説明

ハンドル操作ミスでも、所期の開閉をする非常時対応ヒューマンエラー除去緊急バルブおよびそのエラー除去機構

【課題】
本発明は地震時、火災時あるいは人命救助時等の非常事態時に人が誤ってバルブを操作しても、結果は正しい操作となる、ヒューマンエラー防止バルブおよびその機構を提供するものである。
【解決手段】
従来、バルブのハンドルと軸は1つで、この軸で直接弁を動かしている。このため、緊急時たとえ開閉表示をしていても、誤って反対方向に動かすことは、度々経験することである。本発明はハンドル軸と弁の軸の2つの軸を設け、ハンドル軸に2個の歯車を、弁軸に2個の歯車を設け、ハンドル軸の動力伝達系統を2系列とし、ハンドル軸の2歯車と軸間にそれぞれロック方向が異なるように一方向クラッチを設け、更に弁軸歯車と軸間に一方向クラッチを設置することにより、2方向回転入力を一方向回転出力にすれば、間違い操作が2次災害を及ぼす事はない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地震、火災、工場災害等の非常事態時、有害ガス、有害液体を遮断または開放する際、間違ってハンドルを操作しても、所期の開または閉をするヒューマンエラー除去緊急バルブ及びそのエラー除去機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震、火災、爆発等の非常事態時は、電力や空気圧等の用役が遮断され、手動でプラントのバルブを開閉しなければならない。
一方、現状の大口径の手動バルブや小口径の手動バルブは、バルブの開、閉時、バルブハンドル回転方向が決まっており、非常時、あわてている時は、ハンドル回転方向を間違える事ある。
そこで慌てて,正規の方向に回し直すのであるが、これでは、時間的に間に合わない事が数々の事故例から判明している。また、先行技術調査結果、電気的にソフトあるいはシーケンスで、ヒューマンエラーを防止するシステムが特許文献1、特許文献2に見られるが、これらは、平常時のヒューマンエラー防止システムで、電力やその他空気圧等の用役、インフラが破壊された時は、対応できない。このように、手動バルブの操作ミスを容認する本発明のバルブは見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許公開2004−144898
【特許文献2】特許公開平11−264892
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
石油プラントや化学薬品工場、原子力施設等での事故は、火災、猛毒、放射線被爆等が考えられ、たとえ、電気系統が故障していても、その他空気圧等の用役等が使用不可となっていても、またどんなに慌てていても、手動バルブ操作に許される時間はほんの僅かであり、間違って操作しても所期の目的が達成されなければ、甚大な2次災害を回避する事はできない。
本発明は、かかる状況に鑑み、2次災害を防止する緊急遮断弁または緊急開放弁の手動ハンドルを正回転、逆回転しても、弁内部で矯正され、緊急弁の所期動作をする、特殊な弁を提供するものである。
また、本発明の更なる目的は、入力軸を正転、逆転しても、出力軸は常時正転または逆転する産業機械用機械装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来のバルブは、図1に示す如く、操作ハンドル軸とバルブ開閉軸とが一体に作られており、ハンドルの開閉とバルブの開閉は同一方向である。従って、緊急時ハンドルを閉方向に回すべきところ、間違って、開方向に回すと、バルブは全開し、事故を拡大させる事につながりかねない。これを解決するためには、ハンドル軸とバルブ軸を切り離し、この間に、ハンドルが正逆回転しても、バルブ軸は正、または逆の一方向にのみ回転する機構を設ければ、ヒューマンエラー除去が可能となる。
また、数十回回転し、回転停止時、回転体の停止位置が常に一定でなければならない時は、回転駆動をエアーシリンダーや油圧シリンダーのラック、ピニオンで行えば、ストロークが一定なため、停止位置を常時一定にできる。ただし、この時も、ピストンロッドが往復運動しても、回転方向を常時一定にする機構が必要になる。
