説明

ハードコートフィルム及びそれを用いた偏光板と液晶表示装置

【課題】基材フィルムとの密着性が良好であり、表面硬度を落とすことなく、耐湿熱性に優れ、各種耐久評価において色味の変化が少ない、高透明なハードコートフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】透明フィルム基材上にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、ハードコート層は、少なくとも(1)反応性シリカ微粒子、(2)分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート、及び(3)ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートを含有する樹脂組成物で形成されていること、並びに前記樹脂組成物の全固形分に対する前記ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートの比率が全固形物100質量%中1〜15質量%であることを特徴とする、ハードコートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なハードコートフィルム及びそれを用いた偏光板と液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の画像表示領域には、種々の光学フィルム、例えば、偏光板の偏光素子を保護するための透明保護フィルム等が配置されている。このような光学フィルムとしては、例えば、セルロースエステルフィルム等の透明性に優れた樹脂フィルムが用いられている。
【0003】
近年、タッチパネルなどに代表されるように、液晶表示装置の画像表示領域に直接触れることが多くなってきている。よって、前記樹脂フィルムには物理的な強度、耐摩擦性なども要求されるようになってきているが、セルロースエステルフィルムなどはハードコート性に乏しいことが知られている。そのため、光学フィルムとして用いられる透明樹脂フィルムにハードコート層を設けたハードコートフィルムが用いられている。
【0004】
このようなハードコートフィルムのハードコート層に用いられ得る樹脂として、シラン官能化コロイド状シリカと、脂肪族環状アクリレート、ウレタンジアクリレート、及びエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの硬化性モノマーと、硬化剤とを有する硬化性組成物が報告されており、エポキシ樹脂モノマーとして二酸化ジシクロペンタジエンなどが挙げられている(特許文献1、請求項20など)。
【0005】
一方で、フィルムの硬度や耐擦傷性の向上のために、ハードコートフィルムのハードコート層に無機微粒子としてシリカ粒子を入れることは、これまでにも報告されている(例えば、特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−543983号公報
【特許文献2】特開2000−112379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記技術は、エポキシ樹脂とジシクロペンタジエンを組み合わせたものであり、エポキシ樹脂を用いたハードコート層は、透明性を保持した系において硬度が出ない、樹脂に含まれるハロゲン元素により黄変や金属の腐食を引き起こすという問題があった。さらに、特許文献1に記載された発明は、耐湿熱性や耐久評価におけるフィルムの色味の変化を抑えることを目的・課題とした技術でもない。
【0008】
また、シリカ粒子を含有する樹脂は、樹脂を硬化させた後の耐湿熱試験で硬化収縮が進み、柔軟性が劣化したり、耐アルカリ性が劣化(シリカの溶解)を引き起こす場合がある。
【0009】
近年の液晶表示装置の高品質化を満たすために求められるのは、基材フィルムとの密着性が良好であり、表面硬度及び耐湿熱性に優れ、さらに各種耐久評価において色味の変化が少ない、高透明なハードコートフィルムであると考えられる。さらに、このようなフィルムは低コストで簡易に製造できるものでなければならない。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、前記要求を全て満たす高品質なハードコートフィルム及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を有するハードコートフィルムによって、前記課題が解決することを見出し、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることによって本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の一態様に係るハードコートフィルムは、透明フィルム基材上にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、ハードコート層は、少なくとも(1)反応性シリカ微粒子、(2)分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート、及び(3)ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートを含有する樹脂組成物で形成されていること、並びに前記樹脂組成物の全固形分に対する前記ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートの比率が全固形物100質量%中1〜15質量%であることを特徴とする。
【0013】
このような構成により、まず基材フィルムとハードコート層の密着性が良好となり、表面硬度及び耐湿熱性に優れ、各種耐久評価において色味の変化が少ない高透明なハードコートフィルムが得られる。
【0014】
また、前記ハードコートフィルムにおいて、前記樹脂組成物がさらに光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0015】
さらに、前記反応性シリカ微粒子が、表面に電離放射反応性官能基を有することが好ましい。これにより、多官能(メタ)アクリレートと反応性シリカ微粒子の架橋が生じる事でシリカ微粒子の脱落が防げることができ、耐擦り傷性の向上が図ることができる。
【0016】
また、前記ハードコートフィルムにおいて、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートが、分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。これにより、硬度を確保することができる。
【0017】
さらに、前記ハードコート層の膜厚が3.0μm〜15.0μmであることが、硬度確保やクラックの観点から好ましい。この範囲より高膜厚になるとクラックの発生や自重の増加による生産性の劣化が生じる為に好ましくない。
【0018】
前記ハードコートフィルムにおいて、ハードコート層が、前記反応性シリカ微粒子以外に無機微粒子又は有機微粒子の少なくとも一方を含有することが好ましい。この構成により、ハードコート層の滑り性や屈折率を調整し得る。
【0019】
さらに、前記ハードコート層上にハードコート層よりも低い屈折率を有する低屈折率層を積層させることが好ましい。これにより、外光の映り込みを防止して画面を見やすくしたり、コントラストを上げて表示画質を向上させたりすることが出来る。
【0020】
前記ハードコートフィルムにおいて、透明フィルム基材がポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂やセルロースエステル系樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂が耐擦傷性、透明性、及び耐熱性の点において好ましい。
【0021】
