説明

バイオセンサおよびバイオセンサ測定装置、並びに測定方法

一般のユーザーが簡単に性能を判断することができるバイオセンサおよびバイオセンサ測定装置を提供する。バイオセンサ100は、品質判定部13を有する基板1と、基板1上に設けられ、試料が供給される試料受け入れ部15とを備える。品質判定部13は、水分を吸収することによって変色する吸湿材料を含む。試料受け入れ部15は、被測定物質を基質とする酵素を含む試薬部7を有する。品質判定部13は、基板1が備える凹部17と、凹部17内に配置された吸湿材料16と、凹部17の開口をほぼ塞ぎ吸湿材料16と密着するように設けられた通気性を有しないフィルム18とから構成されている。なお、ここでは吸湿材料16としてコバルト塩を用いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含まれる被測定物質をより正確に定量するためのバイオセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スクロース、グルコースなどの糖類の定量分析法として、酵素の有する特異的触媒作用を利用した種々のタイプのバイオセンサが開発されている。
【0003】
以下に、試料中の糖類の定量分析法の一例として、グルコースの定量分析法を説明する。グルコースの電気化学的なグルコースの定量分析法としては、酵素であるグルコースオキシダーゼ(EC1.1.3.4:以下GODと略す)と酸素電極あるいは過酸化水素電極とを使用して行なう方法が一般に知られている。
【0004】
GODは、酸素を電子伝達体として、基質であるβ−D−グルコースをD−グルコノ−δ−ラクトンに選択的に酸化する。酸素の存在下でのGODによる酸化反応過程において、酸素が過酸化水素に還元される。酸素電極によって、この酸素の減少量を計測するか、あるいは過酸化水素電極によって過酸化水素の増加量を計測する。酸素の減少量および過酸化水素の増加量は、試料中のグルコースの含有量に比例するので、酸素の減少量または過酸化水素の増加量からグルコースの定量が行なわれる。
【0005】
前記方法では、酵素反応の特異性を利用することにより、精度良く試料中のグルコースを定量することができる。しかし、反応過程からも推測できるように、測定結果は試料に含まれる酸素濃度の影響を大きく受ける欠点があり、試料に酸素が存在しない場合は測定が不可能となる。
【0006】
そこで、酸素を電子伝達体として用いず、フェリシアン化カリウム、フェロセン誘導体、キノン誘導体などの有機化合物や金属錯体を電子伝達体として用いるグルコース測定用バイオセンサが開発されている。このグルコース測定用バイオセンサでは、酵素反応の結果生じた電子伝達体の還元体を作用極上で酸化することにより、その酸化電流量から試料中に含まれるグルコースの濃度が求められる。この際、対極上では、電子伝達体の酸化体が還元され電子伝達体の還元体の生成する反応が進行する。このような有機化合物や金属錯体を酸素の代わりに電子伝達体として用いることにより、既知量のGODとそれらの電子伝達体を安定な状態で正確に電極上に担持させて試薬部を形成することが可能となり、試料中の酸素濃度の影響を受けることなく、精度良くグルコースを定量することができる。またこの場合、酵素および電子伝達体を含有する試薬部を乾燥状態に近い状態で電極系と一体化させることもできるので、この技術に基づいた使い捨て型のグルコース測定用バイオセンサが近年多くの注目を集めている。その代表的な例が、特許文献1である特開平3−202764号公報に示されるバイオセンサである。使い捨て型のグルコース測定用バイオセンサでは、測定装置に着脱可能に接続されたセンサに試料を導入するだけで容易にグルコース濃度を測定装置で測定することができる。
【0007】
上述の様な使い捨て型のグルコース測定用バイオセンサを用いた血糖値(血液中のグルコース濃度)の測定手順の一例を説明する。
【0008】
まず、測定者は乾燥剤入りの包装体からグルコース測定用バイオセンサを取り出し、測定装置に装着する。その後、針を用いて指先などを穿刺することにより得られた血液をグルコース測定用バイオセンサに点着すると、一定時間経過後に測定装置の表示部に測定者の血糖値が表示される。
【特許文献1】特開平3−202764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば、上述のグルコース測定用バイオセンサでは、酵素および電子伝達体を含有する試薬が試薬部に乾燥状態で担持されている。しかし、試薬部が空気中の水分を吸収すると、試薬部に含まれる酵素の一部が失活したり、電子伝達体である有機化合物や金属錯体が変成するおそれがある。また、空気中の水分は、酵素の失活、電子伝達体の変成以外にも、酵素や電子伝達体の反応に影響を及ぼす可能性も考えられる。このため、上述のグルコース測定用バイオセンサでは、正確な測定を行なうために測定直前に包装体から取り出すことが強く推奨されており、その判断は測定者に委ねられている。
【0010】
しかしながら、上述のグルコース測定用バイオセンサを含む従来のバイオセンサでは、包装体などから取り出した後のバイオセンサの性能を、一般のユーザーが判断することは難しい。
【0011】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、一般のユーザーが簡単に性能を判断することができるバイオセンサおよびバイオセンサ測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のバイオセンサは、試料に含まれる被測定物質を測定するためのバイオセンサであって、基板と、前記基板上に設けられ、前記試料が供給される試料受け入れ部と、前記試料受け入れ部に設けられ、前記被測定物質と反応する試薬を含む試薬部と、水分を吸収することによって変色する吸湿材料と、を備え、前記吸湿材料のうち変色した部分の割合に基づき前記試薬の劣化度合いを表示する。
【0013】
本発明のバイオセンサでは、例えば、流通形態として任意の包装体に包装される場合、包装体から取り出した後、空気中に曝される時間が長くなるにつれて吸湿材料が空気中の水分を吸収し、吸収した水分と反応することにより、空気にさらされている部分から吸湿材料の色が変化していく。従って、ユーザーは、バイオセンサに備えられた吸湿材料のうち変色した部分の割合が所定の割合に達しない間に測定を行なうこととし、吸湿材料の変色部分が所定の割合以上であるバイオセンサは、試薬部が劣化したものと見なして使用せずに新たなバイオセンサに交換する、といった判断が可能となる。このため、一般のユーザーが、特別な知識や技能を必要とせずに、常に使用に適した性能を有するバイオセンサを用いることが容易になり、常に正確な測定を行なうことができる。
【0014】
前記吸湿材料を覆うカバーをさらに備え、前記吸湿材料の一部は露出している構成としてもよい。
【0015】
前記試薬の前記劣化度合いは、前記吸湿材料のうち、露出している部分から所定距離の位置に存するとともに前記カバーに覆われている部分の変色の度合いによって表示される構成としてもよい。
