説明

バリアフィルムとその製造方法

【課題】 従来よりも高いガスバリア性能を備え、かつ平滑性、密着性に優れ、大サイズに対応可能なガスバリア性薄膜積層体のバリアフィルムと、高い生産性を有するバリアフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】 基材上に、少なくともバリア層とポリマー層とを有するバリアフィルムにおいて、該ポリマー層が重合性モノマーを含有する塗布液をミスト状で該基材の表面に噴霧した後、硬化させて形成されたものであることを特徴とするバリアフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明なバリアフィルムとその製造方法に関し、詳しくは、可視光域の透過性に優れ、かつバリア性の高いバリアフィルムとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、エレクトロルミネッセンス(EL)基板等で使用されている。特に、液晶表示素子、EL素子などへの応用が進んでいる透明基材には、近年、軽量化、大型化という要求に加え、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わり、重く割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって、透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。
【0003】
また、プラスチックフィルムは上記要求に応えるだけでなく、ロールトゥロール方式が可能であることから、ガラスよりも生産性が良くコストダウンの点でも有利である。
【0004】
しかしながら、透明プラスチック等のフィルム基材は、ガラスに対しガスバリア性が劣るという問題を抱えている。ガスバリア性が劣る基材を用いると、水蒸気や空気が浸透し、例えば、液晶セル内の液晶を劣化させ、表示欠陥となって表示品位を劣化させる要因となる。
【0005】
この様な問題を解決するため、例えば、フィルム基板上に金属酸化物薄膜を形成してガスバリア性を備えたフィルム基材とすることが知られている。包装材料や液晶表示素子に使用されるガスバリア性フィルムとしては、例えば、プラスチックフィルム上に酸化珪素を蒸着したもの(例えば、特許文献1参照。)、酸化アルミニウムを蒸着したもの(例えば、特許文献2参照。)が知られており、いずれも1g/m2/day程度の水蒸気バリア性を有する。
【0006】
近年では、更なるガスバリア性が要求される有機ELディスプレイや、液晶ディスプレイの大型化、高精細ディスプレイ等の開発により、フィルム基板へのガスバリア性能についても水蒸気バリアで0.1g/m2/day程度まで要求が上がってきている。
【0007】
これに応えるため、より高いバリア性能が期待できる手段として、低圧条件下でグロー放電させて生じるプラズマを用いて薄膜を形成させるスパッタリング法やCVD法による成膜検討が行われている。また、有機膜と無機膜とを交互に積層した構造を有するバリア膜を、真空蒸着法により作製する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
しかしながら、これらの薄膜形成法は、減圧条件下で処理を行う必要があり、低圧を得るために、容器は高価な真空チャンバーを必要とし、更に、真空排気装置を設置する必要がある。また、真空中で処理するため、大面積の基板に処理しようとすると、大きな真空容器を使用しなければならず、かつ、真空排気装置も大出力のものが必要となる。その結果、設備が極めて高価なものになると同時に、吸水率の高いプラスチック基板の表面処理を行う場合、吸水した水分が気化するため、所定の真空度を得るのに長時間を要し、処理コストが高くなるという問題点もあった。さらに、一回の処理を行う毎に、真空容器の真空を壊して取り出し、有機膜を形成するなどの次工程を大気圧下で行う必要があるため、特に、水蒸気バリア性を得るために、有機膜、無機膜を多層化すればするほど、生産性が大きく損なわれていた。
【0009】
上記課題に対し、有機膜/無機膜の交互積層構造を有するバリアフィルムの形成において、大気圧の近傍下で、放電プラズマ処理を利用し、無機膜を形成する方法が開示されており、また有機膜の形成方法として塗布や真空成膜法を挙げている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、この方法では無機膜を大気圧プラズマ法で形成しているにもかかわらず、有機膜を乾燥工程が必要な塗布や真空チャンバーが必要な真空成膜法で形成することは、高い生産性を達成するという観点からふさわしくない。また、開示されている無機膜の形成方法では、放電ガスに高価なアルゴンを用いているため、高い原料コストの原因になり、放電プラズマ処理条件として、特開2001−49443号公報に記載されている公知の単周波数のパルス電界を用いる処理条件を使用している為、プラズマ密度が低く、良質な膜が得られないばかりか、製膜速度も遅く、生産性が非常に低い。
【0010】
一方、大気圧近傍の圧力下の放電プラズマを用いて有機膜(プラズマ重合膜)を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献5、6参照。)。しかしながら、これらの方法は、有機膜および無機膜を含む積層構造を有するガスバリア性積層体において重要であるガスバリア性や曲げに対するバリア性の劣化については言及されていない。
【0011】
また、このような高いバリア性を要求するプラスティックフィルムにおいては、フィルム表面に付いた異物や製膜中に発生したパーティクルがピンホールを発生させ、高いバリア性を阻害することが分かっているが、1μm以下の微小サイズの異物を大面積で完全に排除することは生産性に大きく負荷をもたらすことが判明し、大面積のガスバリアフィルムを形成する上での大きな障害となっていた。
【特許文献1】特公昭53−12953号公報
【特許文献2】特開昭58−217344号公報
【特許文献3】世界公開第00/026973号パンフレット
【特許文献4】特開2003−191370号公報
【特許文献5】特公平2−48626号公報
【特許文献6】特開平10−340797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高いガスバリア性能を備え、かつ平滑性、密着性に優れ、大サイズに対応可能なバリアフィルムと、高い生産性を有するバリアフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0014】
(請求項1)
基材上に、少なくともバリア層とポリマー層とを有するバリアフィルムにおいて、該ポリマー層が重合性モノマーを含有する塗布液をミスト状で該基材の表面に噴霧した後、硬化させて形成されたものであることを特徴とするバリアフィルム。
【0015】
(請求項2)
波長が400以上、700nm以下の領域における平均光透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1記載のバリアフィルム。
【0016】
(請求項3)
前記基材と前記バリア層との間に、少なくとも1層の前記ポリマー層を有することを特徴とする請求項1または2に記載のバリアフィルム。
【0017】
(請求項4)
前記ポリマー層の少なくとも1層が、前記基材と接していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【0018】
(請求項5)
前記ポリマー層の少なくとも1層が、前記バリア層の少なくとも1層と接していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【0019】
(請求項6)
前記ポリマー層の厚みが、0.5μm以上、10μm以下であることを特徴とする請求項4記載のバリアフィルム。
【0020】
(請求項7)
前記ポリマー層の中心線平均表面粗さRaが、10nm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【0021】
(請求項8)
前記ポリマー層を形成する重合性モノマーが、メタアクリル化合物、アクリル化合物、エポキシ化合物及びオキセタン化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【0022】
(請求項9)
基材上に、少なくともバリア層とポリマー層とを有するバリアフィルムの製造方法において、該ポリマー層は、重合性モノマーを含有する塗布液をミスト状で該基材の表面に噴霧した後、硬化処理を施して形成することを特徴とするバリアフィルムの製造方法。
【0023】
(請求項10)
前記基材と前記バリア層との間に、少なくとも1層の前記ポリマー層を形成することを特徴とする請求項9記載のバリアフィルムの製造方法。
【0024】
(請求項11)
前記ポリマー層の少なくとも1層が、前記基材と接していることを特徴とする請求項9または10に記載のバリアフィルムの製造方法。
【0025】
(請求項12)
前記硬化処理が、紫外線照射処理であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載のバリアフィルムの製造方法。
【0026】
(請求項13)
前記硬化処理が、大気圧プラズマ処理であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載のバリアフィルムの製造方法。
【0027】
(請求項14)
