説明

ハニカム成形体

【課題】酸化触媒として活性が高く、しかも資源豊富で安価な鉄系酸化触媒を用いた、高強度で粉落ちやクラックの少ない、実用性の高いハニカム成形体の提供を目的とする。
【解決手段】BET比表面積が30〜250m/gの紡錘状含水酸化第二鉄10〜50重量%、セメント系結合材20〜60重量%、無機増量材20〜60重量%からなる組成物に成形助剤を添加してハニカム状に成形し、乾燥、焼成してなることを特徴とするハニカム成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金等に代表される貴金属系酸化触媒の代替触媒として有用な、特定の鉄系酸化触媒を組成物中に含有する酸化活性の高いハニカム成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自家用車の急速な普及に伴い大気環境の悪化が深刻な問題になっている。また、昨今の多様な生活様式の変化を反映して、居住空間でも魚焼き器等の各種調理器具から出る微量のすすや悪臭、有害ガス等が健康志向の観点から問題視されており、その対策が強く求められている。
【0003】
これら一連の問題は、いずれも排気ガスや燃焼ガス中に含まれる未燃の炭化水素に由来するもので、その分解用酸化触媒も種々開発され実用に供されているが、現在常用されている触媒は白金やパラジウム、マンガン、ニッケル等の希少金属が主流で、将来的な資源の枯渇が危惧されている状況下、代替触媒の開発が喫緊の課題となっている。
【0004】
この代替触媒の一つに、資源豊富で人畜無害の鉄系酸化触媒を用いたハニカム構造体が提案されている。(特許文献1〜2号公報等参照)しかし、これら既報のハニカム構造体は、鉄系酸化触媒の種類や形状等が十分特定されていないため酸化活性が不十分で、しかも押出成形や乾燥、焼成といった製造上の問題まで踏み込んだ検討がなされていないために、実用上の強度が不足したり、乾燥、焼成段階でクラックが発生しやすいといった問題から、未だ実用に供されていないのが現状である。また、含水酸化第二鉄粒子を析出担持させたガス体処理用触媒も提案されているが(特許文献3〜4号公報)、これらはセラミック製モノリス担体を第一鉄塩水溶液中に浸漬し、アルカリ処理や空気酸化等を経てモノリス担体表面に含水酸化第二鉄を析出担持したもので、この方法ではモノリス担体中の含水酸化第二鉄の含有量が高々5重量%程度にすぎず、この程度の含有量では満足できる酸化活性が到底得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−210172号公報
【特許文献2】特開2001−98925号公報
【特許文献3】特開平5−76761号公報
【特許文献4】特開平5−177138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、酸化触媒として活性が高く、しかも資源豊富で安価な鉄系酸化触媒を用いた、高強度で粉落ちやクラックの少ない、実用性の高いハニカム成形体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鉄系酸化触媒の種類や形状、粒径等の酸化活性に及ぼす影響を詳しく検討した結果、特定の比表面積を有する紡錘形状の含水酸化第二鉄がとりわけ酸化活性に優れること、また当該紡錘状含水酸化第二鉄とセメント系結合材及び無機系増量材を特定割合配合することで強度や粉落ちの問題が大幅に改善されること、更にハニカム成形体の外周壁面の縦方向に所定のスリット溝を設けることでハニカム製造時のクラックの発生が抑えられること等を見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0008】
