説明

ハイブリッド型建設機械における制御システム

【課題】エンジンと油圧ポンプと発電電動機とがパラレルに接続されたハイブリッド型建設機械において、エンジン効率を向上させる。
【解決手段】エンジンコントローラ17及び発電電動機制御器20に制御指令を出力する制御装置18と、オペレータがエンジン回転数を切替えるための回転数切替ダイヤル42と、油圧ポンプ14の出力を測定するためのポンプ出力測定手段とを設けると共に、制御装置は、回転数切替ダイヤルのダイヤル値に応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標回転数ωsとエンジン目標出力Pesとを設定し、エンジン目標回転数ωsにするべくエンジンコントローラに制御指令を出力する一方、油圧ポンプの出力に基づいてエンジン出力をエンジン目標出力Pesにするための発電電動機目標出力Pgsを演算し、該発電電動機目標出力Pgsにするべく発電電動機制御器に制御指令を出力する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源としてエンジンと蓄電装置と併用するハイブリッド型建設機械における制御システムの技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ショベル等の建設機械においても、省エネルギー化、燃費の向上、排ガス低減等を達成するべく、動力源としてエンジンと蓄電装置とを併用するハイブリッド型建設機械が実用化されつつある。この様なハイブリッド型建設機械の制御システムとして、エンジンと、油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧ポンプと、発電機及び電動機として機能する発電電動機とを機械的にパラレル接続した所謂パラレル方式の制御システムが従来から知られている。さらに、この様なパラレル方式のものにおいて、油圧ポンプの入力がエンジン出力よりも小さい時には、エンジンを所定の設定回転数とハイアイドル回転数との間で運転し、油圧ポンプの入力がエンジン出力よりも大きい時には、油圧ポンプの入力を低下させると共に、発電電動機を電動機動作させてエンジン出力を補いエンジンを設定回転数の近傍で運転するように構成した技術が提唱されている(例えば、特許文献1参照。)。また、エンジンの動力によって蓄電装置の動力の不足分を自動的に補うように、エンジンの出力を自動的に増減させるように構成した技術も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−12274号公報
【特許文献2】特開2008−49761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、前記特許文献1のものにおいて、油圧ポンプの入力がエンジン出力よりも小さい時には、エンジンは所定の設定回転数とハイアイドル回転数(無負荷回転数)との間で運転されることになるが、この場合、エンジン効率は、エンジン回転数が設定回転数のときに最も良く、設定回転数よりもエンジン回転数が高くなる、つまりエンジンにかかる負荷が小さくなってエンジン回転数が高くなると、エンジン効率は低下する。また、特許文献2のものでは、エンジンの出力が自動的に増減するが、このものにおいても前記特許文献1のものと同様に、エンジンは所定の設定回転数と無負荷回転数との間で運転されると共に、設定回転数よりもエンジン回転数が高くなるとエンジン効率は低下する。而して、前記特許文献1、特許文献2のものは、エンジンが効率の良くない状態で運転される場合があって、燃費向上の妨げになるという問題がある。さらに、ハイブリッド型建設機械全体の効率を考えると、エンジン効率だけでなく、蓄電装置の効率も大きな要因になり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、エンジンと、油圧ポンプと、該油圧ポンプからの圧油供給により駆動される負荷と、発電機及び電動機として機能する発電電動機と、前記エンジンと油圧ポンプと発電電動機とを機械的にパラレル接続する動力伝達機構と、電動機と、該電動機により駆動される負荷と、蓄放電機能を有する蓄電装置とを備えると共に、前記発電電動機と電動機と蓄電装置とを相互間で電力の授受を行なえるように接続してなるハイブリッド型建設機械において、前記エンジンの回転数を制御するエンジン制御手段と、前記発電電動機の出力を制御する発電電動機制御手段と、前記電動機の出力或いは回転数或いはトルクを制御する電動機制御手段と、前記動力伝達機構による動力伝達を断続する動力伝達断続手段と、これらエンジン制御手段、発電電動機制御手段、電動機制御手段、動力伝達断続手段に制御指令を出力する制御装置と、前記油圧ポンプの出力を測定するためのポンプ出力測定手段とを設けると共に、前記制御装置は、エンジン目標回転数を設定するエンジン目標回転数設定手段と、該設定されたエンジン目標回転数に応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標出力を設定するエンジン目標出力設定手段とを備え、エンジンの駆動時に、エンジン回転数を前記エンジン目標回転数にするべくエンジン制御手段に制御指令を出力する一方、前記ポンプ出力測定手段により測定された油圧ポンプの出力に基づいてエンジン出力を前記エンジン目標出力にするための発電電動機目標出力を演算し、発電電動機の出力を該発電電動機目標出力にするべく発電電動機制御手段に制御指令を出力することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システムである。
請求項2の発明は、請求項1において、制御装置は、油圧ポンプの出力に基づいてエンジン出力をエンジン目標出力にするための発電電動機目標出力を演算するにあたり、エンジン目標回転数とエンジン実回転数との偏差を求め、該偏差がなくなるように発電電動機目標出力を増減させることを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システムである。
請求項3の発明は、請求項1または2において、オペレータがエンジン回転数を任意に切替えるためのエンジン回転数切替え手段を設けると共に、エンジン目標回転数設定手段は、エンジン回転数切替え手段の操作値に応じてエンジン目標回転数を設定することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システムである。
請求項4の発明は、請求項1または2において、油圧ポンプからの供給圧油により駆動される負荷及び電動機により駆動される負荷の消費動力を測定する負荷測定手段を設けると共に、エンジン目標回転数設定手段は、負荷測定手段により測定される負荷の消費動力に応じてエンジン目標回転数を設定することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システムである。
請求項5の発明は、請求項4において、エンジン目標回転数設定手段は、負荷の消費動力の変化率に応じてエンジン目標回転数を補正すると共に、エンジン目標出力設定手段は、前記補正されたエンジン目標回転数に基づいてエンジン目標出力を設定することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システムである。
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか一項において、蓄電装置の充電量を検出する充電量検出手段を設けると共に、制御装置は、蓄電装置の充電量に応じてエンジンの駆動、停止の切替え制御を行なう駆動/停止切替え手段を備える一方、エンジンの停止状態では、エンジンと油圧ポンプ及び発電電動機との動力伝達を断つべく動力伝達断続手段に制御指令を出力することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システムである。
請求項7の発明は、請求項6において、駆動/停止切替え手段は、蓄電装置の充電量が、蓄電装置の単位時間当たりの充電/放電の容量が大きい範囲として予め設定される高効率範囲になるように、エンジンの駆動、停止の切替え制御を行なうことを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システムである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、エンジンは、エンジン目標回転数に応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標出力が設定されると共に、該エンジン目標回転数及びエンジン目標出力で運転されることになり、而して、エンジンを常に効率良く運転させることができることになって、燃費向上に大きく貢献できる。しかもこのものは、油圧ポンプの出力に基づいてエンジンの出力をエンジン目標出力にするための発電電動機目標出力を演算し、発電電動機の出力を該発電電動機目標出力にすることでエンジンの出力をエンジン目標出力にする構成であるから、油圧ポンプの出力変動にかかわらず、エンジン出力をエンジン目標出力になるように制御することができる。
請求項2の発明とすることにより、油圧ポンプの出力測定に誤差が生じても、該誤差分を発電電動機の出力で補償できることになって、エンジンの出力を確実にエンジン目標出力にすることができる。
請求項3の発明とすることにより、エンジン目標回転数は、オペレータがエンジン回転数を任意に切替えるためのエンジン回転数切替え手段の操作値に応じて設定されることになり、而して、ハイブリッド型建設機械の行なう作業内容や作業環境等に応じて、オペレータが任意にエンジンの回転数を切替えることができると共に、エンジン回転数が切替えられても、エンジンは常に効率良く運転されることになる。
