説明

バルブ、バルブの製造方法、バルブを備えた燃料電池、及び燃料電池の製造方法

【課題】本発明は、小型化が図れ、バルブの動作や位置の保持のために消費されるエネルギーが極めて少ないバルブ、バルブの製造方法、バルブを備えた燃料電池、及び燃料電池の製造方法を提供する。
【解決手段】温度変化により形状が変化する形状変化部材と、前記形状変化部材に当接し、前記形状変化部材を付勢する付勢部材と、前記形状変化部材に接続され、前記形状変化部材に熱を付与する熱付与部材と、備えたことを特徴とするバルブが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ、バルブの製造方法、バルブを備えた燃料電池、及び燃料電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子技術の進歩に伴い、電子機器の小型化、高性能化、ポータブル化が進んでおり、これに使用される電池の小型化、高エネルギー密度化の要求が強まっている。そのような中、小型軽量でありながら高容量の燃料電池が注目されている。特に、メタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)は、水素ガスを使用する燃料電池に比べて、水素ガスの取り扱いの困難さや有機燃料を改質して水素を作り出す装置などの必要がないため、小型化に適している。
【0003】
この直接メタノール形燃料電池では、アノード電極側にメタノールと水を供給し、固体電解質膜近傍の触媒でメタノールと水とを反応させてプロトン(H)と電子(e)とを取り出しているが、直接メタノール形燃料電池を使用しないときには、燃料タンクに蓄えられた燃料(メタノール)の消費を防ぐために燃料(メタノール)の供給を遮断する必要がある。その場合、燃料(メタノール)の供給を遮断するためにバルブを設け、これを開閉させるための駆動装置などを設けるようにすれば、燃料電池の小型化が図れず、また、バルブの動作のために余分なエネルギーを消費してしまうことにもなる。
【0004】
ここで、燃料タンクと燃料極とを結ぶ流路にダイヤフラムを備えるバルブを設け、燃料タンク側と外気側との差圧を利用して流路の開閉を行う技術が提案されている(特許文献1を参照)。しかしながら、特許文献1に開示されているようなダイヤフラムを備えるバルブでは、外気側に対して燃料タンク側の内圧が低くならないとバルブを閉じることができず、発電を停止した場合でもバルブが閉まらず燃料が消費されてしまう場合があるという問題があった。
【0005】
また、水素ガスチャンバーの開口部にヒータコイルとバイメタルを備えるバルブを設け、開口部の開閉を行う技術が提案されている(特許文献2を参照)。しかしながら、特許文献2に開示されているようなヒータコイルとバイメタルを備えるバルブでは、バルブを所定の位置に保持するために電流を流し続けねばならない場合が生じ、余分なエネルギーを消費してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2006−9961号公報
【特許文献2】特開2002−33112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、小型化が図れ、バルブの動作や位置の保持のために消費されるエネルギーが極めて少ないバルブ、バルブの製造方法、バルブを備えた燃料電池、及び燃料電池の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、温度変化により形状が変化する形状変化部材と、前記形状変化部材に当接し、前記形状変化部材を付勢する付勢部材と、前記形状変化部材に接続され、前記形状変化部材に熱を付与する熱付与部材と、備えたことを特徴とするバルブが提供される。
【0008】
また、本発明の他の一態様によれば、付勢部材を形成し、温度変化により形状が変化する形状変化部材を形成し、前記付勢部材に前記形状変化部材を接合し、前記形状変化部材に熱を付与する熱付与部材を前記形状変化部材に接続すること、を特徴とするバルブの製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明の他の一態様によれば、シリコン基板の表面に酸化シリコン膜を形成し、前記酸化シリコン膜の表面にNi−Ti(ニッケル−チタン)系形状記憶合金の膜を形成し、前記Ni−Ti(ニッケル−チタン)系形状記憶合金の膜の記憶熱処理をし、前記Ni−Ti(ニッケル−チタン)系形状記憶合金の膜に熱を付与する熱付与部材を前記Ni−Ti(ニッケル−チタン)系形状記憶合金の膜に接続するように形成し、前記付勢部材の直下の前記シリコン基板に孔を設けること、を特徴とするバルブの製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明の他の一態様によれば、発電セルと、前記発電セルのアノード電極側に設けられ、請求項1〜5のいずれか1つに記載のバルブを備えたバルブ板と、供給孔を有し、前記バルブにより前記供給孔の開閉が可能な位置に設けられた隔壁と、前記隔壁に対向するように設けられた燃料タンクと、前記発電セルのカソード電極側に設けられ、複数の通気孔と前記通気孔の開閉手段とを備えたカバーと、を備えたことを特徴とする燃料電池が提供される。
【0011】