前記塗布液のミストの平均粒径が、5.0μm以下であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載のバリアフィルムの製造方法。
【0028】
(請求項15)
前記塗布液のミストの平均粒径が、1.0μm以下であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載のバリアフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、高いガスバリア性を有するガスバリア性薄膜積層体であり、曲げることで水蒸気バリア性が低下しないという特性を備え、平滑性及び形成した薄膜と基材との密着性に優れ、大面積で、従来のフィルムに比べ、数倍から数十倍の生産性で作製することが可能なバリアフィルムとその製造方法を提供することができる。更に、本発明のバリアフィルムを、例えば、表示用素子として適用することにより、軽量で耐久性に優れたディスプレイを安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0031】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基材上に、少なくともバリア層とポリマー層とを有するバリアフィルムにおいて、該ポリマー層が重合性モノマーを含有する塗布液をミスト状で該基材の表面に噴霧した後、硬化させて形成されたものであることを特徴とするバリアフィルムあるいはその製造方法により、高いガスバリア性を有するガスバリア性薄膜積層体であり、曲げることで水蒸気バリア性が低下しないという特性を備え、平滑性及び形成した薄膜と基材との密着性に優れ、大面積で、従来のフィルムに比べ、数倍から数十倍の生産性で作製することが可能なバリアフィルムとその製造方法を提供することができ、更には、例えば、表示用素子として適用することにより、軽量で耐久性に優れたディスプレイを安価に提供することができるできることを見出し、本発明に至った次第である。
【0032】
すなわち、高いガスバリア性が要求されるバリアフィルムの作製過程、例えば、基材上に薄膜を形成する工程では、基材表面に付着した異物、例えば、微小なゴミや薄膜形成過程に発生した微粒子等により、ピンホールを誘発するすることがあり、本発明者はそのピンホールの低減手段について鋭意検討を進めた結果、1μm以上の比較的サイズの大きな異物に対しては、粘着ローラーやエアーブラシ等で強制的に異物を除去し、一方、1μm以下の極微小サイズの異物については、重合性モノマーを含有する塗布液をミスト状に基材上に噴霧し、次いで、付与した塗布液のレベリング(塗膜の平準化)を行った後、乾燥後にエネルギー照射処理を行って硬化させ、極微小な異物を膜中に埋め込んだポリマー層を形成し、その表面を平準化さたポリマー層上にバリア層を形成することにより、大画面で欠陥の無いバリアフィルムを連続して生産できることを見出した。
【0033】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0034】
《ポリマー層》
本発明に係るポリマー層は、重合性モノマーを含む塗布液をミスト状でして、基材表面に噴霧した後、硬化させて形成される。
【0035】
本発明に係るポリマー層は、基材とバリア層との間に、少なくとも1層設けることが好ましく、更には少なくとも1層が、基材と接していることが好ましい。上記の様に、基材接する状態でポリマー層を直接形成することにより、基材表面に付着した異物を塗膜中に取り込んだ状態とし、その結果、ピンホールとの点状故障を飛躍的に低減することができる。従って、形成するポリマー層の膜厚としては、基材表面に付着した異物粒径を超える膜厚であることが好ましいが、粗大な異物、例えば、1μm以上の大きな異物に対しては、粘着ローラーやエアーブラシ等で強制的に異物を除去することができ、本発明に係るポリマー層による遮蔽対象となる異物サイズは、1μm以下の極微小サイズであり、そのような観点からは、ポリマー層の膜厚は0.5μm以上、10μm以下であることが好ましい。
【0036】
また、本発明に係るポリマー層は、少なくとも1層のバリア層と接していることが好ましい。本発明に係るポリマー層は、基材上に塗設した後、レベリング効果により極めて平滑性の高い塗膜であるため、その上に塗設するバリア層の平面均一性を高めることができる。従って、本発明に係るポリマー層の中心線平均表面粗さRaとしては、10nm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.1nm以上、10nm以下であり、特に好ましくは0.1nm以上、2.0nm以下である。
【0037】
本発明でいう中心線平均表面粗さRa(nm)とは、JIS B601に準じて求めた値であり、微小面積における微小な凹凸状態を表すもので、本発明では、原子間力顕微鏡(AFM)で求めた値を用いる。
【0038】
原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)は、セイコーインスツルメンツ社製SPI3800NプローブステーションおよびSPA400多機能型ユニットを使用し、約1cm角の大きさに切り取った試料を、ピエゾスキャナー上の水平な試料台上にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際の試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえる。ピエゾスキャナーは、XY20μm、Z2μmが走査可能なものを使用する。カンチレバーは、セイコーインスツルメンツ社製シリコンカンチレバーSI−DF20で、共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのものを用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。測定領域2μm角を、1(or2)視野、走査周波数1Hzで測定する。
【0039】
中心線平均粗さ(Ra)は、得られた粗さ曲線から、その中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線の方向をX軸、縦倍率の方向(X軸に垂直)をY軸とし、粗さ曲線をY=F(X)とおいたとき、
【0040】
【数1】

【0041】
で与えられる値と定義されている。
【0042】
本発明に係るポリマー層を形成する重合性モノマーとしては、分子内に少なくとも1つの不飽和結合または環状構造を有する有機化合物を好ましく用いることができ、その中でも、特に、メタアクリル化合物、エポキシ化合物またはオキセタン化合物のモノマーまたはオリゴマーを好ましい。
【0043】
本発明に係る不飽和結合を有する有機化合物としては、例えば、ビニルエステル類として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、バレリアン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、エナント酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル等、ビニルエーテル類として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等、スチレン類として、スチレン、4−〔(2−ブトキシエトキシ)メチル〕スチレン、4−ブトキシメトキシスチレン、4−ブチルスチレン、4−デシルスチレン、4−(2−エトキシメチル)スチレン、4−(1−エチルヘキシルオキシメチル)スチレン、4−ヒドロキシメチルスチレン、4−ヘキシルスチレン、4−ノニルスチレン、4−オクチルオキシメチルスチレン、2−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、4−プロポキシメチルスチレン、マレイン酸類として、ジメチルマレイン酸、ジエチルマレイン酸、ジプロピルマレイン酸、ジブチルマレイン酸、ジシクロヘキシルマレイン酸、ジ−2−エチルヘキシルマレイン酸、ジノニルマレイン酸、ジベンジルマレイン酸等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0044】
本発明で有用なメタアクリル化合物としては、特に限定はないが、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリドアクリレート、1,3−ジオキサンアルコールのε−カプロラクトン付加物のアクリレート、1,3−ジオキソランアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ハイドロキノンジアクリレート、レゾルシンジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレートのε−カプロラクトン付加物、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε−カプロラクトン付加物、ピロガロールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル酸、或いはこれらのアクリレートをメタクリレートに代えたメタクリル酸等を挙げることができる。
【0045】
本発明に有用なエポキシ化合物は、特に限定されないが、芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルであり、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。また、脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられ、2種以上組み合わせて使用することができる。
