説明

ネガ型レジスト組成物、レジストパターンの形成方法及び電子デバイスの製造方法

【課題】実用可能な感度を有していて、膨潤のない微細なネガ型レジストパターンを形成できるレジスト組成物を提供すること。
【解決手段】レジスト組成物が、下記の反応成分:
(1)アルカリ可溶性の重合体からなる基材樹脂、
(2)結像用放射線を吸収して分解し、酸を発生可能な光酸発生剤、及び
(3)前記光酸発生剤から発生せしめられた酸の存在下、前記基材樹脂の重合体と脱水結合反応を行い得る反応部位を有している脂環族系アルコール、
を組み合わせて含んでなるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレジスト組成物に関し、さらに詳しく述べると、露光後に塩基性水溶液によって現像を行うことができる化学増幅型のネガ型レジスト組成物に関する。本発明は、また、このようなレジスト組成物を使用したネガ型レジストパターンの形成方法に関する。本発明のレジスト組成物を使用すると、実用可能な感度で膨潤がない微細なネガ型レジストパターンを形成することができる。本発明は、さらに、本発明のレジスト組成物を使用して製造した、LSI等の微細な半導体装置や磁気記録ヘッド等を含む各種の電子デバイスと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体集積回路は高集積化が進み、LSIやVLSIが実用化されており、配線パターンの最小線幅は0.2μm以下の領域に及んでいる。このため、微細加工技術を確立することが必須であり、リソグラフィ分野では、その要求の解決策として、露光光源の紫外線の波長を遠紫外領域の短波長へと移行させており、さらに深紫外領域の波長の光源を用いた露光技術も間もなく量産工程で採用されると言われている。これにともない、レジスト材料も、上記のような短波長での光の吸収がより少なく、感度が良好でかつ高いドライエッチング耐性を合わせもつ材料の開発が急務となっている。
【0003】
近年、半導体装置の製造における新しい露光技術として、フッ化クリプトンエキシマレーザ(波長248nm、以下KrFと略す)を露光光源として使用したフォトリソグラフィが盛んに研究され、量産にも盛んに使用されている。また、このような短波長光源に対応できる高感度かつ高解像度を持ったレジストとして、化学増幅型と呼ばれる概念を用いたレジスト組成物が、米国IBM社のH.Itoらによってすでに提示されている(例えば、非特許文献1〜3及び特許文献1を参照されたい)。この化学増幅型レジスト組成物の基本概念は、上記の文献から容易に理解されるように、レジスト膜中で触媒反応を起こさせて、見かけの量子収率を向上させて、高感度化を図ることにある。
【0004】
これまで非常に広く研究、利用されている、t−ブトキシカルボニルポリビニルフェノール(t−BOCPVP)に、光によって酸を発生する作用を有する光酸発生剤(PAG、Photo Acid Generatorの略)を加えた化学増幅型レジストを例にとってみると、レジストの露光部では、露光後の加熱、いわゆる「PEB(ポストエクスポージャ・ベーキング)」によって、t−BOC基が脱離し、イソブテンと二酸化炭素になる。また、t−BOCの脱離時に生じるプロトン酸が触媒となって、上記の脱保護反応が連鎖的に進行し、露光部の極性が大きく変化する。よって、露光部の極性の大きな変化に対応し得る適切な現像液を選択することにより、膨潤のない微細なレジストパターンを形成することができる。
【0005】
ところで、近年になって盛んに研究されている超解像技術の1つに、位相シフトマスクやレベンソン型マスクと呼ばれる光の位相を変化させるマスクを用いる方法があり、露光波長以下の解像性と十分な焦点深度を得る方法として有望である。これらのマスクを用いる場合には、そのマスクパターンの制約からネガ型レジストが適していることが多く、したがって、ネガ型レジストを提供することに対する要望はかねてから強いものがあった。これらのマスクは、KrFを光源とする場合は0.20μm以下の解像性が必要な場合に適用されると目されており、上記したように微細なパターンを膨潤なく解像できる高性能なレジストの開発が急務であった。さらに、KrFよりもさらに波長の短いフッ化アルゴンエキシマレーザ(波長193nm、以下ArFと略す)や電子線(EB)を用いたリソグラフィの研究も盛んであり、0.13μm以下のパターン形成には必須となる技術である。したがって、このようなさらなる微細加工の期待がかかるArF、EB等にも適用可能なネガ型レジストの開発は産業上極めて有益である。
【0006】
アルカリ現像可能なKrF用あるいはEB用ネガ型レジストとしては、酸触媒反応によって引き起こされる極性反応を利用するもの〔例えば、非特許文献4及び5など〕と、酸触媒架橋反応を利用するもの〔例えば、非特許文献6〜8など〕とがある。また、ArF用ネガ型レジストでは、架橋型のものが知られている〔例えば、非特許文献9及び10などを参照されたい〕。
【0007】
しかしながら、上記したように位相シフトマスクやレベンソン型マスクを使用した超解像技術に使用可能で、KrF、ArF、EB等にも適用可能な高性能なネガ型レジストが強く要望されているにもかかわらず、現在実用化されているネガ型レジストはもっぱら後者の架橋型のもののみである。架橋型のネガ型レジストは、露光部の架橋反応を利用して分子量を増大させることによって、未露光部との間に現像液に対する溶解度の差を生じさせ、パターニングを行うものであるので、コントラストを高めることが困難であり、また、酸触媒反応によって引き起こされる極性反応を利用したレジストとは異なって、パターンの膨潤による微細加工の限界を避けることができない。
【0008】
上記したように、ネガ型の化学増幅型レジストは、大別して、アルカリ可溶性の基材樹脂と、結像用放射線を吸収して分解し、酸を放出する光酸発生剤と、酸触媒反応によって極性変化をもたらす物質とをレジスト中に含ませたタイプと、アルカリ可溶性の基材樹脂と、結像用放射線を吸収して分解し、酸を放出する光酸発生剤と、樹脂どうしを架橋反応させ得る物質とをレジスト中に含ませたタイプとがある。前者の極性反応を利用した化学増幅型レジストは、典型的にはピナコール転移反応を利用しており、例えば、非特許文献11や非特許文献12に開示されている。かかるレジストにおける酸触媒反応は、次のようにして進行する。
【0009】
【化1】

【0010】
すなわち、アルカリ可溶性であるピナコールが、酸及び熱の影響を受けてアルカリ不溶性に変化するのである。しかし、この種の化学増幅型レジストでは解像性に問題がある。酸触媒反応によってピナコール自体は上記のようにアルカリ不溶性に変化するが、アルカリ可溶性の基材樹脂そのものは反応しないので、十分な溶解速度差を得ることができないからである。
【0011】
また、化学増幅型レジストは、特許文献2〜4などにも開示されている。例えば特許文献2は、アルカリ可溶性高分子化合物、芳香環に直接結合した炭素に水酸基を有する二級又は三級アルコール及び放射線の照射により酸を発生する酸前駆体を含むことを特徴とする放射線感応性組成物を開示している。ここで用いられる二級又は三級アルコールは、例えば、次式により表されるフェニルメタノール誘導体である。
【0012】
【化2】

【0013】
(上式において、Aは、炭素数4以下のアルキル基又はメチロール基を表す)。
【0014】
【化3】

【0015】
(上式において、R4及びR5は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子を表すかもしくはフェニル基を表す)。このレジストにおける酸触媒反応は、次のようにして進行する。
【0016】
【化4】

【0017】
上記したように、アルカリ可溶性の高分子化合物に酸及び熱の影響を受けて二級又は三級アルコールが脱水的に結合し、アルカリ不溶性に変化するのである。しかし、この化学増幅型レジストでは、エッチング耐性の向上のために存在させていると考えられるが、酸触媒反応に関与し得る二級又は三級アルコールに芳香環が含まれているので、露光光源を制限するという問題がある。芳香環は光吸収が大きく、特に短波長であるKrFレーザやArF(フッ化アルゴンエキシマレーザ、波長193nm)に応用しづらいからである。また、脱水によって生成する二重結合を芳香環により共役安定化するためと考えられるが、芳香環に直接結合した炭素に水酸基を結合させている。このような構成とすると、アルコールの分子内脱水が主反応になり、基材樹脂の極性基(フェノール性水酸基など)と反応しないため、意図した極性変化が小さくなるであろう。さらに、一級アルコールでは脱水によって二重結合を生じないので、二級又は三級アルコールに限定して使用しているが、応用範囲の拡大などのためにはこのような制限を排除することが望ましい。
【0018】
後者の酸触媒架橋反応を利用した化学増幅型レジストは、典型的にはメトキシメチロールメラミン等のメラミン系架橋剤によるアルカリ可溶性樹脂の架橋反応を利用しており、例えば、非特許文献13に開示されている。かかるレジストにおける架橋反応は、次のようにして進行する。
【0019】
【化5】

