説明

ハイブリッド車両用自動変速機

【課題】軸長の長さを抑えたハイブリッド車両用自動変速機を提供する。
【解決手段】自動変速機1は、変速比順位で奇数番目の各ギヤ列G3,G5の駆動ギヤG3a,G5aを軸支する第1駆動ギヤ軸51と、変速比順位で偶数番目の各ギヤ列G2,G4の駆動ギヤG2a,G4aを軸支する第2駆動ギヤ軸52と、入力軸4の回転を第1駆動ギヤ軸51に解除自在に伝達する第1クラッチC1と、入力軸4の回転を第2駆動ギヤ軸52に解除自在に伝達する第2クラッチC2と、第1と第2の2つの電動機31,32とを備える。第1クラッチC1の径方向外方に第1電動機31が配置され、第2クラッチC2の径方向外方に第2電動機32が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と電動機とを備えるハイブリッド車両用自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の動力を入力する入力軸と出力軸との間に介設された変速比の異なる複数のギヤ列と、変速比順位で奇数番目の各ギヤ列の駆動ギヤを回転自在に軸支する第1駆動ギヤ軸と、変速比順位で偶数番目の各ギヤ列の駆動ギヤを回転自在に軸支する第2駆動ギヤ軸と、入力軸の回転を第1駆動ギヤ軸に解除自在に伝達する第1クラッチと、入力軸の回転を第2駆動ギヤ軸に解除自在に伝達する第2クラッチと、出力軸に固定される各ギヤ列の従動ギヤと、第2駆動ギヤ軸の軸線上に設けられた1つの電動機を備えるハイブリッド車両用自動変速機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−89594号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の自動変速機では、電動機を第2駆動ギヤ軸の軸線上に設けているため、軸長が長くなり、小型化を図ることができない。このため、例えば、FF方式の車両の比較的狭いエンジンルームに横置き(軸長方向を車幅方向に向けて搭載)することが困難であった。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、軸長の長さを抑えたハイブリッド車両用自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、内燃機関の動力を入力する入力軸と出力軸との間に、複数の変速段を確立するための、変速比の異なる複数のギヤ列が介設されると共に、ステータとロータとを有する電動機を備えるハイブリッド車両用自動変速機であって、変速比順位で奇数番目又は偶数番目の変速段の各ギヤ列の駆動ギヤを回転自在に軸支する第1駆動ギヤ軸と、変速比順位で偶数番目又は奇数番目の変速段の各ギヤ列の駆動ギヤを回転自在に軸支する第2駆動ギヤ軸と、前記入力軸の回転を前記第1駆動ギヤ軸に解除自在に伝達する第1クラッチと、前記入力軸の回転を前記第2駆動ギヤ軸に解除自在に伝達する第2クラッチと、前記出力軸に固定される各ギヤ列の従動ギヤと、前記第1駆動ギヤ軸に軸支される駆動ギヤを該第1駆動ギヤ軸に連結して、該第1駆動ギヤ軸に軸支される駆動ギヤを有するギヤ列の1つを選択的に確立する第1同期噛合機構と、前記第2駆動ギヤ軸に軸支される駆動ギヤを該第2駆動ギヤ軸に連結して、該第2駆動ギヤ軸に軸支される駆動ギヤを有するギヤ列の1つを選択的に確立する第2同期噛合機構とを備え、前記第1クラッチは、前記入力軸に連結される第1インナーハブと、前記第1駆動ギヤ軸に連結される第1アウタードラムとを有し、前記第2クラッチは、前記入力軸に連結される第2インナーハブと、前記第2駆動ギヤ軸に連結される第2アウタードラムとを有し、前記電動機は、第1と第2の2つの電動機で構成され、第1電動機の第1ロータが前記第1アウタードラムの外周に連結され、第2電動機の第2ロータが前記第2アウタードラムの外周に連結されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1クラッチの径方向外方に第1電動機が配置され、第2クラッチの径方向外方に第2電動機が配置されるため、電動機とクラッチとを軸方向に並べて配置したものに比し、軸長の増加を防止することができる。
【0008】
又、本発明では、各クラッチのインナーハブを入力軸に連結し、各アウタードラムを対応する駆動ギヤ軸に連結して、各電動機のロータを対応するアウタードラムの外周に連結している。これにより、何れの電動機も内燃機関と切り離し自在となり、一方の電動機で走行中に、他方の電動機で内燃機関を始動させることができる。
【0009】
更に、本発明では、第1クラッチの第1アウタードラムに第1電動機の第1ロータを連結し、第2クラッチの第2アウタードラムに第2電動機の第2ロータを連結しているため、第1駆動ギヤ軸に軸支された駆動ギヤの各ギヤ列によって変速段を確立する際には第1電動機により走行でき、第2駆動ギヤ軸に軸支された駆動ギヤの各ギヤ列によって変速段を確立する際には第2電動機により走行できる。従って、全ての変速段において、クラッチを介さずに電動機によるEV(Electric Vehicle)走行を行うことができる。
【0010】
[2]本発明においては、第1駆動ギヤ軸を、中空に構成し、入力軸を相対回転自在に内挿して、第2駆動ギヤ軸を入力軸に平行に配置し、第2アウタードラムに連結する第1連結ギヤと第2駆動ギヤ軸に固定された第2連結ギヤと第1連結ギヤ及び第2連結ギヤに噛合するアイドルギヤとからなるアイドルギヤ列を介して、第2駆動ギヤ軸に入力軸の回転を伝達し、出力軸に固定される各ギヤ列の従動ギヤのうち少なくとも1つの従動ギヤは、変速比順位で奇数番目の各ギヤ列のうちの何れか1つのギヤ列の従動ギヤであると共に、変速比順位で偶数番目の各ギヤ列のうち何れか1つのギヤ列の従動ギヤでもある共用従動ギヤであるように構成することが好ましい。
【0011】
かかる構成によれば、従動ギヤを共用することにより、入力軸の軸線方向における同一位置に2つのギヤ列を配置することができ、軸長をより短くすることができる。
【0012】
又、共用従動ギヤに噛合する2つの駆動ギヤを対応する電動機で駆動させることができ、2つの電動機の出力トルクを合成して大きな駆動力を得ることができる。
【0013】
[3]ここで、共用従動ギヤを用いる場合において、共用従動ギヤが用いられる2つのギヤ列のうち、一方のギヤ列のギヤ比を変更するには、共同従動ギヤの歯数を変更できないため、駆動ギヤの歯数を変更することでしか対応できない。しかしながら、駆動ギヤの歯数を変更するには駆動ギヤと従動ギヤの軸間距離を変更する必要があり、大幅なレイアウト変更を伴うこととなるため、変速比の設定自由度が低下してしまう。
【0014】
この場合、アイドルギヤ列で、入力軸の回転速度を増速させて第2駆動ギヤ軸に伝達させれば、第2駆動ギヤ軸が第1駆動ギヤ軸よりも高速で回転し、第2駆動ギヤ軸に軸支された駆動ギヤを高速段側のギヤ列の駆動ギヤとして用いることができる。そして、アイドルギヤ列のギヤ比を調整することにより、軸間距離を変更することなく、第2駆動ギヤ軸に駆動ギヤが軸支されたギヤ列に対応する変速段の変速比を調整でき、各変速段の変速比の設定自由度を向上させることができる。
【0015】
[4]本発明においては、リバースギヤを軸支するリバース軸に、アイドルギヤを設けることが好ましい。かかる構成によれば、アイドルギヤ用の軸を別途設ける必要がなく、又、アイドルギヤ列を用いて入力軸の回転をリバース軸に伝達させることができ、リバース軸に入力軸の回転を伝達させるためのギヤ列を別途設ける必要がない。従って、変速機の構成を大幅に簡略化して、小型化を図ることができる。
