説明

ハイブリッド駆動装置

【課題】装置のスペースやコストの増加を抑えつつ、モータジェネレータでの回生効率を向上させることが可能なハイブリッド駆動装置を提供すること。
【解決手段】エンジン1と自動変速機5の間の動力伝達経路にモータジェネレータ4を有するハイブリッド駆動装置であって、エンジン1の回転動力が入力されるポンプインペラ2bと、ポンプインペラ2bからの流体を受けて回転するとともに自動変速機5に向けて回転動力を出力するタービンインペラ2cと、ポンプインペラ2bとタービンインペラ2cとを断接可能に動力を伝達するロックアップクラッチ2eと、を有するトルクコンバータ2と、タービンインペラ2cと一体回転するとともに、自動変速機5、及びロックアップクラッチ2eを作動させる油圧を生成するオイルポンプ3と、を備え、モータジェネレータ4は、タービンインペラ2cと一体回転するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン、流体クラッチ、モータジェネレータ、及び自動変速機を備えたハイブリッド駆動装置に関し、特に、エンジンから自動変速機までの動力伝達経路にオイルポンプが接続されたハイブリッド駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のハイブリッド駆動装置においては、エンジン、流体クラッチ、モータジェネレータ、及び変速機を備え、エンジンから自動変速機までの動力伝達経路に変速機用オイルポンプが接続されたものがある。例えば、特許文献1では、エンジンと可変ギヤ比を有するトランスミッションとの間に、モータとして及び発電機として運転可能な電気機械と、トランスミッション用油圧ポンプと、を備え、前記エンジンと前記トランスミッションとの間に、第1クラッチ装置とトルクコンバータとが配設されており、前記油圧ポンプは、前記トルクコンバータと結合されているパワートレインを備えたハイブリッド駆動装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2008−24298号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のハイブリッド駆動装置では、トルクコンバータを採用した構成において、第1クラッチ装置とトルクコンバータの間のパワーとレイン上に電気機械(モータジェネレータ)を備えた構成となっているため、電気機械(モータジェネレータ)で回生する際、トランスミッションからの動力がトルクコンバータで減少して電気機械(モータジェネレータ)に入力されるため、電気機械(モータジェネレータ)での回生効率が低下する。
【0005】
また、特許文献1に記載のハイブリッド駆動装置において、トルクコンバータに一般的なロックアップ機構付トルクコンバータを採用した場合、第1クラッチ装置に入力されるエンジントルク振動およびそれに起因するトルク共振を抑えることができない。振動や共振を抑えるためには、ロックアップダンパに加えて、エンジンと第1クラッチ装置との間に新たにダンパを追加しなくてはならない場合があり、そうすると取り付けスペースが増加し、コストの増加を招く。
【0006】
本発明の主な課題は、装置のスペースやコストの増加を抑えつつ、モータジェネレータでの回生効率を向上させることが可能なハイブリッド駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の視点においては、エンジンと自動変速機の間の動力伝達経路にモータジェネレータを有するハイブリッド駆動装置であって、前記エンジンの回転動力が入力されるポンプインペラと、前記ポンプインペラからの流体を受けて回転するとともに前記自動変速機に向けて回転動力を出力するタービンインペラと、前記ポンプインペラと前記タービンインペラとを断接可能に動力を伝達するロックアップクラッチと、を有する流体クラッチと、前記タービンインペラと一体回転するとともに、前記自動変速機、及び前記ロックアップクラッチを作動させる油圧を生成するオイルポンプと、を備え、前記モータジェネレータは、前記タービンインペラと一体回転するように構成されることを特徴とする。
【0008】
本発明の前記ハイブリッド駆動装置において、前記ポンプインペラは、前記エンジンの出力軸と一体回転することができる。
【0009】
本発明の前記ハイブリッド駆動装置において、前記エンジンと前記ポンプインペラの間の動力伝達を断接可能なクラッチを備えることができる。
【0010】