【0046】
本発明で有用なオキセタン化合物としては、特には限定されないが、例えば、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ノルマルブチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ベンジルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシブチル−3−メチルオキセタンなどを挙げることができる。これらの化合物のうち、入手の容易性などの点から、オキセタンモノアルコール化合物として、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンが好ましい。
【0047】
これらの各有機化合物は、有機溶媒に溶解させ、コーティング液として使用する。ここで用いる有機溶媒は、これらの有機化合物が溶解すればよく、特に限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酪酸エチルなどのエステル類、グリコールエーテル類(プロピレングリコールモノ(炭素原子数1〜4)アルキルエーテル(具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等)、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート))、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の炭化水素類その他の溶媒などが挙げられる。また、これらを適宜混合した溶媒が好ましく用いられる。
【0048】
本発明において、薄膜形成材料を含有する液体は、基材上に付与されたり、あるいは直接、エネルギー処理する空間に供給される。
【0049】
一般に、基材上に付与する場合は、ディッピング等の塗布により塗布膜として付与、もしくは噴霧等により液滴として付与するが、本発明においては、重合性モノマーを含有する塗布液をミスト状で基材表面に噴霧して付与することを特徴とする。
【0050】
また、重合性モノマーを含有する塗布液を、ミスト状でエネルギー処理空間に供給する場合は、プラズマ反応性、生産性の観点から、液滴の平均粒径は5μm以下、好ましくは1μm以下である。液滴の平均粒径の測定方法は、液滴群にレーザー光を照射し、そこから発せられる回折・散乱光の強度分布パターンから粒度分布を算出する方法が簡便であり、東日コンピュータアプリケーションズ株式会社のLDSA−1500A等が利用できる。
【0051】
次いで、本発明に係る重合性モノマーを含有する塗布液を、基材上にミスト状で付与する液滴形成方法について述べる。
【0052】
図6は、本発明に好ましく用いられる液滴発生器システムの概略構成を示す図である。
【0053】
液滴発生器システム112は、重合性モノマーを含有するポリマー層形成用塗布液(以下、ポリマー層形成用塗布液という)を貯留する原料貯留部、即ち加圧リザーバ114、質量流量制御装置115、及び液滴発生器116、加速システム118、電荷中和システム121より構成される。
【0054】
ガスシステム172は、加圧ガス、好ましくは乾燥窒素または他の不活性ガスをライン134を介して加圧リザーバ114に、ポリマー層形成用塗布液を加圧リザーバ114から質量流量制御装置115に圧送するのに十分な圧力で提供する。加圧リザーバ114は、バルブ141を開放することにより加圧される。加圧された加圧リザーバ114をライン135を介して質量流量制御装置115に連結し、質量流量制御装置115をライン136を介して液滴発生器116に連結する。この質量流量制御装置115は、液滴発生器116へのポリマー層形成用塗布液の流れを約0.05〜1cm3/分まで制御できる。ポリマー層形成用塗布液は、入口チューブ136を通って液滴発生器116に移動する。随意には、戻しチューブ137が、液滴状にならなかった、あるいは凝集したポリマー層形成用塗布液を液滴発生器116から加圧リザーバ114に戻す。
【0055】
本発明の好ましい実施例では、液滴状にならなかった凝集したポリマー層形成用塗布液の量は比較的少なく、即ち、ポリマー層形成用塗布液全体の約20%またはそれ以下であり、かくして凝集物は再使用されるのでなく、付着後に液滴発生器116をパージすることによって簡単に処分される。これにより、ポリマー層形成用塗布液の粘度の増大といった潜在的問題をなくすことができる。次いで、バルブ139及び140を開放し、加圧ガスをガスライン142を通して流し、液滴発生器116に送る。ライン142内のガス圧は、所定の圧力に自動的に調節される。好ましくは、この圧力は、2.76×105〜5.52×105Paであり、さらに好ましくは4.14×105Paである。好ましくは、ガスは、乾燥窒素等の不活性ガスと、容易にイオン化されるガス、好ましくは酸素または二酸化炭素、最も好ましくは酸素との混合物である。酸素を加え、液滴の電荷を高める。酸素は容易にイオン化し、ガス粒子が室温のガス中で連続的に衝突するため、電荷を液体液滴液滴に伝達するのを助ける。好ましくは、ガス中の酸素は1〜15容量%であり、最も好ましくは5〜10容量%である。好ましい実施例のプロセスでは、95%乾燥窒素及び5%酸素を使用した。
【0056】
次に、バルブ147を開放し、液滴発生器116で発生された液滴を導管149を介して大気圧プラズマ処理装置のチャンバ120内の基材上へ供給することができる。
【0057】
以下、さらに詳細に説明する。
【0058】
電圧を加えて液滴に電気フィルタを掛けるか、あるいは液滴を帯電させるためのいずれかを行うため、またはこの両方を行うことができる。液滴発生器システム112に加えられる電圧は、電力発生器159によって所定電圧に自動制御される。同様に、帯電させた粒子を、電源164から電気ケーブル166を介して加えられた電圧によって、大気圧プラズマ処理装置のチャンバ120内で加速する。加速電圧は、電源164を介して自動制御される。随意であるが、電荷中和器システム121が、基板に付着する液滴粒子とは逆の電荷に帯電させた粒子を発生する。電荷中和器システムは、イオン化粒子源169を含む。供給バルブ155Aを開放した後、ガスシステム155のバルブ155Bをコンピューター制御し、イオン化粒子源169及びガスライン156を通るガス流を発生し、イオン化粒子をチャンバ内に導入し、このチャンバでイオン化粒子を基板に差し向ける。またガスシステム155を使用して乾燥窒素を基板の下側に差し向け、ポリマー層形成用塗布液が基板の下側に付着しないようにしてもよい。ガスシステム155は、さらに、追加の乾燥窒素または他の不活性ガスをチャンバ120にガスライン156を介して入れるように制御できる。これは、圧力を所望のレベルに維持するのに必要な場合に行われる。液滴の装入を補助するために必要である場合には、追加の酸素または二酸化炭素を加えることもできる。
【0059】
以上のように液滴を生成することで、図5(B)に示す非常に粒径の小さい微粒子の液滴を生成することができる。
【0060】
ここで用いる塗布液は、液滴の微粒子化、凝集防止、塗膜のハジキ防止の観点から、表面張力の低い溶媒に溶解されていることが好ましく、それ故、ミストの噴霧も大気圧あるいはその近傍で行うことが好ましい。
【0061】
(硬化処理)
本発明に係るポリマー層は、上述の様に基材上に、ポリマー層形成用塗布液をミスト状に付与した後、その塗膜面に活性エネルギー線を照射して硬化処理を施す。
【0062】
本発明で適用可能な硬化処理に用いることのできる活性エネルギー線としては、紫外線照射や電子線照射が一般的である。紫外線照射の場合、照射強度で20〜300mJ/cm2が好ましく、照射時間は0.5秒〜5分が好ましく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率、作業効率から3秒〜2分がより好ましい。
【0063】
また、本発明においては、紫外線や電子線以外のエネルギー処理として、大気圧プラズマ処理も効果的である。
【0064】
本発明でいう大気圧プラズマ処理とは、大気圧または大気圧近傍の圧力下、対向する電極間にガスを供給し、前記電極間に高周波電界を発生させることによって前記ガスを励起ガスとし、前記励起ガスに、本発明に係るポリマー層形成用塗布液をミスト状に付与して形成した塗膜を晒す処理のことである。これにより、前記ポリマー層形成用塗布液が活性化及び硬化して、基材上で薄膜を形成する。
【0065】
大気圧プラズマ処理に用いられる電極、電極間に供給されるガス、高周波電界の発生のさせ方等については、WO02/48428号や特開2004−68143号公報に記載のものを用いることができる。
【0066】
大気圧もしくはその近傍の圧力下の圧力とは、20〜110kPa程度であり、93〜104kPaが好ましい。
【0067】
電極としては、金属母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。少なくとも対向する印加電極とアース電極の片側に誘電体を被覆すること、さらに好ましくは、対向する印加電極とアース電極の両方に誘電体を被覆することである。誘電体としては、比誘電率が6〜45の無機物であることが好ましく、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。
【0068】
