説明

ハードコートフィルム

【課題】タッチパネル表面において入力ペン先端部の摺動に対する耐久性を付与したハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレートフィルム11上に、ハードコート層12を備えるハードコートフィルム1であって、前記ハードコートフィルム11のハードコート層12を外側にして円柱形状の棒に沿わせ180度曲げたときに前記ハードコート層12表面にクラックが入らない前記棒の最小半径r(μm)が式1を満たすことを特徴とするハードコートフィルム。式1:0.02<h/r<0.04(h:ハードコートフィルムの総厚(μm))

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ上に、表面保護を目的として設置される、透明基材上にハードコート層を設けたハードコートフィルムに関するものである。さらに詳しくは、タッチパネル上に設置され、ペン入力に対する耐久性に優れたハードコートフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチパネルは、片側表面に抵抗膜が形成された2つの基板を、各抵抗膜が対向するようにスペーサーを介して積層した抵抗膜式のものが広く知られており、ディスプレイ画面上に配置されて用いられている。このような構成のタッチパネルは、操作面側の基板上を指やペン等で押圧することにより、抵抗膜同士が接触して入力が行われるので、操作面上にハードコート層を形成して耐久性を付与することが一般に行われている。
【0003】
しかしながら、近年タッチパネルの普及により、性能や品質への要求がさらに厳しくなってきている。例えば、携帯電話機やゲーム機等におけるペン入力式のタッチパネルにおいては、従来から用いられているハードコート層を形成しても十分な耐久性が得られず、ペン先端部による摺動が繰り返し行われることでハードコート層にクラックや剥離、へこみ等が生じ、タッチパネル表面を保護できなくなる。この結果、視認性の低下などを招いてしまう。
【0004】
このような問題を回避するため、例えば特許文献1では、表面保護用の片面粘着フィルムを貼着することでタッチパネル表面を保護している。このフィルムは傷等を生じた場合には容易に剥離することができ新しいフィルムと交換することができる。しかし、コスト面等から考えてもハードコート層自体の耐久性向上が早急に必要である。
【0005】
従って、ペン入力方式のタッチパネル用ハードコートフィルムは、従来から用いられているハードコート層のもつ性能に加え、ペン先端部の摺動に対する耐久性(ペン耐久性)も同時に満たさなければならない。そこで、従来から用いられているハードコート層の有する硬度等の機能を維持しつつも、ペン耐久性を付与するために、柔軟性を併せ持ったハードコートフィルムの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−94798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記問題を解決し、タッチパネル表面において入力ペン先端部の摺動に対する耐久性を付与したハードコートフィルムを提供することである。また、該ハードコートフィルムを備えた透明導電性フィルムおよびこれを設置したタッチパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、ハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、前記ハードコートフィルムのハードコート層を外側にして円柱形状の棒に沿わせ180度曲げたときに前記ハードコート層表面にクラックが入らない前記棒の最小半径r(μm)が式1を満たすことを特徴とするハードコートフィルムである。
式1 0.02<h/r<0.04 (h:ハードコートフィルムの総厚(μm))
請求項2に記載の発明は、1分子内に3個以上のアクリロイル基を有し、かつアクリロイル当量が115以下である多官能(メタ)アクリレートXと、EO(エチレンオキサイド)あるいはPO(プロピレンオキサイド)付加型の多官能(メタ)アクリレートYとの重量比X/Yが20/80〜60/40の混合割合で含まれるハードコート層形成用組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布・硬化してなることを特徴とするハードコートフィルムである。
請求項3に記載の発明は、1分子内に3個以上のアクリロイル基を有し、かつアクリロイル当量が115以下である多官能(メタ)アクリレートXと、1分子内に3個以上の水酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレートZとの重量比X/Zが90/10〜50/50の混合割合で含まれるハードコート層形成用組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布・硬化してなることを特徴とするハードコートフィルムである。
請求項4に記載の発明は、前記ハードコート層を備える前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの反対面に、さらにハードコート層を形成した請求項1〜3のいずれかに記載のハードコートフィルムである。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のハードコートフィルムを備えた透明導電性フィルムである。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の透明導電性フィルムを設置したタッチパネルである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層の硬さと柔らかさのバランスをとることで、ペン耐久性に優れたハードコートフィルムを提供することができる。さらには、本発明のハードコートフィルムを備えた透明導電性フィルムをタッチパネル表面に備えることで、入力ペン先端部の摺動で生じるキズやへこみから表面を保護することができる。これにより、ペン耐久性が高く、視認性に優れたタッチパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明のハードコートフィルムの断面模式図である。