また、本発明の他の一態様に係る偏光板は、偏光素子と、前記偏光素子の表面上に配置された透明保護フィルムとを備える偏光板であって、前記透明保護フィルムが、前記ハードコートフィルムであることを特徴とするものである。このような構成によれば、偏光素子の透明保護フィルムとして、表面硬度及び耐湿熱性に優れ、各種耐久評価において色味の変化が少ない高透明なハードコートフィルムが適用されているので、例えば、液晶表示装置に適用した際に、液晶表示装置の高画質化・高耐久化を実現できる偏光板が得られる。
【0022】
また、本発明の他の一態様に係る液晶表示装置は、液晶セルと、前記液晶セルを挟むように配置された2枚の偏光板とを備える液晶表示装置であって、前記2枚の偏光板のうち少なくとも一方が、前記偏光板であることを特徴とするものである。このような構成によれば、表面硬度及び耐湿熱性に優れ、各種耐久評価において色味の変化が少ない高透明なハードコートフィルムを備えた偏光板を用いるので、液晶表示装置の高画質化・高耐久化を実現できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、基材フィルムとハードコート層との密着性が良好であり、表面硬度及び耐湿熱性に優れ、各種耐久評価において色味の変化が少ない高透明なハードコートフィルムを、低コストかつ簡易に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
本実施形態に係るハードコートフィルムは、透明フィルム基材上にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、ハードコート層は、少なくとも(1)反応性シリカ微粒子、(2)分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート、及び(3)ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートを含有する樹脂組成物で形成されていること、並びに前記樹脂組成物の全固形分に対する前記ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートの比率が全固形物100質量%中1〜15質量%であることを特徴とする、ハードコートフィルムである。
【0026】
〔透明フィルム基材〕
まず、本実施形態に係るハードコートフィルムの透明フィルム基材は、透明性樹脂によって形成されるものである。
【0027】
前記透明性樹脂は、溶液流延製膜法等によって基板状に成形したときに透明性を有する樹脂であればよく、特に制限されないが、溶液流延製膜法等による製造が容易であること、ハードコート層等の他の機能層との接着性に優れていること、光学的に等方性であること等の性質を有する透明性樹脂が好ましい。なお、ここで透明性とは、可視光の透過率が60%以上であることであり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
【0028】
前記透明性樹脂としては、具体的には、例えば、セルロースジアセテート樹脂、セルローストリアセテート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等のセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル系樹脂;ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、セロファン、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、シンジオタクティックポリスチレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等のビニル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルケトンイミド樹脂;ポリアミド系樹脂;フッ素系樹脂等を挙げることができる。
【0029】
これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂やセルロースエステル系樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂等が耐擦傷性、透明性、及び耐熱性の点において好ましく用いられる。
【0030】
さらにより高い透明性を得るためには、セルロースエステル系樹脂が好ましく、セルロースエステル系樹脂の中でも、セルロースアセテート樹脂、セルロースプロピオネート樹脂、セルロースブチレート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルローストリアセテート樹脂が好ましく、セルローストリアセテート樹脂が特に好ましい。また、前記透明性樹脂は、上記例示した透明性樹脂を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
次に、本発明の好ましい実施態様である、セルロースエステル系樹脂について説明する。
【0032】
(セルロースエステル系樹脂)
透明フィルム基材にセルロースエステル系樹脂を含有させる場合、セルロースエステル系樹脂の数平均分子量は、30000〜200000であることが、樹脂フィルムに成型した場合の機械的強度が強く、かつ、溶液流延製膜法において適度なドープ粘度となる点で好ましい。また、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が、1〜5の範囲内であることが好ましく、1.4〜3.0の範囲内であることがより好ましい。
【0033】
また、セルロースエステル系樹脂等の樹脂の平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーを用い測定できる。よって、これらを用いて数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出し、その比を計算することができる。
【0034】
セルロースエステル系樹脂は、炭素数が2〜4のアシル基を置換基として有しているものが好ましい。その置換度としては、例えば、アセチル基の置換度をX、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、XとYとの合計値が2.2以上2.95以下であって、Xが0より大きく2.95以下であることが好ましい。
【0035】
また、アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらのセルロースエステル系樹脂は、公知の方法で合成することができる。アシル基の置換度の測定方法は、ASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
【0036】
前記セルロースエステル系樹脂の原料であるセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。また、それらから得られたセルロースエステル系樹脂はそれぞれ任意の割合で混合使用することができるが、綿花リンターを50質量%以上使用することが好ましい。これらのセルロースエステル系樹脂は、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることができる。
【0037】
(フィルム基材の製造など)
上述したような透明性樹脂を、それぞれの樹脂に合わせて選択した適切な有機溶媒に添加して、透明フィルム基材用の樹脂溶液(ドープ)を得る。さらに、本実施形態で使用される樹脂溶液は、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記透明性樹脂、及び前記溶媒以外の他の成分(添加剤)を含有していてもよい。前記添加剤としては、例えば、微粒子、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤、導電性物質、難燃剤、滑剤、及びマット剤等が挙げられる。これらその他の添加剤は、使用目的に応じて適宜選択され得る。
【0038】
このような樹脂溶液(ドープ)を用いて、例えば、溶融流延製膜法や溶液流延製膜法によって透明フィルム基材を得ることができる。
