説明

バルク単結晶ガリウム含有窒化物およびその用途

シード上で少なくともシード成長方向に本質的に垂直な方向で成長され、シード中に存在する結晶欠陥の伝播が本質的になく、転位密度が104/cm2を超えず、シードの転位密度に比べかなり低く、結晶格子曲率半径が大きく、好ましくは15mより長く、より好ましくは30mより長く、最も好ましくは約70mであり、シードの結晶格子の曲率半径よりかなり長い、バルク単結晶ガリウム含有窒化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は窒化物半導体構造を得るプロセスにおけるエピタキシーのための基板として使用するためのバルク単結晶ガリウム含有窒化物、ならびにフラックス法(flux method)およびアンモニア法(ammono method)の組み合わせを用いることによりバルク単結晶ガリウム含有窒化物を調製する方法である。
【0002】
XIII族元素含有窒化物(IUPAC、1989)は光電気産業のための重要な材料である。
【0003】
バルク単結晶ガリウム含有窒化物は、エネルギーギャップを使用してレーザダイオード(LD)および青色発光ダイオード(LED)を製造してもよい、窒化ガリウムのエピタキシャル層の堆積のための完全な基板であると考えられている。しかしながら、エピタキシーのための基板として使用できるように満たさなければならない条件は、単結晶の高い結晶品質および低い転位密度である。
【0004】
これまで使用されている方法により得られたバルク単結晶ガリウム含有窒化物はそれらの要求を満たさない。それでもなお、適した品質の材料に対する予想需要により、その分野における研究および技術的進歩が刺激される。
【背景技術】
【0005】
公開番号WO 02/101120号の作者は、窒化物含有溶媒、好ましくはアンモニアを含む超臨界溶液から、シード上での結晶化によりバルク単結晶ガリウム含有窒化物を得る方法を開示した。この方法により、ガス相からの堆積法、例えばHVPEおよびMOCVDまたはMBEから得られる、産業において使用されている基板に比べ、よりパラメータ品質の高い、すなわちそれらの基板より転位密度が低いバルク単結晶ガリウム含有窒化物を獲得することができる。WO 02/101120の開示内容から公知の方法により得られる単結晶は、高い体積増加を示す。結晶化プロセスの平衡特性のため、全世界の様々なセンターで産業上使用される材料に比べ、超臨界ガリウム含有溶媒を含む溶液から単結晶の非常に高い結晶品質が達成される。WO 02/101120から公知となる技術の主な利点は、窒化物含有溶媒に基づく超臨界溶液からガリウム含有窒化物の再結晶化プロセスが生じる好都合な範囲の圧力および温度が確保できることである。WO 02/101120で開示された方法に対する更なる研究および開発の過程で、その方法の実際の適用に対する制限的な影響が認識され、徐々に、技術および装置の両方の観点から、遭遇する障壁が克服された。そのような障壁のいくつかは、所望の純度の原材料の限られた入手可能性、結晶シードの適当な品質、適当な鉱化剤の選択および単結晶の成長速度の制御である。
【0006】
ガリウム含有窒化物の別の合成法、例えばHNPもまた公知である。それらの方法により、非常に高い結晶品質および低い転位密度を有するガリウム含有単結晶が得られる。残念なことに、これにより得られる結晶の十分でないサイズおよび不規則な形状のため、結晶はこれまでLED、LDおよび他の半導体構造の工業生産におけるエピタキシーのための基板用の材料として使用されていない。また、プロセスパラメータ、特に非常に高い圧力の使用の必要性から、工業規模でこの方法により所望のサイズの結晶を得る実現可能性が著しく制限される。
【0007】
その分野での研究により、窒素雰囲気中、ガリウム溶融物からガリウム含有窒化物を成長させるフラックス法を使用すると、有望な結果が得られることが示されている。それらのプロセスは、かなり低い温度および圧力を使用するので、工業的に魅力的である。
【0008】
WO 02/101120において開示されているプロセスに対する基本的な開始材料、すなわち再結晶化を受ける原材料およびシードは、HVPE法により獲得した。この方法では、ガス相からの単結晶窒化ガリウム層をヘテロシード、特にサファイヤ上に置く。ヘテロシードおよび得られたバルク単結晶ガリウム含有窒化物の格子定数の間の違いのため、ならびに両方の材料の熱膨張の違いのため、HVPE法により得られるバルクガリウム含有窒化物単結晶、好ましくは窒化ガリウム単結晶は不規則結晶構造を有し、例えば、得られたバルク単結晶ガリウム含有窒化物の小さな曲率半径において反映される。そのような単結晶を、超臨界アンモニア含有溶液からの単結晶ガリウム含有窒化物の再結晶化プロセスにおける結晶化シードとして使用すると、そのようなシード上で得られた単結晶窒化ガリウム層では結晶欠陥および表面転位の伝播が起きる。さらに、窒化ガリウム結晶格子のc軸に対し垂直に配向したウエハ形態のシード上では、シードのガリウム末端および窒素末端側での成長の異なる状態が観察された。
【0009】
公開番号第WO 03/035945号の作者は、横方向の成長、すなわち、ガリウム含有窒化物の結晶格子のa軸に向かう成長を受けやすい表面を有するELOG構造で結晶シードを被覆することにより、すなわち、ガス相からの成長法により得られるエピタキシーのための基板の品質改善法に従い、結晶シードの品質を効果的に改善することができることを開示した。しかしながら、結晶欠陥および表面転位のランダム配列を考慮すると、ELOG構造で被覆したシード上では、HVPE法により得られた一次基板の結晶欠陥の、窒化物含有溶媒に基づく超臨界溶液から堆積させた単結晶窒化ガリウム層への伝播を十分な程度除去することができない。互いに短い距離離して配列させた横方向成長を受けやすい表面は、一次基板上に直接成長させたストリップにより分離される。この点で、結晶シード上のELOG構造の複数回および交互堆積は、主にコストが高いために、考えることはできないことに注意しなければならない。
【特許文献1】WO 02/101120公報
【特許文献2】WO 03/035945公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第1の目的は、基本的にはシード中に存在する結晶欠陥の伝播がない、シード上で成長させたバルク単結晶ガリウム含有窒化物を提供すると共に、改善された結晶特性および減少した転位密度を有するバルク単結晶ガリウム含有窒化物由来のエピタキシー用基板を確保することである。
【0011】
本発明の第2の目的はまた、エピタキシー用の新規改良基板上に堆積させた、半導体構造のより長い寿命を提供することである。
【0012】
本発明の第3の目的はまた、フラックス法およびアンモニア法の組み合わせにより、バルク単結晶ガリウム含有窒化物を調製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者らは、思いがけなく、本発明によるプロセスを準備することにより、これらの目的が達成できることを見いだした。本発明によるプロセスにより、必要なサイズ、幾何学パラメータおよび所望の結晶品質を有するバルク単結晶ガリウム含有窒化物が確保される。その結果、任意の配向および十分高い結晶品質を有するエピタキシー用基板を得ることができた。
【0014】
本発明によれば、少なくともシード成長の方向に本質的に垂直な方向で、シード上で成長させた、本質的にシード中に存在する結晶欠陥の伝播のない、バルク単結晶ガリウム含有窒化物は、その転位密度が104/cm2を超えず、シードの転位密度に比べかなり低く、結晶構造の曲率半径が大きく、好ましくは15mを超える、より好ましくは30mを超える、最も好ましくは約70mであり、これはシードの結晶格子の曲率半径よりも長いという点で、特徴づけられる。
【0015】
