説明

ハイブリッド建設機械の制御装置

【課題】エンジンと蓄電装置とを動力源として負荷を駆動せしめるハイブリッド建設機械において、該ハイブリッド建設機械の負荷状態に応じてエンジンの出力を制御するにあたり、エンジンの急激な出力変動を抑制する。
【解決手段】蓄電装置34の充電量、蓄電装置34の充電量の増減変化、負荷の消費動力、負荷の消費動力の増減変化の少なくとも一つを前件部とし、エンジン12の出力を後件部とするファジィルールに基づいてエンジン12の出力の増減を推論するファジィ推論部42を設け、該ファジィ推論部42の推論結果に基づいてエンジン12の出力を制御する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと蓄電装置とを動力源として負荷を駆動せしめるハイブリッド建設機械の制御装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ショベル等の建設機械においても、省エネルギー化、燃費の向上、排ガス低減等を達成するべく、動力源としてエンジンと蓄電装置とを併用するハイブリッド建設機械が実用化されつつある。この様なハイブリッド建設機械の制御システムとして、エンジンの動力を発電機の駆動専用に使用すると共に、該発電機から電力供給される電動機により走行装置や旋回装置、作業装置等を駆動させる所謂シリーズ方式の制御システムが知られている。また、エンジンと、作業装置等の油圧作動部の油圧供給源になる油圧ポンプと、発電電動機とを動力伝達機構を介して機械的にパラレル接続して、油圧ポンプの出力がエンジン出力よりも小さい場合には、発電電動機をエンジン動力により駆動する発電機として動作させる一方、油圧ポンプの出力がエンジン出力よりも大きい場合には、発電電動機を電動機として動作させてエンジンの動力をアシストするように構成した所謂パラレル方式の制御システムも知られている。これら何れの制御システムにおいても、エンジンと併用される動力源として、発電機や発電電動機により発電される電力を蓄電し、該蓄電電力を電動機や発電電動機に供給する蓄電装置が設けられている。
ところで、前述したようなハイブリッド建設機械では、負荷を駆動せしめる動力源としてエンジンと蓄電装置とを併用することで燃費向上が図られているが、この場合に、更なる燃費向上のためには、ハイブリッド建設機械の負荷状態に対応したエンジン出力にして消費燃料の削減を図ると共に、エンジンを効率良く運転させることが必要になる。そこで、従来、動力制限レバーのレバー位置に応じて発電機の出力電力の上限値を切替えると共に、該発電機の出力電力の上限値に応じてエンジン回転数の設定値を切替えるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−322681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、前記特許文献1のものでは、オペレータが操作する動力制限レバーのレバー位置に応じて発電機の出力電力の上限値を切替えるものであるから、実際のハイブリッド建設機械の負荷状態と、オペレータの操作により切替えられる発電機の出力電力の上限値とが対応しない場合があって、作業効率の低下や、消費燃料の増大を招来する惧れがある。そこで、実際のハイブリッド建設機械の負荷状態を検出し、該検出された負荷状態に応じてエンジン出力を増減させるように制御することが提唱されるが、例えば油圧ショベル等の建設機械では作業中に負荷が急に大きく変動することも多く、このため、負荷の変動にそのまま応答してエンジン出力を変動させると、エンジン出力やエンジン回転数が急に大きく変動してしまうことがあって、変動損が大きくなって燃費向上の妨げになる惧れや、操作性が損なわれてしまう惧れが生じる。
さらに、前記特許文献1のものでは、発電機の出力電力の上限値に応じてエンジン回転数が設定されることになるが、この場合に、発電機の出力が作業負荷の変動を受けて前記上限値以下の範囲内で変動すると、これに伴いエンジンの出力が変動してエンジン効率が低下することがある。つまり、エンジン回転数は発電機の出力電力の上限値に対応して設定されるものであるから、発電機の出力電力の低下に伴いエンジン出力も低下すると、エンジン回転数に対してエンジン出力が低くなり、エンジン効率の悪い状態になる。而して、前記特許文献1のものは、エンジンが効率の良くない状態で運転される場合があって、燃費向上の妨げになるという問題があり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、エンジンと蓄電装置とを動力源として負荷を駆動せしめるハイブリッド建設機械において、該ハイブリッド建設機械の負荷状態に応じてエンジンの出力を制御するべく制御装置を設けるにあたり、該制御装置は、前記蓄電装置の充電量、蓄電装置の充電量の増減変化、負荷の消費動力、負荷の消費動力の増減変化の少なくとも一つを前件部とし、エンジンの出力を後件部とするファジィルールに基づいてエンジンの出力の増減を推論するファジィ推論手段を備え、該ファジィ推論手段の推論結果に基づいてエンジンの出力を制御することを特徴とするハイブリッド建設機械の制御装置である。
請求項2の発明は、請求項1において、制御装置は、ファジィ推論手段の推論結果に基づいてエンジンを停止させるエンジン停止手段を備えることを特徴とするハイブリッド建設機械の制御装置である。
請求項3の発明は、請求項1または2において、制御装置は、ファジィ推論手段の推論結果に基づいて負荷の出力を制限する負荷出力制限手段を備えることを特徴とするハイブリッド建設機械の制御装置である。
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか一項において、ハイブリッド建設機械は、エンジンにより駆動され、負荷及び蓄電装置に動力を供給する発電機或いは発電電動機と、制御装置からの制御指令に基づいて前記発電機或いは発電電動機の出力を制御する発電機制御手段或いは発電電動機制御手段と、制御装置からの制御指令に基づいてエンジンの回転数を制御するエンジン制御手段とを備えると共に、制御装置は、ファジィ推論手段の推論結果に基づいてエンジン目標出力を設定するエンジン目標出力設定手段と、該設定されたエンジン目標出力に応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標回転数を設定するエンジン目標回転数設定手段とを備え、エンジンの駆動時に、エンジン回転数を前記エンジン目標回転数にするべくエンジン制御手段に制御指令を出力する一方、エンジン出力を前記エンジン目標出力にするための発電機目標出力或いは発電電動機目標出力を演算し、発電機或いは発電電動機の出力を該発電機目標出力或いは発電電動機目標出力にするべく発電機制御手段或いは発電電動機制御手段に制御指令を出力することを特徴とするハイブリッド建設機械の制御装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、エンジンの出力は、エンジンの出力の増減を推論するファジィ推論手段の推論結果に基づいて増減制御されることになり、而して、ハイブリッド建設機械の負荷状態に応じてエンジンの出力を変動させるものでありながら、急激な出力変動や、該エンジン出力の変動に伴うエンジン回転数の急激な変動を可及的に抑制でき、よって、エンジン出力やエンジン回転数の変動損を小さくすることができて、燃費向上を達成することができると共に、エンジン出力やエンジン回転数の急激な変動による操作性の悪化を回避することができる。しかも、ファジィルールの前件部として、蓄電装置の充電量、蓄電装置の充電量の増減変化、負荷の消費動力、負荷の消費動力の増減変化の少なくとも一つを用いることによって、ハイブリッド建設機械の負荷状態を適確に把握することができる。
請求項2の発明とすることにより、ファジィ推論手段の推論結果に基づいて、エンジンの出力が不要な場合にはエンジンを停止させることができることになって、更なる消費燃料の削減に貢献できる。
請求項3の発明とすることにより、ファジィ推論手段の推論結果に基づいて負荷の出力を制限できることになって、エンジンが過負荷になってエンジン効率が低下してしまうような不具合を回避することができる。
請求項4の発明とすることにより、ファジィ推論手段の推論結果に基づいてエンジン目標出力が設定され、さらに該エンジン目標出力に応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標回転数が設定されることになり、而して、エンジンを常に効率良く運転させることができて、燃費向上に大きく貢献できる。しかもこのものは、エンジン出力をエンジン目標出力にするための発電機目標出力或いは発電電動機目標出力を演算し、発電機或いは発電電動機の出力を該発電機目標出力或いは発電電動機目標出力にすることでエンジンの出力をエンジン目標出力にする構成であるから、負荷が変動しても、エンジンの出力を、確実にファジィ推論手段の推論結果に基づいて設定されたエンジン目標出力になるように制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ハイブリッド油圧ショベルの側面図である。
【図2】第一の実施の形態における制御システムの全体構成を示す図である。
【図3】第一の実施の形態におけるエンジン・発電機制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】第一の実施の形態におけるエンジン・発電機制御部の制御手順を示すフローチャート図である。
【図5】(A)、(B)は第一の実施の形態における前件部のファジィ集団、メンバーシップ関数を示す表図である。
【図6】第一の実施の形態におけるファジィ演算部の演算結果を示す表図である。
【図7】エンジン目標出力とエンジン目標回転数との対応を示すグラフ図である。
【図8】エンジン出力と燃料消費率との関係を示す図である。
【図9】(A)、(B)は第二の実施の形態における前件部のファジィ集団、メンバーシップ関数を示す表図である。
【図10】第二の実施の形態におけるファジィ推論部の推論結果と負荷出力制限の判定を示す表図である。
【図11】第三の実施の形態におけるエンジン・発電機制御部の構成を示すブロック図である。
【図12】第三の実施の形態におけるエンジン・発電機制御部の制御手順を示すフローチャート図である。
【図13】(A)、(B)は第三の実施の形態における前件部のファジィ集団、メンバーシップ関数を示す表図である。
【図14】第三の実施の形態におけるファジィ演算部の演算結果を示す表図である。
【図15】第四の実施の形態における制御システムの全体構成を示す図である。
【図16】第四の実施の形態におけるエンジン・発電電動機制御部の構成を示すブロック図である。
【図17】第四の実施の形態におけるエンジン・発電電動機制御部の制御手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
