説明

ノズル吸引式の対象物の搬送装置、搬送方法及びこれらに用いられるプログラム

【課題】磁気ヘッドのスライダチップなどの微小部品のノズル吸引式による搬送装置において、従来の装置構成に変更を加えることなく、自動的に、ノズル吸着位置のずれによる影響を最小限に抑えて搬送不良を防止することができる搬送装置及び搬送方法を提供する。
【解決手段】ノズル吸着位置がずれた場合であっても、ノズルを回転させてノズル吸着位置のずれの影響が最小限となるノズル回転位置を撮像画像から検出し、その回転位置にて搬送を行うことにより、ノズル吸着位置のずれに対する調整を自動的に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル吸引式の対象物の搬送装置、搬送方法及びこれらに用いられるプログラムに関し、特に、磁気ディスク装置に用いる磁気ヘッドのスライダチップなどの微小寸法部品の搬送装置、搬送方法及びこれらに用いられるプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
物品の製造現場においては、一連の製造工程において、前工程から次工程へと部品や半完成品を自動搬送することが必要となる。搬送方法としては、ベルトコンベヤなどが一般的であるが、一方で、重量の低い微小部品については、その平面を吸気ノズルにより吸着して搬送する方法が広く実施されている。特に、搬送先での裁置動作において精密な位置合わせを要する場合には、ノズル軸に垂直な平面方向に移動自在な搬送ノズルを用いた搬送方法が適している。
【0003】
ノズル吸引式により微小部品の搬送が行われる例としては、磁気ディスク装置に用いる磁気ヘッドのスライダチップが挙げられる。磁気ヘッドのスライダチップは、磁気ディスクのアーム先端に取り付けられる磁性部品であり、平面寸法が各辺1mm前後、厚さが0.3mm前後の略直方体のチップ状部材である。このスライダチップは、製造された後、図5に示すようなトレイに収納されて、次工程に移送されたり、出荷されたりするものである。このようなトレイに微小なスライダチップを確実に収納するには、搬送ノズルの位置決めの正確さが要求される。尚、図5に示す例では、トレイは、25列×20行の収容ポケットを有しており、各ポケットの寸法は0.92mm×1.08mmであり、500個のスライダチップを収納することができる。
【0004】
特許文献1には、上記背景技術に関するノズル吸引式の対象物の搬送及びその位置決めに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−72282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6は、磁気ヘッドのスライダチップのような微小部品のノズル吸引式による搬送装置の一般的な例を示す図である。図6に示すように、略鉛直方向に軸を有するノズルは、保持体により保持されており、保持体はガイドレール上を水平方向に移動する。ノズルは、保持体によりその軸に沿った上下方向(Z軸方向とする)及びその軸回りの回転方向(θ方向とする)に駆動制御される。また、トレイは、その支持体により水平方向(X軸方向及びY軸方向とする)に駆動制御される。
【0007】
このように構成された搬送装置は、図7(A)に模式的に示すように、治具上でスライダ原材料から剥離されたスライダチップをノズル先端に吸着し、保持体をガイドレール上を水平移動させ、図5に示すようなトレイ上の所定位置に配置することができる。こうして、原材料からのスライダチップの剥離から、搬送、トレイ収納までが自動で行われる。
【0008】
ところが、実際には、図7(B)に模式的に示すように、ノズルの軸とスライダチップの中心とがずれてしまう場合があり、結果として、トレイに正常に収納できないという問題点があった。しかしながら、従来の微小部品のノズル吸引式による搬送装置においては、ノズルはその軸方向に沿った上下移動と軸回りの回転移動は可能であるが、その保持体に対しては固定されているため、ノズル軸に平行な方向での位置調整を行うことはできなかった。
【0009】