本発明によれば、少なくともシード成長の方向に本質的に垂直な方向で、シード上で成長させた、本質的にシード中に存在する結晶欠陥の伝播のない、バルク単結晶ガリウム含有窒化物では、(0002)面からのX線ロッキングカーブのFWHMが、好ましくは40arcsec(Cu Kα1に対する)未満であり、シードのFWHMよりもかなり低く、同時に、結晶格子の曲率半径が大きく、好ましくは15mより長く、より好ましくは30mより長く、最も好ましくは約70mであり、シードの結晶格子の曲率半径よりもかなり長い。
【0016】
本発明による単結晶は、好ましくはドナー型および/またはアクセプタ型、および/または磁性型ドーパントが、1017/cm3〜1021/cm3の濃度でドープされており、n-型、p-型または補償(半絶縁)材料を含む。
【0017】
好ましくは、本発明による単結晶は、c軸に垂直な方向の、特にa軸に平行な成長速度が、単結晶のc軸に平行な方向の成長速度と同じかまたはそれより高くなる環境または条件で成長させられる。
【0018】
本発明による単結晶は好ましくは窒化ガリウム単結晶である。
【0019】
本発明によれば、本発明による単結晶として得られた、またはそのような単結晶から切り出された、極平面または非極平面を有する、任意の配向を有するウエハを製造することができ、ここで、カットは、単結晶の成長方向に対し所望の方向で実施される。
【0020】
本発明によるウエハは好ましくは、単結晶成長方向に本質的に平行な方向のスライシングによりさらに減少させた表面転位密度を有する。
【0021】
本発明によるウエハは好ましくは、更に加工するのに適した、非極性表面を有する。
【0022】
本発明によるウエハは好ましくは、更に加工するのに適した、極性表面を有する。
【0023】
本発明によれば、ウエハは、XIII族元素含有窒化物からの半導体構造のエピタキシャル堆積のための基板として使用してもよい。
【0024】
本発明はまた、本発明による単結晶として得られる、または本発明によるウエハである、特に、とりわけXIII族元素末端側で十分低い表面転位密度を有する窒化物基板を必要とする半導体構造の作製に適し、100mm2以上の、好ましくは450mm2以上のエピタキシャル表面を有する、XIII族元素含有窒化物からの半導体構造のエピタキシャル堆積のための基板を含む。
【0025】
本発明はまた、基板上で得られる半導体構造を対象とする。
【0026】
本発明による溶液の調製のため、光電気産業の要求を満たす、優れた結晶パラメータおよびとりわけ低い表面転位密度を有する均質なバルク単結晶ガリウム含有窒化物、とりわけ窒化ガリウムを確保することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明による単結晶ガリウム含有窒化物は、光電気産業の技術的要求に適応する、並はずれた寸法、規則形状、同時に優れた結晶特性を有する。
【0028】
本発明の特別に好ましい例では、バルク単結晶ガリウム含有窒化物は導電率の仮定パラメータを有する。ガリウム含有窒化物単結晶から得られたエピタキシー用基板のこの特徴により、レーザ構造の変更が可能となり、そのような構造の基板あたりの数をかなり増加することが可能となる。
【0029】
同時に、本発明による溶液はまた、コストの面でも好ましいことが強調されるべきである。
【0030】
同封した図面の図1は、フラックス法による単結晶ガリウム含有窒化物の成長のためのるつぼの概略図であり、図2は実施例4〜9の温度の時間変化を示した図であり、図3は超臨界アンモニア含有溶液からの成長法において使用されるオートクレーブおよび炉のセットの断面図であり、図4は本発明により単結晶ガリウム含有窒化物を得るための装置の斜視図である。
【0031】
以下の説明において、下記の用語および定義は、特に記載がなければ下記の意味を有するものとする。
【0032】
オートクレーブは、その形態に関係なく、密閉反応チャンバを含み、その中で、上記範囲の温度および圧力の流体相からの結晶化プロセスが実施される。超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化では、図7および図8で概略が示された、本文でさらに詳細に記述されている装置を使用すると好都合である。
【0033】
ガリウム含有窒化物は、構造中に少なくとも1つのガリウム原子および1つの窒素原子を含む化学化合物である。ガリウム含有窒化物としては、ガリウムが大部分を占め、とにかくドーパント濃度より高いレベルでガリウムを含む、二元化合物−GaN、三元化合物−AlGaN、InGaNまたは四元化合物AlInGaNが挙げられるが、それらに限定されない。この化合物中のガリウムに対する他の元素の組成は、選択した結晶化技術と衝突しない限り、その構造中で変化させてもよい。
【0034】
結晶学的方向c、aまたはmは、下記ミラー指数を有する、六方格子のc、aまたはm方向を示す:c-[0001]、1-[1120]、m-[1100]。
【0035】
溶融物からの結晶化は、フラックス法による結晶化を示す。
【0036】
ガリウム含有原料は、ガリウム含有窒化物またはその前駆体である。原料としては、様々な方法、特にフラックス法、HNP法、HVPE法により得られるGaNを使用してもよい。さらに、金属ガリウムを超臨界アンモニア含有溶液と反応させることにより得られる多結晶GaNを使用してもよい。
【0037】
HVPE(ハロゲン系気相エピタキシー)法は、(XIII族元素窒化物の場合)XIII族金属のハロゲン化物とアンモニアを基材として使用する、ガス相からエピタキシャル層を堆積する方法を示す。
【0038】
MBE(分子線エピタキシー)法は、いわゆる「分子線」から基板上に分子を堆積させることにより、原子厚のエピタキシャル層を獲得する方法を示す。
【0039】
MOCVD法(有機金属気相成長法)は、(窒化物の場合)アンモニアおよびガリウムの有機金属化合物を基材として使用する、ガス相からエピタキシャル層を堆積させる方法を示す。
【0040】
この出願における流体相からの結晶化法は、超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化またはフラックス法を示す。
【0041】
結晶窒化ガリウムを得るフラックス法は、金属の液体混合物(溶融物)と窒素含有ガス(特に、ガス状窒素または窒素とアンモニアの混合物としてもよい)との間の化学反応の結果、前記アジドが得られる方法の群を意味する。溶融物は特にガリウムおよびフラックスを含む。当然、このプロセスは適当な温度および圧力条件で進行する。ナトリウムの場合、これは周知のフラックスであるが、プロセスの典型的な温度は約600〜800℃であり、典型的な圧力は約5MPaである。
【0042】
鉱化剤は、超臨界アンモニア含有溶媒に1つまたは複数のI族元素(アルカリ金属)イオンを導入し、原料(およびガリウム含有窒化物)の溶解を支持する物質である。
【0043】
超臨界アンモニア含有溶媒は、少なくとも1つのアンモニアを含み、1つまたは複数の型のI族元素(アルカリ金属)イオンを含み、ガリウム含有窒化物の溶解を支持する超臨界溶媒である。超臨界アンモニア含有溶媒はまた、アンモニアの誘導体および/またはその混合物、特にヒドラジンを含んでもよい。
【0044】
超臨界アンモニア含有溶液は、超臨界アンモニア含有溶媒にガリウム含有原料を溶解した結果得られる溶液を意味する。
【0045】
バルク単結晶ガリウム含有窒化物は、ガリウム含有窒化物の形態の単結晶基板を意味し、その上で光電気デバイス、例えば発光ダイオード(LED)またはレーザダイオード(LD)を、MOCVD法またはHVPEなどのエピタキシー成長法により獲得してもよい。
【0046】
結晶面C、AまたはMは下記ミラー指数を有する六方格子のC-、A-またはM-面表面を示す:C−(0001)、A−(1120)、M−(1100)。表面は対応する結晶学的方向(c、aおよびm)に垂直である。
【0047】