まず、第一の実施の形態について図1〜図8に基づいて説明すると、図1において、1は本発明のハイブリッド建設機械の一例であるハイブリッド油圧ショベルであって、該ハイブリッド油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3に装着されるフロント作業機4等から構成され、さらに該フロント作業機4は、ブーム5、アーム6、バケット7等を用いて構成されている。さらに、ハイブリッド油圧ショベル1は、前記ブーム5、アーム6、バケット7をそれぞれ揺動せしめるブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、下部走行体2を走行せしめる左右の走行モータ11L、11R等の各種油圧アクチュエータを備えると共に、上部旋回体3には、動力源としてのエンジン12及び蓄電装置34が搭載されている。
【0009】
次に、図2に基づいて、前記ハイブリッド油圧ショベル1を運転せしめる制御システムの全体構成を説明すると、第一の実施の形態ではシリーズ方式の制御システムが採用されており、エンジン12の動力により発電機13が駆動されると共に、該発電機13で発電された電力は、発電機制御器14、母線15、電動機制御器16〜20を介して、メインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の各電動機21〜25に供給されるように構成されている。
【0010】
前記エンジン12は、エンジンコントローラ26による燃料噴射量調整により回転数(回転速度)が制御されると共に、該エンジンコントローラ26は、後述する制御装置27から出力される制御指令に基づいて、エンジン回転数を制御する。尚、上記エンジンコントローラ26は、本発明のエンジン制御手段に相当する。
【0011】
また、前記発電機制御器14は、発電機13で発電された交流電力を直流に変換すると共に、後述する制御装置27から出力される制御指令に基づいて、発電機13の出力を制御する。尚、上記発電機制御器14は、本発明の発電機制御手段に相当する。
【0012】
さらに、前記電動機制御器16〜20は、直流を交流に変換すると共に、後述する制御装置27から出力される制御指令に基づいて、メインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の各電動機21〜25の出力或いは回転数或いはトルクをそれぞれ制御する。
【0013】
前記メインポンプ用電動機21は、ハイブリッド油圧ショベル1に設けられる油圧アクチュエータA(本実施の形態では、前記ブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、左右の走行モータ11L、11R)の油圧供給源であるメインポンプ28を駆動せしめる専用の電動機である。また、旋回用電動機22は、旋回減速機29を介して上部旋回体3の旋回機構30を駆動せしめる専用の電動機である。パイロットポンプ用電動機23は、パイロット圧の油圧供給源であるパイロットポンプ31を駆動せしめる専用の電動機である。冷却ファン用電動機24は、ラジエータやオイルクーラ等の熱交換器(図示せず)やエンジン12に冷却風を供給する冷却ファン32を駆動せしめる専用の電動機である。サブポンプ用電動機25は、ハイブリッド油圧ショベル1に設けられる他の油圧アクチュエータ(図示しないが、前記ブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、左右の走行モータ11L、11R以外の油圧アクチュエータ)の油圧供給源であるサブポンプ33を駆動せしめる専用の電動機である。そして、これら電動機21〜25の出力或いは回転数或いはトルクの制御は、前述したように、制御装置27から電動機制御器16〜20に出力される制御指令に基づいて行なわれるように構成されている。ここで、本実施の形態では、前記メインポンプ28及びサブポンプ33は、容量可変手段28a、33aを備えた可変容量型ポンプが用いられていると共に、該容量可変手段28a、33aは、制御装置27から出力される制御指令に基づいてメインポンプ28、サブポンプ33の容量をそれぞれ制御するように構成されている。また、パイロットポンプ31には定容量型ポンプが用いられている。尚、本実施の形態において、前記メインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の電動機21〜25は、本発明の負荷を構成する。
【0014】
さらに、図2において、34はバッテリやキャパシタ等の蓄放電機能を有した蓄電装置であって、該蓄電装置34は、発電機制御器14と電動機制御器16〜20との間の母線15に接続され、エンジン12の出力と負荷(メインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の電動機21〜25)の出力との過不足に応じて、電力を蓄放電するようになっている。該蓄電装置34の蓄放電は、本実施の形態では、母線15の電圧と蓄電装置34の電圧との差により自動的に行われるようになっている。つまり、エンジン12の出力が負荷の出力に対して余剰がある場合には、発電機13から電動機21〜25への供給電力に余剰が生じて母線15の電圧が蓄電装置34の電圧よりも高くなり、これにより発電機13の余剰電力が蓄電装置34に供給されて蓄電される一方、エンジン12の出力が負荷の出力に対して不足する場合には、発電機13から電動機21〜25への供給電力が不足して母線15の電圧が蓄電装置34の電圧よりも低くなり、これにより蓄電装置34から放電されて電動機21〜25に不足電力が供給されるようになっている。
【0015】
一方、前記制御装置27には、エンジン12の特性(エンジン効率、エンジン出力、エンジン回転数、エンジン無負荷時回転数等に関する特性)、発電機13の特性(発電機効率、発電機出力、発電機回転数、励磁電流等に関する特性)、メインポンプ28やサブポンプ33の特性(ポンプ効率、ポンプ容積、ポンプ回転数等に関する特性)、電動機21〜25の特性(電動機効率、電動機出力、電動機回転数、電動機トルク等に関する特性)、パイロット設定圧(パイロットポンプ31の吐出ラインの圧力として予め設定される圧力)、蓄電装置34の特性(容量、充電量の下限値、上限値等に関する特性)等の種々のデータや、後述する制御に用いるデータ等が保存されたメモリ35が設けられていると共に、エンジン12や発電機13を制御するエンジン・発電機制御部36や、電動機21〜25やメインポンプ28、サブポンプ33を制御する電動機・ポンプ制御部37等が設けられている。そして制御装置27は、上記エンジン・発電機制御部36や電動機・ポンプ制御部37において、蓄電装置34の充電量を測定する充電量センサ38、母線15の電圧を計測する電圧センサ39、走行用、旋回用、ブーム用、アーム用、バケット用、他の油圧アクチュエータ用の各操作具(図示しないが、操作レバーや操作ペダル、操作スイッチ等)の操作を検出する操作検出手段(例えば、操作具の操作量を電気的に検出するポテンショメータや、操作具操作に基づいて出力されるパイロット圧の圧力を検出する圧力センサ等)40等からの信号を入力し、これら入力信号と前記メモリ35に収納されたデータとに基づいて、前記エンジンコントローラ26、発電機制御器14、電動機制御器16〜20、メインポンプ28、サブポンプ33の容量可変手段28a、33a等に制御指令を出力するように構成されている。
【0016】
次いで、前記エンジン・発電機制御部36の構成について、図3のブロック図に基づいて説明すると、エンジン・発電機制御部36は、入力側に前記メモリ35、充電量センサ38が接続され、出力側に電動機・ポンプ制御部37、発電機制御器14、エンジンコントローラ26が接続されると共に、充電量変化率演算部41、ファジィ推論部42、エンジン目標出力設定部43、エンジン目標回転数設定部44、指令値演算部45、駆動/停止切替部46、負荷出力制限判定部47を具備して構成されている。さらに、前記ファジィ推論部42は、メンバーシップ関数設定部48とファジィ演算部49とを具備しており、また、指令値演算部45は、発電機出力指令値演算部50とエンジン回転数指令値演算部51とを具備している。尚、前記ファジィ推論部42(メンバーシップ関数設定部48及びファジィ演算部49を含む)は、本発明のファジィ推論手段を構成し、エンジン目標出力設定部43は、本発明のエンジン目標出力設定手段を構成し、エンジン目標回転数設定部44は、本発明のエンジン目標回転数設定手段を構成する。また、駆動/停止切替部46は、本発明のエンジン停止手段を構成し、負荷出力制限判定部47及び電動機・ポンプ制御部37は、本発明の負荷出力制限手段を構成する。
【0017】
そして、前記エンジン・発電機制御部36は、ハイブリッド油圧ショベル1の負荷状態に応じてエンジン12の出力を制御するべく、エンジン12の回転数及び発電機13の出力を制御するが、該エンジン・発電機制御部36の行なう制御について、前記図3のブロック図、及び図4のフローチャート図に基づいて説明する。まず、ハイブリッド油圧ショベル1が運転開始すると、エンジン・発電機制御部36は、メモリ35に収納されているデータを読込む(ステップS1)。
【0018】
次いで、エンジン目標出力、エンジン目標回転数の初期値Pef、ωfを設定する(ステップS2)。これらエンジン目標出力、エンジン目標回転数の初期値Pef、ωfは、ハイブリッド油圧ショベル1の初動時において用いられるエンジン目標出力、エンジン目標回転数の値である。
【0019】
次いで、ファジィ推論部42のメンバーシップ関数設定部48において、後述するファジィ推論に用いるメンバーシップ関数を設定する(ステップS3)。この場合、本実施の形態では、ファジィルールの前件部として、蓄電装置34の充電量SOCと充電量SOCの増減変化率Rsocとを用いる構成になっている。つまり、図5に示す如く、前件部のファジィ集団として、蓄電装置34の充電量SOCにより区分される第一、第二ファジィ集合「充電量高」、「充電量低」と、充電量SOCの増減変化により区分される第三、第四ファジィ集合「充電量増加」、「充電量減少」とを設け、これら第一〜第四ファジィ集合のメンバーシップ関数、つまり、蓄電装置34の充電量SOCを入力変数にする第一、第二メンバーシップ関数と、蓄電量SOCの増減変化率Rsocを入力変数にする第三、第四メンバーシップ関数とを設定する。尚、蓄電装置34は、エンジン12の出力と負荷の出力との過不足に応じて蓄放電するため、該蓄電装置34の充電量SOCと充電量SOCの増減変化率Rsocとを前件部にすることによって、ハイブリッド油圧ショベル1の負荷状態を適確に推測することができる。また、本実施の形態では、蓄電装置34の充電量SOCは、充電率、つまり、蓄電装置34の充電量の下限値を0%、上限値を100%としたときの百分率(%)で表し、また、蓄電量SOCの増減変化率Rsocは、単位時間s当たりの蓄電量SOCの増減変化量(=ΔSOC(%)/s)で表す。
【0020】
次いで、充電量センサ38により測定される蓄電装置34の充電量SOCを読込む(ステップS4)。
【0021】
次いで、充電量変化率演算部41において、蓄電装置34の充電量SOCの増減変化率Rsocを演算する(ステップS5)。該増減変化率Rsocは、前述したように、単位時間s当たりの蓄電量SOCの増減変化量(=ΔSOC(%)/s)であるが、ハイブリッド油圧ショベル1の初動時において単位時間sが経過していない場合には、増減変化率Rsocを「0」とする。
【0022】
次いで、ファジィ推論部42において、蓄電装置34の充電量SOC及び充電量SOCの増減変化率Rsocを前件部とし、エンジン12の出力を後件部とするファジィルールに基づいて、エンジン12の出力の増減をファジィ推論する(ステップS6)。この場合、まず、ファジィ演算部49において、前記メンバーシップ関数設定部48で設定された第一〜第四メンバーシップ関数を用いて、ファジィルールに基づきエンジン12の出力の増減を演算するが、本実施の形態では、ファジィルールとして、以下の第一、第二ファジィルールが設定されている。
