説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】EV走行への移行時間を短縮し、ハイブリッド車両の燃費を向上させる。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置は、電源装置の電力を用いて主に走行用モータによって走行するようにエンジン及び走行用モータを用いて走行制御を行う第1走行モードと、電源装置のSOCが所定値よりも低くならないようにエンジン及び走行用モータを用いて走行制御を行う第2走行モードとのうち、第2走行モードが選択された走行制御における電源装置のSOCが第1閾値以上である場合に、第2走行モードから第1走行モードに切り替えて車両の走行制御を遂行する車両制御部と、第2走行モードが選択された走行制御における電源装置のSOCが第1閾値よりも低く、所定値よりも高い第2閾値以上である場合に、エンジンを駆動させてジェネレータによって発生した電力を電源装置に充電させる走行モード移行制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置を搭載するハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両走行の駆動源として走行用の電動モータ及び内燃エンジンを備えるハイブリッド車両がある。ハイブリッド車両には電源装置が搭載され、電源装置の電力を用いて電動モータを駆動し、車両走行の駆動源として利用している。
【0003】
ハイブリッド車両は、内燃エンジン及び走行用の電動モータのいずれか一方もしくは両方を駆動源として用い、例えば、エンジンを停止して電動モータのみを駆動源として走行したり、エンジン及び電動モータの両方を駆動源として走行することができる。
【0004】
電源装置は、車両の減速時の回生エネルギーによる電力や内燃エンジンによって発電された電力などを充電するが、近年では、プラグインハイブリッド車両が登場し、車両に搭載される電源装置に、外部電源から供給される電力を蓄える(充電する)こともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−241396号公報
【特許文献2】特開2010−221745号公報
【特許文献3】特開2011−111188号公報
【特許文献4】特開2010−83351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プラグインハイブリッド車両やハイブリッド車両では、搭載する電源装置に蓄えられた電力を積極的に使用して主に走行用モータによって走行するようにエンジン及び走行用モータを用いて走行制御を行う第1走行モード(CD(Charge Depleting)モード)と、電源装置のSOCを所定値に維持しながら走行させる第2走行モード(CS(Charge Sustaining)モード)とを切り替えて車両走行制御が行われている。
【0007】
CDモードによる走行制御(EV走行)は、エンジンを駆動源として走行する機会を抑制し、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができる。このため、CSモードでの走行制御中に、例えば、主に回生エネルギーによって電源装置に電力を充電してSOCが所定の閾値まで増加した場合に、走行モードをCDモードに切り替えて車両の走行制御を遂行することで、ハイブリッド車両の燃費向上を図ることができる。
【0008】
しかしながら、CSモードでの走行制御中にCDモードを選択可能な閾値までSOCが増加する直前(CSモードからCDモードへ復帰する直前)に、車両状態が変化して回生エネルギーによる充電が不十分となったり(例えば、下り坂から平坦又は登り坂に変わるなど)、アクセルが急に踏み込まれて蓄えられた電力が消費されてしまい、SOCが減少又は増加しなくなることがあり、CSモードの走行制御においてCDモードへの復帰までに要する時間が長くなり、CDモードでの走行制御によるハイブリッド車両の燃費向上を図る機会が減少してしまう。
【0009】