この問題点を解決するためには、ノズルをその保持体に対して可動とすることが考えられるが、ミリメートル単位の微小な装置構成において、ノズルの駆動制御手段やスライダチップの中心位置を検出する手段を備えることは極めて困難である。また、ノズルの吸着位置は初期設定されているが、吸着位置がずれる度に作業員がスライダチップの中心位置を確認してノズルの吸着位置を調整するのでは、手間と時間がかかりすぎてしまう。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、磁気ヘッドのスライダチップなどの微小部品のノズル吸引式による搬送装置において、従来の装置構成に変更を加えることなく、自動的に、ノズル吸着位置のずれによる影響を最小限に抑えて搬送不良を防止することができる搬送装置、搬送方法及びこれらに用いられるプログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記解決課題に鑑みて鋭意研究の結果、本発明者は、従来の微小部品のノズル吸引式による搬送装置が有しているノズル回転駆動手段に着目し、ノズル吸着位置がずれた場合であっても、ノズルを回転させてノズル吸着位置のずれの影響が最小限となるノズル回転位置を検出し、その回転位置にて搬送を行うこととすれば、ノズル吸着位置のずれに対する調整を自動的に行うことができることに想到し、本発明を成すに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、略円形の吸気口を先端に有する吸着ノズルと、当該ノズルをその軸回り回転方向に駆動可能に保持する保持具と、当該保持具を搬送する搬送手段とを有し、前記吸着ノズルが吸気口に対象物を吸着して保持し、前記搬送手段が前記保持具を所定位置まで搬送し、前記吸着ノズルが吸気口からの吸気を停止することにより対象物を離脱させる対象物の搬送装置において、搬送路上に配置された撮像手段を制御して、前記吸着ノズルの下端面の撮像画像を取得する手段と、前記吸着ノズルの軸回り回転方向における複数の回転位置における下端面の撮像画像を取得し、当該複数の回転位置における前記吸着ノズル下端面の撮像画像に基づいて、前記吸着ノズルの吸着位置中心点が予め設定された吸着位置中心点に最も近くなる前記吸着ノズルの軸回り回転位置を求め、前記保持具により前記吸着ノズルを当該求められた軸回り回転位置まで回転させるノズル回転位置調整手段とを有することを特徴とする対象物の搬送装置を提供するものである。
【0013】
本発明の対象物の搬送装置において、前記ノズル回転位置調整手段は、前記吸着ノズルの下端面の各軸回り回転位置における撮像画像に表れる前記略円形の吸気口の内周円又は外周円を認識し、当該内周円又は外周円の中心点をそれぞれ求め、各中心点の座標情報と撮像画像上での前記予め設定された吸着位置中心点の座標情報とに基づいて、前記予め設定された吸着位置中心点に最も近くなる前記吸着ノズルの軸回り回転位置を求めることを特徴とする。
【0014】
本発明の対象物の搬送装置において、前記ノズル回転位置調整手段は、前記吸着ノズルの下端面の各軸回り回転位置における撮像画像に表れる前記略円形の吸気口の内周円又は外周円を認識し、当該内周円又は外周円の中心点をそれぞれ求め、各中心点が円周を構成する円とその中心点を求め、当該円の中心点と撮像画像上での前記予め設定された吸着位置中心点とを結ぶ直線を求め、当該直線と前記求めた円の円周との交点のうち前記予め設定された吸着位置中心点に最も近い交点を求め、当該交点と、当該円周上にある他の内周円又は外周円の中心点との相対的位置関係に基づき、前記予め設定された吸着位置中心点に最も近くなる前記吸着ノズルの軸回り回転位置を求めることを特徴とする。
【0015】
本発明の対象物の搬送装置は、特に、磁気ヘッドの先端に設けられるスライダ部材を搬送の対象物とするのが好適である。
【0016】
本発明は、また、略円形の吸気口を先端に有する吸着ノズルと、当該ノズルをその軸回り回転方向に駆動可能に保持する保持具と、当該保持具を搬送する搬送手段とを有し、前記吸着ノズルが吸気口に対象物を吸着して保持し、前記搬送手段が前記保持具を所定位置まで搬送し、前記吸着ノズルが吸気口からの吸気を停止することにより対象物を離脱させる対象物の搬送方法であって、搬送路上に配置された撮像手段を制御して、前記吸着ノズルの軸回り回転方向における複数の回転位置における下端面の撮像画像を取得し、当該複数の回転位置における前記吸着ノズル下端面の撮像画像に基づいて、前記吸着ノズルの吸着位置中心点が予め設定された吸着位置中心点に最も近くなる前記吸着ノズルの軸回り回転位置を求め、前記保持具により前記吸着ノズルを当該求められた軸回り回転位置まで回転させることを特徴とする対象物の搬送方法を提供するものである。