第一ファジィルール:蓄電装置34が充電量高で、且つ、充電量増加のときは、エンジン12の出力を減少する。
第二ファジィルール:蓄電装置34の充電量低で、且つ、充電量減少のときは、エンジン12の出力を増加する。
上記第一、第二ファジィルールに基づいてファジィ演算部49で演算された結果を図6に示す。ここで、前記第一、第二ファジィルールに基づいてエンジン12の出力の増減を演算するにあたり、本実施の形態では、エンジン12の出力ランクとして、出力の低い方から順に1〜30のランクが設定されていると共に、後件部のメンバーシップ関数が「1」のときには出力ランクを3ランク上下させるとする。また、上下させるランクの演算結果が整数でない場合には、四捨五入して整数にする。
【0023】
さらに、ファジィ推論部42においてエンジン12の出力を推論するにあたり、前記第一、第二ファジィルールに加えて以下のルールが別途設定されている。つまり、前回に設定されたエンジン目標出力Pes(該エンジン目標出力Pesの設定については後述する)が最低出力ランク(出力ランク1)であり、且つ、前記ファジィ演算部49の演算結果(第一、第二ファジィルールに基づく演算結果)が出力減少の場合には、エンジン12を停止させると判定する。また、前回に設定されたエンジン目標出力Pesが最高出力ランク(出力ランク30)であり、且つ、ファジィ演算部49の演算結果が出力増加の場合には、最高出力ランクをそのまま維持する。また、前回に設定されたエンジン目標出力Pesが最高出力ランク或いは最低出力ランクではないが最高出力ランク或いは最低出力ランクの近傍であって、ファジィ演算部49の演算結果に応じた出力ランクの上下ができない場合には、できる範囲で出力ランクを上下させる(例えば、ファジィ演算部49の演算結果が3ランク出力増加であっても、2ランク或いは1ランク出力増加させると最高出力ランクになる場合には、2ランク或いは1ランク出力増加させる)。そして、ファジィ推論部42は、ファジィ演算部49の演算結果と上記ルールとに基づいてエンジン12の出力を推論し、その結果をファジィ推論部42の推論結果として出力する。
【0024】
次いで、エンジン目標出力設定部43において、前記ファジィ推論部42の推論結果に基づいて、エンジン目標出力Pesを設定する(ステップS7)。この場合、エンジン目標出力設定部43は、前回に設定されたエンジン目標出力Pesを基準にして、推論結果に応じてエンジン12の出力ランクを上下させたエンジン目標出力Pesを設定する。尚、ハイブリッド油圧ショベル1の初動時においては、前記ステップS2で設定されたエンジン目標出力の初期値Pefを、前回に設定されたエンジン目標出力とする。また、前記ファジィ推論部42によりエンジン12の停止が判定された場合には、今回のエンジン目標出力Pesは新たに設定されず、前回のエンジン目標出力Pesがそのまま今回のエンジン目標出力Pesになるが、後述するように、エンジン12を停止させる場合には、エンジン目標出力Pesに基づく制御は実行されないようになっている。
【0025】
次いで、エンジン目標回転数設定部44において、エンジン目標出力Pesとエンジン目標回転数ωsとの対応を示すグラフ(図7に示す)を用いて、前記エンジン目標出力設定部43で設定されたエンジン目標出力Pesに対応するエンジン目標回転数ωsを設定する(ステップS8)。該エンジン目標回転数ωsは、エンジン12の出力がエンジン目標出力Pesのときにエンジン効率が最大になるエンジン回転数であって、図7に示す如く、エンジン目標出力Pesが増加するにつれてエンジン目標回転数ωsも高くなる。前記エンジン目標出力Pesとエンジン目標回転数ωsとの対応を示すグラフは、メモリ35にデータとして収納されている。尚、前記エンジン目標回転数の初期値ωfは、エンジン出力がエンジン目標出力の初期値Pefのときにエンジン効率が最大になるエンジン回転数である。
【0026】
ここで、ハイブリッド油圧ショベル1に搭載されるエンジン12の特性の一例について、図8に基づいて説明する。図8に示す実線は、最大出力を出力可能な無負荷回転数に設定したときのエンジン出力と燃料消費率との関係を示すグラフであって、エンジン出力が極めて低い範囲(無負荷状態に近い状態)を除くと、最大出力となるポイントB30が燃料消費率が最小になる(エンジン効率が最大になる)。また、図8に示す点線L上のポイントB1〜B29は、前記最大出力を出力可能な無負荷回転数よりも無負荷回転数を低く設定した場合に、燃料消費率が最小になる(エンジン効率が最大になる)ポイントであって、これらポイントB1〜B29は、前記ポイントB30よりもエンジン出力は低いが、エンジン効率は高い。このようなエンジン特性の場合、上記ポイントB30を最高出力ランク(出力ランク30)のときのエンジン目標出力Pesとして設定し、また点線L上のポイントB1〜B29を、出力ランク1〜29のエンジン目標出力Pesとして順次設定する。或いは、エンスト防止のために、前記ポイントB1〜B30よりも出力を少し下げたポイントを、出力ランク1〜30のエンジン目標出力Pesとして設定する。さらに、エンジン出力が前記ポイントB1〜B30(或いはポイントB1〜B30よりも出力を少し下げたポイント)になるときのエンジン回転数を、出力ランク1〜30のエンジン目標出力Pesに対応するエンジン目標回転数ωsとして設定する。
【0027】
次いで、前記ステップS8、S9で設定されたエンジン目標出力Pes、エンジン目標回転数ωsに基づいて、指令値演算部45の発電機出力指令値演算部50において発電機制御器14に対する発電機出力指令値Pgcを演算し、また、エンジン回転数指令値演算部51においてエンジンコントローラ26に対するエンジン回転数指令値ωcを演算する(ステップS9)。該エンジン回転数指令値ωcは、エンジン12の回転数をエンジン目標回転数ωsにするためにエンジンコントローラ26に出力される指令値である。また、発電機出力指令値Pgcは、エンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにするために、発電機13の出力を制御するべく発電機制御器14に出力される指令値である。つまり、発電機13の出力制御によって発電機13からエンジン12にかかる負荷を制御し、これによってエンジン12の出力をエンジン目標出力Pesになるように制御する構成になっている。
【0028】
前記発電機出力指令値演算部50では、エンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにするための発電機目標出力Pgsを、下記の式(1)を用いて演算する。尚、本実施の形態において、発電機制御器14は、発電機目標出力Pgsを指令値として発電機13の出力を制御する機能を有しており、而して、発電機目標出力Pgsがそのまま発電機出力指令値Pgcになる。
Pgc=Pgs=Pes×ηg ・・・(1)
上記式(1)において、ηgはメモリ35にデータとして保存されている発電機13の効率である。
【0029】
一方、エンジン回転数指令値演算部51では、メモリ35にデータとして保存されているエンジン目標回転数ωsとエンジン回転数指令値ωcとの関係を示す関数(ωc=F(ωs))を用いて、エンジン出力がエンジン目標出力Pesのときにエンジン回転数をエンジン目標回転数ωsにするためのエンジン回転数指令値ωcを演算する。
ここで、本実施の形態において、エンジンコントローラ26は、エンジン12の無負荷回転数の設定値を指令値としてエンジン12の回転数制御を行なう構成になっており、而して、無負荷回転数の設定値がエンジン回転数指令値ωcになるが、この場合には、下記の式(2)を用いてエンジン回転数指令値ωc(無負荷回転数の設定値)を演算することにより、エンジン出力がエンジン目標出力Pesのときにエンジン回転数がエンジン目標回転数ωsになるエンジン回転数指令値ωcを求めることができる。
ωc=A×ωs+B ・・・(2)
上記式(2)において、A、Bはエンジン12の特性により定まる定数である。
【0030】
さらに、前記ステップS9における発電機出力指令値Pgc及びエンジン回転数指令値ωcの演算後、駆動/停止切替部46において、前記ファジィ推論部42の推論結果に基づき、エンジン12を駆動させるか停止させるかを判断する。つまり、ファジィ推論部42の推論結果がエンジン12の停止以外の場合には、エンジン12を駆動させると判断し、ファジィ推論部42の推論結果がエンジン12の停止の場合には、エンジン12を停止させると判断する(ステップS10)。
【0031】
前記ステップS10の判断で、エンジン12の駆動と判断された場合、駆動/停止切替部46は、エンジンコントローラ26に対してエンジン回転数指令値ωcを出力すると共に、発電機制御器14に対して発電機出力指令値Pgcを出力する(ステップS11)。これにより、発電機13の出力は発電機目標出力Pgsになるように制御され、そして該発電機13の出力が発電機目標出力Pgsになるように制御されることによって、エンジン12の出力はエンジン目標出力Pesになるように制御されると共に、エンジン12の回転数は、エンジン目標回転数ωsになるように制御される。
【0032】
さらに、負荷出力制限判定部47において、前記ファジィ推論部42の推論結果に基づき、負荷出力制限を行なうか否かを判定する(ステップS12)。つまり、前述したように、ファジィ推論部42は、前回に設定されたエンジン目標出力Pesが最高出力ランク(出力ランク30)であり、且つ、ファジィ演算部49の演算結果が出力増加の場合には、エンジン12の出力を最高出力ランクに維持すると推論するが、この様に、エンジン12が最高出力ランクでありながらファジィ演算部49の演算結果が出力増加の場合に、負荷出力制限判定部47は、負荷出力制限を行なうと判定する。
【0033】
前記ステップS12の判定で、「YES」、つまり、負荷の出力制限を行なうと判定された場合、負荷出力制限判定部47は、電動機・ポンプ制御部37に対して負荷出力制限指令を出力する(ステップS13)。該負荷出力制限指令が出力された場合の電動機・ポンプ制御部37の制御については、後述する。ステップS13の処理後は、前記ステップS4に戻る。また、ステップS12の判定で、「NO」、つまり、負荷の出力制限を行なわないと判定された場合には、そのまま前記ステップS4に戻る。
【0034】
一方、前記ステップS10の判断で、エンジン12の停止と判断された場合、駆動/停止切替部46は、エンジンコントローラ26に対してエンジン12の停止指令(エンジン回転数指令値ωc=0)を出力すると共に、発電機制御器14に対して発電機13の停止指令(発電機出力指令値Pgc=0)を出力する(ステップS14)。これによりエンジン12及び発電機13は停止する。ステップS14の処理後は、前記ステップS4に戻る。
【0035】
而して、前記エンジン・発電機制御部36の行なう制御によって、エンジン12の出力は、ファジィ推論部42の推論結果に基づいて設定されたエンジン目標出力Pesになるように制御され、さらにエンジン12の回転数は、エンジン12の出力がエンジン目標出力Pesのときにエンジン効率が最大になるエンジン目標回転数ωsになるように制御されるが、前記ファジィ推論部42は、蓄電装置34の充電量SOC及び充電量SOCの増減変化率Rsocを前件部とし、エンジン12の出力を後件部とするファジィルールに基づいて、エンジン12の出力の増減をファジィ推論する構成になっている。するファジ−ルールに基づいて、エンジン12の出力の増減をふぁじエンジン目標出力Pesを設定する構成になっている。
