説明

ノズルベーンの製造方法、ノズルベーン、可変ノズル機構およびターボチャージャ

【課題】生産性を向上させるとともに、耐久性および寸法精度に優れたノズルベーンを安
価に製造することができるノズルベーンの製造方法、および、優れた耐久性を有するとと
もに、所望の特性を発揮することができるノズルベーン、可変ノズル機構およびターボチ
ャージャを提供すること。
【解決手段】本発明のノズルベーンの製造方法は、金属粉末と有機バインダーとを含む組
成物を成形して、軸部と、軸部からその軸線に垂直な少なくとも1方向に突出するように
形成された翼部と、軸部の少なくとも一方の端面に形成されたセンタ穴とを備える成形体
を得る成形工程Aと、成形体中から有機バインダーを除去して、脱脂体を得る脱脂工程B
と、脱脂体を焼成して、焼結体を得る焼成工程Dと、焼結体のセンタ穴に対応する部分を
用いて、焼結体の軸部に対応する部分に切削加工および/または研削加工を含む加工を施
す軸加工工程(加工工程E)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルベーンの製造方法、ノズルベーン、可変ノズル機構およびターボチャ
ージャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャは、エンジンの排気ガスを利用してタービンを回転させ、そのタービ
ンと同軸上に設けられたコンプレッサを駆動することにより、エンジンに高圧空気を供給
するものである。このようなターボチャージャ(特にディーゼルエンジン用のターボチャ
ージャ)としては、近年、過給圧をコントロール可能なVG(Variable Geometry)ター
ボチャージャが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなVGターボチャージャでは、例えば、特許文献1に開示されているように、
タービンの外周に沿って複数のノズルベーンが設けられ、互いに隣接する2つのノズルベ
ーン間で、タービンへ向け排気ガスを供給するノズルスロート(ノズル孔)を形成してい
る。そして、各ノズルベーンを回動させることで、ノズルスロートの開口度を変更し、タ
ービンへの排気ガスの流量を変更する。このようなVGターボチャージャは、エンジンの
稼働条件に応じて過給圧を最適に調整して、低速トルク向上、燃費低減、NO低減など
の効果をもたらすことができる。
【0004】
ここで、特許文献1にかかるノズルベーンは、ノズル回動軸から翼形なす部分が突出す
るように形成され、ノズル回動軸を中心として回動させて用いられる。
このようなノズルベーンは、従来、ノズルベーンに対応した形状をなす素材を精密鋳造
法により形成し、その素材のノズル回動軸に対応する部分を切削や研削して精密に仕上げ
ることにより形成されていた。また、精密鋳造の後かつ切削・研削の前に素材にセンタ穴
を形成し、そのセンタ穴を用いて切削や研削を行っていた。
【0005】
しかしながら、精密鋳造法は、素材に反りを生じやすく、また、得られる素材の寸法精
度があまり高くない。そのため、切削や研削時の加工代を大きくとらなければならず、加
工に長時間を要していた。
また、精密鋳造法は、型に接する部分、すなわち、素材の表面付近はその硬度が比較的
高くなるが、素材の内部の硬度は比較的低いものとなる。そのため、切削や研削を行うと
、素材の硬度の比較的低い部分が露出することとなり、その結果、ノズルベーンの耐久性
が低くなってしまう。
【0006】
また、センタ穴の形成時に、その位置ずれ(軸ずれ)を生じる場合がある。そのため、
この点でも、切削や研削時の加工代を大きくとらなければならず、加工に長時間を要して
しまう。また、位置ずれしたセンタ穴を用いて切削や研削を行うと、得られるノズルベー
ンは、翼状をなす部分とノズル回動軸との相対位置関係にずれが生じてしまう。
さらに、センタ穴の形成のための専用の工作機械が必要となり、設備費が高くなるとい
う問題もある。
【0007】
【特許文献1】特開2006−258108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、生産性を向上させるとともに、耐久性および寸法精度に優れたノズル
ベーンを安価に製造することができるノズルベーンの製造方法、および、優れた耐久性を
有するとともに、所望の特性を発揮することができるノズルベーン、可変ノズル機構およ
びターボチャージャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のノズルベーンの製造方法は、金属粉末と有機バインダーとを含む組成物を成形
して、軸部と、該軸部からその軸線に垂直な少なくとも1方向に突出するように形成され
た翼部と、前記軸部の少なくとも一方の端面に形成されたセンタ穴とを備える成形体を得
る成形工程と、
前記成形体中から前記有機バインダーを除去して、脱脂体を得る脱脂工程と、
前記脱脂体を焼成して、焼結体を得る焼成工程と、
前記焼結体の前記センタ穴に対応する部分を用いて、前記焼結体の前記軸部に対応する
部分に切削加工および/または研削加工を含む加工を施す軸加工工程とを有することを特
徴とする。
【0010】
このような本発明によれば、焼結体(すなわちノズルベーンを形成するための素材)は
、成形体を均一に収縮した形状、すなわち成形体の相似形状をなすものとなる。このよう
な焼結体は、反り等の問題を生じることなく、精密鋳造に比し優れた寸法精度で製造する
ことができるだけでなく、センタ穴の中心の位置精度が極めて優れたものとなる。そのた
め、このようなセンタ穴を用いて、焼結体の軸部に対応する部分に切削加工および/また
は研削加工を含む加工を施すことで、その加工のための加工代を極めて小さくし、その結
果、かかる加工の時間を短縮化することができる。また、得られるノズルベーンの寸法精
度を優れたものとすることができる。
【0011】
また、焼結体における表面付近の硬度と内部の硬度との差を小さく、かつ、焼結体の内
部の硬度を極めて高いものとすることができる。そのため、得られるノズルベーンは、上
記の加工を施した部分でも、極めて高い硬度を有し、優れた耐久性を発揮することができ
る。
さらに、センタ穴を形成するための専用の工作機械を必要としないので、設備費を安価
なものとすることができる。そのため、上記のようなノズルベーンを安価に製造すること
ができる。
【0012】
本発明のノズルベーンの製造方法では、前記軸加工工程では、その加工を前記焼結体の
前記軸部に対応する部分の端面以外の部分に施すことが好ましい。
これにより、製造工程を簡略化し、製造に要する時間をより短縮化することができる。
前述したように、本発明によれば、焼結体は、成形体の相似形状をなすものとなるため、
軸部の端面を極めて正確に軸線に対し垂直となるように形成することができる。また、ノ
ズルベーンでは、軸部の軸線方向での寸法精度はそれほど高精度を要しない。したがって
、軸部の端面に加工を別途施す必要がなく、このような工程を省略することができる。
【0013】
本発明のノズルベーンの製造方法では、前記焼成工程の後または前記軸加工工程の後に
、前記焼結体の前記翼部に対応する部分に切削加工および/または研削加工を含む加工を
施す翼加工工程を有することが好ましい。
これにより、翼部の寸法精度を向上させることができる。
本発明のノズルベーンの製造方法では、前記翼部は、その平面視にて、前記軸部の軸線
に直交する帯状をなしており、前記翼加工工程では、その加工により前記焼結体の前記翼
部に対応する部分の平面視での幅を調整することが好ましい。
これにより、翼部の幅(平面視での帯状の幅)の寸法精度を優れたものとすることがで
きる。また、その際の加工代も少なくて済むので、寸法精度を優れたものとしつつ、加工
に要する時間を短縮化することができる。
【0014】
本発明のノズルベーンの製造方法では、前記成形工程では、前記翼部の縁部に面取りが
施されていることが好ましい。
これにより、別途面取り加工をする必要がなく、製造に要する時間をより短縮化するこ
とができる。その際、前述したように加工代が少なくて済むので、加工後に面取り部を残
すことができる。
【0015】
本発明のノズルベーンの製造方法では、前記脱脂工程の後かつ前記焼成工程の前に、前
記脱脂体の前記翼部および/または前記軸部に対応する部分に切削加工および/または研
削加工を含む予備的な加工を施す予備加工工程を有することが好ましい。
脱脂体は比較的軟質であるため、加工が容易である。そのため、このような予備加工工
程を行うことで、得られるノズルベーンの寸法精度を優れたものとしつつ、加工に要する
時間をより短縮化することができる。
【0016】
本発明のノズルベーンの製造方法では、前記成形工程では、前記軸部の外周面に平坦部
が形成され、
前記軸加工工程では、その加工を前記焼結体の前記平坦部に対応する部分以外の部分に
施すことが好ましい。
前述したように焼結体は成形体の相似形状をなすものとなるため、翼部の突出方向と平
坦部とのなす角度を高精度に規定することができる。ノズルベーンは、通常、このような
平坦部を有する軸部を貫通孔または有底穴に嵌合させて取り付け、その貫通孔または有底
穴の回動により回動させて用いる。このようなノズルベーンにあっては、その僅かな回動
角によってノズルスロート(ノズル開口)の開度が大きく変化するため、翼部の突出方向
と平坦部とのなす角度を高精度に規定することは極めて重要である。
【0017】
本発明のノズルベーンの製造方法では、前記平坦部は、前記軸部の軸線を介して1対設
けられていることが好ましい。
これにより、前述したようなノズルベーンの回動角を高精度に規定するとともに、軸部
の軸線の位置を高精度に規制することができる。そのため、このようなノズルベーンを用
いることで、所望の特性を発揮することができる可変ノズル機構およびターボチャージャ
を提供することができる。
【0018】
本発明のノズルベーンの製造方法では、前記平坦部は、当て付け面に当て付けられるこ
とにより前記軸部の軸線まわりの回動角を規制するためのものであることが好ましい。
これにより、ノズルベーンの回動角を高精度に調整することができる。
本発明のノズルベーンの製造方法では、前記翼部は、前記軸部の一端部から突出するよ
