精製水 残量
計 100%
〔製造方法〕
50mlビーカーに、液状物であるグリセリン4.0g及び適量のフェノキシエタノールを入れ、そこに固形物であるアルギン酸ナトリウム0.8g及び適量のメチルパラベンを加えて分散させ、分散液Aを調製した。次に100mlビーカーに、リン酸二水素ナトリウム・2水和物0.8gとビタミンC誘導体2.0gを入れ、50gの精製水で溶解し、適量の水酸化ナトリウム10%水溶液を加えてpHを調整した。そこにヒオウギエキス(イソフラボン類混合物1.2%、1,3−ブチレングリコール20.0%、エタノール20.0%、水58.8%含有)10.0g、トリメチルグリシン4.0g、ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液5.0g、グリチルリチン酸ジカリウム0.1g、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸カリウム0.05g、適量のEDTA−2Na及び適量のローズエキスを添加し、分散液Aを逐次添加した。さらに精製水を加えて全量を100.0gにし、固形物が完全に溶解するまで攪拌して本発明のニキビ治療剤である実施例7の試料を得た。なお、実施例7の試料のpHは5.6であった。
実施例8
〔処方〕
エストラジオール 0.01%
アルギン酸ナトリウム 0.2%
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.2%
トリメチルグリシン 1.0%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1%
スクワラン 5.0%
キサンタンガム 1.0%
セテアリルグリコシド 1.0%
ペンチレングリコール 5.0%
メチルパラベン 適量
精製水 残量
計 100%
〔製造方法〕
200ml容器に、固形物であるエストラジオール0.01g及び適量のメチルパラベンを入れ、そこにペンチレングリコール5.0gを加えて、固形物が全て溶解するまで40℃で攪拌した。そこにスクワラン5.0g、アルギン酸ナトリウム0.2g、リン酸二水素ナトリウム・2水和物0.2g、トリメチルグリシン1.0g、グリチルリチン酸ジカリウム0.1g及びキサンタンガム1.0gを加えて固形物を分散させ、さらに精製水を加えて室温で5分間ホモジナイザーを用いて攪拌した。その後セテアリルグリコシド1.0gを加えて、更に室温で5分間ホモジナイザーを用いて攪拌し、本発明品のニキビ治療剤である実施例8の試料100gを得た。なお、実施例8の試料のpHは5.5であった。
実施例9
実施例8のエストラジオールをエストリオールに代えて使用する以外は実施例8と同様に調製し、実施例9の試料を得る。
実施例10
実施例7のアルギン酸ナトリウム0.8%及びリン酸二水素ナトリウム・2水和物0.8%をそれぞれ1.2%に代えて使用する以外は実施例7と同様に調製し、実施例10の試料を得る。
実施例11
実施例7のアルギン酸ナトリウム0.8%及びリン酸二水素ナトリウム・2水和物0.8%をそれぞれ0.4%に代えて使用する以外は実施例7と同様に調製し、実施例11の試料を得る。
実施例12
実施例7のトリメチルグリシン4.0%を6.0%に代えて使用する以外は実施例7と同様に調製し、実施例12の試料を得る。
実施例13
実施例7のトリメチルグリシン4.0%を2.0%に代えて使用する以外は実施例7と同様に調製し、実施例13の試料を得る。
実施例14
実施例5のビタミンC誘導体を(アスコルビル/トコフェリル)リン酸カリウムに代えて使用する以外は実施例5と同様に調製し、実施例14の試料を得る。
比較例1
〔製造方法〕
実施例2の処方から、アルギン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・2水和物及びトリメチルグリシンを除いた処方で実施例2と同様に調製し、比較例1の試料を得た。なお、比較例1の試料のpHは5.4であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イソフラボン類及び/又はエストロゲン、(B)アルギン酸塩、(C)リン酸二水素ナトリウム、及び(D)低分子ベタインとからなることを特徴とするニキビ治療剤。
【請求項2】
イソフラボン類が、植物から抽出されたイソフラボン類含有エキスである請求項1に記載のニキビ治療剤。
【請求項3】
植物から抽出されたイソフラボン類含有エキスが、ヒオウギエキスである請求項2に記載のニキビ治療剤。
【請求項4】
エストロゲンが、エストロン、エストラジオール、エストリオール、及びエステトロールから選択される1種又は2種以上である請求項1〜3のいずれかに記載のニキビ治療剤。
【請求項5】
さらに抗炎症剤、ビタミンC及びその誘導体、並びにビタミンE及びその誘導体から選択される1種又は2種以上を含有する請求項1〜4のいずれかに記載のニキビ治療剤。
【請求項6】
抗炎症剤が、グリチルリチン酸ジカリウムである請求項5に記載のニキビ治療剤。
【請求項7】
アルギン酸塩が、アルギン酸ナトリウムである請求項1〜6のいずれかに記載のニキビ治療剤。
【請求項8】
低分子ベタインが、トリメチルグリシンである請求項1〜7のいずれかに記載のニキビ治療剤。

【公開番号】特開2009−143897(P2009−143897A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294277(P2008−294277)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(301039505)ネオケミア株式会社 (15)
【出願人】(505398561)株式会社アクネスラボ (1)
【Fターム(参考)】