説明

ハードコート層用硬化性樹脂組成物、ハードコートフィルム、及び透過型光学表示装置

【課題】少量の微粒子の添加で、ハードコート層の表面凹凸を形成することができ、かつ、その透明性、および物性の低下を引き起こすことなく、ブロッキングを防止することができるハードコート層用硬化性樹脂組成物、前記樹脂組成物を用いたハードコートフィルム、および前記ハードコートフィルムを用いた表示装置の提供。
【解決手段】ハードコート層用バインダーとして、2つ以上の反応性官能基を有する樹脂(A)と、少なくとも表面の一部にフッ素化合物が結合した微粒子(B)とを含むハードコート層用硬化性樹脂組成物、前記のハードコート層用硬化性樹脂組成物を硬化して得られたハードコート層を有するハードコートフィルム、および前記ハードコートフィルムを用いた表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ等の表面を保護する目的等で使用される、ハードコート層用硬化性樹脂組成物、当該硬化性樹脂組成物を用いたハードコート層を光透過性樹脂基材上に設けたハードコートフィルム、および当該ハードコートフィルムを積層した透過型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の画像表示装置における画像表示面は、取り扱い時に傷がつかないように、耐擦傷性を付与することが要求される。これに対して、基材フィルムにハードコート(HC)層を形成させたハードコートフィルムや、更に反射防止性や防眩性等光学機能を付与したハードコートフィルム(光学積層体)を利用することにより、画像表示装置の画像表示面の耐擦傷性を向上させることが一般になされている。
しかし、ハードコート層、反射防止層等表面平滑性の高いフィルムを長尺で巻き取る際、当該フィルムの塗工層側の表面と当該フィルムの基材側表面とがブロッキングを起こし、巻き形状の悪化が生じたり、円周上に黒い帯状に見えるブラックバンドが発生し、酷い場合には変形を生じ、収率の低下を招くばかりではなく、表示装置への適応が出来なくなることがある。この為、ハードコート層に微粒子を添加してフィルム表面に微少な凹凸をつけ、表面の摩擦係数を小さくし、ブロッキングを防止することが行われている。(例えば、非特許文献1参照。)
しかしながら、ブロッキングを有効に防止しようとして、比較的大サイズの微粒子を添加すると、前記ハードコート層の透明性の低下を引き起こすことがあった。また、小サイズの微粒子を添加すると多量に添加する必要があり、ハードコート性などの物性の低下を引き起こすことがあった。
特許文献1には、鱗片状および不規則薄片状の無機微粒子をハードコート層用硬化性樹脂組成物中に含有させ、当該樹脂組成物を用いてハードコート層を形成することが記載されているが、これにより、ハードコート層の表面が無機微粒子により部分的に押し上げられるので、微小突起を形成することができると考えられている。
しかし、ハードコート層用硬化性樹脂組成物に鱗片状および不規則薄片状の無機微粒子を含有させると、当該樹脂組成物からなるハードコート層は層内の内部散乱増加による透明性の低下を引き起こす。
特許文献2には、樹脂からなる第一成分とモノマーもしくはオリゴマーからなる第二成分からなる組成物の塗布後に第一成分の樹脂が相分離して析出し、微細な凹凸を形成するアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物が記載されている。この組成物によれば、両成分のSP値差を利用するため、使用できる材料が制限され、十分なハードコート性が発現されにくい場合が多く、かつ製膜時の乾燥温度条件等に左右されやすく、安定した効果が得られにくい。
特許文献3〜5に記載された、貼り付き防止性を有する化合物の添加は表面平坦性が高く、強い圧力下では、その効果が殆ど発揮できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−42653号公報
【特許文献2】特開2007−182519号公報
【特許文献3】特許第2658200号公報
【特許文献4】特開平6−100629号公報
【特許文献5】特開平10−7866号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】フィラー活用事典、216−221頁、 フィラー研究会編 (株)大成社発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況下に開発がなされたものであり、少量の微粒子の添加で、ハードコート層の表面凹凸を形成することができ、かつ、その透明性、および物性の低下を引き起こすことなく、ブロッキングを防止することができるハードコート層用硬化性樹脂組成物、前記樹脂組成物を用いたハードコートフィルム、および前記ハードコートフィルムを積層した表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、表面にブリードしやすい微粒子を用いることによって、前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は以下を要旨とするものである。
1.(A)2つ以上の反応性官能基を有する樹脂と、(B)少なくとも表面の一部にフッ素化合物が結合した微粒子とを含むことを特徴とするハードコート層用硬化性樹脂組成物。
2.(A)の樹脂が、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、置換、または未置換のビニル基、シンナモイル基、マレエート基、アクリルアミド基、および/またはエチニル基を有する樹脂である上記1に記載のハードコート層用硬化性樹脂組成物。
3.(B)の微粒子が、フッ素成分とシラノール基を生成する成分を含むものである上記1または2に記載のハードコート層用硬化性樹脂組成物。
4.フッ素成分とシラノール基を生成する成分が、一般式:
f−(CH2n−Si−(OR)3
(式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状、または分岐状パーフルオロアルキル基、Rは有機官能基、およびnは自然数を示す。)
で表されるシラン化合物、一般式:
f−(OC36n−O−(CF2m−(CH2L−OOCNH−(CH2s−Si(OR)3
(式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状、または分岐状パーフルオロアルキル基、nは自然数、mは0〜3の整数、Lは0〜3の整数、sは1〜6の整数、およびRはアルキル基を示す。)
で表されるオルガノポリシロキサン、および、一般式:
f−(OC36n−O−(CF2m−(CH2L−O−(CH2s−Si(R)3
(式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状、または分岐状パーフルオロアルキル基、nは自然数、mは0〜3の整数、Lは0〜3の整数、sは0〜6の整数、およびRは加水分解基を示す。)