請求項4の発明とすることにより、エンジン目標回転数は、負荷の消費動力に応じて設定されることになり、而して、負荷の消費動力が大きい場合には、該大きな負荷に対応するエンジン目標回転数及びエンジン目標出力が設定されて作業を効率良く行うことができる一方、負荷の消費動力が小さい場合には、該小さな負荷に対応するエンジン目標回転数及びエンジン目標出力が設定されて燃料消費を削減することができ、更なる燃費向上に貢献することができる。
請求項5の発明とすることにより、負荷の増減変化を予測したエンジン目標回転数及びエンジン目標出力が設定されることになり、而して、負荷の増減変化に素早く対応できるエンジン回転数制御、出力制御を行うことができる。
請求項6の発明とすることにより、蓄電装置の充電が不要の場合には、エンジンを停止させることで無駄な燃料消費を削減できる一方、エンジンの駆動時には、常にエンジン効率の良い状態で運転されることになる。
請求項7の発明とすることにより、蓄電装置を高効率範囲で運転させることができて、蓄電装置についても高効率化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ハイブリッド型油圧ショベルの側面図である。
【図2】第一の実施の形態における制御システムの全体構成を示す図である。
【図3】第一の実施の形態におけるエンジン・発電電動機制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】第一の実施の形態におけるエンジン・発電電動機制御部の制御手順を示すフローチャート図である。
【図5】エンジン目標回転数とエンジン目標出力との対応を示すグラフ図である。
【図6】エンジン出力と燃料消費率との関係を示す図である。
【図7】第二の実施の形態における制御システムの全体構成を示す図である。
【図8】第二の実施の形態におけるエンジン・発電電動機制御部の構成を示すブロック図である。
【図9】第二の実施の形態におけるエンジン・発電電動機制御部の制御手順を示すフローチャート図である。
【図10】(A)は第二の実施の形態における負荷の消費動力とエンジン目標回転数との対応を示すグラフ、(B)は負荷の消費動力の変化率に応じてエンジン目標回転数を補正する場合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
まず、第一の実施の形態について図1〜図6に基づいて説明すると、図1において、1は本発明のハイブリッド型建設機械の一例であるハイブリッド型油圧ショベルであって、該ハイブリッド型油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3に装着されるフロント作業機4等から構成され、さらに該フロント作業機4は、ブーム5、アーム6、バケット7等を用いて構成されている。さらに、ハイブリッド型油圧ショベル1は、前記ブーム5、アーム6、バケット7をそれぞれ揺動せしめるブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、下部走行体2を走行せしめる左右の走行モータ11L、11R等の各種油圧アクチュエータを備えると共に、上部旋回体3には、動力源としてのエンジン12や蓄電装置13、油圧ポンプ14、発電電動機15等が搭載されている。
【0009】
次に、図2に基づいて、前記ハイブリッド型油圧ショベル1を運転せしめる制御システムの全体構成を説明すると、エンジン12は、動力伝達機構16を介して油圧ポンプ14及び発電電動機15に機械的にパラレル接続されている。
【0010】
前記エンジン12は、エンジンコントローラ17による燃料噴射量調整により回転数(回転速度)が制御されると共に、該エンジンコントローラ17は、後述する制御装置18から出力される制御指令に基づいて、エンジン回転数を制御する。尚、上記エンジンコントローラ17は、本発明のエンジン制御手段に相当する。
【0011】
また、前記油圧ポンプ14は、ハイブリッド型油圧ショベル1に設けられる油圧アクチュエータA(本実施の形態では、前記ブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、左右の走行モータ11L、11R)の油圧供給源になる容量可変型ポンプであって、該油圧ポンプ14と各油圧アクチュエータAとの間には、各油圧アクチュエータA用操作具(図示せず)の操作に基づいて油圧アクチュエータAへの油給排制御をそれぞれ行なうコントロールバルブ19が配されている。また、14aは油圧ポンプ14の容量可変手段であって、該容量可変手段14aは、油圧アクチュエータA用操作具の操作量や油圧ポンプ14の吐出圧に基づいて、油圧ポンプ14の吐出流量を制御するように構成されている。尚、上記油圧アクチュエータAは、本発明の油圧ポンプからの圧油供給により駆動される負荷を構成する。
【0012】
また、前記発電電動機15は、エンジン12の動力により駆動して発電する発電機としての機能と、前記油圧ポンプ14を駆動せしめる電動機としての機能とを有している。そして、該発電電動機15の発電機動作、電動機動作の切替えは、発電電動機制御器20によって行なわれると共に、該発電電動機制御器20は、後述する制御装置18からの制御指令に基づいて、前記発電機動作、電動機動作の切替え制御、発電機動作時における発電出力の制御、電動機動作時における出力或いは回転数或いはトルクの制御を行なう。尚、上記発電電動機制御器20は、本発明の発電電動機制御手段に相当する。
【0013】
一方、前記動力伝達機構16は、前述したようにエンジン12と油圧ポンプ14と発電電動機15とを機械的にパラレル接続するものであるが、該動力伝達機構16は、エンジン12、油圧ポンプ14、発電電動機15を動力伝達機構16に対してそれぞれ断続するクラッチ機構16aを備えている。そして、該クラッチ機構16aは、後述する制御装置18からの制御指令に基づいて、動力伝達機構16とエンジン12、油圧ポンプ14、発電電動機15とを断続する。尚、上記クラッチ機構16aは、本発明の動力伝達断続手段に相当する。
【0014】
さらに、前記発電電動機15は、前記発電電動機制御器20、母線21、電動機制御器22〜25を介して、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の各電動機26〜29に接続されている。
【0015】
前記電動機制御器22〜25は、後述する制御装置18から出力される制御指令に基づいて、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の各電動機26〜29の出力或いは回転数或いはトルクをそれぞれ制御する。尚、上記電動機制御器22〜25は、本発明の電動機制御手段に相当する。
【0016】
前記旋回用電動機26は、旋回減速機30を介して上部旋回体3の旋回機構31を駆動せしめる専用の電動機である。パイロットポンプ用電動機27は、パイロット圧の油圧供給源であるパイロットポンプ32を駆動せしめる専用の電動機である。冷却ファン用電動機28は、ラジエータやオイルクーラ等の熱交換器(図示せず)やエンジン12に冷却風を供給する冷却ファン33を駆動せしめる専用の電動機である。サブポンプ用電動機29は、油圧アクチュエータB(図示しないが、前記油圧ポンプ14を油圧供給源にする油圧アクチュエータA以外にハイブリッド型建設機械に設けられる油圧アクチュエータ)の油圧供給源であるサブポンプ34を駆動せしめる専用の電動機である。そして、これら電動機26〜29の出力或いは回転数或いはトルクの制御は、前述したように、制御装置18から電動機制御器22〜25に出力される制御指令に基づいて行なわれるように構成されている。ここで、本実施の形態では、前記サブポンプ34は、容量可変手段34aを備えた可変容量型ポンプが用いられていると共に、該容量可変手段34aは、制御装置18から出力される制御指令に基づいてサブポンプ34の容量を制御するように構成されている。また、パイロットポンプ32には定容量型ポンプが用いられている。尚、前記旋回機構31、パイロットポンプ32、冷却ファン33、サブポンプ34は、本発明の電動機により駆動される負荷を構成する。
【0017】
さらに、図2において、13はバッテリやキャパシタ等の蓄放電機能を有する蓄電装置であって、該蓄電装置13は、発電電動機制御器20と電動機制御器22〜25との間の母線21に接続されており、これにより、蓄電装置13と発電電動機15と電動機26〜29の相互間で電力の授受を行うことができるようになっている。そして、該蓄電装置13は、発電電動機15が電動機として動作している場合には、該発電電動機15および電動機26〜29に電力を供給する一方、発電電動機15が発電機として動作している場合には、該発電電動機15の出力と電動機26〜29の出力との過不足に応じて、電力を蓄放電するようになっている。該蓄電装置13の蓄放電は、本実施の形態では、母線21の電圧と蓄電装置13の電圧との差により自動的に行われるようになっている。つまり、発電電動機15の出力が電動機26〜29の出力に対して余剰がある場合には母線21の電圧が蓄電装置13の電圧よりも高くなり、これにより発電電動機15の余剰電力が蓄電装置13に蓄電される一方、発電電動機15の出力が電動機26〜29の出力に対して不足する場合には母線21の電圧が蓄電装置13の電圧よりも低くなり、これにより蓄電装置13から放電されて電動機26〜29に不足電力が供給されるようになっている。
【0018】