極性または非極性のさらに加工可能な表面は、窒化物層のエピタキシャル堆積に適した表面を意味し、その表面上では、少なくとも1つのオプトエレクトロニクスデバイスの作製が可能である。そのような表面は、MOCVD、MBE法または窒化物層の他のエピタキシャル堆積法によるエピタキシーに十分なサイズを有するべきであり、好ましくは10mm2を超え、最も好ましくは100mm2を超える。
【0048】
極性または非極性結晶表面:ウルツ鉱構造のXIII族元素窒化物の結晶では、結晶のc軸に平行な結晶面(およびそれらの面を含む結晶表面)は、非極性表面と呼ばれ、一方、結晶のc軸に垂直な結晶面(およびそれらの面を含む結晶表面)は、非極性表面と呼ばれる。
【0049】
ガリウム含有窒化物の前駆体は、少なくともガリウムを含み、必要に応じてI族元素(アルカリ金属)、II族元素(アルカリ土類金属)、XIII族元素(IUPAC 1989による族番号)、窒素および/または水素、および金属ガリウム、その合金または金属化合物、水素化物、アミド、イミド、アミド-イミドおよびアジドを含む物質または混合物であり、これらは、下記で規定するように超臨界アンモニア含有溶媒に溶解可能なガリウム化合物を形成してもよい。
【0050】
過飽和
超臨界アンモニア含有溶液中の可溶性ガリウム化合物の濃度が、特定の物理化学条件におけるガリウム含有窒化物の溶解度よりも高い場合、そのような条件における、ガリウム含有窒化物に対する超臨界アンモニア含有溶液の過飽和は、実際の濃度と溶解度との間の差と規定することができる。閉鎖系でガリウム含有窒化物を溶解する場合、例えば温度を上昇させる、または圧力を減少させることにより、過飽和状態を得ることができる。
【0051】
この出願における拡散プロセスは、原料とシードの間の輸送が、本質的には拡散により進行する結晶成長プロセスを意味する。
【0052】
この出願における対流プロセスは、原料とシードの間の輸送が、本質的には対流により進行する結晶成長プロセスを意味する。
【0053】
溶解度
本出願人らの経験から、十分高い温度および圧力で、固体(ガリウム含有窒化物)と超臨界溶液との間で平衡状態が達成される可能性があることが示される。そのため、ガリウム含有窒化物の溶解度は、ガリウム含有窒化物の上記溶解プロセスにおいて得られる可溶性ガリウム化合物の平衡濃度として規定してもよい。このプロセスでは、平衡濃度、すなわち溶解度は、溶媒組成、温度および/または圧力を変化させることにより制御してもよい。
【0054】
ガリウム含有原料の溶解は、超臨界溶媒に可溶な原料ガリウム化合物、例えばガリウム複合化合物から形成される可逆または不可逆のいずれかのプロセスを意味する。ガリウム複合化合物は、複合化学化合物であり、この場合、ガリウム原子がリガンド、例えばアンモニア分子(NH3)またはNH2-、NH2などのようなそれらの誘導体により囲まれた配位中心である。
【0055】
シード上での選択的結晶化は、シードの表面上で起きる結晶化プロセスを意味し、自然結晶化はなく、または起きる自然結晶化は無視できる程度である。このプロセスは、本発明の目的を達成する、すなわち、ガリウム含有窒化物のバルク単結晶を得るためには不可欠であり、同時に、本発明の本質的な要素である。
【0056】
過飽和超臨界アンモニア含有溶液からの自然結晶化は、シードの表面上を除く、オートクレーブ内の任意の部位で起きるガリウム含有窒化物結晶の核形成および成長の任意の望ましくないプロセスを意味する。定義はまた、成長結晶がシードの配向と異なる配向を有する、シード表面上での成長を含む。
【0057】
この出願における溶融物は溶融金属の混合物を意味する。
【0058】
XIII族元素末端側、Ga-末端側、N-末端側:ウルツ鉱構造を有する結晶では、aと呼ばれる結晶方向(結晶軸)とaに垂直である別の結晶方向-c-とは識別することができる。ウルツ鉱構造を有するXIII族元素窒化物の結晶では、c軸に垂直な結晶面は等価ではない。それらは、それぞれ、XIII族元素末端側および窒素末端側またはXIII元素極性または窒素極性を有する表面と呼ばれる傾向がある。特に、単結晶ガリウム窒化物の場合、ガリウム末端側(Ga-側)と窒素-末端側(N-側)との間の区別が可能である。これらの側面は異なる化学的および物理的特性(例えば、エッチング感受性または熱耐久性)を有する。ガス相からのエピタキシー法では、層はXIII族元素末端側で堆積される。
【0059】
反応の温度および圧力
本明細書で示した実施例では、オートクレーブ内部の温度測定は、オートクレーブが空の時、すなわち、超臨界アンモニア含有溶液のない時に実施されている。このように、実施例で引用した温度値は、超臨界状態で実施したプロセスの実際の温度ではない。圧力は直接測定し、または、選択したプロセス温度およびオートクレーブの体積で、アンモニア含有溶媒に対する物理および化学データに基づき計算した。フラックス法の場合、温度はオートクレーブの内部であるが、るつぼの外側で測定した。それにもかかわらず、本出願において示した温度値は、るつぼ中に含まれる溶融物における実際の温度値に非常に近いはずである。
【0060】
フラックスは、フラックス法において反応環境に添加される物質を意味し、これは、プロセスを通して反応物を液相で維持するのに役立つ。
【0061】
超臨界溶液中のガリウム含有窒化物の化学輸送は、超臨界溶液中でのガリウム含有原料の溶解、可溶性ガリウム化合物の溶液内での循環および過飽和超臨界溶液からのガリウム含有窒化物の結晶化を含む連続プロセスを意味する。一般に、化学輸送は、温度差、圧力差、濃度差、または溶解した原料と結晶化生成物との間の他の化学的または物理的な差により引き起こされる可能性がある。本発明によれば、バルク単結晶ガリウム含有窒化物は、オートクレーブの溶解領域と結晶化領域との間の温度差により確立される、2つのゾーンの間の化学輸送の結果、得られる可能性があり、結晶化領域の温度は溶解領域の温度より高いはずである。
【0062】
溶解度の温度係数および圧力係数(TCSおよびPCS)
溶解度の負の温度係数は、全ての他のパラメータを一定に維持すると、溶解度は温度の減少関数であることを意味する。同様に、溶解度の正の圧力係数は、全ての他のパラメータを一定に維持すると、溶解度は圧力の増加関数であることを意味する。本出願人らの研究により、少なくとも300〜550℃の温度、および100〜550MPaの圧力では、超臨界アンモニア含有溶媒中でのガリウム含有窒化物の溶解度は、負の温度係数(負のTCS)および正の圧力係数(正のPCS)を示すと述べることができる。
【0063】
本特許出願における横方向成長は、シード上でのシード成長の元の方向に垂直な方向のバルク成長を示す。ELOG(エピタキシャル横方向成長)とは対照的に、横方向成長は明確に巨視的(シードの寸法のオーダー、またはそれ以上)であり、それがこのプロセスの目的である。さらに、シード成長の元の方向に平行な方向での、横方向成長結晶の突出は、使用したシードの突出を著しく超えて進む。ELOG(エピタキシャル横方向成長)の場合、これらの2つの突出は本質的に同一である。
【0064】
ELOG(エピタキシャル横方向成長)は、ガス相からまたは超臨界アンモニア含有溶液からの結晶成長法であり、この方法では、結晶は特別な基板上で成長させられる。窒化ガリウム結晶の場合、横方向を受けやすい表面を有する平行隆線(リッジ:ridge)(高さ数μmおよび幅数μm)のマトリクスが基板表面上に作製される。典型的には、窒化ガリウム結晶はc方向で成長する。その後、m方向に沿って隆線が作製され、横方向成長を受けやすい表面がA-面と一致する。この場合、横方向成長は数〜数十μmに限定され、隆線間の空間が出現した結晶により過成長するとすぐに終了される。次に、バルク結晶の主成長はc方向に沿って進行する。このように、基板中に存在する転位のいくつかは、出現結晶中に侵入しないようにすることができる。
【0065】