で表されるフルオロポリエーテルシランからなる群から選ばれる少なくとも一種である上記3に記載のハードコート層用硬化性樹脂組成物。
5.(B)の微粒子の粒径が、50〜500nmである上記1〜4のいずれかに記載のハーコート層用硬化性樹脂組成物。
6.(B)の微粒子の含有量が、ハードコート層用硬化性樹脂組成物中の全固形分に対して0.1〜5質量%である上記1〜5のいずれかに記載のハードコート層用硬化性樹脂組成物。
7.ハードコート層用硬化性樹脂組成物が、さらに、その表面の少なくとも一部に光硬化性および/または熱硬化性反応基が導入され、(A)の樹脂と結合可能とされた無機微粒子を含有してなる上記1〜6のいずれかに記載のハードコート層用硬化性樹脂組成物。
8.ハードコート層用硬化性樹脂組成物が、さらに、反応開始剤および/または導電剤を含む上記1〜7のいずれかに記載のハードコート層用硬化性樹脂組成物。
9.上記1〜8のいずれかに記載のハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層を光透過性樹脂基材上に有してなるハードコートフイルム。
10.ハードコート層表面が3〜50nmの凹凸を有する上記9に記載のハードコートフイルム。
11.ハードコート層表面の凸部と凸部の間隔が10μm以下である上記9または10に記載のハードコートフイルム。
12.上記10または11記載のハードコートフイルムが積層された表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、少量の微粒子の添加で、ハードコート層の表面凹凸を形成することができ、かつ、その透明性、および物性の低下を引き起こすことなく、ブロッキングを防止することができるハードコート層用硬化性樹脂組成物、および前記樹脂組成物を用いたハードコートフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来のハードコート層における微粒子の分散状態を示す図である。
【図2】本発明に係るハードコート層における微粒子の分散状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の原理的な説明を行なうと、表面凹凸を形成するために、従来の方法で微粒子を添加すると、ハードコート層中で、添加した微粒子が均一に分散してしまい、表面凹凸の形成に寄与する微粒子は、ハードコート層の表面に存在するごく一部であり、実際の添加量よりはるかに少なくなってしまい、かつ、ハードコート層内部に存在する微粒子は、透明性の低下や物性の低下といった悪影響を及ぼしていた(図1参照)。
そこで、この微粒子をハードコート層の表面近傍にブリードさせることができれば、ハードコート層の物性や透明性を低下させない範囲の少量の添加量で、効果的にハードコート層表面に凹凸を形成することができると想定して、発明を完成させたものである(図2参照)。
【0010】
一方、フッ素化合物は表面エネルギーが低い化合物であり、フッ素化合物を含む組成物においては、系全体のエネルギーを最小化するために、フッ素成分が表面にブリードしやすい特性を有している。
そこで、本発明では、ブロッキング防止剤として、フッ素化合物を表面に有する微粒子を使用することによって、前記微粒子をハードコート層表面にブリードさせ、少量で効果的に表面凹凸を形成させ、その上、ハードコート層の物性と透明性を低下させることなくブロッキング防止性を付与することに成功したものである。
【0011】
本発明は、(A)2つ以上の反応性官能基を有する樹脂と、(B)少なくとも表面の一部にフッ素化合物が結合した微粒子とを含むハードコート層用硬化性樹脂組成物に関する。
【0012】
<2官能以上の樹脂>
先ず、ハードコート層用硬化性樹脂組成物に含まれる(A)成分から詳細に説明する。
(A)成分は、2つ以上の反応性官能基を有する樹脂であり、ハードコート層用バインダーとして作用する。ここで、「樹脂」とは、モノマー、オリゴマー、およびプレポリマーを包含する意である。
このような反応性官能基として、たとえば、光硬化性官能基、および熱硬化性官能基をあげることができる。
光硬化性官能基とは、光照射により重合反応、または架橋反応等を進行させて、塗膜を硬化させることができるような官能基を意味し、例えば、光ラジカル重合、光カチオン重合、光アニオン重合のような重合反応、あるいは、光二量化を経て進行する付加重合、または縮重合等の反応形式により、反応が進行するものが挙げられる。
また、熱硬化性官能基とは、加熱によって同じ官能基同士、または他の官能基との間で重合反応、または架橋反応等を進行させて、塗膜を硬化させることができる官能基を意味し、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基等を例示することができる。
本発明に用いられる反応性官能基としては、特に、反応性の点から、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、置換、または無置換のビニル基[例:CH2=CH−、CH2=CR−(ここでRは炭化水素基)]、シンナモイル基、マレエート基、アクリルアミド基、エチニル基等の重合性不飽和基が好適に用いられる(なお、「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートおよび/またはアクリレートを意味する。)。
【0013】
このような2つ以上の反応性官能基を有する樹脂の具体例としては、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、これら(メタ)アクリレートは、分子骨格の一部が変性したものでもよく、たとえばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、およびビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。
【0014】