【0016】
前記試薬は酵素を含んでいる構成としてもよい。
【0017】
前記試薬部は電子伝達体をさらに含む構成としてもよい。
【0018】
前記基板上に設けられた1対の端子と、前記試料受け入れ部内にそれぞれが互いに離間して設けられ、前記1対の端子にそれぞれが接続された1対の電極とをさらに備える構成としてもよい。
【0019】
前記試薬は抗体および抗原のうち少なくともいずれかを含んでいる構成としてもよい。
【0020】
前記吸湿材料は、シート状に形成されている構成としてもよい。
【0021】
前記基板上に、遮光性材料から形成され、前記試料受け入れ部を覆うように形成されている被覆部材をさらに備える構成としてもよい。
【0022】
前記基板上であって、前記基板の前記試料受け入れ部が設けられた面とは反対側の面上に前記シート状に形成された吸湿材料が設けられ、前記吸湿材料上に、前記吸湿材料を覆うシートが設けられている構成としてもよい。
【0023】
本発明のバイオセンサ測定装置は、基板と、前記基板上に設けられ、試料に含まれる被測定物質と反応する試薬を含む試薬部を有する試料受け入れ部と、水分を吸収することによって変色する吸湿材料とを備えるバイオセンサを用いて、前記被測定物質を測定するためのバイオセンサ測定装置であって、前記吸湿材料に光を出射する光源と、前記光源から前記吸湿材料を経て入射する入射光を受光する受光素子とを備える検出部と、前記検出部に接続され、前記入射光の光学特性を測定し、前記入射光の光学特性に基づいてバイオセンサの試薬部の試薬の劣化度合いを判定する測定部と、を備える。
【0024】
本発明のバイオセンサ測定装置を用いれば、バイオセンサの吸湿材料の色変化を検出して試薬の劣化度合いを判定するため、バイオセンサが使用に適しているか否かを判定することが可能となる。従って、バイオセンサとバイオセンサ測定装置とを用いれば、測定者が特別な知識を必要とせずに、正確な測定を自動的に行なうことが可能となる。
【0025】
本発明の測定方法は、基板と、前記基板上に設けられ、試料に含まれる被測定物質と反応する試薬を含む試薬部を有する試料受け入れ部と、水分を吸収することによって変色する吸湿材料とを備えるバイオセンサを用いて、前記被測定物質を測定する測定方法であって、前記バイオセンサをバイオセンサ測定装置に装着する工程と、前記吸湿材料の変色度合いから試薬の劣化度合い判定する工程と、前記判定工程において、試薬の劣化度合いが小さいと判定した場合には、前記被測定物質の測定を実施し、試薬の劣化度合いが大きいと判定した場合には、前記被測定物質の測定を中止する工程とを含む。
【0026】
本発明の測定方法を用いれば、バイオセンサの吸湿材料の色変化を検出して試薬の劣化度合いを判定するため、バイオセンサが使用に適しているか否かをバイオセンサ測定装置が判定して試薬の劣化度合いが大きい場合は被測定物質の測定を中止することが可能となる。従って、本測定方法を用いれば、測定者が特別な知識を必要とせずに、正確な測定を自動的に行なうことが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、使用に適した性能を有するか否かをユーザーが容易に判断することが可能なバイオセンサおよびバイオセンサ測定装置並びに測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
[図1]図1(a)は、実施形態1のバイオセンサの分解斜視図であり、図1(b)は、図1(a)中に示したX−X線に沿った断面図である。
[図2]図2(a)は、実施形態2のバイオセンサの分解斜視図であり、図2(b)は、図2(a)中に示したY−Y線に沿った断面図である。
[図3]図3(a)は、実施形態3のバイオセンサの分解斜視図であり、図3(b)は、図3(a)中に示したZ−Z線に沿った断面図である。
[図4]図4(a)および(b)は、実施形態3のバイオセンサの製造方法を表す工程断面図である。
[図5]図5は、実施形態4のバイオセンサ測定装置の構成を示す透視概略図であり、バイオセンサが装着される様子を模式的に表す。
[図6]図6(a)および(b)は、バイオセンサを測定する際の、実施形態4のバイオセンサ測定装置の動作を模式的に表す断面図である。
[図7]図7(a)は、実施形態5のバイオセンサの斜視図であり、図7(b)は、図7(a)中に示したW−W線に沿った断面図である。
[図8]図8(a)および(b)は、実施形態6のバイオセンサの平面図であり、図8(c)は、図8(a)および(b)の要部断面図である。
[図9]図9は、図8(b)のバイオセンサの測定装置の構成を示す透視概略図である。
[図10]図10は、実施形態7のバイオセンサの斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 基板
2、3 端子
4、5 電極
4a、5a 導電性カーボンペースト
6 絶縁膜
7 試薬部
8 スペーサ部材
9 保護板
10 スリット
10a 試料供給口
11 空気孔
12 界面活性剤層
13、13a、13b、13c 品質判定部
15、15’ 試料受け入れ部
16、16a 吸湿材料
16b、16c 吸湿材シート
17 凹部
17b 貫通孔
18 フィルム
19 不透水カバーシート
20 品質判定位置
21、22 コネクタ
23 検出部
24 測定部
25 データ処理部
26 データ表示部
100、100a、100b、100c バイオセンサ
200 測定装置
200a 筐体
300,300’ 分析ディスク
301 基板
302 ディスク接着層
303 ディスクカバー
304 注入口
305 流路
306 試薬
307 空気抜き口
313 品質判定部
316 吸湿材料
318 フィルム
320 品質判定位置
411 スピンドルモータ
412 光ピックアップ
413 送りモータ
500 免疫クロマトセンサ
502 支持基板
503 採水部
504 標識抗体部
505 抗体固定部
506 ニトロセルロース膜
507 吸水部
513 品質判定部
516 吸湿材料
518 フィルム
520 品質判定位置
800 液体注入器具
900 試料
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本明細書中で「接続」との用語は、特に記載のない限り「電気的接続」を意味するものとする。また、簡単のために、各実施形態に共通する構成要素は共通の参照符号で表すものとする。
【0031】
(実施形態1)
本実施形態においては、一例としてグルコースの定量に用いるバイオセンサについて説明する。なお、後にも述べるが、本実施形態は、被測定物質をグルコースとするバイオセンサに本発明を限定するものではない。
【0032】
本実施形態のバイオセンサを図1(a)および図1(b)を用いて説明する。図1(a)は、本実施形態のバイオセンサ100の分解斜視図であり、図1(b)は、図1(a)中に示したX−X線に沿った断面図である。
【0033】