【0036】
次いで、前記電動機・ポンプ制御部37が行なう制御について説明すると、電動機・ポンプ制御部37は、前記メモリ35、操作検出手段40、エンジン・発電機制御部36からの信号を入力し、これら入力信号に基づいて、前記電動機制御器16〜20、及びメインポンプ28、サブポンプ33の容量可変手段28a、33aに対して制御指令を出力する。この場合、メインポンプ用電動機21を制御する電動機制御器16及びメインポンプ28の容量可変手段28aに対しては、メインポンプ28の吐出流量を、該メインポンプ28を油圧源とする油圧アクチュエータA(本実施の形態では、ブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、左右の走行モータ11L、11R)用操作具の操作に基づいて制御するべく制御指令を出力する。また、旋回用電動機22を制御する電動機制御器17に対しては、旋回用操作具の操作に基づいて旋回機構30を駆動させるべく制御指令を出力する。また、パイロットポンプ用電動機23を制御する電動機制御器18に対しては、パイロットポンプ31の吐出圧を予め設定されたパイロット設定圧にするべく制御指令を出力する。また、冷却ファン用電動機24を制御する電動機制御器19に対しては、冷却ファン32が必要な冷却風を供給できる回転数にするべく制御指令を出力する。また、サブポンプ用電動機25を制御する電動機制御器20及びサブポンプ33の容量可変手段33aに対しては、サブポンプ33の吐出流量を、該サブポンプ33を油圧源とする他の油圧アクチュエータ用操作具の操作に基づいて制御するべく制御指令を出力するようになっている。
【0037】
さらに、電動機・ポンプ制御部37は、前記エンジン・発電機制御部36の負荷出力制限判定部47から出力される負荷出力制限指令に基づいて、メインポンプ用電動機21、旋回用電動機22、サブポンプ用電動機25の出力を制限するべく、各電動機21、22、25用の電動機制御器16、17、20に制御指令を出力する。つまり、負荷出力制限指令は、前述したように、前回に設定されたエンジン目標出力Pesが最高出力ランクであり、且つ、ファジィ演算部49の演算結果が出力増加の場合に、エンジン・発電機制御部36から電動機・ポンプ制御部37に出力される制御指令であるが、該負荷出力制限指令が出力されていない場合には、メインポンプ用電動機21、旋回用電動機22、サブポンプ用電動機25に対する出力制限は行なわれず、而して、メインポンプ用電動機21、旋回用電動機22、サブポンプ用電動機25は、各電動機21、22、25に応じて予め設定された最大出力値まで出力可能になっている。一方、負荷出力制限指令が出力された場合、電動機・ポンプ制御部37は、メインポンプ用電動機21、旋回用電動機22、サブポンプ用電動機25の出力を、上記最大出力値よりも小さくなるように制限する。この場合、例えば、エンジン12の出力(最高出力ランク)で負荷全体の出力を負担することができるように、操作具の操作量によりメインポンプ用電動機21、旋回用電動機22、サブポンプ用電動機25に要求される各要求出力の比に応じて、各電動機21、22、25の出力を減少させる。尚、負荷出力制限指令が出力されても、パイロットポンプ用電動機23及び冷却ファン用電動機24に対する出力制限は行なわれないようになっており、これにより、パイロット圧の低下、冷却ファン32の冷却能力の低下等の不具合が発生しないように考慮されている。
【0038】
叙述の如く構成された第一の実施の形態において、ハイブリッド油圧ショベル1は、エンジン12と蓄電装置34とを動力源として負荷(本実施の形態では、メインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用電動機21〜25)を駆動せしめることになるが、該ハイブリッド油圧ショベル1には、負荷の状態に応じてエンジン12の出力を制御するべく制御装置27が設けられていると共に、該制御装置27は、蓄電装置34の蓄電量SOCと充電量SOCの増減変化率Rsocとを前件部とし、エンジン12の出力を後件部とするファジ−ルールに基づいてエンジン12の出力の増減を推論するファジィ推論部42を備え、該ファジィ推論部42の推論結果に基づいてエンジン12の出力を制御することになる。
【0039】
而して、エンジン12の出力は、ハイブリッド油圧ショベル1の負荷状態の変動にそのまま応答して変動するのではなく、エンジン12の出力の増減を推論するファジィ推論部42の推論結果に基づいて滑らかに増減制御されることになる。この結果、エンジン12の出力を負荷状態に応じて変動させることで、作業効率の向上、消費燃料の削減を図れるものでありながら、エンジン12の急激な出力変動や、該エンジン出力の変動に伴うエンジン回転数の急激な変動を可及的に抑制でき、よって、エンジン出力やエンジン回転数の変動損を小さくすることができて、更なる燃費向上を達成することができると共に、エンジン出力やエンジン回転数の急激な変動による操作性の悪化を回避することができる。
【0040】
しかも、本実施の形態では、ファジィルールの前件部として、蓄電装置34の充電量SOCと充電量SOCの増減変化率Rsocとが用いられているが、蓄電装置34は、エンジン12の出力と負荷の出力との過不足に応じて蓄放電することで充電量SOCが増減するため、該蓄電装置34の充電量SOCと充電量SOCの増減変化率Rsocとを前件部にすることによってハイブリッド油圧ショベル1の負荷状態を適確且つ容易に把握することができ、而して、負荷状態に応じたエンジン12の出力の増減制御を適確且つ容易に行うことができる。
【0041】
さらに、前記制御装置27には、ファジィ推論部42の推論結果がエンジン12の停止の場合に、エンジン12を停止させるべくエンジンコントローラ26に制御指令を出力する駆動/停止切替部46が設けられている。而して、ファジィ推論部42の推論結果に基づいて、エンジン12の出力が不要な場合にはエンジン12を停止させることができることになって、更なる消費燃料の削減に貢献できる。
【0042】
さらに、前記制御装置27には、ファジィ推論部42の推論結果に基づいて負荷の出力を制限するか否かを判定する負荷出力制限判定部47が設けられていると共に、該負荷出力制限判定部47において負荷出力制限を行なうと判定された場合には、電動機・ポンプ制御部37に対して負荷出力制限指令が出力されて、負荷を構成するメインポンプ用電動機21、旋回用電動機22、サブポンプ用電動機25の出力が制限されることになる。而して、ファジィ推論部42の推論結果に基づいて負荷の出力を制限できることになって、エンジン12が過負荷になってエンジン効率が低下してしまうような不具合を、回避することができる。
【0043】
またさらに、ハイブリッド油圧ショベル1には、エンジン12により駆動され、負荷及び蓄電装置34に動力(電力)を供給する発電機13と、制御装置27からの制御指令に基づいて発電機13の出力を制御する発電機制御器14と、制御装置27からの制御指令に基づいてエンジン12の回転数を制御するエンジンコントローラ26とが設けられていると共に、制御装置27には、ファジィ推論部42の推論結果に基づいてエンジン目標出力Pesを設定するエンジン目標出力設定部43と、該設定されたエンジン目標出力Pesに応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標回転数ωcを設定するエンジン目標回転数設定部44とが設けられている。そして、制御装置27は、エンジン12の駆動時に、エンジン回転数を前記エンジン目標回転数ωcにするべくエンジンコントローラ26に制御指令を出力する一方、エンジン出力を前記エンジン目標出力Pesにするための発電機目標出力Pgsを演算し、発電機13の出力を該発電機目標出力Pgsにするべく発電機制御器14に制御指令を出力することになる。
【0044】
この結果、エンジン12は、ファジィ推論部42の推論結果に基づいてエンジン目標出力Pesが設定され、さらに該エンジン目標出力Pesに応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標回転数ωcが設定されると共に、該エンジン目標出力Pes、エンジン目標回転数ωcで運転されることになり、而して、エンジン12を常に効率良く運転させることができることになって、燃費向上に大きく貢献できる。しかもこのものは、エンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにするための発電機目標出力Pgsを演算し、発電機13の出力を該発電機目標出力Pgsになるように制御することで、エンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにする構成であるから、負荷の過渡的変動の影響をエンジン12が受けることなく、エンジン12の出力を、確実にファジィ推論部42の推論結果に基づいて設定されたエンジン目標出力Pesになるように制御することができる。
【0045】
次に、本発明の第二〜第四の実施の形態について説明するが、これら第二〜第四の実施の形態において、前記第一の実施の形態と共通するもの(同一のもの)においては、同一の符号を附すと共に、図面及び説明を省略する。
まず、本発明の第二の実施の形態を図9〜図10に基づいて説明する。該第二の実施の形態のものは、前記第一の実施の形態と同様に、シリーズ方式の制御システムが採用されていると共に、ファジィ推論部42において、蓄電装置34の充電量SOC及び充電量SOCの増減変化率Rsocを前件部とし、エンジン12の出力を後件部とするファジィルールに基づいてエンジン12の出力の増減を推論する構成であるが、第二の実施の形態のものは、前件部のファジィ集合とファジィールールとが、前述した第一の実施の形態よりも細かく設定されている。
【0046】
つまり、第二の実施の形態では、図9に示す如く、充電量SOCの増減変化率Rsocにより区分される第一〜第六ファジィ集合「減少率大」、「減少率中」、「減少率小」、「増加率小」、「増加率中」、「増加率大」と、蓄電装置34の充電量SOCにより区分される第七、第八ファジィ集合「充電量高」、「充電量低」とを設け、これら第一〜第八ファジィ集合のメンバーシップ関数、つまり、蓄電装置34の蓄電量SOCの増減変化率Rsocを入力変数にする第一〜第六メンバーシップ関数と、蓄電量SOCを入力変数にする第七、第八メンバーシップ関数とが設定されている。
【0047】
また、第二の実施の形態におけるファジィルールとしては、以下の第一〜第六ファジィルールが設定されている。
第一ファジィルール:蓄電装置34の増減変化率が減少率大で、且つ、充電量低のときは、エンジン12の出力を3ランク増加させる。
第二ファジィルール:蓄電装置34の増減変化率が減少率中で、且つ、充電量低のときは、エンジン12の出力を2ランク増加させる。
第三ファジィルール:蓄電装置34の増減変化率が減少率小で、且つ、充電量低のときは、エンジン12の出力を1ランク増加させる。
第四ファジィルール:蓄電装置34の増減変化率が増加率小で、且つ、充電量高のときは、エンジン12の出力を1ランク減少させる。