一方、前記制御装置18には、エンジン12の特性(エンジン効率、エンジン出力、エンジン回転数、エンジン無負荷回転数等に関する特性)、発電電動機15の特性(発電電動機効率、発電電動機出力、発電電動機回転数、励磁電流等に関する特性)、蓄電装置13の特性(容量、効率等に関する特性)、油圧ポンプ14の特性(ポンプ効率、ポンプ容積、ポンプ回転数等に関する特性)、電動機26〜29の特性(電動機効率、電動機出力、電動機回転数、電動機トルク等に関する特性)、サブポンプ34の特性(ポンプ効率、ポンプ容積、ポンプ回転数等に関する特性)、パイロット設定圧(パイロットポンプ32の吐出ラインの圧力として予め設定される圧力)等の種々のデータや、後述する制御に用いるデータ等が保存されたメモリ35が設けられている。そして制御装置18は、蓄電装置13の充電量を検出する充電量センサ(本発明の充電量検出手段に相当する)36、母線21の電圧を計測する電圧センサ37、油圧ポンプ14の回転数を検出するポンプ回転数検出センサ38、油圧ポンプ14の容量を検出するポンプ容量検出センサ39、油圧ポンプ14の吐出圧を検出するポンプ吐出圧検出センサ40、油圧アクチュエータA(ブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、左右の走行モータ11L、11R)用、旋回用、油圧アクチュエータB用の各操作具(図示しないが、操作レバーや操作ペダル、操作スイッチ等)の操作をそれぞれ検出する操作検出手段(例えば、操作具の操作量を電気的に検出するポテンショメータや、操作具操作に基づいて出力されるパイロット圧の圧力を検出する圧力センサ等)41、回転数切替ダイヤル42等からの信号を入力し、これら入力信号と前記メモリ35に収納されたデータとに基づいて、前記クラッチ機構16a、エンジンコントローラ17、発電電動機制御器20、電動機制御器22〜25、サブポンプ34の容量可変手段34a等に制御指令を出力するように構成されている。
【0019】
ここで、前記回転数切替ダイヤル42は、エンジン12の回転数をオペレータが任意に切替えるため操作具であって、本発明のエンジン回転数切替え手段に相当する。尚、本実施の形態では、回転数切替ダイヤル42のダイヤル値DはD1〜D10の10段階設けられており、D10のときに最も高いエンジン回転数で、D1のときに最も低いエンジン回転数になるように設定されているが、該回転数切替ダイヤル42のダイヤル値Dは、本発明のエンジン回転数切替え手段の操作値に相当する。
【0020】
扨、前記制御装置18には、エンジン12及び発電電動機15を制御するエンジン・発電電動機制御部43が設けられているが、該エンジン・発電電動機制御部43の構成について、図3のブロック図に基づいて説明すると、エンジン・発電電動機制御部43は、入力側に前記メモリ35、充電量センサ36、回転数切替ダイヤル42、ポンプ回転数検出センサ38、ポンプ容量検出センサ39、ポンプ吐出圧検出センサ40が接続され、出力側に前記クラッチ機構16a、エンジンコントローラ17、発電電動機制御器20が接続されると共に、駆動/停止基準値設定部44、駆動/停止判定部45、エンジン目標回転数設定部46、エンジン目標出力設定部47、ポンプ出力演算部48、指令値演算部49、駆動/停止切替部50を具備して構成されている。さらに、前記指令値演算部49は、エンジン回転数指令値演算部51と発電電動機出力指令値演算部52とエンジン停止時発電電動機出力指令値演算部53を具備している。尚、前記エンジン目標回転数設定部46は、本発明のエンジン目標回転数設定手段を構成し、エンジン目標出力設定部47は、本発明のエンジン目標出力設定手段を構成する。また、前記駆動/停止基準値設定部44、駆動/停止判定部45、駆動/停止切替部50は、本発明の駆動/停止切替え手段を構成する。
【0021】
次いで、前記エンジン・発電電動機制御部43の行なうエンジン12及び発電電動機15の制御について、前記図3のブロック図、及び図4のフローチャート図に基づいて説明する。まず、ハイブリッド型油圧ショベル1が運転開始すると、エンジン・発電電動機制御部43は、メモリ35に収納されているデータを読込む(ステップS1)。
【0022】
次いで、充電量センサ36により検出される蓄電装置13の充電量SOCと、ポンプ回転数検出センサ38、ポンプ容量検出センサ39、ポンプ吐出圧検出センサ40によりそれぞれ検出される油圧ポンプ14の回転数、容量、吐出圧と、回転数切替ダイヤル42のダイヤル値Dとを読込む(ステップS2)。
【0023】
次いで、エンジン目標回転数設定部46において、回転数切替ダイヤル42のダイヤル値D(D1〜D10)に応じてエンジン目標回転数ωs(ωs1〜ωs10)を設定する(ステップS3)。
【0024】
さらに、エンジン目標出力設定部47において、エンジン目標回転数ωsとエンジン目標出力Pesとの対応を示すグラフ(図5に示す)を用いて、前記エンジン目標回転数設定部46で設定されたエンジン目標回転数ωs(ωs1〜ωs10)に対応するエンジン目標出力Pes(Pes1〜Pes10)を設定する(ステップS4)。該エンジン目標出力Pesは、エンジン12の回転数がエンジン目標回転数ωsのときにエンジン効率が最大になるエンジン出力であって、図5に示す如く、エンジン目標回転数ωsが高くなるにつれてエンジン目標出力Pesも大きくなる。前記エンジン目標回転数ωsとエンジン目標出力Pesとの対応を示すグラフは、メモリ35にデータとして収納されている。
【0025】
ここで、ハイブリッド式建設機械に搭載されるエンジン12の特性の一例について、図6に基づいて説明する。図6に示す実線は、最大出力を出力可能な無負荷回転数に設定したときのエンジン出力と燃料消費率との関係を示すグラフであって、エンジン出力が極めて低い範囲(無負荷状態に近い状態)を除くと、最大出力となるポイントAが燃料消費率が最小になる(エンジン効率が最大になる)。また、図6に示す点線L上のポイントB1〜B9は、前記最大出力を出力可能な無負荷回転数よりも無負荷回転数を低く設定した場合に、燃料消費率が最小になる(エンジン効率が最大になる)ポイントであって、これらポイントB1〜B9は、前記ポイントAよりもエンジン出力は低いが、エンジン効率は高い。このようなエンジン特性の場合、上記ポイントAになるエンジン回転数、エンジン出力が、回転数切替ダイヤル42のダイヤル値D10のときのエンジン目標回転数ωs10、エンジン目標出力Pes10として設定される。また、上記ポイントB1〜B9になるエンジン回転数、エンジン出力が、回転数切替ダイヤル42のダイヤル値D1〜D9のときのエンジン目標回転数ωs1〜ωs9、エンジン目標出力Pes1〜Pes9としてそれぞれ設定される。或いは、エンスト防止のために、前記ポイントB1〜B9、ポイントAよりも出力を少し下げたポイントを、回転数切替ダイヤル42のダイヤル値D1〜D10のときのエンジン目標出力Pes1〜Pes10として設定する。この様にエンスト防止のために出力を少し下げたポイントでエンジン目標出力Pesを設定した場合は、厳密にはエンジン効率は少し低くなるが、この場合は、エンストを防止できる範囲内でのエンジン効率が最大になるエンジン目標出力Pesであって、本発明のエンジン効率が最大になるエンジン目標出力に含まれる。
【0026】
さらに、前記ステップS3、S4におけるエンジン目標回転数ωs、エンジン目標出力Pesの設定後、駆動/停止基準値設定部44において、エンジン12の駆動/停止を切替える基準値を設定する(ステップS5)。つまり、エンジン12は、後述するように蓄電装置13の充電量に応じて駆動/停止の切替え制御が行なわれるが、該エンジン12を駆動させるときに用いる蓄電装置13の充電量を駆動基準値SOC1として設定し、また、エンジン12を停止させるときに用いる蓄電装置13の充電量を停止基準値SOC2として設定する。尚、停止基準値SOC2は、駆動基準値SOC1よりも大きな値(SOC1<SOC2)に設定される。
【0027】
ここで、前記基準値を設定するにあたり、本実施の形態では、蓄電装置13の充電量SOCが、蓄電装置13の単位時間当たりの充電/放電の容量が大きい範囲として予め設定される高効率範囲になるように、駆動基準値SOC1と停止基準値SOC2とを設定する。この場合、駆動/停止基準値設定部44は、蓄電装置13の効率が最大(単位時間当たりの充電/放電の容量が最大)のときの充電量をSOCxとしたとき、該SOCxを中央値としてマイナスα(−α)からプラスα(+α)の範囲((SOCx−α)〜(SOCx+α))を高効率範囲として設定すると共に、該高効率範囲の最小値(SOCx−α)を駆動基準値SOC1として設定し、また、高効率範囲の最大値(SOCx+α)を停止基準値SOC2として設定する。例えば、蓄電装置13の効率が最大のときの充電量を50%(蓄電装置13の充電量の上限値を100%、下限値を0%としたときの百分率。以下同様)、αを10%とした場合、充電量40%〜60%の範囲が高効率範囲として設定されると共に、充電量40%が駆動基準値SOC1として設定され、充電量60%が停止基準値SOC2として設定される。
【0028】
さらに、前記ステップS5における駆動基準値SOC1及び停止基準値SOC2の設定後、駆動/停止判定部45において、充電量センサ36により検出される蓄電装置13の充電量SOCと、上記駆動基準値SOC1、停止基準値SOC2とを比較して、エンジン12の駆動/停止を判定する(ステップS6)。この場合、駆動/停止判定部45は、充電量センサ36により検出される蓄電装置13の充電量SOCが駆動基準値SOC1よりも小さく(SOC<SOC1)なると、エンジン12を駆動させると判定し、また、充電量SOCが停止基準値SOC2よりも大きく(SOC>SOC2)なると、エンジン12を停止させると判定する。さらに、充電量SOCが駆動基準値SOC1以上で且つ停止基準値SOC2以下(SOC1≦SOC≦SOC2)の場合には、エンジン12が駆動中であれば駆動を継続させると判定し、エンジン12が停止中であれば停止を継続させると判定する。そして、後述するように上記判定に基づいてエンジン12の駆動/停止を切替えることによって、蓄電装置13の蓄電量は、駆動基準値SOC1と停止基準値SOC2との間、つまり、高効率範囲になるように制御される。
