説明

バイオ浄化循環システムトイレ

【課題】 蒸発装置の蒸発量を正確に計測できるバイオ浄化循環システムトイレを提供する。
【解決手段】 蒸発装置10の蒸発量は、蒸発装置10の上流側に設けられた第1流量計52と、蒸発装置10の下流側に設けられた第2流量計62との各流量の差から算出する。そして、第2流量計62内への空気混入を防止するため、空気混入防止ユニット50では、貯留タンク61に処理水を一旦貯留させる。このとき、貯留タンク61内に貯留された処理水はエア抜きされる。そして、エア抜きされた処理水が第2流量計62に流れるので、第2流量計62への空気混入を防止できる。よって、第2流量計62における測定誤差を防止できるので、処理水の流量を正確に計測でき、蒸発量を正確に算出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオ浄化循環システムトイレに関し、詳細には微生物により汚水を浄化するバイオ浄化循環システムトイレに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバイオ浄化循環システムトイレによれば、水洗便器から流れ出る汚水を、生物処理槽で有機物分解および硝化・脱窒処理をおこない、さらにろ過槽で固液分離し、固液分離されたろ過水を脱色槽で脱色し、脱色された処理水を再度洗浄水として、水洗便器に循環している。このようなバイオ浄化循環システムトイレでは、トイレの使用頻度が高くなると、生物処理槽内への汚水流量が増えるので、システム内の総水量は次第に増加する。すると、生物処理槽などの各処理槽から、汚水などが溢れしてしまい、システム自体の運転を停止せざるをえなかった。そこで、例えば、システム内の余剰分の浄化水を、超音波振動により霧化して強制的に水分を蒸発させる機能を備えた水洗トイレの浄化システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この特許文献1に記載の浄化システムでは、余剰水を超音波振動を使用して霧化するため、超音波装置の稼働に電力を使用しなければならず、電力を消費するためコストがかかるという問題点もあった。
【0003】
そこで、本件出願人は、システム内の総水量を低コストで安定して調整できる循環式水洗トイレシステム(特願2004−155663:本件では、「バイオ浄化循環システムトイレ」とよぶ)を提案した。このバイオ浄化循環システムトイレ100は、図3に示すように、複数の水槽を備え、水洗便器5から流れ出る汚水の生物処理、ろ過処理および脱色処理をおこなう汚水処理部3と、当該汚水処理部3で処理された処理水の一部をトイレ小屋2の屋根上に汲み上げて蒸発させる蒸発装置10とを主体に構成されている。この蒸発装置10は、汲み上げられた処理水を貯留する水槽40を備え、その槽内にジグザグ状に掛け渡された吸水布45に吸水させることにより、吸水布45の表面から水分を蒸発させる。水槽40の所定水量を超える過剰分の処理水は、電磁弁60の開放によって過剰水戻し管路25を流れる。さらに、過剰水戻し管路25を流れた処理水は、連結部28を介して、水洗便器5の汚水が流れる汚水排出管路22に流入することにより、再度システム内に戻される。したがって、バイオ浄化循環システムトイレ100は、電力コストを増大させることなく、蒸発装置10によって処理水の一部を蒸発させることができるので、システム内の総水量の調整を低コストで安定しておこなうことができる。
【0004】
一方、蒸発装置10における水の蒸発量は、天候、温度などの環境条件によって大きく変動するため、システム管理上、この蒸発量の監視が極めて重要となる。そこで、本件出願人は、蒸発装置10に汲み上げる処理水が流れる第2処理水供給管路23の途中に、処理水の流量を計測する羽根車式の第1流量計52を設け、過剰水戻し管路25の途中にも同様の第2流量計62を設け、各々計測された各水量の差から、蒸発装置10の蒸発量を算出することにした。
【0005】
しかし、過剰水戻し管路25を流れる過剰分の処理水は、断続的に流れるため、処理水中には空気が混入する。すると、第2流量計62に空気が混入してしまい、流量計の羽根車が空回りして正確な流量を計測できなくなる問題があった。そこで、第2流量計62の上流側に、処理水中に含まれる空気を外部に逃がすための空気逃がし管27を設けた。さらに、過剰水戻し管路25における第2流量計62の下流側を一端上方に折り返して第2流量計62の上方まで延設し、さらに円弧を描くように下方に折り返して、汚水排出管路22の連結部28に連結した。これにより、過剰水戻し管路25に処理水が流入しないときでも、過剰水戻し管路25内には、第2流量計62の上方で折り返された高さ位置まで処理水の水位が常時保持される。このことから、第2流量計62の入り口および出口には処理水が常に充たされるので、第2流量計62に空気が混入するのをある程度防止できた。
