説明

ハイブリッド電気自動車の制御装置

【課題】燃費の抑制を図りつつバッテリーの温度の過度な上昇によるバッテリーの劣化を抑制する上で有利なハイブリッド電気自動車の制御装置を提供する。
【解決手段】温度上昇率演算手段48Bは、バッテリー温度センサ46で検出された電池温度TBに基づいて電池温度TBの単位時間当たりの上昇量である温度上昇率αを算出するものである。エンジン制御手段48Cは、温度上昇率演算手段48Bで算出された温度上昇率αが予め定められた閾値であるエンジン始動判定値α1以上であるときにエンジン22を始動させることにより発電機を起動するものである。エンジン始動判定値設定手段48Dは、バッテリー温度センサ46で検出された電池温度TBが高くなるほど前記のエンジン始動判定値α1が低下するようにエンジン始動判定値α1を設定するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド電気自動車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気自動車として、バッテリーと、エンジンで駆動される発電機とからそれぞれ電流をモータに供給し、モータから出力された駆動トルクにより駆動輪を駆動するものが知られている。
このようなハイブリッド電気自動車においては、バッテリーからモータに電流が供給され続けると、バッテリーの温度が上昇する。バッテリーの温度が著しく上昇するとバッテリーの劣化が懸念される。そこで、バッテリーの温度が予め定められた閾値温度以上となると、バッテリーからモータに供給される電流を抑制し(モータトルクを抑制し)、バッテリーの温度上昇を抑制することが行われている。
しかしながら、このようなトルク抑制を行うと車両の走行性能に影響を与えることから改善の余地がある。
また、バッテリーの劣化を防ぐ技術として、バッテリーの温度に基づいてバッテリーの放電深度を演算し、バッテリーの温度の上昇率が高いときに放電深度が浅い状態で発電機を起動する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3707206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、放電深度が浅い状態でエンジンを始動して発電機を起動するため、バッテリーの温度の上昇を抑制できる反面、エンジンが無駄に始動されて燃費が低下することが懸念される。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、燃費の抑制を図りつつバッテリーの温度の過度な上昇によるバッテリーの劣化を抑制する上で有利なハイブリッド電気自動車の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、車両の駆動輪を駆動する電動モータと、前記電動モータに電流を供給するバッテリーと、前記電動モータに電流を供給する発電機と、前記発電機を駆動するエンジンとを備えるハイブリッド電気自動車の制御装置であって、前記バッテリーの温度を検出する温度検出手段と、前記検出されたバッテリーの温度に基づいて該温度の単位時間当たりの上昇量である温度上昇率を算出する温度上昇率演算手段と、前記温度上昇率が予め定められた閾値以上であるときに前記エンジンを始動させて前記発電機による発電を実行するエンジン制御手段と、を備え、前記エンジン制御手段は、前記検出されたバッテリーの温度が高くなるほど前記閾値を小さくするように前記エンジンを始動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、温度上昇率が閾値以上であるときにエンジンを始動させるようにした。そのため、温度上昇率が大きくバッテリーの温度が高温に至る傾向が顕著である場合は、より早期にエンジンを始動し、温度上昇率が小さくバッテリーの温度が高温に至る傾向が緩やかである場合は、早期のエンジンの始動を抑制する。したがって、燃費の抑制を図りつつバッテリーの温度の過度な上昇によるバッテリーの劣化を抑制する上で有利となる。また、バッテリーの温度が高くなるほど閾値が低下するようにした。そのため、バッテリーの温度が高くバッテリーの温度が高温に至る傾向が顕著である場合は、より早期にエンジンを始動し、バッテリーの温度が低くバッテリーの温度が劣化温度領域に至る傾向が緩やかである場合は、早期のエンジンの始動を抑制する。したがって、燃費の抑制を図りつつバッテリーの温度の過度な上昇による高圧バッテリーの劣化を抑制する上でより有利となる。