【0020】
この種の化学増幅型レジストのようにメラミン系架橋剤を使用した場合には、基材樹脂のゲル化反応(樹脂の架橋による分子量の増大)や樹脂の極性基(フェノール性水酸基)などの架橋に由来する非極性化によりアルカリ溶解性が低下せしめられるという効果は期待できる。しかし、ここで架橋剤として使用されているメトキシメチロールメラミンはそもそも極性が低いので、十分な溶解速度差を発生することができない。露光前は樹脂、添加剤ともに極性が高く、露光後において樹脂、添加剤ともに低極性を示すことができるようなレジストを提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第4,491,628号明細書
【特許文献2】特開平4−165359号公報
【特許文献3】特開平7−104473号公報
【特許文献4】特開平11−133606号公報
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】J.M.J.Frechetら、Proc.Microcircuit Eng.、260(1982)
【非特許文献2】H.Itoら、Digest of Technical Papers of 1982 Symposium on VLSI Technology、86(1983)
【非特許文献3】H.Itoら、“Polymers in Electronics”、ACS Symposium Series 242、T.Davidson編、ACS、11(1984)
【非特許文献4】H.Itoら、Proc.SPIE,1466,408(1991)
【非特許文献5】S.Uchinoら、J.Photopolym.Sci.Technol.,11(4),553−564(1998)
【非特許文献6】J.W.Thackerayら、Proc.SPIE,1086,34(1989)
【非特許文献7】M.T.Allenら,J.Photopolym.Sci.Technol.,7,4(3),379−387(1991)
【非特許文献8】Liu H.I.、J.Vac.Sci.Technol.,B6,379(1988)
【非特許文献9】A.Katsuyamaら、Abstracted Papers of Third International Symposium on 193nm Lithography,51(1997)
【非特許文献10】K.Maedaら、J.Photopolym.Sci.Technol.,11(4),507−512(1998)
【非特許文献11】R.Sooriyakumaranら、SPIE、1466、419(1991)
【非特許文献12】S.Uchinoら、SPIE、1466、429(1991)
【非特許文献13】M.T.Allenら、J.Photopolym.Sci.Technol.、7、4(3)、379−387(1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、上記したような化学増幅型レジストの問題点をいろいろな面から解決しようとするものである。
【0024】
1つの面において、本発明の目的は、現像液として塩基性水溶液(標準アルカリ現像液)を使用することができ、実用可能な感度を有していて、膨潤のない微細なネガ型レジストパターンを形成することができる新規なレジスト組成物を提供することにある。
【0025】
本発明の目的は、また、KrFあるいはArFエキシマレーザ等に代表される深紫外領域の結像用放射線や電子線にも対応可能で、ドライエッチング耐性にもすぐれた新規なレジスト組成物を提供することにある。
【0026】
本発明の目的は、さらに、露光部と未露光部の極性の差を大きくして、高感度と、高コントラストと、高解像度とを兼ね備える微細なパターンを形成することができる新規なレジスト組成物を提供することにある。
【0027】
もう1つの面において、本発明の目的は、露光部と未露光部の溶解速度の差を大きくして、高感度と、高コントラストと、高解像度とを兼ね備える微細なパターンを形成することができる新規なレジスト組成物を提供することにある。
【0028】
本発明の目的は、また、現像液として塩基性水溶液(標準アルカリ現像液)を使用することができる新規なレジスト組成物を提供することにある。
【0029】
本発明の目的は、さらに、KrFあるいはArFエキシマレーザ等に代表される深紫外領域の結像用放射線や電子線にも対応可能で、ドライエッチング耐性にもすぐれたレジスト組成物を提供することにある。
【0030】
また、本発明の目的は、本発明の新規なレジスト組成物を使用してレジストパターンを形成する方法を提供することにある。
【0031】
さらに、本発明の目的は、本発明の新規なレジスト組成物を使用して電子デバイスを製造する方法と、そのような方法によって製造された電子デバイスを提供することにある。
【0032】
本発明の上記した目的及びその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明者らは、上記した第1の面の課題を解決すべく鋭意研究の結果、化学増幅型レジスト組成物において、分子内にアルカリ可溶性基を有していて塩基性水溶液に可溶な皮膜形成性の重合体を基材樹脂として使用し、かつその重合体に、アルコール構造、好ましくは3級アルコール構造を側鎖に有するモノマー単位を含ませることが重要であるという知見を得、本発明を完成するに至った。本発明のレジスト組成物において、皮膜形成性の重合体と組み合わせて使用される光酸発生剤が結像用放射線を吸収して分解すると、酸が発生せしめられ、その酸が、重合体のモノマー単位の側鎖のアルコール構造部分と同じ重合体のアルカリ可溶性基を有する部分との反応を引き起こすか、さもなければ、アルカリ可溶性基を保護することが可能である。結果として、結像用放射線を吸収した露光部がアルカリ不溶となり、ネガ型レジストパターンを形成することができる。
【0034】
したがって、本発明(第1の発明)によれば、(1)アルカリ可溶性基を有する第1のモノマー単位及び前記アルカリ可溶性基と反応し得るアルコール構造を有する第2のモノマー単位を含む自体塩基性水溶液に可溶な皮膜形成性重合体と、
(2)結像用放射線を吸収して分解すると、前記第2のモノマー単位のアルコール構造と前記第1のモノマー単位のアルカリ可溶性基との反応を誘起し得るかもしくは前記第1のモノマー単位のアルカリ可溶性基を保護し得る酸を発生可能な光酸発生剤とを含んでなり、かつ
自体塩基性水溶液に可溶であるが、前記結像用放射線に露光されると、前記光酸発生剤の作用の帰結として露光部が塩基性水溶液に不溶となることを特徴とする、塩基性水溶液で現像可能なネガ型レジスト組成物が提供される。
【0035】
上記した発明に追加して、本発明者らは、上記した第2の面の課題を解決すべく鋭意研究の結果、化学増幅型レジスト組成物において、アルカリ可溶性の重合体からなる基材樹脂と結像用放射線を吸収して分解し、酸を発生可能な光酸発生剤に組み合わせて、レジストをアルカリ不溶性に変え得る添加剤として、脂環族系アルコール、なかんずく立体化学的に固定された構造を有する3級アルコールを含ませることが有効であるということを発見し、本発明を完成した。
【0036】
したがって、本発明(第2の発明)によれば、下記の反応成分:
(1)アルカリ可溶性の重合体からなる基材樹脂、
(2)結像用放射線を吸収して分解し、酸を発生可能な光酸発生剤、及び
(3)前記光酸発生剤から発生せしめられた酸の存在下、前記基材樹脂の重合体と脱水結合反応を行い得る反応部位を有している脂環族系アルコール、
を組み合わせて含んでなることを特徴とするネガ型レジスト組成物が提供される。
【0037】
また、本発明によれば、本発明のネガ型レジスト組成物を使用したネガ型レジストパターンの形成方法も提供される。本発明のネガ型レジストパターンの形成方法は、下記の工程:
本発明のネガ型レジスト組成物を被処理基板上に塗布し、
形成されたレジスト膜を前記レジスト組成物の光酸発生剤の分解を誘起し得る結像用放射線で選択的に露光し、そして
露光後ベークの完了後、前記レジスト膜を塩基性水溶液で現像すること、
を含んでなることを特徴とする。
【0038】
さらに、本発明によれば、本発明のネガ型レジスト組成物を使用した電子デバイスの製造方法も提供される。本発明の電子デバイスの製造方法は、本発明のネガ型レジスト組成物から形成されたレジストパターンをマスキング手段として使用して、その下地の被処理基板を選択的に除去して予め定められた機能性要素層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0039】
本発明の電子デバイスの製造方法は、下記の工程:
前記ネガ型レジスト組成物を被処理基板上に塗布し、
形成されたレジスト膜を前記レジスト組成物の光酸発生剤の分解を誘起し得る結像用放射線で選択的に露光し、
露光後のレジスト膜を塩基性水溶液で現像してレジストパターンを形成し、そして
前記レジストパターンをマスキング手段として、その下地の前記被処理基板をエッチングにより選択的に除去して前記機能性要素層を形成すること、
を含んでなることが好ましい。
【発明の効果】
【0040】
以下に説明するように、本発明によるレジスト組成物(第1の発明によるネガ型レジスト組成物)を使用すると、現像液として塩基性水溶液を使用することができ、実用可能な感度を有していて、膨潤のない微細なネガ型レジストパターンを形成することができる。また、本発明のレジスト組成物は、KrFあるいはArFエキシマレーザ等に代表される深紫外領域の結像用放射線や電子線にも対応可能で、ドライエッチング耐性にもすぐれている。そして、本発明のレジストを使用すると、露光部と未露光部の極性の差を大きくして、高感度と、高コントラストと、高解像度とを兼ね備える微細なネガ型パターンを形成することができる。
【0041】
また、本発明によるレジスト組成物(第2の発明によるネガ型レジスト組成物)を使用すると、露光部と未露光部の極性の差を大きくして、高感度と、高コントラストと、高解像度とを兼ね備える微細なネガ型レジストパターンを形成することができる。また、このレジストパターンの形成のため、塩基性水溶液を現像液として使用することができる。また、本発明のレジスト組成物は、KrFエキシマレーザ等に代表される深紫外領域の結像用放射線や電子線にも対応可能で、ドライエッチング耐性にもすぐれている。そして、本発明のレジストを使用するとLSI等の半導体装置の製造において微細な配線パターンを歩留りよく形成することができる。
【0042】
さらに、本発明によると、本発明による各種のネガ型レジスト組成物を使用すると、デバイスに含まれる微細な機能性要素層を正確にかつ歩留りよく製造することができるので、半導体装置、磁気記録ヘッド等の電子デバイスを有利に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に従うMOSトランジスタの製造工程の前半を順を追って示した断面図である。
【図2】図1に示したMOSトランジスタの製造工程の後半を順を追って示した断面図である。
【図3】本発明に従う薄膜磁気ヘッドの製造工程の最初の段階を順を追って示した断面図である。
【図4】図3に示した薄膜磁気ヘッドの製造工程の中間の段階を順を追って示した断面図である。
【図5】図3に示した薄膜磁気ヘッドの製造工程の最後の段階を順を追って示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
引き続いて、本発明をそれぞれの発明のネガ型レジスト組成物と、そのレジスト組成物を使用したレジストパターンの形成方法及び電子デバイスの製造方法について詳細に説明する。なお、それぞれの発明のネガ型レジスト組成物において、共通的に使用し得る成分の説明については、説明の重複を避けて、省略もしくは簡略化する場合もある。
【0045】
本発明(第1の発明)によるネガ型レジスト組成物は、上記したように、アルカリ可溶性基を有する第1のモノマー単位及び前記アルカリ可溶性基と反応し得るアルコール構造を有する第2のモノマー単位を含む自体塩基性水溶液に可溶な皮膜形成性重合体を基材樹脂として含むことを必須の構成要件としている。ここで、「重合体」とは、広義で用いられており、以下において具体的に説明するけれども、2成分共重合体、3成分共重合体などの共重合体はもちろんのこと、単独重合体(ホモポリマー)も包含する。すなわち、単独重合体の場合、第1のモノマー単位と第2のモノマー単位は共通であることができ、1つのモノマー単位にアルカリ可溶性基とそのアルカリ可溶性基と反応し得るアルコール構造とが共存することとなる。このような皮膜形成性重合体は、基本的に、現像液として使用される塩基性水溶液に対して適切なアルカリ可溶性を保持できる限りにおいてどのような構造を有していてもよい。さらに、その重合体が3成分共重合体などのような多元共重合体の形態であっても、それが適切なアルカリ可溶性を保持できる限りにおいてどのような構造を有していてもよい。
【0046】
本発明のレジスト組成物において基材樹脂として用いられる皮膜形成性重合体は、その重合体主鎖としていろいろなものを包含することができ、したがって、その第1及び第2のモノマー単位は、好ましくは、(メタ)アクリル酸系モノマー単位、イタコン酸系モノマー単位、ビニルフェノール系モノマー単位、ビニル安息酸系モノマー単位、スチレン系モノマー単位、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−5−エン−2−カルボン酸系モノマー単位、N−置換マレイミド系モノマー単位及び複数個もしくは多環式の脂環式炭化水素部分を含むエステル基を有するモノマー単位などである。これらのモノマー単位は、ノボラックレジスト並みのドライエッチング耐性を得ることができる面でも有用である。なお、第1及び第2のモノマー単位は、同一であっても異なっていてもよい。また、先にも述べたように、第1及び第2のモノマー単位が共通な時には、そのモノマー単位は上記したもののいずれであってもよい。
【0047】
上記したようなモノマー単位のなかで、特に(メタ)アクリレート系モノマー単位は、露光光源として深紫外線を使用する場合に深紫外領域の波長の光の吸収が小さい点において重要である。換言すると、深紫外線を露光光源とする場合には、一般的に、深紫外領域の光を大きく吸収する芳香族環や、共役二重結合等のモル吸光係数の大きい発色団を含まないような構造を有する共重合体を使用することが望ましい。
【0048】
皮膜形成性重合体の第1のモノマー単位は、その構造中にアルカリ可溶性基を有することが必須である。ここで導入し得るアルカリ可溶性基は、化学増幅型レジストの分野で基材樹脂としての重合体に一般的に導入されているいろいろな基を包含することができるというものの、通常、カルボン酸基、スルホン酸基、アミド基、イミド基、フェノール基、酸無水物基、チオール基、ラクトン酸エステル基、アザラクトン基、ヒドロキシアミド基、オキサゾン基、ピロニドン基、ヒドロキシオキシム基などが好ましく、さらに好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸、アミド基、イミド基、そしてヒドロキシアミド基である。
【0049】
本発明の皮膜形成性重合体において、その重合体中に上記第1のモノマー単位が占める割合は、重合体自体が適切なアルカリ可溶性を示す限りにおいて特に限定されるものではないが、本発明で意図しているネガレジストとして実現可能と考えられる適切なアルカリ溶解速度(ADR)(2.38%水酸化テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で測定して、100〜10000Å/ sec)を得ることを考慮すると、例えば、2成分もしくはそれ以上の多成分共重合体でアルカリ可溶性基としてカルボン酸を含有する共重合体の場合、10〜90モル%の範囲であるのが好ましく、より好ましくは、30〜70モル%の範囲である。この第1のモノマー単位の含有率が10モル%を下回ると、アルカリ溶解性が不十分となるため、満足のいくパターニングを行うことが不可能となる。反対に、第1のモノマー単位の含有率が90モル%を上回ると、アルカリ溶解性が強くなりすぎるため、塩基性水溶液への溶解速度が速すぎてしまい、極性変化に依存してパターニングを行うことが不可能となる。かかる第1のモノマー単位の最も好ましい含有率は、30〜50モル%の範囲である。
【0050】
また、皮膜形成性重合体の第1のモノマー単位がアルカリ可溶性基としてフェノール性水酸基を含有するような場合、そのモノマー単位の含有率は、好ましくは、30〜99モル%の範囲であり、さらに好ましくは、50〜95モル%の範囲である。この第1のモノマー単位の含有率が30モル%を下回ると、アルカリ溶解性が不十分となるため、満足のいくパターニングを行うことが不可能となる。同様に、第1のモノマー単位の含有率が99モル%を上回っても、満足のいくパターニングを行うことが不可能となる。かかる第1のモノマー単位の最も好ましい含有率は、80〜95モル%の範囲である。
【0051】
また、皮膜形成性重合体の第2のモノマー単位は、第1のモノマー単位のアルカリ可溶性基と反応し得るアルコール構造をその側鎖に有することが必須である。ここで導入し得るアルコール構造は、所望とする効果などに応じて広く変更することができるというものの、本発明者らの知見によれば、3級アルコール構造が特に有用である。3級アルコール構造は、例えば第2アルコール構造に比較した場合、脱水反応を起こしやすいからである。
【0052】
本発明の実施において好適な3級アルコール構造は、次式(I)〜(IV)のいずれかにより表されるものである。
【0053】
好ましい3級アルコール構造(1):
【0054】
【化6】

【0055】
上式において、Rは、当該モノマー単位の主鎖に繋がりかつ前記第1のモノマー単位と共重合可能な任意の結合基を表す。この結合基Rは、したがって、アルカリ可溶性基を有するモノマー単位と共重合可能なものであり、本発明の意図する効果に対して悪影響を及ぼすことがなければ、その構造は特に問われない。適当な結合基Rは、例えば、1〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖の炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基など、あるいは−O−基などである。
【0056】
R1及びR2は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、直鎖もしくは分岐鎖状あるいは環状の炭化水素基、例えば、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、例えばメチル基、エチル基など、あるいは脂環式又は芳香族の炭化水素基、例えばフェニル基などを表し、さもなければ、以下に説明するように、2つの置換基R1及びR2が一緒になって1つの環系、例えば脂環式又は芳香族の炭化水素基あるいは複素環式基を構成していてもよい。
【0057】
好ましい3級アルコール構造(2):
【0058】
【化7】

【0059】
上式において、Rは前記定義に同じである。
【0060】
x は、1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基、例えば、直鎖もしくは分岐鎖状あるいは環状の炭化水素基、例えばメチル基、エチル基などあるいはフェニル基などを表し、そしてpは2〜9の整数である。
【0061】
好ましい3級アルコール構造(3):
【0062】
【化8】

【0063】
上式において、Rは前記定義に同じである。
【0064】
Yは、水素原子を表すかもしくは、アルキル基、アルコキシカルボニル基、ケトン基、水酸基及びシアノ基からなる群から選ばれた任意の置換基を表す。この置換基Yの、下記の脂環炭化水素基Zに対する結合位置は特に限定されない。
【0065】
Zは、脂環式炭化水素基を完成するのに必要な複数個の原子を表す。ここで、脂環式炭化水素基は、いろいろな基を包含することができるけれども、好ましくは、次のような化合物を骨格とするものである。
【0066】
アダマンタン及びその誘導体、
ノルボルナン及びその誘導体、
パーヒドロアントラセン及びその誘導体、
パーヒドロナフタレン及びその誘導体、
トリシクロ〔5.2.1.02,6 〕デカン及びその誘導体、
ビシクロヘキサン及びその誘導体、
スピロ〔4,4〕ノナン及びその誘導体、
スピロ〔4,5〕デカン及びその誘導体など。
【0067】
このような脂環式炭化水素基のなかでも、特に好ましいものは、アダマンタン及びその誘導体を骨格とするものであり、一例を示すと、次式(III −1)で表すことができる:
【0068】
【化9】

【0069】
上式において、R及びYは、それぞれ、前記定義に同じである。
【0070】
好ましい3級アルコール構造(4):
【0071】
【化10】

【0072】
上式において、R及びYは、それぞれ、前記定義に同じである。
【0073】
BAは、ビシクロアルカン環を完成するのに必要な複数個の原子を表す。ここで、ビシクロアルカン環は、いろいろな基を包含することができるけれども、好ましくは、ビシクロヘキサン、ビシクロオクタン、ビシクロデカンなどであり、特にビシクロオクタンが好ましい。ビシクロオクタンは、次式(IV−1)で表すことができる:
【0074】
【化11】

【0075】
上式において、R及びYは、それぞれ、前記定義に同じである。
【0076】
本発明の皮膜形成性重合体において、その重合体中に上記第2のモノマー単位が占める割合は、レジスト組成物に所望とされる特性などに応じて広く変更することができるというものの、通常、当該皮膜形成性重合体の全量を基準にして0.1〜70モル%の範囲であることが好ましい。
【0077】
本発明で基材樹脂として使用される皮膜形成性重合体は、上記したように第1及び第2のモノマー単位を有している。本発明の好ましい態様に従うと、この第1又は第2のモノマー単位あるいはこれらの2つのモノマー単位は、第1のモノマー単位に含まれるべきアルカリ可溶性基に追加して、それよりも弱いアルカリ可溶性基をさらに含有することができる。このような追加のアルカリ可溶性基は、通常、モノマー単位の側鎖に結合せしめられる。適当なアルカリ可溶性基としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、例えば、ラクトン環、イミド環、酸無水物などを挙げることができる。なお、本発明の皮膜形成性重合体では、この追加のアルカリ可溶性基は、場合によって、第1、第2のモノマー単位に追加して用いられる第3、第4、…のモノマー単位に含まれていてもよい。
【0078】
以上において、本発明のネガ型レジスト組成物において基材樹脂として使用される皮膜形成性重合体の概略を説明した。ここで、本発明のさらなる理解のため、本発明のレジスト組成物における化学増幅のメカニズムを特定の皮膜形成性重合体を使用した例を参照して説明すると、次の通りである:
【0079】
ここで参照する皮膜形成性重合体は、下記の反応式に示されるように、フェノール基をアルカリ可溶性基として側鎖に含む第1のモノマー単位と、前式(III −1)に類似のアダマンチル基を3級アルコール構造として側鎖に含む第2のモノマー単位とからなる2成分共重合体である。式中、Yは前記定義に同じであり、Xは任意の置換基、例えば、水素原子、ハロゲン原子(例えば、塩素又は臭素)、低級アルキル基(例えば、メチル基又はエチル基)などである。また、m及びnは、当該共重合体に求められる所定の分子量を得るのに必要なモノマー単位(繰り返し単位)の数である。
【0080】
このような皮膜形成性重合体と光酸発生剤(PAG)とを組み合わせて含むレジスト組成物を被処理基板上に塗布し、レジスト膜をプリベークした後に結像用放射線に露光とすると、レジスト組成物中のPAGがその放射線を吸収し、分解して酸を発生する。次いで、この露光後のレジスト膜を加熱(PEB)すると、先に生じた酸が触媒的に作用して、膜の露光部において図示のような反応が発生する。すなわち、皮膜形成性重合体の第2のモノマー単位の3級アルコール構造で脱水反応が起こり、その反応の生成物の3級アルコール構造がさらに近傍のフェノール環と反応する。複数の反応が同時的に進行した結果、図示のように、フェノール環と3級アルコール構造とが反応した生成物と、フェノール環が3級アルコール構造で保護された生成物とが生成し、よって、重合体のアルカリ可溶性が変化する。
【0081】
【化12】