本発明は、電源装置の電力を用いて主に走行用モータによって走行するようにエンジン及び走行用モータを用いて走行制御を行う第1走行モードを有するハイブリッド車両の走行制御において、電源装置のSOCが所定値以上で選択される第1走行モードへの移行時間を短縮し、ハイブリッド車両の燃費を向上させる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エンジンと、車両の走行用モータと、前記走行用モータに電力を供給する電源装置と、前記エンジンの出力によって前記電源装置に蓄えられる電力を発生させるジェネレータと、を備えたハイブリッド車両の制御装置である。前記制御装置は、前記電源装置の電力を用いて主に前記走行用モータによって走行するように前記エンジン及び前記走行用モータを用いて走行制御を行う第1走行モードと、前記電源装置のSOCが所定値よりも低くならないように前記エンジン及び前記走行用モータを用いて走行制御を行う第2走行モードとのうち、前記第2走行モードが選択された走行制御における前記電源装置のSOCが第1閾値以上である場合に、前記第2走行モードから前記第1走行モードに切り替えて前記車両の走行制御を遂行する車両制御部と、前記第2走行モードが選択された走行制御における前記電源装置のSOCが前記第1閾値よりも低く、前記所定値よりも高い第2閾値以上である場合に、前記エンジンを駆動させて前記ジェネレータによって発生した電力を前記電源装置に充電させる走行モード移行制御部と、を有する。
【0011】
また、前記制御装置は、前記電源装置のSOCが前記第1閾値以上であるか否かを判別し、前記第1閾値以上である場合に前記第1走行モードを選択し、前記第1閾値未満である場合に前記第2走行モードを選択する走行モード選択部を備えることができ、前記車両制御部が、前記走行モード選択部によって選択された走行モードに基づいて前記エンジン及び前記走行用モータを用いた走行制御を行うように構成される。
【0012】
また、前記走行モード移行制御部は、前記第2走行モードが選択されているか否かを判別して前記第2走行モードが選択されている場合に、前記エンジンを駆動させて前記ジェネレータによって発生した電力を前記電源装置に充電させ、前記第2閾値から前記第1閾値まで前記電源装置のSOCを上昇させるように制御することができる。
【0013】
また、上記制御装置は、前記ハイブリッド車両に設けられる外部電源から供給される電力を前記電源装置に充電させる外部充電手段を通じた外部充電制御を遂行する制御部をさらに備えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電源装置のSOCが電源装置の電力を用いて主に走行用モータによって走行するようにエンジン及び走行用モータを用いて走行制御を行う第1走行モードを選択可能な第1閾値よりも低い第2閾値以上である場合に、エンジンの出力によって発生した電力を電源装置に充電させるので、第1走行モードへの移行時間を短縮することができ、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1のハイブリッド車両の構成ブロック図である。
【図2】実施例1のCDモード及びCSモードの車両制御の説明図である。
【図3】実施例1のCDモード復帰制御の説明図である。
【図4】実施例1の車両制御の処理遷移を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
【0017】
図1から図4は、実施例1を示す図である。図1は、本実施例のプラグインハイブリッド車両の構成ブロック図である。なお、プラグインハイブリッド車両を一例に説明するが、本実施例の車両制御装置10は、外部電源からの外部充電機能を備えていないハイブリッド車両にも適用できる。
【0018】
図1に示すように、プラグインハイブリッド車100は、エンジン1、第1MG(Motor Generator)2、第2MG3、動力分配機構4、トランスミッション(無段変速機、減速装置など)5、及びバッテリ6が搭載される。
【0019】
エンジン1の出力軸は、動力分配機構4に接続される。動力分配機構4は、トランスミッション5の入力軸及び第1MG(発電用モータ)2の入力軸と連結される。トランスミッション5の出力軸は、駆動輪7のディファレンシャルギア(差動装置)8に連結され、エンジン1の動力が動力分配機構4を介して駆動輪7に伝達される。また、トランスミッション5の出力軸は、第2MG(走行用モータ)3の出力軸と連結され、第2MG3の動力がトランスミッション5を介して駆動輪7に伝達されるようになっている。
【0020】