上記の2つ以上の反応性官能基を有する樹脂は、市販品を使用することができる。具体的には、日本化薬(株)製のKAYARAD、KAYAMERシリーズ、例えば、DPHA、PET30、GPO303、TMPTA、THE330、TPA330、D310、D330、PM2、PM21、DPCA20、DPCA30、DPCA60、DPCA120等;東亞合成(株)製のアロニックスシリーズ、例えば、M305、M309、M310、M315、M320、M327、M350、M360、M402、M408、M450、M7100、M7300K、M8030、M8060、M8100、M8530、M8560、M9050等;新中村化学(株)製のNKエステルシリーズ、例えば、TMPT、A−TMPT、A−TMM−3、A−TMM3L、A−TMMT、A−TMPT−6EO、A−TMPT−3CL、A−GLY−3E、A−GLY−6E、A−GLY−9E、A−GLY−11E、A−GLY−18E、A−GLY−20E、A−9300、AD−TMP−4CL、AD−TMP等;新中村化学(株)製のNKエコノマーシリーズ、例えば、ADP51、ADP33、ADP42、ADP26、ADP15等;第一工業製薬(株)製のニューフロンティアシリース、例えば、TMPT、TMP3、TMP15、TMP2P、 TMP3P、PET3、TEICA等;ダイセルユーシービー(株)製のEbecrylシリーズ、例えばTMPTA、TMPTAN、160、TMPEOTA、OTA480、53、PETIA、2047、40、140、1140、PETAK、DPHA等;サートマー(株)製のCD501、CD9021、CD9052、SR351、SR351HP、SR351LV、SR368、SR368D、SR415、SR444、SR454、SR454HP、SR492、SR499、SR502、SR9008、SR9012、SR9020、SR9020HP、SR9035、CD9051、SR350、SR9009、SE9011、SR295、SR355、SR399、SR399LV、SR494、SR9041等が、それぞれ挙げられる。
【0015】
また、上記した樹脂材料中に、硬度を調整するために、無機微粒子を、樹脂の総質量を100質量部とした場合に、5〜80質量部添加してもよい。好ましい無機微粒子としては、コロイダルシリカが挙げられる。なお、本発明において「コロイダルシリカ」とは、コロイド状態のシリカ粒子を水、または有機溶媒に分散させたコロイド溶液を意味する。
上記コロイダルシリカの平均粒子径は、1〜100nm程度の超微粒子のものであることが好ましい。なお、本発明において、平均粒子径とは、50%平均粒子径を意味し、例えば、日機装(株)製Microtrac粒度分析計(動的光散乱法)を用いて求めることができる。
このようなコロイダルシリカの市販品としては、日産化学(株)製のスノーテックスシリーズや、オルガノシリカゾル(IPA−ST、MEK−ST、IPA−ST−UP等)、日揮触媒化成(株)製OSCALシリーズ等がある。
【0016】
上記無機微粒子は、必要に応じて、その表面の少なくとも一部に光硬化性および/または熱硬化性反応基が導入された構造とすることにより、バインダー樹脂と結合することが可能になり、当該無機微粒子は、均一に分散された状態で塗膜中に固定化され、より硬度の高いハードコートフィルムを形成することが可能になるので、好ましい。
このように、微粒子表面の少なくとも一部に光硬化性および/または熱硬化性反応基を導入する方法としては、特に限定されないが、光硬化性および/または熱硬化性反応基を含有するカップリング剤による表面処理、光硬化性および/または熱硬化性反応基を有するポリマーのグラフト化、光硬化性および/または熱硬化性反応基を有する有機化合物で微粒子表面を覆うようなコア/シェル構造を有するマイクロカプセル化、微粒子表面に導入された重合開始基から重合を行う手法等が挙げられる。
【0017】
無機微粒子の表面処理に用いられる光硬化性および/または熱硬化性反応基を含有するカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルエトキシシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を例示することができる。
【0018】
<フッ素処理された微粒子>
次に、ハードコート層用硬化性樹脂組成物に含まれる(B)成分を詳細に説明する。
(B)成分は、下記のように表面処理された各種無機微粒子が好ましく、アンチブロッキング剤として作用する。
本発明に使用することができる無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、及びリン酸カルシウム、或いはこれらの複合酸化物等を挙げることができる。これらの内で、酸化珪素が硬度、および表面処理の容易さから好ましく用いられる。酸化珪素の市販品としては、たとえば、日産化学(株)製IPA−ST−ZL、IPA−ST−UP、扶桑化学(株)製SP−03F、ならびに東亞合成(株)製HPS−0500等が挙げられる。
【0019】
本発明に用いられる上記微粒子は、少なくともその表面の一部にフッ素化合物が結合した微粒子である。
ここで、少なくとも表面の一部にフッ素化合物が結合した態様としては、例えば金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基に、シランカップリング剤等の有機成分を含む化合物が反応して、表面の一部にフッ素化合物を含む有機成分が結合した態様のほか、例えば、金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基に、水素結合等の相互作用によりフッ素化合物を含む有機成分を付着させた態様などが含まれる。
フッ素化合物としては、上記の反応を起こすものであれば、任意のものが使用可能であるが、フルオロアルキル基を含有する化合物が、性能や入手可能性、経済性等から好ましい。
(B)成分としての微粒子の平均粒子径はハードコート層の表面凹凸形成、および透明性の点から、50〜500nm程度であることが好ましいが、更に好ましくは100〜400nmであり、特に好ましくは120〜400nmである。
なお、ここでの平均粒子径は、上述の通り、50%平均粒子径である。
【0020】
このような微粒子の、少なくとも表面の一部にフッ素化合物が結合した微粒子を調製する方法としては、当該微粒子の種類と導入したい化合物により、従来公知の方法を適宜選択して用いることができる。
中でも、フッ素化合物中のフッ素成分(例えば、フルオロアルキル基を言う。)とシラノール基、または加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物と、金属酸化物微粒子とを結合することにより得られる、表面にフッ素化合物を有する無機微粒子を用いることが、硬度、およびアンチブロッキング性の観点から、好ましい。
フッ素成分とシラノール基、または加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物としては、一般式:
f−(CH2n−Si−(OR)3
(式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状、または分岐状パーフルオロアルキル基、Rは有機官能基、およびnは自然数を示す。)
で表されるフルオロアルキルシラン等のシラン化合物、一般式:
f−(OC36n−O−(CF2m−(CH2L−OOCNH−(CH2s−Si(OR)3
(式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状、または分岐状パーフルオロアルキル基、nは自然数、mは0〜3の整数、Lは0〜3の整数、sは1〜6の整数、およびRはアルキル基を示す。)
で表されるオルガノポリシロキサン、および、一般式:
f−(OC36n−O−(CF2m−(CH2L−O−(CH2s−Si(R)3