【0016】
[5]本発明においては、出力軸には、第1連結ギヤに噛合するアイドルトップ従動ギヤが回転自在に軸支されると共に、該アイドルトップ従動ギヤを解除自在に出力軸に固定する第3同期噛合機構が設けられ、第1連結ギヤとアイドルトップ従動ギヤとで構成されるギヤ列は、変速比順位で偶数番目又は奇数番目の変速段のうちの最も変速比の小さい変速段のギヤ列とすることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、第1連結ギヤが駆動ギヤを兼ねるため構成の簡略化を図ることができると共に、第1連結ギヤとアイドルトップ従動ギヤとで構成されるギヤ列の変速段においてギヤの噛合回数が1回となって、この変速段の駆動ギヤを第2駆動ギヤ軸に設けた場合に比し、伝達効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のハイブリッド車両用自動変速機の第1実施形態を示すスケルトン図。
【図2】本発明のハイブリッド車両用自動変速機の第2実施形態を示すスケルトン図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1を参照して、本発明のハイブリッド車両用自動変速機の第1実施形態を説明する。第1実施形態の自動変速機1は、エンジンから成る内燃機関2と、モータ・ジェネレータから成る第1と第2の2つの電動機31,32とを駆動源として備えている。第1電動機31は第2電動機32よりも大容量のものを用いている。
【0020】
又、自動変速機1は、内燃機関2の動力を入力する入力軸4と、入力軸4を内挿し入力軸4に対して回転自在な中空の第1駆動ギヤ軸51と、入力軸4と間隔を存して平行に配置された第2駆動ギヤ軸52と、入力軸4と間隔を存して平行に配置されると共にリバースギヤGRを回転自在に軸支するリバース軸61と、入力軸4と間隔を存して平行に配置された出力軸7とを備えている。又、変速比の異なる1速から6速のギヤ列G1〜G6を備えている。
【0021】
第1駆動ギヤ軸51には、1速ギヤ列G1の1速駆動ギヤG1aが一方向クラッチF1を介して接続されている。第1駆動ギヤ軸51が1速駆動ギヤG1aに対し正転(車両が前進する方向へ回転)する場合には、1速駆動ギヤG1aは第1駆動ギヤ軸51と共に一体に回転する。
【0022】
逆に、第1駆動ギヤ軸51が1速駆動ギヤG1aに対し逆転(車両が後進する方向へ回転)する場合には、1速駆動ギヤG1aは第1駆動ギヤ軸51に回転自在に軸支された状態となって、第1駆動ギヤ軸51に対し相対的に回転する。
【0023】
又、第1駆動ギヤ軸51には、3速ギヤ列G3の3速駆動ギヤG3a及び5速ギヤ列G5の5速駆動ギヤG5aとが夫々回転自在に軸支されている。又、第1駆動ギヤ軸51には、第1同期噛合機構S1(シンクロメッシュ機構)が設けられている。この第1同期噛合機構S1は、3速駆動ギヤG3aと第1駆動ギヤ軸51とを連結する3速側連結状態、5速駆動ギヤG5aと第1駆動ギヤ軸51とを連結する5速側連結状態、及び3速駆動ギヤG3aと第1駆動ギヤ軸51との連結を断つと共に、5速駆動ギヤG5aと第1駆動ギヤ軸51との連結も断つニュートラル状態のうちの何れか1つの状態に切替自在に構成されている。
【0024】
出力軸7には、1速駆動ギヤG1aに噛合する1速ギヤ列G1の1速従動ギヤG1bが回転自在に軸支されている。又、出力軸7には、3速駆動ギヤG3aに噛合する3速ギヤ列G3の3速従動ギヤG3b及び5速駆動ギヤG5aに噛合する5速ギヤ列G5の5速従動ギヤG5bが固定されている。
【0025】
入力軸4の内燃機関2側である一方の端部には、入力軸4と第1駆動ギヤ軸51とを解除自在に連結する第1クラッチC1が設けられている。入力軸4の他方の端部には、第2クラッチC2が設けられている。
【0026】
両クラッチC1,C2は、湿式多板クラッチで構成され、複数のインナープレート(図示省略)を軸方向に摺動自在に保持するインナーハブC1a,C2a(クラッチハブ)と、複数のアウタープレート(図示省略)を軸方向に摺動自在に保持するアウタードラムC1b,C2b(クラッチドラム)とを夫々備えている。
【0027】
インナーハブC1a,C2aは入力軸4に固定されている。アウタードラムC1bは、第1駆動ギヤ軸51に連結されている。入力軸4には、6速ギヤ列G6の6速駆動ギヤG6aが回転自在に軸支されている。第2クラッチC2のアウタードラムC2bは、6速駆動ギヤG6aに連結されている。第1実施形態においては、6速駆動ギヤG6aが第1連結ギヤに相当する。
【0028】
出力軸7には、6速駆動ギヤG6aに噛合する6速ギヤ列G6の6速従動ギヤG6bが回転自在に軸支されている。第1実施形態では、6速従動ギヤG6bがアイドルトップ従動ギヤに相当する。又、第1実施形態では、6速ギヤ列G6が変速比順位で偶数番目の複数の変速段のうち最も変速比の小さい変速段に相当する。
【0029】
リバース軸61には、6速ギヤ列G6の6速駆動ギヤG6aに噛合するアイドルギヤGiaが固定されている。第2駆動ギヤ軸52には、アイドルギヤGiaに噛合する第2連結ギヤGibが固定されている。
【0030】
第1実施形態においては、第1連結ギヤたる6速駆動ギヤG6a、アイドルギヤGia及び第2連結ギヤGibとでアイドルギヤ列Giを構成する。第1実施形態の自動変速機1では、アイドルギヤGiaをリバース軸61に固定しているため、アイドルギヤGia用のアイドル軸を別途設ける必要がなく、自動変速機1の小型化を図ることができる。
【0031】
又、リバース軸61に入力軸4の回転を伝達させるギヤ列として、第1連結ギヤたる6速駆動ギヤG6a及びアイドルギヤGiaで構成されるギヤ列を用いるため、別途リバース軸61用のギヤ列を設ける必要がなく構成を簡略化し小型化を図ることができる。
【0032】
又、アイドルギヤ列Giの第1連結ギヤたる6速駆動ギヤG6aとアイドルトップ従動ギヤたる6速従動ギヤG6bとで6速ギヤ列を構成することにより、アイドルギヤ列Giの1つのギヤを駆動ギヤとして用いて構成を簡略化すると共に、6速段を確立した際にギヤの噛合回数を1回とすることができ、6速駆動ギヤG6aを第2駆動ギヤ軸52に設けた場合と比較して、伝達効率を向上させることができる。
【0033】
第1クラッチC1を係合させると、入力軸4と第1駆動ギヤ軸51とが連結された連結状態となり、第1クラッチC1を開放させると、入力軸4と第1駆動ギヤ軸51との連結が断たれた開放状態となる。又、第2クラッチC2を係合させると、入力軸4と6速駆動ギヤG6aとが連結された連結状態となり、第2クラッチC2を開放させると、入力軸4と6速駆動ギヤG6aとの連結が断たれた開放状態となる。
【0034】
又、第2駆動ギヤ軸52には、1速従動ギヤG1bに噛合する2速ギヤ列G2の2速駆動ギヤG2aが回転自在に軸支されている。即ち、1速従動ギヤG1bは、2速従動ギヤG2bを兼ねており、第1実施形態における第1の共用従動ギヤに相当する。
【0035】
又、第2駆動ギヤ軸52には、3速従動ギヤG3bに噛合する4速ギヤ列G4の4速駆動ギヤG4aが回転自在に軸支されている。即ち、3速従動ギヤG3bは、4速従動ギヤG4bを兼ねており、第1実施形態における第2の共用従動ギヤに相当する。
【0036】
このように、従動ギヤを共用させることにより、入力軸4の軸線方向における同一位置に2つのギヤ列を配置することができ、軸長を大幅に短縮することができる。
【0037】