本発明において、電極間に供給するガスは、少なくとも放電ガスを含有する。放電ガスとは、電圧を印加することにより放電を起こすことのできるガスである。放電ガスとしては、窒素、希ガス、水素ガス等があり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いてもかまわない。本発明において、放電ガスとして好ましいのは窒素である。放電ガスの50〜100体積%が窒素ガスであることが好ましい。このとき、放電ガスとして窒素以外の放電ガスとしては、希ガスを50体積%未満含有することが好ましい。また、放電ガスの量は、放電空間に供給する全ガス量に対し、90〜99.9体積%含有することが好ましい。
【0069】
電極間に供給するガスは、上記放電ガス以外に、薄膜形成の反応を促進する添加ガスを含有してもよい。添加ガスとしては、水素、アンモニア等を挙げることができるが、水素が好ましく、これらから選択される成分を混合させるのが好ましい。その含有量はガス全量に対して0.01〜5体積%含有させることが好ましく、それによって重合性モノマーの重合反応が促進され、かつ、緻密で良質な薄膜を形成することができる。
【0070】
電極間に供給するガスは、電圧を印加されることによって、それ自体は活性化して励起ガスとなる。そして、本発明に係るポリマー層形成用塗布液が、前記励起ガスに晒されると、前記液体は基材上で薄膜を形成できうる状態に変化すると推定される。
【0071】
電極間に発生させる高周波電界は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であっても構わないが、本発明の効果を高く得るためには、連続したサイン波であることが好ましい。高周波電界の周波数は、好ましくは100〜150MHzである。
【0072】
また、電極間に供給する電力密度は、好ましくは1.0W/cm2以上であり、上限値としては、好ましくは50W/cm2以下、さらに好ましくは20W/cm2以下である。
【0073】
なお、電極間に供給するガスが放電ガスとして窒素を含有する場合は、大きい放電開始電界強度が必要となるため、2種類の高周波電界を重畳することが好ましい。このようにすることによって、放電ガスが窒素であっても、高密度なプラズマの発生が達成でき、良質な薄膜が得られ、高速に製膜でき、さらには、安価、かつ安全に運転でき、環境負荷の低減も達成できる。2種類の高周波電界は、以下の関係を満たすことで、安定な放電状態を維持することができる。
【0074】
すなわち、第1の高周波電界の周波数ω1より第2の高周波電界の周波数ω2が高く、かつ、前記第1の高周波電界の強さV1、前記第2の高周波電界の強さV2及び放電開始電界の強さIVとの関係が、V1≧IV>V2、または、V1>IV≧V2を満たすことである。ここで、第1の高周波電界の周波数としては、200kHz以下が好ましく用いることができる。下限は1kHz程度が望ましい。一方、第2の高周波電界の周波数としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2の高周波電界の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、高速に処理ができる。上限は200MHz程度が望ましい。
【0075】
このように電極間に発生させた電界中に、基材に付与した重合性モノマーを含有する塗布液もしくは基材に付与する前の重合性モノマーを含有する塗布液を晒し、活性化して、基材上で薄膜化させる。
【0076】
次いで、重合性モノマーを含有する塗布液のミスト形成手段として、超音波噴霧器を用いた塗布液の微小液滴化方法と、その超音波噴霧器を備えた大気圧プラズマ処理装置について、図1〜図4を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、これらに限られるものではない。
【0077】
図1は、重合性モノマーを含有する塗布液を液滴として基材上に付与もしくは電極間に供給する場合に用いられる超音波噴霧器の概略図である。これにより重合性モノマーを含む微小液滴(液滴)を形成することができる。
【0078】
図1において、1は超音波噴霧器、11は窒素ガスを導入する導入管、12は液滴原料としての重合性モノマーを含有する塗布液Lを貯留する原料貯留部、13は超音波発生部、14は超音波発生部13に接続された電源、15は発生した液滴を放出する放出管である。導入管11から原料貯留部12に窒素ガスを導入し、かつ、電源14をONすることにより超音波発生部13から超音波を発生させると、液滴が発生する。このようにして発生した液滴は、放出管15を通って超音波噴霧器1外へ放出され、図示しない大気圧プラズマ装置の適宜の場所において液滴がミスト状で噴霧されることになる。
【0079】
図2は、超音波噴霧器を備えた枚葉式の大気圧プラズマ処理装置の概略図である。図2において、1は図1と同様の超音波噴霧器である。超音波噴霧器1から下部方向に噴霧された液滴Mは、噴霧空間Aで基材S上に付与されることになる。21は固定された第1電極、22は基材Sを支持し、図中の白矢の方向に反復運動することが可能な第2電極である。第1電極21と第2電極22とは所定のギャップを有して対向して設けられ、このギャップが放電空間Dを構成する。第1電極21と第2電極22は、それぞれ負荷であるフィルタ27Aまたは27Bと、さらにマッチングボックス26Aまたは26Bと、さらに高周波電源25Aまたは25Bと接続され、接地されている。フィルタは、異なる2種類の高周波電界を前記放電空間で重畳するため、互いの電源に互いの高周波が影響を与えないために挿入するものである。また、マッチングボックスは、高周波電源のエネルギーを有効に利用するため、負荷の持つリアクタンス成分をキャンセルし、インピーダンスを補正するために挿入している。
【0080】
高周波電源25Aにより発生させる第1の高周波電界及び高周波電源25Bにより発生させる第2の高周波電界は、次の関係を満たす。
【0081】
第1の高周波電界の周波数ω1より第2の高周波電界の周波数ω2が高く、かつ、前記第1の高周波電界の強さV1、前記第2の高周波電界の強さV2及び放電開始電界の強さIVとの関係が、V1≧IV>V2、または、V1>IV≧V2を満たす。前述したように、この関係を満たす2種類の高周波電界を重畳することで、放電開始電界強度が大きい窒素等のガスを用いた場合でも、安定して高密度な放電状態を達成することができ、質の高い製膜を行うことができる。
【0082】
例えば、第1の高周波電界としては周波数100kHzの高周波を、それと対向する第2の高周波電界としては周波数13.56MHzの高周波を用いる。そして、電極間には、窒素ガスに対し酸素ガス0.1体積%、水素ガス1体積%の混合ガスを導入し放電空間を形成させる。
【0083】
基材Sは、第2電極22上に載置され、噴霧空間Aと放電空間Dとの間を反復移動する。噴霧空間Aでは重合性モノマーを含有する塗布液の液滴が基材S上に付与される。放電空間Dでは、窒素等の放電ガスが供給され、2種類の高周波電界が重畳され、高密度なプラズマが発生しており、ここに液滴が付与された基材Sが晒される。これを繰り返すことによってポリマー層が形成される。
【0084】
図3は、超音波噴霧器を備えたロール式の大気圧プラズマ処理装置の概略図である。図3中、参照符号で図2と同一であるものは、図2で説明した部材と同じである。図3においてSはプラスチックフイルム等の長尺の基材である。基材Sは第2電極であるロール電極22Rの周囲に巻回され図中の矢印の方向に搬送されている。超音波噴霧器1から噴霧される重合性モノマーを含有する塗布液の液滴Mは、噴霧空間Aにおいて、基材S上に付与される。その後、第1電極21と第2電極22Rとの間で形成される放電空間Dを、液滴Mが付与された基材Sが通過すると、ポリマー層が形成される。
【0085】
図4は、本発明に用いることのできる別のタイプの大気圧プラズマ処理装置の概略図である。図4において、大気圧プラズマ処理装置30は、二つの電源を有する電界印加手段40、ガス・液滴供給手段50、電極温度調節手段60を有している装置である。
【0086】
ロール電極(第1電極)35と複数の角筒型電極(第2電極)36との対向電極間(放電空間)32に、ガス・液滴供給手段50から供給された重合性モノマーを含有する微小液滴(液滴)と放電ガスである窒素の混合物MGが供給され、ここで活性化されて、基材F上に堆積して薄膜を形成する。
【0087】
ロール回転電極(第1電極)35と角筒型電極(第2電極)36との間の放電空間(対向電極間)32に、ロール回転電極(第1電極)35には第1電源41から周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1の高周波電界を、また角筒型電極(第2電極)36には第2電源42から周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2の高周波電界をかけるようになっている。
【0088】
ロール回転電極(第1電極)35と第1電源41との間には、第1フィルタ43が設置されており、第1フィルタ43は第1電源41から第1電極への電流を通過しやすくし、第2電源42からの電流をアースして、第2電源42から第1電源への電流を通過しにくくするように設計されている。また、角筒型電極(第2電極)36と第2電源42との間には、第2フィルタ44が設置されており、第2フィルター44は、第2電源42から第2電極への電流を通過しやすくし、第1電源41からの電流をアースして、第1電源41から第2電源への電流を通過しにくくするように設計されている。
【0089】