動力分配機構4は、エンジン1が発生させる動力を2つの経路に分割し、トランスミッション5を介して駆動輪7に伝達する第1経路と、エンジン1が発生された動力を第1MG2に伝達して発電させる第2経路とを含む。動力分配機構4は、後述する車両制御装置10によって制御され、車両制御装置10は、エンジン1の駆動力を用いた走行制御やバッテリ6への充電制御等に応じて、第1及び第2経路それぞれに伝達される動力やその比率を制御する。
【0021】
バッテリ6は、第2MG3に電力を供給する電源装置であり、バッテリ6の直流電力は、インバータ9により交流電力に変換され、第2NG3に供給される。第2MG3は、三相同期モータや三相誘導モータなどの交流モータである。
【0022】
プラグインハイブリッド車100の回生制動時には、トランスミッション5を介して駆動輪7により第2MG3が駆動され、第2MG3がジェネレータ(発電機)として作動する。第2MG3は、バッテリ7から供給される電力によって駆動する車両走行の駆動源であるとともに、制動エネルギーを電力に変換する回生ブレーキとして作動し、第2MG3によって発電された電力(回生エネルギー)は、インバータ9を介してバッテリ6に蓄えられる。
【0023】
第1MG2は、エンジン1の動力により回転駆動することにより発電し、インバータ9を介して発電した電力をバッテリ6に供給するジェネレータである。第1MG2は、第2MG3と同様に、三相同期モータや三相誘導モータなどの交流モータで構成できる。
【0024】
エンジン1は、内燃機関である。エンジン1から排出される排気ガスは、不図示の触媒(例えば、三元触媒)を通じて車外に排気される。また、バッテリ6は、複数の単電池20で構成される組電池である。単電池(蓄電素子)としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることができる。
【0025】
また、第1MG2により発電された電力は、そのまま第2MG3を駆動させる電力として供給したり、バッテリ6に蓄えられる電力として供給することができる。例えば、バッテリ6のSOCの状態や車両状況に応じて制御され、第2MG3は、バッテリ6に蓄えられた電力、第1MG2により発電された電力のうちのいずれか一方又は両方の電力により駆動する。
【0026】
エンジン制御装置11は、車両制御装置10からのエンジン制御信号に基づいてエンジン1を制御するエンジンECUであり、モータ制御装置12は、車両制御装置10からのモータ制御信号に基づいて第1MG2及び第2MG3を制御するモータECUである。エンジン制御装置11及びモータ制御装置12は、車両全体の制御を行うメインコントローラである車両制御装置10に接続されている。
【0027】
バッテリ制御装置13は、バッテリ6のSOCや劣化状態などを管理するとともに、バッテリ6の充放電動作を車両制御装置10からのバッテリ制御信号に基づいて制御するバッテリECUである。第2MG3を駆動する際(放電)及び第1MG2によりバッテリ6に電力を充電する際の電流I及び電圧Vが、それぞれ不図示の電流センサ及び電圧センサにより検出され、それらの検出信号が監視装置(監視ECU)を介して又は直接にバッテリ制御装置13、車両制御装置10に出力される。
【0028】
車両制御装置10は、プラグインハイブリッド車両100全体で要求される車両要求出力を算出し、車両要求出力に基づいてエンジン1及びバッテリ6の出力制御を行う。
【0029】
車両制御装置10は、運転状態に応じて駆動供給源を選択し、エンジン1及び第2MG3のうちの一方又は両方からの駆動力を用いた車両の走行制御を遂行する。例えば、アクセル開度が小さい場合や車速が低い場合などには、エンジン1からの駆動力を使用せずに(エンジン1を停止した状態で)、第2MG120のみを駆動源としてプラグインハイブリッド車両の走行制御を行う。なお、第2MG120のみを駆動源としてプラグインハイブリッド車両の走行制御の場合でも、エンジン1を駆動して第1MG2による発電制御を行うことができる。
【0030】
一方、アクセル開度が大きい場合や車速が高い場合、又はバッテリ6のSOC(State Of Charge:残存容量)が小さい場合などには、エンジン1を駆動源として用いた走行制御を遂行する。このとき、車両制御装置10は、エンジン1のみ、もしくはエンジン1および第2MG3の両方を駆動源としてプラグインハイブリッド車両の走行制御を行うことができる。