(式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状、または分岐状パーフルオロアルキル基、nは自然数、mは0〜3の整数、Lは0〜3の整数、sは0〜6の整数、およびRは加水分解基を示す。)
で表されるフルオロポリエーテルシランからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0021】
これらのシラノール基、または加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物の市販品としては、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名KBM7103)、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製、商品名:TSL8233)、2−(パーフルオロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製、商品名:TSL8257)等が挙げられる。
【0022】
本発明に用いられる、少なくともその表面の一部にフッ素化合物が結合した微粒子の含有量は、ハードコート層用硬化性樹脂組成物中の全固形分に対して0.1〜5質量%程度、好ましくは、0.1〜3質量%である。
この含有量が0.1質量%未満になると、微粒子がブリードしても、表面に集まる微粒子量が少なく、アンチブロッキング効果を十分に発揮することが困難になる。逆に含有量が5質量%を超えると、アンチブロッキング効果に顕著な改善が見られなくなる上、ハードコート層の透明性や物性に対する悪影響が現われてくる。
【0023】
<樹脂組成物の塗工液化>
以上に説明したとおり、本発明は、(A)2つ以上の反応性官能基を有する樹脂と、(B)少なくとも表面の一部にフッ素化合物が結合した微粒子とを含むハードコート層用硬化性樹脂組成物であるが、前記組成物は溶剤を使用することによって、塗工液とすることができる。
使用される溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、メチルグリコール、メチルグリコールアセテート、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ニトロメタン、N―メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物;ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、テトラクロルエタン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレン等のその他の溶剤;またはこれらの混合物が挙げられる。
この中で好ましい溶剤としては、樹脂の溶解性や生産性という理由で、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、およびメチルエチルケトン等が挙げられる。
溶剤の含有量は、各成分を均一に溶解、分散することができ、調整後の保存時に凝集を来たさず、かつ、塗工時に希薄すぎない濃度となるように適宜調節する。この条件が満たされる範囲内で溶剤の使用量を少なくして高濃度の塗工液を調整し、容量をとらない状態で保存し、使用時に必要分を取り出して塗工作業に適した濃度に希釈するのが好ましい。固形分と溶剤の合計量を100重量部とした時に、全固形分0.5〜80重量部に対して、溶剤を20〜95.5重量部、さらに好ましくは、全固形分10〜30重量部に対して、溶剤を70〜90重量部の割合で用いることにより、特に分散安定性に優れ、長期保存に適した塗工液が得られる。
【0024】
本発明に係るハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗工液化は、一般的な調製法に従って製造することができる。
すなわち、前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物を溶媒に加えて、上記成分を混合し、分散処理することにより調製される。混合分散には、ペイントシェーカー、またはビーズミル等を用いることができる。
本発明に係るハードコート層用硬化性樹脂組成物における固形分の濃度としては、特に限定されるものではないが、通常5〜40質量%程度、好ましくは15〜30質量%である。
【0025】
<任意成分>
本発明に係るハードコート層用硬化性樹脂組成物は、ハードコート層の光学特性機能を高めるために、任意成分を添加してもよい。以下に任意成分について説明する。
【0026】
<反応開始剤>
本発明にあっては、ハードコート層を形成する際、反応開始剤を用いてよい。反応開始剤は、任意のものを使用できるが、好ましくは、365nm以上の長波長での吸光係数が100(ml/g・cm)以下の重合開始剤と、365nm以上の長波長での吸光係数が100(ml/g・cm)より大きい重合開始剤との両方からなるものを使用することが好ましい。
365nm以上の長波長での吸光係数が100(ml/g・cm)以下の重合開始剤の具体例としては、市販品として、Irgacure184、Irgacure250、Irgacure651、Irgacure754、Irgacure907、Irgacure2959、Darocure1173、DarocureEDB、およびDarocureEHA(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)等が挙げられる。
365nm以上の長波長での吸光係数が100(ml/g・cm)より大きい重合開始剤の具体例としては、市販品として、IrgacureOXE01、IRGACURE369、Irgacure784、Irgacure819、Irgacure907、Irgacure1300、IRGACURE1800、Darocure1173、DarocureTPO、Darocure4265、およびCGI242(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)等が挙げられる。
【0027】
<導電剤(帯電防止剤)>
本発明のハードコート層用硬化性樹脂組成物に導電剤(帯電防止剤)を添加することにより、光学積層体の表面における塵埃付着を有効に防止することができるので、好ましい。
導電剤(帯電防止剤)の具体例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜第3アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物;スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物;アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物;アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物;スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられ、さらに上記の化合物を高分子量化した化合物が挙げられる。