図1(a)および(b)に示すように、本実施形態のバイオセンサ100は、品質判定部13を有する基板1と、基板1上に設けられ、試料が供給される試料受け入れ部15とを備える。品質判定部13は、水分を吸収することによって変色する吸湿材料16を含む。試料受け入れ部15は、被測定物質を基質とする酵素を含む試薬部7を有する。
【0034】
本実施形態では、品質判定部13は、基板1が備える凹部17と、凹部17内に配置された吸湿材料16と、凹部17の開口をほぼ塞ぎ吸湿材料16と密着するように設けられた通気性を有しないフィルム(カバー)18とから構成されている。フィルム18は凹部17の開口を一部露出させているが、開口の大部分を塞いでいるので、外気は開口の露出されている部分からのみ凹部17内に入っていくことができる。また、フィルム18は通気性を有していないので、水分も通過させない。なお、ここでは吸湿材料16としてコバルト塩を用いている。また、後述するように試薬の劣化度合いを判定するための品質判定位置20が矢印として基板1上に形成されている。この品質判定位置20では吸湿材料16はフィルム18に覆われている。
【0035】
また、本実施形態のバイオセンサ100では、基板1は電気絶縁性の材料から形成されており、基板1上に形成された端子2および3と、試料受け入れ部15内にそれぞれが互いに離間して設けられ、端子2および3にそれぞれが接続された電極4および5とをさらに備える。具体的には、電極4は矩形状にパターニングされており、電極5は電極4から離間しつつ囲むようにパターニングされている。なお、本実施形態では電極4および電極5は、樹脂バインダーを含む導電性カーボンペースト4aおよび5aによりそれぞれ被覆されている。さらに、基板1上の後述するスペーサ部材8が配置される領域と電極4の外周部とを覆う絶縁膜6が形成されており、電極4の外周部を覆う絶縁膜6は、電極4の露出部分の面積を規定している。
【0036】
試薬部7は、電極4および5を覆うように設けられており、試薬として酸化還元酵素であるGODを含み、さらに電子伝達体であるフェリシアン化カリウムを含む。本実施形態の場合、具体的には、試薬部7は、酸化還元酵素であるGODと電子伝達体であるフェリシアン化カリウムを含有する水溶液を電極4および5上に滴下した後、水溶液を乾燥させることによって形成されている。さらにここでは、試薬部7を覆うように界面活性剤層12が形成されている。
【0037】
さらに本実施形態では、基板1上に設けられ、スリット10を有するスペーサ部材8と、基板1と共にスペーサ部材8を挟むように設けられ、空気孔11を有する保護板9とを備えている。スリット10は、基板1と保護板9との間に試料受け入れ部15を形成している。保護板9の空気孔11は、試料受け入れ部15に連通しており、スリット10の解放端に形成される試料供給口10aに液体の試料を接触させれば、毛管現象により試料は容易に試料受け入れ部15内にある試薬部7に達する。
【0038】
本実施形態のバイオセンサ100では、試料供給口10aに試料を接触させると、試料は試料受け入れ部15内にある試薬部7に達し、試薬部7において界面活性剤層12が溶解して、酵素反応が生じる。一定時間を経過させた後、電極4が作用極、電極5が対極となるように端子2および3の間に一定の電位差を印加すると、上述の酵素反応の結果生じた電子伝達体の還元体が電極4上で酸化される。このことによって、その酸化電流量から試料中に含まれるグルコースの濃度が求められる。この際、電極5上では、電子伝達体の酸化体が還元され電子伝達体の還元体の生成する反応が進行する。
【0039】
実際に本実施形態のバイオセンサ100を用いて、一定量のグルコースを含む溶液を試料としてグルコース濃度の測定を行った。具体的には、試料を試料供給口10aから試料受け入れ部15に供給した時点から一定時間経過後、電極5を基準にして電極4に500mVの電圧を印加した。この電圧印加後、電極4と電極5との間に流れた電流値を測定したところ、試料中のグルコース濃度に比例した電流応答が観察された。
【0040】
本実施形態のバイオセンサ100は、例えば、流通形態として任意の包装体に包装されるが、包装体から取り出した直後は、品質判定部13は、吸湿材料16によって青色を呈している。しかし、空気中に曝される時間が長くなるにつれて吸湿材料16が空気中の水分を吸収し、吸収した水分と反応することによって品質判定部13の色が外気と接触している部分(フィルム18が覆っていない露出部分)から徐々にピンク色へと変化する。従って、ユーザーは、バイオセンサ100に設けられた品質判定部13のうち青色の部分が一定面積以上であるときに測定を行ない、品質判定部13のうち青色の部分が一定面積未満になってしまったバイオセンサ100は、試薬部7が劣化したものと見なして使用せずに新たなバイオセンサに交換する、といった判断が可能となる。本実施形態ではこの判断をより簡単にするために、品質判定部13の青色部分の面積が所定の一定面積以上か否かを表示する品質判定位置20を設けている。つまり、ピンクの部分が品質判定位置20に存している場合は試薬が劣化していると判断するのである。このため、一般のユーザーが、特別な知識や技能を必要とせずに、常に使用に適した性能を有するバイオセンサを用いることが容易になり、常に正確な測定を行なうことができる。なお、ここで述べた品質判定部13の色の変化は、吸湿材料16であるコバルト塩が乾燥時に青色を、吸湿時にはピンク色を呈するという性質によるものである。従って、吸湿材料16として、他の材料を用いた場合には、その乾燥時および吸湿時の色の変化の性質に応じてバイオセンサの品質の判定を行なえばよい。また、品質判定位置20の位置、形状も特に限定されない。品質判定位置20は、吸湿材料16のうちピンクに変色した部分の割合に基づいて試薬の劣化度合いを表示するものであるが、品質判定位置20を形成する位置は、本実施形態のバイオセンサ100を外気に晒して、試薬が劣化して使用不可になったときの吸湿材料16の変色の進み位置を実験的に割り出して決定することが好ましい。つまり、品質判定位置20を形成する位置は、試薬が外気と接触することにより劣化する速度と品質判定部13の外気と接触しているところから徐々に色変化する速度との関連により決定される。
【0041】
品質判定部13の色変化は、測定者が目視により確認してもよいが、これに限定されない。例えば、品質判定部13の色変化を検出する装置を用いてもよい。このような装置の例は、後述する実施形態2に詳しく記載する。品質判定部13が配置される位置は、本実施形態に示した位置に限定されるものではない。
【0042】
また、本実施形態に用いた吸湿材料16としては、水分を吸収して色が変化するような物質であればよい。例えば、塩化コバルトや臭化コバルトのようなコバルト塩を用いることができる。また吸湿材料16は、水分の吸収により色が変化する反応が不可逆反応であるような物質であればさらに好ましい。このような物質であると、バイオセンサ100と空気中の水分との接触状況をより確実に判定することが可能になる。例えば青色シリカゲルの場合、一度水分を吸収し青色からピンク色に変色すると、吸収した水を放出するためには加熱する必要があることから、常温での逆反応(水分を放出する反応)が遅いため、本発明のように色変化による判定を行うには好適である。