【0031】
また、本実施例のプラグインハイブリッド車両100は、外部電源200から供給される電力をバッテリ6に充電する外部充電手段を備える。プラグインハイブリッド車両100の側部には、インレット15が設けられ、プラグインハイブリッド車両100と外部電源200とを連結する接続プラグ210を有する充電ケーブル220が接続される。外部電源200は、家庭用電源や充電スタンドなどがある。
【0032】
電源制御装置14は、外部充電手段を介した外部充電制御を遂行するECUであり、外部電源200から延設される接続プラグ210がインレット15に接続されたことを検出すると(インレット15又は接続プラグ210から出力される接続プラグ210とインレット15とが接続状態であることを示す信号を受信すると)、インレット15とバッテリ6との間に設けられた充電器16を制御して外部電源200から供給される電力を、バッテリ6に充電させる。
【0033】
なお、電源制御装置14は、不図示のリレースイッチをON/OFFして外部充電制御の電気系統とバッテリ6との電気的接続を制御することができる。つまり、リレースイッチがOFFである場合、バッテリ6が充電器16などから電気的に遮断され、リレースイッチがONである場合、バッテリ6が充電器16などと電気的に接続されるように制御でき、電源制御装置14は、外部電源200から延設された接続プラグ210がインレット15に接続されたことを検出すると、リレースイッチをONにして充電器16を通じた外部電源200によるバッテリ6の充電制御を開始する。
【0034】
また、リレースイッチのON/OFF状態は、車両状態に応じて自動的に制御することができ、例えば、イグニッションがONにされて車両制御装置10が起動した場合、リレースイッチをOFFにし、イグニッションがOFFされてプラグイン充電モードが選択された場合、または車両制御装置10が停止した場合に、リレースイッチをONにすることができる。
【0035】
充電器16は、インレット15とバッテリ6との間に接続され、外部電源200から供給される交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器や昇圧器などを含んで構成される。電源制御装置14は、車両制御装置10からの制御信号に基づいて外部充電制御を遂行し、充電器16は、電源制御装置14から出力される駆動信号に基づいて動作する。
【0036】
なお、外部電源200は、充電器16を備えることができる。つまり、外部電源200が充電器16を備える場合、プラグインハイブリッド車両100は、充電器16を備えていなくてもよい。
【0037】
また、車両制御装置10、エンジン制御装置11、モータ制御装置12、バッテリ制御装置13及び電源制御装置14の各制御装置は、1つの制御装置で構成することも可能であり、メインコントローラとしての車両制御装置10が、各制御装置11、12、13及び14の各機能を備えるように構成してもよい。
【0038】
次に、本実施例の車両制御装置10及びプラグインハイブリッド車両100の車両制御について詳細に説明する。
【0039】
上述したように、車両制御装置10は、運転状態に応じて駆動源を自動的に選択し、エンジン1及び第2MG3のうちの一方又は両方からの駆動力を用いた車両の走行制御を遂行する。
【0040】
車両制御装置10は、搭載するバッテリ6に蓄えられた電力を積極的に使用して走行する第1走行モード(CD(Charge Depleting)モード)と、バッテリ6のSOCを目標値よりも低くならないように走行する第2走行モード(CS(Charge Sustaining)モード)の一方を選択し、選択された走行モードに基づいて走行制御を遂行する。なお、CSモードとCDモードとは、手動で切替えるように構成することも可能である。
【0041】
車両制御装置10は、CDモード又はCSモードを、バッテリ6のSOCに基づいて選択する走行モード選択部10aを備える。走行モード選択部10aは、イグニッションがONされて車両制御装置10が起動した際、バッテリ6のSOCがCDモード閾値(第1閾値)以上であるか否かを判別し、CDモード閾値以上である場合にCDモード(第1走行モード)を選択する。一方、CDモード閾値未満である場合、CSモード(第2走行モード)を選択する。
【0042】
