説明

ハーネスチューブの固定構造

【課題】車両床下に配索されるハーネスの本数、形状が異なってもハーネスの固定位置が安定し、十分な保持力を確保し、しかもハーネスを支持する支持部材の使い分けが不要であり汎用性の高いハーネスの固定構造を提供する。
【解決手段】車両の床下部に配設され車両前後方向に適宜間隔を有した複数の位置に車幅方向へ適宜の間隔で複数個の貫通孔2を設けた支持部材1と、同支持部材1の上側に車両前後方向へ配策され複数の電線を内嵌したハーネスチューブ6aと、上記貫通孔2を貫通して上記ハーネスチューブ6aと支持部材1とを巻回して固定する固定部材5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電気配線のために用いられるハーネスチューブや、空気や燃料等を通流させるチューブを、車体に固定した支持部材に固定する構造に関するものであり、特に路線バス、観光バス、都市間高速バス等の車両の床下にハーネスチューブを配索し、該ハーネスチューブを支持部材に固定するハーネスチューブの固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両運行のために搭載されている多数の装置、機器類及び計器類を作動・制御させるための複数の電線を内嵌したハーネスチューブは車体各部に多数配設されている。特にリヤエンジンバスは運転席が車両前部で、エンジン、トランスミッション等の駆動系装置が車両後部に配設されているのでハーネスチューブの大部分が車両前後方向に配索されている。
さらに、このようなバスでは、ハーネスチューブは大部分が車両床下に配索され、ハーネスチューブの垂れ下がりを防止するため、車両床下に設けられた支持部材に固定されている。
【0003】
また、リヤエンジンバスには路線バス、観光バス、都市間高速バス等の種々の種類の仕様があり、バスの仕様により必要なハーネスチューブの本数や径も異なる。そのため従来は、前記ハーネスチューブを固定する支持部材を、必要な本数、径のハーネスチューブに合わせて作成していた。しかしながら、支持部材をハーネスチューブの本数、径にあわせて作成すると、バスの仕様によって支持部材の幅を異ならせる必要があるために支持部材は汎用性が低いものとなり、支持部材の作成コストが高くなっていた。
【0004】
そこで、支持部材の幅を、想定される最大幅の仕様にあわせて作成して、支持部材の汎用性を高め、作成コストを下げることが考えられる。
このような支持部材を用いたハーネスチューブの固定構造について図14、図15、図16及び図17を用いて説明する。
図14は車両床下に配索された複数のハーネスチューブ(複数のハーネスを束ねたもの)を有するバスの斜視図である。車両100には、A部に示したように床下部に車両前後方向にハーネスチューブ106が配索されている。
図15は図14におけるA部拡大図であり、複数のハーネスチューブ及び該ハーネスチューブを固定した支持部材の斜視図である。支持部材101は、長手方向が車両100の前後方向と一致する向きに設置され、ハーネスチューブ106が車両100の車幅方向に設けられた複数のクロスフレーム110の孔部111内を通るようにして、クロスフレーム110に固定されている。また、支持部材101は、短手方向両縁部に下方に折曲した折曲部103を有しており、さらに該折曲部103には車両100の前後方向、即ち支持部材101の長手方向に適宜間隔を有した複数の位置に孔部102が設けられている。
【0005】
このような支持部材101に複数のハーネスチューブ106を固定する場合、複数のハーネスチューブ106を支持部材101の上に乗せ、前記孔部102に通して結束バンド105でハーネスチューブ106と支持部材101を巻回することにより、ハーネスチューブ106を支持部材101に固定することで行っていた。
【0006】
図16は、1本のハーネスチューブ及び該ハーネスチューブを固定した支持部材の斜視図であり、図17は図16における断面図である。図15と同一符号は同一部材を表し説明は省略する。