請求項2記載の発明によれば、温度上昇率が高いほど発電機の発電量が大きくなるようにエンジンの駆動制御を行うようにした。そのため、温度上昇率が小さい場合は、燃費を抑制しつつ、電池電流を低下させ、また、温度上昇率が大きい場合は、電池電流をより大きく低下させる。したがって、燃費の抑制を図りつつエンジン始動後におけるバッテリーの温度の上昇量を的確に抑制できバッテリーの劣化を抑制する上でより一層有利となる。
請求項3記載の発明によれば、バッテリーの温度が第1の閾値温度以上であるときにエンジンの始動を許容し、バッテリーの温度が第1の閾値温度を下回るときにエンジンの始動を禁止するようにした。したがって、エンジンの無駄な始動を抑制でき燃費の抑制を図りつつバッテリーの劣化を抑制する上でより一層有利となる。
請求項4記載の発明によれば、エンジンの始動後、バッテリーの温度が第2の閾値温度を連続して下回る期間が予め定められた閾値期間以上であるときにエンジンを停止させるようにした。したがって、バッテリーの温度の低下に応じてエンジンを的確に停止でき、燃費の抑制を図る上でより一層有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の形態における制御装置30が搭載された車両10の全体構成を示すブロック図である。
【図2】制御装置30の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】温度上昇率αの説明図である。
【図4】温度上昇率αと発電量P(kW)との関係を示す発電量マップ50の説明図である。
【図5】電池温度TBとエンジン始動判定値α1との関係を示す始動判定値マップ52の説明図である。
【図6】制御装置30の動作を示すフローチャートである。
【図7】電池温度TBが所定温度Tuに到達した時点でエンジン22の始動を行う比較例の説明図である。
【図8】温度上昇率αが小さく、エンジン始動後における電池温度TBの上昇量が比較的小さい場合における制御装置30の動作を示す説明図である。
【図9】温度上昇率αが大きく、エンジン始動後における電池温度TBの上昇量が比較的大きい場合における制御装置30の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、車両10は、高圧バッテリー12と、インバータ14、16と、電動モータとしてのフロントモータ18と、電動モータとしてのリアモータ20と、内燃機関としてのエンジン22と、発電機24と、前輪26と、後輪28と、本発明に係る制御装置30とを含んで構成されている。
したがって、車両10は、モータ18、20とエンジン22とを搭載したハイブリッド電気自動車を構成している。
【0009】
高圧バッテリー12は、フロントモータ18およびリアモータ20に電力を供給するものである。また、本明細書では、高圧バッテリー12からフロントモータ18およびリアモータ20に供給される電流を電池電流という。
高圧バッテリー12は、図示しない充電装置を介して、家庭用の商用電源、あるいは、充電スタンドの急速充電用電源などから供給される電力によって充電される。
高圧バッテリー12は、モータに電流を供給し続けることによりバッテリー内部の化学変化の進行に伴い温度が次第に上昇する。バッテリーの温度が過度に上昇した状態が続くとバッテリーの劣化を招くおそれがある。なお、高圧バッテリー12は、バッテリーの温度が予め定められた温度以上になると、不図示の冷却ファンで強制冷却されるように構成されているが、冷却ファンによる強制冷却を行っていても、電池電流の大きさ、電池電流の供給時間、環境温度によってはバッテリーの温度が過度に上昇することは避けられない。
【0010】
インバータ14、16は、高圧バッテリー12から供給される直流電力を三相交流電力に変換してフロントモータ18、リアモータ20にそれぞれ供給するものである。
インバータ14、16が後述するECU52の制御に基づいてフロントモータ18、リアモータ20に供給する三相交流電力を例えばPMW(パルス幅変調)によって制御することでフロントモータ18、リアモータ20から出力される駆動トルクが制御される。
【0011】
フロントモータ18は、インバータ14から供給される交流電力によって回転駆動され、減速機構32、ディファレンシャルギア34を介して前輪26に動力(駆動トルク)を与えることで前輪26を駆動するものである。