また、本発明の他の一態様によれば、固体高分子電解質膜を作成し、カソード電極側の集電体を作成し、その上に触媒を形成してカソード電極を作成し、アノード電極側の集電体を作成し、その上に触媒を形成してアノード電極を作成し、前記固体高分子電解質膜の両側に、前記カソード電極と前記アノード電極とを接合して発電セルを作成し、上記のバルブを備えたバルブ板を作成し、前記バルブ板を前記発電セルの前記アノード電極側に接合し、熱伝導部材の一端を前記発電セルもしくはその近傍に接続し、熱付与部材の一端を制御手段もしくは外部接続端子に接続し、供給孔を備えた隔壁を作成し、前記隔壁と前記バルブ板とを前記バルブにより前記供給孔の開閉が可能な位置に接合し、前記隔壁と燃料タンクを接合し、複数の通気孔と前記通気孔の開閉手段とを有するカバーを作成し、前記カバーを前記発電セルの前記カソード電極側に接合すること、を特徴とする燃料電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小型化が図れ、バルブの動作や位置の保持のために消費されるエネルギーが極めて少ないバルブ、バルブの製造方法、バルブを備えた燃料電池、及び燃料電池の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1の実施の形態について説明をする。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るバルブを説明するための模式断面図であり、図1(a)は模式斜視断面図、図1(b)は模式断面図である。
図1(a)、(b)に示すように、バルブ1には形状変化部材2、付勢手段である突起4、熱伝導部材6、熱付与部材7が設けられている。突起4はバルブ板3から一体的に形成され、バルブ板3には発電セル側に燃料を通過させるための開孔5が設けられている。また、突起4の凸側表面を覆うように形状変化部材2が設けられている。突起4の凸側表面と形状変化部材2との間には、わずかな隙間が有っても良いが、後述する突起4の付勢作用を考慮すれば、少なくとも一部が常時当接している方が好ましい。また、突起4と形状変化部材2の形状は、曲面を有するもの、平面を有するものなど任意の形状を適宜選択することができる。ただし、供給孔9の断面は円形であることが多いので、突起4と形状変化部材2の形状を球面の一部を有するもの(例えば、半球)とすれば、供給孔9に対するシール性を高めることができるので好ましい。
【0014】
形状変化部材2には、熱伝導部材6と熱付与部材7とが接続されている。熱伝導部材6の他端は、後述する発電セル61(図7〜図10を参照)自体、またはその近傍に接続され、発電セル61(図7〜図10を参照)の発熱による熱が形状変化部材2に伝えられるようになっている。熱付与部材7は、形状変化部材2に熱を付与するためのものであり、例えば、熱付与部材7を介して形状変化部材2に通電し、形状変化部材2自体を発熱させるもの、熱付与部材7に通電して発熱させ、その熱を形状変化部材2に伝えるようなもの、外部の熱源から熱を形状変化部材2に伝えるようなものなどを例示することができる。そのうち熱付与部材7への通電は、例えば、燃料電池が接続された機器の充電池などの外部電源から行われるようにすることができる。また、通電量や通電時間の制御は、ハード回路により構成された図示しない制御手段により行うこともできるし、燃料電池が接続される機器の制御手段により行うこともできる。ただし、燃料電池が各種の機器に用いられるという汎用性の観点からは、燃料電池を独立したシステムとすることが好ましく、燃料電池にハード回路により構成された図示しない制御手段を設けるようにすることが好ましい。
【0015】
バルブ板3に対向させるようにして設けられる隔壁8には、開口された供給孔9が設けられている。また、バルブ1により供給孔9の開閉が可能となるような位置にバルブ板3が設けられている。そのため、バルブ1(形状変化部材2)が供給孔9の開閉を行うことで燃料の供給と遮断ができるようになっている。尚、図中の矢印は燃料の供給方向を示している。
【0016】
ここで、バルブ板3、突起4の材料にはある程度の機械的強度と耐薬品性のある材料を用いることができる。例えば、樹脂材料としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリ塩化ビニル樹脂(PVC),ポリメチルペンテン樹脂(PMP),アクリルアクリロニトリルスチレン樹脂(AAS),エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)などや、これらを2種以上を組み合わせた複合材を用いることができる。特に、繰り返しの圧力に耐える機械的強度などの観点からポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などとすることが好ましい。
【0017】
形状変化部材2には、温度により形状が変化するものを用いることができ、例えば、形状記憶合金やバイメタルなどを用いることができる。形状記憶合金としては、Ni−Ti(ニッケル−チタン)系形状記憶合金、Cu−Zn−Al(銅−亜鉛−アルミニウム)系形状記憶合金などを例示することができる。また、バイメタルとしては、2種類の熱膨張率の異なる金属板を貼り合わせたもの、例えば、鉄とニッケルの合金に、マンガン、クロム、銅などを添加したものなどを例示することができる。
【0018】
熱伝導部材6には、高熱伝導性を有する材料を用いることができ、例えば、銅、アルミニウム、金などの金属や合金、高熱伝導性樹脂、高熱伝導性複合材料などを例示することができる。
【0019】
熱付与部材7には通電性や熱伝導性を考慮して、例えば、銅、アルミニウム、金などの金属や合金を用いることができる。
【0020】