即ち、本発明のうちの第1の発明は、BET比表面積が30〜250m/gの紡錘状含水酸化第二鉄10〜50重量%、セメント系結合材20〜60重量%、無機増量材20〜60重量%からなる組成物に成形助剤を添加してハニカム状に成形し、乾燥、焼成してなることを特徴とするハニカム成形体であり、第2の発明は前記第1発明の記載のセメント系結合材がアルミナセメントであること、また第3の発明は前記第1〜第2発明記載の無機増量材が水酸化アルミニウムを含むこと、更に第4の発明は前記第1〜第3発明記載のハニカム成形体が、該成形体外周壁の縦方向に複数本の溝幅0.3〜5.0mmのクラック防止用スリット溝を略等間隔に付設し、乾燥、焼成してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のハニカム成形体によれば、白金触媒に匹敵する優れた酸化活性を有するほか、高強度で粉落ちやクラックの少ないハニカム成形体が安価に提供できるなど、そのコストパフォーマンスに基づく高い実用性に加えて、希少金属の枯渇化対策の観点でも計り知れない効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】は、本発明のハニカム成形体の一例を示す斜視図である。
【図2】は、本発明のハニカム成形体外周壁にクラック防止用スリット溝を付設した例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のハニカム成形体を図面に基づき説明する。
【0012】
本発明において、ハニカム成形体1とは、図1に例示の如く、前後に多数の貫通孔を形成するよう格子状の隔壁2と外周壁3を有するものであれば、全体形状は円柱状や角柱状等のいかなる形状のものでもさしつかえない。また、当該ハニカム成形体の外周壁面には、図2に例示するクラック防止用のスリット溝4を付設することができる。
【0013】
本発明で使用する紡錘状含水酸化第二鉄としては、紡錘状ゲータイト(α−FeOOH)が代表的である。この紡錘状ゲータイトは、本発明者等が行った高温X線回折による結晶構造解析の結果、230〜300℃の温度域で脱水してヘマタイト(α−Fe)に相転移すること、またこのヘマタイトは還元雰囲気中300℃以上の温度下でマグネタイト(Fe)になるが、その際に放出されるヘマタイト表面の格子酸素は極めて強い酸化作用を有すること、更に該ヘマタイトの還元により生成したマグネタイトは雰囲気中の酸素を補充して再びヘマタイトに戻って酸化反応が継続されること、そしてこれら一連の酸化還元反応の活性種はゲータイトの脱水により相転移したヘマタイトであることなどが確認されている。
【0014】
本発明のハニカム成形体は、その製造過程での乾燥・焼成等の熱履歴に伴う上記紡錘状含水酸化第二鉄特有の脱水反応や相転移に基づくクラックの問題を、高い酸化活性を維持しつつ材料構成や加工方法等を見直すことで克服することに成功したものである。
【0015】
本発明で使用する紡錘状含水酸化第二鉄は、電子顕微鏡観察によれば超微細繊維が多数束ねられた外観を呈しており、長軸径が0.05〜1.5μm、軸比(長軸径/短軸径)が1〜18であって、BET比表面積が30〜250m/gである。酸化活性とハニカム成形性を考慮すれば、長軸径が0.1〜0.5μm、軸比が3〜15であって、BET比表面積50〜200m2/gのものが好ましい。BET比表面積が30m2/g未満では、得られるハニカム成形体の酸化活性が低下するのに対し、250m2/gより大きくなると粒子径が小さくなりすぎてハニカム製造時のセメント系結合材等との混練性や分散性が悪くなる。
【0016】
かかる紡錘状含水酸化第二鉄は、第一鉄塩水溶液と炭酸アルカリ水溶液等のアルカリ水溶液との中和反応沈殿物を含む懸濁液中に20〜70℃の範囲に温度を制御しながら空気等の酸素含有ガスを通気することにより水溶液中から生成させることができる。また、本発明で用いる紡錘状含水酸化第二鉄は、そのまま紡錘状含水酸化第二鉄の形で配合するのが一般的であるが、上記の如く酸化活性種が紡錘状含水酸化第二鉄が脱水して生成されたヘマタイトであるため、予め紡錘状含水酸化第二鉄を230〜350℃で加熱脱水してヘマタイトに相転移させたものを配合しても良いことは言うまでもない。
【0017】
本発明では、無機結合剤としてセメント系結合剤を用いる。その理由は、木節粘土等の粘土系や石膏系ではリンや硫黄等の鉄系酸化触媒にとって触媒毒となり得る成分を不純物の形で含有することに基づくものである。セメント系結合材としては、アルミナセメント、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等が挙げられるが、中でも硬化速度が速く、アルミナ成分との相性から紡錘状含水酸化第二鉄の酸化活性が高度に維持できるアルミナセメントが好ましい。