なお、本発明においては、ロール回転電極35を第2電極、また角筒型電極36を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。第1電源は第2電源より高い高周波電界強度(V1>V2)を印加することが好ましい。また、周波数はω1<ω2となる能力を有している。
【0090】
また、電流はI1<I2となることが好ましい。第1の高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3〜20mA/cm2、さらに好ましくは1.0〜20mA/cm2である。また、第2の高周波電界の電流I2は、好ましくは10〜100mA/cm2、さらに好ましくは20〜100mA/cm2である。
【0091】
ガス・液滴供給手段50において、ガス・液滴発生装置51で発生させたガス・液滴MGは、流量を制御して給気口52より大気圧プラズマ処理容器31内に導入する。
【0092】
基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されてくるか、または前工程から搬送されてきて、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴されてくる空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回しながら角筒型電極36との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型電極(第2電極)36との両方から電界をかけ、対向電極間(放電空間)32で放電プラズマを発生させる。基材Fはロール回転電極35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。基材Fは、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
【0093】
放電処理済みの処理排液滴G′は排気口53より排出する。
【0094】
薄膜形成中、ロール回転電極(第1電極)35及び角筒型電極(第2電極)36を加熱または冷却するために、電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管61を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、68及び69は大気圧プラズマ処理容器31と外界とを仕切る仕切板である。
【0095】
図4に示した各角筒型電極36は、円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0096】
対向する第1電極及び第2の電極の電極間距離は、電極の一方に誘電体を設けた場合、該誘電体表面ともう一方の電極の導電性の金属質母材表面との最短距離のことを言う。双方の電極に誘電体を設けた場合、誘電体表面同士の距離の最短距離のことを言う。電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電界強度の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmである。
【0097】
大気圧プラズマ処理容器31は、パイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたはステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。
【0098】
以下に、本発明に係る大気圧プラズマ処理装置に適用可能な高周波電源を例示する。
【0099】
大気圧プラズマ処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
A1 神鋼電機 3kHz SPG3−4500
A2 神鋼電機 5kHz SPG5−4500
A3 春日電機 15kHz AGI−023
A4 神鋼電機 50kHz SPG50−4500
A5 ハイデン研究所 100kHz* PHF−6k
A6 パール工業 200kHz CF−2000−200k
A7 パール工業 400kHz CF−2000−400k
等の市販のものを挙げることができ、何れも使用することができる。
【0100】
また、第2電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
B1 パール工業 800kHz CF−2000−800k
B2 パール工業 2MHz CF−2000−2M
B3 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
B4 パール工業 27MHz CF−2000−27M
B5 パール工業 150MHz CF−2000−150M
等の市販のものを挙げることができ、何れも好ましく使用できる。
【0101】
なお、上記電源のうち、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
【0102】
本発明においては、このような電界を印加して、均一で安定な放電状態を保つことができる電極を大気圧プラズマ処理装置に採用することが好ましい。
【0103】
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極(第2の高周波電界)に1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成液滴に与え、薄膜を形成する。第2電極に供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm2、より好ましくは20W/cm2である。下限値は、好ましくは1.2W/cm2である。なお、放電面積(cm2)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0104】
また、第1電極(第1の高周波電界)にも、1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給することにより、第2の高周波電界の均一性を維持したまま、出力密度を向上させることができる。これにより、さらなる均一高密度プラズマを生成でき、さらなる製膜速度の向上と膜質の向上が両立できる。好ましくは5W/cm2以上である。第1電極に供給する電力の上限値は、好ましくは50W/cm2である。
【0105】
ここで高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側(第2の高周波電界)は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0106】
《基材》
本発明のバリアフィルムに用いられる基材について説明する。
【0107】
本発明に用いられる基材としては、板状、シート状またはフィルム状の平面形状のもの、あるいはレンズその他成形物等の立体形状のもの等の薄膜をその表面に形成できるものであれば特に限定はない。基材が静置状態でも移送状態でもプラズマ状態の混合ガスに晒され、均一の薄膜が形成されるものであれば基材の形態または材質には制限ない。形態的には平面形状、立体形状でもよく、平面形状のものとしては、ガラス板、樹脂フィルム等を挙げることができる。材質的には、樹脂等を使用できる。具体的には、樹脂としては、樹脂レンズ、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板等を挙げることができる。
【0108】
樹脂フィルムは、本発明に係る大気圧プラズマ処理装置の電極間または電極の近傍を連続的に移送させてポリマー層あるいはバリア層を形成することができるので、スパッタリングのような真空系のようなバッチ式でない、大量生産に向き、連続的な生産性の高い生産方式として好適である。
【0109】
樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂レンズ、樹脂成形物等成形物の材質としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等を挙げることができる。
【0110】
これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することもできる。中でもゼオネックスやゼオノア(日本ゼオン(株)製)、非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルムのARTON(ジェイエスアール(株)製)、ポリカーボネートフィルムのピュアエース(帝人(株)製)、セルローストリアセテートフィルムのコニカミノルタタックKC4UX、KC8UX(コニカミノルタオプト(株)製)等の市販品を好ましく使用することができる。さらに、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォン等の固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延製膜、溶融押し出し製膜等の条件、さらには縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより使用することができるものを得ることができる。
【0111】
これらのうち、光学的に等方性に近いセルロースエステルフィルムが光学素子に好ましく用いられる。セルロースエステルフィルムとしては、上記のようにセルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられるものの一つである。セルローストリアセテートフィルムとしては、市販品のコニカミノルタタックKC4UX等が有用である。
【0112】
