説明

バネクリップ

【課題】バネクリップを板状部材に係止させた状態に保持する機能を保ちつつ、バネクリップを板状部材に差し込むときの挿入荷重を低減させられるようにすること。
【解決手段】金属製のバネクリップ10に、リブRを互いの間に差し込み可能な一対の挟持片11、11と、各一対の挟持片11、11から両挟持片11、11の間に向かって突出する板状の係止爪12、12と、を設ける。各係止爪12、12は、リブRが一対の挟持片11、11の間に差し込まれることで押されて撓み変形し、その弾発力によりその先端側の各係合歯12A、12AをリブRの板面に食い込ませるように押し付けて、リブRを抜けないように保持する構成とされている。各係止爪の根元部12B、12Bは、その板幅が狭められて撓ませやすい構造に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バネクリップに関する。詳しくは、板状部材に板面方向に差し込まれることでこの板状部材を板厚方向に挟持した状態となって取り付けられる金属製のバネクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のバネクリップについては、例えば特許文献1に開示されている技術が知られている。このバネクリップ110は、図8に示すように、自動車のインストゥルメントパネルI/Pから突出した板状のリブRを互いの間に差し込むことができる一対の挟持片111、111と、挟持片111、111のそれぞれから両挟持片111、111の間に向かって突出する板状の係止爪112、112と、を有している。上記係止爪112、112は、リブRが両挟持片111、111の間に差し込まれることにより押されて撓み変形し、その弾発力によりその先端側の係合歯112A、112AをそれぞれリブRの板面Rs、Rsに食い込ませるように押し付けて、リブRを抜けないように保持する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−055835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記バネクリップ110は、係止爪112、112の剛性が高すぎるために、両挟持片111、111の間にリブRを差し込むときの挿入荷重が大きく、作業性が悪いものであった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、バネクリップを板状部材に係止させた状態に保持する機能を保ちつつ、バネクリップを板状部材に差し込むときの挿入荷重を低減させられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のバネクリップは次の手段をとる。
まず、第1の発明は、板状部材に板面方向に差し込まれることでこの板状部材を板厚方向に挟持した状態となって取り付けられる金属製のバネクリップである。このバネクリップは、板状部材を互いの間に差し込み可能な一対の挟持片と、この一対の挟持片のうちの少なくとも一方からこの両挟持片の間に向かって突出する板状の係止爪と、を有する。この係止爪は、板状部材が一対の挟持片の間に差し込まれることで押されて撓み変形し、その弾発力によりその先端側の当接縁部を板状部材の板面に食い込ませるように押し付けて、板状部材を抜けないように保持する構成とされている。係止爪の根元部には、係止爪を撓ませやすくする脆弱部が形成されている。
【0007】
この第1の発明によれば、係止爪の根元部に脆弱部が形成されていることにより、係止爪が板状部材によって押し撓まされやすくなる。このため、一対の挟持片の間に板状部材を小さな力で挿入できるようになる。そして、上記板状部材の挿入によって押し撓まされた係止爪は、その弾発力によりその先端側の当接縁部を板状部材の板面に食い込ませるように押し付けて、板状部材を抜けないように保持した状態となる。この係止爪が板状部材の板面に食い込んで係止した状態では、バネクリップに板状部材から引き抜かれる方向の力がかけられても、係止爪は、その板状部材の板面に食い込んでいる先端側の当接縁部を支点として立ち上がるように変形し、一対の挟持片を押し開かせるように撓ませることで、板状部材に対する係止力を弱めることなく係止状態を保ち続けるように作用する。
【0008】