図16及び図17に示したように、1本のハーネスチューブ106を支持部材101に固定した場合、ハーネスチューブ106の幅よりも、支持部材101の短手方向の幅の方が大きいため、結束バンド105と支持部材101の間に空間107が形成され、結束バンド105によるハーネスチューブ106の保持力が十分ではなくなる。従って、例えば当初図16(A)(図17(A))のように支持部材101の一端部付近の位置にハーネスチューブ106を固定しても、前記空間107の存在のために、ハーネスチューブ106が図16(B)(図17(B))のように支持部材101の他端位置またはその中間位置まで移動してしまうことがあり、ハーネスチューブの固定位置が安定しない。
つまり、固定するハーネスチューブの本数が少なかったり、細かったりして前記空間107が大きくなる場合には、ハーネスチューブの固定位置が安定せず、しかも保持力も十分ではないため、図14、図15、図16及び図17に示した従来のハーネスチューブの固定構造を採用することは難しい。
【0007】
また、その他のハーネスチューブの固定構造として、特許文献1には、図18に示したように、ハーネスチューブ106の配索空間の配索経路に沿って間隔をあけて一対の狭持ピン112を突設するとともにハーネスチューブ106に前記狭持ピン112の突設位置と同一間隔で弾性材113を外周面に巻き付け、狭持ピン112の間にハーネスチューブ106に巻きつけた弾性材113の外装部分を通し、弾性材113を圧縮変形させて狭持ピン112で位置決めして固定する技術が開示されている。また特許文献2には、図19に示したように、ハーネスチューブの配索空間の配索経路に沿ってピン状又は板状の支持部114を配索空間に向けて突出するとともに、ハーネスチューブの幹線を複数本に分割し、該複数本のハーネスチューブ106を並列にして外周面に粘着テープ115を強く巻きつけて結束し、テープ巻き結束された複数本のハーネスチューブ106の間に前記支持部114を押し込んでハーネスチューブを位置決めして固定する技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−130865号公報
【特許文献2】特開2004−130867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、ハーネスチューブが1本であるときにはハーネスチューブを固定することが可能であるが、一対の狭持ピン間隔を広くするに従ってハーネスチューブの保持力が弱くなるため、バスのように複数本のハーネスチューブを固定する必要がある車両に採用することは難しく、さらにハーネスチューブに弾性材を巻きつけるために弾性材を巻きつけた部分では上下方向の径も大きくなり、車両床下でのハーネスチューブの固定構造として採用すると他の装置を配設するレイアウト上、不利になるという問題もある。また、特許文献2に開示された技術は、ハーネスチューブが2本であるときにはハーネスチューブを固定することが可能であるが、前記ピン又は板状の支持部の両側それぞれに位置するハーネスチューブの重量、寸法が大きくなるとハーネスチューブの保持力が弱くなるため、バスのように多数本のハーネスチューブを固定する必要がある車両に採用することは難しく、さらに支持部の両側それぞれのハーネスチューブの重量、寸法のバランスが崩れても保持力が弱くなるため、例えば3本、5本といった奇数本のハーネスチューブを必要とする車両に採用することも難しいため、汎用性は低い。
【0010】
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、車両床下に配索されるハーネスチューブの本数、形状が異なってもハーネスチューブの固定位置が安定し、十分な保持力を確保し、しかもハーネスチューブを支持する支持部材の使い分けが不要であり汎用性の高いハーネスの固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明においては、
車両の床下部に配設され車両前後方向に適宜間隔を有した複数の位置に車幅方向へ適宜の間隔で複数個の貫通孔を設けた支持部材と、同支持部材の上側に車両前後方向へ配策され複数の電線を内嵌したハーネスチューブと、上記貫通孔を貫通して上記ハーネスチューブと支持部材とを巻回して固定する固定部材とを備えたことを特徴とする。
