説明

ネットワークにおける進行中のデータ配信時のセッション切り換え

ネットワークにおいてサーバからクライアント機器にデータを配信する方法が記述される。第1の送信元アドレスを有するデータパケットが第1のセッションにおいてサーバからクライアント機器に送信される。第2の送信元アドレスを含む「セッション切り換え情報(SSI:Session Switch Information)」メッセージがサーバからクライアント機器に送信される。サーバとクライアント機器との間で第2のセッションが構成され、第2の送信元アドレスを有するデータパケットが第2のセッションにおいてサーバからクライアント機器に送信される。同じトランスポートプロトコルを両方のセッションに使用することができ、この方法を使ってユニキャスト配信とマルチキャスト配信とを切り換えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はネットワークにおけるデータのユニキャストおよびマルチキャスト配信に関する。詳細には、それだけに限らないが、本発明は電気通信ネットワークにおけるユニキャスト配信モードとマルチキャスト配信モードとの切り換えに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークへの固定接続および移動接続における帯域幅の着実な増加により、エンドユーザからのデータトランザクションのレベルの増大が一層助長されてきた。これらのトランザクションの大部分はパブリックドメインにおいて利用可能なコンテンツのダウンロードである。
【0003】
大部分のダウンロードはポイントツーポイント(PTP:point to point)接続(すなわち、ユニキャスト接続)上で、またはポイントツーマルチポイント(PTM:point to multipoint)(すなわち、ブロードキャスト/マルチキャスト接続)上で既存のファイル・ダウンロード・プロトコルを使って行われる。
【0004】
ユニキャスト送信は、単一のネットワーク宛先への情報パケットの送信である。「ユニキャスト」という用語は、同じデータをすべての宛先に送信することを意味する「ブロードキャスト」という語になぞらえて形成されている。もう1つのマルチモード配信方法である「マルチキャスト」は、IPブロードキャストと同様のものであるが、より効率的なやり方で実施される。
【0005】
ユニキャストメッセージングは、専用の、または固有のリソースが要求されるすべてのネットワークプロセスに使用される。ユニキャストは一般に、ネットワークトランザクションを完了するのに双方向接続が必要とされる場合に使用される。
【0006】
同じデータを複数のユニキャストアドレスに送信することは、送信者がすべてのデータを各受信者について1度ずつ何度も繰り返し送信することを必要とする。データを多くの受信者に送信することが必要とされる場合には、ブロードキャストまたはマルチキャストの手法が使用され得る。ブロードキャストでは、データがすべての可能な宛先に送信される(「全ホストブロードキャスト」)。すなわち、このブロードキャストは送信者がデータを1度だけ送信することを可能にし、すべての受信者はそのデータを複製することができる。例えば、IPプロトコルにおいて、255.255.255.255は、制限されたローカルブロードキャストを表す。マルチキャストでは、マルチキャストアドレスが目的の受信者のグループと関連付けられる。RFC3171によれば、アドレス224.0.0.0からアドレス239.255.255.255までがマルチキャストアドレスとして指定される。送信者は(送信者のユニキャストアドレスから)マルチキャストアドレスに単一のデータグラムを送信し、中間ルータが複製を作成し、その複製を当該送信者からのデータに関心があることを登録しているすべての受信者に送信する役割を果たす。
【0007】
マルチキャストは、本質的に、接続指向の機構ではなく、そのため、欠落パケットの再送を可能にする伝送制御プロトコル(TCP:Transmission Control Protocol)といったプロトコルは一般に適切ではない。マルチキャスト送信に適するプロトコルの1つが、RFC3926に文書化されている「単方向トランスポート上のファイル配信(FLUTE:File Delivery over Unidirectional Transport)」である。
【0008】
