説明

バイアス回路、LNA、LNB、通信用受信機、通信用送信機、およびセンサーシステム

【課題】温度依存性の低減、電源電圧依存性の低減、電源電圧および負電圧に重畳されている雑音の十分な減衰、製造プロセスの選定自由度の向上、を実現することができるバイアス回路、LNA、LNB、通信用受信機、通信用送信機、およびセンサーシステムを提供する。
【解決手段】ソース端子4が接地されたHEMT1のためのHEMTバイアス回路11であって、両電源型のオペアンプAMP1と、抵抗素子RIと、第1基準電圧源VXと、第2基準電圧源VYとを備え、オペアンプAMP1は、正入力端子がHEMT1のドレイン端子3に接続され、負入力端子が第2基準電圧源VYに接続され、出力端子がHEMT1のゲート端子に接続され、抵抗素子RIは、一方の端子がHEMT1のドレイン端子3に接続され、他方の端子が第1基準電圧源VXに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FETにバイアス電圧を供給するバイアス回路、LNA、LNB、通信用受信機、通信用送信機、およびセンサーシステムに関するものであり、特に、衛星放送受信用LNB(Low Noise Block converter)のLNA(Low Noise Amplifier)に用いられるHEMT(High Electron Mobility Transistor)のためのバイアス回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星放送では、Kuバンド(12GHz〜18GHz)の微小な信号が、通信衛星から個々の家庭などの受信側に向けて送信されている。受信側では、通信衛星からの信号をアンテナによって受信した後、LNBにて増幅およびダウンコンバートし、チューナに伝送している。
【0003】
ここで、微小な信号を良好に受信するためには、LNBにおいて、アンテナにより受信された信号を増幅するLNAに、低いNF(Noise Figure)が要求される。このため、LNAには、HEMTが用いられることが一般的である。HEMTは、Kuバンド受信に対応でき、かつ、NFの低いことを特徴としている。HEMTを用いたLNAの利得およびNFを所望の値に設計するためには、HEMTのドレイン電圧およびドレイン電流を最適に設計する必要がある。
【0004】
HEMTのドレイン電流特性について説明する。図19は、HEMTのバイアスを説明するための回路図である。図20は、HEMTのゲート電圧とドレイン電流との関係を示すグラフである。
【0005】
HEMTは、ゲート電圧VGの電圧値に対してドレイン電流IDの電流値が決まる特性を有している。それゆえ、例えば、最適なドレイン電圧VDが2V、最適なドレイン電流IDが8mAと設計した場合、図20に示すように、必要なゲート電圧VGは−0.4V程度となる。よって、LNAに用いるHEMT(FET)には、所望のドレイン電圧VDと所望のドレイン電流IDとが同時に得られるように、所定のバイアスをかける必要がある。そこで、上記−0.4V程度のゲート電圧VGをバイアス回路によって供給することで、HEMTを適切な動作点で駆動させる。バイアス回路は、VD=2V、ID=8mAを同時に満たすようなゲート電圧VGを自動的に探索し、決定している。
【0006】
上記のような、所望のドレイン電圧と所望のドレイン電流とを同時に決定づけるようにゲート電圧を自動制御して供給するバイアス回路は、過去から複数提案されてきている。そのうち、基本となる回路として、特許文献1に開示されたバイアス回路がある。
【0007】
図21は、特許文献1に開示された従来のHEMTバイアス回路500の構成を示す回路図である。
【0008】
HEMT501バイアス回路500は、ソース端子が接地されたHEMT501のためのバイアス回路である。図21に示すように、HEMT501バイアス回路500は、バイポーラトランジスタBIP501、エミッタ側抵抗素子RE、コレクタ側抵抗素子RC、抵抗素子R501、および抵抗素子R502を備えている。
【0009】
バイポーラトランジスタBIP501のエミッタ端子は、HEMT501のドレイン端子に接続されるとともに、エミッタ側抵抗素子REを介して電源電圧VDDに接続されている。バイポーラトランジスタBIP501のコレクタ端子は、HEMT501のゲート端子に接続されるとともに、コレクタ側抵抗素子RCを介して負電源電圧VNEGに接続されている。バイポーラトランジスタBIP501のベース端子は、抵抗素子R501を介して接地されているとともに、抵抗素子R502を介して電源電圧VDDに接続されている。
【0010】
HEMTバイアス回路500では、HEMT501を負帰還ループの中に組み込んでいる。これにより、HEMT501のドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDは、下記の式(1)および式(2)で示す近似式になるように、自動的に決定される仕組みになっている。
【0011】
【数1】

【0012】
上記各式における各値は、以下のとおりである。
【0013】
:ドレイン電圧VDの電圧値
:ドレイン電流IDの電流値
:ベース電圧VBの電圧値
BE:ベース・エミッタ間電圧VBEの電圧値
VDD:電源電圧VDDの電圧値
:エミッタ側抵抗素子REの抵抗値
:抵抗素子R501の抵抗値
:抵抗素子R502の抵抗値。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開昭59−194522号公報(1984年11月5日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来のHEMTバイアス回路500は、(1)温度依存性、(2)電源電圧依存性、(3)電源電圧および負電源電圧からの雑音、(4)製造プロセスの限定、という4つの問題点を有している。HEMTバイアス回路500では、周囲温度または電源電圧が変動しても、所望のドレイン電圧および所望のドレイン電流を維持する必要がある。また、電源に重畳している雑音を、HEMT501のドレイン端子およびゲート端子に伝えないようにする必要がある。
【0016】
(1)温度依存性
図21に示したHEMTバイアス回路500では、バイポーラトランジスタBIP501のベース・エミッタ間電圧VBEによる電位差を利用して、HEMT501のドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDを決定する仕組みになっている。このため、周囲温度によって、ドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDが変化してしまう問題がある。
【0017】
ベース・エミッタ間電圧VBEは、下記の式(3)および式(4)で示される。
【0018】
【数2】

【0019】
上記各式における各値は、以下のとおりである。
【0020】
BE:ベース・エミッタ間電圧VBEの電圧値
k:ボルツマン定数
T:絶対温度
q:素電荷量
:コレクタ電流
b:比例定数
m:定数
Eg:シリコンのバンドギャップエネルギー。
【0021】
ドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDの温度依存性は、式(1)および式(2)をそれぞれ温度Tで微分することで得られ、下記の式(5)および式(6)で示される。
【0022】
【数3】

【0023】
ここで、例えば、ID=8mA、VD=2V、VDD=3.3Vに設定したいとする。このとき、図21のHEMTバイアス回路500のパラメータをそれぞれ、R501=1kΩ、R502=1.75kΩ、RE=50Ωのように選定し、VBE=0.8V、Eg=1.12eV、m=−3/2として、式(5)および式(6)と計算すると、下記の式(7)および式(8)が得られる。
【0024】
【数4】

【0025】
つまり、100℃の温度変化で、ドレイン電圧VDは約0.1V低下し、ドレイン電流IDは約2mA増加する。特に、ドレイン電流IDの温度依存は問題である。周囲温度の上昇とともに、ドレイン電流IDが増加すると、HEMT501の発熱により、さらに温度が上昇する。そして、これに応じてドレイン電流IDがさらに増加する。以降、放熱と発熱との熱的平衡状態に落ち着くまで、熱的な正帰還が生じる。このため、HEMTバイアス回路500の周囲温度は、低く保たなければならない制約が生じる。
【0026】
(2)電源電圧依存性
LNAの出力信号は、HEMT501のドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGで決定される。上記の式(1)および式(2)に示したように、図21のHEMTバイアス回路500におけるドレイン電圧VDは、電源電圧VDDの1次関数となっていることから、電源電圧VDDの変動(雑音に対する変動)に対して、強い相関があることがわかる。
【0027】
(3)電源電圧および負電源電圧からの雑音
電源電圧VDDや負電源電圧VNEGに雑音が含まれている場合、PSRR(Power Supply Rejection Ratio)が重要になる。PSRRは、ある電源電圧(ここでは電源電圧VDDおよび負電源電圧VNEG)からの雑音が、注目する端子においてどれだけ減衰するかを示す指標である。
【0028】
(3−1)電源電圧VDDに対するPSRR
ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGの電源電圧VDDへの依存性を詳細に知るためには、小信号等価回路を解く必要がある。そこで、図21のHEMTバイアス回路500における電源電圧VDDに対するPSRRを、図22を用いて示す。図22は、HEMTバイアス回路500の電源電圧VDDに対する小信号等価回路510である。キルヒホッフの電流則によって、下記の式(9)および式(10)を得る。
【0029】
【数5】

【0030】
上記各式における各値は、以下のとおりである。
【0031】
gm:バイポーラトランジスタBIP501の相互コンダクタンス
ge:バイポーラトランジスタBIP501のコレクタ・エミッタ間コンダクタンス
Gm:HEMT501の相互コンダクタンス
gds:HEMT501のドレイン・ソース間コンダクタンス
VDD:電源電圧VDDの電圧値
:ドレイン電圧VDの電圧値
:ゲート電圧VGの電圧値
:ベース電圧VBの電圧値
:エミッタ側抵抗素子REの抵抗値
:コレクタ側抵抗素子RCの抵抗値。
【0032】
そして、式(9)および式(10)の連立一次方程式を、ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGに対して解いた結果を電源電圧VDDで微分し、デシベル表記すると、下記の式(11)および式(12)のように、ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGに対する電源電圧VDDのPSRRがわかる。なお、計算過程で十分に小さい項は、近似処理をして、式を単純化した。
【0033】
【数6】

【0034】
式(11)および式(12)によって、ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGには、電源電圧VDDの雑音がほとんど減衰されずに伝わることがわかる。
【0035】
次いで、この減衰量が、LNAとして見た場合に十分かどうかを確認する。例えば、実際に、ID=8mA、VD=2V、VDD=3.3Vに設計したいとする。このとき、Gm=50mS、R501=1kΩ、R502=1.75kΩ、RE=50Ωと設定した場合に、ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGの電源電圧VDDに対するPSRRは、下記の式(13)および式(14)のようになる。
【0036】
【数7】

【0037】
この値は、LNA用途としては悪く、電源電圧VDDに雑音があるときに問題となる。この例の場合であれば、信号電力を−90dBmとすると、負電源電圧VNEGに重畳する雑音電力を、少なくとも−90dBm程度という極めて微小なレベルに雑音電力を抑えなければならない。
【0038】
(3−2)負電源電圧VNEGに対するPSRR
図20に示したように、HEMTのゲート電圧は負電圧である必要がある。すなわち、LNAに使われるHEMTは、正の電源電圧および負の電源電圧の2つを必要とする。
【0039】
通常、パラボラアンテナに設置されたLNBは、同軸ケーブルによりテレビやビデオセットと接続され、テレビやビデオセット側から同軸ケーブルを介して電源供給を受ける。このとき供給を受ける電源は、正電圧の電源のみである。そこで、正の電源電圧から、チャージポンプを使って負の電源電圧を生成することが多い。
【0040】
図23は、負電圧発生回路520の構成を示す回路図である。図24は、負電圧VNEGの電圧波形を示す波形図である。
【0041】
図23に示すように、負電圧発生回路520は、チャージポンプ回路で実現されている。チャージポンプ回路では、パルス状の電圧がコンデンサ521・522に印加され、2つのコンデンサ521・522間で電荷が充放電されることにより、出力端子が段階的に負電圧VNEGにされる。負電圧VNEGの電圧波形は、図24に示すように、負のDC電圧にパルス状の雑音が重畳したものになる。
【0042】
図21のHEMTバイアス回路500においてHEMT501のゲート端子に負電圧を供給するためには、VNEG端子に、図23の負電圧発生回路520の出力端子を接続することになる。このとき、図24に示すような負のDC電圧に重畳しているパルス状の雑音が、HEMT501のゲート端子およびドレイン端子に漏れ出すと、LNAの出力信号品質を劣化させるという問題に発展する。
【0043】
図21のHEMTバイアス回路500における負電源電圧VNEGに対するPSRRを、図25を用いて示す。図25は、HEMTバイアス回路500の負電源電圧VNEGに対する小信号等価回路530である。キルヒホッフの電流則によって、下記の式(15)および式(16)を得る。
【0044】
【数8】

