説明

バイオディーゼル燃料エンジン用潤滑剤組成物

【課題】 多量の潤滑粘度のオイルと、少量の少なくとも一つの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを含有した潤滑油組成物で潤滑されており、約5重量%から約100重量%のバイオディーゼル成分を含有する燃料で作動するディーゼルエンジン。
【解決手段】 当該オレフィンコポリマーは、アシル化剤と数平均分子量が約1,000以上のオレフィンコポリマーとをフリーラジカル反応開始剤の存在下で反応させて、オレフィンコポリマー上でのアシル化剤のグラフト率(DOG)が少なくとも0.5重量%であるアシル化されたオレフィンコポリマーを提供すること、またアシル化されたオレフィンコポリマーとアミンとを反応させて、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを提供することによって作られる。この高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーが使用された場合、エンジン用潤滑油組成物中での粘度増加を低減する効果がある。

【発明の詳細な説明】
【関連特許】
【0001】
本出願は、2007年1月31日提出の仮出願第60/887,539号に対する優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、バイオディーゼル燃料エンジンの潤滑およびバイオディーゼル燃料エンジン用により優れた特性をもたらす、改善された潤滑剤組成物に関連する。
【発明の背景】
【0003】
すべての自動車に対する排ガス基準はますます厳しくなっている。例えば、排ガス基準を満たすために要求されたディーゼルエンジンのデザインの変更によって、エンジンの潤滑剤中におけるすすレベルの増加が起こった。オイル粘度の増加、および/またはオイルにエンジンの磨耗の原因となる粒子を分散させる能力がないことが原因となってオイルが適切に組成されなかった場合、すすレベルの増加は磨耗の増加の原因となり得る。特に、新しい排ガス再循環装置あるいは排ガスリサイクル装置(以後「EGR」と称する)によって冷却されたEGRエンジンを含む冷却エンジンの到来と共に、従来の潤滑油の、結果として増加したすすの負荷に対処する能力に問題が生じた。より生物分解性ではあるが、しばしばすすを多く生成し、またオイルを濃縮する成分でもあるバイオディーゼル燃料のような、低グレードの燃料の使用もまた、すす負荷の増加の原因となる。
【0004】
冷却EGRを備えた特定のディーゼルエンジンは、エンジン内に生じたすすおよびブローバイがエンジンオイルを汚染するため、オイルの好ましくない濃縮を示すことがある。標準的な潤滑油中の分散剤の処理率を増加させるだけでは、エンジン内でのバイオディーゼル燃料使用の増加によって起こる問題の十分な解決にはならない。従って、より新しい、ヘビーデューティーディーゼル燃料、特に濃度の増加したバイオ燃料成分を含む燃料と、より整合性のある潤滑剤組成物の必要性が継続する。
【0005】
第一の例示的実施例に従って、本開示は、約5重量パーセントから約100重量パーセントのバイオディーゼル燃料を含有する燃料で作動する、ディーゼルエンジンを提供する。このエンジンは、多量の潤滑粘度のオイル、およびアシル化剤と数平均分子量が約1,000以上のオレフィンコポリマーとをフリーラジカル反応開始剤の存在下で反応させて、オレフィンコポリマー上のアシル化剤のグラフト率(DOG)が少なくとも0.5重量%であるアシル化されたオレフィンコポリマーを提供すること、またアシル化されたオレフィンコポリマーとアミンとを反応させて、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを提供することによって作られる、少量の少なくとも一つの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーで潤滑される。高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーは、当該エンジン内で、エンジン用潤滑油組成物中の粘度の増加を、バイオディーゼル成分を含まない燃料で作動されるエンジン用の潤滑油組成物中の粘度増加よりも低く下げるのに効果的である。
【0006】
別の例示的実施例において、本開示は、約5重量%から約100重量%のバイオディーゼルを含んだ燃料で作動するディーゼルエンジン用の潤滑油組成物中の粘度増加を低減する方法を提供する。このエンジンは、多量の潤滑粘度のオイル、およびアシル化剤と数平均分子量が約1,000以上のオレフィンコポリマーとをフリーラジカル反応開始剤の存在下で反応させて、オレフィンコポリマー上のアシル化剤のグラフト率(DOG)が少なくとも0.5重量%であるアシル化されたオレフィンコポリマーを提供すること、またアシル化されたオレフィンコポリマーとアミンとを反応させて、高度にグラフト化された多
機能オレフィンコポリマーを提供することによって作られる、少量の少なくとも一つの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを含有する潤滑剤組成物で潤滑される。当該エンジンは、T−11エンジンテストによって測定された潤滑油組成物中の粘度の増加が、バイオディーゼル成分を含まないディーゼル燃料で作動されるエンジン用の潤滑油中の粘度増加よりも低くなるように作動される。
【0007】
従って、例示的実施例の主な利点として、バイオディーゼル成分を含有する燃料で作動されるエンジン用の潤滑油中の粘度増加がより低いため、オイル交換の間隔が長くなることがある。
【例示的実施例の詳細な説明】
【0008】
以下に詳しく記載されるように、バイオディーゼル成分を含有する燃料で作動されるディーゼルエンジン用の潤滑油は、特定の、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを添加することによって相乗的に改善される。より具体的に言うと、従来の分散剤/阻害剤(DI)パッケージを含有した潤滑油は、高度にグラフト化されたオレフィンコポリマーを分散剤/粘度指数向上剤として取り入れることにより、バイオディーゼル燃料で作動する特定のエンジン内での使用が著しく改善される。本明細書でより完全に説明されるこのような潤滑油組成物は、内燃エンジン(例えば排ガス再循環器(EGR)システムを備えたディーゼルエンジンを含む、ヘビーデューティーのディーゼルエンジン、およびライトデューティーのディーゼルエンジン用)として特に有用である。高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを含有する潤滑剤組成物は、粘度性能を向上させ、それによってエンジンの磨耗保護を向上させると共に、すすの分散(解凝集)、堆積物のコントロール、および境界の膜形成などの性能を向上させた。
【0009】
一つの実施例では、特に排ガス再循環(EGR)装置を備えたディーゼルエンジン内における、すすの含有に起因する潤滑油の濃縮量を低減させるのに十分な量で、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマー生成物が潤滑組成物に添加される。
【0010】
米国特許第7,253,231号により完全に説明されているように、この高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーは、エチレンと一つ以上のCからC23のアルファオレフィンとのポリマーから得られる、先に脱水されたコポリマー基材の反応性生物として得られる。このコポリマーはアシル化剤によりアシル化され、さらにアミンと反応して多機能性の生成物をもたらす。前述の多機能性の生成物は、潤滑組成物中で使用され、粘度指数(VI)調整剤、分散剤、膜形成向上剤、堆積物コントロール剤、またその他の機能を含む、一つ以上の機能を提供する。
【0011】
多機能オレフィンコポリマーのポリマー基材出発物質は、エチレンと一つ以上のCからC23のアルファオレフィンとのコポリマーから得られる。このコポリマーを作るため、エチレンとプロピレンとのコポリマーが適切に使用される。本明細書で使用される「コポリマー」には、エチレンと一つ以上のCからC23のアルファオレフィンとの混合物あるいは反応生成物、および追加的かつ任意的にその他のジエンまたはポリエンなどが制限されることなく含まれる。従って、本明細書で使用される「コポリマー」にはまた、ターポリマーやその他のより高度な形態が含まれる。コポリマーを形成するためのプロピレンの代わりとして適している、またはターポリマーを形成するためにエチレンとプロピレンとの組み合わせで使用されるその他のアルファオレフィンには、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよびスチレン;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエンのようなアルファ、ω−ジオレフィン;4−メチルブテン−1,5−メチルペンテン−1や6−メチルヘプテン−1のような分岐鎖アルファオレフィン;およびそれらの混合物などが含まれる。
【0012】
上述のコポリマーの生成方法は、例えばその記述が参照することにより本明細書に組み込まれている、米国特許第4,863,623号、5,075,383号、および6,107,257号で説明されている。本明細書に指定された特性を持つポリマー基材は、市販されている場合もある。
【0013】
しばしばインターポリマーとして指定される、より複雑なポリマー基材もまた、第三の成分を使用して調整されたオレフィンポリマー出発物質として使用することができる。通常インターポリマー基材の調製に使用される第三の成分は、非共役ジエンおよびトリエンの中から選択されたポリエンモノマーである。この非共役ジエン成分は、その鎖中の炭素数が5から14のものである。例えば、ジエンモノマーは、その構造中にビニル基が存在することを特徴とし、また環状および環状ビシクロ化合物を含む可能性がある。代表的なジエンには、1,4−ヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチルイデン−2−ノルボルネン、ビニルノルボルネン、5−メチレン2−ノルボレン、1,5−ヘプタジエン、および1,6−オクタジエンなどが含まれる。また、一つ以上のジエンの混合物をインターポリマーの調製に使用することもある。ターポリマーあるいはインターポリマー基材の調整用として好適な非共役ジエンは1,4−ヘキサジエンである。
【0014】
トリエン成分は、少なくとも二つの非共役二重結合を有してもよく、またその鎖中の炭素数は約30である。本開示のインターポリマーの調整に使用される一般的なトリエンには、1−イソプロピルイデン−3α,4,7,7α−テトラヒドロイデン、1−イソプロピルイデンジシクロペンタジエン、ジヒドロ−イソジシクロペンタジエン、および2−(2−メチレン4メチル−3−ペンテニル)[2.2.1]ビシクロ−5−ヘプテンなどがある。