本発明によるプロセスにおいて所望のバルクガリウム含有窒化物単結晶を得るにはシードが重要である。本発明によるプロセスにより得られるバルクガリウム含有窒化物単結晶の結晶品質にとってシード品質が重要であるという事実を鑑みて、プロセスのために選択したシードはできる限り高い品質を有するべきである。改質表面を有する様々な構造またはウエハもまた使用することができる。例えば、主基板上に配列され、結晶窒化物の横方向成長を受けやすい、互いに十分離して配置した多くの表面を有する構造を、シードとして使用してもよい。さらに、n-型電導度を示す、例えばSiがドープされたホモエピタキシャル表面を有するシードを使用してもよい。そのようなシードは、ガス相からのガリウム含有窒化物結晶成長のためのプロセス、例えばHVPEまたはMOCVD、あるいはそのほかのMBEを使用して製造することができる。成長プロセスの間に1016〜1021/cm2nレベルでSiをドープすると、n-型電導度が確保される。さらに、複合シードを使用してもよく、そのようなシードでは、主基板上に直接、または例えばAlNのバッファ層上に、SiドープGaN層を堆積させてもよい。
【0066】
WO 02/101120において開示されている方法を適用する目的で我々の経験を分析し、試験により、単結晶形態のガリウム含有窒化物を得る有効な方法に関する報告を検証し、本発明者らは、バルク単結晶ガリウム含有窒化物の成長は様々な環境において様々な速度で、さらに六方ウルツ鉱型結晶格子の様々な軸方向で様々な速度で進行し、この場合窒化ガリウムおよび他のガリウム含有窒化物は結晶化されることを発見した。この情報は、その種類の窒化物単結晶を得るプロセスにおける自然結晶化の結果得られるガリウム含有窒化物結晶の形状を直接基本とする。
【0067】
WO 02/101120において開示されているように、方法により得られる自然結晶は、六角形断面を有する針状形態であるという事実から、ガリウム含有窒化物の結晶格子のc軸に向かった優先的な成長が存在することが証明される。
【0068】
窒素雰囲気中、Ga-NaおよびGa-Li溶融物からGaNを得る低温および低圧フラックス法もまた公知である。そのようなプロセスにおいて必要とされる好ましい圧力および温度パラメータにより、本発明の作者は、ガリウム含有窒化物溶液の、超臨界−好ましくはアンモニア含有−環境からの結晶化プロセスに対する原料および、場合によっては結晶化シードを得る潜在的なプロセスとして、そのプロセスに興味を持つようになった。
【0069】
しかしながら、Ga-Na合金溶融物から窒化ガリウムを得るプロセスは、湿度に対するナトリウムの反応性、プロセス条件におけるナトリウム蒸気の高い圧力、およびその反応器のより低温部分での昇華堆積のため、技術的な観点から困難である。フラックスとしてのナトリウムのそれらの特性により、この方法を工業的に適用することが困難になっている。
【0070】
Youting Songらのthe Journal of Crystal growth 247(2003)275-278における出版物では、フラックスとしてリチウムを使用したフラックス法によるGaNの結晶化(温度約800℃、圧力0.2MPa、プロセス期間120〜180時間)が報告されている。この報告により、フラックスとしてリチウムを使用すると、より激しくない条件でGaNを得ることができるが、自然形成結晶の量は依然として不十分である。
【0071】
原料またはシードを得るためのフラックス技術の適用の観点から実施した観察および経験から、フラックス法により、結晶品質が高く、表面転位密度が低い六角形ウエハの形態の自然ガリウム含有窒化物結晶が得られることが示される。自然に(シード無し)形成される結晶の形状から、プロセス条件では、ガリウム含有窒化物結晶格子のc軸に垂直な方向でガリウム含有窒化物の優先的成長が存在することが示される。
【0072】
結晶がc軸に垂直な方向で成長するフラックス法のように、超臨界アンモニア含有溶液からの成長法に関する本研究により、c軸に垂直な方向の本発明による結晶成長もまた可能であるが、幾何学的に限定され、非常に遅い可能性があることが示される。
【0073】
これは、超臨界アンモニア含有溶液からの成長法により得られるガリウム含有窒化物単結晶の体積パラメータが、一方では、シードの寸法、形状および配向により決定され、他方では、システムにおけるプロセスおよび原料保存の期間により決定されることを意味する。
【0074】
上記観察から示されるように、全ての公知の方法によるガリウム含有窒化物単結晶の成長は、少なくとも部分的に、同じまたは異なる方法により得られるシード結晶の成長方向に近い方向で起き、これは、残念なことに、シード中に存在する結晶欠陥の少なくとも一部の伝播が、堆積された単結晶ガリウム含有窒化物層において起きることを意味する。
【0075】
ガリウム含有窒化物結晶化プロセスが実施される条件の選択により、シード結晶のパラメータより本質的に高い品質パラメータのガリウム含有窒化物結晶を得ることができることが最近発見されている。同時に、ガリウム含有窒化物の適当な寸法を確保することを目的として、本発明の作者は、適当な寸法の結晶シードを得るのに適切に焦点を合わせた。
【0076】
本発明によるバルク単結晶ガリウム含有窒化物は、獲得時にガリウム含有窒化物からの単結晶シードの成長に対し垂直な方向で液相から成長させる工程を含むプロセスにおいて所望の方向の単結晶の成長制御により獲得してもよい。
【0077】
液相からの単結晶成長は、300℃〜950℃の温度範囲において、系の流動性を確保するフラックスを使用するフラックス法により実施してもよい。
【0078】
必要に応じて、Bi、In、K、Na、Pb、Rb、Sb、SnおよびTeからなる群より選択される追加のフラックスXを含む、Ga-Li溶融物からのフラックス法による成長が好ましいが、X:Ga:Liのモル比は0.5:1.0:1:5〜1.5:1.0:2.5である。
【0079】
好ましくは、フラックス法を使用して、700〜850℃の温度で、2.0〜2.5MPaの窒素圧で、必要に応じて結晶ガリウム含有窒化物を添加して、成長を実施する。
【0080】
好ましくは、溶融物が所望の温度まで加熱される段階では、不活性ガス、好ましくはアルゴンの保護雰囲気を使用する。次に、系に窒素を添加し、温度勾配を溶融物内で維持しながらシード上で単結晶の成長を実施するが、シードは低温ゾーンに入れる。
【0081】
フラックス法による結晶成長が完了した後、溶融物を最初に、徐々に冷却し、その後、急速に冷却し周囲温度とすべきである。
【0082】
好ましくは、不活性ガス雰囲気中では、溶融物の平均温度が700℃を超える間全てを加熱し、その後溶融物を安定化することによりフラックスを有する不均質Ga溶融物を得ることができ、不活性ガスを2.0〜2.5MPaの圧力下、窒素で置換することにより雰囲気を変化させ、次に、定常条件において、結晶成長を実施し、成長が完了した後、得られた結晶をプロセス条件において徐々に溶融物から取り出してもよく、または全てを上記のように冷却してもよく、最終的に得られた単結晶を、凝固溶融物を溶解することにより分離する。
【0083】
ゾーン中でLi-Ga溶融物を加熱しながら、溶融物の周りで温度勾配を維持し、シードを低温ゾーンに置く。
【0084】
拡散プロセスの過程で、不活性ガス雰囲気における加熱相の温度は、表面下ゾーンでは低く、底面ゾーンでは高く維持し、雰囲気が窒素に変更した後では、温度勾配を逆にすることに注意すべきである。
【0085】
その代わりに、対流プロセスの過程では、溶融物中での窒素の内部供給源として、リチウム、ガリウムまたはBe、In、K、Na、Pb、Rb、Sb、SnまたはTeからなる群の金属を含む結晶窒化物の形態の追加の原料を使用し、これらは追加のフラックスであり、追加の原料は、全てを上記で特定した平均温度まで加熱することにより液相とされ、追加の材料が入れられたゾーンは、数十℃だけ高い温度にされる。
【0086】
好ましくは、フラックスプロセスの両方のバージョンにおいて、ゾーン間の温度差を、数十℃のレベルで維持する。
【0087】
本発明によれば、液相からの単結晶の成長はまた、窒素含有溶媒中の超臨界溶液、好ましくは超臨界アンモニア含有溶液における成長法により実施してもよい。
【0088】