【0017】
本発明は、また、略円形の吸気口を先端に有する吸着ノズルと、当該ノズルをその軸回り回転方向に駆動可能に保持する保持具と、当該保持具を搬送する搬送手段とを有し、前記吸着ノズルが吸気口に対象物を吸着して保持し、前記搬送手段が前記保持具を所定位置まで搬送し、前記吸着ノズルが吸気口からの吸気を停止することにより対象物を離脱させる対象物の搬送方法であって、搬送路上に配置された撮像手段を制御して、前記吸着ノズルの軸回り回転方向における複数の回転位置における下端面の撮像画像を取得し、当該複数の回転位置における前記吸着ノズル下端面の各撮像画像に表れる前記略円形の吸気口の内周円又は外周円を認識し、当該内周円又は外周円の中心点をそれぞれ求め、各中心点の座標情報と撮像画像上での前記予め設定された吸着位置中心点の座標情報とに基づいて、前記予め設定された吸着位置中心点に最も近くなる前記吸着ノズルの軸回り回転位置を求め、前記保持具により前記吸着ノズルを当該求められた軸回り回転位置まで回転させることを特徴とする対象物の搬送方法を提供するものである。
【0018】
本発明は、また、略円形の吸気口を先端に有する吸着ノズルと、当該ノズルをその軸回り回転方向に駆動可能に保持する保持具と、当該保持具を搬送する搬送手段とを有し、前記吸着ノズルが吸気口に対象物を吸着して保持し、前記搬送手段が前記保持具を所定位置まで搬送し、前記吸着ノズルが吸気口からの吸気を停止することにより対象物を離脱させる対象物の搬送方法であって、搬送路上に配置された撮像手段を制御して、前記吸着ノズルの軸回り回転方向における複数の回転位置における下端面の撮像画像を取得し、当該複数の回転位置における前記吸着ノズル下端面の各撮像画像に表れる前記略円形の吸気口の内周円又は外周円を認識し、当該内周円又は外周円の中心点をそれぞれ求め、各中心点が円周を構成する円とその中心点を求め、当該円の中心点と撮像画像上での前記予め設定された吸着位置中心点とを結ぶ直線を求め、当該直線と前記求めた円の円周との交点のうち前記予め設定された吸着位置中心点に最も近い交点を求め、当該交点と、当該円周上にある他の内周円又は外周円の中心点との相対的位置関係に基づき、前記予め設定された吸着位置中心点に最も近くなる前記吸着ノズルの軸回り回転位置を求め、前記保持具により前記吸着ノズルを当該求められた軸回り回転位置まで回転させることを特徴とする対象物の搬送方法を提供するものである。
【0019】
本発明の対象物の搬送方法は、特に、磁気ヘッドの先端に設けられるスライダ部材を搬送の対象物とするのが好適である。
【0020】
本発明は、また、略円形の吸気口を先端に有し対象物を吸着可能な吸着ノズルと、当該ノズルをその軸回り回転方向に駆動可能に保持する保持具と、当該保持具を搬送する搬送手段とを有する対象物の搬送装置において前記吸着ノズルの軸回り回転位置を自動調整するためのプログラムであって、搬送路上に配置された撮像手段から、前記吸着ノズルの軸回り回転方向における複数の回転位置における下端面の撮像画像を取得するステップと、当該複数の回転位置における前記吸着ノズル下端面の各撮像画像に表れる前記略円形の吸気口の内周円又は外周円を認識するステップと、当該内周円又は外周円の中心点をそれぞれ求めるステップと、各中心点の座標情報と撮像画像上での前記予め設定された吸着位置中心点の座標情報とに基づいて、前記予め設定された吸着位置中心点に最も近くなる前記吸着ノズルの軸回り回転位置を求めるステップと、当該求められた前記吸着ノズルの軸回り回転位置の情報を前記搬送装置に出力するステップとをコンピュータに実行させるプログラムを提供するものである。
【0021】
本発明は、また、略円形の吸気口を先端に有し対象物を吸着可能な吸着ノズルと、当該ノズルをその軸回り回転方向に駆動可能に保持する保持具と、当該保持具を搬送する搬送手段とを有する対象物の搬送装置において前記吸着ノズルの軸回り回転位置を自動調整するためのプログラムであって、搬送路上に配置された撮像手段から、前記吸着ノズルの軸回り回転方向における複数の回転位置における下端面の撮像画像を取得するステップと、当該複数の回転位置における前記吸着ノズル下端面の各撮像画像に表れる前記略円形の吸気口の内周円又は外周円を認識するステップと、当該内周円又は外周円の中心点をそれぞれ求めるステップと、各中心点が円周を構成する