【0045】
上記各式における各値は、VNEGが負電源電圧VNEGの電圧値であること以外は、前述の式(9)および式(10)と同じである。
【0046】
そして、式(15)および式(16)の連立一次方程式を、ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGに対して解いた結果を負電源電圧VNEGで微分し、デシベル表記すると、下記の式(17)および式(18)のように、ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGに対する負電源電圧VNEGのPSRRがわかる。なお、計算過程で十分に小さい項は、近似処理をして、式を単純化した。
【0047】
【数9】

【0048】
式(17)および式(18)によって、ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGには、負電源電圧VNEGの雑音が減衰されて伝わることがわかる。
【0049】
次いで、この減衰量が、LNAとして見た場合に十分かどうかを確認する。例えば、実際に、ID=8mA、VD=2V、VDD=3.3Vに設計したいとする。このとき、Gm=50mS、R501=1kΩ、R502=1.75kΩ、RE=50Ω、RC=40kΩ、gm=1mSと設定した場合に、ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGの負電源電圧VNEGに対するPSRRは、下記の式(19)および式(20)のようになる。
【0050】
【数10】

【0051】
この値は、LNA用途としては十分な減衰量とは言えない。この例の場合であれば、信号電力を−90dBmとすると、負電源電圧VNEGに重畳する雑音電力を、少なくとも−70dBm程度という極めて微小なレベルに雑音電力を抑えなければならない。
【0052】
(4)製造プロセスの限定
図21のHEMTバイアス回路500を、個別部品で実現する場合は特に問題とはならないが、集積回路(IC)で実現しようとする場合には、製造プロセスが限定されるという問題がある。
【0053】
図21に示したように、バイポーラトランジスタBIP501のVBE電位差を用いて、HEMT501のドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDを制御するためには、PNP型のバイポーラトランジスタが必須になる。しかしこの場合、例えば安価なCMOSプロセスでは、従来のHEMTバイアス回路500を集積化することはできない。
【0054】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、
・温度依存性の低減
・電源電圧依存性の低減
・電源電圧および負電圧に重畳されている雑音の十分な減衰(すなわち、電源電圧および負電圧に対するPSRRの改善)
・製造プロセスの選定自由度の向上
を実現することができるバイアス回路、LNA、LNB、通信用受信機、通信用送信機、およびセンサーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0055】
本発明のバイアス回路は、上記課題を解決するために、ソース端子が接地された増幅用FETのためのバイアス回路であって、両電源型の差動増幅器と、第1抵抗素子と、第1基準電圧源と、第2基準電圧源とを備え、上記差動増幅器は、正入力端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、負入力端子が上記第2基準電圧源に接続され、出力端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、上記第1抵抗素子は、一方の端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、他方の端子が上記第1基準電圧源に接続されていることを特徴としている。
【0056】
上記の構成によれば、増幅用FETのドレイン電流およびドレイン電圧を同時に所望の値に設定するとともに、温度依存性および電源電圧依存性を排除し、かつ非常に高い雑音除去率を得ることが可能となる。また、さらに、差動増幅器は、特殊な製造プロセスを必要とせず構成することができるので、製造プロセスの選定自由度を向上することが可能となる。
【0057】
また、本発明のバイアス回路は、上記増幅用FETは、HEMTであることが好ましい。
【0058】
本発明のバイアス回路は、ソース端子が接地された増幅用FETのためのバイアス回路であって、単一電源型の差動増幅器と、第1基準電圧源と、第2基準電圧源と、第1トランジスタと、第1抵抗素子と、第2抵抗素子と、負電源電圧源とを備え、上記第1トランジスタは、第1導通端子、第2導通端子、および制御端子を有し、上記差動増幅器は、第1入力端子が上記第2基準電圧源に接続され、第2入力端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、出力端子が上記第1トランジスタの制御端子に接続され、上記第1トランジスタは、第1導通端子が電源電圧に接続され、第2導通端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、上記第1抵抗素子は、一方の端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、他方の端子が上記第1基準電圧源に接続され、上記第2抵抗素子は、一方の端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、他方の端子が上記負電源電圧源に接続されていることを特徴としている。
【0059】
上記の構成によれば、増幅用FETのドレイン電流およびドレイン電圧を同時に所望の値に設定するとともに、温度依存性および電源電圧依存性を排除し、かつ非常に高い雑音除去率を得ることが可能となる。また、さらに、差動増幅器は、特殊な製造プロセスを必要とせず構成することができるので、製造プロセスの選定自由度を向上することが可能となる。
【0060】
また、本発明のバイアス回路は、上記増幅用FETは、HEMTであることが好ましい。
【0061】
また、本発明のバイアス回路は、上記第1トランジスタは、Pチャネル型MOSFETであり、上記第1トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、上記Pチャネル型MOSFETのソース端子、ドレイン端子、およびゲート端子であり、上記差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、正入力端子および負入力端子であることが好ましい。
【0062】
また、本発明のバイアス回路は、上記第1トランジスタは、PNP型バイポーラトランジスタであり、上記第1トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、上記PNP型バイポーラトランジスタのエミッタ端子、コレクタ端子、およびベース端子であり、上記差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、正入力端子および負入力端子であることが好ましい。
【0063】
また、本発明のバイアス回路は、上記第1トランジスタは、Nチャネル型MOSFETであり、上記第1トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、上記Nチャネル型MOSFETのドレイン端子、ソース端子、およびゲート端子であり、上記差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、負入力端子および正入力端子であることが好ましい。
【0064】
また、本発明のバイアス回路は、上記第1トランジスタは、NPN型バイポーラトランジスタであり、上記第1トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、上記NPN型バイポーラトランジスタのコレクタ端子、エミッタ端子、およびベース端子であり、上記差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、負入力端子および正入力端子であることが好ましい。
【0065】
本発明のバイアス回路は、ソース端子が接地された増幅用FETのためのバイアス回路であって、単一電源型の第1差動増幅器と、単一電源型の第2差動増幅器と、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第1抵抗素子と、第2抵抗素子と、第3抵抗素子と、第4抵抗素子と、第5抵抗素子と、基準電圧源と、負電源電圧源とを備え、上記第1トランジスタは、第1導通端子、第2導通端子、および制御端子を有し、上記第2トランジスタは、第1導通端子、第2導通端子、および制御端子を有し、上記第1差動増幅器は、第1入力端子が上記第5抵抗素子を介して上記第2トランジスタの第2導通端子に接続され、第2入力端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、出力端子が上記第1トランジスタの制御端子に接続され、上記第2差動増幅器は、第1入力端子が上記第4抵抗素子および上記第5抵抗素子を介して上記第2トランジスタの第2導通端子に接続され、第2入力端子が上記基準電圧源に接続され、出力端子が上記第2トランジスタの制御端子に接続され、上記第1トランジスタは、第1導通端子が電源電圧に接続され、第2導通端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、上記第2トランジスタは、第1導通端子が電源電圧に接続され、第2導通端子が上記第5抵抗素子、上記第4抵抗素子および上記第3抵抗素子をこの順番に介して接地され、上記第1抵抗素子は、一方の端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、他方の端子が上記第2トランジスタの第2導通端子に接続され、上記第2抵抗素子は、一方の端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、他方の端子が上記負電源電圧源に接続されていることを特徴としている。
【0066】
上記の構成によれば、増幅用FETのドレイン電流およびドレイン電圧を同時に所望の値に設定するとともに、温度依存性および電源電圧依存性を排除し、かつ非常に高い雑音除去率を得ることが可能となる。また、さらに、差動増幅器は、特殊な製造プロセスを必要とせず構成することができるので、製造プロセスの選定自由度を向上することが可能となる。
【0067】
また、本発明のバイアス回路は、上記増幅用FETは、HEMTであることが好ましい。
【0068】
また、本発明のバイアス回路は、上記第1トランジスタおよび上記第2トランジスタは、Pチャネル型MOSFETであり、上記第1トランジスタおよび上記第2トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、上記Pチャネル型MOSFETのソース端子、ドレイン端子、およびゲート端子であり、上記第1差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、正入力端子および負入力端子であり、上記第2差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、正入力端子および負入力端子であることが好ましい。
【0069】
また、本発明のバイアス回路は、上記第1トランジスタおよび上記第2トランジスタは、PNP型バイポーラトランジスタであり、上記第1トランジスタおよび上記第2トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、上記PNP型バイポーラトランジスタのエミッタ端子、コレクタ端子、およびベース端子であり、上記第1差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、正入力端子および負入力端子であり、上記第2差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、正入力端子および負入力端子であることが好ましい。
【0070】
また、本発明のバイアス回路は、上記第1トランジスタおよび上記第2トランジスタは、Nチャネル型MOSFETであり、上記第1トランジスタおよび上記第2トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、上記Nチャネル型MOSFETのドレイン端子、ソース端子、およびゲート端子であり、上記第1差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、負入力端子および正入力端子であり、上記第2差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、負入力端子および正入力端子であることが好ましい。
【0071】
また、本発明のバイアス回路は、上記第1トランジスタおよび上記第2トランジスタは、NPN型バイポーラトランジスタであり、上記第1トランジスタおよび上記第2トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、上記NPN型バイポーラトランジスタのコレクタ端子、エミッタ端子、およびベース端子であり、上記第1差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、負入力端子および正入力端子であり、上記第2差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、負入力端子および正入力端子であることが好ましい。