第2駆動ギヤ軸52には、第2同期噛合機構S2が設けられている。この第2同期噛合機構S2は、2速駆動ギヤG2aと第2駆動ギヤ軸52とを連結する2速側連結状態、4速駆動ギヤG4aと第2駆動ギヤ軸52とを連結する4速側連結状態、2速駆動ギヤG2a及び4速駆動ギヤG4aと第2駆動ギヤ軸52との連結を断つニュートラル状態のうちの何れかの状態に切替自在に構成されている。
【0038】
出力軸7には、第3同期噛合機構S3が設けられている。この第3同期噛合機構S3は、1速従動ギヤG1bと出力軸7とを連結する1速側連結状態、6速従動ギヤG6bと出力軸7とを連結する6速側連結状態、1速従動ギヤG1b及び6速従動ギヤG6bと出力軸7との連結を断つニュートラル状態のうちの何れかの状態に切替自在に構成されている。又、出力軸7には、図外のデファレンシャルギヤを介して左右の両前輪に動力を伝達する出力ギヤ7aが固定されている。
【0039】
又、第2連結ギヤGibの歯数は、第1連結ギヤたる6速駆動ギヤG6aの歯数よりも少なく設定されており、6速駆動ギヤG6aの回転速度が「6速駆動ギヤG6aの歯数/第2連結ギヤGibの歯数」に増速されて第2駆動ギヤ軸52に伝達されるようにしている。
【0040】
このように構成することにより、第2駆動ギヤ軸52が第1駆動ギヤ軸51よりも高速で回転し、1速ギヤ列G1と2速ギヤ列、及び3速ギヤ列と4速ギヤ列のギヤ比の差が無い場合若しくは殆ど差が無い場合であっても、アイドルギヤ列Giにより、2速段及び4速段の変速比を適切に設定することができる。
【0041】
又、アイドルギヤ列Giのギヤ比(第2連結ギヤGibの歯数/第1連結ギヤたる6速駆動ギヤG6aの歯数)を調整することにより、第2駆動ギヤ軸52と出力軸7との軸間距離を変更することなく、2速段及び4速段の変速比を調整することができ、変速段の変速比の設計変更の自由度を向上させることができる。
【0042】
リバースギヤGRは、1速従動ギヤG1bに噛合すると共に、リバース軸61に設けられた第4同期噛合機構S4により、解除自在にリバース軸61に連結される。尚、第4同期噛合機構S4は、リバースギヤGRとリバース軸61とを解除自在に連結できるものであればよく、シンクロメッシュ機構に限らない。例えば、チャンファー等を用いてもよい。第4同期噛合機構S4では、リバースギヤGRとリバース軸61とを連結した状態を連結状態、この連結を断つ状態をニュートラル状態と定義する。
【0043】
両電動機31,32は、中空に構成され、ステータ31a,32aと、ロータ31b,32bとを備える。第1電動機31は、第1クラッチC1の径方向外方に配置され、ロータ31bは、第1クラッチドラムC1bの外周面に固定されている。第2電動機32は、第2クラッチC2の径方向外方に配置され、ロータ32bは、第2クラッチドラムC2bの外周面に固定されている。
【0044】
次いで、各変速段について説明する。先ず、シフトレバーの操作により、シフトポジションが1速から6速の自動変速位置に切り換えられると、第2クラッチC2を係合させて、第2電動機32を駆動し、エンジンから成る内燃機関2を始動させる。即ち、第2電動機32はスタータとしての機能を兼ね備えている。
【0045】
そして、第3同期噛合機構S3を1速従動ギヤG1b(第1の共用従動ギヤ)と出力軸7とを連結する1速側連結状態とし、第2クラッチC2を開放して、第1クラッチC1を係合させる。このようにして、1速段が確立され、内燃機関2から出力される回転速度が、1速ギヤ列G1のギヤ比(1速従動ギヤG1bの歯数/1速駆動ギヤG1aの歯数)に応じて変速され、出力ギヤ7aを介して駆動輪に伝達される。
【0046】
尚、内燃機関2を駆動させると共に、第1電動機31も駆動させれば、1速段での電動機によるアシスト走行(内燃機関2の駆動力を電動機で補助する走行)を行うこともでき、更に、第1クラッチC1を開放させれば、第1電動機31のみで走行するEV(Electric Vehicle)走行を行うこともできる。1速段でEV走行する場合には、第1電動機31のロータ31bと1速ギヤ列G1の1速駆動ギヤG1aとが第1クラッチC1を介さず一方向クラッチF1で連結される。従って、第1クラッチC1を係合させるための油圧を必要とせずに走行することができる。
【0047】
又、第1電動機31の駆動力で車両を発進させると共に、第2クラッチC2を係合させて、第2電動機32をスタータとして用いて内燃機関2を始動させることもできる。
【0048】
又、第1電動機31によるEV走行中の場合には、第2クラッチC2を係合させて、内燃機関2の動力により第2電動機32で発電させ、第2電動機32の発電で得られた電力により、第1電動機31を駆動させることも可能である。即ち、パラレル方式とシリーズ方式との切換えが可能である。
【0049】
又、内燃機関2の動力により1速段で走行中の場合には、第2同期噛合機構S2を2速駆動ギヤG2aと第2駆動ギヤ軸52とを連結した2速側連結状態とすることにより、内燃機関2の駆動力が伝達される第1の共用従動ギヤたる1速従動ギヤG1bに、第2電動機32の駆動力も、6速駆動ギヤG6a、アイドルギヤGia、第2連結ギヤGib、第2駆動ギヤ軸52、第2同期噛合機構S2及び2速駆動ギヤG2aを介して、伝達させることができる。
【0050】
これにより、第1電動機31のみならず、第2電動機32を用いてアシスト走行(内燃機関2の駆動力を電動機で補助する走行)及びEV走行(電動機の駆動力のみの走行)を行うこともできる。
【0051】
又、減速回生運転中(電動機を制動することにより車両を減速状態として電動機で発電させ図外のバッテリーに充電させる運転状態中)では、第1電動機31のみならず、第2電動機32でも回生を行うことができる。
【0052】
尚、1速段で走行中であり図外のトランスミッション・コントロール・ユニット(TCU)が車速等の車両情報に基づいて2速段へのアップシフトが予想されると判断した場合には、第2同期噛合機構S2は、第2駆動ギヤ軸52と2速駆動ギヤG2aとを連結する2速側連結状態にされるか、またはこの状態に近づけるプリシフト状態とされる。これにより、第1クラッチC1を開放すると共に、第2クラッチC2を係合させるだけで、1速段から2速段へのアップシフトを行うことができ、変速をスムーズに行うことができる。
【0053】
2速段は、第2同期噛合機構S2を、第2駆動ギヤ軸52と2速駆動ギヤG2aとを連結する2速側連結状態とし、第3同期噛合機構S3を、1速従動ギヤG1b(第1の共用従動ギヤ)と出力軸7とを連結させた状態とし、第1クラッチC1を開放させると共に、第2クラッチC2を係合させることにより確立される。
【0054】
2速段では、内燃機関2から出力される回転速度がアイドルギヤ列Giを介して増速されて第2駆動ギヤ軸52に伝達される。そして、第2駆動ギヤ軸52の回転速度が、2速ギヤ列のギヤ比(1速従動ギヤG1bの歯数/2速駆動ギヤG2aの歯数)に応じて変速されて、出力ギヤ7aを介して駆動輪に伝達される。
【0055】
尚、内燃機関2を駆動させると共に、第2電動機32も駆動させれば、2速段での電動機によるアシスト走行を行うこともでき、更に、第2クラッチC2を開放させれば、第2電動機32のみで走行するEV走行を行うこともできる。
【0056】
又、第2電動機32による2速段でのEV走行中の場合には、第1クラッチC1を係合させて、内燃機関2の動力により第1電動機31で発電させ、第1電動機31の発電で得られた電力により、第2電動機32を駆動させるシリーズ方式に切換えることも可能である。
【0057】
