説明

ハードコート層形成用組成物及びハードコートフィルム

【課題】タッチパネル表面において入力ペン先端部の摺動に対する耐久性を付与したハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】重合性基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートモノマーあるいはオリゴマーから選ばれる少なくとも1種(A)と、デンドリック高分子(B)と、光ラジカル重合開始剤(C)とを含むことを特徴とするハードコート層形成用組成物を、基材1上に塗布、硬化させ、ハードコート層2を形成し、ハードコートフィルムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート層形成用組成物及びハードコートフィルムに関するものである。本発明のハードコート層形成用組成物を用いて形成されたハードコートフィルムは、例えばディスプレイ上の表面保護用フィルムに有用である。とくに、タッチパネル上に設置され、ペン入力に対する耐久性に優れたハードコートフィルムとして有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチパネルは、片側表面に抵抗膜が形成された2つの基板を、各抵抗膜が対向するようにスペーサーを介して積層した抵抗膜式のものが広く知られており、ディスプレイ画面上に配置されて使用される。このような構成のタッチパネルは、操作面側の基板上を指やペン等で押圧することにより、抵抗膜同士が接触して入力が行われるので、操作面上にハードコート層を形成して耐久性を付与することが一般に行われている。
【0003】
しかしながら、近年タッチパネルの普及により、性能や品質への要求がさらに厳しくなってきている。例えば、携帯電話機やゲーム機等におけるペン入力式のタッチパネルにおいては、従来から用いられているハードコート層を形成しても十分な耐久性が得られず、ペン先端部による摺動が繰り返し行われることでハードコート層にクラックや剥離が生じ、タッチパネル表面を保護できなくなるといった問題が生じている。
【0004】
このような問題を回避するため、例えば特許文献1では、表面保護用の片面粘着フィルムを貼着することでタッチパネル表面を保護している。このフィルムは傷等を生じた場合には容易に剥離することができ新しいフィルムと交換することができる。しかし、コスト面等から考えてもハードコート層自体の耐久性向上が早急に必要である。
【0005】
従って、ペン入力方式のタッチパネル用ハードコートフィルムでは、従来から用いられているハードコート層のもつ性能に加え、ペン先端部の摺動に対する耐久性(ペン耐久性)も同時に満たさなければならない。そこで、従来から用いられているハードコート層の有する硬度等の機能を維持しつつも、ペン耐久性を付与するために、柔軟性を併せ持ったハードコートフィルムの開発が望まれている。
【特許文献1】特開2004−94798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題を解決し、タッチパネル表面において入力ペン先端部の摺動に対する耐久性を付与したハードコートフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明において上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、重合性基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートモノマーあるいはオリゴマーから選ばれる少なくとも1種(A)と、デンドリック高分子(B)と、光ラジカル重合開始剤(C)とを含むことを特徴とするハードコート層形成用組成物とした。
【0008】
また請求項2の発明では、前記デンドリック高分子(B)がハイパーブランチポリマーであることを特徴とする請求項1記載のハードコート層形成用組成物とした。
【0009】
また請求項3の発明では、前記デンドリック高分子(B)の分岐鎖末端の少なくとも一部が、重合性基を1つ以上有することを特徴とする請求項1または2記載のハードコート層形成用組成物とした。
【0010】
また、請求項4の発明では、前記デンドリック高分子(B)の添加量が、ハードコート層形成用組成物の固形分に対し、5〜50重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物とした。
【0011】
また、請求項5の発明では、前記デンドリック高分子(B)の数平均での分子量が1000〜3000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物とした。
【0012】
また、請求項6の発明では、前記光ラジカル重合開始剤(C)の添加量が、ハードコート層形成用組成物の固形分に対し、0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物とした。
【0013】
また、請求項7の発明では、請求項1〜6のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物を基材上に塗布・硬化し、ハードコート層を形成し、前記ハードコート層の膜厚が3〜15μmであることを特徴とするハードコートフィルムとした。
【発明の効果】
【0014】