支持部材の複数の位置に車幅方向へ適宜の間隔で複数個の貫通孔を設け、支持部材の上側に配索されたハーネスチューブを、その本数及び大きさにあわせて固定部材を貫通させる貫通孔を変えて固定部材で固定することで、固定部材、ハーネスチューブ、支持部材間の空間は小さくなるので、ハーネスチューブの固定位置が安定し、十分な保持力を確保することができる。そのためハーネスチューブの本数、径が異なっても同じ支持部材を使用することができ、支持部材の汎用化が可能となるため、支持部材を作成するためのコスト、作業工数や部品管理費等を低減することができる。
【0012】
また、ハーネスチューブを支持部材の上に乗せ、車幅方向複数の貫通孔を貫通した固定部材で支持部材に固定するので、ハーネスチューブが車両の前後左右方向に対して安定に固定されるとともに、前後左右に配索されたハーネスチューブの途中から機器類に連結するための枝線に関しても、当該ハーネスチューブを支持部材の車幅方向機器側に寄せて固定することにより、枝線を短くして断線する割合を低くするとともに、コスト、重量ともに軽減することができる。更には、ハーネスチューブを支持部材の上に配索しているので、タイヤ等が跳ねた小石等からハーネスチューブを保護することができる。
【0013】
また、上記支持部材の車幅方向複数の貫通孔は、車幅方向に略直線で且つ、車両前後方向中心線に対し略直角に配設されていることを特徴とする。
これにより、固定部材がハーネスチューブの軸心に対し略直角にハーネスチューブを締め付けるので、締め付けが確実で複数のハーネスチューブを束ね易くなる。
【0014】
また、上記支持部材の車幅方向複数の貫通孔は、上記支持部材の車幅方向端縁が車幅方向に切り欠かれていることを特徴とする。
ハーネスチューブの断面が略円形をしているので、ハーネスチューブの外周部の一部が支持部材の車幅方向端縁より外側にはみ出しても、固定部材が前記切り欠き部の前後方向端縁に係合して、ハーネスチューブの前後方向へのずれに対しても安定した固定ができる。
また、ハーネスチューブの外周部の一部が支持部材の車幅方向端縁より外側にはみ出すことを見越して支持部材の車幅方向広さを狭く設定することにより、支持部材の重量及び材料費の低減が可能となる。
【0015】
また、上記支持部材の車幅方向の端縁は上方または下方方向に折曲していることを特徴とする。
これにより、支持部材の剛性を上げることができるとともに、固定部材が前記切り欠き部の前後方向端縁に係合する係合代が大きくなり、ハーネスチューブの前後方向へのずれに対してもより安定した固定が可能となる。
さらに、前記支持部材の車幅方向の端縁を上方方向へ折曲すると、前記端縁を下方方向へ折曲した場合よりも、路面から支持部材のハーネス載置部までの距離を短くすることができる。従って、ノンステップバス等の車高を低くする必要があるバスでは、前記支持部材の車幅方向の端縁を上方に折曲することが好ましい。
【0016】
また、上記支持部材の上記ハーネスチューブ載置部は車幅方向の断面が上方へ突出した円弧状をなしていることを特徴とする。
これにより、車両走行時に雨水又はタイヤ等が跳ねた泥水等が支持部材上側のハーネスチューブ載置部に溜まらずに排水することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上記載のごとく本発明によれば、車両床下に配索されるハーネスチューブの本数、形状が異なってもハーネスチューブの固定位置が安定し、十分な保持力を確保し、しかもハーネスチューブを支持する支持部材の使い分けが不要であり汎用性の高いハーネスチューブの固定構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0019】
図1は、実施例1におけるハーネスチューブを固定するための支持部材の斜視図である。
図1を用いて、支持部材1の構成について説明する。