又、内燃機関2の動力により2速段で走行中の場合には、内燃機関2の駆動力が伝達される第1の共用従動ギヤたる1速従動ギヤG1bに、第1電動機31の駆動力も、一方向クラッチF1の働きで1速駆動ギヤG1aを介して伝達させることができる。
【0058】
これにより、第2電動機32のみならず、第1電動機31を用いてアシスト走行することができる。又、両電動機31,32の駆動力のみでEV走行することもできる。又、減速回生運転中では、第2電動機32のみならず、第1電動機31でも回生を行うことができる。
【0059】
尚、2速段で走行中であり図外のTCUが車速等の車両情報から3速段へのアップシフトが予想されると判断した場合には、第1同期噛合機構S1は、第1駆動ギヤ軸51と3速駆動ギヤG3aとを連結する3速側連結状態にされるか、又はこの状態側に近づけるプリシフト状態とされる。これにより、第2クラッチC2を開放すると共に、第1クラッチC1を係合させるだけで、2速段から3速段へのアップシフトを行うことができ、変速をスムーズに行うことができる。
【0060】
逆に、図外のTCUが車速等の車両情報から1速段へのダウンシフトが予想されると判断した場合には、第1同期噛合機構S1は、第1駆動ギヤ軸51を3速駆動ギヤG3a及び5速駆動ギヤG5aの何れにも連結させないニュートラル状態とされる。これにより、第2クラッチC2を開放すると共に、第1クラッチC1を係合させるだけで、2速段から1速段へのダウンシフトを行うことができ、変速をスムーズに行うことができる。
【0061】
3速段を確立させる場合には、第1同期噛合機構S1を第1駆動ギヤ軸51と3速駆動ギヤG3aとを連結する3速側連結状態とする。内燃機関2により走行する場合には、第1クラッチC1を係合させる。第1電動機31により走行する場合には、第1クラッチC1を係合させる必要はない。
【0062】
3速段が確立されると、内燃機関2又は第1電動機31から出力される回転速度は、3速ギヤ列G3のギヤ比(3速従動ギヤG3bの歯数/3速駆動ギヤG3aの歯数)に応じて変速され、出力ギヤ7aを介して駆動輪に伝達される。
【0063】
又、3速段においても、1速段と同様にして、内燃機関2と共に第1電動機31も駆動させるアシスト走行、第1電動機31のみで走行するEV走行、及び内燃機関2の動力により第2電動機32で発電させて、発電された電力により第1電動機31を駆動させるシリーズ方式の走行を行うこともできる。
【0064】
又、内燃機関2の動力により3速段で走行中の場合には、第2同期噛合機構S2を4速駆動ギヤG4aと第2駆動ギヤ軸52とを連結した状態とすることにより、内燃機関2の駆動力が伝達される第2の共用従動ギヤたる3速従動ギヤG3bに、第2電動機32の駆動力も、6速駆動ギヤG6a、アイドルギヤGia、第2連結ギヤGib、第2駆動ギヤ軸52、第2同期噛合機構S2及び4速駆動ギヤG4aを介して、伝達させることができる。
【0065】
従って、3速段においても、第1電動機31のみならず、第2電動機32を用いてアシスト走行及びEV走行を行うこともできる。又、減速回生運転中では、第1電動機31のみならず、第2電動機32でも回生を行うことができる。
【0066】
尚、3速段で走行中の場合には、車速等の車両情報に基づいて、次に変速される変速段が2速段であるか4速段であるかを図外のTCUが予測し、2速段へのダウンシフトが予測された場合には、第2同期噛合機構S2を、2速駆動ギヤG2aと第2駆動ギヤ軸52とを連結する2速側連結状態、又はこの状態に近づけるプリシフト状態とする。
【0067】
逆に、TCUにより4速段へのアップシフトが予測された場合には、第2同期噛合機構S2を、4速駆動ギヤG4aと第2駆動ギヤ軸52とを連結する4速側連結状態、又はこの状態に近づけたプリシフト状態とする。これにより、3速段からのアップシフト及びダウンシフトをスムーズに行うことができる。
【0068】
4速段は、第2同期噛合機構S2を、4速駆動ギヤG4aと第2駆動ギヤ軸52とが連結する4速側連結状態とすることにより確立される。内燃機関2で走行する場合には、第2クラッチC2を係合させ、EV走行する場合には、第2クラッチC2を係合させる必要はなく、第2電動機32を駆動させればよい。
【0069】
4速段が確立されると、内燃機関2又は第2電動機32から出力される回転速度は、アイドルギヤ列Giを介して増速されて第2駆動ギヤ軸52に伝達される。そして、第2駆動ギヤ軸52の回転速度が、4速ギヤ列G4のギヤ比(3速従動ギヤG3bの歯数/4速駆動ギヤG4aの歯数)に応じて変速され、出力ギヤ7aを介して駆動輪に伝達される。
【0070】
又、4速段においても、2速段と同様にして、内燃機関2と共に第2電動機32も駆動させるアシスト走行、第2電動機32のみで走行するEV走行、及び内燃機関2の動力により第1電動機31で発電させて、発電された電力により第2電動機32を駆動させるシリーズ方式の走行を行うこともできる。
【0071】
又、内燃機関2の動力により4速段で走行中の場合には、第1同期噛合機構S1を3速駆動ギヤG3aと第1駆動ギヤ軸51とを連結した3速側連結状態とすることにより、内燃機関2の駆動力が伝達される第2の共用従動ギヤたる3速従動ギヤG3bに、第1電動機31の駆動力も伝達させることができる。
【0072】
従って、4速段においても、第2電動機32のみならず、第1電動機31を用いてアシスト走行及びEV走行を行うこともできる。又、減速回生運転中では、第2電動機32のみならず、第1電動機31でも回生を行うことができる。
【0073】
尚、4速段で走行中の場合には、車速等の車両情報に基づいて、次に変速される変速段が3速段であるか5速段であるかを図外のTCUが予測し、3速段へのダウンシフトが予測された場合には、第1同期噛合機構S1を、3速駆動ギヤG3aと第1駆動ギヤ軸51とを連結する3速側連結状態、又はこの状態に近づけるプリシフト状態とする。
【0074】
逆に、TCUにより5速段へのアップシフトが予測された場合には、第1同期噛合機構S1を、5速駆動ギヤG5aと第1駆動ギヤ軸51とを連結する5速側連結状態、又はこの状態に近づけるプリシフト状態とする。これにより、4速段からのアップシフト及びダウンシフトをスムーズに行うことができる。
【0075】
5速段は、第1同期噛合機構S1を、5速駆動ギヤG5aと第1駆動ギヤ軸51とを連結した5速側連結状態とすることにより確立される。内燃機関2により走行する場合には、第1クラッチC1を係合させる。EV走行する場合には、第1クラッチC1を係合させる必要はなく、第1電動機31を駆動させればよい。
【0076】
5速段が確立されると、内燃機関2又は第1電動機31から出力される回転速度は、5速ギヤ列のギヤ比(5速従動ギヤG5bの歯数/5速駆動ギヤG5aの歯数)に応じて変速され、出力ギヤ7aを介して駆動輪に伝達される。
【0077】
又、5速段においても、1速段及び3速段と同様にして、内燃機関2と共に第1電動機31も駆動させるアシスト走行、第1電動機31のみで走行するEV走行、及び内燃機関2の動力により第2電動機32で発電させて、発電された電力により第1電動機31を駆動させるシリーズ方式の走行を行うこともできる。
【0078】
又、内燃機関2の動力により5速段で走行中の場合には、第3同期噛合機構S3を6速従動ギヤG6bと出力軸7とを連結した6速側連結状態とすることにより、出力軸7に6速ギヤ列G6を介して第2電動機32の駆動力も伝達させることができる。従って、5速段においても、第1電動機31のみならず、第2電動機32を用いてアシスト走行及びEV走行を行うこともできる。又、減速回生運転中では、第1電動機31のみならず、第2電動機32でも回生を行うことができる。