第五ファジィルール:蓄電装置34の増減変化率が増加率中で、且つ、充電量高のときは、エンジン12の出力を2ランク減少させる。
第六ファジィルール:蓄電装置34の増減変化率が増加率大で、且つ、充電量高のときは、エンジン12の出力を3ランク減少させる。
【0048】
ここで、第二の実施の形態のものにおいても、第一の実施の形態と同様に、エンジン12の出力ランクとして、出力の低い方から順に1〜30のランクが設定されていると共に、前記第一〜第六ファジィルールに加えて以下のルールが別途設定されている。つまり、前回に設定されたエンジン目標出力Pesが最低出力ランク(出力ランク1)であり、且つ、前記第一〜第六ファジィルールによる演算結果が2〜3ランクの出力減少の場合には、エンジン12を停止させると判定する。また、前回に設定されたエンジン目標出力Pesが最低出力ランク(出力ランク1)であり、且つ、第一〜第六ファジィルールによる演算結果が1ランクの出力減少の場合には、エンジン12をアイドリングさせると判定する。また、前回に設定されたエンジン目標出力Pesが最高出力ランク(出力ランク30)であり、且つ、第一〜第六ファジィルールによる演算結果が出力増加の場合には、最高出力ランクをそのまま維持する。また、前回に設定されたエンジン目標出力Pesが最高出力ランク或いは最低出力ランクではないが最高出力ランク或いは最低出力ランクの近傍であって、第一〜第六ファジィルールによる演算結果に応じた出力ランクの上下ができない場合には、できる範囲で出力ランクを上下させるとする(例えば、第一〜第六ファジィルールによる演算結果が3ランク出力増加であっても、2ランク或いは1ランク出力増加させると最高出力ランクになる場合には、2ランク或いは1ランク出力増加させる)。そして、ファジィ推論部42は、第一〜第六ファジィルールの演算結果と上記ルールとに基づいてエンジン12の出力を推論し、その結果をファジィ推論部42の推論結果として出力する(図10参照)。
【0049】
さらに、第二の実施の形態のものにおいても、第一の実施の形態と同様に、前記ファジィ推論部42の推論結果に基づいてエンジン目標出力Pesが設定され、さらに該エンジン目標出力Pesに応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標回転数ωsが設定される。尚、ファジィ推論部42の推論結果がエンジン12のアイドリングの場合には、該エンジン12のアイドリングに適したエンジン目標出力Pes、エンジン目標回転数ωsが設定される。
【0050】
さらにまた、第二の実施の形態のものにおいても、第一の実施の形態と同様に、前記ファジィ推論部42の推論結果に基づいて負荷出力制限が実行される。つまり、前回に設定されたエンジン目標出力Pesが最高出力ランクであり、且つ、第一〜第六ファジィルールによる演算結果が出力増加の場合に、負荷出力制限判定部47により負荷出力制限を行なうと判定されると共に、電動機・ポンプ制御部37に対して負荷出力制限指令が出力される(前記図10参照)。
【0051】
そして、この第二の形態のものにおいても、前記第一の実施の形態と同様の作用効果を奏することになるが、第二の実施の形態のものは、前件部のファジィ集合とファジィールールとが第一の実施の形態よりも細かく設定されているため、負荷状態に応じたエンジン12の出力の増減制御を行なうにあたり、エンジン12の出力の増減制御をより滑らかに行なうことができる。
【0052】
次に、本発明の第三の実施の形態を図11〜図14に基づいて説明する。該第三の実施の形態のものは、前記第一の実施の形態と同様にシリーズ方式の制御システムが採用されているが、第三の実施の形態のものでは、ファジィ推論部75において、負荷(本実施の形態では、メインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の電動機21〜25)の消費動力Pf及び負荷の消費動力Pfの増減変化率Rpfを前件部とし、エンジン12の出力を後件部とするファジィルールに基づいてエンジン12の出力の増減を推論するように構成されている。
【0053】
つまり、第三の実施の形態の制御装置27には、第一の実施の形態と同様に、ハイブリッド油圧ショベル1の負荷状態に応じてエンジン12の出力を制御するべく、エンジン12の回転数や発電機13の出力を制御するエンジン・発電機制御部70が設けられているが、該エンジン・発電機制御部70の構成について、図11に基づいて説明すると、エンジン・発電機制御部70は、入力側にメモリ35、母線15の電圧を計測する電圧センサ39、発電機13の発電電流を計測する発電機電流センサ71、蓄電装置34の蓄放電電流を計測する蓄電装置電流センサ72が接続され、出力側に電動機・ポンプ制御部37、発電機制御器14、エンジンコントローラ26が接続されると共に、負荷演算部73、負荷消費動力変化率演算部74、ファジィ推論部75、エンジン目標出力設定部43、エンジン目標回転数設定部44、指令値演算部45、駆動/停止切替部46、負荷出力制限判定部47を具備して構成されている。さらに、前記ファジィ推論部75は、メンバーシップ関数設定部76とファジィ演算部77とを具備しており、また、前記指令値演算部45は、発電機出力指令値演算部50とエンジン回転数指令値演算部51とを具備している。尚、前記エンジン目標出力設定部43、エンジン目標回転数設定部44、指令値演算部45(発電機出力指令値演算部50及びエンジン回転数指令値演算部51)、駆動/停止切替部46、負荷出力制限判定部47は、前記第一の実施の形態と同様の制御を行なう。また、負荷演算部73、負荷消費動力変化率演算部74、ファジィ推論部75の制御については、後述する。さらに、前記ファジィ推論部75(メンバーシップ関数設定部76及びファジィ演算部77を含む)は、本発明のファジィ推論手段を構成する。
【0054】
さらに、前記第三の実施の形態のエンジン・発電機制御部70の行なう制御について、前記図11のブロック図、及び図12のフローチャート図に基づいて説明する。まず、ハイブリッド油圧ショベル1が運転開始すると、メモリ35のデータを読込み(ステップS21)、次いで、エンジン目標出力、エンジン目標回転数の初期値Pef、ωfを設定する(ステップS22)。これらステップS21、S22の制御は、第一の実施の形態のステップS1、S2と同じである。
【0055】
次いで、ファジィ推論部75のメンバーシップ関数設定部76において、ファジィ推論に用いるメンバーシップ関数を設定する(ステップS23)。この場合、第三の実施の形態では、ファジィルールの前件部として、負荷の消費動力Pfと消費動力Pfの増減変化率Rpfとを用いる構成になっている。つまり、図13に示す如く、前件部のファジィ集団として、負荷(本実施の形態では、メインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の電動機21〜25)の消費動力Pfにより区分される第一、第二ファジィ集合「消費動力大」、「消費動力小」と、消費動力Pfの増減変化により区分される第三、第四ファジィ集団「消費動力増加」、「消費動力減少」とを設け、これら第一〜第四ファジィ集合のメンバーシップ関数、つまり、負荷の消費動力Pfを入力変数にする第一、第二メンバーシップ関数と、負荷の消費動力Pfの増減変化率Rpfを入力変数にする第三、第四メンバーシップ関数とを設定する。尚、負荷の消費動力Pfの増減変化率Rpfは、単位時間s当たりの負荷の消費動力Pfの増減変化量(=ΔPf/s)で表す。
【0056】
次いで、電圧センサ39により計測される母線15の電圧と、発電機電流センサ71により計測される発電機13の発電電流と、蓄電装置電流センサ72により計測される蓄電装置34の蓄放電電流とを読込む(ステップS24)。
【0057】
次いで、負荷演算部73において、負荷(メインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の電動機21〜25)が消費する動力Pf(負荷の消費動力Pf)を演算する(ステップS25)。この場合、本実施の形態では、発電機13及び蓄電装置34から電動機21〜25への供給電力Pmを負荷の消費動力Pfとして用いると共に、該電動機21〜25への供給電力Pmは、以下の式(3)を用いて演算する。
Pf=Pm=(Ig×V)+(Ib×V) ・・・(3)
上記式(3)において、Igは発電機電流センサ71により計測される発電機13の発電電流、Vは電圧センサ39により計測される母線15の電圧、Ibは蓄電装置電流センサ72により計測される蓄電装置34の蓄放電電流であって、該蓄電装置34の蓄放電電流は、蓄電装置34の放電時にはプラス符号にし、蓄電装置34の蓄電時にはマイナス符号にする。これにより、蓄電装置34の放電時には、発電機13の発電電力と蓄電装置34の放電電力との合計電力が電動機21〜25への供給電力Pmとして演算され、また、蓄電装置34の蓄電時には、発電機13の発電電力から蓄電装置34の蓄電電力を減じた電力が電動機21〜25への供給電力Pmとして演算される。
【0058】
次いで、負荷消費動力変化率演算部74において、負荷の消費動力Pfの増減変化率Rpf(=ΔPf/s)を演算する(ステップS26)。該増減変化率Rpfは、前述したように、単位時間s当たりの負荷の消費動力Pfの増減変化量(=ΔPf/s)であるが、ハイブリッド油圧ショベル1の初動時において単位時間sが経過していない場合には、増減変化率Rpfを「0」とする。
【0059】
次いで、ファジィ推論部75において、負荷の消費動力Pf及び負荷の消費動力Pfの増減変化率Rpfを前件部とし、エンジン12の出力を後件部とするファジィルールに基づいて、エンジン12の出力の増減をファジィ推論する(ステップS27)。この場合、まず、ファジィ演算部77において、前記メンバーシップ関数設定部76で設定された第一〜第四メンバーシップ関数を用いて、ファジィルールに基づきエンジン12の出力の増減を演算するが、第三の実施の形態では、ファジィルールとして、以下の第一、第二ファジィルールが設定されている。
第一ファジィルール:負荷の消費動力が大で、且つ、消費動力増加のときは、エンジン12の出力を増加する。
第二ファジィルール:負荷の消費動力が小で、且つ、消費動力減少のときは、エンジン12の出力を減少する。
上記第一、第二ファジィルールに基づいてファジィ演算部77で演算された結果を図14に示す。ここで、前記第一、第二ファジィルールに基づいてエンジン12の出力の増減を推論するにあたり、第三の実施の形態のものにおいても、前記第一の実施の形態と同様に、エンジン12の出力ランクとして、出力の低い方から順に1〜30のランクが設定されていると共に、前記第一〜第四ファジィルールに加えて別途ルール(第一の形態と同様のルール)が設定されている。そして、これらのルールと前記第一、第二ファジィルールによる演算結果とに基づいてエンジン12の出力を推論し、その結果をファジィ推論部75の推論結果として出力する。
【0060】
次いで、エンジン目標出力設定部43において、前記ファジィ推論部75の推論結果に基づいてエンジン目標出力Pesを設定し(ステップS28)、さらに、エンジン目標回転数設定部44において、エンジン出力がエンジン目標出力Pesのときにエンジン効率が最大になるエンジン目標回転数ωsを設定する(ステップS29)。これらステップS28、S29の制御は、第一の実施の形態のステップS7、S8の制御と同じであるため、説明を省略する。