【0015】
エチレン−プロピレン、あるいはより高級なアルファ−オレフィンコポリマーは、15モルパーセントから80モルパーセントのエチレン、および約85モルパーセントから20モルパーセントのCからC23のアルファオレフィンからなり、一つの実施例ではこれらのモル比が約35モルパーセントから75モルパーセントのエチレンと約65モルパーセントから25モルパーセントのCからC23のアルファオレフィン、別の実施例ではこの割合が50モルパーセントから70モルパーセントのエチレンと50モルパーセントから30モルパーセントのCからC23のアルファオレフィン、またさらに別の実施例ではこの割合が55モルパーセントから65モルパーセントのエチレンと45モルパーセントから35モルパーセントのCからC23のアルファオレフィンである。
【0016】
前述のポリマーのターポリマー型には、0モルパーセントから10モルパーセントの非共役ジエンあるいはトリエンが含有されることがある。その他のターモノマーレベルは1モルパーセント以下である。
【0017】
アシル化された開始ポリマーは、望ましくは油溶性であり、ゲル透過クロマトグラフィーおよびユニバーサル校正標準システムによって決定された数平均分子量が約1,000から500,000、例えば数平均分子量が50,000から250,000の線状あるいは分岐ポリマーである。
【0018】
「ポリマー」という用語は総称的に使用され、エチレンコポリマー、ターポリマー、またはインターポリマーなどを含む。このような物質は、ポリマーの基本的な特性が物質的に変更されない限り、その他のオレフィン系モノマーを含むこともある。
【0019】
エチレンオレフィンコポリマーの形成に使用されたポリマー化反応は、従来のジーグラー・ナッタあるいはメタロセン触媒システムの存在下で行われる。ポリマー化の媒体は特定のものではなく、溶液、スラリー、またはガス相などのプロセスが含まれ、当技術分野に精通した技師にはよく知られている。溶液のポリマー化が用いられた場合、溶媒はアルファオレフィンのポリマー化の反応条件下で液体である、いかなる好適な不活性の炭化水素溶媒でも良い。好適な炭化水素溶媒の例として、炭素数が5から8の直鎖パラフィンが挙げられるが、ヘキサンが望ましい。芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエンなどのような単一ベンゼン核を有する芳香族炭化水素、直鎖パラフィン系の炭化水素の沸点に近い沸点を有する飽和環状炭化水素、また上述の芳香族炭化水素などが特に好適である。選択された溶媒は、前述の炭化水素一つ以上の混合物であってもよい。スラリーのポリマー化が使用された場合、ポリマー化の液体相は望ましくは液体プロピレンである。ポリマー化の媒体は、触媒成分の妨害をする物質を含まないことが望ましい。
【0020】
上述のポリマー、すなわちオレフィンポリマー成分は、粉末あるいはペレット化したポリマーの形態で都合よく得られる。このオレフィンポリマーはまた、あらかじめ混合されたベール、あるいはあらかじめ混合された、切り刻まれた砕けやすい塊の形態のいずれかとしても供給されることもある。
【0021】
一つの実施例において、例えば単軸あるいは2軸押出し機などの押出し機、または脱水段階にポリマー基材上で加熱、および目的とする機械的作用(かくはん)を起こすことのできるバンバリーあるいはその他のミキサーに、粉末ポリマーベールまたはその他の形態のオレフィンコポリマーが送り込まれる。押出し機の供給部では窒素ブランケットが維持され、空気の進入を最小化することができる。
【0022】
オレフィンコポリマーはまず、押出し機あるいはその他のミキサー中の他の反応物質と混ぜ合わせられる前に、供給材料中の湿気を取り除くため、通気しながら加熱される。一つの実施例で、乾燥されたオレフィンコポリマーは次に、グラフト反応を行うため、押出し機の別のセクションあるいは別の押出し機に連続して供給される。
【0023】
グラフトモノマーは次に、ポリマーオレフィンコポリマーのポリマー骨格上にグラフト化されて、アシル化エチレン−アルファオレフィンポリマーが形成される。
【0024】
好適なグラフトモノマーには、不飽和ジカルボン酸無水物のようなエチレン不飽和のカルボン酸物質や、それらに対応する酸が含まれる。これらのグラフトモノマーの例は、例えばその記述が参照することによって本明細書に組み込まれている、米国特許第5,837,773号にで説明されている。エチレン−アルファオレフィンインターポリマー上にグラフト化するのに適したカルボン酸反応物には、少なくとも一つのエチレン結合と少なくとも一つのカルボン酸、または酸化あるいは加水分解によってカルボン酸に変換することのできる無水物基または極性基が含まれる。このカルボン酸反応物は、アクリル酸系、メタクリル酸系、桂皮酸系、クロトン酸系、マレイン酸系、フマル酸系、およびイタコン酸系の反応物質、あるいはそれらの二つ以上の組み合わせからなる群の中から選択される。不飽和エチレンコポリマーあるいはターポリマーの場合、フリーラジカルグラフとのプロセス中に架橋構造を形成する傾向が少ないため、イタコン酸あるいはその無水物が有用である。
【0025】
エチレン不飽和のカルボン酸物質は、反応物質1モルにつき一般に一つか二つのカルボン酸基をグラフトコポリマーに提供する。つまり、メチルメタクリレートは1モルにつき一つのカルボン酸基をグラフトコポリマーに提供し、一方無水マレイン酸は1モルにつき二つのカルボン酸基をグラフトコポリマーに提供する。
【0026】
アシル化されたオレフィンコポリマーを形成するグラフト反応は通常、塊あるいは溶液のフリーラジカル反応開始剤の助けを借りて実行される。グラフト化は、オイル中に溶け
たフリーラジカル反応開始剤の存在下で実行される。オイル中に溶けたフリーラジカル反応開始剤の使用により、オレフィンコポリマー分子に比べ、より多くのアシル化基の均一な分布がもたらされる。
【0027】
エチレン不飽和のカルボン酸物質をポリマー骨格にグラフトさせるために使用されるフリーラジカル反応開始剤には、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルエステル、およびアゾ化合物、また望ましくは沸点が100℃以上であり、グラフト化温度の範囲内で熱分解するようなものが含まれ、フリーラジカルが提供される。これらのフリーラジカル反応開始剤の代表例には、アゾブチロニトリル、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ビス−t−ブチルペルオキシド、および2,5−ジメチルヘキシ−3−イン−2,5−ビス−t−ブチルペルオキシドなどがある。開始剤は、反応混合物の重量に基づき、約0.005重量%から約1重量%の量で使用され得る。
【0028】
溶媒のない、あるいは実質的に溶媒のないバルク方式としてグラフト反応を行うため、一つの実施例ではグラフトモノマーおよびオレフィンコポリマーが、例えば単軸あるいは2軸押出し機、例えばワーナー・フライダー社の(Werner & Pfleiderer)ZSKシリーズのような押出し機、またはバンバリーその他のグラフト化ステップ用の反応物質上に希望のレベルの機械的作用(かくはん)を起こし、また加熱する能力のあるミキサーに供給される。一つの実施例では、グラフト化は押出し機、特に2軸押出し機内で行われる。空気の侵入を最小化するため、押出し機の供給部では窒素ブランケットが維持される。
【0029】
グラフト化はまた、2軸押出し機のような押出し機内で行われることもある。空気の侵入を最小化するため、押出し機の供給部で窒素ブランケットが維持される。別の実施例では、オレフィン系カルボン酸アシル化剤が一つの注入地点、あるいは例えば輸送ゾーンなどの押出し機のゾーン内の二つの注入地点に注入される。これらのような注入によりグラフト化の効率が高められ、ゲルの含有量が低くなる。
【0030】
好適な押出し機は通常、グラフト化、およびそれに先立つ脱水処理用としても使用可能であることが知られている。このポリマー基材の脱水とそれに続くグラフト化処理は、連続してセットされた別々の押出し機内で行われてもよい。また一方、一つの装置内で別々の操作を連続して行うため、複数の処理あるいは反応ゾーンを有する単軸押出し機が使用されることもある。好適な押出し機の例は、その記述が参照することにより本明細書に組み込まれている、例えば米国特許第3,862,265号および米国特許第5,837,773号で説明されている。
【0031】
アシル化されたオレフィンコポリマーの形成において、オレフィンコポリマーは通常、少なくとも60℃、例えば150℃から240℃に加熱された、押出し機、強力なミキサーあるいはマスティケーターなどのような処理装置に供給され、またエチレン不飽和のカルボン酸試薬およびフリーラジカル反応開始剤は、グラフト化を遂行するため、溶融コポリマーに別々に共同供給される。この反応は、オレフィンコポリマーのグラフト化遂行のための混合条件下で任意的に実行される。分子量の低減とグラフト化が同時に行われる場合の具体的な混合条件については、参照することによって本明細書に組み込まれている、米国特許第5,075,383号に記載されている。この処理装置は通常、コポリマーの酸化を防ぎ、またグラフト反応の未反応試薬や副産物の通気を助けるために、窒素パージされる。処理装置内での滞留時間は、目的とする度合いでアシル化を行い、またアシル化されたコポリマーの通気による浄化を可能にするようにコントロールされる。通気段階の後に、アシル化されたコポリマーを溶解するため、鉱物性あるいは合成の潤滑油が処理装置に任意的に加えられることもある。
【0032】
グラフト反応は、溶媒のない、あるいは実質的に溶媒のない環境下で実行されることもある。従って、炭化水素溶媒が存在しない状態でグラフト反応が行われることもある。グラフト反応中にアルカン(例えばヘキサン)のような炭化水素溶媒を回避することにより、グラフト化されたアルキル無水コハク酸副産物や不純物を形成する可能性のある、これらの溶媒の望ましくない副反応が起こる危険性および問題が、除去あるいは著しく低下される。また、溶媒のないグラフト反応でグラフト化された後には、減少された量の一時的な非官能化されたポリマー(非グラフト化ポリマー)が存在し、より活発な生成物が得られる。従って、結果として得られるコポリマー中間体が、より活発な生成物ということになる。グラフト化された望ましくない溶媒(すなわちグラフト化ヘキシル無水コハク酸)および一時的に非官能化された(非グラフト化)コポリマーのレベルで低減が達成される。
【0033】