本方法によれば、系は結晶化段階で、ガリウム含有原料、好ましくは結晶窒化ガリウム、I族元素および/またはそれらの混合物、および/またはそれらの化合物、とりわけ窒素および/または窒素を含むもの、好ましくは、アジドを、必要に応じて、II族元素および/またはそれらの化合物、それらは鉱化剤を形成する、と共に含み、鉱化剤はアンモニアと共に、アンモニア含有溶媒として使用される。所望のガリウム含有窒化物の結晶化は、シードの表面上で、原料の溶解温度および圧力より、高い結晶化温度および/または低い結晶化圧力で実施される。2つの温度ゾーンが存在する。溶解領域に原料が存在し、少なくとも1つのシードが結晶化領域に存在し、溶解領域は結晶化領域上方に位置し、質量は溶解領域から結晶化領域に輸送される。
【0089】
好ましくは、溶解領域と結晶化領域との間の温度差は1℃〜150℃、好ましくは10℃〜100℃であり、結晶化領域では、温度は350℃以上であり、好ましくは400℃以上であり、最も好ましくは500℃〜550℃の範囲である。
【0090】
本発明によるバルク単結晶ガリウム含有窒化物は好ましくは、超臨界アンモニア含有溶液に基づく成長方法により、同じ化学組成の単結晶ガリウム含有窒化物からのシードの成長方向と垂直な方向の成長により得られる。
【0091】
好ましくは、本発明によるバルク単結晶ガリウム含有窒化物は、リチウムに基づく、ガリウム含有溶融物からの液相での単結晶のc軸に垂直な方向での少なくとも1つの成長段階、および超臨界アンモニア含有溶液中での単結晶のc軸に平行な少なくとも1つの成長段階の結果、所望の方向の単結晶の成長制御により得られるが、原料およびシードはそれらの相の各々で使用され、必要に応じて、c軸に垂直な方向およびc軸に沿った方向での成長段階が、単結晶の所望の寸法がその軸の少なくとも1つに沿って得られるまで繰り返される。
【0092】
好ましくは、本発明によるバルク単結晶ガリウム含有窒化物を得るために使用されるシードは、ガス相から結晶化法により得られ、表面転位密度が108/cm2以下である、単結晶のc軸に垂直に配向されたウエハ形態のガリウム含有窒化物単結晶の形態であり、最初に、このシードは、超臨界アンモニア含有溶液からの成長法により、単結晶のc軸に平行な方向で所望の厚さを有し、表面転位密度が104/cm2〜106/cm2の範囲である、ガリウム含有窒化物層で被覆され、その後、そのウエハの成長が、フラックス法によりc軸に垂直な方向で実施され、次に、ガリウム含有窒化物の別の層を、単結晶のc軸に向かって垂直に成長させたウエハ上に、超臨界アンモニア含有溶液からc軸に向かって成長を実施しながら、堆積することが可能となる。
【0093】
表面転位密度が非常に低い、HNP法により得られるガリウム含有窒化物結晶もまたシードとして使用してもよく、次に、所望の方向:シードの最初の形状により、フラックス法によりc軸に垂直な方向、一方、超臨界アンモニア含有溶液からの成長法によりc軸に沿った方向で成長させ、所望の寸法の単結晶が達成された後、それから所望の配向のウエハを切り出し、以後、フラックス法および/または超臨界アンモニア含有溶液からの成長法により成長段階を繰り返すことが可能である。
【0094】
さらに、自然結晶化の結果、フラックス法により六方ウエハの形態で得られたガリウム含有窒化物単結晶をシードとして使用してもよい。その後、そのようなシードの成長を、超臨界アンモニア含有溶液からの成長法によりc軸に沿って実施し、所望の寸法の単結晶が達成された後、それから所望の配向のウエハを切り出し、以後、フラックス法および/または超臨界アンモニア含有溶液からの成長法により成長段階を繰り返すことができる。
【0095】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、バルク単結晶ガリウム含有窒化物は、所望の方向での単結晶の成長制御により得られ、これは、原料およびシードを用いた超臨界アンモニア含有溶液中での、単結晶のc軸に垂直な方向での少なくとも1つの成長工程と、単結晶のc軸に平行な方向での少なくとも1つの成長工程と、を含む。
【0096】
通常、本発明によるバルク単結晶ガリウム含有窒化物を得るためには、HVPE法により得られたガリウム含有窒化物ウエハをシードとして使用する。
【0097】
しかしながら、好ましくは、ガリウム含有窒化物単結晶をシードとして、ガス相からの結晶化法により、より好ましくは超臨界アンモニア含有溶液からの成長法により単結晶として得られた、または得られた単結晶から切り出された、少なくとも1つの極性面を有するウエハ形態で、使用し、その後、そのウエハの成長を、フラックス法によりおよび/または超臨界アンモニア含有溶液からの成長法により、単結晶のc軸に垂直な方向で、実施する。
【0098】
本発明によるバルク単結晶ガリウム含有窒化物には、ドナーおよび/またはアクセプタおよび/または磁性型ドーパントを、1017/cm3〜1021/cm3の濃度でドープしてもよい。ドーピングの結果、本発明によるガリウム含有窒化物はn-型材料、p-型材料または補償材料(半絶縁性)となる。
【0099】
好ましくは、本発明によるバルク単結晶ガリウム含有窒化物は、窒化ガリウム形態である。
【0100】
好ましくは、バルク単結晶ガリウム含有窒化物を得るためのシードの適切な寸法は、ガリウム含有窒化物結晶格子のc軸に平行な方向およびc軸に垂直な方向での交互の成長を構成する最初の処理をシードに受けさせることにより確保される。所定の方向での結晶の交互成長は、c軸に垂直な方向でのGa-Li溶融物からのフラックス法により、およびc-軸に平行な方向での超臨界アンモニア含有溶液からの成長法により交互に成長させることにより実施する。その代わりに、それらの方法の1つを使用し、その後の段階で、所望の方向の成長面を交互に暴露させ、同時に、それに垂直な方向での成長を減少させる。
【0101】
所望の方向でガリウム含有窒化物単結晶の成長を減少させる方法の例は、公開番号WO 03/035945号で開示されている。
【0102】
本発明による単結晶に対する試験の結果から、その後の工程で、本発明による単結晶ガリウム含有窒化物を得る方法をc軸に垂直な方向で実施すれば、ガス相からの成長法により、とりわけHVPE法により得られた単結晶ガリウム含有窒化物ウエハに基づき、単結晶ガリウム含有窒化物の非常に高い結晶品質が達成されることが確認される。このようにして得られたウエハは、15mより長い、より好ましくは30mより長い、最も好ましくは約70mの非常に大きな曲率半径を有し、一方、シード成長方向と同じ方向(c軸に平行)で成長させた単結晶の曲率半径は、約2〜15mの標準値を有する。同時に、本発明による単結晶のFWHMは好ましくは40arcsec未満である。
【0103】
GaNは超臨界NH3中で良好な溶解度を示し、ただし、アルカリ金属またはNaNH2もしくはKNH2などのそれらの化合物が導入されることを条件とする。本発明者らが実施した試験に基づき、溶解度は圧力と共に増加し、温度と共に減少する。それらの関係に基づき、本発明によるプロセスを実施し、所望の結晶を得ることができる。
【0104】
原料を反応器の上部ゾーンに入れる。このゾーンは、少なくとも1つの単結晶シードが置かれる反応器の下部ゾーンの温度とは異なる温度管理下で維持される。
【0105】
特に、プロセス環境におけるGaN溶解度の負の温度係数は、温度勾配により、結晶窒化ガリウムの形態の原料の溶解領域である低温の上部反応器ゾーンから、結晶化領域であるより高温の下部ゾーンへの窒化ガリウムの化学輸送が可能となることを意味する。
【0106】
GaNの再結晶化プロセスにおいて好ましい原料として結晶窒化ガリウムを使用することが好ましい。容易に溶解し、徐々に溶解させることができる形態で、プロセスに必要とされるガリウムの量が確保されるからである。
【0107】
