説明

ハイブリッド車およびその制御方法

【課題】早期に排気浄化触媒を暖機すると共に二次電池の昇温を促進する。
【解決手段】バッテリ温度Tbが判定温度Tbref未満であり、システムに異常がなくシステムがリプル昇温制御を実行することができる許可状態にあり、エンジンが運転停止状態か自立運転状態か触媒暖機運転状態かのいずれかの運転状態であるときには(S110〜S130)、エンジン要求パワーPe*が所定機関パワーPeref未満であることを確認してリプル昇温制御の実行を許可する(ステップS150)。リプル昇温制御の実行が許可されると、昇圧コンバータのスイッチング素子のスイッチング周波数を通常より小さくして、バッテリの充放電電流にリプル電流を重畳する。エンジンが触媒暖機運転状態のときでもリプル昇温制御を実行するから、早期に排気浄化触媒を暖機することができると共に早期にバッテリを昇温することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車およびその制御方法に関し、詳しくは、排気を浄化する排気浄化触媒を有する浄化装置が排気系に取り付けられた内燃機関と内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電機と走行用の動力を入出力可能な電動機と低温時に入出力性能が低下する二次電池とを備えるハイブリッド車およびこうしたハイブリッド車の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車としては、バッテリの昇温要請がなされたときに、触媒の暖機が要請されていないときには充電と放電とを交互に繰り返すようにバッテリが要求する充放電要求パワーを設定すると共に設定した充放電要求パワーがバッテリに充放電されて走行するようエンジンとモータとを制御し、触媒の暖機が要請されているときにはできるだけ放電側となるように充放電要求パワーを設定すると共に設定した充放電要求パワーがバッテリに充放電されて走行するようエンジンとモータとを制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド車では、上述の制御を行なうことにより、バッテリの昇温とエンジンの排気浄化との両立を図っている。
【0003】
また、バッテリの温度が設定した温度閾値よりも低いときには、3相交流モータの要求駆動力に対応するトルク指令値に高調波を重畳させて制御することにより、バッテリからモータの駆動用のインバータに流れるバッテリ電流に高調波を重畳させるものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。この装置では、バッテリ電流の高調波により、バッテリの昇温を促進している。また、この装置では、高調波の重畳によりバッテリ電流が過電流となる場合、例えば、モータの回転数が小さくモータのトルク指令値が大きいときなどの場合には、重畳させる高調波の振幅を小さくしたり、高調波の重畳を停止することにより、バッテリ電流が過電流となるのを抑止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−96360号公報
【特許文献2】特開2010−272395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の前者のハイブリッド車では、触媒の暖機が要請されているときには、できるだけバッテリが放電されるよう制御するため、バッテリの充電と放電とを交互に繰り返す場合に比して、バッテリの昇温に時間を要する。
【0006】
また、後者のハイブリッド車では、モータのトルク指令値に高調波を重畳するために高調波発生部を備える必要があると共にインバータのスイッチング制御によって高調波を重畳させるためにインバータのスイッチング周波数を高調波を明確に生じさせる程度に高くする必要が生じる。
【0007】
本発明のハイブリッド車およびその制御方法は、早期に排気浄化触媒を暖機すると共に二次電池の昇温を促進することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のハイブリッド車およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0009】
本発明のハイブリッド車は、
排気を浄化する排気浄化触媒を有する浄化装置が排気系に取り付けられた内燃機関と、前記内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電機と、走行用の動力を入出力可能な電動機と、低温時に入出力性能が低下する二次電池と、を備えるハイブリッド車であって、
前記二次電池が接続された電池電圧系と前記発電機および前記電動機が接続された駆動電圧系とに接続されスイッチング素子をスイッチングすることによって前記駆動電圧系の電圧を前記電池電圧系の電圧以上に調整可能な昇圧コンバータと、
前記二次電池の温度が入出力性能が低下するために昇温が必要であるとして予め定められた昇温必要温度未満であるときに前記内燃機関が運転停止されているか又は前記内燃機関が自立運転されているか或いは前記排気浄化触媒を暖機するために前記内燃機関が触媒暖機運転されているかの運転条件を条件の一つとして含む昇温実行条件が成立しているときに所定範囲の周波数で脈動する脈動電流が前記二次電池を充放電する充放電電流に重畳するよう前記昇圧コンバータを制御する昇温制御を実行する昇温制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0010】
この本発明のハイブリッド車では、排気浄化触媒を暖機するために内燃機関が触媒暖機運転されているときでも昇温制御を実行するから、内燃機関が触媒暖機運転されているときには昇温制御を実行しない場合に比して、排気浄化触媒の暖機を図りつつ二次電池の昇温を促進することができる。即ち、早期に排気浄化触媒を暖機することができると共に早期に二次電池を昇温することができる。しかも、昇圧コンバータのスイッチング素子のスイッチング制御により脈動電流が二次電池を充放電する充放電電流に重畳するように制御するから、電動機を制御するためのインバータなどのスイッチング制御を必要以上の高周波で行なう必要がない。なお、本発明のハイブリッド車において、前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸と車軸との3軸に3つの回転要素が連結された遊星歯車機構を備えるものとすることもできる。