リアモータ20は、インバータ16から供給される三相交流電力によって回転駆動され、減速機構36、ディファレンシャルギア38を介して後輪28に動力(駆動トルク)を与えることで後輪28を駆動するものである。
また、車両10の回生制動時には、フロントモータ18、リアモータ20が発電機として機能し、フロントモータ18、リアモータ20で発電された三相交流電力がインバータ14、16を介して直流電力に変換されたのち高圧バッテリー12に充電される。
モータ18、20は、それぞれモータコイルを内蔵しており、これらモータコイルを流れる電流(電池電流)によって回転駆動される。
モータ18、20は、電流の供給開始と同時に、一時的に突入電流と呼ばれる過渡的に大きな電流が流れる特性を有している。
この突入電流は、モータのコイル温度が低いほど大きく、モータのコイル温度が高いほど小さくい。
【0012】
エンジン22は、減速機構40、クラッチ42を介して前記の減速機構32に接続されている。クラッチ42の接続、切断はECUによって制御される。
エンジン22は、クラッチ42の切断状態で、減速機構41を介して発電機24に動力を与えることで発電機24を駆動するものである。
発電機24は、エンジン22から供給される動力により発電を行いインバータ14を介して高圧バッテリー12を充電するものである。
なお、高圧バッテリー12からフロントモータ18(リアモータ20)に電池電流を供給してフロントモータ18(リアモータ20)を駆動している状態で、エンジン22を始動して発電機24を発電させると、発電機24の電力(電流)はフロントモータ18(リアモータ20)に供給されると共に、フロントモータ18(リアモータ20)の駆動で消費されなかった電力(電流)は高圧バッテリー12に充電される。すなわち、フロントモータ18、リアモータ20には高圧バッテリー12からの電池電流に発電機24からの電流が加算されて供給されることになる。
また、以下では、説明の簡素化を図るため、フロントモータ18のみで走行する場合について説明する。しかしながら、本発明は、リアモータ20のみで走行する場合、あるいは、フロントモータ18とリアモータ20との双方で走行する場合も無論適用される。
【0013】
なお、本実施の形態では、クラッチ42の切断状態で、エンジン22が減速機構40を介して発電機24に動力を与えることで発電機24を駆動する場合を説明する。
しかしながら、クラッチ42の接続状態で、エンジン22が減速機構40、クラッチ42、減速機構32、ディファレンシャルギア34を介して前輪26に動力(駆動トルク)を与えることで前輪26を駆動しつつ、エンジン22が減速機構41を介して発電機24に動力を与えることで発電機24を駆動する場合にも本発明は無論適用される。
【0014】
制御装置30は、アクセルペダルセンサ44と、バッテリー温度センサ46と、ECU48とを含んで構成されている。
アクセルペダルセンサ44は、アクセルペダルの踏み込み量を検出してECU48に供給するものである。
バッテリー温度センサ46は、高圧バッテリー12の温度(以下、電池温度TBという)を検出してECU48に供給するものである。本実施の形態では、バッテリー温度センサ46は温度検出手段を構成する。
【0015】
ECU48は、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
図2に示すように、ECU48は前記制御プログラムを実行することにより、モータ制御手段48Aと、温度上昇率演算手段48Bと、エンジン制御手段48Cと、エンジン始動判定値設定手段48Dとを実現する。なお、本実施の形態では、エンジン制御手段48Cおよびエンジン始動判定値設定手段48Dが特許請求の範囲のエンジン制御手段を構成している。
【0016】
モータ制御手段48Aは、アクセルペダルセンサ44によって検出されたアクセルペダルの踏み込み量に応じて、すなわち、要求される駆動トルクに応じて、高圧バッテリー12からフロントモータ18に供給される電流を制御するものである。
【0017】
温度上昇率演算手段48Bは、バッテリー温度センサ46で検出された電池温度TBに基づいて電池温度TBの単位時間当たりの上昇量である温度上昇率αを算出するものである。
すなわち、図3に示すように、単位時間Δt当たりの電池温度TBの上昇量をΔTBとすると、温度上昇率αはΔTB/Δtで定義される。