また、走行モード選択部10aは、CSモードが選択された走行制御時に、バッテリ6のSOCがCDモード閾値以上であるか否かを判別し、バッテリ6のSOCがCDモード閾値以上である場合、CDモードを選択する。つまり、車両制御装置10は、CSモードが選択された走行制御におけるバッテリ6のSOCがCDモード閾値以上である場合に、CSモードからCDモードに切り替えてプラグインハイブリッド車両100の走行制御を遂行する。
【0043】
CDモードは、バッテリ6に蓄えられた電力を維持せずに(例えば、エンジン1の出力によって第1MG2を回転駆動し、発生した電力をバッテリ6に充電せずに)、主に第2MG3の駆動力のみでプラグインハイブリッド車両100を走行させる走行モードである。CDモードは、基本的にエンジン1を停止して、第2MG3の駆動力のみで車両出力全体を確保するように、エンジン1及び第2MG3を制御する。
【0044】
バッテリ6に蓄えられた電力を積極的に使用してプラグインハイブリッド車両100の走行制御を行うCDモードは、EV走行とも称され、バッテリ6のSOCは走行に応じて低下する。なお、CDモードでもアクセル開度が高い場合や車速が高い場合などには、駆動力を補うためにエンジン1の出力も使用した車両制御が遂行される。
【0045】
CSモードは、バッテリ6に蓄えられた電力(SOC)を所定の目標値よりも低くならないように、エンジン1の駆動力又は/及び第2MG3の駆動力(バッテリ6の電力)を用いた車両制御を行う走行モードである。すなわち、SOCが目標値よりも低下すると、エンジン1を始動して第1MG2による充電制御が行われ、目標値よりも低いSOCを目標値に近づけるように上昇させつつ、エンジン1の駆動力又は/及び第2MG3の駆動力(バッテリ6の電力)を用いて走行制御を遂行する。CSモードは、HV走行とも称される。
【0046】
図2は、本実施例のCDモード及びCSモードの車両走行制御の説明図である。縦軸はバッテリ6のSOC、横軸は時間である。
【0047】
車両制御装置10は、例えば、イグニッションがONされて車両走行制御を開始する際(起動時)のバッテリ6のSOCが、CDモード閾値よりも大きいか否かを判別し、図2の例では、バッテリ6のSOCがCDモード閾値よりも大きいと判別され、CDモードを選択して車両走行制御を開始している。
【0048】
車両制御装置10は、バッテリ制御装置13に車両出力に応じたバッテリ6の放電制御信号を出力し、バッテリ制御装置13は、バッテリ6から第2MG3に、蓄えられた電力を供給する(放電する)。CDモードが選択された走行制御では、バッテリ6のSOCが時間の経過とともに減少する。
【0049】
車両制御装置10(走行モード選択部10a)は、バッテリ制御装置13を介してバッテリ6のSOCを監視し、SOCが所定値(例えば、CSモード閾値)以下となったか否かを判別する。バッテリ6のSOCがCSモード閾値以下となった場合、CDモードからCSモードに切り替える(CSモードを選択する)。
【0050】
車両制御装置10は、CSモードが選択されると、バッテリ6のSOCを所定の目標値(例えばCSモード閾値)よりも低くならないように、エンジン1の駆動力又は/及び第2MG3の駆動力(バッテリ6の電力)を用いた走行制御を行う。
【0051】
ここで、CDモード閾値は、バッテリ6に蓄えられているSOC(現在SOC)からCDモードでの車両走行制御におけるSOCの下限値(CSモード閾値)まで、バッテリ6に蓄えられた電力を積極的に使用したプラグインハイブリッド車両100の走行制御を行うか否かを判別するための閾値である。このCDモード閾値は、例えば、主にバッテリ6の電力を用いた走行可能な距離等に基づいて予め決定される値である。
【0052】
具体的には、CDモード閾値が小さいと、同じ車両出力でCDモードでの走行制御をおこなった場合、CDモードからCSモードに切り替わるまでの時間taが短くなる。このため、CDモードでの走行時間及び走行距離が短くなると、CDモードでの車両制御機会(所定走行時間又は所定走行距離)を十分に確保できないので、一定時間又は一定走行距離以上のCDモードでの車両走行制御の機会を確保するために、プラグインハイブリッド車両100の燃費に対して最適化された値である。
【0053】