【0082】
この反応では、脱水反応後のカチオンは、ビニルフェノール環の水酸基、またはその環のオルト位の炭素との間で求電子置換反応を発生する。前者では、カチオンがアルカリ可溶性基と直接に反応して、アルカリ溶解性を低下させ、後者では、アダマンチル基の強い疎水性とその立体障害によって、アルカリ溶解性を低下させる。したがって、露光部ではアルカリ溶解性が著しく低下し、ネガ型パターンが与えられる。
【0083】
いま1つの例は、下記の反応式に示されるように、カルボキシル基をアルカリ可溶性基として側鎖に含む第1のモノマー単位と、前例に同じアダマンチル基を3級アルコール構造として側鎖に含む第2のモノマー単位とからなる2成分共重合体を基材樹脂として使用した例である。式中、Y、X、m及びnは、それぞれ、前記定義に同じである。この2成分共重合体を含むレジスト組成物の場合にも、前記した反応と同様、結像用放射線の照射の結果としてアルコールの脱水反応が起こり、3級アルコール構造が近傍のカルボキシル基と反応する。反応の結果、重合体のアルカリ可溶性が低下せしめられる。したがって、露光部ではアルカリ溶解性が著しく低下し、ネガ型パターンが与えられる。
【0084】
【化13】

【0085】
本発明のレジスト組成物は、基材樹脂として使用する皮膜形成性重合体中にアルコール構造を含み、その反応によってプロトン酸を再生することができる、いわゆる増幅型の組成物であるので、高感度を達成することができる。また、このレジスト組成物では、感応基が保護された後はアルカリ可溶性基が消失する(具体的には、エーテルやエステルに変化する)ので、レジスト膜の露光部はアルカリ不溶となり、したがって、塩基性水溶液で現像後、ネガ型のパターンが形成できる。さらに、本発明では重合体において生じる極性変化を用いてパターン形成を行っているので、膨潤を伴わないでパターン形成を行うことができる。
【0086】
また、本発明のレジスト組成物において基材樹脂として用いられる皮膜形成性重合体において、もしもその重合体が3成分共重合体の形態をとるような場合には、好ましくは、その第1のモノマー単位にカルボン酸やフェノールに代表される比較的強いアルカリ可溶性基を導入し、かつその第2のモノマー単位に例えばラクトン構造、酸無水物、例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、イミド環構造などを有する弱いアルカリ可溶性基を導入することができる。このような場合には、それぞれのモノマー単位に含まれる強いアルカリ可溶性基と弱いアルカリ可溶性基の含有量をコントロールすることによって、基材樹脂のアルカリ溶解速度を好ましい値に調整することが容易になる。また、第3のモノマー単位には、好ましくは、エッチング耐性を有する官能基を有するものを用いることができる。このように、それぞれのモノマー単位に導入される置換基を適切に選択し、それぞれの官能基の機能の使い分けを効果的に実施することにより、より高性能なレジストを具現することができる。
【0087】
さらに、本レジスト組成物の皮膜形成性重合体に含まれるアルコール構造は、好ましくは、3級アルコール構造である。3級アルコール構造が存在していると、脱水反応がより起こりやすくなるからである。また、本発明では、上記したようにアルコール構造を重合体のモノマー単位に導入することに加えて、上記したような反応が期待できるアルコール構造を有する化合物(本発明では、「アルコール構造含有化合物」という)を添加剤としてレジスト組成物中に含ませることも可能である。ここで、添加するアルコール構造含有化合物の構造は特に限定されないけれども、エッチング耐性の向上に寄与させることが主たる目的であることを考慮すると、多環性脂環式化合物や分子内にベンゼン環を有する化合物が好ましい。さらに、このような化合物が、酸で脱水しやすい3級アルコール構造を有していることがさらに好ましい。
【0088】
再び皮膜形成性重合体の説明に戻り、本発明の実施に好適な重合体の好ましい構造などを以下に説明する。
【0089】
本発明のレジスト組成物において基材樹脂として使用される皮膜形成性重合体は、上記したような条件、特に適切なアルカリ溶解速度を有するという条件を満たす限りにおいて、特に限定されるものではない。特にノボラックレジスト並みのドライエッチング耐性を得ることを考慮に入れた場合、有用な皮膜形成性重合体は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、多環性脂環式炭化水素系化合物をエステル基に有する(メタ)アクリレート系重合体、ビニルフェノール系重合体、ビニル安息酸系重合体、N−置換マレイミド系重合体、スチレン系重合体、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−5−エン−2−カルボン酸系重合体などを包含する。
【0090】
上記したような皮膜形成性重合体のなかで、特に(メタ)アクリレート系重合体、すなわち、アクリレート系又はメタクリレート系重合体は、露光光源として深紫外線、特に220nm以下の波長をもつ光源を使用する場合に、そのような深紫外領域の波長の光の吸収が小さい点において重要である。換言すると、深紫外線を露光光源とする場合には、一般的に、深紫外領域の光を大きく吸収する芳香族環や、共役二重結合等のモル吸光係数の大きい発色団を含まないような構造を有する共重合体を使用することが望ましい。
【0091】
特にArFエキシマレーザのような極短波長領域の露光波長を光源として使用する場合には、ドライエッチング耐性とともに当該波長(193nm)における透明性が必要になるため、上記したように、ドライエッチング耐性の高いアダマンチル基、ビシクロ〔2.2.2〕オクタン基、ノルボルニル基等に代表されるような多環性脂環式炭化水素構造を有するエステル基を有する重合体を皮膜形成性重合体として使用することが推奨される。
【0092】
上記したような皮膜形成性重合体の分子量(重量平均分子量、Mw)は、その重合体の構造に応じて広い範囲で変更することができるけれども、通常、好ましくは2,000〜1,000,000の範囲であり、さらに好ましくは3,000〜50,000の範囲である。
【0093】
上記したような皮膜形成性重合体中に含まれるべきアルコール構造を有するモノマー単位(第2のモノマー単位)は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、例えば、次のようなアルコール構造をエステル基あるいはエーテル基として有するビニルモノマーである。
【0094】
【化14】

【0095】
【化15】

【0096】
【化16】

【0097】
【化17】

【0098】
【化18】

【0099】
上式において、Y及びRx はそれぞれ前記定義に同じであり、R6〜R8は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子を表すかもしくは、ハロゲン原子、例えば塩素、臭素等、シアノ基、1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖あるいは環状のアルキル基、例えばメチル基、エチル基等、メチロール基などの任意の置換基を表し、これらの置換基は必要に応じてさらに置換されていてもよく、そしてp及びqは、それぞれ、1〜6の整数を表す。
【0100】
本発明の実施において有利に使用することのできる皮膜形成性重合体は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、好ましくは、次のような重合体を包含する。なお、下記の一般式において、X、Y及びRx は、それぞれ、前記定義に同じであり、ALCは先に定義し説明したアルコール構造を表し、そしてl、m及びnは、上記した重量平均分子量を得るのに必要なモノマー単位(繰り返し単位)の数である。
【0101】
(1)アクリレート系又はメタクリレート系重合体
【0102】
【化19】

【0103】
【化20】

【0104】
【化21】

【0105】
【化22】

【0106】
【化23】

【0107】
【化24】

【0108】
(2)ノルボルネン系重合体
【0109】
【化25】

【0110】
【化26】

【0111】
(3)ビニルフェノール系重合体
【0112】
【化27】

【0113】
(4)ビニル安息酸系重合体
【0114】
【化28】

【0115】
【化29】

【0116】
本発明の実施に当たっては、上記したような典型的な皮膜形成性重合体の他に、マレイン酸やフマル酸のハーフエステル、イタコン酸のモノエステルなども有利に使用することができる。
【0117】
本発明において基材樹脂として使用する皮膜形成性重合体は、高分子化学の分野において一般的に用いられている重合法を使用して調製することができる。例えば、(メタ)アクリレート系重合体の場合、その調製に必要とされる所定のモノマーをフリーラジカル開始剤の存在下で加熱することによって、フリーラジカル重合を経て有利に調製することができる。フリーラジカル開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル−2,2−アゾイソビスブチラート(MAIB)などを挙げることができる。また、(メタ)アクリレート系重合体以外の皮膜形成性重合体も、同様に常用の重合法に従って有利に調製することができる。
【0118】
本発明のレジスト組成物は、先にも触れたように、上記した皮膜形成性重合体に追加して、分子内にアルコール構造を有する化合物をさらに含有することが好ましい。ここで追加的に添加されるアルコール構造含有化合物のアルコール構造は、2級アルコール構造あるいは3級アルコール構造のいずれであってもよいが、3級アルコール構造であるほうが有利である。3級アルコール構造は、前記したものに同じであることができ、場合によっては別のものでもよい。また、このアルコール構造含有化合物は、少なくとも130℃の沸点を有することが好ましい。アルコール構造含有化合物の沸点が130℃を下回ると、例えば、露光に先がけて実施するプリベーク工程での加熱で化合物そのものが飛散してしまい、期待する効果を得ることができないからである。
【0119】
アルコール構造含有化合物は、好ましくは、脂環式構造あるいは多環性脂環式構造を含むことができる。また、この化合物は、皮膜形成性重合体の第2のモノマー単位のアルコール構造中に含まれる置換基Yと同様な置換基、例えば水酸基、ケトン基、アルコキシカルボニル基などを追加的に含むことが好ましい。本発明の実施において有用なアルコール構造含有化合物の例は、以下に一般式で示すものに限定されるわけではないけれども、次のような化合物を包含する。なお、下記の一般式において、Y及びRx は、それぞれ、前記定義に同じであり、そしてpは1〜6の整数である。
【0120】
【化30】

【0121】
本発明のレジスト組成物において、上記したようなアルコール構造含有化合物の占める割合は、皮膜形成性重合体中に含まれるアルカリ可溶性基の量、換言すると、当該重合体のアルカリ溶解速度に大きく依存するけれども、先に説明したような適切なアルカリ溶解速度を有する重合体に関しては、その重合体の全量を基準にして、1〜100重量%の範囲の添加量であるのが好ましく、さらに好ましくは、10〜50重量%の範囲である。
【0122】
アルコール構造含有化合物の併用に関してさらに説明すると、本発明の実施において有用な皮膜形成性重合体のなかで、(メタ)アクリレート重合体は、深紫外領域で高い透明性を有することが良く知られており、この重合体の構造と、それに併用するアルコール構造含有化合物の構造において、露光波長付近でモル吸光係数の大きな発色団を含まない構造を適宜選択すれば、適量の光酸発生剤と組み合わせて、深紫外線を用いた露光にも有利に対応できる高感度なレジスト組成物を提供することができる。
【0123】
また、本発明の化学増幅型レジストにおいて上記したような皮膜形成性重合体と組み合わせて用いられる光酸発生剤(PAG)は、レジストの化学において一般的に用いられている光酸発生剤、すなわち、紫外線、遠紫外線、真空紫外線、電子線、X線、レーザ光などの放射線の照射によりプロトン酸を生じる物質であることができる。本発明の実施において使用できる適当な光酸発生剤は、以下に列挙するものに限定されないけれども、次式により表されるようなものを包含する。
【0124】
(1)オニウム塩類、例えば:
【0125】
【化31】

【0126】
(上式において、
R1は、同一もしくは異なっていてもよく、例えば、置換もしくは非置換の芳香族基、例えばフェニル基、ハロゲン、メチル基、t−ブチル基、アリール基等で置換されたフェニル基など、又は脂環式基を表し、そして
X1は、例えば、BF4 、BF6 、PF6 、AsF6 、SbF6 、CF3 SO3 、ClO4 などを表す)。
【0127】
オニウム塩類は、単純な構造を有するにもかかわらず、特に縮合反応を誘発する効果が大きいので、これらの塩類の使用が特に望ましい。なかんずく、特に効果が大きい点で注目に値するのは、次式により表される化合物である。
【0128】
【化32】

【0129】
【化33】

【0130】
(式中のX1は、前記定義に同じである)。
【0131】
(2)スルホン酸エステル類、例えば:
【0132】
【化34】

【0133】
【化35】

【0134】
【化36】

【0135】
【化37】

【0136】
【化38】

【0137】
【化39】

【0138】
【化40】

【0139】
【化41】

【0140】
(3)ハロゲン化物類、例えば:
【0141】
【化42】

【0142】
(上式において、
X2は、ハロゲン原子、例えばCl、Br又はIを表し、同一もしくは異なっていてもよく、但し、上式中の−C (X2)3 基の1つは置換もしくは非置換のアリール基又はアルケニル基であってもよい)。
【0143】
特に、分子内にハロゲン原子を含有するトリアジン類又はイソシアヌレート類、例えば、次のような化合物を有利に使用することができる。
【0144】
【化43】

【0145】
【化44】

【0146】
【化45】

【0147】
【化46】

【0148】
【化47】

【0149】
これらの光酸発生剤の他に、必要に応じて、例えば特開平9−90637号公報及び特開平9−73173号公報に開示されているような光酸発生剤も使用することができる。
【0150】
上記したような光酸発生剤は、本発明のレジスト組成物中において、所望とする効果などに応じていろいろな量で使用することができる。本発明者らの知見によれば、光酸発生剤の使用量は、好ましくは、基材樹脂として使用する皮膜形成性重合体の全量を基準にして、0.1〜50重量%の範囲である。この光酸発生剤の量が50重量%を上回ると、過度に光が吸収されることの結果として、もはやパターニングを行うことができなくなる。光酸発生剤の使用量は、さらに好ましくは、当該重合体の全量を基準にして1〜15重量%の範囲である。
【0151】
また、本発明のレジスト組成物では、それが露光波長において特定の透過率を有すること、すなわち、レジスト組成物を石英基板に施してその基板上に膜厚1μm のレジスト皮膜を形成した時、深紫外領域の露光光源の波長(180〜300nm)における吸光度が1.75μm-1以下であることが好ましいので、そのような透過率が得られるように、皮膜形成性重合体及び光酸発生剤の構造ならびに光酸発生剤の使用量を考慮することが望ましい。当然のことながら、露光光源として電子線を使用する場合には、透明性の問題を回避することができるので、使用する光酸発生剤の使用量に特に配慮する必要はない。
【0152】
本発明のレジスト組成物は、通常、前記した皮膜形成性重合体及び光酸発生剤、そして、必要に応じて、同じく前記したアルコール構造含有化合物及びその他の任意の添加剤を適当な有機溶媒に溶解して、レジスト溶液の形で有利に使用することができる。レジスト溶液の調製に有用な有機溶媒は、例えば、乳酸エチル、メチルアミルケトン、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどであるが、これらの溶媒に限定されるものではない。これらの溶媒は、単独で使用してもよく、必要に応じて、2種類以上の溶媒を混合して使用してもよい。これらの溶媒の使用量は、特に限定されないが、スピンコート等の実施に適当な粘度及び所望のレジスト膜厚を得るのに十分な量で使用するのが好ましい。
【0153】
本発明のレジスト溶液では、必要に応じて、上記したような溶媒(本発明では、追加的に使用される溶媒と区別するため、「主溶媒」とも呼ぶ)に加えて補助溶媒を使用してもよい。補助溶媒の使用は、溶質の溶解性が良好な時や溶液を均一に塗布可能な時には必要ないが、溶解度の低い溶質を用いた場合や溶液を所望なように均一に塗布できない場合に、通常、主溶媒に対して1〜30重量%の量で添加するのが好ましく、より好ましくは10〜20重量%である。有用な補助溶媒の例は、これも以下に列挙するものに限定されないけれども、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルなどである。これらの補助溶媒も、上記した主溶媒と同様、単独で使用してもよくあるいは混合して使用してもよい。
【0154】
本発明(第2の発明)によるネガ型レジスト組成物は、上記したように、レジストパターンの形成のための反応に直接的に関与し得る成分として、
(1)アルカリ可溶性の重合体からなる基材樹脂、
(2)結像用放射線を吸収して分解し、酸を発生可能な光酸発生剤、及び
(3)前記光酸発生剤から発生せしめられた酸の存在下、前記基材樹脂の重合体と脱水結合反応を行い得る反応部位を有している脂環族系アルコール、
を組み合わせて有している。
【0155】
それぞれの反応成分は以下において詳細に説明するけれども、その前に、本発明の理解を容易にするため、本発明のレジスト組成物における酸触媒反応を説明する。
【0156】
脂環族系アルコールは、その分子内にアルコール性水酸基などの高極性基を有している。このような物質は、酸触媒の存在により、基材樹脂の極性基(フェノール性水酸基など)と反応してエステル化又はエーテル化する。ここで、基材樹脂としてポリビニルフェノールを使用し、これに脂環族系アルコールとしての1−アダマンタノールを添加した場合について考察すると、酸触媒によって、主に次のような反応が生じている。
【0157】
【化48】