隔壁8には、ある程度の機械的強度と耐薬品性のある材料を用いることができる。例えば、樹脂材料としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリ塩化ビニル樹脂(PVC),ポリメチルペンテン樹脂(PMP),アクリルアクリロニトリルスチレン樹脂(AAS),エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)などや、これらを2種以上を組み合わせた複合材を用いることができる。
【0021】
ここで、突起4と形状変化部材2の厚さを例示するものとすれば、突起4の材質がポリフェニレンサルファイド(PPS)の場合には、その厚さを0.1〜0.2ミリメートル程度、形状変化部材2の材質がNi−Ti(ニッケル−チタン)系形状記憶合金の場合には、その厚さを0.1ミリメートル程度とすることができる。ただし、これらの材質や厚さに限定されるわけではなく、バルブ1の動作寸法、動作温度範囲などの諸条件により適宜変更することができる。
【0022】
次に、本実施の形態に係るバルブ1の作用について説明をする。
【0023】
尚、説明の便宜上、形状変化部材2が形状記憶合金の場合を説明する。
【0024】
形状変化部材2は、高温時(例えば、60℃程度)に形状変化部材2の高さが低くなるよう形状が記憶されている。そのため、形状変化部材2に熱が付与されて高温になると、突起4を押圧してバルブ1の高さが低くなるような変形が起こり、形状変化部材2が供給孔9から離隔してバルブ1が開放状態となる。
【0025】
形状変化部材2が低温(例えば、常温程度)になると、形状記憶合金はマルテンサイト相となり柔らかく変形しやすい状態になる。このとき、突起4が元の形状に戻ろうとするために働く力により形状変化部材2が付勢されて(押し上げられて)、バルブ1の高さが高くなるような変形が起こる。そのため、形状変化部材2が供給孔9と当接し、供給孔9が塞がるのでバルブ1が閉止状態となる。
【0026】
バルブ1を開放状態とし、燃料を供給するためには形状変化部材2に熱を付与する必要がある。本実施の形態に係るバルブ1においては、熱付与部材7を介して形状変化部材2に通電し、形状変化部材2自体を発熱させたり、熱付与部材7に通電して発熱させ、その熱を形状変化部材2に伝えたり、外部の熱源から熱を形状変化部材2に伝えたりすることができるので形状変化部材2に熱を付与することができる。
【0027】
ここで、バルブ1の開放状態を保つためには形状変化部材2を高温に保つ必要があるが、通電や熱の供給を続けたのでは余分なエネルギーを消費してしまうという問題が生じる。本発明者は検討の結果、燃料電池の発電による廃熱を利用して形状変化部材2を高温に保つことができれば、形状変化部材2に対する通電などを発電の始動時に限ることができ、エネルギーの消費を抑制することができるとの知見を得た。
【0028】
本実施の形態におけるバルブでは、燃料電池の発電により発電セル部分に発生する熱が、熱伝導部材6を介して形状変化部材2に伝導されて形状変化部材2を高温に保つことができる。そのため、燃料電池の発電中は、熱付与部材7を介して形状変化部材2に通電などを行わないでもバルブ1の開放状態を保つことができる。尚、熱伝導部材6を介して形状変化部材2に伝導される熱量が少ない場合は、補助的に熱付与部材7を介した通電などを行うこともできる。その場合であっても、熱付与部材7を介した通電量などを抑制することができるので余分なエネルギー消費を抑えることができる。
【0029】
そして、燃料電池の発電が停止すれば、発電による発熱もなくなるので形状変化部材2が低温(例えば、常温程度)となり、バルブ1が閉止状態となる。そのため、燃料の余分な供給を抑制することができる。ここで、形状変化部材2は供給孔9の付近にあり、燃料のガスなどにより比較的早く冷却されることが期待できる。また、特許文献2に開示されているような複雑な機構を必要としないので、故障や破損のおそれが少なく信頼性や開閉の応答性が高い。また、小型化も可能であり、製造が容易でコストが低いなどの優れた効果を有している。尚、後述するように、燃料電池の発電の停止は燃料電池に供給される空気(酸素)を遮断することで行うことができる。
【0030】
発電の始動時に行われる形状変化部材2に対する通電などの停止時期は、通電の抵抗値の変化や温度変化を図示しない検出手段で検出して知ることができる。また、予め決められた時間により通電などを停止させることもできるし、操作者が図示しないモニターランプなどを見て停止させるようにすることもできる。
【0031】
次に、本実施の形態に係るバルブ1の製造方法について説明をする。
図2は、本実施の形態に係るバルブ1の製造方法について説明をするためのフローチャートである。
尚、本実施の形態は、樹脂製のバルブ板3に一体的に突起4を形成させる場合を例示するものである。
【0032】
まず、バルブ板3を塑性加工して付勢手段である突起4を形成させる(ステップS1)。尚、加工方法は塑性加工に限定されるわけではなく、成形加工、切削加工などとすることもでき、加熱温度なども適宜選択することができる。尚、開孔5も同時に加工することができるが、別途切削加工などにより加工してもよい。
【0033】
一方、塑性加工により形状変化部材2を所定の形状に形成させる(ステップS2)。尚、加工方法は、切削加工などとすることもできる。この際、突起4の凸側表面と形状変化部材2の凹側表面との少なくとも一部が当接する形状とすることが好ましく、ほぼ全面が当接するような形状とすることがより好ましい。
【0034】