本発明の第2の視点においては、エンジンと自動変速機の間の動力伝達経路にモータジェネレータを有するハイブリッド駆動装置であって、前記エンジンの回転動力が入力されるポンプインペラと、前記ポンプインペラからの流体を受けて回転するとともに前記自動変速機に向けて回転動力を出力するタービンインペラと、を有する流体クラッチと、前記ポンプインペラと前記タービンインペラとを断接可能に動力を伝達するクラッチ機構と、前記タービンインペラと前記自動変速機の間の動力伝達経路に配設されるとともに、前記タービンインペラと一体回転し、かつ、前記自動変速機及び前記クラッチ機構を作動させる油圧を生成するオイルポンプと、を備え、前記モータジェネレータは、前記タービンインペラと一体回転するように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、モータジェネレータが自動変速機の入力軸と一体回転するので、自動変速機からの動力を直接用いることで、回生効率を向上させることができる。また、トルクコンバータにもともとあるロックアップクラッチと、自動変速機にもともとあるクラッチとを操作することで、エンジンとトルクコンバータの間に新たにクラッチを設ける必要がなく、取り付けスペースの削減と製造コストの低減を実現することができる。また、エンジントルク振動は、トルクコンバータに充満した流体と、一般的に配置されているロックアップダンパによって減衰することができるため、ダンパ機構を2重に配置する必要がなく、取り付けスペースが小さく済み、またコストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態1では、エンジン(図1、図5の1)と自動変速機(図1、図5の5)の間の動力伝達経路にモータジェネレータ(図1、図5の4)を有するハイブリッド駆動装置であって、前記エンジン(図1、図5の1)の回転動力が入力されるポンプインペラ(図1、図5の2b)と、前記ポンプインペラ(図1、図5の2b)からの流体を受けて回転するとともに前記自動変速機(図1、図5の5)に向けて回転動力を出力するタービンインペラ(図1、図5の2c)と、前記ポンプインペラ(図1、図5の2b)と前記タービンインペラ(図1、図5の2c)とを断接可能に動力を伝達するロックアップクラッチ(図1、図5の2e)と、を有する流体クラッチ(例えば、図1、図5のトルクコンバータ2)と、前記タービンインペラ(図1、図5の2c)と一体回転するとともに、前記自動変速機(図1、図5の5)、及び前記ロックアップクラッチ(図1、図5の2e)を作動させる油圧を生成するオイルポンプ(図1、図5の3)と、を備え、前記モータジェネレータ(図1、図5の4)は、前記タービンインペラ(図1、図5の2c)と一体回転するように構成される。
【0013】
本発明の実施形態2では、エンジン(図1、図5の1)と自動変速機(図1、図5の5)の間の動力伝達経路にモータジェネレータ(図1、図5の4)を有するハイブリッド駆動装置であって、前記エンジン(図1、図5の1)の回転動力が入力されるポンプインペラ(図1、図5の2b)と、前記ポンプインペラ(図1、図5の2b)からの流体を受けて回転するとともに前記自動変速機(図1、図5の5)に向けて回転動力を出力するタービンインペラ(図1、図5の2c)と、を有する流体クラッチ(例えば、図1、図5のトルクコンバータ2)と、前記ポンプインペラ(図1、図5の2b)と前記タービンインペラ(図1、図5の2c)とを断接可能に動力を伝達するクラッチ機構(図1、図5の2e)と、前記タービンインペラ(図1、図5の2c)と前記自動変速機の間の動力伝達経路に配設されるとともに、前記タービンインペラ(図1、図5の2c)と一体回転し、かつ、前記自動変速機(図1、図5の5)及び前記クラッチ機構(図1、図5の2e)を作動させる油圧を生成するオイルポンプと、を備え、前記モータジェネレータ(図1、図5の4)は、前記タービンインペラ(図1、図5の2c)と一体回転するように構成される。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1に係るハイブリッド駆動装置について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施例1に係るハイブリッド駆動装置の構成を模式的に示したパワートレイン図である。
【0015】
図1を参照すると、実施例1に係るハイブリッド駆動装置は、エンジン1及びモータジェネレータ4の一方又は両方を駆動源として自動変速機5に回転動力を伝達する装置である。ハイブリッド駆動装置は、エンジン1と自動変速機5の間の動力伝達経路にトルクコンバータ2、変速機用オイルポンプ3、及びモータジェネレータ4を有し、制御系として制御ユニット6を有し、電源系としてバッテリ7を有する。
【0016】