【0158】
この一回の反応によって、基材樹脂のフェノール性水酸基と脂環族系アルコールのアルコール性水酸基の両方がエーテル化して極性が変化し、ともにアルカリ不溶性となる。すなわち、この反応を通じて、本発明のレジストの課題「露光前は樹脂、添加剤ともに極性が高く、露光後において樹脂、添加剤ともに低極性になること」が解決されるのである。
【0159】
また、本発明のレジスト組成物における酸触媒反応の経路は、上記した1経路のみではなく、その他の反応も付随的に発生可能である。例えば、基材樹脂のフェノール性水酸基に隣接して位置する炭素原子にアダマンタノールが付加する反応や、アダマンタノールどうしが縮合する反応などを挙げることができる。これらの付随的な反応も、水酸基がエーテルになることや、嵩張る脂環族基が水酸基に隣接することによる立体障害などに由来して、極性の低下に寄与することができる。
【0160】
本発明のレジスト組成物において、その第3の反応成分として用いられる脂環族系アルコールは、第2の反応成分としての光酸発生剤から発生せしめられた酸の存在下、第1の反応成分としての基材樹脂(アルカリ可溶性重合体)と脱水結合反応を行い得る反応部位を有しているものである。本発明で脂環族系アルコールを使用することのメリットは、以下の説明から明らかとなるように、
1)嵩張る構造のため、アルカリ可溶性重合体に付加した時の極性変化が大きいこと、
2)レジストとして使用する際、高いエッチング耐性が得られること、
が挙げられる。
【0161】
本発明の実施において、脂環族系アルコールは、その反応部位として1個のアルコール性水酸基を有していてもよく、さもなければ、2個もしくはそれ以上のアルコール性水酸基を有していてもよい。1分子中に複数個のアルコール性水酸基が含まれると、例えば、極性の変化に基づく効果にプラスして、架橋に基づく効果を期待することができる。
【0162】
また、使用する脂環族系アルコールでは、その脂環族骨格と、その脂環族骨格に結合したアルコール性水酸基との間に任意の結合基が介在せしめられていることが好ましい。適当な結合基としては、1〜6の原子を有する基、例えば直鎖もしくは分岐鎖あるいは環状の炭化水素基、例えばアルキル基などを挙げることができる。このようなアルコールは、したがって、1級アルコール、2級アルコール、立体的に固定されていないアルコールなども包含する。
【0163】
さらに、脂環族系アルコールは、いろいろな構造を有するものを単独もしくは組み合わせて使用することができる。基本的に、本発明の実施に使用する脂環族系アルコールは、嵩高の構造を有するものが好適である。具体的には、有用な脂環族系アルコールは、4個以上の炭素原子を有する単環式アルコール化合物、例えば分子内にシクロヘキサン構造を有するアルコール化合物、6個以上の炭素原子を有する多環式アルコール化合物、例えば6個以上の炭素原子を有する二環式アルコール化合物、例えば分子内にノルボルネン構造、ビシクロ〔2.2.2〕オクタン構造などを有するアルコール化合物など、あるいは例えば8個以上の炭素原子を有する三環式アルコール化合物、例えば分子内にパーヒドロアントラセン構造、パーヒドロフェナントレン構造などを有するアルコール化合物など、を包含する。なかんずく、本発明の実施において好適な脂環族系アルコールは、その分子中にアダマンタン構造を有するアルコール、特に好ましくは、1−アダマンタノール又はその誘導体である。1−アダマンタノール又はその誘導体は、商業的に容易に入手可能であるという面でも有用である。
【0164】
さらにまた、脂環族系アルコールは、少なくとも130℃の沸点を有することが好ましい。このアルコールの沸点が130℃を下回ると、例えば、露光に先がけて実施するプリベーク工程での加熱で化合物そのものが飛散してしまい、所期の効果を得ることができない可能性もでてくるからである。換言すると、レジストプロセスで適用が予定されているプリベーク工程の加熱温度を予め考慮して、それを上回る沸点を有する脂環族系アルコールを選択することが推奨される。
【0165】
以下に一般式で示すものは、本発明の実施において有利に使用することのできる脂環族系アルコールの典型例である。
【0166】
【化49】

【0167】
このような脂環族系アルコールに追加して、本発明者らの研究の結果、本発明の実施に最も好適で最も高い効果をもたし得る脂環族系アルコールは、立体化学的に固定された構造を有する3級アルコールであるということが判明した。これは、基材樹脂のフェノール性水酸基と3級アルコールとが反応することにより生成したエーテル結合が、一度結合した後に再び分解して、以下に示すようにフェノール性水酸基に戻ることが困難であるため、と考察される。
【0168】
【化50】

【0169】
ここで、エーテル結合が再び分解してフェノール性水酸基となるためには、アルキルの部分がピラミッド状態から平面状態に変化することが必要であると考えられている。1級アルコール、2級アルコールや、3級アルコールでも、tert.−ブチル基のような立体化学的にみて固定されていないものは、自由に平面状態をとることができる。このため、分解によるフェノール性水酸基の再生成が競争的に起こり、反応が思うように進まなくなると考えられる。
【0170】
これに対して、本発明で使用する1−アダマンタノールやその誘導体などは、平面状態をとりにくい構造であるが故に、引き抜きによるフェノール性水酸基の再生成のようなことは非常に起こりずらいと考えられる(下式参照)。
【0171】
【化51】

【0172】
本発明では、上記のような置換基のことを、特に「立体化学的に固定された」置換基あるいは単に「硬い(rigid)置換基」という名称で呼んでいる。
【0173】
本発明で有利に使用することのできる1−アダマンタノールのいくつかの例は、上記した通りである。これに追加して、同じく有利に使用することのできる1−アダマンタノールの誘導体の例は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、次のような化合物を包含する。
【0174】
【化52】