円とその中心点を求めるステップと、当該円の中心点と撮像画像上での前記予め設定された吸着位置中心点とを結ぶ直線を求めるステップと、当該直線と前記求めた円の円周との交点のうち前記予め設定された吸着位置中心点に最も近い交点を求めるステップと、当該交点と、当該円周上にある他の内周円又は外周円の中心点との相対的位置関係に基づき、前記予め設定された吸着位置中心点に最も近くなる前記吸着ノズルの軸回り回転位置を求めるステップと、当該求められた前記吸着ノズルの軸回り回転位置の情報を前記搬送装置に出力するステップとをコンピュータに実行させるプログラムを提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
以上、説明したように、本発明のノズル吸引式の対象物の搬送装置、搬送方法及びこれらに用いられるプログラムによれば、従来の装置構成に変更を加えることなく、自動的に、ノズル吸着位置のずれによる影響を最小限に抑えて搬送不良を防止することができる。
【0023】
また、本発明のノズル吸引式の対象物の搬送装置におけるカメラを含む撮像系は、搬送装置とは独立した構成であるので、搬送装置の装置構成による制約を受けることなく、あらゆる種類の搬送装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態として、スライダチップの搬送装置の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】図1に示すスライダチップの搬送装置において、カメラにより撮像されるノズル下端面の画像の例を示す図である。
【図3】図1に示すスライダチップの搬送装置における回転位置修正工程の処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図1に示すスライダチップの搬送装置における回転位置修正工程の原理を説明するための図である。
【図5】従来用いられている、製造された磁気ヘッドのスライダチップを収納するためのトレイを示す図である。
【図6】磁気ヘッドのスライダチップのような微小部品のノズル吸引式による搬送装置の一般的な例を示す図である。
【図7】図6に示す搬送装置における微小部品の搬送動作を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のノズル吸引式の対象物の搬送装置、搬送方法及びこれらに用いられるプログラムを実施するための最良の形態として、磁気ヘッドのスライダチップの搬送装置について詳細に説明する。図1〜図4は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
[構成]
図1は、本実施形態のスライダチップの搬送装置の全体構成を概略的に示す図である。
図1において、この搬送装置は、図6に示す従来の搬送装置と同様の構成に加えて、スライダチップの吸着工程からトレイ収納工程までの搬送路上に、カメラを備えていることを特徴とする。このカメラは、主制御部からカメラ制御部を通じて制御される。尚、主制御部、カメラ制御部及びロボット制御部は、制御プログラムと入出力手段を有するコンピュータとして構成することができる。
[動作]
1.ノズル吸着工程
図1に示すスライダチップの搬送装置の動作について説明する。
まず、図1における右側の治具の上方にノズルを保持する保持体を配置し、ノズルをX軸下方向に駆動してノズル先端をスライダ原材料から剥離されたスライダチップに接近又は接触させ、プッシャーで押しながらノズル先端から空気吸引を行うことにより、ノズル先端にスライダチップを吸着保持する。その後、吸引を継続しながら、ノズルをX軸上方向に駆動してノズル先端を治具から離隔させる。
2.トレイ配置工程
次に、図1における左側のトレイ上方の所定位置にノズルを保持する保持体を配置する。これに対して、トレイはX軸及びY軸方向に駆動制御され、ノズルが保持するスライダチップを収納すべきポケットが当該スライダチップの鉛直下方に位置するように位置決めされている。保持体はノズルをX軸下方向に駆動してノズル先端に保持しているスライダチップをポケットに収容させるとともに、ノズル先端からの吸気を停止してスライダチップを離脱させる。
以上のようなノズル吸着工程及びトレイ配置工程を繰り返すことにより、原材料から剥離されたスライダチップは、トレイ上に自動搬送され収納される。
3.回転位置修正工程