また、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、または金属キレート部を有し、かつ、電離放射線により重合可能なモノマーまたはオリゴマー、或いは官能基を有するカップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物もまた帯電防止剤として使用できる。
さらに、帯電防止剤として、導電性微粒子が挙げられる。
【0028】
導電性微粒子の具体例としては、金属酸化物からなるのもの等を挙げることができる。そのような金属酸化物としては、ZnO(屈折率1.90、以下、カッコ内の数値は屈折率を表す。)、CeO2(1.95)、Sb25(1.71)、SnO2(1.997)、ITOと略して呼ばれることの多い酸化インジウム錫(1.95)、In23(2.00)、Al23(1.63)、アンチモンドープ酸化錫(略称;ATO、2.0)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(略称;AZO、2.0)等を挙げることができる。
導電性微粒子は、1ミクロン以下の、いわゆるサブミクロンの大きさのものであり、好ましくは、平均粒径が0.1nm〜0.1μmのものである。
また、帯電防止剤として、導電性ポリマーが挙げられ、その具体例としては、脂肪族共役系のポリアセチレン、芳香族共役系のポリ(パラフェニレン)、複素環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、含ヘテロ原子共役系のポリアニリン、および混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)等が挙げられる。さらに、上記以外に、分子中に複数の共役鎖を持つ共役系である複鎖型共役系や、前述の共役高分子鎖を飽和高分子にグラフト、またはブロック共重合した高分子である導電性複合体等を挙げられる。
導電剤(帯電防止剤)の添加量は、適宜定めることができるが、例えば、ハードコート層用硬化性樹脂組成物全量に対して、0.01〜50質量部程度、好ましくは、0.1〜25質量部である。
【0029】
<防汚染剤>
防汚染剤は、光学積層体の最表面の汚れ防止を主目的とし、防汚染をすることで、さらに光学積層体の耐擦傷性を付与することが可能となる。
防汚染剤の具体例としては、フッ素系化合物、ケイ素系化合物、またはこれらの混合化合物等が挙げられる。また、防汚染剤は、それ自体が反応基を有するか否かは問わない。
防汚染剤としてのフッ素系化合物の具体例としては、一般式:
(A)w−(B)x−(C)y−CF3
(上記式中、Aは、CF2、CFCF2、C(CF22からなる群から選択される一種、または二種以上の基を表わし、Bは、OCF2CF2、OCF2CF(CF2)、OCF2C(CF22、OCF(CF2)CF(CF2)、OCF(CF2)C(CF22、OC(CF22CF(CF2)、OC(CF22C(CF22からなる群から選択される一種または二種以上の基を表わし、Cは、OCH2CH2、OCH2CH2CH2、OC(O)(CH2zからなる群から選択される一種、または二種以上の基を表わし、w、x、y、およびzは0超過50以下の数を表わす。)
で表される化合物が挙げられる。
【0030】
防汚染剤は市販品として入手可能であり、好ましくはそれが利用される。反応基を有しない防汚染剤の具体例としては、大日本インキ(株)製のメガファックシリーズ、例えば、MCF350−5、F445、F455、F178、F470、F475、F479、F477、TF1025、F478、およびF178K等;東芝シリコーン(株)製のTSFシリーズ等;信越化学(株)製のX22シリーズ、KFシリーズ等;チッソ(株)製のサイラプレーンシリーズ等が挙げられる。
反応基を有する防汚染剤の具体例としては、SUA1900L10(重量平均分子量4200;新中村化学(株)製)、SUA1900L6(重量平均分子量2470;新中村化学(株)製)、Ebecryl1360(ダイセルユーシービー(株)製)、UT3971(日本合成(株)製)、ディフェンサTF3001(大日本インキ(株)製)、ディフェンサTF3000(大日本インキ(株)製)、ディフェンサTF3028(大日本インキ(株)製)、KRM7039(ダイセルユーシービー(株)製)、ライトプロコートAFC3000(共栄化学(株)製)、KNS5300(信越シリコーン(株)製)、UVHC1105(GE東芝シリコーン(株)製)、UVHC8550(GE東芝シリコーン(株)製)、Ebecryl350(ダイセルユーシービー(株)製)、およびACS−1122(日本ペイント(株)製)が挙げられる。
防汚染剤が、有機化合物の場合、その数平均分子量は限定されないが、500〜10万程度、好ましくは、下限が750、より好ましくは1000であり、好ましくは、上限は7万、より好ましくは5万である。
数平均分子量が上記範囲内であると、防汚性、および塗工性の観点から好ましい。分子量が500未満であると、防汚性が発現しにくく、分子量が10万を超えると、他樹脂との相溶性が悪くなり、外観不良の原因となりやすい。
【0031】
本発明の好ましい態様によれば、防汚染剤は、ポリオルガノシロキサン基、ポリオルガノシロキサン含有グラフトポリマー、ポリオルガノシロキサン含有ブロックポリマー、およびフッ素化アルキル基等を含有する2官能以上の多官能(メタ)アクリレートを含んでなるものが好ましい。
多官能(メタ)クリレートとしては、例えば、2官能アクリレートとして、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1、9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1、10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、イソシアヌル酸エトキシ変性ジ(メタ)アクリレート(イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート)、2官能ウレタン(メタ)アクリレート、および2官能ポリエステルア(メタ)クリレート等が挙げられる。
【0032】
3官能(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、3官能ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
4官能(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、およびエトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