支持部材1は、従来例と同様に図14のA部に示した車両100の床下部に配索されるハーネスチューブ(複数のハーネスを束ねたもの)を固定するための部材であり、従来例と同様に長手方向が車両100の前後方向と一致する向きで、図15に示した車両100の車幅方向に設けられた複数のクロスフレームの孔部111内を通るように、クロスフレーム110に固定される。
また、支持部材1は金属製の平板状であり、短手方向両縁部に下方に折曲した折曲部3を有しており、さらに車両前後方向(支持部材1の長手方向)に適宜間隔を有した複数の位置に、車幅方向(支持部材の短手方向)に直線且つ車両前後方向に対し略直角に複数(本実施例では6つ)の貫通孔2(2a、2b、2c、2d、2e、2f)が設けられている。車幅方向の貫通孔間の間隔は、想定される1番細いハーネスチューブ幅にあわせた間隔としておけばよく、例えばバスに用いる場合は2.5〜3.0cm程度としておくとよい。さらに支持部材1の短手方向両端縁に位置する貫通孔2a、2fは、端縁から車幅方向に切り欠かれた形状となっている。
【0020】
次に、図2及び図3を用いて、貫通孔2の間隔よりも大きな径を有するハーネスチューブ6aを、前記支持部材1に固定する場合について説明する。
図2は、貫通孔2の間隔よりも大きな径を有するハーネスチューブ6a及び該ハーネスチューブ6aを固定した支持部材1の斜視図であり、図3は図2におけるA−A断面図である。
図3に示したように、複数のハーネス60が束ねられてハーネスチューブ6aを形成している。
支持部材1にハーネスチューブ6aを固定する場合、以下の手順で行う。
(1)支持部材1上の所望に位置にハーネスチューブ6aを載置する。
本実施例においては、貫通孔2b上にハーネスチューブ6aの下底が存するようにハーネスチューブ6aを載置する。
(2)結束バンド5を貫通させる。ハーネスチューブ6aを巻回することができる貫通孔2のうち、ハーネスチューブ6aに近い貫通孔2に結束バンド5を貫通させ、ハーネスチューブ6aと支持部材1を巻回して固定する。
本実施例においては、貫通孔2bは上側にハーネスチューブ6aが載置されており結束バンド5を貫通させることができないため、貫通孔2a及び2cに結束バンド5を貫通させ、ハーネスチューブ6aと支持部材1を巻回して固定している。
【0021】
以上のようにして、ハーネスチューブ6aを支持部材1に固定することで、結束バンド5と支持部材1の間に形成される空間7は小さくなるため、ハーネスチューブの固定位置が安定し、保持力を保つことができる。さらに、支持部材1には複数個(6個)の貫通孔2を設けているため、貫通孔間隔よりも大きな径を有するハーネスチューブ6aであっても支持部材に固定することができる。
【実施例2】
【0022】
図4及び図5を用いて、貫通孔2間の間隔よりも僅かに大きな径を有するハーネスチューブ6bを、前記支持部材1に固定する場合について説明する。
支持部材は図1に示した実施例1と同じものを使用する。
図4は、貫通孔2の間隔よりも僅かに大きな径を有するハーネスチューブ6b及び該ハーネスチューブ6bを固定した支持部材1の斜視図であり、図5は図4におけるB−B断面図である。
支持部材1にハーネスチューブ6bを固定する場合、以下の手順で行う。
(1)支持部材1上の所望に位置にハーネスチューブ6bを載置する。
本実施例においては、貫通孔2cと2dの間にハーネスチューブ6bの下底が存するようにハーネスチューブ6bを載置する。
(2)結束バンド5を貫通させる。ハーネスチューブ6bを巻回することができる貫通孔2のうち、ハーネスチューブ6bに近い貫通孔2に結束バンド5を貫通させ、ハーネスチューブ6bと支持部材1を巻回して固定する。
本実施例においては、貫通孔2c及び2dに結束バンド5を貫通させ、ハーネスチューブ6aと支持部材1を巻回して固定している。ハーネスチューブ6bの径は貫通孔2cと2dの間隔よりも僅かに大きいが、貫通孔2cと2d上にハーネスチューブ6bは位置しないため、結束バンド5を貫通孔2c及び2dを貫通させることができる。
【0023】