次に、突起4に形状変化部材2を接合させる(ステップS3)。接合方法としては、例えば、エポキシ系接着剤を用いた接着を例示することができる。ただし、これに限定されるわけではなく、接着剤を適宜選択することができる。また、接着剤による接合にも限定されるわけではなく、熱溶着や超音波溶着などを用いてもよい。
【0035】
次に、形状変化部材2に、熱伝導部材6と熱付与部材7の一端を接続する(ステップS4)。例えば、熱伝導部材6と熱付与部材7を銅線とし、その一端をハンダ付けや超音波接合などで形状変化部材2に接続する。尚、この後、バルブ1を備えたバルブ板3を燃料電池の発電セル部分に接合することになるが、詳細は後述する。
【0036】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るバルブを説明する。
図3は、本発明の第2の実施の形態に係るバルブ10を説明するための模式断面図である。
本実施の形態に係るバルブ10は、シリコン基板上にバルブ1を形成させるようにしたところが図1で説明をしたバルブ1と異なる。そのため、図1で説明をしたものと同様の部分には同じ符号を付し説明は省略する。尚、図3に示すバルブ10の状態は、高温の時(バルブ10が閉のとき)である。
【0037】
シリコン基板13の表面には、付勢手段であるシリコン酸化膜14が設けられ、その表面を覆うように形状変化部材12が設けられている。シリコン酸化膜14の直下には、シリコン酸化膜14が変形できるように(盛り上がれるように)孔5aが設けられている。また、孔5aの開口部分はシリコン酸化膜14で覆われ、シリコン基板13の表裏が連通しないようになっている。尚、孔5aは必ずしもシリコン基板13の裏面に開口している必要はなく、シリコン酸化膜14の中央部付近に隙間(空間)を設けるようにしたものであってもよい。
【0038】
本実施の形態においては、付勢手段であるシリコン酸化膜14、形状変化部材12、熱伝導部材6、熱付与部材7のみならず、シリコン基板13、孔5aもバルブ10の構成要素となる。尚、開孔5の開口部には、熱伝導部材6、熱付与部材7が設けられておらず、これらは開孔5を避けた位置に設けられている。
【0039】
ここで、シリコン酸化膜14と形状変化部材12の厚さを例示するものとすれば、シリコン酸化膜14の厚さを1〜2マイクロメートル程度、形状変化部材12の厚さを1〜2マイクロメートル程度とすることができる。ただし、これらの厚さに限定されるわけではなく、バルブ10の動作寸法、動作温度範囲などの諸条件により適宜変更することができる。
【0040】
次に、本実施の形態に係るバルブ10の作用について説明をする。
バルブ10の部材の熱膨張係数の大きさは、形状変化部材12(Ni−Ti系形状記憶合金)>シリコン基板13(Si)>シリコン酸化膜14(SiO)となっている。ここで、形状変化部材12(Ni−Ti)の記憶熱処理が行われる400℃近辺では、原子拡散により応力緩和が起こるためNi−Ti、Si、SiOの材料の長さはほぼ同等となっている。そして、これらの材料が常温程度まで冷却されたときには、シリコン基板13(Si)を基準に考えれば、シリコン酸化膜14(SiO)の熱収縮は小さく長さが余るため盛り上がろうとする。一方、Ni−Tiは熱収縮が大きく長さが短くなるため周囲のシリコン基板13(Si)に引張られて平らになろうとする。前述したように、常温ではNi−Tiはマルテンサイト相となり柔らかく変形しやすい状態になるので、シリコン酸化膜14(SiO)の盛り上がりによりバルブ10の高さが高くなるような変形が起こる。そのため、形状変化部材12が供給孔9と当接し、供給孔9が塞がるのでバルブ10が閉止状態となる。
【0041】
高温の時(例えば、60℃程度)には、Ni−Tiが高温相に逆変態するときの力がシリコン酸化膜14(SiO)の盛り上がろうとする力を上回り、バルブ10の高さが低くなるような変形が起こり、形状変化部材12が供給孔9から離隔してバルブ10が開放状態となる。
【0042】
尚、熱伝導部材6や熱付与部材7などの作用については、図1で説明をしたものと同様のため説明は省略する。
【0043】
次に、本実施の形態に係るバルブ10の製造方法について説明をする。
図4は、本実施の形態に係るバルブ10の製造方法について説明をするための模式工程断面図である。
まず、図4(a)に示すように、シリコン基板13の表面を酸化させて酸化シリコン(SiO)の膜31を形成させる。尚、酸化シリコンの膜を成膜してもよい。
【0044】
次に、図4(b)に示すように、形状記憶合金(例えば、Ni−Ti)の膜32を成膜し、記憶熱処理を施す。
次に、図4(c)に示すように、選択的なエッチングを行い、酸化シリコン(SiO)の膜31から付勢部材であるシリコン酸化膜14を、形状記憶合金(例えば、Ni−Ti)の膜32から形状変化部材12を形成させる。
【0045】
次に、図4(d)に示すように、熱伝導部材6と熱付与部材7とを選択的に成膜する。このとき、後述する開孔5の開口部分が、熱伝導部材6、熱付与部材7により塞がれないような位置に成膜する。尚、熱伝導部材6と熱付与部材7とを同一の材料とし、全体を成膜した後、不要部分を選択的にエッチング法により除去するようにしてもよい。また、熱伝導部材6、熱付与部材7の成膜を行わず、例えば、銅線の一端をハンダ付けや超音波接合などで形状変化部材12に接続するようにしてもよい。
【0046】
次に、図4(e)に示すように、エッチング法を用いてシリコン基板13の裏面側から選択的に孔5aと開孔5とを形成させる。このとき、孔5aはシリコン酸化膜14の直下に設けられる。また、開孔5は燃料の均一な供給を考慮してその数と配置等が適宜決定される。尚、図4(e)に示すバルブ10の状態は、常温の時(バルブ10が開のとき)である。