【特許文献1】実公平6−17889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図3に示すバイオ浄化循環システムトイレ100において、水槽40から過剰水戻し管路25に流れる処理水中に多量の空気が含まれると、空気逃がし管27だけでは十分に空気が抜けきらず、第2流量計62に空気が混入してしまい、正確な処理水の流量を計測できないという問題点があった。また、過剰水戻し管路25の空気逃がし管27付近では、処理水はとどまることなく、空気を含有したまま流れるので、処理水のエア抜きが十分できないという問題点があった。そのため、蒸発装置10の蒸発量を正確に計測することができなかった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、蒸発装置の蒸発量を正確に計測できるバイオ浄化循環システムトイレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係るバイオ浄化循環システムトイレによれば、生物処理された処理水の一部を貯留する水槽と、当該水槽内の処理水を蒸発させる蒸発手段とを有する蒸発装置を備えたバイオ浄化循環システムトイレにおいて、前記処理水の一部を前記水槽に供給するための供給管路と、当該供給管路に介装され、管路内を流れる処理水の流量を計測する第1の流量計測手段と、前記水槽内の所定水量を超える処理水の過剰分を、前記バイオ浄化循環システムトイレに戻す戻し管路とを備え、前記戻し管路は、前記水槽から下方に向かって延設され、前記戻し管路には、流路の開閉をおこなう第1の開閉バルブと、当該第1の開閉バルブの下流側に設けられ、前記戻し管路を流れる処理水を一時的に貯留する貯留タンクと、当該貯留タンクの下流側に設けられ、管路内を流れる処理水の流量を計測する第2の流量計測手段と、当該第2の流量計測手段の下流側に設けられ、流路の開閉をおこなう第2の開閉バルブと、当該第2の開閉バルブの下流側に設けられ、前記第2の流量計測手段の入り口および出口の水がサイフォン現象により前記バイオ浄化循環システムトイレ側に引かれるのを防止して前記第2の流量計測手段の入り口および出口の水を常時一定水位に保持させるサイフォン防止手段とが設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に係るバイオ浄化循環システムトイレによれば、第1の開閉バルブを開放し、貯留タンクに処理水を一時的に貯留させるので、処理水中に空気が多く混在していても、処理水のエア抜きを十分おこなうことができる。したがって、第2の流量計測手段に空気が混入するのを防止できる。また、第2の開閉バルブを開放すると、貯留タンクよりも低い位置に設けられた第2の流量計測手段に処理水が一気に流れ込むため、第2の流量計測手段に空気が混入していても、その空気を下流側に押し出すことができる。したがって、第2の流量計測手段によって、戻し管路を流れる処理水の流量を正確に計測できる。また、サイフォン防止手段によって、第2の流量計測手段の入り口および出口の水がバイオ浄化循環システムトイレ側に引かれるのを防止できる。さらに、第2の流量計測手段の入り口および出口の水を常時一定水位に保持できるので、第2の流量計測手段に空気が混入するのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態であるバイオ浄化循環システムトイレ1について、図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態であるバイオ浄化循環システムトイレ1の構成を示す斜視図であり、図2は、空気混入防止ユニット50の構成を具体的に示す構成図である。なお、本実施形態のバイオ浄化循環システムトイレ1は、システム内の総水量の増加分を蒸発させる蒸発装置10を備え、当該蒸発装置10の蒸発量を正確に計測できるものである。
【0011】
なお、図1および図2に示すバイオ浄化循環システムトイレ1は、図3に示す従来のバイオ浄化循環システムトイレ100の構成を基本としている。したがって、図1において、図3に示す従来のバイオ浄化循環システムトイレ100と同じ構成部品および装置に関しては、図3に使用した符号と同符号を使用する。