【0018】
また、本発明で使用する無機増量材としては、水酸化アルミニウムやシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化セリウム、珪質頁岩、ゼオライト、炭化珪素、窒化珪素、活性白土、コージェライト等の比較的多孔質で増量効果のあるものであれば如何なるものでも差し支えないが、中でも水酸化アルミニウムは焼成過程で200℃超の温度で表面平滑なΧ−アルミナに構造変化し、紡錘状含水酸化第二鉄の多くを埋もれさせることなく表面にとどめ、酸化活性を高度に維持させる効果を奏する点で好ましく、その配合量は無機増量材中の少なくとも30重量%以上を占めるように配合するのがよい。
【0019】
本発明のハニカム成形体は、上記紡錘状含水酸化第二鉄、セメント系結合材、無機増量材で構成されるが、個々の配合割合は紡錘状含水酸化第二鉄が10〜50重量%、好ましくは15〜45重量%、セメント系結合材が20〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、無機増量材が20〜60重量%である。
【0020】
紡錘状含水酸化第二鉄の配合割合が10重量%未満では酸化活性能力が乏しく、50重量%を超えると強度が脆弱となったりクラックが入りやすくなる。また、セメント系結合材の配合割合が20重量%未満では強度が弱く、粉落ちの問題が発生するのに対し、60重量%を超えるとこの場合もクラックが入りやすくなる。更に、無機増量材の配合割合が20重量%未満ではハニカム格子の隔壁を通るガス透過度が低下して酸化活性が悪くなり、60重量%を超えると強度や粉落ちの問題が生起する。
【0021】
本発明のハニカム成形体は、上記紡錘状含水酸化第二鉄、セメント系結合材、無機増量材等の所定量に、更に成形助剤や水を添加して混練し、ハニカム状に押出成形する。その際使用する成形助剤は、この種の無機物の押出成形で用いられる一般的なバインダーや潤滑材などが使用可能である。例えばバインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロース誘導体が、また潤滑材としてはポリアルキレン誘導体等が挙げられる。更に、ポリビニルアルコール、ステアリン酸アルカリ金属塩、デンプン糊、グリセリン等の成形助剤を用いることもでき、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用する。紡錘状含水酸化第二鉄、セメント系結合材、無機増量材等に対するこれら成形助剤や水の配合割合は、所望の流動特性が得られるよう適宜設定することができる。また、ハニカム成形方法としては、スクリュー方式やプランジャー方式などの通常公知の押出成形が採用可能である。
【0022】
本発明のハニカム成形体は、上記押出成形後、更に乾燥、焼成して得られる。乾燥条件としては、例えば常温から徐々に100〜200℃まで昇温し、乾燥状態に応じて1〜20時間かけて乾燥するのが一般的である。また、焼成は押出成形時に配合される有機系の成形助剤を分解(脱バイ)し、成形体を焼結させる目的で行うもので、この場合も昇温速度を制御しながら300〜500℃くらいまで上げて有機物を分解した後、更に必要に応じて600〜1000℃に加温して焼成するのが一般的である。
【0023】
本発明のハニカム成形体は、紡錘状含水酸化第二鉄が10〜50重量%と高濃度に配合されたものであるため、前述した紡錘状含水酸化第二鉄特有の高温下での脱水反応や相転移により、乾燥、焼成工程でクラックが発生しやすい。即ち、ハニカム成形体の製造工程におけるクラックの発生は、主として乾燥や焼成工程での加熱による急激な収縮減量に起因するもので、とりわけ高温下での脱水反応や相転移によって収縮減量しやすい本発明の紡錘状含水酸化第二鉄を主要成分とするハニカム成形体では、壁厚の大きい外周壁と比較的壁厚の小さい格子壁との収縮減量の違いによって外周壁と格子壁に引張応力の応力差が発生し、この応力差に耐え切れなくなると外周壁からクラックが成長する。
【0024】