本発明のハードコート層形成用組成物は、末端反応基濃度の高いデンドリック高分子を用いることで、ハードコート層に要求される硬さを維持するとともに、デンドリック高分子特有の柔軟性を併せ持ったハードコート層を形成し、ペン耐久性に優れたハードコートフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明者は、透明基材上でのハードコート層において、ペン耐久性を付与するために必要とされる硬さと柔軟性のバランスを検討した結果、多官能(メタ)アクリレートモノマーあるいはオリゴマーから選ばれる少なくとも1種と、デンドリック高分子、光ラジカル重合開始剤からなるハードコート層形成用組成物が、ペン耐久性に優れたハードコートフィルムを作製できることを見出した。
【0016】
本発明のハードコート層形成用組成物にあっては多官能(メタ)アクリレートモノマーあるいはオリゴマー(A)を含む。
【0017】
本発明のハードコート層形成用組成物に含まれる多官能(メタ)アクリレートモノマーとは、具体的には、2官能の(メタ)アクリレートモノマーとしてはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。3官能の(メタ)アクリレートモノマーとしてはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。4官能の(メタ)アクリレートモノマーとしてはテトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。6官能の(メタ)アクリレートモノマーとしてはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
【0019】
本発明のハードコート層形成用組成物に含まれる多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとは、分子中に重合性基を少なくとも1個以上有しており、エステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、アミノ樹脂(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル樹脂(メタ)アクリレートなどを用いることができる。具体的には、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ポリウレタンのジアクリレート、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0020】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーにあっては、中でも、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを好適に用いることができる。ハードコート層形成材料として、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることにより、十分な表面硬度を有し、且つ、柔軟性やゴム弾性といったウレタン樹脂の特徴を有し、フィルム基材への追随性が良好で屈曲性に優れるハードコート層を得ることができる。
【0021】
ウレタン(メタ)アクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られるが。具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306I等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を用いることができる。
【0022】
また、本発明のハードコート層形成用組成物には、重合性基を有する(メタ)アクリレートモノマーあるいはオリゴマーの中から、1種だけでなく2種以上混合して使用してもよい。また、本発明のハードコート層形成用組成物には、多官能(メタ)アクリレートモノマーあるいはオリゴマー(A)のほかに単官能(メタ)アクリレートモノマーあるいはオリゴマーを含んでいてもよい。
【0023】
多官能(メタ)アクリレートモノマーあるいはオリゴマーの添加量はハードコート層形成用組成物の固形分に対し、40〜95重量%が好ましい。
【0024】
本発明のハードコート層形成用組成物にあってはデンドリック高分子(B)を含む。
【0025】
本発明のデンドリック高分子は、多分岐高分子、樹脂状ポリマーともいわれる。従来の高分子は一般的に紐状の直鎖状ポリマーであるのに対し、これら樹枝状ポリマーは分岐を積極的に導入していることから三次元球形のモルホロジーをしている。この三次元球状のモロホロジーにより、形成されるハードコート層に柔軟性を付与し、ペン耐久性に優れたハードコートフィルムとすることができる。
【0026】
本発明のデンドリック高分子は、デンドリマーとハイパーブランチポリマーに分けられる。図1にデンドリマーの模式図(模式図1)とハイパーブランチポリマーの模式図(模式図2)を示した。
【0027】
模式図(1)、模式図(2)に示すように、デンドリマー及びハイパーブランチポリマーはともに中心部より三次元放射状に分枝が広がり、さらにその末端から分枝を有する部位を含む化合物である。模式図(2)に示すハイパーブランチポリマーと模式図(1)に示すデンドリマーは樹枝分岐の規則性で分類され、全ての方向に均一に枝が成長している規則性の高いデンドリマーに対し、その規則性の低いものをハイパーブランチポリマーとされる。
【0028】
中でも、本発明のデンドリック高分子にあってはハイパーブランチポリマーを好適に用いることができる。ハイパーブランチポリマーは、保護‐脱保護を繰り返し行うことで合成されるデンドリマーと比べ、一般的にモノマーの一段階重合によって合成されるので安価に入手可能である点でデンドリマーより適する。
【0029】
デンドリック高分子としては、具体的には、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリエーテルスルホン系、ポリカーボネート系、ポリアルキルアミン系、ポリカルボシラン系、ポリカルボシロキサン系など、種々のタイプが挙げられる。