図1および図2に、セルラネットワークにおけるコンテンツのデータパケットのユニキャスト(PTP)配信およびマルチキャスト(PTM)配信を示す。簡単にするために、以下の考察では非ストリーミングデータの配信を説明するが、同じ原理はストリーミングデータの配信にも適用されることが理解されるであろう。図1はユニキャストパケットを使ってコンテンツデータを配信するネットワークの要素の概略図である。コンテンツ提供者101はバックボーンネットワークを介して「ゲートウェイGPRSサポートノード(GGSN:Gateway GPRS Support Node)」102に向けてパケットを送信する。GGSNはコンテンツデータを利用するユーザのアドレスおよび位置を識別し、パケットを様々な「サービスGPRSサポートノード(SGSN:Serving GPRS Support Node)」103、104に転送する。SGSN103、104は、移動端末111〜118を使って、無線ネットワーク105、106、107を介しエンドユーザに向けてパケットを経路指定する。各エンドユーザは独自のデータを必要とし、したがって、データはコンテンツ提供者101から8回、GGSN102から各SGSN103、104へ4回送信されなければならない。同じデータが各無線ネットワーク105〜106へと何度も繰り返し送信される。これは結果的に非常に効率の悪いネットワークリソースの使用になることが理解されるであろう。
【0009】
図2は、マルチキャストパケットを使ってコンテンツデータを配信する同じネットワークの要素の概略図である。バックボーンネットワークおよび無線ネットワーク105、106、107はすべてマルチキャストパケットの使用をサポートしなければならず、ゲートウェイノードはマルチキャストパケットを経路指定することができなければならない。コンテンツ提供者101は単一のマルチキャスト・データ・パケットのセットを送信しさえすればよい。各ゲートウェイノードは、パケットがマルチキャストされることを認識し、同じデータを複数の受信者に転送する。これはネットワークリソースのより効率のよい使用を保証するが、ネットワーク内のすべてのポイントがマルチキャスト・データ・パケットを処理することができることを必要とする。
【0010】
PTP接続上でデータを配信するサーバが配信をPTM接続に切り換えようとし得る状況、またはその逆の状況が生じる。例えば、サーバがごくわずかの受信者にデータを配信しており、各受信者とPTPセッションをセットアップしているものと仮定する。もっと多くのクライアント機器がサーバにデータを要求する場合、データをすべての受信者に同時に配信するために、サーバがPTMセッションをセットアップすることが望ましい場合もある。
【0011】
目下のところ、すべての転送プロトコルはもっぱらPTM配信のためだけまたはPTP配信のためだけに使用される。サーバがPTPセッションを使ったデータの送信を停止し、PTMセッションを使ったデータの送信を開始するためには、すべての既存のセッションを中断し、異なるプロトコルの使用を必要とする新しいセッションを確立することが必要になるはずである。例えば、PTPセッションはFTPプロトコルの下で動作し得るはずであるが、FTPプロトコルはマルチキャスト送信をサポートしない。マルチキャストセッションで複数の受信者にデータを送信するためには、FTPセッションは打ち切られる必要があるはずであり、FLUTEといったPTMプロトコルを使った新しいセッションが必要とされるはずである。
【0012】
そのような機能を可能にするためには、サーバおよびクライアント機器は、配信モードごとのプロトコルをサポートする必要がある。さらに、異なる種類のセッション間の切り換えを行うために、明確に定義されたシグナリング手順を有するさらに別の制御プレーンプロトコルも必要とされる。これはさらに大きなシグナリング負荷をもたらすことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の問題を克服し、または少なくとも軽減しようと試みるものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様によれば、ネットワークにおいてサーバからクライアント機器にデータを配信する方法が提供される。第1の送信元アドレスを有するデータパケットが第1のセッションにおいてサーバからクライアント機器に送信される。第2の送信元アドレスを含む「セッション切り換え情報(SSI:Session Switch Information)」メッセージがサーバからクライアント機器に送信される。第2のセッションがサーバとクライアント機器との間で構成され、第2の送信元アドレスを有するデータパケットが第2のセッションにおいてサーバからクライアント機器に送信される。同じトランスポートプロトコル(FLUTEなど)を両方のセッションに使用することができ、この方法を使ってユニキャスト配信とマルチキャスト配信とを切り換えることができる。
【0015】