【0012】
はじめに、バイオ浄化循環システムトイレ1の概略構成について説明する。図1に示すように、バイオ浄化循環システムトイレ1は、トイレ小屋2の室内に設置された水洗便器5と、当該水洗便器5から排出される汚水を受け入れ、バクテリアによる生物処理をおこなう生物処理槽6と、当該生物処理槽6で処理された生物処理水のろ過処理をおこなうろ過槽7と、当該ろ過槽7でろ過処理されたろ過水のオゾン脱色処理をおこなう脱色槽8と、トイレ小屋2の屋根上に設置され、脱色槽8の処理水の一部を蒸発させて、システム内の総水量を調整する蒸発装置10とから構成されている。そして、蒸発装置10には、雨水の侵入を防止するための略直方体状の屋根70が覆設されている。この屋根70は、金属製の枠に透明シートが貼られて構成されており、蒸発装置10の左右を横切る空気の流れを遮断しないように、その左右両側面は開放されている。なお、蒸発装置10については後述する。
【0013】
また、水洗便器5と生物処理槽6(第1曝気槽6a)との間には、汚水が流れる汚水排出管路22が配設され、脱色槽8と水洗便器5との間には、水洗便器5に処理水を供給する第1処理水供給管路21が配設されている。そして、その第1処理水供給管路21の途中には、脱色槽8によって脱色処理された処理水を、水洗便器5に洗浄水として循環させるポンプ12が設けられている。また、生物処理槽6、ろ過槽7および脱色槽8で構成される汚水処理部3は、トイレ小屋2付近の地中に設けられた格納室(図示外)に格納されている。そして、汚水処理部3の各処理槽の天面には、図示外の蓋が各々設けられ、それらの蓋を各々開放することにより、各処理槽の内部状況が確認できる。
【0014】
また、脱色槽8と、蒸発装置10の水槽40に設けられた給水口55との間には、脱色槽8の処理水の一部を蒸発装置10に供給する第2処理水供給管路23が配設されている。そして、その第2処理水供給管路23の途中には、脱色槽8内の処理水を汲み上げるポンプ30が設けられ、そのポンプ30の下流側には、流路の開閉をおこなう電磁弁32が設けられている。さらに、第2処理水供給管路23の、ポンプ30と電磁弁32との間に設けられた連結部31には、第3処理水供給管路26が連結されている。そして、第3処理水供給管路26の下流側先端部は、脱色槽8の内側上部まで延設されている。さらに、第3処理水供給管路26の下流側先端部には、脱色槽8の内部に処理水を霧状に噴射する噴射ノズル26aが設けられている。また、第3処理水供給管路26の途中には、電磁弁33が設けられている。
【0015】
一方、蒸発装置10の水槽40に設けられた排水口56には、過剰水戻し管路25が接続され、その過剰水戻し管路25の下流側一端部は、汚水排出管路22の途中に設けられた連結部28に連結されている。さらに、過剰水戻し管路25の途中には、電磁弁60と、貯留タンク61と、第2流量計62と、電磁弁63と、サイフォン防止管64とで構成された本発明の特徴である空気混入防止ユニット50が設けられている。なお、空気混入防止ユニット50については後述する。また、図1に示す第2処理水供給管路23が、「供給管路」に相当し、過剰水戻し管路25が、「戻し管路」に相当する。
【0016】
次に、生物処理槽6について説明する。図1に示すように、生物処理槽6は、第1曝気槽6aと、第2曝気槽6bとから構成されている。そして、第1曝気槽6aおよび第2曝気槽6bには、種々のバクテリアを含む汚泥が貯留されている。このバクテリアには、主に汚水中の有機物を分解する細菌の他に、アンモニアの硝化をおこなう硝化菌や、脱窒をおこなう脱窒菌などが含まれる。そして、これらのバクテリアを含む汚泥が、汚水と相まって混合されることにより、汚水の生物処理がおこなわれる。また、図示しないが、生物処理槽6には、外気を導入するブロワーが設けられ、第1曝気槽6aおよび第2曝気槽6bの槽内には、そのブロワーに接続された散気管が各々配設されている。そして、ブロワーを間欠運転することにより、各散気管から汚泥内に空気が送出され、汚泥が間欠的に曝気される。すると、第1曝気槽6aおよび第2曝気槽6bの汚泥内では、好気的条件と、嫌気的条件とが交互に形成されるため、好気性菌である硝化菌と、嫌気性菌である脱窒菌とが交互に活性化される。したがって、生物処理槽6では、汚水中に含まれるアンモニアの硝化・脱窒処理が交互に効率よくおこなわれる。また、ブロワーによる曝気によって汚泥が撹拌されるため、汚水と汚泥との接触面積が増大し、生物処理槽6における生物処理が促進される。