【図2】図2は最大半径rを測定するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者は、ハードコート層の硬さと柔らかさのバランスを調整することで、ハードコート層に優れたペン耐久性を付与できることを見出した。
以下本発明を詳細に説明する。なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表す。
【0012】
本発明のハードコートフィルムについて説明する。図1に本発明のハードコートフィルムの断面模式図を示した。図1のハードコートフィルム1は、ポリエチレンテレフタレートフィルム11上に、ハードコート層12を備えた構造である。
【0013】
また、本発明のハードコートフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、ハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、前記ハードコートフィルムのハードコート層を外側にして円柱形状の棒に沿わせ180度曲げたときに前記ハードコート層表面にクラックが入らない前記棒の最小半径r(μm)が式1を満たすことを特徴とする。
式1 0.02<h/r<0.04 (h:ハードコートフィルムの総厚(μm))
【0014】
さらに、本発明のハードコートフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にハードコート層を備えるハードコートフィルムの総厚hと円柱形状の棒の最大半径rが上記式1を満たすことにより、ペン耐久性に必要な硬さと柔軟性のバランスを調整することができる。h/rが0.02以下であると、フィルムの柔軟性が不十分になってしまう。一方、h/rが0.04以上であると、フィルムの柔軟性は十分あるものの硬さが不十分となってしまう。
【0015】
図2に最小半径rを測定するための説明図を示した。ハードコートフィルム1のハードコート層形成面が外側になるように、円柱形状の棒2に沿わせて180度曲げたときにハードコート層表面にクラックが入らない棒の最小半径をrとする。操作手順としては、ハードコートフィルム1をハードコート層12表面を外側にして半径rの円柱状の棒2に密着させた後、ハードコートフィルム1にクラックが生じているかいないかを目視観察する。クラックが生じていなければ、棒の半径を徐々に小さくし同様の測定をおこなっていき、ハードコート層12表面にクラックが生じる直前の棒2の半径を最小半径rとする。
【0016】
次に、ハードコート層形成用組成物に含まれる化合物X、Y、Zに関して説明する。
1分子内に3個以上のアクリロイル基を有し、かつアクリロイル当量が115以下の多官能(メタ)アクリレートXとしては、具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。 ここで、アクリロイル当量は、分子量をアクリロイル基の個数で除した値、即ち、アクリロイル当量=M/N(M:分子量、N:アクリロイル基の個数)で算出される値である。
【0017】
また、EO(エチレンオキサイド)あるいはPO(プロピレンオキサイド)付加型の多官能(メタ)アクリレートYとは、EOあるいはPO付加型の多価アルコールをアクリル酸でエステル化することにより得られる化合物であり、具体的には、EO(PO)変性グリセロールトリアクリレート、EO(PO)変性トリメチロールプロパンアクリレート、EO(PO)変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどが挙げられる。
【0018】
さらに、エポキシ(メタ)アクリレートZとは、種々のエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸またはカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートとの付加反応により得られる化合物であり、具体的には、DA−111、DA−141、DA−212、DA−251、DA-314(ナガセケムテックス社製)やエポキシエステルM−600A、40EM、70PA、200PA、80MFA(共栄社製)などが挙げられる。
【0019】
前記ハードコート層形成用組成物に含まれる、1分子内に3個以上のアクリロイル基を有し、かつアクリロイル当量が115以下である多官能(メタ)アクリレートXと、EO(エチレンオキサイド)あるいはPO(プロピレンオキサイド)付加型の多官能(メタ)アクリレートYとの重量比X/Yを60/40〜20/80の範囲とする。Yが80を超えると柔軟性は十分であるが、硬さが不十分となってしまう。逆にYが40未満であると柔軟性が不十分となってしまう。
【0020】
また、前記ハードコート層形成用組成物に含まれる、1分子内に3個以上のアクリロイル基を有し、かつアクリロイル当量が115以下である多官能(メタ)アクリレートXと、1分子内に3個以上の水酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレートZとの重量比X/Zが90/10〜50/50の範囲とする。Zが50を超えると柔軟性は十分であるが、硬さが不十分となってしまう。逆にZが10未満であると柔軟性が不十分となってしまう。
【0021】
次に本発明のハードコートフィルムの製造方法を示す。
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層形成用組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布後、必要に応じて乾燥し、その後硬化することでハードコート層を形成する。
【0022】
本発明に用いられるPETフィルムは、光学用途のものであれば特に限定されないが、タッチパネル用ハードコートフィルムとして用いる場合は、加工工程でのハンドリング性等を考慮すると75〜188μmのものが好ましい。具体的には、ルミラーU34(東レ社製)、A4300(東洋紡社製)、エンブレットSA、エンブレットTA(ユニチカ社製)などを使用することができる。
【0023】
本発明のハードコート層形成用組成物のPETフィルムへの塗布方法としては、ハードコート層形成用組成物の各成分を適宜選択し、任意の割合で混合して得た塗布液をバーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ロールコーター、ダイコーター、コンマーコーターなど公知の塗工手段を用いて塗布することができる。
【0024】