よって、進行中のダウンロードを中断せずに、配信モードを、すなわちPTPとPTMとを切り換えることが可能になる。
【0016】
また、方法は、クライアント機器がマルチキャストセッションからユニキャストセッションに移行するときに、サーバにコンテンツの転送を続行させるために、クライアント機器の現在の状況および進捗に関してサーバに知らせることも可能にする。
【0017】
本発明の別の態様によれば、ネットワークにおいて使用するためのクライアント機器が提供される。クライアント機器は、第1のセッションにおいてネットワーク内のサーバから第1の送信元アドレスを有するデータパケットを受信するための受信機を備える。プロセッサは、受信されるデータパケットからコンテンツデータを回復するために受信機に動作可能に接続されている。送信機は、ネットワークへとデータを送信するためにプロセッサに動作可能に接続されている。受信機は、サーバから第2の送信元アドレスを含むSSIメッセージを受信するように構成されている。プロセッサは、SSIメッセージの受信に応答して送信機に、サーバに連絡を取って第2のセッションにおける第2の送信元アドレスを有するデータパケットの配信をセットアップするよう指示するように構成されている。プロセッサは次いで第1のセッションを打ち切るように構成されている。
【0018】
データパケットは、第1のセッションおよび第2のセッションにおいて同じトランスポートプロトコル(FLUTEなど)を使って受信することができる。第1の送信元アドレスをユニキャスト送信元アドレスとし、第2の送信元アドレスをマルチキャスト送信元アドレスとすることもでき、その逆とすることもできる。
【0019】
クライアント機器は、第2のセッションが開始されるときにすでに受信されたコンテンツデータの表示を送信し、これにより第2のセッションにおいて受信されるデータパケットは第1のセッションにおいて受信されるデータパケットを補完するように構成することができる。
【0020】
本発明の別の態様によれば、ネットワークにおいて使用するためのサーバが提供される。サーバは、ネットワークからデータを受信するための受信機と、受信機に動作可能に接続されたプロセッサと、プロセッサに動作可能に接続された送信機とを備える。送信機は、第1のセッションにおいて少なくとも1台のクライアント機器に第1の送信元アドレスを有するデータパケットを送信するように構成されている。プロセッサは、少なくとも1台のクライアント機器に送信するために第2の送信元アドレスを含むSSIメッセージを生成するように構成されている。受信機は、少なくとも1台のクライアント機器から第2の送信元アドレスを有するパケットの配信を求める要求を受信するように構成されている。送信機はさらに、第2のセッションにおいて少なくとも1台のクライアント機器に第2の送信元アドレスを有するデータパケットを送信するように構成されている。
【0021】
SSIメッセージは、少なくとも1台のクライアント機器が第1のセッションの完了から所定の距離よりも短い距離にある場合に、当該機器が第1のセッションにおいて第1の送信元アドレスを有するデータパケットを引き続き受信することができるようにするための推奨される完了閾値を含むことができる。
【0022】
SSIメッセージは、少なくとも1台のクライアント機器が第1のセッションを続行すべきかどうかについて判断することができるように、第1のセッションがいつ打ち切られるか表示するタイムスタンプを含むことができる。
【0023】
SSIメッセージは、クライアント機器の特定の部分集合がSSIメッセージに含まれる情報を使用すべきであることを表示するカテゴリ標識を含むことができる。
【0024】
本発明の別の態様によれば、ネットワーク内のクライアント機器上で実行されると、クライアント機器に、第1のセッションにおいてネットワーク内のサーバから第1の送信元アドレスを有するデータパケットを受信させるクライアントプログラムが提供される。さらにクライアントプログラムはクライアント機器に、サーバから第2の送信元アドレスを含むSSIメッセージを受信させ、第2のセッションにおける第2の送信元アドレスを有するデータパケットの配信をセットアップさせ、第1のセッションを打ち切らせる。
【0025】
本発明の別の態様によれば、ネットワーク内のサーバ上で実行されると、サーバに、第1のセッションにおいて少なくとも1台のクライアント機器に第1の送信元アドレスを有するデータパケットを送信させるサーバプログラムが提供される。さらにサーバプログラムはサーバに、少なくとも1台のクライアントに送信するための第2の送信元アドレスを含むSSIメッセージを送信させ、第2のセッションにおいて少なくとも1台のクライアント機器に第2の送信元アドレスを有するデータパケットを送信させる。