【0043】
また、本実施形態において、電極4への印加電圧を電極5を基準に500mVとしたが、これに限定されず、電子伝達体が電極4上で反応可能な電圧であればよい。
【0044】
なお、上述したように本実施形態では、一例として、試料にβ−D−グルコース水溶液を使用し、グルコースの定量に用いるバイオセンサについて説明したが、これに限定されない。例えば、全血、血漿、血清、間質液、唾液、尿などの生体試料を用いることも可能である。
【0045】
また、本実施形態のバイオセンサ100は、被測定物質をグルコースに限定するものでもない。例えば、全血、血漿、血清、間質液、唾液、尿などの生体試料中に含まれる物質を被測定物質とするバイオセンサとすることもできる。なお、ここで全血とは、例えば、指先や腕の皮膚を穿刺し採取した毛細血、あるいは静脈血、動脈血などの、特別な処理が施されていない血液を指す。
【0046】
グルコース以外の物質を被測定物質とする場合であって酵素反応を利用するバイオセンサでは、被測定物質を基質とする酵素を選択する必要がある。本実施形態では、試薬部7に含まれる酵素として、酸化還元酵素であるGODを用いたが、GOD以外の酸化還元酵素(例えば、フルクトースデヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ等)を用いてもよい。
【0047】
電子伝達体としては、フェリシアン化カリウム、p−ベンゾキノン、フェナジンメトサルフェート、メチレンブルー、フェロセン誘導体等の物質があげられる。また、酸素を電子伝達体とした場合にも電流応答が得られる。なお、電子伝達体として、前記物質のうちの1種類を用いる代わりに、2種類以上の物質を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
次に、本実施形態のバイオセンサ100の製造方法を簡単に説明する。
【0049】
まず、予め凹部17が形成されている、ポリエチレンテレフタレート等からなる電気絶縁性である基板1上に、スクリーン印刷により銀ペースト等を印刷し、端子2および端子3を形成する。続いて、樹脂バインダーを含む導電性カーボンペーストを基板1上に印刷して、端子2と接続された電極4を形成する。この後、基板1上に絶縁性ペーストを印刷して、電極4の外周部を覆って電極4の露出部分の面積を規定する絶縁膜6を形成する。
【0050】
次に、樹脂バインダーを含む導電性カーボンペーストを基板1上に印刷して、端子3と接続された電極5を形成する。
【0051】
次に、酸化還元酵素であるGODおよび電子伝達体であるフェリシアン化カリウムを含有する水溶液を電極4および電極5上に滴下した後、乾燥させて試薬部7を形成する。この後さらに、試薬部7上に、界面活性剤であるレシチンを含有する界面活性剤層12を形成する。
【0052】
次に、スペーサ部材8を絶縁膜6の上に接着し、さらにスペーサ部材8の上に、空気孔11を備えた保護板9を接着する。
【0053】
最後に、基板1の凹部17にコバルト塩からなる吸湿材料16を入れ、フィルム18を基板1に貼り付けることによって、品質判定部13を形成する。この後、バイオセンサ100を直ちに乾燥剤入りの包装体に包装し、保管する。
【0054】
なお、本実施形態では、試薬部7に酵素としてGODと、電子伝達体としてフェリシアン化カリウムとを含む構成としているが、これに限定されない。酵素および電子伝達体の他の具体例は、上述したものを用いることができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、酸化還元酵素を含む溶液を塗布および乾燥することにより試薬部7を形成したが、これに限定されず、例えばインクジェット方式により、酸化還元酵素を含む溶液を塗布してもよい。この場合、塗布する溶液量が微量であっても試薬部7が設けられる位置を正確に制御することが可能となる。また、酸化還元酵素を含む溶液をガラスろ紙に担持し、乾燥したガラスろ紙を試料受け入れ部15内に配置してもよく、試料受け入れ部15内に凍結乾燥法を用いて酸化還元酵素を担持してもよい。さらにまた、導電材料と試薬を混合することにより電極を形成してもよい。
【0056】
試薬部7が配置される位置は、電極4または電極5上にあることが好ましいが、それに限らず、試料と接することが可能な位置であれば、試料供給部15内の電極4及び電極5上以外の場所でもよい。
【0057】
本実施形態において、基板1およびスペーサ部材8としては、電気絶縁性を有し、バイオセンサ100の保存およびバイオセンサを用いた測定時に充分な剛性を有する材料であれば用いることができる。基板1の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、飽和ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂、あるいは、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂があげられる。特に、基板1としては、電極との密着性の点から、ポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。
【0058】
また、スペーサ部材8および保護板9は、遮光性材料から形成されていることが好ましい。このことによって、試薬部7の酵素および電子伝達体を紫外線などの影響を及ぼす可能性のある光から保護することができる。
【0059】
また本実施形態では、端子2および3、ならびに電極4および5の形成方法として、スクリーン印刷で形成する方法を使用したがこれに限定されない。例えば、パラジウムなどの貴金属を基板上にスパッタリングした後、レーザートリミングにより電極パターンを形成する方法や、フォトリソグラフィを用いることにより電極パターンを形成する等の製造方法を用いてもよい。
【0060】
電極4および5としては、電子伝達体を酸化する際にそれ自身が酸化されない導電性材料であれば用いることができる。例えば、カーボン、パラジウム、金、白金等が挙げられる。また、電気絶縁性の材料の表面をこれらの導電性材料で被覆して、電極として用いてもよい。
【0061】
また、空気孔11の位置は、図に示した位置に限定されず、試料受け入れ部15と通じており、試料供給口10aから試料受け入れ部15に試料を導くように毛管現象が生じる位置に配置されていればよい。具体的には、スリット10の両端のうち、試料供給口10aが位置する端部の反対側に位置していればよい。
【0062】
(実施形態2)
本実施形態のバイオセンサを図2(a)および図2(b)を用いて説明する。図2(a)は、本実施形態のバイオセンサ100aの分解斜視図であり、図2(b)は、図2(a)中に示したY−Y線に沿った断面図である。
【0063】
図2(a)および(b)に示すように、本実施形態のバイオセンサ100aは、前記実施形態1のバイオセンサ100とほぼ同じ構成を有しており、品質判定部13aのみがバイオセンサ100と異なる。
【0064】