以上のように、支持部材1には複数個(6個)の貫通孔2を設けているため、結束バンド5と支持部材1の間に形成される空間7が小さくなるように結束バンド5を貫通させる貫通孔を選択することができる。このようにハーネスチューブ6bを支持部材1に固定することで、結束バンド5と支持部材1の間に形成される空間7は小さくなり、ハーネスの固定位置が安定し、保持力を保つことができる。
【実施例3】
【0024】
図6及び図7を用いて、貫通孔2の間隔と略同じ大きさの径を有する6c及び6dの計2本のハーネスチューブを、前記支持部材1に固定する場合について説明する。
支持部材は図1に示した実施例1及び2と同じものを使用する。
図6は、貫通孔2の間隔と略同じ大きさの径を有するハーネスチューブ6c、6d及び該ハーネスチューブ6c、6dを固定した支持部材1の斜視図であり、図7は図6におけるC−C断面図である。
支持部材1にハーネスチューブ6c、6dを固定する場合、以下の手順で行う。
(1)支持部材1上の所望に位置にハーネスチューブ6c、6dを載置する。
本実施例においては、貫通孔2cと2dの間にハーネスチューブ6cの下底が存するようにハーネスチューブ6cを載置し、貫通孔2dと2eの間にハーネスチューブ6dの下底が存するようにハーネスチューブ6dを前記ハーネスチューブ6cと併置する。
(2)結束バンド5を貫通させる。ハーネスチューブ6c、6dをまとめて巻回することができる貫通孔2のうち、ハーネスチューブ6c、6dに近い貫通孔2に結束バンド5を貫通させ、ハーネスチューブ6c、6dと支持部材1をまとめて巻回して固定する。
本実施例においては、貫通孔2c及び2eに結束バンド5を貫通させ、ハーネスチューブ6c、6dと支持部材1を巻回して固定している。ハーネスチューブ6c、6dの径はそれぞれ貫通孔2cと2dの間隔、貫通孔2dと2eの間隔と略同じであり、ハーネスチューブ6cと6dを併置しているため、結束バンド5を貫通孔2cと2eを貫通させることで、ハーネスチューブ6c、6dをまとめて固定することができる。
【0025】
以上のように、支持部材1には複数個の貫通孔2を設けているため、2本のハーネスチューブ6c、6dをまとめて結束バンド5で巻回することができるとともに、結束バンド5と支持部材1の間に形成される空間7が小さくなるように結束バンド5を貫通させる貫通孔を選択することができる。従って、2本のハーネスチューブ6c、6dをまとめて支持部材1に支持することができるとともに、結束バンド5と支持部材1の間に形成される空間7は小さくなり、ハーネスチューブの固定位置が安定し、保持力を保つことができる。
【実施例4】
【0026】
図8及び図9を用いて、貫通孔2の間隔と略同じ大きさの径を有する6e、6f及び6gの計3本のハーネスチューブを、前記支持部材1に固定する場合について説明する。
支持部材は図1に示した実施例1、2及び3と同じものを使用する。
図8は、貫通孔2の間隔と略同じ大きさの径を有するハーネスチューブ6e、6f、6g及び該ハーネスチューブ6e、6f、6gを固定した支持部材1の斜視図であり、図9は図8におけるD−D断面図である。
支持部材1にハーネスチューブ6e、6f、6gを固定する場合、以下の手順で行う。
(1)支持部材1上の所望に位置にハーネスチューブ6e、6f、6gを載置する。
本実施例においては、貫通孔2cと2dの間にハーネスチューブ6eの下底が存するようにハーネスチューブ6eを載置し、貫通孔2dと2eの間にハーネスチューブ6fの下底が存するようにハーネスチューブ6fを前記ハーネスチューブ6eと併置し、さらに貫通孔2eと2fの間にハーネスチューブ6gの下底が存するようにハーネスチューブ6gを前記ハーネスチューブ6fと併置する。
(2)結束バンド5を貫通させる。ハーネスチューブ6e、6f、6gをまとめて巻回することができる貫通孔2のうち、ハーネスチューブ6e、6gに近い貫通孔2に結束バンド5を貫通させ、ハーネスチューブ6e、6f、6gと支持部材1をまとめて巻回して固定する。