【0026】
また本発明は、そのようなクライアントプログラムまたはサーバプログラムを含む搬送媒体も提供する。
【0027】
次に本発明のいくつかの実施形態を、例示にすぎないが添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ユニキャストセッションを使ってデータが配信されるネットワークを示す概略図である。
【図2】マルチキャストセッションを使ってデータが配信されるネットワークを示す概略図である。
【図3】クライアント機器およびサーバを含むネットワークを示す概略図である。
【図4】PTPセッションからPTMセッションへの切り換えに関与するイベントのシーケンスを示す流れ図である。
【図5】PTMセッションからPTPセッションへの切り換えに関与するイベントのシーケンスを示す流れ図である。
【図6】クライアント機器のアーキテクチャを示す概略図である。
【図7】サーバのアーキテクチャを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
先に図1および図2を参照して論じたように、ネットワークはこれまで、ファイルのユニキャスト配信のためのFTPや、ファイルのマルチキャスト配信のためのFLUTEといったプロトコルを使用してきた。FLUTEプロトコルはPTM接続上でのファイルの単方向配信のために設計されている。しかし、このプロトコルはPTM接続だけへの制限を含まず、PTP接続にも使用することができる。
【0030】
このため、サーバがFLUTEプロトコルを使ってPTPセッションとPTMセッションの両方を操作することが可能になる。制御フレームを使用することにより、現在PTMセッションを操作しているサーバがクライアント機器に、PTMセッションを離れ、クライアント機器のダウンロードセッションをPTPモードで続行するように指示する(またはクライアント機器に既存のPTPセッションを離れPTMモードで続行するように指示する)ことができる。以下の説明では、この制御フレームをセッション切り換え情報(SSI)と呼んでいる。SSIは、新しい送信元アドレスと、クライアント機器にこの新しい送信元アドレスへ変更するよう求める指示とを含む。
【0031】
図3は、サーバ301およびクライアント機器302〜306を含むネットワークの概略図である。ネットワークには図3に示されない他の要素(例えばルータ、ゲートウェイなど)も存在し得ることが理解されるであろう。クライアント機器のうちの1台302は、送信元アドレスを他のプロトコルおよびアクセス詳細と一緒に提供するサービス告知機構によってコンテンツ利用可能性に関する情報を取得することができる。これは、SDP(Session Description Protocol)のような既存のプロトコルを使って行うことができる。
【0032】
このクライアント機器302はサーバ301に連絡を取ってコンテンツを要求する。この例では、これがコンテンツを要求する唯一のクライアント機器であるものと仮定する。サーバは、FLUTEプロトコルを使ってクライアント機器とPTP(ユニキャスト)接続を確立し、ユニキャスト送信元アドレスを有するパケットを送信する。
【0033】
次に、ネットワーク内のその他のクライアント機器303、304、305、306のうちの何台かが同じサービスを要求する場合、サーバは、コンテンツの配信のためにはPTM(マルチキャスト)機構がより適切なはずであると判断し、クライアント機器302(および同じサービスのためのPTP接続を有する他の任意のクライアント機器)に、PTM配信モードに切り換えるよう指示する。
【0034】
イベントのシーケンスが図4に示されており、これは以下の通りである。
S41. クライアント機器302が、ユニキャスト送信元アドレスおよびダウンロードセッションを開始するのに必要とされる他のプロトコル情報を受信する。
S42. クライアント機器302が、FLUTE(RFC3962)を使ってPTP配信セッションをセットアップする。
S43. サーバ301が、FDT(File Delivery Table:ファイル配信表)インスタンスを送信し、続いてダウンロードオブジェクトを送信することによってダウンロードを開始する。
S44. サーバ301が、特定のコンテンツコレクションをダウンロードしているすべてのクライアント機器をPTM配信源に移行することに決定する。サーバは各クライアント機器にSSIを送出する。SSIは新しい(マルチキャスト)送信元アドレスを含む。