【0018】
エンジン制御手段48Cは、エンジン22の始動、停止、回転数などを制御するものである。
エンジン制御手段48Cは、温度上昇率演算手段48Bで算出された温度上昇率αが予め定められた閾値であるエンジン始動判定値α1以上であるときにエンジン22を始動させることにより発電機24を起動するものである。
本実施の形態では、エンジン制御手段48Cは、温度上昇率αが高いほど発電機24の発電量が大きくなるようにエンジン22の制御を行う。すなわち、温度上昇率αが高いほどエンジン22の回転数を上昇させる。
すなわち、エンジン制御手段48Cは、発電量マップ50を備えている。
発電量マップ50は、図4に示すように、温度上昇率αと発電量P(kW)との関係を示したマップである。
エンジン制御手段48Cは、発電量マップ50に基づいて温度上昇率αから発電量Pを特定し、発電機24で発電量Pが発電されるようにエンジン22の回転数を制御する(エンジン22を駆動制御する)。
【0019】
また、エンジン制御手段48Cは、バッテリー温度センサ46で検出された電池温度TBが予め定められた第1の所定温度としての第1の閾値温度TB1以上であるときにエンジン22の始動を許容し、検出された電池温度TBが第1の閾値温度TB1を下回るときにエンジン22の始動を禁止する。
第1の閾値温度TB1は、電池温度TBが第1の閾値温度TB1を下回っている状態であれば、仮に顕著な温度上昇が発生したとしてももともとの電池温度TBが低いため、高圧バッテリー12の劣化を考慮する必要がない温度として設定される。第1の閾値温度TB1は、例えば常温(25℃)に設定される。
また、エンジン制御手段48Cは、エンジン22の始動後、エンジン停止条件が成立したならばエンジン22を停止させる。
本実施の形態では、エンジン停止条件は、バッテリー温度センサ46で検出された電池温度TBが予め定められた第2の所定温度としての第2の閾値温度TB2を連続して下回る期間が予め定められた所定期間としての閾値期間以上であるというものである。第2の閾値温度TB2は、電池温度TBが第2の閾値温度TB2を下回っている状態であれば、高圧バッテリー12の劣化を無視できる温度として設定される。なお、エンジン停止条件は本例に限定されるものではなく任意である。
【0020】
エンジン始動判定値設定手段48Dは、バッテリー温度センサ46で検出された電池温度TBが高くなるほど前記のエンジン始動判定値α1が低下するようにエンジン始動判定値α1を設定するものである。
本実施の形態では、エンジン始動判定値設定手段48Dは、始動判定値マップ52を備えている。
始動判定値マップ52は、図5に示すように、電池温度TBとエンジン始動判定値α1との関係を示したマップである。
エンジン始動判定値設定手段48Dは、始動判定値マップ52に基づいて電池温度TBからエンジン始動判定値α1を特定して設定する。
【0021】
次に、図6のフローチャートを参照して制御装置30の動作について説明する。
図6の処理は、エンジン22が停止した状態で車両10がモータ18による定常走行を実施しているときに繰り返して実行される。
まず、ECU48は、エンジン22が停止しているか否かを判定する(ステップS10)。
ステップS10の判定結果が否定であれば以下の処理をスキップしてリターンする。
ステップS10の判定結果が肯定であれば、ECU48はバッテリー温度センサ46で検出された電池温度TBが第1の閾値温度TB1以上であるか否かを判定する(ステップS12)。
ステップS12の判定結果が否定であれば、ECU48は以下の処理をスキップしてリターンする。ステップS12の判定結果が肯定であれば、ECU48は温度上昇率αを算出する(ステップS14:温度上昇率演算手段48B)。すなわち、電池温度TBが第1の閾値温度TB1を下回るときにエンジン22の始動が禁止され、電池温度TBが第1の閾値温度TB1以上であるときにエンジン22の始動を許容される。
次いで、ECU48は始動判定値マップ52に基づいて電池温度TBからエンジン始動判定値α1を特定して設定する(ステップS16:エンジン始動判定値設定手段48D)。
次いで、ECU48は温度上昇率αがエンジン始動判定値α1以上であるか否かを判定する(ステップS18:エンジン制御手段48C)。
ステップS18の判定結果が否定であれば、以下の処理をスキップしてリターンする。