【0030】
本発明のハードコート層形成用組成物に含まれるデンドリック高分子は、分岐鎖末端の少なくとも一部に、重合性基を1つ以上有していることが好ましい。重合性基としては、多官能アクリレートモノマーあるいはオリゴマー(A)の有する重合性基とラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する基であればよい。また、重合性基の基数が4〜50個を有するものが好ましく、基数が多いほどハードコート層に硬さを付与できる。
【0031】
本発明のハードコート層形成用組成物に含まれるデンドリック高分子の数平均での分子量は、1000〜10000の範囲内であることが好ましい。さらには、デンドリック高分子の数平均での分子量は、1000〜3000の範囲内であることが好ましい。分子量が1000未満であるとハードコート層の柔軟性が不十分となり、10000を超えるとハードコート層の硬さが不十分となる。
【0032】
また、本発明のハードコート層形成用組成物に含まれるデンドリック高分子の添加量はハードコート層形成用組成物の固形分に対し、5〜50重量%が好ましい。更には10〜20重量%が好ましい。5重量%未満では十分な柔軟性を付与することができず、50重量%を超えると、柔軟性が高すぎてしまう点で好ましくない。
【0033】
このように、デンドリック高分子として、ハイパーブランチポリマーを用い、その分子量あるいは添加量が上記条件を満たすことにより、さらに、硬さと柔軟性のバランスが保たれ、ペン耐久性に優れたハードコート層を形成することができる。
【0034】
本発明のハードコート層形成用組成物を構成する光ラジカル重合開始剤(C)としては、光照射によりラジカルを発生し、(メタ)アクリレートオリゴマーおよび(メタ)アクリレートモノマーの重合反応を開始する化合物であれば良い。例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類。アセトフェノン、2、2、-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、などのアセトフェノン類。メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;チオキサントン、2、4-ジエチルチオキサントン、2、4-ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類。ベンゾフェノン、4、4-ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類及びアゾ化合物などが挙げられる。これらは単独または2種以上の混合物として使用でき、さらにはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン;2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体等の光開始助剤などと組み合わせて使用することができる。
【0035】
本発明の光ラジカル重合開始剤の使用量は、ハードコート層形成用組成物の固形分に対して、0.01〜10重量%が適当である。0.01重量%より少ない場合には電離放射線による硬化反応が十分に進行せず、10重量%を超えるとハードコート層下部まで十分に電離放射線が届かない。
【0036】
また本発明では、ハードコート層の改質剤として、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料あるいは安定剤などを用いることができ、これらは活性線による反応を損なわない範囲内でハードコート層を構成する塗布層の組成物成分として使用され、用途に応じてハードコート層の特性を改良することができる。
【0037】
本発明で用いられるハードコート層形成用組成物には、製造時の熱重合や貯蔵中の暗反応を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルまたは2,5−t−ブチルハイドロキノンなどの熱重合防止剤を加えることが望ましい。熱重合防止剤の添加量は、ハードコート層形成用組成物の固形分に対し、0.005〜0.05重量%が好ましい。
【0038】
本発明のハードコート層形成用組成物にあっては、必要に応じて、溶媒が加えられる。溶媒としては、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、エチルシクロヘキサノン、2−ブタノン、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、2−プロパノール、1−ブタノール、シクロペンタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ジクロロメタン、トリクロロメタン、トリクロロエチレン、エチレンクロライド、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム等を用いることができる。なお、溶媒は1種類に限定されるものではなく、複数の溶媒を混合して混合溶媒としてもよい。ハードコート層形成用塗液を基材上に塗布する際の塗工適性に応じて、ハードコート層形成用組成物中の溶媒量は決定される。
【0039】
本発明のハードコート層形成組成物は、基材上に塗布、その後硬化させることでハードコート層を形成することによりハードコートフィルムとすることができる。
【0040】
ハードコート層形成用組成物の塗布方法としては、バーコーター、アプリケーター、ドクターブレイド、ロールコーター、ダイコーター、コンマコーター等の公知の塗工方法を用いて塗布することができる。