本実施例においては、貫通孔2c及び2fに結束バンド5を貫通させ、ハーネスチューブ6e、6f、6gと支持部材1を巻回して固定している。ハーネスチューブ6e、6f、6gの径はそれぞれ貫通孔2cと2dの間隔、貫通孔2dと2eの間隔、貫通孔2eと2fの間隔と略同じであり、ハーネスチューブ6e、6f、6gを併置しているため、結束バンド5を貫通孔2cと2fを貫通させることで、ハーネスチューブ6e、6f、6gをまとめて固定することができる。
【0027】
以上のように、支持部材1には複数個の貫通孔2を設けているため、3本のハーネスチューブ6e、6f、6gをまとめて巻回することができるとともに、結束バンド5と支持部材1の間に形成される空間7が小さくなるように結束バンド5を貫通させる貫通孔を選択することができる。このようにハーネスチューブ6e、6f、6gを支持部材1に固定することで、3本のハーネスチューブをまとめて支持することができるとともに、結束バンド5と支持部材1の間に形成される空間7は小さくなり、ハーネスチューブの固定位置が安定し、保持力を保つことができる。
【実施例5】
【0028】
図10及び図11を用いて、貫通孔2の間隔と略同じ大きさの径を有するハーネスチューブ6hと、同じく貫通孔2間の間隔と略同じ大きさの径を有するハーネスチューブ6i、6jを、前記支持部材1に固定する場合について説明する。なお、前記支持部材に固定する際に、ハーネスチューブ6iと6jは併設し、該ハーネスチューブ6i、6jと離れた位置でハーネスチューブ6hを固定する。
支持部材は図1に示した実施例1、2、3及び4と同じものを使用する。
図10は、貫通孔2の間隔と略同じ大きさの径を有するハーネスチューブ6h、6i、6j及び該ハーネスチューブ6h、6i、6jを固定した支持部材1の斜視図であり、図11は図10におけるE−E断面図である。
支持部材1にハーネスチューブ6h、6i、6jを固定する場合、以下の手順で行う。
(1)支持部材1上の所望に位置にハーネスチューブ6hを載置する。
本実施例においては、貫通孔2aと2bの間にハーネスチューブ6hの下底が存するようにハーネスチューブ6hを載置する。
(2)結束バンド5aを貫通させる。ハーネスチューブ6hを巻回することができる貫通孔2のうち、ハーネスチューブ6hに近い貫通孔2に結束バンド5aを貫通させ、ハーネスチューブ6hと支持部材1を巻回して固定する。
本実施例においては、貫通孔2a及び2bに結束バンド5aを貫通させ、ハーネスチューブ6hと支持部材1を巻回して固定している。ハーネスチューブ6hの径は貫通孔2aと2bの間隔と略同じであるため、貫通孔2aと2b上にハーネスチューブ6hは位置せず、結束バンド5aを貫通孔2a及び2bを貫通させることができる。
(3)支持部材1上であり、前記ハーネスチューブ6hと離れた所望に位置にハーネスチューブ6i、6jを載置する。
本実施例においては、貫通孔2dと2eの間にハーネスチューブ6iの下底が存するようにハーネスチューブ6iを載置し、貫通孔2eと2fの間にハーネスチューブ6jの下底が存するようにハーネスチューブ6jを前記ハーネスチューブ6iと併置する。
(4)結束バンド5bを貫通させる。ハーネスチューブ6i、6jをまとめて巻回することができる貫通孔2のうち、ハーネスチューブ6i、6jに近い貫通孔2に結束バンド5bを貫通させ、ハーネスチューブ6i、6jと支持部材1を巻回して固定する。
本実施例においては、貫通孔2d及び2fに結束バンド5bを貫通させ、ハーネスチューブ6i、6jと支持部材1を巻回して固定している。ハーネスチューブ6i、6jの径はそれぞれ貫通孔2dと2eの間隔、貫通孔2eと2fの間隔と略同じであり、さらにハーネスチューブ6i、6jを併置しているため、結束バンド5を貫通孔2dと2fを貫通させることで、ハーネスチューブ6i、6jをまとめて固定することができる。
なお、(1)(2)を行う前に(3)(4)を行ってもよく、(1)(2)と平行して(3)(4)を行ってもよい。
【0029】
以上のように、支持部材1には複数個の貫通孔2を設けているため、1本のハーネスチューブ6hと、2本のハーネスチューブ6i、6jを別々に固定することができるとともに、それぞれ結束バンド5a、5bと支持部材1の間に形成される空間7a、7bが小さくなるように結束バンド5を貫通させる貫通孔を選択することができる。