【0079】
尚、5速段で走行中の場合には、車速等の車両情報に基づいて、次に変速される変速段が4速段であるか6速段であるかを図外のTCUが予測し、4速段へのダウンシフトが予測された場合には、第2同期噛合機構S2を、4速駆動ギヤG2aと第2駆動ギヤ軸52とを連結する4速側連結状態、又はこの状態に近づけるプリシフト状態とする。
【0080】
逆に、TCUにより6速段へのアップシフトが予測された場合には、第3同期噛合機構S3を、6速従動ギヤG6bと出力軸7とを連結する6速側連結状態、又はこの状態に近づけたプリシフト状態とする。これにより、5速段からのアップシフト及びダウンシフトをスムーズに行うことができる。
【0081】
6速段は、第3同期噛合機構S3を、6速従動ギヤG6bと出力軸7とを連結した6速側連結状態とすることにより確立される。内燃機関2により走行する場合には、第2クラッチC2を係合させ、EV走行する場合には、第2クラッチC2を係合させる必要はなく、第2電動機32を駆動させればよい。
【0082】
6速段が確立されると、内燃機関2又は第2電動機32から出力される回転速度は、6速ギヤ列のギヤ比(6速従動ギヤG6bの歯数/6速駆動ギヤG6aの歯数)に応じて変速され、出力ギヤ7aを介して駆動輪に伝達される。
【0083】
又、6速段においても、2速段及び4速段と同様にして、内燃機関2と共に第2電動機32も駆動させるアシスト走行、第2電動機32のみで走行するEV走行、及び内燃機関2の動力により第1電動機31で発電させて、発電された電力により第2電動機32を駆動させるシリーズ方式の走行を行うこともできる。又、減速回生運転中では、第2電動機32で回生を行うことができる。
【0084】
尚、6速段で走行中の場合には、車速等の車両情報に基づいて、5速段にダウンシフトされるか否かを図外のTCUが予測し、5速段へのダウンシフトが予測された場合には、第1同期噛合機構S1を、5速駆動ギヤG5aと第1駆動ギヤ軸51とを連結する5速側連結状態、又はこの状態に近づけるプリシフト状態とする。これにより、5速段へのダウンシフトをスムーズに行うことができる。
【0085】
シフトレバーの操作によりシフトポジションが後進段位置に切り換えられると、第4同期噛合機構S4は、リバースギヤGRとリバース軸61とを連結させた状態となる。又、第3同期噛合機構S3は、1速従動ギヤG1bと出力軸7とを連結する1速側連結状態とされる。これにより、後進段が確立される。
【0086】
後進段のときに、内燃機関2により走行する場合には、第2クラッチC2を係合させる。EV走行する場合には、第2クラッチC2を係合させる必要はなく、第2電動機32を駆動させればよい。
【0087】
後進段が確立されると、内燃機関2又は第2電動機32から出力される回転速度は、後進段のギヤ比({アイドルギヤGiaの歯数/6速駆動ギヤG6aの歯数}×{1速従動ギヤG1bの歯数/リバースギヤGRの歯数})に応じて変速され、出力ギヤ7aを介して駆動輪に伝達される。又、後進段においては、内燃機関2と共に第2電動機32も駆動させるアシスト走行、及び第2電動機32のみで走行するEV走行を行うこともできる。
【0088】
上記第1実施形態の自動変速機1によれば、全ての変速段においてEV走行が可能となる。又、第2電動機32で内燃機関2を始動させることができ、内燃機関2用のスタータが不要となるため、低コスト化及び小型化を図ることができる。
【0089】
又、2つの電動機31,32は、夫々クラッチC1,C2の径方向外方に配置されているため、入力軸4の延長線上に電動機を配置した従来の自動変速機と比較して、軸長の増加を防止することができる。
【0090】
又、電動機31,32は、クラッチC1,C2で内燃機関2と切り離し自在に構成されているため、一方の電動機でEV走行中に他方の電動機で内燃機関2を始動させることができる。
【0091】
又、第1の共用従動ギヤたる1速従動ギヤG1b、又は、第2の共用従動ギヤたる3速従動ギヤG3bを、第1電動機31及び第2電動機32の両方で回転させることができ、EV走行時においても2つの電動機の出力トルクを合成して大きな駆動力を得ることができる。
【0092】
尚、第1実施形態においては、第1駆動ギヤ軸51に変速比順位で奇数番目の変速段のギヤ列G1,G3,G5の駆動ギヤG1a,G3a,G5aを軸支させ、第2駆動ギヤ軸52に変速比順位で偶数番目の変速段のギヤ列G2,G4の駆動ギヤG2a,G4aを軸支させている自動変速機1を説明した。
【0093】
しかしながら、本発明の自動変速機は、これに限らず、第1駆動ギヤ軸51に変速比順位で偶数番目の変速段のギヤ列の駆動ギヤを軸支させ、第2駆動ギヤ軸52に変速比順位で奇数番目の変速段のギヤ列の駆動ギヤを軸支させてもよい。
【0094】
又、第1実施形態においては、アイドルギヤ列Giとして、入力軸4の回転速度を増速させて第2駆動ギヤ軸52に伝達させるものを説明したが、本発明のアイドルギヤ列Giは、これに限らず、入力軸4の回転速度を減速させて第2駆動ギヤ軸52に伝達させるようにしてもよい。
【0095】
この場合、共用従動ギヤに噛合する2つの駆動ギヤのうち、第1駆動ギヤ軸51に軸支される側の駆動ギヤを有するギヤ列の変速段が高速段側となり、第2駆動ギヤ軸52に軸支される側の駆動ギヤを有するギヤ列の変速段が低速段側となる。
【0096】
[第2実施形態]
次に、図2を参照して、本発明のハイブリッド車両用自動変速機の第2実施形態を説明する。第2実施形態の自動変速機1は、第1実施形態と同様に、内燃機関2と、第1と第2の2つの電動機31,32とを駆動源として備えている。第2実施形態においては、第1実施形態と異なり、第2電動機32は第1電動機31よりも大容量のものを用いている。
【0097】
又、自動変速機1は、内燃機関2の動力を入力する入力軸4と、入力軸4を内挿し入力軸4に対して回転自在な中空の第1駆動ギヤ軸51と、入力軸4と間隔を存して平行に配置された第2駆動ギヤ軸52と、入力軸4と間隔を存して平行に配置されると共にリバースギヤGRを回転自在に軸支するリバース軸61と、入力軸4と間隔を存して平行に配置された出力軸7と、変速比の異なる1速から4速のギヤ列G1〜G4とを備えている。
【0098】
第2駆動ギヤ軸52には、1速ギヤ列G1の1速駆動ギヤG1a及び3速ギヤ列G3の3速駆動ギヤG3aが夫々回転自在に軸支されている。又、第2駆動ギヤ軸52には、第2同期噛合機構S2(シンクロメッシュ機構)が設けられている。
【0099】
この第2同期噛合機構S2は、1速駆動ギヤG1aと第2駆動ギヤ軸52とを連結する1速側連結状態、3速駆動ギヤG3aと第2駆動ギヤ軸52とを連結する3速側連結状態、及び1速駆動ギヤG1aと第2駆動ギヤ軸52との連結を断つと共に、3速駆動ギヤG3aと第2駆動ギヤ軸52との連結も断つニュートラル状態のうちの何れかの状態に切替自在に構成されている。
【0100】
出力軸7には、1速駆動ギヤG1aに噛合する1速ギヤ列G1の1速従動ギヤG1b、及び3速駆動ギヤG3aに噛合する3速ギヤ列G3の3速従動ギヤG3bが固定されている。
【0101】
入力軸4には、第1連結ギヤGicが回転自在に軸支されている。リバース軸61には、第1連結ギヤGicと噛合するアイドルギヤGiaが固定され、第2駆動ギヤ軸52には、アイドルギヤGiaと噛合する第2連結ギヤGibが固定されている。第2実施形態においては、第1連結ギヤGic、アイドルギヤGia及び第2連結ギヤGibでアイドルギヤ列Giが構成される。