【0017】
また、第1曝気槽6aには、上面が開口する箱型の除去スクリーン13が設けられている。そして、水洗便器5から排出される汚水は、汚水排出管路22を介して、第1曝気槽6aの除去スクリーン13内に流入する。汚水中に含まれるゴミ等の異物が網目に引っかかって、汚水中から除去される。さらに、第1曝気槽6aと、第2曝気槽6bとを仕切る仕切壁9の下段には、各槽が互いに連通して汚泥が通過する連通口9aが設けられている。一方、第2曝気槽6bには、複数枚の生分解性プラスチック板14aが収納された収納ケース14が投入されている。この生分解性プラスチック板14aは、ポリ乳酸などの有機物から形成され、例えば、トイレの使用頻度が低く、汚泥中の有機物濃度が低い場合に、バクテリアのエネルギー源として利用される。また、第2曝気槽6bの槽底部には、生物処理された生物処理水を、ろ過槽7に送出するための水中ポンプ17が配設されている。
【0018】
次に、ろ過槽7について説明する。図1に示すように、ろ過槽7は、生物処理槽6の第2曝気槽6bの下流側に隣接して設けられている。そして、ろ過槽7内には、水中ポンプ17によって供給された生物処理水をろ過するろ過装置15が設けられている。このろ過装置15は、複数のろ過膜15aと、当該ろ過膜15aによってろ過されたろ過水を集水する集水管(図示外)と、当該集水管に集水されたろ過水を脱色槽8に供給するろ過水供給管16とを備えている。また、ろ過槽7の水位は、脱色槽8の水位よりも高めに設定されているため、ろ過槽7と脱色槽8との間には、互いの水位差に起因する水等圧差を生じる。したがって、その水等圧差によって、ろ過槽7に貯留する生物処理水は、ろ過装置15のろ過膜15aによってろ過され、ろ過されたろ過水は集水管に集水され、ろ過水供給管16を介して脱色槽8に自然に流入する。
【0019】
また、ろ過水供給管16は可撓性を有し、略U字型に垂れ下がった状態で設けられている。よって、ろ過装置15を槽の上方に引き上げることができるため、ろ過膜15aの交換や装置の修理等のメンテナンス作業が容易にできる。一方、ろ過装置15によってろ過され、槽内に残存する残留高濃度汚泥は、図示外の汚泥返送管によって、再度生物処理槽6の第1曝気槽6aに返送される。また、ろ過槽7にも曝気用のブロワー(図示外)が設けられ、当該ブロワーに接続され、ろ過槽7のろ過装置15の下方に配設された散気管(図示外)に空気が送出される構成となっている。なお、このブロワーは常時運転するため、ろ過槽7でも生物処理が好気的におこなわれる。さらに、ろ過膜15aに付着する異物(粘性物質等)は、散気管から送出される気泡との接触により除去される。
【0020】
次に、脱色槽8について説明する。図1に示すように、槽外には、オゾンを生成するオゾン生成装置11が設けられ、当該オゾン生成装置11には、脱色槽8に供給されたろ過水中にオゾンを供給するオゾン供給管11aが接続されている。例えば、オゾン生成装置11によって生成したオゾンは、オゾン供給管11aを介して、脱色槽8内に貯留するろ過水中に吹き込まれる。すると、オゾン曝気されたろ過水は、オゾンの酸化効果によって、ろ過水中の色度成分が酸化分解されて脱色され、さらにオゾンの殺菌効果によって殺菌される。こうして、脱色槽8には、無色透明の殺菌された処理水が生成される。また、このオゾン生成装置11は、原料酸素を供給可能なオゾン発生室と、当該オゾン発生室内に配置した無声放電を生じる電極とにより構成され、高濃度のオゾンを生成する。
【0021】
次に、蒸発装置10について説明する。図1に示すように、蒸発装置10は、処理水の一部を貯留する水槽40と、当該水槽40の上部に配設され、1枚の吸水布45および該吸水布45を水平方向にジグザグ状に支持する略直方体状の枠であるハンガー枠部42とから構成されている。
【0022】
水槽40は、上面が開放された略直方体の箱型の水槽である。そして、水槽40前面の左端部近傍の上部の縁には、処理水が供給される給水口55が固定されている。さらに、水槽40の前面下段の右端部近傍には、水槽40内の所定水量を超える処理水の過剰分が排出される排水口56が突設されている。さらに、水槽40前面の中段の略中央には、例えば、強雨の侵入等によって、水槽40内で急激な増水があったときに、槽内の水をオーバーフローさせて外部に排出するための排出口57が突設されている。そして、給水口55には、第2処理水供給管路23が接続され、排水口56には、過剰水戻し管路25が接続される。
【0023】