これらの樹脂の表面にゼラチン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂等を塗設したものも使用できる。またこれら樹脂フィルムのバリア層塗設面側に防眩層、クリアハードコート層、防汚層等を設けてもよい。また、必要に応じて接着層、アルカリバリアコート層や耐溶剤性層等を設けてもよい。
【0113】
《バリア層》
本発明のバリアフィルムにおいては、基材上に、少なくとも1層のバリア層を有し、好ましくは、基材上に本発明に係るポリマー層をミスト法及び硬化処理を施した後、その上にバリア層が設けられている。
【0114】
本発明に係るバリア層は、様々な方法により形成することができるが、本発明においては、上述の大気圧プラズマ法を用いて、バリア層を製膜することが好ましい。
【0115】
大気圧プラズマ法を用いてのバリア層の形成においては、緻密な無機膜を製膜することが望ましく、特に本発明に係るバリア層の形成に使用する無機膜の原料(薄膜形成成分)としては、有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等を挙げることができる。
【0116】
本発明に有用な有機金属化合物は、下記の一般式(I)で表される化合物が好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0117】
一般式(I)
1xMR2y3z
上記一般式(I)において、Mは金属(例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等)を表し、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン配位基、β−ケトカルボン酸エステル配位基、β−ケトカルボン酸配位基及びケトオキシ基(ケトオキシ配位基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、何れも0または正の整数である。
【0118】
1で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。R2で表されるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることができる。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。R3で表されるβ−ジケトン配位基、β−ケトカルボン酸エステル配位基、β−ケトカルボン酸配位基及びケトオキシ基(ケトオキシ配位基)から選ばれる基としては、β−ジケトン配位基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸エステル配位基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸配位基として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることができ、またケトオキシ配位基として、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることができる。これらの基の炭素原子数は、上記の有機金属示化合物を含んで、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
【0119】
本発明においては、取り扱いの観点から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも一つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてR2のアルコキシ基を少なくとも一つを含有する有機金属化合物、またR3のβ−ジケトン配位基、β−ケトカルボン酸エステル配位基、β−ケトカルボン酸配位基及びケトオキシ基(ケトオキシ配位基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する金属化合物が好ましい。
【0120】
具体的な有機金属化合物について以下に示す。
【0121】
有機珪素化合物としては、例えば、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルシランジ(2,4−ペンタンジオナート)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等、珪素水素化合物としては、テトラ水素化シラン、ヘキサ水素化ジシラン等、ハロゲン化珪素化合物としては、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン等を挙げることが出来、何れも本発明において好ましく用いることができる。これらを2種以上同時に混合して使用することもできる。
【0122】
また、チタン化合物としては、有機チタン化合物、チタン水素化合物、ハロゲン化チタン等があり、有機チタン化合物としては、例えば、トリエトキシチタン、トリメトキシチタン、トリイソプロポキシチタン、トリブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルジメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン、トリエチルチタン、トリイソプロピルチタン、トリブチルチタン、テトラエチルチタン、テトライソプロピルチタン、テトラブチルチタン、テトラジメチルアミノチタン、ジメチルチタンジ(2,4−ペンタンジオナート)、エチルチタントリ(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(アセトメチルアセタート)、トリアセトキシチタン、ジプロポキシプロピオニルオキシチタン等、ジブチリロキシチタン、チタン水素化合物としてはモノチタン水素化合物、ジチタン水素化合物等、ハロゲン化チタンとしては、トリクロロチタン、テトラクロロチタン等を挙げることが出来、何れも本発明において好ましく用いることができる。またこれらを2種以上同時に混合して使用することもできる。
【0123】
また、錫化合物としては、有機錫化合物、錫水素化合物、ハロゲン化錫等であり、有機錫化合物としては、例えば、テトラエチル錫、テトラメチル錫、二酢酸ジ−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、ジエチル錫、ジメチル錫、ジイソプロピル錫、ジブチル錫、ジエトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、錫ジブチラート、錫ジアセトアセトナート、エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫アセトアセトナート、ジメチル錫ジアセトアセトナート等、錫水素化合物等、ハロゲン化錫としては、二塩化錫、四塩化錫等を挙げることができ、何れも本発明において好ましく用いることができる。また、これらのを2種以上同時に混合して使用してもよい。なお、これらを用いて形成された酸化錫膜は表面比抵抗値を1×1012Ω/□以下に下げることができるため、帯電防止層としても有用である。
【0124】
また、その他の有機金属化合物としては、例えば、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、バリウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、ベリリウムアセチルアセトナート、ビスマスヘキサフルオロペンタンジオネート、ジメチルカドミウム、カルシウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、クロムトリフルオロペンタンジオネート、コバルトアセチルアセトナート、銅ヘキサフルオロペンタンジオネート、マグネシウムヘキサフルオロペンタンジオネート−ジメチルエーテル錯体、ガリウムエトキシド、テトラエトキシゲルマン、テトラメトキシゲルマン、ハフニウムt−ブドキシド、ハフニウムエトキシド、インジウムアセチルアセトナート、インジウム2,6−ジメチルアミノヘプタンジオネート、フェロセン、ランタンイソプロポキシド、酢酸鉛、テトラエチル鉛、ネオジウムアセチルアセトナート、白金ヘキサフルオロペンタンジオネート、トリメチルシクロペンタジエニル白金、ロジウムジカルボニルアセチルアセトナート、ストロンチウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、タンタルメトキシド、タンタルトリフルオロエトキシド、テルルエトキシド、タングステンエトキシド、バナジウムトリイソプロポキシドオキシド、マグネシウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、ジエチル亜鉛、などが挙げられる。
【0125】
本発明に係るバリア層は、バリア層を形成する上記化合物の薄膜形成ガスを含有する窒素ガスに対し、異なる周波数の電界を2つ以上印加した大気圧プラズマ法、具体的には、図4に記載の大気圧プラズマ処理装置を用いて形成することが好ましい。大気圧プラズマ法を用いてバリア層を形成することで、更に良質で生産性の高いバリアフィルムの製造を行うことができる。
【0126】
大気圧プラズマ法においては、図4に記載の様な大気圧プラズマ処理装置を用いて、大気圧または大気圧近傍の圧力下で、対向する電極間に、上記有機金属化合物を含む原料ガスと原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスから構成される反応性ガスと、プラズマ状態に励起する放電ガスとの混合ガスを供給し、該電極間に高周波電界を発生させることによって該混合ガスを励起ガスとし、該励起ガスにポリマー層を有する基材を晒すことにより、膜面均質性の高いバリア層を形成するものである。