【0102】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、アイドルギヤGiaがリバース軸61に固定されているため、アイドルギヤGia用のアイドル軸を別途設ける必要がなく、自動変速機1の小型化を図ることができる。
【0103】
入力軸4の内燃機関2側である一方の端部には、第2クラッチC2が設けられている。入力軸4の他方の端部には、入力軸4と第1駆動ギヤ軸51とを解除自在に連結する第1クラッチC1が設けられている。
【0104】
両クラッチC1,C2は、湿式多板クラッチで構成され、複数のインナープレート(図示省略)を軸方向に摺動自在に保持するインナーハブC1a,C2a(クラッチハブ)と、複数のアウタープレート(図示省略)を軸方向に摺動自在に保持するアウタードラムC1b,C2b(クラッチドラム)とを夫々備えている。
【0105】
インナーハブC1a,C2aは入力軸4に固定されている。アウタードラムC1bは、第1駆動ギヤ軸51に連結されている。第2クラッチC2のアウタードラムC2bは、第1連結ギヤGicに連結されている。
【0106】
尚、第2実施形態の自動変速機1では、第1実施形態におけるアイドルトップ従動ギヤに相当する構成を備えておらず、又、第3同期噛合機構も備えていない。
【0107】
第1駆動ギヤ軸51には、1速従動ギヤG1bに噛合する2速ギヤ列G2の2速駆動ギヤG2aが回転自在に軸支されている。即ち、1速従動ギヤG1bは、2速従動ギヤG2bを兼ねており、第2実施形態における第1の共用従動ギヤに相当する。
【0108】
又、第1駆動ギヤ軸51には、3速従動ギヤG3bに噛合する4速ギヤ列G4の4速駆動ギヤG4aが回転自在に軸支されている。即ち、3速従動ギヤG3bは、4速従動ギヤG4bを兼ねており、第2実施形態における第2の共用従動ギヤに相当する。
【0109】
このように、従動ギヤを共用させることにより、入力軸4の軸線方向における同一位置に2つのギヤ列を配置することができ、軸長を大幅に短縮することができる。
【0110】
第1駆動ギヤ軸51には、第2同期噛合機構S2が設けられている。この第2同期噛合機構S2は、2速駆動ギヤG2aと第1駆動ギヤ軸51とを連結する2速側連結状態、4速駆動ギヤG4aと第1駆動ギヤ軸51とを連結する4速側連結状態、及び2速駆動ギヤG2aと第1駆動ギヤ軸51との連結を断つと共に、4速駆動ギヤG4aと第1駆動ギヤ軸51との連結も断つニュートラル状態のうちの何れかの状態に切替自在に構成されている。
【0111】
出力軸7には、図外のデファレンシャルギヤを介して左右の両前輪に動力を伝達する出力ギヤ7aが固定されている。
【0112】
第2実施形態においては、第1実施形態とは異なり、第2連結ギヤGibの歯数は、第1連結ギヤGicの歯数よりも多く設定されており、第1連結ギヤGicの回転速度が「第2連結ギヤGibの歯数/第1連結ギヤGicの歯数」に減速されて第2連結ギヤGibに伝達される。
【0113】
このように構成することにより、第2駆動ギヤ軸52が第1駆動ギヤ軸51よりも高速で回転し、1速ギヤ列G1と2速ギヤ列、及び3速ギヤ列と4速ギヤ列のギヤ比の差が無い場合若しくは殆ど差が無い場合であっても、アイドルギヤ列Giにより、1速段及び3速段の変速比を適切に設定することができる。
【0114】
又、アイドルギヤ列Giのギヤ比(第2連結ギヤGibの歯数/第1連結ギヤGicの歯数)を調整することにより、第2駆動ギヤ軸52と出力軸7との軸間距離を変更することなく、1速段及び3速段の変速比を調整することができ、変速段の変速比の設計変更の自由度を向上させることができる。
【0115】
リバースギヤGRは、1速従動ギヤG1bに噛合すると共に、リバース軸61に設けられた第4同期噛合機構S4により、解除自在にリバース軸61に連結される。尚、第4同期噛合機構S4は、リバースギヤGRとリバース軸61とを解除自在に連結できるものであればよく、シンクロメッシュ機構に限らない。例えば、チャンファー等を用いてもよい。第4同期噛合機構S4では、リバースギヤGRとリバース軸61とを連結した状態を連結状態、この連結を断つ状態をニュートラル状態と定義する。
【0116】
両電動機31,32は、中空に構成され、ステータ31a,32aと、ロータ31b,32bとを備える。第1電動機31は、第1クラッチC1の径方向外方に配置され、ロータ31bは、第1クラッチドラムC1bの外周面に固定されている。第2電動機32は、第2クラッチC2の径方向外方に配置され、ロータ32bは、第2クラッチドラムC2bの外周面に固定されている。
【0117】
第2実施形態の自動変速機1は、入力軸4と平行に配置された、エアーコンディショナー用コンプレッサや、ウォーターポンプ、パワーステアリング用ポンプ等の補機81と接続される補機用軸82を備える。補機用軸82には、アイドルギヤGiaと噛合する補機用ギヤ82aが固定されている。
【0118】
このように構成することにより、補機81を第2電動機32で駆動させることができる。特に、1速ギヤ列G1を用いる1速段、3速ギヤ列G3を用いる3速段及びリバースギヤGRを用いる後進段以外で変速段(即ち、2速段又は4速段)で車両が走行中の場合には、第2同期噛合機構S2及び第4同期噛合機構S4をニュートラル状態とすることにより、車両の走行状態に影響を与えることなく、第2電動機32で補機81を駆動させることができる。
【0119】
次いで、各変速段について説明する。先ず、シフトレバーの操作により、シフトポジションが1速から4速の自動変速位置に切り換えられると、第1クラッチC1を係合させて、第1電動機31を駆動し、エンジンから成る内燃機関2を始動させる。即ち、第1電動機31はスタータとしての機能を兼ね備えている。
【0120】
そして、1速段は、第2同期噛合機構S2を1速側連結状態とし、第1クラッチC1を開放して、第2クラッチC2を係合させて確立される。1速段では、内燃機関2から出力される回転速度がアイドルギヤ列Giを介して減速されて第2駆動ギヤ軸52に伝達される。そして、第2駆動ギヤ軸52の回転速度が、1速ギヤ列G1のギヤ比(1速従動ギヤG1bの歯数/1速駆動ギヤG1aの歯数)に応じて変速され、出力ギヤ7aを介して駆動輪に伝達される。
【0121】
尚、内燃機関2を駆動させると共に、第2電動機32も駆動させれば、1速段での電動機によるアシスト走行(内燃機関2の駆動力を電動機で補助する走行)を行うこともでき、更に、第2クラッチC2を開放させれば、第2電動機32のみで走行するEV(Electric Vehicle)走行を行うこともできる。
【0122】
又、第2電動機32の駆動力で車両を発進させると共に、第1クラッチC1を係合させて、第1電動機31をスタータとして用いて内燃機関2を始動させることもできる。
【0123】
又、第2電動機32によるEV走行中の場合には、第1クラッチC1を係合させて、内燃機関2の動力により第1電動機31で発電させ、第1電動機31の発電で得られた電力により、第2電動機32を駆動させることも可能である。即ち、パラレル方式とシリーズ方式との切換えが可能である。
【0124】
又、内燃機関2の動力により1速段で走行中の場合には、第1同期噛合機構S1を2速側連結状態とすることにより、内燃機関2の駆動力が伝達される第1の共用従動ギヤたる1速従動ギヤG1bに、第1電動機31の駆動力も、第1駆動ギヤ軸51、第1同期噛合機構S1及び2速駆動ギヤG2aを介して、伝達させることができる。