CSモード閾値は、CDモード閾値よりも小さく、CDモードからCSモードへ移行する、言い換えれば、CDモードにおける車両走行制御でのSOC下限値である。なお、CSモード閾値は、エンジン1のみを駆動源として車両走行制御を行うための閾値ではなく、バッテリ6のSOCが目標値よりも低くならないようにエンジン1又は/及び第2MG3を駆動源として用いた車両走行制御を行う際の閾値である。本実施例では、CSモード閾値とCDモードのSOC下限値とが同じである場合を一例に説明しているが、これに限らず、例えば、CSモード閾値とSOC下限値とを個別の値に設定することも可能である。
【0054】
CSモードは、例えば、バッテリ6のSOCを目標値又は目標値前後の所定の範囲内に維持して走行するように、エンジン1及び第2MG3を用いて走行制御を行うことができるが、本実施例のCSモードでは、主に回生エネルギーによるバッテリ6の充電制御によってSOCが目標値又は目標値前後の所定の範囲内を超えた増加した場合、増加した分のバッテリ6の電力を積極的に使用し、目標値よりも増加したSOCを目標値又は目標値前後の所定の範囲内に低下させるように制御するのではなく、CDモードが選択可能なCDモード閾値に対してバッテリ6のSOCが上昇するように、エンジン1又は/及び第2MG3を駆動源として用いた車両走行制御を遂行するための走行モードである。なお、本実施例のCSモードは、回生エネルギーの他にエンジン1の出力で回転駆動する第1MG2によって発生する電力を蓄える(充電する)こともできる。
【0055】
本実施例の車両制御装置10は、CSモードが選択された車両走行制御において、時間の経過とともに回生エネルギーによって蓄積されたバッテリ6の電力がCDモード閾値に達すると、CSモードからCDモードに切り替え、CDモードでの車両走行制御を遂行する。
【0056】
図3は、本実施例のCDモード復帰制御処理を説明するための説明図である。車両制御装置10は、CSモードでの走行制御において、主に回生エネルギーによるバッテリ6への回生充電制御を遂行しつつ、SOCを上昇させるようにエンジン1又は/及び第2MG3を駆動源として用いた車両走行制御を遂行する。
【0057】
車両制御装置10は、CSモードでの走行制御中にバッテリ6のSOCがCDモード閾値に達したか否かを判別する。図3の例では、主に回生エネルギーによるバッテリ6への充電制御により、時間t3でバッテリ6のSOCがCDモード閾値に到達している(線A)。
【0058】
車両制御装置10は、時間t3においてバッテリ6のSOCがCDモード閾値に達したと判別し、時間t3からCDモードに切り替えて(CDモードを選択して)車両の走行制御を開始する(時間t3でCSモードからCDモードに復帰させる)。
【0059】
ここで、本実施例の車両制御装置10は、CDモード閾値に対応するCDモード早期移行閾値(第2閾値)を適用し、CSモードからCDモードへの走行モード移行制御を遂行するCD/CSモード移行制御部(走行モード移行制御部)10aを備えることができる。
【0060】
CD/CSモード移行制御部10aは、車両制御装置10がCSモードを選択した走行制御を行っているか否か否かを判別し、CSモードが選択されている場合に、CSモードでの走行制御中に主に回生エネルギーによってバッテリ6に電力が充電される回生充電制御において、バッテリ6のSOCがCDモード閾値ではなく、CDモード閾値よりも小さいCDモード早期移行閾値に達したか否かを判別する。CDモード早期移行閾値は、CDモード閾値未満で、CSモード閾値よりも高い値に設定される。
【0061】
CD/CSモード移行制御部10aは、バッテリ6のSOCがCDモード早期移行閾値に達したと判別されると、エンジン1を強制駆動して第1MG2によって発生した電力をバッテリ6に充電される制御を遂行する。つまり、時間t3よりも手前の時間t1において、バッテリ6のSOCがCDモード閾値よりも低いCDモード早期移行閾値に達し、CD/CSモード移行制御部10aは、エンジン制御装置11に強制始動信号又は強制駆動信号を出力する。エンジン制御装置11は、強制始動信号又は強制駆動信号に基づく出力でエンジン1を駆動制御し、動力分配機構4は、車両制御装置10からの制御信号に基づいて、エンジン1から出力された駆動力を第1MG2に伝達する。
【0062】