エンジン1は、燃料の燃焼により回転動力を出力する内燃機関である。エンジン1は、出力軸1aから回転動力を出力する。出力軸1aはトルクコンバータハウジング2aに固定されている。エンジン1は、インジェクタ(図示せず)からの燃料噴出量を調整(フューエルカットを含む)や、点火時期を調整する各種アクチュエータ(図示せず)を有し、エンジン回転数やエンジン水温を検出する各種センサ(図示せず)を有する。エンジン1は、燃料噴出量、点火時期等が制御ユニット6によって制御される。
【0017】
トルクコンバータ2は、流体を介して回転動力を伝達する流体クラッチであり、トルク増幅作用を有するものである。トルクコンバータ2は、トルクコンバータハウジング2aと、ポンプインペラ2bと、タービンインペラ2cと、ステータ2dと、ロックアップクラッチ2eと、を有する。なお、トルクコンバータ2の代わりに、流体クラッチ(流体継ぎ手)として、トルク増幅作用のないフルードカップリングを用いてもよい。
【0018】
トルクコンバータハウジング2aは、エンジン1の出力軸1a及びポンプインペラ2bと連結されており、出力軸1a及びポンプインペラ2bと一体に回転する。
【0019】
ポンプインペラ2bは、タービンインペラ2cに向けて油圧を送る羽根車であり、エンジン1の出力軸1aに連結されたトルクコンバータハウジング2aと常時固定されている。
【0020】
タービンインペラ2cは、ポンプインペラ2bからの油圧を受けて回転する羽根車であり、自動変速機5の入力軸5aに連結されている。タービンインペラ2cは、変速機用オイルポンプ3及びモータジェネレータ4(ロータ)と常時固定されている。
【0021】
ステータ2dは、ワンウェイクラッチ2fを介してトルクコンバータ2のケース2gに固定されている。
【0022】
ロックアップクラッチ2eは、流体の滑りによる動力伝達ロスを避けるため、入力側のポンプインペラ2bと出力側のタービンインペラ2cとを両者の回転差が小さいときに直結して動力を伝達するクラッチである。ロックアップクラッチ2eは、油圧作動による摩擦材式湿式クラッチが望ましい。ロックアップクラッチ2eは、ポンプインペラ2bとタービンインペラ2cよりなる流体式伝達機構と並列に連結されており、一端がトルクコンバータハウジング2aを介してポンプインペラ2bに連結され、他端がタービンインペラ2cに連結されている。ロックアップクラッチ2eは、制御ユニット6によって断接(非係合/係合)が制御される。ロックアップクラッチ2eは、非係合時にはポンプインペラ2bとタービンインペラ2cの回転差を許容するが、係合時にはポンプインペラ2bとタービンインペラ2cを一体回転させる。なお、図示していないが、ロックアップクラッチ2eは、エンジントルク振動を吸収するダンパ(ロックアップダンパ)を有する。
【0023】
変速機用オイルポンプ3は、主に自動変速機5においてギヤ段の構成に用いられる摩擦要素(クラッチ5bを含む)を作動させる油圧を生成するポンプである。変速機用オイルポンプ3は、ロックアップクラッチ2eを作動させる油圧も生成する。変速機用オイルポンプ3は、タービンインペラ2c、モータジェネレータ4、及び自動変速機5の入力軸5aに常時固定されており、タービンインペラ2c、モータジェネレータ4、及び入力軸5aと一体に回転する。変速機用オイルポンプ3は、モータジェネレータ4が回転している時は必ず回転するようになっている。
【0024】
モータジェネレータ4は、発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる同期発電電動機である。モータジェネレータ4は、タービンインペラ2c、変速機用オイルポンプ3、及び自動変速機5の入力軸5aと常時固定されており、タービンインペラ2c、変速機用オイルポンプ3、及び入力軸5aと一体に回転する。モータジェネレータ4は、制御ユニット6によって制御される。
【0025】
自動変速機5は、発進操作、変速操作を自動的に行う変速機である。自動変速機5は、タービンインペラ2cの回転動力を入力するための入力軸5aを有する。自動変速機5は、ギヤ段を構成するための複数の遊星歯車を有し、遊星歯車の回転要素の断接を行う摩擦要素を有し、摩擦要素を作動させるための油圧回路を有する。自動変速機5における所定の摩擦要素は、入力軸5a(タービンインペラ2c)からの回転動力を断接するクラッチ5bとなる。自動変速機5は、油圧回路において、変速機用オイルポンプ3からの圧油が入力されており、油路を切り替えたり、油圧を調整する各種アクチュエータを有する。自動変速機5の油圧回路は、ロックアップクラッチ2eの作動に用いる圧油を切替可能かつ調圧可能に供給する。自動変速機5は、制御ユニット6によって制御される。
【0026】