【0061】
さらに、前記ステップS28、S29におけるエンジン目標出力Pes、エンジン目標回転数ωsの設定後は、ステップS30〜S35の制御を行なう。該ステップS30〜S35の制御は、前述した第一の実施の形態におけるステップS9〜S14の制御と同じであるため、説明を省略する。
【0062】
而して、この第三の実施の形態のものにおいても、前記第一の実施の形態と同様に、ファジィ推論部75の推論結果に基づいてエンジン12の出力が増減制御され、これにより、前述した第一の形態と同様の作用効果を奏することになるが、第三の実施の形態のファジィ推論部75は、負荷の消費動力Pf及び負荷の消費動力Pfの増減変化率Rpfを前件部とし、エンジン12の出力を後件部とするファジィルールに基づいてエンジン12の出力の増減を推論することになる。
【0063】
つまり、第三の実施の形態では、ファジィルールの前件部として、負荷の消費動力Pfと消費動力Pfの増減変化率Rpfとが用いられているが、この様に負荷の消費動力Pfと消費動力Pfの増減変化率Rpfとを前件部にすることによって、ハイブリッド油圧ショベル1の負荷状態を正確に把握することができ、而して、負荷状態に応じたエンジン12の出力の増減制御を適確に行うことができる。
【0064】
次に、本発明の第四の実施の形態を図15〜図17に基づいて説明する。まず、図15に第四の実施の形態の制御システムの全体構成を示すが、該第四の実施の形態ではパラレル方式の制御システムが採用されており、エンジン12は、動力伝達機構55を介して油圧ポンプ56及び発電電動機57に機械的にパラレル接続されている。
【0065】
前記エンジン12は、第一の実施の形態のエンジン12と同様に、エンジンコントローラ26による燃料噴射量調整により回転数(回転速度)が制御されると共に、該エンジンコントローラ26は、制御装置27から出力される制御指令に基づいてエンジン回転数を制御する。
【0066】
前記発電電動機57は、エンジン12の動力により駆動して発電する発電機としての機能と、油圧ポンプ56を駆動せしめる電動機としての機能とを有している。そして、該発電電動機57の発電機動作、電動機動作の切替えは、発電電動機制御器58によって行なわれると共に、該発電電動機制御器58は、制御装置27からの制御指令に基づいて、前記発電機動作、電動機動作の切替え制御、発電機動作時における発電出力の制御、電動機動作時における出力或いは回転数或いはトルクの制御を行なう。尚、前記発電電動機制御器58は、本発明の発電電動機制御手段に相当する。
【0067】
また、前記油圧ポンプ56は、ハイブリッド油圧ショベル1に設けられる油圧アクチュエータA(本実施の形態では、ブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、左右の走行モータ11L、11R)の油圧供給源になる容量可変型ポンプであって、該油圧ポンプ56と各油圧アクチュエータAとの間には、各油圧アクチュエータA用操作具(図示せず)の操作に基づいて油圧アクチュエータAへの油給排制御をそれぞれ行なうコントロールバルブ59が配されている。また、56aは油圧ポンプ56の容量可変手段であって、該容量可変手段56aは、油圧アクチュエータA用操作具の操作量や油圧ポンプ56の吐出圧に基づいて油圧ポンプ56の吐出流量を制御するべく作動すると共に、後述するように制御装置27からの制御指令に基づいて油圧ポンプ56の出力を制限するべく作動するように構成されている。尚、第四の実施の形態において、前記油圧ポンプ56は、後述する旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の電動機22〜25と共に本発明の負荷を構成する。
【0068】
一方、前記動力伝達機構55は、前述したようにエンジン12と油圧ポンプ56と発電電動機57とを機械的にパラレル接続するものであるが、該動力伝達機構55は、エンジン12、油圧ポンプ56、発電電動機57を動力伝達機構55に対してそれぞれ断続するクラッチ機構55aを備えている。そして、該クラッチ機構55aは、制御装置27からの制御指令に基づいて、動力伝達機構55とエンジン12、油圧ポンプ56、発電電動機57とを断続する。
【0069】
さらに、前記発電電動機57は、前記発電電動機制御器58、母線15、電動機制御器17〜20を介して、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の各電動機22〜25に接続されている。前記電動機制御器17〜20、及び旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の各電動機22〜25については、第一の実施の形態と共通するもの(同一のもの)であるため、説明は省略する。また、旋回減速機29、旋回機構30、パイロットポンプ31、冷却ファン32、サブポンプ33、サブポンプ33の容量可変手段33aについても、第一の実施の形態と共通するもの(同一のもの)であるため説明は省略する。
【0070】
また、図15において、34は第一の実施の形態と同様に蓄放電機能を有した蓄電装置であるが、該蓄電装置34は、発電電動機制御器58と電動機制御器17〜20との間の母線15に接続されていて、蓄電装置34と発電電動機57と電動機22〜25の相互間で電力の授受を行うことができるようになっている。そして、該蓄電装置34は、エンジン12の出力と負荷(油圧ポンプ56、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の電動機22〜25)の出力との過不足に応じて、電力を蓄放電する。つまり、エンジン12の出力が負荷の出力に対して余剰がある場合には、発電電動機57は発電機として動作すると共に、該発電電動機57から電動機22〜25への供給電力の余剰分が蓄電装置34に供給されて蓄電される一方、エンジン12の出力が負荷の出力に対して不足する場合には、発電電動機57が発電機として動作しているときは該発電電動機57から電動機22〜25への供給電力の不足分が蓄電装置34から放電され、また、発電電動機57が電動機として動作しているときは該発電電動機57及び電動機22〜25に供給される総電力が蓄電装置34から放電されるようになっている。該蓄電装置34の蓄放電は、第一の実施の形態と同様に、母線15の電圧と蓄電装置34の電圧との差により自動的に行われるようになっている。
【0071】
一方、第四の実施の形態の制御装置27には、前記第一の実施の形態の制御装置27と同様に、エンジン12の特性、蓄電装置34の特性、油圧ポンプ56の特性、発電電動機57の特性、電動機22〜25の特性、サブポンプ33の特性、パイロット設定圧等の種々のデータや、後述する制御に用いるデータ等が保存されたメモリ35が設けられていると共に、エンジン12や発電電動機57を制御するエンジン・発電電動機制御部60や、電動機22〜25やサブポンプ33、油圧ポンプ56を制御する電動機・ポンプ制御部61等が設けられている。そして制御装置27は、蓄電装置34の充電量を検出する充電量センサ38、母線15の電圧を計測する電圧センサ39、走行用、旋回用、ブーム用、アーム用、バケット用、他の油圧アクチュエータ用の各操作具の操作を検出する操作検出手段40、油圧ポンプ56の回転数を検出するポンプ回転数検出センサ62、油圧ポンプ56の容量を検出するポンプ容量検出センサ63、油圧ポンプ56の吐出圧を検出するポンプ吐出圧検出センサ64等からの信号を入力し、これら入力信号と前記メモリ35に収納されたデータとに基づいて、前記エンジンコントローラ26、クラッチ機構55a、発電電動機制御器58、電動機制御器17〜20、サブポンプ33の容量可変手段33a、油圧ポンプ56の容量可変手段56a等に制御指令を出力するように構成されている。
【0072】
次いで、前記第四の実施の形態の制御装置27に設けられるエンジン・発電電動機制御部60の構成について、図16のブロック図に基づいて説明すると、エンジン・発電電動機制御部60は、入力側に前記メモリ35、充電量センサ38、ポンプ回転数検出センサ62、ポンプ容量検出センサ63、ポンプ吐出圧検出センサ64が接続され、出力側に電動機・ポンプ制御部61、クラッチ機構55a、エンジンコントローラ26、発電電動機制御器58が接続されると共に、充電量変化率演算部41、ファジィ推論部42、エンジン目標出力設定部43、エンジン目標回転数設定部44、ポンプ出力演算部65、指令値演算部66、駆動/停止切替部67、負荷出力制限判定部47を具備して構成されている。さらに、前記ファジィ推論部42は、メンバーシップ関数設定部48とファジィ演算部49とを具備しており、また、前記指令値演算部66は、エンジン回転数指令値演算部51と発電電動機出力指令値演算部68とエンジン停止時発電電動機出力指令値演算部69を具備している。尚、前記充電量変化率演算部41、ファジィ推論部42(メンバーシップ関数設定部48、ファジィ演算部49)、エンジン目標出力設定部43、エンジン目標回転数設定部44、負荷出力制限判定部47、エンジン回転数指令値演算部51は、前記第一の実施の形態と同様の制御を行なう。また、ポンプ出力演算部65、発電電動機出力指令値演算部68、エンジン停止時発電電動機出力指令値演算部69、駆動/停止切替部67の制御については後述する。さらに、前記駆動/停止切替部67は、本発明のエンジン停止手段を構成し、負荷出力制限判定部47及び電動機・ポンプ制御部61は、本発明の負荷出力制限手段を構成する。
【0073】
そして、前記エンジン・発電電動機制御部60は、ハイブリッド油圧ショベル1の負荷状態に応じてエンジン12の出力を制御するべく、エンジン12の回転数及び発電電動機57の出力を制御するが、該エンジン・発電電動機制御部60の行なう制御について、前記図16のブロック図、及び図17のフローチャート図に基づいて説明する。まず、ハイブリッド油圧ショベル1が運転開始すると、エンジン・発電電動機制御部60は、ステップS41〜S48の制御、つまり、メモリ35に収納されているデータの読込み(ステップS41)、エンジン目標出力、エンジン目標回転数の初期値Pef、ωfの設定(ステップS42)、ファジィ推論に用いるメンバーシップ関数の設定(ステップS43)、充電量センサ38により測定される蓄電装置34の充電量SOCの読込み(ステップS44)、蓄電装置34の充電量SOCの増減変化率Rsocの演算(ステップS45)、ファジィ推論部42におけるエンジン12の出力のファジィ推論(ステップS46)、ファジィ推論部42の推論結果に基づくエンジン目標出力Pesの設定(ステップS47)、エンジン目標出力Pesに応じたエンジン目標回転数ωsの設定(ステップS48)を行なうが、これらステップS41〜S48の制御は、前述した第一の実施の形態のステップS1〜S8の制御と同じであるため説明を省略する。
【0074】
前記ステップS41〜S48の処理後、続けて、ポンプ回転数検出センサ62、ポンプ容量検出センサ63、ポンプ吐出圧検出センサ64によりそれぞれ検出される油圧ポンプ56の回転数、容量、吐出圧を読込む(ステップS49)。
【0075】
次いで、ポンプ出力演算部65において、油圧ポンプ56の出力Ppを演算する(ステップS50)。該油圧ポンプ56の出力Ppの演算は、下記の式(4)を用いて行なう。
Pp=ωp×v×pr ・・・(4)