ついで、第2の発明は、上述した第1の発明において、係止爪が少なくとも一方の挟持片から切り起こされて形成されており、脆弱部は係止爪が切り起こされる根元部の挟持片に対する切り込みのスリット幅を他の部位よりも広げることで根元部の板幅を部分的に狭めた構成としたものである。
【0009】
この第2の発明によれば、係止爪に形成される脆弱部を、係止爪の挟持片に対する切り込みのスリット幅を部分的に広げることで構成することにより、係止爪の根元幅が狭められるとともに、係止爪の根元部を支持するスリットに臨む周縁部も幅長が広げられて撓まされやすくなる。
【0010】
さらに、第3の発明は、上述した第1または第2の発明において、係止爪は、その先端側の端面がプレス加工によって板厚方向に打ち抜かれて形成されており、プレス加工の打ち抜き方向が、当接縁部の位置する側の面から裏面側に向かって打ち抜かれる設定とされることにより、プレス加工によって生成されるダレが当接縁部に形成され、同じく生成されるバリが裏面側の縁部に形成されているものである。
【0011】
この第3の発明によれば、プレス加工によって生成されるダレが係止爪の当接縁部側に形成されることにより、この部位にバリが形成される場合と比べて、板状部材の挿入時に係止爪が引っかかりにくくなる。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、係止爪の根元部に脆弱部を形成したことにより、一対の挟持片の間に板状部材を小さな力で挿入することができる。また、板状部材にバネクリップが取り付けられた後に、このバネクリップに引き抜かれる方向の力がかけられても、係止爪を板状部材との係止状態を保ち続けるように撓ませやすくなるため、バネクリップを板状部材から抜けないように保持する機能を保つことができる。
【0013】
また、第2の発明によれば、係止爪の挟持片に対する切り込みのスリット幅を部分的に広げることで係止爪の根元幅を部分的に狭めて脆弱部を形成する構成としたことにより、同時に、係止爪の根元部を支持するスリットに臨む周縁部も撓ませやすくすることができ、係止爪をより効果的に撓ませやすくすることができる。
【0014】
また、第3の発明によれば、プレス加工によって生成されるダレが係止爪の当接縁部側にくるように打ち抜き方向を設定する簡単な構成により、バネクリップの挿入荷重をより低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1にかかるバネクリップの概略構成を表した斜視図である。
【図2】実施例1にかかるバネクリップの構成を表した斜視図である。
【図3】実施例1にかかるバネクリップとクランプとを分解して表した斜視図である。
【図4】実施例1にかかるバネクリップの側面図である。
【図5】実施例1にかかるバネクリップをリブに差し込む前の状態を表した正面図である。
【図6】実施例1にかかるバネクリップをリブに差し込んだ状態を表した正面図である。
【図7】実施例1にかかるバネクリップにリブから引き抜かれる方向の力がかけられた状態を表した正面図である。
【図8】従来のバネクリップの構成を表した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0017】
始めに、実施例1にかかるバネクリップ10の構成について、図1ないし図7を用いて説明する。本実施例のバネクリップ10は、図1および図2に示すように、自動車のインストゥルメントパネルI/Pに沿って配索される長尺状のワイヤーハーネスW/Hを、インストゥルメントパネルI/Pに取り付けて固定した状態に保持するために用いられるものである。このバネクリップ10は、ワイヤーハーネスW/Hを結合させられる機能を備えた合成樹脂製のクランプ20に一体に組みつけられて構成され、クランプ20にワイヤーハーネスW/Hを結合し、バネクリップ10をインストゥルメントパネルI/Pに立設された板状のリブRに差し込んで装着することにより、ワイヤーハーネスW/HをインストゥルメントパネルI/Pに取り付けて固定するようになっている。ここで、リブRが本発明の「板状部材」に相当する。
【0018】
上記リブRは、具体的には、全体がポリプロピレンなどの合成樹脂により1枚の板状に形成されて、その板面方向にバネクリップ10を差し込む構成となっている。リブRは、その根元部から先端部に向かって徐々にその板厚が薄くなるように構成されて、バネクリップ10をリブRの板面方向に差し込みやすい構成となっている。
【0019】