制御ユニット6は、エンジン1、ロックアップクラッチ2e、モータジェネレータ4、及び自動変速機5の動作を制御するコンピュータである。制御ユニット6は、バッテリ7と電気的に接続されている。制御ユニット6は、アクセル開度センサ、シフト位置センサ、回転センサ等の各種センサと電気的に接続されている。制御ユニット6は、所定のプログラム(データベース、マップ等を含む)に基づいて制御処理を行う。制御ユニット6の制御動作については、後述する。
【0027】
バッテリ7は、放電及び充電可能な2次電池であり、制御ユニット6と電気的に接続されている。
【0028】
次に、本発明の実施例1に係るハイブリッド駆動装置の動作について図面を用いて説明する。図2〜図4は、本発明の実施例1に係るハイブリッド駆動装置の動作モードを示したトルクフロー図である。
【0029】
(1)EV発進・EV走行モード
図2(A)を参照すると、EV発進・EV走行モードでは、ハイブリッド駆動装置がエンジン停止状態からの発進過程において、制御ユニット(図1の6)は、まず、モータジェネレータ4を回転させることで、変速機用オイルポンプ3を駆動させる。制御ユニット(図1の6)は、変速機用オイルポンプ3により発生した油圧を用いて自動変速機5の発進段を構成(このとき、クラッチ5bが係合)する。モータジェネレータ4の駆動力は、クラッチ5bを介して自動変速機5に入力され車両を駆動する。このとき、クラッチ5bは、発進段を構成する際に用いる摩擦要素として用いる。
【0030】
(2)エンジン始動・走行モード
図2(B)を参照すると、エンジン始動・走行モードでは、EV走行中(図2(A)参照)においてエンジン1による駆動力が必要な場合、制御ユニット(図1の6)は、ロックアップクラッチ2eを係合させることで、モータジェネレータ4の駆動力を、ロックアップクラッチ2eを介してエンジン1へ入力させ、エンジン1をクランキングさせ、エンジン1を始動させる。これにより、エンジン始動用のスターターモータが不要となる。エンジン1の駆動力は、トルクコンバータ2(流体又はロックアップクラッチ2e)を介して自動変速機5に入力され、モータジェネレータ4とともに車両を駆動する。
【0031】
(3)回生モード
図3(A)を参照すると、回生モードでは、エンジン作動での走行中(図2(B)参照)に駆動力の要求がなくなり(つまりアクセルオフ)、回生モードに移る過程において、制御ユニット(図1の6)は、ロックアップクラッチ2eを開放して、エンジン1を停止させる。これにより車両より入力された逆駆動力は、エンジン1に吸収されることなくモータジェネレータで回生することができる。なおかつ、エンジン停止によって燃費向上を図ることができる。
【0032】
(4)再加速モード
図3(B)を参照すると、再加速モードでは、回生モード(図3(A)参照)から再加速を行う場合、制御ユニット(図1の6)は、モータジェネレータ4を駆動させることで、モータジェネレータ4の駆動力はクラッチ5bを経由して自動変速機5に入力され、再加速を行うことができる。このとき、必要に応じてロックアップクラッチ2eを係合し、エンジン1を始動させることで、エンジン1とモータジェネレータ4の両方の駆動力によって再加速することができる。
【0033】
(5)エンジン発進モード
図4を参照すると、エンジン発進モードでは、車両停車時において、バッテリ(図1の7)の電力が十分でなく、モータジェネレータ4による発進が不可能な場合(但し、エンジン1を始動させることが可能な場合)、制御ユニット(図1の6)は、発進過程においては、クラッチ5bを開放状態にしてモータジェネレータ4を回転させ、変速機用オイルポンプ3を駆動させ、十分な油圧が確保できたのちロックアップクラッチ2eを係合させ、エンジン1を始動させる。その後、エンジン1の駆動力はトルクコンバータ2(流体又はロックアップクラッチ2e)を経由し、自動変速機5に入力され、発進することができる。
【0034】
実施例1によれば、モータジェネレータ4が自動変速機5の入力軸5aと常時固定されているので、自動変速機5からの動力を直接用いることで、回生効率を向上させることができる。また、トルクコンバータ2にもともとあるロックアップクラッチ2eと、自動変速機5にもともとあるクラッチ5bとを操作することで、エンジン1とトルクコンバータ2の間に新たにクラッチを設ける必要がなく、取り付けスペースの削減と製造コストの低減を実現することができる。また、エンジントルク振動は、トルクコンバータ2に充満した流体と、一般的に配置されているロックアップダンパ(図示せず)によって減衰することができるため、ダンパ機構を2重に配置する必要がなく、取り付けスペースが小さく済み、またコストを抑えることができる。
【実施例2】
【0035】
本発明の実施例2に係るハイブリッド駆動装置について図面を用いて説明する。図5は、本発明の実施例2に係るハイブリッド駆動装置の構成を模式的に示したパワートレイン図である。