上記のように、超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化のためのシードは、任意の方法により得ることができる。好ましくは、GaN結晶を使用するが、これはHVPE法により得られ、この方法により、かなり大きな表面のウエハ形態でGaN単結晶を得ることができる。そのようなシードを使用することにより、本発明により得られるバルク単結晶ガリウム含有窒化物は、非常に低い転位密度を有するが、同時に、非常に厚くなる。本発明による材料は、半導体層のエピタキシャル堆積のための基板用の完全な材料である。同時に、上記のように実施される後のプロセスのためのシードを調製するために使用してもよい。
【0108】
鉱化剤として、アルカリ金属、それらの化合物、とりわけ窒素および水素を含むもの、ならびにそれらの混合物を使用することができる。アルカリ金属はLi、Na、K、RbおよびCsから選択してもよく、それらの化合物は水素化物、アミド、イミド、アミド-イミド、窒化物およびアジドから選択してもよい。
【0109】
本発明によるバルク単結晶ガリウム含有窒化物を得るために使用されるアルカリ金属イオンを添加したアンモニア含有溶液の超臨界環境はまた、得られる単結晶ガリウム含有窒化物の特性を修飾するために意図的に導入された、別の金属イオンおよび可溶形態の他の元素を含んでもよい。しかしながら、この環境はまた、原料と共に導入され、プロセス中に適用した装置の要素からその環境に放出される偶発的な不純物を含む。高純度試薬を使用することにより、またはプロセス要求のためにさらに精製までした試薬を使用することにより、偶発的な不純物の量を減少させることができる。装置からの不純物もまた、その分野の熟練者に公知の原理に従い、構成材料の選択により制御を受ける。
【0110】
好ましくは、所望の方向、c軸に対して垂直または平行のいずれかでの本発明による結晶の制御された成長は、下記実施例で詳細に記述した方法により実施される。実施例は、添付の図面において示されるように、プロセスの温度と期間の間の関係の図により説明される。図2に示されるように、超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化段階での、上部ゾーン−図3および4において簡単に示したオートクレーブ(下記でより詳細に説明する)の溶解領域である−における温度は、溶解領域の温度よりも低く維持され、温度は全結晶化サイクルの間、本質的に一定レベルに維持される。
【0111】
それらの条件では、ゾーン間の温度差、および温度勾配により、原料の溶解が溶解領域で起き、対流によりゾーン間での化学輸送が生じ、超臨界アンモニア含有溶液の過飽和がGaNに対し達成されると、GaNの結晶化が結晶化領域において、シード上で起きる。
【0112】
超臨界アンモニア含有溶液からの成長の間、ゾーン間の温度差の値は、広範囲にわたり変化してもよく、好ましくは、数℃〜数十℃である。さらに、本発明によれば、ゾーン間の温度差はプロセス中に変化してもよい。このように、成長速度および得られたバルク単結晶ガリウム含有窒化物の品質を制御することができる。
【0113】
さらに、例えば、両方のゾーンの温度を周期的に変化させることにより、基本プロセスを変更することができるが、結晶化領域の温度は常に、溶解温度の温度より高くなければならない。
【0114】
ガリウム含有結晶の成長制御のために現在使用されているフラックスプロセスの最適化に関する研究の作者は、図1に示したようなモリブデンるつぼを使用した。これらのるつぼを、雰囲気が制御され、高圧下で動作するように調整され、ゾーン加熱装置が備えられた高温反応器中に入れる。図1において、るつぼAは上記追加のフラックス(Bi、In、K、Na、Pb、Rb、Sb、SnおよびTeの群から選択される)を含むLi-Ga溶融物で満たされている。るつぼAの底には、GaNの形態の結晶原料Cが存在し、これは窒素の内部源である。シードBがプロセスの特定の段階で溶融物中に導入され、図示していない機構により、溶融物中に入れられ、引き上げられてもよい。結晶シードの2つの配向により、シード上の成長ゾーンはるつぼ内で様々な様式で配向させてもよいことが示される。
【0115】
超臨界アンモニア含有溶液からの成長は、様々な構造の反応器内で実施してもよい。下記実施例では、図3および4に概略が示されているオートクレーブ1を使用した。バッフル形態の設備2を備えたオートクレーブ1に、加熱5および/または6冷却装置を備えた2つの炉3および4を備えさせる。設備2は、中央および/または円周開口を有する水平バッフルまたは複数のバッフル7の形態としてもよく、オートクレーブ1内の上部溶解領域8と下部結晶化領域9とを分離する。100〜800℃の温度範囲の、オートクレーブ1内の各ゾーンの温度値は、制御装置(図示せず)により炉3および4上で設定してもよい。オートクレーブ1内では、溶解領域8は、水平バッフルまたは複数のバッフル7上方に存在し、原料10はそのゾーンに入れられる。一方、結晶化領域9は水平バッフルまたは複数のバッフル下方に存在する。少なくとも1つのシード11がそのゾーンに入れられる。シード17が配置される位置は、上昇および下降対流の交差点よりも低い。
【0116】
本発明によるバルク単結晶ガリウム含有窒化物は、非常に低い表面転位密度を有するという点で特徴づけられる。これは、アルカリ金属を、約0.1ppmまたはそれ以上の量、さらに1.0ppmを超える量、さらに10ppmを超える量で含んでもよく、系にフラックスまたは鉱化剤(所望の方向での制御された結晶成長のプロセスの型による)として導入される。本発明による生成物サンプルに対するGDMS(グロー放電質量分析)プロファイルにより、0.1ppm〜数ppmの範囲のアルカリ金属の存在が示される。さらに、反応環境中に存在するいくつかの遷移金属(Fe、Cr、Ni、Co、Ti、Mn)は測定可能なシグナルを提供する。比較のために、HVPE法により得られるGaN結晶に対する類似プロファイルにより、0.1ppm未満の量のカリウムの存在が示される。遷移金属に対するプロファイルはノイズレベルで存在し、これにより、HVPE法により得られるGaN結晶中のそれらの元素の量は非常に低いことが証明される。
【0117】
実施した試験に基づき、本発明の作者は、Ga-Li溶融物から、上記特定の追加のフラックスの存在下および超臨界アンモニア含有溶液から、シード上でGaN単結晶を成長させるプロセスを制御する条件を決定した。それらの条件は、XIII族の他の元素を含む窒化物、およびガリウムおよびXIII族の他の元素を含む混合窒化物に対しても、当然証明された。ガリウム、アルミニウムおよびインジウム窒化物結晶格子の同様のパラメータのために、本発明により得られたガリウム含有窒化物ではガリウムをインジウムおよび/またはアルミニウムで一部置換することが可能である。
【0118】
本発明について下記実施例においてより詳細に記述する。
【実施例1】
【0119】
(フラックスプロセス)
金属ガリウムおよびリチウムの混合物を、250cm3の体積を有するモリブデンるつぼ(A)中の高温反応器(図1)に入れた。In、K、Na、Pb、Rb、Sb、SnおよびTeからなる群より選択される追加のフラックスもまた、実施した実験におけるX:Ga:Liのモル比が0.5:1.0:1.5と1.5:1.0:2.5の間となるような量で、系に添加した。混合物をアルゴン(Ar)雰囲気中、約780℃まで加熱し、結果として、所定のX:Ga:Liのモル比の上記金属の合金が得られた。1日後、雰囲気を2.3MPaの圧力下の窒素(N2)に変更した。反応器内のそのような温度および圧力条件を次の数日間維持した。その後、結晶のc軸に本質的に垂直に配向し、c軸に垂直な断面の表面積が0.25〜4cm2である単結晶ウエハ形態のシード結晶(B)上での単結晶窒化ガリウムの成長プロセスを開始した。プロセス条件での成長プロセスの期間は1〜2週間であった。その後、反応器を最初に徐々に冷却し、それから、さらに(急速に)室温(RT)まで冷却した。その代わりに、シードを徐々に、プロセス条件で溶融合金から引き出した。プロセスの結果、約20%のシード結晶の表面積(結晶のC面で測定)の増加が観察された。プロセスで得られたGaN単結晶をさらに測定し、使用するために保存した。