本開示の特定の実施例に基づいて除外され得る炭化水素溶媒に、通常本明細書に記載のグラフト反応の反応物質よりも揮発性の高い溶媒、例えば標準的な大気圧の条件下(すなわち絶対気圧約14.7lb./in)で沸点が約150℃以下の溶媒が含まれる。除外される溶媒には、例えばCまたはそれ以下のアルカン、アルケンおよびアルキン(例えばCからCのヘキサンのようなアルカン)のような開鎖脂肪族化合物;芳香族炭化水素(例えばベンゼンおよびトルエンのような、ベンゼン核を有する化合物);飽和環状炭化水素(例えばシクロヘキサン)のような脂環式炭化水素;ケトン;あるいはこれらの組み合わせが含まれる。一つの実施例では、標準的な大気条件下で沸点がノナンと同様あるいはそれよりも低い溶媒はすべて除去することが望ましい。従来のグラフト反応の中には、ヘキサンの含有量が約15%から60%であるなど、かなりの量の炭化水素溶媒の存在下で行われたものもある。それに比べ、本開示の一つの実施例では、グラフト反応質量中のこれらの種類のこのような溶媒の総量は、それらの内容物の0.5重量%以上にはならない。
【0034】
グラフト化の直後、または同一の押出し機の別の部分、あるいはグラフト化が行われた押出し機と連続して配置された別の押出し機で行われた場合はせん断および真空剥離(以下に詳しく説明する)の後に、グラフトコポリマー中間体が押出し機のダイフェースから出てくる。
【0035】
結果として得られるコポリマー中間体には、その構造内で機能性を任意にアシル化するカルボン酸を有する、アシル化されたオレフィンコポリマーが含まれる。所定のコポリマー骨格(すなわちコポリマー基材)上にグラフト化されるカルボン酸アシル化剤(例えば無水マレイン酸)の量は重要である。このパラメータは本明細書ではグラフト率(DOG)と称され、アシル化されたコポリマー上のアシル化剤の質量パーセントとして示される。このDOGは通常、コポリマー骨格上にグラフト化されたカルボン酸アシル化剤の0.5重量%から3.0重量%、具体的には1.5重量%から2.5重量%、またより具体的には1.7重量%から2.3重量%である。
【0036】
特定の添加剤反応生成物のDOG値は、酸または無水酸部分に対するコポリマーアルキル機能性の赤外線ピーク率分析、または添加剤反応性生物の滴定(全酸/無水酸数)(TAN)によって決定される。TAN値は、同様にグラフト率(DOG)の推定にも使用することができる。
【0037】
カルボン酸反応物が所定のコポリマー骨格上にグラフト化され、コポリマー骨格の1000数平均分子量ユニット(Mn)につき0.15から0.75のカルボン酸基、望ましくは1000数平均分子量につき0.2から0.5のカルボン酸基が得られる。例えば、Mが20,000のコポリマー基材が、コポリマー鎖毎に3から15のカルボン酸基、あるいはコポリマー1モルにつき1.5モルから7.5モルの無水マレイン酸でグラフト化される。Mが100,000のコポリマーは、コポリマー鎖毎に15から75のカルボン酸基、あるいはコポリマー鎖毎に7.5モルから37.5モルの無水マレイン酸でグラフト化される。機能性の最低レベルは、満足のいく最小限の分散性を達成するために必要とされるレベルである。
【0038】
アシル化されたオレフィンコポリマー、すなわちコポリマー中間体の分子量は、機械的、熱的または化学的な手段、あるいはそれらの組み合わせによって低減される。このようなコポリマーの分子量の低減あるいは縮小技術は、通常当技術分野で周知のものである。数平均分子量は単一グレードあるいはマルチグレードの潤滑油中での使用に適したレベルまで低減される。
【0039】
一つの実施例において、初期コポリマー中間体の数平均分子量は、初期の約1,000からグラフト反応完了時の約500,000までに及ぶ。一つの実施例では、マルチグレードのオイル中での使用を目的とした添加剤を調製するため、コポリマー中間体の数平均分子量が約1,000から約80,000まで低減される。
【0040】
一方、分子量の大きいオレフィンコポリマーのグラフト化と縮小が同時に行われることがある。別の例では、分子量の大きいオレフィンコポリマーはグラフト化の前に、まず所定の分子量まで低減される。オレフィンコポリマーの平均分子量がグラフト化の前に低減される場合、その数平均分子量は約80,000以下、例えば約1,000から80,000の間の値まで十分に低減される。
【0041】
コポリマー中間体あるいはオレフィンコポリマー供給材料の分子量は、一般に、グラフト化の最中あるいはそれ以前に、溶媒なしでまたは基油の存在下で、機械的、熱的、または化学的手段、あるいはそれらの組み合わせのいずれかを用いて、所定の小さい分子量まで低減される。通常、コポリマー中間体、あるいはオレフィンコポリマーは、温度約250℃から約350℃の間で溶融状態になるまで加熱され、次にコポリマー中間体(あるいはオレフィンコポリマー)が所定の分子量に縮小されるまで、機械的せん断、熱的または科学的に引き起こされたへき開、あるいは上述の手段の組み合わせが行われる。せん断は、その記述が参照することにより本明細書に組み込まれている米国特許第5,837,773号に記載されるように、押出し成形セクション内で行われる。一方機械的せん断は、溶融したコポリマー中間体(あるいはオレフィンコポリマー)を加圧下で小さなオリフィスに無理に通すか、または別の機械的な手段によって行われる。
【0042】
グラフト反応が完了すると、通常コポリマー中間体にさらに機械化がなされる前に、未反応のカルボン酸反応物およびフリーラジカル反応開始剤が、コポリマー中間体から取り除かれ、分離される。未反応成分は真空剥離によって反応質量から排除される。例えば反応質量は真空下でかくはんされながら、未反応の揮発性グラフトモノマーおよびフリーラジカル反応開始剤成分を取り除くのに十分な時間、温度約150℃から約450℃まで加熱される。真空剥離は、通気手段を備えた押出し成形セクション内で行われる。
【0043】
コポリマー中間体は、本明細書に開示された開示の実施例に従い、さらなる処理の前にペレット化される。コポリマー中間体をペレット化することにより、中間体生成物の分離が助けられ、望みの時間にさらなる処理が行われるまで、その汚染が低減される。
【0044】
コポリマー中間体は、プラスティック処理技術の分野で一般的に行われている各種のプロセスによってペレット状に形成される。このような技術には、水中のペレット化、リボン式あるいはストランド式のペレット化、またはベルトコンベヤ冷却などが含まれる。コポリマーの強度がストランドを形成するのに不適当である場合は、水中のペレット化が望ましい。ペレット化の温度は30℃を越えてはならない。ペレットの凝集を防ぐため、ペ
レット化の最中に界面活性剤を任意的に添加することができる。
【0045】
水と冷却されたコポリマーペレットとの混合物は、水分の除去のため、遠心脱水機のような乾燥機に移される。ペレットは保管や運送のため、任意の量で箱またはポリ袋に収集される。周囲条件下での保管および/または輸送のいくつかの条件のもとでは、ペレットは凝集し互いにくっつき合う傾向がある。このペレットは機械的な方法で細かくされ、オイル中に簡単にすばやく溶解する表面積の大きい固体片が提供される。
【0046】
ペレット化されたコポリマー中間体は、細かくされていないペレット、または細かくされたペレットの形状で供給される。ペレット化されたアシル化コポリマー中間体は、中性オイル溶媒に溶解する。このペレットは通常、結果として得られる溶液(溶質および溶媒)の粘度に基づき、約5重量%から約25重量%、具体的には約10重量%から約15重量%、より具体的には約12重量%から約13重量%の導入レベルで、溶媒に溶解する。
【0047】
ペレット化されたコポリマー中間体は、窒素ブランケットのもとで機械的にかくはんされながら、温度、例えば約135℃から約165℃で中性溶媒に溶解される。溶解中約4時間から16時間、この溶解混合物は不活性ガスと共に散布される。このような処理は、適切な容量の連続かくはん処理容器内で行われる。
【0048】
この不活性ガスは窒素である。溶解および散布は、もし行われるとすれば、次に行われるアミノ化処理の前に行われる。一つ以上のスパージャーが容器中、溶液の表面化に浸った位置、望ましくは溶液の底付近に位置し、不活性ガスの気泡が溶液中を通るされ。窒素散布により、溶解したコポリマー中間体および溶媒オイルから水分が除去される。重要なことに、コポリマー中間体からの水分の除去は、ポリマー性ジカルボン酸の二塩基酸を目的のコポリマー性無水ジカルボン酸の形態にもどす働きをする。
【0049】
例えば、無水マレイン酸がグラフト化モノマーとして使用される場合、ペレット化されたコポリマー中間体の一部分が、はからずもコポリマー性コハク酸の二塩基酸形態に変形することがある。通常この変化は長期保存の作用として起こる傾向が強い。コポリマー中間体の溶解の最中、アミノ化に先立って窒素散布には、コポリマー性コハク酸の二塩基酸を、コポリマー中間体がさらに反応し機能化される(例えばアミン化される)前に、望ましい活性ポリマー性無水コハク酸に変換しなおすという利点がある。結果として、後に続く処理で、さらに高度に機能化され活発にアミン化された生成物が得られることになる。ポリマー性コハク酸を二塩基酸の活性ポリマー性無水コハク酸の形態に変換しなおす工程は、溶液の粘度を測定することによって監視される。すべてのあるいは実質的にすべてのポリマー性コハク酸の二塩基酸がポリマー性無水コハク酸の形態に変換しなおされると、溶液の粘度は、初期の高い値から定常状態の値まで著しく減少する。
【0050】
この中性油は、グループI、グループII、グループIIIのベースストック、グループIVあるいはポリアルファオレフィン(PAO)、またはそれらの基油ブレンドの中から選択される。
【0051】
ベースストックあるいはベースストックブレンドの飽和物含有量は、望ましくは少なくとも65%、より望ましくは少なくとも75%;硫黄含有量は1重量%以下、望ましくは0.6重量%以下;また粘度指数は少なくとも85、望ましくは少なくとも100である。これらのベースストックは以下のように定義される:
(1)グループIのベースストックは、1996年12月に米国石油協会(API)インダストリーサービス部門から発行、1998年12月には補足が発行された「エンジンオイルのライセンシングおよび認証シート」(American Petroleum Institute(API)publication“Engine Oil Lice
nsing and Certification Sheet”Industry Services Department,14.sup.th Ed.,December 1996,Addendum I,December 1998)の表1に特定されたテスト方式によると、90%以下の飽和物および/または0.03%以上の硫黄を含有し、粘度指数は80以上120以下である。
(2)グループIIのベースストックは、上記参考文献の表1に特定されたテスト方式によると、90%以上の飽和物および/または0.03%以上の硫黄を含有し、粘度指数は80以上120以下である。
(3)グループIIIのベースストックは、上記参考文献の表1に特定されたテスト方式によると、硫黄の含有量が0.03%以下、飽和物の含有量が90%以上、また粘度指数は120以上である。
(4)グループIV:PAOを含むベースストック。
【0052】