続いて、本実施形態のスライダチップの搬送装置におけるノズルの回転位置修正工程について説明する。この工程は、スライダチップの搬送作業時に随時行うものではなく、例えば、毎日の搬送装置稼動開始時に行うか、一定期間ごとに行うか、あるいは搬送不良発生時に行うなどするものである。
図1における中央のカメラの上方にノズルを保持しない状態の保持体を配置する。この際、正しいノズル回転軸中心とカメラの撮像中心点の水平位置が一致するように配置する。正しいノズル回転軸中心の位置は初期設定していてもよいし、カメラによるノズル下端面の撮像画像に基づいて正しいノズル回転軸中心を検出して位置決めしてもよい。
続いて、保持体がノズルを所定の角位置まで回転させるとともに、カメラがノズル下端面を撮像する。本実施形態では、例えば、0度(所定の角位置原点)、120度、240度の3つの角位置で撮像するものとする。図2は、カメラにより撮像されるノズル下端面の画像の例を示す図である。図示するように、撮像画像において、ノズル下端面の画像からノズルの外周円と内周円とを認識することができる。特に、ノズルの外周円は明瞭に表れるので、この略円形の外周円からノズル中心軸の位置座標を検出することができる。また、図示するように、カメラの撮像中心点(中心円)とノズルの外周円(又は内周円)とのずれ量(相関値)を検出することができる。以上の情報に基づいて、ノズルの最適角位置を求めることができる。尚、このノズルの最適角位置の算出のための計算処理は後述する。図3は、以上の回転位置修正工程の処理の流れを示すフローチャートである。
この回転位置修正工程では、それぞれの角位置で撮像したノズルの外周円画像とカメラの撮像中心点とを比較し、ノズルの回転位置をカメラの撮像中心点から最もずれが少ない角位置に合わせるよう位置修正を行う。このように、本実施形態のスライダチップの搬送装置では、ノズル吸着位置が水平方向にずれた場合でも、ノズルの回転位置を修正することにより、最もずれの影響が少ない状態にノズルを自動調整し、スライダチップの搬送作業を開始することができる。
4.ノズルの最適角位置の算出ステップ
ここで、本実施形態のスライダチップの搬送装置の回転位置修正工程において、ノズル中心軸座標とカメラの撮像中心点との位置関係情報に基づきノズルの最適角位置を算出する方法について詳細に説明する(図3のノズルの最適角位置の算出ステップ)。
まず、上記の回転位置修正工程の原理について、図4を参照しながら説明する。上記の通り、回転位置修正工程では、角位置0度、120度、240度それぞれにおけるノズルの外周円画像(イ)、(ロ)、(ハ)から、それらの中心座標α,β,γが求められている。ここで、3つの外周円の中心座標を通過する円(ニ)を求め、その中心座標(e)とカメラ撮像中心点(f)とを結ぶ直線を求め、この直線と円(ニ)との接点(g),(h)を求める。
続いて、カメラ撮像中心点(f)と角位置0度におけるノズル外周円の中心点αとを結ぶ線分を求め、また、カメラ撮像中心点(f)と、求めた2つの接点(g),(h)のうちカメラ撮像中心点(f)に近いほうの接点(g)とを結ぶ線分を求め、これらの線分の成す角Aを求める。ここで、カメラ撮像中心点(f)は、ノズルの理想中心位置である。そうすると、ノズル外周円の中心点とカメラ撮像中心点(f)との距離が最小となるとき、すなわちノズル外周円の中心点が接点(g)に一致するときが、ノズルの理想位置とのずれが最も小さい状態であるといえる。そこで、ノズルの回転位置を角位置0度から角度Aだけ回転させることにより、最適なノズル回転位置とすることができる。
以上、本発明のノズル吸引式の対象物の搬送装置、搬送方法及びこれらに用いられるプログラムについて、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記各実施形態におけるノズル、保持体、カメラ、トレイ、制御系などの構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のノズル吸引式の対象物の搬送装置、搬送方法及びこれらに用いられるプログラムは、磁気ヘッドのスライダチップのような微小部品のみならず、広く製造業の製造現場において対象物の搬送技術及び位置決め技術として利用することができるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円形の吸気口を先端に有する吸着ノズルと、当該ノズルをその軸回り回転方向に駆動可能に保持する保持具と、当該保持具を搬送する搬送手段とを有し、前記吸着ノズルが吸気口に対象物を吸着して保持し、前記搬送手段が前記保持具を所定位置まで搬送し、前記吸着ノズルが吸気口からの吸気を停止することにより対象物を離脱させる対象物の搬送装置において、