うに設けられていることが好ましい。
これにより、軸部の加工時間を少なくすることができるので、製造に要する時間をより
短縮化することができる。
【0019】
本発明のノズルベーンの製造方法では、前記翼部は、前記軸部の途中から突出するよう
に設けられていることが好ましい。
このようなノズルベーンは、1対の軸部のそれぞれに加工を要するため、本発明を適用
することによる効果が顕著となる。
本発明のノズルベーンの製造方法では、前記成形工程では、金属粉末射出成形法により
前記成形体を得ることが好ましい。
射出成形法は、成形型の選択により、複雑で微細な形状の前記成形体を容易に形成する
ことができる。
【0020】
本発明のノズルベーンは、本発明のノズルベーンの製造方法によって製造されたことを
特徴とする。
これにより、優れた耐久性を有するとともに、所望の特性を発揮することができるノズ
ルベーンを提供することができる。
本発明のノズルベーンは、軸部と、該軸部からその軸線に垂直な少なくとも1方向に突
出するように形成された翼部とを備えるノズルベーンであって、
前記翼部および前記軸部は、粉末冶金法により一体的に形成されるとともに、
前記軸部の少なくとも一方の端面には、センタ穴が形成され、前記軸部は、前記センタ
穴以外の部分に切削加工および/または研削加工を含む加工が施されていることを特徴と
する。
これにより、優れた耐久性を有するとともに、所望の特性を発揮することができるノズ
ルベーンを提供することができる。
【0021】
本発明のノズルベーンでは、切削加工および/または研削加工を含む加工が施された部
位の表面のビッカーズ硬度HVをAとし、当該加工が施されていない部位の表面のビッカ
ーズ硬度HVをBとしたときに、Aが、200以上であり、かつ、A/Bが、0.6〜1
であることが好ましい。
これにより、極めて優れた耐久性を有するノズルベーンを提供することができる。
【0022】
本発明の可変ノズル機構は、本発明のノズルベーンを複数備えることを特徴とする。
これにより、優れた耐久性を有するとともに、所望の特性を発揮することができる可変
ノズル機構を提供することができる。
本発明のターボチャージャは、本発明の可変ノズル機構を備えることを特徴とする。
これにより、優れた耐久性を有するとともに、所望の特性を発揮することができるター
ボチャージャを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明のノズルベーンの製造方法、ノズルベーン、可変ノズル機構およびターボ
チャージャについて、詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかるターボチャージャを示す縦断面図、図2は、図
1に示すターボチャージャに備えられた可変ノズル機構を説明するための図((a)は、
レバープレート側からみた図、(b)は、(a)のA−A線断面図)、図3は、図2に示
す可変ノズル機構の作用を説明するための図(レバープレート側からみた正面図)、図4
は、図2に示す可変ノズル機構に備えられたノズルベーンの側面図(翼部を平面視したと
きの図)、図5は、図4に示すノズルベーンの正面図および背面図((a)は、レバープ
レートとは反対側からみた図、(b)は、レバープレート側からみた図)である。
【0024】
(ターボチャージャ)
図1に示すターボチャージャ10は、可変容量ターボチャージャ(VG(Variab
le Geometry)ターボチャージャ)であり、VGタービン20と、コンプレッ
サ30とを有している。そして、VGタービン20とコンプレッサ30との間には、軸受
ハウジング41が設けられ、この軸受ハウジング41内には、軸受42により回転自在に
支持されたタービンロータ43が挿通されている。
コンプレッサ30は、タービンロータ43の一端側に取り付けられたコンプレッサホイ
ール31と、軸受ハウジング41に取り付けられ、コンプレッサホイール31を囲んで覆
うように設けられたコンプレッサケーシング32とを有している。
【0025】
一方、VGタービン20は、タービンロータ43の他端側に取り付けられたタービンホ
イール21と、軸受ハウジング41に取り付けられ、タービンホイール21を囲んで覆う
ように設けられたタービンケーシング22と、タービンホイール21に流入する排気ガス
(流体)の流速を変化させる可変ノズル機構23と、可変ノズル機構23を駆動するため
の駆動機構24と有している。
【0026】
タービンケーシング22の内側には、タービンロータ43の周方向に沿ってタービンホ
イール21の外周を囲むようにスクロール25が形成されている。また、スクロール25
の外周側には概ねスクロール25の接線方向に沿った排気ガス入口(図示せず)が設けら
れ、タービンロータ43の回転軸心44に沿って排気ガス出口26が設けられている。
このようなターボチャージャ10では、上記の図示しない排気ガス入口からスクロール
25に駆動流体として流入した排気ガスが、その流速が可変ノズル機構23によって可変
に調整されタービンホイール21に流入し、タービンホイール21を回転駆動し、排気ガ
ス出口26から排出される。
一方、コンプレッサホイール31は、タービンホイール21の回転により回転駆動され
、例えば空気等の流体の圧送に用いられる。
【0027】
(可変ノズル機構)
ここで、可変ノズル機構23を詳細に説明する。
可変ノズル機構23は、スクロール25の内周側に周方向に等ピッチで設けられた複数
のノズルベーン1と、各ノズルベーン1を回動可能に支持するノズルマウント2と、各ノ
ズルベーン1を回動させるためのドライブリング3と、ドライブリング3の回動に伴って
各ノズルベーン1を回動させるレバープレート4と、支持プレート5と、複数のノズルサ
ポート6とを有している。
【0028】
複数のノズルベーン1は、互いに隣り合うノズルベーン1同士の間に、スクロール25
からタービンホイール21へ排気ガスが流入するノズルスロートを形成するように配置さ
れている。このノズルスロートは、その流路の開度がノズルベーン1の回動角によって変
化する。
各ノズルベーン1は、軸部11と、翼部12とを有している。なお、各ノズルベーン1
の各部の詳細については、後述する。
【0029】
ノズルマウント2は、タービンケーシング22に固定され、各ノズルベーン1の軸部1
1を回動可能に支持している。このノズルマウント2には、軸部11を回動可能に支持す
るための例えば貫通孔で構成された係合部が形成されている。
また、ノズルマウント2の複数のノズルベーン1側には、複数のノズルサポート6を介
して支持プレート5が取り付けられている。これにより、各ノズルベーン1の翼部12は
、ノズルマウント2と支持プレート5との間に配置される。
【0030】
ドライブリング3は、円盤状をなし、ノズルマウント2に回転可能に支持されている。
また、ドライブリング3の外周側には、レバープレート4(連結ピン部4a)と係合する
溝3aが円周方向等間隔に形成されている。さらに、ドライブリング3には、駆動溝3b
が形成され、図示しないが、この駆動溝3bには駆動機構24のリンクが係合している。
駆動機構24は、アクチュエータロッド27およびアクチュエータ28を有している。
駆動機構24は、アクチュエータ28の作動によりアクチュエータロッド27を往復運動
させ、その往復運動をリンク(図示せず)を介してドライブリング3の回転運動に変換す
る。
【0031】
レバープレート4は、ドライブリング3の複数の溝3aに対応して周方向等間隔に複数
設置されている。図2(b)に示すように、各レバープレート4の外周側(一端側)には
、円柱状の連結ピン部4aが突出形成され、各連結ピン部4aは、対応する溝3aに係合
している。また、各レバープレート4の内周側(他端側)には、貫通孔4bが形成され、
その貫通孔4bにノズルベーン1の軸部11が嵌合している。ここで、後述するセンタ穴
14を用いて軸部11の端部の外周面を貫通孔4bの内壁に押し付けることで、軸部11
がレバープレート4にかしめられ固定されている。なお、ノズルベーン1の軸部11を嵌
合するものとして、貫通孔4bに代えて、有底穴をレバープレート4に形成してもよい。
【0032】
以上のように構成された可変ノズル機構23にあっては、駆動機構24によりドライブ
リング3が回動すると、連結ピン部4aを介してレバープレート4がノズルベーン1の軸
部11まわりに回動せしめられ、これにより、ノズルベーン1が軸部11まわりに回動し
て、ノズルベーン1の翼角(翼部12の回動角)が変化する。
このとき、アクチュエータ28は、ノズルスロートを流れる排ガスの流量が所定の流量
になるように駆動制御される。具体的には、各ノズルベーン1は、排気ガスの大流量時に
は図3に示すようにノズルスロート(nozzlethroat)を開く方向へ、また、
排気ガスの小流量時には図2に示すようにノズルスロートを閉じる方向へ回動するように
制御される。
なお、図2(a)はノズルスロートを最大に閉じた状態を示し、図3はノズルスロート
を最大に開いた状態を示している。
【0033】
(ノズルベーン)
ここで、各ノズルベーン1の細部を詳述する。
前述したように、各ノズルベーン1は、軸部11および翼部12を有している。
図4および図5に示すように、軸部11は、その主要部の横断面形状が軸線13を中心
軸とする円形をなしている。この軸部11は、その翼部12側(図4にて左側)の部分が
ノズルマウント2に回動可能に支持され、翼部12とは反対側(図4にて右側)の部分が
レバープレート4に固定される。
【0034】
そして、軸部11の一端面(図4にて右側の端面)には、センタ穴14が形成されてい
る。このセンタ穴14は、その横断面形状が円形をなし、その中心が軸線13に一致する
ように形成されている。本実施形態では、センタ穴14は、開口側から底面側に向けて横
断面積が漸減する部分と一定である部分とを有する。
このようなセンタ穴14は、後述するように、粉末冶金法により形成され、ノズルベー
ン1の製造工程における軸加工工程および翼加工工程において、旋盤等の工作機械(加工
装置)のセンタに係合させて用いるものである。また、センタ穴14は、前述したレバー
プレート4の貫通孔4bにノズルベーン1の軸部11をかしめて固定するのに用いる。
【0035】