S45. クライアント機器301〜306が、マルチキャスト送信元アドレスを用いた新しいPTM配信に参加し、PTM配信に正常に参加できると、各クライアント機器のPTPセッションを打ち切る。サーバは、コンテンツの索引付けおよび独立のFLUTEセッションによって使用される「トランスポートオブジェクト識別子(TOI:Transport Object Identifier)」宛先がPTMセッションと一致するよう保証する。
S46. クライアント機器は、新しいセッション上でコンテンツのダウンロードを続行する。
【0035】
PTMセッションからPTPセッションに切り換えるには、図5に示すように、類似のイベントのシーケンスに従う。最初にクライアント機器は、PTMセッション上でダウンロードを開始していてもよく、PTPセッションからPTMセッションに切り換わっていてもよい。
S51. FLUTE上での(マルチキャスト送信元アドレスを用いた)コンテンツのサーバ配信。
S52. サーバが、PTM上での配信を打ち切り、すべてのアクティブなクライアント機器についてPTPセッションを開始することに決定する。サーバは、クライアント機器にPTMセッションの保留状態の打ち切りを知らせ、クライアント機器にダウンロードを続行するためにPTPセッションを開始するよう指示するSSIを送出する。SSIにはユニキャスト送信元アドレスが含まれる。
S53. クライアント機器は、SSIで提供される情報を使ってサーバ(または別のサーバ)に連絡を取り、FLUTEセッションを使ってPTP接続上でそのダウンロードを続行する。クライアント機器はサーバに、それまで完全にまたは一部が受信されているファイルを識別するFDTの変更バージョンを提供する。これによりサーバは最適なポイントから配信を開始することができる。
【0036】
FLUTEプロトコルはクライアントがサーバに連絡を取るための対話型チャネルを提供しないが、そのようなチャネルが存在することはこのネットワークシナリオに事実上含まれる部分である。
【0037】
セッションはセッションの送信元アドレスによりFLUTEプロトコルにおいて一意に識別されることが理解されるであろう。前述の構成は、クライアント機器が、送信元アドレスを切り換えることにより、ある(PTPなどの)セッションから別の(PTMなどの)セッションに切り換えることを可能にする。しかし、サーバとクライアント機器はこの場合どちらも、送信元アドレスが異なるにもかかわらず、新しいセッションが事実上古いセッションの継続であることを認識している。
【0038】
図6は、クライアント機器302のアーキテクチャを示す概略図である。クライアント機器302は、サーバ301からパケットを受信するための受信機601を含む。プロセッサ602は受信機601と、メモリの形の搬送媒体603とに動作可能に接続されている。サーバ302からSSIが受信されると、プロセッサはSSIに含まれる新しい送信元アドレスを識別し、送信機604に、ダウンロードを続行するために新しい送信元アドレスに連絡を取るよう指示する。この実施形態では、プロセッサ602に前述の機能を実行させるためのクライアントプログラム605がメモリに記憶されている。
【0039】
図7は、サーバ301のアーキテクチャを示す概略図である。送信機704はクライアント機器301〜306に向けてコンテンツを送信する。プロセッサ702は送信機704と、メモリの形の搬送媒体703とに動作可能に接続されている。PTPセッションからPTMセッションに、またはその逆に変更することが必要とされる場合、プロセッサはSSIを生成し、送信機704にこのSSIを現在のセッションにおけるすべてのクライアント機器に送信するよう指示する。また受信機もプロセッサ702に動作可能に接続されており、このためクライアント機器はダウンロードセッションを開始することができる。この実施形態では、プロセッサ702に前述の機能を実行させるためのサーバプログラム705が搬送媒体703に記憶されている。
【0040】
システム性能を向上させるために、PTPからPTMへ切り換えるよう求める命令を出すときに、サーバは、セッションの完了に近いクライアント機器に、セッションを再構成するのではなくその転送を完了させるための完了閾値を推奨することができる。
【0041】
加えて、PTMからPTPに移行するときに、サーバは、ブロードキャスト上の中断を表示するネットワーク・タイム・プロトコル(NTP:Network Time Protocol)タイムスタンプといったタイミング参照を提供し、クライアント機器に、その現在の残りのダウンロードおよび帯域幅に基づいて計算して再構成する必要があるかどうか判断させることもできる。
【0042】
さらに別の最適化として、ネットワークは、カテゴリ識別子を使って、SSI情報が、データ配信を受信するクライアント機器の特定の部分集合だけに関連することを表示してもよい。
【0043】