搬送路上に配置された撮像手段を制御して、前記吸着ノズルの下端面の撮像画像を取得する手段と、
前記吸着ノズルの軸回り回転方向における複数の回転位置における下端面の撮像画像を取得し、当該複数の回転位置における前記吸着ノズル下端面の撮像画像に基づいて、前記吸着ノズルの吸着位置中心点が予め設定された吸着位置中心点に最も近くなる前記吸着ノズルの軸回り回転位置を求め、前記保持具により前記吸着ノズルを当該求められた軸回り回転位置まで回転させるノズル回転位置調整手段とを有することを特徴とする対象物の搬送装置。
【請求項2】
前記ノズル回転位置調整手段は、前記吸着ノズルの下端面の各軸回り回転位置における撮像画像に表れる前記略円形の吸気口の内周円又は外周円を認識し、当該内周円又は外周円の中心点をそれぞれ求め、各中心点の座標情報と撮像画像上での前記予め設定された吸着位置中心点の座標情報とに基づいて、前記予め設定された吸着位置中心点に最も近くなる前記吸着ノズルの軸回り回転位置を求めることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記ノズル回転位置調整手段は、前記吸着ノズルの下端面の各軸回り回転位置における撮像画像に表れる前記略円形の吸気口の内周円又は外周円を認識し、当該内周円又は外周円の中心点をそれぞれ求め、各中心点が円周を構成する円とその中心点を求め、当該円の中心点と撮像画像上での前記予め設定された吸着位置中心点とを結ぶ直線を求め、当該直線と前記求めた円の円周との交点のうち前記予め設定された吸着位置中心点に最も近い交点を求め、当該交点と、当該円周上にある他の内周円又は外周円の中心点との相対的位置関係に基づき、前記予め設定された吸着位置中心点に最も近くなる前記吸着ノズルの軸回り回転位置を求めることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記対象物は、磁気ヘッドの先端に設けられるスライダ部材であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
略円形の吸気口を先端に有する吸着ノズルと、当該ノズルをその軸回り回転方向に駆動可能に保持する保持具と、当該保持具を搬送する搬送手段とを有し、前記吸着ノズルが吸気口に対象物を吸着して保持し、前記搬送手段が前記保持具を所定位置まで搬送し、前記吸着ノズルが吸気口からの吸気を停止することにより対象物を離脱させる対象物の搬送方法であって、
搬送路上に配置された撮像手段を制御して、前記吸着ノズルの軸回り回転方向における複数の回転位置における下端面の撮像画像を取得し、
当該複数の回転位置における前記吸着ノズル下端面の撮像画像に基づいて、前記吸着ノズルの吸着位置中心点が予め設定された吸着位置中心点に最も近くなる前記吸着ノズルの軸回り回転位置を求め、
前記保持具により前記吸着ノズルを当該求められた軸回り回転位置まで回転させることを特徴とする対象物の搬送方法。
【請求項6】
略円形の吸気口を先端に有する吸着ノズルと、当該ノズルをその軸回り回転方向に駆動可能に保持する保持具と、当該保持具を搬送する搬送手段とを有し、前記吸着ノズルが吸気口に対象物を吸着して保持し、前記搬送手段が前記保持具を所定位置まで搬送し、前記吸着ノズルが吸気口からの吸気を停止することにより対象物を離脱させる対象物の搬送方法であって、
搬送路上に配置された撮像手段を制御して、前記吸着ノズルの軸回り回転方向における複数の回転位置における下端面の撮像画像を取得し、
当該複数の回転位置における前記吸着ノズル下端面の各撮像画像に表れる前記略円形の吸気口の内周円又は外周円を認識し、
当該内周円又は外周円の中心点をそれぞれ求め、
各中心点の座標情報と撮像画像上での前記予め設定された吸着位置中心点の座標情報とに基づいて、前記予め設定された吸着位置中心点に最も近くなる前記吸着ノズルの軸回り回転位置を求め、
前記保持具により前記吸着ノズルを当該求められた軸回り回転位置まで回転させることを特徴とする対象物の搬送方法。
【請求項7】