【0072】
また、本発明のバイアス回路は、上記第3抵抗素子の代わりに、定電流源が用いられていることが好ましい。
【0073】
また、本発明のバイアス回路は、上記第4抵抗素子が除去されていることが好ましい。
【0074】
また、本発明のバイアス回路は、上記第3抵抗素子の代わりに、定電流源が用いられ、上記第4抵抗素子が除去されていることが好ましい。
【0075】
また、本発明のバイアス回路は、電圧耐圧の保護素子をさらに備え、上記保護素子は、上記第1トランジスタの第2導通端子と上記増幅用FETのゲート端子との間に挿入されていることが好ましい。
【0076】
また、本発明のバイアス回路は、上記基準電圧源は、バンドギャップ電圧を出力するバンドギャップリファレンス回路により構成されていることが好ましい。
【0077】
また、本発明のバイアス回路は、上記第1差動増幅器、上記第2差動増幅器、上記第1トランジスタ、上記第2トランジスタ、上記第1抵抗素子、上記第2抵抗素子、上記第3抵抗素子、上記第4抵抗素子、および上記第5抵抗素子は、集積回路によって構成されていることが好ましい。
【0078】
また、本発明のバイアス回路は、上記基準電圧源、上記負電源電圧源、またはその両方は、上記集積回路とともに集積化されて構成されていることが好ましい。
【0079】
本発明のLNAは、上記課題を解決するために、ソース端子が接地された増幅用FETと、上記バイアス回路とを備え、上記増幅用FETのゲート端子を入力端子とし、上記増幅用FETのドレイン端子を出力端子とすることを特徴としている。
【0080】
本発明のLNBは、上記課題を解決するために、アンテナによって受信した信号を増幅およびダウンコンバートして後段に伝送するLNBであって、上記信号を増幅するLNAとして上記LNAを少なくとも1つ備えていることを特徴としている。
【0081】
本発明の通信用受信機は、上記課題を解決するために、通信用受信機であって、通信路からの信号を受信する受信デバイスと、上記受信デバイスから出力される信号を増幅するLNAとして上記LNAを備えていることを特徴としている。
【0082】
本発明の通信用送信機は、上記課題を解決するために、通信用送信機であって、送信する信号を増幅するLNAとして上記LNAと、上記LNAにより増幅された信号を通信路へ送信する送信デバイスとを備えていることを特徴としている。
【0083】
本発明のセンサーシステムは、上記課題を解決するために、センサーシステムであって、対象物の変化を検出し、該検出した変化に応じた信号を生成するセンシングデバイスと、上記センシングデバイスから出力される信号を増幅するLNAとして上記LNAを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0084】
以上のように、本発明のバイアス回路は、ソース端子が接地された増幅用FETのためのバイアス回路であって、両電源型の差動増幅器と、第1抵抗素子と、第1基準電圧源と、第2基準電圧源とを備え、上記差動増幅器は、正入力端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、負入力端子が上記第2基準電圧源に接続され、出力端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、上記第1抵抗素子は、一方の端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、他方の端子が上記第1基準電圧源に接続されている構成である。
【0085】
また、本発明のバイアス回路は、ソース端子が接地された増幅用FETのためのバイアス回路であって、単一電源型の差動増幅器と、第1基準電圧源と、第2基準電圧源と、第1トランジスタと、第1抵抗素子と、第2抵抗素子と、負電源電圧源とを備え、上記第1トランジスタは、第1導通端子、第2導通端子、および制御端子を有し、上記差動増幅器は、第1入力端子が上記第2基準電圧源に接続され、第2入力端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、出力端子が上記第1トランジスタの制御端子に接続され、上記第1トランジスタは、第1導通端子が電源電圧に接続され、第2導通端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、上記第1抵抗素子は、一方の端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、他方の端子が上記第1基準電圧源に接続され、上記第2抵抗素子は、一方の端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、他方の端子が上記負電源電圧源に接続されている構成である。
【0086】
また、本発明のバイアス回路は、ソース端子が接地された増幅用FETのためのバイアス回路であって、単一電源型の第1差動増幅器と、単一電源型の第2差動増幅器と、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第1抵抗素子と、第2抵抗素子と、第3抵抗素子と、第4抵抗素子と、第5抵抗素子と、基準電圧源と、負電源電圧源とを備え、上記第1トランジスタは、第1導通端子、第2導通端子、および制御端子を有し、上記第2トランジスタは、第1導通端子、第2導通端子、および制御端子を有し、上記第1差動増幅器は、第1入力端子が上記第5抵抗素子を介して上記第2トランジスタの第2導通端子に接続され、第2入力端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、出力端子が上記第1トランジスタの制御端子に接続され、上記第2差動増幅器は、第1入力端子が上記第4抵抗素子および上記第5抵抗素子を介して上記第2トランジスタ第2導通端子に接続され、第2入力端子が上記基準電圧源に接続され、出力端子が上記第2トランジスタの制御端子に接続され、上記第1トランジスタは、第1導通端子が電源電圧に接続され、第2導通端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、上記第2トランジスタは、第1導通端子が電源電圧に接続され、第2導通端子が上記第5抵抗素子、上記第4抵抗素子および上記第3抵抗素子をこの順番に介して接地され、上記第1抵抗素子は、一方の端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、他方の端子が上記第2トランジスタの第2導通端子に接続され、上記第2抵抗素子は、一方の端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、他方の端子が上記負電源電圧源に接続されている構成である。
【0087】
上記の各構成によれば、増幅用FETのドレイン電流およびドレイン電圧を同時に所望の値に設定するとともに、温度依存性および電源電圧依存性を排除し、かつ非常に高い雑音除去率を得ることができるという効果を奏する。また、さらに、差動増幅器は、特殊な製造プロセスを必要とせず構成することができるので、製造プロセスの選定自由度を向上することができるという効果を併せて奏する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明におけるバイアス回路の第1実施形態を示す回路図である。
【図2】本発明におけるバイアス回路の第2実施形態を示す回路図である。
【図3】図2のバイアス回路の電源電圧VDDに対する小信号等価回路である。
【図4】図2のバイアス回路の負電源電圧源VNEGに対する小信号等価回路である。
【図5】本発明におけるバイアス回路の第3実施形態を示す回路図である。
【図6】本発明におけるバイアス回路の第6実施形態を示す回路図である。
【図7】図6のバイアス回路におけるオペアンプAMP3を含む第1の負帰還ループの、電源電圧VDDに対する小信号等価回路である。
【図8】本発明におけるバイアス回路の第7実施形態を示す回路図である。
【図9】本発明におけるバイアス回路の第8実施形態を示す回路図である。
【図10】本発明におけるバイアス回路の第9実施形態を示す回路図である。
【図11】本発明におけるLNAの実施の一形態を示す回路図である。
【図12】本発明におけるLNAの他の実施の形態を示す回路図である。
【図13】保護素子の一構成例を示す図である。
【図14】バンドギャップリファレンス回路の一構成例を示す回路図である。
【図15】本発明におけるLNAのさらに他の実施の形態を示す回路ブロック図である。
【図16】本発明におけるLNBの実施の一形態を示す回路ブロック図である。
【図17】本発明における通信用受信機および通信用送信機の実施の一形態を示すブロック図である。
【図18】本発明におけるセンサーシステムの実施の一形態を示すブロック図である。
【図19】HEMTのバイアスを説明するための回路図である。
【図20】HEMTのゲート電圧とドレイン電流との関係を示すグラフである。
【図21】従来のHEMTバイアス回路の構成を示す回路図である。
【図22】図21の従来のHEMTバイアス回路の電源電圧VDDに対する小信号等価回路である。
【図23】負電圧発生回路の構成を示す回路図である。
【図24】負電圧VNEGの電圧波形を示す波形図である。
【図25】図21の従来のHEMTバイアス回路の負電源電圧VNEGに対する小信号等価回路である。
【図26】図6のバイアス回路と図21の従来のHEMTバイアス回路とにおける、温度変化に対する、(a)HEMTのドレイン電圧、および、(b)HEMTのドレイン電流の特性を示すグラフである。
【図27】図26の値を示すときのHEMTのドレイン電圧およびドレイン電流の式を示す表である。
【図28】図6のバイアス回路と図21の従来のHEMTバイアス回路とにおける、電源電圧変化に対する、(a)HEMTのドレイン電圧、および、(b)HEMTのドレイン電流の特性を示すグラフである。
【図29】図6のバイアス回路と図21の従来のHEMTバイアス回路とにおける、電源電圧VDDに対する、(a)HEMTのドレイン端子、および、(b)HEMTのゲート端子のPSRRの特性を示すグラフである。
【図30】図29の値を示すときのHEMTのドレイン端子およびゲート端子のPSRRの式を示す表である。
【図31】図6のバイアス回路と図21の従来のHEMTバイアス回路とにおける、負電源電圧VNEGに対する、(a)HEMTのドレイン端子、および、(b)HEMTのゲート端子のPSRRの特性を示すグラフである。
【図32】図31の値を示すときのHEMTのドレイン端子およびゲート端子のPSRRの式を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
本発明の各実施形態について図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、各実施の形態において説明すること以外の構成は、前述の実施の形態と同じである。また、説明の便宜上、各実施の形態においては、前述の実施の形態の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0090】
〔実施の形態1〕
図1は、本実施の形態のHEMTバイアス回路11の一構成例を示す回路図である。
【0091】
本実施の形態のHEMTバイアス回路11(バイアス回路)は、ソース端子4が接地されたHEMT1(増幅用FET)のためのバイアス回路である。HEMTバイアス回路11は、図1に示すように、オペアンプAMP1(両電源型の差動増幅器)、抵抗素子RI(第1抵抗素子)、第1基準電圧源VX、第2基準電圧源VY、および負電源電圧源VNEGを備えている。
【0092】
オペアンプAMP1は、両電源型のオペアンプであり、差動増幅器として構成されている。オペアンプAMP1の正電源端子および負電源端子は、電源電圧VDDおよび負電源電圧源VNEGにそれぞれ接続されている。オペアンプAMP1の正入力端子(非反転入力端子)は、HEMT1のドレイン端子3に接続されている。オペアンプAMP1の負入力端子(反転入力端子)は、第2基準電圧源VYに接続されている。オペアンプAMP1の出力端子は、HEMT1のゲート端子2に接続されている。
【0093】
抵抗素子RIは、2つの端子を有しており、一方の端子がHEMT1のドレイン端子3に接続され、他方の端子が第1基準電圧源VXに接続されている。
【0094】
第1基準電圧源VXおよび第2基準電圧源VYは、正の電圧を発生する電圧源である。第1基準電圧源VXおよび第2基準電圧源VYは、温度Tや電源電圧VDDの変動に全く影響を受けない。負電源電圧源VNEGは、負の電源電圧(負電源電圧VNEGとも呼ぶ)を発生する電圧源である。なお、電源電圧VDDは正の電源電圧であり、外部の他の部材と共用することができる。
【0095】
HEMTバイアス回路11では、HEMT1を、オペアンプAMP1の負帰還ループの中に組み込んでいる。これにより、HEMT1のドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDは、下記の式(21)および式(22)で示す近似式になるように、自動的に決定される仕組みになっている。
【0096】
【数11】