ステップS18の判定結果が肯定であれば、ECU48はエンジン始動制御を開始する(ステップS20:エンジン制御手段48C)。すなわち、ECU48は、発電量マップ50に基づいて温度上昇率αから発電量Pを特定し、発電機24で発電量Pが発電されるようにエンジン22の回転数を制御する。
次いで、ECU48は、電池温度TBが第2の閾値温度TB2を連続して下回る期間が予め定められた閾値期間以上であるか否かを判定する(ステップS22:エンジン制御手段48C)。
ステップS22の判定結果が否定ならば、ECU48はステップS20に戻りエンジン22の制御を継続する。
ステップS22の判定結果が肯定ならば、ECU48はエンジン22を停止してリターンする。
以上の処理が繰り返して実行される。
【0022】
次に、図7〜図9を参照して本実施の形態の作用効果について説明する。
以下では、エンジン22が停止した状態で車両10がモータ18による定常走行を実施している状態で電池温度TBが時間経過と共に上昇しやがてエンジン22の始動が開始される場合について説明する。
図7〜図9において横軸は時間、縦軸は電池温度TB、電池電流、エンジン22による発電電流、モータ18のトルクを示す。
図中、符号Tuは、電池温度TBがその温度以上となると電池の劣化度合いが激しくなる所定温度を示している。したがって、電池温度TBが所定温度Tu以上のハッチングで示す電池劣化領域に至らないようにすることが高圧バッテリー12の劣化を抑制する上で重要である。
【0023】
まず、説明を判りやすくするため、図7を参照して電池温度TBが所定温度Tuに到達した時点でエンジン22の始動を行う比較例について説明する。
モータ18による定常走行が実施されると、電池温度TBは時間経過と共に上昇する。
やがて、電池温度TBが所定温度Tuに到達すると、エンジン22が始動され発電機24が起動されて発電が開始され、発電電流がモータ18に供給される。モータ18に供給される発電電流の増加に伴って、高圧バッテリー12からモータ18に供給される電池電流は低減される。この場合、モータトルクは、エンジン始動の前後で一定に維持されている。
電池電流の低減により電池温度TBは時間経過と共に低下する。
しかしながら、本例では、エンジン22による発電が開始されて電池電流が低下してもしばらくの間、電池温度TBは上昇を続け、ハッチングで示す領域内に留まったのち低下するため高圧バッテリー12の劣化が懸念される。
【0024】
これに対して本実施の形態では、温度上昇率αがエンジン始動判定値α1以上であるときにエンジン22を始動させるようにした。
そのため、温度上昇率αが大きく電池温度TBが劣化温度領域に至る傾向が顕著である場合は、より早期にエンジン22を始動することにより、電池温度TBが温度劣化領域に至ることを的確に抑制することができる。
また、温度上昇率αが小さく電池温度TBが劣化温度領域に至る傾向が緩やかである場合は、早期のエンジン22の始動を抑制することにより、燃費を抑制しつつ電池温度TBが温度劣化領域に至ることを的確に抑制することができる。
したがって、燃費の抑制を図りつつ電池温度TBの過度な上昇による高圧バッテリー12の劣化を抑制する上で有利となる。
【0025】
また、本実施の形態では、電池温度TBが高くなるほどエンジン始動判定値α1が低下するようにした。すなわち、電池温度TBが高くなるほどエンジン始動判定値α1を小さくするようにエンジン22を始動するようにした。
そのため、電池温度TBが高く電池温度TBが劣化温度領域に至る傾向が顕著である場合は、より早期にエンジン22を始動することにより、電池温度TBが温度劣化領域に至ることを的確に抑制することができる。
また、電池温度TBが低く電池温度TBが劣化温度領域に至る傾向が緩やかである場合は、早期のエンジン22の始動を抑制することにより、燃費を抑制しつつ電池温度TBが温度劣化領域に至ることを的確に抑制することができる。
したがって、燃費の抑制を図りつつ電池温度TBの過度な上昇による高圧バッテリー12の劣化を抑制する上でより有利となる。
【0026】
また、本実施の形態では、図8、図9に示すように、温度上昇率αが高いほど発電機の発電量24が大きくなるようにエンジン22の駆動制御を行い、エンジン発電電流を増加させるようにした。
すなわち、図8は温度上昇率αが小さく、エンジン始動後における電池温度TBの上昇量が比較的小さい場合を示し、図9は温度上昇率αが大きく、エンジン始動後における電池温度TBの上昇量が比較的大きい場合を示す。