本発明では、この製造工程でのクラック対策として、ハニカム成形体外周壁の縦方向に複数本の溝幅0.3〜5.0mm、好ましくは0.5〜4.0mmのクラック防止用スリット溝を略等間隔に付設した後、乾燥、焼成を行うのが好ましい。このスリット溝は、紡錘状含水酸化第二鉄特有の脱水反応や相転移に伴う収縮減量によって引き起こされる上記外周壁と格子壁間の応力差を分散させる効果を奏し、乾燥、焼成工程でのクラック防止に有効に作用する。
【0025】
ここでクラック防止用スリット溝は、ハニカム成形体外周壁の縦方向に略等間隔のピッチで複数本付設するのであるが、スリット溝の本数や間隔はハニカム成形体の容積や外周壁と格子壁の厚さ比率等に応じて適宜決められる。例えば、外径150mmの円柱状のハニカム成形体では、ハニカム長が短いとスリット溝を付設しなくてもクラックは発生しないが、ハニカム長が長くなり容積が大きくなると外周壁と格子壁間の応力差が大きくなりクラックが発生しやすくなるため、外周を略2分割か4分割する位置に縦方向のスリット溝を付設するのが好ましい。スリット溝の必要本数や間隔は、ハニカム成形体外周の対称で略等間隔な位置に2〜10本程度付設すればよく、ハニカムを構成する材料の配合割合やハニカム容積、形状、寸法等に応じて事前の予備テストなどで決めればよい。
【0026】
本発明において、かかるクラック防止用スリット溝を付設する際の溝幅は、0.3〜5.0mmとしなければならない。溝幅が0.3mm未満では、乾燥、焼成工程での収縮減量による応力差を吸収できずクラック防止効果が少なくなるのに対し、溝幅が5.0mmを超えると焼成後のハニカム成形体の強度が弱くなるという不都合が生じる。尚、スリット溝はハニカム成形体の縦方向に全長に亘って付設するのを基本とするが、強度面での問題が懸念される場合は、クラック防止効果が得られる範囲でハニカム成形体の縦方向の前後にのみ付設しても差し支えない。また、スリット溝は、押出成形時に同時に付設するか、あるいは成形後にバンドソー等を用いて付設すればよく、その深さは、ハニカム成形体の形状や大きさに応じて0.3〜10mm程度とするのがよい。
【0027】
本発明のハニカム成形体は、上記紡錘状含水酸化第二鉄、セメント系結合材、無機増量材を所定割合配合することで、従来の貴金属系触媒に匹敵する酸化活性が得られるが、より高い酸化活性を所望される場合は、本発明のハニカム成形体に更に白金やパラジウム、マンガン、ニッケル、ネオジウム等の通常公知の酸化触媒を適宜添加したり担持しても差し支えないことは言うまでもない。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。
【0029】
〈鉄系酸化触媒の酸化活性の評価方法〉
パルス式固定床反応装置を用いて、触媒45mgを石英製反応管に装填し、その外周を電気炉で反応温度に加熱した。キャリアガスとして反応管にアルゴンを30ml/分の割合で導入し、反応温度が設定値に達した後、反応ガスとして1.97mol%の一酸化炭素(CO)1mlをパルス状に注入し、一酸化炭素ガスが触媒を通過した後の二酸化炭素(CO)への転換率をガスクロマトグラフによって解析した。
【0030】
〈供試鉄系酸化触媒と酸化活性評価〉
(1)BET比表面積83m/gの紡錘状ゲータイト、(2)BET比表面積38m/gの紡錘状ゲータイト、(3)BET比表面積23m/gの粒状ゲータイト、(4)BET比表面積21m/gの粒状ヘマタイトの4種類の酸化鉄(いずれも戸田工業(株)製)を用意し、それぞれについて300℃での酸化活性を上記反応装置を用いて測定した。その結果、COへの転換率は、上記供試鉄系酸化触媒(1)が99.5%、同(2)が82.7%、同(3)が31.7%、同(4)が1.6%であり、BET比表面積が本発明の範囲にある紡錘状含水酸化第二鉄(紡錘状ゲータイト)は酸化活性に優れることが確認された。
【0031】
(実施例1〜3、比較例1〜4)
紡錘状含水酸化第二鉄触媒として上記(1)のBET比表面積83m/gの紡錘状ゲータイト(戸田工業(株)製)を用い、セメント系結合材としてアルミナセメント、無機増量材として水酸化アルミニウム、シリカ、酸化チタン、及び成形助剤としてメチルセルロース(信越化学工業製「メトローズ」)をそれぞれ表1に示す配合割合で混練し、プランジャー方式による縦型押出機にて直径150mm、セル数100、ピッチ2.5mm、格子壁厚0.5mm、外周壁厚1.2mm、長さ100mmの円柱形のハニカム成形前駆体を得た。引き続き、乾燥を115℃で5時間行った後、180℃から15℃/時間の速度で700℃まで昇温して焼成し、ハニカム成形体を作製した。