例えばハーネスチューブ6hと連結する機器類と、ハーネスチューブ6i、6jと連結する機器類が固定部材1の車幅方向(短手方向)に対して反対側に位置する場合、それぞれのハーネスチューブ6h、6i、6jをそれぞれ支持部材1の車幅方向機器側に寄せた位置で固定すると、それぞれのハーネスチューブ6h、6i、6jからの枝線を短くして断線する割合を低くするとともに、コスト、重量を軽減することができる。
【実施例6】
【0030】
実施例1〜5においては、図1で示した支持部材1を用いたが、短手方向(車幅方向)両縁部を上方に折曲し、その他の構成は図1に示した支持部材1と同じ構成である支持部材1bを用いることもできる。
図12を用いて、貫通孔2の間隔と略同じ大きさの径を有する6c及び6dの計2本のハーネスチューブを、前記支持部材1bに固定する場合について説明する。
図12は、貫通孔2の間隔と略同じ大きさの径を有するハーネスチューブ6c、6d及び該ハーネスチューブ6c、6dを固定した支持部材1bの断面図である。
支持部材1bにハーネスチューブ6c、6dを固定する場合の手順は実施例3と同様であるので説明は省略する。
【0031】
支持部材1に代えて支持部材1bを用いた場合、実施例3と同様に、支持部材1bには複数個の貫通孔2を設けているため、2本のハーネスチューブ6c、6dをまとめて巻回することができるとともに、結束バンド5と支持部材1の間に形成される空間7が小さくなるように結束バンド5を貫通させる貫通孔を選択することができる。従って、2本のハーネスチューブ6c、6dをまとめて支持部材1bに支持することができるとともに、結束バンド5と支持部材1の間に形成される空間7は小さくなり、ハーネスチューブの固定位置が安定し、保持力を保つことができる。
さらに、前記支持部材1bの短手方向(車幅方向)の端縁を上方方向へ折曲しているため、前記端縁を下方方向へ折曲した場合よりも、路面から支持部材のハーネスチューブ載置部までの距離を短くすることができる。従って、支持部材1を用いた場合よりも車高を低くすることができるため、ノンステップバス等の車高を低くする必要がある車両に使用すると特に有効である。
【実施例7】
【0032】
実施例1〜5においては、図1で示した支持部材1を用いたが、短手方向(車幅方向)の断面が上方へ突出した円弧状をなし、その他の構成は図1に示した支持部材1と同じ構成である支持部材1cを用いることもできる。
図13を用いて、貫通孔2間の間隔と略同じ大きさの径を有する6c及び6dの計2本のハーネスチューブを、前記支持部材1cに固定する場合について説明する。
図13は、貫通孔2の間隔と略同じ大きさの径を有するハーネスチューブ6c、6d及び該ハーネスチューブ6c、6dを固定した支持部材1cの断面図である。
支持部材1cにハーネスチューブ6c、6dを固定する場合の手順は実施例3及び実施例6と同様であるので説明は省略する。
【0033】
支持部材1に代えて支持部材1cを用いた場合、実施例3及び実施例6と同様に、支持部材1cには複数個の貫通孔2を設けているため、2本のハーネスチューブ6c、6dをまとめて巻回することができるとともに、結束バンド5と支持部材1の間に形成される空間7が小さくなるように結束バンド5を貫通させる貫通孔を選択することができる。従って、2本のハーネスチューブ6c、6dをまとめて支持部材1cに支持することができるとともに、結束バンド5と支持部材1の間に形成される空間7は小さくなり、ハーネスチューブの固定位置が安定し、保持力を保つことができる。
さらに、支持部材1の短手方向(車幅方向)の断面が上方へ突出した円弧状をなしているため、車両走行時に雨水又はタイヤ等が跳ねた泥水等が支持部材上側で溜まらずに排水することが可能となる。
【0034】
実施例1〜7に示したように、本発明のハーネスチューブ固定構造を用いると、ハーネスチューブの本数、形状が異なってもハーネスチューブの固定位置が安定し、十分な保持力を確保することができるため、支持部材の汎用化が可能となる。
また、本実施例では支持部材1にハーネスチューブを保持させたが、ハーネスチューブに限らず、燃料パイプ、エアパイプ等の流体用配管を保持することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