【0036】
実施例2に係るハイブリッド駆動装置では、実施例1におけるエンジン1の出力軸1a(トルクコンバータハウジング2a)とポンプインペラ2bの間の動力伝達経路上に、任意に断接できるクラッチ11を設けたものである。クラッチ11は、制御ユニット6によって制御される。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0037】
実施例2に係るハイブリッド駆動装置の動作として、回生モードでは、エンジン作動での走行中に駆動力の要求がなくなり(つまりアクセルオフ)、回生モードに移る過程において、制御ユニット6は、ロックアップクラッチ2eを開放して、エンジン1を停止させる。この時、クラッチ11を開放することで、車両より入力された逆駆動力は、エンジン1に吸収されることなく、またトルクコンバータ2によるエネルギー吸収されることなく、モータジェネレータ4で回生することができる。なおかつ、エンジン停止によって燃費向上を図ることができる。その他のモードでは、クラッチ11は、係合した状態で用いる。
【0038】
実施例2によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、トルクコンバータ2内の発熱を抑え、実施例1よりもさらに回生効率を向上させることができる。
【実施例3】
【0039】
本発明の実施例3に係るハイブリッド駆動装置について図面を用いて説明する。図6は、本発明の実施例3に係るハイブリッド駆動装置の構成を模式的に示したパワートレイン図である。
【0040】
実施例3に係るハイブリッド駆動装置では、実施例1に係るハイブリッド駆動装置に、エンジン1、モータジェネレータ4、及び車両ともに停止中においても駆動することができる補助用電動オイルポンプ12を追加したものである。その他の構成は実施例1と同様である。なお、補助用電動オイルポンプ12は、実施例2に係るハイブリッド駆動装置に適用してもよい。
【0041】
補助用電動オイルポンプ12は、電動によって駆動するオイルポンプである。補助用電動オイルポンプ12は、変速機用オイルポンプ3を補助するためのもので、変速機用オイルポンプ3と同様に、主に自動変速機5においてギヤ段の構成に用いられる摩擦要素(クラッチ5bを含む)を作動させる油圧を生成する。補助用電動オイルポンプ12は、ロックアップクラッチ2eを作動させる油圧も生成する。補助用電動オイルポンプ12は、制御ユニット6によって制御される。
【0042】
次に、本発明の実施例3に係るハイブリッド駆動装置の動作について説明する。
【0043】
(1)EV発進・EV走行モード
EV発進・EV走行モードでは、車両が停止状態において、制御ユニット6は、まず、補助用電動オイルポンプ12を作動させ、補助用電動オイルポンプ12の油圧で自動変速機5を発進段に構成する。その後、発進過程において、制御ユニット6は、モータジェネレータ4を回転させ、モータジェネレータ4の駆動力をトルクコンバータ2(流体又はロックアップクラッチ2e)を介して自動変速機5に伝達され、車両を駆動することができる。また、この時、変速機用オイルポンプ3は、モータジェネレータ4の回転によって駆動するので、補助用電動オイルポンプ12を停止することができる。
【0044】
(2)エンジン発進モード
エンジン発進モードでは、車両停車時において、バッテリ7の電力が十分でなく、モータジェネレータ4による発進が不可能な場合(但し、エンジン1を始動させることが可能な場合)、制御ユニット6は、発進過程においては、補助用電動オイルポンプ12によって発生した油圧で予めロックアップクラッチ2eを係合させておくことで、モータジェネレータ4の駆動力は、ロックアップクラッチ2eを介してエンジン1に入力され、エンジン1を始動することができる。その後、自動変速機5を発進段に構成(クラッチ5bの係合を含む)することで、エンジン1の駆動力は、トルクコンバータ2(流体又はロックアップクラッチ2e)を経由し、自動変速機5に入力され、発進することができる。
【0045】
実施例3によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、補助用電動オイルポンプ12の配置することで、発進時において予め自動変速機5を発進段に構成したり、エンジン始動時において予めロックアップクラッチ2eを係合しておくことで、応答性をさらに向上させることができる。
【実施例4】
【0046】
本発明の実施例4に係るハイブリッド駆動装置について図面を用いて説明する。図7は、本発明の実施例4に係るハイブリッド駆動装置の構成を模式的に示したパワートレイン図である。
【0047】