また、軸部11の一端側(図4にて右側)の外周面には、軸線13を介して互いに対向
する1対の平坦部15(2面カット部)が設けられている(図5(b)参照)。
このような各平坦部15は、図示しないが、前述したレバープレート4に形成された当
て付け面(貫通孔4bの側面に形成された平坦部)に当て付けられて用いられる。これに
より、可変ノズル機構23において、軸部11の軸線13まわりの回動角が規制される。
すなわち、レバープレート4に対するノズルベーン1の軸部11まわりの回動が規制(固
定)される。そのため、ノズルベーン1の軸部11まわりの回動角を高精度に調整するこ
とができる。
【0036】
本実施形態では、1対の平坦部15は、互いに略平行となるように形成されている。ま
た、一方の平坦部15と軸線13との離間距離と、他方の平坦部15と軸線13との離間
距離とが等しくなっている。また、各平坦部15は、翼部12の突出方向(翼面)に対し
て角度θにて傾斜するように形成されている。
このようにして軸部11の軸線13を介して1対の平坦部15を設けることにより、前
述したようなノズルベーン1の回動角を高精度に規定するとともに、軸部11の軸線13
の位置を高精度に規制することができる。そのため、このようなノズルベーン1を用いる
ことで、所望の特性を発揮することができる可変ノズル機構23およびターボチャージャ
10を提供することができる。
【0037】
一方、軸部11の他端部(図4にて左側の端部)には、翼部12が設けられている。す
なわち、翼部12は、軸部11の一端部から突出するように設けられている。
また、本実施形態では、軸部11の当該他端部には、軸部11の外側に突出するフラン
ジ部16が形成されている。
この翼部12は、その平面視にて、図4に示すように、軸部11の軸線13に垂直な方
向に延在する帯状をなしている。また、軸部11からの翼部12の突出長さは、一端側(
図4にて下側)が他端側(図4にて上側)よりも長くなっている。
【0038】
また、翼部12の平面視での幅方向(図4にて左右方向)での両端部における縁部には
、面取り17、18が施されている。
また、図5(a)および(b)に示すように、翼部12は、その厚さ方向に若干湾曲し
ている。また、翼部12は、その厚さが延在方向(突出方向)で各端へ向け漸減している

【0039】
以上説明したように構成された各ノズルベーン1は、後述するように、軸部11および
翼部12が粉末冶金法により一体的に形成されるとともに、軸部11がセンタ穴14以外
の部分に切削加工および/または研削加工を含む加工が施されている。本実施形態では、
軸部11の端面(センタ穴14を含む)および各平坦部15を除く部分に上記加工が施さ
れている。
【0040】
このような各ノズルベーン1によれば、精密鋳造で得られたものに比し優れた寸法精度
を有する。特に、センタ穴14は粉末冶金法により高精度に形成されたものであり、軸部
11の外周面はセンタ穴14を用いて切削加工および/または研削加工を含む加工が施さ
れたことにより高精度に仕上げられている。そのため、軸部11と翼部12とはこれらの
相対位置関係が高精度に形成されている。その結果、各ノズルベーン1は、優れた寸法精
度を有する。
【0041】
また、各ノズルベーン1は、上記の加工を施した部分(例えば軸部11の外周面のうち
の各平坦部15以外の部分)でも、翼部12の外周面(未加工の部分)とほぼ同等の極め
て高い硬度を有し、優れた耐久性(耐摩耗性)を有する。
より具体的には、切削加工および/または研削加工を含む加工が施された部位の表面(
例えば軸部11の外周面のうちの各平坦部15以外の部分)のビッカーズ硬度HVをAと
し、当該加工が施されていない部位の表面(例えば翼部12の表面)のビッカーズ硬度H
VをBとしたときに、Aは、200以上であり、かつ、A/Bが、0.6〜1であるのが
好ましい。この場合、Aは、200〜350であるのがより好ましく、220〜320で
あるのがさらに好ましく、また、A/Bは、0.8〜1であるのがより好ましく、0.8
5〜1であるのがさらに好ましい。これにより、極めて優れた耐久性を有するノズルベー
ン1を提供することができる。
このように、各ノズルベーン1は、優れた耐久性を有するとともに、所望の特性を発揮
することができる。また、このようなノズルベーン1を複数備える可変ノズル機構23お
よびターボチャージャ10も、優れた耐久性を有するとともに、所望の特性を発揮するこ
とができる。
【0042】
(ノズルベーンの製造方法)
次に、本発明のノズルベーンの製造方法について、上述したように構成されたノズルベ
ーン1の製造方法を例に説明する。
図6は、本発明のノズルベーンの製造方法を説明するための工程図、図7および図8は
、それぞれ、図4に示すノズルベーンの製造方法を説明するための図(側面図)である。
ノズルベーン1の製造方法は、図6に示すように、[1A]成形体を製造する成形工程
と、[1B]脱脂処理を行う脱脂工程と、[1C]予備加工を行う予備加工工程と、[1
D]焼成を行う焼成工程と、[1E]本加工を行う加工工程(軸加工工程および翼加工工
程を含む)とを有する。
【0043】
以下、各工程を工程順に詳細に説明する。
[1A]成形工程
<1A1>
まず、金属粉末および有機バインダーとを用意し、これらを混練機により混練し、混練
物(組成物)を得る(組成物調製工程)。
【0044】
この混練物(コンパウンド)中では、金属粉末が均一に分散している。
また、金属粉末と有機バインダーとは、互いに化学反応しないものであるのが好ましい

このような金属粉末を構成する金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、ダイス鋼、
高速度工具鋼、低炭素鋼、Fe−Ni合金、Fe−Ni−Co合金等の各種Fe系合金、
各種Ni系合金、各種Cr系合金等が挙げられる。
【0045】
これらの中でも、金属粉末としては、Fe系合金を主材料とするものが好ましく、ステ
ンレス鋼を主材料とするものがより好ましい。このようなFe系合金は、炭素含有率に応
じて種々の特性を取り得る。そのため、Fe系合金を主材料とする金属粉末を用いること
により、後述する工程[1D]で得られる焼結体50Cをノズルベーン1に適した特性を
有するものとすることができる。
【0046】
ステンレス鋼の具体例としては、SUS304、SUS310、SUS316、SUS
317、SUS329、SUS410、SUS430、SUS440、SUS630等が
挙げられ、さらには炭素含有量を多くした耐熱鋼も使われる。
また、組成の異なる2種類以上の金属粉末を混合して用いてもよい。この場合、後述す
る工程[1D]で得られる焼結体50Cを従来鋳造では製造できなかったような合金組成
とすることができる。
【0047】
また、金属粉末の平均粒径としては、特に限定されないが、1〜100μmであるのが
好ましく、1〜6μmであるのがより好ましい。
特に、金属粉末として平均粒径が6μm以下の微粉末を用いることにより、後述する工
程[1D]で得られる焼結体50Cの結晶組織の粒径(以下、省略して「結晶粒径」とも
言う。)を著しく小さくすることができる。
【0048】
ここで、金属の機械的強度は、結晶粒径の1/2乗に反比例して高まることが経験的に
知られている。すなわち、結晶粒径を小さくすることにより、金属の機械的強度を飛躍的
に高めることができる。これは、微細な結晶組織の集合体では、亀裂の進展が抑制され、
破壊確率が低下するためと考えられる。したがって、金属粉末として平均粒径が6μm以
下の微粉末を用いることにより得られた焼結体は、機械的強度に優れたものとなる。
【0049】
さらに、特に、比表面積が200m/kg以上の金属粉末を用いるのが好ましく、4
00〜900m/kg程度の金属粉末を用いるのがより好ましい。このように比表面積
の広い金属粉末は、表面の活性(表面エネルギー)が高くなり、より低いエネルギーの付
与でも容易に焼結することができる。したがって、後述する焼成工程[1D]において、
脱脂体50Bをより短時間で焼結させることができる。
【0050】
また、金属粉末は、例えば、アトマイズ法(例えば、水アトマイズ法、ガスアトマイズ
法、高速回転水流アトマイズ法等)、還元法、カルボニル法、粉砕法により製造されたも
のを用いることができるが、アトマイズ法により製造されたものを用いるのが好ましい。
アトマイズ法によれば、極めて微小な金属粉末を効率よく製造することができる。
また、アトマイズ法で製造された金属粉末は、真球に比較的近い球形状をなしているた
め分散性や流動性に優れており、成形時に混練物を成形型に充填する際、その充填性を高
めることもできる。
【0051】
有機バインダーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビ
ニル共重合体等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレー
ト等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビ
ニリデン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の
ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、またはこれらの共重合体等の各種
樹脂や、各種ワックス、パラフィン、高級脂肪酸(例:ステアリン酸)、高級アルコール
、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等が挙げられ、これらのうち1種または2種以
上を混合して用いることができる。
【0052】
このうち、有機バインダーとしては、ポリオレフィンを主成分とするものが好ましい。
ポリオレフィンは、還元性ガスによる分解性が比較的高い。このため、ポリオレフィンを
有機バインダーの主成分として用いた場合、後述する工程[1B]において成形体50A
をより短時間で確実に脱脂することができる。
また、有機バインダーの含有量は、混練物全体の2〜20wt%程度であるのが好まし
く、5〜10wt%程度であるのがより好ましい。有機バインダーの含有率が前記範囲内