【0039】
本実施形態における透明フィルム基材としては市販のものを用いてもよく、例えば、セルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、及びKC12UR(以上、コニカミノルタオプト(株)製)、TD80U、TD80UF(富士フィルム(株)製)などを用いることができる。
【0040】
なお、透明フィルム基材の膜厚は、液晶表示装置の薄型化、樹脂フィルムの生産安定化の観点等の点から、30〜100μmであることが好ましい。ここで膜厚とは、平均膜厚のことであり、本実施形態においては、株式会社ミツトヨ製の接触式膜厚計により、樹脂フィルムの幅方向に20〜200箇所、膜厚を測定し、その測定値の平均値を膜厚として示す。
【0041】
また、透明フィルム基材の幅は生産性および平面性の点から1.4m〜4m程度であることが好ましい。
【0042】
〔樹脂組成物〕
次に、ハードコート層を形成する樹脂組成物について説明する。
【0043】
本実施形態において用いられるハードコート層用樹脂組成物は、必須成分として、(1)反応性シリカ微粒子、(2)分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート、及び(3)ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートを含有する樹脂組成物で形成されていること、並びに前記樹脂組成物の全固形分に対する前記ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートの比率が全固形物100質量%中1〜15質量%であることを特徴とする、樹脂組成物である。
【0044】
以下、前記樹脂組成物の各成分について詳述する。
【0045】
(1)反応性シリカ微粒子
本実施形態において用いられる反応性シリカ微粒子としては、少なくとも表面の一部に有機成分が被覆され、当該有機成分により導入された反応性官能基を表面に有するシリカ微粒子が挙げられる。
【0046】
シリカ微粒子としては、公知のものを使用することができる。また、その形状は、球状でも不定形のものでもよく、通常のコロイダルシリカに限らず中空粒子、多孔質粒子、コア/シェル型粒子等であっても構わないが、平均一次粒径10〜50nm程度のコロイダルシリカが好ましい。
【0047】
シリカ微粒子の分散媒は、水あるいは有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエ−テル類等の有機溶剤を挙げることができ、これらの中で、アルコール類及びケトン類が好ましい。これら有機溶剤は、単独又は2種以上混合して分散媒として使用することもできる。
【0048】
市販品としては、例えば、コロイダルシリカとして、日産化学工業(株)製IPA−ST、IPA−ST−L、IPA−ST−ZL、MEK−ST−L、MEK−ST−MS等を挙げることができる。
【0049】
反応性シリカ微粒子は、上述したようなコロイダルシリカを、反応性官能基を有する有機化合物で表面処理することによって得られる。すなわち、ここでは、シリカ微粒子の表面を被覆する有機成分とは、表面処理に用いる、反応性官能基を有する有機化合物由来の有機成分を指す。
【0050】
シリカ微粒子の表面を有機成分で被覆するために表面処理に用いる有機化合物としては、反応性官能基、好ましくは電離放射線反応性官能基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基など)を有する有機化合物であることが好ましい。そのような有機化合物の具体例としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクロロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のカップリング剤;アクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N,N−ジベンジルアミノ)メチル、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル等の不飽和置換酸の置換アミノアルコールエステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド;エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート等の化合物;ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能性化合物;及び/又は、分枝中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物(例えばトリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコール等)が挙げられる。
【0051】
このように電離放射線反応性官能基を有するシリカを使用する事で、バインダー樹脂とシリカ粒子の架橋、シリカ粒子同士の架橋が生じ、膜硬度の向上、粒子の脱落を防ぐ、という効果が得られる。また、修飾されたシリカを用いる事で耐薬品性の向上も図ることができる。
【0052】
前記有機成分は、シリカ微粒子の凝集を抑制し、且つシリカ微粒子表面へ反応性官能基を多く導入してハードコート層の硬度を向上させる点から、粒子表面のほぼ全体を被覆していることが好ましい。このような観点から、シリカ微粒子を被覆している前記有機成分は、反応性シリカ微粒子中に1.00×10−3g/m以上含まれることが好ましい。
【0053】
当該被覆している有機成分の割合は、通常、乾燥粉体を空気中で完全に燃焼させた場合の重量減少の恒量値として、例えば、空気中で室温から通常800℃までの熱重量分析により求めることができる。なお、単位面積当りの有機化合物量は、以下の方法により求めることができる。まず、示差熱重量分析(DTG)により、有機成分重量を無機成分重量で割った値(有機成分重量/無機成分重量)を測定する。次に、無機成分重量と用いたシリカ微粒子の比重から無機成分全体の体積を計算する。また、被覆前のシリカ微粒子が真球状であると仮定し、被覆前のシリカ微粒子の平均粒径から被覆前のシリカ微粒子1個当りの体積、及び表面積を計算する。次に、無機成分全体の体積を被覆前のシリカ微粒子1個当たりの体積で割ることにより、反応性シリカ微粒子の個数を求める。更に、有機成分重量を反応性シリカ微粒子の個数で割ることにより、反応性シリカ微粒子1個当たりの有機成分量を求める。最後に、反応性シリカ微粒子1個当りの有機成分重量を、被覆前のシリカ微粒子1個当りの表面積で割ることにより、単位面積当たりの有機成分量を求めることができる。
【0054】
少なくとも表面の一部に有機成分が被覆され、当該有機成分により導入された電離放射線反応性官能基を表面に有する反応性シリカ微粒子を調製する方法としては、当該シリカ微粒子に導入したい電離放射線反応性官能基の種類などによって、従来公知の方法を適宜用いることができる。具体的には、例えば、後述の実施例に記載した方法などによって反応性シリカ微粒子を調製することが可能である。
【0055】
また、反応性シリカ微粒子製造時の原料中のシリカ微粒子の配合割合は、シリカ微粒子を被覆している前記有機成分が反応性シリカ微粒子中に1.00×10−3g/m以上含まれるような量であれば特に限定はされないが、好ましくは2.00×10−3g/m以上であり、さらに好ましくは3.50×10−3g/mである。
【0056】
さらに、前記樹脂組成物の全固形分に対する前記反応性シリカ微粒子の比率は全固形物100質量%中20〜60質量%であり、より好ましくは、30〜50質量%である。このような範囲で用いる事で、前記樹脂組成物中で反応性シリカ微粒子が安定に存在する。
【0057】
(2)分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート
本発明の樹脂組成物に用いられる多官能(メタ)アクリレートは、電離放射線硬化型樹脂として知られる樹脂である。