これらの定義について、飽和レベルはASTM D2007、粘度指数はASTM D2270、また硫黄含有量はASTM D2622、ASTM D4294、ASTM D4927、またはASTM D3120のいずれか一つによって測定された。
【0053】
カルボン酸をアシル化する機能を有する、溶解したペレット化されたコポリマー中間体は、続いてアミン化合物と反応した。当該のアミンは、例えばその記述が参照することによって本明細書に組み込まれている米国特許第4,863,623号、5,075,383号、および6,107,257号に記載の化合物の中から選択されている。
【0054】
一つの実施例では、アミン化合物は以下の化合物からなる群の中から選択される:
(a)次の化学式で表されるN−アリルフェニレンジアミン:
【化1】

式中、Arは芳香族、Rは−−H、−−NH、−−(−−NH−Aryl)−−H、−−(−−NH−アルキル)−−H、−−NH−アリルアルキル、炭素数が4から24でアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリル、ヒドロキシアルキル、あるいはアミノアルキルであり得る、分岐鎖または直鎖ラジカル、Rは(−−NH,−−(NH(CH−−)−−NH、−−(CH−−NH、−アリル−NHであり、式中のnおよびmはそれぞれ1から10であり、またRは水素、炭素数が4から24のアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリルである。
【0055】
(b)次の化学式で表されるアミノカルバゾール:
【化2】

式中、RおよびRは水素、または炭素数が1から14のアルキル、アルケニル、あるいはアルコキシルラジカルを表す。
【0056】
(c)次の化学式で表されるアミノインドール:
【化3】

式中、Rは水素、または炭素数が1から14のアルキルラジカルを表す。
【0057】
(d)次の化学式で表されるアミノ−インダゾリノン:
【化4】

式中、Rは水素、または炭素数が1から14のアルキルラジカルである。
【0058】
(e)次の化学式で表されるアミノメルカプトトリアゾール:
【化5】

式中、Rは存在しないこともあるし、あるいはアルキル、アリル、アルカリル、またはアリルアルキルからなる群の中から選択された、C−C10の線状あるいは分岐炭化水素である可能性もある。
【0059】
(f)次の化学式で表されるアミノピリミジン:
【化6】

式中、Rは水素、または炭素数が1から14のアルキルまたはアルコキシルラジカルを表す。
【0060】
一つの実施例では、アミン化合物は例えば以下の一般化学式で表されるN−アリルフェニレンジアミンである:
【化7】

式中、Rは水素、−−NH−アリル、−−NH−アリルアルキル、−−NH−アルキル、あるいは炭素数が4から24でアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリル、ヒドロキシアルキル、あるいはアミノアルキルであり得る、分岐鎖または直鎖ラジカル;Rは−−NH、CH−−(CH−−NH、CH−aryl−NHであり、指揮中のnは1から10、またRは水素、炭素数が4から24のアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリルである。
【0061】
本開示の中で特に有用なアミンはN−アリルフェニレンジアミン、より具体的にはN−フェニルフェニレンジアミン、例えばN−フェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,3−フェニレンジアミン、およびN−フェニル−1,2−フェニレンジアミンである。
【0062】
その他の有用なアミンの実例としては、参照することにより本明細書に組み込まれている米国特許第4,863,623号および6,107,257号に記載されたアミンが挙げられる。
【0063】
オレフィンコポリマーのカップリングおよび/またはゲル化を避けるように、第1級アミンを一つだけ含有することが望ましい。
【0064】
カルボン酸アシル化機能がグラフト化されているコポリマーと、所定のアミン化合物との間の反応は、コポリマー基材の溶液を不活性条件下で加熱し、反応を生じさせるために通常混合しながらその加熱された溶液にアミン化合物を加えることによって行われる。溶
液を窒素ブランケットかに維持しながら、120℃から175℃に加熱されたコポリマー基材の油剤を使用するのが便利である。アミン化合物がこの溶液に加えられ、既知の条件下で反応が行われることもある。
【0065】
このアミン化合物は、界面活性剤で溶解され、鉱物性あるいは合成潤滑油、またはアシル化されたオレフィンコポリマーを含有した溶媒溶液に加えられる。アミンおよびオレフィンコポリマーの溶液は、その開示が参照することにより本明細書に組み込まれている米国特許第5,384,371号に記載されるように、温度120℃から200℃の間で不活性ガスパージされた状態でかくはんされながら加熱される。この反応は、かくはん反応器内で窒素パージされながら便利に実行される。
【0066】
一つの実施例で、ポリマー性無水コハク酸油剤が、エトキシル化されたラウリルアルコールと共に、N−フェニル−1,4−フェニレンジアミンと、165℃で反応させられる。
【0067】
アシル化されたオレフィンコポリマーとポリアミンとの反応を行う際に使用される界面活性剤には、(a)鉱物性あるいは合成の潤滑油に対応する溶解特性、(b)オイルの引火点を変えないような沸点および蒸気圧特性、および(c)ポリアミンの可溶化に適した極性を有することを特徴とするものが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0068】
このような界面活性剤の好適なものとして、脂肪族および芳香族ヒドロキシ化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはそれらの混合物との反応生成物が含まれる。このような界面活性剤は一般に、脂肪族あるいはフェノール系アルコキシレートとして知られている。有用な界面活性剤には、例えばアシル化されたオレフィンコポリマーと反応することのできる−−OHのような官能基を含有した界面活性剤が含まれる。エトキシル化されたラウリルアルコール(C1225(OCHCHOH)もまた本明細書において有用である。エトキシル化されたラウリルアルコールはCAS 9002−92−0号により識別される。このエトキシル化されたラウリルアルコールは、加工助剤であり、また最終的な多機能粘度調整製品用の粘度安定剤である。エトキシル化されたラウリルアルコールは反応混合物中へのアミンの添加を促進する。アシル化された機能性が確実に未反応で残らないようにするのは、反応剤の仕事である。未反応のアシル化された機能性はいずれも、完成した潤滑剤組成物内での不適当な粘度の変化の原因となる。この界面活性剤はまた、多機能粘度調整剤製品の粘弾性応答を修正し、低温(70℃から90℃)での処理を向上させる。
【0069】
使用される界面活性剤の量は、アミンを可溶化する能力にある程度左右される。一般的には、5重量%から40重量%の濃度のアミンが使用される。界面活性剤はまた、完成した添加剤中の界面活性剤の総量が10重量%あるいはそれ以下となるように、上述の濃縮物の変わりに、あるいはそれらに加えて別々に添加されることもある。
【0070】
本開示の高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーは、任意の便利な方法で潤滑剤に組み入れられる。従って、潤滑油中に希望の濃度の高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを分散あるいは溶解することによって、これを潤滑油に直接添加してもよい。潤滑油中へのこのような混合は、室温あるいは高温で行われる。一方、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを適切な油溶性の溶媒/希釈剤(ベンゼン、キシレン、トルエン、潤滑基油、および石油蒸留物など)と混合して濃縮物を形成し、次にその濃縮物と潤滑油とを混合して最終的な組成物を得ることもできる。このような添加剤濃縮物は一般に、濃縮物の重量を基にして、(活性成分(A.I.)ベースで)約3重量%から約45重量%、望ましくは約10重量%から約35重量%の高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマー添加剤と、一般的に約20重量%から90 重量%、望ましくは約40重量%から60重量%の基油を含有している。
【0071】
アミン反応物質のうちのいくつかには、染色性のアミン抗酸化剤群の類を含む、濃い色の酸化生成物を形成する傾向がある。アミノ化反応の後に油剤中に残った未反応のアミンは、油剤中に望ましくないおよび/または不安定な色を生じさせることがある。アシル化されたオレフィンコポリマーもまた、例えばアシル化されたオレフィンコポリマーとCからC12のアルキルアルデヒド(例えばノニルアルデヒド)とを反応させることにより、アミノ化反応の後に着色されることがある。例えば、この反応は、アミノ化反応と同様の温度および圧力条件下で、約2時間から約6時間にわたり、約0.2重量%から約0.6重量%の量でアルキルアルデヒド試薬が添加された場合に始まる。
【0072】
アミノ化され着色されたアシル化オレフィンコポリマー生成物の純度を増すため、バッグあるいはカートリッジフィルター、またはその両方を順に使用したろ過が行われる。
【0073】
上述のように、コポリマー中間体は、溶媒のない状態で調製されることもある。また、コポリマー中間体は、グラフトコポリマー中間体への追加的な機能化、つまりアミノ化および着色を行うための出発物質として、ペレット化された形態あるいはベール形態で得られる。コポリマー中間体は必ずしも押出し機のダイフェースまたは同様のグラフト反応容器から直接得られる必要はないが、その代わりに、コポリマー中間体にさらなる機能化が行われる前に、ペレット化され、未反応の反応物質が真空剥離されている。従って、ペレット化されたコポリマー中間体には、(副反応の生成物をもたらす可能性のある)溶媒の存在下でグラフト化された生成物および/または(反応質量中に未反応成分を不純物として残す)連続的な処理工程の一部としてのグラフト反応の直後にアミン化された生成物に比べ、含有される不純物が少ない。
【0074】
加えて、中性油中に溶解したコポリマー中間体への、アミノ化に先立つ不活性ガスの散布には、コポリマー中間体がさらに反応させられ、機能化(例えばアミノ化)される前に、既存のポリマー性コハク酸の二塩基酸を、望ましい活性ポリマー性無水コハク酸の形態に変換しなおすという利点がある。
【0075】
また例えば無水マレイン酸などの未反応のグラフトモノマーが、ペレット化や溶解に先行する真空剥離ステップ中のグラフト化の後に効率的に取り除かれることから、アミノ化がより効果的に進められる。つまり、未反応のグラフトモノマーは、アミンとの反応においてグラフト化されたコポリマー(ポリマー中間体)と対抗して機能化の達成レベルを下げてしまうため、アミノ化の段階において望ましくないということである。