5官能以上の(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
防汚染剤の添加量は、適宜定めることができるが、ハードコート層を形成する樹脂組成物100質量部に対して、0.001〜90質量部程度、好ましくは、下限が0.01質量部、より好ましくは0.1質量部であり、好ましくは上限が70質量部、より好ましくは50質量部である。
防汚染剤の添加量が、上記範囲内にあることにより、十分な防汚染機能が発揮され、かつ、光学積層体の硬度をも有するので好ましい。
【0033】
本発明はさらにハードコートフィルムに関する。
本発明に係るハードコートフィルムは、光透過性樹脂基材上に、前記本発明に係るハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層を備えるものである。
【0034】
<光透過性樹脂基材>
本発明に使用する光透過性樹脂基材としては、光を透過するものであれば、透明、半透明、無色または有色を問わず、可視光域380〜780nmにおける平均光透過率が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは85%以上である光透過性樹脂基材が好ましい。なお、光透過率は、紫外可視分光光度計(例えば、(株)島津製作所製 UV−3100PC)を用い、室温、大気中で測定した結果、得られる値を用いる。
このような光透過性樹脂基材の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン類、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリメタクリレート等のアクリル樹脂、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、酢酸セルロース、アセテートプロピオネートセルロース、アセテートブチレートセルロース等のセルロース系樹脂、ナイロンー6、ナイロンー6・6等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート、およびポリエーテルケトン等の樹脂からなるフィルム、またはシート等を挙げることができ、単独で、または同種もしくは異種のものを積層して用いることができる。
その他、本発明に用いる透明基材として、脂環構造を有した非晶質オレフィンポリマー(Cyclo−Olefin−Polymer:COP)フィルムも使用することができる。これは、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体樹脂等が用いられる基材で、例えば、日本ゼオン(株)製の「ゼオネックス」や「ゼオノア」(ノルボルネン系樹脂)、住友ベークライト(株)製「スミライトFS−1700」、JSR(株)製「アートン」(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学(株)製「アペル」(環状オレフィン共重合体)、Ticona社製の「Topas」(環状オレフィン共重合体)、日立化成工業(株)製「オプトレッツOZ−1000シリーズ」(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる。また、TACの代替基材として旭化成ケミカルズ(株)製のFVシリーズ(低複屈折率、低光弾性率フィルム)も好ましい。
【0035】
本発明においては、ハードコートフィルムが用いられる態様によって、光透過性樹脂基材を適宜選択することが好ましい。例えば、目的とするハードコートフィルムに光学的等方性が要求される場合は、透明基材として、トリアセテートセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、アセテートプロピオネートセルロース、アセテートブチレートセルロース等のようなセルロースエステル、ポリノルボルネン系透明樹脂の製品名アートン(JSR(株)製)やゼオノア(日本ゼオン(株)製)等のような環状ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、およびポリエーテル樹脂等による易接着処理がされたPET等が用いられることが好ましい。中でも、液晶ディスプレイ用途に用いる場合には、トリアセテートセルロース(TAC)、および環状ポリオレフィンが好ましい例として挙げられる。
また、本発明においては、光透過性樹脂基材に表面処理(例、鹸化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、および火炎処理)を実施してもよく、プライマー層(接着剤層)を形成してもよい。
なお、必要に応じて上記透明基材には、公知の添加物、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加し、機能を付加させたものも使用できる。
光透過性樹脂基材の厚さは、通常、30〜200μm程度、好ましくは40〜200μmである。
【0036】
<ハードコート層>
本発明に係るハードコートフィルムが有するハードコート層は、前記本発明に係るハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層である。
本発明において「ハードコート層」とは、JISK5600−5−4(1999)で規定される、鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものである。当該硬度は、上記基材の種類や厚みに依存する値であり、用途や要求性能に合わせて適宜選択されるものであって、特に限定されないが、本発明に係る前記ハードコート層の硬度は、当該鉛筆硬度試験で、2H以上程度、より好ましくは3H以上、特に好ましくは4H以上である。
前記ハードコート層は、本発明に係るハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層であるから、当該樹脂組成物に添加された成分によって、防眩層、低屈折率層、高屈折率層、帯電防止層、および防汚層等のような機能層を兼ねるものとなり得る。
本発明に係るハードコートフィルムにおいて、ハードコート層は、単層であっても、複層から構成されていても良い。
この場合の単層とは、同一組成物で形成されるハードコート層であって、塗布、乾燥後の組成が同一組成のものであれば、複数回の塗布により形成されていても良い。
一方、複数層とは、組成の異なる複数の組成物から形成されていることを意味する。例えば、専ら耐擦傷性を向上させることを目的とした本発明に係るハードコート層上に、さらに低屈折率層としても機能する本発明に係るハードコート層を積層したような構成であっても良い。
また、本発明に係るハードコートフィルムにおいて、前記本発明に係るハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層は必須で含まれるが、他の硬化性樹脂組成物からなるハードコート層を更に含んでいても良い。