【0011】
こうした本発明のハイブリッド車において、前記昇温制御手段は、前記内燃機関が触媒暖機運転されているときに前記内燃機関から出力されるパワーが所定機関パワー以上に至ったときには、前記昇温制御を制限して実行するか前記昇温制御を停止する手段である、ものとすることもできる。電池電圧系に脈動電流を生じさせるために昇圧コンバータのスイッチング素子のスイッチング周波数を小さくすると、駆動電圧系の電圧を十分に高くすることができなくなる。このため、発電機からその性能に応じた十分なトルクを出力することができなくなり、内燃機関の出力軸への負荷が不十分となり、内燃機関が吹き上がり、発電機が過回転する場合が生じる。したがって、電池電圧系に脈動電流を生じさせるために昇圧コンバータのスイッチング素子のスイッチング周波数を小さくしても発電機から内燃機関の出力軸に作用させることができる負荷の最大値に相当するパワーより若干小さなパワーを所定機関パワーとして用いることにより、内燃機関が吹き上がるのを抑制することができ、発電機が過回転するのを抑制することができる。この場合、前記昇温制御手段は、前記昇温制御を制限して実行するときには前記脈動電流の周波数を高くする手段である、ものとすることもできる。脈動電流の周波数は、昇圧コンバータのスイッチング素子のスイッチング周波数によるものであるから、脈動電流の周波数を高くすることは昇圧コンバータのスイッチング周波数を高くすることとなる。昇圧コンバータのスイッチング周波数を高くすると、リアクタンスの電圧変化の周波数が高くなるため、脈流電流の振幅が小さくなる。このため、振幅の小さな脈動電流により二次電池を充放電する電流の絶対値の最大を小さくすることができ、二次電池を充放電する電流が過電流となるのを抑制することができる。
【0012】
本発明のハイブリッド車の制御方法は、
排気を浄化する排気浄化触媒を有する浄化装置が排気系に取り付けられた内燃機関と、前記内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電機と、走行用の動力を入出力可能な電動機と、低温時に入出力性能が低下する二次電池と、前記二次電池が接続された電池電圧系と前記発電機および前記電動機が接続された駆動電圧系とに接続されスイッチング素子をスイッチングすることによって前記駆動電圧系の電圧を前記電池電圧系の電圧以上に調整可能な昇圧コンバータと、を備えるハイブリッド車の制御方法であって、
前記二次電池の温度が入出力性能が低下するために昇温が必要であるとして予め定められた昇温必要温度未満であるときに前記内燃機関が運転停止されているか又は前記内燃機関が自立運転されているか或いは前記排気浄化触媒を暖機するために前記内燃機関が触媒暖機運転されているかの運転条件を条件の一つとして含む昇温実行条件が成立しているときに所定範囲の周波数で脈動する脈動電流が二次電池を充放電する充放電電流に重畳するよう前記昇圧コンバータを制御する昇温制御を実行する、
ことを特徴とする。
【0013】
この本発明のハイブリッド車の制御方法では、排気浄化触媒を暖機するために内燃機関が触媒暖機運転されているときでも昇温制御を実行するから、内燃機関が触媒暖機運転されているときには昇温制御を実行しない場合に比して、排気浄化触媒の暖機を図りつつ二次電池の昇温を促進することができる。しかも、昇圧コンバータのスイッチング素子のスイッチング制御により脈動電流が二次電池を充放電する充放電電流に重畳するように制御するから、電動機を制御するためのインバータなどのスイッチング制御を必要以上の高周波で行なう必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【図3】モータMG1,MG2を含む電機駆動系の構成の概略を示す構成図である。
【図4】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるリプル昇温実行判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】変形例のリプル昇温実行判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0016】
図1は本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図であり、図2はエンジン22の構成の概略を示す構成図であり、図3はモータMG1,MG2を含む電機駆動系の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図1に示すように、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されたエンジン22と、エンジン22の吸入空気量や燃料噴射量,点火時期,吸気バルブの開閉タイミングなどを制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して複数のピニオンギヤ33を連結するキャリア34が接続されると共にギヤ機構60とデファレンシャルギヤ62とを介して駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aにリングギヤ32が接続されたプラネタリギヤとして構成された動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30のサンギヤ31に取り付けられた例えば同期発電電動機として構成されたモータMG1と、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介して接続された例えば同期発電電動