【0076】
従って、本開示の実施例の多機能反応の最終生成物は、含有される不純物(すなわち未反応の反応物質、副反応の生成物、および副産物)がより少なく、その所定量に対し、より活性であるといえる。一つの実施例では、添加反応の生成物に含まれる未反応の反応物質、副反応の生成物、および反応の副産物を含んだ不純物は、全部で0.1重量%以下である。残りは、処理中に加えられた、生成された化合物の活性を著しく低減したり害したりすることのない、抗酸化剤または着色剤のような少量の有用な添加剤あるいは不活性の添加剤と、完全にまたは実質上組み合わせられた、グラフト化され多機能化された活性オレフィンコポリマーからなる。
【0077】
本開示の高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマー生成化合物は、特定の潤滑用に必要とされるあるいは望ましい、追加の特性を与えるため、任意的に御処理されることがある。後処理の技術は当技術分野で周知のもので、ホウ素化、リン酸化、グリコール化、エチレン−炭酸化、およびマレイン酸化などが含まれる。
【0078】
本明細書に記載のディーゼルエンジン用の潤滑油組成物は、組成物に必要とされる特性をもたらす追加的な添加剤を、通常に含有してもよい。これらの種類の添加剤には、粘度指数向上剤、抗酸化剤、腐食防止剤、洗浄剤、分散剤、流動点降下剤、耐磨耗剤、消泡剤、乳化破壊剤、および摩擦低減剤などが含まれる。これらの添加剤は、一般に分散剤/抑制剤(DI)パッケージと呼ばれるものの中に提供されている。
【0079】
DIパッケージの一つの成分に、堆積物を低減または除去するための洗浄剤および酸中和剤または防錆剤の両方として機能し、それによって磨耗や腐食を低減させ、またエンジンの寿命を延ばす、金属含有あるいは灰形成洗浄剤がある。洗浄剤には通常、極性の頭部と疎水性の長い尾の部分とが含まれる。極性の頭部には、酸性有機化合物の金属塩が含まれる。これらの塩には実質的に化学量論的な量の金属が含有されることがあり、その場合これらは一般的に正塩または中性塩とされ、またその全塩基価すなわちTBN(ASTM
D2896によって測定することができる)は0から80である。超過量の金属化合物(例えば酸化物あるいは水酸化物)を酸性ガス(例えば二酸化炭素)と反応させることにより、多量の金属塩基が組み込まれる。結果として得られる過塩基性の洗浄剤には、外層部が金属塩基(例えば炭酸塩)ミセルである、中性洗浄剤が含まれる。このような過塩基性の洗浄剤のTBNは150またはそれ以上、一般的には250から450、またはそれ以上である。
【0080】
使用される洗浄剤には、油溶性で中性および過塩基性のスルホン酸塩、フェネート、硫化フェネート、チオホスフォネート、サリチル酸塩、およびナフテン酸塩、またその他の油溶性の、特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えばバリウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、およびマグネシウムなどの金属のカルボン酸塩などが含まれる。最も一般的に使用される金属は、どちらも潤滑剤中で使用される洗浄剤の中に存在する、カルシウムおよびマグネシウム、またカルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムの混合物である。特に便利な金属洗浄剤は、TBNが20から450の中性および過塩基性のスルホン酸カルシウム、TBNが50から450の中性および過塩基性のカルシウムフェネートおよび硫化フェネート、またTBNが20から450の中性および過塩基性のマグネシウムまたはサリチル酸カルシウムなどである。一つの好適な潤滑油組成物内で、過塩基性、中性あるいはそれら両方の洗浄剤の組み合わせが使用されることもある。
【0081】
潤滑油組成物中で通常有用な洗浄剤にはまた、例えば米国特許第6,153,565号、6,281,179号、6,429,178号および6,429,179号に記載されるように、混合界面活性剤システム、例えばフェネートアリシレート、スルホン酸塩/フェネート、スルホン酸塩/サリチル酸塩、スルホン酸塩/フェネート/サリチル酸塩などから形成された「ハイブリッド」洗浄剤が含まれる。
【0082】
洗浄剤やその他の添加剤を、追加された重量だけが活性成分(A.I.)を表すように、希釈剤中で潤滑油または添加剤濃縮物に添加することは珍しいことではない。例えば洗浄剤が同じ重さの希釈剤と一緒に加えられることがあり、この場合「添加剤」は50%A.I.の洗浄剤である。本明細書で使用される重量パーセント(重量%)という用語は、洗浄剤や損他の点化剤について使用された場合、活性成分の重量を指す。洗浄剤には従来より、約0.5重量%から約5重量%、望ましくは約0.8重量%から約3.8重量%、最も望ましくは約1.2重量%から約3重量%の、ヘビーデューティー ディーゼルエンジン用に組成された潤滑油組成物が含まれる。
【0083】
分散剤は懸濁液中、使用中に酸化によって生じた油に不溶性の材料を維持し、それにより金属部品上への通気前のスラッジの軟凝集や沈殿、または堆積などが防がれる。本開示の状況で有用な分散剤には、潤滑油中に添加された場合、ガソリンやディーゼルエンジン
中で使用されたときに堆積物の形成を低減する効果があることが知られている、一連の窒素含有、無灰(金属を含まない)分散剤が含まれる。この無灰分散剤には、分散させる粒子と結合することのできる官能基を有する、油溶性、ポリマー性の長鎖骨格が含まれる。一般に、このような分散剤は、しばしば架橋基によってポリマー骨格に結合した、アミン、アミン−アルコール、またはアミド極性部分などを有する。無灰分散剤は、例えば長鎖炭化水素置換のモノカルボン酸およびポリカルボン酸、またはそれらの無水物;長鎖炭化水素のチオカルボン酸塩誘導体;ポリアミン部分が直接結合している長鎖脂肪族炭化水素;および長鎖置換フェノールをフォルムアルデヒドおよびポリアルキレンポリアミンで濃縮することにより形成された、マンニッヒ濃縮生成物などの油溶性の塩、エステル、アミノ−エステル、アミド、イミド、およびオキサゾリンの中から選択される。
【0084】
通常、モノカルボン酸形成部分またはジカルボン酸形成部分はそれぞれ、求核基(アミンまたはアミド)と反応し、また完成された分散剤中の求核基の数はポリアルケニル置換のカルボン酸アシル化剤中の多数の官能基によって決定される。
【0085】
本明細書に記載の分散剤ポリアルケニル部分部分の数平均分子量は、少なくとも約1800、望ましくは2000と2800の間などのように1800と3000の間、より望ましくは約2100から2500、また最も望ましくは約2200から約2400である。分散剤の正確な分子量の範囲は、分散剤を得るために使用されたポリマーの種類、官能基の数、および使用された求核基の種類などを含む多数のパラメータに基づいているため、分散剤の分子量は通常、ポリアルケニル部分の分子量に関して表される。
【0086】
そこから分散剤が得られるポリアルケニル部分は、分子量の分布(MWD)が狭く、また重量平均分子量(M)と数平均分子量(M)の比率によって決定されるように、多分散性であるといわれる。具体的には、分散剤が得られるポリマーのM/Mは約1.5から約2.0、望ましくは約1.5から約1.9、最も望ましくは約1.6から約1.8である。
【0087】
本開示の分散剤の形成に使用するのに適した炭化水素あるいはポリマーには、ホモポリマー、インターポリマー、または分子量の小さい炭化水素が含まれる。このような種類のポリマーの一つとして、エチレンおよび/または少なくとも一つのCからC28のアルファオレフィンのポリマーが含まれるが、このときこのポリマーには、炭素・炭素の不飽和、望ましくは高度の末端エテニリデン不飽和が含まれる。有用なアルファオレフィンモノマーおよびコモノマーには、例えばプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1,4−メチルペンテン−1、デセン−1、ドデセン−1、トリデセン1、テトラデセン−1、ペンタデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1、ノナデセン−1、およびそれらの混合物(例えばプロピレンとブテン−1の混合物、その他)が含まれる。このようなポリマーの典型として、プロピレンホモポリマー、ブテン−1ホモポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−ブテン−1コポリマー、プロピレン−ブテンコポリマー等があり、このポリマーは、少なくともいくつかの末端および/または内部不飽和を含有している。好適なポリマーは、不飽和エチレンとプロピレンとのコポリマー、エチレン、およびブテン−1である。本開示のインターポリマーには、少量、例えば0.5モル%から5モル%のCからC18の非共役ジオレフィンコモノマーが含まれることがある。しかしながら、ポリマーは、アルファオレフィンホモポリマー、アルファオレフィンコモノマーのインターポリマー、エチレンとアルファオレフィンコモノマーのインターポリマーのみを含んでいることが望ましい。ポリマー内のエチレンのモル含有量は0%から80%、より望ましくは0%から60%である。プロピレンおよび/またはブテン−1をエチレンとのコモノマーとして使用した場合は、そのようなコポリマーのエチレン含有量は、15%から50%の間であることが最も望ましいが、エチレン含有量がそれよりも高いことも低いこともあり得る。
【0088】
上述の分散剤を作るためのポリマー骨格として使用されるポリイソブチレンポリマーは、通常約1800から3000の炭化水素鎖を基にしている。ポリイソブチレンの作り方は既知のものである。ポリイソブチレンは、ハロゲン化(例えば塩素化)、熱「エン」反応、または触媒(例えばペルオキシド)を使用したフリーラジカルグラフト化などによって機能化される。
【0089】
炭化水素あるいはポリマー骨格を、例えばカルボン酸を生成する部分(望ましくは酸または無水酸部分)によって、選択的にポリマーあるいは炭化水素鎖の炭素・炭素不飽和の部分で、あるいは任意的に長鎖で、上述の三つのプロセスのいずれか、または任意の順番でそれらの組み合わせを使用して機能化することができる。
【0090】
ポリマー性炭化水素と不飽和カルボン酸、無水物あるいはエステルとを反応させるプロセス、およびそのような化合物の誘導体の生成のプロセスについては、EP 0 382
450 B1およびCA−1,335,895、また米国特許第3,087,936号、3,172,892号、3,215,707号、3,231,587号、3,272,746号、3,275,554号、3,381,022号、3,442,808号、3,565,804号、3,912,764号、4,110,349号、4,234,435号、5,777,025号、5,891,953号に記載されている。