であることにより、後述する工程<1A2>において成形性よく成形体50Aを形成する
ことができるとともに、密度を高め、成形体50Aの形状の安定性等を特に優れたものと
することができる。また、これにより、成形体50Aと脱脂体50Bとの大きさの差、い
わゆる収縮率を小さくすることができる。その結果、脱脂体50Bおよび焼結体50Cの
寸法精度を向上させることができる。したがって、後述する工程[1D]で得られる焼結
体50Cのセンタ穴14の位置精度を極めて優れたものとすることができる。
【0053】
また、混練物中に、可塑剤が添加されていてもよい。この可塑剤としては、例えば、フ
タル酸エステル(例:DOP、DEP、DBP)、アジピン酸エステル、トリメリット酸
エステル、セバシン酸エステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合
して用いることができる。
さらに、混練物中には、金属粉末、有機バインダー、可塑剤の他に、例えば、酸化防止
剤、脱脂促進剤、界面活性剤等の各種添加物を必要に応じ添加することができる。
【0054】
混練条件は、用いる金属粉末の金属組成や粒径、有機バインダーの組成、およびこれら
の配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げれば、混練温度:50〜200℃程
度、混練時間:15〜210分程度とすることができる。
また、混練物は、必要に応じ、ペレット(小塊)化される。ペレットの粒径は、例えば
、1〜15mm程度とされる。
【0055】
<1A2>
次に、上記の工程<1A1>で得られた混練物を成形して、図7(a)に示すように、
成形体50Aを製造する。
この成形体50Aは、後述する工程[1D]で得られる焼結体50Cと同形状(相似形
状)をなすものである。より具体的には、成形体50Aは、軸部51Aと、軸部51Aか
らその軸線13に垂直な方向に突出するように形成された翼部52Aとを備えている。こ
こで、加工代分の差異はあるが、軸部51Aはノズルベーン1の軸部11とほぼ同形状で
あり、翼部52Aは、ノズルベーン1の翼部12とほぼ同形状であり、成形体50Aは、
ノズルベーン1とほぼ同形状をなす。したがって、軸部51Aの端面には、センタ穴54
Aが形成され、軸部51Aの外周面には、1対の平坦部55Aが形成されている。
【0056】
また、翼部52Aの縁部には、面取り57A、58Aが施されている。これにより、後
の加工工程[1E]等において別途面取り加工をする必要がなく、製造に要する時間をよ
り短縮化することができる。
成形体50Aの製造方法(成形方法)は、特に限定されず、例えば、金属粉末射出成形
(MIM:Metal Injection Molding)法、圧縮成形(圧粉成形)法、押出成形法等が挙
げられるが、この中でも、金属粉末射出成形法が好ましい。
このMIM法は、比較的小型のものや、複雑で微細な形状の成形体50Aをニアネット
(最終形状に近い形状)で製造することができ、用いる金属粉末の特性を十分に生かすこ
とができるという利点を有する。
【0057】
以下、成形方法の一例として、MIM法による成形体50Aの製造について説明する。
まず、上記の工程<1A1>で得られた混練物または混練物より造粒されたペレットを
用いて、射出成形機により射出成形し、所望の形状、寸法の成形体50Aを製造する。こ
の場合、成形型の選択により、複雑な形状の成形体50Aをも容易に製造することができ
る。
【0058】
このようにして得られた成形体50Aは、有機バインダー中に、金属粉末がほぼ均一に
分散した状態となっている。
なお、製造される成形体50Aの形状寸法は、以後の脱脂および焼結による成形体50
Aの収縮分を見込んで決定される。
射出成形の成形条件としては、用いる金属粉末の金属組成や粒径、有機バインダーの組
成およびこれらの配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げれば、材料温度は、
好ましくは80〜200℃程度、射出圧力は、好ましくは2〜30MPa(20〜300
kgf/cm)程度とされる。
【0059】
[1B]脱脂工程
上記の工程[1A]で得られた成形体50Aに対し、脱脂処理(脱バインダー処理)を
施し、図7(b)に示すように、脱脂体50Bを得る。
ここで、脱脂体50Bは、成形体50Aと同形状(相似形状)をなすものである。より
具体的には、脱脂体50Bは、軸部51Bと、軸部51Bからその軸線13に垂直な方向
に突出するように形成された翼部52Bとを備えている。そして、軸部51Bの端面には
、センタ穴54Bが形成され、軸部51Bの外周面には、1対の平坦部55Bが形成され
ている。また、翼部52Bの縁部には、面取り57B、58Bが形成されている。
【0060】
成形体50Aに対する脱脂処理は、酸化性雰囲気、不活性雰囲気、減圧雰囲気、還元性
雰囲気のうちのいずれの雰囲気中で行ってもよいが、還元性雰囲気中で行うのが好ましい
。これにより、成形体50A中の有機バインダーを速やかに分解し、成形体50A中から
除去することができる。これにより、得られる脱脂体50B中の有機バインダーの残存量
を極めて少なく抑えることができる。その結果、後述する焼成工程[1D]において、炭
素含有量が少ない焼結体50Cを得ることができる。また、脱脂処理を還元性雰囲気中で
行うことにより、成形体50A中に含まれる金属粉末の酸化を確実に防止するという利点
もある。
【0061】
還元性雰囲気が含む還元性ガスとしては、例えば、水素、一酸化炭素のようなガスの他
、アンモニア分解ガスのような混合ガスを用いることもできる。このうち、還元性ガスは
、水素ガスであるのが好ましい。水素ガスは、還元作用が強いため、成形体50A中の有
機バインダーをより速やかに分解することができる。このため、成形体50Aに対する脱
脂処理をより高速かつ十分に行うことができ、後述する工程[1D]で得られる焼結体5
0C中の炭素量の増加を確実に防止することができる。
【0062】
また、水素ガスを構成する水素分子は、その分子サイズが非常に小さいため、成形体5
0A中の隙間に容易に侵入することができる。このため、水素ガスによれば、成形体50
Aの内部に存在する有機バインダーも容易に分解・除去することができ、焼結体50Cの
表層部はもちろん、中心部においても、炭素量の増加を確実に防止することができる。そ
の結果、後述する加工工程[1E]での焼結体50Cの加工後に表面に露出した部分の炭
素量の増加も確実に防止することができる。
【0063】
さらに、水素ガスは、熱伝導率が非常に高いので、加熱源から発生した熱を成形体50
Aに効率よく伝達するとともに、加熱された成形体50Aを効率よく放熱することができ
る。その結果、脱脂工程における成形体50Aの加熱・冷却を効率よく行うことができる
という利点もある。
ここで、還元性雰囲気は、還元性ガスのみで構成されていてもよいが、他のガスを含む
場合、窒素、ヘリウム、アルゴンのような不活性ガスを含んでいるのが好ましい。これら
の不活性ガスは、還元性ガスによる有機バインダーの分解作用を阻害するのを防止すると
ともに、還元性雰囲気の安全性が増すので、その取り扱いを容易にすることができる。
【0064】
この場合、還元性雰囲気が含む還元性ガスの濃度は、特に限定されないが、50vol
%以上であるのが好ましく、70vol%以上であるのがより好ましい。これにより、還
元性雰囲気の安全性を担保しつつ、還元性ガスによる有機バインダーの分解作用が十分に
発揮される。
なお、例えば、アンモニア分解ガスの場合、その成分は、水素ガスと窒素ガスの混合ガ
スであり、水素ガス(還元性ガス)の濃度は、75vol%である。
【0065】
また、脱脂処理において、成形体50Aを加熱する際の温度(加熱温度)は、有機バイ
ンダーの分解開始温度等によって若干異なるが、100〜750℃程度であるのが好まし
く、150〜600℃程度であるのがより好ましい。これにより、還元性ガスによる有機
バインダーの分解作用が十分に発揮され、成形体50Aの脱脂を高速かつ十分に行うこと
ができる。
【0066】
また、成形体50Aを加熱する時間(加熱時間)は、成形体50Aの体積等に応じて若
干異なるが、加熱温度を前記範囲内とした場合、0.1〜20時間程度とするのが好まし
く、0.5〜15時間程度とするのがより好ましい。これにより、成形体50Aの脱脂を
必要かつ十分に行うことができる。
さらに、成形体50Aを加熱する際の平均加熱速度は、1〜10℃/分程度であるのが
好ましい。
【0067】
ところで、このような脱脂工程は、脱脂条件の異なる複数の過程(ステップ)に分けて
行うことにより、成形体50A中の有機バインダーをより速やかに、そして、成形体50
A中に残存させないように分解・除去することができる。
この過程の数は、特に限定されないが、本実施形態では、代表として、2つの過程を有
する場合について説明する。
【0068】
本実施形態では、脱脂工程が、成形体50A中から有機バインダーの一部を除去する第
1の脱脂過程と、該第1の脱脂工程を経た成形体50A中から有機バインダーの残部を除
去する第2の脱脂過程とを有する。このように、複数の段階を経て有機バインダーを除去
することにより、有機バインダーを徐々に除去することができる。これにより、脱脂の進
行が成形体50Aの一部に偏ることなく、均一に脱脂を行うことができる。
【0069】
ところで、上記各過程のうち、第1の脱脂過程では、成形体50A中から有機バインダ
ーの一部を除去する方法であれば、いかなる方法によって有機バインダーが除去されても
よい。
具体的な方法としては、例えば、成形体50Aを加熱する方法、有機バインダーを溶解
する溶媒に成形体50Aを接触させる方法等が挙げられる。
【0070】
成形体50Aを加熱する場合、その加熱温度は、150〜350℃程度であるのが好ま
しい。このような比較的低温で成形体50Aを加熱することにより、成形体50A中の有
機バインダーの全部が急激に分解・気化するのを防止することができる。これにより、気
化した有機バインダーが成形体50Aの外部に放出される際に、成形体50Aに変形をも
たらし、その結果、成形体50Aの保形性が低下するのを防止することができる。
【0071】