【0127】
これらの金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気、フッ素ガス、フッ化水素、トリフルオロアルコール、トリフルオロトルエン、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、塩素ガスなどが挙げられる。
【0128】
金属元素を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで、各種の金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物を得ることができる。
【0129】
これらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合し、プラズマ放電発生装置にガスを送りこむ。このような放電ガスとしては、窒素ガスおよび/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも特に、窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。
【0130】
上記放電ガスと反応性ガスを混合し、混合ガスとしてプラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで膜形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、得ようとする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を50%以上として反応性ガスを供給する。
【0131】
本発明に係るバリア層においては、バリア層が含有する無機化合物が、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化アルミナ及びそれらの混合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特に水分の透過性、光線透過性及び後述する大気圧プラズマCVD適性の観点から、酸化珪素であることが好ましい。
【0132】
本発明に係る無機化合物は、例えば、上記有機珪素化合物に、更に酸素ガスや窒素ガスを所定割合で組み合わせて、O原子とN原子の少なくともいずれかと、Si原子とを含む膜を得ることができる。
【0133】
本発明に係るバリア層を含むバリアフィルムの波長が400以上、700nm以下の領域における平均光透過率が80%以上という高い透明性を有していることが好ましく、更には90%以上であることがより好ましい。なお、上限の平均光透過率は、構成するバリア層やポリマー層により自ずと制限を受けるため、特に制限はない。
【0134】
本発明でいう平均光透過率は、JIS R 1635に準じて、例えば、日立製作所製分光光度計1U−4000型を用いて、400nmから700nmの波長で、5nm毎に、各波長における透過率(%)を60点測定した。次いで、各波長の透過率の平均値を求め、これを平均光透過率とする。
【0135】
この様な光学特性を備えたバリアフィルムは、例えば、有機ELデバイス(OLED)の透明基板等の用途にも使用することが可能となる。
【0136】
本発明のバリアフィルムの水蒸気透過度としては、有機ELディスプレイや高精彩カラー液晶ディスプレイ等の高度のガスバリア性を必要とする用途に用いる場合、JIS K7129 B法に従って測定した水蒸気透過度が0.1g/m2/day未満、および酸素透過度が0.1ml/m2/day/atm未満であることが好ましい。
【0137】
また、本発明のバリアフィルムは、バリアフィルム上にOLEDをエポキシ接着剤などを介して貼り合わせ、封止することもできる。エポキシ接着剤は、OLED封止用材料として、ナガセケムテックス(株)などで市販されているものを用いることができる。
【0138】
次に、本発明のバリアフィルムを用いて、ガスバリア性を高めたOLEDについて説明する。
【0139】
有機ELデバイスは少なくとも電極と有機化合物層とが形成された基材を有しており、本発明のバリアフィルムが、有機ELデバイスを覆うようにして封止されている形態が挙げられる。
【0140】
また、他の形態として、有機ELデバイスは少なくとも電極と有機化合物層とが形成された基材を有しており、本発明のバリアフィルムが有機ELデバイスの少なくとも電極と有機化合物層を覆うように貼り合わされている形態が挙げられる。
【0141】
また他の形態として、有機ELデバイスは本発明のバリアフィルム上に少なくとも電極と有機化合物層とが形成され、更に、本発明のバリアフィルムが、有機ELデバイスを覆うようにして封止されている形態が挙げられる。
【0142】
また他の形態として、有機ELデバイスは本発明のバリアフィルム上に少なくとも電極と有機化合物層とが形成され、本発明のバリアフィルムが有機ELデバイスの少なくとも電極と有機化合物層を覆うように貼り合わされている形態が挙げられる。
【実施例】
【0143】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0144】
実施例
《バリアフィルムの作製》
〔バリアフィルム1の作製〕
(ポリマー層の形成)
〈ポリマー層形成用塗布液の調製〉
下記の各添加物を混合、溶解して、ポリマー層形成用塗布液を調製した。
【0145】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20質量部
ジエトキシベンゾフェノン光重合開始剤 2質量部
イソプロピルアルコール 50質量部
酢酸エチル 50質量部
メチルエチルケトン 50質量部
〈ミスト状液滴の生成〉
図1に示す超音波噴霧器1により、25℃の上記調製したポリマー層形成用塗布液(液滴原料L)を用いて、ポリマー層形成用の液滴Mを生成した。なお、超音波噴霧器の周波数は2MHzで、窒素ガスは流量10L/min、温度80℃とした。
【0146】
(基材への液滴噴霧及び紫外線照射)
図3に示す処理装置を用いて、供給口に+1kVの直流電界を印加し、上記液滴Mを基材S(ポリエーテルスルフォンフィルム)上に吹き付けた。図3の処理装置は、冷却機能を有した基材Sを保持するバックアップロール22Rとミスト噴霧器及び紫外線照射部からなり、紫外線照射部は、噴霧空間の下流に位置するため、噴霧直後、噴霧された液滴は紫外線に曝されることになる。
【0147】
ここでは、紫外線照射のエネルギー密度を120mJ/cm2とし、照射時間を1secとなるように搬送速度を調節して処理を行って、膜厚が3.0μmのポリマー層を形成した。なお、製膜中の基材Sを保持するバックアップロール22Rは、30℃に維持し保温した。
【0148】
〈液滴液滴の粒度分布の測定〉
上記の液滴噴霧工程で、シスメックス社製スプレーテックシリーズのOPTICS/RTS5113を用いて、基材より30mm上空で液滴液滴の粒度分布の測定を行った。得られた粒度分布を、表5(A)に示す。
【0149】
(バリア層の形成)
上記バリア層を設けた基材上へ、大気圧プラズマCVD法により、バリア層の形成を行った。
【0150】
大気圧プラズマ処理装置としては、図4に示すロール電極型放電処理装置を用いた。
【0151】
ロール電極に対向する棒状電極を複数個フィルムの搬送方向に対し平行に設置し、各電極部に、下記に示す原料及び電力を投入して、ポリマー層上に、密着層、セラミック層、プロテクト層から構成されるバリア層を形成した。
【0152】
誘電体は、対向する電極共に、セラミック溶射加工のものに片肉で1mm被覆した。被覆後の電極間隙は、1mmに設定した。また誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。ここで使用する電源は、応用電機製高周波電源(80kHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)を使用した。
【0153】
〈密着層〉
放電ガス:窒素ガス
反応性ガス1:水素ガスを全ガスに対し1体積%
反応性ガス2:テトラエトキシシランを全ガスに対し0.5体積%
低周波側電源電力:電源周波数=80kHz、出力密度=10W/cm2
高周波側電源電力:電源周波数=13.56MHz、出力密度=5W/cm2
〈セラミック層〉
放電ガス:窒素ガス
反応性ガス1:酸素ガスを全ガスに対し5体積%
反応性ガス2:テトラエトキシシランを全ガスに対し0.1体積%
低周波側電源電力:電源周波数=80kHz、出力密度=10W/cm2
高周波側電源電力:電源周波数=13.56MHz、出力密度=8W/cm2
〈プロテクト層〉
放電ガス:窒素ガス
反応性ガス1:水素ガスを全ガスに対し1体積%
反応性ガス2:テトラエトキシシランを全ガスに対し0.5体積%
低周波側電源電力:電源周波数=80kHz、出力密度=10W/cm2
高周波側電源電力:電源周波数=13.56MHz、出力密度=5W/cm2
各層は、ポリマー層上に、密着層、セラミック層、プロテクト層の順に形成し、各膜厚は、密着層が50nm、セラミック層が20nm、プロテクト層が400nmである。また、バリア層形成時の基材保持温度は、120℃とした。
【0154】
〔バリアフィルム2の作製〕
上記バリアフィルム1の作製において、ポリマー層の硬化処理を、紫外線照射のエネルギー処理に代えて、下記の方法に従って図4に記載の大気圧プラズマ処理装置を用いた大気圧プラズマ処理に変更して、膜厚3.0μmのポリマー層を形成した以外は同様にして、バリアフィルム2を作製した。