一方、ハンガー枠部42は、水槽40を内側に備え、その枠内には略帯状の吸水布45が水平方向に向かってジグザグ状に掛け渡されている。さらに、この吸水布45の下部は水槽40内の処理水に浸漬している。これにより、吸水布45は、水槽40に貯留された処理水を、毛細管現象によって上方に吸い上げ、吸収された水分を大気中に自然蒸発させることができる。また、この吸水布45は、吸水性が高く、かつ保水性の低いもの(例えば、ナイロン、ポリエステル製の化学繊維等)を材質としている。さらに、ハンガー枠部42にジグザグ状に支持された吸水布45には、略山状のヒダが連続して形成されている。そして、それらの各ヒダは、何れも蒸発装置10の左右方向に対して平行に延設され、そのヒダとヒダとの隙間には、空気が通過する空気通路が形成されている。そして、その空気通路に空気が通過すると、吸水する吸水布45のヒダの側面に空気が接触するため、ヒダの側面から水分が蒸発する。これにより、水と空気との接触面積が広くなり、蒸発装置10における水分蒸発量の増加を図ることができる。なお、図1に示すハンガー枠部42、吸水布45が、「蒸発手段」に相当する。
【0024】
次に、本発明の特徴である空気混入防止ユニット50について説明する。この空気混入防止ユニット50は、第2流量計62に空気が混入するのを防止して、処理水の流量を正確に計測するためのユニットである。図1に示すように、空気混入防止ユニット50は、蒸発装置10の水槽40の排水口56と、汚水排出管路22の連結部28との間に接続された過剰水戻し管路25の途中に設けられている。この空気混入防止ユニット50は、過剰水戻し管路25の上流側に設けられた電磁弁60と、当該電磁弁60の下流側に設けられ、管路内を流れる処理水を一時的に貯留する貯留タンク61と、該貯留タンク61の下流側に設けられ、管路内を流れる処理水の流量を計測する第2流量計62と、当該第2流量計62の下流側に設けられた電磁弁63と、該電磁弁63と連結部28との間に設けられ、汚水排出管路22内を流れる汚水に引かれて、過剰水戻し管路25内の処理水が全て流出するサイフォン現象を防止するサイフォン防止管64とから構成されている。また、貯留タンク61は、第2流量計62よりも高い位置に設けられている。なお、図2に示す電磁弁60が、「第1の開閉バルブ」に相当し、電磁弁63が、「第2の開閉バルブ」に相当する。
【0025】
また、図2に示すように、過剰水戻し管路25は、第1過剰水戻し管路25aから第6過剰水戻し管路25fの6本の管路で構成されている。例えば、水槽40の排水口56と電磁弁60との間には、第1過剰水戻し管路25aが設けられ、電磁弁60と貯留タンク61との間には、第2過剰水戻し管路25bが設けられ、貯留タンク61と第2流量計62との間には、第3過剰水戻し管路25cが設けられ、第2流量計62と電磁弁63との間には、第4過剰水戻し管路25dが設けられ、電磁弁63とサイフォン防止管64との間には、第5過剰水戻し管路25eが設けられ、サイフォン防止管64と連結部28との間には、第6過剰水戻し管路25fが設けられている。
【0026】
次に、貯留タンク61について説明する。図2に示すように、貯留タンク61は、上下方向に長い略円筒状のタンク筒体61aと、該タンク筒体61aの軸線方向上端部に覆設された上蓋部61bと、タンク筒体61aの軸線方向下端部に下側から覆設された略丸底状の下底部61cとから構成されている。そして、上蓋部61bには、2つの挿通穴(図示外)が穿設されている。そのうちの一の挿通穴には、その挿通穴の上方から第2過剰水戻し管路25bが嵌挿され、その貯留タンク61内に嵌挿された側の一端部は、そのタンク内で側方に折り返されている。また、他方の挿通穴には、タンク内に貯留された処理水中に含まれる空気を外部に逃がすための空気逃がし管47が嵌挿されている。そして、空気逃がし管47の外側の一端部が下方に折り返されることにより、空気逃がし管47から貯留タンク61内に雨水が侵入するのを防止できる。一方、下底部61cにも、1つの挿通穴(図示外)が穿設され、当該挿通穴には、第3過剰水戻し管路25cの上流側一端部が嵌挿入されている。
【0027】
そして、このような構成からなる貯留タンク61内には、第2過剰水戻し管路25bから処理水が断続的に供給される。そして、例えば、電磁弁63が閉塞されると、その電磁弁63の上流側にある第4過剰水戻し管路25dと、第2流量計62と、第3過剰水戻し管路25cとに処理水が充たされ、貯留タンク61内に一定量の処理水が貯留されるようになっている。