機として構成されたモータMG2と、モータMG1,MG2の駆動回路として6つのトランジスタT11〜T16,T21〜26と、トランジスタT11〜T16,T21〜T26に逆方向に並列接続された6つのダイオードD11〜D16,D21〜D26とにより構成されたインバータ41,42と、モータMG1,MG2に取り付けられた回転位置検出センサ43,44からのロータの回転位置やインバータ41,42に設けられた図示しない相電流を入力してインバータ41,42を制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40と、例えば定格電圧が200Vのリチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50と、バッテリ50を管理するのに必要な信号としてバッテリ50の端子間に設置された電圧センサ51aからの端子間電圧Vbやバッテリ50の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた電流センサ51bからの充放電電流Ib,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51cからの電池温度Tbなどを入力してバッテリ50の管理を行なうバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52と、バッテリ50からの直流電力を昇圧してインバータ41,42に供給する昇圧コンバータ55と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0017】
エンジン22は、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃料室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する排気浄化触媒(例えば三元触媒)を有する浄化装置134で浄化されてから外気へ排出される。
【0018】
エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Tw,燃焼室内に取り付けられた圧力センサ143からの筒内圧力Pin,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジションSP,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からの吸入空気量Qa,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温Ta,空燃比センサ135aからの空燃比AF,酸素センサ135bからの酸素信号O2などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数即ちエンジン22の回転数Neを演算したり、エアフローメータ148からの吸入空気量Qaとエンジン22の回転数Neとに基づいて体積効率(エンジン22の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の比)KLを演算したりしている。
【0019】
昇圧コンバータ55は、図3に示すように、2つのトランジスタT31,T32とトランジスタT31,T32に逆方向に並列接続された2つのダイオードD31,D32とリアクトルLとにより構成されている。2つのトランジスタT31,T32は、それぞれインバータ41,42の正極母線54aと負極母線54bとに接続されており、その接続点にリアクトルLが接続されている。また、リアクトルLと負極母線54bとにはそれぞれシステムメインリレー56を介してバッテリ50の正極端子と負極端子とが接続されている。したがって、トランジスタT31,T32をオンオフ制御することによりバッテリ50の直流電力をその電圧を昇圧してインバータ41,42に供給したり正極母線54aと負極母線54bとに作用している直流電圧を降圧してバッテリ50を充電したりすることができる。リアクトルLと負極母線54bとには平滑用のコンデンサ58が接続されている。以下、昇圧コンバータ55より電力ライン54側を高電圧系といい、昇圧コンバータ55よりバッテリ50側を低電圧系という。
【0020】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、温度センサ55aからの昇圧コンバータ55の温度Tup(例えば、リアクトルLの温度)や、電圧センサ57aからの高電圧系に取り付けられたコンデンサ57の電圧(以下、高電圧系の電圧VHという),電圧センサ58aからの低電圧系に取り付けられたコンデンサ58の電圧,イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32へのスイッチング制御信号やシステムメインリレー56への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0021】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、ハイブリッド用電子制御ユニット70にって実行される以下に説明する駆動制御によって走行する。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、エンジン22を運転しながら走行するときには、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accと車速センサ88からの車速Vとに応じて走行のために駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求される要求トルクTr*を設定し、要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nr(例えば、モータMG2の回転数や車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数)を乗じて走行に要求される走行用パワーPdrvを計算する。