【0041】
基材としては、透明性を有するフィルム状、シート状のプラスチック基材が好ましく、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリスルフォン、トリアセチルセルロース等のセルロース系のシートあるいはフィルムが挙げられる。その中でも透明性、耐熱性、強度や伸度等の機械的性質などから、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロースが特に好ましい。また、基材として、板状のプラスチック基材を用いてもよい。
【0042】
本発明のハードコート層形成組成物を塗布する際には、必要に応じて適当な溶媒で希釈することができるが、その場合には基材上に塗布した後に溶媒を除去するための乾燥を要する。
【0043】
塗布して得られたハードコート層の膜厚は、必要とされる高度と柔軟性により決定されるが、好ましい膜厚としては3〜15μmである。3μm未満の膜厚では十分な塗膜強度を得られず傷が付きやすいものとなってしまう。また膜厚がばらつきやすくなるため干渉縞が発生するなど不具合が生じてしまう。一方、15μmを超えると曲げによるクラックが発生する場合があり、また、形成されるハードコートフィルムにカールが発生しやすくなってしまう。
【0044】
本発明に用いられるハードコート層形成用組成物を硬化させる方法としては、活性線、特に紫外線を照射する方法が好適である。これらの方法を用いる場合には、前記ハードコート層形成組成物に、前記光ラジカル重合開始剤を加えることにより紫外線照射にて硬化させることができる。紫外線照射においては、400nm以下の波長を含む光であれば良く、例えば、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプや加速電子などを用いることができる。
【0045】
以上により、本発明のハードコートフィルムは形成される。
図2に本発明のハードコートフィルムの説明断面図を示した。本発明のハードコートフィルムにあっては基材1上にハードコート層2を備える。また、本発明のハードコートフィルムにあっては、他の機能層を設けても良い。他の機能層はフィルム基材のハードコート層形成面と反対側の面や、フィルム基材とハードコート層の間、ハードコート層表面に設けることができる。機能層としては、例えば、導電機能、クッション機能、反射防止機能、接着機能を有する導電層、クッション層、反射防止層、接着層を設けることができる。これらの層は、1つの層で異なる2つの機能を発現させてもよい。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。ハードコートフィルムの性能は、下記の方法に従って評価した。
鉛筆硬度:JIS−K5400に準じ評価を行った。
ペン耐久性:ハードコート層表面上を先端部が0.08mmφのポリアセタール製のペンを使用し、荷重500g、ペン摺動速度100mm/秒で直線40mmを100000回及び200000回往復後の摺動部におけるハードコート層の傷つきおよび剥れを目視により評価した。摺動部において傷、クラックが確認されたものを「傷、クラックあり」、傷、クラックが一部で確認されたものの許容できるものを「一部、傷、クラックあり」と判断した。また、摺動部においてハードコート層の剥がれが確認されたものを「剥がれあり」、ハードコート層の剥がれが一部で確認されたものの許容できるものを「一部、剥がれあり」と判断した。
【0047】
<実施例1>
厚さ125μmのポリエチレンテレフタラートフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレート:UA−306I(共栄社化学) 80重量部
ハイパーブランチポリマー:CN−2301(サートマー/数平均分子量1000〜2000) 20重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:オプツールDAC(ダイキン工業) 0.5重量部
溶剤:酢酸エチル 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚8μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。
このハードコートフィルムの鉛筆硬度及びペン耐久性の評価結果を表1に示す。
【0048】
<実施例2>
厚さ125μmのポリエチレンテレフタラートフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレート:UA−306I(共栄社化学) 97重量部
ハイパーブランチポリマー:CN−2301(サートマー/数平均分子量1000〜2000) 3重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:オプツールDAC(ダイキン工業) 0.5重量部
溶剤:酢酸エチル 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚8μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。
このハードコートフィルムの鉛筆硬度及びペン耐久性の評価結果を表1に示す。
【0049】
<実施例3>
厚さ125μmのポリエチレンテレフタラートフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレート:UA−306I(共栄社化学) 30重量部
ハイパーブランチポリマー:CN−2301(サートマー/数平均分子量1000〜2000) 70重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:オプツールDAC(ダイキン工業) 0.5重量部