【0058】
電離放射線硬化型樹脂とは、紫外線や電子線のような活性線(以下、活性エネルギー線ともいう)照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。電離放射線硬化型樹脂に、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて電離放射線硬化樹脂層が形成される。電離放射線硬化型樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が機械的膜強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましい。
【0059】
具体例としては、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートであれば特に限定なく用いることができるが、例えば、多官能(メタ)アクリレートとして、多官能(メタ)アクリレートモノマー又は(メタ)アクリレートオリゴマーを主成分とするもの等が挙げられる。なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。
【0060】
より具体的な例示としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;ジペンタエリスリトールペンタアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;活性水素を有する多官能(メタ)アクリレートとポリイソシアネートを反応させることによって得られる、分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート;変性体としてはEO(エチレンオキサイド)変性体、PO(プロピレンオキサイド)変性体、CL(カプロラクトン)変性体、及びイソシアヌル酸変性体等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは単独で用いてもまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
前記樹脂組成物中における、前記電離放射線硬化型樹脂の配合量は、組成物全体の固形物を100質量部とすると、通常、30〜95質量部、好ましくは、40〜80質量部である。電離放射線硬化型樹脂の配合量が少ないと、硬度の劣化が生じる為に好ましくない。
【0062】
(3)ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレート
本実施形態に係る樹脂組成物はさらに、ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートを含有する。
【0063】
本実施形態で使用できる前記(メタ)アクリレートとしては、ジシクロペンタジエン骨格を有するものであれば特に限定はされないが、例えば、ジシクロペンタニルジアクリレートや、下記化学式(1)で示されるジシクロペンテニルアクリレ−ト:
【0064】
【化1】

【0065】
又は、下記化学式(2)で示されるジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト:
【0066】
【化2】

【0067】
等が好ましい具体例として挙げられる。
【0068】
ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、市販のものを使用してもよく、例えば、日立化成工業(株)製のFA−512AS、FA−511AS、ジシクロペンタニルジアクリレート(日本化薬社製、「KAYARAD R−684」などを用いることができる。
【0069】
前記樹脂組成物の全固形分に対する前記ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートの比率が全固形物100質量%中1〜15質量%である。前記比率が1質量%未満の場合は、密着性が下がり、色味変化が起こる可能性がある。また、前記比率が15質量%を超える場合、硬度が下がるおそれがある。
【0070】
上述したように、反応性シリカ微粒子と、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートと、ジシクロペンタジエン骨格を有する単官能樹脂とを用いることによって、高Tg化、耐吸湿性、密着性、耐候性などが向上する。すなわち、基材フィルムとの密着性が良好であり、耐湿熱性に優れ、各種耐久評価において色味変化の少ない、高透明なハードコートフィルムを得ることができる。また、上記構成により低粘度化にも寄与できるため、生産性の向上を図ることもできる。
【0071】
(4)光重合開始剤
本実施形態に係る樹脂組成物は前記成分に加えて、さらに光重合開始剤を含むことが好ましい。使用できる光重合開始剤としては、特に限定はされないが、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物類、オキシムエステル類などが用いられる。光重合開始剤の具体例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、2−メチル−4’−メチルチオ−2−モリホリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モリホリノフェニル)−ブタノン1、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、α−ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノンなどのアセトフェノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルレタールなどのベンゾイン類、ベンゾフェノン、2,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(0−アセチルオキシム)等のオキシムエステル類などがある。これらの光重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせたり、共融混合物であってもよい。特に、コスト、高反応性などの観点からから、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのアルキルフェノン類、アルキルフェノン、ケタールなどを用いることが好ましい。
【0072】
本実施形態における光重合開始剤としては、市販のものを用いてもよく、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュアー184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社)、2−ヒドロキシ―2−メチル―1−フェニル―プロパン−1−オン(イルガキュアー1173、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュアー651、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社)などを用いることができる。
【0073】
前記樹脂組成物中における、前記光重合開始剤の配合量は、組成物全体を100質量部とすると、通常、1〜10質量部、好ましくは3〜7質量部である。光重合開始剤の配合量が少ないと、重合開始効果が得られず、また配合量が多くなりすぎると、変色や耐久性の低下などが起こるため好ましくない。
【0074】
(5)その他の成分
本実施形態における前記樹脂組成物には、本発明の効果に影響しない範囲で、前記必須成分以外の成分が含まれていてもよい。例えば、ハードコートフィルムの滑り性や屈折率を調節するために、無機化合物又は有機化合物の粒子等を含有していてもよい。好ましくは、本実施形態における前記樹脂組成物は、前記反応性シリカ微粒子以外に無機微粒子又は有機微粒子の少なくとも一方を含有する。