したがって、図8に示すように、温度上昇率αが小さい場合は、エンジン発電電流をそれほど大きく確保する必要がないため、燃費を抑制しつつ、電池電流を低下させることができ、電池温度TBの低下を促進することでエンジン始動後における電池温度TBの上昇量を的確に抑制している。
一方、図9に示すように、温度上昇率αが大きい場合は、エンジン発電電流を大きく確保できるため、電池電流をより大きく低下させることができ、電池温度TBの低下をより促進することができ、エンジン始動後における電池温度TBの上昇量を的確に抑制している。
したがって、燃費の抑制を図りつつエンジン始動後における電池温度TBの上昇量を的確に抑制でき高圧バッテリー12の劣化を抑制する上でより一層有利となる。
【0027】
また、本実施の形態では、電池温度TBが第1の閾値温度TB1以上であるときにエンジン22の始動を許容し、電池温度TBが第1の閾値温度TB1を下回るときにエンジン22の始動を禁止するようにした。
したがって、エンジン22の無駄な始動を抑制でき、燃費の抑制を図りつつ高圧バッテリー12の劣化を抑制する上でより一層有利となる。
【0028】
また、本実施の形態では、エンジン22の始動後、電池温度TBが第2の閾値温度TB2を連続して下回る期間が予め定められた閾値期間以上であるときにエンジン22を停止させるようにした。
したがって、電池温度TBの低下に応じてエンジン22を的確に停止でき、燃費の抑制を図る上でより一層有利となる。
【符号の説明】
【0029】
10……車両、12……高圧バッテリー、14、16……インバータ、18……フロントモータ、20……リアモータ、22……エンジン、24……発電機、26……前輪、28……後輪、30……制御装置、46……バッテリー温度センサ、48……ECU、48A……モータ制御手段、48B……温度上昇率演算手段、48C……エンジン制御手段、48D……エンジン始動判定値設定手段、50……発電量マップ、52……始動判定値マップ、TB……電池温度、TB1……第1の閾値温度、TB2……第2の閾値温度TB2、α……温度上昇率、α1……エンジン始動判定値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動輪を駆動する電動モータと、前記電動モータに電流を供給するバッテリーと、前記電動モータに電流を供給する発電機と、前記発電機を駆動するエンジンとを備えるハイブリッド電気自動車の制御装置であって、
前記バッテリーの温度を検出する温度検出手段と、
前記検出されたバッテリーの温度に基づいて該温度の単位時間当たりの上昇量である温度上昇率を算出する温度上昇率演算手段と、
前記温度上昇率が予め定められた閾値以上であるときに前記エンジンを始動させて前記発電機による発電を実行するエンジン制御手段と、を備え、
前記エンジン制御手段は、前記検出されたバッテリーの温度が高くなるほど前記閾値を小さくするように前記エンジンを始動することを特徴とするハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項2】
前記エンジン制御手段は、前記温度上昇率が高いほど前記発電機の発電量が大きくなるように前記エンジンの駆動制御を行う、
ことを特徴とする請求項1記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項3】
前記エンジン制御手段は、前記検出されたバッテリーの温度が予め定められた第1の所定温度以上であるときに前記エンジンの始動を許容し、前記検出されたバッテリーの温度が前記第1の所定温度を下回るときに前記エンジンの始動を禁止する、
ことを特徴とする請求項1または2記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項4】
前記エンジン制御手段は、前記エンジンの始動後、前記検出されたバッテリーの温度が予め定められた第2の所定温度を連続して下回る期間が予め定められた所定期間以上であるときに前記エンジンを停止させる、
ことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−56606(P2013−56606A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195631(P2011−195631)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】