次に、バッテリ50から放電可能な電力量の全容量の割合としての残容量(SOC)に基づいてバッテリ50を充放電するための充放電要求パワーPb*と走行用パワーPdrvと損失Lossとの和としてエンジン22から出力すべきエンジン要求パワーPe*を計算し、エンジン22を効率よく運転することができるエンジン22の回転数NeとトルクTeとの関係としての動作ライン(例えば燃費最適動作ライン)と計算したエンジン要求パワーPe*とを用いてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、エンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*となるようにするための回転数フィードバック制御によりモータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm1*を設定する。また、要求トルクTr*からモータMG1をトルク指令Tm1*で駆動したときにプラネタリギヤ30を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクを減じて得られるトルクをモータMG2のトルク指令Tm2*として設定する。そして、設定したエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とをエンジンECU24に送信すると共にモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによってエンジン22が運転されるようエンジンの吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などを実行し、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子をスイッチング制御する。
【0022】
また、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、エンジン22の運転を停止した状態で走行するときには、アクセル開度Accと車速Vとに応じてリングギヤ軸32aに要求される要求トルクTr*を設定し、モータMG1のトルク指令Tm1*には値0を設定し、モータMG2のトルク指令Tm2*にはリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力するトルクを設定し、設定したトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する。トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子をスイッチング制御する。
【0023】
実施例のハイブリッド自動車20では、浄化装置134が有する排気浄化触媒の温度が低く排気浄化触媒が活性化していないときには、エンジン22から出力すべきパワーを制限しながら点火時期を通常より遅角させてエンジン22を運転する触媒暖機運転を行なう。この触媒暖機運転は、モータMG2の定格やバッテリ50の入出力制限Win,Woutによって走行用パワーPdrvをモータMG2から出力することができるときには、モータMG2から走行用パワーPdrvが出力されるようモータMG2を制御すると共にエンジン22が点火時期を遅角させた状態でアイドル回転数やそれより若干高い回転数として予め定められた所定回転数(例えば、1000rpmや1200rpm,1400rpmなど)で自立運転または若干の負荷運転されるようエンジン22とモータMG1とを制御し、走行用パワーPdrvをモータMG2から出力することができないときには、モータMG2の定格やバッテリ50の入出力制限Win,Woutによって出力可能なパワーをモータMG2から出力するようモータMG2を制御し、モータMG2から出力するパワーでは不足するパワーをエンジン要求パワーPe*として設定すると共に触媒暖機運転用の回転数(前述の所定回転数)とこの回転数でエンジン要求パワーPe*を出力することができるトルクとの運転ポイントでエンジン22が運転されるようエンジン22とモータMG1とを制御する。
【0024】
実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50としてリチウムイオン二次電池を用いているため、低温時には入出力性能が低下するというリチウムイオン二次電池の特性から、バッテリ50の温度Tbが低いときには、バッテリ50の入出力制限Win,Woutが小さくなり、モータMG1,MG2の駆動に制限が課されることになる。このため、バッテリ50を充放電する充放電電流Ibに脈動電流(リプル電流)を重畳させてバッテリ50を昇温するリプル昇温制御を行なう。実施例では、リプル電流は、昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング周波数(キャリア周波数)を通常の周波数(例えば、数kHz)より小さい周波数(例えば、1kHzなど)とすることによって得ている。通常、昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング周波数は、低電圧系に生じる電流の脈動や高電圧系に生じる電圧の脈動が十分に小さくなるように十分に大きな周波数が設定されているが、このスイッチング周波数を小さくして低電圧系に生じる電流の脈動の振幅を大きくすることにより、バッテリ50を昇温に適したリプル電流を得ることができる。なお、このリプル昇温制御は、昇圧コンバータ55のスイッチング周波数を小さくするためにモータMG1,MG2の駆動特性を低下させる不都合や、バッテリ50の充放電電流Ibにリプル電流を重畳させるために過電流となる場合が生じるため、車両の状態(例えば、エンジン22の運転状態やシステムの状態,運転者の要求など)により許可されたり禁止されたりする。
【0025】