【0097】
上記各式における各値は、以下のとおりである。
【0098】
:ドレイン電圧VDの電圧値
:ドレイン電流IDの電流値
:第1基準電圧源VXの電圧値
:第2基準電圧源VYの電圧値
:抵抗素子RIの抵抗値。
【0099】
すなわち、第2基準電圧源VYの基準電圧VYをオペアンプAMP1の入力に印加することで、HEMT1のドレイン端子3では所定の電圧VYを得る。また、第1基準電圧源VXとHEMT1のドレイン端子3との間に抵抗素子RIを挿入することによって、基準電圧VXと基準電圧VYとの電位差が抵抗素子RIの両端に生じるため、所望のドレイン電流IDを得る。
【0100】
式(21)および式(22)は、温度Tや電源電圧VDDの関数ではないので、HEMT1のドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDは、これらの変動を受けない。よって、HEMTバイアス回路11では、温度依存性および電源電圧依存性を排除することが可能となる。
【0101】
また、電源電圧VDDおよび負電源電圧VNEGからHEMT1のゲート端子2へのPSRRは、オペアンプAMP1のPSRRと等しくなるので、非常に高い雑音除去率を得ることが可能となる。
【0102】
さらに、オペアンプAMP1は、特殊な製造プロセスを必要とせず構成することができる。それゆえ、図21に示した従来のHEMTバイアス回路500では、PNP型バイポーラトランジスタが必須であったが、HEMTバイアス回路11では、トランジスタの種類は問われない。よって、HEMTバイアス回路11では、製造プロセスの選定の自由度が高くなり、CMOSプロセスや、MOSプロセス、バイポーラプロセス、BiCMOSプロセスなど、様々なプロセスでの集積回路の製造が可能となる。
【0103】
但し、近年のオペアンプ(差動増幅器)は、単一電源が主流である。また、図1に示すオペアンプAMP1は、GNDレベルを挟んだ正負の両電源を必要とするというデメリットがある。
【0104】
〔実施の形態2〕
図2は、本実施の形態のHEMTバイアス回路12の一構成例を示す回路図である。
【0105】
本実施の形態のHEMTバイアス回路12(バイアス回路)は、ソース端子が接地されたHEMT1のためのバイアス回路である。HEMTバイアス回路12は、図2に示すように、オペアンプAMP2(単一電源型の差動増幅器,第1差動増幅器)、抵抗素子RI、第1基準電圧源VX、第2基準電圧源VY、負電源電圧源VNEG、Pチャネル型MOSFET(以下、PMOSトランジスタと称する)PMOS1(第1トランジスタ)、および抵抗素子RG(第2抵抗素子)を備えている。
【0106】
オペアンプAMP2は、単一電源型のオペアンプであり、差動増幅器として構成されている。オペアンプAMP2の正電源端子は、電源電圧VDDに接続されている。オペアンプAMP2の正入力端子(非反転入力端子、第1入力端子)は、第2基準電圧源VYに接続されている。オペアンプAMP2の負入力端子(反転入力端子、第2入力端子)は、HEMT1のドレイン端子に接続されている。オペアンプAMP2の出力端子は、PMOSトランジスタPMOS1のゲート端子(制御端子)に接続されている。
【0107】
PMOSトランジスタPMOS1のソース端子(第1導通端子)は、電源電圧VDDに接続されている。PMOSトランジスタPMOS1のドレイン端子(第2導通端子)は、HEMT1のゲート端子に接続されている。
【0108】
抵抗素子RGは、2つの端子を有しており、一方の端子がHEMT1のゲート端子に接続され、他方の端子が負電源電圧源VNEGに接続されている。
【0109】
HEMTバイアス回路12では、HEMT1を、オペアンプAMP2の負帰還ループの中に組み込んでいる。これにより、HEMT1のドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDは、前述の式(21)および式(22)で示す近似式になるように、自動的に決定される仕組みになっている。式(21)および式(22)によれば、HEMT1のドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDは、温度Tや電源電圧VDDの変動を受けないので、HEMTバイアス回路12では、温度依存性および電源電圧依存性を排除することが可能となる。
【0110】
<電源電圧VDDに対するPSRR>
次に、HEMTバイアス回路12によりバイアスを受けるHEMT1のドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGの、電源電圧VDDに対するPSRRを、図3を用いて示す。図3は、図2のHEMTバイアス回路12の電源電圧VDDに対する小信号等価回路13である。キルヒホッフの電流則によって、下記の式(23)および式(24)を得る。
【0111】
【数12】

【0112】
上記各式における各値は、以下のとおりである。
【0113】
gm:PMOSトランジスタPMOS1の相互コンダクタンス
gp:PMOSトランジスタPMOS1のドレイン・ソース間コンダクタンス
Gm:HEMT1の相互コンダクタンス
gds:HEMT1のドレイン・ソース間コンダクタンス
VDD:電源電圧VDDの電圧値
A2:オペアンプAMP2のDCゲイン
:ドレイン電圧VDの電圧値
:ゲート電圧VGの電圧値
:抵抗素子RIの抵抗値
:抵抗素子RGの抵抗値。
【0114】
そして、式(23)および式(24)の連立一次方程式を、ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGに対して解いた結果を電源電圧VDDで微分し、デシベル表記すると、下記の式(25)および式(26)のように、ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGに対する電源電圧VDDのPSRRがわかる。なお、計算過程で十分に小さい項は近似処理をして、式を単純化した。
【0115】
【数13】

【0116】
式(25)および式(26)によって、ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGには、電源電圧VDDの雑音が減衰されて伝わることがわかる。
【0117】
次いで、この減衰量が、LNAとして見た場合に十分かどうかを確認する。例えば、実際に、ID=8mA、VD=2V、VDD=3.3V、A2=10000に設計したいとする。このとき、Gm=40mS、RI=62.5Ωと設定した場合に、ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGの電源電圧VDDに対するPSRRは、下記の式(27)および式(28)のようになる。
【0118】
【数14】

【0119】
この値は、LNAとしてみると十分な減衰量である。例えば、LNAに入力される信号電力を−90dBmとした場合に、電源電圧VDDに、−20dBmの雑音電力が重畳したとしても、LNAは良好な信号増幅を得られることがわかる。
【0120】
<負電源電圧VNEGに対するPSRR>
次に、HEMTバイアス回路12によりバイアスを受けるHEMT1のドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGの、負電源電圧源VNEGに対するPSRRを、図4を用いて示す。
【0121】
HEMTバイアス回路12の負電源電圧源VNEGとしては、図23に示した負電圧発生回路520を用いることができる。この場合、抵抗素子RGの一方の端子に、図23の負電圧発生回路520の出力端子を接続する。但し、負電源電圧源VNEGの負のDC電圧に重畳しているパルス状の雑音が、HEMT1のゲート端子およびドレイン端子に漏れ出すと、LNAの出力信号品質を劣化させるという問題に発展する。
【0122】
図4は、図2のHEMTバイアス回路12の負電源電圧源VNEGに対する小信号等価回路14である。キルヒホッフの電流則によって、下記の式(29)および式(30)を得る。
【0123】
【数15】

【0124】
上記各式における各値は、VNEGが負電源電圧VNEGの電圧値であること以外は、前述の式(23)および式(24)と同じである。
【0125】
そして、式(29)および式(30)の連立一次方程式を、ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGに対して解いた結果を負電源電圧VNEGで微分し、デシベル表記すると、下記の式(31)および式(32)のように、ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGに対する負電源電圧VNEGのPSRRがわかる。なお、計算過程で十分に小さい項は近似処理をして、式を単純化した。
【0126】
【数16】

【0127】
式(31)および式(32)によって、ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGには、負電源電圧VNEGの雑音が減衰されて伝わることがわかる。
【0128】
次いで、この減衰量が、LNAとして見た場合に十分かどうかを確認する。例えば、実際に、ID=8mA、VD=2V、VDD=3.3V、A2=10000に設計したいとする。このとき、Gm=40mS、gm=1mS、RI=62.5Ω、RG=40kΩと設定した場合に、ドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGの負電源電圧VNEGに対するPSRRは、下記の式(33)および式(34)のようになる。
【0129】
【数17】

【0130】
この値は、LNAとしてみると十分な減衰量である。この例の場合であれば、信号電力を−90dBmとすると、負電源電圧VNEGに重畳する雑音電力は、+10dBmという大きな雑音電力であっても許容することができる。
【0131】
以上のように、HEMTバイアス回路12では、電源電圧VDDおよび負電源電圧VNEGに対するドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGのPSRRが十分に小さくなる。したがって、非常に高い雑音除去率を得ることが可能となる。
【0132】
〔実施の形態3〕
図5は、本実施の形態のHEMTバイアス回路15の一構成例を示す回路図である。
【0133】
本実施の形態のHEMTバイアス回路15(バイアス回路)は、前記実施の形態2のHEMTバイアス回路12の構成のうち、PMOSトランジスタPMOS1をNチャネル型MOSFET(以下、NMOSトランジスタと称する)NMOS1(第1トランジスタ)に入れ替え、かつ、オペアンプAMP2の正入力端子および負入力端子の接続先を入れ替えた構成を有する。
【0134】
つまりは、オペアンプAMP2の正入力端子(第2入力端子)は、HEMT1のドレイン端子に接続されている。オペアンプAMP2の負入力端子(第1入力端子)は、第2基準電圧源VYに接続されている。オペアンプAMP2の出力端子は、NMOSトランジスタNMOS1のゲート端子(制御端子)に接続されている。NMOSトランジスタNMOS1のドレイン端子(第1導通端子)は、電源電圧VDDに接続されている。NMOSトランジスタNMOS1のソース端子(第2導通端子)は、HEMT1のゲート端子に接続されている。
【0135】
図5に示すように、HEMTバイアス回路15は、図2に示した前記実施の形態2のHEMTバイアス回路12とほぼ同様の構造となる。よって、HEMTバイアス回路15は、温度依存性、電源電圧依存性、および各PSRRに関して、上記HEMTバイアス回路12とほぼ同様の効果を得ることが可能となる。
【0136】
〔実施の形態4〕
本実施の形態のHEMTバイアス回路は、前記実施の形態2のHEMTバイアス回路12の構成のうち、PMOSトランジスタPMOS1をPNP型バイポーラトランジスタに入れ替えた構成を有する(図示せず)。PMOSトランジスタPMOS1のソース端子、ドレイン端子、およびゲート端子が、PNP型バイポーラトランジスタのエミッタ端子、コレクタ端子、およびベース端子にそれぞれ対応する。本実施の形態のHEMTバイアス回路は、前記実施の形態2のHEMTバイアス回路12とほぼ同様の構造となり、ほぼ同様の効果を奏する。
【0137】
〔実施の形態5〕
本実施の形態のHEMTバイアス回路は、前記実施の形態3のHEMTバイアス回路15の構成のうち、NMOSトランジスタNMOS1をNPN型バイポーラトランジスタに入れ替えた構成を有する(図示せず)。NMOSトランジスタNMOS1のドレイン端子、ソース端子、およびゲート端子が、NPN型バイポーラトランジスタのコレクタ端子、エミッタ端子、およびベース端子にそれぞれ対応する。本実施の形態のHEMTバイアス回路は、前記実施の形態3のHEMTバイアス回路15とほぼ同様の構造となり、ほぼ同様の効果を奏する。
【0138】
〔実施の形態6〕
図6は、本実施の形態のHEMTバイアス回路16の一構成例を示す回路図である。
【0139】
本実施の形態のHEMTバイアス回路16(バイアス回路)は、ソース端子が接地されたHEMT1のためのバイアス回路である。HEMTバイアス回路16は、図6に示すように、オペアンプAMP2、オペアンプAMP3(第2差動増幅器)、抵抗素子RI、抵抗素子RG、抵抗素子R1(第4抵抗素子)、抵抗素子R2(第5抵抗素子)、抵抗素子RR(第3抵抗素子)、PMOSトランジスタPMOS1、PMOSトランジスタPMOS2(第2トランジスタ)、基準電圧源VREF、および負電源電圧源VNEGを備えている。
【0140】
HEMTバイアス回路16では、前記実施の形態1〜5において用いられていた第1基準電圧源VXおよび第2基準電圧源VYからの電圧が、オペアンプAMP3、PMOSトランジスタPMOS2、抵抗素子R2、抵抗素子R1、および抵抗素子RRからなる回路により生成されている。
【0141】
オペアンプAMP3の正入力端子(第1入力端子)は、抵抗素子R1および抵抗素子R2を介してPMOSトランジスタPMOS2のドレイン端子に接続されている。オペアンプAMP3の負入力端子(第2入力端子)は、基準電圧源VREFに接続されている。オペアンプAMP3の出力端子は、PMOSトランジスタPMOS2のゲート端子(制御端子)に接続されている。
【0142】
PMOSトランジスタPMOS2のソース端子(第1導通端子)は、電源電圧VDDに接続されている。PMOSトランジスタPMOS2のドレイン端子(第2導通端子)は、抵抗素子R2、抵抗素子R1、および抵抗素子RRをこの順番に介して接地されている。
【0143】
このように、PMOSトランジスタPMOS2、抵抗素子R2、および抵抗素子R1は、オペアンプAMP3の負帰還ループに中に組み込まれている。ここで、PMOSトランジスタPMOS2のドレイン端子と抵抗素子R2との間の電位をVXとする。抵抗素子R2と抵抗素子R1との間の電位をVYとする。抵抗素子R1と抵抗素子RRとの間の電位をVZとする。電位VXは、第1基準電圧源VXからの電圧に相当する。電位VYは、第2基準電圧源VYからの電圧に相当する。
【0144】
オペアンプAMP2の正入力端子は、電位VY、すなわち抵抗素子R2と抵抗素子R1との間の経路に接続されている。抵抗素子RIの他方の端子は、電位VX、すなわちPMOSトランジスタPMOS2のドレイン端子と抵抗素子R2との間の経路に接続されている。
【0145】
基準電圧源VREFは、正の電圧を発生する電圧源である。基準電圧源VREFは、温度Tや電源電圧VDDの変動に全く影響を受けない。
【0146】
HEMTバイアス回路16では、オペアンプAMP3を含む第1の負帰還ループと、オペアンプAMP2を含む第2の負帰還ループとが形成されている。そして、HEMTバイアス回路16では、この2つの負帰還ループを用いて、HEMT1のドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDが所望の値となるように、HEMT1へのゲート電圧VGが自動的に制御されている。
【0147】
<ドレイン電圧VDおよびドレイン電流ID>
HEMTバイアス回路16では、HEMT1を、オペアンプAMP2の負帰還ループの中に組み込んでいる。これにより、HEMT1のドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDは、下記の式(35)および、式(36)で示す近似式になるように、自動的に決定される仕組みになっている。
【0148】
【数18】