【0047】
次に、必要があれば、シリコン基板13からバルブ10を備えたバルブ板13aを切り出す。尚、シリコン基板13に複数のバルブ10を備えたバルブ板13aを形成させるようにし、これを切り出すようにすれば生産効率を向上させることができる。
【0048】
その後、このバルブ10を備えたバルブ板13aを燃料電池の発電セル部分に接合することになるが、詳細は後述する。
【0049】
次に、本発明の第3の実施の形態に係るバルブを説明する。
図5は、本発明の第3の実施の形態に係るバルブを説明するための模式断面図であり、図5(a)は模式斜視断面図、図5(b)は模式断面図である。
尚、図1で説明をしたものと同様の部分には同じ符号を付し説明は省略する。図1で説明をしたものは、バルブ板3と突起4とが一体的に形成された場合であるが、本実施の形態に係るバルブ40は、バルブ板43と突起44とを別個に形成し、その後、両者を接合するようにしたものである。接合方法は、接着剤によるもの、熱溶着によるもの、超音波溶着によるものなどのように、任意の方法を適宜選択することができる。尚、突起44が設けられる部分に形成された孔5bは、突起44の変形がし易いようにするためのいわゆる空気抜きである。ただし、必ずしも貫通孔である必要はなくある程度の体積を有する空間であってもよい。
【0050】
本実施の形態においては、バルブ板43と突起44とを別個に形成させるので、それぞれの必要に合わせて材料や寸法などを別個に選択することができる。そのため、例えば、バルブ板43の剛性(材質や厚みなど)とは別に、突起44の弾性力(材質や厚みなど)と形状変化部材42の形状変化時の力とのバランスなどを考慮することができ、それぞれを最適な設計とすることができる。
【0051】
尚、作用に関しては図1で説明をしたものと同様のため説明は省略する。また、製造方法に関しても、バルブ板43と突起44とを別個に形成させる以外は同様なので説明は省略する。
【0052】
図6は、本発明の第4の実施の形態に係るバルブを説明するための模式断面図である。 図5で説明をしたものは、突起44の凸側表面を覆うように形状変化部材42が設けられているが、本実施の形態に係るバルブ50は、形状変化部材52の凸側表面を覆うように突起54が設けられている。尚、図1や図5で説明をしたものと同様の部分には同じ符号を付し説明は省略する。
【0053】
本実施の形態においては、バルブ板43の側に形状変化部材52が設けられているので、図5で説明をしたものが有する効果の他にも、形状変化部材52と熱伝導部材6や熱付与部材7との接続が容易となるという効果をあわせ持つ。例えば、バルブ板43にメッキ法などで予め熱伝導部材6や熱付与部材7をパターン配線し、その上に形状変化部材52を接合させることで、形状変化部材52自体の接合と熱伝導部材6や熱付与部材7との接続を一度に行うことができる。
【0054】
尚、作用に関しては図1で説明をしたものと同様のため説明は省略する。また、製造方法に関しても、バルブ板43と突起54とを別個に形成させること、形状変化部材52と突起54との接合順番が異なること以外は同様なので説明は省略する。
【0055】
次に、本発明の実施の形態に係る燃料電池の構成を説明する。
尚、説明の便宜上、メタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)の説明をする。
【0056】
図7は、本発明の実施の形態に係る燃料電池の構成を説明するための模式構成図である。 また、図8は、本発明の実施の形態に係る燃料電池の模式外観図であり、図9は、本発明の実施の形態に係る燃料電池の模式断面図である。
【0057】
図7〜図8に示すように、燃料電池60には、発電セル61と、前述した本発明の実施の形態に係るバルブを備えたバルブ板65と、燃料タンク66とが設けられている。また、発電セルには、カソード電極62、固体高分子電解質膜63、アノード電極64、図示しない触媒などが設けられている。カバー67には複数の通気孔67aが設けられ、カソード電極62側に空気(酸素)を供給し、また、カソード電極62側で発生した水を水蒸気として排出することができるようになっている。開閉レバー68は、通気孔67aを開閉させるためのものであり、開閉レバー68を操作することで図示しないシャッターを動作させて、通気孔67aを開閉できるようになっている。尚、開閉レバー68とこれにより動作するシャッターは開閉手段の一例にすぎず、例えば、カバー67をスライドさせることにより通気孔67aの開閉を行うなど適宜変更が可能である。燃料タンク66からアノード極64の間にかけて記載されている矢印は、燃料の流れを示し、カバー67からカソード電極62にかけて記載されている矢印は、空気(酸素)の流れを示している。
【0058】
図10は、発電セル部分の説明をするための模式図である。
図10に示すように、発電セル61には、カソード電極62、固体高分子電解質膜63、アノード電極64とが設けられている。
【0059】
固体高分子電解質膜63は、例えば、無機多孔質膜からなりその孔63aには高分子電解質63bが充填されている。高分子電解質63bとしては、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)を例示することができる。尚、固体高分子電解質膜63は、有機多孔質膜、有機多孔質膜と無機多孔質膜との複合材などであってもよく、また、多孔質膜のみならずプロトンの透過性が高く燃料の透過性が低い膜を適宜選択することもできる。