【0037】
ハードコート層の膜厚(硬化時)は、上記基材の強度や要求性能等に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、通常、1〜100μm程度、好ましくは5〜30μmの範囲とする。ハードコート層の厚みが1〜100μmの場合、ハードコート層の耐擦傷性と硬度が十分に向上し、クラックやカールが発生しない。
また、ハードコート層の表面を、#0000番のスチールウールを用いて、所定の摩擦荷重で10往復摩擦し、その後のハードコート層の剥がれの有無を目視した場合に、1000g以上の摩擦荷重に耐えられることが好ましく、更に1500g以上の摩擦荷重に耐えられることがより好ましい。
なお、前記本発明に係るハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層は、上記硬化性樹脂組成物中に含まれる各成分の反応性官能基が反応することにより、各成分が架橋して硬化するものであるが、硬化工程において、未反応化合物や、残留溶剤等を含有していてもよい。
前記ハードコート層表面の凹凸形状は、突起(凸部)高さ3〜50nm程度、好ましくは5〜20nmである。突起高さが3nm未満の場合は、ブロッキング防止性が無い恐れがあり、一方、突起高さが50nm超過の場合は,透明性を損なう恐れがある。また、突起と突起の高さの距離(凸部と凸部の間隔)は10μm以下、好ましくは6μm以下である。
これらの表面形状や距離は、原子間力顕微鏡等により、観察、測定することができる。
【0038】
<ハードコートフィルムの製造方法>
前記光透過性樹脂基材フィルムの表面に、前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物を含む塗工液を塗布、乾燥する。
塗布方法は、基材フィルム表面に、ハードコート層形成用樹脂組成物を含む塗工液を均一に塗布することができる方法であれば、特に限定されるものではなく、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、およびピードコーター法等の各種方法を用いることができる。
また、光透過性樹脂基材フィルム上への塗工量としては、得られるハードコートフィルムが要求される性能により異なるものであるが、一般に、乾燥後の塗工量が1〜30g/m2程度、好ましくは、5〜25g/m2である。
乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥、または加熱乾燥、更には、これらの乾燥を組み合わせる方法等が挙げられる。一例として、溶剤としてケトン系溶剤を用いる場合は、通常、室温〜80℃程度、好ましくは40〜60℃の範囲内の温度で、20秒〜3分程度、好ましくは30秒〜1分程度の時間で乾燥が行われる。
【0039】
次に、ハードコート層形成用樹脂組成物を含む塗工液を塗布、乾燥させた塗膜に対し、当該樹脂組成物に含まれる反応性官能基に応じて、光照射および/または加熱により、塗膜を硬化させて、ハードコート層形成用樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層を形成させ、本発明のハードコートフィルムが得られる。
光照射には、たとえば、紫外線、可視光、電子線、および電離放射線等が使用される。紫外線硬化の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、およびメタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等を使用する。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜5000mJ/cm2程度である。
一方、加熱する場合は、通常、40〜120℃程度の温度にて処理する。また、上記以外にも、室温(25℃)で24時間以上放置することにより、反応を行っても良い。
以上に、本発明に係るハードコート層用硬化性樹脂組成物と、その硬化物を含むハードコートフィルムの説明を行なったが、本発明は、上記の実施態様に限定されるものではない。
【0040】
本発明は、さらに前記ハードコートフィルムを積層した表示装置に関する。
すなわち、本発明に係るハードコートフィルムは、ハードコート積層体として表示装置に使用してもよいし、さらにハードコート積層体の上部に反射防止層を設けた反射防止積層体として、表示装置に利用することができる。
表示装置としては、透過型表示装置が挙げられ、透過型表示装置としては、テレビジョン、コンピュータ、およびワードプロセッサなどのディスプレイ表示用デバイスが挙げられる。とりわけ、CRT、液晶パネル、およびプラズマディスプレイ等のディスプレイの表面に好適に用いることができる。
以下に実施例を掲げて、更に本発明を説明するが、本発明は、これらに限定されることはない。
【実施例】
【0041】
以下の製造例は、(B)成分の微粒子を製造する方法を示したものである。
製造例1
シリカ微粒子SP−03F(扶桑化学(株)製、粒径0.2−0.3μm)3.00gにKBM7103(信越化学(株)製、フルオロアルキルアルコキシシラン) 0.15g、MIBK 26.85gを混合し、ペイントシェーカーを用いて、粒径2mmのジルコニアビーズで1時間、粒径0.1mmのジルコニアビーズで3時間分散した。その後、ジルコニアビーズを除き、得られた分散液を50℃で1時間加熱処理することで、フッ素処理したシリカ微粒子分散液Iを得た。
【0042】
製造例2
製造例1において、KBM7103をTSL8257(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製、フルオロアルキルアルコキシシラン)に変更した以外は製造例1と同様にして、フッ素処理したシリカ微粒子分散液IIを得た。
【0043】
製造例3
製造例1において、KBM7103をKBM503(信越化学(株)製、γ−メタクリロキシプロピルアルコキシシラン)に変更した以外は製造例1と同様にして、フッ素処理したシリカ微粒子分散液IIIを得た。
【0044】
製造例4
製造例1において、KBM7103を用いず、かつMIBKをPGME 27.00gにした以外は製造例1と同様にして、フッ素処理したシリカ微粒子分散液IVを得た。
【0045】
実施例1〜4、比較例1〜6
光透過性樹脂基材フィルムとして厚さが40μmのセルローストリアセテートフィルムを用い、当該基材上に、表1に従って調製されたハードコート層用硬化性樹脂組成物を乾燥重量が14g/m2となるように塗布した。70℃にて1分間乾燥し、紫外線100mJ/cm2を照射して、実施例1〜4、および比較例1〜6のハードコートフィルムを、それぞれ作製した。
次に、このようにして作成したハードコートフィルムを、以下の評価方法に従って評価した。
【0046】
評価方法
・ヘイズ
ヘイズメーターHM150(村上色彩技術研究所製)を用いてJIS−K7105に従って透過法で測定した。