【0028】
次に、サイフォン防止管64について説明する。図2に示すように、サイフォン防止管64は、上下方向に長い略円筒状のサイフォン筒体64aと、当該サイフォン筒体64aの軸線方向上端部に覆設された上蓋部64bと、サイフォン筒体64aの軸線方向下端部に下側から覆設された略丸底状の下底部64cとから構成されている。そして、上蓋部64bには、1つの挿通穴(図示外)が穿設され、そのうちの一の挿通穴には、サイフォン筒体64a内に供給された水に含まれる空気を外部に逃がすための空気逃がし管48が接続されている。そして、その空気逃がし管48の先端部が下方に向かって折り返されることにより、空気逃がし管48からサイフォン防止管64内に雨水が侵入するのを防止できる。
【0029】
一方、下底部64cには、2つの挿通穴(図示外)が穿設され、そのうちの一の挿通穴には、第5過剰水戻し管路25eの下流側一端部が嵌挿されている。そして、第5過剰水戻し管路25eの下流側一端部は、サイフォン筒体64aの軸線と平行かつ略上方に延設され、サイフォン筒体64aの略中段付近まで延設されている。また、下底部64cの他方の挿通穴には、第6過剰水戻し管路25fの一端部が接続され、当該一端部とは反対の他端部が連結部28に接続されている。なお、図2に示すサイフォン防止管64が、「サイフォン防止手段」に相当する。
【0030】
次に、バイオ浄化循環システムトイレ1の動作について説明する。図1に示すように、トイレ小屋2の水洗便器5から汚水が排出され、その汚水は、汚水排出管路22を介して、地中にある汚水処理部3の第1曝気槽6aに供給される。そして、第1曝気槽6aでは、除去スクリーン13によって、汚水中の異物が除去される。さらに、汚水は、第1曝気槽6aおよび第2曝気槽6b内の汚泥と混合され、間欠曝気されることにより、汚泥中のバクテリアによる有機物分解、硝化および脱窒処理される。次いで、生物処理槽6で処理された生物処理水は、水中ポンプ17によって、ろ過槽7に送出される。ろ過槽7に送出された生物処理水は、ろ過装置15によってろ過され、ろ過水はろ過水供給管16を介して脱色槽8に供給され、ろ過槽7内の残留高濃度汚泥は、図示外の返送管を通じて、第1曝気槽6aに返送される。さらに、脱色槽8に供給されたろ過水は、一旦槽内に貯留され、オゾン生成装置11が生成するオゾンによって曝気される。すると、ろ過水はオゾンによって脱色処理されるので、やや黄色がかったろ過水は無色透明となる。そして、その処理水は、ポンプ12によって汲み上げられ、第1処理水供給管路21を介して、再度洗浄水として水洗便器5に供給される。
【0031】
そして、上記のようにバイオ浄化循環システムトイレ1は、排水を外部にださないシステムトイレであるため、トイレの使用頻度が高くなると、第1曝気槽6aへの汚水流入量が増加し、システム全体の総水量が増加する。さらにこの状態が放置されると、生物処理槽6、ろ過槽7および脱色槽8の各処理槽から、汚泥や処理水などが溢れてしまい、トイレの使用を禁止せざるを得ない状況となる。そこで、バイオ浄化循環システムトイレ1では、蒸発装置10によって、処理水の一部を蒸発させることにより、システム内の総水量の調整をおこなう。
【0032】
次に、蒸発装置10の動作について説明する。図1に示すように、バイオ浄化循環システムトイレ1において、電磁弁32は、30分に1回の割合で3分間開放され、電磁弁33は、5分に1回の割合で1分間開放される。そして、電磁弁32および電磁弁33の開放動作に連動して、ポンプ30が運転される。なお、電磁弁32が開放されるときは、電磁弁33が閉塞されるように、電磁弁32の開放するタイミングと、電磁弁33の開放するタイミングとは、互いにずらして設定されている。一方、空気混入防止ユニット50の電磁弁60は、電磁弁32の開放と同時に開放され、電磁弁32が閉塞して5分経過してから閉塞されるように設定されている。
【0033】
図1に示すように、まず、電磁弁32と、電磁弁60とが同時に開放され、ポンプ30が運転される。すると、脱色槽8に貯留する処理水の一部は、第2処理水供給管路23を通過して、蒸発装置10の給水口55を介して、水槽40内に流入する。そして、水槽40内に貯留された処理水は、吸水布45によって上方に吸い上げられる。
【0034】
そして、水槽40の所定水量を超える過剰分の処理水は、水槽40の排水口56から排水され、過剰水戻し管路25の途中に設けられた空気混入防止ユニット50の貯留タンク61に一旦貯留される。
【0035】