カソード電極62の集電体62aには、PTFE(Polytetrafluoroethylene)溶液を含浸させて撥水処理を行った多孔質性のカーボン織布またはカーボンペーパー(PTFE含有量は5重量%程度)を用いることができる。カソード電極62の触媒62bには、白金(Pt)の微粒子を、活性炭・黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボン上に担持させたものを用いることができる。この時、触媒中の白金(Pt)の含有量は、10重量%〜70重量%程度とすることが好ましい。
【0060】
アノード電極64の集電体64aには、PTFE(Polytetrafluoroethylene)溶液を含浸させて撥水処理を行った多孔質性のカーボン織布またはカーボンペーパー(PTFE含有量は5重量%程度)を用いることができる。アノード電極64の触媒64bには、白金(Pt)−ルテニウム(Ru)の微粒子を、活性炭・黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボン上に担持させたものを用いることができる。この時、触媒中の白金(Pt)とルテニウム(Ru)の合計含有量は10重量%〜70重量%程度とすることが好ましい。また、白金(Pt)とルテニウム(Ru)の重量比は、白金(Pt):ルテニウム(Ru)=5:1〜1:2程度が好ましい。そして、集電体62aと集電体64aとは負荷69と電気的に接続されている。
【0061】
その他、前述したように、カソード電極62側にはカバー67が設けられ、カバー67には空気(酸素:O)の供給や発生した水を水蒸気として排出するための複数の通気孔67aが設けられている(図8、図9を参照)。また、アノード電極64側には、前述した本発明の実施の形態に係るバルブを備えるバルブ板、供給孔9を備える隔壁8、残余の燃料(メタノール水溶液)や反応によって生じた炭酸ガス(二酸化炭素:CO)を外部に排出するための図示しない燃料排出口などが設けられている(図8、図9を参照)。
【0062】
尚、具体例として例示した材質、形状、配置、成分比などはこれらに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0063】
次に、燃料電池60の作用について説明をする。
アノード電極64側に、燃料であるメタノール水溶液が供給されると、メタノール水溶液はアノード電極64の触媒64bにより下記の式(1)の酸化反応を生ずる。そして、この反応により二酸化炭素CO、プロトン(H)、電子(e)を発生させる。プロトン(H)は、固体高分子電解質膜63を透過してカソード電極62側に移動する。電子(e)は、負荷69を通って仕事をした後、カソード電極62側に移動する。

CHOH+HO→CO+6H+6e …(1)

カソード電極62側に到達したプロトン(H)と、負荷69を通って仕事をした後にカソード電極62に側に到達した電子(e)とが、カソード電極62の触媒62bにより空気中の酸素Oと反応して式(2)の還元反応を生じる。

6H+6e+3/2O2→3H2O …(2)

アノード電極64側で発生した二酸化炭素(CO)は、残余のメタノール水溶液とともに図示しない燃料排出口から外部に排出される。また、カソード電極62側で発生した水は、水蒸気として通気孔67aから排出される。
【0064】
燃料電池60の発電を停止させるときには、開閉レバー68を操作することで図示しないシャッターを動作させ、通気孔67aを閉じるようにする。そのようにすれば、カソード電極62側に空気(酸素:O)が供給されなくなるため発電が停止する。前述したように、発電が停止し発熱がなくなれば、本発明の実施の形態に係るバルブが供給孔9を塞ぐので燃料の無駄な消費が抑制される。また、バルブの動作やその位置の保持のために消費されるエネルギーをも抑えることができる。
【0065】
次に、本実施の形態に係る燃料電池60の製造方法について説明をする。
図11は、本実施の形態に係る燃料電池の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0066】
まず、例えば、無機多孔質膜の孔63aに高分子電解質63bを充填して固体高分子電解質膜63を作成する(ステップS10)。高分子電解質63bとしては、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)などを例示することができる。尚、固体高分子電解質膜63は、有機多孔質膜、有機多孔質膜と無機多孔質膜との複合材などであってもよく、また、多孔質膜のみならずプロトンの透過性が高く燃料の透過性が低い膜を適宜選択することもできる。
【0067】
次に、多孔質性のカーボン織布またはカーボンペーパーにPTFE(Polytetrafluoroethylene)溶液を含浸させてカソード電極62側の集電体62aを作成する(ステップS20)。この時、PTFE含有量は5重量%程度とする。
【0068】
次に、白金(Pt)の微粒子と、活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンと、溶剤とを混合してペースト状にし、それを触媒62bとするために集電体62a上に塗布して、カソード電極62を作成する(ステップS30)。この時、触媒62b中の白金(Pt)の含有量は、10重量%〜70重量%程度とすることが好ましい。
【0069】
一方、多孔質性のカーボン織布またはカーボンペーパーにPTFE(Polytetrafluoroethylene)溶液を含浸させてアノード電極64側の集電体64aを作成する(ステップS40)。この時、PTFE含有量は5重量%程度とする。