なお、車両制御装置10は、CSモードでの走行制御中にエンジン1が停止している場合は、強制始動信号をエンジン制御装置11に出力しつつ、動力分配機構4を制御してエンジン1から出力された動力を全て第1MG2に伝達するようにすることができる。また、CSモードでの走行制御中にエンジン1が停止していない場合、言い換えれば、車両出力に応じた動力を発生させている場合、車両制御装置10は、車両出力に応じた動力に、バッテリ6の充電制御に必要な第1MG2に伝達する動力を加えたエンジン1の強制駆動信号をエンジン制御装置11に出力しつつ、動力分配機構4を制御してエンジン1から出力された動力のうち第1MG2に伝達する分の動力のみを分配するように制御することができる。
【0063】
第1MG2は、動力分配機構4を通じて伝達されるエンジン1の動力により発電を行い、バッテリ制御装置13は、発電された電力をインバータ9を介してバッテリ6に充電させる。
【0064】
図3に示すように、CDモード早期移行閾値からCDモード閾値までバッテリ6のSOCを、エンジン1の動力を用いた強制充電によって上昇させるように制御し、バッテリ6のSOCが主に回生エネルギーによる回生充電制御によってCDモード早期移行閾値に到達した時間t1から時間t3までに要する時間よりも時間t1から時間t2までの短い時間でCDモード閾値に到達する。
【0065】
CD/CSモード移行制御部10aは、主に回生エネルギー等によるSOCのCDモード閾値到達時間t3よりも短い時間でバッテリ6のSOCをCDモード閾値まで引き上げることができ(図3の線B)、CSモードからCDモードへの移行時間、言い換えれば、CSモードからCDモードに復帰してCDモードでの車両走行制御を開始時間が、時間t3から時間t2に短縮される(時間t3−時間t2分、CSモードからCDモードへの復帰時間が早くなる)。
【0066】
図4は、本実施例のフラグインハイブリッド車両100のCSモード/CDモード復帰制御の処理フローを示す図である。本実施例のCSモード/CDモード復帰制御は、イグニッションがONされてから車両走行制御を開始する際に、CSモードが選択されて車両走行制御を遂行している間、又はCDモードからCSモードに切り替えられた後のCSモードでの車両走行制御を遂行している間に、車両制御装置10によって遂行される。
【0067】
車両制御装置10は、走行制御中の走行モードがCSモードであるか否かを判別する(S101)。CSモードでない場合は、CSモード/CDモード復帰制御を終了する。
【0068】
ステップS101においてCSモードであると判別された場合、車両制御装置10は、プラグインハイブリッド車両100の車両状態に応じて主に回生エネルギーによるバッテリ6の充電制御を行う(S102)。
【0069】
車両制御装置10は、回生エネルギーによるバッテリ6の充電制御によってバッテリ6のSOCが、CDモード早期移行閾値以上となったか否かを判別する(S103)。CDモード早期移行閾値未満であると判別された場合は、ステップS102に戻り、回生エネルギーによるバッテリ6の充電制御を継続する。
【0070】
車両制御装置10は、ステップS103で回生エネルギーによる充電によって増加したバッテリ6のSOCが、CDモード早期移行閾値以上とであると判別された場合、エンジン1を強制駆動する制御信号をエンジン制御装置11に出力するとともに、動力分配機構4を制御して、エンジン1から出力される駆動力を第1MG2に伝達し、エンジン1の強制駆動による充電制御を遂行する(S104)。
【0071】
車両制御装置10は、エンジン1の強制駆動による充電制御によって増加したバッテリ6のSOCがCDモード閾値に達したか否かを判別し(S105)、達したと判別された場合には、エンジン1の強制駆動を停止させ(S106)、達していないと判別された場合には、ステップS104に戻って強制充電制御を継続する。
【0072】
なお、ステップS106におけるエンジン1の強制駆動を停止する処理は、上述したように、エンジン1から出力された動力が車両走行制御の駆動源として使用されていない場合は、エンジン1自体を停止することができる。一方、車両出力に応じてエンジン1の動力を駆動源として使用している場合、エンジン1自体を停止させずに、強制充電制御に用いられていた動力分を、エンジン1の出力から低減するように、制御することができる。
【0073】
車両制御装置10は、エンジン1の強制駆動による充電制御によって増加したバッテリ6のSOCがCDモード閾値に達したと判別され、エンジン1の強制駆動を停止させる制御信号をエンジン制御装置11に出力した後、又は出力と並行して、CSモードからCDモードに制御モードを切り替えて車両走行制御を遂行する(S107)。つまり、バッテリ6のSOCがCDモード閾値に達すると、走行モード選択部10aによってCDモードが選択され(CSモードからCDモードに切り替え)、車両制御装置10は選択されたCDモードでの走行制御を開始する。