【0029】
さらに、ポンプ出力演算部48において、油圧ポンプ14の出力Ppを演算する(ステップS7)。該油圧ポンプ14の出力Ppの演算は、下記の式(1)を用いて行なう。
Pp=ωp×v×pr ・・・(1)
上記式(1)において、ωpはポンプ回転数検出センサ38により検出される油圧ポンプ14の回転数、vはポンプ容量検出センサ39により検出される油圧ポンプ14の容量、prはポンプ吐出圧検出センサ40により検出される油圧ポンプ14の吐出圧である。尚、本実施の形態において、上記ポンプ回転数検出センサ38、ポンプ容量検出センサ39 、ポンプ吐出圧検出センサ40は本発明のポンプ出力測定手段を構成する。
【0030】
さらに、エンジン回転数指令値演算部51、発電電動機出力指令値演算部52、エンジン停止時発電電動機出力指令値演算部53において、エンジン回転数指令値ωc、発電電動機出力指令値Pgc、エンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctをそれぞれ演算する(ステップS8)。上記エンジン回転数指令値ωcは、エンジン12の回転数をエンジン目標回転数ωsにするためにエンジンコントローラ17に出力される指令値である。また、発電電動機出力指令値Pgcは、エンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにするために、油圧ポンプ14の出力に基づいて発電電動機15の出力を制御するべく発電電動機制御器20に出力される指令値である。つまり、油圧ポンプ14の出力に基づいて発電電動機15の出力を制御することによって、発電電動機15及び油圧ポンプ14からエンジン12にかかる負荷が一定になるように制御し、これによりエンジン12の出力をエンジン目標出力Pesになるように制御する構成になっている。また、エンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctは、エンジン12の停止時に発電電動機15のみの動力で油圧ポンプ14を駆動するときに発電電動機制御器20に出力される指令値である。
【0031】
前記エンジン回転数指令値演算部51では、メモリ35にデータとして保存されているエンジン目標回転数ωsとエンジン回転数指令値ωcとの関係を示す関数(ωc=F(ωs))を用いて、エンジン出力がエンジン目標出力Pesのときにエンジン回転数をエンジン目標回転数ωsにするためのエンジン回転数指令値ωcを演算する。
ここで、本実施の形態において、エンジンコントローラ17は、エンジン12の無負荷回転数の設定値を指令値としてエンジン12の回転数制御を行なう構成になっており、而して、無負荷回転数の設定値がエンジン回転数指令値ωcになるが、この場合には、下記の式(2)を用いてエンジン回転数指令値ωc(無負荷回転数の設定値)を演算することにより、エンジン出力がエンジン目標出力Pesのときにエンジン回転数がエンジン目標回転数ωsになるエンジン回転数指令値ωcを求めることができる。
ωc=A×ωs+B ・・・(2)
上記式(2)において、A、Bはエンジン12の特性により定まる定数である。
【0032】
一方、発電電動機出力指令値演算部52では、エンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにするための発電電動機目標出力Pgsを、下記の式(3)を用いて演算する。尚、本実施の形態において、発電電動機制御器20は、発電電動機目標出力Pgsを指令値として発電電動機15の出力を制御する機能を有しており、而して、発電電動機目標出力Pgsがそのまま発電電動機出力指令値Pgcになる。
Pgc=Pgs=(Pes−Pp/ηp)×ηg ・・・(3)
上記式(3)において、Ppは前記ポンプ出力演算部48において演算された油圧ポンプ14の出力、ηpは油圧ポンプ14の効率、ηgは発電電動機15の効率であって、これらの値はメモリ35にデータとして保存されているが、これら油圧ポンプ効率ηp、発電電動機効率ηgは、油圧ポンプ14、発電電動機15の出力や回転数により変化する。また、発電電動機出力指令値Pgcは、プラス(Pgc≧0)の場合には発電電動機15を発電機として動作させる指令になり、マイナス(Pgc<0)の場合には電動機として動作させる指令になる。
【0033】
また、エンジン停止時発電電動機出力指令値演算部53では、エンジン12の停止時における発電電動機15の目標出力Pgst(以下、エンジン停止時発電電動機目標出力Pgstと称するが、該エンジン停止時発電電動機目標出力Pgstは、本発明の発電電動機目標出力に含まれない)を、下記の式(4)を用いて演算する。尚、エンジン停止時発電電動機目標出力Pgstは、そのままエンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctとして用いられる。
Pgct=Pgst=(−Pp/ηp)×ηg ・・・(4)
上記式(4)において、Ppは前記ポンプ出力演算部48において演算された油圧ポンプ14の出力、ηpは油圧ポンプ14の効率、ηgは発電電動機15の効率である。また、エンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctはマイナス(Pgct<0)であり、発電電動機15を電動機として動作させる指令になる。
【0034】
さらに、前記ステップS8におけるエンジン回転数指令値ωc、発電電動機出力指令値Pgc、エンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctの演算後、駆動/停止切替部50において、前記駆動/停止判定部45の判定が、エンジン12の駆動(駆動継続を含む)か停止(停止継続を含む)かを判断する(ステップS9)。
【0035】
前記ステップS9の判断で、エンジン12の駆動と判断された場合、駆動/停止切替部50は、動力伝達機構16のクラック機構16aに対してエンジン12と油圧ポンプ14と発電電動機15とを接続するように制御指令を出力し、さらに、エンジンコントローラ17に対してエンジン回転数指令値ωcを出力すると共に、発電電動機制御器20に対して発電電動機出力指令値Pgcを出力する(ステップS10)。これにより、発電電動機15の出力は発電電動機目標出力Pgsになるように制御されるが、この場合、前述したように、発電電動機出力指令値Pgcがプラス(Pgc≧0)のときには、発電電動機15を発電機として動作させる制御指令が出力され、発電電動機出力指令値Pgcがマイナス(Pgc<0)の場合には、電動機として動作させる制御指令が出力される。そして、発電電動機15が発電機として動作している場合には、該発電電動機15及び油圧ポンプ14の出力をエンジン12が負担し、また、発電電動機15が電動機として動作している場合には、油圧ポンプ14の出力をエンジン12と発電電動機15とで負担することになるが、何れの場合でも、発電電動機15の出力を油圧ポンプ14の出力に基づいて発電電動機目標出力Pgsになるように制御することによって、エンジン12の出力はエンジン目標出力Pesになるように制御されると共に、エンジン12の回転数は、エンジン目標回転数ωsになるように制御される。ステップS10の処理後は、前記ステップS2に戻る。
【0036】
一方、ステップS9の判断で、エンジン12の停止と判断された場合、駆動/停止切替部50は、動力伝達機構16のクラッチ機構16aに対してエンジン12を油圧ポンプ14及び発電電動機15から断ち、且つ、油圧ポンプ14と発電電動機15とを接続するように制御指令を出力し、さらに、エンジンコントローラ17に対してエンジン12の停止指令(エンジン回転数指令値ωc=0)を出力すると共に、発電電動機制御器20に対してエンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctを出力する(ステップS11)。これによりエンジン12が停止すると共に、発電電動機15の出力はエンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctとなるように制御されるが、該エンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctは前述したように発電電動機15を電動機として動作させる指令であり、該電動機として動作する発電電動機15により油圧ポンプ14が駆動される。ステップS11の処理後は、前記ステップS2に戻る。
【0037】
而して、前記エンジン・発電電動機制御部43の行なう制御によって、エンジン12は、蓄電装置13の充電量SOCが高効率範囲になるように駆動/停止の切替え制御が行なわれると共に、エンジン12の駆動時において、エンジン12の回転数は、回転数切替ダイヤル42のダイヤル値Dに応じて設定されたエンジン目標回転数ωsになるように制御され、さらにエンジン12の出力は、エンジン目標回転数ωsのときにエンジン効率が最大になるエンジン目標出力Pesになるように制御される構成になっている。
【0038】