以上で概説した手法は、サーバが、コンテンツの人気およびネットワークリソースに基づいて配信モードを切り換え、その切り換えをクライアント機器に及ぼす悪影響を最小限に抑えて行うことを可能にする。
【0044】
前述の実施形態の変形もまた本発明の範囲内に含まれ得ることが理解されるであろう。例えば、前述の手法は、PTMセッションとPTPセッションとの切り換えを可能にするが、異なるPTMセッション間またはPTPセッション間の切り換えにも同等に適切に使用することができるはずである。
【0045】
加えて、図3に示すように、同じサーバが、PTP機構によってにせよPTM機構によってにせよ、クライアント機器302〜306にコンテンツを提供する。新しい送信元アドレスへの切り換えは、結果として(図3に示されていない)異なるサーバがコンテンツを供給することにもなり得るが、これは、クライアント機器におけるコンテンツが引き続き正しいポイントから受信されるようにするために、切り換えの前と後に、コンテンツを供給するサーバ間でのシグナリングを必要とするはずであることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークで使用するためのクライアント機器であって、
第1のセッションにおいて前記ネットワーク内のサーバから第1の送信元アドレスを有するデータパケットを受信するための受信機と、
受信される前記データパケットからコンテンツデータを回復するための、前記受信機に動作可能に接続されたプロセッサと、
前記ネットワークにデータを送信するための、前記プロセッサに動作可能に接続された送信機とを備え、
前記受信機が、前記サーバから第2の送信元アドレスを含むセッション切り換え情報メッセージを受信するように構成されており、
前記プロセッサが、前記セッション切り換え情報メッセージの前記受信に応答して前記送信機に、前記サーバに連絡を取って第2のセッションにおける第2の送信元アドレスを有するデータパケットの配信をセットアップするよう指示するように構成されており、
前記プロセッサがさらに前記第1のセッションを打ち切るように構成されているクライアント機器。
【請求項2】
前記データパケットが前記第1のセッションおよび前記第2のセッションにおいて同じトランスポートプロトコルを使って受信されるように構成された請求項1に記載のクライアント機器。
【請求項3】
前記トランスポートプロトコルがFLUTEプロトコルである請求項2に記載のクライアント機器。
【請求項4】
前記第1の送信元アドレスがユニキャスト送信元アドレスであり、前記第2の送信元アドレスがマルチキャスト送信元アドレスである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクライアント機器。
【請求項5】
前記第1の送信元アドレスがマルチキャスト送信元アドレスであり、前記第2の送信元アドレスがユニキャスト送信元アドレスである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクライアント機器。
【請求項6】
前記第2のセッションが開始されるときにすでに受信されたコンテンツデータの表示を送信し、これにより前記第2のセッションにおいて受信される前記データパケットが前記第1のセッションにおいて受信される前記データパケットを補完するように構成された請求項1乃至5のいずれか1項に記載のクライアント機器。
【請求項7】
ネットワークにおいて使用するためのサーバであって、
前記ネットワーク内の少なくとも1台のクライアント機器からデータを受信するための受信機と、
前記受信機に動作可能に接続されたプロセッサと、
前記プロセッサに動作可能に接続され、第1のセッションにおいて前記少なくとも1台のクライアント機器に第1の送信元アドレスを有するデータパケットを送信するように構成された送信機とを備え、
前記プロセッサが、前記少なくとも1台のクライアント機器に送信するために第2の送信元アドレスを含むセッション切り換え情報メッセージを生成するように構成されており、
前記受信機が、前記第2の送信元アドレスを有するパケットの配信を求める前記少なくとも1台のクライアント機器からの要求を受信するように構成されており、
前記送信機が、第2のセッションにおいて前記少なくとも1台のクライアント機器に前記第2の送信元アドレスを有するデータパケットを送信するように構成されているサーバ。
【請求項8】
前記データパケットが前記第1のセッションおよび前記第2のセッションにおいて同じトランスポートプロトコルを使って送信されるように構成された請求項7に記載のサーバ。
【請求項9】
前記トランスポートプロトコルがFLUTEプロトコルである請求項8に記載のサーバ。
【請求項10】