次に、上述のリプル昇温制御を実行するか否かを判定する処理について説明する。図4は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるリプル昇温実行判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、バッテリ50の温度Tbがリプル昇温制御の実行が必要であると判定するために予め定められた昇温判定温度Tbref未満のときに繰り返し実行される。
【0026】
リプル昇温実行判定ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70の72は、まず、バッテリ50の温度Tbやエンジン要求パワーPe*,システム状態,エンジン運転状態などのリプル昇温制御の実行の可否を判定するのに必要なデータを入力する(ステップS100)。ここで、バッテリ50の温度Tbについては、温度センサ51cにより検出された温度TbをバッテリECU52から通信により入力するものとした。エンジン要求パワーPe*については、上述した駆動制御により設定されたものを入力するものとした。システム状態としては、昇圧コンバータ55やインバータ41,42が正常に作動するか否かなどのシステムを構成する各機器が正常に作動するか否かの状態やシフトポジションセンサ82によって検出されるシフトレバー81のポジションなどのセンサ検出値に基づく状態などの種々のものを挙げることができる。エンジン運転状態としては、エンジン22が運転停止状態であるか運転状態であるか、エンジン22が運転状態であるときには通常の運転状態、即ち自立運転状態(無負荷運転状態)や負荷運転状態であるか、触媒暖機運転状態であるかを挙げることができる。
【0027】
こうしてデータを入力すると、バッテリ50の温度Tbが判定温度Tbref未満であるか否か(ステップS110)、システムに異常はなくリプル昇温制御を実行することができる許可状態にあるか否か(ステップS120)、エンジン運転状態としてエンジン22が運転停止状態であるか又はエンジン22が自立運転状態であるか或いはエンジン22が触媒暖機運転状態であるかこれらのいずれかの状態ではないか(ステップS130)、などのリプル昇温制御を実行する条件(昇温実行条件)を判定する。バッテリ50の温度Tbが判定温度Tbref以上であったり、システムを構成するいずれかの機器に異常が生じているなどのためにシステムがリプル昇温制御を実行することができない状態であったり、エンジン22が運転停止状態か自立運転状態か触媒暖機運転状態かのいずれの運転状態でもないときには、昇温実行条件が成立していないと判断し、リプル昇温制御の実行を禁止して(ステップS160)、本ルーチンを終了する。リプル昇温制御の実行が禁止されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング周波数(キャリア周波数)を通常の周波数(例えば、数kHz)としてトランジスタT31,T32をスイッチング制御する。
【0028】
一方、バッテリ50の温度Tbが判定温度Tbref未満であり、システムに異常がなくシステムがリプル昇温制御を実行することができる許可状態にあり、エンジン22が運転停止状態か自立運転状態か触媒暖機運転状態かのいずれかの運転状態であるときには、昇温実行条件が成立していると判断し、エンジン要求パワーPe*が所定機関パワーPeref未満であることを確認し(ステップS140)、リプル昇温制御の実行を許可して(ステップS150)、本ルーチンを終了する。ここで、所定機関パワーPerefは、低電圧系にリプル電流を生じさせるために昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング周波数を通常の周波数より小さい周波数としたときにモータMG1から出力することができる最大トルクによってエンジン22に負荷を与えたときにエンジン22から出力することができる最大パワーに対してトルク脈動による変動より大きなマージンだけ小さなパワーとして予め定められたパワーであり、昇圧コンバータ55の特性やモータMG1の性能に応じて定めることができる。なお、リプル昇温制御の実行が許可されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング周波数(キャリア周波数)を通常の周波数(例えば、数kHz)より小さい周波数(例えば、1kHz)としてトランジスタT31,T32をスイッチング制御する。これにより、バッテリ50の充放電電流Ibにリプル電流が重畳され、バッテリ50を昇温する。したがって、浄化装置134の排気浄化触媒の暖機を行ないながらバッテリ50の昇温を行なうことができる。
【0029】
昇温実行条件が成立しているとき、即ち、システムに異常がなくシステムがリプル昇温制御を実行することができる許可状態にあり、エンジン22が運転停止状態か自立運転状態か触媒暖機運転状態かのいずれかの運転状態であるときでも、ステップS140でエンジン要求パワーPe*が所定機関パワーPeref以上であると判定されたときには、リプル昇温制御の実行を禁止して(ステップS160)、本ルーチンを終了する。このようにエンジン要求パワーPe*が所定機関パワーPeref以上であるときにはリプル昇温制御の実行を禁止することにより、昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング周波数を通常の周波数としてモータMG1からエンジン22に十分な負荷を作用させることができるようにし、昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング周波数を小さくすることによってモータMG1からエンジン22に十分な負荷を与えることができないために生じ得るエンジン22の吹き上がりを抑制することができる。したがって、エンジン22が吹き上がることによりモータMG1が過回転するのを抑制することができる。