上記式(4)において、ωpはポンプ回転数検出センサ62により検出される油圧ポンプ56の回転数、vはポンプ容量検出センサ63により検出される油圧ポンプ56の容量、prはポンプ吐出圧検出センサ64により検出される油圧ポンプ56の吐出圧である。
【0076】
次いで、エンジン回転数指令値演算部51、発電電動機出力指令値演算部68、エンジン停止時発電電動機出力指令値演算部69において、エンジン回転数指令値ωc、発電電動機出力指令値Pgc、エンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctをそれぞれ演算する(ステップS51)。上記エンジン回転数指令値演算部51におけるエンジン回転数指令値ωcの演算は、前記第一の実施の形態と同じであるため説明を省略する。
【0077】
一方、前記発電電動機出力指令値Pgcは、エンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにするために、油圧ポンプ56の出力に基づいて発電電動機57の出力を制御するべく発電電動機制御器58に出力される指令値である。つまり、油圧ポンプ56の出力に基づいて発電電動機57の出力を制御することによって、発電電動機57及び油圧ポンプ56からエンジン12にかかる負荷が一定になるように制御し、これによりエンジン12の出力をエンジン目標出力Pesになるように制御する構成になっている。また、停止時発電電動機出力指令値Pgctは、エンジン12の停止時に発電電動機57のみの動力で油圧ポンプ56を駆動するときに発電電動機制御器58に出力される指令値である。
【0078】
前記発電電動機出力指令値演算部68は、下記の式(5)を用いて発電電動機目標出力Pgsを演算する。尚、本実施の形態において、発電電動機制御器58は、発電電動機目標出力Pgsを指令値として発電電動機57の出力を制御する機能を有しており、而して、発電電動機目標出力Pgsがそのまま発電電動機出力指令値Pgcになる。
Pgc=Pgs=(Pes−Pp/ηp)×ηg ・・・(5)
上記式(5)において、Ppは前記ポンプ出力演算部65において演算された油圧ポンプ56の出力、ηpは油圧ポンプ56の効率、ηgは発電電動機57の効率であって、これら油圧ポンプ効率ηp、発電電動機効率ηgの値はメモリ35にデータとして保存されている。また、発電電動機出力指令値Pgcは、プラス(Pgc≧0)の場合には発電電動機57を発電機として動作させる指令になり、マイナス(Pgc<0)の場合には電動機として動作させる指令になる。
【0079】
また、エンジン停止時発電電動機出力指令値演算部69では、エンジン12の停止時における発電電動機57の目標出力Pgst(以下、エンジン停止時発電電動機目標出力Pgstと称するが、該エンジン停止時発電電動機目標出力Pgstは、本発明の発電電動機目標出力に含まれない)を、下記の式(6)を用いて演算する。尚、エンジン停止時発電電動機目標出力Pgstは、そのままエンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctとして用いられる。
Pgct=Pgst=(−Pp/ηp)×ηg ・・・(6)
上記式(6)において、Ppは前記ポンプ出力演算部65において演算された油圧ポンプ56の出力、ηpは油圧ポンプ56の効率、ηgは発電電動機57の効率である。また、エンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctはマイナス(Pgct<0)であり、発電電動機57を電動機として動作させる指令になる。
【0080】
さらに、前記ステップS51におけるエンジン回転数指令値ωc、発電電動機出力指令値Pgc、エンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctの演算後、駆動/停止切替部67において、前記ファジィ推論部42の推論結果に基づき、エンジン12を駆動させるか停止させるかを判断する(ステップS52)。該エンジン12の駆動、停止の判断は、前記第一の実施の形態と同じであるため説明を省略する。
【0081】
前記ステップS52の判断で、エンジン12の駆動と判断された場合、駆動/停止切替部67は、動力伝達機構55のクラック機構55aに対してエンジン12と油圧ポンプ56と発電電動機57とを接続するように制御指令を出力し、さらに、エンジンコントローラ26に対してエンジン回転数指令値ωcを出力すると共に、発電電動機制御器58に対して発電電動機出力指令値Pgcを出力する(ステップS53)。これにより、エンジン12の回転数はエンジン目標回転数ωsになるように制御されると共に、発電電動機57の出力は発電電動機目標出力Pgsになるように制御されるが、この場合、前述したように、発電電動機出力指令値Pgcがプラス(Pgc≧0)のときには、発電電動機57を発電機として動作させる制御指令が出力され、発電電動機出力指令値Pgcがマイナス(Pgc<0)の場合には、電動機として動作させる制御指令が出力される。そして、発電電動機57が発電機として動作している場合には、該発電電動機57及び油圧ポンプ56の出力をエンジン12が負担し、また、発電電動機57が電動機として動作している場合には、油圧ポンプ56の出力をエンジン12と発電電動機57とで負担することになるが、何れの場合でも、発電電動機57の出力を油圧ポンプ56の出力に基づいて発電電動機目標出力Pgsになるように制御することによって、エンジン12の出力はエンジン目標出力Pesになるように制御される。
【0082】
さらに、負荷出力制限判定部47において、前記ファジィ推論部42の推論結果に基づき、負荷出力制限を行なうか否かを判定する(ステップS54)。該負荷出力制限の判定については、前記第一の実施の形態と同じであるため説明を省略するが、負荷出力制限を行なうと判定された場合には、電動機・ポンプ制御部61に対して負荷出力制限指令を出力(ステップS55)し、その後、前記ステップS44に戻る。また、負荷出力制限を行なわないと判定された場合には、そのままステップS44に戻る。
【0083】
一方、ステップS52の判断で、エンジン12の停止と判断された場合、駆動/停止切替部67は、動力伝達機構55のクラッチ機構55aに対してエンジン12を油圧ポンプ56及び発電電動機57から断ち、且つ、油圧ポンプ56と発電電動機57とを接続するように制御指令を出力し、さらに、エンジンコントローラ26に対してエンジン12の停止指令(エンジン回転数指令値ωc=0)を出力すると共に、発電電動機制御器58に対してエンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctを出力する(ステップS56)。これによりエンジン12が停止すると共に、発電電動機57の出力はエンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctとなるように制御されるが、該エンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctは前述したように発電電動機57を電動機として動作させる指令であり、該電動機として動作する発電電動機57により油圧ポンプ56が駆動される。ステップS56の処理後は、前記ステップS44に戻る。
【0084】
ここで、前記ステップS55で負荷出力制限指令が出力された場合の電動機・ポンプ制御部61の制御について説明する。つまり、負荷出力制限指令は、前記第一の実施の形態と同様に、前回に設定されたエンジン目標出力Pesが最高出力ランクであり、且つ、ファジィ演算部49の演算結果が出力増加の場合に、エンジン・発電電動機制御部60から電動機・ポンプ制御部61に出力される制御指令であるが、該負荷出力制限指令が出力されていない場合には、負荷である旋回用電動機22、サブポンプ用電動機25、油圧ポンプ56に対する出力制限は行なわれず、而して、旋回用電動機22、サブポンプ用電動機25、及び油圧ポンプ56は、各々に応じて予め設定された最大出力値まで出力可能になっている。一方、負荷出力制限指令が出力された場合、電動機・ポンプ制御部61は、旋回用電動機22、サブポンプ用電動機25、油圧ポンプ56の出力を、上記最大出力値よりも小さくなるように(例えば、エンジン12の出力(最高出力ランク)で負荷全体の出力を負担することができるように)制限する。この場合、旋回用電動機22、サブポンプ用電動機25に対する出力制限は、前記第一の実施の形態と同様に、電動機・ポンプ制御部61から電動機制御器17、20に出力させる制御指令により行なわれ、また、油圧ポンプ56の出力制限は、電動機・ポンプ制御部61から油圧ポンプ56の容量可変手段56aに出力される制御指令により行なわれる。尚、第四の実施の形態のものにおいても、第一の実施の形態と同様に、負荷出力制限指令が出力されても、パイロットポンプ用電動機23及び冷却ファン用電動機24に対する出力制限は行なわれないようになっている。
【0085】
而して、第四の実施の形態のものでは、エンジン12と、油圧ポンプ56と、発電機及び電動機として機能する発電電動機57とが動力伝達機構55を介してパラレル接続されたパラレル方式の制御システムが採用されているが、該パラレル方式の制御システムが採用された第四の実施の形態のものにおいても、前記シリーズ方式の制御システムが採用されている第一の実施の形態のものと同様に、蓄電装置34の蓄電量SOC及び充電量SOCの増減変化率Rsocを前件部とし、エンジン12の出力を後件部とするファジ−ルールに基づいてエンジン12の出力の増減を推論するファジィ推論部42が設けられており、該ファジィ推論部42の推論結果に基づいてエンジン12の出力が制御されることになる。この結果、第四の実施の形態のものにおいても、ファジィ推論部42の推論結果に基づいてエンジン12の出力が滑らかに増減制御されることになって、前述した第一の実施の形態のものと同様の作用効果を奏することになり、作業効率の向上、燃費向上、操作性の向上に大きく貢献できる。
【0086】
さらに、第四の実施の形態のものにおいても、第一の実施の形態と同様に、エンジン12は、ファジィ推論部42の推論結果に基づいてエンジン目標出力Pesが設定され、さらに該エンジン目標出力Pesに応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標回転数ωcが設定されると共に、該エンジン目標出力Pes、エンジン目標回転数ωcで運転されることになるが、この場合に、第四の実施の形態のものでは、油圧ポンプ56の出力に基づいてエンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにするための発電電動機目標出力Pgsを演算し、発電電動機57の出力を該発電電動機目標出力Pgsとなるように制御することで、エンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにする構成であるから、油圧ポンプ56の出力変動にかかわらず、エンジン12の出力を、確実にファジィ推論部42の推論結果に基づいて設定されたエンジン目標出力Pesになるように制御することができる。
【0087】