また、前記制御装置18は、前述したように、電動機制御器22〜25やサブポンプ34の容量可変手段34aに対しても制御指令を出力するが、この場合、旋回用電動機26を制御する電動機制御器22に対しては、旋回用操作具の操作量に応じた速度で旋回機構31を駆動させるべく制御指令を出力する。また、パイロットポンプ用電動機27を制御する電動機制御器23に対しては、パイロットポンプ32の吐出圧を予め設定されたパイロット設定圧にするべく制御指令を出力する。また、冷却ファン用電動機28を制御する電動機制御器24に対しては、冷却ファン33が必要な冷却風を供給できる回転数にするべく制御指令を出力する。また、サブポンプ用電動機29を制御する電動機制御器25及びサブポンプ34の容量可変手段34aに対しては、サブポンプ34の吐出流量を、該サブポンプ34を油圧源とする油圧アクチュエータB用操作具の操作量に応じて要求される流量にするべく制御指令を出力する。
【0039】
ここで、制御装置18は、前述したように、サブポンプ用電動機29を制御する電動機制御器25及びサブポンプ34の容量可変手段34aに対して、サブポンプ34の吐出流量を油圧アクチュエータB用操作具の操作量に応じた流量にするべく制御指令を出力するが、この場合に、サブポンプ用電動機29及びサブポンプ34のトータルでの効率(電動機効率ηm×ポンプ効率ηp)が最大になるように、サブポンプ用電動機29の回転数とサブポンプ34の容量とを制御する。つまり、サブポンプ34の流量は、サブポンプ34の回転数と容量との積により決まるが、サブポンプ34の回転数はサブポンプ用電動機29の回転数により決まると共に、該サブポンプ用電動機29の回転数は電動機制御器25に出力される回転数指令値により制御することができ、また、サブポンプ34の容量は容量可変手段34aに出力される容量指令値により制御することができるため、サブポンプ用電動機29の回転数とサブポンプ34の容量とを、サブポンプ用電動機29及びサブポンプ34のトータルでの効率(電動機効率ηm×ポンプ効率ηp)が最大になるように制御することができる。これにより、サブポンプ用電動機29及びサブポンプ34を、トータルでの効率が最大になる状態で運転させることができるようになっている。尚、サブポンプ用電動機29の回転数と電動機効率ηmとの関係、サブポンプ34の容量とポンプ効率ηpとの関係については、前記メモリ35にデータとして保存されている。
【0040】
叙述の如く構成された第一の実施の形態において、ハイブリッド型油圧ショベル1は、エンジン12と、油圧ポンプ14と、該油圧ポンプ14からの圧油供給により駆動される油圧アクチュエータAと、発電機及び電動機として機能する発電電動機15と、前記エンジン12と油圧ポンプ14と発電電動機15とを機械的にパラレル接続する動力伝達機構16と、旋回機構31、パイロットポンプ32、冷却ファン33、サブポンプ34をそれぞれ駆動せしめる電動機26〜29と、蓄放電機能を有する蓄電装置13とを備えると共に、前記発電電動機15と電動機26〜29と蓄電装置13とは相互間で電力の授受を行なえるように母線21を介して接続されているが、さらにハイブリッド型油圧ショベル1には、前記エンジン12の回転数を制御するエンジンコントローラ17と、前記発電電動機15の出力を制御する発電電動機制御器20と、前記電動機26〜29の出力或いは回転数或いはトルクをそれぞれ制御する電動機制御器22〜25と、前記動力伝達機構16による動力伝達を断続するクラッチ機構16aと、これらエンジンコントローラ17、発電電動機制御器20、電動機制御器22〜25、クラッチ機構16aに制御指令を出力する制御装置18と、オペレータがエンジン回転数を任意に切替えるための回転数切替ダイヤル42と、油圧ポンプ14の出力を測定するためのポンプ出力測定手段(ポンプ回転数検出センサ38、ポンプ容量検出センサ39、ポンプ吐出圧検出センサ40)とが設けられている。そして、前記制御装置18は、回転数切替ダイヤル42のダイヤル値Dに応じてエンジン目標回転数ωsを設定し、さらに、エンジン回転数が上記エンジン目標回転数ωsのときにエンジン効率が最大になるエンジン出力をエンジン目標出力Pesとして設定すると共に、エンジン12の駆動時に、エンジン回転数を前記エンジン目標回転数ωsにするべくエンジンコントローラ17に制御指令を出力する一方、前記ポンプ出力測定手段により測定される油圧ポンプ14の出力に基づいてエンジン出力を前記エンジン目標出力Pesにするための発電電動機目標出力Pgsを演算し、発電電動機15の出力を該発電電動機目標出力Pgsにするべく発電電動機制御器20に制御指令を出力することになる。
【0041】
この結果、エンジン12は、回転数切替ダイヤル42のダイヤル値Dに応じてエンジン目標回転数ωsが設定され、さらに該エンジン目標回転数ωsに応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標出力Pesが設定されると共に、該エンジン目標回転数ωs、エンジン目標出力Pesで運転されることになり、而して、エンジン12を常に効率良く運転させることができることになって、燃費向上に大きく貢献できる。しかもこのものは、油圧ポンプ14の出力に基づいてエンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにするための発電電動機目標出力Pgsを演算し、発電電動機15の出力を該発電電動機目標出力Pgsとなるように制御することで、エンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにする構成であるから、油圧ポンプ14の出力変動にかかわらず、エンジン出力を確実にエンジン目標出力Pesになるように制御することができる。
【0042】
しかも、前記エンジン目標回転数ωsは、オペレータがエンジン回転数を任意に切替えるための回転数切替ダイヤル42のダイヤル値Dに応じて設定されるから、ハイブリッド型油圧ショベル1の行なう作業内容や作業環境等に応じて、オペレータが任意にエンジン12の回転数を切替えることができると共に、エンジン回転数が切替えられても、エンジン12は常に効率の良い状態で運転されることになる。
【0043】
さらにこのものでは、蓄電装置13の充電量を検出する充電量センサ36が設けられていると共に、制御装置18は、蓄電装置13の充電量に応じてエンジン12の駆動、停止の切替え制御を行なう駆動/停止切替え手段(駆動/停止基準値設定部44、駆動/停止判定部45、駆動/停止切替部50)を備え、さらにエンジン12の停止状態では、該エンジン12と油圧ポンプ14及び発電電動機15との動力伝達を断つべく動力伝達機構16のクラッチ機構16aに制御指令が出力されることになる。而して、蓄電装置13の充電が不要の場合には、エンジン12を停止させることで無駄な燃料消費を削減できる一方、エンジン12の駆動時には、常にエンジン効率の良い状態で運転されることになる。
【0044】
しかも、前記駆動/停止切替え手段は、蓄電装置13の充電量が、蓄電装置13の単位時間当たりの充電/放電の容量が大きい範囲として予め設定される高効率範囲になるように、エンジン12の駆動、停止を切替えることになる。この結果、蓄電装置13を高効率範囲で運転させることができて、蓄電装置13についても高効率化を達成できる。
【0045】
また、ハイブリッド型油圧ショベル1には、エンジン12に機械的に接続されていないサブポンプ34と、該サブポンプ34を駆動せしめるサブポンプ用電動機29とが設けられており、そして制御装置18は、サブポンプ34の容量可変手段34aに制御指令を出力してサブポンプ34の容量を制御すると共に、電動機制御器25に制御指令を出力してサブポンプ用電動機29の回転数を制御することによって、サブポンプ34の吐出流量を制御するが、この場合に、サブポンプ用電動機29及びサブポンプ34のトータルでの効率(電動機効率ηm×ポンプ効率ηp)が最大になるように、サブポンプ用電動機29の回転数とサブポンプ34の容量とを制御することになる。而して、サブポンプ用電動機29及びサブポンプ34をトータルでの効率が最大になる状態で運転させることができることになって、ハイブリッド型建設機械全体の高効率化に大きく貢献できる。
【0046】
次に、本発明の第二の実施の形態を図7〜図10に基づいて説明する。尚、図1、図5、図6については第一の実施の形態のものを共用する。また、第一の実施の形態と共通するもの(同一のもの)については同一の符号を附すと共に、その詳細については省略する。
まず、図7に第二の実施の形態の制御システムの全体構成を示すが、該図7において、56は蓄電装置13の蓄放電電流を検出する蓄電装置電流センサ、57は第二の実施の形態の制御装置18に設けられるエンジン・発電電動機制御部である。さらに、58は第二の実施の形態の制御装置18に設けられるメモリであって、該メモリ58には、第一の実施の形態と同様に、エンジン12の特性、発電電動機15の特性、蓄電装置13の特性、油圧ポンプ14の特性、電動機26〜29の特性、サブポンプ34の特性、パイロット設定圧等の種々のデータや、後述する制御に用いられるデータ等が保存されている。また、図7において、エンジン12、エンジンコントローラ17、油圧ポンプ14、油圧ポンプ14の容量可変手段14a、コントロールバルブ19、油圧アクチュエータA、発電電動機15、発電電動機制御器20、動力伝達機構16、クラッチ機構16a、蓄電装置13、母線21、電動機制御器22〜25、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の各電動機26〜29、旋回減速機30、旋回機構31、パイロットポンプ32、冷却ファン33、サブポンプ34、サブポンプ34の容量可変手段34a、充電量センサ36、電圧センサ37、ポンプ回転数検出センサ38、ポンプ容量検出センサ39、ポンプ吐出圧検出センサ40、操作検出手段41については、前記第一の実施の形態と共通するもの(同一のもの)であるため、説明は省略する。尚、第二の実施の形態には、前記第一の実施の形態の回転数切替ダイヤル42のようにオペレータが任意に操作するエンジン回転数切替え手段は設けられていない。