次いで、電磁弁32が開放されて3分間経過すると、電磁弁32は自動的に閉塞され、水槽40への処理水の供給が停止される。このとき、電磁弁32が閉塞されてから5分経過するまでは、電磁弁60は開放されている。そのため、水槽40における過剰分の処理水は、すべて過剰水戻し管路25に流入する。そして、電磁弁32が閉塞してから5分経過後に電磁弁60が閉塞される。電磁弁60が閉塞されると、同時に電磁弁63が開放され、貯留タンク61に貯留されている処理水がサイフォン防止管64および連結部28を介して汚水排出管路22に流入し、生物処理槽6に返送される、このとき、過剰水戻し管路25を流れる処理水の流量が第2流量計62によって計測される。
【0036】
一方、電磁弁33は、電磁弁32の閉塞中に1分間開放される。この場合も、ポンプ30が運転を開始する。このとき、脱色槽8に貯留する処理水の一部は、第2処理水供給管路23を通過し、連結部31を介して、第3処理水供給管路26に流れる。さらに、第3処理水供給管路26を流れる処理水は、その下流側先端部に設けられた噴射ノズル26aより、脱色槽8内にて噴霧される。噴射ノズル26aから噴霧された処理水は、微細な霧状となって蒸発する。
【0037】
また、本実施形態における蒸発装置10の蒸発量は、蒸発装置10の上流側および下流側の各管路を流れる処理水の流量の差から算出される。そして、蒸発装置10の上流側の処理水の流量は、第1流量計52によって計測される。他方、蒸発装置10の下流側の処理水の流量は、空気混入防止ユニット50の第2流量計62によって計測される。そして、空気混入防止ユニット50は、第2流量計62内への空気混入を防止する。
【0038】
次に、空気混入防止ユニット50における第2流量計62の空気混入防止方法について説明する。図2に示すように、第1過剰水戻し管路25aには処理水が断続的に流れる。したがって、第1過剰水戻し管路25aに流れる処理水には空気が混在する。そこで、本実施形態のバイオ浄化循環システムトイレ1では、空気混入防止ユニット50において、第1過剰水戻し管路25aを流れる処理水を、開放された電磁弁60を介して、第2過剰水戻し管路25bに流し、貯留タンク61に流入させる。そして、電磁弁32および電磁弁60が開放されると同時に、電磁弁63が閉塞される。したがって、電磁弁63の上流側に位置する第4過剰水戻し管路25dと、第2流量計62と、第3過剰水戻し管路25cとの順に処理水が充たされ、貯留タンク61内に処理水が貯留される。さらに、貯留タンク61内に貯留された処理水には空気が混在するが、貯留タンク61内においてエア抜きされる。そして、処理水から分離された空気は、空気逃がし管47を介して外部に排出される。
【0039】
次いで、電磁弁32(図1参照)が開放から3分間経過後に閉塞し、さらに電磁弁32が閉塞して5分経過後に、電磁弁60が閉塞される。そして、それと同時に電磁弁63が開放される。すると、貯留タンク61に貯留されていた処理水は、第3過剰水戻し管路25cを一気に流れ、第2流量計62に流れ込む。このとき、第2流量計62に流れ込む処理水は、貯留タンク61で既にエア抜きされているので、第2流量計62に空気が混入するのを防止できる。また、第2流量計62に空気が混入した場合でも、貯留タンク61と第2流量計62とには高低差があるため、貯留タンク61内の処理水は、第2流量計62内に一気に流れ込む。そのため、第2流量計62内に混入した空気を下流側に押し出すことができる。したがって、第2流量計62における空気混入による測定誤差を防止できるので、処理水の流量を正確に計測できる。
【0040】
また、第2流量計62を処理水が流れた後では、第3過剰水戻し管路25cにおける処理水の水位は、サイフォン防止管64内に差し込まれた第5過剰水戻し管路25eの下流側一端部の高さ位置と同等の高さ位置に保持される。したがって、第2流量計62の入り口側および出口側が処理水で常に充たされるため、次回の処理水流入時においても、第2流量計62に空気が混入するのを未然に防止できる。
【0041】