【0149】
上記各式における各値は、以下のとおりである。
【0150】
:ドレイン電圧VDの電圧値
:ドレイン電流IDの電流値
VREF:基準電圧源VREFの電圧値
:抵抗素子RIの抵抗値
:抵抗素子RRの抵抗値
:抵抗素子R1の抵抗値
:抵抗素子R2の抵抗値。
【0151】
<ドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDの温度依存性>
ドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDの温度係数は、式(35)および式(36)を温度Tで微分することで、下記の式(37)および式(38)に示すように求められる。
【0152】
【数19】

【0153】
式(37)および式(38)に示すように、ドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDの温度係数はゼロとなる。よって、HEMTバイアス回路16では、温度依存性を完全に排除することが可能となる。
【0154】
<ドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDの電源電圧依存性>
ドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDの、電源電圧VDDに対する変動の係数は、式(35)および式(36)を電源電圧VDDで微分することで、下記の式(39)および式(40)に示すように求められる。
【0155】
【数20】

【0156】
式(39)および式(40)に示すように、ドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDの、電源電圧VDDに対する変動の係数はゼロとなる。よって、HEMTバイアス回路16では、電源電圧依存性を完全に排除することが可能となる。
【0157】
<電源電圧VDDに対するPSRR>
次に、HEMTバイアス回路16によりバイアスを受けるHEMT1のドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGの、電源電圧VDDに対するPSRRについて説明する。
【0158】
上述した電源電圧VDDの変動への依存性を示す式(39)および式(40)は、近似式である式(35)および式(36)を電源電圧VDDで微分したものであるため、厳密ではない。電源電圧VDDに雑音が重畳した際に、VD端子およびVG端子において、どれだけ雑音が減衰できているかを示すPSRRを求めるためには、通常、小信号等価回路を用いて求める。
【0159】
しかし、図6に示すHEMTバイアス回路16では、オペアンプAMP3を含む第1の負帰還ループと、オペアンプAMP2を含む第2の負帰還ループとの、2つの負帰還ループが相互に影響しあうため、小信号等価回路の解析が極めて煩雑になる。そこで、解析を簡略化するために、2つの負帰還ループを個別に検証する。
【0160】
(第1の負帰還ループ)
まず、オペアンプAMP3を含む第1の負帰還ループの出力電位VX,VY,VZが、電源電圧VDDの影響をどれほど受けるかを検証する。
【0161】
図7は、オペアンプAMP3を含む第1の負帰還ループの、電源電圧VDDに対する小信号等価回路17である。キルヒホッフの電流則によって、下記の式(41)、式(42)、および式(43)を得る。
【0162】
【数21】

【0163】
上記各式における各値は、以下のとおりである。
【0164】
gm:PMOSトランジスタPMOS2の相互コンダクタンス
gds:PMOSトランジスタPMOS2のドレイン・ソース間コンダクタンス
A1:オペアンプAMP3のDCゲイン
VDD:電源電圧VDDの電圧値
VREF:基準電圧源VREFの電圧値
:電位VXの電圧値
:電位VYの電圧値
:電位VZの電圧値
:抵抗素子RRの抵抗値
:抵抗素子R1の抵抗値
:抵抗素子R2の抵抗値。
【0165】
そして、式(41)、式(42)、および式(43)の連立一次方程式を、電位VX,VY,VZに対して解いた結果を電源電圧VDDで微分し、デシベル表記すると、下記の式(44)、式(45)、および式(46)のように、電位VX,VY,VZに対する電源電圧VDDのPSRRがわかる。なお、計算過程で十分に小さい項は近似処理をして、式を単純化した。
【0166】
【数22】

【0167】
式(44)、式(45)、および式(46)によって、電位VX,VY,VZには、電源電圧VDDの雑音が減衰されて伝わることがわかる。
【0168】
次いで、この減衰量が、電圧源として見た場合に十分かどうかを確認する。例えば、実際に、ID=8mA、VD=2V、VDD=3.3V、A1=10000に設計したいとする。このとき、RR=12kΩ、R1=8kΩ、R2=5kΩと設定した場合に、電位VX,VY,VZの電源電圧VDDに対するPSRRは、下記の式(47)、式(48)、および式(49)のようになる。
【0169】
【数23】

【0170】
この値は、電圧源としてみると十分な減衰量である。
【0171】
(第2の負帰還ループ)
次いで、オペアンプAMP2を含む第2の負帰還ループについて説明する。
【0172】
式(47)、式(48)、および式(49)で示した値は、小信号的には、グラウンドレベルに近似することができる。すなわち、オペアンプAMP2を含む第2の負帰還ループの小信号解析においては、電位VX,VY,VZをGNDレベルに終端することができる。
【0173】
よって、第2の負帰還ループにおけるHEMT1のドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGの、電源電圧VDDに対するPSRRを求めるための等価回路は、図3に示した小信号等価回路13となる。したがって、図3の小信号等価回路13は、前記実施の形態2のHEMTバイアス回路12の等価回路であることから、HEMT1のドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGの電源電圧VDDに対するPSRRは、実施の形態2のHEMTバイアス回路12と同等の効果を得ることが可能となる。
【0174】
<負電源電圧VNEGに対するPSRR>
上述のように、オペアンプAMP2を含む第2の負帰還ループの小信号解析においては、電位VX,VY,VZをGNDレベルに終端することができる。
【0175】
よって、負電源電圧源VNEGから見込んだ等価回路は、図4に示した小信号等価回路14となる。したがって、図4の小信号等価回路14は、前記実施の形態2のHEMTバイアス回路12の等価回路であることから、HEMT1のドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGの負電源電圧VNEGに対するPSRRは、実施の形態2のHEMTバイアス回路12と同等の効果を得ることが可能となる。
【0176】
以上により、HEMTバイアス回路16では、電源電圧VDDおよび負電源電圧VNEGに対するドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGのPSRRが十分に小さくなる。したがって、非常に高い雑音除去率を得ることが可能となる。
【0177】
〔実施の形態7〕
図8は、本実施の形態のHEMTバイアス回路18の一構成例を示す回路図である。
【0178】
本実施の形態のHEMTバイアス回路18(バイアス回路)は、前記実施の形態6のHEMTバイアス回路16の構成のうち、抵抗素子RRを定電流源IBに入れ替えた構成を有する。この構成により、HEMT1のドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDは、下記の式(50)および式(51)のようになる。
【0179】
【数24】

【0180】
上記各式における各値は、IBが定電流源IBの電流値であること以外は、前述の式(35)および式(36)と同じである。
【0181】
集積回路において、2つの抵抗素子の抵抗値の相対値は小さくすることができる。すなわち、上記構成を有するHEMTバイアス回路18のメリットは、ドレイン電流IDの式が抵抗値の比となるので、電流ばらつきを小さくすることができる点にある。但し、式(50)ではドレイン電圧VDにR1の項が存在するため、ドレイン電圧VDのばらつきは大きいままとなる。
【0182】
式(50)および式(51)によれば、温度Tで微分することで、ドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDの温度係数はゼロとなることがわかる。よって、HEMTバイアス回路18では、温度依存性を完全に排除することが可能となる。
【0183】
また、式(50)および式(51)を電源電圧VDDで微分することで、ドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDの、電源電圧VDDに対する変動の係数はゼロとなることがわかる。よって、HEMTバイアス回路18では、電源電圧依存性を完全に排除することが可能となる。
【0184】
さらに、HEMTバイアス回路18では、電源電圧VDDおよび負電源電圧VNEGに対するドレイン電圧VDおよびゲート電圧VGのPSRRが十分に小さくなるので、非常に高い雑音除去率を得ることが可能となる。
【0185】
したがって、HEMTバイアス回路18は、温度依存性、電源電圧依存性、および各PSRRに関して、図6に示した前記実施の形態6のHEMTバイアス回路16と同様の効果を得ることが可能となる。
【0186】
〔実施の形態8〕
図9は、本実施の形態のHEMTバイアス回路19の一構成例を示す回路図である。
【0187】
本実施の形態のHEMTバイアス回路19(バイアス回路)は、前記実施の形態7のHEMTバイアス回路18の構成のうち抵抗素子R1を除去した構成を有する。この構成により、HEMT1のドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDは、下記の式(52)および式(53)のようになる。
【0188】
【数25】