【0070】
次に、白金(Pt)−ルテニウム(Ru)の微粒子と、活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンと、溶剤とを混合してペースト状にし、それを触媒64bとするために集電体64a上に塗布して、アノード電極64を作成する(ステップS50)。この時、触媒64b中の白金(Pt)とルテニウム(Ru)の合計含有量は10重量%〜70重量%程度とすることが好ましい。また、白金(Pt)とルテニウム(Ru)の重量比は、白金(Pt):ルテニウム(Ru)=5:1〜1:2程度が好ましい。
【0071】
次に、このようにして作成した固体高分子電解質膜63、カソード電極62、アノード電極64とを接合して発電セル61を形成させ、これを乾燥させる(ステップS60)。この時、乾燥は、窒素やアルゴン(Ar)などの不活性ガス中や真空中で行うことが好ましい。尚、固体高分子電解質膜63、カソード電極62、アノード電極64はそれぞれの収納ケースに収納されていてもよいし、発電セル61を形成させたときにそれを収納ケースに収納させるようにしてもよい。
【0072】
次に、前述した方法により本発明にかかるバルブを備えたバルブ板65を作成し、発電セル61のアノード電極64側に接合する(ステップS70)。
【0073】
次に、前述した熱伝導部材の他端を発電セル61自体、またはその近傍に接続し、前述した熱付与部材の他端を図示しない制御手段または図示しない外部接続端子に接続する(ステップS80)。接続は、例えば、ハンダ付け、超音波接合、端子やコネクタによる接続などとすることができる。図示しない制御手段は、前述したように、通電量や通電時間の制御を行うためのものであり、例えば、ハード回路により構成されたものを例示することができる。そして、図示しない制御手段は、燃料電池が接続される機器の充電池や外部電源などに接続可能となっている。尚、図示しない制御手段は必ずしも必要ではなく、燃料電池が接続される機器などに設けられていてもよい。その場合は、熱付与部材の他端を図示しない外部接続端子に接続し、外部の制御手段から通電とその制御を行うようにすることもできる。
【0074】
次に、供給孔9を備える隔壁8を作成し、バルブ板65に対向させるようにして接合する(ステップS90)。この際、バルブで供給孔9の開閉が可能な位置にバルブ板65を接合するようにする。
【0075】
次に、燃料タンク66、複数の通気孔67aや開閉レバー68などを備えたカバー67、前述の図示しない制御手段や外部接続端子などを接合するなどして燃料電池60を形成する(ステップS100)。
【0076】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明をした。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0077】
前述の具体例に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
例えば、前述した各具体例が備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる
また、アノード電極64側の触媒64bとしては、有機燃料を酸化できるものであればよく、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、錫、ルテニウムおよび金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と白金との合金の微粒子などであってもよい。
【0078】
また、燃料電池も単一の発電セルで構成したものを例示したが、発電セルを複数枚積層したスタック構造としてもよい。
また、燃料についてもメタノール水溶液を例示したが、これに限定されるものではなく、他の有機燃料であってもよい。他の有機燃料としては、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、糖類、ジメチルエーテルなどのエーテル類、シクロヘキサンなどのシクロパラフィン類、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基などの親水基を有するシクロパラフィン類などを例示することができる。尚、このような有機燃料は、通常5〜90重量%程度の水溶液として用いられる。
【0079】
また、前述した各具体例が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るバルブを説明するための模式断面図である。
【図2】第1の実施の形態に係るバルブの製造方法について説明をするためのフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るバルブを説明するための模式断面図である。
【図4】第2の実施の形態に係るバルブの製造方法について説明をするための模式工程断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るバルブを説明するための模式断面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係るバルブを説明するための模式断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る燃料電池の構成を説明するための模式構成図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る燃料電池の模式外観図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る燃料電池の模式断面図である。