品質判定部13aは、吸湿材料16aを含むシート材により形成されており、基板1に貼り付けられている。より詳しく説明すると、基材1にシート状の吸湿材料16aを貼り合わせ、この吸湿材料16aの大部分を覆うようにフィルム18を貼り合わせている。フィルム18は通気性を有しない材質からなっており、吸湿材料16aに密着して貼り合わされている。また、吸湿材料16aの一端はフィルム18に覆われず露出している。なお、ここでは吸湿材料16aとしてコバルト塩を用いている。本実施形態の構成にすると、基板1に凹部などを形成する必要がないため、バイオセンサの製造が容易である。
【0065】
勿論、本実施形態のバイオセンサ100aを用いても、品質判定位置20が設けられているので、一般のユーザーが、特別な知識や技能を必要とせずに、常に使用に適した性能を有するバイオセンサを用いることが容易になり、常に正確な測定を行なうことができる。
【0066】
(実施形態3)
本実施形態のバイオセンサを図3(a)および図3(b)を用いて説明する。図3(a)は、本実施形態のバイオセンサ100bの分解斜視図であり、図3(b)は、図3(a)中に示したZ−Z線に沿った断面図である。
【0067】
図3(a)および(b)に示すように、本実施形態のバイオセンサ100bは、前記実施形態1のバイオセンサ100とほぼ同じ構成を有している。しかし、バイオセンサ100bでは、基板1が貫通孔17bを備え、基板1の下面上に吸湿材料からなる吸湿材シート16bが貼付され、さらに吸湿材シート16bの下面上に透明な不透水カバーシート19が貼付されており、品質判定部13bは基板の下面側に設けられており、さらに品質判定位置20も基板1の下面側に設けられていることがバイオセンサ100と異なる。なお、ここでは吸湿材シート16bとしてコバルト塩を含むシート材を用いている。
【0068】
本実施形態では、透明な不透水カバーシート19を通して吸湿材シート16bの変色の進み度合いを判別することができる。即ち、貫通孔17bの部分で吸湿材シート16bは露出しているので、この部分から外気が入り込んで外気中の水分が吸湿材料に吸収されて、吸湿材シート16bの色が貫通孔17bで露出している部分から青色からピンク色に変わっていき、この変色の広がり具合が透明な不透水カバーシート19を通して観察することができるのである。
【0069】
勿論、本実施形態のバイオセンサ100bを用いても、一般のユーザーが、特別な知識や技能を必要とせずに、常に使用に適した性能を有するバイオセンサを用いることが容易になり、常に正確な測定を行なうことができる。
【0070】
特に本実施形態のバイオセンサ100bは、製造が容易である。このことを、図4(a)および(b)を参照しながら説明する。図4(a)および(b)は、本実施形態のバイオセンサ100bの製造方法を表す工程断面図である。
【0071】
まず、図4(a)に示す工程で、予め貫通孔17bが形成されている、ポリエチレンテレフタレート等からなる電気絶縁性である基板1上に、スクリーン印刷により銀ペースト等を印刷し、端子2および端子3を形成する。続いて、樹脂バインダーを含む導電性カーボンペーストを基板1上に印刷して、端子2と接続された電極4を形成する。この後、基板1上に絶縁性ペーストを印刷して、電極4の外周部を覆って電極4の露出部分の面積を規定する絶縁膜6を形成する。この後、樹脂バインダーを含む導電性カーボンペーストを基板1上に印刷して、端子3と接続された電極5を形成する。
【0072】
次いで、酸化還元酵素であるGODおよび電子伝達体であるフェリシアン化カリウムを含有する水溶液を電極4および電極5上に滴下した後、乾燥させて試薬部7を形成する。この後さらに、試薬部7上に、界面活性剤であるレシチンを含有する界面活性剤層12を形成する。この後、スペーサ部材8を絶縁膜6の上に接着し、さらにスペーサ部材8の上に、空気孔11を備えた保護板9を接着する。
【0073】
次に、図4(b)に示す工程で、基板1の下面上に吸湿材シート16bを貼付し、さらに吸湿材シート16bの下面上の全面に透明な不透水カバーシート19(ここではプラスチックシート)を貼付する。このことによって、品質判定部13bが形成される。品質判定位置20の印は予め不透水カバーシート19に印刷されている。
【0074】
前記の各工程で、1枚の基板に複数個のバイオセンサ100bを一括して製造した場合は、最後に分割して個々のバイオセンサ100bとする。
【0075】
この後、バイオセンサ100bを直ちに乾燥剤入りの包装体に包装し、保管する。
【0076】
上述のように、本実施形態のバイオセンサ100bは、製造の際に、1枚の基板に複数個のバイオセンサ100bを一括して製造し、最後に分割して個々のバイオセンサ100bとすることが可能である。このため、容易に大量のバイオセンサ100bを製造することができる。
【0077】
また、本実施形態のバイオセンサ100bでは、製造の際に、品質判定部13bを形成するための工程が非常に単純になる(実質的に無くなる)。従って、吸湿材シート16bを空気に曝す時間を大幅に短縮することができるため、製造時における吸湿材シート16bの吸湿を極力抑制することができる。このため、バイオセンサ100bの試薬部7が使用に適した性能を有するか否かの判定をより正確に行なうことができる。
【0078】
(実施形態4)
本実施形態では、前記実施形態1のバイオセンサ100に接続して使用するバイオセンサ測定装置を、図5および図6を参照しながら説明する。図5は、本実施形態のバイオセンサ測定装置の構成を示す透視概略図であり、バイオセンサが装着される様子を模式的に表す。図6(a)および(b)は、バイオセンサを測定する際の、本実施形態のバイオセンサ測定装置の動作を模式的に表す断面図である。
【0079】
図5に示すように、本実施形態のバイオセンサ測定装置200は、1対のコネクタ21および22と、検出部23と、1対のコネクタ21および22と検出部23とが接続された測定部24と、測定部24に接続されたデータ処理部25と、データ処理部25に接続されたデータ表示部26とを備える。本実施形態では、1対のコネクタ21および22と、検出部23と、測定部24と、データ処理演算部25と、データ表示部26とが筐体200aに納められている。筐体200aは、バイオセンサ100を内部に挿入可能なスロット(不図示)を備えている。
【0080】
1対のコネクタ21および22は、バイオセンサ100をバイオセンサ測定装置200に装着する際に、バイオセンサ100の端子2と端子3とにそれぞれが接続される。
【0081】
検出部23は、バイオセンサ100がバイオセンサ測定装置200のスロットに装着されると、品質判定部13の品質判定位置20によって示された部分の色の変化を検出し、測定部24に得られた光学特性を出力する。本実施形態の検出部23は、光源および受光素子を備えており、図6(a)に示すように、光源はバイオセンサ100の品質判定部13の品質判定位置20より示された部分に光を出射し、品質判定位置20により示された部分から反射された光が受光素子に入射するように設けられている。光源としては、発光ダイオードあるいは半導体レーザなどが用いられ、受光素子としてフォトダイオードあるいはフォトトランジスタなどが用いられる。受光素子は、品質判定部13の品質判定位置20により示された部分からの入射光を検出する。