【0189】
上記構成を有するHEMTバイアス回路19のメリットは、ドレイン電圧VDにばらつきの小さな基準電圧源VREFを適用し、かつ、定電流源IBにもばらつきの小さな電流源を適用すれば、ドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDは、ほとんど製造プロセスのばらつきの影響を受けなくなる点にある。
【0190】
HEMTバイアス回路19は、温度依存性、電源電圧依存性、および各PSRRに関しては、図6に示した前記実施の形態6のHEMTバイアス回路16と同様の効果を得ることが可能である。
【0191】
〔実施の形態9〕
図10は、本実施の形態のHEMTバイアス回路20の一構成例を示す回路図である。
【0192】
本実施の形態のHEMTバイアス回路20(バイアス回路)は、前記実施の形態6のHEMTバイアス回路16の構成のうち、PMOSトランジスタPMOS1・PMOS2をNMOSトランジスタNMOS1・NMOS2(第1トランジスタ・第2トランジスタ)にそれぞれ入れ替え、かつ、オペアンプAMP2・OPAMP3の正入力端子および負入力端子の接続先を入れ替えた構成を有する。
【0193】
つまりは、オペアンプAMP2の正入力端子(第2入力端子)は、HEMT1のドレイン端子に接続されている。オペアンプAMP2の負入力端子(第1入力端子)は、電位VYに接続されている。オペアンプAMP2の出力端子は、NMOSトランジスタNMOS1のゲート端子に接続されている。オペアンプAMP3の正入力端子(第2入力端子)は、基準電圧源VREFに接続されている。オペアンプAMP3の負入力端子(第1入力端子)は、抵抗素子R1および抵抗素子R2を介してNMOSトランジスタNMOS2のソース端子に接続されている。オペアンプAMP3の出力端子は、NMOSトランジスタNMOS2のゲート端子(制御端子)に接続されている。NMOSトランジスタNMOS1のドレイン端子(第1導通端子)は、電源電圧VDDに接続されている。NMOSトランジスタNMOS1のソース端子(第2導通端子)は、HEMT1のゲート端子に接続されている。NMOSトランジスタNMOS2のドレイン端子は、電源電圧VDDに接続されている。NMOSトランジスタNMOS2のソース端子は、抵抗素子R2、抵抗素子R1、および抵抗素子RRをこの順番に介して接地されている。
【0194】
図10に示すように、HEMTバイアス回路20は、図6に示した前記実施の形態6のHEMTバイアス回路16とほぼ同様の構造となる。よって、HEMTバイアス回路20は、温度依存性、電源電圧依存性、および各PSRRに関して、上記HEMTバイアス回路16とほぼ同様の効果を得ることが可能となる。
【0195】
〔実施の形態10〕
本実施の形態のHEMTバイアス回路は、前記実施の形態6のHEMTバイアス回路16の構成のうち、PMOSトランジスタPMOS1・PMOS2をPNP型バイポーラトランジスタにそれぞれ入れ替えた構成を有する(図示せず)。本実施の形態のHEMTバイアス回路は、前記実施の形態6のHEMTバイアス回路16とほぼ同様の構造となり、ほぼ同様の効果を奏する。
【0196】
〔実施の形態11〕
本実施の形態のHEMTバイアス回路は、前記実施の形態9のHEMTバイアス回路20の構成のうち、NMOSトランジスタNMOS1・NMOS2をNPN型バイポーラトランジスタにそれぞれ入れ替えた構成を有する(図示せず)。本実施の形態のHEMTバイアス回路は、前記実施の形態9のHEMTバイアス回路20とほぼ同様の構造となり、ほぼ同様の効果を奏する。
【0197】
〔実施の形態12〕
図11は、本実施の形態のLNA50の一構成例を示す回路図である。図11に示すように、LNA50は、HEMT1およびHEMTバイアス回路51(バイアス回路)を備えている。LNA50では、HEMT1のゲート端子にLNA50の入力部が設けられ、HEMT1のドレイン端子にLNA50の出力部が設けられる。
【0198】
HEMTバイアス回路51は、前記実施の形態6のHEMTバイアス回路16の構成のうちPMOSトランジスタPMOS1・PMOS2を、能動素子52・53(第1トランジスタ・第2トランジスタ)に入れ替えた構成を有する。能動素子52・53は、2つの導通端子(図中「1」「3」で示す)と、1つの制御端子(図中「2」で示す)とを有する。能動素子52・53では、制御端子に所定の電圧が印加されることによって、2つの導痛端子間が導通される。単に能動素子52・53として備えることにより、オペアンプAMP2・AMP3の入力端子の正負の極性(符号)は問わない。
【0199】
また、HEMTバイアス回路51は、集積化(集積回路化)されている(集積回路54)。集積回路54には、基準電圧源VREFと接続するためのVREF端子、負電源電圧源VNEGと接続するためのVNEG端子、HEMT1のドレイン端子と接続するためのVD端子、および、HEMT1のゲート端子と接続するためのVG端子、などが設けられている。
【0200】
HEMTバイアス回路51が接続されたHEMT1を備えるLNA50では、前記実施の形態6のHEMTバイアス回路16と同様の構造を有しており、温度依存性、電源電圧依存性、および各PSRRに関して、上記HEMTバイアス回路16と同様の効果を得ることが可能となる。
【0201】
なお、能動素子52・53として適用可能なトランジスタは、PMOSトランジスタや、NMOSトランジスタ、NPN型バイポーラトランジスタ、PNP型バイポーラトランジスタなどが考えられ、これらを組み合わせることもできる。すなわち、HEMTバイアス回路51は、前記実施の形態6,9〜11のHEMTバイアス回路のいずれかであるとも言えるし、これらHEMTバイアス回路を組み合わせたものであるとも言える。
【0202】
また、図11において、オペアンプAMP2・AMP3の入力端子の正負の極性を不確定としたのは、能動素子52に使うトランジスタの極性に、オペアンプAMP2の正負の極性が依存し、同様に、能動素子53に使うトランジスタの極性に、オペアンプAMP3の正負の極性が依存するため、複数の組み合わせに対し、一括して表現するためである。オペアンプAMP2・AMP3の各入力端子(図中「1」「2」で示す)の正負は、能動素子52・53に応じて決まる。
【0203】
このように、HEMTバイアス回路51は、能動素子52・53に適用するトランジスタの組み合わせの数だけ、多くのバリエーションが存在する。また、HEMTバイアス回路51は、前記実施の形態7,8に示したように変形させることも可能である。さらには、HEMTバイアス回路51としては、前記実施の形態1〜5のHEMTバイアス回路を適用してもよい。
【0204】
〔実施の形態13〕
前記実施の形態12において、HEMTバイアス回路51を集積化する際に、しばしば能動素子52の耐圧が問題となる。これは、能動素子52には、常時VDD−VG間の電圧が掛るためである。ゲート電圧VGは負電圧のため、VDD−VG間の電位差は、VDD−GND間の電位差よりも高くなる。よって、VDD−GND間の電位差しか保証されていない製造プロセスで集積化するのであれば、信頼性の面で問題となる。
【0205】
また、回路の初期起動時や、回路動作の切替時などを想定すると、能動素子52には、過渡的に、VDD−VNEG間の電圧が掛ることも想定される。この場合も、負電源電圧VNEGは負電圧のため、素子の信頼性の面で問題となる場合がある。それゆえ、HEMTバイアス回路には、これらの問題を解決することが望まれる。
【0206】
図12は、本実施の形態のLNA60の一構成例を示す回路図である。図12に示すように、LNA60は、前記実施の形態12のLNA50の構成に加えて、HEMTバイアス回路51に、電圧耐圧の保護素子61が備えられた構成を有している。
【0207】
保護素子61は、能動素子52と、VG端子(すなわちHEMT1のゲート端子)との間に挿入されている。保護素子61としては、例えば、図13に示すように、(a)抵抗素子、(b)PMOSトランジスタ、(c)PNP型バイポーラトランジスタ、などを用いることができる。
【0208】
保護素子61を備えることにより、能動素子52の許容耐圧内で、能動素子52を駆動させることが可能となる。それゆえ、LNA60では、温度依存性、電源電圧依存性、および各PSRRに関して、前記実施の形態6のHEMTバイアス回路16と同様の効果を得ることに加え、優れた信頼性を具備することが可能となる。
【0209】
〔実施の形態14〕
前記実施の形態6〜13のHEMTバイアス回路のVREF端子に電位を印加する電圧源は、温度依存性および電源電圧依存性が無い電圧源である必要がある。そこで、このような電圧源の一例として、バンドギャップリファレンス回路からなる電圧源を示す。
【0210】
図14は、バンドギャップリファレンス回路70の一構成例を示す回路図である。バンドギャップリファレンス回路70は、従来一般的な構成を有している。なお、一般的なバンドギャップリファレンス回路は、図14に示すような回路構成として知られ、温度依存性および電源電圧依存性が無い電圧(BGR電圧)が得られる電圧源として知られている。
【0211】
バンドギャップリファレンス回路70により生成されたバンドギャップ電圧(BGR電圧)を、HEMTバイアス回路71(バイアス回路)のVREF端子に印加することにより、HEMTバイアス回路71をLNAに適用した際に、温度依存性および電源電圧依存性の低減をより一層図ることが可能となる。
【0212】
〔実施の形態15〕
前記実施の形態1〜14のHEMTバイアス回路は、いずれも集積化に適した回路である。そして、一例として、前記実施の形態12では集積回路54を示した。なお、前記実施の形態12では、集積回路54から、基準電圧源VREFおよび負電源電圧源VNEGを除いているが、基準電圧源VREFおよび負電源電圧源VNEGも当該電圧源を構成する回路に応じて、同様に、容易に集積化することが可能である。
【0213】
図15は、本実施の形態のLNA80の一構成例を示す回路ブロック図である。図15に示すように、LNA80では、HEMT1は、集積回路81からバイアスを受けている。集積回路81は、HEMTバイアス回路82(バイアス回路)、基準電圧発生回路83、および負電圧発生回路84が集積化された回路である。HEMTバイアス回路82としては、前述したいずれのHEMTバイアス回路でも適用できる。
【0214】
基準電圧発生回路83としては、前記実施の形態14に示したバンドギャップリファレンス回路70を適用することができる。これにより、標準的なCMOSプロセスやバイポーラプロセスなどで集積化することが可能である。
【0215】
負電圧発生回路84としては、図23に示したような負電圧発生回路520を適用することができる。これによれば、パルス発生源、コンデンサ、およびダイオードだけで負電圧発生回路84を構成することができるため、特殊な製造プロセスを必要とせず、CMOSプロセスやバイポーラプロセスなどで集積化することが可能である。
【0216】
このように、LNA80では、HEMTバイアス回路82、基準電圧発生回路83、および負電圧発生回路84を集積回路81として備えている。これにより、実装面積および実装コストの低減を図ることが可能となる。
【0217】
〔実施の形態16〕
図16は、本実施の形態のLNB100の一構成例を示すブロック図である。
【0218】
図16に示すように、LNB100は、フィードホーン101(アンテナ)、水平偏波用LNA104(LNA)、垂直偏波用LNA105(LNA)、2ndLNA106(LNA)、イメージ除去用BPF107、Kuバンド用増幅器108、ミキサ109、ローカル発振器110、ローバンド用増幅器111、ローカル周波数セレクタ112、水平/垂直セレクタ113、LNA−H用HEMTバイアス回路114(バイアス回路)、LNA−V用HEMTバイアス回路115(バイアス回路)、2ndLNA用HEMTバイアス回路116(バイアス回路)、負電圧発生回路117、バンドギャップリファレンス回路118、電源レギュレータ119、および、コネクタ120を備えている。LNB100は、フィードホーン101によって受信した信号を増幅およびダウンコンバートして、後段のTVセット122やビデオセット123に伝送するものである。
【0219】
本実施の形態において注目すべき点は、LNB100においては、HEMTを用いたLNAのためのバイアス回路として、前述した実施形態のHEMTバイアス回路が用いられる点である。すなわち、LNA−H用HEMTバイアス回路114、LNA−V用HEMTバイアス回路115、および、2ndLNA用HEMTバイアス回路116としては、前述した実施形態のいずれかのHEMTバイアス回路が用いられる。これにより、LNB100では、LNA部における温度依存性、電源電圧依存性、および各PSRRを従来よりも改善することが可能となる。
【0220】
以下に、LNB100の構成および動作について簡単に説明する。
【0221】
通信衛星からKuバンドのキャリアで送信された電波信号は、フィードホーン101内部の、水平偏波アンテナ102(左旋円偏波アンテナ)、または、垂直偏波アンテナ103(右旋円偏波アンテナ)によって、電流に変換される。水平偏波アンテナ102で変換された電流は、水平偏波用LNA104に出力される。垂直偏波アンテナ103で変換された電流は、垂直偏波用LNA105に出力される。
【0222】
水平偏波用LNA104および垂直偏波用LNA105では、電流信号が電圧信号に変換された後、増幅される。そして、これら増幅された信号は、2ndLNA106によってさらに増幅された後、イメージ除去用BPF107に出力される。水平偏波用LNA104、垂直偏波用LNA105、および2ndLNA106には、非常に低いNFが要求されるため、HEMTが用いられる。
【0223】
イメージ除去用BPF107では、イメージ帯域にある信号などの不要な信号が除去される。そして、Kuバンド用増幅器108によってさらに増幅された後、ミキサ109に出力される。Kuバンド用増幅器108には、低いNFは要求されないため、HEMTが用いられることは少ない。