【0175】
また、本発明で有利に使用することのできるその他の脂環族系アルコールには、次のようなものがある。
【0176】
【化53】

【0177】
上記した脂環族系アルコールのいずれもが、平面構造をとり難い、換言すると、立体学的に固定された3級アルコールである。
【0178】
本発明のレジスト組成物において、上記したような脂環族系アルコールは、所望とする効果などに応じていろいろな量で使用することができる。脂環族系アルコールの使用量は、通常、基材樹脂として使用するアルカリ可溶性重合体の全量を基準にして2〜60重量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、15〜40重量%の範囲である。脂環族系アルコールの使用量が2重量%を下回ると、たとえ反応が生じたとしても、極性変化が小さく、ネガレジストとして必要なコントラストを得ることができない。反対に、脂環族系アルコールの使用量が60重量%を上回ると、置換基の反応完了に多くの露光量が必要となるだけであり、不経済である。加えて、それほどに多量の脂環族系アルコールを添加すると、レジスト全体の熱特性が劣化したり、レジスト塗布中に析出などのトラブルが発生する場合もあり、好ましくない。
【0179】
本発明のレジスト組成物では、第1の反応成分として基材樹脂、すなわち、アルカリ可溶性の皮膜形成性重合体が用いられる。ここで、「重合体」とは、先にも説明したように広義で用いられており、1種類のモノマーのみから形成された単独重合体(ホモポリマー)はもちろんのこと、2成分共重合体、3成分共重合体などの共重合体も包含する。必要に応じて、脂環族系アルコールと反応しないような重合体も追加の基材樹脂として使用してもよい。
【0180】
本発明の実施に使用することのできる皮膜形成性重合体は、基本的に、現像液として使用される塩基性水溶液に対して適切なアルカリ可溶性を保持でき、また、脂環族系アルコールとの脱水結合反応に関与し得る限りにおいてどのような構造を有していてもよい。特にノボラックレジスト並みのドライエッチング耐性を得ることを考慮に入れた場合、有用なアルカリ可溶性重合体は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、(メタ)アクリレート系重合体、フェノール系重合体(ビニルフェノール系重合体、ビニル安息酸系重合体なども含む)、N−置換マレイミド系重合体、スチレン系重合体、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−5−エン−2−カルボン酸系重合体などを包含する。これらの重合体は、単独で使用してもよく、さもなければ、2種類もしくはそれ以上の重合体を組み合わせて使用してもよい。本発明の実施には、入手の容易性などから、(メタ)アクリレート系重合体やフェノール系重合体を使用することが推奨される。
【0181】
また、このようなアルカリ可溶性重合体は、アルカリ可溶性を保持するため、その構造中にアルカリ可溶性基を有することが必要である。ここで導入し得るアルカリ可溶性基は、化学増幅型レジストの分野で基材樹脂としての重合体に一般的に導入されているいろいろな基を包含することができるというものの、通常、フェノール性水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、アミド基、イミド基、酸無水物基、チオール基、ラクトン酸エステル基、アザラクトン基、ヒドロキシアミド基、オキサゾン基、ピロニドン基、ヒドロキシオキシム基などが好ましく、さらに好ましくは、フェノール性水酸基、カルボン酸基、スルホン酸、アミド基、ヒドロキシアミド基、そしてイミド基である。
【0182】
さらに、このアルカリ可溶性の皮膜形成性重合体において、アルカリ可溶性基に由来するアルカリ溶解速度(ADR)は、重合体自体が適切なアルカリ溶解性を示す限りにおいて特に限定されるものではないが、2.38%水酸化テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で測定して、100〜10000Å/ secの範囲が、本発明で意図しているネガレジストとして実現可能と考えられる適切な範囲である。なお、例えば、2成分もしくはそれ以上の多成分共重合体でアルカリ可溶性基としてカルボン酸を含有する共重合体の場合、そのカルボン酸を有するモノマー単位の割合は、通常、10〜90モル%の範囲であるのが好ましく、より好ましくは、30〜70モル%の範囲である。このモノマー単位の含有率が10モル%を下回ると、アルカリ溶解性が不十分となるため、満足のいくパターニングを行うことが不可能となる。反対に、このモノマー単位の含有率が90モル%を上回ると、アルカリ溶解性が強くなりすぎるため、塩基性水溶液への溶解速度が速すぎてしまい、極性変化に依存してパターニングを行うことが不可能となる可能性が出てくる。
【0183】
また、アルカリ可溶性重合体の1つのモノマー単位がアルカリ可溶性基としてフェノール性水酸基を含有するような場合、そのモノマー単位の含有率は、好ましくは、30〜99モル%の範囲であり、さらに好ましくは、50〜95モル%の範囲である。このモノマー単位の含有率が30モル%を下回ると、アルカリ溶解性が不十分となるため、満足のいくパターニングを行うことが不可能となる。同様に、このモノマー単位の含有率が99モル%を上回っても、満足のいくパターニングを行うことが不可能となる。
【0184】
また、アルカリ可溶性重合体が3成分共重合体の形態をとるような場合には、好ましくは、その第1のモノマー単位にカルボン酸やフェノールに代表される比較的に強いアルカリ可溶性基を導入し、かつその第2のモノマー単位に例えばラクトン構造、酸無水物、例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、イミド環構造などを有する弱いアルカリ可溶性基を導入することができる。このような場合には、それぞれのモノマー単位に含まれる強いアルカリ可溶性基と弱いアルカリ可溶性基の含有量をコントロールすることによって、基材樹脂のアルカリ溶解速度を好ましい値に調整することが容易になる。また、第3のモノマー単位には、好ましくは、エッチング耐性を有する官能基を有するものを用いることができる。このように、それぞれのモノマー単位に導入される置換基を適切に選択し、それぞれの官能基の機能の使い分けを効果的に実施することにより、より高性能なレジストを具現することができる。
【0185】
上記したようなアルカリ可溶性重合体のなかで、(メタ)アクリレート系重合体、すなわち、アクリレート系又はメタクリレート系重合体(ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アクリルと他のモノマーとの共重合体など)は、露光光源として深紫外線、特に220nm以下の波長をもつ光源を使用する場合に、そのような深紫外領域の波長の光の吸収が小さい点において重要である。換言すると、深紫外線を露光光源とする場合には、一般的に、深紫外領域の光を大きく吸収する芳香族環や、共役二重結合等のモル吸光係数の大きい発色団を含まないような構造を有する共重合体を使用することが望ましい。
【0186】
特にArFエキシマレーザのような極短波長領域の露光波長を光源として使用する場合には、ドライエッチング耐性とともに当該波長(193nm)における透明性が必要になるため、ドライエッチング耐性の高いアダマンチル基、ビシクロ〔2.2.2〕オクタン基、ノルボルニル基等に代表されるような多環性脂環式炭化水素構造を有するエステル基を有する(メタ)アクリレート系重合体を使用することが推奨される。
【0187】
また、第3の反応成分としての脂環族系アルコールの併用に関して説明すると、(メタ)アクリレート系重合体は、深紫外領域で高い透明性を有することが良く知られており、この重合体の構造と、それに併用する脂環族系アルコールの構造において、露光波長付近でモル吸光係数の大きな発色団を含まない構造を適宜選択すれば、適量の光酸発生剤(第2の反応成分)と組み合わせて、深紫外線を用いた露光にも有利に対応できる高感度なレジスト組成物を提供することができる。
【0188】
フェノール系重合体としては、例えば、ポリビニルフェノール、フェノール−ノボラック共重合体、クレゾール−ノボラック共重合体などを特に有利に使用することができる。また、フェノール性水酸基を有するモノマーと他のモノマーとの共重合体も使用可能である。さらに、溶解性の調整のため、フェノール性水酸基の一部をエーテル化した樹脂も用いることができる。
【0189】
また、フェノール系重合体以外でも、基材樹脂として使用する重合体がカルボキシル基を有していれば、添加する脂環族系アルコールのアルコール性水酸基との間にエステル化反応を生じることができるので、所期の極性変化を達成することができる(次式を参照されたい)。
−COOH + HO−R → −COO−R
【0190】
上記したようなアルカリ可溶性重合体の分子量(重量平均分子量、Mw)は、その重合体の構造に応じて広い範囲で変更することができるけれども、通常、好ましくは2,000〜1,000,000の範囲であり、さらに好ましくは3,000〜50,000の範囲である。
【0191】
本発明において基材樹脂として使用するアルカリ可溶性重合体は、高分子化学の分野において一般的に用いられている重合法を使用して調製することができる。例えば、(メタ)アクリレート系重合体の場合、その調製に必要とされる所定のモノマーをフリーラジカル開始剤の存在下で加熱することによって、フリーラジカル重合を経て有利に調製することができる。フリーラジカル開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル−2,2−アゾイソビスブチラート(MAIB)などを挙げることができる。また、(メタ)アクリレート系重合体以外の皮膜形成性重合体も、同様に常用の重合法に従って有利に調製することができる。
【0192】
また、本発明のレジスト組成物において第3の反応成分として用いられる光酸発生剤(PAG)は、レジストの化学において一般的に知られかつ用いられている光酸発生剤である。本発明の実施に使用するのに適当な光酸発生剤の詳細については、特に限定されるものではないけれども、具体例を挙げた先の説明を参照されたい。
【0193】
本発明のレジスト組成物では、前記した第1の発明のレジスト組成物と同様に、そのレジスト組成物が露光波長において特定の透過率を有すること、すなわち、レジスト組成物を石英基板に施してその基板上に膜厚1μm のレジスト皮膜を形成した時、深紫外領域の露光光源の波長(180〜300nm)における吸光度が1.75μm-1もしくはそれ以下であることが好ましいので、そのような透過率が得られるように、アルカリ可溶性重合体及び光酸発生剤の構造ならびに光酸発生剤の使用量を考慮することが望ましい。当然のことながら、露光光源として電子線を使用する場合には、透明性の問題を回避することができるので、使用する光酸発生剤の使用量に特に配慮する必要はない。
【0194】
本発明のレジスト組成物は、通常、前記した3種類の反応成分、すなわち、アルカリ可溶性重合体、光酸発生剤及び脂環族系アルコールならびにその他の任意の添加剤を適当な有機溶媒に溶解して、レジスト溶液の形で有利に使用することができる。レジスト溶液の調製に有用な有機溶媒の詳細は、前記した通りである。
【0195】
本発明は、そのもう1つの面において、上記したような本発明のレジスト組成物を使用して、被処理基板上にレジストパターン、特にネガ型のレジストパターンを形成する方法も提供する。本発明によるネガ型レジストパターンの形成方法は、先にも説明したように、下記の工程:
本発明のレジスト組成物を被処理基板上に塗布し、
形成されたレジスト膜を前記レジスト組成物の光酸発生剤の分解を誘起し得る結像用放射線で選択的に露光し、そして
露光後のレジスト膜を塩基性水溶液で現像すること、
を含んでなることを特徴としている。なお、さらに説明するまでもなく、本発明方法で使用されるレジスト組成物は、先にいろいろな面から説明したように、各種のネガ型レジスト組成物を包含する。
【0196】
本発明によるレジストパターンの形成方法では、被処理基板上に形成されたレジスト膜は、それを結像用放射線に選択的に露光する前とその後、加熱処理(いわゆるベーキング)に供することが好ましい。すなわち、本発明方法では、レジスト膜をその露光前にプリベーク処理するとともに、露光の後であって現像を行う前、先に露光後ベーク(PEB)として説明したところの加熱処理を行うことができる。なお、これらの加熱処理は、常法にしたがって有利に実施することができる。
【0197】
本発明のネガ型レジストパターンの形成方法は、通常、次のようにして有利に実施することができる。
【0198】
先ず、被処理基板上に本発明のレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成する。被処理基板は、半導体装置やその他の装置の製造において通常用いられている基板であることができ、そのいくつかの例として、シリコン基板、ガラス基板、非磁性セラミックス基板、化合物半導体基板、アルミナ等の絶縁性結晶基板などを挙げることができる。また、これらの基板の上には、必要に応じて、追加の層、例えばシリコン酸化物層、配線用金属層、層間絶縁膜、磁性膜などが存在していてもよく、また、各種の配線、回路等が作り込まれていてもよい。さらに、これらの基板は、それに対するレジスト膜の密着性を高めるため、常法に従って疎水化処理されていてもよい。適当な疎水化処理剤としては、例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDS)などを挙げることができる。
【0199】
レジスト組成物は、上記したように、それをレジスト溶液として被処理基板上に塗布するのが一般的である。レジスト溶液の塗布は、スピンコート、ロールコート、ディップコートなどの常用の技法に従って行うことができるが、特にスピンコートが有用である。レジスト膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、通常、約0.1〜200μmの範囲であるのが好ましく、また、例えばKrF、ArFなどのエキシマレーザを露光光源として使用するような場合には、約0.1〜1.5μmの範囲であるのが推奨される。なお、形成されるレジスト膜の膜厚は、そのレジスト膜の使途などのファクタに応じて広く変更することができるということは言うまでもない。
【0200】
基板上に塗布したレジスト膜は、それを結像用放射線に選択的に露光する前に、約60〜180℃の温度で約30〜120秒間にわたってプリベークすることが好ましい。このプリベークは、レジストプロセスで常用の加熱手段を用いて実施することができる。適当な加熱手段として、例えば、ホットプレート、赤外線加熱オーブンなどを挙げることができる。
【0201】
次いで、プリベーク後のレジスト膜を常用の露光装置で結像用の放射線に選択的に露光する。適当な露光装置は、市販の紫外線(遠紫外線,深紫外線)露光装置、X線露光装置、電子ビーム露光装置、エキシマステッパ、その他である。露光条件は、その都度、適当な条件を選択することができる。特に、本発明では、先にも述べたように、エキシマレーザ(波長248nmのKrFレーザ及び波長193nmのArFレーザ等)を露光光源として有利に使用することができる。付言すると、本願明細書では、先にも説明したように、「放射線」なる語を用いた場合、これらのいろいろな光源からの光、すなわち、紫外線、遠紫外線、深紫外線、電子ビーム(EB)、X線、レーザ光等を意味する。この選択的露光の結果として、レジスト膜の露光領域に含まれる皮膜形成性重合体が上記したメカニズムに従って放射線を吸収し、分解されて酸を発生する。
【0202】
次いで、露光後のレジスト膜を露光後ベーク(PEB)することによって、酸を触媒としたアルカリ可溶性基の保護反応を生じさせる。この露光後ベークの条件は、所望とする保護反応が引き起こされ、十分に進行するならば、特に限定されるものではなく、例えば、先のプリベークと同様な条件の下で行うことができる。例えば、露光後ベークのベーク温度は約60〜180℃、好ましくは約100〜150℃であり、また、ベーク時間は約30〜120秒間である。このような露光後ベークの条件は、所望のパターンサイズ、形状などによって調節することが好ましい。
【0203】
露光後ベークを完了した後、露光後のレジスト膜を現像剤としての塩基性水溶液で現像する。この現像のため、スピンデベロッパ、ディップデベロッパ、スプレーデベロッパ等の常用の現像装置を使用することができる。ここで、現像液として有利に使用することのできる塩基性水溶液は、水酸化カリウム等に代表される周期律表のI族あるいはII族に属する金属の水酸化物の水溶液や、水酸化テトラアルキルアンモニウム等の金属イオンを含有しない有機塩基の水溶液である。塩基性水溶液は、より好ましくは、テトラメチルアンモニウムハイドロオキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムハイドロオキシド(TEAH)等の水溶液である。また、かかる塩基性水溶液は、その現像効果の向上のため、界面活性剤のような添加物を含有していてもよい。現像の結果として、レジスト膜の未露光領域が溶解除去せしめられて、露光領域のみがレジストパターンとして基板上に残留する。すなわち、本発明方法に従うと、ネガ型の微細なレジストパターンを得ることができる。特に重要なことには、本発明に従い得ることのできるレジストパターンは、0.15μmもしくはそれ以下の狭い線幅を有する配線パターンの形成に有利に使用することができる。
【0204】
本発明は、また、本発明のネガ型レジスト組成物を使用した電子デバイスの製造方法と、それによって製造される電子デバイスにある。ここで、電子デバイスとは、半導体装置や、磁気記録ヘッドなどを含めた広範な電子機器を意味し、特定の構造の機器に限定されるものではない。また、ここで使用するネガ型レジスト組成物は、さらに説明するまでもなく、先にいろいろな面から説明した各種のネガ型レジスト組成物(本発明による)を包含する。
【0205】
本発明の電子デバイスの製造方法は、本発明のネガ型レジスト組成物に由来するレジストパターンをマスキング手段として使用して、その下地の基板や薄膜を選択的に除去して予め定められた機能性要素層を形成する工程を含むことを特徴とする。被処理基板の選択的な除去には、好ましくは、エッチング法が用いられる。
【0206】
ここで、エッチングによって選択的に除去される下地の基板や薄膜は、先にレジストパターンの形成のところでも触れたように、総称して「被処理基板」とも呼ぶ。すなわち、被処理基板とは、半導体装置や、磁気記録ヘッド等の電子デバイスの製造においてエッチングに供されるすべての基板又は薄膜を意味する。適当な被処理基板の例は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、シリコン基板GaAs基板、等の半導体基板や、化合物半導体、アルミナ(Al23 )等の絶縁性結晶基板のほか、次のような各種の薄膜がある。
【0207】
PSG、TEOS、SiON、TiN、アモルファスカーボン、Al−Si、Al−Si−Cu、WSi等の金属シリサイド、ポリシリコン(Poly−Si)、アモルファスシリコン、SiO2 、GaAs、TiW、その他。
さらには、Cu、Co、FeMn、NiFe、LaSrMnO等を含む(巨大)磁気抵抗効果膜も被処理基板の範疇に含まれる。
【0208】
また、本発明の電子デバイスの製造方法によると、被処理基板がパターン化された層の状態で残留するが、このようなパターン化された層は、それが含まれる電子デバイスにおいて所定の作用効果を奏するので、本願明細書では特に、「機能性要素層」と呼ぶことにする。
【0209】
本発明による電子デバイスの製造方法は、好ましくは、下記の工程:
本発明のネガ型レジスト組成物を被処理基板上に塗布し、
形成されたレジスト膜を前記レジスト組成物の光酸発生剤の分解を誘起し得る結像用放射線で選択的に露光し、
露光後のレジスト膜を塩基性水溶液で現像してレジストパターンを形成し、そして
前記レジストパターンをマスキング手段として、その下地の前記被処理基板をエッチングにより選択的に除去して予め定められた機能性要素層を形成すること、
に従って実施することができる。
【0210】
レジスト膜の露光工程で使用される結像用放射線は、すでに説明したように、半導体装置等の製造においてレジストプロセスで使用されるすべての光源を意味し、具体的には、g線、i線等の水銀ランプ、KrF、ArFをはじめとするエキシマレーザ、電子線、X線などがある。
【0211】
また、本発明によると、本発明のネガ型レジスト組成物に由来するレジストパターンをマスキング手段として使用して、その下地の被処理基板を選択的に除去することによって形成された、パターン化された層(機能性要素層)が任意の位置に備わっていることを特徴とする電子デバイスも提供される。
【0212】
引き続いて、本発明の電子デバイスとその製造方法を、特に半導体装置及び磁気記録ヘッドを例にとって説明する。
【0213】
本発明による半導体装置の製造方法は、好ましくは、下記の工程:
本発明のレジスト組成物を被処理基板上に塗布し、
形成されたレジスト膜を前記レジスト組成物の光酸発生剤の分解を誘起し得る結像用放射線で選択的に露光し、
露光後のレジスト膜を塩基性水溶液で現像してレジストパターンを形成し、そして
前記レジストパターンをマスキング手段として、その下地の前記被処理基板をエッチングにより除去すること、
に従って実施することができる。
【0214】
この半導体装置の製造方法において、レジスト膜の形成工程、放射線による選択的露光工程、そしてレジストパターンの形成工程は、それぞれ、先に説明した本発明のレジストパターンの形成方法に従って有利に実施することができる。
引き続くレジストパターンのエッチング工程は、常法の技法に従ってウェットエッチングあるいはドライエッチングで実施することができ、しかし、近年における微細化のさらなる進歩や無公害化などの観点から、ドライエッチングで実施するのが有利である。ドライエッチングは、周知の通り、気相中で被処理基板をエッチングするものであり、また、適当なドライエッチングは、例えば、プラズマエッチング、例えば反応性イオンエッチング(RIE)、反応性イオンビームエッチング(RIBE)、イオンビームエッチングなどである。これらのドライエッチングは、商業的に入手可能なエッチング装置を使用して、所定の条件の下で実施することができる。
【0215】
本発明方法によって形成されるレジストパターンは、通常、上記したように下地の被処理基板を選択的にエッチング除去する際のマスキング手段として有利に利用することができるけれども、そのレジストパターンが、特性等に関する所定の要件を満たすものであるならば、半導体装置の1つの機能性要素層として、例えば絶縁膜そのものなどとして利用することもできる。
【0216】
ここで、「半導体装置」とは、それを本願明細書において用いた場合、半導体装置一般を指していて特に限定されるものではない。典型的な半導体装置は、この技術分野において一般的に認識されているように、IC、LSI、VLSI等の半導体集積回路一般あるいはその他の関連のデバイスである。
【0217】
さらに具体的に説明すると、半導体装置の典型例であるMOSトランジスタは、本発明に従うと、例えば、次のようにして製造することができる。
【0218】
先ず、シリコン基板の上に、トランジスタの構成に必要なゲート酸化膜、ポリシリコン膜、そしてWSi膜を順次薄膜で成膜する。これらの薄膜の形成には、熱酸化、化学蒸着法(CVD法)などの常用の薄膜形成法を使用することができる。
【0219】
次いで、WSi膜の上に本発明のレジスト組成物を塗布して所定の膜厚を有するレジスト膜を形成する。このレジスト膜に、そのパターニングに適した放射線を選択的に露光し、さらに、露光部を溶解除去するため、塩基性水溶液で現像する。さらに詳しくは、これまでの一連の工程は、レジストパターンの形成に関して先に説明したようにして実施することができる。
【0220】
ゲート電極構造を形成するため、上記のようにして形成したレジストパターンをマスクとして、その下地のWSi膜とさらにその下のポリシリコン膜を同時にドライエッチングする。そして、ポリシリコン膜及びWSi膜からなるゲート電極をこのようにして形成した後、イオン注入によりリンを注入してLDD構造のN- 拡散層を形成する。
【0221】
引き続いて、先の工程で使用したレジストパターンをゲート電極から剥離除去した後、CVD法により、基板の表面に酸化膜を全面的に形成し、さらに、形成されたCVD酸化膜を異方性エッチングし、ポリシリコン膜及びWSi膜からなるゲート電極の側壁部にサイドウォールを形成する。さらに続けて、WSi膜とサイドウォールをマスクとしてイオン注入を行ってN+ 拡散層を形成し、そしてゲート電極を熱酸化膜で被覆する。
【0222】
最後に、基板の最上層に層間絶縁膜をCVD法により全面的に形成し、本発明のレジスト組成物を再度塗布して選択的にエッチングし、配線形成部にホールパターン(レジストパターン)を形成する。さらに、このレジストパターンをマスクとして下地の層間絶縁膜をエッチングし、コンタクトホールを開孔する。次いで、形成されたコンタクトホールにアルミニウム(Al)配線を埋め込む。このようにして、Nチャネルの微細なMOSトランジスタが完成する。