・貼り付き
ハードコート形成面とフィルム面を重ね、40kg/cm2の荷重をかけ、20分放置した後の様子を目視で観察し、評価した。
評価基準は以下の通りである。
×貼り付く
○貼りつかない
・鉛筆硬度
得られたハードコートフィルムの表面をJISK5600−5−4(1999)に準じて500g荷重で評価した。
・突起の高さ
AFM(L−traceII SII製)を用いて20μm×20μmの範囲を測定し、突起高さの平均を算出した。
・突起間の距離
AFM(L−traceII SII製)を用いて20μm×20μmの範囲を測定し、任意の隣り合う突起間の距離5点から平均を算出した。
・表面粗さ
AFM(L−traceII SII製)を用いて20μm×20μmの範囲を測定し、表面粗さを算出した。
結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
(*1)
・ハードコート層用樹脂組成物(a)
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 50質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK) 50質量部
イルガキュア184 0.02質量部
ハードコート層用樹脂組成物(b)
アクリロイル基を有するシリカ微粒子(30質量部、MIBK分散液、粒径40nm) 66質量部
DPHA 30質量部
MIBK 5質量部
イルガキュア184 0.02質量部
【0049】
表1から、本発明のハードコートフィルムにおいては、少量の微粒子の添加で、ハードコート層の表面凹凸を形成することができ、かつ、その透明性、および物性の低下を引き起こすことなく、ブロッキングを防止することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係るハードコートフィルムは、そのままでハードコート積層体として表示装置に使用することができるし、さらにハードコート積層体の上部に反射防止層を設けた反射防止積層体として、表示装置に利用することができる。表示装置としては、透過型表示装置が挙げられ、特に、テレビジョン、コンピュータ、およびワードプロセッサなどのディスプレイ表示に使用される。とりわけ、CRT、液晶パネル、およびプラズマディスプレイ等のディスプレイの表面に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)2つ以上の反応性官能基を有する樹脂と、(B)少なくとも表面の一部にフッ素化合物が結合した微粒子とを含むことを特徴とするハードコート層用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)の樹脂が、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、置換、または無置換のビニル基、シンナモイル基、マレエート基、アクリルアミド基、および/またはエチニル基を有する樹脂である請求項1に記載のハードコート層用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(B)の微粒子が、フッ素成分とシラノール基を生成する成分を含むものである請求項1または2に記載のハードコート層用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
フッ素成分とシラノール基を生成する成分が、一般式:
f−(CH2n−Si−(OR)3
(式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状、または分岐状パーフルオロアルキル基、Rは有機官能基、およびnは自然数を示す。)
で表されるシラン化合物、一般式:
f−(OC36n−O−(CF2m−(CH2L−OOCNH−(CH2s−Si(OR)3
(式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状、または分岐状パーフルオロアルキル基、nは自然数、mは0〜3の整数、Lは0〜3の整数、sは1〜6の整数、およびRはアルキル基を示す。)
で表されるオルガノポリシロキサン、および、一般式:
f−(OC36n−O−(CF2m−(CH2L−O−(CH2s−Si(R)3
(式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状、または分岐状パーフルオロアルキル基、nは自然数、mは0〜3の整数、Lは0〜3の整数、sは0〜6の整数、およびRは加水分解基を示す。)
で表されるフルオロポリエーテルシランからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項3に記載のハーコート層用硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(B)の微粒子の粒径が、50〜500nmである請求項1〜4のいずれかに記載のハードコート層用硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
(B)の微粒子の含有量が、ハードコート層用硬化性樹脂組成物中の全固形分に対して0.1〜5質量%である請求項1〜5のいずれかに記載のハードコート層用硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
ハードコート層用硬化性樹脂組成物が、さらに、その表面の少なくとも一部に光硬化性および/または熱硬化性反応基が導入され、(A)の樹脂と結合可能とされた無機微粒子を含有してなる請求項1〜6のいずれかに記載のハードコート層用硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
ハードコート層用硬化性樹脂組成物が、さらに、反応開始剤および/または導電剤を含む請求項1〜7のいずれかに記載のハードコート層用硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層を光透過性樹脂基材上に有してなるハードコートフィルム。
【請求項10】
ハードコート層表面が3〜50nmの凹凸を有する請求項9に記載のハードコートフィルム。
【請求項11】
ハードコート層表面の凸部と凸部の間隔が10μm以下である請求項9または10に記載のハードコートフィルム。
【請求項12】
請求項10または11記載のハードコートフイルムが積層された表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−241937(P2010−241937A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91474(P2009−91474)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】