実施例4に係るハイブリッド駆動装置では、実施例1に係るハイブリッド駆動装置に、エンジン1、モータジェネレータ4、及び車両ともに停止中においても、変速機用オイルポンプ3を補助的に駆動する補助用モータ13と、補助用モータ13(変速機用オイルポンプ3)の駆動力をタービンインペラ2c、モータジェネレータ4、及び自動変速機5に伝達せず、かつ、タービンインペラ2c及びモータジェネレータ4と変速機用オイルポンプ3の間の動力伝達経路に配されたワンウェイクラッチ14と、を追加したものである。その他の構成は実施例1と同様である。なお、補助用モータ13及びワンウェイクラッチ14は、実施例2に係るハイブリッド駆動装置に適用してもよい。
【0048】
補助用モータ13は、補助的に変速機用オイルポンプ3を駆動するモータである。補助用モータ13は、制御ユニット6によって制御される。
【0049】
ワンウェイクラッチ14は、補助用モータ13(変速機用オイルポンプ3)の駆動力をタービンインペラ2c、モータジェネレータ4、及び自動変速機5に伝達せず、かつ、タービンインペラ2c、モータジェネレータ4、及び自動変速機5の駆動力を変速機用オイルポンプ3に伝達するフリーホイールである。
【0050】
次に、本発明の実施例4に係るハイブリッド駆動装置の動作について説明する。
【0051】
(1)EV発進・EV走行モード
EV発進・EV走行モードでは、車両が停止状態において、制御ユニット6は、まず、補助用モータ13を作動させ、変速機用オイルポンプ3の油圧で自動変速機5を発進段に構成する。このとき、補助用モータ13から変速機用オイルポンプ3に入力された回転動力は、ワンウェイクラッチ14によって、タービンインペラ2c、モータジェネレータ4、及び自動変速機5に伝達されない。その後、発進過程において、制御ユニット6は、モータジェネレータ4を回転させ、モータジェネレータ4の駆動力が自動変速機5に伝達されることで、車両を駆動することができる。また、この時、変速機用オイルポンプ3は、モータジェネレータ4の回転によってワンウェイクラッチ14を介して駆動するので、補助用モータ13を停止することができる。
【0052】
(2)エンジン発進モード
エンジン発進モードでは、車両停車時において、バッテリ7の電力が十分でなく、モータジェネレータ4による発進が不可能な場合(但し、エンジン1を始動させることが可能な場合)、制御ユニット6は、発進過程においては、補助用モータ13を駆動させ、変速機用オイルポンプ3によって発生した油圧で予めロックアップクラッチ2eを係合させておくことで、モータジェネレータ4の駆動力は、ロックアップクラッチ2eを介してエンジン1に入力され、エンジン1を始動することができる。その後、自動変速機5を発進段に構成(クラッチ5bの係合を含む)することで、エンジン1の駆動力は、トルクコンバータ2(流体又はロックアップクラッチ2e)を経由し、自動変速機5に入力され、発進することができる。
【0053】
実施例4によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、補助用モータ13を配置することで、発進時において予め自動変速機5を発進段に構成したり、エンジン始動時において予めロックアップクラッチ2eを係合しておくことで、応答性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施例1に係るハイブリッド駆動装置の構成を模式的に示したパワートレイン図である。
【図2】本発明の実施例1に係るハイブリッド駆動装置の(A)EV発進・EV走行モード、及び(B)エンジン始動・走行モードを示したトルクフロー図である。
【図3】本発明の実施例1に係るハイブリッド駆動装置の(A)回生モード、及び(B)再加速モードを示したトルクフロー図である。
【図4】本発明の実施例1に係るハイブリッド駆動装置のエンジン発進モードを示したトルクフロー図である。
【図5】本発明の実施例2に係るハイブリッド駆動装置の構成を模式的に示したパワートレイン図である。
【図6】本発明の実施例3に係るハイブリッド駆動装置の構成を模式的に示したパワートレイン図である。
【図7】本発明の実施例4に係るハイブリッド駆動装置の構成を模式的に示したパワートレイン図である。
【符号の説明】
【0055】
1 エンジン
1a 出力軸
2 トルクコンバータ(流体クラッチ)
2a トルクコンバータハウジング
2b ポンプインペラ
2c タービンインペラ
2d ステータ
2e ロックアップクラッチ(クラッチ機構)
2f ワンウェイクラッチ
2g ケース
3 変速機用オイルポンプ(オイルポンプ)
4 モータジェネレータ
5 自動変速機
5a 入力軸
5b クラッチ
6 制御ユニット
7 バッテリ
11 クラッチ
12 補助用電動オイルポンプ
13 補助用モータ