【0224】
ミキサ109では、Kuバンド用増幅器108からの信号が、ローカル発振器110から出力されるローカル信号と乗算されることで、L−BAND(1〜2GHz帯域)の信号へと変換される。そして、L−BAND用増幅器111によって、増幅するとともに、同軸ケーブル121を駆動するために75Ωでマッチングが行われる。
【0225】
LNB100は、同軸ケーブル121が接続されるコネクタ120を備えている。LNB100は、TVセット122やビデオセット123と同軸ケーブル121を介して接続される。なお、同軸ケーブル121には、下記の4つの役割がある。
【0226】
(1)LNB100で受信した信号を、TVセット122やビデオセット123へ伝送する役割。つまりは、L−BAND用増幅器111の出力信号を、TVセット122やビデオセット123に伝送する役割である。
【0227】
(2)TVセット122やビデオセット123側から、LNB100を駆動するための電力を、LNB100に伝送する役割。伝送された電力は、電源レギュレータ119に供給される。LNB100を駆動するための電力伝送は、通常18V程度と高い。このため、電源レギュレータ119によって降圧した後に、安定化された電源電圧がLNB100内の各ブロックへ供給される。
【0228】
(3)TVセット122やビデオセット123側から、水平偏波(左旋円偏波)信号および垂直偏波(右旋円偏波)信号のうちどちらを受信するかを切り替えるための切替信号を、LNB100に伝送する役割。伝送された切替信号は、水平/垂直セレクタ113に供給される。水平/垂直セレクタ113は、上記切替信号に基づいて、LNA−H用HEMTバイアス回路114、または、LNA−V用HEMTバイアス回路115を駆動させる。これにより、水平偏波用LNA104および垂直偏波用LNA105のバイアス電源の切替を行う。
【0229】
(4)受信信号の帯域を切り替えるために、ローカル発振器110の周波数を切り替えるための切替信号を、TVセット122やビデオセット123側からLNB100に伝送する役割。伝送された切替信号は、ローカル周波数セレクタ112に供給される。ローカル周波数セレクタ112は、上記切替信号を判別して選択したローカル周波数となるように、ローカル発振器110の発振周波数の切替を行う。
【0230】
なお、LNB100では、負電圧発生回路117およびバンドギャップリファレンス回路118が備えられているが、これらは必要に応じて適宜備えればよい。
【0231】
また、LNB100には複数の機能ブロックが存在する。それゆえ、LNA−H用HEMTバイアス回路114、LNA−V用HEMTバイアス回路115、および、2ndLNA用HEMTバイアス回路116と、他の機能ブロックの一部、または全ての機能ブロックとを集積化してもよい。集積化することにより、部品の実装面積と実装コストとが削減され、LNB100において小型化・低コスト化の実現を図ることが可能となる。
【0232】
なお、図16では、Kuバンド用増幅器108、ミキサ109、ローカル発振器110、ローバンド用増幅器111、ローカル周波数セレクタ112、水平/垂直セレクタ113、LNA−H用HEMTバイアス回路114、LNA−V用HEMTバイアス回路115、2ndLNA用HEMTバイアス回路116、負電圧発生回路117、および、バンドギャップリファレンス回路118が、集積化(集積回路124)された一例を示している。
【0233】
〔実施の形態17〕
図17は、本実施の形態の通信システム150の一構成例を示すブロック図である。
【0234】
図17に示すように、通信システム150は、送信機151(通信用送信機)と受信機152(通信用受信機)とが、通信路153を介して通信するように構成されたシステムである。通信路153としては、無線や、有線、電磁結合、光を利用する場合など、その種別は問わない。
【0235】
送信機151は、送信デバイス154、LNA155、HEMTバイアス回路156(バイアス回路)、および信号処理回路157を備えている。送信機151では、信号処理回路157により処理された信号を、LNA155が増幅し、送信デバイス154に出力する。送信デバイス154は、LNA155からの信号が入力されることにより駆動され、当該信号を通信路153を介して受信機152に送信する。LNA155には、HEMTバイアス回路156から、バイアス電圧としてのゲート電圧が印加されている。
【0236】
受信機152は、受信デバイス158、LNA159、HEMTバイアス回路160(バイアス回路)、および信号処理回路161を備えている。受信機152では、通信路153を介して送信されてきた信号を、受信デバイス158が受信し、LNA159に出力する。LNA159は、入力された信号を増幅し、信号処理回路161に出力する。LNA159には、HEMTバイアス回路160から、バイアス電圧としてのゲート電圧が印加されている。
【0237】
送信機151のHEMTバイアス回路156、および、受信機152のHEMTバイアス回路160としては、前述した実施形態のHEMTバイアス回路が用いられる。これにより、従来よりも温度変動および電源電圧変動に対し安定であって、かつ、高いPSRRにより電源雑音除去性能の高い、通信システム150を構成することが可能となる。
【0238】
〔実施の形態18〕
図18は、本実施の形態のセンサーシステム170の一構成例を示すブロック図である。
【0239】
図18に示すように、センサーシステム170は、センシングデバイス171、LNA172、HEMTバイアス回路173(バイアス回路)、および信号処理回路174を備えている。センシングデバイス171は、対象物の変化を検出し、該検出した変化に応じた信号を生成するものであるが、検出する物理量の種別は問わない。センサーシステム170では、センシングデバイス171により検出され生成された信号を、LNA172が増幅し、信号処理回路174に出力する。LNA172には、HEMTバイアス回路173から、バイアス電圧としてのゲート電圧が印加されている。
【0240】
HEMTバイアス回路173としては、前述した実施形態のHEMTバイアス回路が用いられる。これにより、従来よりも温度変動および電源電圧変動に対し安定であって、かつ、高いPSRRにより電源雑音除去性能の高い、センサーシステム170を構成することが可能となる。
【0241】
最後に、前述した実施の形態1〜18では、HEMTのためのHEMTバイアス回路を説明した。しかしながら、上記HEMTバイアス回路は、必ずしもHEMTに限定されず、HEMT以外のトランジスタでも適用可能である。例えば、JFETや、MOSFET、バイポーラトランジスタなどのトランジスタ一般を用いることができ、これのためのバイアス回路として使用することができる。HEMTを用いた場合が特に効果が大きいことは言うまでもないが、他のトランジスタであってもほぼ同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0242】
本発明に係るバイアス回路の効果を定量的かつ視覚的に示す。ここでは、一例として、前記実施の形態6で説明した図6のHEMTバイアス回路16と、図21に示した従来のHEMTバイアス回路500とを比較した結果を示す。
【0243】
なお、HEMT1・501に対する仕様を以下のように定義した。
【0244】
(1)VDD=3.3Vとする。
【0245】
(2)HEMTへのドレイン電圧は、VD=2Vとする。
【0246】
(3)HEMTへのドレイン電流は、ID=8mAとする。
【0247】
また、以下では、図6のHEMTバイアス回路16を本実施例とし、図21の従来のHEMTバイアス回路500を従来例として説明する。
【0248】
図26に、温度変化に対する、(a)HEMTのドレイン電圧、および、(b)HEMTのドレイン電流の特性を示す。図27に、図26の値を示すときのHEMTのドレイン電圧およびドレイン電流の式を示す。
【0249】
従来例では、前述したように、ドレイン電圧およびドレイン電流ともに、温度依存性が強い。これに対し、本実施例によれば、ドレイン電圧およびドレイン電流ともに、温度依存性は極めて小さい。
【0250】
よって、本実施例では、HEMTに供給されるドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDの周囲温度への依存性が、従来例に比べて小さくなる。したがって、LNBの利用時に、温度状態の異なる状況下においても、LNAのNFや利得を安定して保つことができる。
【0251】
図28に、電源電圧変化に対する、(a)HEMTのドレイン電圧、および、(b)HEMTのドレイン電流の特性を示す。
【0252】
従来例では、前述したように、ドレイン電圧およびドレイン電流ともに、電源電圧依存性が強い。これに対し、本実施例によれば、ドレイン電圧およびドレイン電流ともに、電源電圧依存性は極めて小さい。
【0253】
よって、本実施例では、HEMTに供給されるドレイン電圧VDおよびドレイン電流IDの電源電圧への依存性が、従来例に比べて小さくなる。したがって、LNBの利用時に、電源電圧の異なる状況下においても、LNAのNFや利得を安定して保つことができる。
【0254】
図29に、電源電圧VDDに対する、(a)HEMTのドレイン端子、および、(b)HEMTのゲート端子のPSRRの特性を示す。図30に、図29の値を示すときのHEMTのドレイン端子およびゲート端子のPSRRの式を示す。
【0255】
従来例では、前述したように、ドレイン端子およびゲート端子ともに、PSRRが高く、電源電圧VDDからの雑音の抑圧比が悪い。これに対し、本実施例によれば、電源電圧VDDに対するドレイン端子およびゲート端子のPSRRは極めて小さい。
【0256】
よって、本実施例では、HEMTのドレイン端子およびゲート端子への電源電圧VDDからの雑音が、従来例に比べて強く抑圧される。すなわち、電源電圧VDDからのPSRRが十分に小さくなる。したがって、電源電圧VDDに雑音が重畳されている状況下においても、LNAでの信号増幅は良好に行うことができる。
【0257】
図31に、負電源電圧VNEGに対する、(a)HEMTのドレイン端子、および、(b)HEMTのゲート端子のPSRRの特性を示す。図32に、図31の値を示すときのHEMTのドレイン端子およびゲート端子のPSRRの式を示す。
【0258】
従来例では、前述したように、ドレイン端子およびゲート端子ともに、PSRRが高く、負電源電圧VNEGからの雑音の抑圧比が悪い。これに対し、本実施例によれば、負電源電圧VNEGに対するドレイン端子およびゲート端子のPSRRは極めて小さい。
【0259】
よって、本実施例では、HEMTのドレイン端子およびゲート端子への負電源電圧VNEGからの雑音が、従来例に比べて強く抑圧される。すなわち、負電源電圧VNEGからのPSRRが十分に小さくなる。したがって、負電源電圧VNEGに雑音が重畳されている状況下においても、LNAでの信号増幅は良好に行うことができる。
【0260】
以上により、本実施例の構成によれば、HEMTのドレイン電流IDとドレイン電圧VDとを同時に所望の値に設定するとともに、温度依存性、電源電圧依存性が小さく、PSRRのよいHEMTバイアス回路を構成することができることがわかる。
【0261】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0262】
本発明は、バイアス回路、LNA、LNB、通信用受信機、通信用送信機、およびセンサーシステムに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0263】
1 HEMT(増幅用FET)
11,12,15,16,18〜20 HEMTバイアス回路(バイアス回路)
50,60,80 LNA
51,71,82 HEMTバイアス回路(バイアス回路)
52 能動素子(第1トランジスタ)
53 能動素子(第2トランジスタ)
54,81 集積回路
61 保護素子
70,118 バンドギャップリファレンス回路
83 基準電圧発生回路
84,117 負電圧発生回路
100 LNB
101 フィードホーン(アンテナ)
104 水平偏波用LNA(LNA)
105 垂直偏波用LNA(LNA)
106 2ndLNA(LNA)
114 LNA−H用HEMTバイアス回路(バイアス回路)
115 LNA−V用HEMTバイアス回路(バイアス回路)
116 2ndLNA用HEMTバイアス回路(バイアス回路)
121 同軸ケーブル
122 TVセット
123 ビデオセット
150 通信システム
151 送信機(通信用送信機)
152 受信機(通信用受信機)
153 通信路
154 送信デバイス
155,159 LNA
156,160 HEMTバイアス回路(バイアス回路)
157,161 信号処理回路
158 受信デバイス
170 センサーシステム
171 センシングデバイス
172 LNA
173 HEMTバイアス回路(バイアス回路)
174 信号処理回路
500 HEMTバイアス回路
520 負電圧発生回路
VD ドレイン電圧
ID ドレイン電流
AMP1 オペアンプ(両電源型の差動増幅器)
AMP2 オペアンプ(単一電源型の差動増幅器,第1差動増幅器)
AMP3 オペアンプ(第2差動増幅器)
PMOS1 Pチャネル型MOSFET(第1トランジスタ)
PMOS2 Pチャネル型MOSFET(第2トランジスタ)
NMOS1 Nチャネル型MOSFET(第1トランジスタ)
NMOS2 Nチャネル型MOSFET(第2トランジスタ)
RI 抵抗素子(第1抵抗素子)
RG 抵抗素子(第2抵抗素子)
RR 抵抗素子(第3抵抗素子)
R1 抵抗素子(第4抵抗素子)
R2 抵抗素子(第5抵抗素子)
IB 定電流源
VDD 電源電圧
VX 第1基準電圧源
VY 第2基準電圧源
VREF 基準電圧源
VNEG 負電源電圧源