上記クランプ20は、具体的には、合成樹脂の一体成型品により形成されており、ワイヤーハーネスW/Hを結合するための固定アーム21と、バネクリップ10を側方からの挿入により装着することのできるクリップ装着部22と、を備えている。上記固定アーム21は、その裏面(図1および図2で見て下側の面)にワイヤーハーネスW/Hをあてがって、これらをひとくくりに結束するように粘着テープTを巻きつけることにより、ワイヤーハーネスW/Hを一体に結合させられるようになっている。上記クリップ装着部22は、上記固定アーム21上から図示上方側に向かって「U」字状に延びる一対の保持片22A、22Aにより構成されており、この一対の保持片22A、22Aの間にバネクリップ10を側方から挿入することにより、このバネクリップ10を挟み込んだ状態にして保持する構成となっている。
【0020】
詳しくは、上記クリップ装着部22は、バネクリップ10を上記一対の保持片22A、22Aの間に側方から挿入することにより、バネクリップ10に設けられた後述する孔部11C内に弾性的にはまり込んで係止する係止突起22Bと、バネクリップ10を目標とする位置まで挿入した位置で係止させられるようにする一対のストッパー22C、22Cと、挿入されたバネクリップ10の後述する一対の係止爪12、12を外側から覆うように各保持片22A、22Aの先端部から両保持片22A、22Aの内側に向かって折り返されるように延びる一対の爪カバー22D、22Dと、を備えている。
【0021】
上記係止突起22Bは、上記一対の保持片22A、22Aのうち一方の保持片22A(本実施例では、図1および図2で見て左側の保持片22A)の一部に、内外に撓めるように片持ち梁状に切り出された部位が形成され、この部位に内側に向かって突出する突起が形成されることで構成されている。この突起は、そのバネクリップ10が挿入される側(図1および図2で見て右奥側)に面を向けた部位が、バネクリップ10の挿入によって係止突起22Bを外側に押し撓ませられるようにする傾斜面として形成されている。これにより、係止突起22Bは、バネクリップ10が挿入されることにより、一度外側に押し撓ませられて、その後に、その弾発力によりその内側に向かって突出した突起をバネクリップ10の孔部11C内に弾性的にはめ込んで係止して、バネクリップ10を抜けないように保持する構成とされている。
【0022】
一対のストッパー22C、22Cは、上記一対の保持片22A、22Aの各縁部から両保持片22A、22Aの内側に向けて突出する形に形成されており、バネクリップ10が挿入されることでこのバネクリップ10の縁部と当接して、バネクリップ10の挿入を係止させる構成となっている。具体的には、各ストッパー22C、22Cは、バネクリップ10の後述する各挟持片11、11の縁部に形成された各係止溝11D、11D内に、各ストッパー22C、22Cがはまり込むように当接して、バネクリップ10の挿入を係止させる構成となっている。
【0023】
一対の爪カバー22D、22Dは、クリップ装着部22に挿入されたバネクリップ10の各係止爪12、12をそれぞれ覆うことで、ワイヤーハーネスW/Hを結合したクランプ20を搬送しているときに各係止爪12、12がワイヤーハーネスW/Hを噛みこまないように保護する構成となっている。上記各爪カバー22D、22Dの間の隙間の幅は、リブRの板厚とほぼ同じに設定されており、この隙間内にリブRを抵抗なく差し込むことができ、かつ、各係止爪12、12の間にワイヤーハーネスW/Hが侵入しないように阻止する構成となっている。
【0024】
バネクリップ10は、1枚の金属板をプレス加工により打ち抜いた後に、さらに曲げ加工されることにより、全体が「U」字状に曲げ返された形に形成されている。これにより、バネクリップ10は、互いに対向する一対の挟持片11、11を有した形に形成されている。この一対の挟持片11、11は、そのバネ弾性により、互いの開口を拡げたりすぼめたりするように内外に弾性変形できるようになっている。そして、上記バネクリップ10には、さらに、上記各挟持片11、11からそれぞれ内側に切り起こされて突出する係止爪12、12が形成されている。これらの係止爪12、12は、各挟持片11、11に「コ」字状のスリット11A、11Aが入れられて内側に切り起こされて形成されている。詳しくは、上記各スリット11A、11Aは、上記各挟持片11、11に対して、それぞれ、その「コ」字の開口がバネクリップ10の「U」字の開口方向側(図3で見て上方側、図4で見て下方側)を向く形に入れられている。そして、上記各係止爪12、12は、上記各スリット11A、11Aの「コ」字の開口側の縁部(根元部12B、12B)を支点として、各挟持片11、11の内側に向けて曲げ起こされることにより、バネクリップ10の「U」字の開口方向とは反対側(図3で見て下方側、図4で見て上方側)に向かって面を延ばすように斜めに切り起こされた形に形成されている。