略円形の吸気口を先端に有する吸着ノズルと、当該ノズルをその軸回り回転方向に駆動可能に保持する保持具と、当該保持具を搬送する搬送手段とを有し、前記吸着ノズルが吸気口に対象物を吸着して保持し、前記搬送手段が前記保持具を所定位置まで搬送し、前記吸着ノズルが吸気口からの吸気を停止することにより対象物を離脱させる対象物の搬送方法であって、
搬送路上に配置された撮像手段を制御して、前記吸着ノズルの軸回り回転方向における複数の回転位置における下端面の撮像画像を取得し、
当該複数の回転位置における前記吸着ノズル下端面の各撮像画像に表れる前記略円形の吸気口の内周円又は外周円を認識し、
当該内周円又は外周円の中心点をそれぞれ求め、
各中心点が円周を構成する円とその中心点を求め、
当該円の中心点と撮像画像上での前記予め設定された吸着位置中心点とを結ぶ直線を求め、
当該直線と前記求めた円の円周との交点のうち前記予め設定された吸着位置中心点に最も近い交点を求め、
当該交点と、当該円周上にある他の内周円又は外周円の中心点との相対的位置関係に基づき、前記予め設定された吸着位置中心点に最も近くなる前記吸着ノズルの軸回り回転位置を求め、
前記保持具により前記吸着ノズルを当該求められた軸回り回転位置まで回転させることを特徴とする対象物の搬送方法。
【請求項8】
前記対象物は、磁気ヘッドの先端に設けられるスライダ部材であることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の搬送方法。
【請求項9】
略円形の吸気口を先端に有し対象物を吸着可能な吸着ノズルと、当該ノズルをその軸回り回転方向に駆動可能に保持する保持具と、当該保持具を搬送する搬送手段とを有する対象物の搬送装置において前記吸着ノズルの軸回り回転位置を自動調整するためのプログラムであって、
搬送路上に配置された撮像手段から、前記吸着ノズルの軸回り回転方向における複数の回転位置における下端面の撮像画像を取得するステップと、
当該複数の回転位置における前記吸着ノズル下端面の各撮像画像に表れる前記略円形の吸気口の内周円又は外周円を認識するステップと、
当該内周円又は外周円の中心点をそれぞれ求めるステップと、
各中心点の座標情報と撮像画像上での前記予め設定された吸着位置中心点の座標情報とに基づいて、前記予め設定された吸着位置中心点に最も近くなる前記吸着ノズルの軸回り回転位置を求めるステップと、
当該求められた前記吸着ノズルの軸回り回転位置の情報を前記搬送装置に出力するステップとをコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項10】
略円形の吸気口を先端に有し対象物を吸着可能な吸着ノズルと、当該ノズルをその軸回り回転方向に駆動可能に保持する保持具と、当該保持具を搬送する搬送手段とを有する対象物の搬送装置において前記吸着ノズルの軸回り回転位置を自動調整するためのプログラムであって、
搬送路上に配置された撮像手段から、前記吸着ノズルの軸回り回転方向における複数の回転位置における下端面の撮像画像を取得するステップと、
当該複数の回転位置における前記吸着ノズル下端面の各撮像画像に表れる前記略円形の吸気口の内周円又は外周円を認識するステップと、
当該内周円又は外周円の中心点をそれぞれ求めるステップと、
各中心点が円周を構成する円とその中心点を求めるステップと、
当該円の中心点と撮像画像上での前記予め設定された吸着位置中心点とを結ぶ直線を求めるステップと、
当該直線と前記求めた円の円周との交点のうち前記予め設定された吸着位置中心点に最も近い交点を求めるステップと、
当該交点と、当該円周上にある他の内周円又は外周円の中心点との相対的位置関係に基づき、前記予め設定された吸着位置中心点に最も近くなる前記吸着ノズルの軸回り回転位置を求めるステップと、
当該求められた前記吸着ノズルの軸回り回転位置の情報を前記搬送装置に出力するステップとをコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−41986(P2011−41986A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189914(P2009−189914)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000233033)日立コンピュータ機器株式会社 (253)
【Fターム(参考)】