【0075】
無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。特に、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等が好ましく用いられる。
【0076】
また、有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、またはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を添加することができる。好ましい微粒子は、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)、フッ素含有アクリル樹脂微粒子が挙げられる。フッ素含有アクリル樹脂微粒子としては、例えば日本ペイント製:FS−701等の市販品が挙げられる。また、アクリル粒子として、例えば日本ペイント製:S−4000、アクリル−スチレン粒子として、例えば日本ペイント製:S−1200、MG−251等が挙げられる。 これらの微粒子粉末の平均粒径は特に制限されないが、0.5μm以下が好ましく、更に好ましくは0.1μm以下であって、特に好ましくは0.001〜0.1μmである。なお、微粒子の平均粒径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0077】
また、粒径の異なる2種以上の微粒子を含有しても良い。前記樹脂組成物と微粒子の割合は、組成物全体を100質量部として、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。
【0078】
前記無機化合物又は有機化合物の粒子の他にも、本実施形態に係る樹脂組成物は、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、抗菌剤、難燃剤、防汚剤、発泡剤などをさらに含有していてもよい。
【0079】
(6)有機溶剤
上述したような樹脂組成物の各成分を溶解・分散させる溶媒としては、本発明の効果に影響を与えない限り特に限定はされないが、例えば、炭化水素(トルエン、キシレン)、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)等の有機溶剤が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。前記各成分をこのような有機溶剤に加えて、混合・撹拌することによって、本実施形態に係る樹脂組成物を得ることができる。
【0080】
なかでも好ましく用いられる有機溶剤は、メチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、イソプロピルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、シクロヘキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどである。
【0081】
また、このような有機溶剤の配合量としては、組成物全体を100質量部とすると、通常、10〜80質量部、好ましくは20〜60質量部であり、前記樹脂組成物が固形分20〜90質量%程度となるように有機溶剤の配合量を調整することが好ましい。
【0082】
(ハードコート層の製造方法)
ハードコート層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法を用いて、前記基材フィルム上に前記樹脂組成物を塗布し、塗布後、加熱乾燥し、UV硬化処理することで形成できる。塗布量はウェット膜厚として5〜50μmが適当で、好ましくは、5〜30μmである。また、ドライ膜厚としては平均膜厚3〜15μm、好ましくは4〜12μm、特に好ましくは5〜10μmである。ドライ膜厚として平均膜厚3〜15μmの範囲であれば、硬度確保やクラックの観点から好ましい。
【0083】
UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm、好ましくは5〜250mJ/cmである。
【0084】
なお、ハードコート層は前記基材フィルムの片面のみに設けてもよいし、両面に設けてもよい。
【0085】
(低屈折率層)
さらに、本実施形態に係るハードコートフィルムは、透明フィルム基材のハードコート層の上に、ハードコート層よりも低屈折率を有する低屈折率層を設けていることが好ましい。
【0086】
本実施形態において、低屈折率層は、ハードコート層の屈折率より低い層を低屈折率層という。具体的な屈折率としては、23℃、波長550nmで1.30〜1.45の範囲のものが好ましい。また、低屈折率層の膜厚は、光学干渉層としての特性から、5nm〜0.5μmが好ましく、10nm〜0.3μmがより好ましく、30nm〜0.2μmであることがさらに好ましい。低屈折率層には中空シリカ粒子を含有させることが、耐久試験後の密着、低屈折率化といった光学干渉層としての特性からも好ましい。中空シリカ粒子(以下、中空粒子とも言う)は、(1)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、または(2)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体または多孔質物質で充填された空洞粒子である。
【0087】
低屈折率層を形成する塗布組成物には、有機溶媒を含有することが好ましい。具体的な有機溶媒の例としては、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及びブタノールが特に好ましい。
【0088】
低屈折率層を形成する塗布組成物中の固形分濃度は、1〜4重量%であることが好ましく、固形分濃度を4重量%以下とすることによって、塗布ムラが生じにくくなり、1重量%以上とすることによって、乾燥負荷が軽減される。
【0089】
低屈折率層を形成する塗布組成物には、他のシリカ粒子を含有することもできる。ここで、他のシリカ粒子としては、特に限定されるものではないが、コロイダルシリカ等が挙げられる。コロイダルシリカの具体例としては、二酸化ケイ素をコロイド状に水または有機溶媒に分散させたものであり、特に限定はされないが球状、針状または数珠状である。
【0090】
コロイダルシリカの平均粒径は30〜300nmの範囲が好ましく、変動係数が1〜40%の単分散であることが好ましい。平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。
【0091】
コロイダルシリカは、市販されており、例えば日産化学工業社のスノーテックスシリーズ、触媒化成工業社のカタロイド−Sシリーズ、バイエル社のレバシルシリーズ等が挙げられる。また、アルミナゾルや水酸化アルミニウムでカチオン変性したコロイダルシリカやシリカの一次粒子を2価以上の金属イオンで粒子間を結合し、数珠状に連結した数珠状コロイダルシリカも好ましく用いられる。数珠状コロイダルシリカは日産化学工業社のスノーテックス−AKシリーズ、スノーテックス−PSシリーズ、スノーテックス−UPシリーズ等があり、具体的にはIPS−ST−L(イソプロパノール分散、粒子径40〜50nm、シリカ濃度30%)、MEK−ST−MS(メチルエチルケトン分散、粒子径17〜23nm、シリカ濃度35%)等が挙げられる。低屈折率層形成塗布組成物にコロイダルシリカを含有させる場合、低屈折率層中の固形分に対し10〜60重量%、さらには30〜60重量%であることが膜強度の点から、好ましい。
【0092】
また、その他の無機微粒子を含有してもよく、例えば、MgF2が挙げられ、具体的には日産化学工業社製のMFS−10P(イソプロピルアルコール分散フッ化マグネシウムゾル、粒子系100nm)、NF−10P等が挙げられる。
【0093】
また、低屈折率層形成塗布組成物には、低屈折率層中の固形分に対し、5〜80重量%のバインダーを含むことが好ましい。バインダーは、中空シリカ粒子等の粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。バインダーの使用量は、空隙を充填することなく、低屈折率層の強度を維持できるように調整する。