14 ワンウェイクラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと自動変速機の間の動力伝達経路にモータジェネレータを有するハイブリッド駆動装置であって、
前記エンジンの回転動力が入力されるポンプインペラと、前記ポンプインペラからの流体を受けて回転するとともに前記自動変速機に向けて回転動力を出力するタービンインペラと、前記ポンプインペラと前記タービンインペラとを断接可能に動力を伝達するロックアップクラッチと、を有する流体クラッチと、
前記タービンインペラと一体回転するとともに、前記自動変速機、及び前記ロックアップクラッチを作動させる油圧を生成するオイルポンプと、
を備え、
前記モータジェネレータは、前記タービンインペラと一体回転するように構成されることを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
前記ポンプインペラは、前記エンジンの出力軸と一体回転することを特徴とする請求項1記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項3】
前記エンジン、前記モータジェネレータ、前記自動変速機、及び前記ロックアップクラッチの動作を制御する制御ユニットを備えることを特徴とする請求項2記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項4】
前記オイルポンプとは別に設けられるとともに、前記自動変速機、及び前記ロックアップクラッチを作動させる油圧を生成し、電動によって駆動する補助用電動オイルポンプを備え、
前記制御ユニットは、前記補助用電動オイルポンプの動作も制御することを特徴とする請求項3記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項5】
前記エンジンと前記ポンプインペラの間の動力伝達を断接可能なクラッチを備えることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項6】
前記エンジン、前記モータジェネレータ、前記自動変速機、前記ロックアップクラッチ、及び前記クラッチの動作を制御する制御ユニットを備えることを特徴とする請求項5記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項7】
前記オイルポンプとは別に設けられるとともに、前記自動変速機、前記ロックアップクラッチ、及び前記クラッチを作動させる油圧を生成し、電動によって駆動する補助用電動オイルポンプを備え、
前記制御ユニットは、前記補助用電動オイルポンプの動作も制御することを特徴とする請求項6記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項8】
前記オイルポンプを駆動する補助用モータと、
前記ポンプインペラと前記オイルポンプの間の動力伝達経路に設けられるとともに、前記ポンプインペラから前記オイルポンプへのトルクのみ伝達する第2ワンウェイクラッチと、
を備え、
前記制御ユニットは、前記補助用モータの動作も制御することを特徴とする請求項3又は6記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項9】
前記ロックアップクラッチは、前記エンジンのトルク振動を吸収するダンパを備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項10】
エンジンと自動変速機の間の動力伝達経路にモータジェネレータを有するハイブリッド駆動装置であって、
前記エンジンの回転動力が入力されるポンプインペラと、前記ポンプインペラからの流体を受けて回転するとともに前記自動変速機に向けて回転動力を出力するタービンインペラと、を有する流体クラッチと、
前記ポンプインペラと前記タービンインペラとを断接可能に動力を伝達するクラッチ機構と、
前記タービンインペラと前記自動変速機の間の動力伝達経路に配設されるとともに、前記タービンインペラと一体回転し、かつ、前記自動変速機及び前記クラッチ機構を作動させる油圧を生成するオイルポンプと、
を備え、
前記モータジェネレータは、前記タービンインペラと一体回転するように構成されることを特徴とするハイブリッド駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−83231(P2010−83231A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252277(P2008−252277)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】