また、本発明のハードコート層形成組成物を塗布する際には、必要に応じて適当な溶剤で希釈して良い。しかし、その場合には、溶媒を除去するためにハードコート層形成組成物の塗布後には乾燥工程を設ける必要がある。乾燥手段としては加熱、送風、熱風等がある。また、自然乾燥により溶媒を除去することも可能である。
【0025】
塗工および乾燥工程後、ハードコート層形成用組成物を硬化させる方法として、活性線、特に紫外線を照射する方法が用いられる。この場合、前記ハードコート層形成用組成物に、光ラジカル重合開始剤を加えることで紫外線照射にて硬化させることができる。紫外線照射においては、400nm以下の波長を含む光であれば良く、具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、中圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ等を用いることができる。また、必要に応じて加熱工程を加えてもよい。
【0026】
光ラジカル重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生し、アクリレートモノマーおよびオリゴマーの重合反応を開始する化合物であれば良い。例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類。アセトフェノン、2、2、- ジメトキシ- 2- フェニルアセトフェノン、1- ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、などのアセトフェノン類。メチルアントラキノン、2- エチルアントラキノン、2- アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;チオキサントン、2、4- ジエチルチオキサントン、2、4- ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類。ベンゾフェノン、4、4- ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類及びアゾ化合物などがあげられる。これらは単独または2種以上の混合物として使用でき、さらにはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン;2- ジメチルアミノエチル安息香酸、4- ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体等の光開始助剤などと組み合わせて使用することができる。光ラジカル重合開始剤の使用量は、ハードコート層形成用組成物の固形分に対して、0.01〜10重量%が適当である。0.01重量%より少ない場合には電離放射線による硬化反応が十分に進行せず、10重量%を超えるとハードコート層下部まで十分に電離放射線が届かないためである。
【0027】
また、本発明で用いられるハードコート層形成用組成物には、製造時の熱重合や貯蔵中の暗反応を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルまたは2,5−t−ブチルハイドロキノンなどの熱重合防止剤を加えることが望ましい。熱重合防止剤の添加量は、ハードコート層形成用組成物の固形分に対し、0.005〜0.05重量%が好ましい。
【0028】
さらに、本発明のハードコート層形成用組成物には、必要に応じて、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料あるいは安定剤などを添加することができ、これらは活性線による反応を損なわない範囲内でハードコート層を構成する塗布層の組成物成分として使用され、用途に応じてハードコート層の特性を改良することが可能となる。
【0029】
また、上記記載の製造方法を用いて得たハードコートフィルムは、ハードコート層を備えるポリエチレンテレフタレートフィルムの反対面(ハードコート層を形成していない、もう一方のPETフィルム面上)に、さらにハードコート層を形成してもよい。この反対面に設けるハードコート層としては、請求項1〜3に記載のハードコート層であっても、別のハードコート層であってもよい。
【0030】
さらに、本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層上にインジウム・スズ酸化物からなる透明導電膜を成膜したタッチパネル用透明導電性フィルムとして使用でき、優れたペン耐久性を示す。
【実施例】
【0031】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0032】
ハードコートフィルムのペン耐久性試験および鉛筆硬度は、下記の方法に従って評価した。
ペン耐久性試験:ハードコート層表面上を先端部が0.08mmφのポリアセタール製のペンを使用し、荷重500g、ペン摺動速度100mm/秒で直線40mmを100000回往復後の摺動部におけるハードコート層の傷つきおよび剥れを目視により評価した。
鉛筆硬度試験:JIS−K5400に準じ評価を行った。
【0033】
実施例1
厚み125umのPETフィルムA4300(東洋紡社製)を用い、
多官能アクリレート:ライトアクリレートTMP−A(共栄社製) 30重量部
EO付加型多官能アクリレート:SR−454(サートマー社製) 70重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:オプツールDAC(ダイキン工業) 0.5重量部
溶剤:酢酸エチル 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚7μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの柔軟性およびペン耐久性評価結果を表1に示す。
【0034】
実施例2
厚み125umのPETフィルムA4300(東洋紡社製)を用い、
多官能アクリレート:ライトアクリレートTMP−A(共栄社製) 60重量部
エポキシアクリレート:DA−314(ナガセケムテックス社製) 40重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:オプツールDAC(ダイキン工業) 0.5重量部
溶剤:酢酸エチル 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法によりPETフィルム上に硬化膜厚7μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの柔軟性およびペン耐久性評価結果を表1に示す。