また、成形体50Aの加熱雰囲気としては、例えば、酸化性雰囲気、不活性雰囲気、還
元性雰囲気、減圧雰囲気等が挙げられるが、特に、減圧雰囲気であるのが好ましい。これ
により、減圧された雰囲気の作用により、成形体50A中の比較的揮発し易い成分の除去
を優先して行うことができる。このため、成形体50A中の有機バインダーを段階的に除
去することができ、成形体50Aの保形性をより高めることができる。
【0072】
なお、このような減圧雰囲気による第1の脱脂過程を経た成形体50Aには、揮発し易
い成分が除去されてなる空孔が生じる。この空孔は、成形体50Aの外部と連通している
ため、後に詳述する第2の脱脂過程では、この空孔を介して、有機バインダーの分解物を
成形体50Aから除去することができる。これにより、成形体50Aの中心部まで確実に
脱脂処理を行うことができる。
このような減圧雰囲気の圧力は、特に限定されないが、1×10−1〜1×10−5
Pa]程度であるのが好ましく、1×10−2〜1×10−4[Pa]程度であるのがよ
り好ましい。これにより、前記のような作用・効果がより顕著なものとなる。
【0073】
一方、第2の脱脂過程では、第1の脱脂工程を経た成形体50Aを還元性雰囲気中で加
熱することにより、有機バインダーの残部を除去する。
成形体50Aの加熱温度は、400〜600℃程度であるのが好ましい。これにより、
成形体50Aが焼結することなく、還元性ガスによる有機バインダーの分解作用が十分に
発揮され、成形体50Aの脱脂処理を確実に行うことができる。
【0074】
なお、この第2の脱脂過程では、前述したように、成形体50Aに形成された空孔を介
して有機バインダーが除去される。このとき、空孔内に還元性ガスが侵入して有機バイン
ダーの分解を促進するが、この空孔の内径は非常に小さいため、還元性ガスの種類によっ
ては、空孔内に侵入し難いものもある。ところが、還元性ガスとして水素ガスを用いるこ
とにより、このような小さな空孔へも、還元性ガスが容易に侵入することができる。また
、前述した工程<1A1>で用いた金属粉末は、平均粒径が6μm以下と非常に小さいた
め、上記の空孔の内径もさらに小さいものになると考えられるが、そのような特に小さな
空孔へも、水素ガスであれば容易に侵入することができる。
【0075】
このようにして有機バインダーを除去し、図7(b)に示すような脱脂体50Bを得る

この脱脂体50Bは、その炭素含有率が、金属粉末の炭素含有率をより忠実に反映した
焼結体50Cを得るのに適したものとなる。すなわち、脱脂体50Bの炭素含有率と、前
述した工程<1A1>で用いた金属粉末の炭素含有率との差を、より小さくすることがで
きる。
【0076】
[1C]予備加工工程
次に、必要に応じて、脱脂体50Bの軸部51Bおよび/または翼部52Bに対し、切
削工程および/または研削工程を含む予備的な加工を施す。
脱脂体50Bは比較的軟質であるため、加工が容易である。そのため、このような予備
加工工程を脱脂工程[1B]の後かつ焼成工程[1D]の前に行うことで、最終的に得ら
れるノズルベーン1の寸法精度を優れたものとしつつ、加工に要する時間をより短縮化す
ることができる。
本工程における加工は、後述する加工工程[1E]での加工と同様にして行うことがで
きる。
【0077】
[1D]焼成工程
上記の工程[1B]で得られた脱脂体50B(または、上記の工程[1D]で得られた
予備加工後の脱脂体50B)を、焼成炉で焼成して焼結させ、図7(c)に示すように、
焼結体50Cを製造する。
ここで、焼結体50Cは、脱脂体50Bと同形状(相似形状)をなすものである。より
具体的には、焼結体50Cは、軸部51Cと、軸部51Cからその軸線13に垂直な方向
に突出するように形成された翼部52Cとを備えている。そして、軸部51Cの端面には
、センタ穴54Cが形成され、軸部51Cの外周面には、1対の平坦部55Cが形成され
ている。また、翼部52Cの縁部には、面取り57C、58Cが形成されている。ここで
、センタ穴54Cは、ノズルベーン1のセンタ穴14を構成するものである。
【0078】
この焼結により、金属粉末は、粒子同士の界面で拡散が生じ、粒成長して、結晶組織と
なる。これにより、全体的に緻密な、すなわち低空孔率で高密度の焼結体50Cが得られ
る。
焼成温度は、特に限定されないが、1000〜1350℃程度であるのが好ましく、1
000〜1200℃程度であるのがより好ましく、1000〜1100℃程度であるのが
さらに好ましい。このような温度で脱脂体50Bを焼成することにより、結晶組織が必要
以上に肥大化するのを防止することができる。その結果、微小な結晶組織を有し、機械的
特性および化学的特性に優れた焼結体50Cが得られる。
【0079】
なお、焼成温度が前記下限値を下回ると、全体または部分的に焼結が不十分となるため
、得られる焼結体50Cの機械的特性や表面粗さが低下するおそれがある。一方、焼成温
度が前記上限値を上回ると、焼結が必要以上に進行することとなり、結晶組織が肥大化し
、得られる焼結体50Cの機械的特性が低下するおそれがある。
また、焼成時間は、焼成温度を前記範囲とする場合、0.2〜7時間程度であるのが好
ましく、1〜4時間程度であるのがより好ましい。かかる時間の焼成を、前記温度範囲の
焼成温度で行うことにより、脱脂体50Bの焼結をより確実に最適化して、結晶組織の肥
大化を確実に防止しつつ焼結させることができる。その結果、極めて微小な結晶組織を得
ることができる。
【0080】
焼成の際の雰囲気は、特に限定されないが、水素、一酸化炭素のような還元性雰囲気、
窒素、ヘリウム、アルゴンのような不活性雰囲気、これら各雰囲気を減圧した減圧雰囲気
等が挙げられる。
このような焼結体50Cは、その炭素含有率が、金属粉末の炭素含有率をより忠実に反
映したものとなる。
【0081】
なお、金属粉末の炭素含有率に対する、焼結体の炭素含有率の増減量の割合を算出した
場合、この割合(以下、省略して「増減率」とも言う。)が小さいほど、原材料である金
属粉末の炭素含有率と、最終形態である焼結体の炭素含有率との間に、より強い相関関係
が認められることとなる。そして、この相関関係が強いほど、金属粉末の炭素含有率を所
定の値に設定することにより、焼結体50Cの炭素含有率を目的の値に容易に近付けるこ
とができるようになる。
【0082】
かかる観点から、この増減率は、50%以下であるのが好ましく、30%以下であるの
がより好ましい。増減率が前記範囲内であれば、金属粉末の炭素含有率と焼結体50Cの
炭素含有率との間に強い相関関係が認められることとなり、金属粉末の炭素含有率を設定
することで、焼結体50Cの炭素含有率を容易に調整することができるようになる。
以上のようにして、焼結体50Cを得ることができる。
【0083】
[1E]加工工程
次に、上記の工程[1D]で得られた焼結体50Cに切削加工および/または研削加工
を含む加工(本加工)を施して、ノズルベーン1を形成する。
本実施形態では、加工工程[1E]は、<1E1>焼結体50Cの軸部51Cおよび翼
部52Cの軸部51C側の端面に切削加工および/または研削加工を含む加工を施す第1
の加工工程と、<1E2>焼結体50Cの翼部52C(工程<1E1>後の翼部52D)
の軸部51Cとは反対側の端面に切削加工および/または研削加工を含む加工を施す第2
の加工工程を有している。
すなわち、本工程[1E]は、焼結体50Cの軸部51Cに切削加工および/または研
削加工を含む加工を施す軸加工工程と、焼結体50Cの翼部52C(翼部52D)に切削
加工および/または研削加工を含む加工を施す翼加工工程とを含むものである。
【0084】
以下、第1の加工工程<1E1>および第2の加工工程<1E2>を順次詳細に説明す
る。
<1E1>第1の加工工程
加工工程[1E]では、まず、前述したような工程[1A]〜[1D](すなわち粉末
冶金法)を用いて得られた焼結体50C(素材)の軸部51Cおよび翼部52Cの軸部5
1C側の端面に切削加工および/または研削加工を含む加工を施して、図8(a)に示す
ように、中間加工物50Dを得る。
ここで、中間加工物50Dは、軸部11と、軸部11からその軸線13に垂直な方向に
突出するように形成された翼部52Dとを備えている。そして、軸部11の端面には、セ
ンタ穴14が形成され、軸部11の外周面には、1対の平坦部15が形成されている。ま
た、翼部52Dの縁部には、面取り57C、18が形成されている。
【0085】
(軸加工工程)
本工程<1E1>では、軸部11の形成(軸加工工程)に際して、軸部51C(成形体
50Aの軸部51Aに対応する部分)の外周面のうち1対の平坦部55C以外の部分に切
削加工および/または研削加工を施して、所望の外径寸法および軸線位置を有する軸部1
1を形成する。
【0086】
特に、本工程<1E1>の加工に際しては、センタ穴14(成形体50Aのセンタ穴1
4Aに対応する部分)を用いて行う。すなわち、本工程<1E1>における切削加工およ
び/または研削加工に際しては、その加工に用いる旋盤等の工作機械のセンタをセンタ穴
14に係合させた状態で、焼結体50Cを保持する。
本発明によれば、焼結体50C(すなわちノズルベーン1を形成するための素材)は、
成形体50Aを均一に収縮した形状、すなわち成形体50Aの相似形状をなすものとなる
。このような焼結体50Cは、反り等の問題を生じることなく、精密鋳造に比し優れた寸
法精度で製造することができるだけでなく、センタ穴14の中心の位置精度が極めて優れ
たものとなる。例えば、素材の1対の平坦部間(カット幅)の精度は、精密鋳造で製造し
た場合、±0.1mm程度であるが、本発明では、±0.03mm程度とすることができ
る。これは、完成品の要求精度±0.04mmを満足する。また、冷間順送プレスのよう
なバリを生じることもない。
【0087】
そのため、このようなセンタ穴14を用いて、焼結体50Cの軸部51Cに切削加工お
よび/または研削加工を含む加工を施すことで、その加工のための加工代を極めて小さく
し、その結果、かかる加工の時間を短縮化することができる。また、得られるノズルベー
ン1の寸法精度を優れたものとすることができる。
また、前述したように翼部12は軸部11の一端部から突出するように設けられている
。すなわち、本実施形態のノズルベーン1は、片軸タイプのノズルベーンである。したが