【0082】
測定部24は、検出部23からの出力から、入射光の波長スペクトルパターンあるいは特定波長の光の強度などの光学特性データを測定し、これに基づいてバイオセンサ100の試薬部7の劣化の程度が測定に適切であるか否かの判別を行ない、試薬部7の性能が測定に適切である場合、1対のコネクタ21および22を通じて、電極4と電極5との間に流れた電流値を測定する。例えば、本実施形態のバイオセンサ100を接続して用いる場合、検出部23が品質判定部13の品質判定位置20により示された部分の色を青色と検出すれば測定待機状態を経て測定を実施し、測定データをデータ処理部25に出力する。もし検出部23が品質判定部13の品質判定位置20により示された部分の色をピンク色と検出すれば、測定に不適切であるとのデータをデータ処理部25に出力する。
【0083】
データ処理部25は、測定データが入力されると、数値化した測定データをデータ表示部26に出力し、測定に不適切であるとのデータが入力されると、データ表示部26に、測定に不適切であることを示す表示を出力するように命令を出力する。
【0084】
データ表示部26は、データ処理部25から出力されたデータあるいは命令に応じた表示を行なう。
【0085】
特に、本実施形態では、バイオセンサ100の品質判定部13が、バイオセンサ100がバイオセンサ測定装置200のスロットに装着されたときに、バイオセンサ測定装置200内に位置するように配置されている。このため、バイオセンサ測定装置200内の検出部23において品質判定部13の色変化を検出し、バイオセンサが使用に適しているか否かを判定することが可能となる。このように、バイオセンサ100とバイオセンサ測定装置200とを用いれば、測定者が特別な知識を必要とせずに、正確な測定を自動的に行なうことが可能となる。
【0086】
ここで、バイオセンサ測定装置200内に配置された検出部23とバイオセンサ100の位置関係の一例を図6(a)および(b)に示す。
【0087】
図6(a)に示すように、本実施形態のバイオセンサ測定装置200の検出部23では、バイオセンサ100の品質判定部13の上方に検出部の光源が配置されており、光源から出射される光の約45°の反射光が入射する位置に受光素子が配置されている。このことによって、反射光から品質判定部13(すなわち吸湿材料16)の色変化を検出する。
【0088】
また、図6(b)に示すように、検出部23の光源と検出部とをバイオセンサ100cを挟むように配置し、品質判定部13cを透過する光を測定する構成としてもよい。この時基板1cと不透水カバーシート19のいずれもが光源から出射される光に関して透明である。なお、図6(b)に示したバイオセンサ100cは、前記実施形態3のバイオセンサ100bとほぼ同じ構成を有するが、バイオセンサ100cの基板1cが透明であることが実施形態3のバイオセンサ100bとは異なっている。基板1cが透明であるので、光源からの光が基板1cを通過して吸湿材シート16cを通り、さらに不透水カバーシート19を通過して受光素子に入射する。
【0089】
なお、本実施形態では、バイオセンサ100の品質判定部13が、電極4と電極5との間に配置されているが、これに限られず、バイオセンサ100がバイオセンサ測定装置200のスロットに装着されたときに、バイオセンサ測定装置200内に位置するように配置されており、検出部23が品質判定部13において品質判定位置20により示された部分に位置する吸湿材料16の色変化を検出することができる構成であればよい。
【0090】
また、本実施形態では、バイオセンサ測定装置200内にバイオセンサ100を装着して用いる場合を説明したが、勿論、上述の実施形態2および3のバイオセンサ100aおよび100bを装着して用いることも可能である。ただし、実施形態3のバイオセンサ100bを使用する場合は、光源と受光素子とがバイオセンサ100bの下面側に位置する構成のバイオセンサ測定装置を用いる。
【0091】
(実施形態5)
前記実施形態1〜4で示したバイオセンサ100、100a、100bおよび100cは、被測定物質を電気化学的に検出する構成(すなわち、電気化学式バイオセンサ)であるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。ここで、別の構成のバイオセンサの例を、図7(a)および(b)を参照しながら説明する。図7(a)は、被測定物質を光学的に検出するバイオセンサ100’の斜視図であり、図7(b)は、図7(a)中に示したW−W線に沿った断面図である。
【0092】
図7(a)および(b)に示すように、バイオセンサ100’は、品質判定部13を有する基板1と、基板1上に設けられ、試料が供給される試料受け入れ部15’とを備える。品質判定部13は、水分を吸収することによって変色する吸湿材料を含む。
【0093】
バイオセンサ100’では、品質判定部13は、基板1が備える凹部17と、凹部17内に配置された吸湿材料16と、凹部17の開口をほぼ塞ぎ吸湿材料16と密着するように設けられた通気性を有しないフィルム(カバー)18とから構成されており、前記実施形態1のバイオセンサ100の品質判定部13と全く同様の構造である。なお、ここでは吸湿材料16としてコバルト塩を用いている。
【0094】
試料受け入れ部15’は、基板1が備える凹部25と、凹部25内に配置された、被測定物質を基質とする酵素を含む試薬部26と、凹部25の開口を塞ぐように設けられた、水分が浸透可能な透過膜27とを有する。特に、本実施形態のバイオセンサ100’では、試料受け入れ部15’の色の変化を測定することによって被測定物質を検出する。試薬部26は、例えば、含まれる酵素が酵素反応によって呈色または蛍光を発する構成、酵素反応によるpHの変化によって呈色するpH指示薬をさらに含む構成、酵素反応によって基質の減少に伴う色の変化が生じる構成などが採用される。
【0095】
また、光学的に被測定物質を検出するバイオセンサ100’でも、前記実施形態1〜3の各バイオセンサと全く同様に、品質測定部13を設けているので、ユーザーがバイオセンサ100’の試薬部26が測定に適切な状態であるか否かを判断できるようになる。
【0096】
(実施形態6)
また、上記実施の形態1〜3に示したバイオセンサは、試料供給口に液体の試料を接触させると毛細管現象により試料が吸引され、試薬と接触し、測定が可能となる構成のバイオセンサに品質判定部を設けたが、本発明はこの構成に限定されるものではない。ここで、液体を収容するキャビティを回転可能なディスクに形成し、キャビティに液体を収容したままディスクを回転させることにより液体の分析を行うような分析ディスクの例を図8を参照しながら説明する。
【0097】