【0047】
次いで、前記第二の実施の形態の制御装置18に設けられるエンジン・発電電動機制御部57の構成について、図8のブロック図に基づいて説明すると、該エンジン・発電電動機制御部57は、入力側にメモリ58、充電量センサ36、電圧センサ37、蓄電装置電流センサ56、ポンプ回転数検出センサ38、ポンプ容量検出センサ39、ポンプ吐出圧検出センサ40が接続され、出力側に前記クラッチ機構16a、エンジンコントローラ17、発電電動機制御器20が接続されると共に、駆動/停止基準値設定部44、駆動/停止判定部45、負荷演算部59、エンジン目標回転数設定部60、エンジン目標出力設定部61、ポンプ出力演算部48、指令値演算部49、駆動/停止切替部50を具備して構成されている。さらに、前記指令値演算部49は、エンジン回転数指令値演算部51と発電電動機出力指令値演算部52とエンジン停止時発電電動機出力指令値演算部53を具備している。尚、前記駆動/停止基準値設定部44、駆動/停止判定部45、ポンプ出力演算部48、指令値演算部49(エンジン回転数指令値演算部51、発電電動機出力指令値演算部52、エンジン停止時発電電動機出力指令値演算部53)、駆動/停止切替部50は、前記第一の実施の形態と同様の制御を行なう。また、前記負荷演算部59、エンジン目標回転数設定部60、エンジン目標出力設定部61の制御については後述するが、エンジン目標回転数設定部60は本発明のエンジン目標回転数設定手段を構成し、エンジン目標出力設定部61は本発明のエンジン目標出力設定手段を構成する。
【0048】
さらに、前記エンジン・発電電動機制御部57の行なうエンジン12及び発電電動機15の制御について、前記図8のブロック図、及び図9のフローチャート図に基づいて説明する。まず、ハイブリッド型油圧ショベル1が運転開始すると、エンジン・発電電動機制御部57は、メモリ58に収納されているデータを読込む(ステップS21)。
【0049】
次いで、充電量センサ36により検出される蓄電装置13の充電量SOCと、電圧センサ37により検出される母線21の電圧と、ポンプ回転数検出センサ38、ポンプ容量検出センサ39、ポンプ吐出圧検出センサ40によりそれぞれ検出される油圧ポンプ14の回転数、容量、吐出圧と、蓄電装置電流センサ56により検出される蓄電装置13の蓄放電電流とを読込む(ステップS22)。
【0050】
次いで、ポンプ出力演算部48において、油圧ポンプ14の出力Ppを演算する(ステップS23)。該油圧ポンプ14の出力Ppの演算は、前記第一の実施の形態のポンプ出力演算部48における油圧ポンプ14の出力Ppの演算と同様にであるため、説明を省略するが、前記式(1)を用いて行なうと共に、該式(1)の演算に用いる油圧ポンプ14の回転数、容量、吐出圧をそれぞれ検出するポンプ回転数検出センサ38、ポンプ容量検出センサ39、ポンプ吐出圧検出センサ40は本発明のポンプ出力測定手段を構成する。
【0051】
次いで、負荷演算部59において、油圧ポンプ14からの圧油供給により駆動される負荷(油圧アクチュエータA)、及び旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の電動機26〜29により駆動される負荷(旋回機構31、パイロットポンプ32、冷却ファン33、サブポンプ34)が消費する動力Pf(負荷の消費動力Pf)を演算する(ステップS24)。この場合、本実施の形態では、以下の式(5)に示すように、油圧ポンプ14の出力Ppと発電電動機15の出力Pgと蓄電装置13の蓄放電電力Pbとの合計を、負荷の消費動力Pfとして演算する。この場合には、油圧ポンプ14の出力Ppが、油圧ポンプ14からの圧油供給により駆動される負荷の消費動力に相当し、また、発電電動機15の出力Pgと蓄電装置13の蓄放電電力Pbとの合計が、電動機26〜29により駆動される負荷の消費動力に相当する。
Pf=Pp+Pg+Pb ・・・(5)
ここで、上記式(5)における油圧ポンプ14の出力Ppは、前記ポンプ出力演算部48で演算された油圧ポンプ14の出力Ppの値を用いる。また、発電電動機15の出力Pgは、制御装置18から発電電動機制御器20に出力される発電電動機出力指令値Pgcを用いる。該発電電動機出力指令値Pgcについては後述するが、発電電動機15が発電機として動作する場合にはプラス(Pgc≧0)になり、電動機として動作する場合にはマイナス(Pgc<0)になる。尚、初動時等に発電電動機出力指令値Pgcが出力されていない場合には、発電電動機15の出力Pgをゼロとして演算する(Pg=0)。さらに、蓄電装置13の蓄放電電力Pbは、以下の式(6)を用いて演算する。
Pb=Ib×V ・・・(6)
上記式(6)において、Vは電圧センサ37により検出される母線21の電圧、Ibは蓄電装置電流センサ56により検出される蓄電装置13の蓄放電電流であって、該蓄電装置13の蓄放電電流は、蓄電装置13の放電時にはプラス符号にし、蓄電装置13の蓄電時にはマイナス符号にする。尚、前記電圧センサ37、蓄電装置電流センサ56は、本発明の負荷測定手段を構成する。また、油圧ポンプ14の出力Ppの演算には、前述したように、ポンプ回転数検出センサ38、ポンプ容量検出センサ39、ポンプ吐出圧検出センサ40により検出される油圧ポンプ14の回転数、容量、吐出圧を用いるが、上記ポンプ回転数検出センサ38、ポンプ容量検出センサ39、ポンプ吐出圧検出センサ40も、本発明の負荷測定手段を構成する。
【0052】
次いで、エンジン目標回転数設定部60において、負荷の消費動力Pfに対応するエンジン目標回転数ωsが示されたグラフ(図10(A)に示す)を用いて、前記負荷演算部59で演算された負荷の消費動力Pfに応じてエンジン目標回転数ωsを設定する(ステップS25)。この場合、図10(A)に示す如く、負荷の消費動力Pfが大きくなるほどエンジン目標回転数ωsが高くなるように設定される。尚、前記負荷の消費動力Pfとエンジン目標回転数ωsとの対応を示すグラフは、エンジン12の特性に基づいて作成されると共に、メモリ58にデータとして収納されているが、設定されるエンジン目標回転数ωsとしては、図10(A)に実線で示す如く無段階にすることもでき、また、図10(A)に点線で示す如く複数段階にすることもできる。
【0053】
さらに、エンジン目標出力設定部61において、エンジン目標回転数ωsとエンジン目標出力Pesとの対応を示すグラフを用いて、前記エンジン目標回転数設定部60で設定されたエンジン目標回転数ωsに対応するエンジン目標出力Pesを設定する(ステップS26)。該エンジン目標出力Pesは、エンジン12の回転数がエンジン目標回転数ωsのときにエンジン効率が最大になるエンジン出力であって、エンジン目標回転数ωsが高くなるにつれてエンジン目標出力Pesも大きくなる。前記エンジン目標回転数ωsとエンジン目標出力Pesとの対応を示すグラフは、メモリ58にデータとして収納されている。
尚、前記エンジン目標回転数ωs及びエンジン目標出力Pesは、エンジン12の特性に応じて設定されることになるが、前記図6に示すようなエンジン特性の場合、エンジン目標回転数ωs及びエンジン目標出力Pesは、図6におけるポイントA、及び点線L上に位置するように設定される。この場合、エンジン目標回転数ωsとエンジン目標出力Pesとの対応を示すグラフは、前述した第一の実施の形態で用いたグラフ(図5)と同様のものになる。
【0054】
さらに、前記ステップS25、S26におけるエンジン目標回転数ωs、エンジン目標出力Pesの設定後は、ステップS27、S28、S29、S30、S31、S32の制御を行なう。該ステップS27、S28、S29、S30、S31、S32の制御は、前述した第一の実施の形態におけるステップS5、S6、S8、S9、S10、S11の制御と同じであるため、説明を省略するが、エンジン・発電電動機制御部47の行なう制御によって、エンジン12は、蓄電装置13の充電量SOCが高効率範囲になるように駆動/停止の切替え制御が行なわれると共に、エンジン12の駆動時において、エンジン12の回転数は、負荷が消費する動力Pfに応じて設定されたエンジン目標回転数ωsになるように制御され、さらにエンジン12の出力は、エンジン目標回転数ωsのときにエンジン効率が最大になるエンジン目標出力Pesになるように制御される構成になっている。
【0055】
叙述の如く構成された第二の実施の形態のものにおいて、エンジン12は、負荷が消費する動力Pfに応じてエンジン目標回転数ωsが設定され、さらに該エンジン目標回転数ωsに応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標出力Pesが設定されると共に、該エンジン目標回転数ωs、エンジン目標出力Pesで運転されることになり、而して、前述した第一の実施の形態と同様に、エンジン12を常に効率良く運転させることができることになって、燃費向上に大きく貢献できる。
【0056】
しかも第二の実施の形態のものでは、負荷が消費する動力Pfに応じてエンジン目標回転数ωsが設定されることになるから、負荷の消費動力Pfが大きい場合には、該大きな負荷に対応するエンジン目標回転数ωs、エンジン目標出力Pesが設定されて、作業を効率良く行うことができる一方、負荷の消費動力Pfが小さい場合には、該小さな負荷に対応するエンジン目標回転数ωs、エンジン目標出力Pesが設定されて、燃料消費を削減することができ、更なる燃費向上に貢献することができる。