【0025】
なお、上述した各スリット11A、11Aは、厳密には、各係止爪12、12の切り起こされる先端側の縁部に、それぞれ櫛歯状の係合歯12A、12Aを形成するように各挟持片11、11に入れられている。これにより、図6に示すように、前述したリブRが各係止爪12、12の間に差し込まれて各係止爪12、12が押し撓まされた際に、各係止爪12、12が、その弾発力によって、その先端側の各係合歯12A、12AをそれぞれリブRの板面Rs、Rsに食い込ませるように押し付ける力をより強く作用させるようになっている。すなわち、本実施例のバネクリップ10は、金属で形成されているために、その一対の挟持片11、11のバネ弾性により、各係止爪12、12を、合成樹脂製のリブRに対して強い挟持力を作用させて係止させられるようになっている。ここで、上述した各係止爪12、12は、図3ないし図5に示すように、互いの先端部に形成された各係合歯12A、12Aが互いに当接して噛み合った状態となるように、各挟持片11、11から大きく切り起こされて形成されている。これにより、各係止爪12、12は、互いの先端部間にほとんど隙間がない状態とされており、差し込み対象となるリブRが板厚の薄いものであっても、リブRの挿入により各係止爪12、12を押し撓ませて、各係止爪12、12の先端側の係合歯12A、12AをリブRの板面Rs、Rsに食い込ませるように押し付けて係止させられるようになっている。
【0026】
ところで、上述した各スリット11A、11Aは、バネクリップ10を1枚の金属板から打ち抜く加工の際に一緒に打ち抜かれて形成されている。詳しくは、上記各スリット11A、11Aを形成するプレス加工の打ち抜き方向は、各挟持片11、11の曲げ返されたときに内側となる面側から、外側となる面側に向けて打ち抜かれるように設定されている。これにより、各係止爪12、12の先端側に形成される係合歯12A、12Aの歯先面(端面)は、その内面側の縁部に、プレス加工により生成されるダレ12A1、12A1(丸みを帯びた面)が形成され、外面側の縁部に、同じく生成されるバリ12A2、12A2(外面側から突出する尖り面)が形成された構成となっている。上記各係止爪12、12の先端側のダレ12A1、12A1が形成されている縁部は、それぞれ、図5および図6に示すように、前述したリブRが各係止爪12、12の間に挿入された際に、リブRの各板面Rs、Rsと当接する側の縁部となっており、この縁部が本発明の「当接縁部」に相当する。
【0027】
ここで、前述した各スリット11A、11Aは、より詳しくは、図4に示すように、各係止爪12、12の根元部12B、12Bの両サイドに形成される切り込みのスリット幅W1、W1を、その他の部位の両サイドに形成される切り込みのスリット幅W2、W2よりも部分的に広げた形とされて形成されている。これにより、各係止爪12、12の根元部12B、12Bは、他の部位よりも横幅がくびれた形に形成されており、係止爪12、12を撓みやすくする脆弱部が設けられた構成とされている。また、上記のような各スリット11A、11Aの切り込みが行われることにより、あわせて、各挟持片11、11が各根元部12B、12Bを支持する各スリット幅W1、W1に臨む周縁部11B、11Bもそれぞれ横幅が広げられて撓みやすくされた構成となっている。これにより、各係止爪12、12は、図6および図7で後述するように、前述したリブRが各係止爪12、12の間に挿入された際(図6参照)、およびバネクリップ10がリブRに差し込まれた状態からバネクリップ10に引き抜かれる方向の力がかけられた際(図7参照)に、脆弱化された各根元部12B、12Bおよび各周縁部11B、11Bをそれぞれ曲げたり捩らせたりして撓み変形させて、各挟持片11、11に対する立ち上がり角度を比較的軽い力によって変化させやすい構成とされている。
【0028】