尚、本発明は上記第一〜第四の実施の形態に限定されないことは勿論であって、例えば、第四の実施の形態のようなパラレル方式の制御システムのものにおいて、第三の実施の形態のように、負荷の消費動力と負荷の消費動力の増減変化とを前件部とし、エンジンの出力を後件部とするファジィルールに基づいてエンジンの出力の増減を推論する構成にすることも勿論できる。この場合、負荷の消費動力は、エンジン及び発電電動機に動力伝達機構を介して接続される油圧ポンプ(第四の実施の形態における油圧ポンプ56)が消費する動力と、電動機(第四の実施の形態における旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の電動機22〜25、及び電動機動作時における発電電動機57)が消費する動力とを加算することにより求められる。
【0088】
さらに、前記第一〜第四の実施の形態のものでは、蓄電装置の充電量及び充電量の増減変化率、或いは、負荷の消費動力及び負荷の消費動力の増減変化率をファジィルールの前件部としているが、これらに限定されることなく、ファジィルールの前件部としては、蓄電装置の充電量、蓄電装置の充電量の増減変化、負荷の消費動力、負荷の消費動力の増減変化の何れか一つでも良いし、また、蓄電装置の充電量(及び/或いは蓄電装置の充電量の増減変化)と負荷の消費動力(及び/或いは負荷の消費動力の増減変化)との両方を前件部にしても良い。さらに、ファジィ集団やメンバーシップ関数、ファジィルールの設定は、エンジンの特性や蓄電装置の特性等に応じて適宜設定できることは勿論である。
【0089】
また、負荷の消費動力を測定するにあたり、前記第二の実施の形態では、発電機13及び蓄電装置34から電動機21〜25への供給電力Pmを負荷の消費動力Pfとして用いると共に、該電動機21〜25への供給電力Pmを求める場合には、電圧センサ39、発電機電流センサ71、蓄電装置電流センサ72からの検出信号に基づいて発電機13の発電電力と蓄電装置34の蓄放電電力とを演算する構成になっているが、これに限らず、他の適宜手段を用いて負荷の消費動力Pfを求めることもできる。例えば、発電機13の発電電力は、制御装置27から発電機制御器14に出力される指令値(発電機出力指令値)によって求めることができ、また、蓄電装置34の蓄放電電力は、蓄電装置34の充電量の変化率に基づいて求めることもできる(蓄放電電力=係数×充電量変化率、係数は蓄電装置34の特性により定まる)。さらに、個々の電動機への供給電力Pmiを求め、これらの合計(ΣPmi)を負荷の消費動力Pfとすることもできる。この場合、制御装置27から電動機に出力指令値が出力される場合には、該出力指令値から該電動機への供給電力Pmiを求めることができる。また、制御装置27から電動機に回転数指令値或いはトルク指令値が出力される場合には、以下の式(7)を用いて電動機への供給電力Pmiを求めることができる。
Pmi=ωm×Tm/ηm ・・・(7)
上記式(7)において、ωmは回転数指令値或いは回転数検出センサにより検出される電動機の回転数、Tmはトルク指令値或いはトルク検出手段により検出される電動機のトルク、ηmは電動機の効率である。
さらにまた、負荷がメインポンプ28、パイロットポンプ31、サブポンプ33等の油圧ポンプの場合には、以下の式(8)或いは式(9)を用いて、油圧ポンプを駆動する電動機への供給電力Pmiを求めることができる。
Pmi=(ωp×v×pr)/ηp/ηm ・・・(8)
Pmi=(Lp×pr)/ηp/ηm ・・・(9)
上記式(8)、(9)において、ωpは油圧ポンプの回転数、vは油圧ポンプの容積、prは油圧ポンプの吐出圧、ηpは油圧ポンプのポンプ効率、ηmは油圧ポンプを駆動せしめる電動機の電動機効率、Lpは油圧ポンプの流量である。尚、上記式(8)、(9)を用いる場合、油圧ポンプの回転数は、制御装置27から油圧ポンプを駆動せしめる電動機に回転数指令が出力される場合には、該電動機への回転数指令値から求めることができ、また、回転数指令が出力されない場合には、回転数検出センサを設けることにより検出できる。また、油圧ポンプの容積は、定容量型ポンプならば一定値であり、可変容量型ポンプならば、制御装置27から油圧ポンプの容量可変手段に容量指令が出力される場合には、該容量可変手段への容量指令値から求めることができ、また、容量指令が出力されない場合には、容量検出センサを設けることにより検出できる。また、油圧ポンプの吐出圧は、圧力センサを設けることにより検出できる。さらに、油圧ポンプの流量は、流量検出センサを設けることにより検出できる。
【0090】
また、前記第四の実施の形態では、油圧ポンプの出力を測定するためのポンプ出力測定手段として、油圧ポンプの回転数、容量、吐出圧をそれぞれ検出するポンプ回転数検出センサ、ポンプ容量検出センサ、ポンプ吐出圧検出センサを設けたが、これに限定されることなく、例えば、ポンプ回転数検出センサ及びポンプ容量検出センサに替えて、油圧ポンプの流量を検出するポンプ流量検出センサを設けても良い。また、ポンプ容量検出センサを設けることなく、制御装置から出力されるポンプ容量指令値に基づいて油圧ポンプの容量を求めるように構成することができる。
【0091】
さらに、第四の実施の形態において、油圧ポンプ56の出力に基づいてエンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにするための発電電動機目標出力Pgsを演算するにあたり、エンジン目標回転数ωsとエンジン実回転数ωaとの偏差(ωs−ωa)を求め、該偏差がなくなるように(「0」になるように)発電電動機目標出力Pgsを増減させる構成にすることもできる。この場合の制御方法はPI制御とし、下記の式(10)を用いて発電電動機目標出力Pgsを演算する。
Pgs=(Pes−Pp/ηp)×ηg+(Kp+Ki/s)(ωs−ωa) ・・・(10)
上記式(10)において、Ppはポンプ出力演算部65において演算された油圧ポンプ56の出力、ηpは油圧ポンプ56の効率、ηgは発電電動機57の効率、Kpは比例定数、Kiは積分定数、sはラプラス演算子である。
そして、この様にエンジン目標回転数ωsとエンジン実回転数ωaとの偏差(ωs−ωa)がなくなるように発電電動機目標出力Pgsを増減させることにより、油圧ポンプ56の出力の測定や効率の算定に誤差が生じても(一般に、建設機械の作業中における負荷変動は大きく、このため、油圧ポンプ56の出力の測定誤差や効率の算定誤差が大きくなってしまう惧れがある)、該誤差分を発電電動機57の出力で補償できることになって、エンジン12の出力を確実にエンジン目標出力Pesにすることができる。尚、上記エンジン実回転数ωaは、エンジン回転数検出センサにより検出されるエンジン12の実際の回転数である。
【0092】
また、蓄電装置の蓄放電は、上記各実施の形態では、母線の電圧と蓄電装置の電圧との差により自動的に行なわれる構成になっているが、これに限定されることなく、制御装置からの制御指令に基づいて蓄電装置の蓄放電を行なう構成にすることもできる。この場合には、制御装置からの制御指令に基づいて蓄電装置の蓄放電を制御する蓄放電制御手段が必要になる。
【0093】
さらに、本発明は、ハイブリッド型油圧ショベルに限らず、種々のハイブリッド型建設機械に実施できることは勿論であると共に、負荷も、ハイブリッド型建設機械の種類やサイズ、或いはハイブリッド型建設機械の行なう作業内容等に応じて適宜設けられることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、エンジンと蓄電装置とを動力源として負荷を駆動せしめるハイブリッド建設機械において、該ハイブリッド建設機械の負荷状態に応じてエンジンの出力を制御する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0095】
1 ハイブリッド油圧ショベル
12 エンジン
13 発電機
14 発電機制御器
21 メインポンプ用電動機
22 旋回用電動機
23 パイロットポンプ用電動機
24 冷却ファン用電動機
25 サブポンプ用電動機
26 エンジンコントローラ
27 制御装置
34 蓄電装置
36、70 エンジン・発電機制御部
37、61 電動機・ポンプ制御部
38 充電量センサ
39 電圧センサ
42、75 ファジィ推論部
43 エンジン目標出力設定部
44 エンジン目標回転数設定部
46、67 駆動/停止切替部
47 負荷出力制限判定部
50 発電機出力指令値演算部
56 油圧ポンプ
57 発電電動機
58 発電電動機制御部
60 エンジン・発電電動機制御部
68 発電電動機出力指令値演算部
71 発電機電流センサ
72 蓄電装置電流センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと蓄電装置とを動力源として負荷を駆動せしめるハイブリッド建設機械において、該ハイブリッド建設機械の負荷状態に応じてエンジンの出力を制御するべく制御装置を設けるにあたり、該制御装置は、前記蓄電装置の充電量、蓄電装置の充電量の増減変化、負荷の消費動力、負荷の消費動力の増減変化の少なくとも一つを前件部とし、エンジンの出力を後件部とするファジィルールに基づいてエンジンの出力の増減を推論するファジィ推論手段を備え、該ファジィ推論手段の推論結果に基づいてエンジンの出力を制御することを特徴とするハイブリッド建設機械の制御装置。
【請求項2】
請求項1において、制御装置は、ファジィ推論手段の推論結果に基づいてエンジンを停止させるエンジン停止手段を備えることを特徴とするハイブリッド建設機械の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2において、制御装置は、ファジィ推論手段の推論結果に基づいて負荷の出力を制限する負荷出力制限手段を備えることを特徴とするハイブリッド建設機械の制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項において、ハイブリッド建設機械は、エンジンにより駆動され、負荷及び蓄電装置に動力を供給する発電機或いは発電電動機と、制御装置からの制御指令に基づいて前記発電機或いは発電電動機の出力を制御する発電機制御手段或いは発電電動機制御手段と、制御装置からの制御指令に基づいてエンジンの回転数を制御するエンジン制御手段とを備えると共に、制御装置は、ファジィ推論手段の推論結果に基づいてエンジン目標出力を設定するエンジン目標出力設定手段と、該設定されたエンジン目標出力に応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標回転数を設定するエンジン目標回転数設定手段とを備え、エンジンの駆動時に、エンジン回転数を前記エンジン目標回転数にするべくエンジン制御手段に制御指令を出力する一方、エンジン出力を前記エンジン目標出力にするための発電機目標出力或いは発電電動機目標出力を演算し、発電機或いは発電電動機の出力を該発電機目標出力或いは発電電動機目標出力にするべく発電機制御手段或いは発電電動機制御手段に制御指令を出力することを特徴とするハイブリッド建設機械の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−17677(P2012−17677A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154839(P2010−154839)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(505236469)キャタピラー エス エー アール エル (144)
【Fターム(参考)】