【0030】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、バッテリ50の温度Tbが判定温度Tbref未満であり、システムに異常がなくシステムがリプル昇温制御を実行することができる許可状態にあり、エンジン22が運転停止状態か自立運転状態か触媒暖機運転状態かのいずれかの運転状態であるときには、昇温実行条件が成立していると判断し、リプル昇温制御の実行を許可してリプル昇温制御を実行することにより、即ち、エンジン22の運転状態が触媒暖機運転状態のときでもリプル昇温制御を実行することにより、早期に浄化装置134の排気浄化触媒を暖機することができると共に早期にバッテリ50を昇温することができる。しかも、昇温実行条件が成立しているときでもエンジン要求パワーPe*が所定機関パワーPeref以上であると判定されると、リプル昇温制御の実行を禁止するから、昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング周波数を小さくすることによってモータMG1からエンジン22に十分な負荷を与えることができないために生じ得るエンジン22の吹き上がりを抑制することができると共にエンジン22の吹き上がりに伴ってモータMG1が過回転するのを抑制することができる。もとより、バッテリ50の充放電電流Ibにリプル電流を重畳させる動作を昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング周波数を小さくすることによって行なうから、インバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜26のスイッチング周波数を必要以上に大きくする必要がない。
【0031】
実施例のハイブリッド自動車20では、リプル昇温制御の実行条件が成立しているときでもエンジン要求パワーPe*が所定機関パワーPeref以上であると判定されたときには直ちにリプル昇温制御の実行を禁止するものとしたが、図5の変形例のリプル昇温実行判定ルーチンに例示するように、リプル昇温制御の実行条件が成立しているときにエンジン要求パワーPe*が所定機関パワーPeref以上であっても第2の所定機関パワーPeref2未満のときにはリプル昇温制御の実行を制限を課して許可するものとしてもよい。ここで、リプル昇温制御の制限は、例えば、リプル電流の振幅を小さくすることによって行なうことができる。リプル電流は、昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング周波数(キャリア周波数)が大きいほど周波数が大きく振幅は小さくなるから、このスイッチング周波数をリプル昇温制御を実行する際のスイッチング周波数(例えば、1kHz)より大きく且つリプル昇温制御を実行していない昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32の通常のスイッチング周波数(例えば、数kHz)より小さな周波数(例えば、2kHz)とすることにより、リプル電流の振幅を小さくすることができる。リプル電流の振幅が小さくなると、電流の変動幅が小さくなるためにバッテリ50の昇温効果は小さくなるが、リプル昇温制御を実行しない場合に比してバッテリ50の昇温は促進される。一方、昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング周波数を大きくすると、高電圧系の電圧を高くすることができるから、モータMG1から出力することができるトルクも大きくなる。このため、モータMG1からエンジン22に作用させることができる負荷も大きくなる。したがって、この変形例では、リプル昇温制御に制限を課したときの昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング周波数でモータMG1から出力することができる最大トルクによってエンジン22に負荷を与えたときにエンジン22から出力することができる最大パワーに対してトルク脈動による変動より大きなマージンだけ小さなパワーとして定めたものを第2の所定機関パワーPeref2として用いるものとした。この変形例のように、リプル昇温制御の実行条件が成立しているときにエンジン要求パワーPe*が所定機関パワーPeref以上であっても第2の所定機関パワーPeref2未満のときにはリプル昇温制御の実行を制限を課して許可するものとすれば、リプル昇温制御の実行条件が成立しているときにエンジン要求パワーPe*が所定機関パワーPeref以上であると判定されたときには直ちにリプル昇温制御の実行を禁止する場合に比して、バッテリ50の昇温を促進することができる。
【0032】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22を触媒暖機運転しているときの駆動制御として、走行用パワーPdrvをモータMG2から出力することができないときには、モータMG2の定格やバッテリ50の入出力制限Win,Woutによって出力可能なパワーをモータMG2から出力するようモータMG2を制御し、モータMG2から出力するパワーでは不足するパワーをエンジン要求パワーPe*として設定すると共に触媒暖機運転用の回転数(前述の所定回転数)とこの回転数でエンジン要求パワーPe*を出力することができるトルクとの運転ポイントでエンジン22が運転されるようエンジン22とモータMG1とを制御するものとしたが、エンジン22のモータMG1の制御としては、エンジン要求パワーPe*に応じた回転数とこの回転数でエンジン要求パワーPe*を出力することができるトルクとの運転ポイントでエンジン22が運転されるようエンジン22とモータMG1とを制御するものとしてもよい。また、エンジン22を触媒暖機運転しているときの駆動制御として、走行用パワーPdrvをモータMG2から出力することができないときには、エンジン22を運転しながら走行するときの駆動制御と同様の制御、即ち、走行用パワーPdrvと損失Lossとの和としてエンジン要求パワーPe*を設定し、例えば燃費最適動作ラインとエンジン要求パワーPe*とを用いてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、エンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*となるようにするための回転数フィードバック制御によりモータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm1*を設定すると共に要求トルクTr*からモータMG1をトルク指令Tm1*で駆動したときにプラネタリギヤ30を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクを減じて得られるトルクをモータMG2のトルク指令Tm2*として設定してエンジン22とモータMG1,MG2を制御するものとしてもよい。