【0091】
機能化された油溶性ポリマー性炭化水素骨格は次に、アミン、アミノアルコール、アミド、またはそれらの混合物のような窒素含有の求核性反応物質で誘導体化され、対応する誘導体を形成する。アミン化合物の使用が好ましい。機能化されたポリマーの誘導退化に有用なアミン化合物には、少なくとも一つのアミンが含まれ、また一つ以上の追加的なアミンあるいはその他の反応物質、または極性基が含まれる可能性もある。これらのアミンは、ヒドロカルビルアミンであるかもしれないし、または主にヒドロカルビルアミンであり、ヒドロカルビル基にその他の基、例えばヒドロキシ基、アルコキシ基、アミド基、ニトリル、イミダゾリン基、その他が含まれているようなものであるかもしれない。特に有用なアミン化合物には、モノアミンおよびポリアミン、例えば合計炭素数が2から40(例えば3から20)など、約2から60で、各分子ごとに3から12など、約1から12、望ましくは3から9、最も望ましくは約6から約7の窒素原子を有するポリアルケンやポリオキシアルキレンポリアミンが含まれる。アルキレンジハリドとアンモニアの反応により調製されたもののような、アミン化合物の混合物が有利に使用されることもある。好適なアミンは、例えば1,2−ジアミノエタン;1,3−ジアミノプロパン;1,4−ジアミノブタン;1,6−ジアミノヘキサン;ジエチレントリアミンのようなポリエチレンアミン;トリエチレンテトラミン;テトラエチレンペンタミン;および1,2−プロピレンジアミンのようなポリプロピレンアミン;またジ−(1,2−プロピレン)トリアミンを含む、脂肪族飽和アミンである。適切なアミンの例は、米国特許第4,938,881号、4,927,551号、5,230,714号、5,241,003号、5,565,128号、5,756,431号、5,792,730号、および5,854,186号に見られる。
【0092】
その他の有用なアミン化合物には、1,4−ジ(アミノメチル)シクロヘキサンのような脂環式ジアミンや、イミダゾリンのようなヘテロ環状窒素化合物が含まれる。米国特許第4,857,217号、4,956,107号、4,963,275号、および5,229,022号に記載されるように、別の有用な種類のアミンには、ポリアミドや関連したアミドアミンがある。さらに使用可能なものには、米国特許第4,102,798号、4,113,639号、4,116,876号、およびUK989,409に記載されるように、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TAM)がある。星様のアミン、デンドリマーや、くし型のアミンもまた使用されることがある。同様に、米国特許第5,053,152号に記載されるように、凝縮アミンを使用することもある。機能化されたポリマーは、EP−A−208,560や、米国特許第4,234,435号および5,229,022号に記載されるように、従来からの技術を用いてアミン化合物と反応させられる。
【0093】
好適な分散剤組成物は、少なくとも一つのポリアルケニルコハク酸イミドを含むものであり、それはポリアルケニル置換の無水コハク酸(例えばPIBSA)とポリアミン(PAM)とのカップリング率が約0.65から約1.25、望ましくは約0.8から約1.1、最も望ましくは約0.9から約1の反応生成物である。本開示の状況において、「カップリング率」は、ポリアミン反応物質中の第1級アミン基の数に対するPIBSA中のスクシニル基の数の割合として定義される。
【0094】
別の種類の分子量の高い無灰分散剤には、マンニッヒ塩基の縮合生成物が含まれる。通常これらの生成物は、例えば米国特許第3,442,808号に記載されているように、約1モルの長鎖アルキル置換のモノヒドロキシベンゼンあるいはポリヒドロキシベンゼンを、約1モルから2.5モルのカルボニル化合物(例えばホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒド)および約0.5モルから2モルのポリアルキレンポリアミンで凝縮することによって調整される。このようなマンニッヒ塩基の縮合生成物には、ベンゼン基上に置換基としてメタロセン触媒でポリマー化されたポリマー生成物を含んでいることもあるし、あるいは米国特許第3,442,808号に記載の方法と同様に無水コハク酸上で置換されたこのようなポリマーを含んだ化合物と反応させられることもある。機能化および/または誘導体化された、メタロセン触媒システムを使用して合成されたオレフィンポリマーの例は、上述の出版物に記載されている。
【0095】
好適な分散剤には、約50重量%以上の窒素が非塩基性であるような分散剤が含まれる。窒素含有分散剤の通常は塩基性である窒素は、窒素含有分散剤をいわゆる「キャッピング剤」と反応させることによって、非塩基性にすることができる。従来より、窒素含有分散剤は、エンジン内で使用されるニトリルシールにこのような分散剤が及ぼす悪影響を低減するために、キャッピングされている。多くのキャッピング剤およびキャッピング方法が知られている。窒素含有分散剤と互変異性のアセトアセテート(例えばエチルアセトアセテート(EAA))との反応については、例えば米国特許第4,839,071号、4,839,072号、および4,579,675号に記載されている。窒素含有分散剤とホルマリンおよび/またはギ酸との反応については、例えば米国特許第3,185,704号に記載されている。エポキシドによる窒素含有分散剤のキャッピングについては、例えば米国特許第3,267,704号、3,373,021号、および3,373,111号に記載されている。窒素含有分散剤の反応生成物や、その他の既知のキャッピング剤については、米国特許第3,366,569号(アクリロニトリル)、4,636,322号および4,663,064号(グリコール酸)、4,612,132号、5,334,321号、5,356,552号、5,716,912号、5,849,676号、5,861,363号(炭酸塩、たとえばエチレンカーボネート)、4,686,054号(無水マレイン酸または無水コハク酸)、3,254,025号、3,087,963号(ホウ素)に記載されている。前述のリストは包括的なものではなく、窒素含有分散剤のその他のキャッピング方法も、当技術分野に精通した技術者には知られている。
【0096】
凝縮モードで作動するEGRシステムを備えた、ヘビーデューティーのディーゼルエンジンを使用した際に発生するすすおよび酸の存在下での、潤滑油の運動粘性が増加する割合を低減する目的で、ホルマリン、ギ酸、エポキシド、および互変異性のアセトアセテート(例えばエチルアセトアセテート)と反応することにより非塩基性になった、窒素が50重量%以上であるような窒素含有分散剤が好適である。
【0097】
要求される特定の性能を満たすために、追加の添加剤が本開示の組成物に組み込まれることもある。本開示の潤滑油組成物に含まれることのある添加剤の例には、金属防錆剤、粘度指数向上剤(ポリマーi、iii以外および/またはiii)、腐食防止剤、酸化防止剤、摩擦低減剤、消泡剤、耐磨耗剤、および流動点降下剤(ポリマーiii以外)などがある。これらのうちいくつかについては以下に詳しく説明する。
【0098】
ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は、耐磨耗剤および抗酸化剤として頻繁に使用される。当該の金属は、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、または銅などであり得る。亜鉛塩は潤滑油中で、潤滑油組成物の総重量を基にして0.1重量%から10重量%、望ましくは0.2重量%から2重量%の量で、最も一般的に使用される。
【0099】
好適なジンクジヒドロカルビルジチオホスフェートはジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性の塩であり、以下の化学式で表される:
【化8】

式中、RおよびR’は、炭素数が1から18、望ましくは2から12の、アルキル、アルケニル、アリル、アリルアルキル、アルカリルおよび環状脂肪族ラジカルのようなラジカルを含んだ、同一あるいは異なったヒドロカルビルラジカルである。RおよびR’基として特に好適なのは、炭素数が2から8のアルキル基である。従って、当該のラジカルは、例えばエチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、アミル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2−エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルであり得る。油様性を得るため、ジチオリン酸中の炭素原子の総数(すなわちRおよびR’)は、通常約5以上である。そのため、ジンクジヒドロカルビルジチオホスフェートにジンクジアルキルジチオホスフェートが含まれることが可能である。開示された実施例は、リンの含有レベルが約0.02重量%から約0.12重量%、望ましくは約0.03重量%から約0.10重量%である潤滑剤組成物と共に使用された場合に特に有用である。より望ましくは、潤滑油組成物のリンレベルは約0.05重量%から約0.08重量%などのように、約0.08重量%以下である。
【0100】
酸化防止剤あるいは抗酸化剤は、稼動中に鉱物油が劣化する傾向を低下させる。酸化変質は、潤滑剤中のスラッジ、金属表面のワニス状の堆積物、および粘度の増加によって明らかになる。このような酸化防止剤には、ヒンダードフェノール、望ましくはCからC12のアルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、カルシウムノニルフェノールスルフィド、油溶性フェネートや硫化フェネート、リン酸硫化または硫化された炭化水素、またはエステル、ホスホン酸エステル、金属チオカルバメート、米国特許第4,867,890号に記載の油溶性銅化合物、およびモリブデンを含有した化合物などが含まれる。
【0101】
少なくとも二つの芳香族基が窒素に直接結合している芳香族アミンは、抗酸化性のために頻繁に使用される別の種類の化合物を構成する。これらの物質は少量で使用されることもあるが、本開示の好適な実施例にはこれらの化合物は含まれない。それらは望ましくは少量、すなわち0.4重量%以下でのみ使用されるか、またはより望ましくは組成物の別
の成分から得られる不純物として得られる以外には完全に回避したほうがよい。
【0102】