ところで、上述した各挟持片11、11は、より詳しくは、バネクリップ10を1枚の金属板から打ち抜く加工の際に、各挟持片11、11の両側縁部に一対の係止溝11D、11Dが一緒に打ち抜かれて形成されている。また、各係止爪12、12が各挟持片11、11から内側に切り起こされて形成されることにより、両挟持片11、11には、それぞれに前述した孔部11C、11Cが形成されている。これにより、バネクリップ10を各保持片22A、22Aの間に各係止爪12、12が各爪カバー22D、22Dに沿う向きに挿入することで、バネクリップ10がどちら側の側縁部をクランプ20に向けていても、各係止突起22Bと孔部11Cと、および、各ストッパー22C、22Cと各係止溝11D、11Dと、を係止させて、バネクリップ10をクランプ20に固定することができる。
【0029】
本実施例では、主にバネクリップ10がリブRに対して係止する係止力により、ワイヤーハーネスW/HがインストゥルメントパネルI/Pに固定される構成となっている。以下、バネクリップ10がリブRに対して係止する構成について、図5ないし図7を用いて説明する。なお、図5ないし図7においては、クランプ20、ワイヤーハーネスW/H、および、粘着テープTなどの付随的な部材は図示を省略する。
【0030】
まず、バネクリップ10をリブRに差し込む前の状態について説明する。図5に示すように、バネクリップ10はその「U」字状に形成された開口部をインストゥルメントパネルI/P側(図示上側)に向けた状態で、リブRが一対の挟持片11、11の間に挿入されるようにリブRに板面方向に差し込む構成となっている。この各挟持片11、11からは、それぞれ、係止爪12、12がバネクリップ10の「U」字の開口方向とは反対側(図示下方側)に向かって面を延ばすように斜めに切り起こされている。この一対の係止爪12、12は、その各先端部に係合歯12A、12Aが形成されて互いに突き合わせられ、その歯先面(端面)の内面側の縁部に、プレス加工により形成されたダレ12A1、12A1(丸みを帯びた面)が形成されている。
【0031】
この状態からバネクリップ10をリブRに向けて差し込むと、両係止爪12、12はリブRに押し開かれて、両挟持片11、11がリブRを挟み込むようにこのリブRに差し込まれる。図6に示すように、各挟持片11、11から切り起こされた係止爪12、12は、リブRによって押し開かれて、撓みやすい脆弱な構成とされた各根元部12B、12Bが両挟持片11、11から見て外側に向けて曲がるように撓む。各根元部12B、12Bから生じた弾発力は各挟持片11、11にこの両挟持片11、11を押し広げて、さらに、撓みやすい脆弱な構成とされた各周縁部11B、11Bが両挟持片11、11から見て外側に向けて捩れるように撓む。そして、両係止爪12、12は、各挟持片11、11と、各周縁部11B、11Bと、各根元部12B、12Bと、の弾発力によって、その先端側の各係合歯12A、12AをそれぞれリブRの板面Rs、Rsに押し付けて食い込ませた状態となる。これにより、バネクリップ10がリブRを強い挟持力で保持した係止状態となる。
【0032】
このとき、各周縁部11B、11Bおよび各根元部12B、12Bの両方が撓みやすい脆弱な構成となっていることにより、リブRが各係止爪12、12を押し開いて両挟持片11、11の間に挿入されるときの荷重が低減されている。また、各係合歯12A、12Aは、そのリブRの各板面Rs、Rsに当接する縁部がプレス加工によって生成されるダレ12A1、12A1(丸みを帯びた面)で構成されているので、リブRの挿入に対して各係合歯12A、12Aが各板面Rs、Rsに引っかかりにくく、リブRの挿入荷重がより低減されるようになっている。
【0033】
このバネクリップ10がリブRに係止されて固定された状態において、バネクリップ10にリブRから引き抜かれる方向(図7で見て下方向)に力がかかると、図7に示すように、バネクリップ10がリブRとの係止状態を保ち続けるように撓んだ状態となる。詳しくは、バネクリップ10にリブRから引き抜かれる方向(図7で見て下方向)に力がかかると、両係合歯12A、12AがリブRの板面Rs、Rsに食い込んでいるために、両係止爪12、12のそれぞれにバネクリップ10の開口部に向かう向きのモーメントが発生する。このモーメントにより、各係止爪12、12の根元部12B、12Bがバネクリップ10の開口部に向かって曲がるように撓んで、この弾発力により各係止爪12、12を支持する各周縁部11B、11Bがバネクリップ10の開口部に向けて捩れるように撓む。これにより、両係止爪12、12が立ち上がるように変形して、両挟持片11、11がより大きく押し広げられる。