【0035】
比較例1
厚み125umのPETフィルムA4300(東洋紡社製)を用い、
多官能アクリレート:ライトアクリレートTMP−A(共栄社製) 100重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:オプツールDAC(ダイキン工業) 0.5重量部
溶剤:酢酸エチル 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法によりPETフィルム上に硬化膜厚7μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの柔軟性およびペン耐久性評価結果を表1に示す。
【0036】
比較例2
厚み125umのPETフィルムA4300(東洋紡社製)を用い、
多官能アクリレート:ライトアクリレートTMP−A(共栄社製) 80重量部
EO付加型多官能アクリレート:SR−454(サートマー社製) 20重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:オプツールDAC(ダイキン工業) 0.5重量部
溶剤:酢酸エチル 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法によりPETフィルム上に硬化膜厚7μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの柔軟性およびペン耐久性評価結果を表1に示す。
【0037】
比較例3
厚み125umのPETフィルムA4300(東洋紡社製)を用い、
多官能アクリレート:ライトアクリレートTMP−A(共栄社製) 30重量部
エポキシアクリレート:DA−314(ナガセケムテックス社製) 70重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:オプツールDAC(ダイキン工業) 0.5重量部
溶剤:酢酸エチル 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法によりPETフィルム上に硬化膜厚7μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの柔軟性およびペン耐久性評価結果を表1に示す。
【0038】
以上の実施例1および2、比較例1〜3の評価結果を以下の表1にまとめて示す。
【0039】
[表1]

【0040】
実施例1および2で得られたハードコートフィルムのh/rは、それぞれ0.0264、0.0225となり、式1を満たすハードコートフィルムとなった。また、ペン耐久性験後のハードコート層表面を目視評価したところ、両者とも傷や剥がれのない良好な結果であったため、ペン耐久性に優れたハードコートフィルムを作製することができた。
【0041】
比較例1から3で得られたハードコートフィルムのh/rは、それぞれ0.015、0.044、0.132であり、式1を満たしていなかった。比較例1では、鉛筆硬度が実施例と比べて高く、柔軟性の低いフィルムとなった。逆に比較例2および3では、鉛筆硬度が実施例と比較して低く、柔軟性は十分あるものの硬さが不十分なフィルムとなった。
【0042】
前記実施例および比較例の結果より、本発明の実施例は、比較例と比べ硬さと柔らかさをバランスよく両立していることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0043】
1 ハードコートフィルム
2 円柱形状の棒
11 ポリエチレンテレフタレートフィルム
12 ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、ハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、前記ハードコートフィルムのハードコート層を外側にして円柱形状の棒に沿わせ180度曲げたときに前記ハードコート層表面にクラックが入らない前記棒の最小半径r(μm)が式1を満たすことを特徴とするハードコートフィルム。
式1 0.02<h/r<0.04 (h:ハードコートフィルムの総厚(μm))
【請求項2】
1分子内に3個以上のアクリロイル基を有し、かつアクリロイル当量が115以下である多官能(メタ)アクリレートXと、EO(エチレンオキサイド)あるいはPO(プロピレンオキサイド)付加型の多官能(メタ)アクリレートYとの重量比X/Yが20/80〜60/40の混合割合で含まれるハードコート層形成用組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布・硬化してなることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項3】
1分子内に3個以上のアクリロイル基を有し、かつアクリロイル当量が115以下である多官能(メタ)アクリレートXと、1分子内に3個以上の水酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレートZとの重量比X/Zが90/10〜50/50の混合割合で含まれるハードコート層形成用組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布・硬化してなることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層を備える前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの反対面に、さらにハードコート層を形成した請求項1〜3のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のハードコートフィルムを備えた透明導電性フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の透明導電性フィルムを設置したタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−173234(P2010−173234A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19952(P2009−19952)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】