車両床下に配索されるハーネスチューブの本数、形状が異なってもハーネスチューブの固定位置が安定し、十分な保持力を確保し、しかもハーネスチューブを支持する支持部材の使い分けが不要であり汎用性の高いハーネスチューブの固定構造として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1〜5におけるハーネスチューブを固定するための支持部材の斜視図である。
【図2】実施例1におけるハーネスチューブ及び該ハーネスチューブを固定した支持部材の斜視図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】実施例2におけるハーネスチューブ及び該ハーネスチューブを固定した支持部材の斜視図である。
【図5】図4におけるB−B断面図である。
【図6】実施例3におけるハーネスチューブ及び該ハーネスチューブを固定した支持部材の斜視図である。
【図7】図6におけるC−C断面図である。
【図8】実施例4におけるハーネスチューブ及び該ハーネスチューブを固定した支持部材の斜視図である。
【図9】図8におけるD−D断面図である。
【図10】実施例5におけるハーネスチューブ及び該ハーネスチューブを固定した支持部材の斜視図である。
【図11】図10におけるE−E断面図である。
【図12】実施例6におけるハーネスチューブ及び該ハーネスチューブを固定した支持部材の断面図である。
【図13】実施例7におけるハーネス及び該ハーネスを固定した支持部材の断面図である。
【図14】車両床下に配索された複数のハーネスを有するバスの斜視図である。
【図15】図14におけるA部拡大図である。
【図16】従来例における1本のハーネス及び該ハーネスを固定した支持部材の斜視図である。
【図17】図16における断面図である。
【図18】従来例に係る説明図である。
【図19】従来例に係る説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 支持部材
2(2a、2b、2c、2d、2e、2f) 貫通孔
3 折曲部
5、5a、5b 結束バンド(固定部材)
6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j ハーネス
7 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床下部に配設され車両前後方向に適宜間隔を有した複数の位置に且つ車幅方向へ適宜の間隔で複数個の貫通孔を設けた支持部材と、同支持部材の上側に車両前後方向へ配策され複数の電線を内嵌したハーネスチューブと、前記貫通孔を貫通して前記ハーネスチューブと支持部材とを巻回して固定する固定部材とを備えたことを特徴とするハーネスチューブ固定構造。
【請求項2】
前記支持部材の車幅方向複数の貫通孔は、車幅方向に略直線で且つ、車両前後方向中心線に対し略直角に配設されていることを特徴とする請求項1記載のハーネスチューブ固定構造。
【請求項3】
前記支持部材の車幅方向複数の貫通孔のうち車幅方向端縁に設けられた貫通孔は、車幅方向に切り欠かれていることを特徴とする請求項1記載のハーネスチューブ固定構造。
【請求項4】
前記支持部材の車幅方向の端縁は上方または下方方向に折曲していることを特徴とする請求項1記載のハーネスチューブ固定構造。
【請求項5】
前記支持部材の前記ハーネスチューブ載置部は車幅方向の断面が上方へ突出した円弧状をなしていることを特徴とする請求項1記載のハーネスチューブ固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−113707(P2009−113707A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290846(P2007−290846)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】