【実施例2】
【0120】
(拡散フラックスプロセス)
金属ガリウムおよびリチウムの混合物を、250cm3の体積を有するモリブデンるつぼ(A)中の高温反応器(図1)に入れた。In、K、Na、Pb、Rb、Sb、SnおよびTeからなる群より選択される追加のフラックスもまた、実施した実験におけるX:Ga:Liのモル比が0.5:1.0:1.5と1.5:1.0:2.5の間となるような量で、系に添加した。混合物をアルゴン(Ar)雰囲気中、約780℃の平均温度に達するまで加熱し、ここで、るつぼの上部の温度は平均温度よりも数十℃だけ低く、るつぼの下部の温度は平均温度より数十℃高くした。結果として、所定のX:Ga:Liのモル比の上記金属の合金が得られた。1日後、るつぼ内の温度勾配を逆にし、雰囲気を2.3MPaの圧力下の窒素(N2)に変更した。反応器内のそのような温度および圧力条件を次の数日間維持した。その後、実施例1で記述したように得られた単結晶ウエハの形態の、結晶のc軸に本質的に垂直に配向し、c軸に垂直な断面の表面積が0.25〜4cm2であるシード結晶(B)上での単結晶窒化ガリウムの成長プロセスを開始した。シードをるつぼの下部に入れた。プロセス条件での成長プロセスの期間は1〜2週間であった。その後、反応器を最初に徐々に冷却し、それから、さらに(急速に)室温(RT)まで冷却した。その代わりに、シードを徐々に、プロセス条件で溶融合金から引き出した。プロセスの結果、約10%のシード結晶の表面積(結晶のC面で測定)の増加が観察された。プロセスで得られたGaN単結晶をさらに測定し、使用するために保存した。
【実施例3】
【0121】
(対流フラックスプロセス)
金属ガリウムおよびリチウムの混合物を、250cm3の体積を有するモリブデンるつぼ(A)中の高温反応器(図1)に入れた。In、K、Na、Pb、Rb、Sb、SnおよびTeからなる群より選択される追加のフラックスもまた、実施した実験におけるX:Ga:Liのモル比が0.5:1.0:1.5と1.5:1.0:2.5の間となるような量で、系に添加した。さらに、GaN-含有原料(C)をるつぼの底に入れた。混合物をアルゴン(Ar)雰囲気中、約780℃の平均温度に達するまで加熱し、ここで、るつぼの上部の温度は平均温度よりも数十℃だけ低く、るつぼの下部の温度は平均温度より数十℃高くした。結果として、所定のX:Ga:Liのモル比の上記金属の合金が得られた。1日後、雰囲気を2.3MPaの圧力下の窒素(N2)に変更した。反応器内のそのような温度および圧力条件を次の数日間維持した。その後、実施例1で記述したように得られた単結晶ウエハの形態の、結晶のc軸に本質的に垂直に配向し、c軸に垂直な断面の表面積が0.25〜4cm2であるシード結晶(B)上での単結晶窒化ガリウムの成長プロセスを開始した。シードをるつぼの上部に入れた。プロセス条件での成長プロセスの期間は1〜2週間であった。その後、反応器を最初に徐々に冷却し、それから、さらに(急速に)室温(RT)まで冷却した。その代わりに、シードを徐々に、プロセス条件で溶融合金から引き出した。プロセスの結果、約25%のシード結晶の表面積(結晶のC面で測定)の増加が観察された。プロセスで得られたGaN単結晶をさらに測定し、使用するために保存した。
【実施例4】
【0122】
(超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化)
WO 02/101120の開示内容に従い、600cm3の高圧オートクレーブ(図3および図4)の溶解領域に、ガリウム含有原料、シード、鉱化剤およびアンモニアを入れた。シードは、実施例1で記述したように得られた単結晶ウエハの形態の、結晶のc軸に本質的に垂直に配向し、c軸に垂直な断面の表面積が0.25〜4cm2である窒化ガリウム単結晶とした。金属ナトリウムを鉱化剤として使用した。原料を溶解領域に入れ、シードを結晶化領域に載置した(図3)。シード上での結晶化プロセスを、結晶化領域ではT2=550℃および溶解領域ではT1=500℃の一定温度条件下で実施した。オートクレーブ内のこの温度分布を16日間維持した(図2)。そのような条件では、オートクレーブ内の圧力は約390MPaであった。プロセスの結果、溶解領域での原料の部分的な溶解および結晶化領域での各シードの両側での単結晶窒化ガリウム層の成長が観察された。再結晶化層の総厚(結晶のc軸に沿って測定)は約1200μm(各側で)であった。プロセスで得られたGaN単結晶をさらに測定し、使用するために保存した。
【実施例5】
【0123】
(超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化)
金属ナトリウムの代わりに、a)金属リチウム、b)アジ化ナトリウムまたはc)臭化ナトリウムを鉱化剤として使用したことを除き、実施例4で記述した手順に従った。16日のプロセス後、結晶化領域においてシードの両側で単結晶窒化ガリウムの成長が観察された。再結晶化層の総厚(結晶のc軸に沿って測定)はそれぞれ、約a)380μm、b)840μmおよびc)530μmであった。プロセスで得られたGaN単結晶をさらに測定し、使用するために保存した。
【実施例6】
【0124】
(超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化)
実施例4で記述した手順に従い、使用したシードは、結晶のc軸に本質的に垂直に配向し、c軸に垂直な断面の表面積が0.25〜4cm2である単結晶ウエハの形態を有し、これらのウエハは正方形または二等辺三角形の形状を有した。プロセスの結果、溶解領域での原料の部分溶解ならびに結晶化領域での結晶のc軸に平行な面および各シード上の結晶のC面上での単結晶窒化ガリウム層の成長が観察された。再結晶化層の総厚(結晶のc軸に垂直に測定)は約2mmであり、再結晶化層の総厚(結晶のc軸に沿って測定)は約1200μm(各シード上)であった。プロセスで得られたGaN単結晶をさらに測定し、使用するために保存した。
【実施例7】
【0125】
(超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化)
金属ナトリウムの代わりに、鉱化剤として臭化ナトリウム使用したことを除き、実施例6で記述した手順に従った。c軸に本質的に垂直に配向し、結晶のc軸に平行な6つの面を有する六角形状を有し、c軸に垂直な断面の表面積が0.25〜4cm2である単結晶ウエハの形態のシード結晶を使用した。16日のプロセス後、結晶化領域において各シード上で、c軸に平行な全ての面上で単結晶窒化ガリウム層の成長が観察された。再結晶化層の総厚(結晶のc軸に垂直に測定)は、約1100μmであった。プロセスで得られたGaN単結晶をさらに測定し、使用するために保存した。
【実施例8】
【0126】
(超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化)
結晶化工程中、結晶化領域の温度をT2=500℃とし、溶解領域の温度をT1=450℃としたことを除き、実施例4で記述した手順に従った。使用したシードは、結晶のc軸に本質的に垂直に配向し、c軸に垂直な断面の表面積が0.25〜4cm2である単結晶ウエハの形態を有し、ウエハは正方形または二等辺三角形の形状を有し、少なくとも側面の1つが結晶のA面に平行であった。プロセスの結果、溶解領域での原料の部分溶解が観察され、結晶のc軸に平行な面上で、各シード上の厚さ約400μm(結晶のc軸に垂直に測定)の単結晶窒化ガリウム層の成長が観察され、ならびに各シードの両C面上では、再結晶化層の総厚(結晶のc軸に沿って測定)は各シード上で約700μmであった。プロセスで得られたGaN単結晶をさらに測定し、使用するために保存した。
【実施例9】
【0127】
(超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化)