図8(a)および(b)に示すように、本実施の形態のバイオセンサはディスク形状であり、品質判定部313は、分析ディスク300、300’上に存在している。品質判定部313は、実施の形態2に示したようなシート状の吸湿材料316、フィルム318、品質判定位置320から構成される。また、品質判定部313はディスク300上に貼り付けられている。なお、図8(a)の分析ディスク300と図8(b)の分析ディスク300’との違いは、品質判定部313の位置である。図8(a)の分析ディスク300では、ディスク中心から品質判定位置320までの距離が、ディスク中心から後述の試薬306までの距離と同じに構成されている。一方、図8(b)の分析ディスク300’では、品質判定部313は試薬306の上方以外であればどの位置に設けられてもよい。
【0098】
図8(c)に示すように本実施形態のディスク300、300’は、ディスク基板301、ディスク接着層302、ディスクカバー303から構成されている。ディスクカバー303は透明な材質からなっている。ディスクには注入口304、キャビティである流路305が設けられ、流路305中には試料と反応して光学特性(透過率、色など)が変化する試薬306を塗布してある。分析は、注入口304からピペットやシリンジなどの液体注入器具800を用いてディスク300、300’内に試料900を注入して分析装置に装着して行なう。試料900が容易に注入されるように、流路305は空気抜き口307を備えている。
【0099】
図9は図8(b)に示す分析ディスク300’を分析するための分析装置の内部構造が分かるように示した斜視図である。図9においては分析ディスク300’は装置内の構造がわかるように透明にしている。装置の構成はいわゆる光ディスク装置に類似しており、ディスク300’を回転させるためのスピンドルモーター411、ディスク300’内に展開された試料900または試料900と反応した試薬306に光ビームを照射するための光ピックアップ412、この光ピックアップ412をディスク300’の半径方向に移動させるための送りモーター413等から構成されている。また、光ピックアップ412は品質判定位置320が指し示す位置における吸湿材料316にも光を照射する。
【0100】
装置に装着されたディスク300’はスピンドルモーター411に駆動されて回転するが、その前に光ピックアップ412が送りモータ413により移動し、さらに光ピックアップ412上に品質判定位置320がくるように、ディスク300’を回転させ、まず品質判定位置320が指し示す位置における吸湿材料316の吸光度を測定し、品質判定を行う。そこで、試薬306が劣化していると判定された場合は、エラーとなり以後の測定を行わないようにする。この動作は、実施の形態4に示した分析装置での動作と同様である。
【0101】
次に、ディスク300’はスピンドルモーター411に駆動されて回転し、ディスク300’の内径側にある注入口304より注入された試料900は、遠心力によりディスク300’の流路305内に展開され、ディスク300’の外周側にある空気抜き口307へと向かう。このとき試料900は、流路305内に塗布された試薬306と反応し、酵素反応や免疫反応などを生じる。反応の終了後、ディスク300’を回転させながら光ピックアップ412を用いて流路305内の試料900もしくは試薬306に光ビームを照射し、その反射光もしくは透過光を検出することで試薬306の反応状態を検出して定量、定性の分析を行なう。
【0102】
本実施の形態の分析ディスク300’は、品質判定部313を備えているため、図9に記載の分析装置に分析ディスク300’を装着した後、ディスクを回転させる前に、光ピックアップ412によりまず品質判定を行う。そこで、試薬306が劣化していると判定された場合は、エラーとなりこれ以降の測定を行わないようにするのである。
【0103】
このようにすると、回転させることにより液体の分析を行うような分析ディスクについても試薬の劣化程度を判定できるようになり、より正確な測定が可能となる。
【0104】
また、図8(a)に示す分析ディスク300を分析にするための分析装置は、品質判定位置320が試薬306の設置位置とディスクの径方向において同じ位置にあるため、光ピックアップ412を径方向に移動させる必要がない。従って、この分析装置は送りモータ413が不要であり、小型且つ安価に製作することができる。また、測定時間も短縮できる。
【0105】
さらに、本実施形態においても試料の分析は、光学的な測定によるものに限定されず、電気的な測定によるものなどを用いて行われてもよい。
(実施形態7)
上記実施の形態1〜3に示したバイオセンサは、試薬として酵素反応を利用したバイオセンサに品質判定部を設けたが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。ここで、免疫反応を利用したバイオセンサについて図10を用いて説明する。
【0106】
図10に示すように、本実施形態のバイオセンサは免疫クロマトセンサ500であり、品質判定部513は、プラスチック製の支持基板502上に存在している。品質判定部513は、実施の形態2に示したようなシート状の吸湿材料516、フィルム518、品質判定位置520から構成されている。また、品質判定部513はプラスチック製の支持基板502上に貼り付けられている。
【0107】
図10は免疫クロマトセンサ500の構成の概略を示したものである。この免疫クロマトセンサ500はプラスチック製の支持基板502上にニトロセルロース膜506が配置されている。このニトロセルロース膜506は、採水部503,標識抗体部504および抗体固定化部505を備えている。採水部503は短冊状のニトロセルロース膜506の一方の端に形成されている。標識抗体部504は、ニトロセルロース膜506に色素標識抗体を塗布して形成されている。この色素標識抗体は、標識抗体部504から流出可能に塗布されている。色素標識抗体は、所定波長(例えば550nm)の光を選択的に吸収する。また、抗体固定部505には、色素標識抗体が反応する抗原と反応する別の抗体が、ニトロセルロース膜506に流出不可能な状態で固定化されている。さらに、採水部503とは反対側の端に試料液を吸い上げるためのガラス繊維ろ紙がニトロセルロース膜506上に配置されて吸水部507となっている。
【0108】
この免疫クロマトセンサ500を用いての吸光度の測定は例えば以下のように行われる。採水部503に例えば尿などの試料を供給するとクロマトグラフィーの原理により試料が吸水部507に向かって移動する。そしてこの試料が移動する際に、まず標識抗体部504において試料中の抗原に色素標識抗体が結合する。色素標識抗体は標識抗体部504から流出可能であるので、この色素標識抗体が結合した抗原は試料とともに抗体固定化部505に移動し、ここで固定化された抗体と結合し、ここに留まる。そして、抗体固定化部505に所定波長の光L1を照射し、その反射光L2を測定することにより、吸光度が測定できる。試料中の抗原の量(濃度)によって抗体固定部505における色素標識抗体の量が決まるので、このように測定した吸光度から、試料中に含まれる抗原の濃度を決定することができる。
【0109】