【0155】
(基材への液滴噴霧、プラズマの形成)
図3に示す大気圧プラズマ処理装置を用いて、供給口に+1kVの直流電界を印加し、ポリマー層形成用塗布液の液滴を基材S(ポリエーテルスルフォンフィルム)に吹き付けた。図3の大気圧プラズマ処理装置は、基材Sを保持する電極22Rに周波数100kHzの高周波電源を接続し、それと対向する棒状電極21に13.56MHzの高周波電源を接続するとともに電源本体と電極間には、インピーダンス整合をとるためのマッチングボックスを接続している。またマッチングボックスと電極との間には、ともに互いの電流が流れ込まないようにフィルターを設置している。放電空間Dに窒素ガスに対し水素ガス1体積%の混合ガスを導入し放電を形成した。プラズマガスに晒される部分は、噴霧空間Aの下流に位置するため、噴霧直後、噴霧された液滴はプラズマガスに曝されることになる。
【0156】
なお、周波数100kHzの高周波電源の出力密度は3W/cm2で、13.56MHzの高周波電源の出力密度は5W/cm2とした。
【0157】
なお、製膜中の基材Sを保持する電極22Rは、120℃に維持し保温した。
【0158】
〔バリアフィルム3の作製〕
上記バリアフィルム1の作製において、ポリマー層の形成を超音波噴霧器を用いたミスト噴霧法に代えて、ポリマー層形成用塗布液を押し出しダイコータを用いた湿式塗布方式で形成した後、バリアフィルム1の作製と同様にして紫外線照射のエネルギー処理を行った以外は同様にして、バリアフィルム3を作製した。なお、ポリマー層の膜厚は、3.0μmとした。ただし、製膜中の基材Sを保持する電極22Rは、50℃とした。
【0159】
〔バリアフィルム4の作製〕
上記バリアフィルム1の作製において、ポリマー層の塗設を行わなかった以外は同様にして、バリアフィルム4を作製した。
【0160】
《バリアフィルムの評価》
以上に様にして作製した各バリアフィルムについて以下の評価を行った。
【0161】
〔バリア性の評価:水蒸気透過率の測定〕
水蒸気透過率は、(株)クリエテック社製WOPET−003型を使用し測定した。
【0162】
ここで10-2オーダーまでは、モコン社製酸素透過率測定装置OX−TRAN2/21・Lタイプ及び水蒸気透過率測定装置PERMATRAN−W3/33Gタイプにより基準サンプルを比較評価した後、モコン社製装置を基準に校正を行い、シミュレーションにより10-7オーダーまで外挿した。
【0163】
〔表面粗さの測定〕
JIS B 0601で規定される方法に準拠し、中心線平均表面粗さ(nm)を測定した。
【0164】
〔密着性の評価〕
JIS K 5400に準拠した碁盤目試験を行った。形成された薄膜の表面に、片刃のカミソリを用いて、面に対して90度で1mm間隔で縦横に11本ずつの切り込みを入れ、1mm角の碁盤目を100個作成した。この上に市販のセロファンテープを貼り付け、その一端を手でもって垂直にはがし、切り込み線からの貼られたテープ面積に対する薄膜の剥がされなかった面積の割合(%)を測定し、これを密着性の尺度とした。
【0165】
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0166】
【表1】

【0167】
表1に記載の結果より明らかな様に、本発明で規定する構成、あるいは製造方法により作製したバリアフィルムは、ピンホール等の発生が抑えられて、高いガスバリア性(低い水蒸気透過率)を有し、かつ平面性及び密着性に優れていることが分かる。
【0168】
更に、上記作製したバリアフィルムを、それぞれOLED上に封止膜として積層し、60℃、90%RHで500時間保存後、50倍の拡大写真を撮影しダークスポットの発生を評価した結果、本発明のバリアフィルムを用いた試料は、ダークスポットの発生は認められなかったが、比較例であるバリアフィルム4を用いた試料では、多数のダークスポットの発生が観察された。以上のように本発明のバリアフィルムは、比較例に対し、水蒸気遮断効果に優れた性能が維持されていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】重合性モノマーを含有する塗布液を液滴として基材上に付与もしくは電極間に供給する場合に用いられる超音波噴霧器の概略図である。
【図2】超音波噴霧器を備えた枚葉式の大気圧プラズマ処理装置の概略図である。
【図3】超音波噴霧器を備えたロール式の大気圧プラズマ処理装置の概略図である。
【図4】本発明に適用することができる大気圧プラズマ処理装置の他の一例を示す概略図である。
【図5】液滴の粒度分布を示す図である。
【図6】本発明に好ましく用いられる液滴発生器システムの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0170】
1 超音波噴霧器
11 導入管
12 原料貯留部
13 超音波発生部
14 電源
15 放出管
21 第1電極
22、32 第2電極
22R、35 ロール回転電極
25A、25B 高周波電源
26A、26B マッチングボックス
27A、27B フィルタ
30 大気圧プラズマ処理装置
31 大気圧プラズマ処理容器
32、D 放電空間
36 角筒型電極
40 電界印加手段
41 第1電源
42 第2電源
43 第1フィルタ
44 第2フィルタ
50 ガス・液滴供給手段
51 ガス・液滴発生装置
52 給気口
53 排気口
60 電極温度調節手段
64 ガイドロール
65 ニップロール
68、69 仕切板
A 噴霧空間
M ガス・液滴
F、S 基材
G′ 処理排液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、少なくともバリア層とポリマー層とを有するバリアフィルムにおいて、該ポリマー層が重合性モノマーを含有する塗布液をミスト状で該基材の表面に噴霧した後、硬化させて形成されたものであることを特徴とするバリアフィルム。
【請求項2】
波長が400以上、700nm以下の領域における平均光透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1記載のバリアフィルム。
【請求項3】
前記基材と前記バリア層との間に、少なくとも1層の前記ポリマー層を有することを特徴とする請求項1または2に記載のバリアフィルム。
【請求項4】
前記ポリマー層の少なくとも1層が、前記基材と接していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【請求項5】
前記ポリマー層の少なくとも1層が、前記バリア層の少なくとも1層と接していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【請求項6】
前記ポリマー層の厚みが、0.5μm以上、10μm以下であることを特徴とする請求項4記載のバリアフィルム。
【請求項7】
前記ポリマー層の中心線平均表面粗さRaが、10nm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【請求項8】
前記ポリマー層を形成する重合性モノマーが、メタアクリル化合物、アクリル化合物、エポキシ化合物及びオキセタン化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【請求項9】
基材上に、少なくともバリア層とポリマー層とを有するバリアフィルムの製造方法において、該ポリマー層は、重合性モノマーを含有する塗布液をミスト状で該基材の表面に噴霧した後、硬化処理を施して形成することを特徴とするバリアフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記基材と前記バリア層との間に、少なくとも1層の前記ポリマー層を形成することを特徴とする請求項9記載のバリアフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記ポリマー層の少なくとも1層が、前記基材と接していることを特徴とする請求項9または10に記載のバリアフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記硬化処理が、紫外線照射処理であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載のバリアフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記硬化処理が、大気圧プラズマ処理であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載のバリアフィルムの製造方法。
【請求項14】
前記塗布液のミストの平均粒径が、5.0μm以下であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載のバリアフィルムの製造方法。
【請求項15】
前記塗布液のミストの平均粒径が、1.0μm以下であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載のバリアフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−21871(P2007−21871A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206865(P2005−206865)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】