再結晶化段階中、それぞれ、結晶化領域ではT2=550℃および溶解領域ではT1=500℃の標的温度に系が到達した後、溶解領域の温度T1を500〜450℃の範囲で周期的に変化させ、結晶化領域の温度T2を550〜500℃の範囲で周期的に変化させ、結晶化領域が常により温かくなるようにしたことを除き、実施例6で記述した手順に従った。このように、c軸に垂直および平行な結晶の成長を刺激した。16日のプロセス後、結晶化領域の各シード上の結晶のc軸に平行な全ての面およびC面上で単結晶窒化ガリウム層の成長が観察された。再結晶化層の総厚(a軸に沿って、すなわち結晶のc軸に垂直に測定)は約900μmであり、再結晶化層の総厚(結晶のc軸に沿って測定)もまた、約900μmであった。プロセスで得られたGaN単結晶をさらに測定し、使用するために保存した。
【0128】
実施例1〜9で得られた結晶を評価した。それらの結晶は高い結晶品質、低レベルの結晶格子偏向(ウエハの長い曲率半径)を有し、(0002)からのFWHM X線ロッキングカーブの好ましい値は60arcsec未満であり、より好ましい例(実施例6)では40arcsec未満であった。発明者らは、示唆した単結晶の成長技術は、本質的に大規模な単結晶を得る可能性を低下させることがある装置または材料の観点のいずれにおいても限定されないことを発見した。
【0129】
c軸に垂直な(実施例1〜3および6〜9)ならびにc軸に平行な(実施例4〜6および8〜9)窒化ガリウム結晶の成長の適当な(好ましくは交互の)組み合わせを使用することにより、体積2.5cm3およびC面の表面積が約5cm2のガリウム含有窒化物単結晶が得られる。そのような結晶は、それらの高い結晶品質および寸法のため、スライスしてウエハとしてもよく、その後、窒化物系光電気半導体デバイスのための基板として使用してもよい。そのようなウエハは任意の配向を有してもよく、極性または非極性のいずれかの面を有してもよい。カットは、単結晶の成長に対し所望の方向で実施してもよい。特に、単結晶の成長に対し本質的に配向させたカットにより、表面転位密度のさらなる減少が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】フラックス法による単結晶ガリウム含有窒化物の成長のためのるつぼの概略図である。
【図2】実施例4〜9の温度の時間変化を示した図である。
【図3】超臨界アンモニア含有溶液からの成長法において使用されるオートクレーブおよび炉のセットの断面図である。
【図4】本発明により単結晶ガリウム含有窒化物を得るための装置の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シード上で少なくともシード成長方向に本質的に垂直な方向で成長され、前記シード中に存在する結晶欠陥の伝播が本質的になく、転位密度が104/cm2を超えず、シードの転位密度に比べかなり低く、結晶格子の曲率半径が大きく、好ましくは15mより長く、より好ましくは30mより長く、最も好ましくは約70mであり、前記シードの結晶格子の曲率半径よりかなり長い、バルク単結晶ガリウム含有窒化物。
【請求項2】
シード上で少なくともシード成長方向に本質的に垂直な方向で成長され、前記シード中に存在する結晶欠陥の伝播が本質的になく、(0002)面からのX線ロッキングカーブのFWHMが好ましくは40arcsec未満であり(Cu K α1に対し)、前記シードのFWHMよりかなり長く、同時に、結晶格子の曲率半径が長く、好ましくは15mより長く、より好ましくは30mより長く、最も好ましくは約70mであり、前記シードの結晶格子の曲率半径よりかなり長い、バルク単結晶ガリウム含有窒化物。
【請求項3】
ドナー型および/またはアクセプタ型、および/または磁性型ドーパントが、1017/cm3〜1021/cm3の濃度でドープされ、n-型、p-型または補償(半絶縁)材料を含むことを特徴とする、請求項1または2記載の単結晶。
【請求項4】
c軸に垂直な方向の、特にa軸に沿う成長速度が、単結晶のc軸に平行な方向の成長速度と同じかまたはそれより高くなる環境または条件において成長させた、請求項1〜3のいずれか一項記載の単結晶。
【請求項5】
窒化ガリウム単結晶である、請求項1〜4のいずれか一項記載の単結晶。
【請求項6】
請求項1記載の単結晶として得られる、またはそのような単結晶から切り出され、カットが単結晶の成長方向に対し所望の方向で実施される、極性または非極性表面を有する、任意の配向のウエハ。
【請求項7】
その表面転位密度が、単結晶の成長方向に本質的に平行な方向でのスライシングの結果、さらに減少することを特徴とする、請求項6記載の単結晶。
【請求項8】
さらに加工可能な非極性表面を有することを特徴とする、請求項6または7記載の単結晶。
【請求項9】
さらに加工可能な極性表面を有することを特徴とする、請求項6または7記載の単結晶。
【請求項10】
XIII族元素の窒化物から作製された半導体構造のエピタキシャル堆積のための基板としての、請求項6記載のウエハの使用。
【請求項11】
とりわけ、XIII族元素末端側で、十分低い表面転位密度を有し、100mm2以上、好ましくは450mm2以上のエピタキシャル表面を有する窒化物基板を必要とする半導体構造の製造に特に適した、請求項1記載の単結晶として得られる、または請求項6または7記載のウエハである、XIII族元素の窒化物から作製された半導体構造のエピタキシャル堆積のための基板。
【請求項12】
請求項11記載の基板上で堆積させた半導体構造。
【請求項13】
シード上で少なくともシード成長方向に本質的に垂直な方向で成長され、前記シード中に存在する結晶欠陥の伝播が本質的になく、転位密度が104/cm2を超えず、前記シードの転位密度に比べかなり低く、結晶格子の曲率半径が大きく、好ましくは15mより長く、より好ましくは30mより長く、最も好ましくは約70mであり、前記シードの結晶格子の曲率半径よりかなり長い、バルク単結晶ガリウム含有窒化物の調製方法であって、
フラックス法により前記シードのC軸に垂直な方向でバルク単結晶ガリウム含有窒化物を成長させる第1の工程と、
アンモニア法により前記シードのC軸の方向でバルク単結晶ガリウム含有窒化物を成長させる第2の工程と、
を含む、方法。
【請求項14】
フラックス法を使用して、シードのAまたはM-軸の方向でバルク単結晶ガリウム含有窒化物を成長させる、請求項13記載のバルク単結晶ガリウム含有窒化物の調製方法。
【請求項15】
第1の工程および第2の工程を繰り返し実施する、請求項13記載のバルク単結晶ガリウム含有窒化物の調製方法。
【請求項16】
前記フラックス法は、リチウムおよびガリウムを、Bi、In、Pb、Rb、Sb、SnおよびTeからなる群より選択される追加のフラックスと共に含む金属の液体混合物からバルク単結晶ガリウム含有窒化物を成長させる方法である、請求項13記載のバルク単結晶ガリウム含有窒化物の調製方法。
【請求項17】
前記アンモニア法は、窒素を含む超臨界溶液中で、バルク単結晶ガリウム含有窒化物を成長させる方法である、請求項13記載のバルク単結晶ガリウム含有窒化物の調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−501600(P2008−501600A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551658(P2006−551658)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【国際出願番号】PCT/JP2005/011093
【国際公開番号】WO2005/121415
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(502177901)アンモノ・スプウカ・ジ・オグラニチョノン・オドポヴィエドニアウノシツィオン (12)
【氏名又は名称原語表記】AMMONO Sp.zo.o.
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】