って、軸加工工程において、両軸タイプのノズルベーンに比し、軸部11の加工時間を少
なくすることができるので、製造に要する時間をより短縮化することができる。
【0088】
また、焼結体50Cにおける表面付近の硬度と内部の硬度との差を小さく、かつ、焼結
体50Cの内部の硬度を極めて高いものとすることができる。そのため、得られるノズル
ベーン1は、上記の加工を施した部分でも、極めて高い硬度を有し、優れた耐久性を発揮
することができる。
さらに、センタ穴14は成形工程[1A]にて形成されたセンタ穴54Aに基づくもの
であり、センタ穴14を形成するための専用の工作機械を必要としないので、設備費を安
価なものとすることができる。そのため、上記のような耐久性および寸法精度に優れたノ
ズルベーン1を安価に製造することができる。
【0089】
かかる加工に用いる工作機械(加工装置)は、前述したようなセンタ穴14を用いて切
削加工および/または研削加工を行うものであれば、特に限定されず、各種工作機械(例
えば旋盤)を用いることができる。
また、軸加工工程では、その加工を焼結体50Cの軸部51Cの端面以外の部分に施す
。これにより、製造工程を簡略化し、製造に要する時間をより短縮化することができる。
前述したように、本発明によれば、焼結体50Cは、成形体50Aの相似形状をなすもの
となるため、軸部51Cの端面を極めて正確に軸線13に対し垂直となるように形成する
ことができる。また、ノズルベーン1では、軸部11の軸線13方向での寸法精度はそれ
ほど高精度を要しない。したがって、軸部51Cの端面に加工を別途施す必要がなく、こ
のような工程を省略することができる。
【0090】
また、軸加工工程では、その加工を焼結体50Cの平坦部55Cに対応する部分以外の
部分に施す。前述したように焼結体50Cは成形体50Aの相似形状をなすものとなるた
め、翼部52Cの突出方向と各平坦部55Cとのなす角度θを高精度に規定することがで
きる。ノズルベーン1は、平坦部15を有する軸部11を貫通孔または有底穴に嵌合させ
て取り付け、その貫通孔または有底穴の回動により回動させて用いる。ノズルベーン1に
あっては、その僅かな回動角によってノズルスロート(ノズル開口)が大きく変化するた
め、翼部12の突出方向と各平坦部15とのなす角度θを高精度に規定することは極めて
重要である。
【0091】
(翼加工工程(第1の翼加工工程))
また、翼部52Dの形成(第1の翼加工工程)に際しては、最終的に得られるノズルベ
ーン1の翼部12の軸部11側の端面を形成するように、翼部52Cの軸部51C側の端
面に切削加工および/または研削加工を施して、翼部52Dを形成する。
第1の翼加工工程(翼加工工程)では、その加工により焼結体50Cの翼部52Cの平
面視での幅を調整する。これにより、得られる翼部12の幅(平面視での帯状の幅)の寸
法精度を優れたものとすることができる。また、その際の加工代も少なくて済むので、寸
法精度を優れたものとしつつ、精密鋳造を用いた場合に比し加工に要する時間を短縮化す
ることができる。より具体的に説明すると、例えば、素材の翼部の平面視の幅の精度は、
精密鋳造で製造した場合、±0.2mm程度であるため、仮に素材に面取りを設けても、
上記の加工で除去されてしまう。一方、本発明では、素材の翼部の平面視の幅の精度を±
0.05mm程度とすることができる。したがって、上記の加工後でも、面取りを残すこ
とができる。
【0092】
本工程における加工は、前述した軸加工工程での加工と同様にセンタ穴14を用いて行
うことができる。また、軸加工工程および第1の翼加工工程は、順に行ってもよいし同時
に行ってもよい。
このように焼成工程[1D]の後または軸加工工程の後に焼結体50Cの翼部52Cに
切削加工および/または研削加工を含む加工を施すことで、得られる翼部12の寸法精度
を向上させることができる。
また、前述したように加工代が少なくて済むので、前述した焼結体50Cの面取り58
Cの一部を加工後に残して面取り18を形成することができる。
【0093】
<1E2>第2の加工工程
(翼加工工程(第2の翼加工工程))
次に、上記の工程<1E1>で得られた中間加工物50Dの翼部52Dの軸部11とは
反対側の端面に切削加工および/または研削加工を含む加工を施して、図8(b)に示す
ように、翼部12を形成する。これにより、軸部11および翼部12を有するノズルベー
ン1が得られる。
【0094】
本工程<1E2>では、翼部12を形成(第2の翼加工工程)するに際して、最終的に
得られるノズルベーン1の翼部12の軸部11とは反対側の端面を形成するように、翼部
52Dの軸部11とは反対側の端面に切削加工および/または研削加工を施して、翼部1
2を形成する。
第2の翼加工工程(翼加工工程)では、その加工により中間加工物50Dの翼部52D
の平面視での幅を調整する。これにより、得られる翼部12の幅(平面視での帯状の幅)
の寸法精度を優れたものとすることができる。また、その際の加工代も少なくて済むので
、寸法精度を優れたものとしつつ、精密鋳造を用いた場合に比し加工に要する時間を短縮
化することができる。
【0095】
本工程<1E2>の加工に際しては、上記の工程<1E1>と同様にセンタ穴14を用
いて行ってもよいし、上記の工程<1E1>で得られた軸部11を用いて行ってもよい。
かかる加工に用いる工作機械は、前述したようなセンタ穴14または軸部11を用いて
切削加工および/または研削加工を行うものであれば、特に限定されず、各種工作機械(
例えば旋盤)を用いることができる。
【0096】
このように焼成工程[1D]の後または軸加工工程の後に中間加工物50Dの翼部52
Dに切削加工および/または研削加工を含む加工を施すことで、得られる翼部12の寸法
精度を向上させることができる。
また、前述したように加工代が少なくて済むので、前述した中間加工物50Dの面取り
57Cの一部を加工後に残して面取り17を形成することができる。
【0097】
以上のようにしてノズルベーン1を製造することができる。
以上説明したようなノズルベーン1の製造方法によれば、焼結体50Cは、成形体50
Aの相似形状をなすものとなるため、反り等の問題を生じることなく、精密鋳造に比し優
れた寸法精度で製造することができる。また、成形工程[A]においてセンタ穴14とな
るべきセンタ穴54Aを形成することで、センタ穴14の中心の位置精度が極めて優れた
ものとなる。そのため、このようなセンタ穴14を用いて、焼結体50Cの軸部51Cに
切削加工および/または研削加工を含む加工を施すことで、その加工のための加工代を極
めて小さくし、その結果、かかる加工の時間を短縮化することができる。また、得られる
ノズルベーン1の寸法精度を優れたものとすることができる。
【0098】
また、焼結体50Cにおける表面付近の硬度と内部の硬度との差を小さく、かつ、焼結
体50Cの内部の硬度を極めて高いものとすることができる。そのため、得られるノズル
ベーン1は、上記の加工を施した部分でも、極めて高い硬度を有し、優れた耐久性を発揮
することができる。
さらに、センタ穴14を形成するための専用の工作機械を必要としないので、設備費を
安価なものとすることができる。そのため、上記のようなノズルベーン1を安価に製造す
ることができる。
【0099】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図9は、本発明の第2実施形態にかかるノズルベーンの側面図(翼部を平面視したとき
の図)、図10は、図9に示すノズルベーンの正面図および背面図((a)は、レバープ
レートとは反対側からみた図、(b)は、レバープレート側からみた図)である。
以下、第2実施形態のノズルベーンおよびその製造方法について、前述した第1実施形
態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0100】
(ノズルベーン)
本発明の第2実施形態にかかるノズルベーン1Aは、両軸タイプであり、翼部および軸
部の形状が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。
より具体的に説明すると、本実施形態のノズルベーン1Aは、図9に示すように、1対
の軸部11A、11Bおよび翼部12Aを有している。また、本実施形態では、軸部11
Aの他端部(図9にて左側の端部)には、軸部11Aの外側に突出するフランジ部16A
が形成されている。これと同様に、軸部11Bの他端部(図9にて右側の端部)には、軸
部11Bの外側に突出するフランジ部16Bが形成されている。
【0101】
図10に示すように、各軸部11A、11Bは、その主要部の横断面形状が軸線13を
中心軸とする円形をなしている。本実施形態では、軸部11Aは、第1の部分111と、
第2の部分112と、第3の部分113とを有している。第1の部分111は、軸部11
Aの翼部12A側に設けられ、ノズルマウント2に回動可能に支持される部分である。第
2の部分112は、軸部11Aの翼部12Aとは反対側に設けられ、レバープレート4に
固定される部分である。また、第2の部分112は、第1の部分111よりも小径な外径
となるように形成されている。また、第3の部分113は、第1の部分111と第2の部
分112との間に設けられ、第1の部分111側から第2の部分112側へ外径が漸減し
ている。
【0102】
また、軸部11Bは、支持プレート5に回動可能に支持されるものである。なお、本実
施形態の場合、支持プレート5には、軸部11Bを回動可能に支持するための貫通孔や有
底穴等で構成された係合部が形成されている。
そして、軸部11Aの一端面(図9にて右側の端面)には、センタ穴14Aが形成され
ている。また、軸部11Bの一端面(図9にて左側の端面)には、センタ穴14Bが形成
されている。これらのセンタ穴14A、14Bは、それぞれの中心が軸線13に一致する
ように形成されている。すなわち、センタ穴14A、14Bは、互いの中心が同一軸線上
に位置している。
【0103】
このようなセンタ穴14A、14Bは、それぞれ、後述するように、粉末冶金法により
形成され、ノズルベーン1Aの製造工程における軸加工工程および翼加工工程において、