【0033】
実施例では、排気浄化触媒を有する浄化装置134が排気系に取り付けられたエンジン22と、エンジン22のクランクシャフト26にダンパ28を介してキャリア34が接続されると共に駆動輪63a,63bに連結されたリングギヤ軸32aにリングギヤ32が接続されたプラネタリギヤとして構成された動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30のサンギヤ31に取り付けられたモータMG1と、リングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介して接続されたモータMG2と、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50と、バッテリ50からの直流電力を昇圧してインバータ41,42に供給する昇圧コンバータ55と、を備えるハイブリッド自動車20に本発明を適用するものとして説明したが、排気浄化触媒を有する浄化装置が排気系に取り付けられたエンジンと、エンジンからの動力を用いて発電する発電機と、走行用の動力を出力する電動機と、低温時に入出力性能が低下する二次電池と、二次電池が接続された電池電圧系と発電機や電動機が接続された駆動電圧系とに接続されてスイッチング素子をスイッチングすることによって駆動電圧系の電圧を電池電圧系の電圧以上に調整可能な昇圧コンバータと、を備える車であれば、如何なるタイプの車であってもよい。例えば、エンジンと、エンジンのクランクシャフトに取り付けられた発電機と、走行用の動力を出力する電動機と、リチウムイオン二次電池と、二次電池からの電力を電圧を昇圧して発電機や電動機に供給する昇圧コンバータと、を備えるいわゆるシリーズ型のハイブリッド車であってもよいし、クラッチと変速機とを介して車軸に連結されたエンジンと、エンジンのクランクシャフトに接続された発電機と、変速機の入力軸または出力軸或いは変速機が取り付けられた車軸とは異なる車軸に取り付けられた電動機と、リチウムイオン二次電池と、二次電池からの電力を電圧を昇圧して発電機や電動機に供給する昇圧コンバータと、を備えるタイプのハイブリッド車であってもよい。
【0034】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、昇圧コンバータ55が「昇圧コンバータ」に相当し、図4のリプル昇温実行判定ルーチンを実行してリプル昇温制御の実行の可否を判定すると共にリプル昇温制御の実行が許可されたときに昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング周波数(キャリア周波数)を通常の周波数(例えば、数kHz)より小さい周波数(例えば、1kHz)としてトランジスタT31,T32をスイッチング制御することによりリプル昇温制御を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「昇温制御手段」に相当する。
【0035】
ここで、「内燃機関」としては、排気浄化触媒を有する浄化装置134が排気系に取り付けられ、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されたエンジン22に限定されるものではなく、排気を浄化する排気浄化触媒を有する浄化装置が排気系に取り付けられたものであれば、如何なるタイプの内燃機関としてもかまわない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、内燃機関からの動力を用いて発電可能なものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、走行用の動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「二次電池」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、低温時に入出力性能が低下するものであれば如何なるタイプの二次電池としても構わない。「昇圧コンバータ」としては、バッテリ50が接続された低電圧系とモータMG1とモータMG2とが接続された高電圧系とに接続され、トランジスタT31,T32とダイオードD31,D32とリアクトルLとにより構成され、トランジスタT31,T32をスイッチングすることにより高電圧系の電圧を低電圧系の電圧以上に調整することができる昇圧コンバータ55に限定されるものではなく、二次電池が接続された電池電圧系と発電機および電動機が接続された駆動電圧系とに接続されスイッチング素子をスイッチングすることによって駆動電圧系の電圧を電池電圧系の電圧以上に調整可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「昇温制御手段」としては、図4のリプル昇温実行判定ルーチンを実行してリプル昇温制御の実行の可否を判定すると共にリプル昇温制御の実行が許可されたときに昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング周波数(キャリア周波数)を通常の周波数(例えば、数kHz)より小さい周波数(例えば、1kHz)としてトランジスタT31,T32をスイッチング制御することによりリプル昇温制御を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70に限定されるものではなく、図5のリプル昇温実行判定ルーチンを実行してリプル昇温制御の実行の可否を判定すると共にリプル昇温制御の実行が許可されたときにリプル昇温制御を実行するものとするなど、二次電池の温度が入出力性能が低下するために昇温が必要であるとして予め定められた昇温必要温度未満であるときに内燃機関が運転停止されているか又は内燃機関が自立運転されているか或いは排気浄化触媒を暖機するために内燃機関が触媒暖機運転されているかの運転条件を条件の一つとして含む昇温実行条件が成立しているときに所定範囲の周波数で脈動する脈動電流が二次電池を充放電する充放電電流に重畳するよう昇圧コンバータを制御する昇温制御を実行するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0036】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0037】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、ハイブリッド車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51a 電圧センサ、51b 電流センサ、51c 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、54a 正極母線、54b 負極母線、55 昇圧コンバータ、55a 温度センサ、56 システムメインリレー、57,58 コンデンサ、57a,58a 電圧センサ、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、136,スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、143 圧力センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、MG1,MG2 モータ、D11〜D16,D21〜D26,D31,D32 ダイオード、T11〜T16,T21〜T26,T31,T32 トランジスタ、L リアクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気を浄化する排気浄化触媒を有する浄化装置が排気系に取り付けられた内燃機関と、前記内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電機と、走行用の動力を入出力可能な電動機と、低温時に入出力性能が低下する二次電池と、を備えるハイブリッド車であって、
前記二次電池が接続された電池電圧系と前記発電機および前記電動機が接続された駆動電圧系とに接続されスイッチング素子をスイッチングすることによって前記駆動電圧系の電圧を前記電池電圧系の電圧以上に調整可能な昇圧コンバータと、
前記二次電池の温度が入出力性能が低下するために昇温が必要であるとして予め定められた昇温必要温度未満であるときに前記内燃機関が運転停止されているか又は前記内燃機関が自立運転されているか或いは前記排気浄化触媒を暖機するために前記内燃機関が触媒暖機運転されているかの運転条件を条件の一つとして含む昇温実行条件が成立しているときに所定範囲の周波数で脈動する脈動電流が前記二次電池を充放電する充放電電流に重畳するよう前記昇圧コンバータを制御する昇温制御を実行する昇温制御手段と、
を備えるハイブリッド車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車であって、
前記昇温制御手段は、前記内燃機関が触媒暖機運転されているときに前記内燃機関から出力されるパワーが所定機関パワー以上に至ったときには、前記昇温制御を制限して実行するか前記昇温制御を停止する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項3】
請求項2記載のハイブリッド車であって、
前記昇温制御手段は、前記昇温制御を制限して実行するときには前記脈動電流の周波数を高くする手段である、
ハイブリッド車。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載のハイブリッド車であって、
前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸と車軸との3軸に3つの回転要素が連結された遊星歯車機構を備えるハイブリッド車。
【請求項5】
排気を浄化する排気浄化触媒を有する浄化装置が排気系に取り付けられた内燃機関と、前記内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電機と、走行用の動力を入出力可能な電動機と、低温時に入出力性能が低下する二次電池と、前記二次電池が接続された電池電圧系と前記発電機および前記電動機が接続された駆動電圧系とに接続されスイッチング素子をスイッチングすることによって前記駆動電圧系の電圧を前記電池電圧系の電圧以上に調整可能な昇圧コンバータと、を備えるハイブリッド車の制御方法であって、
前記二次電池の温度が入出力性能が低下するために昇温が必要であるとして予め定められた昇温必要温度未満であるときに前記内燃機関が運転停止されているか又は前記内燃機関が自立運転されているか或いは前記排気浄化触媒を暖機するために前記内燃機関が触媒暖機運転されているかの運転条件を条件の一つとして含む昇温実行条件が成立しているときに所定範囲の周波数で脈動する脈動電流が前記二次電池を充放電する充放電電流に重畳するよう前記昇圧コンバータを制御する昇温制御を実行する、
ことを特徴とするハイブリッド車の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−166722(P2012−166722A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30107(P2011−30107)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】