溶剤:酢酸エチル 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚8μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの鉛筆硬度及びペン耐久性の評価結果を表1に示す。
【0050】
<比較例1>
厚さ125μmのポリエチレンテレフタラートフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレート:UA−306I(共栄社化学) 100重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:オプツールDAC(ダイキン工業) 0.5重量部
溶剤:酢酸エチル 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚8μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの鉛筆硬度及びペン耐久性の評価結果を表1に示す。
【0051】
<比較例2>
厚さ125μmのポリエチレンテレフタラートフィルム基材を用い、
ハイパーブランチポリマー:CN−2301(サートマー/数平均分子量1000〜2000) 100重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:オプツールDAC(ダイキン工業) 0.5重量部
溶剤:酢酸エチル 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚8μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの鉛筆硬度及びペン耐久性の評価結果を表1に示す。
【0052】
以上の実施例1〜3、比較例1、2の評価結果を以下の表1にまとめて示す。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例1乃至3のハードコートフィルムにあっては、多官能(メタ)アクリレートモノマーあるいはオリゴマーにデンドリック高分子であるハイパーブランチポリマーを添加しハードコート層を形成することにより、比較例1のハードコートフィルムと比較して、ペン耐久性が向上している様子が確認された。鉛筆硬度の高い硬いハードコート層は脆く、ペン先端部の摺動によりハードコート層表面に容易に傷やクラックを生じる傾向がある。従って、このようなハードコート層に、柔軟性に優れたハイパーブランチポリマーを添加することで、硬く脆い膜を硬く柔軟な膜に変化させることができた。特に、デンドリック高分子(B)の添加量をハードコート層形成用組成物の固形分に対し5〜50重量%とした実施例1のハードコートフィルムにあっては、200000回往復後であってもハードコート層表面に傷、クラックは確認されず、ハードコート層の剥がれも確認されず、極めて高いペン耐久性を備えることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のハードコート層形成用組成物で形成されるハードコートフィルムは、優れたペン耐久性を示す。したがって、高いペン耐久性が要求されるタッチパネルの前面に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】デンドリマーの模式図(模式図1)とハイパーブランチポリマーの模式図(模式図2)である。
【図2】本発明のハードコートフィルムの説明断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 基材
2 ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートモノマーあるいはオリゴマーから選ばれる少なくとも1種(A)と、デンドリック高分子(B)と、光ラジカル重合開始剤(C)とを含むことを特徴とするハードコート層形成用組成物。
【請求項2】
前記デンドリック高分子(B)がハイパーブランチポリマーであることを特徴とする請求項1記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項3】
前記デンドリック高分子(B)の分岐鎖末端の少なくとも一部が、重合性基を1つ以上有することを特徴とする請求項1または2記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項4】
前記デンドリック高分子(B)の添加量が、ハードコート層形成用組成物の固形分に対し、5〜50重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項5】
前記デンドリック高分子(B)の数平均での分子量が1000〜3000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項6】
前記光ラジカル重合開始剤(C)の添加量が、ハードコート層形成用組成物の固形分に対し、0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物を基材上に塗布・硬化し、ハードコート層を形成し、前記ハードコート層の膜厚が3〜15μmであることを特徴とするハードコートフィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−70602(P2010−70602A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237655(P2008−237655)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】