少なくとも二つの芳香族基が一つのアミン窒素に直接結合している、一般的な油溶性芳香族アミンには、6から16の炭素原子が含まれる。当該のアミンには、二つ以上の芳香族基が含まれることもある。合計で少なくとも三つの芳香族基を含み、そのうち二つの芳香族基が共有結合または原子あるいは基(たとえば酸素原子や硫黄原子、または−−CO−−、−−SO−−あるいはアルキレン基)で結合しており、二つが一つのアミン窒素に直接結合しているような化合物もまた、少なくとも二つの芳香族基が窒素に直接結合している芳香族アミンであるとみなされる。芳香族環は、一般的にアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリルオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、ヒドロキシ基、およびニトロ基の中から選択された一つ以上の置換基で置換されている。このような、少なくとも二つの芳香族基が一つのアミン窒素に直接結合している任意の油溶性芳香族アミンの量は、望ましくは活性成分が0.4重量%を超過するべきではない。
【0103】
好適な粘度調整剤の代表例は、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンとのコポリマー、ポリメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物のコポリマー、スチレンとアクリル系エステルのインターポリマー、およびスチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン、およびイソプレン/ブタジエンの部分的に水素化されたコポリマー、そしてブタジエンとイソプレンの部分的に水素化されたホモポリマーなどである。
【0104】
また、最終的なオイルの他の成分と適合性のある摩擦低減剤および燃費節約剤が含まれることもある。このような物質の例としては、例えばグリセリルモノオレエートなどの高級脂肪酸のグリセリルモノエステル;例えば二量体化された不飽和脂肪酸のブタンジオールエステルなどの、長鎖ポリカルボン酸とジオールのエステル;オキサゾリン化合物;そして例えばエトキシル化された獣脂アミンやエトキシル化された獣脂エーテルアミンなどの、アルコキシレート化されたアルキル置換のモノアミン、ジアミン、およびアルキルエーテルアミンなどが挙げられる。
【0105】
その他の既知の摩擦低減剤には、有機モリブデン化合物、有機チタン化合物、および有機タングステン化合物などのような油溶性の金属化合物が含まれる。このような有機金属摩擦低減剤はまた、潤滑油組成物に抗酸化性や耐摩耗性をもたらす。このような油溶性の有機金属化合物例として、カルボン酸塩、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、ジチオホスフィネート、キサンテート、チオキサンテート、スルフィド等、およびそれらの混合物などが挙げられる。特に好適な有機金属化合物には、モリブデンジチオカルバメート、ジアルキルジチオホスフェート、アルキルキサンテート、およびアルキルチオキサンテートなどが含まれる。その他の有機金属化合物には、油溶性チタンやタングステンカルボン酸が含まれる。
【0106】
本明細書中で使用される「油溶性」あるいは「分散性」という用語は、化合物あるいは添加剤がオイル中にあらゆる比率で可溶性である、溶ける、混和性がある、あるいは懸濁が可能であるという意味を表すものではない。しかしながらこれらは、例えばオイルが使用される環境下において、意図された効果を及ぼすために十分なだけオイル中で可溶性であるまたは安定的に分散可能であることを意味する。さらに、他の添加剤を追加的に混入することにより、必要に応じてより高いレベルの特定の添加剤の混入が可能になる。
【0107】
別名潤滑油流動性向上剤(LOFI)としても知られる流動点降下剤は、流体が流動する、または注入できるようになる最低温度を低下させる。このような添加剤はよく知られているものである。流体の低温流動性を向上させるこのような添加剤の一般例に、CからC18のフマル酸ジアルキル/ビニルアセテートのコポリマー、およびポリメタクリレ
ートなどがある。例えばシリコンオイル、またはポリジメチルシロキサンなどの、ポリシロキサン系の消泡剤により、発泡がコントロールされる。
【0108】
上述の添加剤のうちいくつかは複数の効果をもたらす。従って例えば、単一の添加剤が分散剤−酸化防止剤として作用することがある。このアプローチはよく知られており、本明細書においてさらに詳しく述べる必要はないものとする。
【0109】
潤滑組成物が、DIパッケージを含む上述の一つ以上の添加剤を含有する場合、各添加剤は一般的に、その目的とする機能をもたらすのに十分なだけの量で、基油中に混合される。このような添加剤がクランクケース潤滑剤中で使用された場合の代表的な有効量を以下に示す。リストされたすべての値は活性成分の質量パーセントとして記載されている。
【表1】

【0110】
潤滑油組成物の生成において、極一般的に、炭化水素オイル、例えばミネラル潤滑油中あるいはその他の好適な溶媒に、10重量%から80重量%の活性成分濃度の形態で添加物が導入される。
【0111】
通常これらの濃縮物は、完成された潤滑剤、例えばクランクケースモーターオイルなどの形成の際、添加剤パッケージの1重量パーツにつき3重量パーツから100重量パーツ、例えば5重量パーツから40重量パーツの潤滑油で希釈される。濃縮物の目的は、もちろん、最終的な混合物中での溶解や分散を助けることに加え、多くの物質の処理の難しさやぎこちなさを低減することにある。従って、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーは通常、例えば潤滑油の一部分において、10重量%から50重量%の濃縮物の形態で使用される。一つの実施例では、完成された潤滑油中の濃縮物の濃度は、潤滑油の総重量の約0.05重量パーセントから約8重量パーセントである。
【0112】
本開示の高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーは、通常天然潤滑油、合成潤滑油およびそれらの混合物を含有した潤滑粘度のオイルを含む潤滑油ベースストックとの混合で使用される。
【0113】
天然油には、動物油および植物油(例えばヒマシ油、ラードオイル)、液体石油、およびヒドロ精製された、溶媒処理あるいは酸処理された、パラフィン系、ナフテン系、およびパラフィン−ナフテンの混合系の鉱物性潤滑油が含まれる。石炭あるいは頁岩から得られた潤滑粘度のオイルもまた有用な基油である。本開示で使用された合成潤滑油には、任意の数の一般的に使用されている、ポリアルファオレフィン、アルキル化芳香族、アルキ
レンオキシドポリマー、コポリマー、ターポリマー、インターポリマー、およびそれらの誘導体を含むが、それらに限定されることのない合成炭化水素オイルの一つが含まれる。このとき末端ヒドロキシル基は、エステル化、エーテル化、ジカルボン酸のエステルのエステル、およびシリコンベースのオイルのエステルによって修正されている。
【0114】
本開示の高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマー生成物は、目的とする機能をもたらすのに十分な量で添加剤が溶解または分散されている基油を使用した潤滑油組成物中で主に使用される。そのような基油は天然油、合成油、あるいはそれらの混合物である。バイオディーゼル燃料で作動するディーゼルエンジン用に使用される潤滑油組成物の生成に適した基油には、自動車やトラックのエンジン、船や鉄道用のディーゼルエンジン等の、ヒバは添加および圧縮点火の内燃エンジン用のクランクケース潤滑油として従来より使用されている基油が含まれる。本明細書で説明されている高度にグラフト化されたオレフィンコポリマー添加剤を含有するクランクケース潤滑油で良好に潤滑することのできる内燃エンジンとしては、ディーゼル燃料で動くエンジン、特にバイオディーゼル成分でディーゼルエンジンが挙げられる。特に影響を受けるディーゼルエンジンには、排ガス再循環(EGR)システムを備えたディーゼルエンジンを含むヘビーデューティーディーゼルエンジンが含まれる。
【0115】
その他の利点について、同一の潤滑剤を使用したバイオディーゼル燃料ではない燃料で作動するディーゼルエンジンと、バイオディーゼル燃料で作動するディーゼルエンジンとを比較し、すすの分散性および/または粘度を安定させる作用を向上させるため、これらの添加剤を以下の例に示した要領で、性能試験において観察した。バイオディーゼル燃料は一般的に、動物性の脂肪、またこれらに限定はされないが、カノーラ油、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、亜麻仁油、およびヤシ油などのような、食用の植物油、あるいは食べられない植物油から得られる、脂肪酸エチルあるいはメチルエステルである。
【0116】
本開示の範囲内にある、冷却され、潤滑されたEGRエンジンには、各種のバイオディーゼル燃料で作動されるヘビーデューティーおよびライトデューティーのディーゼルエンジンが含まれる。当該のエンジンには、水、水/炭化水素ブレンドあるいは混合物、水/グリコール混合物および/または空気あるいはガスの循環、あるいは熱交換によって冷却されたEGRエンジンが含まれる。
【0117】
本開示の潤滑油組成物を、バイオディーゼル成分を含まない、特にイオウ含有量の低いディーゼルPC−10燃料で作動されるディーゼルエンジンと、20重量%のバイオディーゼル成分を含んだ同様のディーゼル燃料で作動するエンジンでテストした。このエンジンテストはT−11エンジンテストの延長であった。図1に示されるように、曲線Aはバイオディーゼル燃料で作動するエンジン内で使用された潤滑剤のすすの粘性曲線を表す。曲線Bは、バイオディーゼル成分を含まない燃料で作動するエンジンに関する結果を表す。図1に示されるように、本開示の潤滑剤組成物は、エンジンがバイオディーゼル成分を含まない燃料作動された場合と比べ、バイオディーゼル燃料で作動された場合に、すすの負荷が高くなるのと相乗的に粘度の増加を低減させた。バイオディーゼル燃料がすすの負荷に貢献する傾向が増加したのは、まったく予期せぬ結果であった。
【0118】
本開示はさらに、自動車の潤滑油交換の間隔を延長する方法を熟考するように意図されている。当該の方法には、上述の潤滑油組成物を自動車のクランクケースに添加しクランクケース内で作用させることが含まれている。
【0119】
本明細書に記載されたすべての特許の開示、文献、およびその他の資料は、参照することによって完全なものとして本明細書に組み込まれている。多くの定義された成分を「含んでいる」として記載されている組成物は、それらの成分を混合することによって形成さ
れる組成物を含むものと解釈される。本開示の原理、好適な実施例、および作動形態は、上述の明細書に説明されている。しかしながら、開示された実施例は限定的なものというよりはむしろ例証であると見なされるため、出願人の提出物は、開示された特定の実施例によって限定されるものであると解釈されるべきではない。開示された実施例の精神から逸脱することなく、当技術分野に精通した技術者により、変更がなされることもあり得る。
【0120】
本発明の主な特徴及び態様を挙げれば以下のとおりである。