上記課題解決手段として、機械的な一方向クラッチの組合せで、入力軸が正回転、逆回転しても出力軸が正転または逆転の一種類の運動だけをする機構が実現できれば所期の目的が達成できる。
【0006】
上記を達成するためには、機械的一方向クラッチの組合せに、工夫をすれば可能となる。
【0007】
本発明は上記課題を解決し、所期の目的を達成したものである。
本発明の動作原理を図2、図3、図4、図5、図6に基づいて詳述する。図2は本発明の基本動作原理を説明する一実施例の断面図で、図3は図2のD−D視図、図4は図2のA視図、図5は図2のB視図、図6は図2のC視図である。
【0008】
初めに図2に基づき構造を説明する。
バルブボディ4にエラー除去機構を内蔵する部屋4dを設ける。6はハンドル2の操作軸で、歯車5と軸6の間に一方向クラッチ11、歯車10と軸6の間に一方向クラッチ12を設けてある。
軸6は、軸6の両端に設けたベアリング4eで軸支する。9は歯車5,10の分割スペーサである。
7は、7aと直結し、他方に軸7bを設けた弁開閉軸である。軸7は軸6と同様にベアリング4eで軸支する。また、歯車15は歯車5と係合し、軸7との間に一方向クラッチ17を設ける。また、歯車16は歯車14と一体となり、軸8上に回転自在とした歯車13と係合する。更に、歯車13を歯車10と係合させる。14はスペーサである。
【0009】
次に動作の基本原理を図3、図4、図5、図6で説明する。
これは、ハンドルをd方向に回しても、c方向に回しても、弁7aはe方向に回る例である。
先ず、3つの一方向クラッチを図4、図5、図6の如く取り付ける。即ち、図4では、軸6をd方向に回すと、クラッチのボール55aが楔55の方に動き、ボール55aが軸6と楔55の間に嵌り、外周の歯車5をh方向に回す。この時、もう一つのクラッチ12では、ボール55aが楔56から離れる方向に動き、軸6の動きは歯車10には伝達されない。一方、歯車5の回転は図6の軸7に伝達される。即ち、歯車16が歯車5でi方向に回されると、一方向クラッチ17のボール55aが楔55と軸7の間に嵌り、軸7がc方向に回る。この結果、ハンドル2がd方向にまわると、軸7と連結する弁7aはハンドルと逆方向のe方向に回る。この時、歯車15,16のi方向回転は中間歯車13を介して、歯車10をi方向に回す。すると同様の一方向クラッチの機能から歯車10のi方向回転は軸6に作用せず、歯車10は空回りするだけである。一方同様にして、ハンドル2をc方向に回すと、クラッチ11は空回りし、クラッチ12が作動する。図5から、軸6のc方向回転はボール56の働きで歯車10をi方向に回す。歯車10がi方向に回ると、この回転は、中間歯車13を介して、歯車16をi方向に回す。すると、ボール55aの働きで軸7がc方向に回る。この結果、弁7aはe方向に回る。また、歯車16がi方向に回るとこれと係合する歯車5はh方向に回るが、一方向クラッチ11の働きで歯車5は回転しない。
【発明の効果】
【0010】
以上記載の如く請求項1の発明によれば、機械的一方向クラッチの組合せで機構が構成でき、装置をコンパクトに作ることができる。
【0011】
また、請求項2の発明によれば、緊急時のバルブ開または閉は出力軸上の一方向クラッチロック方向で決まるため、このクラッチの取り付け方向だけで、バルブまたは機構が作れるため、装置の構成部品が同一となり、製作が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来例バルブの一例を示す断面図である。
【図2】本発明を説明する一実施例の断面図である。
【図3】本発明を説明するD−D断面図である。
【図4】本発明を説明するA視図である。
【図5】本発明を説明するB視図である。
【図6】本発明を説明するC視図である。
【図7】本発明を他のバルブに適用した一実施例である。
【図8】本発明を他のメカニズムに適用した一実施例である。
【実施例1】
【0013】
図2は、本発明を大口径バタフライバルブに適用した時の1実施例を示す断面図で、図3は図2のD−D断面、図4、図5、図6は一方向クラッチの機能を説明するA,B,C視図である。