旋盤等の工作機械(加工装置)のセンタに係合させて用いるものである。
また、軸部11Aの一端側(図9にて右側)の外周面には、軸線13を介して互いに対
向する1対の平坦部15A(2面カット部)が設けられている(図10(a)参照)。
【0104】
本実施形態では、各平坦部15Aは、翼部12Aの突出方向(翼面)に対してほぼ垂直
となるように形成されている。
このような軸部11Aと軸部11Bとの間、すなわち、軸部11Aおよび軸部11Bで
構成された軸部の途中には、翼部12Aが設けられている。このようなノズルベーン1A
は、1対の軸部11A、11Bのそれぞれに加工を要するため、特に加工時間の短縮化を
図るという観点で、本発明を適用することによる効果が顕著となる。
【0105】
この翼部12Aは、その平面視にて、図9に示すように、軸部11A、11Bの軸線1
3に垂直な方向に延在する帯状をなしている。また、軸部11Aからの翼部12Aの突出
長さは、一端側(図9にて下側)と他端側(図9にて上側)とでほぼ等しくなっている。
また、翼部12Aの平面視での幅方向(図9にて左右方向)での両端部における縁部に
は、面取り17A、18Aが施されている。
また、図10(a)および(b)に示すように、翼部12Aは、軸線13に垂直な方向
に略直線状に延在している。また、翼部12Aは、その主たる部分の厚さが一端側(図1
0にて右側)から他端側(図10にて左側)へ向け漸減している。
【0106】
以上説明したように構成されたノズルベーン1Aは、軸部11A、11Bおよび翼部1
2Aが粉末冶金法により一体的に形成されるとともに、軸部11Aがセンタ穴14A以外
の部分に切削加工および/または研削加工を含む加工が施され、また、軸部11Bがセン
タ穴14B以外の部分に切削加工および/または研削加工を含む加工が施されている。
このようなノズルベーン1Aによれば、前述した第1実施形態のノズルベーン1と同様
、優れた耐久性を有するとともに、所望の特性を発揮することができる。
【0107】
(ノズルベーンの製造方法)
次に、本発明のノズルベーンの製造方法について、上述したように構成されたノズルベ
ーン1の製造方法を例に説明する。
図11および図12は、それぞれ、図9に示すノズルベーンの製造方法を説明するため
の図(側面図)である。
【0108】
ノズルベーン1Aの製造方法は、[2A]成形体を製造する成形工程と、[2B]脱脂
処理を行う脱脂工程と、[2C]予備加工を行う予備加工工程と、[2D]焼成を行う焼
成工程と、[2E]本加工を行う加工工程(軸加工工程および翼加工工程を含む)とを有
する。
以下、各工程を工程順に詳細に説明する。
【0109】
[2A]成形工程
<2A1>
まず、金属粉末および有機バインダーとを用意し、これらを混練機により混練し、混練
物(組成物)を得る(組成物調製工程)。
本工程<2A1>は、前述した第1実施形態のノズルベーン1の製造方法における工程
<1A1>と同様にして行うことができる。
【0110】
<2A2>
次に、上記の工程2A1で得られた混練物を成形して、図11(a)に示すように、成
形体60Aを製造する。
この成形体60Aは、後述する工程[2D]で得られる焼結体60Cと同形状(相似形
状)をなすものである。より具体的には、成形体60Aは、軸部61A、69Aと、軸部
61A、69A間からその軸線13に垂直な方向に突出するように形成された翼部62A
とを備えている。ここで、加工代分の差異はあるが、成形体60Aは、ノズルベーン1A
とほぼ同形状をなす。したがって、軸部61Aの端面には、センタ穴64Aが形成され、
軸部61Aの外周面には、1対の平坦部65Aが形成されている。また、本実施形態では
、軸部69Aの端面には、センタ穴71Aが形成され、軸部61Aは、第1の部分611
Aと第2の部分612Aと第3の部分613Aとを有している。
また、翼部62Aの縁部に面取り67A、68Aが施されている。
本工程<2A2>は、前述した第1実施形態のノズルベーン1の製造方法における工程
<1A2>と同様にして行うことができる。
【0111】
[2B]脱脂工程
上記の工程[2A]で得られた成形体60Aに対し、脱脂処理(脱バインダー処理)を
施し、図11(b)に示すように、脱脂体60Bを得る。
ここで、脱脂体60Bは、成形体60Aと同形状(相似形状)をなすものである。より
具体的には、脱脂体60Bは、軸部61B、69Bと、軸部61B、69B間からその軸
線13に垂直な方向に突出するように形成された翼部62Bとを備えている。そして、軸
部61Bの端面には、センタ穴64Bが形成され、軸部61Bの外周面には、1対の平坦
部65Bが形成されている。また、本実施形態では、軸部69Bの端面には、センタ穴7
1Bが形成され、軸部61Bは、第1の部分611Bと第2の部分612Bと第3の部分
613Bとを有している。また、翼部62Bの縁部には、面取り67B、68Bが形成さ
れている。
本工程<2B>は、前述した第1実施形態のノズルベーン1の製造方法における工程<
1B>と同様にして行うことができる。
【0112】
[2C]予備加工工程
次に、必要に応じて、脱脂体60Bの軸部61B、69Bおよび/または翼部62Bに
対し、切削工程および/または研削工程を含む予備的な加工を施す。
脱脂体60Bは比較的軟質であるため、加工が容易である。そのため、このような予備
加工工程を脱脂工程[2B]の後かつ焼成工程[2D]の前に行うことで、最終的に得ら
れるノズルベーン1Aの寸法精度を優れたものとしつつ、加工に要する時間をより短縮化
することができる。
本工程における加工は、後述する加工工程[2E]での加工と同様にして行うことがで
きる。
【0113】
[2D]焼成工程
上記の工程[2B]で得られた脱脂体60B(または、上記の工程[2D]で得られた
予備加工後の脱脂体60B)を、焼成炉で焼成して焼結させ、図11(c)に示すように
、焼結体60Cを製造する。
ここで、焼結体60Cは、脱脂体60Bと同形状(相似形状)をなすものである。より
具体的には、焼結体60Cは、軸部61C、69Cと、軸部61C、69C間からその軸
線13に垂直な方向に突出するように形成された翼部62Cとを備えている。そして、軸
部61Cの端面には、センタ穴64Cが形成され、軸部61Cの外周面には、1対の平坦
部65Cが形成されている。また、本実施形態では、軸部69Cの端面には、センタ穴7
1Cが形成され、軸部61Cは、第1の部分611Cと第2の部分612Cと第3の部分
613Cとを有している。また、翼部62Cの縁部には、面取り67C、68Cが形成さ
れている。ここで、センタ穴64Cは、ノズルベーン1Aのセンタ穴14Aを構成するも
のである。また、センタ穴71Cは、ノズルベーン1Aのセンタ穴14Bを構成するもの
である。
本工程<2D>は、前述した第1実施形態のノズルベーン1の製造方法における工程<
1D>と同様にして行うことができる。
【0114】
[2E]加工工程
次に、上記の工程[2D]で得られた焼結体60Cに切削加工および/または研削加工
を含む加工(本加工)を施して、ノズルベーン1Aを形成する。
本実施形態では、加工工程[2E]は、<2E1>焼結体60Cの軸部61Cおよび翼
部62Cの軸部61C側の端面に切削加工および/または研削加工を含む加工を施す第1
の加工工程と、<2E2>焼結体60Cの軸部69Cおよび翼部62C(工程<2E1>
後の翼部62D)の軸部61Cとは反対側の端面に切削加工および/または研削加工を含
む加工を施す第2の加工工程を有している。
すなわち、本工程[2E]は、焼結体60Cの各軸部61C、69Cに切削加工および
/または研削加工を含む加工を施す軸加工工程と、焼結体60Cの翼部62C(翼部62
D)に切削加工および/または研削加工を含む加工を施す翼加工工程とを含むものである

【0115】
以下、第1の加工工程<2E1>および第2の加工工程<2E2>を順次詳細に説明す
る。
<2E1>第1の加工工程
加工工程[1E]では、まず、前述したような工程[1A]〜[1D](すなわち粉末
冶金法)を用いて得られた焼結体60C(素材)の軸部61Cおよび翼部62Cの軸部5
1C側の端面に切削加工および/または研削加工を含む加工を施して、図12(a)に示
すように、中間加工物60Dを得る。
【0116】
ここで、中間加工物60Dは、軸部11A、69Cと、軸部11A、69C間からその
軸線13に垂直な方向に突出するように形成された翼部62Dとを備えている。そして、
軸部11Aの端面には、センタ穴14Aが形成され、軸部11Aの外周面には、1対の平
坦部15Aが形成されている。また、翼部62Dの縁部には、面取り67C、18Aが形
成されている。
【0117】
(軸加工工程(第1の軸加工工程))
本工程<2E1>では、軸部11Aの形成(第1の軸加工工程)に際して、軸部61C
(成形体60Aの軸部61Aに対応する部分)の外周面のうち1対の平坦部65C以外の
部分に切削加工および/または研削加工を施して、所望の外径寸法および軸線位置を有す
る軸部11Aを形成する。
【0118】
本実施形態では、かかる加工を、軸部61Cの第1の部分611Cの外周面に施す。か
かる部分は、ノズルマウント2に回動可能に支持される部分であり、高精度に形成するこ
とで、ノズルベーン1Aの設置の位置精度を高精度なものとすることができる。一方、軸
部61Cのうち第1の部分611C以外の部分、すなわち、第2の部分612C等は、ノ
ズルベーン1Aの設置の位置精度にあまり関わらず、必要な寸法精度を有しているため、
上記の加工を省略することができる。
特に、本工程<2E1>の加工に際しては、センタ穴14Aおよび/またはセンタ穴1
4Bを用いて行うことができるが、センタ穴14Aおよびセンタ穴14Bの双方を用いて
行うのが好ましい。これにより、上記の加工をより高精度なものとすることができる。
【0119】
(翼加工工程(第1の翼加工工程))
また、翼部62Dの形成(第1の翼加工工程)に際しては、最終的に得られるノズルベ
ーン1Aの翼部12Aの軸部11A側の端面を形成するように、翼部62Cの軸部61C
側の端面に切削加工および/または研削加工を施して、翼部62Dを形成する。
第1の翼加工工程(翼加工工程)では、その加工により焼結体60Cの翼部62Cの平
面視での幅を調整する。
【0120】