【0125】
これにより、第2電動機32のみならず、第1電動機31を用いてアシスト走行(内燃機関2の駆動力を電動機で補助する走行)及びEV走行(電動機の駆動力のみの走行)を行うこともできる。
【0126】
又、減速回生運転中(電動機を制動することにより車両を減速状態として電動機で発電させ図外のバッテリーに充電させる運転状態中)では、第1電動機31のみならず、第2電動機32でも回生を行うことができる。
【0127】
尚、1速段で走行中であり図外のトランスミッション・コントロール・ユニット(TCU)が車速等の車両情報に基づいて2速段へのアップシフトが予想されると判断した場合には、第1同期噛合機構S1は、2速側連結状態にされるか、またはこの状態に近づけるプリシフト状態とされる。これにより、第2クラッチC2を開放すると共に、第1クラッチC1を係合させるだけで、1速段から2速段へのアップシフトを行うことができ、変速をスムーズに行うことができる。
【0128】
2速段は、第1同期噛合機構S1を2速側連結状態とし、第2クラッチC2を開放させると共に、第1クラッチC1を係合させることにより確立される。2速段では、内燃機関2から出力される回転速度が、2速ギヤ列のギヤ比(1速従動ギヤG1bの歯数/2速駆動ギヤG2aの歯数)に応じて変速されて、出力ギヤ7aを介して駆動輪に伝達される。
【0129】
尚、内燃機関2を駆動させると共に、第1電動機31も駆動させれば、2速段での電動機によるアシスト走行を行うこともでき、更に、第1クラッチC1を開放させれば、第1電動機31のみで走行するEV走行を行うこともできる。
【0130】
又、第1電動機31による2速段でのEV走行中の場合には、第2クラッチC2を係合させて、内燃機関2の動力により第2電動機32で発電させ、第2電動機32の発電で得られた電力により、第1電動機31を駆動させるシリーズ方式に切換えることも可能である。
【0131】
又、内燃機関2の動力により2速段で走行中の場合には、内燃機関2の駆動力が伝達される第1の共用従動ギヤたる1速従動ギヤG1bに、第2電動機32の駆動力も、1速駆動ギヤG1aを介して伝達させることができる。
【0132】
これにより、第1電動機31のみならず、第2電動機32を用いてアシスト走行することもできる。又、両電動機31,32の駆動力のみでEV走行することもできる。又、減速回生運転中では、第1電動機31のみならず、第2電動機32でも回生を行うことができる。
【0133】
尚、2速段で走行中に、図外のTCUが車速等の車両情報から3速段へのアップシフトが予想されると判断した場合には、第2同期噛合機構S2は、3速側連結状態にされるか、又は3速側連結状態に近づけるプリシフト状態とされる。これにより、第1クラッチC1を開放すると共に、第2クラッチC2を係合させるだけで、2速段から3速段へのアップシフトを行うことができ、変速をスムーズに行うことができる。
【0134】
逆に、図外のTCUが車速等の車両情報から1速段へのダウンシフトが予想されると判断した場合には、第2同期噛合機構S2は、1速側連結状態とされる。これにより、第1クラッチC1を開放すると共に、第2クラッチC2を係合させるだけで、2速段から1速段へのダウンシフトを行うことができ、変速をスムーズに行うことができる。
【0135】
3速段を確立させる場合には、第2同期噛合機構S2を3速側連結状態とする。内燃機関2により走行する場合には、第2クラッチC2を係合させる。第2電動機32により走行する場合には、第2クラッチC2を係合させる必要はない。
【0136】
3速段が確立されると、内燃機関2又は第2電動機32から出力される回転速度は、アイドルギヤ列Giを介して減速されて第2駆動ギヤ軸52に伝達される。そして、第2駆動ギヤ軸52の回転速度が、3速ギヤ列のギヤ比(3速従動ギヤG3bの歯数/3速駆動ギヤG3aの歯数)に応じて変速され、出力ギヤ7aを介して駆動輪に伝達される。
【0137】
又、3速段においても、1速段と同様にして、内燃機関2と共に第2電動機32も駆動させるアシスト走行、第2電動機32のみで走行するEV走行、及び内燃機関2の動力により第1電動機31で発電させて、発電された電力により第2電動機32を駆動させるシリーズ方式の走行を行うこともできる。
【0138】
又、内燃機関2の動力により3速段で走行中の場合には、第1同期噛合機構S1を4速側連結状態とすることにより、内燃機関2の駆動力が伝達される第2の共用従動ギヤたる3速従動ギヤG3bに、第1電動機31の駆動力も、第1駆動ギヤ軸51、第1同期噛合機構S1及び4速駆動ギヤG4aを介して、伝達させることができる。
【0139】
従って、3速段においても、第2電動機32のみならず、第1電動機31を用いてアシスト走行及びEV走行を行うこともできる。又、減速回生運転中では、第2電動機32のみならず、第1電動機31でも回生を行うことができる。
【0140】
尚、3速段で走行中の場合には、車速等の車両情報に基づいて、次に変速される変速段が2速段であるか4速段であるかを図外のTCUが予測し、2速段へのダウンシフトが予測された場合には、第1同期噛合機構S1を、2速側連結状態、又は2速側連結状態に近づけるプリシフト状態とする。
【0141】
逆に、TCUにより4速段へのアップシフトが予測された場合には、第1同期噛合機構S1を、4速側連結状態、又は4速側連結状態に近づけたプリシフト状態とする。これにより、3速段からのアップシフト及びダウンシフトをスムーズに行うことができる。
【0142】
4速段は、第1同期噛合機構S1を、4速側連結状態とすることにより確立される。内燃機関2で走行する場合には、第1クラッチC1を係合させ、EV走行する場合には、第1クラッチC1を係合させる必要はなく、第1電動機31を駆動させればよい。
【0143】
4速段が確立されると、内燃機関2又は第2電動機32から出力される回転速度は、4速ギヤ列G4のギヤ比(3速従動ギヤG3bの歯数/4速駆動ギヤG4aの歯数)に応じて変速され、出力ギヤ7aを介して駆動輪に伝達される。
【0144】
又、4速段においても、2速段と同様にして、内燃機関2と共に第1電動機31も駆動させるアシスト走行、第1電動機31のみで走行するEV走行、及び内燃機関2の動力により第2電動機32で発電させて、発電された電力により第1電動機31を駆動させるシリーズ方式の走行を行うこともできる。
【0145】
又、内燃機関2の動力により4速段で走行中の場合には、第2同期噛合機構S2を3速側連結状態とすることにより、内燃機関2の駆動力が伝達される第2の共用従動ギヤたる3速従動ギヤG3bに、第2電動機32の駆動力も伝達させることができる。
【0146】
従って、4速段においても、第1電動機31のみならず、第2電動機32を用いてアシスト走行及びEV走行を行うこともできる。又、減速回生運転中では、第1電動機31のみならず、第2電動機32でも回生を行うことができる。
【0147】
尚、4速段で走行中の場合には、車速等の車両情報に基づいて、3速段へのダウンシフトが予測されるか否かを図外のTCUが判定し、3速段へのダウンシフトが予測された場合には、第2同期噛合機構S2を、3速側連結状態、又は3速側連結状態に近づけるプリシフト状態とする。これにより、4速段からのダウンシフトをスムーズに行うことができる。
【0148】
シフトレバーの操作によりシフトポジションが後進段位置に切り換えられると、第4同期噛合機構S4は、リバースギヤGRとリバース軸61とを連結する連結状態とされて、後進段が確立される。
【0149】