【0223】
本発明は、上記したような半導体装置に追加して、磁気記録ヘッドも電子デバイスの1形態として包含する。すなわち、本発明のネガ型レジスト組成物を使用してレジストプロセスを実施することによって、高性能で薄膜の磁気記録ヘッドを提供することができる。磁気記録ヘッドは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置等の磁気記録再生装置において有利に使用することができる。
【0224】
本発明による磁気記録ヘッドの製造方法は、好ましくは、下記の工程:
本発明のレジスト組成物を被処理基板上に塗布し、
形成されたレジスト膜を前記レジスト組成物の光酸発生剤の分解を誘起し得る結像用放射線で選択的に露光し、
露光後のレジスト膜を塩基性水溶液で現像してレジストパターンを形成し、そして
前記レジストパターンをマスキング手段として、その下地の前記被処理基板をエッチングにより除去して機能性要素層を形成すること、
に従って実施することができる。
【0225】
磁気記録ヘッドについて説明すると、近年の磁気ディスク装置等の磁気記録再生装置の小型化、高記録密度化の進行に伴い、そのような装置の再生用ヘッドとして、磁気記録媒体からの信号磁界の変化を電気抵抗率の変化に変換可能な磁気抵抗効果を利用したヘッド(いわゆるMRヘッド)が広く用いられている。また、MRヘッドのなかでも、磁気記録媒体の移動速度に依存せず、高い出力が得られるGMRヘッドが注目されている。特に、スピンバルブ磁気抵抗効果を利用したスピンバルブヘッドは、比較的に容易に作製することができ、しかも低磁場での電気抵抗の変化率が他のMRヘッドに比較して大きいので、すでに実用化されている。本発明のネガ型レジスト組成物は、これらの各種の薄膜磁気ヘッドの製造において、ヘッドを構成する機能性要素を薄膜で微細にパターニングするのに有利に使用することができる。
【0226】
また、スピンバルブヘッドは、通常、周知のように、磁気抵抗効果膜(スピンバルブ膜)と、スピンバルブ膜に電気的に接合されたものであって、信号検知領域を画定しかつこの信号検知領域に信号検知電流を流す一対の電極と、スピンバルブ膜に対して縦バイアス磁界を印加する一対の縦バイアス磁界印加層とを備えている。縦バイアス磁界印加層は、通常、CoPt、CoPtCr等の硬磁性薄膜から形成されている。このように、硬磁性薄膜からなる縦バイアス磁界印加層をスピンバルブヘッドの感磁部(信号検知領域)以外の部分に、それがスピンバルブ膜の両側あるいは上側に位置するように配置することによって、スピンバルブ膜のフリー磁性層の磁壁移動に起因するバルクハウゼンノイズを抑制することができ、よって、ノイズのない安定した再生波形を得ることができる。
【0227】
さらに、スピンバルブ膜は、通常、下地層の上に、順次、フリー磁性層、非磁性中間層、ピンド磁性層、そして規則系反強磁性層を積層した構成で有している。このような層構成を採用することによって、非磁性中間層を介して積層された2つの磁性層(フリー磁性層及びピンド磁性層)の磁化方向のなす角度を調節することによって、電気抵抗を所望なように変化させることができる。
【0228】
さらに具体的に説明すると、スピンバルブ膜は、通常、アルチック基板、すなわち、TiC基体の表面にアルミナ膜が形成されてなる基板の上に形成される。最下層の下地層には、Ta膜などが使用される。Ta膜は、フリー磁性層に良好な結晶性を付与できるという効果があるからである。Ta膜やその他の下地層は、通常、スパッタリング法、蒸着法、化学的気相堆積法(CVD法)などの常用の成膜法を使用して形成することができる。
【0229】
フリー磁性層は、任意の軟磁性の材料から形成することができる。例えば、フリー磁性層の形成に一般的に使用されているCoFe合金を使用してもよい。また、これに限定されるわけではないけれども、好ましくは面心立方格子構造をそなえた(Coy Fe100-y100-xx 合金(式中、Zは、Co及びFe以外の任意の元素を表し、好ましくは、硼素B又は炭素Cであり、x及びyはそれぞれ原子分率at%を表す)からフリー磁性層を形成するのが好適である。高出力、高磁界感度、耐熱性のヘッドを提供できるからである。フリー磁性層は、単層で形成するよりも、2層構造で形成するほうが、得られる特性などの面から好ましい。フリー磁性層も、通常、スパッタリング法などの常用の成膜法を使用して形成することができる。
【0230】
スピンバルブ膜では、フリー磁性層と後述のピンド磁性層とで非磁性の中間層をサンドイッチした構成を採用するのが好ましい。非磁性の中間層としては、通常、非磁性の金属材料、例えば、銅(Cu)などが用いられる。Cu中間層も、スパッタリング法などの常用の成膜法を使用して形成することができる。
【0231】
ピンド磁性層は、フリー磁性層の場合と同様に、任意の軟磁性の材料から形成することができる。すなわち、ピンド磁性層の形成にCoFe合金を使用してもよく、しかし、好ましくは面心立方格子構造をそなえた(Coy Fe100-y100-xx 合金(式中、Zは、Co及びFe以外の任意の元素を表し、好ましくは、硼素B又は炭素Cであり、x及びyはそれぞれ原子分率at%を表す)からピンド磁性層を形成するのが好適である。高出力、高磁界感度、耐熱性のヘッドを提供できるからである。ピンド磁性層も、通常、スパッタリング法などの常用の成膜法を使用して形成することができる。
【0232】
ピンド磁性層の上には、規則系反強磁性層が形成される。この反強磁性層は、通常、FeMn膜、NiMn膜、PtMn膜、PdMn膜、PdPtMn膜、CrMn膜、IrMn膜などから形成することができる。この反強磁性層も、上述の層と同様に、通常、スパッタリング法などの常用の成膜法を使用して形成することができる。
【0233】
また、スピンバルブ膜は、通常、その最上層にキャップ層を有する。キャップ層は、例えば、Ta膜から形成することができる。キャップ層も、上記した各層と同様に、常用の成膜法を使用して形成することができる。
【0234】
スピンバルブヘッドは、いろいろな常用の技法に従って製造することができる。本発明では特に、そのヘッドの製造の途中の任意の段階で、本発明のネガ型レジスト組成物を使用したレジストプロセスを組み込み、上記したような機能性要素層を所望のパターンで正確にかつ微細に形成することができる。以下に、スピンバルブヘッドの製造方法の一例を示す。
【0235】
まず、アルチック基板の上にTaをスパッタリング法で堆積してTa下地層を形成する。次いで、Ta下地層上の、信号検知領域の感磁部以外の部分に、Au等からなる電極を介して、下記の層をリフトオフ法、イオンミリング法等の技法を使用して順次形成する。
【0236】
下地層(Ta/NiFe系合金の膜、NiFe系合金:NiFe、NiFeCr、NiFeNb、NiFeMo等)、
縦バイアス磁界印加層(PtMn、PdPtMn、NiMn、CrMn、CrPtMn等の反強磁性材料の膜)、
下地層(NiFe系合金の膜)。
【0237】
次いで、スパッタエッチング法、イオンミリング法等の技法を使用して、表面に存在する汚染物質(いわゆるコンタミ層)が完全に除去される程度にTa系下地層及びNiFe系下地層の最表面をクリーニングする。
【0238】
クリーニング工程の完了後、フリー磁性層、非磁性中間層、ピンド磁性層、そして規則系反強磁性層を順次成膜してスピンバルブ膜を完成する。それぞれの層の成膜は、スパッタリング法、蒸着法、CVD法などで行う。
【0239】
また、所望とするパターンでスピンバルブ膜を得るため、縦バイアス磁界印加層の上の全体にスピンバルブ膜を形成した後、本発明のネガ型レジスト組成物を使用して予め定められたパターンでレジスト膜を形成し、イオンミリング法等により所望とする以外の領域のスピンバルブ膜を除去する。
【0240】
スピンバルブ膜の形成後、そのスピンバルブ膜の上の、信号検知領域の感磁部以外の部分に電極を一対となるように形成する。電極は、好ましくは、Au膜をリフトオフすることによって形成することができる。また、電極材料はAuに限られるものではなく、その他の常用の電極材料を必要に応じて使用してもよい。
【実施例】
【0241】
次いで、本発明をレジスト組成物の調製、レジストパターンの形成、そして半導体装置、薄膜磁気記録ヘッド等の電子デバイスの製造に関する実施例を参照して説明する。なお、下記の実施例によって本発明の範囲が限定されるものではないことを理解されたい。
【0242】
例1
3−ヒドロキシ−アダマンチルメタクリレート/γ−ブチロラクトン−2−イルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(組成比6:1:3)をプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解して15重量%溶液とした。なお、この共重合体溶液には、補助溶媒として、9重量%のγ−ブチロラクトンも含ませた。得られた溶液に、共重合体に対して2重量%の量のトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネートを加えて十分に溶解させた。得られたレジスト溶液を0.2μm のテフロン(登録商標)メンブランフィルタで濾過した後、HMDS処理を施したシリコン基板上に2000rpm でスピンコートし、110℃で60秒間プリベークした。膜厚0.5μmのレジスト皮膜が得られた。このレジスト皮膜をKrFエキシマレーザステッパ(NA=0.45)で露光した後、120℃で60秒間にわたって露光後ベーク(PEB)し、そして2.38%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキシド(TMAH)水溶液で現像し、脱イオン水で60秒間リンスした。得られたネガ型レジストパターンの解像度を測定したところ、14.0mJ/cm2 の露光量で、0.25μmライン・アンド・スペース(L/S)パターンが解像できたことが確認された。また、このレジストパターンには、少しの膨潤も認められなかった。
【0243】
次いで、このレジストのドライエッチング耐性を評価するため、上記と同様にして膜厚1μmでレジストを塗布したシリコン基板を平行平板型RIE装置に収容し、Pμ=200W、圧力=0.02Torr、CF4 ガス=100sccmの条件下で5分間にわたってCF4 スパッタエッチングを行った。下記の表に示すように、エッチングレートは689Å/分であることが確認された。
【0244】
比較のため、市販のノボラックレジストである長瀬ポジティブレジストNPR−820(長瀬産業社製)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)について上記と同様にしてドライエッチング耐性の評価を行ったところ、次のような結果が得られた。
【0245】
供試レジスト エッチングレート(Å/分) レート比
NPR−820 530 1.00
PMMA 805 1.52
例1 689 1.30
【0246】
上記した結果から理解されるように、本発明によるレジスト組成物のドライエッチング耐性はノボラックレジストのそれに近いものであり、PMMAよりは格段に優れている。
【0247】
例2
前記例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、露光装置として、KrFエキシマレーザステッパに代えてArFエキシマレーザ露光装置(NA=0.55)を使用した。本例の場合、6.2mJ/cm2 の露光量で、0.20μmL/Sパターンが解像できた。得られたネガ型レジストパターンのその他の特性も、前記例1の特性に比較可能な満足し得るものであった。
【0248】
例3
前記例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、露光装置として、KrFエキシマレーザステッパに代えて電子ビーム露光装置(出力50kV)を使用した。本例の場合、10μC/cm2 の露光量で、0.15μmL/Sパターンが解像できた。得られたネガ型レジストパターンのその他の特性も、前記例1の特性に比較可能な満足し得るものであった。
【0249】
例4
3−ヒドロキシ−アダマンチルメタクリレート/γ−ブチロラクトン−2−イルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(組成比6:1:3)をPGMEAに溶解して15重量%溶液とした。なお、この共重合体溶液には、共重合体に対して20重量%の1−アダマンタノール(アルコール構造含有化合物として)及び10重量%のγ−ブチロラクトン(補助溶媒として)も含ませた。得られた溶液に、共重合体に対して2重量%の量のジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネートを加えて十分に溶解させた。得られたレジスト溶液を0.2μm のテフロン(登録商標)メンブランフィルタで濾過した後、HMDS処理を施したシリコン基板上に2000rpm でスピンコートし、110℃で60秒間プリベークした。膜厚0.5μmのレジスト皮膜が得られた。このレジスト皮膜をArFエキシマレーザ露光装置(NA=0.55)で露光した後、130℃で60秒間にわたって露光後ベーク(PEB)し、そして2.38%のTMAH水溶液で現像し、脱イオン水で60秒間リンスした。得られたネガ型レジストパターンの解像度を測定したところ、3.4mJ/cm2 の露光量で、0.18μmL/Sパターンが解像できたことが確認された。また、このレジストパターンには、少しの膨潤も認められなかった。
【0250】
次いで、このレジストのドライエッチング耐性を前記例1に記載の手法に従って評価したところ、下記の表に示すように、エッチングレートは678Å/分であることが確認された。なお、下記の表には、長瀬ポジティブレジストNPR−820及びPMMAのエッチングレートも併記する。
【0251】
供試レジスト エッチングレート(Å/分) レート比
NPR−820 530 1.00
PMMA 805 1.52
例4 678 1.28
【0252】
上記した結果から理解されるように、本発明によるレジスト組成物のドライエッチング耐性はノボラックレジストのそれに近いものであり、PMMAよりは格段に優れている。
【0253】
例5
3−ヒドロキシ−アダマンチルメタクリレート/γ−ブチロラクトン−2−イルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(組成比6:1:3)をPGMEAに溶解して15重量%溶液とした。なお、この共重合体溶液には、共重合体に対して20重量%の3−ヒドロキシビシクロ〔2.2.2〕オクタン(アルコール構造含有化合物として)及び10重量%のγ−ブチロラクトン(補助溶媒として)も含ませた。得られた溶液に、共重合体に対して2重量%の量のジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネートを加えて十分に溶解させた。得られたレジスト溶液を0.2μm のテフロン(登録商標)メンブランフィルタで濾過した後、HMDS処理を施したシリコン基板上に2000rpm でスピンコートし、110℃で60秒間プリベークした。膜厚0.5μmのレジスト皮膜が得られた。このレジスト皮膜をArFエキシマレーザ露光装置(NA=0.55)で露光した後、120℃で60秒間にわたって露光後ベーク(PEB)し、そして2.38%のTMAH水溶液で現像し、脱イオン水で60秒間リンスした。得られたネガ型レジストパターンの解像度を測定したところ、4.0mJ/cm2 の露光量で、0.18μmL/Sパターンが解像できたことが確認された。また、このレジストパターンには、少しの膨潤も認められなかった。
【0254】
例6
前記例5に記載の手法を繰り返したが、本例では、露光装置として、ArFエキシマ露光装置に代えて電子ビーム露光装置(出力50kV)を使用した。本例の場合、8μC/cm2 の露光量で、0.15μmL/Sパターンが解像できた。また、このレジストパターンでも、少しの膨潤も認められなかった。
【0255】
例7
3−ヒドロキシ−アダマンチルメタクリレート/γ−ブチロラクトン−2−イルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(組成比6:1:3)をPGMEAに溶解して15重量%溶液とした。なお、この共重合体溶液には、共重合体に対して15重量%の2,6−ジメチル−2−ヘプタノール(アルコール構造含有化合物として)及び10重量%のγ−ブチロラクトン(補助溶媒として)も含ませた。得られた溶液に、共重合体に対して2重量%の量のジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネートを加えて十分に溶解させた。得られたレジスト溶液を0.2μm のテフロン(登録商標)メンブランフィルタで濾過した後、HMDS処理を施したシリコン基板上に2000rpm でスピンコートし、110℃で60秒間プリベークした。膜厚0.5μmのレジスト皮膜が得られた。このレジスト皮膜をArFエキシマレーザ露光装置(NA=0.55)で露光した後、110℃で60秒間にわたって露光後ベーク(PEB)し、そして2.38%のTMAH水溶液で現像し、脱イオン水で60秒間リンスした。得られたネガ型レジストパターンの解像度を測定したところ、5.2mJ/cm2 の露光量で、0.20μmL/Sパターンが解像できたことが確認された。また、このレジストパターンには、少しの膨潤も認められなかった。
【0256】
例8
3−ヒドロキシ−アダマンチルメタクリレートと4−アセトキシスチレンを仕込み比1:9で仕込んで重合させた後、これをさらにアルカリ溶液で処理し、アセチル基を加溶媒分解した。得られた3−ヒドロキシ−アダマンチルメタクリレート/ビニルフェノール共重合体(組成比1:9)をPGMEAに溶解して15重量%溶液とした。得られた溶液に、共重合体に対して5重量%の量のトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネートを加えて十分に溶解させた。得られたレジスト溶液を0.2μm のテフロン(登録商標)メンブランフィルタで濾過した後、HMDS処理を施したシリコン基板上に2000rpm でスピンコートし、110℃で60秒間プリベークした。膜厚0.5μmのレジスト皮膜が得られた。このレジスト皮膜をKrFエキシマレーザステッパ(NA=0.45)で露光した後、120℃で60秒間にわたって露光後ベーク(PEB)し、そして2.38%のTMAH水溶液で現像し、脱イオン水で60秒間リンスした。得られたネガ型レジストパターンの解像度を測定したところ、6.8mJ/cm2 の露光量で、0.25μmL/Sパターンが解像できたことが確認された。また、このレジストパターンには、少しの膨潤も認められなかった。
【0257】
次いで、このレジストのドライエッチング耐性を前記例1に記載の手法に従って評価したところ、下記の表に示すように、エッチングレートは620Å/分であることが確認された。なお、下記の表には、長瀬ポジティブレジストNPR−820及びPMMAのエッチングレートも併記する。
【0258】
供試レジスト エッチングレート(Å/分) レート比
NPR−820 530 1.00
PMMA 805 1.52
例8 541 1.02
【0259】
上記した結果から理解されるように、本発明によるレジスト組成物のドライエッチング耐性はノボラックレジストのそれに非常に近いものであり、PMMAよりは格段に優れている。
【0260】
例9
前記例8に記載の手法を繰り返したが、本例では、露光装置として、KrFエキシマレーザステッパに代えて電子ビーム露光装置(出力50kV)を使用した。本例の場合、8μC/cm2 の露光量で、0.12μmL/Sパターンが解像できた。得られたネガ型レジストパターンのその他の特性も、前記例8の特性に比較可能な満足し得るものであった。
【0261】
例10
3−ヒドロキシ−アダマンチルメタクリレート/ビニルフェノール共重合体(組成比1:9)をPGMEAに溶解して15重量%溶液とした。なお、この共重合体溶液には、共重合体に対して20重量%の1−アダマンタノール(アルコール構造含有化合物として)も含ませた。得られた溶液に、共重合体に対して5重量%の量のトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネートを加えて十分に溶解させた。得られたレジスト溶液を0.2μm のテフロン(登録商標)メンブランフィルタで濾過した後、HMDS処理を施したシリコン基板上に2000rpm でスピンコートし、110℃で60秒間プリベークした。膜厚0.5μmのレジスト皮膜が得られた。このレジスト皮膜をKrFエキシマレーザステッパ(NA=0.45)で露光した後、110℃で60秒間にわたって露光後ベーク(PEB)し、そして2.38%のTMAH水溶液で現像し、脱イオン水で60秒間リンスした。得られたネガ型レジストパターンの解像度を測定したところ、6.4mJ/cm2 の露光量で、0.25μmL/Sパターンが解像できたことが確認された。また、このレジストパターンには、少しの膨潤も認められなかった。
【0262】
次いで、このレジストのドライエッチング耐性を前記例1に記載の手法に従って評価したところ、下記の表に示すように、エッチングレートは599Å/分であることが確認された。なお、下記の表には、長瀬ポジティブレジストNPR−820及びPMMAのエッチングレートも併記する。
【0263】
供試レジスト エッチングレート(Å/分) レート比
NPR−820 530 1.00
PMMA 805 1.52
例10 519 0.98
【0264】
上記した結果から理解されるように、本発明によるレジスト組成物のドライエッチング耐性はノボラックレジストのそれに比較可能なものであり、PMMAよりは格段に優れている。
【0265】
例11
前記例8に記載の手法を繰り返したが、本例では、共重合体溶液を調製するに際して、共重合体に対して20重量%の3−ヒドロキシビシクロ〔2.2.2〕オクタン(アルコール構造含有化合物として)も含ませた。KrFエキシマレーザステッパを使用した露光の後、110℃で60秒間にわたって露光後ベーク(PEB)を行った。得られたネガ型レジストパターンの解像度を測定したところ、7.2mJ/cm2 の露光量で、0.25μmL/Sパターンが解像できたことが確認された。得られたネガ型レジストパターンのその他の特性も、前記例8の特性に比較可能な満足し得るものであった。
【0266】
例12
前記例10に記載の手法を繰り返したが、本例では、露光装置として、KrFエキシマレーザステッパに代えて電子ビーム露光装置(出力50kV)を使用し、また、120℃で60秒間にわたって露光後ベーク(PEB)を行った。本例の場合、7μC/cm2 の露光量で、0.11μmL/Sパターンが解像できた。得られたネガ型レジストパターンのその他の特性も、前記例10の特性に比較可能な満足し得るものであった。
【0267】
例13
前記例11に記載の手法を繰り返したが、本例では、露光装置として、KrFエキシマレーザステッパに代えて電子ビーム露光装置(出力50kV)を使用し、また、120℃で60秒間にわたって露光後ベーク(PEB)を行った。本例の場合、8μC/cm2 の露光量で、0.12μmL/Sパターンが解像できた。得られたネガ型レジストパターンのその他の特性も、前記例11の特性に比較可能な満足し得るものであった。
【0268】
例14
安息香酸ビニル/3−ヒドロキシ−アダマンチルメタクリレート共重合体(組成比3:7)をPGMEAに溶解して15重量%溶液とした。なお、この共重合体溶液には、共重合体に対して20重量%の1−アダマンタノール(アルコール構造含有化合物として)及び10重量%のγ−ブチロラクトン(補助溶媒として)も含ませた。得られた溶液に、共重合体に対して2重量%の量のトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネートを加えて十分に溶解させた。得られたレジスト溶液を0.2μm のテフロン(登録商標)メンブランフィルタで濾過した後、HMDS処理を施したシリコン基板上に2000rpm でスピンコートし、110℃で60秒間プリベークした。膜厚0.5μmのレジスト皮膜が得られた。このレジスト皮膜をKrFエキシマレーザステッパ(NA=0.45)で露光した後、130℃で60秒間にわたって露光後ベーク(PEB)し、そして2.38%のTMAH水溶液で現像し、脱イオン水で60秒間リンスした。得られたネガ型レジストパターンの解像度を測定したところ、17.5mJ/cm2 の露光量で、0.28μmL/Sパターンが解像できたことが確認された。また、このレジストパターンには、少しの膨潤も認められなかった。
【0269】
例15
前記例14に記載の手法を繰り返したが、本例では、露光装置として、KrFエキシマレーザステッパに代えて電子ビーム露光装置(出力50kV)を使用し、また、120℃で60秒間にわたって露光後ベーク(PEB)を行った。本例の場合、10μC/cm2 の露光量で、0.12μmL/Sパターンが解像できた。また、このレジストパターンでも、少しの膨潤も認められなかった。
【0270】
例16
下記の物質をレジスト成分として用意した。
【0271】
基材樹脂1
ポリビニルフェノール(重量平均分子量12,000、分散度2.0)
添加剤1(脂環族系アルコールとして)
1−アダマンタノール
【0272】
【化54】