【0032】
得られたハニカム成形体について、酸化活性及び強度、粉落ち、クラック等を次の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0033】
(酸化活性)
酸化活性は、ハニカム成形体を粉砕して粉状となし、以降は上記鉄系酸化触媒と同じパルス式固定床反応装置を用いた方法で評価した。300℃でのCOへの転換率が70%より高かったものを(○)、50〜70%のものを(△)、50%未満のものを(×)とした。
【0034】
(強度)
ハニカム成形体を水平に置き、外周壁面の圧縮強度を測定した。圧縮強度が200N以上のものを(○)、100N以上、200N未満のものを(△)、100N未満のものを(×)とした。
【0035】
(粉落ち)
ハニカム成形体の外周壁を、ガーゼで拭いた時の粉の付き具合で評価した。目視判定で、ガーゼに粉がほとんど付かなかった場合を(○)、ガーゼが弁柄色になった場合を(×)とした。
【0036】
(クラック)
ハニカム成形体の外周壁、又は格子面の一部にクラックが見られなかったものを(○)、幅0.3mm以下の僅かなクラックが見られたものを(△)、幅0.3mmより大きいクラックが見られたものを(×)とした。
【0037】
表1の結果から、紡錘状ゲータイト、アルミナセメント、水酸化アルミニウム等の配合量が本発明の範囲内のものは、酸化活性はもちろん、強度、粉落ち、クラック等にも大きな欠点は見られなかった。一方、本発明の範囲外のものは(比較例1〜4)、酸化活性、強度、粉落ち、クラック等のいずれかに問題があり、実用に供されるレベルのものでないことが確認された。
【0038】
【表1】

【0039】
(実施例4)
実施例3のハニカム成形体を作成する過程で、押出成形後の外周壁面に、図2に例示するような4分割する位置に全長にわたって幅1mm、深さ1.2mmのスリット溝を付設し、その後実施例3と同条件で乾燥、焼成を行ってハニカム成形体を作製した。得られた成形体にはクラックが全く見られず、スリット溝の付設によりクラックの発生が抑制できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のハニカム成形体は、白金触媒に匹敵する優れた酸化活性を有するため、地球温暖化対策として普及が期待されているディーゼル自動車のPM対策用DPFを始め、各種ディーゼル機関や調理機器、消臭機器等の酸化・浄化促進用ハニカムとして極めて有用である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・ハニカム成形体
2・・・隔壁
3・・・外周壁
4・・・スリット溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET比表面積が30〜250m/gの紡錘状含水酸化第二鉄10〜50重量%、セメント系結合材20〜60重量%、無機増量材20〜60重量%からなる組成物に成形助剤を添加してハニカム状に成形し、乾燥、焼成してなることを特徴とするハニカム成形体。
【請求項2】
セメント系結合材が、アルミナセメントである請求項1記載のハニカム成形体。
【請求項3】
無機増量材が、水酸化アルミニウムを含む請求項1〜2記載のハニカム成形体。
【請求項4】
ハニカム成形体外周壁の縦方向に複数本の溝幅0.3〜5.0mmのクラック防止用スリット溝を略等間隔に付設し、乾燥、焼成してなることを特徴とする請求項1〜3記載のハニカム成形体。






































【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−121808(P2011−121808A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280050(P2009−280050)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(592129486)株式会社長峰製作所 (18)
【Fターム(参考)】