【0094】
バインダーとしては、アルコキシ金属化合物、及びその加水分解物あるいはその重縮合物、また、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂、フルオロアクリレート、含フッ素ポリマー等を挙げられる。フッ素ポリマーとしては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類〔例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等〕、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。これらの中で好ましくは、パーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0095】
(偏光板保護フィルム)
本実施形態に係るハードコートフィルムを偏光板保護フィルムとした場合、該保護フィルムの厚さは10〜500μmが好ましい。特に20μm以上、更に35μm以上が好ましい。また、150μm以下、更に120μm以下が好ましい。特に好ましくは25以上〜90μmが好ましい。上記領域よりもハードコートフィルムが厚いと偏光板加工後の偏光板が厚くなり過ぎ、ノート型パソコンやモバイル型電子機器に用いる液晶表示においては、特に薄型軽量の目的には適さない。一方、上記領域よりも薄いと、フィルムの透湿性が高くなり偏光子に対して湿度から保護する能力が低下してしまうために好ましくない。
【0096】
(偏光板)
本実施形態に係るハードコートフィルムを用いた偏光板について述べる。偏光板は一般的な方法で作製することができる。本実施形態に係るハードコートフィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理したハードコートフィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面に該ハードコートフィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。本実施形態に係るハードコートフィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは面内リターデーションRoが590nmで、20〜70nm、Rtが70〜400nmの位相差を有する光学補償フィルム(位相差フィルム)を用いることが好ましい。これらは例えば、特開2002−71957号公報、特開2003−170492号公報に記載の方法で作製することができる。または、更にディスコチック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。例えば、特開2003−98348号公報に記載の方法で光学異方性層を形成することができる。或いは、特開2003−12859号公報に記載のリターデーションRoが590nmで0〜5nm、Rtが−20〜+20nmの無配向フィルムも好ましく用いられる。
【0097】
本実施形態に係るハードコートフィルムと組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができる。
【0098】
裏面側に用いられる偏光板保護フィルムとしては、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2MW、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC4UEW、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC4FR−2、KC8UE、KC4UE(コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
【0099】
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるがこれのみに限定されるものではない。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmの偏光膜が好ましく用いられる。該偏光膜の面上に、本実施形態に係るハードコートフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
【0100】
(液晶表示装置)
本実施形態に係るハードコートフィルムを用いて作製した偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができる。
【0101】
本実施形態に係るハードコートフィルムは前記偏光板に組み込まれ、反射型、透過型、半透過型液晶表示装置またはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型、OCB型等の各種駆動方式の液晶表示装置で好ましく用いられる。また、本実施形態に係るハードコートフィルムは、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種液晶表示装置にも好ましく用いられる。
【実施例】
【0102】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0103】
なお、シリカ微粒子(1)として、日産化学工業(株)製、IPA−ST、平均粒径44nm、コロイダルシリカ、固形分30%液を用いた。また、シリカ微粒子(2)として、日産化学工業(株)製、IPA−ST(L)、平均粒径12nm、コロイダルシリカ、固形分30%液を用いた。
【0104】
[反応性シリカ微粒子Aの調整]
シリカ微粒子(1)を、ロータリーエバポレーターを用いてイソプロパノール(IPA)からメチルイソブチルケトン(以下、MIBKと称す)に溶剤置換を行い、シリカ微粒子30重量%のMIBK分散液を得た。このMIBK分散液100重量部に3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランを5重量部添加し、50℃で1時間加熱処理することにより、表面処理された平均粒径44nmの反応性シリカ微粒子Aの固形分30重量%MIBK分散液を得た。
【0105】
[反応性シリカ微粒子Bの調整]
シリカ微粒子(1)の代わりに上記シリカ微粒子(2)を用いた以外は、反応性シリカ微粒子Aの調整と同様にして、表面処理された平均粒径12nmの反応性シリカ微粒子Bの固形分30重量%MIBK分散液を得た。
【0106】
[シリカ微粒子C]
反応性官能基を持たないシリカ微粒子として、前記シリカ微粒子(1)をそのまま用いたものをシリカ微粒子Cとした。
【0107】
[ハードコートフィルムの製造]
〔実施例1〕
基材として、80μmトリアセチルセルロースフィルムを用いた。塗液は、反応性シリカA 110質量部(全固形分100質量部に対して、33質量部)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)57質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製:FA−512AS)6質量部、イルガキュアー184(BASFジャパン(株)製)4質量部、MIBK 23質量部 を加えて50%溶液となるようにして攪拌した。混合溶液をグラビアコーティング法により乾燥後のDRY膜厚10μmになるように塗布、乾燥させて、高圧水銀灯により200mJ/cmの紫外線を照射させてハードコートフィルムとした。
【0108】
〔実施例2〕
基材として、80μmトリアセチルセルロースフィルムを用いた。塗液は、反応性シリカB 66.7質量部(全固形分100質量部に対して、20質量部)、ウレタンアクリレート(共栄社化学(株):UA−306H)73質量部、ジシクロペンテニルアクリレート(日立化成工業(株)製:FA−511AS)2質量部、イルガキュアー184(BASFジャパン(株)製)5質量部、MIBK 53.3質量部 を加えて50%溶液となるようにして攪拌した。混合溶液をグラビアコーティング法により乾燥後のDRY膜厚10μmになるように塗布、乾燥させて、高圧水銀灯により200mJ/cmの紫外線を照射させてハードコートフィルムとした。