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース端子が接地された増幅用FETのためのバイアス回路であって、
両電源型の差動増幅器と、第1抵抗素子と、第1基準電圧源と、第2基準電圧源とを備え、
上記差動増幅器は、正入力端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、負入力端子が上記第2基準電圧源に接続され、出力端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、
上記第1抵抗素子は、一方の端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、他方の端子が上記第1基準電圧源に接続されていることを特徴とするバイアス回路。
【請求項2】
上記増幅用FETは、HEMTであることを特徴とする請求項1に記載のバイアス回路。
【請求項3】
ソース端子が接地された増幅用FETのためのバイアス回路であって、
単一電源型の差動増幅器と、第1基準電圧源と、第2基準電圧源と、第1トランジスタと、第1抵抗素子と、第2抵抗素子と、負電源電圧源とを備え、
上記第1トランジスタは、第1導通端子、第2導通端子、および制御端子を有し、
上記差動増幅器は、第1入力端子が上記第2基準電圧源に接続され、第2入力端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、出力端子が上記第1トランジスタの制御端子に接続され、
上記第1トランジスタは、第1導通端子が電源電圧に接続され、第2導通端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、
上記第1抵抗素子は、一方の端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、他方の端子が上記第1基準電圧源に接続され、
上記第2抵抗素子は、一方の端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、他方の端子が上記負電源電圧源に接続されていることを特徴とするバイアス回路。
【請求項4】
上記増幅用FETは、HEMTであることを特徴とする請求項3に記載のバイアス回路。
【請求項5】
上記第1トランジスタは、Pチャネル型MOSFETであり、
上記第1トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、上記Pチャネル型MOSFETのソース端子、ドレイン端子、およびゲート端子であり、
上記差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、正入力端子および負入力端子であることを特徴とする請求項3または4に記載のバイアス回路。
【請求項6】
上記第1トランジスタは、PNP型バイポーラトランジスタであり、
上記第1トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、上記PNP型バイポーラトランジスタのエミッタ端子、コレクタ端子、およびベース端子であり、
上記差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、正入力端子および負入力端子であることを特徴とする請求項3または4に記載のバイアス回路。
【請求項7】
上記第1トランジスタは、Nチャネル型MOSFETであり、
上記第1トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、上記Nチャネル型MOSFETのドレイン端子、ソース端子、およびゲート端子であり、
上記差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、負入力端子および正入力端子であることを特徴とする請求項3または4に記載のバイアス回路。
【請求項8】
上記第1トランジスタは、NPN型バイポーラトランジスタであり、
上記第1トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、上記NPN型バイポーラトランジスタのコレクタ端子、エミッタ端子、およびベース端子であり、
上記差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、負入力端子および正入力端子であることを特徴とする請求項3または4に記載のバイアス回路。
【請求項9】
ソース端子が接地された増幅用FETのためのバイアス回路であって、
単一電源型の第1差動増幅器と、単一電源型の第2差動増幅器と、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第1抵抗素子と、第2抵抗素子と、第3抵抗素子と、第4抵抗素子と、第5抵抗素子と、基準電圧源と、負電源電圧源とを備え、
上記第1トランジスタは、第1導通端子、第2導通端子、および制御端子を有し、
上記第2トランジスタは、第1導通端子、第2導通端子、および制御端子を有し、
上記第1差動増幅器は、第1入力端子が上記第5抵抗素子を介して上記第2トランジスタの第2導通端子に接続され、第2入力端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、出力端子が上記第1トランジスタの制御端子に接続され、
上記第2差動増幅器は、第1入力端子が上記第4抵抗素子および上記第5抵抗素子を介して上記第2トランジスタの第2導通端子に接続され、第2入力端子が上記基準電圧源に接続され、出力端子が上記第2トランジスタの制御端子に接続され、
上記第1トランジスタは、第1導通端子が電源電圧に接続され、第2導通端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、
上記第2トランジスタは、第1導通端子が電源電圧に接続され、第2導通端子が上記第5抵抗素子、上記第4抵抗素子および上記第3抵抗素子をこの順番に介して接地され、
上記第1抵抗素子は、一方の端子が上記増幅用FETのドレイン端子に接続され、他方の端子が上記第2トランジスタの第2導通端子に接続され、
上記第2抵抗素子は、一方の端子が上記増幅用FETのゲート端子に接続され、他方の端子が上記負電源電圧源に接続されていることを特徴とするバイアス回路。
【請求項10】
上記増幅用FETは、HEMTであることを特徴とする請求項9に記載のバイアス回路。
【請求項11】
上記第1トランジスタおよび上記第2トランジスタは、Pチャネル型MOSFETであり、
上記第1トランジスタおよび上記第2トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、上記Pチャネル型MOSFETのソース端子、ドレイン端子、およびゲート端子であり、
上記第1差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、正入力端子および負入力端子であり、
上記第2差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、正入力端子および負入力端子であることを特徴とする請求項9または10に記載のバイアス回路。
【請求項12】
上記第1トランジスタおよび上記第2トランジスタは、PNP型バイポーラトランジスタであり、
上記第1トランジスタおよび上記第2トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、上記PNP型バイポーラトランジスタのエミッタ端子、コレクタ端子、およびベース端子であり、
上記第1差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、正入力端子および負入力端子であり、
上記第2差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、正入力端子および負入力端子であることを特徴とする請求項9または10に記載のバイアス回路。
【請求項13】
上記第1トランジスタおよび上記第2トランジスタは、Nチャネル型MOSFETであり、
上記第1トランジスタおよび上記第2トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、上記Nチャネル型MOSFETのドレイン端子、ソース端子、およびゲート端子であり、
上記第1差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、負入力端子および正入力端子であり、
上記第2差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、負入力端子および正入力端子であることを特徴とする請求項9または10に記載のバイアス回路。
【請求項14】
上記第1トランジスタおよび上記第2トランジスタは、NPN型バイポーラトランジスタであり、
上記第1トランジスタおよび上記第2トランジスタの第1導通端子、第2導通端子、および制御端子はそれぞれ、上記NPN型バイポーラトランジスタのコレクタ端子、エミッタ端子、およびベース端子であり、
上記第1差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、負入力端子および正入力端子であり、
上記第2差動増幅器の第1入力端子および第2入力端子はそれぞれ、負入力端子および正入力端子であることを特徴とする請求項9または10に記載のバイアス回路。
【請求項15】
上記第3抵抗素子の代わりに、定電流源が用いられていることを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載のバイアス回路。
【請求項16】
上記第4抵抗素子が除去されていることを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載のバイアス回路。
【請求項17】
上記第3抵抗素子の代わりに、定電流源が用いられ、
上記第4抵抗素子が除去されていることを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載のバイアス回路。
【請求項18】
電圧耐圧の保護素子をさらに備え、
上記保護素子は、上記第1トランジスタの第2導通端子と上記増幅用FETのゲート端子との間に挿入されていることを特徴とする請求項9〜17のいずれか1項に記載のバイアス回路。
【請求項19】
上記基準電圧源は、バンドギャップ電圧を出力するバンドギャップリファレンス回路により構成されていることを特徴とする請求項9〜18のいずれか1項に記載のバイアス回路。
【請求項20】
上記第1差動増幅器、上記第2差動増幅器、上記第1トランジスタ、上記第2トランジスタ、上記第1抵抗素子、上記第2抵抗素子、上記第3抵抗素子、上記第4抵抗素子、および上記第5抵抗素子は、集積回路によって構成されていることを特徴とする請求項9〜19のいずれか1項に記載のバイアス回路。
【請求項21】
上記基準電圧源、上記負電源電圧源、またはその両方は、上記集積回路とともに集積化されて構成されていることを特徴とする請求項20に記載のバイアス回路。
【請求項22】
ソース端子が接地された増幅用FETと、
請求項1〜21のいずれか1項に記載のバイアス回路とを備え、
上記増幅用FETのゲート端子を入力端子とし、上記増幅用FETのドレイン端子を出力端子とすることを特徴とするLNA。
【請求項23】
アンテナによって受信した信号を増幅およびダウンコンバートして後段に伝送するLNBであって、
上記信号を増幅するLNAを少なくとも1つ備え、
上記LNAは、請求項22に記載のLNAであることを特徴とするLNB。
【請求項24】
通信用受信機であって、
通信路からの信号を受信する受信デバイスと、
上記受信デバイスから出力される信号を増幅するLNAとを備え、
上記LNAは、請求項22に記載のLNAであることを特徴とする通信用受信機。
【請求項25】
通信用送信機であって、
送信する信号を増幅するLNAと、
上記LNAにより増幅された信号を通信路へ送信する送信デバイスとを備え、
上記LNAは、請求項22に記載のLNAであることを特徴とする通信用送信機。
【請求項26】
センサーシステムであって、
対象物の変化を検出し、該検出した変化に応じた信号を生成するセンシングデバイスと、
上記センシングデバイスから出力される信号を増幅するLNAとを備え、
上記LNAは、請求項22に記載のLNAであることを特徴とするセンサーシステム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate


【公開番号】特開2011−176760(P2011−176760A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40887(P2010−40887)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】