【0057】
尚、本発明は上記第一、第二の実施の形態に限定されないことは勿論であって、例えば、油圧ポンプ14の出力に基づいてエンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにするための発電電動機目標出力Pgsを演算するにあたり、エンジン目標回転数ωsとエンジン実回転数ωaとの偏差(ωs−ωa)を求め、該偏差がなくなるように(「0」になるように)発電電動機目標出力Pgsを増減させる構成にすることもできる。この場合の制御方法はPI制御とし、下記の式(7)を用いて発電電動機目標出力Pgsを演算する。
Pgs=(Pes−Pp/ηp)×ηg+(Kp+Ki/s)(ωs−ωa) ・・・(7)
上記式(7)において、Ppはポンプ出力演算部48において演算された油圧ポンプ14の出力、ηpは油圧ポンプ14の効率、ηgは発電電動機15の効率、Kpは比例定数、Kiは積分定数、sはラプラス演算子である。
そして、この様にエンジン目標回転数ωsとエンジン実回転数ωaとの偏差(ωs−ωa)がなくなるように発電電動機目標出力Pgsを増減させることにより、油圧ポンプ14の出力の測定や効率の算定に誤差が生じても(一般に、建設機械の作業中における負荷変動は大きく、このため、油圧ポンプ14の出力の測定誤差や効率の算定誤差が大きくなってしまう惧れがある)、該誤差分を発電電動機15の出力で補償できることになって、エンジン12の出力を確実にエンジン目標出力Pesにすることができる。尚、上記エンジン実回転数ωaは、エンジン回転数検出センサにより検出されるエンジン12の実際の回転数である。
【0058】
また、上記第一の実施の形態では、オペレータがエンジン回転数を任意に切替えるためのエンジン回転数切替え手段として回転数切替ダイヤル42が設けられていると共に、該回転数切替ダイヤル42のダイヤル値としてD1〜D10の10段階設けられているが、ダイヤル値は複数段階設けられていれば段階数は限定されず、さらに、無段階であっても良い。また、エンジン回転数切替え手段としては、ダイヤル式のものに限定されることなく、レバー式のものや、モニタ装置の操作画面と操作キーとを用いたもの等、適宜手段を採用できる。
【0059】
さらに、第一の実施の形態では、エンジン回転数切替え手段の操作値に応じてエンジン目標回転数ωsを設定し、該エンジン目標回転数ωsに応じてエンジン目標出力Pesを設定するように構成されているが、このものにおいて、エンジン回転数切替え手段の操作値に応じて、さらに油圧ポンプ14の最大出力を制限する構成にすることもできる。この場合には、エンジン目標出力と油圧ポンプ14の最大出力とが共にエンジン回転数切替え手段の操作値に応じて設定されるため、エンジンの出力に対して油圧ポンプ14の出力が過大になってしまうことを回避できる。尚、この場合には、制御装置18から油圧ポンプ14の容量可変手段14aに対し、エンジン回転数切替え手段の操作値に応じて油圧ポンプ14の最大出力を制限するための制御指令が出力されることになる。
【0060】
また、第一、第二の実施の形態では、油圧ポンプの出力を測定するためのポンプ出力測定手段として、油圧ポンプの回転数、容量、吐出圧をそれぞれ検出するポンプ回転数検出センサ、ポンプ容量検出センサ、ポンプ吐出圧検出センサを設けたが、これに限定されることなく、例えば、ポンプ回転数検出センサ及びポンプ容量検出センサに替えて、油圧ポンプの流量を検出するポンプ流量検出センサを設けても良い。また、油圧ポンプの容量を、制御装置からの制御指令に基づいて可変できるように構成することもできるが、この場合には、ポンプ容量検出センサを設けることなく、制御装置から出力されるポンプ容量指令値に基づいて油圧ポンプの容量を求めるように構成することができる。
【0061】
さらに、第二の実施の形態においては、負荷の消費動力Pfに対応してエンジン目標回転数ωsが設定されるが、この場合に、負荷の消費動力Pfの変化率PfR(=ΔPf/sec(単位時間当たりの負荷の消費電力Pfの変化量))に応じて、エンジン目標回転数ωsの値を補正するように構成することもできる。この場合に、負荷演算部59は、負荷の消費動力Pfを演算すると共に、負荷の消費動力Pfの変化率PfRを演算する。さらに、エンジン目標回転数設定部60は、負荷の消費動力Pfの変化率PfRの絶対値が予め設定される設定値Sより小さい(|PfR|<S)場合には、前述した第二の実施の形態の場合と同様に、図10(B)に実線で示すグラフ(図10(A)に実線で示すグラフと同じもの)を用いて負荷の消費動力Pfに対応するエンジン目標回転数ωsを設定する一方、負荷の消費動力Pfの変化率PfRの絶対値が設定値S以上(|PfR|≧S)の場合には、消費動力Pfの増加時(変化率PfR>0)には、図10(B)に一点鎖線で示すごとく、エンジン目標回転数ωsを高くするように補正し、また、消費動力Pfの減少時(変化率PfR<0)には、図10(B)に二点鎖線で示す如く、エンジン目標回転数ωsを低くするように補正する。この場合の補正値は、予め設定された一定の値でも良いが、変化率に応じて増減変化させることもできる。さらに、エンジン目標出力設定部61は、前記補正されたエンジン目標回転数ωsに基づいてエンジン目標出力Pesを設定する。この様に、負荷の消費動力Pfの変化率PfR(=ΔPf/sec)に応じてエンジン目標回転数ωsの値を補正すると共に、該補正されたエンジン目標回転数ωsに基づいてエンジン目標出力Pesを設定することにより、負荷の増減変化を予測したエンジン目標回転数ωs及びエンジン目標出力Pesが設定されることになって、負荷の増減変化に素早く対応できるエンジン回転数制御、出力制御を行うことができる。尚、図10(B)では、負荷の消費電力Pfに対してエンジン目標回転数ωsを無段階に設定した場合を図示したが、エンジン目標回転数ωsを段階的に設定した場合においても同様に補正できることは勿論である。
【0062】
また、第二の実施の形態では、発電電動機15の出力Pgと蓄電装置13の蓄放電電力Pbとを合計することで、電動機により駆動される負荷の消費動力を求める構成になっていると共に、蓄放電電力Pbは、電圧センサ37及び蓄電装置電流センサ56からの検出信号に基づいて演算する構成になっているが、これに限らず、他の適宜手段を用いて負荷の消費動力を求めることもできる。例えば、蓄電装置13の蓄放電電力は、蓄電装置13の充電量の変化率に基づいて求めることもできる(蓄放電電力=係数×充電量変化率、係数は蓄電装置13の特性により定まる)。また、個々の電動機への供給電力Pmiを求め、これらの合計(ΣPmi)を電動機により駆動される負荷の消費動力とすることもできる。この場合、制御装置18から電動機に出力指令値が出力される場合には、該出力指令値から該電動機への供給電力Pmiを求めることができる。また、制御装置18から電動機に回転数指令値或いはトルク指令値が出力される場合には、以下の式(8)を用いて電動機への供給電力Pmiを求めることができる。
Pmi=ωm×Tm/ηm ・・・(8)
上記式(8)において、ωmは回転数指令値或いは回転数検出センサにより検出される電動機の回転数、Tmはトルク指令値或いはトルク検出手段により検出される電動機のトルク、ηmは電動機の効率である。この場合、前記回転数検出センサ、トルク検出手段は本発明の負荷測定手段を構成する。
さらにまた、電動機により駆動される負荷がパイロットポンプ32、サブポンプ34等の油圧ポンプの場合には、以下の式(9)或いは式(10)を用いて、油圧ポンプを駆動する電動機への供給電力Pmiを求めることができる。
Pmi=(ωp×v×pr)/ηp/ηm ・・・(9)
Pmi=(Lp×pr)/ηp/ηm ・・・(10)
上記式(9)、(10)において、ωpは油圧ポンプの回転数、vは油圧ポンプの容積、prは油圧ポンプの吐出圧、ηpは油圧ポンプのポンプ効率、ηmは油圧ポンプを駆動せしめる電動機の電動機効率、Lpは油圧ポンプの流量である。尚、上記式(9)、(10)を用いる場合、油圧ポンプの回転数は、制御装置18から油圧ポンプを駆動せしめる電動機に回転数指令が出力される場合には、該電動機への回転数指令値から求めることができ、また、回転数指令が出力されない場合には、回転数検出センサを設けることにより検出できる。また、油圧ポンプの容積は、定容量型ポンプならば定まった値であり、可変容量型ポンプならば、制御装置18から油圧ポンプの容量可変手段に容量指令が出力される場合には、該容量可変手段への容量指令値から求めることができ、また、容量指令が出力されない場合には、容量検出センサを設けることにより検出できる。また、油圧ポンプの吐出圧は、圧力センサを設けることにより検出できる。さらに、油圧ポンプの流量は、流量検出センサを設けることにより検出できる。この場合、回転数検出センサ、容量検出センサ、圧力センサ、流量検出センサは、本発明の負荷測定手段を構成する。
【0063】
さらに、第二の実施の形態において、エンジン目標回転数ωcを設定する場合に用いる負荷の消費動力Pfとして、設定時間内における平均値を用いることもできる。或いは、負荷の消費動力Pfは瞬時値を用いるが、エンジン目標回転数指令値ωcや発電電動機目標指令値Pgcを設定時間内において平均化処理して出力することもできる。この様に平均値を用いたり平均化処理した場合には、負荷の過渡的変動等によりエンジン目標回転数ωc及びエンジン目標出力Pesが過度に変動してしまうことを回避することができる。
【0064】