1.約5重量%から約100重量%のバイオディーゼル成分を含む燃料で作動し、多量の潤滑粘度のオイル、およびアシル化剤と数平均分子量が約1,000以上のオレフィンコポリマーとをフリーラジカル反応開始剤の存在下で反応させて、オレフィンコポリマー上のアシル化剤のグラフト率(DOG)が少なくとも0.5重量%であるアシル化されたオレフィンコポリマーを提供すること、またアシル化されたオレフィンコポリマーとアミンとを反応させて、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを提供することによって作られる、少量の少なくとも一つの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを含む潤滑剤組成物で潤滑されるディーゼルエンジンであり、このとき当該の高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーが、エンジン用潤滑油組成物中の粘度の増加を、バイオディーゼル成分を含まない燃料で作動されるエンジン用の潤滑油中の粘度増加よりも低くなるように低減させるために効果的であるようなディーゼルエンジン。
【0121】
2.潤滑粘度のオイルの飽和物含有量が少なくとも75重量%であり、オレフィンコポリマーにエチレンと一つ以上のC−C23のアルファオレフィンとのコポリマーが含まれる、上記1に記載のディーゼルエンジン。
【0122】
3.潤滑油組成物にさらに分散剤/阻害剤パッケージが含まれる、上記1に記載のディーゼルエンジン。
【0123】
4.分散剤/阻害剤パッケージに、分散剤、金属含有洗浄剤、耐磨耗剤、抗酸化剤、および摩擦低減剤が含まれる、上記3に記載のディーゼルエンジン。
【0124】
5.洗浄剤が、中性および過塩基性のスルホン酸カルシウム、過塩基性スルホン酸マグネシウム、カルシウムフェネート、サリチル酸カルシウム、サリチル酸マグネシウム、マグネシウムフェネート、およびそれらの混合物から成る群の中から選択されたものである、上記4に記載のディーゼルエンジン。
【0125】
6.分散剤に、一つ以上のポリアルケニルコハク酸イミド分散剤が含まれる、上記4に記載のディーゼルエンジン。
【0126】
7.摩擦低減剤が、有機摩擦低減剤、有機金属摩擦低減剤、およびそれらの混合物を含有する非金属から成る群の中から選択されたものである、上記4に記載のディーゼルエンジン。
【0127】
8.有機金属摩擦低減剤が、油溶性有機チタン、油溶性有機モリブデン化合物、および油溶性有機タングステン化合物から成る群の中から選択されたものである、上記7に記載のディーゼルエンジン。
【0128】
9.摩擦低減剤を含有する非金属が、グリセロールモノオレエート、および窒素を含有した摩擦低減剤から成る群の中から選択されたものである、上記7に記載のディーゼルエンジン。
【0129】
10.アシル化されたオレフィンコポリマーのグラフト率(DOG)が約1.5重量%から約2.5重量%である、上記1に記載のディーゼルエンジン。
【0130】
11.ディーゼルエンジンが排ガス再循環システムを備えている、上記1に記載のディーゼルエンジン。
【0131】
12.約5重量%から約100重量%のバイオディーゼルを含有した燃料で作動するディーゼルエンジン用の潤滑油組成物中で、粘度の増加を低減する方法であり:
−多量の潤滑粘度のオイル、およびアシル化剤と数平均分子量が約1,000以上のオレフィンコポリマーとをフリーラジカル反応開始剤の存在下で反応させて、オレフィンコポリマー上のアシル化剤のグラフト率(DOG)が少なくとも0.5重量%であるアシル化されたオレフィンコポリマーを提供すること、またアシル化されたオレフィンコポリマーとアミンとを反応させて、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを提供することによって作られる、少量の少なくとも一つの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを含む潤滑剤組成物で、エンジンを潤滑すること;および
−T−11エンジンテストによって測定された、潤滑油組成物中の粘度の増加が、バイオディーゼル成分を含まないディーゼル燃料で作動されるエンジン用の潤滑油中の粘度増加よりも低くなるように、エンジンを作動させること
を含む方法。
【0132】
13.ディーゼルエンジンに、排ガス再循環システムを備えたディーゼルエンジンが含まれる、上記12に記載の方法。
【0133】
14.潤滑剤組成物の飽和物含有量が少なくとも75重量%であり、オレフィンコポリマーにエチレンと一つ以上のC−C23のアルファオレフィンとのコポリマーが含まれる、上記12に記載の方法。
【0134】
15.潤滑剤組成物にさらに分散剤/阻害剤パッケージが含まれる、上記14に記載の方法。
【0135】
16.分散剤/阻害剤パッケージに、分散剤、金属含有洗浄剤、耐磨耗剤、抗酸化剤、および摩擦低減剤が含まれる、上記15に記載の方法。
【0136】
17.洗浄剤が、中性および過塩基性のスルホン酸カルシウム、過塩基性スルホン酸マグネシウム、カルシウムフェネート、サリチル酸カルシウム、サリチル酸マグネシウム、マグネシウムフェネート、およびそれらの混合物から成る群の中から選択されたものである、上記16に記載の方法。
【0137】
18.分散剤に一つ以上のポリアルケニルコハク酸イミド分散剤が含まれる、上記16に記載の方法。
【0138】
19.摩擦低減剤が、有機摩擦低減剤、有機金属摩擦低減剤、およびそれらの混合物を含有した非金属から成る群の中から選択されたものである、上記16に記載の方法。
【0139】
20.有機金属摩擦低減剤が、油溶性有機チタン、油溶性有機モリブデン化合物、および油溶性有機タングステン化合物から成る群の中から選択されたものである、上記19に記載の方法。
【0140】
21.摩擦低減剤を含有した非金属が、グリセロールモノオレエート、および窒素を含有した摩擦低減剤からなる群のなかから選択されたものである、上記19に記載の方法。
【0141】
22.アシル化されたオレフィンコポリマーのグラフト率(DOG)が約1.5重量%から約2.5重量%である、上記12に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図1は、バイオディーゼル成分を含むディーゼル燃料で作動されるエンジン内の潤滑剤と、バイオディーゼル成分を含まないディーゼル燃料で作動されるエンジン内の潤滑剤についての、粘度対すすの負荷の比較グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約5重量%から約100重量%のバイオディーゼル成分を含む燃料で作動し、多量の潤滑粘度のオイル、およびアシル化剤と数平均分子量が約1,000以上のオレフィンコポリマーとをフリーラジカル反応開始剤の存在下で反応させて、オレフィンコポリマー上のアシル化剤のグラフト率(DOG)が少なくとも0.5重量%であるアシル化されたオレフィンコポリマーを提供すること、またアシル化されたオレフィンコポリマーとアミンとを反応させて、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを提供することによって作られる、少量の少なくとも一つの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを含む潤滑剤組成物で潤滑されるディーゼルエンジンであり、このとき当該の高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーが、エンジン用潤滑油組成物中の粘度の増加を、バイオディーゼル成分を含まない燃料で作動されるエンジン用の潤滑油中の粘度増加よりも低くなるように低減させるために効果的であるようなディーゼルエンジン。
【請求項2】
潤滑粘度のオイルの飽和物含有量が少なくとも75重量%であり、オレフィンコポリマーにエチレンと一つ以上のC−C23のアルファオレフィンとのコポリマーが含まれる、請求項1に記載のディーゼルエンジン。
【請求項3】
分散剤/阻害剤パッケージに、分散剤、金属含有洗浄剤、耐磨耗剤、抗酸化剤、および摩擦低減剤が含まれる、請求項1に記載のディーゼルエンジン。
【請求項4】
洗浄剤が、中性および過塩基性のスルホン酸カルシウム、過塩基性スルホン酸マグネシウム、カルシウムフェネート、サリチル酸カルシウム、サリチル酸マグネシウム、マグネシウムフェネート、およびそれらの混合物から成る群の中から選択されたものである、請求項3に記載のディーゼルエンジン。
【請求項5】
摩擦低減剤が、有機摩擦低減剤、有機金属摩擦低減剤、およびそれらの混合物を含有する非金属から成る群の中から選択されたものである、請求項3に記載のディーゼルエンジン。
【請求項6】
アシル化されたオレフィンコポリマーのグラフト率(DOG)が約1.5重量%から約2.5重量%である、請求項1に記載のディーゼルエンジン。
【請求項7】
約5重量%から約100重量%のバイオディーゼルを含有した燃料で作動するディーゼルエンジン用の潤滑油組成物中で、粘度の増加を低減する方法であり:
−多量の潤滑粘度のオイル、およびアシル化剤と数平均分子量が約1,000以上のオレフィンコポリマーとをフリーラジカル反応開始剤の存在下で反応させて、オレフィンコポリマー上のアシル化剤のグラフト率(DOG)が少なくとも0.5重量%であるアシル化されたオレフィンコポリマーを提供すること、またアシル化されたオレフィンコポリマーとアミンとを反応させて、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを提供することによって作られる、少量の少なくとも一つの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを含む潤滑剤組成物で、エンジンを潤滑すること;および
−T−11エンジンテストによって測定された、潤滑油組成物中の粘度の増加が、バイオディーゼル成分を含まないディーゼル燃料で作動されるエンジン用の潤滑油中の粘度増加よりも低くなるように、エンジンを作動させること
を含む方法。
【請求項8】
ディーゼルエンジンに、排ガス再循環システムを備えたディーゼルエンジンが含まれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
潤滑剤組成物にさらに分散剤/阻害剤パッケージが含まれる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
分散剤に一つ以上のポリアルケニルコハク酸イミド分散剤が含まれる、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−189919(P2008−189919A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15337(P2008−15337)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】