本工程における加工は、前述した第1の軸加工工程での加工と同様にセンタ穴14Aお
よび/またはセンタ穴14Bを用いて行うことができる。また、第1の軸加工工程および
第1の翼加工工程は、順に行ってもよいし同時に行ってもよい。
本工程<2E1>は、前述した第1実施形態のノズルベーン1の製造方法における工程
<1E1>と同様にして行うことができる。
【0121】
<2E2>第2の加工工程
次いで、中間加工物60Dの軸部69Cおよび翼部62Dの軸部69C側の端面に切削
加工および/または研削加工を含む加工を施して、図12(b)に示すように、ノズルベ
ーン1Aを得る。
【0122】
(軸加工工程(第2の軸加工工程))
本工程<2E2>では、軸部11Bの形成(第2の軸加工工程)に際して、軸部69C
(成形体60Aの軸部69Aに対応する部分)の外周面に切削加工および/または研削加
工を施して、所望の外径寸法および軸線位置を有する軸部11Bを形成する。
(翼加工工程(第2の翼加工工程))
また、翼部12Aを形成(第2の翼加工工程)するに際して、最終的に得られるノズル
ベーン1Aの翼部12Aの軸部69C側(軸部11B側)の端面を形成するように、翼部
62Dの軸部69C側の端面に切削加工および/または研削加工を施して、翼部12Aを
形成する。
【0123】
第2の翼加工工程(翼加工工程)では、その加工により翼部62Dの平面視での幅を調
整する。
本工程における加工は、前述した第1の軸加工工程での加工と同様にセンタ穴14Aお
よび/またはセンタ穴14Bを用いて行うことができ、また、センタ穴14Aに代えて、
上記の工程<E1>で得られた軸部11Aを用いることもできる。
以上のようにしてノズルベーン1Aを製造することができる。
【0124】
以上、本発明のノズルベーンの製造方法、ノズルベーン、可変ノズル機構およびターボ
チャージャについて、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定される
ものではない。
例えば、ノズルベーンの製造方法では、必要に応じて、任意の工程を追加することもで
きる。
【0125】
また、ノズルベーンの形状は、軸部と、該軸部からその軸線に垂直な少なくとも1方向
に突出するように形成された翼部とを備えるものであれば、前述した実施形態のものに限
定されず、例えば、軸部からその軸線に垂直な1方向に突出するように翼部が形成されて
いてもよい。
また、前述した実施形態では、平坦部を1対設けた場合を説明したが、平坦部の数は1
つまたは3つ以上であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるターボチャージャを示す縦断面図である。
【図2】図1に示すターボチャージャに備えられた可変ノズル機構を説明するための図((a)は、レバープレート側からみた図、(b)は、(a)のA−A線断面図)である。
【図3】図2に示す可変ノズル機構の作用を説明するための図(レバープレート側からみた正面図)である。
【図4】図2に示す可変ノズル機構に備えられたノズルベーンの側面図(翼部を平面視したときの図)である。
【図5】図4に示すノズルベーンの正面図および背面図((a)は、レバープレートとは反対側からみた図、(b)は、レバープレート側からみた図)である。
【図6】本発明のノズルベーンの製造方法を説明するための工程図である。
【図7】図4に示すノズルベーンの製造方法を説明するための図(側面図)である。
【図8】図4に示すノズルベーンの製造方法を説明するための図(側面図)である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかるノズルベーンの側面図(翼部を平面視したときの図)である。
【図10】図9に示すノズルベーンの正面図および背面図((a)は、レバープレートとは反対側からみた図、(b)は、レバープレート側からみた図)である。
【図11】図9に示すノズルベーンの製造方法を説明するための図(側面図)である。
【図12】図9に示すノズルベーンの製造方法を説明するための図(側面図)である。
【符号の説明】
【0127】
1、1A……ノズルベーン 2……ノズルマウント 3……ドライブリンク 3a……
溝 3b……駆動溝 4……レバープレート 4a……連結ピン部 4b……貫通孔 5
……支持プレート 6……ノズルサポート 10……ターボチャージャ 11、11A、
11B、51A、51B、51C、61A、61B、61C、69A、69B、69C…
…軸部 12、12A、52A、52B、52C、52D、62A、62B、62C、6
2D……翼部 13……軸線 14、14A、14B、54A、54B、54C、64A
、64B、64C、71A、71B、71C……センタ穴 15、15A、55A、55
B、55C、65A、65B、65C……平坦部 16、16A、16B……フランジ部
17、18、17A、18A、57A、57B、57C、58A、58B、58C、6
7A、67B、67C、68A、68B、68C……面取り 20……VGタービン 2
1……タービンホイール 22……タービンケーシング 23……可変ノズル機構 24
……駆動機構 25……スクロール 26……排気ガス出口 27……アクチュエータロ
ッド 28……アクチュエータ 30……コンプレッサ 31……コンプレッサホイール
32……コンプレッサケーシング 41……軸受ハウジング 42……軸受 43……
タービンロータ 44……回転軸心 50A、60A……成形体 50B、60B……脱
脂体 50C、60C……焼結体 50D、60D……中間加工物 111、611A、
611B、611C……第1の部分 112、612A、612B、612C……第2の
部分 113、613A、613B、613C……第3の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末と有機バインダーとを含む組成物を成形して、軸部と、該軸部からその軸線に
垂直な少なくとも1方向に突出するように形成された翼部と、前記軸部の少なくとも一方
の端面に形成されたセンタ穴とを備える成形体を得る成形工程と、
前記成形体中から前記有機バインダーを除去して、脱脂体を得る脱脂工程と、
前記脱脂体を焼成して、焼結体を得る焼成工程と、
前記焼結体の前記センタ穴に対応する部分を用いて、前記焼結体の前記軸部に対応する
部分に切削加工および/または研削加工を含む加工を施す軸加工工程とを有することを特
徴とするノズルベーンの製造方法。
【請求項2】
前記軸加工工程では、その加工を前記焼結体の前記軸部に対応する部分の端面以外の部
分に施す請求項1に記載のノズルベーンの製造方法。
【請求項3】
前記焼成工程の後または前記軸加工工程の後に、前記焼結体の前記翼部に対応する部分
に切削加工および/または研削加工を含む加工を施す翼加工工程を有する請求項1または
2に記載のノズルベーンの製造方法。
【請求項4】
前記翼部は、その平面視にて、前記軸部の軸線に直交する帯状をなしており、前記翼加
工工程では、その加工により前記焼結体の前記翼部に対応する部分の平面視での幅を調整
する請求項3に記載のノズルベーンの製造方法。
【請求項5】
前記成形工程では、前記翼部の縁部に面取りが施されている請求項3または4に記載の
ノズルベーンの製造方法。
【請求項6】
前記脱脂工程の後かつ前記焼成工程の前に、前記脱脂体の前記翼部および/または前記
軸部に対応する部分に切削加工および/または研削加工を含む予備的な加工を施す予備加
工工程を有する請求項1ないし5のいずれかに記載のノズルベーンの製造方法。
【請求項7】
前記成形工程では、前記軸部の外周面に平坦部が形成され、
前記軸加工工程では、その加工を前記焼結体の前記平坦部に対応する部分以外の部分に
施す請求項1ないし6のいずれかに記載のノズルベーンの製造方法。
【請求項8】
前記平坦部は、前記軸部の軸線を介して1対設けられている請求項7に記載のノズルベ
ーンの製造方法。
【請求項9】
前記平坦部は、当て付け面に当て付けられることにより前記軸部の軸線まわりの回動角
を規制するためのものである請求項7または8に記載のノズルベーンの製造方法。
【請求項10】
前記翼部は、前記軸部の一端部から突出するように設けられている請求項1ないし9の
いずれかに記載のノズルベーンの製造方法。
【請求項11】
前記翼部は、前記軸部の途中から突出するように設けられている請求項1ないし9のい
ずれかに記載のノズルベーンの製造方法。
【請求項12】
前記成形工程では、金属粉末射出成形法により前記成形体を得る請求項1ないし9のい
ずれかに記載のノズルベーンの製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載のノズルベーンの製造方法によって製造されたこ
とを特徴とするノズルベーン。
【請求項14】
軸部と、該軸部からその軸線に垂直な少なくとも1方向に突出するように形成された翼
部とを備えるノズルベーンであって、
前記翼部および前記軸部は、粉末冶金法により一体的に形成されるとともに、
前記軸部の少なくとも一方の端面には、センタ穴が形成され、前記軸部は、前記センタ
穴以外の部分に切削加工および/または研削加工を含む加工が施されていることを特徴と
するノズルベーン。
【請求項15】
切削加工および/または研削加工を含む加工が施された部位の表面のビッカーズ硬度H
VをAとし、当該加工が施されていない部位の表面のビッカーズ硬度HVをBとしたとき
に、Aが、200以上であり、かつ、A/Bが、0.6〜1である請求項13または14
に記載のノズルベーン。
【請求項16】
請求項13ないし15のいずれかに記載のノズルベーンを複数備えることを特徴とする
可変ノズル機構。
【請求項17】
請求項16に記載の可変ノズル機構を備えることを特徴とするターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−293417(P2009−293417A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145534(P2008−145534)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】