さらに、本発明は、発電電動機及び蓄電装置から電力供給される電動機として、電動機としての機能に加えて発電機の機能も有した発電電動機を用いることもできる。例えば、旋回機構を駆動せしめる電動機を発電電動機を用いて構成することができ、この場合、発電電動機は旋回機構の制動時に発電機として動作することになる。尚、この様な発電電動機を用いた場合、該発電電動機の消費動力の演算は、電動機として動作している場合と発電機として動作している場合とでプラス、マイナスの符号を異ならしめることにより対応できる。
【0065】
さらに、本発明は、エンジン目標回転数を設定し、該設定されたエンジン目標回転数に応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標出力を設定する構成であるが、これらエンジン目標回転数とエンジン目標出力とは、前記図5に示す如く1対1で対応するものであるから、まずエンジン目標出力を設定し、該設定されたエンジン目標出力に応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標回転数を設定する構成にしても、同等の制御システムを提供することができる。この場合には、エンジン回転数設定手段に替えてエンジン出力切替え手段を設け、該エンジン出力切替え手段の操作値に応じてエンジン目標出力を設定する、或いは負荷の消費動力に応じてエンジン目標出力を設定し、該設定されたエンジン目標出力に応じてエンジン目標回転数が設定されることになる。
【0066】
また、充電装置の充電量に応じてエンジンの駆動、停止の切替え制御を行なうにあたり、上記第一、第二の実施の形態では、蓄電装置の充電量が予め設定される高効率範囲になるようにエンジンの駆動/停止を切替える構成であるが、これに限定されることなく、例えば、蓄電装置の充電量が予め設定される満充電範囲になるようにエンジンの駆動/停止を切替える構成(例えば、充電量90%以上の範囲を満充電範囲として設定すると共に、駆動基準値を充電量90%、停止基準値を充電量100%に設定する)にしたり、或いは、蓄電装置の充電量が上限値になるまではエンジンの駆動を継続する一方、上限値になった以降は予め設定される空充電範囲になるまでエンジンを停止させる構成(例えば、充電量10%以下の範囲を空充電範囲として設定すると共に、駆動基準値を充電量10%、停止基準値を充電量100%に設定する)にすることもできる。さらに、前記エンジンの駆動、停止を切替えるための蓄電装置の充電量の基準値(駆動基準値及び停止基準値)の設定を、サービスマンやオペレータが任意に行なうことができる基準値設定手段を設けることもできる。
【0067】
また、蓄電装置は、発電電動機が発電機として動作している場合に、電動機の出力に対して発電電動機の出力に余剰がある場合には該余剰電力を蓄電し不足する場合には該不足電力を電動機に供給すると共に、該蓄電装置の蓄放電は、上記第一、第二実施の形態では、母線の電圧と蓄電装置の電圧との差により自動的に行なわれる構成になっているが、これに限定されることなく、制御装置からの制御指令に基づいて蓄電装置の蓄放電を行なう構成にすることもできる。この場合には、制御装置からの制御指令に基づいて蓄電装置の蓄放電を制御する蓄放電制御手段が必要になると共に、制御装置は、発電電動機の出力と電動機の出力との差を演算し、該差に基づいて蓄放電制御手段に制御指令を出力する。
【0068】
さらに、本発明は、ハイブリッド型油圧ショベルに限らず、種々のハイブリッド型建設機械に実施できることは勿論であると共に、エンジンに動力伝動機構を介して接続される油圧ポンプは一つとは限らず、複数でも良い。また、電動機により駆動される負荷も、ハイブリッド型建設機械の種類やサイズ、或いはハイブリッド型建設機械の行なう作業内容等に応じて適宜設けられることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、エンジンと油圧ポンプと発電電動機とが機械的にパラレル接続されたパラレル方式のハイブリッド型建設機械において、エンジン効率の向上を図る場合に利用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 ハイブリッド型油圧ショベル
12 エンジン
13 蓄電装置
14 油圧ポンプ
15 発電電動機
16 動力伝達機構
16a クラッチ機構
17 エンジンコントローラ
18 制御装置
20 発電電動機制御器
22〜25 電動機制御器
26 旋回用電動機
27 パイロットポンプ用電動機
28 冷却ファン用電動機
29 サブポンプ用電動機
36 充電量センサ
37 電圧センサ
38 ポンプ回転数検出センサ
39 ポンプ容量検出センサ
40 ポンプ吐出圧検出センサ
42 回転数切替ダイヤル
43、57 エンジン・発電電動機制御部
44 駆動/停止基準値設定部
45 駆動/停止判定部
46、60 エンジン目標回転数設定部
47、61 エンジン目標出力設定部
48 ポンプ出力演算部
50 駆動/停止切替部
52 発電電動機出力指令値演算部
56 蓄電装置電流センサ
59 負荷演算部
A 油圧アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、油圧ポンプと、該油圧ポンプからの圧油供給により駆動される負荷と、発電機及び電動機として機能する発電電動機と、前記エンジンと油圧ポンプと発電電動機とを機械的にパラレル接続する動力伝達機構と、電動機と、該電動機により駆動される負荷と、蓄放電機能を有する蓄電装置とを備えると共に、前記発電電動機と電動機と蓄電装置とを相互間で電力の授受を行なえるように接続してなるハイブリッド型建設機械において、前記エンジンの回転数を制御するエンジン制御手段と、前記発電電動機の出力を制御する発電電動機制御手段と、前記電動機の出力或いは回転数或いはトルクを制御する電動機制御手段と、前記動力伝達機構による動力伝達を断続する動力伝達断続手段と、これらエンジン制御手段、発電電動機制御手段、電動機制御手段、動力伝達断続手段に制御指令を出力する制御装置と、前記油圧ポンプの出力を測定するためのポンプ出力測定手段とを設けると共に、前記制御装置は、エンジン目標回転数を設定するエンジン目標回転数設定手段と、該設定されたエンジン目標回転数に応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標出力を設定するエンジン目標出力設定手段とを備え、エンジンの駆動時に、エンジン回転数を前記エンジン目標回転数にするべくエンジン制御手段に制御指令を出力する一方、前記ポンプ出力測定手段により測定された油圧ポンプの出力に基づいてエンジン出力を前記エンジン目標出力にするための発電電動機目標出力を演算し、発電電動機の出力を該発電電動機目標出力にするべく発電電動機制御手段に制御指令を出力することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システム。
【請求項2】
請求項1において、制御装置は、油圧ポンプの出力に基づいてエンジン出力をエンジン目標出力にするための発電電動機目標出力を演算するにあたり、エンジン目標回転数とエンジン実回転数との偏差を求め、該偏差がなくなるように発電電動機目標出力を増減させることを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システム。
【請求項3】
請求項1または2において、オペレータがエンジン回転数を任意に切替えるためのエンジン回転数切替え手段を設けると共に、エンジン目標回転数設定手段は、エンジン回転数切替え手段の操作値に応じてエンジン目標回転数を設定することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システム。
【請求項4】
請求項1または2において、油圧ポンプからの供給圧油により駆動される負荷及び電動機により駆動される負荷の消費動力を測定する負荷測定手段を設けると共に、エンジン目標回転数設定手段は、負荷測定手段により測定される負荷の消費動力に応じてエンジン目標回転数を設定することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システム。
【請求項5】
請求項4において、エンジン目標回転数設定手段は、負荷の消費動力の変化率に応じてエンジン目標回転数を補正すると共に、エンジン目標出力設定手段は、前記補正されたエンジン目標回転数に基づいてエンジン目標出力を設定することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項において、蓄電装置の充電量を検出する充電量検出手段を設けると共に、制御装置は、蓄電装置の充電量に応じてエンジンの駆動、停止の切替え制御を行なう駆動/停止切替え手段を備える一方、エンジンの停止状態では、エンジンと油圧ポンプ及び発電電動機との動力伝達を断つべく動力伝達断続手段に制御指令を出力することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システム。
【請求項7】
請求項6において、駆動/停止切替え手段は、蓄電装置の充電量が、蓄電装置の単位時間当たりの充電/放電の容量が大きい範囲として予め設定される高効率範囲になるように、エンジンの駆動、停止の切替え制御を行なうことを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−16993(P2012−16993A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154837(P2010−154837)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(505236469)キャタピラー エス エー アール エル (144)
【Fターム(参考)】