【0109】
〔実施例3〕
基材として、80μmトリアセチルセルロースフィルムを用いた。塗液は、反応性シリカA 20質量部(全固形分100質量部に対して、6質量部)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 81質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製:FA−512AS)8質量部、イルガキュアー184(BASFジャパン(株)製)5質量部、MIBK 86質量部 を加えて50%溶液となるようにして攪拌した。混合溶液をグラビアコーティング法により乾燥後のDRY膜厚10μmになるように塗布、乾燥させて、高圧水銀灯により200mJ/cmの紫外線を照射させてハードコートフィルムとした。
【0110】
〔実施例4〕
基材として、80μmトリアセチルセルロースフィルムを用いた。塗液は、反応性シリカA 50質量部(全固形分100質量部に対して、15質量部)、ウレタンアクリレート(共栄社化学(株):UA−306H) 75質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製:FA−512AS)4質量部、イルガキュアー184(BASFジャパン(株)製)6質量部、MIBK 65質量部 を加えて50%溶液となるようにして攪拌した。混合溶液をグラビアコーティング法により乾燥後のDRY膜厚10μmになるように塗布、乾燥させて、高圧水銀灯により200mJ/cmの紫外線を照射させてハードコートフィルムとした。
【0111】
〔実施例5〕
基材として、80μmトリアセチルセルロースフィルムを用いた。塗液は、反応性シリカA 173.3質量部(全固形分100質量部に対して、52質量部)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 29質量部、ジシクロペンテニルアクリレート(日立化成工業(株)製:FA−511AS)14質量部、イルガキュアー184(BASFジャパン(株)製)5質量部、MIBK 28.5質量部 を加えて40%溶液となるようにして攪拌した。混合溶液をグラビアコーティング法により乾燥後のDRY膜厚10μmになるように塗布、乾燥させて、高圧水銀灯により200mJ/cmの紫外線を照射させてハードコートフィルムとした。
【0112】
〔実施例6〕
基材として、80μmトリアセチルセルロースフィルムを用いた。塗液は、反応性シリカA 80質量部(全固形分100質量部に対して、24質量部)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 62質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製:FA−512AS)11質量部、イルガキュアー184(BASFジャパン(株)製)3質量部、MIBK 44質量部 を加えて50%溶液となるようにして攪拌した。混合溶液をグラビアコーティング法により乾燥後のDRY膜厚10μmになるように塗布、乾燥させて、高圧水銀灯により200mJ/cmの紫外線を照射させてハードコートフィルムとした。
【0113】
〔比較例1〕
基材として、80μmトリアセチルセルロースフィルムを用いた。塗液は、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 83質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製:FA−512AS)9質量部、イルガキュアー184(BASFジャパン(株)製)8質量部、MIBK 100質量部 を加えて50%溶液となるようにして攪拌した。混合溶液をグラビアコーティング法により乾燥後のDRY膜厚10μmになるように塗布、乾燥させて、高圧水銀灯により200mJ/cmの紫外線を照射させてハードコートフィルムとした。
【0114】
〔比較例2〕
基材として、80μmトリアセチルセルロースフィルムを用いた。塗液は、シリカ微粒子C(日産化学工業(株)製:IPA−ST) 80質量部(全固形分100質量部に対して、24質量部)、ウレタンアクリレート(共栄社化学(株):UA−306H) 68質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製:FA−512AS)4質量部、イルガキュアー184(BASFジャパン(株)製)4質量部、MIBK 44質量部 を加えて50%溶液となるようにして攪拌した。混合溶液をグラビアコーティング法により乾燥後のDRY膜厚10μmになるように塗布、乾燥させて、高圧水銀灯により200mJ/cmの紫外線を照射させてハードコートフィルムとした。
【0115】
〔比較例3〕
基材として、80μmトリアセチルセルロースフィルムを用いた。塗液は、反応性シリカA 66.7質量部(全固形分100質量部に対して、20質量部)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトエステルHOA) 69質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製:FA−512AS)5質量部、イルガキュアー184(BASFジャパン(株)製)6質量部、MIBK 53.3質量部 を加えて50%溶液となるようにして攪拌した。混合溶液をグラビアコーティング法により乾燥後のDRY膜厚10μmになるように塗布、乾燥させて、高圧水銀灯により200mJ/cmの紫外線を照射させてハードコートフィルムとした。
【0116】
〔比較例4〕
基材として、80μmトリアセチルセルロースフィルムを用いた。塗液は、反応性シリカB 143.3質量部(全固形分100質量部に対して、43質量部)、ウレタンアクリレート(共栄社化学(株):UA−306H) 53.5質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製:FA−512AS)0.5質量部、イルガキュアー184(BASFジャパン(株)製)3質量部、MIBK 18.9質量部 を加えて45%溶液となるようにして攪拌した。混合溶液をグラビアコーティング法により乾燥後のDRY膜厚10μmになるように塗布、乾燥させて、高圧水銀灯により200mJ/cmの紫外線を照射させてハードコートフィルムとした。
【0117】
〔比較例5〕
基材として、80μmトリアセチルセルロースフィルムを用いた。塗液は、反応性シリカA 83.3質量部(全固形分100質量部に対して、25質量部)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 49質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製:FA−512AS)17質量部、イルガキュアー184(BASFジャパン(株)製)9質量部、MIBK 41.7質量部 を加えて50%溶液となるようにして攪拌した。混合溶液をグラビアコーティング法により乾燥後のDRY膜厚10μmになるように塗布、乾燥させて、高圧水銀灯により200mJ/cmの紫外線を照射させてハードコートフィルムとした。
【0118】
〔比較例6〕
基材として、80μmトリアセチルセルロースフィルムを用いた。塗液は、反応性シリカA 60質量部(全固形分100質量部に対して、18質量部)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 78質量部、イルガキュアー184(BASFジャパン(株)製)4質量部、MIBK 58質量部 を加えて50%溶液となるようにして攪拌した。混合溶液をグラビアコーティング法により乾燥後のDRY膜厚10μmになるように塗布、乾燥させて、高圧水銀灯により200mJ/cmの紫外線を照射させてハードコートフィルムとした。