6は入力軸、7は出力軸である。歯車5の一方向クラッチは軸6がd方向に回ると、歯車5がh方向、即ちハンドルと同方向にまわり、これと係合する歯車15がj方向に回る。この結果、弁7aがe方向に回る。一方、歯車10は一方向クラッチ12で空転して、動力は軸7には伝わらない。また、ハンドル2をc方向に回すと歯車5は空転し、歯車10が一方向クラッチ12の働きで、i方向に回り、歯車13を介して歯車16をi方向に回し、弁7aをe方向に回す。この結果、ハンドル5を正転、逆転しても、軸7は同一e方向に回るため、ハンドル2の回転方向に関係なくバルブはe方向にまわり、バルブは閉じる。一方、一方向クラッチ17のロック方向を逆に取り付けると、ハンドル5の正逆回転は、同様にして、弁eをf方向に回す。
【0014】
以上の結果、一方向クラッチ11、12、17の取り付け位置を図2の如くすれば、ハンドルの回転方向とは関係なく、バルブeを正転にも、逆転にもすることができる。
【実施例2】
【0015】
図7は、通常の小型ポペットタイプのバルブに本機能を付加した実施例である。ここで、実施例2と異なる点は、ポペット28の上下動をカバー32bに設けた雌ねじと、軸28dに設けた雄ねじ28cで行わせる点だけである。なお、バタフライ弁の7cおよび、ポペット弁の28dは、緊急開閉後、バルブを当初の位置に復帰させる軸回し部である。その他、バルブの軸、一方向クラッチの種類と配置位置は図2と全く同一であり、機能も同一である。
【実施例3】
【0016】
図8は、他の産業機械に適用した一実施例である。
先ず構造を説明する。40は機械加工後洗浄乾燥する部品である。ここでは洗浄工程について説明する。部品には突起40aが有り、回転停止時は常時x軸上にある必要がある。また、乾燥は部品回転方向に逆らうように部品の接戦方向にエアーを吹き付けると付着液体が除去される。
この時、数十回の回転数を常時一定に保つためには、ストロークが機械的に一定となるエアーシリンダーか油圧シリンダーを使用すると回転数は機械的に一定になる。即ち、シリンダー42の位置は固定、ピストン42bの動きはピストンロッド42aを左右動e、fし、かつ、ラック44は金具43で接続され、ラック44の動きはピニオン45を回すが、ラック44の往復動でピニオン45は正逆転する。ここで、機構46は入力46aの正逆回転を出力軸46bに常時一方向回転として出力する。41は部品受け台、47はエアー分配器、48は噴出エアーである。
【0017】
上記から、正逆回転を常時一方向回転にする機構は、他の産業機械にも応用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1、4:バルブ 2:ハンドル 3:ストッパー
6:入力軸 7:出力軸 7a:弁
5、10、13、15、16:歯車 11、12、17:一方向クラッチ
40:部品 46:入力2方向出力1方向機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と駆動軸を並行に設け、少なくとも入力軸に2つの歯車を設け、出力軸に一体化した2個の歯車を設けて、動力伝達系統を2系列とし、1系列の歯車間に中間歯車を設け、入出力軸の歯車と入出力軸間に一方向クラッチを入れることを特徴とする、ハンドル操作ミスでも所期の開閉をする非常時対応ヒューマンエラー除去緊急バルブおよびそのエラー除去機構。
【請求項2】
入力軸上の2個の1方向クラッチは、クラッチのロック方向が互いに逆となるように設け、出力軸上のクラッチを弁の開、または閉方向にロックするように設けることを特徴とする、ハンドル操作ミスでも所期の開閉をする非常時対応ヒューマンエラー除去緊急バルブおよびそのエラー除去機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−149748(P2012−149748A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10681(P2011−10681)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(500206722)
【出願人】(511019524)
【Fターム(参考)】