本実施の形態の免疫クロマトセンサ500は、品質判定部513を備えている。したがって、分析装置によって試料の測定を実施する前に品質判定位置520が指し示す位置の吸湿材料516に光を照射し、まず品質判定位置520での吸湿材料516の吸光度を測定し、この吸光度により試薬(色素標識抗体および固定化された別の抗体)の品質判定を行うことが可能となる。そこで、試薬が劣化していると判定された場合は、エラーとなり測定を行わないようにする。この動作は、実施の形態4に示した分析装置での動作と同様である。なお、本実施形態では抗体固定部505に隣接する位置に品質判定位置520を設けているので、試料の測定を行う光学系をそのまま品質判定に使用することができる。
【0110】
このように、本実施形態では免疫反応を利用したバイオセンサについても試薬の劣化程度を判定でき、より正確な測定が可能となる。
【0111】
本実施形態では抗原を被測定物質としたが、抗体を被測定物質としてもよく、その場合は色素標識抗体を色素標識抗原とし、抗体固定部の代わりに被測定物質の抗体に特異的に反応する抗原を固定した抗原固定部を形成すればよい。
【0112】
本実施形態で使用する抗体、抗原は特に限定されない。一般に抗原抗体反応を利用して測定できる物質であればどのようなものでもよい。例えばそのような物質としては、タンパク質、核酸、脂質、細菌、ウイルス、ハプテンなどを挙げることができる。この中でタンパク質は抗原抗体反応を用いた臨床検査上の主たる測定対象であるため、好ましく用いることができる。本実施形態で好ましく用いることができるタンパク質の例としては、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、hCG(絨毛性性腺刺激ホルモン)などのホルモンや、各種免疫グロブリンクラスやサブクラス、補体成分、各種感染症のマーカー、C反応性タンパク質、アルブミン、リウマチ因子、血液型抗原などを挙げることができる。また抗体としては、抗原と特異的に反応する抗体であればよく、例えばマウス由来のモノクローナル抗体を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0113】
抗体を標識する色素としては、反応性に富む官能基を有するシアニン系色素などが使用される。
【0114】
また、本実施の形態では、抗体をニトロセルロース膜506に固定化し、クロマトグラフィーの原理を利用した構成の免疫センサを示したが、センサの形状はこれに限定されるものではない。例えば、免疫比濁度を測定するような構成の免疫センサであってもよく、試薬が乾燥担時されているような構成のバイオセンサとし、それに品質判定部を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上説明したように、本発明にかかるバイオセンサおよびバイオセンサ測定装置は、試料中に含まれる被測定物質をより正確に定量する必要のある、医療診断の際の測定等に有用である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に含まれる被測定物質を測定するためのバイオセンサであって、
基板と、
前記基板上に設けられ、前記試料が供給される試料受け入れ部と、
前記試料受け入れ部に設けられ、前記被測定物質と反応する試薬を含む試薬部と、
水分を吸収することによって変色する吸湿材料と、
を備え、
前記吸湿材料のうち変色した部分の割合に基づき前記試薬の劣化度合いを表示する、バイオセンサ。
【請求項2】
前記吸湿材料を覆うカバーをさらに備え、
前記吸湿材料の一部は露出している、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項3】
前記試薬の前記劣化度合いは、前記吸湿材料のうち、露出している部分から所定距離の位置に存するとともに前記カバーに覆われている部分の変色の度合いによって表示される、請求項2に記載のバイオセンサ。
【請求項4】
前記試薬は酵素を含んでいる、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項5】
前記試薬部は電子伝達体をさらに含む、請求項4に記載のバイオセンサ。
【請求項6】
前記基板上に設けられた1対の端子と、
前記試料受け入れ部内にそれぞれが互いに離間して設けられ、前記1対の端子にそれぞれが接続された1対の電極とをさらに備える、請求項5に記載のバイオセンサ。
【請求項7】
前記試薬は抗体および抗原のうち少なくともいずれかを含んでいる、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項8】
前記吸湿材料は、シート状に形成されている、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項9】
前記基板上に、遮光性材料から形成され、前記試料受け入れ部を覆うように形成されている被覆部材をさらに備える、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項10】
前記基板上であって、前記基板の前記試料受け入れ部が設けられた面とは反対側の面上に前記シート状に形成された吸湿材料が設けられ、
前記吸湿材料上に、前記吸湿材料を覆うシートが設けられている、請求項8に記載のバイオセンサ。
【請求項11】
基板と、前記基板上に設けられ、試料に含まれる被測定物質と反応する試薬を含む試薬部を有する試料受け入れ部と、水分を吸収することによって変色する吸湿材料とを備えるバイオセンサを用いて、前記被測定物質を測定するためのバイオセンサ測定装置であって、
前記吸湿材料に光を出射する光源と、前記光源から前記吸湿材料を経て入射する入射光を受光する受光素子とを備える検出部と、
前記検出部に接続され、前記入射光の光学特性を測定し、前記入射光の光学特性に基づいてバイオセンサの試薬部の試薬の劣化度合いを判定する測定部と、
を備える、バイオセンサ測定装置。
【請求項12】
基板と、前記基板上に設けられ、試料に含まれる被測定物質と反応する試薬を含む試薬部を有する試料受け入れ部と、水分を吸収することによって変色する吸湿材料とを備えるバイオセンサを用いて、前記被測定物質を測定する測定方法であって、
前記バイオセンサをバイオセンサ測定装置に装着する工程と、
前記吸湿材料の変色度合いから試薬の劣化度合い判定する工程と、
前記判定工程において、試薬の劣化度合いが小さいと判定した場合には、前記被測定物質の測定を実施し、試薬の劣化度合いが大きいと判定した場合には、前記被測定物質の測定を中止する工程と
を含む、測定方法。

【国際公開番号】WO2005/075979
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517693(P2005−517693)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001482
【国際出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】