前記第1の送信元アドレスがユニキャスト送信元アドレスであり、前記第2の送信元アドレスがマルチキャスト送信元アドレスである請求項7乃至9のいずれか1項に記載のサーバ。
【請求項11】
前記第1の送信元アドレスがマルチキャスト送信元アドレスであり、前記第2の送信元アドレスがユニキャスト送信元アドレスである請求項7乃至9のいずれか1項に記載のサーバ。
【請求項12】
前記第2のセッションが前記第1のセッションの継続である請求項7乃至11のいずれか1項に記載のサーバ。
【請求項13】
前記セッション切り換え情報メッセージが、前記少なくとも1台のクライアント機器が前記第1のセッションの完了から所定の距離より短い距離にある場合に、前記クライアント機器が前記第1のセッションにおいて前記第1の送信元アドレスを有する前記データパケットを引き続き受信することができるようにするための推奨される完了閾値を含む請求項7乃至12のいずれか1項に記載のサーバ。
【請求項14】
前記セッション切り換え情報メッセージが、前記少なくとも1台のクライアント機器が前記第1のセッションを続行すべきかどうかについて判断することができるように、前記第1のセッションがいつ打ち切られるかを表示するタイムスタンプを含む請求項7乃至12のいずれか1項に記載のサーバ。
【請求項15】
前記セッション切り換え情報メッセージが、クライアント機器の特定の部分集合が前記セッション切り換え情報メッセージに含まれる情報を使用すべきであることを表示するカテゴリ標識を含む請求項7乃至14のいずれか1項に記載のサーバ。
【請求項16】
ネットワークにおいてサーバからクライアント機器にデータを配信する方法であって、
第1のセッションにおいて前記サーバから前記クライアント機器に第1の送信元アドレスを有するデータパケットを送信することと、
前記サーバから前記クライアント機器に第2の送信元アドレスを含むセッション切り換え情報メッセージを送信することと、
前記サーバと前記クライアント機器との間で第2のセッションを構成すること、
前記第2のセッションにおいて前記サーバから前記クライアント機器に第2の送信元アドレスを有するデータパケットを送信することを含む方法。
【請求項17】
同じトランスポートプロトコルがどちらのセッションにも使用される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記トランスポートプロトコルがFLUTEプロトコルである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の送信元アドレスがユニキャスト送信元アドレスであり、前記第2の送信元アドレスがマルチキャスト送信元アドレスである、または前記第1の送信元アドレスがマルチキャスト送信元アドレスであり、前記第2の送信元アドレスがユニキャスト送信元アドレスである請求項7乃至18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ネットワーク内のクライアント機器上で実行されると、前記クライアント機器に、
第1のセッションにおいて前記ネットワーク内のサーバから第1の送信元アドレスを有するデータパケットを受信させ、
前記サーバから第2の送信元アドレスを含むセッション切り換え情報メッセージを受信させ、
第2のセッションにおける第2の送信元アドレスを有するデータパケットの配信をセットアップさせ、
前記第1のセッションを打ち切らせるクライアントプログラム。
【請求項21】
ネットワーク内のサーバ上で実行されると、前記サーバに、
第1のセッションにおいて少なくとも1台のクライアント機器に第1の送信元アドレスを有するデータパケットを送信させ、
前記少なくとも1台のクライアント機器に送信するために第2の送信元アドレスを含むセッション切り換え情報メッセージを送信させ、
第2のセッションにおいて前記少なくとも1台のクライアント機器に前記第2の送信元アドレスを有するデータパケットを送信させるサーバプログラム。
【請求項22】
請求項19または20に記載のプログラムを含む搬送媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−532546(P2012−532546A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518761(P2012−518761)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058704
【国際公開番号】WO2011/003447
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】