【0119】
〔比較例7〕
基材として、80μmトリアセチルセルロースフィルムを用いた。塗液は、反応性シリカA 123.3質量部(有効成分 37質量部)、ウレタンアクリレート(共栄社化学(株):UA−306H)57質量部、イルガキュアー184(BASFジャパン(株)製)6質量部、MIBK 13.7質量部 を加えて50%溶液となるようにして攪拌した。混合溶液をグラビアコーティング法により乾燥後のDRY膜厚10μmになるように塗布、乾燥させて、高圧水銀灯により200mJ/cmの紫外線を照射させてハードコートフィルムとした。
【0120】
[評価]
つぎに、上記実施例1〜6、および比較例1〜7のハードコートフィルムの性能をテストするために、下記の方法により試験を行ない、得られた結果を下記の表1に示した。
(1)密着性
JIS D 0202−1988の規格に従い、実施した。碁盤目テープ剥離試験により、セロハンテープ(ニチバン株式会社製)を用いて、指の腹でフィルムに密着させた後、剥離した。判定は100マスのうち、剥離しないマス目の数で表わす。初期密着性はハードコートフィルム作製、24Hr後に測定した。耐光性試験は、JIS K 6783bに準拠してサンシャインウエザオメーターを用いて1000時間照射した。
○:100/100 剥がれ無し
×:99/100未満 剥がれ有り
(2)耐湿熱試験
温度80℃、相対湿度90%の環境下で500時間置いた後の全光線透過率の変化を測定する。全光線透過率は、D65光源を用いて、ヘイズメーター(商品名NDH2000、日本電色工業株式会社製)にて測定した。変化率は以下の式で計算し、以下の基準で評価した。
変化率(%)={[(試験前の全光線透過率)−(試験後の全光線透過率)]/(試験前の全光線透過率)}×100
○:変化率2.5%以下
×:変化率2.5%以上
(3)色味変化
JIS K 6783bに準拠してサンシャインウェザーメーターを用いて1000時間照射した耐候性試験(以下、屋外暴露促進試験と称することがある)後の色相変化を下記ΔE値で評価した。
【0121】
〔数1〕
ΔE=((L*b−L*2+(a*−a*2+(b*−b*a21/2
(式中、ΔEは色相変化、L*、a*、b*は屋外暴露促進試験実施前のそれぞれL*、a*値、b*値、L*、b*は屋外暴露試験実施語のそれぞれL*値、a*値、b*値である。)
評価基準は以下の通りである:
○:色相変化が1.0未満
×:色相変化が1.0以上
(4)ヘイズ測定
JIS K7165の規格に従って実施した。サンプルをD65光源を用いてヘイズメーター(商品名NDH2000、日本電色工業株式会社製)にて測定した。
【0122】
屋外暴露促進試験実施実施前及び実施後のサンプルについて、ヘイズメーターで測定を行い、試験前後の変化量をΔHzとした。評価は以下の基準で行った。
○:ヘイズ値変化が2%未満
×:ヘイズ値変化が2%以上
(5)鉛筆硬度測定
JIS K 5600の規格に従って実施した。鉛筆を45度の角度として、750gの荷重をかけて、各ハードコートフィルム試料表面の引っ掻き試験を行なった。5回のうち4回以上傷の付かなかった鉛筆の硬さ記号で、ランク付けを行なった。
【0123】
上記各種測定結果をまとめて表1に示す。
【0124】
【表1】

【0125】
[考察]
表1に示した測定結果から明らかなように、本発明のハードコートフィルムは、比較例に対し、基材フィルムとの密着性が良好であり、表面硬度を落とさずにカールが小さく、各種耐久評価において色味変化が少なく、高透明な光学積層体を提供する事ができる。
【0126】
一方、比較例からは、反応性シリカを添加しないと硬度が不足すること(比較例1);シリカに反応性官能基がないと密着性が劣り、硬度が低下すること(比較例2);分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートの代わりに低官能バインダーを用いた場合には密着性、耐湿熱性、透明度、硬度のいずれにおいても劣っており、さらに色味変化が起きたこと(比較例3);ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートの含有量が1%未満であると、密着性に劣り、さらに色味変化が起きたこと(比較例4);ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートの含有量が15質量%を超えると硬度が低下すること(比較例5);ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートを添加しないと、密着性、耐湿熱性、硬度のいずれにおいても劣っており、さらに色味変化が起きたこと(比較例6および7)がわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム基材上にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、
ハードコート層は、少なくとも(1)反応性シリカ微粒子、(2)分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート、及び(3)ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートを含有する樹脂組成物で形成されていること、並びに、
前記樹脂組成物の全固形分に対する前記ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートの比率が全固形物100質量%中1〜15質量%であることを特徴とする、ハードコートフィルム。
【請求項2】
さらに光重合開始剤を含有する、請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
反応性シリカ微粒子が表面に電離放射線反応性官能基を有する、請求項1又は2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートが、分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートである、請求項1〜3のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
ハードコート層の膜厚が3.0μm〜15.0μmである、請求項1〜4のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
ハードコート層が、前記反応性シリカ微粒子以外に無機微粒子又は有機微粒子の少なくとも一方を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項7】
前記ハードコート層上にハードコート層よりも低い屈折率を有する低屈折率層を積層させた、請求項1〜6のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項8】
透明フィルム基材が、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂やセルロースエステル系樹脂又はシクロオレフィンポリマー(COP)樹脂である、請求項1〜7のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のハードコートフィルムを少なくとも一方の面に用いることを特徴とする偏光板。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載のハードコートフィルム、または請求項9に記載の偏光板を用いることを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2012−128086(P2012−128086A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278192(P2010−278192)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】