【0034】
そして、両係合歯12A、12Aは、両係止爪12、12が立ち上がるように変形してその各板面Rs、Rsに対するすくい角が小さくなることと、両挟持片11、11がより大きく押し広げられてその弾発力が強くなることによって、リブRを切削することなくその各板面Rs、Rsに食い込んだ係止状態を保つようになっている。このとき、各周縁部11B、11Bおよび各根元部12B、12Bの両方が撓みやすい脆弱な構成となっていることにより、リブRの各板面Rs、Rsに食い込んだ各係合歯12A、12AにリブRを切削するほど大きな力がかかる前に、両係止爪12、12が立ち上がるように変形して、両挟持片11、11がより大きく押し広げられるようになっている。これにより、バネクリップ10にリブRから引き抜かれる方向(図7で見て下方向)に力がかけられても、バネクリップ10をリブRから抜けないように保持する機能を保つことができる。
【0035】
このように、本実施例のバネクリップ10によれば、各係止爪12、12の根元部12B、12Bを撓みやすい脆弱な構成としたことにより、両挟持片11、11の間にリブRを小さな力で挿入することができる。また、リブRにバネクリップ10が差し込まれて取り付けられた後に、このバネクリップ10に引き抜かれる方向(図7で見て下方向)の力がかけられても、両係止爪12、12をリブRとの係止状態を保ち続けるように撓ませやすくなるため、バネクリップ10をリブRから抜けないように保持する機能を保つことができる。
【0036】
また、各スリット11A、11Aのスリット幅W1、W1を部分的に広げることで各根元部12B、12Bの幅を部分的に狭めて脆弱部を形成する構成としたことにより、同時に、各根元部12B、12Bを支持する各スリット11A、11Aに臨む周縁部11B、11Bも撓みやすい脆弱な構成とすることができ、各係止爪12、12をより効果的に撓ませやすくすることができる。
【0037】
また、プレス加工によって生成される各ダレ12A1、12A1が各係合歯12A、12Aの当接縁部側にくるように打ち抜き方向を設定する簡単な構成により、バネクリップ10の挿入荷重をより低減させることができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について実施例1を用いて説明したが、本発明は上記実施例1以外にも各種の形態で実施できるものである。例えば、係止爪はその根元部の板幅だけが狭められた形状である必要はなく、例えば両側縁部が「ハ」字状に切り出されて根元部の板幅を狭めた台形状の形状であってもよい。また、係止爪は根元部で板幅が狭められた形状である必要はなく、例えば係止爪の根元部内にスリットや小孔を連設した構造などの別の脆弱構造を設けた構成であってもよい。また、係止爪は一対の挟持片の両方から突出している必要はなく、例えば一対の挟持片の一方側のみから係止爪が突出し、係止爪が突出していない側の挟持片に板状部材の板面を当接させて支持し、その反対側の板面にもう一方の挟持片から突出した係止爪を食い込ませるように押し付けて板状部材を抜けないように保持する構成であってもよい。
【0039】
また、係止爪はバネクリップの開口方向とは反対側に向かって面を延ばすように突出している必要はなく、例えば係止爪がリブの板面に対して垂直となる向きに突出し、この係止爪がリブの挿入によってバネクリップの開口方向とは反対側に向かうように押し撓まされる構成であってもよい。また、係止爪は挟持片から切り起こされている必要はなく、例えば係止爪が挟持片から曲げ加工のみで起こし上げられた構成であってもよい。この場合、係止爪は、挟持片と挟持片の縁部から延長して設けられた係止爪とをプレス加工により1枚の金属板から一体に打ち抜く第1の手順と、この打ち抜きの方向側の面が対向するように挟持片を曲げ加工する第2の手順と、対向した挟持片の間に向けて係止爪を曲げ加工して板状部材に当接する側の縁部にプレス加工によるダレを位置させる第3の手順と、によって起こし上げられる。
【0040】