後進段のときに、内燃機関2により走行する場合には、第2クラッチC2を係合させる。EV走行する場合には、第2クラッチC2を係合させる必要はなく、第2電動機32を駆動させればよい。
【0150】
後進段が確立されると、内燃機関2又は第2電動機32から出力される回転速度は、後進段のギヤ比({アイドルギヤGiaの歯数/第1連結ギヤGicの歯数}×{1速従動ギヤG1bの歯数/リバースギヤGRの歯数})に応じて変速され、出力ギヤ7aを介して駆動輪に伝達される。又、後進段においては、内燃機関2と共に第2電動機32も駆動させるアシスト走行、及び第2電動機32のみで走行するEV走行を行うこともできる。
【0151】
第2実施形態の自動変速機1も、第1実施形態と同様に、全ての変速段においてEV走行が可能となる。又、第1電動機31で内燃機関2を始動させることができ、内燃機関2用のスタータが不要となるため、低コスト化及び小型化を図ることができる。
【0152】
又、2つの電動機31,32は、夫々クラッチC1,C2の径方向外方に配置されているため、入力軸4の延長線上に電動機を配置した従来の自動変速機と比較して、軸長の短縮化を図ることができる。
【0153】
又、電動機31,32は、クラッチC1,C2で内燃機関2と切り離し自在に構成されているため、一方の電動機でEV走行中に他方の電動機で内燃機関2を始動させることができる。
【0154】
又、第1の共用従動ギヤたる1速従動ギヤG1b、又は、第2の共用従動ギヤたる3速従動ギヤG3bを、第1電動機31及び第2電動機32の両方で回転させることができ、EV走行時においても2つの電動機の出力トルクを合成して大きな駆動力を得ることができる。
【0155】
尚、第2実施形態においては、第2駆動ギヤ軸52に変速比順位で奇数番目の変速段のギヤ列G1,G3の駆動ギヤG1a,G3aを軸支させ、第1駆動ギヤ軸51に変速比順位で偶数番目の変速段のギヤ列G2,G4の駆動ギヤG2a,G4aを軸支させている自動変速機1を説明した。
【0156】
しかしながら、本発明の自動変速機は、これに限らず、第1実施形態のように、第2駆動ギヤ軸52に変速比順位で偶数番目の変速段のギヤ列の駆動ギヤを軸支させ、第1駆動ギヤ軸51に変速比順位で奇数番目の変速段のギヤ列の駆動ギヤを軸支させてもよい。
【0157】
この場合、共用従動ギヤに噛合する2つの駆動ギヤのうち、第1駆動ギヤ軸51に軸支される側の駆動ギヤを有するギヤ列の変速段が低速段側となり、第2駆動ギヤ軸52に軸支される側の駆動ギヤを有するギヤ列の変速段が高速段側となる。
【符号の説明】
【0158】
1…ハイブリッド車両用自動変速機、2…内燃機関(エンジン)、31…第1電動機、32…第2電動機、4…入力軸、51…第1駆動ギヤ軸、52…第2駆動ギヤ軸、61…リバース軸、7…出力軸、7a…出力ギヤ、81…補機、82…補機用軸、C1…第1クラッチ、C2…第2クラッチ、S1…第1同期噛合機構、S2…第2同期噛合機構、S3…第3同期噛合機構、S4…第4同期噛合機構、GR…リバースギヤ、G1〜G6…1速〜6速のギヤ列、G1b…第1の共用従動ギヤ(1速及び2速従動ギヤ)、G3b…第2の共用従動ギヤ(3速及び4速従動ギヤ)、G6a…6速駆動ギヤ(第1連結ギヤ)、Gi…アイドルギヤ列、Gia…アイドルギヤ、Gib…第2連結ギヤ、G6b…6速従動ギヤ(アイドルトップ従動ギヤ)、Gic…第1連結ギヤ(第2実施形態)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の動力を入力する入力軸と出力軸との間に、複数の変速段を確立するための、変速比の異なる複数のギヤ列が介設されると共に、ステータとロータとを有する電動機を備えるハイブリッド車両用自動変速機であって、
変速比順位で奇数番目又は偶数番目の変速段の各ギヤ列の駆動ギヤを回転自在に軸支する第1駆動ギヤ軸と、
変速比順位で偶数番目又は奇数番目の変速段の各ギヤ列の駆動ギヤを回転自在に軸支する第2駆動ギヤ軸と、
前記入力軸の回転を前記第1駆動ギヤ軸に解除自在に伝達する第1クラッチと、
前記入力軸の回転を前記第2駆動ギヤ軸に解除自在に伝達する第2クラッチと、
前記出力軸に固定される各ギヤ列の従動ギヤと、
前記第1駆動ギヤ軸に軸支される駆動ギヤを該第1駆動ギヤ軸に連結して、該第1駆動ギヤ軸に軸支される駆動ギヤを有するギヤ列の1つを選択的に確立する第1同期噛合機構と、
前記第2駆動ギヤ軸に軸支される駆動ギヤを該第2駆動ギヤ軸に連結して、該第2駆動ギヤ軸に軸支される駆動ギヤを有するギヤ列の1つを選択的に確立する第2同期噛合機構とを備え、
前記第1クラッチは、前記入力軸に連結される第1インナーハブと、前記第1駆動ギヤ軸に連結される第1アウタードラムとを有し、
前記第2クラッチは、前記入力軸に連結される第2インナーハブと、前記第2駆動ギヤ軸に連結される第2アウタードラムとを有し、
前記電動機は、第1と第2の2つの電動機で構成され、
第1電動機の第1ロータが前記第1アウタードラムの外周に連結され、
第2電動機の第2ロータが前記第2アウタードラムの外周に連結されることを特徴とするハイブリッド車両用自動変速機。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車両用自動変速機において、
前記第1駆動ギヤ軸は、中空に構成され、前記入力軸を相対回転自在に内挿し、
前記第2駆動ギヤ軸は前記入力軸に平行に配置され、
前記第2駆動ギヤ軸には、前記第2アウタードラムに連結する第1連結ギヤと前記第2駆動ギヤ軸に固定された第2連結ギヤと該第1連結ギヤ及び該第2連結ギヤに噛合するアイドルギヤとからなるアイドルギヤ列を介して入力軸の回転が伝達され、
前記出力軸に固定される各ギヤ列の従動ギヤのうち少なくとも1つの従動ギヤは、前記変速比順位で奇数番目の各ギヤ列のうち何れか1つのギヤ列の従動ギヤであると共に、前記変速比順位で偶数番目の各ギヤ列のうち何れか1つのギヤ列の従動ギヤでもある共用従動ギヤであることを特徴とするハイブリッド車両用自動変速機。
【請求項3】
請求項2記載のハイブリッド車両用自動変速機において、
前記アイドルギヤ列は、入力軸の回転速度を増速させて前記第2駆動ギヤ軸に伝達させることを特徴とするハイブリッド車両用自動変速機。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載のハイブリッド車両用自動変速機において、
リバースギヤを軸支するリバース軸を備え、
前記アイドルギヤは、該リバース軸に設けられることを特徴とするハイブリッド車両用自動変速機。
【請求項5】
請求項2から請求項4の何れか1項に記載のハイブリッド車両用自動変速機において、
前記出力軸には、前記第1連結ギヤに噛合するアイドルトップ従動ギヤが回転自在に軸支されると共に、該アイドルトップ従動ギヤを解除自在に前記出力軸に固定する第3同期噛合機構が設けられ、
前記第1連結ギヤと前記アイドルトップ従動ギヤとで構成されるギヤ列は、前記第2駆動ギヤ軸で軸支される駆動ギヤを有する変速比順位で偶数番目又は奇数番目の変速段のうちの最も変速比の小さい変速段のギヤ列であることを特徴とするハイブリッド車両用自動変速機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−25911(P2011−25911A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99771(P2010−99771)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】