【0074】
このように本実施例の車両制御装置10は、CDモード閾値に対応するCDモード早期移行閾値を適用し、エンジン1の動力を用いたバッテリ6の強制充電によって、CSモードからCDモードへの走行モードの移行を早期に実現できる。
【0075】
このため、回生エネルギーによる回生充電制御によってバッテリ6のSOCがCDモードを選択可能なCDモード閾値に到達する時間よりも短い時間で到達するので、CSモードからCDモードに復帰してCDモードでの走行制御を開始する時間(CDモードへの移行時間)が短縮され、ハイブリッド車両の燃費をさらに向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1 エンジン
2 第1MG
3 第2MG
4 動力分配機構
5 トランスミッション
6 バッテリ(電源装置)
7 駆動輪
8 デフ
9 インバータ
10 車両制御装置
10a 走行モード選択部
10b CD/CSモード移行制御部
11 エンジン制御装置
12 モータ制御装置
13 バッテリ制御装置
14 電源制御装置
15 インレット
16 充電器
100 プラグインハイブリッド車両
200 外部電源
210 接続プラグ
220 充電ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、車両の走行用モータと、前記走行用モータに電力を供給する電源装置と、前記エンジンの出力によって前記電源装置に蓄えられる電力を発生させるジェネレータと、を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
前記電源装置の電力を用いて主に前記走行用モータによって走行するように前記エンジン及び前記走行用モータを用いて走行制御を行う第1走行モードと、前記電源装置のSOCが所定値よりも低くならないように前記エンジン及び前記走行用モータを用いて走行制御を行う第2走行モードとのうち、前記第2走行モードが選択された走行制御における前記電源装置のSOCが第1閾値以上である場合に、前記第2走行モードから前記第1走行モードに切り替えて前記車両の走行制御を遂行する車両制御部と、
前記第2走行モードが選択された走行制御における前記電源装置のSOCが前記第1閾値よりも低く、前記所定値よりも高い第2閾値以上である場合に、前記エンジンを駆動させて前記ジェネレータによって発生した電力を前記電源装置に充電させる走行モード移行制御部と、
を有することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記電源装置のSOCが前記第1閾値以上であるか否かを判別し、前記第1閾値以上である場合に前記第1走行モードを選択し、前記第1閾値未満である場合に前記第2走行モードを選択する走行モード選択部を備え、
前記車両制御部は、前記走行モード選択部によって選択された走行モードに基づいて前記エンジン及び前記走行用モータを用いた走行制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記走行モード移行制御部は、前記第2走行モードが選択されているか否かを判別し、前記第2走行モードが選択されている場合に、前記エンジンを駆動させて前記ジェネレータによって発生した電力を前記電源装置に充電させ、前記第2閾値から前記第1閾値まで前記電源装置のSOCを上昇させるように制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記ハイブリッド車両に設けられる外部電源から供給される電力を前記電源装置に充電させる外部充電手段を通じた外部充電制御を遂行する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−49381(P2013−49381A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189073(P2011−189073)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】