【0273】
PAG1(光酸発生剤として)
トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート
【0274】
【化55】

【0275】
基材樹脂1、添加剤1及びPAG1を重量比10:2:1で乳酸エチルに溶解することによってレジスト溶液を調製した。得られたレジスト溶液を0.2μm のテフロン(登録商標)メンブランフィルタで濾過した後、HMDS処理を施したシリコン基板上に2000rpm でスピンコートし、110℃で2分間プリベークした。膜厚0.8μmのレジスト皮膜が得られた。このレジスト皮膜を下記の3種類の露光装置:
i線露光装置(波長365nm)
KrFエキシマレーザステッパ(NA=0.45、波長248nm)
電子線露光装置(出力50kV)
でパターン露光した。露光パターンは、i線が0.4μmライン・アンド・スペース(L/S)、KrFレーザが0.25μmL/S、そして電子線が0.25L/Sであった。引き続いて、120℃で2分間にわたって露光後ベーク(PEB)した後、2.38%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、脱イオン水で60秒間リンスした。得られたネガ型レジストパターンの解像性を評価したところ、次のような結果が得られた。
【0276】
i線: 露光量=22mJ/cm2 、解像性=◎
KrFレーザ: 露光量=16mJ/cm2 、解像性=◎
電子線: 露光量=7μC/cm2 、解像性=◎
なお、解像性の評価に当たっては、次のような基準に従って4段階で評価した。
【0277】
◎: 断面形状が矩形。パターントップの寸法とパターンボトムの寸法の差が露光パタ ーンの寸法の1%未満。
○: 断面形状がほぼ矩形。パターントップの寸法とパターンボトムの寸法の差が露光 パターンの寸法の1〜5%以内。
△: 断面形状がややテーパ状。パターントップの寸法とパターンボトムの寸法の差が 露光パターンの寸法の5%よりも大きく、10%以内。
×: 断面形状がテーパ状。パターントップの寸法とパターンボトムの寸法の差が露光 パターンの寸法の10%よりも大きい。
上記の評価結果は、他のレジスト組成物との比較のため、下記の第1表にも記載する。
【0278】
次いで、このレジストのドライエッチング耐性を評価するため、上記と同様にして膜厚1μmでレジストを塗布したシリコン基板を平行平板型RIE装置に収容し、Pμ=200W、圧力=0.02Torr、CF4 ガス=100sccmの条件下で5分間にわたってCF4 スパッタエッチングを行った。エッチングレートは689Å/分であり、ドライエッチング耐性にも優れていることが確認された。
【0279】
例17〜例39
前記例16に記載の手法を繰り返したが、本例では、下記の第1表に記載するように、基材樹脂、添加剤(脂環族系アルコール)及びPAG(光酸発生剤)を変更した。本例で使用した成分は、それぞれ、次の通りである。
【0280】
基材樹脂2
メタクリレート/メチルメタクリレート共重合体(共重合比35:65、
重量平均分子量10,000、分散度2.3)
添加剤2(脂環族系アルコールとして)
【0281】
【化56】

【0282】
添加剤3(脂環族系アルコールとして)
【0283】
【化57】

【0284】
添加剤4(脂環族系アルコールとして)
【0285】
【化58】

【0286】
PAG2(光酸発生剤として)
【0287】
【化59】

【0288】
PAG3(光酸発生剤として)
【0289】
【化60】

【0290】
下記の第1表は、それぞれの例におけるレジストの組成と評価結果をまとめたものである。
【0291】
比較例1〜比較例4
前記例16に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、下記の第1表に記載するように、市販の3種類のネガ型メラミン系レジスト(組成の詳細は不明)及び比較用に調製したピナコール系レジストを使用した。ピナコール系レジストで使用したピナコールは、次式のものである。
【0292】
【化61】