【図10】発電セル部分の説明をするための模式図である。
【図11】本実施の形態に係る燃料電池の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0081】
1 バルブ、 3 バルブ板、 4 突起、 5 開孔、 5a、5b 孔、 6 熱伝導部材、 7 熱付与部材、 8 隔壁、 9 供給孔、 10 バルブ、 12 形状変化部材、 13 シリコン基板、 13a バルブ板、 14 シリコン酸化膜、 31 膜、 32 膜、 40 バルブ、 42 形状変化部材、 43 バルブ板、 44 突起、 50 バルブ、 52 形状変化部材、 54 突起、 60 燃料電池、 61 発電セル、 62 カソード電極、 62a 集電体、 62b 触媒、 63 固体高分子電解質膜、 63a 孔、 63b 高分子電解質、 64 アノード極、 64 アノード電極、 64a 集電体、 64b 触媒、 65 バルブ板、 66 燃料タンク、 67 カバー、 67a 通気孔、 68 開閉レバー、 69 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化により形状が変化する形状変化部材と、
前記形状変化部材に当接し、前記形状変化部材を付勢する付勢部材と、
前記形状変化部材に接続され、前記形状変化部材に熱を付与する熱付与部材と、
を備えたことを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記形状変化部材に接続され、発電セルの発熱による熱を前記形状変化部材に伝える熱伝導部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のバルブ。
【請求項3】
前記形状変化部材は、第1の状態では燃料の供給孔に当接して前記供給孔を閉じ、前記第1の状態から温度変化により形状が変化した第2の状態では前記供給孔から離隔して前記供給孔を開くこと、を特徴とする請求項1または2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記熱付与部材を介して前記形状変化部材に通電可能としたこと、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のバルブ。
【請求項5】
前記付勢部材は、酸化シリコンからなるとともに、シリコン基板の表面に設けられ、
前記形状変化部材は、Ni−Ti(ニッケル−チタン)系形状記憶合金からなるとともに、前記付勢部材を覆うように設けられていること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1つ記載のバルブ。
【請求項6】
付勢部材を形成し、
温度変化により形状が変化する形状変化部材を形成し、
前記付勢部材に前記形状変化部材を接合し、
前記形状変化部材に熱を付与する熱付与部材を前記形状変化部材に接続すること、を特徴とするバルブの製造方法。
【請求項7】
シリコン基板の表面に酸化シリコン膜を形成し、
前記酸化シリコン膜の表面にNi−Ti(ニッケル−チタン)系形状記憶合金の膜を形成し、
前記Ni−Ti(ニッケル−チタン)系形状記憶合金の膜の記憶熱処理をし、
前記Ni−Ti(ニッケル−チタン)系形状記憶合金の膜に熱を付与する熱付与部材を前記Ni−Ti(ニッケル−チタン)系形状記憶合金の膜に接続するように形成し、
前記付勢部材の直下の前記シリコン基板に孔を設けること、を特徴とするバルブの製造方法。
【請求項8】
発電セルと、
前記発電セルのアノード電極側に設けられ、請求項1〜5のいずれか1つに記載のバルブを備えたバルブ板と、
供給孔を有し、前記バルブにより前記供給孔の開閉が可能な位置に設けられた隔壁と、
前記隔壁に対向するように設けられた燃料タンクと、
前記発電セルのカソード電極側に設けられ、複数の通気孔と前記通気孔の開閉手段とを備えたカバーと、
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項9】
固体高分子電解質膜を作成し、
カソード電極側の集電体を作成し、その上に触媒を形成してカソード電極を作成し、
アノード電極側の集電体を作成し、その上に触媒を形成してアノード電極を作成し、
前記固体高分子電解質膜の両側に、前記カソード電極と前記アノード電極とを接合して発電セルを作成し、
請求項1〜5のいずれか1つに記載のバルブを備えたバルブ板を作成し、前記バルブ板を前記発電セルの前記アノード電極側に接合し、
熱伝導部材の一端を前記発電セルもしくはその近傍に接続し、熱付与部材の一端を制御手段もしくは外部接続端子に接続し、
供給孔を備えた隔壁を作成し、前記隔壁と前記バルブ板とを前記バルブにより前記供給孔の開閉が可能な位置に接合し、
前記隔壁と燃料タンクを接合し、
複数の通気孔と前記通気孔の開閉手段とを有するカバーを作成し、前記カバーを前記発電セルの前記カソード電極側に接合すること、
を特徴とする燃料電池の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−121841(P2008−121841A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308409(P2006−308409)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】