また、係止爪はその先端部の係合歯を互いに噛み合うように突き合わせている必要はなく、例えば係止爪の先端部に係合歯が形成されておらず、係止爪の先端側の縁部をリブに食い込ませるようになっている構成や、各係止爪の先端部間にリブの板厚よりも狭い隙間が設定されている構成であってもよい。また、係止爪の当接縁部のダレはプレス加工により生成されるものである必要はなく、例えば係止爪の当接縁部を面取り加工することによって丸みを持った面を形成する構成であってもよい。また、クランプの構成を実施例1の構成に限定する必要はなく、例えば袋状に形成されたクリップ保持部に設けられた開口部からバネクリップを挿入してこのバネクリップをクランプに組み付ける構成や、紐状に形成された固定アームでワイヤーハーネスを結束することでクランプをワイヤーハーネスに固定する構成を用いることもできる。
【0041】
また、リブは合成樹脂により形成されている必要はなく、金属製の係止爪が食い込むことによって係止することができる素材であれば、本発明を適用することができる。また、リブの構成を実施例1の構成に限定する必要はなく、例えばリブの板厚が一様に形成された構成を用いることもできる。
【0042】
実施例1にかかるバネクリップ10は、図1および図2に示すように、自動車のインストゥルメントパネルI/Pに沿って配置される長尺状のワイヤーハーネスW/Hを、インストゥルメントパネルI/Pに取り付けて固定した状態を保持するために用いられるものである。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されたものではなく、板状部材に板面方向に差し込まれることでこの板状部材を板厚方向に挟持し、その板面に係止爪を押し付けて食い込ませた状態となって板状部材から抜けないように取り付けられる形式の金属製のバネクリップであれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 バネクリップ
11 挟持片
11A スリット
11B 周縁部
11C 孔部
11D 係止溝
12 係止爪
12A 係合歯
12A1 ダレ(当接縁部)
12A2 バリ
12B 根元部
20 クランプ
21 固定アーム
22 クリップ保持部
22A 保持片
22B 係止突起
22C ストッパー
22D 爪カバー
110 バネクリップ
111 挟持片
112 係止爪
112A 係合歯
I/P インストゥルメントパネル
R リブ(板状部材)
Rs 板面
T 粘着テープ
W/H ワイヤーハーネス
W1 スリット幅
W2 スリット幅


【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材に板面方向に差し込まれることで当該板状部材を板厚方向に挟持した状態となって取り付けられる金属製のバネクリップであって、
前記板状部材を互いの間に差し込み可能な一対の挟持片と、
前記一対の挟持片のうちの少なくとも一方から当該両挟持片の間に向かって突出する板状の係止爪と、を有し、
前記係止爪は、前記板状部材が前記一対の挟持片の間に差し込まれることで押されて撓み変形し、その弾発力によりその先端側の当接縁部を前記板状部材の板面に食い込ませるように押し付けて前記板状部材を抜けないように保持する構成とされ、
前記係止爪の根元部に当該係止爪を撓ませやすくする脆弱部が形成されていることを特徴とするバネクリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のバネクリップであって、
前記係止爪が前記少なくとも一方の挟持片から切り起こされて形成され、前記脆弱部は前記係止爪が切り起こされる根元部の前記挟持片に対する切り込みのスリット幅を他の部位よりも広げることで前記根元部の板幅を部分的に狭めた構成としたものであることを特徴とするバネクリップ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバネクリップであって、
前記係止爪は、その先端側の端面がプレス加工により板厚方向に打ち抜かれて形成され、前記プレス加工の打ち抜き方向が前記当接縁部の位置する側の面から裏面側に向かって打ち抜かれる設定とされることにより、前記プレス加工により生成されるダレが前記当接縁部に形成され、同じく生成されるバリが前記裏面側の縁部に形成されていることを特徴とするバネクリップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−135180(P2012−135180A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287555(P2010−287555)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】