【0293】
下記の第1表は、それぞれの比較例におけるレジストの組成と評価結果をまとめたものである。
【0294】
【表1】

【0295】
上記第1表に記載の結果から、本発明例のレジスト組成物の場合、従来品(比較例のレジスト)に比較して高感度であるうえに、解像性も非常に良好である。これは、極性変化が大きいことにより、露光部のレジストが容易にネガ化し、溶解速度差が大きくなったためであると考察される。
【0296】
例40
MOSトランジスタの製造
図1の工程(1A)に示すように、シリコン基板1の表面にゲート酸化膜2を形成し、その上にポリシリコン膜(Poly−Si膜)3をCVD法によって形成した。Poly−Si膜3の形成後、リンなどのn型の不純物を注入し、低抵抗化した。その後、スパッタリング法(CVD法などでもよい)で、WSi膜4を形成した。
【0297】
次いで、工程(1B)に示すようにPoly−Si膜3及びWSi膜4をパターニングするため、先の工程で形成したWSi膜4の上に本発明のネガ型レジスト組成物を全面的に塗布した。レジスト膜5をプリベークした後、KrFエキシマ露光装置で露光を行い、さらに露光後ベーク(PEB)を行った。アルカリ現像により、0.25μm 幅のレジストパターンが得られた。このレジストパターンをマスクとして異方性エッチングで、WSi膜4及びPoly−Si膜3を順次エッチングした。Poly−Si膜3及びWSi膜4からなるゲート電極が得られた。その後、イオン注入によりリンを注入して、LDD構造のN- 拡散層6を形成した。工程(1B)に示すパターンが得られた後、レジスト膜5を剥離液で除去した。
【0298】
ゲート電極の形成に続けて、 工程(1C)に示すように、酸化膜7をCVD法によって全面に形成した。
【0299】
次いで、図2の工程(1D)に示すように、酸化膜7を異方性エッチングし、WSi膜4及びPoly−Si膜3からなるゲート電極側サイドウォール8を形成した。次に、WSi膜4及びサイドウォール8をマスクとしてイオン注入を行い、N+ 拡散層9を形成した。
【0300】
その後、N+ 拡散層9を活性化するため、窒素雰囲気中で熱処理を行い、さらに酸素雰囲気中で加熱した。工程(1E)に示すように、ゲート電極が熱酸化膜10で覆われた。
【0301】
引き続いて、工程(1F)に示すように、層間絶縁膜11をCVD法によって形成し、再び本発明のネガ型レジスト組成物を使用して層間絶縁膜11をパターニングした。層間絶縁膜11の上に本発明のレジスト組成物を全面的に塗布した後、レジスト膜(図示せず)をプリベークし、ArFエキシマ露光装置で露光を行い、さらに露光後ベーク(PEB)を行った。アルカリ現像により、0.20μm 幅のホール状レジストパターンが得られた。このレジストパターンをマスクとして異方性エッチングで、層間絶縁膜11にコンタクトホールを開孔した。コンタクトホールにアルミニウム(Al)配線12を形成した。図示のような、Nチャネルの微細MOSトランジスタ20が完成した。
【0302】
例41
薄膜磁気ヘッドの製造
図3の工程(2A)に示すように、アルチック基板21の上に、FeNからなるシールド膜22、シリコン酸化膜からなるギャップ絶縁膜23を順次積層し、その上に膜厚400nmの磁気抵抗効果膜24をFeNiからスパッタリング法で形成した。磁気抵抗効果膜24の上に汎用のPMGIレジスト(米国Microlithography Chemical Co.製)を塗布して下層レジスト膜25を形成した後、その上にさらに本発明のネガ型レジスト組成物を塗布した。上層レジスト膜26が形成された。
【0303】
上記のようにして上層及び下層の2層構造のレジスト膜を形成した後、上層レジスト膜26をプリベークし、KrFエキシマ露光装置で露光を行い、さらに露光後ベーク(PEB)を行った。アルカリ現像により、0.25μm 幅のレジストパターンが得られた。また、このアルカリ現像と同時に、下地として存在する下層レジスト膜25が等方的に現像され、工程(2B)に示すように、アンダーカット形状が完成した。
【0304】
次に、工程(2C)に示すように、得られたレジストパターンをマスクとしたイオンミリングにより、下地の磁気抵抗効果膜24をテーパー状にエッチングした。
【0305】
次に、図4の工程(2D)に示すように、被処理面の全面にTiW膜27をスパッタリング法で形成した。TiW膜27の膜厚は、800nmであった。
【0306】
TiW膜27の形成が完了した後、リフトオフ法を行い、下層レジスト膜25と、その上の上層レジスト膜26及びTiW膜27を除去した。工程(2E)に示すように、TiW膜27が露出した状態となった。
【0307】
その後、図示しないが、本発明のネガ型レジスト組成物を使用して上記と同様な手法に従って磁気抵抗効果膜24及びTiW膜27をパターニングした。工程(2F)に示すように、電極28及びMR素子29が完成した。
【0308】
引き続いて、図5の工程(2G)に示すように、被処理面の全面に膜厚50nmのSiO2 膜からなるギャップ絶縁膜31を形成した。
【0309】
次いで、工程(2H)に示すように、ギャップ絶縁膜31の形成に続けて、その全面に膜厚3.5μm のFeNi膜からなるシールド膜32、膜厚0.5μm のAl23 膜からなるギャップ層33を順次形成し、さらにその上に、膜厚3μm のFeNi膜34を形成した。その後、FeNi膜34をパターニングしてライト磁極を形成するため、FeNi膜34の全面に本発明のネガ型レジスト組成物を塗布し、レジスト膜36を形成した。
【0310】
最後に、上記のようにしてFeNi膜34上に形成したレジスト膜をプリベークし、KrFエキシマ露光装置で露光を行い、さらに露光後ベーク(PEB)を行った。アルカリ現像により、ライト磁極の部位が開口した微細なレジストパターンが得られた。このレジストパターンをマスクとして等方性エッチングで、FeNi膜をエッチングした。工程(2I)に示すように、ライト磁極35を備えた薄膜磁気ヘッド40が完成した。
【0311】
以上、本発明を詳細に説明した。本発明のさらなる理解のために本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
【0312】
(付記1) (1)アルカリ可溶性基を有する第1のモノマー単位及び前記アルカリ可溶性基と反応し得るアルコール構造を有する第2のモノマー単位を含む自体塩基性水溶液に可溶な皮膜形成性重合体と、
(2)結像用放射線を吸収して分解すると、前記第2のモノマー単位のアルコール構造と前記第1のモノマー単位のアルカリ可溶性基との反応を誘起し得るかもしくは前記第1のモノマー単位のアルカリ可溶性基を保護し得る酸を発生可能な光酸発生剤とを含んでなり、かつ
自体塩基性水溶液に可溶であるが、前記結像用放射線に露光されると、前記光酸発生剤の作用の帰結として露光部が塩基性水溶液に不溶となることを特徴とする、塩基性水溶液で現像可能なネガ型レジスト組成物。
【0313】
(付記2) 前記第2のモノマー単位のアルコール構造が、次式(I)〜(IV)のいずれかにより表される3級アルコール構造:
【0314】
【化62】

【0315】
(上式において、
Rは、当該モノマー単位の主鎖に繋がりかつ前記第1のモノマー単位と共重合可能な結合基を表し、そして
R1及びR2は、同一もしくは異なっていてもよく、直鎖もしくは分岐鎖あるいは環状の炭化水素基を表す)
【0316】
【化63】

【0317】
(上式において、
Rは前記定義に同じであり、
x は、1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、そして
pは2〜9の整数である)
【0318】
【化64】

【0319】
(上式において、
Rは前記定義に同じであり、
Yは、水素原子を表すかもしくは、アルキル基、アルコキシカルボニル基、ケトン基、水酸基及びシアノ基からなる群から選ばれた任意の置換基を表し、そして
Zは、脂環式炭化水素基を完成するのに必要な複数個の原子を表す)
【0320】
【化65】

【0321】
(上式において、
R及びYはそれぞれ前記定義に同じであり、そして
BAは、ビシクロアルカン環を完成するのに必要な複数個の原子を表す)
であることを特徴とする付記1に記載のネガ型レジスト組成物。
【0322】
(付記3) 前記第2のモノマー単位の占める割合が、当該共重合体の全量を基準にして0.1〜70モル%の範囲であることを特徴とする付記1又は2に記載のネガ型レジスト組成物。
【0323】
(付記4) 前記第1及び第2のモノマー単位は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、(メタ)アクリル酸系モノマー単位、イタコン酸系モノマー単位、ビニルフェノール系モノマー単位、ビニル安息酸系モノマー単位、スチレン系モノマー単位、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−5−エン−2−カルボン酸系モノマー単位、N−置換マレイミド系モノマー単位及び複数個もしくは多環式の脂環式炭化水素部分を含むエステル基を有するモノマー単位からなる群から選ばれた1員であることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載のネガ型レジスト組成物。
【0324】
(付記5) 石英基板に施してその基板上に膜厚1μm の皮膜を形成した時、使用される露光光源の波長における吸光度が1.75μm-1以下であることを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載のネガ型レジスト組成物。
【0325】
(付記6) 第1及び(又は)第2のモノマー単位が、その側鎖に結合した、ラクトン環、イミド環及び酸無水物からなる群から選ばれる弱いアルカリ可溶性基をさらに有することを特徴とする付記1に記載のネガ型レジスト組成物。
【0326】
(付記7) 分子内にアルコール構造を有する化合物をさらに含有することを特徴とする付記1に記載のネガ型レジスト組成物。
【0327】
(付記8) 上記化合物のアルコール構造が3級アルコール構造であることを特徴とする付記7に記載のネガ型レジスト組成物。
【0328】
(付記9) 上記アルコール構造含有化合物が少なくとも130℃の沸点を示すことを特徴とする付記7又は8に記載のネガ型レジスト組成物。
【0329】
(付記10) 乳酸エチル、メチルアミルケトン、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及びその混合物からなる群から選ばれた溶媒を含むことを特徴とする付記1に記載のネガ型レジスト組成物。
【0330】
(付記11) 酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテル及びその混合物からなる群から選ばれた溶媒を補助溶媒としてさらに含むことを特徴とする付記10に記載のネガ型レジスト組成物。
【0331】
(付記12) 0.15μm以下の線幅の配線パターンの形成に用いられることを特徴とする付記1に記載のネガ型レジスト組成物。
【0332】
(付記13) 下記の工程:
付記1〜12のいずれか1項に記載のネガ型レジスト組成物を被処理基板上に塗布し、
形成されたレジスト膜を前記レジスト組成物の光酸発生剤の分解を誘起し得る結像用放射線で選択的に露光し、そして
露光後のレジスト膜を塩基性水溶液で現像すること、
を含んでなることを特徴とする、ネガ型レジストパターンの形成方法。
【0333】
(付記14) 付記1〜12のいずれか1項に記載のネガ型レジスト組成物から形成されたレジストパターンをマスキング手段として使用して、その下地の被処理基板を選択的に除去して予め定められた機能性要素層を形成する工程を含むことを特徴とする、電子デバイスの製造方法。
【0334】
(付記15) 下記の工程:
前記ネガ型レジスト組成物を被処理基板上に塗布し、
形成されたレジスト膜を前記レジスト組成物の光酸発生剤の分解を誘起し得る結像用放射線で選択的に露光し、
露光後のレジスト膜を塩基性水溶液で現像してレジストパターンを形成し、そして
前記レジストパターンをマスキング手段として、その下地の前記被処理基板をエッチングにより選択的に除去して前記機能性要素層を形成すること、
を含んでなることを特徴とする、付記14に記載の電子デバイスの製造方法。
【0335】
(付記16) 下記の反応成分:
(1)アルカリ可溶性の重合体からなる基材樹脂、
(2)結像用放射線を吸収して分解し、酸を発生可能な光酸発生剤、及び
(3)前記光酸発生剤から発生せしめられた酸の存在下、前記基材樹脂の重合体と脱水結合反応を行い得る反応部位を有している脂環族系アルコール、
を組み合わせて含んでなることを特徴とするネガ型レジスト組成物。
【0336】
(付記17) 前記脂環族系アルコールが1個もしくはそれ以上のアルコール性水酸基を含むことを特徴とする付記16に記載のネガ型レジスト組成物。
【0337】
(付記18) 前記脂環族系アルコールにおいて、その脂環族骨格と水酸基の間に1〜6の原子が介在せしめられていることを特徴とする付記16又は17に記載のネガ型レジスト組成物。
【0338】
(付記19) 前記脂環族系アルコールが、4個以上の炭素原子を有する単環式化合物、6個以上の炭素原子を有する多環式化合物あるいはその混合物であることを特徴とする付記16〜18のいずれか1項に記載のネガ型レジスト組成物。
【0339】
(付記20) 前記脂環族系アルコールが、その分子中にアダマンタン構造を有するアルコールであることを特徴とする付記16に記載のネガ型レジスト組成物。
【0340】
(付記21) 前記脂環族系アルコールが、立体化学的に固定された構造を有する3級アルコールであることを特徴とする付記16に記載のネガ型レジスト組成物。
【0341】
(付記22) 下記の工程:
(1)アルカリ可溶性の重合体からなる基材樹脂、
(2)結像用放射線を吸収して分解し、酸を発生可能な光酸発生剤、及び
(3)前記光酸発生剤から発生せしめられた酸の存在下、前記基材樹脂の重合体と脱水結合反応を行い得る反応部位を有している脂環族系アルコール、
を組み合わせて含んでなるネガ型レジスト組成物を被処理基板上に塗布し、
形成されたレジスト膜を前記レジスト組成物の光酸発生剤の分解を誘起し得る結像用放射線で選択的に露光し、そして
露光後ベークの完了後、前記レジスト膜を塩基性水溶液で現像すること、
を含んでなることを特徴とする、ネガ型レジストパターンの形成方法。
【0342】
(付記23) 付記16〜21のいずれか1項に記載のネガ型レジスト組成物から形成されたレジストパターンをマスキング手段として使用して、その下地の被処理基板を選択的に除去して予め定められた機能性要素層を形成する工程を含むことを特徴とする、電子デバイスの製造方法。
【0343】
(付記24) 下記の工程:
前記ネガ型レジスト組成物を被処理基板上に塗布し、
形成されたレジスト膜を前記レジスト組成物の光酸発生剤の分解を誘起し得る結像用放射線で選択的に露光し、
露光後のレジスト膜を塩基性水溶液で現像してレジストパターンを形成し、そして
前記レジストパターンをマスキング手段として、その下地の前記被処理基板をエッチングにより選択的に除去して前記機能性要素層を形成すること、
を含んでなることを特徴とする、付記23に記載の電子デバイスの製造方法。
【0344】
また、本発明(第2の発明によるネガ型レジスト組成物)では、上記の付記の欄に記載されるものに追加して、基材樹脂が、フェノール系重合体、(メタ)アクリレート系重合体又はその混合物からなることを特徴とするネガ型レジスト組成物を、好ましい態様として挙げることができる。
【符号の説明】
【0345】
1 シリコン基板
2 ゲート電極
3 ポリシリコン膜
4 WSi膜
5 レジスト膜
6 N- 拡散層
7 CVD酸化膜
8 サイドウォール
9 N+ 拡散層
10 熱酸化膜
11 層間絶縁膜
12 配線
20 MOSトランジスタ
21 基板
22 シールド膜
23 ギャップ絶縁層
24 磁気抵抗(MR)効果膜
25 下層レジスト膜
26 上層レジスト膜
27 TiW膜
28 電極
29 MR素子
31 ギャップ絶縁層
32 シールド膜
33 ギャップ層
34 FeNe膜
35 ライト磁極
40 薄膜磁気ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の反応成分:
(1)アルカリ可溶性の重合体からなる基材樹脂、
(2)結像用放射線を吸収して分解し、酸を発生可能な光酸発生剤、及び
(3)前記光酸発生剤から発生せしめられた酸の存在下、前記基材樹脂の重合体と脱水結合反応を行い得る反応部位を有している脂環族系アルコール、
を組み合わせて含んでなることを特徴とするネガ型レジスト組成物。
【請求項2】
前記脂環族系アルコールが1個もしくはそれ以上のアルコール性水酸基を含むことを特徴とする請求項1に記載のネガ型レジスト組成物。
【請求項3】
前記脂環族系アルコールにおいて、その脂環族骨格と水酸基の間に1〜6の原子が介在せしめられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のネガ型レジスト組成物。
【請求項4】
前記脂環族系アルコールが、4個以上の炭素原子を有する単環式化合物、6個以上の炭素原子を有する多環式化合物あるいはその混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のネガ型レジスト組成物。
【請求項5】
前記脂環族系アルコールが、その分子中にアダマンタン構造を有するアルコールであることを特徴とする請求項1に記載のネガ型レジスト組成物。
【請求項6】
前記脂環族系アルコールが、立体化学的に固定された構造を有する3級アルコールであることを特徴とする請求項1に記載のネガ型レジスト組成物。
【請求項7】
下記の工程:
(1)アルカリ可溶性の重合体からなる基材樹脂、
(2)結像用放射線を吸収して分解し、酸を発生可能な光酸発生剤、及び
(3)前記光酸発生剤から発生せしめられた酸の存在下、前記基材樹脂の重合体と脱水結合反応を行い得る反応部位を有している脂環族系アルコール、
を組み合わせて含んでなるネガ型レジスト組成物を被処理基板上に塗布し、
形成されたレジスト膜を前記レジスト組成物の光酸発生剤の分解を誘起し得る結像用放射線で選択的に露光し、そして
露光後ベークの完了後、前記レジスト膜を塩基性水溶液で現像すること、
を含んでなることを特徴とする、ネガ型レジストパターンの形成方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のネガ型レジスト組成物から形成されたレジストパターンをマスキング手段として使用して、その下地の被処理基板を選択的に除去して予め定められた機能性要素層を形成する工程を含むことを特徴とする、電子デバイスの製造方法。
【請求項9】
下記の工程:
前記ネガ型レジスト組成物を被処理基板上に塗布し、
形成されたレジスト膜を前記レジスト組成物の光酸発生剤の分解を誘起し得る結像用放射線で選択的に露光し、
露光後のレジスト膜を塩基性水溶液で現像してレジストパターンを形成し、そして
前記レジストパターンをマスキング手段として、その下地の前記被処理基板をエッチングにより選択的に除去して前記機能性要素層を形成すること、
を含んでなることを特徴とする、請求項8に記載の電子デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−198024(P2010−198024A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73308(P2010−73308)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【分割の表示】特願2000−257661(P2000−257661)の分割
【原出願日】平成12年8月28日(2000.8.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】