以上説明したように、本発明の一実施の形態であるバイオ浄化循環システムトイレ1によれば、システム内の総水量の増加分を蒸発させる蒸発装置10を備え、当該蒸発装置10の蒸発量を正確に計測できるものである。この蒸発装置10の蒸発量は、蒸発装置10の上流側を流れる処理水の流量を計測する第1流量計52と、蒸発装置10の下流側を流れる処理水の流量を計測する第2流量計62とで計測される各流量の差から算出される。そして、第2流量計62の空気混入による測定誤差の発生を防止するため、空気混入防止ユニット50が設けられている。この空気混入防止ユニット50では、第2流量計62の上流側に貯留タンク61を設け、一旦タンク内に処理水を貯留させている。これにより、貯留タンク61内に貯留された処理水はエア抜きされ、そのエア抜きされた処理水を第2流量計62に流すことができる。よって、第2流量計62に空気が混入するのを防止できる。また、貯留タンク61は、第2流量計62よりも高い位置に設けられているので、貯留タンク61内に一旦貯留された処理水は、その高低差によって、第2流量計62に一気に流れ込む。これにより、例えば、第2流量計62に空気が混入した場合でも、その空気を下流側に押し出すことができる。したがって、第2流量計62における空気混入による測定誤差を防止できるので、処理水の流量を正確に計測できる。
【0042】
また、空気混入防止ユニット50の下流側には、サイフォン防止管64が設けられているので、汚水排出管路22を流れる汚水に引かれて過剰水戻し管路25内の処理水が全て流出するサイフォン現象を防止できる。また、サイフォン防止管64により、第2流量計62の入り口側および出口側を処理水で常に充たすことができるため、次回の処理水流入時においても、第2流量計62に空気が混入するのを未然に防止できる。以上のことから、第2流量計62で正確な流量を計測できるので、蒸発装置10における蒸発量を正確に算出できる。
【0043】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されることなく、各種の変形が可能である。屋根70の裏面側に、ポンプ30によって汲み上げた処理水を、蒸発装置10の上から散水する散水装置を設け、吸水布45に直接散水するようにしてもよい。
【0044】
また、脱色槽8の水位を水位センサで感知して、その結果に基づいて、電磁弁32,電磁弁33、電磁弁60および電磁弁63の開閉およびポンプ30の運転を制御する制御装置を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態であるバイオ浄化循環システムトイレ1の構成を示す斜視図である。
【図2】空気混入防止ユニット50の構成を具体的に示す構成図である。
【図3】従来のバイオ浄化循環システムトイレ100の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 バイオ浄化循環システムトイレ
10 蒸発装置
23 第2処理水供給管路
25 過剰水戻し管路
40 水槽
42 ハンガー枠部
45 吸水布
47 空気逃がし管
52 第1流量計
60 電磁弁
61 貯留タンク
62 第2流量計
63 電磁弁
64 サイフォン防止管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物処理された処理水の一部を貯留する水槽と、当該水槽内の処理水を蒸発させる蒸発手段とを有する蒸発装置を備えたバイオ浄化循環システムトイレにおいて、
前記処理水の一部を前記水槽に供給するための供給管路と、
当該供給管路に介装され、管路内を流れる処理水の流量を計測する第1の流量計測手段と、
前記水槽内の所定水量を超える処理水の過剰分を、前記バイオ浄化循環システムトイレに戻す戻し管路と
を備え、
前記戻し管路は、前記水槽から下方に向かって延設され、
前記戻し管路には、
流路の開閉をおこなう第1の開閉バルブと、
当該第1の開閉バルブの下流側に設けられ、前記戻し管路を流れる処理水を一時的に貯留する貯留タンクと、
当該貯留タンクの下流側に設けられ、管路内を流れる処理水の流量を計測する第2の流量計測手段と、
当該第2の流量計測手段の下流側に設けられ、流路の開閉をおこなう第2の開閉バルブと、
当該第2の開閉バルブの下流側に設けられ、前記第2の流量計測手段の入り口および出口の水がサイフォン現象により前記バイオ浄化循環システムトイレ側に引かれるのを防止して前記第2の流量計測手段の入り口および出口の水を常時一定水位に保持させるサイフォン防止手段と
が設けられていることを特徴とするバイオ浄化循環システムトイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−77413(P2006−77413A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260520(P2004−260520)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】